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特許7398114親水性の違いを利用したスフェロイドの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】親水性の違いを利用したスフェロイドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20231207BHJP
   C12N 5/07 20100101ALI20231207BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALN20231207BHJP
   C12N 5/074 20100101ALN20231207BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALN20231207BHJP
   C12N 5/095 20100101ALN20231207BHJP
   A61L 27/38 20060101ALN20231207BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
C12N5/07
C12N5/0735
C12N5/074
C12N5/0775
C12N5/095
A61L27/38
A61L27/38 111
A61L27/38 300
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020530293
(86)(22)【出願日】2019-07-11
(86)【国際出願番号】 JP2019028377
(87)【国際公開番号】W WO2020013345
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2018131645
(32)【優先日】2018-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 <1> ▲1▼ウェブサイトの掲載日 令和元年(2019年)5月5日 ▲2▼ウェブサイトのアドレス https://www.hindawi.com/journals/sci/2019/8469012/ ▲3▼公開者 陳 凱(Kai Chen)、李 憲起(Xianqi Li)、李 ■(Ni Li)、董 宏偉(Hongwei Dong)、張 以鳴(Yiming Zhang)、芳澤 享子、各務 秀明 ▲4▼公開された発明の内容 陳 凱、李 憲起、李 ■、董 宏偉、張 以鳴、芳澤 享子及び各務 秀明が、上記アドレスのウェブサイトで公開されたStem Cells International Volume 2019,Article ID 8469012にて、各務 秀明及び李 憲起が発明した、「マウス緻密骨由来細胞から形成された自発的スフェロイドは高い分化能を持つ優れた幹細胞を有する」(Spontaneously Formed Spheroids from Mouse Compact Bone-Derived Cells Retain Highly Potent Stem Celle with Enhanced Differentiation Capability)について公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 <2> ▲1▼ウェブサイトの掲載日 令和元年(2019年)6月24日 ▲2▼ウェブサイトのアドレス https://doi.org/10.1186/s13287-019-1283-0 ▲3▼公開者 李 ■(Ni Li)、李 憲起(Xianqi Li)、陳 凱(Kai Chen)、董 宏偉(Hongwei Dong)、各務 秀明 ▲4▼公開された発明の内容 李 ■、李 憲起、陳 凱、董 宏偉及び各務 秀明が、上記アドレスのウェブサイトで公開されたStem Cell Research & Therapy(2019)10:184にて、各務 秀明及び李 憲起が発明した、「口腔粘膜由来細胞から形成された自発的スフェロイドの特性評価と皮膚由来細胞によるスフェロイドとの比較」(Characterization of spontaneous spheroids from oral mucosa-derived cells and their direct comparison with spheroids from skin-derived cells)について公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 <3> ▲1▼ウェブサイトの掲載日 平成30年(2018年)8月31日 ▲2▼ウェブサイトのアドレス http://www2.convention.co.jp/termis-wc2018/program.html ▲3▼公開者 李 ■(Ni Li)、李 憲起(Xianqi Li)、陳 凱(Kai Chen)、董 宏偉(Hongwei Dong)、芳澤 享子、各務 秀明 ▲4▼公開された発明の内容 李 ■、李 憲起、陳 凱、董 宏偉、芳澤 享子及び各務 秀明が、上記アドレスのウェブサイトで公開された第5回国際組織工学・再生医療学会 世界会議2018-京都(5th TERMIS World Congress‐2018 Kyoto,Japan)にて、各務 秀明及び李 憲起が発明した、「マウスの口腔粘膜細胞からのスフェロイドの特性分析」(Characteristic analyses of spheroids from oral mucosal cells in mice)(演題番号:02-P247)について公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 <4> ▲1▼ウェブサイトの掲載日 平成30年(2018年)8月31日 ▲2▼ウェブサイトのアドレス http://www2.convention.co.jp/termis-wc2018/program.html ▲3▼公開者 陳 凱(Kai Chen)、李 憲起(Xianqi Li)、李 ■(Ni Li)、董 宏偉(Hongwei Dong)、芳澤 享子、各務 秀明 ▲4▼公開された発明の内容 陳 凱、李 憲起、李 ■、董 宏偉、芳澤 享子及び各務 秀明が、上記アドレスのウェブサイトで公開された第5回国際組織工学・再生医療学会 世界会議2018-京都(5th TERMIS World Congress‐2018 Kyoto,Japan)にて、各務 秀明及び李 憲起が発明した、「マウスの緻密な骨由来細胞からのスフェロイドの生成と分析」(Generation and analysis of spheroid from mouse compact bone-derived cells)(演題番号:02-P248)について公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 <5> ▲1▼開催日 平成30年(2018年)9月6日 ▲2▼集会名、開催場所 第5回国際組織工学・再生医療学会 世界会議2018-京都国立京都国際会館 ▲3▼公開者 李 ■(Ni Li)、李 憲起(Xianqi Li)、陳 凱(Kai Chen)、董 宏偉(Hongwei Dong)、芳澤 享子、各務 秀明 ▲4▼公開された発明の内容 李 ■、李 憲起、陳 凱、董 宏偉、芳澤 享子及び各務 秀明が、第5回国際組織工学・再生医療学会 世界会議2018-京都(5th TERMIS World Congress‐2018 Kyoto,Japan)にて、各務 秀明及び李 憲起が発明した、「マウスの口腔粘膜細胞からのスフェロイドの特性分析」(Characteristic analyses of spheroids from oral mucosal cells in mice)(演題番号:02-P247)について公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ▲1▼開催日 平成30年(2018年)9月6日 ▲2▼集会名、開催場所 第5回国際組織工学・再生医療学会 世界会議2018-京都国立京都国際会館 ▲3▼公開者 陳 凱(Kai Chen)、李 憲起(Xianqi Li)、李 ■(Ni Li)、董 宏偉(Hongwei Dong)、芳澤 享子、各務 秀明 ▲4▼公開された発明の内容 陳 凱、李 憲起、李 ■、董 宏偉、芳澤 享子及び各務 秀明が、第5回国際組織工学・再生医療学会 世界会議2018-京都(5th TERMIS World Congress‐2018 Kyoto,Japan)にて、各務 秀明及び李 憲起が発明した、「マウスの緻密な骨由来細胞からのスフェロイドの生成と分析」(Generation and analysis of spheroid from mouse compact bone-derived cells)(演題番号:02-P248)について公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】591248348
【氏名又は名称】学校法人松本歯科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】各務 秀明
(72)【発明者】
【氏名】李 憲起
【審査官】牧野 晃久
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-304866(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0075126(KR,A)
【文献】特開2017-163898(JP,A)
【文献】特開2010-022366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 3/00- 3/10
C12N 5/00- 5/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞の接着が阻害されるように表面が加工又は処理された培養容器を用いて細胞を培養することにより自発的にスフェロイドを形成させることを特徴とする、自発的スフェロイドの形成方法であって、当該培養容器が、1μlの超純水滴による水接触角が85°~95°の範囲となる条件を満たすように培養底面の粗さを有し、かつ、2.400nm~2.500nmの二乗平均表面粗さを有するものである、前記方法
【請求項2】
1μlの超純水滴による水接触角が89°~91°である、請求項に記載の方法。
【請求項3】
細胞の接着が阻害されるように表面が加工又は処理された培養容器が、ポリスチレン製又はガラス製であり、かつ底面がフッ素含有ポリマーによるコーティングがされていない、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
細胞が体性幹細胞、胚性幹細胞、間葉系幹細胞、又は癌幹細胞若しくは腫瘍由来細胞を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の方法により形成された自発的スフェロイドを回収することを特徴とする、自発的スフェロイドの製造方法。
【請求項6】
1μlの超純水滴による水接触角が85°~95°の範囲となる条件を満たすように培養底面の粗さを有し、かつ、2.400nm~2.500nmの二乗平均表面粗さを有する培養容器。
【請求項7】
1μlの超純水滴による水接触角が89°~91°である請求項に記載の培養容器。
【請求項8】
ポリスチレン製又はガラス製であり、かつ底面がフッ素含有ポリマーによるコーティングがされていない、請求項6又は7に記載の培養容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性の違いを利用したスフェロイドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、幹細胞に基づく細胞医療(細胞治療)及び再生医療は、様々な医療及び歯科分野で広く使用されているため、ますます魅力的になっている(1~5)。しかし、体性幹細胞に関する我々の理解は依然として限られている。体性幹細胞を理解することが困難である1つの理由は、in vivo環境とin vitro環境との間で特徴的な変化を有するからである。従来、in vivoでは体性幹細胞の維持を支持するが、細胞抽出及び培養環境(in vitro)では失われるニッチの存在が信じられてきた。大部分の細胞培養は培養プレート上で二次元培養を利用するが、これは幹細胞と環境との間の複雑な相互作用を模倣することができないだけでなく(6)、幹細胞の天然の表現型も変化させてしまう(7~9)。
【0003】
スフェロイド培養は三次元(3D)培養法の1つであり、1940年代に早くも知られていた(10)。従来の二次元(2D)培養と比較して、スフェロイド培養はin vivoでより密接に増殖すると考えられる(10、11)。より最近では、神経幹細胞のための新規な選択的培養方法として、スフェロイド培養が非常に注目を集めている(12)。その後、この培養技術は、皮膚(13)、唾液腺(14)、及び間葉幹細胞(15)を含む多くの他のタイプの体細胞幹細胞の選択的培養に有効であることが証明されている。研究の大部分はスフェロイド培養が強力な体性幹細胞の選択的培養であり、それが幹細胞の治療能力を高めることができることを示した(11)。
【0004】
スフェロイドは広く使用されているにもかかわらず、スフェロイドを生成する方法についてのコンセンサスはない。さらに、スフェロイド形成に影響を及ぼす基本的なメカニズムも、十分に理解されていない。
大まかには、体性幹細胞のスフェロイドを生成するための3つの主要な方法が存在する。
最も伝統的な手法は、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、上皮成長因子(EGF)及びB27(16)などのいくつかの重要な因子と共に、無血清環境下で組織から解離した単細胞を培養する方法である。この方法は、ディッシュに付着することなく生存することができ、また増殖して細胞凝集体を形成することができる細胞を選択する方法である。このアプローチは幹細胞集団を選択するのに合理的であると思われるが、細胞のほとんどがディッシュに付着するか、又はディッシュに付着することなく増殖しないので、通常、効率が非常に低かった。
【0005】
第2の方法は、動的細胞培養法に基づくものであり、細胞を回転フラスコ中で培養するか、又は培地を撹拌して、機械的方法を用いてフラスコへの細胞付着を回避するというものである(17)。また、第3の方法は、非接着性逆円錐形培養ウェル、又はゲルコートディッシュを使用して、重力を利用するハンギングドロップ培養などにおいてスフェロイドを形成する培養法である(18)。自発的に形成されたスフェロイドを選択的に培養する第1の方法と比較して、第2及び第3の培養方法は、理論的には選択なしに単に細胞凝集体を形成する。従って、これら2つの異なるタイプのスフェロイドは、自発的に形成されたスフェロイド及び機械的に形成されたスフェロイドとして定義する。
ところで、スフェロイド形成に関する発明について、例えば、細胞培養面のアルブミン吸着量や静的水接触角が所定量又は範囲内の接着性細胞培養用基材などが知られている(特開2017-077240号公報(特許文献1)及び特開2017-077241号公報(特許文献2)等)。
しかしながら、上記基材は表面コーティングが行われており、当該基材を用いてスフェロイドが形成されるか否かは不明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-077240号公報
【文献】特開2017-077241号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Joseph P.McGuirk,et al.,J.Robert Smith,Clint L.Divine,Micheal Zuniga,Mark L.Weiss Wharton’s Jelly-Derived Mesenchymal Stromal Cells as a Promising Cellular Therapeutic Strategy for the Management of Graft-versus-Host Disease.Pharmaceuticals(Basel)2015 Jun;8(2):196-220.
【文献】Yuriy Petrenko,Eva Sykova,Sarka Kubinova.The therapeutic potential of three-dimensional multipotent mesenchymal stromal cell spheroids. Stem Cell Res Ther.2017;8:94.Published online 2017 Apr 26.doi:10.1186/s13287-017-0558-6
【文献】Sart S,Tsai AC,Li Y,Ma T.Three-dimensional aggregates of mesenchymal stem cells:cellular mechanisms,biological properties,and applications.Tissue Eng Part B Rev.2014;20(5):365-80.
【文献】Pavo N,Charwat S,Nyolczas N,Jakab A,Murlasits Z,Bergler-Klein J,et al.Cell therapy for human ischemic heart diseases:Critical review and summary of the clinical experiences.J Mol Cell Cardiol.Elsevier Ltd;2014;75:12-24.doi:10.1016/j.yjmcc.2014.06.016[PubMed]
【文献】Malliaras K,Makkar RR,Smith RR,Cheng K,Wu E,Bonow RO,et al.Intracoronary cardiosphere-derived cells after myocardial infarction:evidence of therapeutic regeneration in the final 1-year results of the CADUCEUS trial(CArdiosphere-Derived aUtologous stem CElls to reverse ventricUlar dySfunction).J Am Coll Cardiol.2014;63:110-22.doi:10.1016/j.jacc.2013.08.724[PMC free article][PubMed]
【文献】Valente KP,Khetani S,Kolahchi AR,Sanati-Nezhad A,Suleman A,Akbari M.Microfluidic technologies for anticancer drug studies.Drug Discov Today.2017 Jul 4.pii:S1359-6446(17)30003-X.doi:10.1016/j.drudis.2017.06.010.
【文献】Pittenger M.F.,Mackay A.M.,Beck S.C.,Jaiswal R.K.,Douglas R.,Mosca J.D.,Moorman M.A.,Simonetti D.W.,Craig S.,and Marshak D.R.Multilineage potential of adult human mesenchymal stem cells.Science 284,143,1999[PubMed]
【文献】Mitchell J.B.,McIntosh K.,Zvonic S.,Garrett S.,Floyd Z.E.,Kloster A.,Di Halvorsen Y.,Storms R.W.,Goh B.,Kilroy G.,Wu X.,and Gimble J.M.Immunophenotype of human adipose-derived cells:temporal changes in stromal-associated and stem cell-associated markers.Stem Cells 24,376,2006[PubMed]
【文献】Weaver VM,Petersen OW,Wang F,Larabell CA,Briand P,Damsky C,Bissell MJ.Reversion of the malignant phenotype of human breast cells in three-dimensional culture and in vivo by integrin blocking antibodies.The Journal of cell biology.1997;137(1):231-245.[PMC free article][PubMed]
【文献】Mueller-Klieser W.Three-dimensional cell cultures:from molecular mechanisms to clinical applications.Am J Physiol.1997 Oct;273(4 Pt1):C1109-23.
【文献】Cesarz Z,Tamama K.Spheroid culture of mesenchymal stem cells.Stem Cells Int.2016;2016:9176357.
【文献】Chandrasekaran A,et al.,Avci HX,Ochalek A,Rosingh LN,Molnar K,Laszlo L,Bellak T,Teglasi A,Pesti K,Mike A,Phanthong P,Biro O,Hall V,Kitiyanant N,Krause KH,Kobolak J,Dinnyes A.Comparison of 2D and 3D neural induction methods for the generation of neural progenitor cells from human induced pluripotent stem cells.Stem Cell Res.2017 Dec;25:139-151.doi:10.1016/j.scr.2017.10.010.[PubMed]
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【文献】Srinivasan PP,Patel VN,Liu S,Harrington DA,Hoffman MP,Jia X,Witt RL,Farach-Carson MC,Pradhan-Bhatt S.Primary Salivary Human Stem/Progenitor Cells Undergo Microenvironment-Driven Acinar-Like Differentiation in Hyaluronate Hydrogel Culture.Stem Cells Transl Med.2016 Aug 18.pii:sctm.2016-0083.
【文献】Vorwald CE,Ho SS,Whitehead J,Leach JK.High-Throughput Formation of Mesenchymal Stem Cell Spheroids and Entrapment in Alginate Hydrogels.Methods Mol Biol.2018;1758:139-149.doi:10.1007/978-1-4939-7741-3_11.[PubMed]
【文献】Biernaskie JA,McKenzie IA,Toma JG,Miller FD.Isolation of skin-derived precursors(SKPs)and differentiation and enrichment of their Schwann cell progeny.Nat Protoc.2006;1(6):2803-12.[PubMed]
【文献】Montanez-Sauri SI,Beebe DJ,Sung KE.Microscale screening systems for 3D cellular microenvironments:platforms,advances,and challenges.Cell Mol Life Sci.2015 Jan;72(2):237-49.doi:10.1007/s00018-014-1738-5.[PubMed]
【文献】Dixon AR,Ramirez Y,Haengel K,Barald KF.A drop array culture for patterning adherent mouse embryonic stem cell-derived neurospheres.J Tissue Eng Regen Med.2018 Jan;12(1):e379-e383.doi:10.1002/term.2389.[PubMed]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高性能な幹細胞のスフェロイド形成方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、培養プレートの疎水性を一定に保つことにより、効率的かつ自発的にスフェロイド形成が起こることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)細胞の接着が阻害されるように表面が加工又は処理された培養容器を用いて幹細胞を培養することによりスフェロイドを形成させることを特徴とする、スフェロイドの形成方法。
(2)細胞の接着が阻害されるように表面が加工又は処理された培養容器が、疎水性を有するものである、(1)に記載の方法。
(3)疎水性を有する培養容器が、接触角が85°~95°の範囲となる条件を満たすように培養底面の粗さを有するものである、(2)に記載の方法。
(4)接触角が89°~91°である、(3)に記載の方法。
(5)細胞の接着が阻害されるように表面が加工又は処理された培養容器が、ポリスチレン製又はガラス製であり、かつ底面がフッ素含有ポリマーによるコーティングがされていない、(1)~(4)のいずれか1項に記載の方法。
(6)細胞の接着が阻害されるように表面が加工又は処理された培養容器が、2.400nm~2.500nmの二乗平均表面粗さを有するものである、(1)~(5)のいずれか1項に記載の方法。
(7)幹細胞が体性幹細胞、胚性幹細胞、間葉系幹細胞、又は癌幹細胞若しくは腫瘍由来細胞である(1)~(6)のいずれか1項に記載の方法。
(8) (1)~(7)のいずれか1項に記載の方法により形成されたスフェロイドを回収することを特徴とする、スフェロイドの製造方法。
(9)接触角が85°~95°の範囲となる条件を満たすように培養底面の粗さを有する培養容器。
(10)接触角が89°~91°である(9)に記載の培養容器。
(11)ポリスチレン製又はガラス製であり、かつ底面がフッ素含有ポリマーによるコーティングがされていない、(9)又は(10)に記載の培養容器。
(12)2.400nm~2.500nmの二乗平均表面粗さを有する、(9)~(11)のいずれか1項に記載の培養容器。
(13) (8)に記載の方法により製造されたスフェロイド。
(14)組織への分化能が(1)~(7)のいずれか1項に記載の方法を用いないで形成されたスフェロイドよりも高い、(13)に記載のスフェロイド。
(15)組織が神経又は骨である(14)に記載のスフェロイド。
(16) (13)~(15)のいずれか1項に記載のスフェロイドを含む、再生医療用材料。
(17)再生医療が、神経疾患又は骨疾患治の再生医療である(15)に記載の材料。
(18) (13)~(15)のいずれか1項に記載のスフェロイドを含む、再生医療用キット。
(19)再生医療が、神経疾患又は骨疾患治の再生医療である(18)に記載のキット。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、スフェロイドの形成方法及び製造方法が提供される。本発明によれば、特殊な培地はもとより、特殊な装置も必要とせずに、高性能な幹細胞のスフェロイドを選択的に作製することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】マウス皮膚由来細胞からのスフェロイド形成に対する表面疎水性の効果を示す図である。 A)Dishの表面にピペッティングした水滴の写真画像。B)Dish上への1μLの水滴の平均接触角。データは、平均±標準偏差(n=5-10)、***p<0.0001として示す。C)Dish1、Dish2、Dish3の表面粗さの3D像をスキャンプローブ顕微鏡で観察した。D)培養皿上のマウス皮膚由来細胞の形態変化は1,3,5日目に異なる疎水性を示した。細胞はDish1及びDish2に付着することができたが、Dish3上でのみスフェロイド形成を示した。スケールバーは、100μm(黒色)及び500μm(赤色)を表す。
図2】マウス皮膚由来細胞からのスフェロイドにおける幹細胞マーカーの発現を示す図である。 A)SSEA1、Nanog、Oct4及びSox2についての免疫蛍光染色。スケールバーは50μmである。SSEA1(B)、nanog(C)、Oct4(D)、Sox2(E)の発現の経時変化を単層培養と比較した。平均±標準偏差(P<0.05,**P<0.01,***P<0.001,n=5)で示す。
図3】異なるタイプの細胞でのスフェロイド形成能を示す図である。 皮膚由来細胞(A)、口腔粘膜由来細胞(D)、皮質骨由来細胞(E)、NIH3T3細胞(F)のスフェロイド形成。皮膚由来細胞のスフェロイド上のSSEA1(B)及びSox2(C)の免疫蛍光染色。スケールバーは、500μm(白色)及び100μm(黒色)を表す。
図4】皮膚由来細胞による自発的スフェロイド形成過程を示す図である(3時間毎に撮影)。
図5】口腔粘膜由来細胞の自発的スフェロイド培養及び平面培養を行った時のアルカリホスファターゼ染色結果を示す図である。
図6】口腔粘膜由来細胞からの自発的なスフェロイドの特徴付け。(A)特殊培養皿上の口腔粘膜由来細胞の形態学的変化。bFGF、EGFおよびB27サプリメントを含む無血清培地および無血清培地では、スフェロイド形成は観察されなかった。血清を含む培地中の細胞のみが自発的にスフェロイドを形成し、次いでそれを維持した。スケールバー=100μm(B)口腔粘膜由来細胞由来のスフェロイドにおけるSox2、SSEA1、Oct4およびNanog発現の免疫蛍光分析。ほぼすべてのスフェロイド形成細胞において陽性反応が観察された。(C)口腔粘膜由来細胞由来のスフェロイドにおけるネスチンの発現。スケールバー=50μm.DAPI:4’,6-ジアミジノ-2フェニルインドール。
図7】口腔粘膜および皮膚由来細胞からの自発的スフェロイド形成。(A)スフェロイドの位相差画像。血清を含む培地において、口腔粘膜由来細胞および皮膚由来細胞は細胞播種後24時間以内に自発的に凝集し、緻密な多細胞スフェロイドを形成する。(B)口腔粘膜および皮膚由来細胞由来のスフェロイドのサイズ。差は120時間で有意であった;n=10。(C)口腔粘膜および皮膚由来細胞由来のスフェロイドの数。有意差は120時間でのみ観察された;n=10。(D)スフェロイドのサイズに対する添加物の効果。スフェロイドのサイズはbFGF、EGFおよびB27サプリメントを含む培地ではこれらの添加物を含まない培地よりも有意に大きかった。n=20.(E)スフェロイドの数に対する添加物の効果。bFGF、EGFおよびB27サプリメントを含む培地では、これらの添加物を含まない培地よりも多数のスフェロイドが観察された。n=6.スケールバー=100μm.データを平均±SEM;*、p<0.05;***、p<0.001として示す。
図8】口腔粘膜および皮膚由来細胞のスフェロイドにおける細胞増殖およびアポトーシス。(A)口腔粘膜細胞および皮膚細胞由来のスフェロイドにおけるKi67およびカスパーゼ7の免疫蛍光。Ki67陽性細胞の数は、起源にかかわらず、添加物を含むスフェロイドでは添加物を含まないスフェロイドよりも多かった。カスパーゼ7の免疫蛍光からの結果は添加物なしの口腔粘膜スフェロイドにおいて陽性細胞を示したが、添加物含有スフェロイドにおいてはほんの少数の弱陽性細胞しか認められなかった。皮膚由来のスフェロイドは添加物を含まないスフェロイドでのみかすかな染色を示したが、添加物を含むスフェロイドでは陽性細胞は示さなかった。(B)口腔粘膜および皮膚由来細胞由来のスフェロイドにおけるKi67およびカスパーゼ7の発現をqRT-PCRを用いて分析し、添加物の有無にかかわらずスフェロイドにおけるレベルを比較した。Ki67のより高い発現は、添加物を用いた口腔粘膜スフェロイドおよび皮膚由来スフェロイドの両方において、添加物を用いない場合よりも観察された。一方、カスパーゼ7の発現は、添加物を含まないスフェロイドにおいて、添加物を含むスフェロイドよりも有意に高かった。(C)口腔粘膜由来および皮膚由来細胞のスフェロイドにおけるカスパーゼ7の発現レベルを比較した。カスパーゼ7の発現は、添加物にかかわらず、皮膚由来細胞のスフェロイドより口腔粘膜由来細胞のスフェロイドで有意に高かった。スケールバー=50μm.DAPI:4’,6-ジアミジノ-2フェニルインドール。データを平均±SEMとして示す。n=3.*,p<0.05;**,p<0.01;***,p<0.001.
図9】口腔粘膜および皮膚由来細胞のスフェロイドにおける幹細胞マーカー発現に対するbFGF、EGFおよびB27サプリメントの効果。(A)口腔粘膜由来細胞のスフェロイド中のSox2、Fut4(SSEA1)、Oct4およびネスチンの発現をqRT-PCRを用いて分析し、添加物の存在下及び非存在下で培養したスフェロイド中のレベルを比較した。(B)皮膚由来細胞のスフェロイド中のSox2、Fut4(SSEA1)、Oct4およびネスチンの発現をqRT-PCRを用いて分析し、添加物の存在下及び非存在下で培養したスフェロイド中のレベルを比較した。データを平均±SEMとして示す。n=3.*,p<0.05;**,p<0.01;***,p<0.001.
図10】口腔粘膜由来細胞および皮膚由来細胞のスフェロイド間の幹細胞マーカー発現の直接比較。(A)bFGF、EGFおよびB27サプリメントを含まない口腔粘膜および皮膚由来細胞のスフェロイドにおけるSox2、Fut4(SSEA1)、Oct4およびネスチンの発現レベルをqRT-PCRを用いて分析し、比較した。(B)bFGF、EGFおよびB27サプリメントで培養した口腔粘膜および皮膚由来細胞のスフェロイドにおけるSox2、Fut4(SSEA1)、Oct4およびネスチンの発現レベルをqRT-PCRを用いて分析し、比較した。データを平均±SEMとして示す。n=3.*,p<0.05;**,p<0.01;***,p<0.001.
図11】口腔粘膜および皮膚からのスフェロイド由来細胞の神経原性誘導。(A)スフェロイドの免疫蛍光画像。βIII-チューブリン-およびMAP2-陽性細胞は観察されなかったが、ネスチン-、NeuN-、Sox2-およびS100β-陽性細胞は口腔粘膜細胞(二次元培養)に見出された。ネスチン-、βIII-チューブリン-、MAP2-、NeuN-、Sox2-およびS100β-陽性細胞が口腔粘膜と皮膚の両方からのスフェロイド由来細胞で観察された。(B)神経細胞マーカーの発現レベルを、qRT-PCRを用いて分析した。口腔粘膜由来のスフェロイド形成細胞におけるMAP2、MBP、ネスチンおよびNurr1の発現レベルは、皮膚由来のスフェロイド形成細胞における発現レベルより有意に高かった。(C)口腔粘膜およびCBDCからのスフェロイド形成細胞におけるMAP2、MBPおよびネスチンの発現。口腔粘膜由来のスフェロイド形成細胞におけるMAP2、MBPおよびネスチンの発現レベルは、CBDC由来のスフェロイド形成細胞における発現レベルより有意に高かった。データを平均±SEMとして示す。n=3.*,p<0.05;**,p<0.01;***,p<0.001.スケールバー=50μm.DAPI:4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール。
図12】皮膚由来細胞からの自発的スフェロイドの位相差画像。継代細胞からであっても、自発的に形成されたスフェロイドの存在に注目されたい。(A)継代2代目での皮膚由来細胞からの自発的スフェロイド形成。(B)継代3代目の皮膚由来細胞からの自発的スフェロイド形成。(C)継代4代目の皮膚由来細胞からの自発的スフェロイド形成。(D)継代5代目の皮膚由来細胞からの自発的スフェロイド形成。
図13】スフェロイドの骨形成能。単層培養CBDCおよびスフェロイド由来細胞を、骨分化誘導培地中で7日間インキュベートした。ALPアッセイデータは、誘導されたスフェロイド由来細胞が誘導された単層細胞と比較して有意に増加したALP活性を有することを示した(a)。qRT‐PCRデータは、誘導スフェロイド由来細胞が骨形成関連遺伝子、例えばオステリックス、BSP、およびDMP1を統計的有意に高レベルで発現することを示した(b‐d)。データは、平均±SEMとして表す。ALPアッセイ、N=3;qRT-PCR、N=3.*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
図14】移植後4週後の組織像。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.概要
本発明は、細胞の接着が阻害されるように表面が加工又は処理された培養容器を用いて幹細胞を培養することによりスフェロイドを形成させることを特徴とする、スフェロイドの形成方法に関する。
また本発明は、接触角が85°~95°の範囲となる条件を満たすように培養底面の粗さを有する培養容器であり、当該培養容器を用いて、幹細胞を培養することを特徴とする、スフェロイドの形成方法である。
【0014】
1.概要
神経幹細胞の選択的培養の発見後、スフェロイド培養は、体細胞幹細胞の選択的培養法として認識されている。以来、様々な方法でスフェロイドが生成されることが報告されている。しかし、強力な幹細胞集団を富化することができるスフェロイドを形成するための基本的因子は何であるかは明らかではない。
【0015】
本発明者は、スフェロイド形成に際し、培養容器への細胞の接着性(付着性)に着目した。細胞の接着性は、疎水性が影響を与えることは良く知られている。しかしながら、細胞接着に影響を与える因子は疎水性以外にも表面形状などさまざまな因子がある。
そこで、本発明においては、疎水性条件に限らず、細胞接着に影響を与える条件を利用して細胞の接着性をコントロールし、これによりスフェロイドを形成させることを特徴とする。
【0016】
細胞接着に影響を与える条件は、細胞の培養容器への接着が阻害されるように、当該培養容器の表面を加工又は処理することで設定することができる。「接着が阻害される」とは、細胞の全部又は一部が培養容器に付着することが妨げられることを意味し、物理的な処理及び化学的処理のいずれも含まれる。
例えば、水の接触角(撥水性又は疎水性)に着目すると、撥水性又は疎水性によって得られる細胞の接着性の程度が、自発的スフェロイド形成のもっとも重要な要因となる。つまり、培養容器の表面が疎水性であれば非接着となるので、その程度によって細胞の接着性は変化する。従って、細胞接着性の程度によって自発的スフェロイド形成の良い形成条件が決まる。細胞の接着が阻害されるように表面が加工又は処理された培養容器を用いて幹細胞を培養することにより、スフェロイドを形成させることが可能となる。
【0017】
さらに、上記培養容器を用いてスフェロイドを形成させると、得られた自発的スフェロイドは高い分化能を有していることが示される。特に本発明においては、(i)骨由来の間葉系幹細胞には優れた骨および神経分化能があること、さらに(ii)皮膚,口腔粘膜由来の幹細胞には優れた神経分化能を有することが示された。本発明の方法で作製された皮膚および口腔粘膜の幹細胞は、本発明の方法を用いないで形成された既存の細胞(スフェロイド)、例えば既製品の骨髄由来間葉系幹細胞(例えばステミラック)よりもはるかに高い組織分化能(例えば骨分化能及び神経再生能)を有している。従って、本発明の方法は、再生医療用の優れた幹細胞調製法であるとともに、本発明の自発的スフェロイドは、再生医療、特に神経再生及び骨再生に有用な細胞源である。
【0018】
2.培養容器の表面特性
本発明において、細胞の接着が阻害されるように表面が加工又は処理された培養容器(培養プレート)としては、疎水性を有するものが挙げられる。
そこで本発明の一態様では、培養容器の表面特性、特に疎水性に焦点を当てた。マウス皮膚から、従来の二次元培養で初代培養細胞を調製し、細胞を異なる疎水性を有する培養プレートに移し、これを異なる接触角で確認した。接触角の大きさは培養面の親水性、疎水性を規定するが、本発明において使用される培養容器の底面(培養面)の接触角は、培養面(培養容器の底面)とほぼ直角であり、85°~95°の範囲である。さらに、接触角は89°~91°が好ましく、90°がさらに好ましい。上記接触角を有する細胞培養プレートのみが、スフェロイド形成を首尾よく達成することができた。
【0019】
また、スフェロイドの形成は自発的であり、効率的であり、安定であった。スフェロイド形成は、EGF、bFGF及びB27等の添加剤(因子)を全く含まない培地(10%FBS添加αMEM)で達成されたことから、スフェロイド生成過程は上記因子に依存しないと言える。
【0020】
さらに、免疫蛍光法及び定量的リアルタイムPCRを行った結果、SSEA-1、SOX-2、OCT4及びnanog等のES細胞マーカーの発現を示し、本発明の方法による強力な幹細胞集団の選択的性質を確認した。この現象は再現性があり、皮膚由来幹細胞だけでなく、口腔粘膜由来幹細胞、間葉系幹細胞及び3T3細胞にも適用可能であった。従って、本発明の方法は、上記現象のロバスト性を示すものである。
【0021】
3.培養容器の底面における接触角
本発明において使用される培養容器(培養プレート又はディッシュということもある)は、接触角が、85°から95°の範囲を有しており、例えば85°、86°、87°、88°、89°、90°、91°、92°、93°、94°、又は95°であり、好ましくは89°~91°(例えば89°、90°又は91°)、さらに好ましくは90°である。
接触角とは、静止液体の自由表面が、固体壁に接する場所で、液面と固体面とのなす角を意味する。そして、接触角は、ぬれ性を示す指標として使用され、種々の方法により測定することができる。例えば、本発明においては、θ/2法、接線法、カーブフィッティング法などが挙げられる。これらの接触角の測定法は周知である。
【0022】
本発明において使用される培養容器は、形態に特に限定はなく、例えばフラスコ、マルチウェルプレート、シャーレ(ディッシュ)等のいずれの形態であってもよい。
また、本発明において使用される培養容器の材質も限定されるものではなく、例えばポリスチレン製、又はガラス製である。
通常の培養容器には、細胞の接着性などを付与するために種々のコーティングがされているが、本発明において使用される培養容器はそのようなコーティングは不要である。例えば、培養容器の底面(培養面)がフッ素系含有ポリマーによりコーティングされていないものを用いる。さらに、培養面において、接触角が上記範囲を満たすような表面粗さ(線粗さ)を有するものであればよい。
【0023】
表面粗さは、本発明においては、JIS B 0601、JIS B 0651などのJIS規格により表される粗さをパラメータとすることができ、算術平均粗さ(Ra)、最大高さ(Rz)、二乗平均表面粗さ(Rms)などがあるが、これらに限定されるものではない。
本発明においては、これらのパラメータを単独で、又は適宜組み合わせて使用することができる。
例えば、Rmsをパラメータとした場合、本発明において使用される培養容器の培養面のRmsは、2.400nm~2.500nmである。
【0024】
4.培養法
本発明においては、上記培養プレートを用いて幹細胞を培養する。
まず、幹細胞の取得法は特に限定されるものではなく、任意の組織から採取することができる。例えば脂肪組織、骨髄、皮膚、口腔粘膜、唾液腺、歯根膜、歯髄、軟骨、臍帯、胎盤などから採取可能である。幹細胞としては、例えば体性幹細胞、胚性幹細胞、間葉系幹細胞、又は癌幹細胞若しくは腫瘍由来細胞などが挙げられる。本発明で用いる幹細胞は、ヒトを含むいずれの動物種に由来するものであってもよい。
【0025】
上記幹細胞を、ウシ胎児血清含有動物細胞培地(例えばMEM培地、DMEM培地、RPMI-1640培地等)中で通常の動物細胞培養で使用される条件、例えば37℃、5%CO、95%空気下で培養し、スフェロイドを形成させる。本発明の培養容器を用いて培養すると、細胞がコンフルエントになる前に凝集し始めて塊を自発的に形成する。
その後は、形成されたスフェロイドを、回収すればよい。このようにして作製されたスフェロイドを、本明細書において「自発的スフェロイド」と呼ぶ。
【0026】
本発明のスフェロイドは、スフェロイド形成する際に幹細胞以外の細胞を巻き込まない。すなわち、本発明のスフェロイドはほぼ幹細胞によってのみ構成されており、スフェロイド形成能を持たない細胞をほとんど含まない点が特徴である。例えば、本発明の方法により得られたスフェロイドにおいて幹細胞の占める割合は、例えば80%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上、又は99.9%以上である。従来のハンギングドロップ法等により作製されたスフェロイドは、幹細胞のほかに、分化細胞などが含まれる混合物であるため、本発明のスフェロイドは、それを構成する細胞純度が高く、幹細胞としての機能が高くなる。
幹細胞から形成されたスフェロイドの性質を特定するために、スフェロイドで固有に発現する遺伝子又は遺伝子産物をマーカーとして用いることができる。例えば、SSEA1(Fut4としても知られる)、SOX2、OCT4、Nanog、Nestinなどを、単独で、又は適宜組み合わせて使用する。
【0027】
それぞれのマーカーの発現を確認するためには、RT-PCR法、ウエスタンブロット法等を用いる。プライマーは、それぞれの遺伝子情報から設計し、通常の化学合成により得ることができる。
本発明のスフェロイドは、例えば以下の性質を有する。
組織(例えば神経や骨)への分化能が、本発明の方法を用いないで形成されたスフェロイドよりも高い。
Sox2、SSEA1、Oct4、Nanogおよびネスチンなどの幹細胞マーカーを発現する。
神経系細胞への分化誘導後に神経およびシュワン細胞に分化する能力を有する。
神経分化誘導後にドーパミン産生細胞へ分化する能力を有する.
【0028】
5.再生医療用材料
前記の通り、本発明の自発的スフェロイドは、組織への優れた分化能を有する。従って、本発明は、自発的スフェロイドを含む、再生医療用材料又は再生医療用組成物を提供する。
再生医療の対象となる組織は特に限定されるものではなく、任意の組織であるが、例えば神経及び骨などが挙げられる。
【0029】
本発明の自発的スフェロイドを神経疾患治療に使用するためには、当該スフェロイドを、それを必要とする部位(例えば脳や脊髄等の中枢神経、又は末梢神経)に移植することができる。あるいは、神経成長因子、神経栄養因子等の存在下で培養し、神経に分化させて使用することもできる。
また、本発明の自発的スフェロイドを骨疾患治療に使用するためには、当該スフェロイドを、それを必要とする部位(例えば歯槽骨の萎縮や腫瘍,嚢胞の摘出,切除後の欠損部位,難治性骨折,腫瘍切除後の骨欠損,変形性関節症における骨,軟骨欠損部位,骨粗鬆症における骨折部位)(関節を含む)に移植することができる。また,骨粗鬆症患者へ局所注射あるいは静脈から全身へ投与することで,骨密度が改善し,骨折のリスクを低くすることができる.あるいは、骨分化誘導因子(デキサメタゾン,βグリセロリン酸,アスコルビン酸,BMP等の存在下で培養し,骨芽細胞に分化させて使用することもできる。
神経及び骨以外の他の組織についても、上記と同様に処置することができる。
【0030】
6.キット
本発明は、前記自発的スフェロイド含む、再生医療用キットを提供する。自発的スフェロイドの単位キットあたりの量は任意でよく、適宜調製することができる。再生医療の対象は、前記と同様である。
本発明のキットには、培養容器、分化因子、緩衝液、培養液、使用説明書などを含めることができる。
【実施例
【0031】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
[実施例1]
【0032】
スフェロイド形成に影響を及ぼし得る種々の因子を明らかにするために、細胞培養プレートの接着性の効果に焦点を当てた。疎水性が細胞付着に影響を及ぼすことはよく知られている(19)。そこで、スフェロイド形成に及ぼす培養プレートの疎水性の影響を調べた。
【0033】
材料及び方法
細胞培養プレートの選択とその特徴
本実施例では、疎水性を水接触角として評価するため、種々の市販の細胞培養プレートを試験した。最終的に、3つの異なる皿、すなわち、付着依存性細胞培養皿(以下、Dish1と称する)(Falcon,REF 353001及び353002,Corning Inc.)及び懸濁培養皿(以下、Dish2と称する)(NuncTM、Lot# 171099及び150340,Thermo Fisher Scientific Inc.)及び低付着表面(LAS)細胞培養プレート(以下、Dish3と称する)をさらなる分析のために選択した。
1μlの超純水滴の培養表面への接触角を、親水性(培養プレートの表面湿潤性)として、表面接触角測定機(ポータブル接触角計PCA-1、Kyowa Interface Science Co.,Ltd.)により測定した。疎水性は主に表面粗さに依存するため、2.5×2.5μm径の走査型プローブ顕微鏡(SPM)(SPM-9500J3,Shimadzu)により表面粗さを調べた。
【0034】
動物
使用した実験動物は、米国国立衛生研究所(NIH)のガイドラインに従って、松本歯科大学の実験手順のための実験動物のケア及び使用、並びに「松本歯科大学動物実験委員会」(承認番号269及び319)の承認に従って実施した。
C57BL/6Jマウス(雌、3週齢)を、Japan SLC,Inc.(Hamamatsu,Japan)から購入し、松本歯科大学ハイテクセンターの実験動物施設で維持した。これらのマウスを、制御された温度(25±2℃)及び照明(12時間の明/暗サイクル)条件下で維持した。動物を新しい環境で約1週間馴らした後、以下の実験に使用した。
【0035】
細胞の調製
皮膚由来細胞(SDC)及び口腔粘膜由来細胞(OMDC)
マウスを麻酔過剰投与により殺し、ヘアクリッパーにより毛を除去した。70%アルコールで滅菌した後、背側皮膚、並びに頬粘膜及び口蓋粘膜を採取した。初代培養細胞は、従来の外植片培養技術を用いて得た。簡単に述べると、組織切片をリン酸緩衝生理食塩水(PBS,Cat No:166-23555,Wako,Osaka,Japan)で2回洗浄し、約4mmの大きさの断片に切断した。組織を、6ウェル組織培養プレート(Falcon、製品番号353046)中のウェル表面上に分配し、そして5%CO、37℃で加湿インキュベーター中に置いた。
【0036】
組織がプレートに付着した後、10%ウシ胎児血清(FBS,Bio West,Nuaille,France)、1%ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB(Biological Industries USA,Inc.,Cromwell,CT,USA)を補充した1.5mLのαMEM(Wako,Osaka,Japan)を添加し、プレートを95%空気及び5%COの加湿インキュベーター中に37℃で置いた。培地は3日毎に交換した。
培養開始10日目に、細胞を0.25% Trypsin-EDTA(Life Technologies Japan Ltd.,Cat No:25200056,Tokyo,Japan)で37℃で2~3分間解離させた。解離した細胞を40μmセルストレーナ(Corning,Inc.,NY,USA)で濾過し、10%FBSを含むαMEMで2回洗浄し、300gで5分間4℃遠心分離した。最後に、2×10細胞を、10%FBS、1%ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンBを補充したαMEMを含有する直径60mmの細胞培養皿(Falcon,製品番号353002)にプレーティングし、5%CO、95%空気の加湿インキュベーター中で培養した。培地は2日毎に交換した。
細胞が80~90%コンフルエントになったときに、細胞を剥離した。2~3継代目の細胞を本実施例に使用した。
【0037】
緻密骨由来細胞(CBDC)
CBDCの培養は、本発明者による以前の研究(20)で報告されたプロトコールに基づいて行った。その手法は以下の通りである。
まず、大腿骨及び脛骨を注意深く切開して他の組織を取り除いた。大腿骨及び脛骨の骨端を切断し、28Gニードル付き注射器を用いて骨髄を洗い流した。0.25%コラゲナーゼ(Wako)及び20%FBSを含むPBS中で、骨を細かい断片に細断した。細断された骨チップは、上記のコラゲナーゼ溶液(13ml)を含む50ml遠心管に移し、90rpmのスピードでバイオシェーカー中で、37℃で45分間インキュベートした。次いで、細胞を70μmセルストレーナを通して回収し、4℃、300×gで5分間遠心分離した。
【0038】
細胞ペレットを回収し、10%FBS、1%ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンB、及び10ng/mlのbFGF(PeproTech,Rocky Hill,USA)を補充したαMEMで穏やかに再懸濁した。細胞懸濁液を35mm細胞培養ディッシュ(Falcon、#353001)に播種し、5%CO、95%加湿インキュベーター中で37℃で培養した。培地は3日毎に交換した。7日目に、細胞を2.5×10細胞/cmの密度で新しい培養ディッシュ中で継代培養した。3回目の継代における細胞を、その後の実験に使用した。
【0039】
NIH 3T3 cells
NIH3T3(細胞番号JCRB0615;Health Science Research Resources Bank,Osaka,Japan)細胞を、10%FBS及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンBを補充したαMEM中で培養した。培養物を、95%空気及び5%CO2の水飽和雰囲気中で37℃で維持した。細胞を3~4日毎に日常的に継代し、8~10継代の細胞を実験に使用した。
【0040】
スフェロイド形成能試験
上記のSDC、OMDC、CBDC及びNIH3T3を上記3つの異なるプレートに播種し、10%FBS、1%ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンBを同じ濃度で補充したαMEM(LAS細胞培養プレートについて1.5×10細胞/cm)中で培養した。他の研究報告(21、22)に従い、50μm径以上の細胞凝集体を形成したときに、本実施例におけるスフェロイドとした。培養3日後に新鮮な培地を加えた(ただし、培地の吸引は避けた)。スフェロイドの形成を観察し、1、3、5及び7日目に各プレートで計数した。3~5日の間に形成された一次スフェロイドを、遺伝子及びタンパク質発現研究のために使用した。
【0041】
アルカリホスファターゼ(AP)活性の検出
AP活性は、培養プレートに播種した後の3日目に試験した。細胞を4%パラホルムアルデヒドリン酸緩衝液(Wako,163-20145)で4℃で15分間固定した。固定した細胞を蒸留水中で2回洗浄し、製造業者の指示に従ってBlue-Color AP Staining Kit(SBI,https://www.systembio.com/,CA,USA)で染色した。染色像は、オリンパスIX70倒立顕微鏡(Olympus,Totyo,Japan)で撮影した。
【0042】
免疫蛍光染色
培養プレートへの播種後3日目に、細胞を4%パラホルムアルデヒドリン酸緩衝液(Wako,163-20145)で室温で15分間固定し、PBS(-)で4回洗浄し、続いてPBS中の0.5%Triton X-100,5%ウシ血清アルブミン(BSA,Nacalai Tesque,Inc.,Kyoto,Japan)及び5%正常ヤギ血清(abcam,ab7481,Cambridge,UK)で室温で30分間透過性化してブロックした。次いで、細胞を、1%BSAを含むPBS中の一次抗体と共に4℃で一晩インキュベートした。PBSで3回洗浄した後、細胞を、蛍光色素を含む適切な種特異的二次抗体と共に室温で2時間インキュベートした。細胞をPBSで3回洗浄し、次いでDAPI(ab104139,DAPI,Abcam,Cambridge,UKを含むフルオロシールドマウンティング培地)で30分間対比染色した。
【0043】
蛍光顕微鏡(Keyence,model BZ-X710,Osaka,Japan)によって画像を捕捉した。
一次抗体は以下の通りである:
マウス抗SSEA1[MC-480](1:50;ab16285,Abcam,Cambridge,UK)、
ウサギ抗Oct4-ChIPグレード(1:250;ab19857,Abcam,Cambridge,UK)、
ウサギ抗Nanog(1:100;ab80892,Abcam,Cambridge,UK)、及び
ウサギ抗SOX2(1:250,ab97959,Abcam,Cambridge,UK)。
【0044】
二次抗体は以下の通りである:
ヤギ抗マウスIgG H&L(Alexa Fluor 488)(ab150113,Abcam,Cambridge,UK)、
抗マウスIgM(Alexa Fluor 488)(ab150121,Abcam,Cambridge,UK)、及び
抗ウサギIgG H&L(Alexa Fluor 647)(ab150079,Abcam,Cambridge,UK)。
【0045】
定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)
細胞播種の12時間、1、3及び5日後に、TRIzol試薬(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA,USA)で細胞から全RNAを抽出し、製造業者のプロトコルに従ってPrimeScriptTM RT Master Mix(Perfect Real Time)(TaKaRa、Cat# RR036A)でcDNAを合成した。qRT-PCRは、Thermal Cycler Dice Real Time System蛍光定量装置(TaKaRa TP900)を用いて、SYBR(登録商標)Premix Ex TaqTM II(TaKaRa、RR820A)を用いて3回行った。RT-PCRの容量は25μlであり、2μl(2μg)cDNA、12.5μL SYBR Premix Ex Taq II(TaKaRa,RR820A)、それぞれ1μlの特異的フォワード及びリバースプライマー、並びに8.5μl滅菌水を含有する。
【0046】
qRT-PCRは、95℃で30秒間、続いて、95℃で5秒間、60℃で30秒間の40サイクル、次いで、95℃で15秒間、60℃で30秒間、95℃で15秒間の最終分離を行った。データは、2-ΔΔCt比定量により解析した。データをβ-actinレベルに対して正規化し、正規化対照値と比較した。
予想された単位複製配列のプライマーは以下の通りである:
SSEA1(Fut4としても知られる)
【0047】
【0048】
統計解析
データは、一元配置分散分析(one-way analysis of variance)(ANOVA)により分析した。有意なF比の場合、Tukeyの事後試験を行った。有意水準はP<0.05とし、他に示さない限り平均±標準偏差として示した。全てのデータは、特に示さない限り少なくとも3回の独立した実験から得た。
【0049】
結果
疎水性の異なる培養ディッシュの選択
種々の表面疎水性の影響を調べるために、種々の培養プレートの水接触角を調べたが、これは3つの培養プレートの間で変化した。3つの培養プレートの水接触角を図1Aに示す。最も一般的な培養プレート(Dish1)の水接触角は60°付近であった。非接着性プレート(Dish 2)の水接触角はほぼ75.12°であった。しかし、培養プレートの1つだけ(Dish 3)が非常に大きな接触角(90.83°)を示した。
【0050】
それぞれの培養プレートの水接触角は、同じメーカーの同じロット間で比較的安定しており、3つの培養プレート間では有意な差異があった(図1B)。水接触角の違いを理解するために、ディッシュの表面粗さをSPMを用いて評価した。画像は表面粗さの差を示し、観察された水接触角に相関した。水接触角が最も小さいDish 1は最も高い粗さを示し、水接触角が最も大きいDish 3は最も低い表面粗さを示し、水接触角が中間のDish 2は中間の表面粗さを示した(図1C)。
図1Cにおいて、表面粗さの測定結果を表1に示す。
【表1】
【0051】
皮膚由来細胞をこれらのDishに播種した場合、細胞は各Dish上で良好に増殖する。しかし、Dish 3の細胞のみが、スフェロイド生成を示した(図1D)。ディッシュ上で増殖した細胞は1日目までに徐々に細胞凝集体を形成したが、ほとんどの細胞凝集体はディッシュ上に付着したままであった。スフェロイドの形成は3日目までに明らかになり、多数のスフェロイドが培地中に浮遊していることが見出された。新しいスフェロイドの形成は、6日目以降は明白ではなかった。一方、Dish 1及びDish 2では、同じ播種密度でスフェロイドの形成は見られなかった。
【0052】
皮膚由来細胞由来のスフェロイドの特徴づけ
スフェロイド形成細胞の特性を調べるために、免疫蛍光分析を行った。スフェロイドはSSEA1、nanog、oct-4、及びsox2に対して陽性であり(図2A)、これはqRT-PCR(図2B、C、D、E)で確認された。SSEA1の発現は、細胞播種後12時間後でさえスフェロイドでより高かった(図2B)。Oct4及びSox2の発現もスフェロイドで高く、72時間までに比較的安定であった(図2C,D)。スフェロイドにおけるNanogの発現も単層の発現よりも高く、発現は72時間増加した(図2E)。
【0053】
スフェロイド形成の可能なメカニズムとその普遍性
特異的疎水性(90°水接触角は疎水性と親水性の境界線として知られている)を有するスフェロイド形成の考えられるメカニズムを調べるために、スフェロイド形成の過程を観察した(図4)。また、口腔粘膜由来細胞をスフェロイド形成培養及び平面単層培養したときのスフェロイド及び細胞のAP染色像を図5に示す。
【0054】
最初のスフェロイド形成は培養プレートの特定の部分で観察され、次いで、増殖し、そして時には、他のスフェロイド形成細胞と凝集する。時間が経過することにつれて、これらの細胞凝集体は丸くなり、より大きくなり、次いで、ディッシュから徐々に脱離する。スフェロイド形成細胞の周囲には紡錘形の線維芽細胞があり、これもまた増殖するが、スフェロイドを形成しない。このスフェロイド形成細胞の特徴を確認するために、ES細胞マーカー(SSEA-1及びSox2)の免疫蛍光をDish 3上への細胞播種後の初期段階から行った(図3A-C)。これらのスフェロイド形成細胞はSSEA1及びSox2の両方に対して陽性であり、そして非スフェロイド形成細胞は一般に、これらのES細胞マーカーに対して陰性であった。
【0055】
この現象の普遍性を調べるために、口腔粘膜由来細胞、緻密骨由来細胞(20)及びNIH‐3T3細胞を試験した。これらの細胞はすべて、Dish 3上でのみスフェロイドを形成することができたが、Dish 1及びDish 2上ではスフェロイドを形成することができず、このことは皮膚由来の細胞に限定されることなく、この現象の普遍性を確認した(図3D、E、F)。
【0056】
考察
体細胞幹細胞に対するスフェロイド培養の重要性に関する多くの刊行物があるが、単一の、一般に受け入れられているプロトコルはない。例えば、神経幹細胞培養のためのオリジナルの方法は、従来の二次元細胞培養なしで解離した細胞を利用する。スフェロイド形成は機械的移動なしに静的条件下で行い、スフェロイドは浮遊細胞のある画分から自然に形成した。より最近では、コーティングされたプレート上の細胞培養物もまた、スフェロイドを形成するために利用される。しかし、回転(23)、振盪(24)又は撹拌運動(25)を含む物理的又は機械的刺激を使用する多くの研究がある。また、重力を利用してスフェロイドを形成する方法としては、ハンギングドロップ法(26)や、特定の逆コーン形状の非付着性培養皿(27)を用いる方法などがある。全体として、これらの方法は、2つの主要なグループに分けることができる。
【0057】
自然に浮遊する細胞を使用する最初に報告された方法において、このプロセスは、「自発的なスフェロイド形成」とみなされた。そして、ある種の機械的力を用いたスフェロイド形成に基づく他の方法は、「機械的スフェロイド形成」と考えることができる。スフェロイドを形成する方法だけでなく、培地についても多様性がある。最初のスフェロイド形成培養は、添加剤(bFGF、EGF及びB27又は他の試薬)を含む無血清培養培地(DMEM/F12)を利用する(28)。一方、これらの添加剤を用いず、血清含有培地(29)を用いた刊行物がいくつかある。各研究は各方法の優越性及びこれらの添加剤の必要性を証明するいくつかの証拠を示したが、なぜこれほど多くのバリエーションがあり、スフェロイド培養に本当に必須であるのかはまだ明らかではない。さらに、これらの種々の方法で製造されたスフェロイドが同一であるか否かは明らかではない。したがって、本発明者らは非常に基本的な点、すなわち、スフェロイド形成に対する培養プレートの接着性の影響を調べることを決定した。
【0058】
これを達成するために、本発明者は2つのことに焦点を当てた。まず、疎水性は細胞接着性を反映することが知られており(30~32)、水接触角によって容易に評価できるため、培養プレートの疎水性の差に焦点を当てた。第2に、自発的スフェロイド形成と機械的スフェロイド形成を区別することを試み、自発的スフェロイド形成を達成するための必須条件を見出した。自発的スフェロイド形成は、幹細胞の選択的培養を達成するのに妥当であるように思われ、機械的スフェロイド形成はその性質のために、様々なタイプの細胞を含み得る。
【0059】
驚くべきことに、本実施例の結果は、疎水性とスフェロイド形成との間の直接的な関係を示した。スフェロイドの形成は、最も高い特定の水接触角を有するプレートでのみ観察された(図1、Dish 3)。これは、培養プレートが最も低い接着性を有することを意味する。
【0060】
時間経過画像では、少なくとも2つの集団の存在がこの培養プレート上の培養物中に認められたことを示した(図4)。1つのタイプの細胞は紡錘形であり、線維芽細胞又は典型的な間葉間質(幹)細胞のように見える。このタイプの細胞は比較的高い接着能力を有し、この皿に付着したままであり得る。もう一方のタイプの細胞は楕円形又は直方体の形状に見え、急速に移動し、細胞凝集を形成し始める。このタイプの細胞が同じタイプの細胞と接触すると、それらは付着し始めて、より大きな細胞凝集体を形成し、増殖し、スフェロイドを形成した。スフェロイドが一定の大きさになると、自然に皿から脱離し始めた。
【0061】
この段階の免疫蛍光分析(図2A)から、凝集細胞のみが幹細胞マーカーを発現し、これは凝集細胞が体性幹細胞であることを示し、他の型の細胞よりも低い接着能力を有することができ、自然発生的なスフェロイド形成を生じる。紡錘形細胞がニッチのような幹細胞の維持に何らかの特定の役割を果たしているかどうかは不明である。しかし、これらの紡錘形細胞の少なくともいくつかは、in vivo又はin vitroの一定期間で幹細胞のニッチとして作用し、幹細胞の機能を支持すると推測するのは妥当である。この場合、これらの細胞はin vivoでのニッチの「支持細胞」として、さらにはin vitroでの仮想ニッチとしてさえも指定することができ、さらに調査すべきである。
【0062】
皮膚細胞からのスフェロイド形成は既に報告されており(いわゆるSKP)(33)、神経幹細胞培養のためのオリジナルの方法に基づいた基本プロトコルである(34)。しかし、効率は非常に低く、成体組織由来の細胞ではほとんど不可能であったため、胚性皮膚組織を利用する必要があった。一方、幹細胞を有するスェロイドは、本発明者らの方法で効率的に得ることができる。
【0063】
本来の方法と本発明の方法との主な違いは細胞継代であった(SKPには培養することなく分離細胞のみを使用し、本研究では2~3継代した細胞を使用した)。さらに、SKP研究は、より高い接着性を示した通常の培養プレートを利用する。したがって、幹細胞でさえも培養皿に付着している可能性がある。著者らの研究の結果は幹細胞が従来の二次元細胞培養後も依然として残存し得ることを示し、著者らは5継代後でさえもスフェロイド形成を確認したが、効率は低下した。
【0064】
細胞の酵素的分離は容易ではなく、多数の幹細胞は完全には解離しないかもしれない。また、SKPを生成する方法は、プレートの高い接着性のために過度に厳しく、その結果、幹細胞でさえ、浮遊したままで皿に付着することができず、そのスフェロイド特性を失うことがある。
【0065】
本実施例、及び機械的刺激を用いた他の試験との比較も興味深い問題である。これを確認するために、代表的な機械的スフェロイド形成プロトコールでもあるハンギングドロップ法を用いた時間経過実験も行った。その結果、細胞凝集の間、細胞のいくつかは成長し始めて小さなスフェロイドを形成し、それらのスフェロイドのサイズは変化した。他方、多数の細胞は、スフェロイドを形成しない。これは、死んだ分化細胞又は非増殖分化細胞である。最終的には、異なるタイプの細胞のすべてが凝集し、単一又は複数のスフェロイドを形成する。これは機械的に形成されたスフェロイドもまた、種々のレベルの幹細胞を有する幹細胞集団、及び分化した細胞を含み、これは機械的スフェロイドの比較的非選択的な性質を表す。
【0066】
しかし、理論的には、非分裂細胞の比は時間とともに減少し、スフェロイド形成細胞の大部分が幹細胞又は幹細胞由来細胞で占有されることが予測できる。この場合、自発的スフェロイド形成の主な利点は、幹細胞の純度及び幹細胞の迅速な選択であり得る。この考えを確認するために、qRT-PCRの結果は、ごく最初から(12時間後でさえ)有意に高い幹細胞マーカー発現を示した(図2B~E)。
【0067】
スフェロイドを形成するための幹細胞の凝集が幹細胞の特性に影響を及ぼし、幹細胞マーカーの発現を増強又は変化させ得ることもまた可能であり、これは、異なるより特異的な研究デザインの下で試験される。また、無血清環境とそれらの成長因子の必要性についても重要な問いである。本発明者が確認できる限り、本実施例の方法は、幹細胞又はスフェロイドを維持するためのこれらの因子が役割を担う可能性を排除するものではないが、これらの成長因子及び添加剤はスフェロイド形成に必要ではない。
次の問題は、この現象の普遍性である。したがって、本発明者らは、3つの他の異なる細胞型を使用して、この現象の実現可能性を試験した。興味深いことに、皮膚由来細胞(図3A~C)だけでなく、口腔粘膜由来細胞(図3D)、皮質骨由来細胞(図3E)、NIH-3T3(図3F)でも観察された。
【0068】
スフェロイド形成の効率及び形状においていくらかの差が示したが、同様の様式で幹細胞と共にスフェロイドを形成することができた。これは、本発明の方法が非常に普遍的であることを支持するものである。
結論として、本発明の新規方法は、スフェロイド形成のために容易かつ再現性があり、そしてより安価である。従って、本発明の方法は、種々の組織由来の体性幹細胞の性質のメカニズムを理解することに寄与し、そしてまた、種々の臨床処置に適用することができる。
【0069】
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【0070】
[実施例2]
要約
本発明者は、約90度の水接触角を有する特異的低接着性培養プレートを用いた自発的スフェロイド形成のための新しい方法を開発した。本発明の方法はさまざまな細胞に適応可能であるが、本実施例では口腔粘膜由来細胞および皮膚由来細胞への応用について述べる。最初に、自発的スフェロイド形成の実現可能性を試験した。次に、口腔粘膜由来および皮膚由来細胞由来のスフェロイドの特性を、幹性および神経分化能に特に焦点を当てて比較した。
【0071】
C57BL/6Jマウスの口蓋および頬粘膜から経口粘膜細胞を得た。同様に、同じ系統のマウス背部から皮膚細胞を得た。2~3継代の細胞を特異的低接着性培養プレートに播種して、自発的スフェロイドを形成した。塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、上皮増殖因子(EGF)およびB27のスフェロイド形成および維持に対する効果を評価した。免疫蛍光および定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)を行って、多能性マーカー、細胞増殖およびアポトーシスマーカー、並びに神経分化マーカーの発現を調べた。
【0072】
この培養プレートを用いることにより、口腔粘膜由来細胞,皮膚油彩棒とも自発的スフェロイド形成が可能となった。このプロセスは血清の存在に依存したが、bFGF、EGFおよびB27サプリメント等の添加剤とは無関係であった(但し、これらの添加因子はスフェロイド形成効率を改善し、またスフェロイドの維持に必須であった)。口腔粘膜由来細胞からのスフェロイドは、Sox2、SSEA1、Oct4、Nanogおよびネスチンなどの幹細胞マーカーを発現した。口腔粘膜細胞由来のスフェロイドにおけるSox2の発現は、皮膚由来細胞由来のスフェロイドにおける発現よりも高かった。スフェロイド形成細胞は、どちらのタイプも、神経系細胞への分化原性誘導後に神経およびシュワン細胞に分化する能力を有したが、MAP2、MBP、ネスチンおよびNurr1遺伝子発現は、口腔粘膜由来スフェロイド由来の細胞において有意に高く認められた。
【0073】
ここで、Nurr1はドーパミン産生細胞のマーカーであり、ドーパミン産生細胞はパーキンソン病で減少することが知られている。Nurr1遺伝子の高い発現が認められたことは、本発明のスフェロイドがドーパミン産生細胞に分化することを意味している。従って、本発明のスフェロイドは、パーキンソン病の治療薬として有用である。
【0074】
結果は、口腔粘膜由来細胞からの自発的スフェロイドが皮膚由来幹細胞と同程度に良好な高度に強力な幹細胞を含むことを示した。特定のニューロンマーカー遺伝子の高発現は、ニューロン障害の再生治療のためのこれらの細胞の利点を示唆する。
【0075】
本発明の方法によって得られた自発的スフェロイドは神経分化能に優れ,神経疾患の治療に有用であることが示された。そして、中でも口腔粘膜細胞から作製した自発的スフェロイドは優れた神経幹細胞であることが示された。本発明の方法により調製された自発的スフェロイドを用いることにより、神経幹細胞を調製することができる。また、本発明の方法による自発的スフェロイド形成に際しては、bFGFやEGFなどの添加因子は、形成効率を改善するとともに、スフェロイドの維持に重要である。従って、本発明においては、これらの添加因子を使用することも可能である。
【0076】
背景
スフェロイド形成は、ニューロン、皮膚、唾液腺、骨髄間質、歯周靭帯および歯髄組織を含む様々な組織からの幹細胞の選択的培養に使用されている[1~5]。スフェロイドを形成するために様々な方法が使用される。ハンギングドロップ法は、細胞懸濁液の液滴を利用し、細胞は、重力によって液滴の底部で凝集し始め、最終的にスフェロイドを形成する[6]。培地の回転もまた使用されている[7、8]。これらの方法は物理的な力に依存し、細胞間の接着は細胞の強制的な接触によって達成されるため、本発明者はそれらを「機械的スフェロイド形成」法と呼び、スフェロイド形成のプロセスは幹細胞に対して選択的ではない[9]。
【0077】
本発明の方法を含む他の方法は物理的な力は使用せず、スフェロイド形成は静的条件下で起こる。したがって、本発明者は、これらのアプローチを「自発的スフェロイド形成」法と名付けた[9]。自発的なスフェロイド形成は可能な幹細胞からのみ開始するので、理論的には幹細胞の選択的培養を可能にする。これまでのところ、報告されている自発的スフェロイド形成のほとんどは、神経幹細胞および皮膚由来幹細胞に限られており[10、11]、口腔粘膜由来細胞由来の自発的スフェロイドの詳細な特徴は報告されていない。
【0078】
体性幹細胞用の細胞源の中で、口腔粘膜は非常に独特であると考えられる。細胞系統研究は、成体組織でさえ、神経堤細胞様幹細胞を含むことを明らかになっている[12、13]。口腔粘膜および皮膚線維芽細胞は、類似の形態および機能を有するが、いくつかの本質的な差異が存在する。例えば、口腔粘膜における創傷治癒は、皮膚における創傷治癒と比較して、より速く、瘢痕形成がより少ない[14、15]。口腔粘膜のこれらの特徴は、高度に強力な神経堤由来細胞の存在に起因し得る[16]。従って、何名かの研究者は、口腔粘膜が体性幹細胞のための好ましい供給源であると考えている[17]。この考えを支持するために、いくつかの最近の研究では、口唇および口腔粘膜の固有層における幹細胞集団が神経堤様の特徴を示し、骨芽細胞、軟骨芽細胞、脂肪細胞、および神経系統への分化を含む、非常に広い分化能力を有することを報告している[18~21]。しかし、本発明者の知る限りでは、皮膚および口腔粘膜由来の幹細胞を直接比較した試験はない。
【0079】
本実施例では、口腔粘膜由来細胞からの自発的スフェロイド形成の可能性を試験した。次に、神経スフェロイド形成の必須因子として報告されている塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、上皮増殖因子(EGF)およびB27サプリメントの、自発的スフェロイド形成および維持に対する役割を調べた。最後に、口腔粘膜由来および皮膚由来細胞由来の自発的スフェロイドの特徴を、それらの幹細胞性および神経分化能に特に焦点を当てて比較した。
【0080】
材料及び方法
細胞培養
動物実験は、松本歯科大学動物実験委員会(no.289)によって承認された。初代培養細胞は、従来のエキスプラント培養法を用いて得た。マウス(3~4週齢)を麻酔過剰投与で死亡させ、次いで頬粘膜および口蓋粘膜並びに背部皮膚を除去し、培養した。基本培地は10%ウシ胎児血清(FBS;Biowest,Nuaille,French)、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、および0.25μg/mlアンホテリシンB(Biological Industries USA,Inc.,Cromwell,CT,USA)を補充したαMEM(Wako Pure Chemical Industries,Ltd,Osaka,Japan)である。細胞は、80%~90%コンフルエントで継代した。培地は、3~4日毎に交換した。2~3継代の細胞を実験に使用した。
【0081】
皮質骨由来細胞(CBDC)の培養は本発明者の以前の研究で報告された計画書に基づき、改変した[9]。簡潔には、大腿骨および脛骨を切開し、骨端を切断し、骨髄を灌流した。次いで、皮質骨を細かい断片に切断し、コラゲナーゼ溶液中、37℃で45分間、バイオシェーカー中でインキュベートした。細胞を回収し、10ng/mlの塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)(PeproTech,Rocky Hill,USA)を補充したαMEM中で培養した。骨チップを同じ培養培地で同じ皿の他のウェルに播種して、さらに細胞を回収した。
【0082】
スフェロイド形成
スフェロイド形成のために使用される方法は、本発明者の以前の刊行物[9]に記載されている。簡潔には、単層培養細胞をトリプシン処理し、細胞を55mmディッシュ(1.5×10細胞/cm)(Azunol(登録商標)、#1-8549-02、AS ONE、Osaka、Japan)に播種し、基礎培養培地でスフェロイドを生成した。培地は3日毎に交換した。口腔粘膜および皮膚由来細胞のスフェロイド形成効率を評価するために、4つの平行位相差顕微鏡視野/ディッシュ(x4対物レンズ(Olympus IX70倒立顕微鏡、Olympus Optical CO,Ltd,Tokyo,Japan))で1~5日間、スフェロイドの数およびサイズを測定した。スフェロイドの維持を評価するために、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF;Gibco,Carlsbad,CA,USA)、上皮増殖因子(EGF;PeproTech,Rocky Hill,NJ,USA)およびB27サプリメント(Gibco,Carlsbad,CA,USA)を基本培地に添加した。各因子の必要性を調べるために、これらの添加剤の1つまたはいくつかを用いて培養を行った。スフェロイドの直径および数を5日間測定した。
【0083】
神経分化
口腔粘膜由来、皮膚由来、及びCBDC由来細胞からのスフェロイドを、新しい通常培養皿に移した。これらの培養物が50%~60%コンフルエントに達した後、培地を神経分化誘導培地に交換した。神経細胞分化に使用した培地は、L-グルタミン、フェノールレッド(Wako)、50ng/ml神経成長因子、50ng/ml脳由来神経栄養因子、10ng/ml NT-3(すべてPeprotech)、10% FBS、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、および0.25μg/mlアンホテリシンB(Biological Industries)を添加したαMEMとした。シュワン細胞分化のために使用した培地は、L-グルタミン、フェノールレッド(Wako)、5μM forskolinフォルスコリン(Sigma)、50ng/mlヘレグリン-1β(Peprotech)、2% v/v N2サプリメント(Invitrogen)、10% FBS、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、および0.25μg/mlアンホテリシンB(Biological Industries)を添加したαMEMとした。細胞を1または2週間分化させ、培地の50%を2日ごとに交換した。
【0084】
免疫蛍光染色
免疫蛍光染色は、以前に報告されたように行った[9]。以下のタンパク質を標的とする一次抗体を使用した:SSEA1(1:40、ab16285、Abcam)、Sox2(1:250、97959、Abcam)、Oct4(1:250、ab19857、Abcam)、Nanog(1:100、ab80892、Abcam)、βIII-チューブリン(1:250、ab87087、Abcam)、ネスチン(1:200、ab6142、Abcam)、NEUN(1:100、ab177487、Abcam)、MAP2(1:50、ab32454、Abcam)、およびS100β(1:100、ab52642、Abcam)。
【0085】
使用した二次抗体は、以下の通りである:ヤギ抗マウスIgM Alex Fluor 488(1:200、ab150121、Abcam)、ヤギ抗マウスIgG Alex Fluor 488(1:500、ab150113、Abcam)、およびヤギ抗ウサギIgG Alex Fluor 647(1:200~1:500、ab150079、Abcam)、ならびに核を、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI、ab104139、Abcam)で30分間、室温で対比染色した。
【0086】
スフェロイド内の細胞増殖とアポトーシスを調べるために、Ki67とカスパーゼ7の免疫蛍光染色を行った。スフェロイドを、製造業者の指示に従ってiPGell(Genostaff,Tokyo,Japan)中で固化し、リン酸緩衝液中の4%パラホルムアルデヒドで固定し、パラフィン中に包埋し、8μmの厚さで切片化した。切片を免疫染色には,以下のタンパク質を標的とする一次抗体を使用した:Ki67(1:100、ab15580、Abcam)およびカスパーゼ7(1:100、ab69540、Abcam)。一次抗体と共に4℃で一晩インキュベートした後、切片をPBSで3回洗浄し、それぞれ二次抗体と共にインキュベートした。使用した二次抗体はロバ抗マウスIgG Alex Fluor 488(1:250、ab96875、Abcam)およびロバ抗ウサギIgG Alex Fluor 647(1:250、ab150075、Abcam)であり、核をDAPI溶液で対比染色した。
【0087】
蛍光を位相差顕微鏡(KEYENCE BZ-X710,Keyence,Osaka,Japan)で観察し、BZ-X Analyzerソフトウェアで分析した。
【0088】
定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)
全RNAを、TRIzol試薬(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA,USA)を用いて細胞から抽出し、cDNAを、PrimeScriptTM RT Master Mix(Perfect Real Time)(TaKaRa,cat# RR036A,Kusatsu,Japan)を用いて合成した。qRT-PCRは、製造業者のプロトコールに従って、少なくとも3回行った。データはΔΔCt法を用いて定量化し、β-アクチンの発現量によって標準化した。PCRに使用したプライマー配列を表2に示す。
【表2】
【0089】
統計解析
Student’s t検定を用いて統計分析を行った。結果は、最低3回の実験における平均のmean ± standard error(SEM)として示す。
【0090】
結果
口腔粘膜由来細胞由来の自発的スフェロイド
特定の培養皿上の口腔粘膜由来細胞のスフェロイド形成能を調べた。無血清培地では、口腔粘膜由来細胞の一部が培養皿に接着し、24時間後に線維芽細胞形態を示し、72時間後にアポトーシスを起こした(図6A)。bFGF、EGFおよびB27サプリメントを含む無血清培地では口腔粘膜由来細胞が皿に接着し、いくらかの細胞凝集体を示したが、スフェロイド形成は観察されなかった(図6A)。血清を含む培地において、口腔粘膜由来細胞は24時間以内に自然にスフェロイドを形成し、スフェロイドは観察期間(72時間)の間維持された(図6A)。
幹細胞マーカー遺伝子の発現を調べるために、スフェロイド形成細胞を免疫蛍光によって分析した。口腔粘膜由来細胞から形成された自発的スフェロイドは、Sox2、SSEA1、Oct4、Nanog(図6B)およびネスチン(図6C)を発現した。
【0091】
口腔粘膜および皮膚由来細胞のスフェロイド形成および維持に対する添加剤の効果
血清を含む培地において、口腔粘膜由来細胞および皮膚由来細胞は、添加剤なしで24時間以内にコンパクトな多細胞スフェロイドを形成するように自然に凝集し、72時間維持した(図7A)。スフェロイドの形態は添加剤の存在や細胞の起源に影響されず、群間の差異は顕著ではなかった。
【0092】
時間経過中のスフェロイドの変化をさらに調査するために、スフェロイドの直径および数を120時間まで評価した。口腔粘膜由来細胞由来のスフェロイドのサイズは細胞播種後72時間まで増加する傾向があり、その後、経時的に徐々に減少した(図7B)。一方、皮膚由来細胞からのスフェロイドのサイズは120時間まで変化せず、スフェロイド間の差は120時間で有意であった(p<0.001)。口腔粘膜由来細胞からのスフェロイドの数は48時間で増加し、ピークに達し、次いで徐々に減少した(図7C)。皮膚由来細胞からのスフェロイドの数は96時間まで徐々に増加し、次いで減少した。数の差は120時間でのみ有意であった(p<0.001)。
【0093】
次に、スフェロイドの直径および数を、添加剤の1つまたはいくつかの存在下で測定した。添加剤を含まないスフェロイドと比較して、スフェロイドサイズは、bFGF、EGFおよびB27サプリメントを含む培地において有意に大きかった(p<0.001)(図7D)。スフェロイドをbFGFおよびB27サプリメントと共に培養した場合に、最も近い結果が得られた。また、スフェロイドの数は、添加剤を添加しない群よりも3種類の添加剤を添加して24~120時間培養した群の方が多かった(p<0.001)(図7E)。bFGFおよびB27サプリメントで処置した群でも同様の結果が得られ、その数は、すべての時点で、添加剤なしの群よりも多かった。
【0094】
スフェロイド内の細胞増殖およびアポトーシスの分析
口腔粘膜および皮膚由来細胞からのスフェロイドのいずれにおいても、添加剤なしのスフェロイドよりも、添加剤ありのスフェロイドでは、より多くのKi67陽性細胞が観察された(図8A)。カスパーゼ7陽性細胞は添加剤を含まない口腔粘膜スフェロイドで観察されたが、添加剤を含むほんの少数の弱陽性細胞が観察された。皮膚由来のスフェロイドは添加剤を含まないスフェロイドにおいてかすかなカスパーゼ7陽性細胞を示したが、添加剤を含むスフェロイドにおいては陽性細胞は観察されなかった(図8A)。
【0095】
増殖およびアポトーシス遺伝子の発現を、qRT-PCRを用いて分析した。Ki67の発現は、添加剤を用いて培養したスフェロイドでは添加剤を用いないスフェロイドよりも高かった(図8B)。一方、カスパーゼ7の発現は、添加剤なしで培養したスフェロイドの方が添加剤ありのスフェロイドよりも有意に高かった(図8B)。カスパーゼ7の発現を口腔粘膜由来細胞のスフェロイドと皮膚由来細胞のスフェロイドとの間で比較した場合、発現は、添加剤の存在にかかわらず、口腔粘膜由来細胞のスフェロイドにおいて有意に高かった(図8C)。
【0096】
口腔粘膜由来および皮膚由来細胞のスフェロイドにおける幹細胞マーカー発現の比較
qRT-PCRを用いて多能性関連遺伝子の発現を解析した。口腔粘膜由来細胞由来のスフェロイドにおいて、Sox2、Fut4(SSEA1)およびネスチンの発現は、添加剤を用いて培養したスフェロイドでは添加剤を用いないスフェロイドよりも高かったが、Oct4の発現は添加剤の存在によって影響されなかった(図9A)。皮膚由来細胞由来のスフェロイドにおいて、Fut4(SSEA1)およびネスチンの発現は、スフェロイドを添加剤と共に培養した場合に有意に高かった(図9B)。一方、Sox2の発現は添加剤の存在で低下した。Oct4の発現は、口腔粘膜スフェロイドと同様に、添加剤の有無に関わらず有意差を示さなかった。
【0097】
次に、幹細胞マーカー発現を、口腔粘膜由来細胞スフェロイドと皮膚由来細胞スフェロイドとの間で比較した。Sox2の発現は、口腔粘膜由来細胞のスフェロイドでは皮膚由来細胞のスフェロイドよりも高く、その傾向は添加剤の存在によって影響されなかった(図10AおよびB)。ネスチンの発現は、添加剤を含まない皮膚由来細胞のスフェロイドよりも口腔粘膜由来細胞のスフェロイドにおいて高かった(図10A)。しかし、この差異は、スフェロイドを添加剤と共に培養した場合には観察されなかった(図10B)。口腔粘膜由来細胞のスフェロイドにおけるFut4(SSEA1)の発現は、添加剤なしでは120時間、添加剤ありでは24時間において皮膚由来細胞スフェロイドより高かったが、他の条件下では差は観察されなかった。Oct4の発現は、口腔粘膜由来細胞と皮膚由来細胞のスフェロイド間に有意差を示さず、この傾向は添加剤の存在によって影響されなかった。
【0098】
口腔粘膜からのスフェロイド由来細胞と皮膚からのスフェロイド由来細胞との間における神経分化能の比較
2次元培養された口腔粘膜細胞は、ネスチン、NeuN、Sox2およびS100βの陽性細胞を含んでいたが、βIII-チューブリンおよびMAP2は陰性であった(図11A)。口腔粘膜および皮膚の両者からのスフェロイド由来細胞は、ネスチン、βIII-チューブリン、MAP2、NeuN、Sox2およびS100βに対して陽性であった(図11A)。分化のレベルを調べるために、MAP2、MBP、NF-M、GFAPおよびネスチンのmRNA発現レベルを分析した。さらに、特異的ドーパミン作動性ニューロンマーカーNurr1の発現もqRT-PCRによって評価した(図11B)。口腔粘膜スフェロイド由来細胞におけるMAP2、MBP、ネスチンおよびNurr1のmRNA発現は、皮膚スフェロイド由来細胞より有意に高かった。NF-Mの発現レベルは両起源のスフェロイド由来細胞間で変わらなかった。口腔粘膜スフェロイド由来細胞におけるGFAPの発現は、皮膚スフェロイド由来細胞における発現よりも高かったが、その差は大きな変動のために有意ではなかった。
【0099】
口腔粘膜由来細胞のスフェロイドにおいて、いくつかのニューロン分化マーカーの比較的高い発現が観察されたが、そのレベルが間葉系幹細胞などの他の体性幹細胞におけるレベルと同等であるかどうかは明らかでなかった。従って、次に、本発明者は口腔粘膜由来細胞のスフェロイドと、マウスにおける間葉系幹細胞の優れた供給源として知られており神経原性細胞系統に分化することができるCBDC由来のスフェロイドとの間で、MAP2、MBP、およびネスチンの発現レベルを比較した[22-24]。神経誘発後、口腔粘膜スフェロイド由来細胞におけるMAP2、MBP、およびネスチンの発現は、CBDCのスフェロイド由来細胞における発現よりも非常に高かった(それぞれ、20.08倍、3.02倍、および16.18倍)(図11C)。
【0100】
考察
口腔粘膜由来細胞の自発的スフェロイドの特徴
スフェロイドの機械的形成の間、理想的には、培養物中のほとんど全ての細胞がスフェロイド形成に関与する。したがって、プロセスは選択的ではない[22]。一方、自発的なスフェロイド形成は、静的条件下で起こる。それは接着することなく生存することができる細胞からのみ開始し、細胞は増殖してスフェロイドを形成する能力を有する。従って、自発的スフェロイド形成は選択的であるが、機械的スフェロイド形成ほど効率的ではない。実際、自発的にスフェロイドを形成することがよく知られている皮膚由来前駆体(SKP)は胚組織から得ることができ、成体組織から得ることは困難である[23]。本発明者の自発的スフェロイド形成の方法は、4~5継代で培養した細胞であってもスフェロイド形成が可能であるので、この制限を克服することができる(図12)。本発明の方法を用いて形成されたスフェロイドが、SKPスフェロイドのような自発的に形成されたスフェロイドと同一であるかどうかを問うことも重要である。口腔粘膜由来細胞から自発的に形成されたスフェロイドは、Sox2、SSEA1、Oct4、Nanogおよびネスチンに対して陽性であり、神経原性分化が可能であり、これは、以前に報告された自発的スフェロイドと同一の幹性の特性を示したことを示す[2、12]。
【0101】
本法のおよび以前に報告された自発的スフェロイド形成手順間の基本的な差異の1つは、添加物の有無である。自発的スフェロイド形成は、無血清環境および成長因子(例えば、bFGF、EGFおよびB27サプリメント)の添加を必要とすることが報告されている[24、25]。一方、本発明の方法によって誘発された自発的なスフェロイド形成は、これらの添加剤を含まない血清含有環境で達成することができる。
【0102】
自発的スフェロイド形成および維持のための添加剤の役割
添加剤を用いた場合、24時間でのスフェロイドの数は、添加剤を用いない場合よりも約2倍多く、これはスフェロイド形成における添加剤のいくつかの役割を示している。自発的スフェロイド形成は添加剤なしで実現可能であったので、添加剤は、スフェロイド形成を促進するが、必須ではない。一方、添加剤なしでは、スフェロイドサイズおよび数は時間とともに減少した。この傾向は、口腔粘膜由来細胞のスフェロイドにおいて、皮膚由来細胞のスフェロイドよりも明らかであった。したがって、自発的スフェロイド形成においてはこれら添加剤を加えることも可能である。
【0103】
口腔粘膜からの自発的スフェロイド形成細胞の神経分化
神経誘発後、口腔粘膜細胞の平面培養では、MAP2およびβIII-チューブリンなどの神経マーカーを発現することができなかった。スフェロイド由来細胞におけるこれらの分化した神経細胞マーカーの存在は、スフェロイド形成細胞の高い神経分化能を示唆する。口腔粘膜由来および皮膚由来の両方の細胞由来のスフェロイドは、ネスチン、βIII-チューブリン、MAP2、NeuN、Sox2およびS100βに対して陽性の細胞を含んでいたので、神経分化マーカーの発現をqRT-PCRを用いて比較した。
【0104】
試験したマーカーの中で、MAP2、MBPおよびネスチンの発現レベルは、皮膚由来細胞のスフェロイドよりも口腔粘膜由来細胞のスフェロイドにおいて有意に高かった。さらに、口腔粘膜由来細胞のスフェロイドにおけるドーパミン作動性ニューロンマーカーNurr1のより高い発現が観察された。総合すると、これらの知見は、パーキンソン病などの神経変性疾患の治療のためにこれらの口腔粘膜細胞を使用する利点を示唆する。より重要なことに、MAP2、MBPおよびネスチンの発現は、CBDCからの間葉系幹細胞由来のスフェロイドよりも口腔粘膜由来細胞のスフェロイドにおいて非常に高かった。これは、口腔粘膜由来スフェロイドにおける神経堤由来幹/前駆細胞の存在に起因し得ると言え、そして神経変性疾患への適用のために、この細胞供給源の独特の利点をさらに強調できる。
【0105】
結論
本研究の結果は、自発的スフェロイド形成が本発明者らの方法を用いて口腔粘膜由来細胞で実現可能であることを示した。bFGF、EGF、B27サプリメントなしで自発的スフェロイド形成が可能であったが、それらはスフェロイド形成の効率を改善し、より重要なことにはスフェロイド維持に必須であった。口腔粘膜由来細胞の自発的スフェロイドは、皮膚由来幹細胞と同程度に優れた強力な幹細胞を含む。特定のニューロンマーカー遺伝子の高発現は、ニューロン疾患の再生治療のためのこれらの細胞の利点を示唆する。
【0106】
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【0107】
[実施例3]
方法
CBDCsの培養法、及び自発的スフェロイドの形成法は、実施例1、2に準じて行った。
CBCScの骨分化誘導
スフェロイド形成24時間後、別の接着性培養皿へ継代した。50-60%コンフルエントの状態で骨分化誘導培地へ交換した。この培地には、100nMデキサメタゾン(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USA)、50μM L-アスコルビン酸(Wako Pure Chemical Industries,Ltd.)及び10mMβグリセロリン酸(Sigma-Aldrich))が含まれている。培地は2日ごとに交換した。
【0108】
ALP活性の測定
骨分化誘導7日目に骨分化の確認のためALP活性を測定した。分化誘導していない細胞をコントロールとした。cell counting kit-8(CCK-8)(Dojindo Laboratories,Kumamoto,Japan)とp-ニトロフェノール(SIGMA FastTM p-Nitrophenyl Phosphate Tablet;Sigma-Aldrich Co.LLC.)を業者の説明に従って用いた。フォルマザンは450nm、p-ニトロフェノールは405nmでiMarkTM Microplate Absorbance Reader(BIO-RAD Laboratories,Hercules,CA,USA)を用いて吸光度を測定した。
【0109】
qRT-PCRによる骨分化マーカーの解析
qRT-PCRは、実施例1と同様にして行った。
使用したプライマーを表3に示す。
【表3】
【0110】
移植実験による骨再生
1x10個のCBDC細胞を直径2mm,厚さ2mmのβ-TCPブロック(オスフェリオン,オリンパステルモバイオマテリアル)に播種した。翌日骨分化誘導培地へと交換し、7日間分化誘導を行い、その後6週齢雄SCIDマウス背部皮下に移植した。移植後4週間で取り出し、μCTにて評価後、脱灰、パラフィン包埋し、薄切した。切片はHE染色にて観察を行った。
【0111】
結果
1.骨分化マーカーの解析
骨分化マーカーの解析結果を図13に示す。
2.In vivoでの骨再生能
CBDC細胞を移植後4週後の組織像を図14に示す。組織像から、骨組織の形成が認められ(ピンクの部分)、本発明の自発的スフェロイドの骨再生能が確認された。
【配列表フリーテキスト】
【0112】
配列番号1~40:合成DNA
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図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14