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特許7398133人体抹消血液のNK細胞より高い水準のNCR、細胞毒性及びIFN-γ生産能力を有するメモリ様NK細胞の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】人体抹消血液のNK細胞より高い水準のNCR、細胞毒性及びIFN-γ生産能力を有するメモリ様NK細胞の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20231207BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20231207BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20231207BHJP
【FI】
C12N5/0783
A61P35/00
A61P35/02
A61K35/17
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021550138
(86)(22)【出願日】2021-01-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-20
(86)【国際出願番号】 KR2021001035
(87)【国際公開番号】W WO2021177599
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2021-08-27
(31)【優先権主張番号】16/809,935
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515276624
【氏名又は名称】コリア リサーチ インスティチュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー
【氏名又は名称原語表記】KOREA RESEARCH INSTITUTE OF BIOSCIENCE AND BIOTECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェ、インピョ
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ソクラン
(72)【発明者】
【氏名】パーク、スヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ハンナ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ソルジ
【審査官】大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-502585(JP,A)
【文献】Biol Blood Marrow Transplant,2014年,Vol.20,pp.463-473
【文献】Eur.J.Immunol,2006年,Vol.36,pp.2170-2180
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00-28
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞であって、該メモリ様ナチュラルキラー細胞は、
1)単核球からCD3陽性T細胞のみを除去してCD3陰性細胞を得る工程;
2)工程1)のCD3陰性細胞をIL-15およびIL-21の混合物で処理し、一次刺激細胞を産生および培養する工程;および
3)工程2)の一次刺激培養細胞をIL-12およびIL-15;IL-12およびIL-18;またはIL-15およびIL-18で処理し、二次的に刺激されたメモリー様ナチュラルキラー細胞を生成する工程により、製造され、かつ
a)末梢血液から分離されたナチュラルキラー細胞と対比してNKp30及びCD25の発現の増加;
b)末梢血液から分離されたナチュラルキラー細胞と対比してNKp44及びKIR2DL2/3の発現の減少;及び
c)末梢血液から分離されたナチュラルキラー細胞と対比してIFN-γの分泌の増加の特徴を有する、メモリ様ナチュラルキラー細胞。
【請求項2】
前記メモリ様ナチュラルキラー細胞は、NKp30の発現が末梢血液から分離されたナチュラルキラー細胞;またはIL-12、IL-15及びIL-18から選択されるいずれか一つ以上のサイトカインで2回以上刺激されて誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞、またはウイルス抗原で2回以上刺激されて誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞と対比して少なくとも5%以上発現が増加したものである、請求項1に記載のメモリ様ナチュラルキラー細胞。
【請求項3】
前記メモリ様ナチュラルキラー細胞は、CD25の発現が末梢血液から分離されたナチュラルキラー細胞;またはIL-12、IL-15及びIL-18から選択されるいずれか一つ以上のサイトカインで2回以上刺激されて誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞、またはウイルス抗原で2回以上刺激されて誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞と対比して少なくとも5%以上発現が増加したものである、請求項1に記載のメモリ様ナチュラルキラー細胞。
【請求項4】
前記メモリ様ナチュラルキラー細胞は、NKp44の発現が末梢血液から分離されたナチュラルキラー細胞;またはIL-12、IL-15及びIL-18から選択されるいずれか一つ以上のサイトカインで2回以上刺激されて誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞、またはウイルス抗原で2回以上刺激されて誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞と対比して少なくとも5%以上発現が減少したものである、請求項1に記載のメモリ様ナチュラルキラー細胞。
【請求項5】
前記メモリ様ナチュラルキラー細胞は、KIR2DL2/3の発現が末梢血液から分離されたナチュラルキラー細胞;またはIL-12、IL-15及びIL-18から選択されるいずれか一つ以上のサイトカインで2回以上刺激されて誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞、またはウイルス抗原で2回以上刺激されて誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞と対比して少なくとも3%以上発現が減少したものである、請求項1に記載のメモリ様ナチュラルキラー細胞。
【請求項6】
前記メモリ様ナチュラルキラー細胞は、IFN-γ分泌が末梢血液から分離されたナチュラルキラー細胞;またはIL-12、IL-15及びIL-18から選択されるいずれか一つ以上のサイトカインで2回以上刺激されて誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞、またはウイルス抗原で2回以上刺激されて誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞と対比して少なくとも20%以上発現が増加したものである、請求項1に記載のメモリ様ナチュラルキラー細胞。
【請求項7】
前記メモリ様ナチュラルキラー細胞は、がん細胞及び/またはウイルス感染細胞に対して末梢血液から分離されたナチュラルキラー細胞;またはIL-12、IL-15及びIL-18から選択されるいずれか一つ以上のサイトカインで2回以上刺激されて誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞、またはウイルス抗原で2回以上刺激されて誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞より殺傷能が増加したものである、請求項1に記載のメモリ様ナチュラルキラー細胞。
【請求項8】
1)単核球からCD3陽性T細胞のみを除去してCD3陰性細胞を得る工程;
2)工程1)のCD3陰性細胞をIL-15およびIL-21の混合物で処理し、一次刺激細胞を産生および培養する工程;および
3)工程2)の一次刺激培養細胞をIL-12およびIL-15;IL-12 およびIL-18;またはIL-15およびIL-18で処理し、二次的に刺激されたメモリー様ナチュラルキラー細胞を生成する工程を含む、サイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞の製造方法であって、
前記工程1)は、CD3陽性であるT細胞と赤血球が交差結合するようにした後、遠心分離時に密度勾配を利用してCD3陰性細胞を分離することで行われ
前記工程2)は、IL-15及びIL-21以外に他のサイトカインが含まれないものである、サイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞の製造方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載のサイトカインで誘導されたメモリー様ナチュラルキラー細胞を含む、癌の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項10】
前記がんは、肝がん、肺がん、大膓がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、膵がん、子宮頸がん、甲状腺がん、喉頭がん、白血病、脳腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、頭頸部がん、唾液腺がん、リンパ腫で構成された群より選択されたいずれか一つである、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記メモリ様ナチュラルキラー細胞は、末梢血液から分離されたナチュラルキラー細胞;またはIL-12、IL-15及びIL-18から選択されるいずれか一つ以上のサイトカインで2回以上刺激されて誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞、またはウイルス抗原で2回以上刺激されて誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞よりがん細胞、ウイルス感染細胞またはこれらの全てに対して殺傷能が増加されたものである、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記メモリ様ナチュラルキラー細胞は、
a)末梢血液から分離されたナチュラルキラー細胞と対比してNKp30及び/またはCD25の発現の増加;
b)末梢血液から分離されたナチュラルキラー細胞と対比してNKp44及び/またはKIR2DL2/3の発現の減少;及び
c)末梢血液から分離されたナチュラルキラー細胞と対比してIFN-γの分泌の増加の特徴を有するものである、請求項9に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体末梢血液のナチュラルキラー細胞より高い水準のナチュラルキラー細胞受容体を生産することができ、優れた殺傷能及び高いIFN-γ生産能力を有するメモリ様ナチュラルキラー細胞の製造方法及び上記方法により製造されたメモリ様ナチュラルキラー細胞及び上記メモリ様ナチュラルキラー細胞を利用したがん治療方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナチュラルキラー細胞(natural killer cell、NK cell)は、骨髄、リンパ節、末梢血液に存在するリンパ球の一亜型であり、全体リンパ球の約10~15%を占め、T細胞とB細胞に引き続き三番目に多い亜型である。がん細胞またはウイルスに感染された細胞を殺傷することができる能力を備えた兔疫細胞として、先天性免疫反応において重要な役割を担当している。ナチュラルキラー細胞は、特定の抗原の刺激なしに、細胞表面の受容体とそれに対応する標的細胞リガンドの相互作用により機能が調節され、これらの受容体は、大きく活性受容体と抑制受容体とに区分される。ナチュラルキラー細胞に活性化信号を伝達してナチュラルキラー細胞の機能を調節する活性受容体は、代表としてnatural cytotoxicity receptors(NCRs;NKp30、NKp44、NKp46)、NKG2Dなどがよく知られている。ナチュラルキラー細胞は、かかるリガンド特異性が他の多様な活性化受容体を通じて標的細胞を感知し、これらの受容体は主にリン酸化(phosphorylation)を通じて活性化を誘導するが、それぞれの信号伝逹特性が非常に異なる。NCRs(NKp30、NKp44、NKp46)とCD16の場合、ITAM motifを有するFcRγ、CD3γ、DAP12と複合体を形成してT cell、B cellのTCR、BCRと同様に活性化信号を伝達すると知られている。NKG2Dは、YINM motifを有するDAP10 adaptorと結合し、PI3KまたはGrb2-Vav1複合体を通じて信号を伝達する。特に、NCRsの発現の高いナチュラルキラー細胞の場合、発現の少ない細胞に比べて細胞毒性能力がより高いという事実が明かされており、NCRsの発現程度によってナチュラルキラー細胞の活性化程度を確認することができる。
活性化されたナチュラルキラー細胞は、多様な顆粒(granule)を合成し、細胞外に分泌して標的細胞を破壊することができる。顆粒に含まれている代表的なタンパク質のうちパーフォリン(Perforin)とグランザイム(Granzyme)は、標的細胞を破壊するのに主な役割をする。パーフォリンは、標的細胞の細胞膜に集まり複合体を形成し、細胞膜に孔を開けて細胞の溶解を起こし、グランザイムは、細胞に生成された孔を通じて細胞内に入りcaspaseを活性化させるだけでなく、多様な機転を通じてアポトーシスを誘導する。
また、ナチュラルキラー細胞は、FasL、TRAILのようなdeath ligandを利用してがん細胞のdeath receptorと結合することでがん細胞の細胞死を誘導する。該受容体の結合は、がん細胞内のcaspase-8、-10を活性化させ、これによりcaspase-3、-7が活性化されて、結果として細胞死を起こすようになる。
また、ナチュラルキラー細胞は、多様なサイトカイン(cytokine)とケモカイン(chemokine)を分泌し、抗原提示細胞と直接的な相互作用を通じて後天免疫反応を活性化させるのに橋頭堡の役割をする。活性化されたナチュラルキラー細胞で分泌されるIFN-γは、単核細胞と樹状細胞を活性化させ成熟させて、病原菌に対する先天免疫反応を増加させるのに重要な役割をし、Th1免疫反応の初期に重要な役割をすると知られている。
ナチュラルキラー細胞がかかる能力を備えるためには、標的細胞に会う前に分化刺激(priming)が必要である。そのため、マウスとヒトから分離した前駆体ナチュラルキラー細胞は、がん細胞の殺傷能力とIFN-γ生成能力が顕著に減少されている。かかるナチュラルキラー細胞の能力を極大化させられる分化刺激サイトカインとしてIL-2、IL-15などが一部報告されている。
例えば、IL-2は、成熟されたナチュラルキラー細胞の増殖と活性化を増進させる機能を有していることが報告されている。また、IL-15は、ナチュラルキラー細胞の分化に関与することが知られている。また、IL-21は、活性化されたCD4+T細胞により分泌されるサイトカインであり、IL-21の受容体(IL-21R)は、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、T細胞及びB細胞のようなリンパ球で発現すると知られている。
上述したように、ナチュラルキラー細胞は、先天性免疫反応において重要な役割を担当する細胞であると知られている。しかし、最近、初期の刺激以後に休息期培養をした後、再刺激を与えると、T細胞のようにメモリ様細胞機能を有するナチュラルキラー細胞が製造されるということが確認され、これにより関連研究が活発に進行されている。
また、このような内容でサイトカインで誘導させたメモリ様ナチュラルキラー細胞で急性骨髄性白血病患者を治療する臨床的な試みが報告されている。
かかるサイトカインを通じたメモリ様ナチュラルキラー細胞の製造とがん治療剤としての利用可能性にもかかわらず、未だに関連研究の開発が非常に遅い状況である。特に、体内に存在する活性の低いナチュラルキラー細胞の代わりに、さらに活性の高いナチュラルキラー細胞を製造し、これを基盤としてメモリ様ナチュラルキラー細胞を製造し、これを抗がんの用途などに利用する必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明者らは、CD3陰性細胞にIL-15及びIL-21のサイトカインを混合処理してNK細胞を刺激した後、培養したナチュラルキラー細胞にIL-12、IL-15及び/またはIL-18のようなサイトカインの組み合わせを処理してメモリ様ナチュラルキラー細胞を製造し、その機能的効率性を確認することで本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0004】
これにより、本発明は、下記からなる群より選択されるいずれか一つ以上の特徴を有する、IL-12、IL-15及びIL-18から選択されるいずれか一つ以上のサイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞(cytokine-induced memory-like NK cells)を提供する:
a)末梢血液から分離されたナチュラルキラー細胞または知られた既存のメモリ様ナチュラルキラー細胞と対比してNKp30及び/またはCD25の発現の増加;
b)末梢血液から分離されたナチュラルキラー細胞または知られた既存のメモリ様ナチュラルキラー細胞と対比してNKp44及び/またはKIR2DL2/3の発現の減少;及び
c)末梢血液から分離されたナチュラルキラー細胞または知られた既存のメモリ様ナチュラルキラー細胞と対比してIFN-γの分泌の増加。
また、本発明は、1)単核球からCD3陽性であるT細胞のみを除去してCD3陰性細胞を得る段階;
2)段階1)のCD3陰性細胞にIL-15及びIL-21を混合処理した後、培養する段階;及び
3)IL-12、IL-15及びIL-18から選択されるいずれか一つ以上のサイトカインを該培養された細胞に処理する段階;を含む、サイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞の製造方法であって、
前記段階1)は、CD3陽性であるT細胞と赤血球が交差結合するようにした後、遠心分離時に密度勾配を利用してCD3陰性細胞を分離することで行われ、
前記段階2)は、IL-15及びIL-21以外に他のサイトカインが含まれないものである、サイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞の製造方法を提供する。
また、本発明は、前記サイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞をこれを必要とする対象体に投与する段階を含む対象体におけるがんの治療方法を提供する。
また、本発明は、前記サイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞を含む、がんの予防または治療用薬剤学的組成物を提供する。
また、本発明は、がん治療に使用するための前記サイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞を含む組成物を提供する。
また、本発明は、がんの治療のための薬剤の製造において、前記サイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞の用途を提供する。
上記の要約は、説明のためのものであるだけで、方式は制限しない。上記説明された例示的な側面、実施例及び特定に加えて、追加の側面、実施例及び特徴は、図面及び次の詳細な説明を参照して明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本発明によるサイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞の製造工程と末梢血液ナチュラルキラー細胞から製造されたメモリ様ナチュラルキラー細胞の製造工程を示す。
図2】本発明によるサイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞(KRIBB-NK-memory NK)と末梢血液ナチュラルキラー細胞から製造されたメモリ様ナチュラルキラー細胞(PB-NK-memory NK)のナチュラルキラー細胞受容体の発現変化を確認したFACSを示す。
図3】本発明によるサイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞と末梢血液ナチュラルキラー細胞から製造されたメモリ様ナチュラルキラー細胞のナチュラルキラー細胞受容体の発現変化を確認した結果を数値で記載したものを示す。
図4】K562、Raji、A498及びACHNに対する本発明によるサイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞と末梢血液ナチュラルキラー細胞から製造されたメモリ様ナチュラルキラー細胞の殺傷能を確認した結果を示す。
図5】本発明によるサイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞と末梢血液ナチュラルキラー細胞から製造されたメモリ様ナチュラルキラー細胞のIFN-γの分泌変化を確認した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下の詳細な説明において、添付の図面に対する参照が作成され、該図面の一部を構成する。詳細な説明、図面及び請求の範囲に説明された例示的な実施例を制限することを意味しない。ここで提示された主題の思想または範囲を逸脱せず他の実施例が利用されてもよく、他の変更がなされてもよい。以下では、本明細書で使用される用語は、特定の実施例を説明するためのものであり、本発明を制限しようとする意図ではない。
本発明で使用されたある用語及び科学的用語は、当業界の当業者により一般的に理解される意味を有するものを意味する。本明細書で使用されたように、単数形態である「a」、「an」及び「the」は、文脈で明らかに指示しない限り、複数型の指示対象を含むように意図する。本明細書における用語「含む」、「含んだ」、「含有する」、「含有した」、「有する」及び「有した」が使用される時、明示された特徴、整数、演算、要素及び/または構成要素の存在有無を明示するが、一つ以上の他の特徴、整数、演算、要素、構成要素及び/またはその部分の存在または追加を排除しない。
特に定義しない限り、本明細書で使用された技術及び科学用語を含む全ての用語は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者により一般的に理解されるものと同一の意味を有する。一般的に使用される辞書に定義された用語は、関連技術の脈絡における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、ここで明示的に定義しない限り、理想的であるか過剰に形式的な意味で解釈してはならないことが理解できるであろう。
また、用語「選択的」または「選択的に」は、後続で記述される事件または状況が発生するか発生しないことを意味し、上記記述は、上記事件または状況が発生した例示及び発生しない例示を含む。
・用語の定義
用語「ナチュラルキラー細胞(NK cell)」とは、CD3陰性CD56陽性の単核球を指称し、特に、MHCクラスI分子の発現が少ないか、上記発現が消失されている細胞に対する細胞毒性活性を有する。
用語「メモリ様ナチュラルキラー細胞」とは、サイトカインまたは腫瘍抗原で再刺激する時に再活性化され得る特性を有するNK細胞を指称する。具体的に、そのまま残存して長期間にわたって生存するが、一度刺激反応をしていたため機能的にも成熟しており、次順の刺激時により速い反応を起こし得るメモリ細胞の特性と類似した特性を有する細胞である。
用語「サイトカイン誘導」とは、サイトカインと接触させることで、サイトカインを通じてNK細胞を活性化、刺激、または再刺激することを指称する。かかるサイトカインの誘導は、例えば5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、36、48時間、3日、4日、5日、6日、10日、12日、14日、3週またはそれ以上の間のサイトカインとの接触を意味することができる。
用語「刺激」とは、サイトカインなどを添加してNK細胞の特性の変化を誘導することを意味する。「再刺激」とは、一定の培養期間が経過した後、培地に適切なサイトカインなどを再び添加してNK細胞の増殖及び特性の変化を再誘導することを意味する。
本発明において、ナチュラルキラー細胞受容体の発現の増加及び減少は、FACSを通じた平均Intensity分析結果を基礎とする。具体的に、処理されていない対照群と比べて%で増加及び減少を表記することができる。また、従来の一般的なナチュラルキラー細胞、サイトカインなどで再刺激されていないナチュラルキラー細胞、従来の一般的なナチュラルキラー細胞由来のメモリ様ナチュラルキラー細胞などの発現水準に基づいて、これと対比して相対的な増加及び減少の倍数で表すことができる。
例えば、NKp30の増加は、処理されていない対照群と比べて%で表記することができ、これらの%変化を、従来の一般的なナチュラルキラー細胞、サイトカインなどに再刺激されていないナチュラルキラー細胞(PB(-))、従来の一般的なナチュラルキラー細胞由来のメモリ様ナチュラルキラー細胞(PB(+))などの%変化と直接比較して増減したか否かを確認することができる。また、NKp30の増加の割合は、従来の一般的なナチュラルキラー細胞、サイトカインなどで再刺激されていないナチュラルキラー細胞、従来の一般的なナチュラルキラー細胞由来のメモリ様ナチュラルキラー細胞などの発現%に対して、本発明によるメモリ様ナチュラルキラー細胞の発現%の割合を確認して倍数で記載することもできる。
本発明における「従来の一般的なナチュラルキラー細胞」とは、人体などから分離されて別途の追加的な刺激工程なしに、人体から分離された状態そのままの特性を維持するNK細胞を意味する。具体的に、通常の知られたNK細胞の分離方法であるCD3陰性及び/またはCD56陽性のような特性を持つ細胞を単核球などから分離する方法などを通じて得られるナチュラルキラー細胞を意味する。
本発明における「サイトカインなどで再刺激されないナチュラルキラー細胞」とは、通常の知られた第1次刺激工程(例えば、サイトカイン処理、腫瘍抗原による刺激)でナチュラルキラー細胞を処理してから、以後の後続的な再刺激手続きがなかったナチュラルキラー細胞を意味する。かかる1次刺激工程を通じてナチュラルキラー細胞の特性の一部が変形され得るが、再刺激工程などがなかったため、メモリ様ナチュラルキラー細胞としての特性を表しにくいナチュラルキラー細胞を意味し得る。例えば、第1次刺激工程は、NK細胞を得た後、直ぐ進行されるIL-15及びIL-21の混合処理による刺激などを含むことができる。また、細胞を得た後、一定時間の経過後、IL-12、IL-15、IL-18などの組み合わせによる任意の1回刺激であることができる。また、かかる細胞は場合によって、メモリ様細胞で誘導される前段階のNK細胞(Memory(NO))のような細胞を含むこともできる。
本発明における「従来の一般的なナチュラルキラー細胞由来のメモリ様ナチュラルキラー細胞」とは、任意のサイトカインの組み合わせ、または腫瘍抗原などによる2回以上の刺激工程を通じて、メモリ様ナチュラルキラー細胞の特性を表すことができる細胞を意味する。これに制限されるものではないが、例えばIL-12、IL-15及び/またはIL-18の組み合わせを利用して2回以上の刺激を通じて製造されたメモリ様ナチュラルキラー細胞を意味することができ、ウイルス抗原(例えば、m157抗原)で1次刺激し、再び同じ抗原で再刺激して製造されたメモリ様ナチュラルキラー細胞を意味することができる。
・Present Disclosure
本出願は、がん細胞、ウイルス感染細胞及び特定免疫細胞を攻撃し殺害することが可能な、メモリ様ナチュラルキラー(NK)細胞の生体内(in vivo)、生体外(ex vivo)、または試験管内(in vitro)刺激、増殖及び製造;これから製造された特定のメモリ様ナチュラルキラー細胞;これを含む薬剤学的組成物;これを利用したがんの治療方法に関するものである。
本発明は、下記からなる群より選択されるいずれか一つ以上の特徴を有する、IL-12、IL-15及びIL-18から選択されるいずれか一つ以上のサイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞(cytokine-induced memory-like NK cells)を提供する:
a)末梢血液から分離されたナチュラルキラー細胞または知られた既存のメモリ様ナチュラルキラー細胞と対比してNKp30及び/またはCD25の発現の増加;
b)末梢血液から分離されたナチュラルキラー細胞または知られた既存のメモリ様ナチュラルキラー細胞と対比してNKp44及び/またはKIR2DL2/3の発現の減少;及び
c)末梢血液から分離されたナチュラルキラー細胞または知られた既存のメモリ様ナチュラルキラー細胞と対比してIFN-γの分泌の増加。
本発明によるメモリ様ナチュラルキラー細胞は、従来の一般的なナチュラルキラー細胞由来のメモリ様ナチュラルキラー細胞(例えば、末梢血液から分離されて通常の知られたサイトカイン誘導方法で誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞)と対比して、優れたNK細胞活性化受容体発現能、がん細胞、ウイルス感染細胞及び特定免疫細胞などに対する優れた殺傷能、高いインターフェロン-γの発現などを通じて機能的に優れたメモリ様ナチュラルキラー細胞を提供することで、がんの予防または治療に有用に使用することができる。
本発明において、上記IL-12、IL-15及びIL-18から選択されるいずれか一つ以上のサイトカインでメモリ様ナチュラルキラー細胞を誘導する前に誘導の対象となるナチュラルキラー細胞は、CD3-特性のナチュラルキラー細胞にIL-15及びIL-21が処理されて培養されたものであることができる。
NK細胞は、CD56またはCD16の発現及びT細胞受容体(CD3)の不在により定義される末梢血液リンパ球の部分集合である。NK細胞は、主要組織適合性複合体(major histocompatibility complex、MHC)-クラスI分子が欠如された標的細胞を感知し死滅させる。
本発明によるメモリ様NK細胞(Memory-like NK cells)は、IL-12、IL-15及びIL-18から選択されるいずれか一つ以上のサイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞(cytokine-induced memory-likeNKcells)であり、従来の一般的なナチュラルキラー細胞由来のメモリ様ナチュラルキラー細胞と対比してNK細胞活性化受容体のうち自然殺傷能受容体としてNKp30の発現が増加し、CD25の発現が増加したという特性を表す。
具体的に、NKp30の増加は、従来の一般的なナチュラルキラー細胞、サイトカインなどで再刺激されていないナチュラルキラー細胞(PB(-))、従来の一般的なナチュラルキラー細胞由来のメモリ様ナチュラルキラー細胞(PB(+))(例えば、末梢血液から分離されてサイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞)などのNKp30の発現と対比した時、少なくとも5%、10%、15%、20%、30%またはそれ以上の発現の増加を表すものであることができる。具体的に、上記対比は、末梢血液から分離されたナチュラルキラー細胞;または知られた既存のメモリ様ナチュラルキラー細胞であって、IL-12、IL-15及びIL-18から選択されるいずれか一つ以上のサイトカインで2回以上刺激されて誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞、またはウイルス抗原(例えば、m157抗原)で2回以上刺激されて誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞と対比した時の増加を意味することができる。
また、NKp30の増加は、従来の一般的なナチュラルキラー細胞、サイトカインなどで再刺激されていないナチュラルキラー細胞(PB(-))、従来の一般的なナチュラルキラー細胞由来のメモリ様ナチュラルキラー細胞(PB(+))(例えば、末梢血液から分離されてサイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞)の発現より1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、またはそれ以上発現が増加したものであることができる。
NKp30はNK細胞の殺傷能を増加させる受容体である。よって、その発現の増加は、殺傷能を増進させることができるという長所を有する。
具体的に、CD25の増加は、従来の一般的なナチュラルキラー細胞、サイトカインなどで再刺激されていないナチュラルキラー細胞、従来の一般的なナチュラルキラー細胞由来のメモリ様ナチュラルキラー細胞(例えば、末梢血液から分離されてサイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞)などのCD25の発現と対比した時、少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、またはそれ以上の発現の増加を表すものであることができる。具体的に、上記対比は、末梢血液から分離されたナチュラルキラー細胞;または知られた既存のメモリ様ナチュラルキラー細胞としてIL-12、IL-15及びIL-18から選択されるいずれか一つ以上のサイトカインで2回以上刺激されて誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞、またはウイルス抗原(例えば、m157抗原)で2回以上刺激されて誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞と対比した時の増加を意味することができる。
また、CD25の増加は、従来の一般的なナチュラルキラー細胞、サイトカインなどで再刺激されていないナチュラルキラー細胞(PB(-))、従来の一般的なナチュラルキラー細胞由来のメモリ様ナチュラルキラー細胞(PB(+))(例えば、末梢血液から分離されてサイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞)の発現より1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、2倍、3倍、またはそれ以上発現が増加したものであることができる。
CD25は、ナチュラルキラー細胞の活性が高い時、その割合が増加する受容体である。本発明によるメモリ様ナチュラルキラー細胞は、一般的なNK細胞より高いCD25を発現することで、高い活性のNK細胞を提供することができるという点で長所を有する。
また、本発明によるメモリ様ナチュラルキラー細胞は、従来の一般的なナチュラルキラー細胞由来のメモリ様ナチュラルキラー細胞と対比してNK細胞活性化受容体のうちNKp44、KIR2DL2/3、またはこれらの全ての発現が減少した特性を表す。
具体的に、NKp44の減少は、従来の一般的なナチュラルキラー細胞、サイトカインなどで再刺激されていないナチュラルキラー細胞、従来の一般的なナチュラルキラー細胞由来のメモリ様ナチュラルキラー細胞(例えば、末梢血液から分離されてサイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞)などのNKp44の発現と対比した時、少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、またはそれ以上の発現の減少を表すものであることができる。具体的に、上記対比は、末梢血液から分離されたナチュラルキラー細胞;または知られた既存のメモリ様ナチュラルキラー細胞としてIL-12、IL-15及びIL-18から選択されるいずれか一つ以上のサイトカインで2回以上刺激されて誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞、またはウイルス抗原(例えば、m157抗原)で2回以上刺激されて誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞と対比した時の減少を意味することができる。
また、NKp44の減少は、従来の一般的なナチュラルキラー細胞、サイトカインなどで再刺激されていないナチュラルキラー細胞(PB(-))、従来の一般的なナチュラルキラー細胞由来のメモリ様ナチュラルキラー細胞(PB(+))(例えば、末梢血液から分離されてサイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞)の発現より1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、2倍、3倍、またはそれ以上発現が減少したものであることができる。
NKp44は、活性阻害ドメイン(Immunoreceptor Tyrosine-based Inhibitory Motif)を有しており、機能的にNK細胞の活性抑制をする可能性が存在する。これにより、NKp44の抑制は、NK細胞自体の活性が落ち得る問題を予め防止することができるという側面で長所を有する。
具体的に、NK活性阻害受容体であるKIR2DL2/3の減少は、従来の一般的なナチュラルキラー細胞由来のメモリ様ナチュラルキラー細胞(例えば、末梢血液から分離されてサイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞)などのKIR2DL2/3の発現と対比した時、少なくとも3%、5%、10%、20%、30%、またはそれ以上の発現の減少を表すものであることができる。具体的に、上記対比は、末梢血液から分離されたナチュラルキラー細胞;または知られた既存のメモリ様ナチュラルキラー細胞としてIL-12、IL-15及びIL-18から選択されるいずれか一つ以上のサイトカインで2回以上刺激されて誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞、またはウイルス抗原(例えば、m157抗原)で2回以上刺激されて誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞と対比した時の減少を意味することができる。
また、KIR2DL2/3の減少は、従来の一般的なナチュラルキラー細胞由来のメモリ様ナチュラルキラー細胞(PB(+))(例えば、末梢血液から分離されてサイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞)の発現より1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、2倍、3倍、またはそれ以上発現が減少したものであることができる。
KIR2DL2/3は、活性阻害受容体の一つとして知られている。これにより、KIR2DL2/3の減少は、NK細胞の活性を究極的に増加させることができるという点で長所を有する。
また、本発明によるメモリ様ナチュラルキラー細胞は、従来の一般的なナチュラルキラー細胞、サイトカインなどで再刺激されていないナチュラルキラー細胞、従来の一般的なナチュラルキラー細胞由来のメモリ様ナチュラルキラー細胞(例えば、末梢血液から分離されてサイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞)などのIFN-γの分泌/発現と対比してIFN-γの分泌/発現が増加した特性を表す。
具体的に、IFN-γの分泌/発現の増加は、従来の一般的なナチュラルキラー細胞、サイトカインなどで再刺激されていないナチュラルキラー細胞、従来の一般的なナチュラルキラー細胞由来のメモリ様ナチュラルキラー細胞などのIFN-γの発現と対比した時、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、100%、200%、300%、400%、500%、1000%、2000%、3000%、またはそれ以上の発現の増加を表すものであることができる。具体的に、上記対比は、末梢血液から分離されたナチュラルキラー細胞;または知られた既存のメモリ様ナチュラルキラー細胞としてIL-12、IL-15及びIL-18から選択されるいずれか一つ以上のサイトカインで2回以上刺激されて誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞、またはウイルス抗原(例えば、m157抗原)で2回以上刺激されて誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞と対比した時の増加を意味することができる。
IFN-γの分泌の増加は、ナチュラルキラー細胞の殺傷能を大きく増加させることができ、NK細胞以外にも他の免疫細胞を刺激して抗がん免疫機能を大きく増進させることができるという点で長所を有する。
また、本発明によるメモリ様ナチュラルキラー細胞は、従来の一般的なナチュラルキラー細胞、サイトカインなどで再刺激されていないナチュラルキラー細胞、従来の一般的なナチュラルキラー細胞由来のメモリ様ナチュラルキラー細胞などと対比して増進された殺傷能を表す。具体的に、がん細胞、ウイルス感染細胞またはこれらの全てに対して末梢血液から分離されたナチュラルキラー細胞;または知られた既存のメモリ様ナチュラルキラー細胞としてIL-12、IL-15及びIL-18から選択されるいずれか一つ以上のサイトカインで2回以上刺激されて誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞、またはウイルス抗原(例えば、m157抗原)で2回以上刺激されて誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞より殺傷能が増加されたものであることができる。
NK細胞の注入は、例えば血液がん(例えば、急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia)または多発性骨髄腫(multiple myeloma))及び多くの固形がん(例えば、脳がん(brain tumor)、ユーイング肉腫(Ewing sarcoma)、肝がん及び横紋筋肉腫(rhabdomyosarcoma))などを含むNK細胞溶解に敏感ながん患者のための治療方法である。機能性NK細胞の数が増加すると、その中でもリンパ腫(lymphomas)、大膓がん(colorectal cancer)、肝がん、肺がん(lung cancer)、及び乳がん(breast cancer)を含む様々ながんの治療に使用される治療用抗体の効能も有意に増進させることができる。しかし、かかる類型のオーダーメイド治療は、数十万ドルが所要される典型的な抗体-含有療法を使用して費用が多くかかる。さらに、既存の方法の期待効能は免疫が低下したがん患者における免疫細胞結合の不足により達成できないことが度々ある。
以前の研究は、NK細胞の増殖が数回の分裂に制限され、細胞はテロミア短縮の観察と同時に老化に至り増殖を止めたことを示した。即ち、既存の方法は、効率的な試験管内のNK細胞の増殖が可能であるが、生きている支持細胞を必要とするため、この方法を大規模のGMP施設及び用量を有しない臨床環境に移転しにくい。また、患者に注入されたNK細胞は、供給装置による持続的な刺激の不足により分裂を中断する可能性がある。さらに、試験管内の培養されたNK細胞を患者に再注入する場合、意図した通りに機能をする細胞の能力に対する情報が依然として不足である。
本発明によるメモリ様NK細胞は、上記のような問題点を解決できるように上述した優れた特性を表すことができるメモリ様ナチュラルキラー細胞を提供することで、臨床的に適切に利用できる細胞を提供する。即ち、「メモリ様NK細胞」は、サイトカインまたは腫瘍抗原の再刺激時に再活性化されることができる特性を有するNK細胞と関連があり、これを利用して直間接的にがんの治療などに役に立てられる。
即ち、本発明によるメモリ様NK細胞は、NK細胞の長期間の生体内の生存維持に優れた長所を有し、再刺激時に再活性誘導が非常に容易であり、人体処理だけでなく製造工程などでも有用に活用されることができ、特に過量のIFN-γの分泌を通じて全体的な免疫活性を大きく増進させることができるという側面で優れた長所を有する。
本発明による上記特性を表すメモリ様NK細胞は、下記のような方法で得ることができる:
1)単核球からCD3陽性であるT細胞のみを除去してCD3陰性細胞を得る段階;
2)段階1)のCD3陰性細胞にIL-15及びIL-21を混合処理した後、培養する段階;
3)段階2)の培養されたCD3陰性細胞をIL-12、IL-15及びIL-18から選択されるいずれか一つ以上のサイトカインを処理する段階。
上記NK細胞に対して、IL-12、IL-15及びIL-18から選択されるいずれか一つ以上のサイトカインを処理して誘導されたメモリ様NK細胞を製造する場合、
a)末梢血液から分離されたナチュラルキラー細胞または知られた既存のメモリ様ナチュラルキラー細胞と対比してNKp30及び/またはCD25の発現の増加;
b)末梢血液から分離されたナチュラルキラー細胞または知られた既存のメモリ様ナチュラルキラー細胞と対比してNKp44及び/またはKIR2DL2/3の発現の減少;及び
c)末梢血液から分離されたナチュラルキラー細胞または知られた既存のメモリ様ナチュラルキラー細胞と対比してIFN-γの分泌の増加の特性を有するメモリ様NK細胞を製造することができる。
本発明において、上記IL-12、IL-15及びIL-18から選択されるいずれか一つ以上のサイトカインを処理することは、IL-12及びIL-15;IL-12及びIL-18;またはIL-15及びIL-18を処理することであることができる。かかる処理は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、36、または48時間の間一つ以上のNK細胞を上記サイトカインの任意の組み合わせで処理することであることができる。好ましくは、上述した製造工程により製造されたNK細胞または上述した特性を有するNK細胞にこれを処理することができる。
また、本発明は、1)単核球からCD3陽性であるT細胞のみを除去してCD3陰性細胞を得る段階;
2)段階1)のCD3陰性細胞にIL-15及びIL-21を混合処理した後、培養する段階;及び
3)IL-12、IL-15及びIL-18から選択されるいずれか一つ以上のサイトカインを上記培養された細胞に処理する段階;を含む、サイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞の製造方法であって、
上記段階1)は、CD3陽性であるT細胞と赤血球が交差結合するようにした後、遠心分離時に密度勾配を利用してCD3陰性細胞を分離することで行われ、
上記段階2)は、IL-15及びIL-21以外に他のサイトカインが含まれないものである、サイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞の製造方法を提供する。
本発明によるサイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞の製造方法は、1)単核球からCD3陽性であるT細胞のみを除去してCD3陰性細胞を得る段階を含む。
段階1)において、CD3陰性細胞の分離は、CD3陽性であるT細胞と赤血球が交差結合するようにした後、遠心分離時に密度勾配を利用して、CD3陰性細胞を利用する抗体を利用して行われることができる。例えば、STEMCELL Technologies社で製造、販売するRosetteSepTM Human NK Cell Enrichment Cocktailという製品を利用して行われることができる。上記製品は、CD3、CD4、CD19、CD36、CD66b、CD123、及びグリコホリンA(glycophorin A)を認識する四量体抗体(tetrameric antibody)のカクテル(cocktail)である。CD3陽性細胞、CD4陽性細胞、CD19陽性細胞、CD36陽性細胞、CD66b陽性細胞、CD123陽性細胞は、グリコホリンAを発現する赤血球と共に四量体抗体に結合して交差結合をなす。その後、遠心分離をすると、上記細胞は密度勾配によりペレットをなし、上層部でCD3陰性であるNK細胞が高濃度で密集された培地を得ることができる。
本発明によるサイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞の製造方法は、2)段階1)のCD3陰性細胞にIL-15及びIL-21を混合処理した後、培養する段階を含む。
段階2)の培養は、細胞の模様及び活性に異常を表さない限り、通常の当業者が任意に調節することができる水準における培養であることができる。ここで培養は、静置培養(stationary culture)または浮遊培養(suspension culture)方法を使用することができ、静置培養は、培養器に撹拌(agitating)または振盪(shaking)なしに放置した状態で培養することを意味し、浮遊培養は、通気(aeration)や撹拌などを通じて細胞が反応器の下部または側面部に付着せず懸濁された状態で培養することを意味する。また、静置培養のための反応器と浮遊培養のための反応器は同一であってもよく、異なっていてもよい。
例えば、静置培養のための反応器と浮遊培養のための反応器が同一である場合は、同一の反応器で静置培養が完了した後、サイトカインなどの必要な栄陽性分を含む培地を追加で供給して浮遊培養方式で培養することが可能であり、異なる種類の培養器を使用する場合は静置培養が完了した後、培養物を浮遊培養のための反応器に移して浮遊培養することができる。
上記2)段階で培養される細胞は、CD3-CD56の特性を表すものであり、サイトカインIL-15及びIL-21を混合処理する場合、上述されたNKR発現の変化特性を表す新規のナチュラルキラー細胞を得ることができる。かかる特性の変化は、上記のNK細胞について言及したNKRの発現変化を含む。即ち、a)末梢血液から分離されたナチュラルキラー細胞と対比して、NKp30、CD25、またはこれらの全ての発現の増加;
b)末梢血液から分離されたナチュラルキラー細胞と対比して、NKp44、KIR2DL2/3、またはこれらの全ての組み合わせの発現の減少であることができる。
ここで、培養は、3日、4日、5日、6日、7日、10日、14日、20日、25日などの細胞の特性変化を表すことができる適切な水準の期間の間の培養を行うものであることができる。好ましくは、培養を5~20日間行う。上記段階2)は、IL-15及びIL-21以外に他のサイトカインが含まれないものである。上記の二つの言及されたサイトカインのみを処理することで、目的とするNK細胞の特性を発現させることができる。
培養培地の場合、α-MEM培地、Myelocult培地などの培地を使用することが好ましく、IL-15、IL-21はそれぞれ、5ng/ml~50ng/ml、好ましくは10~30ng/mlで処理することができる。
本発明によるサイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞の製造方法は、3)IL-12、IL-15及びIL-18から選択されるいずれか一つ以上のサイトカインを上記培養された細胞に処理する段階を含む。
本発明において、上記培養は、上記の製造されたNK細胞を再刺激するものである。かかる再刺激は、好ましくは、上述した培地条件下でIL-12及びIL-15;IL-12及びIL-18;またはIL-15及びIL-18を処理するものであることができる。かかる処理は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、36、または48時間の間処理するものであることができる。好ましくは、上記処理は3~10時間の間行うことができる。上記のような再刺激処理を通じて上述したメモリ様ナチュラルキラー細胞の特性を有する細胞を製造することができる。
これらのそれぞれのサイトカインの処理は、それぞれ5ng/ml~50ng/ml、好ましくは、10~30ng/mlで処理することができる。
かかる本発明の製造方法により製造されたメモリ様ナチュラルキラー細胞は、従来のナチュラルキラー細胞由来のメモリ様ナチュラルキラー細胞と対比して機能的に優れた特性を表し、直接または間接的に抗がん用途などに有用に利用されることができる。
これにより、本発明は、前記サイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞の製造方法で製造されたメモリ様ナチュラルキラー細胞を提供する。
具体的に、1)単核球からCD3陽性であるT細胞のみを除去してCD3陰性細胞を得る段階;
2)段階1)のCD3陰性細胞にIL-15及びIL-21を混合処理した後、培養する段階;及び
3)IL-12、IL-15及びIL-18から選択されるいずれか一つ以上のサイトカインを上記培養された細胞に処理する段階;を含む、サイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞の製造方法であって、
上記段階1)は、CD3陽性であるT細胞と赤血球が交差結合するようにした後、遠心分離時に密度勾配を利用してCD3陰性細胞を分離することで行われ、
上記段階2)は、IL-15及びIL-21以外に他のサイトカインが含まれないものである、サイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞の製造方法で製造され、
a)末梢血液から分離されたナチュラルキラー細胞または知られた既存のメモリ様ナチュラルキラー細胞と対比してNKp30及び/またはCD25の発現の増加;
b)末梢血液から分離されたナチュラルキラー細胞または知られた既存のメモリ様ナチュラルキラー細胞と対比してNKp44及び/またはKIR2DL2/3の発現の減少;及び
c)末梢血液から分離されたナチュラルキラー細胞または知られた既存のメモリ様ナチュラルキラー細胞と対比してIFN-γの分泌の増加の特性を有するメモリ様ナチュラルキラー細胞である。
本発明は、前記サイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞をこれを必要とする対象体に投与する段階を含む対象体におけるがんの治療方法を提供する。
また、本発明は、前記サイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞を含むがんの予防または治療用薬剤学的組成物を提供する。
また、本発明は、がん治療に使用するための前記サイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞を含む組成物を提供する。
また、本発明は、がんの治療のための薬剤の製造において、前記サイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞の用途を提供する。
本発明において、前記サイトカインで誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞は、細胞治療剤として利用されることができる。具体的に、個体から分離、培養及び特殊な操作を通じて製造された細胞及び組織で治療、診断及び予防の目的で使用される医薬品(米国のFDA規定)であって、細胞あるいは組織の機能を復元させるために生きている自家、同種、または異種細胞を体外で増殖選別するか、他の方法で細胞の生物学的特性を変化させるなどの一連の行為を通じて、治療、診断及び予防の目的として使用される医薬品である。
上記がんは、例えば、肝がん、肺がん、大膓がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、膵がん、子宮頸がん、甲状腺がん、喉頭がん、白血病、脳腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、頭頸部がん、唾液腺がん、リンパ腫で構成された群より選択されたいずれか一つであることができ、好ましくは、大膓がん、肺がん、肝がん、膵がん及び白血病からなる群より選択されたいずれか一つのがんであることができる。
本発明の一具現例として、前記治療において、メモリ様ナチュラルキラー細胞を1×10個以上、3×10個以上、3×10個以上、1×10個以上、3×10個以上、6×10個以上、または1×10個以上含むことができる。本発明において、前記組成物は、14~42日間隔、好ましくは14日~35日間隔、より好ましくは14日~30日間隔で投与されることができる。しかし、投与間隔はこれに制限されない。
本発明の一具現例として、前記組成物は、週1回で4週間投与されるか、週2回で2週間投与されることができる。
本発明によるメモリ様ナチュラルキラー細胞は、冷凍後に解凍して使用しても充分にその治療効果を維持することができるという長所を有する。
本発明による治療方法において使用されるメモリ様ナチュラルキラー細胞は、薬剤学的に適合し生理学的に許容される補助剤を使用して薬剤に製造されることができ、前記補助剤としては、賦形剤、崩解剤、甘味剤、結合剤、被覆剤、膨張剤、潤滑剤、滑沢剤または香味剤などを使用することができる。
投与のために、上述した有効成分以外にさらに薬剤学的に許容可能な担体を1種以上含み、薬学的組成物として製剤化することができる。薬剤学的に許容可能な担体は、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール、リポソーム及びこれらの成分のうち1成分以上を混合して使用することができ、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤などの他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑剤を付加的に添加して、水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化することができ、標的器官に特異的に作用するように標的器官の特異的抗体またはその他のリガンドを前記担体と結合させて使用することができる。さらに、当該技術分野の適正な方法として、またはレミントンの文献(Remington’s Pharmaceutical Science(最新版),Mack Publishing Company,Easton PA)に開示されている方法を利用して、各疾患によってまたは成分によって好ましく製剤化することができる。
本発明のメモリ様ナチュラルキラー細胞を含む薬学的組成物は、液剤、懸濁剤、分散液、乳剤、ゲル剤、注射可能な液剤及び活性化合物の徐放性製剤などになることができ、好ましくは注射剤になることができる。
本発明の薬学的組成物を注射剤に製剤化する場合、注射剤処方の流通による製品安定性を確保するために、注射剤として使用可能な酸水溶液またはリン酸塩などの緩衝溶液を使用してpHを調節することで、物理的または化学的に非常に安定した注射剤として製造されることができる。
より具体的に、前記注射剤は、安定化剤または溶解補助剤と共に注射用水に溶解させた後、滅菌処理、特に高温減圧滅菌法または無菌濾過法により滅菌処理して製造されることができる。前記注射用水としては、注射用蒸留水または注射用緩衝溶液、例えば、pH3.5~7.5範囲のリン酸塩緩衝溶液またはリン酸二水素ナトリウム(NaHPO)-クエン酸緩衝溶液を使用することができる。使用されるリン酸塩は、ナトリウム塩またはカリウム塩形態であるか、無水物または水和物の形態でも構わず、クエン酸または無水物または水和物の形態でも構わない。
また、本発明で使用される安定化剤は、ピロ亜硫酸ナトリウム(sodium pyrosulfite)、亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO)、ピロ亜硫酸ナトリウム(Na)、またはエチレンジアミン四酢酸(ethylenediaminetetraacetic acid)を含み、溶解補助剤は、水酸化ナトリウム(NaOH)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、炭酸ナトリウム(NaCO)、または水酸化カリウム(KOH)のような塩基、または塩酸(HCl)もしくは酢酸(CHCOOH)のような酸を含む。
本発明による注射剤は、生体吸収性、生体分解性、生体適合性のため剤形化されることができる。生体吸収性とは、注射剤が体内で、分散された注射剤の分解または分解なく、初期の適用で消えられることを意味するものである。生体分解性は、加水分解または酵素分解により注射剤が体内で破砕または分解できることを意味する。生体的合成は、全ての成分が体内で無毒性であることを意味する。
本発明による注射剤は、通常の充填剤、重量剤、結合剤、湿潤剤、界面活性剤などの希釈剤、または賦形剤などを使用して製造することができる。
本発明の組成物または有効成分は、目的に応じて静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、胸骨内、経皮、鼻腔内、皮下、子宮内、吸入、局所、直腸、経口、眼球内、または皮内経路などを通じて通常の方式で投与することができ、好ましくは、静脈内に投与されることができる。本発明の組成物または有効成分は、注射またはカテーテルで投与されることができる。
本発明の組成物において、有効成分の投与量は、体重60kgの成人基準として、1×10~1×1050個/kg、好ましくは1×10~1×1030個/kg、より好ましくは1×10~1×1020個/kg、最も好ましくは1×10~1×10個/kgの範囲内で調節することができる。但し、投与される最適な投与量は、当業者によって容易に決定されることができ、疾患の種類、疾患の重症度、組成物に含有された有効成分及び他の成分の含量、剤形の種類、及び患者の年齢、体重、一般健康状態、性別及び食餌、投与時間、投与経路及び組成物の分泌率、治療期間、同時に使用される薬物を含む多様な因子によって調節されることができる。
本発明の組成物において有効成分は、組成物の総重量に対して0.001~50重量%で含有されることができる。しかし、含量はこれに制限されない。
本発明の組成物は、1以上の抗がん剤をさらに含むことができる。
本発明において、がん治療が必要な対象体は、ヒトを含む哺乳類になることができる。例えばヒト、犬、猫、馬などになることができる。
本発明の用語「治療学的に有効な量」は、研究者、獣医、医者またはその他臨床医により考えられる動物またはヒトで生物学的または医学的反応を誘導する活性成分または薬学的組成物の量を意味するもので、これは、治療する疾患または障害の症状緩和を誘導する量を含む。本発明の有効成分に対する治療上の有効投与量及び投与回数は、所望の効果によって変化することは当業者に自明である。
以下では、本発明を実施例及び実験例によって詳しく説明する。
但し、下記の実施例及び実験例は、本発明を例示するものであるだけで、本発明の内容が実施例によって限定されるものではない。
EXAMPLES
実施例1.Memory NK細胞の製造
1.1 NK細胞の製造
ソウルのアサン病院からIRB審査を通過し供与者の同意書を修得した末梢血液の提供を受けた。受領した末梢血液と2%のFBSが含まれたPBS溶液(RosetteSep buffer)を1:5の割合で希釈した血液希釈液内の総細胞数を測定し、その数によってCD3陽性細胞に交差結合が可能なRosetteSepTMを適正量で処理し、室温で混合しながら20分間反応させる。反応が終わった血液希釈液を再びRosetteSepTM bufferで1.5倍希釈し、Ficoll-Paque溶液に層が混じられないように重畳した後、室温で930gで20~30分間break off条件の遠心分離を実施した。それから、上清液の除去後、分離された単核球層を採取し、同量のRosetteSepTM bufferを添加し洗浄してCD3陰性細胞を得た。
RosetteSepTM成分は、mouseとratに由来したモノクローナル抗体、glycoporin A抗体、支持体の役割をするP9抗体及びP9 F(ab’)抗体が四量体(tetramer)を形成した複合体を含む。CD3陰性細胞の分離される過程は、血液に投入されたRosetteSepTMの四量体複合体が血液内のCD3陽性細胞と交差結合しながらimmunorosetteを形成し、これによりFicollより密度が大きくなったimmunorosetteは、Ficollを利用した密度勾配の遠心分離時にFicollの下部に位置するようになる。また、上部には四量体複合体と結合しないCD3陰性細胞が集積されるようになる。これにより、上記のCD3陽性細胞とCD3陰性細胞が分離されるものである。
上記分離されたCD3陰性細胞を培養容器に2×10cells/mlの濃度で接種してalpha-MEM完全培地にIL-15及びIL-21を共に処理して、37℃、5%のCOの条件で培養した。培養する間に細胞の濃度が4×10cells/mlを超えないようにして、初期使用した条件の培地を使用して2×10cells/mlの濃度で細胞を分け、10日~22日間培養した。これをKRIBB-NK細胞とも命名する。
比較例1.1 末梢血液由来のNK細胞の製造
一方、末梢血液から誘導された一般的なNK細胞の場合、下記の製造工程を通じて製造した。末梢血液をRPMI 1640を利用して2:1で希釈して準備した後、Ficoll-Paque上層部で該用意された血液を用心深くおいた後、2,000rpmで30分間遠心分離して単核球細胞層(mononulear cell layer、MNC layer)を得た。前記単核球細胞層から用心深く取った細胞から赤血球を除去して単核球を得た。前記得た単核球にCD56マイクロビーズ(microbeads)(Miltenyi Biotech)を添加して標識した後、これをCSコラム(column)及びVario MACSを利用してCD56陰性細胞を除去し、CD56陽性細胞を得た。これは、具体的にCD56マイクロビーズ(Miltenyi Biotech)が単核球からCD56陽性である細胞を捕捉して磁性を持たせた後、単核球のうち前記マイクロビーズが付着したCD56陽性細胞を磁石と反応するMACSコラムを通過させることで、CD56陽性細胞はコラムに残っており、CD56陰性細胞はコラムから抜け出して分離した。これを通じて末梢血液から分離される通常のNK細胞を製造した。
1.2 Memory NK細胞の製造
上記実施例1.1.で製造したNK細胞を利用してMemory NK細胞を製造した。これと関連した製造工程は、図1の(a)に模式図で示した。
具体的に、上記実施例1.1.の工程のように分離されたCD3陰性細胞をIL-15及びIL-21を共に処理して10日間培養した。それから、1)IL-12、IL-15、2)IL-12、IL-18、または3)IL-15、IL-18を前記NK細胞に6時間の間処理して刺激を与えて、サイトカインで刺激されたメモリ様ナチュラルキラー細胞(memory-like NK cell)を製造した。便宜上、実施例1.1.のNK細胞に如何なるサイトカインも処理していない群は「no」とし、サイトカインの組み合わせで区分して1)IL-12とIL-15を処理した「12+15」群、2)IL-12とIL-18を処理した「12+18」群、3)IL-15とIL-18を処理した「15+18」群と命名した。
比較例1.2 末梢血液由来のNK細胞からメモリ様NK細胞の製造
一方、対照群として使用するために、上記比較例1.1.に記載された一般の末梢血液に由来したNK細胞をIL-12、IL-15及びIL-18と混合して16時間の間処理するか、処理なしに培養し、9日間IL-15だけで培養した後、IL-12とIL-15を処理して6時間の間再刺激を行った。これにより、製造されたメモリ様ナチュラルキラー細胞を陽性対照群(+)及び陰性対照群(-)細胞と命名した。この具体的な製造工程については、図1の(b)に示した。
陰性対照群である(-)細胞の製造法は、(+)細胞群と同一の方法で製造し、抹消血液でナチュラルキラー細胞を分離した直後、IL-12及びIL-15とIL-18を16時間の間処理する過程を省略した。上述したPB-NK細胞由来のメモリ様ナチュラルキラー細胞の製造過程を図面で示すと、以下の通りである。
実施例2.Memory NK細胞のナチュラルキラー細胞受容体の発現変化の確認
上記実施例1.2で製造したメモリ様ナチュラルキラー細胞の活性度の差異を調べるために、代表的なナチュラルキラー細胞受容体の発現程度をFACSで分析し、その結果を図2及び3に示した。
サイトカインを処理していない群(以下、no)に比べて「12+15」群、「12+18」群、「15+18」群のいずれでも確認したナチュラルキラー細胞受容体の中で半分以上の発現量が増加したことを確認することができた。
具体的に、活性受容体であるNKp30は、サイトカインを処理していない群(以下、no)に比べて、それぞれ約6%(約1.10倍)、約14%(約1.15倍)、または約15%(約1.2倍)増加した。また、CD25の場合、サイトカインを処理していない群(以下、no)に比べて、それぞれ約7%(約1.1倍)、10%(約1.13倍)、5%増加した。
一方、NKp44は反対に、約5%程度発現量が減少した。
また、PB-NK細胞由来のメモリ様ナチュラルキラー細胞である陽性対照群(以下、+)の場合、陰性対照群(以下、-)に比べて、殆どのナチュラルキラー細胞受容体で発現量が増加したことを確認した。しかし、PB-NK-(+)細胞に比べて「12+15」群の場合、NKp30、CD25とKIR2DL1の受容体の発現がそれぞれ約12%(約1.2倍)、約40%(約2.0倍)、約6%(約1.1倍)が高く発現されたことを確認し、「12+18」群ではPB-NK-(+)細胞に比べてNKp30、CD25、KIR2DL1受容体はそれぞれ、約20%(約1.25倍)、約42%(2.0倍)、約10%(約1.4倍)が高く、「15+18」群も上記のような受容体に対してそれぞれ、約20%(1.3倍)、約40%(約1.9倍)、約10%(約1.5倍)高い発現率を示した。特に、CD25受容体は、本発明によって製造されたメモリ様ナチュラルキラー細胞の全てで約2倍程度が高い発現率が確認された。
一方、PB-NK-(+)細胞に比べて、NKp44及びKIR2DL2/3の発現の割合が減少されることを確認することができた。
この具体的数値は、図3に示し、この具体的な増加と減少の割合は、数値に基づいて容易に計算され、本明細書範囲の記載範囲に含まれることができる。
実施例3.Memory NK細胞の殺傷能変化の確認
上記実施例1.2で製造したメモリ様ナチュラルキラー細胞の殺傷能を確認するために、実験を行った。
代表的な血液がん細胞株であるK562細胞株またはRaji細胞をcaclein-AMで染色させて、上記実施例1.2で製造した12+15、15+18群のメモリ様ナチュラルキラー細胞で4時間の間反応させた後、K562及びRaji細胞株に対する直接的な細胞の殺傷能を確認した。
その結果を図4に示した。
図4から分かるように、「12+15」群、「15+18」群のいずれも刺激されていない細胞より高い殺傷能を表した。
具体的に、上記製造された「12+15」群、「15+18」群のメモリ様ナチュラルキラー細胞の割合が10であり、target細胞(K562細胞株またはRaji細胞)の割合が1である場合、血液がんの細胞株であるK562とRaji細胞に対する殺傷能がそれぞれ10%以上増加することを確認することができた。
また、肺がん細胞株であるA498とACHNに対して同一実験を行った結果、殺傷能も10%以上増加した殺傷能を示した。
一方、PB-NK細胞由来のメモリ様ナチュラルキラー細胞である陽性対照群(以下、+)の場合、陰性対照群(以下、-)と本願発明によるメモリ様ナチュラルキラー細胞の殺傷能を比較すると、本発明によるメモリ様ナチュラルキラー細胞の殺傷能が全ての細胞株で1.2倍から最大2.2倍まで高いことが確認された。
具体的に、PB-NK-(+)細胞に比べて「12+15」群はK562に対して1.2倍、Rajiに対して1.7倍、A498で2.2倍と最も高い殺傷能の差異を示し、ACHNに対して1.5倍の殺傷能が高いことが確認された。「15+18」群は、1.2倍、1.6倍、2.2倍、1.4倍の殺傷能が高い結果を表した。特に、がん細胞株別に増加率の傾向が非常に同一であり、肺がん細胞株であるA498細胞に対する最大の殺傷能を示した。
この具体的数値は図4に示し、この具体的な増加と減少の割合は、数値に基づいて容易に計算され、本明細書範囲の記載範囲に含まれることができる。
実施例4.Memory NK細胞のIFN-γ分泌能変化の確認
ナチュラルキラー細胞ががん細胞とウイルスに感染された細胞の増殖を抑制させるために生成して分泌する物質であるIFN-γの発現量の変化を確認することで、本発明で製造されたメモリ様ナチュラルキラー細胞の特性変化を確認し、その結果を図5に示した。
図5から分かるように、サイトカインで再刺激を与えていないno細胞に比べて12+15細胞のIFN-γ分泌量が約9.5倍多いことが確認された。また、12+18細胞と15+18細胞は、no細胞に比べてそれぞれ41.5倍と35.3倍多いIFN-γを分泌したことが確認された。
上記で確認できるように、サイトカインの再刺激によりNK細胞がメモリ細胞に誘導されて、最大42倍多い量のIFN-γを分泌することができる能力を有することができた。
また、IFN-γの検出結果において、PB-NK-(+)細胞に比べて本発明によるメモリ様ナチュラルキラー細胞が生成して分泌したIFN-γ量が「12+15」群で10.2倍、「12+18」群で44.4倍、「15+18」群で37.7倍高いことを確認した。
上記で確認できるように、抹消血液から分離した前駆体ナチュラルキラー細胞をメモリ細胞に誘導したPB-NK-(+)細胞は、事前刺激を与えていないPB-NK-(-)細胞に比べてナチュラルキラー細胞受容体の発現量が増加し、がん細胞に対する殺傷能力とIFN-γ生成能力が高くなった。
このように、本発明により製造されたサイトカイン誘導メモリ様細胞は、抹消血液から分離した前駆体ナチュラルキラー細胞をメモリ細胞に誘導したPB-NK-(+)細胞と対比して、一部のNK受容体の発現量に増進があり、がん細胞に対する殺傷能が増加された。特に、IFN-γ生成能力が急激に高くなった差異を示した。これは、本発明による方法により製造されたNK細胞をサイトカインで刺激してメモリ様ナチュラルキラー細胞に作ることが一般的なNK細胞または末梢血液NK細胞より遥かに効果的でかつ優れた特性(例えば、細胞殺傷能、IFN-γなど)を表す細胞を提供することができるという点で、優れた効果を有する。
即ち、本発明によるサイトカイン誘導されたメモリ様ナチュラルキラー細胞は、IFN-γを過量分泌しながら、優れた殺傷能などにより抗がん剤等としての使用に非常に容易である。
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図2f
図2g
図2h
図2i
図2j
図2k
図3
図4
図5