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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】把持装置及び位置合わせ機構
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/06 20060101AFI20231207BHJP
   B25B 1/10 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B23Q3/06 303E
B25B1/10 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020525577
(86)(22)【出願日】2019-06-11
(86)【国際出願番号】 JP2019023019
(87)【国際公開番号】W WO2019240108
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2018111164
(32)【優先日】2018-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502267800
【氏名又は名称】株式会社かいわ
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山添 重幸
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-172640(JP,A)
【文献】特開2007-075934(JP,A)
【文献】特開2003-181732(JP,A)
【文献】特開2016-112647(JP,A)
【文献】実開昭60-067826(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q3/06
B23Q3/18
B25B1/10
B25B1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びる第1ガイド部と、前記第1方向と交差する方向の第2方向に延びる第2ガイド部とを有するベース部材と、
前記第1ガイド部と平行に前記ベース部材に支持される第1回転軸と、
前記第2ガイド部と平行に前記ベース部材に支持され、前記第1回転軸に対し、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向にずれた位置に配置される第2回転軸と、
前記第1回転軸にねじ込まれ、前記ベース部材の上面を前記第1ガイド部に沿ってスライドする少なくとも1つの第1移動口金と、
前記第2回転軸にねじ込まれ、前記ベース部材の上面を前記第2ガイド部に沿ってスライドする少なくとも1つの第2移動口金と
を備え
前記第1回転軸は、一端側に形成された右ねじ部と、他端側に形成された左ねじ部とを有し、前記右ねじ部と前記左ねじ部とにそれぞれ前記第1移動口金がねじ込まれており、
前記第2回転軸は、一端側に形成された右ねじ部と、他端側に形成された左ねじ部とを有し、前記右ねじ部と前記左ねじ部とにそれぞれ前記第2移動口金がねじ込まれており、
前記第1回転軸と前記第2回転軸は、それぞれ第1軸部と第2軸部とを有し、
前記第1軸部と前記第2軸部は、軸方向に分離する継手部を介して連結されており、
前記継手部は、
前記第1軸部に形成された第1継手と、
前記第2軸部に形成された第2継手と、
前記第1継手及び前記第2継手を回転可能、かつ軸方向に移動可能に支持する支持体と
を有し、
前記第1継手及び前記第2継手は、
互いに対向する側に設けられ、着脱自在に連結する連結面と、
前記連結面と反対側に設けられ、前記支持体に接触可能な接触面と
を備えることを特徴とする把持装置。
【請求項2】
前記第1移動口金と前記第2移動口金は、被加工物に接する保持面を前記第3方向に分割するスリットを有することを特徴とする請求項1に記載の把持装置。
【請求項3】
被加工物と前記ベース部材の間に配置される調整スペーサを備え、
前記調整スペーサは、前記ベース部材の上面に設けられた開口穴に挿入可能な突出ピンを有することを特徴とする請求項1または2に記載の把持装置。
【請求項4】
前記第1移動口金は、前記第2方向に平行な中心軸に対し回転する連結機構を介して、保持部材が設けられていることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の把持装置。
【請求項5】
前記第2移動口金は、前記第1方向に平行な中心軸に対し回転する連結機構を介して、保持部材が設けられていることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の把持装置。
【請求項6】
第1方向に延びる第1ガイド部と、前記第1方向と交差する方向の第2方向に延びる第2ガイド部とを有するベース部材と、
前記第1ガイド部と平行に前記ベース部材に支持される第1回転軸と、
前記第2ガイド部と平行に前記ベース部材に支持され、前記第1回転軸に対し、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向にずれた位置に配置される第2回転軸と、
前記第1回転軸にねじ込まれ、前記ベース部材の上面を前記第1ガイド部に沿ってスライドする少なくとも1つの第1移動口金と、
前記第2回転軸にねじ込まれ、前記ベース部材の上面を前記第2ガイド部に沿ってスライドする少なくとも1つの第2移動口金と
を備える把持装置に配置される凹部を備えた位置合わせ部品と、
前記位置合わせ部品の凹部に連結される連結部を備えた位置合わせブロックと
を有する位置合わせ機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を把持する把持装置及び位置合わせ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、研磨機、マシニングセンタ、フライス盤、旋盤、放電加工機などでは、被加工物を加工する際に、工作機械のテーブルに被加工物を固定するために、把持装置が一般に用いられている。
【0003】
被加工物を精度よく加工するためには、被加工物を把持装置に位置決めして保持し、把持装置に対する被加工物の位置が加工中にずれないようにする必要がある。そのような把持装置として、被加工物の中心位置調整機構を備えたバイスがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-164846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した工作機械で使用される把持装置は、被加工物を2方向から保持する構造が一般的であり、X軸方向又はY軸方向のいずれかの方向から被加工物が保持される。
【0006】
例えば、被加工物をY軸方向から保持する場合は、繰り返して被加工物を把持装置に配置する際に、X軸方向に位置決め用のアテ板を置いて、被加工物を把持装置の中心に位置決めを行っている。この手法では、繰り返して被加工物を把持装置に配置する際に、被加工物の位置が中心からずれやすく、位置決めの精度が十分ではない。
【0007】
被加工物を同じ位置に精度よく位置決めして保持できる把持装置及び位置合わせ機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下の開示の一観点によれば、第1方向に延びる第1ガイド部と、前記第1方向と交差する方向の第2方向に延びる第2ガイド部とを有するベース部材と、前記第1ガイド部と平行に前記ベース部材に支持される第1回転軸と、前記第2ガイド部と平行に前記ベース部材に支持され、前記第1回転軸に対し、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向にずれた位置に配置される第2回転軸と、前記第1回転軸にねじ込まれ、前記ベース部材の上面を前記第1ガイド部に沿ってスライドする少なくとも1つの第1移動口金と、前記第2回転軸にねじ込まれ、前記ベース部材の上面を前記第2ガイド部に沿ってスライドする少なくとも1つの第2移動口金とを備え、前記第1回転軸は、一端側に形成された右ねじ部と、他端側に形成された左ねじ部とを有し、前記右ねじ部と前記左ねじ部とにそれぞれ前記第1移動口金がねじ込まれており、前記第2回転軸は、一端側に形成された右ねじ部と、他端側に形成された左ねじ部とを有し、前記右ねじ部と前記左ねじ部とにそれぞれ前記第2移動口金がねじ込まれており、前記第1回転軸と前記第2回転軸は、それぞれ第1軸部と第2軸部とを有し、前記第1軸部と前記第2軸部は、軸方向に分離する継手部を介して連結されており、前記継手部は、前記第1軸部に形成された第1継手と、前記第2軸部に形成された第2継手と、前記第1継手及び前記第2継手を回転可能、かつ軸方向に移動可能に支持する支持体とを有し、前記第1継手及び前記第2継手は、互いに対向する側に設けられ、着脱自在に連結する連結面と、前記連結面と反対側に設けられ、前記支持体に接触可能な接触面とを備える把持装置が提供される。
【0009】
また、その開示の他の観点によれば、第1方向に延びる第1ガイド部と、前記第1方向と交差する方向の第2方向に延びる第2ガイド部とを有するベース部材と、前記第1ガイド部と平行に前記ベース部材に支持される第1回転軸と、前記第2ガイド部と平行に前記ベース部材に支持され、前記第1回転軸に対し、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向にずれた位置に配置される第2回転軸と、前記第1回転軸にねじ込まれ、前記ベース部材の上面を前記第1ガイド部に沿ってスライドする少なくとも1つの第1移動口金と、前記第2回転軸にねじ込まれ、前記ベース部材の上面を前記第2ガイド部に沿ってスライドする少なくとも1つの第2移動口金とを備える把持装置に配置される凹部を備えた位置合わせ部品と、前記位置合わせ部品の凹部に連結される連結部を備えた位置合わせブロックとを有する位置合わせ機構が提供される。
【発明の効果】
【0010】
以下の開示によれば、把持装置のベース部材は、第1ガイド部と、第1ガイド部と交差する方向に配置された第2ガイド部とを有する。第1回転軸が第1ガイド部と平行にベース部材に支持され、第2回転軸が第2ガイド部と平行にベース部材に支持されている。
【0011】
第1回転軸にねじ込まれた第1移動口金が第1ガイド部に沿ってベース部材に上面をスライドする。第2回転軸にねじ込まれた第2移動口金が第2ガイド部に沿ってベース部材に上面をスライドする。
【0012】
一つの好適な態様では、第1回転軸の両側に一対の第1移動口金が設けられ、第2回転軸の両側に一対の第2移動口金が設けられる。これにより、一対の第1移動口金及び一対の第2移動口金によって被加工物を4方向から保持することができる。
【0013】
よって、繰り返して被加工物を把持装置に配置する際に、常にX軸方向及びY軸方向の同じ位置で保持することができ、繰り返し位置決め精度の再現性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態の把持装置を示す斜視図である。
図2図1の把持装置を下側からみた斜視図である。
図3図1の把持装置の第1回転軸及び第2回転軸の各継手部が支持体で支持された様子を示す斜視図である。
図4図4A図3の第1回転軸の継手部を示す斜視図、図4B図4Aの第2軸部の連結面を示す平面図である。
図5図5Aは第2軸部の連結面の凹部の変形例1を示す平面図、図5Bは第2軸部の連結面の凹部の変形例2を示す平面図である。
図6】実施形態の把持装置の第1支持体を示す分解斜視図である。
図7図7Aは実施形態の把持装置で被加工物を把持する様子を示す側面図(その1)、図7Bは第2回転軸の継手部の様子を示す端面図(その1)である。
図8図8Aは実施形態の把持装置で被加工物を把持する様子を示す側面図(その2)、図8Bは第2回転軸の継手部の様子を示す端面図(その2)である。
図9図9Aは実施形態の把持装置の移動口金に形成されたスリットを示す断面図、図9B図9Aの移動口金で被加工物を保持した様子を示す部分断面図である。
図10】実施形態の把持装置により被加工物が4方向から把持された様子を示す平面図である。
図11】実施形態の把持装置が備える調整スペーサを説明するための断面図である。
図12】実施形態の第1変形例の把持装置の口金を示す模式図である。
図13】実施形態の第2変形例の把持装置を示す平面図である。
図14図14Aは実施形態の把持装置を位置合わせするための位置合わせブロックを示す斜視図、図14Bは把持装置に位置合わせ部品が配置された様子を示す平面図である。
図15図14Aの位置合わせブロックが図14Bの把持装置に配置された位置合わせ部品に嵌め込まれた様子を示す部分断面図である。
図16】実施形態の第3変形例に係る第1移動口金を示す斜視図である。
図17】実施形態の第3変形例に係る第1移動口金の使用状態を示す正面図である。
図18】実施形態の第3変形例の別の変形例に係る第1移動口金を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態について、添付の図面を参照して説明する。図1は、実施形態の把持装置を示す斜視図である。図1に示すように、実施形態の把持装置1は、X軸方向に第1回転軸11を備え、Y軸方向に第2回転軸12を備えている。第1回転軸11と第2回転軸12とは中央部で立体交差している。好適には、第1回転軸11と第2回転軸12とは90°で直交している。本実施形態の例では、第1方向をX軸方向とし、第2方向をY軸方向とし、第3方向をX軸方向とY軸方向に直交する垂直方向(Z軸方向)として説明する。
【0016】
第2回転軸12は、第1回転軸11に対し、第1方向(X軸方向)及び第2方向(Y軸方向)に直交する第3方向(垂直方向)にずれた位置に配置される。第1回転軸11と第2回転軸12とが第2回転軸12が上側になった状態で立体交差して配置されている。
【0017】
第1回転軸11の両側に、対向する一対の第1移動口金21a,21bがそれぞれ連結されている。一方の第1移動口金21aは、被加工物に当接する本体部21xと、本体部21xよりも幅広の連結部21yとを備えている。
【0018】
第1移動口金21aの連結部21yが第1回転軸11の一方のねじ部にねじ込まれている。対向口金である他方の第1移動口金21bにおいても同一構造を有し、第1回転軸11の他方のねじ部にねじ込まれている。
【0019】
第2回転軸12の両側に、対向する一対の第2移動口金22a,22bがそれぞれ連結されている。Y軸方向の第2回転軸12に連結された第2移動口金22a,22bがメインの口金として機能する。一方の第2移動口金22aは被加工物に当接する本体部22xを備えている。第2移動口金22aは、本体部22xの下面の両端に配置された一対のL字状のレール結合部22yを備えている。
【0020】
第2移動口金22aは、本体部22xの下面の中央から下側に延在する連結部22zを備えている。第2回転軸12の一方のねじ部に第2移動口金22aの連結部22zがねじ込まれている。対向口金である他方の第2移動口金22bにおいても同一構造を有し、第2回転軸12の他方のねじ部にねじ込まれている。
【0021】
実施形態の把持装置1は、ベース部材40を備えている。ベース部材40は内部に収容部を有し、底部材42と側部材44と天部材46とから一体的に形成される。ベース部材40の天部材46には、対向する外周からX軸方向の内部に延びる第1ガイド部G1がそれぞれ形成されている。第1ガイド部G1はレール状開口部からなる。
【0022】
一方の第1移動口金21aの本体部21xがベース部材40の一方の第1ガイド部G1に配置されている。これにより、第1移動口金21aはベース部材40の第1ガイド部G1に沿ってスライドすることができる。他方の第1移動口金21bにおいても同一構造を有し、ベース部材40の他方の第1ガイド部G1(不図示)に配置されている。
【0023】
ベース部材40は、対向する2辺の側部材44の上端にY軸方向に延びるレールガイド部G2xがそれぞれ形成されている。ベース部材40の天部材46には、対向する外周からY軸方向の内部に延びる開口ガイド部G2yがそれぞれ形成されている。
【0024】
このように、ベース部材40は、レールガイド部G2xと開口ガイド部G2yとからなる第2ガイド部G2を備えている。一方の第2移動口金22aのレール結合部22yにベース部材40のレールガイド部G2xが嵌め込まれている。第2移動口金22aの連結部22zがベース部材40の開口ガイド部G2yに配置されている。
【0025】
これにより、一方の第2移動口金22aは、ベース部材40の一方のレールガイド部G2x及び開口ガイド部G2yからなる第2ガイド部G2に沿ってスライドすることができる。他方の第2移動口金22bにおいても、ベース部材40との同一な連結構造を有し、ベース部材40の他方の第2ガイド部G2(不図示)に沿って移動することができる。
【0026】
実施形態の把持装置1では、一般構造用圧延鋼、炭素鋼、クロムモリブデン鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、炭素工具鋼、合金工具鋼、高速度工具鋼、高炭素クロム軸受け鋼、ステンレス鋼、ねずみ鋳鉄、SCN435,SCN440などのクロムモリブデン鋼、鋼、及びニッケル合金などの金属材料が一般に用いられている。
【0027】
このような金属材料は、熱処理(焼き入れ)やコーティング(黒染め)などの表面処理が施される場合もある。第1回転軸11、第2回転軸12、第1移動口金21a,21b、第2移動口金22a,22b、ベース部材40及び後述する把持装置1の各要素は、このような金属材料で作製される。
【0028】
図2図1の把持装置1を下側からみた斜視図である。後述するように、ベース部材40の収容部には、第1回転軸11の継手部(不図示)を支持する第1支持体と、第2回転軸12の継手部(不図示)を支持する第2支持体とが積層されて配置される。図2では、底部材42で閉塞されたベース部材40の内部空間内に、第1回転軸11の継手部を支持する第1支持体31が配置された様子が透視的に描かれている。底部材42は側部材44の底面にねじ止めされている。
【0029】
図2に示すように、第1支持体31とその上に配置された第2支持体(図2では不図示)は、各四隅にねじ穴33が設けられており、ねじ止めによって固定される。次に説明する図3に示すように、第1支持体31とその上に配置される第2支持体32とを位置決めするために、第1支持体31と第2支持体32との各四隅のねじ穴33の内側に位置決め用穴32aが形成されている。位置決め用穴32aに位置決めピン(不図示)を通した後に、ねじ止めすることにより、第1支持体31と第2支持体32とを正確に位置決めすることができる。
【0030】
あるいは、ベース部材40の開口部の天板に、第2支持体32の上端部を嵌め込む段差部を形成してもよい。この場合は、ベース部材40の開口部の天板の段差部に、第2支持体32の上端部を嵌め込み、その下に第1支持体31を配置する。さらに、第1支持体31及び第2支持体32の位置決め用穴32aに位置決めピンを通した後に、ベース部材40の底部材42が第1支持体31の下面に当接した状態で配置される。この場合も、ベース部材40の開口部の天板の段差部と位置決めピンとにより、第1支持体31と第2支持体32とを正確に位置決めすることができる。
【0031】
図3は、図2の第1回転軸11及び第2回転軸12の各継手部が第1支持体及び第2支持体で支持された様子を示す斜視図である。図3では、支持体の中に収容された回転軸の各継手部が透視的に描かれている。
【0032】
図3に示すように、第1回転軸11は、第1軸部11aと第2軸部11bとに分離されている。第1軸部11aと第2軸部11bとは、軸方向に分離する継手部C1を介して連結されている。第1回転軸11の継手部C1は第1支持体31の中に収容されて支持されている。
【0033】
同様に、第2回転軸12は、第1軸部12aと第2軸部12bとに分離されている。第1軸部12aと第2軸部12bとは、軸方向に分離する継手部C2を介して連結されている。第2回転軸12の継手部C2は第2支持体32の中に収容されて支持されている。第1支持体31の上に第2支持体32が積層されて配置されている。
【0034】
第1回転軸11が挿入される第1支持体31の2箇所の貫通穴31x(図3)の部分において、第1回転軸11と第1支持体31との間で隙間が生じていると、把持装置1で把持した被加工物を加工する際に切削粉などが第1支持体31の中に入るおそれがある。第1回転軸11の継手部C1に切削粉などが入り込むと、把持装置1の精度が低下する場合がある。
【0035】
このため、第1支持体31の貫通穴31xにグリスを入れたり、Oリングを配置したりしてもよい。あるいは、第1支持体31の貫通穴31xの外側直近の第1回転軸11に本体よりも径大のリング状の突起を形成し、第1回転軸11のリング状の突起を第1支持体31の側面に当接させて封止してもよい。第2回転軸12が挿入される第2支持体32の2箇所の貫通穴32x(図3)においても同様である。
【0036】
図4Aには、図3の第2回転軸12の継手部C2が分離した状態が示されている。第1軸部12aには第1継手Cxが形成され、第2軸部12bには第2継手Cyが形成されている。第1軸部12aの第1継手Cxと第2軸部12bの第2継手Cyとが連結することで、継手部C2が構築される。
【0037】
第1軸部12aの第1継手Cx及び第2軸部12bの第2継手Cyは、互いに対向する側に設けられて着脱自在に連結する連結面D1,D2と、連結面D1、D2の反対側に設けられて第1支持体31に接触可能な接触面E1,E2とをそれぞれ備えている。第1軸部12aの第1継手Cx及び第2軸部12bの第2継手Cyは、軸本体よりも直径が大きな径大部として形成される。
【0038】
前述した図3において、第2支持体32は、図4Aの第1軸部12aの第1継手Cx及び第2軸部12bの第2継手Cyを回転可能、かつ軸方向に移動可能な状態で支持している。
【0039】
図4Aに示すように、第1軸部12aの第1継手Cxの連結面D1に凸部Aが設けられている。一方、第2軸部12bの第2継手Cyの連結面D2に凹部Bが設けられている。
【0040】
図4B図4Aの第2軸部12bの第2継手Cyを横方向からみた平面図である。図4A図4Bを加えて参照すると、第2軸部12bの凹部Bは平面視において上下に延びる溝状に形成され、対向する2つの側面Sが開口端から底面に向かって内側に傾斜する傾斜面になっている。このように、凹部Bの側面は、開口端から底面側になるにつれて開口幅が小さくなるテーパー形状になっている。凸部Aは凹部Bの形状に対応して形成される。
【0041】
後述するように、第1軸部12aの第1継手Cxと第2軸部12bの第2継手Cyとが外側に移動して離れることで、ねじのガタによる第2移動口金22a,22bの動きが止められる。凹部Bの側面Sをテーパー形状にすることにより、第1軸部12aの第1継手Cxと第2軸部12bの第2継手Cyとが容易に分離できるようになっている。
【0042】
図5Aの変形例1に示すように、凹部Bは、平面視において十字形状であってもよい。この場合も、十字形状の凹部Bの側面Sが上記したようなテーパー形状で形成される。あるいは、図5Bの変形例2に示すように、第2軸部12bの第2継手Cyの外周から先端面にかけて切欠状の凹部Bを形成してもよい。切欠状の凹部Bは、第2軸部12bの第2継手Cyの連結面D2の対向する2箇所又は4箇所に配置される。この場合も、切欠状の凹部Bの側面Sが上記したようなテーパー形状で形成される。
【0043】
このように、凹部Bは、第1軸部12aと第2軸部12bとが結合して回転できると共に、軸方向に容易に分離できるように側面Sがテーパー形状になっていればよく、各種の形状を採用することができる。
【0044】
図4B図5A及び図5Bの例では、第2回転軸12の第1軸部12aの第1継手Cxに凸部Aを形成し、第2軸部12bの第2継手Cyに凹部Bを形成している。これとは逆に、第1軸部12aの第1継手Cxに凹部を形成し、第2軸部12bの第2継手Cyに凸部を形成してもよい。図3の第1回転軸11の継手部C1においても、第2回転軸12の継手部C2と同一の構造で形成される。
【0045】
次に、前述した図3の第1支持体31の構造についてさらに詳しく説明する。図6図3の第1支持体31を示す分解斜視図である。図6に示すように、第1支持体31は、下側部材31aと上側部材31bとから形成される。下側部材31aの中央部には平面視で四角柱状のキャビティ31c(凹部)が形成されている。
【0046】
下側部材31aのキャビティ31cの両側の上面に溝31gが形成されている。溝31gは断面視で半円柱状に形成され、キャビティ31cの両端に連通して形成される。溝31gの深さはキャビティ31cの深さよりも浅く設定される。
【0047】
上側部材31bは下側部材31aと同じ構造で形成される。下側部材31aのキャビティ31cに、第1回転軸11の第1軸部11aの第1継手Cxと第2軸部11bの第2継手Cyとが結合した継手部C1(図3)を配置する。このとき、第1回転軸11の第1軸部11a及び第2軸部11bが下側部材31aの溝31gに配置される。
【0048】
次いで、上側部材31bのキャビティ31cが形成された面を下側部材31aの上に積層して配置することにより、図3の第1支持体31が得られる。
【0049】
以上により、下側部材31aのキャビティ31cの上に上側部材31bのキャビティ31cが配置されて収容部が形成される。このようにして、第1支持体31の収容部に第1回転軸11の継手部C1が収容される。
【0050】
下側部材31aの溝31gの上に上側部材31bの溝31gが配置されて貫通穴31xが形成される。第1支持体の31の貫通穴31xに、第1回転軸11の第1軸部11a及び第2軸部11bが挿通された状態となる。
【0051】
第2支持体32は上記した第1支持体31と同一構造から形成される。第2支持体32は、第1支持体31に対して90°回転させた状態で第1支持体31の上に配置される。第1支持体31と同様に、第2支持体32に第2回転軸12の継手部C2が収容される。実際には、ベース部材40の収容部内で組み立てが行われ、第2支持体32の下に第1支持体31を組み立て、前述した図2のねじ穴33にねじ止めされる。
【0052】
このようにして、第1回転軸11と第2回転軸12とは、相互に直交するように第1支持体31及び第2支持体32にそれぞれ収容されて支持される。第1回転軸11の継手部C1と、第2回転軸12の継手部C2とは平面視で重なる位置に配置される。
【0053】
本実施形態の例では、図1に示したように、Y軸方向に配置される第2移動口金22a,22bは、被加工物と対向する面の面積がX軸方向に配置される第1移動口金21a,21bよりも大きく設定されている。このため、第2移動口金22a,22bがメインの把持手段として機能し、第1移動口金21a,21bが補助の把持手段として機能する。
【0054】
第2回転軸12から被加工物までの距離が近い方が、移動口金の把持精度を向上させることができる。このような観点から、図3で例示したように、メインの把持手段として機能する第2移動口金22a,22bが連結された第2回転軸12の継手部C2を第1移動口金21a,21bが連結された第1回転軸11の継手部C1の上に配置することが好ましい。
【0055】
なお、X軸方向の第1移動口金21a,21bは第1回転軸11及びベース部材40から着脱可能に装着してもよい。第1移動口金21a,21bを締め付ける回転方向と逆方向に第1回転軸11を回すことにより、第1移動口金21a,21bを第1回転軸11から取り外すことができる。このように、Y軸方向の第2移動口金22a,22bのみで被加工物5を把持してもよい。
【0056】
あるいは、Y軸方向の第2移動口金22a,22bが第2回転軸12及びベース部材40から着脱可能に装着してもよい。この場合は、X軸方向の第1移動口金21a,21bのみで被加工物5が把持される。
【0057】
前述した図1において、第1回転軸11の第1軸部11aのねじ部と、第2軸部11bのねじ部とは、逆方向にねじ山が形成されており、相互に逆ねじの関係になっている。このように、第1回転軸11は、一端側に形成された右ねじ部と、他端側に形成された左ねじ部とを有する。
【0058】
第1軸部11aのねじ部と第2軸部11bのねじ部とを逆ねじの関係にすることにより、第1回転軸11を所定の方向に回転させると一対の第1移動口金21a,21bが共に内側に移動する。同様に、第2回転軸12は、第1軸部12aのねじ部と、第2軸部12bのねじ部とは、逆方向にねじ山が形成されており、相互に逆ねじの関係になっている。
【0059】
このように、第2回転軸12は、一端側に形成された右ねじ部と、他端側に形成された左ねじ部とを有する。第1軸部12aのねじ部と第2軸部12bのねじ部とを逆ねじの関係にすることにより、第2回転軸12を所定の方向に回転させると一対の第2移動口金22a,22bが共に内側に移動する。
【0060】
図7Aには、Y軸方向に配置された第2移動口金22a,22bで被加工物5を把持する様子が示されている。図7Aに示すように、第2回転軸12を回転させると、第1軸部12a(図3)のねじ部に連結された第2移動口金22aは被加工物5に向けて内側に移動する。同時に、第1軸部12aの回転に連動して第2軸部12b(図3)が回転し、第2軸部12bに連結された第2移動口金22bが被加工物5に向けて内側に移動する。
【0061】
図7Aに前述した図1を加えて参照すると、第1回転軸11を回転させると、同様な原理で、第1回転軸11の両側にねじ込まれた一対の第1移動口金21a,21bが被加工物5に向けて内側に同時に移動する。
【0062】
このとき、図7Bに示すように、第1軸部12aの第1継手Cxの凸部Aは、第2軸部12bの第2継手Cyの凹部Bと結合している。前述した図3の第2支持体32の内壁Wと、第1軸部12aの第1継手Cxの接触面E1との間に隙間H1が設けられた状態となっている。同様に、第2支持体32の内壁Wと、第2軸部12bの第2継手Cyの接触面E2との間に隙間H1が設けられている。
【0063】
さらに、図8Aに示すように、第2回転軸12を回転させると、被加工物5のY軸方向の両側の側面に一対の第2移動口金22a,22bの保持面が当接する。このようにして、第2回転軸12を回転させて、被加工物5の側面を一対の第2移動口金22a,22bで締め付ける。これにより、一対の第2移動口金22a,22bが強い力で被加工物5をY軸方向から把持した状態となる。
【0064】
図8Aに前述した図1を加えて参照すると、第1回転軸11を回転させると、被加工物5のX軸方向の両側の側面に一対の第1移動口金21a,21bが当接する。これにより、被加工物5が一対の第1移動口金21a,21bによってX軸方向から把持される。
【0065】
このとき、被加工物5を一対の第2移動口金22a,22bで保持しただけでは、第2回転軸12の第1、第2軸部12a,12bのねじ部のガタの分だけ第2移動口金22a,22bの連結部22zが水平方向に動くことになる。
【0066】
第2回転軸12のねじ部が第2移動口金22aのねじ穴にスムーズに嵌め込まれるように、「おねじ」と「めねじ」の有効径に差をつけているため、ねじのガタが生じる。ねじのガタが生じていると、第2回転軸12と連結された第2移動口金22a,22bの連結部22zが動き、保持精度が悪化するため、ねじのガタのよる第2移動口金22a,22bの動きを止める必要がある。
【0067】
本実施形態では、上記した図7Bで示したように、第2回転軸12の第1軸部12aの第1継手Cxと第2軸部12bの第2継手Cyとは分離できる状態で結合している。
【0068】
図8Bに注目すると、一対の第2移動口金22a,22bが被加工物5を把持して締め付ける際に、被加工物5からの反力により第2移動口金22a,22bの連結部22z(図1)に外側に押圧する力がかかる。
【0069】
このため、第2移動口金22a,22bに連結された第2回転軸12の第1軸部12aと第2軸部12bとが分離して両者が外側水平方向に移動して離れる。これにより、第2回転軸12の第1軸部12aの第1継手Cxと第2軸部12bの第2継手Cyとの間に隙間H2が生じた状態となる。このとき、第2回転軸12の第1継手Cxと第2継手Cyとは、回転方向に互に押し合いながら離れ、第2継手Cyの凹部Bの一方の傾斜面Sと第1継手Cxの凸部Aとが線状に当接する線あたり、または面あたりとなる。
【0070】
第2回転軸12の第1軸部12aの第1継手Cx及び第2軸部12bの第2継手Cyの各接触面E1,E2が第2支持体32の内壁Wにそれぞれ当接して止まる。これにより、第2回転軸12のねじ部のガタによる第2移動口金22a,22bの動きを止めることができる。
【0071】
このとき、第2移動口金22a,22bの連結部22zが外側にわずかに移動するが、第2移動口金22a,22bの上部での強い締め付けによって被加工物5を把持装置1内の中心位置に保持することができる。
【0072】
以上のように、一対の第2移動口金22a,22bで被加工物5を締め付けると、第2移動口金22a,22bの連結部22zに外側に向けた力がかかるため、第1軸部12aと第2軸部12bとの継手部C2が外側に押し広がる。これにより、一対の第2移動口金22a,22bがそれぞれ外側に移動し、第1支持体31の内壁Wに当接することで固定される。
【0073】
このように、実施形態の把持装置1は、回転軸(締めねじ)を締め込む際に、回転軸が中心で軸方向に分かれて離れる構造を有する。これにより、一対の移動口金で被加工物を押える際に、一対の移動口金が逆ハの字型に広がることが防止され、移動口金で被加工物を精度よく保持することができる。
【0074】
本実施形態と違って、回転軸が一体的に繋がる一本の棒部材の場合は、回転軸が外側に動けないため、ねじのガタによる移動口金の動きを止めることは困難である。
【0075】
X軸方向の第1回転軸11の第1軸部11a及び第2軸部11bにおいても、第1軸部11aの第1継手Cxと第2軸部11bの第2継手Cyとが軸方向に分離されている。このため、前述した原理と同様に、ねじのガタによる第1移動口金21a,21bの動きを止めることができる。
【0076】
図9Aは、実施形態の把持装置1の第2移動口金22aを示す部分断面図である。図9Aに示すように、第2移動口金22aの本体部22xは側面に連結された保持部材22hを備えている。保持部材22hの外面が保持面Sxとなっており、保持面Sxが被加工物5に当接する。保持部材22hは第2移動口金22aの本体部22xよりも硬度が高い金属部材から形成される。
【0077】
保持部材22hの背面に設けられた凸部Axが本体部22xの凹部Bxに篏合して連結されている。保持部材22hの凸部Axは基端から先端になるにつれて幅が広くなる逆テーパー形状で形成される。保持部材22hと本体部22xとが接する結合面Syは、上端から下端に向かって内側から外側に傾斜する傾斜面となっている。
【0078】
図9Aの部分拡大断面図に示すように、第2移動口金22aの保持部材22hの保持面Sxに表面から内部に向けて複数のスリット22sが形成されている。複数のスリット22sは、保持部材22hの保持面Sxを垂直方向(第3方向)に分割するように配置される。
【0079】
各スリット22sは保持部材22hの保持面Sxの横方向の全体に繋がって形成されている。あるいは、各スリット22sは保持部材22hの保持面Sxの横方向に分割されて配置されていてもよい。
【0080】
スリット22sは、奥側から表面の開口端側になるにつれて高さ位置が低くなるように下側に傾斜して形成されている。
【0081】
図1のもう一方の第2移動口金22bにおいても、保持面に同様なスリット22sが設けられる。さらに、図1のX軸方向の一対の第1移動口金21a,21bの保持面にも同様なスリット21sが設けられる。
【0082】
図9Bに示すように、保持面Sxにスリット22sが設けられた第2移動口金22aで被加工物5を把持すると、スリット22sが内部から下側に向けて傾斜しているため、被加工物5を下側に押さえる力が働く。これにより、第2移動口金22a,22bからの被加工物5の抜けが防止される。
【0083】
図10には、図1の実施形態の把持装置1を使用して、一対の第1移動口金21a,21b及び一対の第2移動口金22a,22bにより、4方向から被加工物5を把持した様子を平面からみた様子が示されている。4方向とは、図10の例では、X軸方向の2方向と、Y軸方向の2方向とからなる。
【0084】
例えば、図10で例示された把持装置1では、まず、X軸方向の一対の第1移動口金21a,21bで被加工物5を軽く締め、X軸方向の中心位置で被加工物5を把持する。次に、Y軸方向の一対の第2移動口金22a,22bでX軸方向からの締めよりもきつめに締め込む。その後に、X軸方向の一対の第1移動口金21a,21bとY軸方向の一対の第2移動口金22a,22bとにより同時に被加工物5を本締めする。
【0085】
次いで、Y軸方向の一対の第2移動口金22a,22bで被加工物5を本締めする、その後に、X軸方向の一対の第1移動口金21a,21bで被加工物5を本締めする。
【0086】
このように、被加工物5を4方向から把持することにより、繰り返して被加工物5を把持装置1に配置する際に、常にX軸方向及びY軸方向の同じ位置で保持することができ、繰り返し位置決め精度の再現性が高くなる。
【0087】
実施形態の把持装置1は4方向から被加工物5を強固に保持し、被加工物5の高い位置精度が得られる。このため、3軸、5軸などの加工機用の高精度なマシンバイスとして使用することができる。マシンとしては、フライス盤、研磨機、マシニングセンタ、旋盤、放電加工機、ワイヤ放電加工機、又は、測定器などがある。
【0088】
変形例として、前述した図1のベース部材40の天部材46が外周から中心に向けて下側に傾斜する傾斜面となって形成されてもよい。
【0089】
これにより、第1移動口金21a,21b及び第2移動口金22a,22bで被加工物5を締め付けるにつれて、被加工物5が下側に向けて強固に保持される。よって、加工時に被加工物5が回転したり、傾斜したりしても、被加工物5の抜けが防止される。
【0090】
図10の例では、被加工物5として、上方からみて円形の円柱体の部材を例示しているが、上方からみて四角形の立方体や直方体などの各種形状の部材を使用することができる。
【0091】
図11には、実施形態の把持装置1が備える調整スペーサ50が示されている。図11では、ベース部材40の天部材46の領域が部分的に示されている。図11に示すように、調整スペーサ50は被加工物5とベース部材40との間に配置され、被加工物5の高さ位置を調整するために配置される。ベース部材40の天部材46には開口穴46xが形成されている。開口穴46xは、天部材46の表面から厚みの途中まで形成されている。
【0092】
調整スペーサ50は、ベース部材40の上面に設けられた開口穴46xに挿入可能な突出ピン52を下面側に備えている。調整スペーサ50の突出ピン52をベース部材40の開口穴46xに挿入し、ベース部材40の上に調整スペーサ50を配置する。
【0093】
実施形態の把持装置1が、5軸加工機で使用されるマシンバイスとして使用される例について説明する。5軸加工機は、直線軸(X軸、Y軸、Z軸)の3軸に回転軸を2軸追加した機械であり、より柔軟な加工を行うことができる。回転軸を追加することにより、一回の段取りで被加工物の多くの部分を加工することができる。
【0094】
5軸加工機では、把持装置が固定されたテーブルが傾いた状態で動き、回転した状態で加工が行われる。このため、上記した調整スペーサ50をベース部材40の上に単に置いた状態で使用すると、第1移動口金21a,21bと第2移動口金22a,22bとの間の領域から調整スペーサ50が飛んで落下するおそれがある。
【0095】
実施形態の把持装置1では、調整スペーサ50の突出ピン52をベース部材40の開口穴46xに挿入し、調整スペーサ50を被加工物5で押さえて固定している。
【0096】
これにより、実施形態の把持装置1では、傾いた状態で回転しても、調整スペーサ50の突出ピン52がベース部材40に結合されているため、落下するおそれがない。高さの異なる調整スペーサ50を使用することにより、被加工物5の高さ位置を容易に調整することができる。
【0097】
被加工物5の側面の高さ方向の全体に第1移動口金21a,21b及び第2移動口金22a,22bが配置される構造では、加工機のヘッドユニットが第1移動口金21a,21b及び第2移動口金22a,22bに当たって邪魔になる。このため、被加工物5を把持装置1から上側に突出させて把持する要求がある。
【0098】
あるいは、調整スペーサ50を使用する必要がない場合は、被加工物5を把持装置1のベース部材40の上に直接配置してもよい。
【0099】
図12は、実施形態の第1変形例の把持装置の対向する一対の口金の様子を模式的に示す断面図である。図12に示すように、第1変形例の把持装置1aでは、前述した図1の対向口金である第1移動口金21bを第1固定口金21fとしてもよい。
【0100】
第1固定口金21fは、ベース部材40と一体的に形成され、ベース部材40に対し固定されている。図12では、第1固定口金21fに繋がる部分のベース部材40のみが示され、その他の領域は省略されている。第1回転軸11の一端側に第1移動口金21aがねじ込まれる。第1回転軸11の他端側は、図示しないベアリングを介してベース部材40に支持される。第1回転軸11は一体的に繋がる一本の棒部材で形成される。第1回転軸11を回すことにより、第1移動口金21aのみが被加工物5側に移動し、第1固定口金21fは移動しない構造になっている。同様に、前述した図1の対向口金である第2移動口金22bをベース部材40に対し固定された第2固定口金としてもよい。
【0101】
このように、X軸方向に配置された第1移動口金21a及び第1固定口金21fと、Y軸方向に配置された第2移動口金22a及び第2固定口金とにより、4方向から被加工物5を把持してもよい。あるいは、X軸方向及びY軸方向のいずれか一方に移動口金及び固定口金を配置し、2方向から被加工物5を把持してもよい。
【0102】
図13は実施形態の第2変形例の把持装置を示す平面図である。図13に示すように、第2変形例の把持装置1bでは、Y軸方向の一対の移動口金22a,22bは、本体部22xに繋がる基部23aと、基部23aから被加工物5側に延びる複数の連結バー23bと、連結バー23bの先端に繋がる把持部23cとをそれぞれ備えている。
【0103】
基部23aは、本体部22xと同じ方向に延びて形成され、被加工物5側に湾曲している。基部23aと本体部22xとの間に開口部が配置されている。また、把持部23cは基部23aと同じ方向に延びて形成されている。基部23aと把持部23cとが複数の連結バー23bで繋がることで、基部23aと把持部23cとの間に複数の開口部が配置されている。
【0104】
第2変形例の把持装置1bでは、移動口金22a,22bの基部23aが弓状に湾曲しているため、把持部23cが被加工物5に当接すると、連結バー23bから受ける力によって基部23aが弾性変形する。このため、被加工物5と移動口金22a,22bの把持部23cとが平行でない場合であっても、移動口金22a,22bが弾性変形することにより、被加工物5と移動口金22a,22bとの間のずれが解消される。
【0105】
他の態様としては、移動口金22aを一方の本体部22xに直列に2個連結し、移動口金22bを他方の本体部22xに直列に2個連結し、一対の移動口金22aと移動口金22bからなる組み合わせを二組形成してもよい。二組の移動口金22aと移動口金22bがそれぞれ被加工物を把持することによって、2つの被加工物を把持することができる。さらに、2つの被加工物の間に後述する位置合わせブロックを配置してもよい。
【0106】
第2変形例の把持装置1bは、Y軸方向の移動口金22a,22b以外の要素は、前述した図10の把持装置1と同じである。
【0107】
次に、実施形態の把持装置1を加工機のステージの中心位置に位置合わせする方法について説明する。図14Aは実施形態の把持装置に適用される位置合わせブロック60を示す斜視図である。位置合わせブロック60は、加工機(不図示)が備えていてもよいし、独立した位置合わせ機構の一部であってもよい。図14Aに示すように、位置合わせブロック60は、ブロック本体62と、ブロック本体62の上面に連結された連結部材64とを有し、連結部材64の中にばね機構66が設けられている。位置合わせブロック60は、ばね機構66を介して加工機に連結される。
【0108】
ブロック本体62は、直方体に類似した形状を有し、直方体の下部に4つの傾斜面62sが形成されている。ブロック本体62の4つの傾斜面62sは、4つの側面の途中から内部に向けてそれぞれ傾斜している。位置合わせブロック60の4つの傾斜面62sが形成された逆四角錐台からなる部分が連結部62aとなっている。
【0109】
位置合わせブロック60の位置が加工機のステージの中心位置に対応するように、位置合わせブロック60は位置決めされている。位置合わせブロック60はばね機構66を備えているため、位置合わせブロック60を後述する位置決め部品に嵌め込む際に、衝撃を緩衝させることができる。
【0110】
図14Bは、把持装置に位置合わせ部品が配置された様子を示す平面図である。図14Bに示すように、把持装置1で被加工物を把持して加工する前に、把持装置1に位置合わせ部品70が配置される。位置合わせ部品70は、把持装置1の一対の第1移動口金21a,21bと一対の第2移動口金22a,22bにより把持されて固定される。
【0111】
位置合わせ部品70は、中央主要部に長方形の凹部72を有し、凹部72は上端から底面72aに向かって外側から内側に傾斜する4つの傾斜面72sと底面72aとから形成される。位置合わせ部品70の凹部72は、上記した位置合わせブロック60の連結部62aに対応する形状で形成される。このように、実施形態の位置合わせ機構は、把持装置1に配置される凹部72を備えた位置合わせ部品70と、位置合わせ部品70の凹部72に連結される連結部62aを備えた位置合わせブロック60とを有する。
【0112】
図15に示すように、位置合わせ部品70を把持した把持装置1が加工機のステージ(不図示)の上に配置される。さらに、上記した図14Aの位置合わせブロック60の連結部62aが位置合わせ部品70の凹部72に嵌め込まれて連結される。図15の位置合わせ部品70及び第1移動口金21a,21bは図14BのX-Xに沿った断面に相当する。
【0113】
このとき、把持装置1が加工機のステージの中心位置から位置ずれしている場合、位置合わせブロック60の連結部62aの先端角部が位置合わせ部品70の凹部72の傾斜面72sに当接し、傾斜面72sを滑って下側の底面72aに配置される。
【0114】
これにより、位置ずれして配置された把持装置1は、位置合わせブロック60の基準位置にセルフアライン的に移動して、加工機のステージの中心位置に位置合わせされる。また、位置合わせブロック60は連結部材64にばね機構66が設けられているため、位置合わせブロック60を位置合わせ部品70に嵌め込む際に、位置合わせブロック60及び把持装置1にかかる衝撃を緩衝させることができる。
【0115】
このようにして、位置合わせブロック60を把持装置1に固定された位置合わせ部品70に嵌め込むことにより、把持装置1を加工機のステージの中心位置に正確に配置することができ、繰り返し位置決め精度の再現性も高くなる。
【0116】
次に移動口金の変形例について説明する。図16は、変形例に係る第1移動口金74を示す斜視図である。図16には1個の第1移動口金74を示しているが、図1における第1移動口金21a,21bに適用することができる。第1移動口金74は、本体部75と、中間部材76と、保持部材77とを備える。本体部75は、Z軸方向に長い略直方体の部材であり、下部に第1ガイド部G1に嵌る連結部78が一体に設けられている。連結部78には、第1回転軸11がねじ込まれる雌ねじ79が形成されている。雌ねじ79の中心軸は、X軸方向に平行に配置されている。
【0117】
本体部75のX軸に交差する表面の上部に、中間部材76を介して保持部材77が設けられている。中間部材76は、略直方体の部材であり、背面80に設けられた凸部81が本体部75の凹部82に嵌合して連結されている。保持部材77は、連結機構83を介して中間部材76の前面84に設けられている。連結機構83は、円柱状の凸条85と、凸条85が収容される凹溝86とを有する。
【0118】
図16の場合、保持部材77の背面87のZ軸方向の中央に基端が接続された板状の突出部88が設けられており、当該突出部88の先端に凸条85が設けられている。中間部材76の前面84に、Y軸方向に延びる開口89が形成されており、当該開口89の奥に凹溝86が一体に形成されている。開口89のZ軸方向の長さは、突出部88の厚さより長く形成されている。凸条85及び凹溝86は、中心軸83AがY軸方向に平行に配置されている。連結機構83は、凸条85及び凹溝86をY軸方向にスライドさせ、凸条85を凹溝86に嵌めることによって、回転可能に連結される。保持部材77の背面87と、中間部材76の前面84の間には、所定の隙間が形成されている。突出部88と開口89の間には、所定の隙間が形成されている。
【0119】
図17に示すように、保持部材77は、凸条85及び凹溝86の中心軸83Aに対して、突出部88が開口89の表面に接触するまでの範囲内で、本体部75に対し回転可能である。第1移動口金74は、被加工物を把持する際、下部である連結部78に第1回転軸11からX軸方向内側の力が、上部である保持部材77に被加工物から受ける反力としてX軸方向外側の力が、同時に生じる。このため、第1移動口金74は、被加工物を把持した際、Y軸方向からみて逆ハの字形(図17中、矢印方向)に変形する場合がある。
【0120】
連結機構83を有していない移動口金が逆ハの字形に変形すると、保持部材が被加工物を持ち上げてしまうので、被加工物の高さ方向(z軸方向)の位置がずれてしまう。
【0121】
これに対し本変形例に係る第1移動口金74が逆ハの字形に変形した場合、被加工物から受ける反力によって保持部材77の前面90のZ軸方向下側がX軸方向の外側に押され、当該保持部材77が、中心軸83Aに対して回転する。保持部材77が回転することによって、前面90が被加工物の表面に沿ってZ軸方向に平行に保持され、均一に被加工物に接触するので、高さ方向の位置をずらさずに被加工物を把持することができる。
【0122】
本変形例の場合、連結機構83は、凸条85を保持部材77に設け、凹溝86を中間部材76に設ける場合について説明したが、本発明はこれに限らず、保持部材77に凹溝86を設け、中間部材76に凸条85を設けることとしてもよい。
【0123】
本変形例の場合、保持部材77の前面は、スリット22S(図9)が設けられていないが、本発明はこれに限らず、保持部材77の前面90にスリット22Sを設けてもよい。
【0124】
本変形例の場合、保持部材77は、中間部材76を介して本体部75に設けられている場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、図18に示すように、保持部材77は連結機構83を介して本体部75に設けられてもよい。本体部75は、保持部材77に対向する前面91に凹溝86が設けられている。当該凹溝86及び凸条85をY軸方向にスライドさせ、凸条85を凹溝86に嵌めることによって、保持部材77を本体部75に、回転可能に連結することができる。
【0125】
連結機構83を第1移動口金74に設けた場合について説明したが、第2移動口金に設けてもよい。第2移動口金は、被加工物と対向する面の面積がX軸方向に配置される第1移動口金74よりも大きく設定されている点が異なるが、図16図18と同様に、連結機構83を設けることによって、上記変形例と同様の効果を得ることができる。この場合、第2移動口金の保持部材は、第1方向に平行な中心軸に対し回転可能な連結機構を介して本体部に設けられる。
【符号の説明】
【0126】
1…把持装置、5…被加工物、11…第1回転軸、11a,12a…第1軸部、11b,12b…第2軸部、12…第2回転軸、21a,21b…第1移動口金、21x,22x…本体部、21y,22z,62a…連結部、21f…第1固定口金、22a,22b…第2移動口金、22h…保持部材、22y…レール結合部、22s…スリット、31…第1支持体、31c…キャビティ、31g…溝、31a…下側部材、31b…上側部材、31x…貫通穴、32…第2支持体、32a…位置決め用穴、32x…貫通穴、33…ねじ穴、40…ベース部材、42…底部材、44…側部材、46…天部材、46x…開口穴、50…調整スペーサ、52…突出ピン、60…位置合わせブロック、62…ブロック本体、62a…連結部、62s,72s…傾斜面、64…連結部材、66…ばね機構、70…位置合わせ部品、72…凹部、72a…底面、A,Ax…凸部、B,Bx…凹部、C1,C2…継手部、Cx…第1継手、Cy…第2継手、D1,D2…連結面、E1,E2…接触面、G1…第1ガイド部、G2…第2ガイド部、G2x…レールガイド部、G2y…開口ガイド部、H1,H2…隙間、S…側面、Sx…保持面、Sy…結合面
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