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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】測定装置及び測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/25 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
G01B11/25 H
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020065320
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021162492
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 武晴
(72)【発明者】
【氏名】和田 智之
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-242134(JP,A)
【文献】特開2005-175256(JP,A)
【文献】特開平10-153410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を含む測定面内で少なくとも一軸方向に波長分布を有するプローブ光を投射して、前記対象物を照明する照明部と、
前記対象物からの光を、前記測定面に交差する基準軸上に配置されたフィルタ素子を介して検出する検出部であり、前記フィルタ素子は透過波長が入射角に応じて変化するバンドパスフィルタである、前記検出部と、
を備える測定装置。
【請求項2】
前記プローブ光の波長分布は、前記測定面内での前記プローブ光の投射位置を望む前記基準軸に対する角度に対する前記フィルタ素子の透過波長のシフトに対応する、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記プローブ光の波長分布は、前記フィルタ素子の透過波長λ及び有効屈折率n、前記対象物までの距離L、並びに前記測定面上での前記基準軸からの距離dを用いてλ'(d,L)=λ√(1-d/(L+d)n)に基づいて定められる、請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記照明部は、それぞれ波長の異なるシート状のプローブ光を生成し、前記一軸方向に関して互いに一部を重ねて照明光に成形する複数の光源を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記照明部及び前記検出部を、前記対象物に対して相対的に、前記測定面上で前記一軸方向に交差する方向に駆動する駆動部をさらに備える、請求項4に記載の測定装置。
【請求項6】
前記照明部は、前記プローブ光をその波長を変えつつ生成する光源及び前記波長の変化に応じて前記プローブ光の出射方向を変える偏向素子を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項7】
前記照明部は、前記プローブ光を前記一軸方向に偏向する、請求項6に記載の測定装置。
【請求項8】
前記照明部は、前記プローブ光を前記基準軸に対して周方向に偏向する、請求項6又は7に記載の測定装置。
【請求項9】
前記プローブ光は、前記測定面内で前記基準軸からの距離に応じた波長分布を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項10】
前記照明部は、それぞれ波長の異なるプローブ光を生成し、前記基準軸に対する半径方向に関して互いに一部が重なる円形状又はリング状に成形する複数の光源を有する、請求項9に記載の測定装置。
【請求項11】
対象物を含む測定面内で少なくとも一軸方向に波長分布を有するプローブ光を投射して、前記対象物を照明する段階と、
前記対象物からの光を、前記測定面に交差する基準軸上に配置されたフィルタ素子を介して検出する段階であり、前記フィルタ素子は透過波長が入射角に応じて変化するバンドパスフィルタである、前記検出する段階と、
を含む測定方法。
【請求項12】
前記対象物を照明する照明部及び前記対象物からの光を検出する検出部を、前記対象物に対して相対的に、前記測定面上で前記一軸方向に交差する方向に駆動する段階をさらに含む、請求項11に記載の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物からの光を狭帯域のバンドパスフィルタを介して検出する測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外でのイメージングでは、太陽光による背景ノイズを除去するため、スペクトル幅が極狭いレーザ光源を用いて対象物を照明し、そのスペクトル幅に対応する狭帯域の多層膜干渉型バンドパスフィルタを介して反射光を検出することで、対象物を測定する測定装置が知られている。しかし、狭帯域のバンドパスフィルタでは、透過波長が入射角に応じて短波長側にシフトするブルーシフト現象が生じるため、反射光を受ける範囲がフィルタの正面方向のみに限られてしまうという問題がある。
【0003】
そこで、特許文献1には、バンドパスフィルタを湾曲させることで、広角視野からの光をいずれかの位置で正面方向から受けるように構成した形状測定装置が開示されている。また、特許文献2には、平面状のバンドパスフィルタの各部で透過波長を変えることで、広角視野からの光をフィルタのいずれかの部分を介して受けるように構成した形状測定装置が開示されている。しかし、これらの測定装置では、光を集光するためのレンズの開口面積を十分に利用できないという原理上の問題がある。また、特殊な構成のフィルタを要するため製造上の困難もある。また、特許文献3には、広角視野からの光をテレセントリック光学系を用いて平行光に成形することで、正面方向からフィルタを介して受けるように構成した形状測定装置が開示されている。しかし、光を小さい絞りを介してテレセントリック光学系に送ることから、レンズの開口面積を制限することとなり、レンズの集光機能を損なうという原理上の問題がある。
特許文献1 特開2012-173277号公報
特許文献2 特開2012-242134号公報
特許文献3 特開2017-20876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、対象物に投射したプローブ光に由来する反射光を、狭帯域のバンドパスフィルタに通すことで背景光から分離するとともに広角範囲から受光することができる測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様においては、対象物を含む測定面内で少なくとも一軸方向に波長分布を有するプローブ光を投射して、対象物を照明する照明部と、対象物からの光を、測定面に交差する基準軸上に配置されたフィルタ素子を介して検出する検出部であり、フィルタ素子は透過波長が入射角に応じて変化するバンドパスフィルタである、検出部と、を備える測定装置が提供される。
【0006】
本発明の第2の態様においては、対象物を含む測定面内で少なくとも一軸方向に波長分布を有するプローブ光を投射して、対象物を照明する段階と、対象物からの光を、測定面に交差する基準軸上に配置されたフィルタ素子を介して検出する段階であり、フィルタ素子は透過波長が入射角に応じて変化するバンドパスフィルタである、検出する段階と、を含む測定方法が提供される。
【0007】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る測定装置の構成の一例を示す。
図2】測定装置の制御系の構成の一例を示す。
図3】複数の光源によるライン照明における光源の配置及びプローブ光の投射角の一例を側面視(-X方向視)において示す。
図4】複数の光源によるライン照明における各プローブ光の投射位置の一例を正面視(+Z'方向視)において示す。
図5】測定位置とプローブ光の波長の関係を示す。
図6】複数の光源によるライン照明における光源の配置及びプローブ光の投射角の別例を側面視(-X方向視)において示す。
図7】狭帯域バンドパスフィルタの透過波長スペクトルのブルーシフト及びプローブ光の波長選択の一例を示す。
図8】帯域幅約10nmのフィルタ素子を用いた場合の波長選択と測定範囲の関係を示す。
図9】採用する波長数と視野角の範囲の関係を示す。
図10】本実施形態に係る測定方法のフローを示す。
図11】第1の変形例に係る照明部の構成を示す。
図12】第2の変形例に係る照明部の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
図1及び図2は、それぞれ、本実施形態に係る測定装置100の構成及び制御系の構成の一例を示す。測定装置100は、対象物9をプローブ光(ライン照明光とも呼ぶ)10aを用いて照明し、対象物からの反射光をフィルタ素子21を介して検出することで、プローブ光10aに由来する反射光を特に太陽光を含む背景光から分離して精度良く検出する装置である。ここで、フィルタ素子21は、例えば0.1~30nmの帯域幅を有するバンドパスフィルタであり、狭帯域幅のために透過波長が光の入射角に応じて変化する、特に短波長側にシフトするブルーシフト現象が生ずる。なお、対象物9を含む測定面9S上で互いに直交する2つの軸をそれぞれX軸及びY軸とし、この測定面9Sに対して交差する軸であり、照明部10が射出するプローブ光10aの中心軸をZ'軸(プローブ光10aが出射する方向を+Z'方向)、検出部20が受光する対象物9からの反射光の中心軸をZ軸(反射光が対象物9から反射する方向を+Z方向)とする。測定装置100は、照明部10、検出部20、駆動部30、位置測定部40、及び制御部50を備える。
【0011】
照明部10は、対象物9を含む測定面9S内でY軸方向に波長分布を有するシート状のプローブ光10aを投射することにより、対象物9を照明(ライン照明)するユニットである。ここで、プローブ光10aがY軸方向に波長分布を有するとは、プローブ光10aが測定面9S上でY軸方向に関して連続又は不連続に変化する波長を有することをいう。照明部10は、例えば半導体レーザ等の複数(本実施形態では5)の光源11~15を有する。光源11~15は、それぞれ、赤色(波長610~750nm)で1nm程度の狭スペクトル幅を有するコヒーレントなプローブ光を発生する。光源11を中心に、その+Y側に光源12,13、その-Y側に光源14,15が配列されている。光源11、光源12,14、及び光源13,15は、それぞれ異なる波長のプローブ光11a~15aを発する。光源11~15の配置、プローブ光11a~15aの波長及び投射角については後述する。
【0012】
検出部20は、対象物9からの反射光を、フィルタ素子21を介して検出するユニットである。検出部20は、フィルタ素子21、レンズ素子22、及び検出装置23を有する。これらの素子及び装置は、Z軸上に配置される。
【0013】
フィルタ素子21は、特定の波長の光のみが透過する狭帯域幅のバンドパスフィルタであり、その透過波長はプローブ光11aの波長に対応して選択されている。ただし、フィルタ素子21の透過波長は、狭帯域幅のために光の入射角に応じて短波長側にシフト(所謂ブルーシフト)する。フィルタ素子21の帯域幅は、プローブ光11a~15aのスペクトル幅より大きく、例えば数倍であってよい。
【0014】
レンズ素子22は、フィルタ素子21を介した光を検出装置23の検出面上に集光する素子である。
【0015】
検出装置23は、対象物9からの反射光を検出する装置である。検出装置23は、イメージセンサやセンサアレイであってよい。検出装置23による検出結果は、制御部50に送信される。
【0016】
なお、照明部10及び検出部20は、支持部材を用いてステージ(不図示)上に支持されている。
【0017】
駆動部30は、照明部10及び検出部20を、対象物9に対して相対的に、Y軸方向に交差する方向、例えばX軸方向に駆動するユニットである。駆動部30は、例えば電動モータを有し、これにより照明部10及び検出部20を支持するステージをX軸方向に駆動する。それにより、Y軸方向に延びるライン照明光10aがX軸方向に移動して測定面9S上で対象物9が走査されるとともに、対象物9からの反射光を検出部20により検出して、対象物9の立体形状を測定(所謂、光切断測定)することができる。
【0018】
なお、駆動部30により照明部10及び検出部20を支持するステージを駆動するに限らず、対象物9をステージ上に支持し、これをX軸方向に駆動することとしてもよい。
【0019】
位置測定部40は、対象物9に対する照明部10及び検出部20の相対位置を測定するユニットである。位置測定部40は、例えばレーザ干渉計を有し、これを用いて照明部10及び検出部20(又は対象物9)を支持して移動するステージの位置を測定する。その測定結果は制御部50に送信される。
【0020】
制御部50は、パーソナルコンピュータ等のコンピュータ装置であり、少なくとも中央処理装置(CPU)を有する。CPUは、専用プログラムを実行することにより、制御部50に上記の各ユニットを制御する機能を発現させる。専用プログラムは、例えば、ROMに記憶され、それをCPUが読み出す、或いはDVD-ROM等の記憶媒体に記憶され、それをCPUがDVD-ROMドライブ等の読み取り装置を用いて読み出してRAMに展開することで起動される。
【0021】
制御部50は、位置測定部40による対象物9に対する照明部10及び検出部20の相対位置の測定結果に基づいて駆動部30を制御して、対象物9に対して相対的に照明部10及び検出部20を駆動する。これと同時に、制御部50は、照明部10のライン照明光10aにより対象物9を照明し、検出部20により対象物9からの反射光を検出し、その検出結果を相対位置の測定結果に対して記憶装置(不図示)に記録する。検出部20による反射光の検出及び位置測定部40により相対位置の測定結果より、対象物9の立体形状が算出される。
【0022】
図3及び図4に、照明部10によるライン照明における光源11~15の配置及びプローブ光11a~15aの投射角の一例を側面視(-X方向視)において、プローブ光11a~15aの投射位置の一例を正面視(+Z'方向視)において示す。5つの光源11、光源12,14、及び光源13,15は、それぞれ、波長の異なるシート状のプローブ光11a、プローブ光12a,14a、及びプローブ光13a,15aを生成し、Y軸方向に関して互いに一部を重ねてライン照明光10aに成形する。
【0023】
5つの光源11~15は、+Z'方向に向けてY軸方向に配列される。光源11は、フィルタ素子21の透過波長λに対応する、例えば等しい波長λを有するプローブ光11aを発生し、+Z'方向に向けて射出する。光源12,14は、それぞれ光源11の±Y側に配置され、フィルタ素子21の透過波長λより短波長λ(<λ)のプローブ光12a,14aを発生し、+Z'方向に対して上方及び下方に向けて射出する。光源13,15は、それぞれ光源11,12,14の±Y側に配置され、フィルタ素子21の透過波長λよりさらに短波長λ(<λ)のプローブ光13a,15aを発生し、+Z'方向に対してさらに上方及び下方に向けて射出する。それにより、測定面9S上で、プローブ光11aは、中心に投射され、プローブ光12aは、その下端をプローブ光11aの上端に重ねてその+Y側に投射され、プローブ光13aは、その下端をプローブ光12aの上端に重ねてその+Y側に投射され、プローブ光14aは、その上端をプローブ光11aの下端に重ねてその-Y側に投射され、プローブ光15aは、その上端をプローブ光14aの下端に重ねてその-Y側に投射され、Y軸方向に延びるライン照明光10aに成形される。
【0024】
なお、本実施形態に係る測定装置100では、プローブ光11a~15aをY軸方向に関して互いに一部を重ねてライン照明光10aに成形したが、照明光により対象物9をX軸方向に走査するため、プローブ光11a~15aを例えば千鳥配置状にX軸方向に関して互いに離間して照明光に成形してもよい。また、ライン照明光10aをX軸方向に複数並べて照明光に成形してもよい。
【0025】
図5に、測定面9S上での測定位置とライン照明光10aの波長分布(すなわち、プローブ光11a~15aの波長λ,λ,λ)の関係を示す。プローブ光11a~15aの波長は、測定面9S内でそれらが投射される中心位置(L,d)を望むZ軸に対する角度、すなわち光の入射角θ(=tan-1(d/L))に対するフィルタ素子21の透過波長のブルーシフトに基づいて定められる。透過波長λのブルーシフトλ'(θ)(=λ'(L,d))は、フィルタ素子21の透過波長λ及び有効屈折率n、フィルタ素子21から対象物9までの距離(作動距離)L、並びに測定面9S上でのZ軸からの距離dを用いて、
【数1】
と与えられる。なお、フィルタ素子21が複数の薄膜を積層した多層膜から構成される場合、有効屈折率nは良い近似で薄膜の材質の屈折率により与えることができる。
【0026】
プローブ光11aの波長λは、その投射角θ=0よりλ'(0)=λと与えられる。プローブ光12aの波長λは、その投射角θ12(=tan-1(d12/L))よりλ'(θ12)と与えられる。プローブ光14aの波長λは、その投射角θ14(=tan-1(d14/L))よりλ'(θ14)と与えられる。なお、本実施形態ではθ14=-θ12(d14=-d12)であるから、λ'(θ14)=λ'(θ12)となる。プローブ光13aの波長λは、その投射角θ13(=tan-1(d13/L))よりλ'(θ13)と与えられる。プローブ光15aの波長λは、その投射角θ15(=tan-1(d15/L))よりλ'(θ15)と与えられる。なお、本実施形態ではθ15=-θ13(d15=-d13)であるから、λ'(θ15)=λ'(θ13)となる。
【0027】
このように、照明部10により対象物9に投射するプローブ光11a~15aの波長を、入射角θに対するフィルタ素子21の透過波長のブルーシフトに合わせることで、ライン照明光10aに由来する反射光をフィルタ素子21を介して広い視野範囲から受光することが可能となる。
【0028】
なお、照明部10は、プローブ光11a~15aを放射状に射出するに限らず、例えば平行に射出することとしてもよい。図6に、複数の光源11~15によるライン照明における光源の配置及びプローブ光の投射角の別例を側面視(-X方向視)において示す。5つの光源11、光源12,14、及び光源13,15は、それぞれ、波長の異なるシート状のプローブ光11a、プローブ光12a,14a、及びプローブ光13a,15aを生成し、Z'軸に平行に出射し、Y軸方向に関して互いに一部を重ねてライン照明光10aに成形する。また、照明部10は、プローブ光11a~15aを広角範囲から対象物9に集中するように射出することとしてもよい。
【0029】
測定装置100におけるプローブ光11a~15aの波長選択の一例について説明する。
【0030】
図7に、狭帯域バンドパスフィルタの透過波長スペクトルのブルーシフト及びプローブ光の波長選択λ,λ,λの一例を示す。フィルタ素子21として、例えば、帯域幅約10nmのバンドパスフィルタ(Edmund Optics社、TSハードコート OD 4 10NMバンドパスフィルタ632NM、有効屈折率(実測値)n=1.65)を使用した。フィルタ素子21の入射角0度に対する透過波長λは632nmであるのに対して、入射角10度で629nm、20度で622nm、30度で602nm、40度で584nm、50度で565nmと透過波長がブルーシフトする。
【0031】
図8に、帯域幅10nmのフィルタ素子21を用いた場合の波長選択と測定範囲の関係を示す。本例では、一例として、3通りの異なる波長λ,λ,λを有する光源11~15を採用する。波長λ,λ,λを、帯域幅に対応して10nmの間隔で、それぞれ632nm、622nm、及び612nmと選択する。一例として作動距離Lを1mとすると、式(1)に基づいて、光源11のプローブ光11a(波長λ)を投射する角度範囲θは、ブルーシフトした透過波長スペクトルがその帯域幅内に波長λを含む入射角範囲より-16~16度、測定面9S上の測定範囲dは-286~286mmと定められる。光源12,14のプローブ光12a,14a(波長λ)を投射する角度範囲θは、ブルーシフトした透過波長スペクトルがその帯域幅内に波長λを含む入射角範囲より16~24度及び-16~-24度、測定面9S上の測定範囲dは286~445mm及び-286~-445mmと定められる。光源13,15のプローブ光13a,15a(波長λ)を投射する角度範囲θは、ブルーシフトした透過波長スペクトルがその帯域幅内に波長λを含む入射角範囲より24~31度及び-24~-31度、測定面9S上の測定範囲dは445~576mm及び-445~-576mmと定められる。
【0032】
図9に、波長数と視野角の範囲の関係を示す。一例として作動距離Lを1mに対して、単一波長(632nm)を用いる場合、視野角(θ)は±16度、測定面9S上の測定範囲(d)は±285mmの範囲に限られる。これに対して、2波長(632nm、622nm)を用いると、少なくとも、視野角(θ)は±22度、測定面9S上の測定範囲(d)は±400mmの範囲に拡がる。さらに、3波長(632nm、622nm、612nm)を用いると、少なくとも、視野角(θ)は±28度、測定面9S上の測定範囲(d)は±500mmの範囲に拡がる。さらに採用する波長数を増やすことにより、視野角、すなわち測定面9S上の測定範囲をさらに広げることができる。
【0033】
なお、より狭帯域なフィルタ素子21を使用する場合、所望の視野角範囲が得られるフィルタ素子21の透過波長のブルーシフト量、例えば30nm程度の帯域を帯域幅以下の幅で分割し、各帯域に対応する波長の光源を追加すればよい。また、フィルタ素子21の帯域幅が20nmであれば背景光の93%をカットできるのでフィルタ素子21の帯域幅としては20nm以下であることが好ましい。フィルタ素子21の帯域幅が10nmであれば背景光の97%をカットできるのでフィルタ素子21の帯域幅としては10nm以下であることがより好ましい。さらにフィルタ素子21の帯域幅が3nmであれば背景光の99%をカットできるのでフィルタ素子21の帯域幅としては3nm以下であることがより好ましい。
【0034】
図10に、本実施形態に係る測定方法のフローを示す。
【0035】
ステップS102では、制御部50は、照明部10により対象物9を含む測定面9S内でY軸方向に波長分布を有するプローブ光10aを投射して、対象物9をライン照明する。
【0036】
ステップS104では、制御部50は、位置測定部40により対象物9に対する照明部10及び検出部20の相対位置を測定する。
【0037】
ステップS106では、制御部50は、検出部20により対象物9からの反射光を、Z軸上に配置されたフィルタ素子21を介して検出する。ここで、フィルタ素子21は透過波長が入射角に応じて短波長側にシフトする狭帯域のバンドパスフィルタである。制御部50は、検出部20による検出結果を位置測定部40による相対位置の測定結果に対して記憶装置に記録する。
【0038】
ステップS108では、制御部50は、位置測定部40による相対位置の測定結果に基づいて対象物9の全体をライン照明光10aで走査したか判断する。まだ全体を走査していない場合、ステップS110に進む。全体を走査した場合、制御部50は、照明部10を制御してプローブ光11a~15aをオフし、ステップS112に進む。
【0039】
ステップS110では、制御部50は、駆動部30により照明部10及び検出部20を支持するステージをX軸方向に予め定められた距離だけ駆動して、それらを対象物9に対して相対的に移動させる。制御部50は、ステップS108の判断が肯定されるまでステップS104、S106、S110を繰り返す。それにより、Y軸方向に延びるライン照明光10aにより測定面9S上で対象物9がX軸方向に走査されると同時に、対象物9からの反射光が検出部20により検出される。
【0040】
ステップS112では、制御部50は、ステップS106で記録した検出部20の検出結果を処理する。それにより、対象物9の立体形状が算出される。その結果は、記憶装置に記録され、また表示モニタ(不図示)上に表示されてもよい。
【0041】
本実施形態に係る測定装置100によれば、対象物9を含む測定面9S内でY軸方向に波長分布を有するプローブ光10aを投射して、対象物9をライン照明する照明部10、対象物9からの反射光を、測定面9Sに交差するZ軸上に配置されたフィルタ素子21を介して検出する検出部20を備える。これによれば、対象物9からの反射光を狭帯域のフィルタ素子21に通すことで、対象物9に投射したプローブ光11a~15aに由来する反射光を背景光から分離して検出する際に、フィルタ素子21の透過波長が対象物9を望む角度、すなわちZ軸に対する反射光の入射角に応じて短波長側にシフトする場合において、照明部10により対象物9に投射するプローブ光10aの波長分布を、入射角に応じたフィルタ素子21の透過波長のシフトに合わせることで、プローブ光に由来する反射光を特に太陽光を含む背景光から分離しつつ、フィルタの透過帯域幅を超えて透過波長が大きくシフトする広い視野角範囲から検出することが可能となる。
【0042】
図11に、第1の変形例に係る照明部10dの構成を示す。照明部10dは、プローブ光10aをその波長を変えつつ生成する可変波長光源16及び波長の変化に応じてプローブ光10aの出射方向を変える偏向素子17を有する。可変波長光源16は、測定面9S上で対象物9を望む視野角範囲に対してブルーシフトするフィルタ素子21の透過波長の範囲内で波長を周期的に変更してプローブ光10aを射出する。偏向素子17は、例えばガルバノミラー等のミラー素子及びその鏡面を回動するモータ等の駆動装置を含む。なお、偏向素子17は、音響光学素子(AOM)、空間光変調器(SLM)等であってもよい。照明部10dは、可変波長光源16によりプローブ光10aを生成しつつ、その波長変更の周期に併せて偏向素子17によりプローブ光10aをY軸方向に偏向することで、Y軸方向に波長分布を有するライン照明光10aを生成する。
【0043】
なお、照明部10dは、後述するエリア照明において、複数の偏向素子17によりプローブ光10aをY軸方向に偏向するとともにX軸方向に偏向して測定面9S上で対象物を2次元走査してもよいし、プローブ光10aをZ'軸に対して半径方向に偏向するとともに周方向に偏向して測定面9S上で対象物を螺旋状に走査してもよい。
【0044】
なお、測定面9S上でY軸方向に延びるライン照明光10aをX軸方向に走査することに代えて、測定面9Sに平行な方向に拡がるエリア照明を採用してもよい。
【0045】
図12に、第2の変形例に係る照明部10eの構成を示す。照明部10eは、複数(本例では3)の光源11~13及び光学系65を含む。
【0046】
光源11~13は、例えば、赤色(波長610~750nm)で1nm程度の狭スペクトル幅を有するコヒーレントなプローブ光11a~13aを発生する半導体レーザである。プローブ光11a~13aは、それぞれ異なる波長を有する。
【0047】
光学系65は、光源11~13が発するプローブ光11a~13aを測定面9Sに導く光学素子群であり、一例としてライトガイド60及びリレーレンズ64を含む。
【0048】
ライトガイド60は、プローブ光11a~13aを同心円状に成形する光学部材群であり、光源11のプローブ光11aを導く円柱状のガイド61、ガイド61の周囲を囲んで光源12のプローブ光12aを導く円筒状のガイド62、ガイド62の周囲を囲んで光源13のプローブ光13aを導く円筒状のガイド63を含む。プローブ光11aは、ガイド61を通ることによりその断面が円形状に成形され、プローブ光12aは、ガイド62を通ることによりその断面がリング状に成形され、プローブ光13aは、ガイド63を通ることによりその断面がリング状に成形され、これらがZ'軸に対する半径方向に関して互いに一部を重ねて同心円状に束ねられることで測定面9S内でZ'軸からの距離に応じた波長分布を有するエリア照明光10aに成形される。
【0049】
リレーレンズ64は、複数のレンズ素子を有し、ライトガイド60から送られたプローブ光10aを拡大して測定面9Sに向けて送出する。それにより、測定面9S上の対象物がエリア照明される。
【0050】
プローブ光11a~13aの波長は、先と同様に検出部20において、測定面9S内でのそれらが投射されるエリアを望むZ軸に対する角度、すなわち光の入射角θに対するフィルタ素子21の透過波長のブルーシフトに基づいて定められる。透過波長λのブルーシフトλ'(θ)(=λ'(L,d))は、フィルタ素子21の透過波長λ及び有効屈折率n、フィルタ素子21から対象物9までの距離(作動距離)L、並びに測定面9S上でのZ軸からの半径dを用いて、式(1)のとおり与えられる。
【0051】
プローブ光11aの波長λは、その投射角θ=0よりλ'(0)=λと与えられる。プローブ光12aの波長λは、その投射角θ12(=tan-1(d12/L)よりλ'(θ12)と与えられる。プローブ光13aの波長λは、その投射角θ13(=tan-1(d13/L)よりλ'(θ13)と与えられる。検出部20により測定面9S上の対象物からの反射光を検出することで、プローブ光に由来する反射光を特に太陽光を含む背景光から分離しつつ、フィルタの透過帯域幅を超えて透過波長が大きくシフトする広い視野角範囲に位置する対象物をイメージングすることが可能となる。
【0052】
本実施形態に係る測定装置及び測定方法は、屋外のインフラ設備、建築物等を対象とする自動診断或いは光切断3D計測、流通における貨物の検査、農業における収穫物の検査等、野外でのイメージングに有用である。
【0053】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0054】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0055】
9…対象物、9S…測定面、10,10d,10e…照明部、10a…プローブ光(ライン照明光、エリア照明光)、11~15…光源、11a~15a…プローブ光、16…可変波長光源、17…偏向素子、20…検出部、21…フィルタ素子、22…レンズ素子、23…検出装置、30…駆動部、40…位置測定部、50…制御部、60…ライトガイド、61,62,63…ガイド、64…リレーレンズ、65…光学系、100…測定装置。
図1
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図12