(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】三尖弁閉鎖不全の治療
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
A61F2/24
(21)【出願番号】P 2021147433
(22)【出願日】2021-09-10
(62)【分割の表示】P 2018560265の分割
【原出願日】2017-02-01
【審査請求日】2021-10-05
(32)【優先日】2016-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518281133
【氏名又は名称】イノベントリック・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】ダニノ,アミール
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/008526(WO,A1)
【文献】特開2015-198914(JP,A)
【文献】特表2010-508970(JP,A)
【文献】特表2008-543422(JP,A)
【文献】特表2007-530244(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0197382(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
A61F 2/06
A61F 2/07
A61F 2/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の大静脈に植え込み可能な管状大静脈部材(12)を含む三尖弁閉鎖不全治療装置(10)を含み、前記大静脈部材(12)は、前記大静脈部材(12)の側壁に形成された
2つ以上の窓(14)を備えて形成されており、前記
2つ以上の窓(14)をブロックおよびブロック解除するように配置された
2つ以上のブロック部材(16)をさらに含み、前記
2つ以上のブロック部材(16)が前記
2つ以上の窓(14)をブロックすると、前記管状大静脈部材(12)および前記
2つ以上のブロック部材(16)は共に、閉じた円筒形外形を有する、装置。
【請求項2】
前記大静脈部材(12)は、拡張式ステント本体を形成する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記
2つ以上のブロック部材(16)は、前記大静脈部材(12)の一部に対して枢動する少なくとも1つのフラップまたはカバーを形成する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記
2つ以上のブロック部材(16)は、前記
2つ以上の窓(14)に対して通常開いている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記
2つ以上のブロック部材(16)は、前記
2つ以上の窓(14)に対して通常閉じている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記
2つ以上の窓(14)は、前記患者の上大静脈の開口の方向を向く、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記
2つ以上の窓(14)は、前記患者の下大静脈の開口の方向を向く、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記2つ以上のブロック部材(16)のうちの一部は、同じ方向を向き、前記2つ以上のブロック部材(16)のうちの一部は、異なる方向を向く、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記大静脈部材(12)の周方向に全体的にまたは部分的に、
前記2つ以上のブロック部材(16)と、
前記2つ以上の窓(14)と、を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記大静脈部材(12)は、とげ(82)を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記
2つ以上のブロック部材(16)は、補強構造体(84)を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記大静脈部材(12)は、分岐するステントグラフト両端部(92)を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記分岐するステントグラフト両端部(92)は、グラフト材料(94)によって少なくとも部分的に覆われている、請求項12に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、心臓に植え込まれる医療装置に関し、特に、閉鎖不全のまたは逆流の三尖(房室)弁(incompetent or regurgitant tricuspid(atrioventricular)valve)を治療するためのステントに基づく装置に関するが、それだけに限らない。
【背景技術】
【0002】
三尖弁は、心室収縮期中に閉じると右心室から右心房内への血液の逆流を防ぎ、また、心室拡張期中に開くと右心房から右心室内へ血液が流れるのを可能にする。
三尖弁逆流(TR)を引き起こす閉鎖不全の三尖弁は、三尖弁輪拡大および右心室拡大により起こり得る。TRはしばしば、心筋または弁の原因による左心不全、右心室容量または圧力過負荷、および心房室の膨張に続発する。TRは、右心房の過負荷を引き起こし、これは、上大静脈および下大静脈(SVC、IVC)ならびにそれらの支流へと伝達される。最終的には、これは、肝臓うっ血、腹水症、全身水腫、末梢性浮腫、およびうっ血性心不全の他の臨床症状をもたらす。治療しなければ、重篤な三尖弁逆流はしばしば、心不全および死に至る。
【0003】
TRのための臨床的に利用可能な治療は、開心術または薬物療法である。しかしながら、三尖弁の置換/修復のための開心術は、主にその高い死亡率および罹患率により、めったに行われない。一方、薬物療法では、問題が解決せず、疾患を進行させてしまい、患者のクオリティ・オブ・ライフおよび心臓機能を悪化させたままにする。
【0004】
三尖弁置換/修復の手術危険度が高いため、現在は、TR患者の大多数が手術不能とみなされている。これにより、未治療の重篤なTR患者の数が極めて多くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以下でさらに詳細に説明するように、閉鎖不全のまたは逆流の三尖弁を治療するための、ステントに基づく装置を得ようとするものである。先行技術とは異なり、本発明は、三尖弁の構造を模倣しようと試みるのではなく、むしろ、本発明は、右心房への流入または右心房からの流出を選択的にブロック解除またはブロックするためのブロック部材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
装置は、右心室および房室の弁の複雑な解剖学的構造を回避しながら、逆流の三尖弁の機能的置換を行うことを意図している。経皮的植え込みに制限されるものではないが、装置は、三尖弁の、経カテーテルの機能的置換を改善することができる。本発明は、三尖弁の複雑な解剖学的構造を扱う必要なしに、逆流の三尖弁を治療する。本発明は、複雑な画像診断法を不要にする。本発明の装置の植え込みは、単一のステント構造体の単純な配備を含む。
【0007】
装置は、弁付き壁部を備えたステントグラフトである。このステントグラフトは、上大静脈から下大静脈に(または下大静脈から上大静脈に)延び、ステントの半径方向力、または(肝静脈および奇静脈などであるがこれらに限定されない)SVC/IVC支流血管に挿入される縫合糸、とげ、分岐するステントグラフト両端部もしくは要素など、任意の他の固着手段を用いて、大静脈の管状構造に固着され得る。(SVCとIVCとの間の)右心房内にある装置の部分は、グラフト材料における1つまたは複数の孔と、その孔を覆
い、孔を通る流れを選択的に防ぐ1つまたは複数のブロック部材と、を有する。ブロック部材にわたる圧力勾配に応じて、ブロック部材は、(孔を通って向けられる内圧により孔から押し離されることなどによって)開いて、ステントグラフト内部からその外側環境に向かう流れを可能にし得るか、または(装置に向けられる外圧により孔に向かって押されることなどによって)閉じて、外側装置環境からその内側内腔に向かう流体の逆流を防ぐことができる。
【0008】
例えば、大静脈および右心房の提案される位置において、装置は、典型的には、静脈圧が心室圧および心房圧より高い拡張期中にブロック部材を開く圧力勾配に、また、心室圧および心房圧(いずれの房室も閉鎖不全の本来の三尖弁により同様の圧力である)が静脈圧より高い心室収縮期中に逆向きの圧力勾配に、さらされる。よって、この解剖学的位置では、ブロック部材は、拡張期中には順方向の血流を可能にするように開き、また、心室収縮期中には血液の逆流を防ぐように閉じる。この解剖学的位置では、装置は、手つかずのままである本来の三尖弁より上で第2の弁として作用する。
【0009】
ステントグラフトのステント要素は、医療グレードの形状記憶合金またはポリマーなどの、自己拡張式材料であってよく、医療グレードの金属合金またはポリマーなどのバルーン拡張式材料であってもよい。ステント構造体は、織られるかまたは編まれたメッシュであってよく、典型的なMまたはZ形状を有する独立するかまたは相互接続されたステントワイヤであってよく、管からレーザー切断されてもよい。
【0010】
グラフト材料は、体液(例えば血液)がグラフト材料を通過するのを大いに制限する流動障壁である。グラフト材料は、編まれるかまたは織られた布地であってよく、編まれるか、織られるか、注入されるか、または浸されたポリマーであってよく、ヒトまたは動物源由来の生物材料であってもよい。時間と共に、体内で、グラフト材料は、組織によって覆われるようになってよく、この組織自体が、流動障壁として機能し得る。
【0011】
ステントとグラフト材料との接続は、縫合糸、接着剤、グラフト材料内部でステント材料を埋め込むこと、およびステント材料をグラフト材料に通すこと、を用いて行われ得る。
【0012】
装置は経皮的送達方法に制限されないが、経カテーテルによるものは、関連する解剖学的構造内への好適な送達方法である。ブロック部材の閉鎖状態では、装置は、概ね管状であり、ステントグラフト本体から外側または内側に突出する要素がないことに注意されたい。この構造は、管の単純な形状が容易に、カテーテル内に設置され、かつカテーテルから外へ配備され得るため、経カテーテル送達に有利である。カテーテルから外へ配備されると、ブロック部材は、圧力勾配に反応し、弁として働き始める。この構造は、装置の準備または制約なしで、装置を被覆および露出することを可能にする。装置を簡単に被覆または配備することを妨げ得る、装置の管状軸に対して軸外または平行である追加のステント本体は必要ない。
【0013】
装置が、例えば僧帽弁逆流症の治療などであるが、これらに限定されない、三尖弁閉鎖不全以外の他の適用に有用となり得ることが企図される。
本発明は、次の図面と共に理解される以下の詳細な説明から、さらに十分に理解および認識される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1B】
図1Bは、心室収縮期の心臓の簡略図であり、心室収縮期中、三尖弁が適切に閉じておらず、そのため三尖弁逆流が存在する。
【
図2】本発明の装置を下肢または上肢のいずれかから植え込むための経皮的静脈路の簡略図である。
【
図3A】
図3Aは、本発明の非限定的な実施形態に従って構成され動作する三尖弁閉鎖不全治療装置の簡略図であり、フラップ弁がブロック位置にある。
【
図3B】
図3Bは、本発明の非限定的な実施形態に従って構成され動作する三尖弁閉鎖不全治療装置の簡略図であり、フラップ弁がブロック解除位置にある(あるいは、
図3Aおよび
図3Bは、
図3Aではフラップ弁が通常開いており、
図3Bではフラップ弁が通常閉じている、2つの異なる実施形態を示す)。
【
図4A】
図4Aは、拡張期において脈管構造に植え込まれた三尖弁閉鎖不全治療装置の簡略図である。
【
図4B】
図4Bは、収縮期において脈管構造に植え込まれた三尖弁閉鎖不全治療装置の簡略図である。
【
図5】本発明の別の非限定的な実施形態に従って構成され動作する三尖弁閉鎖不全治療装置の簡略図であり、フラップ弁が、その周辺部の比較的小さい部分を用いてステントグラフトに接続されている。
【
図6】本発明の別の非限定的な実施形態に従って構成され動作する三尖弁閉鎖不全治療装置の簡略図であり、2つ以上の孔およびブロック部材を備えている。
【
図7】本発明の別の非限定的な実施形態に従って構成され動作する三尖弁閉鎖不全治療装置の簡略図であり、ステントグラフト周辺部の全体的に(またはほぼ全体的に)複数の窓およびブロック部材を含んでいる。
【
図8】本発明の別の非限定的な実施形態に従って構成され動作する三尖弁閉鎖不全治療装置の簡略図であり、大静脈部材上のとげ、およびブロック部材上の補強支柱を含んでいる。
【
図9】本発明の別の非限定的な実施形態に従って構成され動作する三尖弁閉鎖不全治療装置の簡略図であり、グラフト材料によって覆われるか、部分的に覆われるか、または覆われなくてよい、分岐するステントグラフト両端部を備えている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、心臓の解剖学的構造の簡単な説明を、
図1A及び
図1Bを参照して提示する。上大静脈1は、上半身から血液を戻し、下前方に向く無弁開口を介して右心房2の上方後部内へと開く。典型的には上大静脈より大きい、下大静脈3は、下半身から血液を戻し、心房中隔付近で、心房2の最下部内へと開く。その開口は、上後方に向き、下大静脈弁(ユースタキオ弁(Eustachian valve)と呼ばれる)によって保護されている。三尖弁4は、右心房2と右心室5との間に位置する。
【0016】
冠状静脈洞6は、下大静脈の開口と房室開口部との間で、右心房2内へと開く。これは、心臓の実質(substance)から血液を戻し、半円形の弁である、(テベジウス弁(valve of Thebesius)とも呼ばれる)冠状静脈洞弁によって保護されている。僧帽弁7は左心室8と左心房9との間にある。
【0017】
心室収縮期は、右心室5および左心室8において圧力の上昇を誘発する。心室内の圧力は、心房2および9の圧力を上回るレベルまで上昇し、よって、三尖弁4および僧帽弁7を閉じる。
図1Bは、三尖弁4が適切に閉じておらず、そのため三尖弁逆流があることを示す。
【0018】
次に、三尖弁逆流の問題を解決するための、本発明の非限定的な実施形態による三尖弁閉鎖不全治療装置10を示す、
図3Aを参照する。
三尖弁閉鎖不全治療装置10は、上大静脈(SVC)または下大静脈(IVC)に植え込み可能な大静脈部材12を含む。大静脈部材12の側壁は、(窓14とも呼ばれる)右心房孔14を備えて形成されており、右心房孔14をブロック(換言すれば、閉鎖)およ
びブロック解除するように配置されたブロック部材16も含む。例えば、ブロック部材16は、フラップ弁であってよく、ブロック部材16は、大静脈部材12の一部に対して枢動するフラップまたはカバーである。ブロック部材は、大静脈部材の側壁から離れて外側に開いてよく、または、他の実施形態では、横向きもしくは他の方向に開いてよい。
【0019】
ブロック部材16は、1つまたは複数の孔14に対して、通常開いている(
図3A)か、または通常閉じている(
図3B)ことができる。通常開いているかまたは閉じているブロック部材のメカニズムは、装置の逆流または狭窄それぞれの程度を制御する上で、さらに役立ち得る。例えば、通常開いているブロック部材は、ある程度の測定可能で制御された閉鎖力を必要とする。よって、通常開いているブロック部材は、測定可能で制御されたレベルの逆流を作り出すことができる。逆に、通常閉じているブロック部材は、測定可能で制御されたレベルの狭窄を作り出すことができる。
【0020】
装置は、右心房孔14がSVCの開口と整列する(SVCの開口の方向に向く)か、もしくはIVCの開口と整列するか、または、横向き(前方/後方)など、他の方向を向き得るように植え込まれ得る。よって、ブロック部材16は、その開口部分(右心房孔14)を右心房の上部、下部、前部、または後部の方に向けることができる。
【0021】
図3A~
図3Bおよび
図5では、1つの右心房孔14および1つのブロック部材16が設けられ、
図6および
図7では、それぞれがそのブロック部材16を備えた、2つ以上の右心房孔14が設けられている。大静脈部材12は、ステントグラフトであってよく、これは、自己展開式(例えば、形状記憶合金、ポリマーなど)またはバルーン拡張式(例えば、合金鋼、ポリマーなど)であってよい。ブロック部材16は、大静脈部材と同じグラフト材料から、または他のグラフト材料から、作られ得る。ブロック部材は、ワイヤ、ロッド、管、縫合糸、もしくはメッシュなどの補強構造体がないか、またはこれらを含むことができる。ステントグラフトおよびブロック部材は、抗凝固薬、抗血小板薬、組織成長加速もしくは阻害剤、抗生物質、スタチン、抗炎症薬、および他の材料または薬品によって、浸されるか、スプレーされるか、または覆われてよい。ステント構造体は、独立しているかもしくは相互接続されたステントリング、編まれるかもしくはレーザー切断されたメッシュ、編まれるかもしくはレーザー切断された管状構造体などを含み得るがこれらに限定されない。装置10は、例えば、拡張式部材の半径方向力、とげ、分岐する大静脈部材端部、支流に配されたステントもしくは他の部材、または他の適切な手段によって、本来の位置で固定され得る。装置上での任意の後続の組織成長はまた、固定に役立ち得る。
【0022】
ブロック部材16は、縫合糸、接着剤、ポリマー埋め込み、溶接、超音波溶接、一体化したグラフトおよびブロック部材材料などであるがこれらに限定されない任意の適切な手段によって大静脈部材12に接続され得る。
【0023】
大静脈部材12は、概ね円筒形であってよいが、代わりに非円筒形であってもよい。明細書および特許請求の範囲全体にわたって使用される用語「円筒形」は、円形の断面だけでなく、楕円および他の湾曲した断面も含む。大静脈部材12の直径は、その軸長にわたって均一であってよい。あるいは、大静脈部材12の直径は、その軸長にわたって変化してもよい。ブロック部材16は、図示のように、角が円い三角形の形状を有し得る。あるいは、ブロック部材は、卵形、矩形、円形、または他の形状を有し得る。
【0024】
装置は、経皮的に、または外科的手段によって、送達され得る。例えば、装置は、経カテーテルの大腿部/腸骨アプローチ(
図2)ではIVCを通って、または経カテーテルの頸部/橈骨/鎖骨下アプローチ(
図2)ではSVCを通って、経皮的に送達され得る。
【0025】
放射線不透過性マーカーが、体腔内部での軸方向および回転位置づけのために装置上に
設けられ得る。典型的には、放射線不透過性マーカーは、装置の回転位置に印をつけるために文字「L」、「E」または「C」の形状であってよく、これらまたは他のマーカーが、装置上のさまざまな軸方向位置に置かれてよく、これにより、植え込みを行うオペレーターが、装置の軸方向位置を理解および制御することができる。
【0026】
次に、脈管構造に植え込まれた三尖弁閉鎖不全治療装置10を示す、
図4Aおよび
図4Bを参照する。
図4Aは、拡張期を示し、拡張期には、右心室5の圧力が(例えば、0mmHgまで)低下し、大静脈内の血圧により、ブロック部材16が開いて、右心房孔14を通る流れを可能にする。
【0027】
収縮期が
図4Bに示され、収縮期には、右心室5内の圧力が上昇する。不十分な三尖弁4は、完全に閉じることができないので、血液が右心室5から右心房2内へと逆流するのを完全には阻止しない。収縮期の圧力により、ブロック部材16が閉じて、(
図4Bでは視界から遮られている)右心房孔14を通る流れを阻止する。これは、右心室および右心房から静脈系内へと血液が逆流するのを減らすのに役立つ。
図4Bで分かるように、ブロック部材16が窓14を遮ると、管状大静脈部材およびブロック部材は共に、閉じた円筒形外形を有する。この構造は、送達カテーテル内で装置を被覆および露出するのに有利である。
【0028】
次に、本発明の別の非限定的な実施形態に従って構成され動作する三尖弁閉鎖不全治療装置50を示す、
図5を参照する。装置50は、ブロック部材56を含み、ブロック部材56は、その周辺部の比較的小さい部分が大静脈部材(ステントグラフト)52に接続され、よって、拡張期ごとに、比較的低い抵抗で大量の流れを可能にする。心室収縮期中、ブロック部材56は、他の装置の実施形態で見られるように、血液の逆流を完全に妨げる。
【0029】
次に、本発明の別の非限定的な実施形態に従って構成され動作する三尖弁閉鎖不全治療装置60を示す、
図6を参照する。装置60は、2つ以上のブロック部材16と、2つ以上の窓14と、を含む。ブロック部材16のうちのいくつかは、同じ方向を向き、他のものは、異なる方向を向く。
【0030】
図6の実施形態は、その複数の窓14およびブロック部材16によって、血行動態を改善させ得、弁の詰まりおよび不十分な血液供給の可能性が非常に少ない。これは、乱れを低減させ、単一の開口部により生じ得る流れのないエリアおよび他の不十分な血流を減少させることができる。さらに、装置の配備は、フラップ弁(窓14およびブロック部材16)の多くが存在するため、それらの軸方向位置に対して感受性が低い。
【0031】
図6の実施形態は、右心房のどこかに到達するためのアクセスによる将来的な介入の実行を可能にする。例えば、フラップ弁のうちのいくつかは、卵円窩の穿刺、ペースメーカーもしくは除細動器の植え込み、または他の処置などの介入中であってもそれらの機能を維持する。処置がフラップ弁のうちのいくつかの機能に干渉した場合であっても、残り(大部分)のフラップ弁は、介入処置および患者の利益のためにそれらの機能を維持する。
【0032】
組織成長、血栓、または他の装置劣化の原因の場合、複数のフラップ弁は、有効で安全な血流の可能性を著しく改善する。
本発明のこの実施形態および任意の他の実施形態では、各窓14は、1つの専用のブロック部材16またはいくつかのブロック部材16を有し得、ブロック部材16は、窓14全体またはその一部のいずれかを覆うことができる。
【0033】
次に、大静脈部材12の周方向に全体的に(または部分的に)複数の窓14を含む、本
発明の別の非限定的な実施形態に従って構成され動作する三尖弁閉鎖不全治療装置70を示す、
図7を参照する。この実施形態は、装置の特定の回転向きに対するあらゆる必要性を排除する。
【0034】
次に、本発明の別の非限定的な実施形態に従って構成され動作する三尖弁閉鎖不全治療装置80を示す、
図8を参照する。装置80は、大静脈部材12上にとげ82を含み、とげ82は、植え込み部位で装置を固着するのに役立ち得る。装置80は、ブロック部材(または複数のブロック部材)16上の支柱84などの補強構造体も含み得、補強構造体は、ブロック部材(または複数のブロック部材)16に衝突する流れに対するブロック部材(または複数のブロック部材)16の強度を増大させ得る。
【0035】
次に、本発明の別の非限定的な実施形態に従って構成され動作する三尖弁閉鎖不全治療装置90を示す、
図9を参照する。装置90は、分岐するステントグラフト両端部92を含み、分岐するステントグラフト両端部92は、(この図で破線により部分的に示されている)グラフト材料94によって、覆われるか、部分的に覆われるか、または覆われていなくてよい。分岐するステントグラフト両端部92は、植え込み部位で装置を固着するのに役立ち得る。
【0036】
したがって、三尖弁閉鎖不全治療装置10は、三尖弁逆流を患う患者に利益を提供する。この装置は、外科的に、および経皮的に(例えば、大腿部、頸部、または鎖骨下アプローチにより)植え込まれ得る。
【0037】
三尖弁閉鎖不全治療装置10は、閉鎖状態にあるときは、滑らかな管状形状を有する。これは、カテーテル内への装置の容易な設置および心臓の部位への配備の利点を有し、処置中に装置をカテーテル内へ再び被覆する可能性さえ提供する。