(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】集合平角線加工品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21F 5/00 20060101AFI20231207BHJP
B21F 15/04 20060101ALI20231207BHJP
H02K 15/04 20060101ALN20231207BHJP
【FI】
B21F5/00
B21F15/04 Z
H02K15/04 A
(21)【出願番号】P 2021022381
(22)【出願日】2021-02-16
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000132574
【氏名又は名称】株式会社セルコ
(74)【代理人】
【識別番号】100081271
【氏名又は名称】吉田 芳春
(72)【発明者】
【氏名】小林 靖知
(72)【発明者】
【氏名】浅沼 佑治
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-258201(JP,A)
【文献】特開2003-086446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21F 5/00
B21F 15/04
H02K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁皮膜を有する複数の素線からなる集合線を所定形状に曲げて成形する曲げ成形工程と 、
前記曲げ成形工程で所定の形状に成形された集合線を、断面が平角形状となるように平角形状化する平角形状化工程と、
前記平角形状化工程で平角形状化された集合線の少なくとも一部を熱融着により一体化する一体化工程とを備えていることを特徴とする集合平角線加工品の製造方法。
【請求項2】
前記曲げ成形工程では、前記集合線を、四角形断面の溝を有する一方の金型の前記溝にセットし所定形状に曲げて成形し、前記平角形状化工程では、前記溝に嵌め合い可能な凸部を有する他方の金型で加圧して前記集合線を平角形状化させ、その状態を保持したまま前記一体化工程で加熱し一体化することを特徴とする請求項1に記載の集合平角線加工品の製造方法。
【請求項3】
前記集合線は、絶縁皮膜を有する複数の断面形状が円形状の丸線を撚り合わせてなるリッツ線で、かつ前記絶縁
皮膜の周りをさらに被覆する融着被膜を有する自己融着線であることを特徴とする請求項1又は2に記載の集合平角線加工品の製造方法。
【請求項4】
前記リッツ線の撚りピッチは、150mm以上であることを特徴とする請求項3に記載の集合平角線加工品の製造方法。
【請求項5】
絶縁皮膜を有する複数の素線を集合させてなる集合線を形成する集合線形成工程をさらに備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の集合平角線加工品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、束ねられた複数の素線をコイル等の形状に成形し、平角線化してなる集合平角線加工品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリット車や電気自動車の車載モータの高性能化に対応してコイルには平角線を使用するようになっている。また、コイルの占積率のさらなる向上やトルクの向上を目的として巻線の断面積が大きくなる傾向にある。しかし、断面積が大きくなるにつれて渦電流損失が増大する問題があった。この渦電流損失への対策として、モータのステータコアに設けられるコイルの導体として複数本のエナメル線素線を一体化した集合線を用いる方法が注目されている。集合線を用いることにより、単線に比べて、渦電流の影響により生じる導体損失(渦損失)を低減することができる利点がある。
【0003】
従来、車載モータ用ヘアピンコイル等の集合平角線加工品の製造は、まず、複数本のエナメル線素線(角線又は丸線)を直線状に伸ばして集合する。次に、集合した複数本のエナメル線素線を断面形状が角形状の集合平角線に成形する。次に、エナメル線素線の絶縁被膜の上にコーティングされたポリアミド等の熱融着皮膜を加熱硬化させ、集合平角線のベンディング用の直線的な母線(曲げ加工前の集合線)を作成する。そして、この集合平角線の母線をベンディング機(マルチベンダー等)で曲げ加工し、集合平角線のヘアピンコイル等の加工品を成形する。
【0004】
また、複数本のエナメル線素線を撚合わせた後、断面が平角形状となるように成形して成る平角リッツ線を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
特許文献1に記載されている平角リッツ線の製造方法は、まず、素線として複数本の自己融着性エナメル線を用意する。次に、これら複数本の自己融着性エナメル線を撚合わせして断面が円形の丸リッツ線とする。最後に、この自己融着性平角リッツ線を加熱炉内に間欠的に送り出すことにより、長手方向に沿って一定間隔毎に熱融着部と非熱融着部とが交互に繰り返して設けられた構成の平角リッツ線を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の集合平角線加工品の製造では、加熱硬化させた集合平角線を用いて曲げ加工するため、複雑な形状に曲げる必要のあるヘアピンコイル等の加工品を成形する際に、エナメル線素線の絶縁被膜の破れや損傷、導線の伸びによる抵抗値の増加、断線等が発生し、導線の信頼性を確保できないという問題点があった。
【0008】
また、従来の集合平角線製造方法により製造された集合平角線でヘアピンコイル等の加工品を成形する場合、細いエナメル線素線の加熱硬化された集合体であるため、曲げ加工後、
図11に示すように、内周の導線と外周の導線との半径に差が生じ、外周の導線は引っ張りに耐えられず、内周へ入り込もうとし、内周の導線は縮めないため外へ逃げようとして変形したり潰れてしまったりする。その際には導線同士に非常に乱雑な負荷がかかるので、絶縁被膜の損傷や細い導線が断線してしまう可能性があるという問題点があった。
【0009】
従って、本発明の目的は、曲げ加工による素線(導線)同士間にかかる負荷を軽減することができる集合平角線加工品の製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、低コストで大量生産に適する集合平角線加工品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、集合平角線加工品の製造方法は、絶縁皮膜を有する複数の素線からなる集合線を所定形状に曲げて成形する曲げ成形工程と、曲げ成形工程で所定の形状に成形された集合線を、断面が平角形状となるように平角形状化する平角形状化工程と、平角形状化工程で平角形状化された集合線の少なくとも一部を熱融着により一体化する一体化工程とを備えている。
【0012】
ヘアピンコイル等の集合平角線加工品を製造する際に、集合線の少なくとも一部を熱硬化樹脂又は熱可塑性樹脂の熱融着により一体化する前に、集合線を所定の形状に曲げて成形し、断面が平角形状となるように平角形状化することで、曲げ成形する際に単線が互いに負荷なく型内で自由に移動しやすく、曲げ加工による導線(素線)同士間にかかる負荷を軽減することができ、エナメル線素線の絶縁被膜の破れや損傷等の発生を回避し、導線の伸びによる抵抗値の増加、断線の危険性を最小限にし、電気的信頼性を確保することができる。
【0013】
曲げ成形工程では、前記集合線を、四角形断面の溝を有する一方の金型のこの溝にセットし所定形状に曲げて成形し、平角形状化工程では、溝に嵌め合い可能な凸部を有する他方の金型で加圧して集合線を平角形状化させ、その状態を保持したまま一体化工程で加熱し一体化することが好ましい。
【0014】
集合線は、絶縁皮膜を有する複数の断面形状が円形状の丸線を撚り合わせてなるリッツ線で、かつ絶縁皮膜の周りをさらに被覆する融着被膜を有する自己融着線であることが好ましい。
【0015】
リッツ線の撚りピッチは、150mm以上であることが好ましい。
【0016】
絶縁皮膜を有する複数の素線を集合させてなる集合線を形成する集合線形成工程をさらに備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の集合平角線加工品の製造方法によれば、絶縁皮膜を有する複数の素線からなる集合線を所定の形状に曲げて成形し、成形された集合線を、断面が平角形状となるように平角形状化した後に、集合線の少なくとも一部を熱硬化樹脂又は熱可塑性樹脂の熱融着により一体化することで、曲げ成形する際に単線が互いに負荷なく型内で自由に移動しやすく、曲げ加工による導線同士間にかかる負荷を軽減することができ、エナメル線素線の絶縁被膜の破れや損傷等の発生を回避し、導線の伸びによる抵抗値の増加、断線の危険性を最小限にし、電気的信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る集合平角線加工品の製造方法でヘアピンコイルを製造する工程を示すフローチャートである。
【
図2】本発明に係る集合平角線加工品の製造方法の集合線形成工程で形成された集合線を概略的に示す斜視図である。
【
図3】本発明に係る集合平角線加工品の製造方法の曲げ成形工程、平角形状化工程及び一体化工程で使用される成形金型及び集合線の一例を示す斜視図である。
【
図4】本発明に係る集合平角線加工品の製造方法の平角形状化工程で集合線を平角形状化する状態を示す端面図である。
【
図5】本発明に係る集合平角線加工品の製造方法により製造された集合平角線加工品の一例を示す斜視図である。
【
図6】本発明に係る集合平角線加工品の製造方法により製造されたヘアピンコイルと従来の製造方法で製造されたヘアピンコイルとの比較図である。
【
図7】本発明に係る集合平角線加工品の製造方法の集合線形成工程で形成された集合線の他の構成例を概略的に示す斜視図である。
【
図8】本発明に係る集合平角線加工品の製造方法により製造された集合平角線加工品の他の例を概略的に示す斜視図である。
【
図9】本発明に係る集合平角線加工品の製造方法により製造された集合平角線加工品のさらに他の例を概略的に示す斜視図である。
【
図10】本発明に係る集合平角線加工品の製造方法の平角形状化工程及び一体化工程で使用される成形金型及び製造された集合平角線加工品の他の構成例を示す斜視図である。
【
図11】従来の集合平角線加工品の製造方法により製造されたヘアピンコイルの湾曲部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る集合平角線加工品の製造方法の実施形態を、図を参照して説明する。
【0020】
図1は本発明の一実施形態に係る集合平角線加工品の製造方法を示している。
図2は集合線形成工程で形成された集合線を示している。
図3は曲げ成形工程、曲げ成形工程及び平角形状化工程で使用する成形金型及び配置される丸形集合線を示している。
図4は平角形状化工程で加圧により集合線が平角形状化された状態を示しており、同図(A)は加圧前の成形金型及び集合線の端面の状態を示しており、(B)は加圧後の成形金型及び平角形状化された集合線の端面を示している。
図5は本発明に係る集合平角線加工品の製造方法により製造された集合平角線加工品を示している。
【0021】
集合平角線加工品の製造方法は、
図1に示すように、まず、絶縁皮膜を有する複数の素線を集合させて集合線を形成する集合線形成工程(ステップS1)と、集合線形成工程で形成された集合線を所定の形状に曲げて成形する曲げ成形工程(ステップS2)と、曲げ成形工程で所定の形状に成形された集合線を、断面が平角形状となるように平角形状化する平角形状化工程(ステップS3)と、平角形状化工程で平角形状化された集合線の少なく一部を熱硬化樹脂(又は、熱可塑性樹脂)を加熱することにより一体化する一体化工程(ステップS4)とを備えている。
【0022】
集合線形成工程(ステップS1)においては、絶縁皮膜を有する複数の素線、例えば、断面形状が円形状のエナメル線10aを集合させて撚り合わせてなる丸形リッツ線が集合線100aとする(
図2参照)。ここで、エナメル線は、例えば、φ0.2mm、100本の絶縁皮膜の表面に熱硬化樹脂からなる熱融着被膜を有する自己融着線である。複数本のエナメル線素線を束ねる場合、素線同士の当たりが滑らかで、集合時のまとまり具合も考えると、丸線のほうが安定して有利である。また、この場合、リッツ線の撚りピッチは、150mm以上であることが望ましい。また、一般的な丸型リッツ線(既成品)を用いる場合、集合線形成工程では、必要な長さに切断する作業のみとなる。そのため、低コストで大量生産に適する集合平角線加工品の製造が可能である。なお、エナメル線は、絶縁皮膜の表面に熱可塑樹脂のコーティングを有するものにしてもよい。
【0023】
曲げ成形工程(ステップS2)においては、上記の集合線形成工程で形成された集合線100aを所定の形状(例えば、ヘアピンコイル形状)に曲げて成形する。ここで、
図3に示すように、直線状の集合線100aを、下方の金型20Aの四角形断面の溝20aに沿って曲げながらセットすることで、集合線100aがU字型に成形される。なお、マルチベンダー等で集合線100aをU字型に曲げて成形した後、下方の金型20Aの四角形断面の溝20aにセットするようにしても良い。
【0024】
平角形状化工程(ステップS3)においては、上記の曲げ成形工程で所定の形状に成形された集合線100aを、断面が平角形状となるように平角形状化する。ここで、例えば、
図4(A)に示すように、曲げ成形工程で丸型の集合線100aを、下方の金型20Aの四角形断面の溝20aにセットする。そして、
図4(B)に示すように、溝20aに嵌め合い可能な凸部20bを有する上方の金型20Bで上から押し込み加圧して集合線100aを平角形状化する。これにより、集合線100bが形成される。
【0025】
一体化工程(ステップS4)においては、上記の平角形状化工程で平角形状化された集合線100bを熱硬化樹脂の加熱硬化により一体化する。ここで、例えば、絶縁皮膜の表面に熱硬化樹脂からなる熱融着被膜を有する自己融着性のエナメル線を用いる場合、金型20A及び20Bで平角形状化した後、その状態を保持したまま金型20A及び20Bを加熱し、集合線100bを熱硬化樹脂の加熱硬化により一体化する。最後に、冷却して、集合平角線加工品100を取り出す。
図5は平角形状化された集合線100bを一体化して得られた集合平角線加工品100を示している。このように、インジェクションモールドの方法や設備と類似しており、量産化を容易に実現することができる。また、自己融着性のエナメル線を用いることにより、加熱時に融着皮膜が解け、集合線内部の空隙を減らして、熱伝導効率を向上することができる。
【0026】
図6は本発明に係る集合平角線加工品の製造方法により製造されたヘアピンコイルと従来の製造方法で製造されたヘアピンコイルとの比較であり、同図(A)は本発明の集合平角線加工品の製造方法で製造されたヘアピンコイルと従来の製造方法で製造されたヘアピンコイルの湾曲部を示しており、(B)は本発明の集合平角線加工品の製造方法で製造されたヘアピンコイルの湾曲部の拡大図である。
図6に示すように、本発明の集合平角線加工品の製造方法で製造されたヘアピンコイルは、従来の製造方法で製造されたヘアピンコイルと比較して急なアールで曲げた部分は、曲げ加工後、外周の導線は引っ張りにより内周へ入り込み、内周の導線は縮めないため外へ逃げて変形し、湾曲部の形状が潰れてしまうことがなくなる。
【0027】
上述したように、本実施形態の集合平角線加工品の製造方法は、絶縁皮膜を有する複数の素線を集合させてなる集合線100aを形成し、形成された集合線100aを所定の形状に曲げて成形し、成形された集合線100aを、断面が平角形状となるように平角形状化にした後に、平角形状化された集合線100bを熱硬化樹脂の加熱硬化により一体化することにより、占積率を向上すると共に、曲げ成形する際に単線が互いに負荷なく型内で自由に移動しやすく、曲げ加工による導線同士間にかかる負荷を軽減することができ、エナメル線素線の絶縁被膜の破れや損傷等の発生を回避し、導線の伸びによる抵抗値の増加、断線の危険性を最小限にし、電気的信頼性を確保することができる。
【0028】
また、集合線100aには丸型リッツ線を用いることで、低コストで大量生産に適する集合平角線加工品の製造ができる。また、撚りピッチが150mm以上のリッツ線を用いることで、占積率をさらに向上することができる。
【0029】
なお、上述した実施形態において、集合線100aは撚りピッチ150mm以上である例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、集合線100aとして一般的な丸型リッツ線を用いても良い。この場合、撚りピッチは比較的に小さいため、得られた集合平角線加工品の占積率が撚りピッチ150mm以上のものより多少低い。
【0030】
また、上述した実施形態においては、集合線形成工程で複数の素線を集合させて形成された丸型リッツ線を集合線100aとして用いた例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、集合線形成工程で絶縁皮膜を有する複数の素線を集合させてなる他の形状の集合線(
図7参照)を用いても良い。
【0031】
図7は他の集合線の構成例を示している。同図(A)は丸線平角形リッツ線100cであり、(B)は絶縁皮膜を有する複数の丸線を直線状に伸ばして並列に集合させてなる丸線丸形集合線100dであり、(C)は絶縁皮膜を有する複数の丸線を直線状に伸ばして並列に集合させてなる丸線平角形集合線100eである。
図7(A)に示す丸線平角形リッツ線100cの場合、集合線形成加工が困難であるが、占積率を向上することができる。この場合、撚りピッチは、150mm以上であることが望ましい。また、
図7(B)及び(C)に示す丸線丸形集合線100dと丸線平角形集合線100eの場合、集合線形成工程において、絶縁皮膜を有する複数の素線を並列に集合させ、ポリエステル繊維のテトロン(登録商標)又は樹脂テープで巻き、固定することで集合線を形成することができる。なお、集合線として、絶縁皮膜を有する複数の角線を直線状に伸ばして並列に集合させ、テトロン(登録商標)又は樹脂テープで巻き、固定してなる角線平角形集合線を用いても良い。
【0032】
また、上述した実施形態においては、平角形状化工程で3D形状の溝を有する金型を用いた例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。2D形状の溝を有する金型を用いても良い。金型の形状を工夫することにより、他の形状のコイルを加工することもできる。例えば、
図8に示すような従来の集合線では不可能であった同一コイル内での同一断面積での外形形状の変化が可能となる。即ち、ヘアピンコイルのスタート部とエンド部の形状を変化させることができる。
図8(A)はコイルのカーブの部分(コイルエンド部)の径方向の高さを小さくした例を示している。例えば、EVモータ用のヘアピンコイルの場合、スロット内は通常の平角線形状であり、コイルエンド部の高さを抑えてモータ全体の高さを小さくするような設計が可能となる。また、
図8(B)はヘアピンコイルのスタート部からコイルのカーブの部分に向けて厚みが次第に薄くなっている例を示している。このように、集合線を構成する素線(単線)の径と本数が変わらないため、集合線全体の断面積が変わらず、抵抗値の変化を抑え、コイルの電気特性に影響を与えないことができる。
【0033】
また、上述した実施形態においては、集合平角線加工品としてヘアピンコイルの例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
図9に示すような渦巻き状コイル100Cにも適用できる。この渦巻き状コイル100Cは、ベース板に設けられた溝に配線されてワイヤレス充電用ユニットとして利用できる。集合平角線加工品としての渦巻き状コイル100Cを用いることで、従来の丸線丸形リッツ線を用いた場合より、ワイヤレス充電用ユニットの薄型化ができ、かつコイルの占積率を向上することができる。
【0034】
また、上述した実施形態においては、集合平角線加工品としてのヘアピンコイル100の全体を熱硬化樹脂の加熱により一体化した例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、
図10に示すように、ヘアピンコイルの一部のみを熱硬化樹脂の加熱により一体化するようにしても良い。
図10は、本発明に係る集合平角線加工品の製造方法の平角形状化工程及び一体化工程で使用される金型(30A及び30B)及び製造された集合平角線加工品100Dの構成を示している。
図10(A)に示すように、分割した金型を用意して、平角形状化工程(ステップS3)においては、集合線100aをU字型に曲げて成形した後、コイルの直線部の一部を下方の金型30Aの四角形断面の溝30aにセットする。次に、溝30aに嵌め合い可能な凸部30bを有する上方の金型30Bで上から押し込み加圧して集合線100aを平角形状化する。そして、金型(30A及び30B)をHI方式により各々集中加熱することで部分硬化させる。これにより、
図10(B)に示すように、集合平角線加工品100Dが形成される。この集合平角線加工品100Dは、直線部D1が平角形状化、かつ一体化され、カーブの部分(コイルエンド部)D2が平角形状化、一体化されず、一つのヘアピンコイル内で硬化部分と自由な部分(硬化しない部分)とが同時に存在する。そのため、後続工程において、例えばコイルの端末はヒュージングや溶接でバスバー等に接続加工する、又はコイルのカーブの部分D2はコイルエンドとして引き回し処理をするため、場合によっては加熱硬化していない方が後続作業の作業効率が良い場合がある。
【0035】
また、上述した実施形態において、エナメル線は絶縁皮膜の表面に熱硬化樹脂からなる熱融着被膜を有する自己融着線である例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、熱融着被膜を有しないエナメル線を用いる場合、一体化工程で集合線の複数の素線の隙間に熱硬化樹脂又は熱可塑性樹脂を充填して加熱するようにしても良い。
【0036】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態を技術的範囲に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、特に、車載モータ用ヘアピンコイル等のような複雑な形状に曲げる必要がある集合平角線加工品を製造する目的に利用できる。
【符号の説明】
【0038】
10a 素線(単線)
20a、30a 角溝
20b、30b 凸部
20A、30A 下部金型
20B、30B 上部金型
100a、100c、100d、100e 集合線
100b 平角形状化にした集合線
100、100A、100B、100C、100D 集合平角線加工品
D1 直線部
D2 カーブの部分(コイルエンド部)