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特許7398122電子部品の製造方法及びペースト塗布装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】電子部品の製造方法及びペースト塗布装置
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20231207BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20231207BHJP
【FI】
H01G4/30 311
H01G13/00 307Z
H01G4/30 517
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021093759
(22)【出願日】2021-06-03
(65)【公開番号】P2022185865
(43)【公開日】2022-12-15
【審査請求日】2023-05-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】318004501
【氏名又は名称】株式会社クリエイティブコーティングス
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英児
(72)【発明者】
【氏名】坂本 仁志
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-013214(JP,A)
【文献】特開2021-057448(JP,A)
【文献】特開平09-293650(JP,A)
【文献】特開平09-162084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
H01G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って配列されたN(Nは2以上の整数)個の電子部品本体の各々の端部に導電性ペーストを塗布して電子部品を製造する方法において、
ディップ層形成部のN個の孔の各々に前記導電性ペーストのディップ層を形成する第1工程と、
前記N個の電子部品本体を前記ディップ層形成部に対して相対的に、前記ディップ層形成部の主面と交差する第2方向に移動させて、前記端部を前記N個の孔の各々の第1開口端を介して前記ディップ層に浸漬させる第2工程と、
前記N個の電子部品本体を前記ディップ層形成部に対して相対的に、前記第2方向とは逆向きの第3方向に移動させて、前記端部を前記第1開口端の外に退避させる第3工程と、
前記端部に塗布された前記導電性ペーストが前記ディップ層とつながった状態にあるときに、前記N個の電子部品本体を前記ディップ層形成部に対して相対的に前記第1方向と平行に移動させて、前記端部に塗布された前記導電性ペーストのうち余分なペーストを、前記第1開口端によって掻き取って除去する第4工程と、
を有する電子部品の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記第4工程は、前記第2方向及び前記第3方向が鉛直方向と平行である場合、前記N個の孔の各々に形成されている前記ディップ層の上面が、前記第1開口端の高さ位置よりも下がっている時に実施される電子部品の製造方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記N個の孔は、前記第1開口端と反対側に第2開口端を有する貫通孔であり、
前記第1工程では、前記N個の貫通孔の各々に形成される前記ディップ層の上面が前記第1開口端と面一とされ、
前記第4工程の前に、前記第2開口端を介して前記導電性ペーストを排出させて、前記ディップ層の上面を前記第1開口端の高さ位置よりも下げる工程をさらに有する電子部品の製造方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記ディップ層形成部を第1ディップ層形成部としたとき、前記第1ディップ層形成部に平面視で重ねて配置され、前記第1ディップ層形成部との距離が可変である第2ディップ層形成部がさらに用意され、
前記第2ディップ層形成部には、前記N個の貫通孔の各々の前記第1開口端とは反対側の前記第2開口端を介して前記ディップ層とつながる導電性ペースト溜まりが配置され、
前記第4工程の前に、前記第1ディップ層形成部に対して相対的に前記第2ディップ層形成部を前記第2方向に移動させる電子部品の製造方法。
【請求項5】
請求項3または4において、
前記第1開口端を介して前記N個の貫通孔の各々に前記導電性ペーストを供給する工程と、
その後に、前記ディップ層形成部の上面に残存する前記導電性ペーストを掻き取る工程と、
を含む電子部品の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項において、
前記電子部品本体がN×M(Mは2以上の整数)個用意され、
前記N個の貫通孔は、前記第1方向と直交する方向を長手方向として、前記M個の電子部品本体が嵌入可能な前記長手方向の長さをそれぞれ有するN個のスリットであり、
前記第4工程は、前記N×M個の電子部品本体の各々の前記端部に塗布された前記導電性ペーストのうち、前記余分なペースト材を、前記N個のスリットの各々の前記第1開口端によって除去する電子部品の製造方法。
【請求項7】
N(Nは2以上の整数)個の電子部品本体の各々の端部に導電性ペーストを塗布するペースト塗布装置であって、
第1ディップ層形成部と、
前記第1ディップ層形成部に平面視で重ねて配置され、前記第1ディップ層形成部との距離が可変である第2ディップ層形成部と、
を有し、
前記第1ディップ層形成部は、第1平板と、前記第1平板の厚さ方向で貫通され、前記導電性ペーストのディップ層が形成されるN個の貫通孔と、を含み、
前記N個の貫通孔の各々が、
前記電子部品本体の前記端部に塗布された前記導電性ペーストが前記ディップ層とつながった状態にあるときに、前記端部に塗布された前記導電性ペーストのうち余分なペーストを掻き取って除去する第1開口端と、
前記第1開口端とは反対側の第2開口端と、
を含み、
前記第2ディップ層形成部は、前記第1平板と平行な第2平板を含み、前記第2平板上には、前記N個の貫通孔の各々の前記第2開口端を介して前記ディップ層とつながる導電性ペースト溜まりが配置されるペースト塗布装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記第2平板は、前記導電性ペーストが収容される凹部を含むペースト塗布装置。
【請求項9】
請求項7または8において、
前記ペースト塗布装置は、N×M(Mは2以上の整数)個の電子部品本体の各々の端部に前記導電性ペーストを塗布するものであり、
前記N個の貫通孔は、前記M個の電子部品本体が嵌入可能な長手方向の長さをそれぞれ有するN個のスリットであるペースト塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の製造方法及びペースト塗布装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサー、インダクター、サーミスター等の電子部品本体の端面には、導電性ペースト層をディップ塗布して、電子部品本体に外部電極を形成している。ディップ塗布されたままの導電性ペースト層の膜厚は均一化されない。そこで、導電性ペーストがディップ塗布された電子部品本体を、定盤面に形成されたディップ層から引き上げた後に、電子部品本体の端部に形成された導電性ペースト層を、ディップ層が除去された定盤面に接触させることも提案されている(特許文献1)。この工程は、電子部品本
体側の余分な導電性ペーストを定盤により拭い取ることから、ブロット(blot)工程と称される。このブロット工程の実施により、電子部品本体の端部にほぼ均一の導電性ペースト層が形成されることが期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭63-45813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ブロット工程を実施しても、定盤から電子部品本体を引き上げると、電子部品本体の導電性ペースト層は、定盤に転写された導電性ペーストの表面張力により定盤側に引っ張られる。また、定盤上の導電性ペーストと電子部品本体の導電性ペーストとがつながる糸引き現象も生ずる。このような現象に起因して、電子部品本体の外部電極は、端面の中心付近を覆う部分は厚く周縁付近を覆う部分は薄くなる傾向がある。
【0005】
このような外部電極は、外部電極の表面の平坦性を阻害する上、外部電極の膜厚の不均一を生ずる。また、定盤に転写された導電性ペーストの表面張力により、特に電子部品本体の端面と側面とのコーナー部で、導電性ペースト層が定盤側に移動して、コーナー部の膜厚が薄くなる。このような外部電極を有する電子部品を基板に半田付けすると、はんだ付け品質が不安定となる。
【0006】
さらに、定盤を用いて、ディップ塗布工程とブロット工程とを実施するためには、ディップ塗布後に定盤上の導電性ペーストを除去し、その後に、再度、電子部品を定盤と接触させ、その後定盤より引き離さなればならない。
【0007】
本発明の幾つかの態様は、電子部品本体の端部に形成される外部電極の形状を改善することができ、さらに工程時間を短縮することができる電子部品の製造方法及びペースト塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の一態様は、
第1方向に沿って配列されたN(Nは2以上の整数)個の電子部品本体の各々の端部に導電性ペーストを塗布して電子部品を製造する方法において、
ディップ層形成部のN個の孔の各々に前記導電性ペーストのディップ層を形成する第1工程と、
前記N個の電子部品本体を前記ディップ層形成部に対して相対的に、前記ディップ層形成部の主面と交差する第2方向に移動させて、前記端部を前記N個の孔の各々の第1開口端を介して前記ディップ層に浸漬させる第2工程と、
前記N個の電子部品本体を前記ディップ層形成部に対して相対的に、前記第2方向とは逆向きの第3方向に移動させて、前記端部を前記第1開口端の外に退避させる第3工程と、
前記端部に塗布された前記導電性ペーストが前記ディップ層とつながった状態にあるときに、前記N個の電子部品本体を前記ディップ層形成部に対して相対的に前記第1方向と平行に移動させて、前記端部に塗布された前記導電性ペーストのうち余分なペーストを、前記第1開口端によって掻き取って除去する第4工程と、
を有する電子部品の製造方法に関する。
【0009】
本発明の一態様では、第1工程及び第2工程の実施によりN個の電子部品本体の端部がディップ層に浸漬され、第3工程の実施により前記端部がディップ層から引き上げられ、第4工程の実施により電子部品本体の端部に塗布された導電性ペーストのうち余分なペーストが掻き取られて除去される。それにより、電子部品本体の端部に塗布された導電性ペーストが整形される。
【0010】
特に、第4工程により、前記端部に塗布された導電性ペーストのうち余分なペーストが掻き取られて除去されると同時に、前記端部に塗布されていた導電性ペーストがディップ層から強制的に切断される。それにより、電子部品本体の側面や、側面と端面とを結ぶ角部において、導電性ペーストの十分な膜厚が確保される(PCT/JP2020/010448も参照のこと)。
【0011】
従来のブロット工程は、電子部品本体の端部に塗布された導電性ペースト層を、ディップ層が除去された後の例えば定盤に接触させて整形していた。つまり、従来のブロット工程では定盤上のディップ層が除去されるのを待つ必要があるのに対して、ディップ層形成部のディップ層が除去されるのを待たずにペースト除去を実施できる本発明の一態様では、工程時間が短縮される。
【0012】
加えて、本発明の一態様では、N個の電子部品本体とディップ層形成部との相対的な移動だけで第2~第4工程を実施できるので、本発明方法の実施に用いられるペースト塗布装置の構造が簡易化される。
【0013】
(2)本発明の一態様(1)では、前記第4工程は、前記第2方向及び前記第3方向が鉛直方向と平行である場合、前記N個の孔の各々に形成されている前記ディップ層の上面が、前記第1開口端の高さ位置よりも下がっている時に実施されることが好ましい。こうすると、電子部品本体の端部に残る導電性ペーストとディップ層との間を連結する糸引きを強制的に切断することができる。また、第1開口端のエッジを、ディップ層に埋もれることなく露出させることができる。なお、ディップ層の上面は、第1工程の終了時点で、第1開口端の高さ位置よりも下げておいても良い。
【0014】
(3)本発明の一態様(2)では、前記N個の孔は、前記第1開口端と反対側に第2開口端を有する貫通孔とすることができる。この場合、前記第1工程では、前記N個の貫通孔の各々に形成される前記ディップ層の上面が前記第1開口端と面一である一方で、前記第4工程の前に、前記第2開口端を介して前記導電性ペーストを排出させて、前記ディップ層の上面を前記第1開口端の高さ位置よりも下げる工程をさらに有することができる。このように、N個の孔の各々を貫通孔とすることで、第2開口端を利用してディップ層の上面の位置を調整することができる。
【0015】
(4)本発明の一態様(3)では、前記ディップ層形成部を第1ディップ層形成部としたとき、前記第1ディップ層形成部に平面視で重ねて配置され、前記第1ディップ層形成部との距離が可変である第2ディップ層形成部がさらに用意されても良い。この場合、前記第2ディップ層形成部には、前記N個の貫通孔の各々の前記第1開口端とは反対側の第2開口端を介して前記ディップ層とつながる導電性ペースト溜まりが配置される。そして、前記第4工程の前に、前記第1ディップ層形成部に対して相対的に前記第2ディップ層形成部を前記第2方向に移動させることができる。第2ディップ層形成部上の導電性ペースト溜まりは第2開口端を介して各貫通孔のディップ層とつながっているので、第1ディップ層形成部に対しする第2ディップ層形成部の相対的位置に依存して、ディップ層の上面の高さ位置を調整できる。こうして、第4工程の前に、ディップ層の上面を第1開口端の高さ位置よりも下げることができる。
【0016】
(5)本発明の一態様(3)または(4)では、前記第1工程は、前記第1開口端を介して前記N個の貫通孔の各々に前記導電性ペーストを供給する工程と、その後に、前記ディップ層形成部の上面に残存する前記導電性ペーストを掻き取る工程と、を含むことができる。こうすると、N個の貫通孔の各々に形成されるディップ層の上面が第1開口端と面一となる。
【0017】
(6)本発明の一態様(1)~(5)では、前記電子部品本体はN×M(Mは2以上の整数)個用意することができる。この場合、前記N個の貫通孔は、前記第1方向と直交する方向を長手方向として、前記M個の電子部品本体が嵌入可能な前記長手方向の長さをそれぞれ有するN個のスリットとすることができる。そして、前記第4工程は、前記N×M個の電子部品本体の各々の前記端部に塗布された前記余分なペーストを、前記N個のスリットの各々の前記第1開口端によって除去することができる。こうして、N×M個の電子部品本体に対して同時に処理することができる。
【0018】
(7)本発明の他の態様は、
N(Nは2以上の整数)個の電子部品本体の各々の端部に導電性ペーストを塗布するペースト塗布装置であって、
第1ディップ層形成部と、
前記第1ディップ層形成部に平面視で重ねて配置され、前記第1ディップ層形成部との距離が可変である第2ディップ層形成部と、
を有し、
前記第1ディップ層形成部は、第1平板と、前記第1平板の厚さ方向で貫通され、前記導電性ペーストのディップ層が形成されるN個の貫通孔と、を含み、
前記N個の貫通孔の各々が、
前記端部に塗布された前記導電性ペーストが前記ディップ層とつながった状態にあるときに、前記端部に塗布された前記導電性ペーストのうち余分なペーストを掻き取って除去する第1開口端と、
前記第1開口端とは反対側の第2開口端と、
を含み、
前記第2ディップ層形成部は、前記第1平板と平行な第2平板を含み、前記第2平板上には、前記N個の貫通孔の各々の前記第2開口端を介して前記ディップ層とつながる導電性ペースト溜まりが配置されるペースト塗布装置に関する。
【0019】
本発明の他の態様(7)のペースト塗布装置を用いれば、本発明の一態様(4)に係る電子部品の製造方法を好適に実施することができる。
【0020】
(8)本発明の他の態様(7)では、前記第2平板は、前記導電性ペースト溜まりが収容される凹部を含むことができる。こうすると、本発明の一態様(4)の第4工程の前工程で、前記第1ディップ層形成部に対して相対的に前記第2ディップ層形成部を前記第2方向に移動させると、第2開口端から排出される導電性ペーストが第2ディップ層形成部の凹部内に移動される。こうして、導電性ペーストが第2ディップ層形成部上の意図しない領域に移動することを阻止できる。
【0021】
(9)本発明の他の態様(7)または(8)では、前記ペースト塗布装置は、N×M(Mは2以上の整数)個の電子部品本体の各々の端部に前記導電性ペーストを塗布するものであり、前記N個の貫通孔は、前記M個の電子部品本体が嵌入可能な長手方向の長さをそれぞれ有するN個のスリットとすることができる。こうすると、本発明の一態様(6)に係る電子部品の製造方法を好適に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る電子部品の製造方法に用いられる電子部品本体と導電性ペースト層のディップ層とを概略的に示す図である。
図2】基本原理に従ったペースト塗布方法の浸漬工程を示す図である。
図3】基本原理に従ったペースト塗布方法の退避工程を示す図である。
図4】基本原理に従ったペースト塗布方法の糸引き切断/ペースト除去工程を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係るペースト塗布装置の断面図である。
図6図1のペースト塗布装置の断面図の平面図である。
図7】複数の電子部品本体を保持する治具の正面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る電子部品の製造方法(ペースト塗布方法)の前に実施されるプリブレス工程を示す図である。
図9】ペースト塗布方法の第1工程の前半を示す図である。
図10】第1工程の後半を示す図である。
図11】第1工程が終了した状態を示す図である。
図12】第2工程を示す図である。
図13】第2工程を拡大して示す図である。
図14】第3工程と、ディップ層の上面を記第1開口端の高さ位置よりも下げる工程とを示す図である。
図15図10に示す工程の終了後であって、第4工程実施前の状態を示す図である。
図16】第4工程の終了後の状態を示す図である。
図17】第4工程の終了後の状態を拡大して示す図である。
図18】第2工程の変形例を示す図である。
図19】第1工程の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の開示において、提示された主題の異なる特徴を実施するための多くの異なる実施形態や実施例を提供する。もちろんこれらは単なる例であり、限定的であることを意図するものではない。さらに、本開示では、様々な例において参照番号および/または文字を
反復している場合がある。このように反復するのは、簡潔明瞭にするためであり、それ自体が様々な実施形態および/または説明されている構成との間に関係があることを必要とするものではない。さらに、第1の要素が第2の要素に「接続されている」または「連結されている」と記述するとき、そのような記述は、第1の要素と第2の要素とが一体的であるもの、あるいは第1の要素と第2の要素とが互いに直接的に接続または連結されている実施形態を含むとともに、第1の要素と第2の要素とが、その間に介在する1以上の他の要素を有して互いに間接的に接続または連結されている実施形態も含む。また、第1の要素が第2の要素に対して「移動する」と記述するとき、そのような記述は、第1の要素及び第2の要素の少なくとも一方が他方に対して移動する相対的な移動の実施形態を含む。
【0024】
1.ペースト塗布方法の基本原理
図1に、端部2を有する電子部品本体1と、ディップ層形成部例えば定盤5の主面5A上に均一厚に形成された導電性ペーストのディップ層3と、を模式的に示す。端部2は、端面2Aとそれに続く側面2Bと、端面2Aと側面2Bとの間の角部2Cとを含む。電子部品本体1の端部2に電極を形成して電子部品を製造する電子部品の製造方法の基本原理は、本願出願人によるPCT/JP2020/010448に記載され、以下に説明する基本工程を少なくとも含む。
【0025】
図2図4は、説明を分かり易くするために、図面中の一部の部材は寸法が誇張して描かれており、例えばディップ層3や導電性ペースト4、及び電子部品本体1の端部に塗布された導電性ペースト層4Bの寸法や形状は、他の部材の寸法や形状と比べて拡大されている。
【0026】
1.1.浸漬工程
図2に示すように、電子部品本体1を定盤5(ディップ層3)に対して相対的に、定盤5の主面5Aと交差する方向例えば主面5Aの法線方向(図2の鉛直方向)と平行な第2方向A(Z-方向)に移動させる。こうして、電子部品本体1の端部2をディップ層3に浸漬させる。図2では、電子部品本体1を第2方向(Z-方向)に下降させているが、定盤5を第2方向(Z+方向)に上昇させても良いし、電子部品本体1及び定盤5の双方を両者が互いに遠ざかる第2方向に移動させても良い。
【0027】
1.2.退避工程
その後、図3に示す工程では、電子部品本体1とディップ層3とを相対的に第2方向Aとは逆方向となる第3方向B(Z+方向)に移動させて、電子部品本体1の端部2をディップ層3から退避させる。それにより、電子部品本体1の端部2に導電性ペースト4が塗布されて形成される。図3では、電子部品本体1を第3方向(Z+方向)に上昇させているが、定盤5を第3方向(Z-方向)に下降させても良いし、電子部品本体1及び定盤5の双方を、両者が互いに遠ざかる第3方向に移動させても良い。
【0028】
1.3.糸引き切断及びペースト除去工程
その後、図4に示す工程では、電子部品本体1の端面2Aに塗布された導電性ペースト4から、破線4Aより下方の余分なペースト材(以降、余分なペースト材4Aと称する)を、ペースト除去部材例えば線材6により除去して、電子部品本体1の端部2に導電性ペースト層4Bを形成する。ペースト除去部材6は、相対的な接触移動により余分なペースト材4Aを掻き取ることができる部材であればよい。なお、図4ではペースト除去部材6を第1方向C(X+方向)に水平移動させているが、電子部品本体1を第1方向(X-方向)に水平移動させても良いし、電子部品本体1及びペースト除去部材6の双方を両者が互いに逆向きの第1方向に移動させても良い。
【0029】
ここで、図4に示す工程は、電子部品本体1の端部2に塗布された導電性ペースト4が定盤5上のディップ層3とつながった状態、つまりペースト3、4間が糸引き3Aでつながっている状態にあるときに実施される。図1に示す電子部品本体1の端面2A、側面2B及び角部2Cの膜厚は、図3の工程を継続させることにより糸引き3Aが長くなるほど薄くなり、図3の工程の継続により最終的に糸引き3Aが自然に切れる時に最も薄くなる。なぜなら、電子部品本体1の端部2に塗布された導電性ペースト4が、図3の工程中に糸引き3Aに引っ張られて、糸引き3Aに移動して吸収されるからである。
【0030】
2.ペースト塗布装置
図5及び図6は、上記基本原理に従った本発明の一実施形態であるペースト塗布装置10を概略的に示す。ペースト塗布装置10は、図1図4に示す定盤5と、図4に示すペースト除去部材6との代わりに、ペースト層形成部20(第1ディップ層形成部とも言う)を有する。ペースト層形成部20は、図5のX-Z断面に示すように、第1平板21と、X方向(第1方向)に配列されるN(Nは2以上の整数)個の電子部品本体1を挿通できる少なくともN個の孔22(22-1~22-N)を有する。本実施形態では、N個の孔22の各々は、例えば第1平板21の厚さ方向で貫通する貫通孔とすることができる。貫通孔22の各々は、第1開口端23と第2開口端24とを有する。図6のX-Y平面では、N個の貫通孔22は、Y方向を長手方向とするスリットとすることができる。この場合、N個のスリット22の各々には、M(Mは2以上の整数)の電子部品本体1を挿通できる長さを有する。よって、ペースト塗布装置10は、N×M個の電子部品本体1の端部2に同時にペースト層4B(図4参照)を形成するものである。
【0031】
本実施形態では、ペースト塗布装置10は、図6に示すように、第1ディップ層形成部20に平面視で重ねて配置され、第1ディップ層形成部20との距離D(図5参照)が可変である第2ディップ層形成部30をさらに有することができる。第2ディップ層形成部30は、図6に示すように第2平板31を有する。第2平板31は、第1ディップ層形成部20の第2開口端24と連通する凹部32を有していても良い。
【0032】
ペースト塗布装置10は、図7に示すように、例えばN×M個の電子部品本体1を保持する治具40を有することができる。治具40は、例えば、剛性のある基材41と、基材41に保持されて軟化及び硬化が可能な平板材料42とを含むことができる。軟化と硬化とに相変化する平板材料42として、熱可塑性樹脂(熱可塑性接着剤)、熱硬化性樹脂、熱可塑性エストラマー、熱硬化性エストラマー等を用いることができる。また、これらの樹脂またはエストラマーのうち、特に、形状記憶樹脂や、軟化及び硬化が可能な刺激応答性材料(ゲル、樹脂、エストラマー等)等を用いることができる。電子部品本体1を平板材料42に接着するために、平板材料42自体が接着性を有しない場合には、接着層が追加される。この治具40については、本願出願人による特願2020-66738に記載されている。
【0033】
図8は、ペースト塗布工程の前工程であるプリプレス工程を示している。治具40を定盤50に対して相対的に降下させて、電子部品本体1の端面2Aが定盤50と接触される。このとき、平板材料42は軟化状態であるので、N×M個の電子部品本体1の各々の端面2Aの位置を揃えることができる。その後平板材料42が硬化されるので、治具40は端面2Aの位置を揃えた状態でN×M個の電子部品本体1を保持できる。このプリプレス工程についても、本願出願人による特願2020-66738に記載されている。
【0034】
3.ペースト塗布工程
次に、図5に示すペースト塗布装置10を用いたペースト塗布工程について、図9図17を用いて説明する。
【0035】
3.1.ディップ層形成工程(第1工程)
図9図11は、ディップ層形成工程を示している。図9において、第1ディップ層形成部20と第2ディップ層形成部30とは、例えば密接した状態(図5の距離D=0)とされる。図9に示すように、例えば第1開口端23より、貫通孔22を通って、凹部32内に向けて、導電性ペースト材100が供給される。図10に示すように、第2ディップ層形成部30の凹部32にはペースト溜まり101が、貫通孔22内にはディップ層102が、第1ディップ層形成部20の上面には過剰ペースト材103が存在する。過剰ペースト材103は、例えばスキージ60により第1ディップ層形成部20の上面から除去されて(図10)、ペースト溜まり101及びディップ層102のみが残される(図11)。ペースト溜まり101及びディップ層102は、第2開口端24の位置でつながっている。また、本実施形態の第1工程では、N個の貫通孔22の各々に形成されるディップ層102の上面102Aが第1開口端23と面一となる。
【0036】
3.2.浸漬工程(第2工程)
図12に示すように、N×M個の電子部品本体1を保持した治具40を、相対的に第1ディップ層形成部20に近づく第2方向A(例えばZ-方向)に移動させる。それにより、N×M個の電子部品本体1の端部2が、N個のスリット22の各々の第1開口端23を介してディップ層102に浸漬される。このとき、図13に拡大して示すように、電子部品本体1の端面2Aは、ディップ層102の上面よりも低い位置となる。
【0037】
3.3.退避工程(第3工程)及びディップ層の位置調整工程
図14に示すように、N×M個の電子部品本体1を保持した治具40を、相対的に第1ディップ層形成部20から遠ざかる第3方向B(例えばZ+方向)に移動させる。それにより、図15に拡大して示すように、N×M個の電子部品本体1の端部2が貫通孔22の第1開口端23の外に退避する。換言すれば、N×M個の電子部品本体1の端面2Aが、第1開口端23の外に退避する。
【0038】
本実施形態では、後述する第4工程よりも少なくとも前に、ディップ層102の位置調整工程を実施している。そのために、図14に示すように、第1ディップ層形成部20と第2ディップ層形成部30との距離DがD>0となるように、例えば第2ディップ層形成部30を、第2ディップ層形成部30の主面と交差する第2方向A(例えばZ-方向)に移動させる。こうすると、N個の貫通孔22の各々に形成されるディップ層102の上面102Aは、第1開口端23の位置よりも低くなる。なぜなら、ディップ層102とつながったペースト溜まり101が降下することにより、ディップ層102も降下するからである。ディップ層102の上面102Aが第1開口端23の位置よりも低くなることから、第1開口端23が露出する。
【0039】
こうして、図15に示すように、ディップ層102に浸漬されて電子部品本体1の端部2に塗布された導電性ペースト102Bがh1だけ上昇され、ディップ層102がh2だけ降下される。そのため、電子部品本体1の端面2Aはディップ層102の上面102Aから(h1+h2)だけ離れるが、電子部品本体1の端部2に塗布された導電性ペースト102Bとディップ層102とは、糸引き102Cでつながった状態となる。この状態は、図3に示すように、電子部品本体1の端部2に塗布された導電性ペースト4とディップ層3とは、糸引き3Aでつながった状態と同じである。なお、図15に示す高さh1は、図1に示す電子部品本体1の端面2Aに形成される導電性ペースト層4B(図17)の厚さに応じて決められる。一方、図15に示す高さh2は、糸引き102Cの求められる長さに応じて適宜設定することができる。
【0040】
3.4.糸引き切断及びペースト除去工程(第4工程)
第4工程は、図15に示すように、電子部品本体1の端部2に塗布された導電性ペースト102Bがディップ層102と糸引き102Cを介してつながった状態にあるときに実施される。第4工程では、図16に示すように、N×M個の電子部品本体1を保持した治具40を、第1ディップ層形成部20に対して相対的に、第1方向C(X方向)と平行に移動させる。こうすると、図17に拡大して示すように、電子部品本体1の端部2に塗布された記導電性ペースト102Bのうち余分なペーストを、第1開口端23によって掻き取って除去することができる。こうして、図4と同様に、電子部品本体1の端部2に導電性ペースト層4Bを形成することができる。特に、図15に示す高さh2を糸引き102Cの求められる長さに応じて適宜設定することで、導電性ペースト102Bから糸引き102Cに移動するペースト量が制御されて、図1に示す電子部品本体1の側面2B及び角部2Cの膜厚を制御することができる。
【0041】
このように、本実施形態のペースト塗布装置10は、図1図4に示す定盤5と、図4に示すペースト除去部材6との代わりに、ペースト層形成部20(第1ディップ層形成部20)を用いて、第1~第4工程を実施することができる。つまり、ペースト層形成部20の孔22にディップ層102を形成して図1図4に示す定盤5の機能を確保している。しかも、その孔22の第1開口端23に、図4に示すペースト除去部材6の機能を持たせている。それにより、ペースト塗布工程を簡便な構造のペースト塗布装置により短時間で実施することができる。
【0042】
4.変形例
本発明は、上述された実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0043】
第2ディップ層形成部30を設けている理由は、第1ディップ層形成部20の貫通孔22内のディップ層102と第2開口端24を介してつながった導電性ペースト溜まり101を確保するためである。このために、第1ディップ層形成部20の孔22を貫通孔としている。そして、上記実施形態では、第4工程の前に、第1、第2ディップ層形成部20、30間の距離DをD>0に増加させている。それにより、貫通孔22の第2開口端24を介して導電性ペーストを排出して、貫通孔22内でのディップ層102の上面102Aの位置を下げることができる。
【0044】
上記実施形態とは異なり、貫通孔22の第2開口端24を介して導電性ペーストを例えば吸引により排出して、貫通孔22内でのディップ層102の上面102Aの位置を下げることが可能である。この場合、第2ディップ層形成部30は不要となる。
【0045】
上記実施形態とは異なり、第4工程は、貫通孔22内でのディップ層102の上面102Aの位置を第1開口端23と面一とした状態で実施されても良い。第3工程の実施により糸引き102Cが発生して、第1開口端23が露出される場合があるからである。また、仮に第1開口端23が露出されていなくても、貫通孔22内でのディップ層102の上面102Aの位置を第1開口端23と面一とした状態で第4工程を実施できることには変わりはないからである。
【0046】
また、図18に示すように、有底の孔22Aを有するディップ層形成部20Aを用いても良い。この場合、第1工程により、孔22Aの第1開口端23よりも低い位置に上面102Aを有するディップ層102を形成する。よって、図18に示す第2工程や、その後の第3及び第4工程でも、ディップ層102の上面102Aの位置は不変とすることができる。このように、ディップ層102の上面102Aの位置が不変であれば、第2開口端24は不要となり、孔22Aを貫通孔でなく有底孔とすることができる。なお、第1工程は、有底孔22Aに適量の導電性ペーストを例えば吐出供給することで、第1開口端23よりも低い上面102Aを有するディップ層102を形成することができる。あるいは、有底孔22Aに導電性ペーストを供給した後、余分な導電性ペーストを吐き出してディップ層102上面102Aの位置を調整しても良い。
【0047】
また、第1工程の変形例として、図19に示す工程を採用しても良い。図19では、第2ディップ層形成部30Aが例えば平板である。第2ディップ層形成部30Aにはペースト溜まり101が予め所定の厚さで形成されている。貫通孔22を有する第1ディップ層形成部20が第2ディップ層形成部30Aに対して相対的に第2方向A(Z-方向)に降下される。それにより、第1ディップ層形成部20の貫通孔22内に、第2開口端24を介して導電性ペーストが供給される。こうして貫通孔22内に形成されるディップ層102は、その上面102Aの位置が第1ディップ層形成部20の相対的移動量に基づいて決定することができる。あるいは、その後に上面102Aの位置を調整する工程を付加しても良い。
【符号の説明】
【0048】
1…電子部品本体、1A…電子部品、2…端部、2A…端面、2B…側面、2C…コーナー部、3…ディップ層、3A…糸引き、4…導電性ペースト、4A…余分なペースト、4B…導電性ペースト層(電極)、10…ペースト塗布装置、20,20A…ディップ層形成部(第1ディップ層形成部)、21…第1平板、22(22-1~22-n)…孔、貫通孔、スリット、23…第1開口端、24…第2開口端、30,30A…第2ディップ層形成部、31…第2平板、32…凹部、40…治具、41…基材、42…平板材料、50…定盤、60…スキージ、100…ペースト材、101…ペースト溜まり、102…ディップ層、120A…ディップ層の上面、102B…端部に塗布されたペースト、102C…糸引き、103…過剰ペースト材、D…距離、X…第1方向、Z-…第2方向、Z+…第3方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
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