(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】サンプル識別方法、サンプル識別用デバイス、および、サンプル識別装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/00 20060101AFI20231207BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20231207BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
G01N27/00 Z
C12M1/00 A
C12M1/34 B
(21)【出願番号】P 2020563277
(86)(22)【出願日】2019-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2019050469
(87)【国際公開番号】W WO2020138021
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2018241363
(32)【優先日】2018-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】518437671
【氏名又は名称】アイポア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】筒井 真楠
(72)【発明者】
【氏名】有馬 彰秀
(72)【発明者】
【氏名】谷口 正輝
(72)【発明者】
【氏名】横田 一道
(72)【発明者】
【氏名】川合 知二
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/165267(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/131064(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/165400(WO,A1)
【文献】特表2019-516951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/10
G01N 27/14-27/24
C12M 1/00-1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル液中のサンプルの識別方法であって、
該識別方法は、
前記サンプルを、基板に形成した貫通孔を通過させるサンプル通過工程と、
前記サンプルが、前記貫通孔を通過する時のイオン電流の変化を測定するイオン電流測定工程と、
測定したイオン電流の値から、前記サンプル液中のサンプルを識別するサンプル識別工程と、
を少なくとも含み、
前記サンプルを識別するサンプル識別用デバイスが、
前記基板の第1面側の少なくとも前記貫通孔を含む面とで電解液を充填する第1チャンバーを形成する第1チャンバー部材と、
前記基板の第2面側の少なくとも前記貫通孔を含む面とで電解液を充填する第2チャンバーを形成する第2チャンバー部材と
を含み、
前記基板には、前記第1チャンバーと前記第2チャンバーとの間を貫通する2以上の貫通孔が形成され、隣り合う前記貫通孔同士の距離が10μmより長く離れるように配置されている、
前記サンプル識別用デバイスを用いるサンプル識別方法。
【請求項2】
前記サンプル液には、サイズが異なるサンプルが含まれている、
請求項1に記載のサンプル識別方法。
【請求項3】
サンプル液中のサンプルの識別方法に用いるデバイスであって、
該デバイスは、
基板と、
該基板に形成された2以上の貫通孔と、
前記基板の第1面側の少なくとも前記貫通孔を含む面とで電解液を充填する第1チャンバーを形成する第1チャンバー部材と、
前記基板の第2面側の少なくとも前記貫通孔を含む面とで電解液を充填する第2チャンバーを形成する第2チャンバー部材と
を含み、
前記2以上の貫通孔は、前記第1チャンバーと前記第2チャンバーとの間を貫通し、隣り合う前記貫通孔同士の距離が10μmより長く離れるように配置されている、
サンプル識別用デバイス。
【請求項4】
請求項3に記載のサンプル識別用デバイスと、
前記第1チャンバーに形成された第1電極と、
前記第2チャンバーに形成された第2電極と、
サンプルが前記貫通孔を通過する時のイオン電流を計測するための電流計と、
を含む、
サンプル識別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書における開示は、サンプル識別方法、サンプル識別用デバイス、および、サンプル識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に貫通孔(ナノポア)を形成し、該貫通孔をサンプルが通過する際のイオン電流を測定するデバイスは、細菌、ウイルス、DNA、タンパク質等のセンシングに幅広く応用可能なデバイスとして注目されている。
【0003】
関連する技術としては、例えば、シリコン等の基板上に形成した細孔(マイクロポア)をサンプルが通過する際に生じるイオン電流の変化を検出することで、サンプルの体積を識別できること(非特許文献1参照)、また、貫通孔の厚さをサンプルより薄くすることで、サンプルの形状に応じたイオン電流を測定できること(特許文献1参照)が知られている。また、基板上に貫通孔を2以上形成することも知られている(非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Waseem A.et al.,Lab on a Chip, Vol.12, pp.2345-2352 (2012)
【文献】Makusu T.et al.,“Particle Capture in Solid-State Multipores”,ACS Sens., Article ASAP,November 13,2018,DOI:10.1021/acssensors.8b01214
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記非特許文献2に記載のとおり、イオン電流を測定するデバイスとして、基板上に貫通孔を2以上形成することは知られている。そして、非特許文献2のABSTRACTの図に示されるように、基板に形成する貫通孔の数が多くなるほど、単位時間当たりのサンプル捕捉効率を向上させるためには、貫通孔の距離を短くした方が望ましいことが開示されている。
【0007】
しかしながら、本発明者らは、基板に貫通孔を2以上形成したデバイスを用いて更なる研究を行ったところ、(1)分析対象サンプルの識別を行う場合、貫通孔の距離を短くすると、測定したイオン電流のピーク値に差が出にくくなり、その結果、サンプルの識別精度が低下し、特に、異なるサイズのサンプルの識別が困難になること、(2)貫通孔の距離を長くすると、短くした場合とは逆に測定したイオン電流のピーク値に差が出やすくなり、サンプルの識別精度が高くなること、を新たに見出した。
【0008】
すなわち、本明細書における開示の目的は、基板にサンプルが通過する貫通孔を2以上形成したデバイスを用いたサンプルの識別の際に、識別精度を向上できるサンプル識別方法、サンプル識別用デバイス、および、サンプル識別装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書における開示は、以下に示す、サンプル識別方法、サンプル識別用デバイス、および、サンプル識別装置に関する。
【0010】
(1)サンプル液中のサンプルの識別方法であって、
該識別方法は、
前記サンプルを、基板に形成した貫通孔を通過させるサンプル通過工程と、
前記サンプルが、前記貫通孔を通過する時のイオン電流の変化を測定するイオン電流測定工程と、
測定したイオン電流の値から、前記サンプル液中のサンプルを識別するサンプル識別工程と、
を少なくとも含み、
前記サンプルを識別するサンプル識別用デバイスが、
前記基板の第1面側の少なくとも前記貫通孔を含む面とで電解液を充填する第1チャンバーを形成する第1チャンバー部材と、
前記基板の第2面側の少なくとも前記貫通孔を含む面とで電解液を充填する第2チャンバーを形成する第2チャンバー部材と
を含み、
前記基板には、前記第1チャンバーと前記第2チャンバーとの間を貫通する2以上の貫通孔が形成され、隣り合う前記貫通孔同士の距離が10μmより長く離れるように配置されている、
サンプル識別方法。
(2)前記サンプル液には、サイズが異なるサンプルが含まれている、
上記(1)に記載のサンプル識別方法。
(3)サンプル液中のサンプルの識別方法に用いるデバイスであって、
該デバイスは、
基板と、
該基板に形成された2以上の貫通孔と、
前記基板の第1面側の少なくとも前記貫通孔を含む面とで電解液を充填する第1チャンバーを形成する第1チャンバー部材と、
前記基板の第2面側の少なくとも前記貫通孔を含む面とで電解液を充填する第2チャンバーを形成する第2チャンバー部材と
を含み、
前記2以上の貫通孔は、前記第1チャンバーと前記第2チャンバーとの間を貫通し、隣り合う前記貫通孔同士の距離が10μmより長く離れるように配置されている、
サンプル識別用デバイス。
(4)上記(3)に記載のサンプル識別用デバイスと、
前記第1チャンバーに形成された第1電極と、
前記第2チャンバーに形成された第2電極と、
サンプルが前記貫通孔を通過する時のイオン電流を計測するための電流計と、
を含む、
サンプル識別装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明で開示するサンプル識別用デバイスを用いてサンプル識別方法を実施すると、サンプルの識別精度が向上し、サイズの異なるサンプルであっても識別ができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】
図2は、第2の実施形態に係るデバイス1bの概略断面図である。
【
図3】
図3は、識別装置100の実施形態の概略断面図である。
【
図4】
図4は、サンプル識別方法のフローチャートである。
【
図5】
図5A~
図5Eは、サンプルの識別方法の実施例1におけるイオン電流の測定結果を示すチャートである。
【
図6】
図6A~
図6Eは、サンプルの識別方法の実施例2におけるイオン電流の測定結果を示すチャートである。
【
図7】
図7A~
図7Eは、サンプルの識別方法の実施例3におけるイオン電流の測定結果を示すチャートである。
【
図8】
図8A~
図8Hは、サンプルの識別方法の実施例4におけるイオン電流の測定結果を示すチャートである。
【
図9】
図9A及び
図9Bは、サンプルの識別方法の実施例5におけるイオン電流の測定結果を示すチャートである。
【
図10】
図10A~
図10Cは、サンプルの識別方法の実施例6におけるイオン電流の測定結果を示すチャートである。
図10A~
図10Cの上段はイオン電流の測定の際のベース電流の変化を示すグラフ、下段は個々のサンプルが貫通孔3を通過する際のイオン電流のピーク値をドットとして示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、サンプル識別方法(以下、単に「識別方法」と記載することがある。)、サンプル識別用デバイス(以下、単に「デバイス」と記載することがある。)、および、サンプル識別装置(以下、単に「識別装置」と記載することがある。)について詳しく説明する。
【0014】
(デバイスの第1の実施形態)
図1A~
図1Cを参照して、第1の実施形態に係るデバイス1aについて説明する。
図1Aはデバイス1aの上面図、
図1Bおよび
図1Cは
図1AのY-Y’断面図である。デバイス1aは、基板2、2以上の貫通孔3を少なくとも含む。貫通孔3は、基板2の第1面21から、該第1面21の反対側の面である第2面22の方向に、基板2を貫通するように形成されている。
【0015】
基板2は、半導体製造技術の分野で一般的に用いられている絶縁性の材料であれば特に制限は無い。例えば、Si、Ge、Se、Te、GaAs、GaP、GaN、InSb、InP、SiN等が挙げられる。また、基板2は、SiN、SiO2、HfO2等の材料を用い、固体メンブレンと呼ばれる薄膜状、または、グラフェン、酸化グラフェン、二酸化モリブデン(MoS2)、窒化ホウ素(BN)等の材料を用い、2次元材料と呼ばれるシート状に形成してもよい。サンプルの検出感度は、貫通孔3の体積が小さいほど高くなることから、貫通孔3を形成する基板2は薄い方が好ましい。例えば、5μm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、100nm以下がさらに好ましく、50nm以下が特に好ましい。なお、例えば、グラフェンは1nm以下の膜厚の基板2の作製が可能である等、基板2として固体メンブレンまたは2次元材料を用いた場合は、膜厚を非常に薄くできる。しかしながら、基板2の膜厚が非常に薄いと、破損せずに取り扱うことが困難な場合がある。そのため、基板2は、上記の絶縁性の材料で形成した支持板の上に固体メンブレンまたは2次元材料を積層した積層構造としてもよい。積層構造にする場合は、貫通孔3より大きな孔を形成した支持板の上に固体メンブレンまたは2次元材料を積層し、固体メンブレンまたは2次元材料に貫通孔3を形成すればよい。
【0016】
貫通孔3は、基板2の第1面21から、該第1面21の反対側の面である第2面22の方向に、基板2を貫通するように形成されている。イオン電流を検出する際には、貫通孔3の体積が小さいほど感度が高くなる。したがって、上記基板2を薄くするとともに、貫通孔3の大きさは、測定対象サンプルよりは大きいが、大き過ぎないように適宜調整すればよい。なお、貫通孔3の第1面21と並行となる断面形状が円形の場合、貫通孔3の大きさと記載した場合は直径を意味する。貫通孔3の第1面21と並行となる断面形状が円形でない場合、貫通孔3の大きさとは断面の外接円の直径を意味する。貫通孔3は、後述する実施例に示すとおり、エッチング等により形成すればよい。また、貫通孔3は、
図1Bに示すように、第1面21側の貫通孔3の第1開口31と第2面22側の貫通孔3の第2開口32とが同じ形状となるように形成されていてもよい。或いは、
図1Cに示すように、第1開口31と第2開口32の大きさが異なる、換言すると、貫通孔3が、基材2の中で第1面21から第2面22に向けて広がるように形成されていてもよい。
【0017】
第1の実施形態に係るデバイス1aは、基板2上に貫通孔3が2以上形成されているが、隣り合う貫通孔3同士の距離d1が少なくとも200nm以上離れるように配置されていることが特徴である。なお、本明細書において「隣り合う貫通孔同士の距離」とは、
図1Aに示すとおり、任意の貫通孔3の外縁とその隣の任意の貫通孔3の外縁とを結んだ線(
図1Aの矢印付の破線d’、d’’)の中で、最も短い距離(d’)を意味する。また、隣り合う貫通孔3が複数あり、貫通孔3の外縁と外縁とを結んだ距離が異なる場合(
図1Aのd1、d2)は、「隣り合う貫通孔同士の距離」とは、最も短い距離(d1)を意味する。ただし、
図1Cに示すように、第1面21の第1開口31と第2面22の第2開口32の大きさが異なる場合は、「隣り合う貫通孔同士の距離」とは、大きい方の開口(
図1Cでは第1開口31)の外縁とを結んだ距離を意味する。後述する実施例および比較例に示すとおり、貫通孔3(開口)の距離を短くすると、測定したイオン電流のピーク値が低くなるためサンプルの識別がし難くなる。そのため、隣り合う貫通孔同士の距離は、200nm以上、300nm以上、400nm以上、600nm以上、1μm以上、2μm以上、5μm以上、10μm以上、15μm以上、20μm以上等、所望の識別精度に応じて適宜調整すればよい。一方、隣り合う貫通孔同士の距離の上限は、サンプルの識別との観点では特に上限はないが、距離が長くなりすぎると、基板2の単位面積当たりの貫通孔3が少なくなり、測定効率が低下する。したがって、基板2の面積や所望の測定効率等を考慮して、適宜設定すればよい。
【0018】
基板2上に形成する貫通孔3の配置形状は、上記のとおり、任意の貫通孔3と当該貫通孔3に最も近接する貫通孔3の距離が200nm以上となるように配置されていれば、特に制限はない。例えば、貫通孔3はランダムに配置してもよいし、
図1Aに示す正方形等の所定の形状となるように配置してもよい。或いは、細密充填形状のように、隣り合う貫通孔同士の距離が全て同じとなるように配置してもよい。
【0019】
サンプルとしては、体積を有するものであれば特に制限はなく、例えば、細菌、細胞、ウイルス、DNA、RNA、タンパク質、花粉等の生体物質、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、揮発性有機化合物(VOC)、酸化鉱物(ケイ素、アルミニウム、チタン、鉄等の非生体物質、等が挙げられる。
【0020】
(デバイスの第2の実施形態)
図2を参照して、デバイスの第2の実施形態について説明する。
図2は、第2の実施形態に係るデバイス1bの概略断面図である。
図2に示すデバイス1bは、基板2の第1面21の貫通孔3の第1開口31を含む面とで電解液を充填する第1チャンバー5を形成できる第1チャンバー部材51、および、基板2の第2面22の貫通孔3の第2開口32を含む面とで電解液を充填する第2チャンバー6を形成できる第2チャンバー部材61、を少なくとも含んでいる。
【0021】
第1チャンバー部材51及び第2チャンバー部材61は、電気的および化学的に不活性な材料で形成することが好ましく、例えば、ガラス、サファイア、セラミック、樹脂、ゴム、エラストマー、SiO2、SiN、Al2O3などが挙げられる。
【0022】
第1チャンバー5及び第2チャンバー6は、貫通孔3を挟むように形成され、第1チャンバー5に投入したサンプルが、貫通孔3を通り第2チャンバー6に移動できるように形成されていれば特に制限はない。例えば、第1チャンバー部材51及び第2チャンバー部材61を別々に作成し、基板2に液密となるように接着すればよい。又は、1つの面が解放状態の略直方体の箱部材を形成し、箱の中央に基板2を挿入・固定し、その後、解放状態の面を液密に封止してもよい。その場合、第1チャンバー部材51及び第2チャンバー部材61は別々の部材を意味するのではなく、基板2を境に分けた箱部材の一部を意味する。なお、図示はしていないが、第1チャンバー部材51及び第2チャンバー部材61には、電解液及びサンプル液を充填・排出、電極及び/又はリードを挿入するための孔を必要に応じて形成してもよい。
【0023】
(識別装置の実施形態)
図3を参照して、識別装置の実施形態について説明する。
図3は識別装置100の実施形態の概略断面図である。識別装置100は、デバイス1bに加え、第1チャンバー5内の電解液と接する箇所に形成された第1電極52、第2チャンバー6内の電解液と接する個所に形成された第2電極62、サンプルS1、S2が貫通孔3を通過する時のイオン電流を測定するための電流計7を少なくとも含んでいる。
【0024】
また、識別装置100は、必要に応じて、電流計7で測定したイオン電流を解析する解析部8、測定したイオン電流値及び/または解析部8が解析した結果を表示するための表示部9、予め解析部8や表示部9を機能させるためのプログラムを格納したプログラムメモリ10、プログラムメモリ10に格納されているこのプログラムを読み出し実行するための制御部11を含んでいてもよい。プログラムは、予めプログラムメモリ10に記憶しておいても良いし、記録媒体に記録され、インストール手段を用いてプログラムメモリ10に格納されるようにしてもよい。
【0025】
第1電極52及び第2電極62は、アルミニウム、銅、白金、金、銀、チタン等の公知の導電性金属で形成することができる。第1電極52及び第2電極62は、貫通孔3を挟むように形成し、直流電流を印加することで電解液中のイオンを輸送する。したがって、第1電極52は、第1チャンバー5内の電解液に接する場所に形成されていればよく、基板2の面上、第1チャンバー部材51の内面、又は第1チャンバー5内の空間にリード53を介して配置すればよい。第2電極62も第1電極51と同様に、第2チャンバー6内の電解液に接する場所に形成されていればよく、基板2の面上、第2チャンバー部材61の内面、又は第2チャンバー6内の空間にリード63を介して配置すればよい。なお、
図3に示す例では、第1電極52は第1チャンバー部材51の内面に、第2電極62は第2チャンバー部材61の内面にそれぞれ形成されているが、第1電極52及び第2電極62は、第1チャンバー部材51及び第2チャンバー部材61に形成した孔から挿入してもよい。
【0026】
第1電極52は、リード53を介して電源54、アース55に接続している。第2電極62は、リード63を介して電流計7、アース64に接続している。なお、
図3に示す例では、電源54は第1電極52側に、電流計7は第2電極62側に接続しているが、電源54と電流計7は、同じ電極側に設けてもよい。
【0027】
電源54は、第1電極52及び第2電極62に直流電流を通電できるものであれば特に制限はない。電流計7は、第1電極52及び第2電極62に通電した際に、発生するイオン電流を経時的に測定できるものであれば特に制限はない。なお、
図3には図示していないが、必要に応じてノイズ除去回路や電圧安定化回路等を設けてもよい。
【0028】
識別装置100の貫通孔3にサンプルが通過すると、貫通孔3を流れているイオン電流がサンプルにより遮断され、イオン電流が減少する。このイオン電流の減少量が貫通孔3内のサンプルの体積に比例する。しかしながら、貫通孔3(開口)の距離が短すぎると識別精度が低下し、
図3に示すように、サンプルS1、S2のサイズが異なる場合であっても、測定したイオン電流のピーク値に差がでにくくなる。一方、実施形態に係る識別装置100では、隣り合う貫通孔3(開口)の距離を200nm以上となるように配置している。そのため、測定したイオン電流のピーク値に差がでることから、貫通孔3を通過するサンプルS1、S2のサイズに応じて、サンプルの識別ができる。なお、貫通孔3の体積が小さい程、イオン電流の測定感度が向上することから、基板2の厚さ(第1面21と第2面22との距離)は薄い方が好ましい。なお、サンプル液中のサンプル濃度(個数)および基板2上に形成する貫通孔3の数にもよるが、サンプルが貫通孔3を同時に通過する確率は極めて低い。したがって、仮に、数個のサンプルが同時に貫通孔3を通過したとしても、特異的なピークとして認識されるに過ぎず、サンプル液中にどのようなサンプルが含まれているのか識別するには影響を与えるものではない。
【0029】
解析部8は、電流計7で測定したイオン電流の値(ピーク値)を解析する。上記のとおり、サンプルのサイズに応じてイオン電流の値が変わる。したがって、測定したイオン電流の値に基づき解析部8でデータ解析をすることで、サンプルを識別できる。
【0030】
表示部9は、測定したイオン電流の値(ピーク値)、解析部8で解析した結果を表示できればよく、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイなど、公知の表示装置を用いればよい。
【0031】
(サンプル識別方法の実施形態)
次に、
図4を参照して、識別装置100を用いたサンプル識別方法について説明する。
図4は、サンプル識別方法のフローチャートである。サンプル識別方法の実施形態は、サンプル通過工程(ST1)、イオン電流測定工程(ST2)、サンプル識別工程(ST3)を含んでいる。
【0032】
サンプル通過工程(ST1)では、サンプルを、基板2に形成した貫通孔3を通過させる。なお、サンプル通過工程を実施する前に、サンプル準備工程を含んでいてもよい。サンプル準備工程は、以下の手順で行うことができる。
(1)第1チャンバー5及び第2チャンバー6に、電解液を充填する。電解液は、第1電極52及び第2電極62が通電できれば特に制限は無く、TEバッファー、PBSバッファー、HEPESバッファー、KCl水溶液等を用いればよい。このとき、第1チャンバー5内と第2チャンバー6内との間は、貫通孔3を介して液絡が取れている。
(2)サンプルを第1チャンバー5に添加する。
なお、上記(1)と(2)は、別々に行ってもよいが、サンプルが既に含まれている電解液を第1又は第2チャンバーに充填してもよい。
【0033】
サンプル通過工程(ST1)は、上記準備工程で電解液を充填した第1チャンバー5及び第2チャンバー6に配置した第1電極52及び第2電極62を通電させることで実施できる。細菌等のサンプルは表面電化を有する。したがって、第1電極52及び第2電極62に通電すると、通常の拡散に加え、第1チャンバー5に添加したサンプルは電気泳動により基板2に形成した貫通孔3を通過し、第2チャンバー6に移動するが、必要に応じて、サンプルが分散している溶液にポンプ等で圧力を加え、水流によってサンプルが貫通孔3を通過するようにしてもよい。
【0034】
イオン電流測定工程(ST2)では、通電により発生するイオン電流の値を電流計7で経時的に測定する。そして、サンプル識別工程(ST3)では、イオン電流測定工程(ST2)により測定したイオン電流のピーク値から、サンプルを識別すればよい。具体的には、イオン電流の測定値の低下の程度によりサンプルの大きさを識別できる。
【0035】
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。
【実施例】
【0036】
〔デバイスの作製〕
先ず、両表面に50nmの窒化シリコン膜を持つ面方位(100)のシリコンウエハー(E&M CO.,LTD)を25mm四方に切った。基板の一方の面に約500μm四方の領域の孔が形成されているエッチング防止用のメタルマスクをかぶせ、RIE装置(RIE-10NR、SAMCO CO.,Ltd)によって、孔が形成されている500μm四方の領域のみ窒化シリコン膜を除去し、シリコン表面をむき出しにした。その後、むき出しにした部分のシリコンのみを選択的に水酸化カリウム水溶液(和光純薬株式会社)によって、約3時間かけて125℃のホットプレート(Hot plate NINOS ND-1、As One CO.,Ltd)上でウェットエッチングを行った。この操作により、基板の他方の面の窒化シリコン膜に到達するまでシリコンをエッチングした。窒化シリコン膜に到達したシリコンの孔は約150μm四方であった。
【0037】
次に、上記約150μm四方のシリコンの孔を覆っている窒化シリコン膜のほぼ中央に、電子線描画法により貫通孔3のパターンの描画を行った。次いで、像液に浸して現像を行い、RIE装置によって反応性エッチングにより、窒化シリコン膜に円筒状の貫通孔3を形成した。デバイスは、貫通孔3の数が1~7個、直径が300nm~3.4μm、隣り合う貫通孔同士の距離が30nm~10μm、となるように、各種実施形態を組合わせて作製した。なお、貫通孔3の長さは約50nmであった。
【0038】
[識別装置の作製]
次に、[デバイスの作製]で作製した基板2の上下に、電極、電解液及びサンプル投入用の孔を設けたジメチルポリシロキサン(PDMS)製のポリマーブロック(TORAY社製)を液密に貼り付け、第1チャンバー5及び第2チャンバー6を作製した。第1チャンバー5及び第2チャンバー6の容量は、各々約10μlであった。第1電極52及び第2電極62には銀塩化銀電極を用い、ポリマーブロックに設けた孔から第1チャンバー5及び第2チャンバー6に挿入した。電源54として電池駆動のバイアス電源(アクシスネット)を用い、リードを介して第1電極52に接続した。電流計7には、電流アンプと1MHzの高時間分解能を持つデジタイザ(NI5922, National Instruments)を用いてデータの取得を行い、取得したデータは、RAIDドライブHDD(HDD-8263、National Instruments Co.)に格納した。
【0039】
[サンプルの識別方法の実施例1]
1.サンプル液の調整
サンプルには、直径780nmのカルボキシ基修飾ポリスチレン粒子(Thermo Scientific社製Reagent Microspheres)を用い、電解液(TEバッファー:ニッポンジーン社製TE(pH 8.0))1mlにポリスチレン粒子懸濁液1μlを懸濁することでサンプル液を作製した。
【0040】
2.イオン電流の測定
作製した識別装置の第2チャンバー6に、電解液(TEバッファー:ニッポンジーン社製TE(pH 8.0))を充填した。次に、上記1.で調整したサンプル液を第1チャンバー5に加え、第1電極52及び第2電極62に800mVの電圧を印加し、イオン電流Iionを測定した。
【0041】
図5A~
図5Eは、イオン電流の測定結果を示すチャートである。イオン電流値が大幅に低下している箇所は、ポリスチレン粒子が貫通孔3を通過したことを示している。
図5B~
図5Dは、直径1.2μmの貫通孔3を略正方形となるように4個配置したデバイスを用いており、貫通孔3の距離が、
図5Bは100nm、
図5Cは1μm、
図5Dは10μmとなるように配置した。また、
図5A及び
図5Eは、比較用のデバイスを用いた例を示しており、
図5Aは直径1.2μmの4個の貫通孔を足した大きさと同じである直径2.4μmの貫通孔3を一個配置した。また、
図5Eは、
図5B~
図5Dと同じ直径1.2μmの貫通孔3を一個配置した。
【0042】
図5B~
図5Dから明らかなように、隣り合う貫通孔3の距離を短くする程、貫通孔3の大きさは同じであるにもかかわらず、イオン電流のピーク値が小さくなった。そして、
図5Aおよび
図5Bを参照すると、
図5Bでは貫通孔3を4個配置しているが、隣り合う貫通孔3の距離は100nmと短いため、測定したイオン電流のピーク値は、
図5Bの4個の貫通孔を足した大きさの貫通孔3を一個形成した
図5Aのイオン電流のピーク値と近い値となった。一方、
図5Dおよび
図5Eを参照すると、
図5Dでは貫通孔3を4個配置しているが、隣り合う貫通孔3の距離は10μmと離れているため、測定したイオン電流のピーク値は、同じ大きさの貫通孔3を一個形成した
図5Eのイオン電流のピーク値とほぼ同じであった。
【0043】
[サンプルの識別方法の実施例2]
次に、サンプルとして直径900nmのポリスチレン粒子を用い、貫通孔3を7個配置したデバイスを用いた実験を行った。
図6A~
図6Eは、イオン電流の測定結果を示すチャートである。
図6B~
図6Dは、直径1.2μmの貫通孔3を7個配置しており、隣り合う全ての貫通孔3の距離が、
図6Bは100nm、
図6Cは1μm、
図6Dは10μmとなるように配置した。また、
図6A及び
図6Eは、比較用のデバイスを用いた例を示しており、
図6Aは直径1.2μmの7個の貫通孔と同じ面積である直径3.2μmの貫通孔3を一個配置した。また、
図6Eは、
図6B~
図6Dと同じ直径1.2μmの貫通孔3を一個配置した。サンプルのサイズと貫通孔3の配置以外は、[サンプルの識別方法の実施例1]と同様の手順でイオン電流の測定を行った。以下の実施例においても、サンプルとデバイスの配置以外は、イオン電流の測定手順は同じである。
【0044】
図6A~
図6Eから明らかなように、貫通孔3の数を4個→7個に変更した場合でも、イオン電流のピーク値については、
図5A~
図5Eと同様の傾向が見られた。しかしながら、
図6Aおよび
図6Bから明らかなように、7個の貫通孔3を100nmの距離に配置した場合のイオン電流のピーク値は、
図6Aとほぼ同じであった。換言すると、貫通孔3を7個形成しているにもかかわらず、同等の開口面積を有する貫通孔を一つ形成した場合と同じ測定精度となった。また、
図6Dおよび
図6Eから明らかなように、7個の貫通孔3を10μmの距離に配置した場合のイオン電流のピーク値は、
図6Eのイオン電流のピーク値よりやや低い値となった。
【0045】
[サンプルの識別方法の実施例3]
次に、サンプルとして直径200nmのポリスチレン粒子を用い、貫通孔3の直径を300nm、貫通孔3の数を1~7個、貫通孔3の距離を100nmとなるように配置したデバイスを用いた実験を行った。
図7A~
図7Eは、イオン電流の測定結果を示すチャートである。
図7A~
図7Eから明らかなように、貫通孔3の数を多くするほど、イオン電流のピーク値は小さくなった。一方、貫通孔3の数が多い程、単位時間当たりのピークの数、換言すると、単位時間当たりに貫通孔3を通過するサンプルの数が多くなることを確認した。
【0046】
以上の結果より、基板2上に形成する貫通孔3の数を多くするほど、隣り合う貫通孔3の距離を長くした方がイオン電流のピーク値が大きくなることから、識別精度(測定感度)が向上すること、および、貫通孔3の数を多くするほど、単位時間当たりに貫通孔3を通過するサンプルの数が多くなることからが明らかとなった。したがって、形成する貫通孔3の数と識別精度を考慮し、単位面積当たりに形成する貫通孔3の数と距離を適宜調整すればよい。
【0047】
[サンプルの識別方法の実施例4]
次に、貫通孔3の距離を更に詳細に検討する実験を行った。サンプルとして直径780nmのポリスチレン粒子を用い、直径は1.2μmの貫通孔3を2個配置し、貫通孔3の距離を30nm(
図8B)、50nm(
図8C)、100nm(
図8D)、200nm(
図8E)、400nm(
図8F)、600nm(
図8G)、1000nm(
図8H)、と変化させた。比較対象として、直径1.44μmの貫通孔3を1個配置したデバイス(
図8A)でも実験を行った。なお、
図8A~
図8Hは、複数のサンプルが貫通孔3を通過した際のイオン電流の測定値を重ね合わせたグラフであり、横軸はイオン電流のピーク値、縦軸は該当するイオン電流のピーク値を示したサンプルの数を表す。
【0048】
図8Aに示す通り、サンプルサイズに比較して貫通孔3のサイズが比較的大きい場合には、イオン電流のピーク値の分布は大きく二つに分かれた。これは、サンプルが貫通孔3を通過する際に、貫通孔3の中央付近を通過した場合と、貫通孔3の周辺部分を通過した場合では、その瞬間に生じる電場の不均一性が異なるため、中央付近を通過した時には周辺部分を通過した時に比して小さなイオン電流の減少が起きることから、粒子のポア通過位置に応じたイオン電流の分布が観測されたためと考えられる。一方、
図8Bに示すように、貫通孔3の距離が30nmと非常に短い場合は、
図8Aと同様、イオン電流のピーク値の分布は大きく2つに分かれたが、
図8C~
図8Hから明らかなように、貫通孔3の距離が長くなるにしたがってイオン電流のピーク値の2つの異なる分布の差は小さくなった。そして、
図8Eに示すように、貫通孔3の距離を200nmとした場合には、イオン電流のピーク値の明確な2つの分布は見られなくなり、加えて、分布のピーク位置がそれ以上ポア間の距離を離しても変わらず一定であった。以上の結果より、貫通孔3を少なくとも2以上形成する場合は、貫通孔3の距離を200nm以上とすることが好ましいことが明らかとなった。
【0049】
[サンプルの識別方法の実施例5]
次に、サンプルとして直径510nm、780nm、900nmの3種類のポリスチレン粒子を用い、直径が1.2μmの貫通孔3を7個配置したデバイスを用いてサンプルの識別実験を行った。
図9Aは、貫通孔3の距離が全て10μmの場合のイオン電流のピーク値の分布を示すグラフ、
図9Bは貫通孔3の距離が全て100nmの場合のイオン電流のピーク値の分布を示すグラフである。
図9Bのグラフから明らかなように、貫通孔3の距離を100nmとした場合には、サンプルのサイズが780nmと900nmのイオン電流のピークが重なり、サンプルの識別は困難であった。一方、
図9Aのグラフから明らかなように、貫通孔3の距離を長くした場合には、サンプルのサイズに応じたイオン電流のピーク分布が得られ、サイズが異なるサンプルであっても、識別をすることができた。
【0050】
[サンプルの識別方法の実施例6]
次に、サンプルとして780nmのポリスチレン粒子を用い、直径が1.2μmの貫通孔3を2個配置したデバイスを用いてイオン電流の測定を行った。
図10Aは貫通孔3の距離が100nm、
図10Bは貫通孔3の距離が1μm、
図10Cは貫通孔3の距離が10μmで、
図10A~
図10Cの上段はイオン電流測定の際のベース電流の変化を示すグラフ、下段は個々のサンプルが貫通孔3を通過する際のイオン電流のピーク値の変化をドットとして示したグラフである。上段の矢印で示した箇所は、貫通孔3にサンプルが詰まったため、ベース電流が大幅に変化した箇所(時間)を表している。下段の矢印も、貫通孔3にサンプルが詰まった箇所(時間)を表している。
図10Aに示す通り、貫通孔3の距離が短い場合は、貫通孔3が詰まった後では、検出するイオン電流のピーク値に顕著な変化が見られた。一方、
図10B及び
図10Cから明らかなように、貫通孔3の距離を長くするほど、詰まった後のイオン電流のピーク値の変化は小さくなった。以上の結果から、貫通孔3の距離を長くするほど、仮に、貫通孔3の何れかがサンプルにより目詰まりを起こしても、測定結果に影響を及ぼしにくいという顕著な効果を奏することが明らかとなった。
【0051】
なお、サンプルの識別方法の実施例1~6では、貫通孔3と貫通孔3の距離が10μmまでの例で実施したが、測定結果から、貫通孔3と貫通孔3の距離を長くした方が、識別精度との観点では望ましいことは明らかである。したがって、必要に応じて、貫通孔3と貫通孔3との距離を、10μmより長く、例えば、11μm以上、12μm以上、13μm以上、14μm以上、としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本明細書で開示するデバイスを用いてサンプル識別方法を実施すると、サンプルの識別精度が向上し、サイズの異なるサンプルであっても識別ができる。したがって、分析機器産業における分析装置の開発に有用である。
【符号の説明】
【0053】
1、1a、1b…サンプル識別用デバイス、2…基板、3…貫通孔、5…第1チャンバー、6…第2チャンバー、7…電流計、8…解析部、9…表示部、10…プログラムメモリ、11…制御部、21…第1面、22…第2面、31…第1開口、32…第2開口、51…第1チャンバー部材、52…第1電極、53…リード、54…電源、55…アース、61…第2チャンバー部材、62…第2電極、63…リード、64…アース、100…識別装置、S1、S2…サンプル