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特許7398135ユビキチン特異的プロテアーゼ阻害剤及びその製造方法と応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】ユビキチン特異的プロテアーゼ阻害剤及びその製造方法と応用
(51)【国際特許分類】
   C07D 495/04 20060101AFI20231207BHJP
   C07D 519/00 20060101ALI20231207BHJP
   A61K 31/4995 20060101ALI20231207BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20231207BHJP
   A61K 31/4545 20060101ALI20231207BHJP
   A61K 31/439 20060101ALI20231207BHJP
   A61K 31/4365 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
C07D495/04 105A
C07D519/00 301
C07D519/00 CSP
A61K31/4995
A61K31/496
A61K31/4545
A61K31/439
A61K31/4365
A61P37/02
A61P29/00
A61P35/00
A61P31/12
A61P31/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021566943
(86)(22)【出願日】2020-05-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-13
(86)【国際出願番号】 CN2020089284
(87)【国際公開番号】W WO2020224652
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2021-11-08
(31)【優先権主張番号】201910385956.0
(32)【優先日】2019-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521489285
【氏名又は名称】杭州普済遠成生物医薬科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】彭瑾
(72)【発明者】
【氏名】姜坤
(72)【発明者】
【氏名】卜基田
(72)【発明者】
【氏名】王▲フウ▼
【審査官】伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/032863(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/139778(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/139779(WO,A1)
【文献】Organic & Biomolecular Chemistry,Vol. 16,2018年,pp. 9191-9196, S3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構造から選ばれる:
【化1】



化合物及びそのラセミ体、立体異性体、互変異性体、同位体標識、窒素酸化物、溶媒和物、結晶多形体、又は薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物及びそのラセミ体、立体異性体、互変異性体、同位体標識、窒素酸化物、溶媒和物、結晶多形体、又は薬学的に許容可能な塩を含む、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項3】
USP28及び/又はUSP25関連の疾患又は障害の治療と阻害に用いられる医薬の製造における請求項1に記載の化合物及びそのラセミ体、立体異性体、互変異性体、同位体標識、窒素酸化物、溶媒和物、結晶多形体、又は薬学的に許容可能な塩、又は請求項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項4】
前記USP28及び/又はUSP25関連の疾患又は障害は、がん、炎症、自己免疫疾患、ウイルス感染症及び細菌感染症を含む、ことを特徴とする請求項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、2019年5月9日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が201910385956.0、発明名称が「ユビキチン特異的プロテアーゼ阻害剤及びその製造方法と応用」である先行出願の優先権を主張する。上記先行出願の全文は、引用により本願に組み込まれている。
【0002】
[技術分野]
本発明は医薬分野に関し、具体的には、本発明は新しいユビキチン特異的プロテアーゼ阻害剤及びその製造方法と用途に関する。
【0003】
[背景技術]
細胞は、細胞内タンパク質の恒常性により正常に機能するが、この恒常性は、タンパク質の合成と分解の動的平衡により維持する。細胞は主にプロテアソームの分解によって、損傷したタンパク質やミッションを完了したタンパク質等、不要になったタンパク質を除去する。プロテアソームによって分解されたタンパク質は、一般的に、48位のリジンによって連結されたポリユビキチン鎖で標識される。タンパク質のポリユビキチン標識は、主にE1、E2及びE3を含む一連の酵素作用の結果である。E1は、それ自体のシステイン残基と、76個のアミノ酸からなるユビキチンのC末端カルボキシル基との間に高エネルギーのチオエステル結合を形成することによってユビキチンを活性化し、活性化されたユビキチンは、E2のシステイン残基に転移され(哺乳類には約50種類のE2カップリング酵素がある)、そして、E3リガーゼの作用下で(哺乳類の細胞には約500種類のE3がある)、E2カップリング酵素はユビキチンを標的タンパク質のリジン残基に転移する。実質的には、E3リガーゼは、単に、ユビキチンがE2から標的タンパク質に転移されるように、E2カップリング酵素と基質を集めるに過ぎない(Annu. Rev. Biochem. 2009, 78, 477 & 2018, 87, 697; J. Am. Soc. Nephrol. 2006, 17, 1807)。細胞の一連の活動において、ユビキチン介在性の、プロテアソームによるタンパク質分解は、必要な調節手段であり、例えば、細胞周期、アポトーシス(Front Cell. Dev. Biol. 2018, 6, 11; Cell Death Differ. 1999, 6, 303; J. Cell. Mol. Med. 2002, 6, 25)やDNA損傷チェックポイントの制御(DNA Repair 2010, 9, 1229; Biochim. Biophys. Acta 2014, 1843, 150; Cell Death Differ. 2010, 17, 78; ISRN Mol. Biol. 2012, 146748)等である。
【0004】
ユビキチン化に対して、細胞は、タンパク質の恒常性をより正確に調節するために、脱ユビキチン化する機能もある。脱ユビキチン化は、脱ユビキチン化酵素(DUBs)によって触媒される。DUBsは特異的タンパク質加水分解酵素である(Physiol. Rev. 2013, 93, 1289; Oncogene 2012, 31, 2373; Biochem. J. 2015, 465, 1; BMC Biochem. 2008, 9 Suppl 1, S3; Protein Sci. 2014, 23, 344)。哺乳類には、ユビキチン特異的プロテアーゼ(USP)ファミリー、ユビキチンC末端加水分解酵素(UCH)ファミリー、卵巣腫瘍プロテアーゼ(OTU)ファミリー及びMachado-Josephin構造ドメイン(MJD)ファミリーを含むいくつかのファミリーに分けられている約100種類以上のDUBsがあることが知られている。
【0005】
プロテアソーム介在性のタンパク質分解システムの障害は、腫瘍、免疫系及び神経系の疾患を含む様々な人間の疾患と密接に関連することが知られいてる(Front Mol. Neurosci. 2014, 7, 70; Cardiovasc. Res. 2010, 85, 251; Essays Biochem. 2005, 41, 187; Front Biosci. 2014, 19, 886; Cancer Biol. Ther. 2002, 1, 337; IUBMB Life 2015, 67, 544; Acta Neuropathol. 2009, 118, 329; Int. J. Biochem. Cell. Biol. 2018, 101, 80; J. Clin. Oncol. 2013, 31, 1231; Cancer Metastasis Rev. 2017, 36, 635; Circ. Res. 2013, 112, 1046; Drug Resist. Updat. 2015, 23, 1; Biochim. Biophys. Acta 2014, 1843, 13; Cancer Metastasis Rev. 2017, 36, 683; Cancer Sci. 2009, 100, 24)。
【0006】
USP28は、ユビキチン特異的プロテアーゼであり、c-MYC(Nat. Cell. Biol. 2007, 9, 765)、LSD1(Cell Rep. 2013, 5, 224)、HIF1alpha(Blood 2012, 119, 1292)、Notch1(J. Clin. Invest. 2014, 124, 3407)、53BP1(Mol. Cell. Biol. 2014, 34, 2062)やCLASPIN(Cell 2006, 126, 529)等のタンパク質レベルを維持する上で重要な役割を果たし、それらが機能している間に分解されることを防止する。これらの基質のほぼ全て、特にc-MYCは、腫瘍の発生と進行において重要な役割を果たす。USP28が腫瘍において過剰発現しており、かつ発現レベルが高い患者は、予後不良であることを示す証拠もある(Tumor Biol. 2014, 35, 4017; BBA-Mol. Basis. Dis. 2019, 1865, 599; Biochem. Pharmacol. 2018, 150, 280; Oncotarget, 2017, 8, 39627; Transl. Oncol. 2017, 10, 80; J. Cell. Mol. Med. 2015, 19, 799)。これにより、USP28は、注目される腫瘍治療の標的になる。
【0007】
転写因子として、c-MYCは、細胞の成長と増殖に関連する遺伝子の発現を活性化する(Biochim. Biophys. Acta, 2015, 1849, 506; Annu. Rev. Cell Dev. Biol. 2000, 16, 653; Trends Biochem. Sci. 1997, 22, 177; Adv. Cancer Res. 1996, 70, 95; Lung Cancer 2001, 34 Suppl 2, S43)。ほぼ全ての成長調節シグナル伝達経路は、最終的に、機能するためにc-MYCを必要とするが、これにより、c-MYCは腫瘍治療において最も有望な標的になる(Cancer Lett. 2003, 197, 125; Expert Opin. Ther. Targets 2003, 7, 623; Cell 2004, 117, 153-156; Semin. Cancer Biol. 2006, 16, 318)。しかし、過去数十年の研究経験によれば、c-MYCの活性を直接調節する小分子化合物を見つけることはほとんど不可能であることが示されている(Biochim. Biophys. Acta 2015, 1849, 525)。次善の策として、現在、c-MYCの機能を間接的に阻害する方法が積極的に求められている。その方法の1つとしては、c-MYCタンパク質の不安定な特性を利用する。FBW7は、そのユビキチン化と分解を促進する(Curr. Biol. 2004, 14, 1852; EMBO J. 2004, 23, 2116)ためのc-MYCの主なE3リガーゼであるのに対し、USP28はこのプロセスにおいて反対の機能を果たす(Nat. Cell Biol. 2007, 9, 765)。従って、USP28の阻害は、潜在的にc-MYCの安定性を低下させ、それにより腫瘍細胞の増殖を遅らせ、又は防止することが可能である。
【0008】
LSD1は、遺伝子発現のエピジェネティック調節において重要な役割を果たすヒストン脱メチル化酵素である(Curr. Opin. Chem. Biol. 2007, 11, 561; Epigenomics 2016, 8, 1103)。多くの悪性腫瘍において、LSD1は、過剰発現していることが認められ、かつLSD1は、腫瘍幹細胞の維持に非常に重要な役割を果たしていると考えられている(Hum. Pathol. 2012, 43, 1300; Fertil. Steril. 2014, 101, 740; Int. J. Cancer, 2011, 128, 574; J. Ovarian Res. 2013, 6, 75; Int. J. Gynecol. Cancer, 2015, 25, 1453; PLoS One, 2015, 10, e0118002; Tumor Biol. 2013, 34, 173; World J. Gastroenterol. 2012, 18, 6651)。乳がん細胞では、LSD1の欠乏により、幹細胞集団が失われ、細胞増殖の可能性も低下する(Cell Rep. 2013, 5, 224)。更に、腫瘍免疫において、LSD1は鍵となる調節因子としても確定される(Cell 2018, 174, 549)。従って、USP28を阻害することは、LSD1とc-MYCという2つの非常に重要な腫瘍性タンパク質を不安定にし、それらの細胞内レベルを低下させることで、腫瘍細胞の増殖を防ぐ目的を達成することができる。
【0009】
USP28を除去したマウスの胚は正常に発育し、かつ出生後も正常に成長し、成体マウスには明らかな不健康な状態がなく、生殖能力も弱まらず、USP28がマウスに必須ではないことが明らかになる(J. Clin. Invest. 2014, 124, 3407; Mol. Cell. Biol. 2014, 34, 2062)。しかし、USP28欠乏のマウスは、APC変異によって誘発された結腸がんに対して抵抗力を示しており(J. Clin. Invest. 2014. 124, 3407)、少なくとも結腸がんにおいて、USP28が価値のある治療標的であることを示唆している。
【0010】
近年の研究により、個体の老化における細胞の老化の重要な役割が認識されてきた(Nat. Rev. Mol. Cell. Biol. 2007, 8, 729; Exp. Gerontol. 2001, 36, 1619; Nat. Med. 2015, 21, 1424; J. Physiol. Anthropol. 2007, 26, 365; Mol. Biol. Cell, 2015, 26, 4524; Curr. Opin. Cell. Biol. 1991, 3, 230; Adv. Exp. Med. Biol. 2017, 1002, 189; Mech. Ageing Dev. 2008, 129, 460; J. Cell. Biochem. 2007, 101, 1355; Nat. Rev. Nephrol. 2017, 13, 77; Nature 2014. 509, 439)。より重要なことは、老化細胞を取り除くことで、高齢動物の体調を向上させることができる(Nature 2011, 479, 232; J. Clin. Invest. 2018, 128, 1217; Nat. Med. 2017. 23, 775-781; Clin. Pharmacol. Ther. 2013, 93, 105)。老化関連の分泌表現型(SASP)は、老化細胞が大量の細胞因子を分泌することができ、その細胞因子の多くが炎症を引き起こし得ることを指す(J. Clin. Invest. 2013, 123, 966)。従来の研究によると、細胞の老化中においてUSP28の関与を必要とすることが分かる(Genes Dev. 2017, 31, 1933)ため、USP28を阻害することで、高齢者で健康に有益な効果をもたらすことが可能である。
【0011】
USP25は、USP28に非常に近い相同遺伝子であり、かつUSP28欠乏のマウスと同様に、USP25欠乏のマウスも、いかなる不健康な状態も表していない(Nat. Immunol. 2012, 13, 1110)。しかし、この2つの脱ユビキチン化酵素は、細胞の異なる領域に位置付けられ(USP28は細胞核内にあるが、USP25は細胞質内にある)、かつそれらの基質プロファイルも異なっている。TankyraseはUSP25基質の1つである(Cell Rep. 2017. 31, 1024)。それは、ポリ-ADP-リボシルトランスフェラーゼであり、Wntシグナル伝達経路、テロメア長の維持や小胞輸送等、様々な生物学的プロセスに関与する。USP25の機能を阻止すると、Wntシグナルが弱くなることが可能である(Genes Dev. 2017, 31, 1024)。がんにおけるWntシグナルの役割が知られていることを考慮すると、USP25の阻害も腫瘍治療に有益な効果をもたらすと予測できる。USP28とUSP25の相同性に基づいて、USP28を標的とする小分子はいずれもUSP25を標的とすると予測できるが、これは反って腫瘍治療におけるそれらの価値を向上させる可能性がある。
【0012】
USP25は、TRAF5とTRAF6という2つのタンパク質を脱ユビキチン化することによって、IL17介在性の免疫応答をダウングレードできることが報告されている(Nat. Immunol. 2012, 13, 1110)。更なる研究によると、USP25もTRAF3タンパク質を脱ユビキチン化することによって、TLR4依存性の自然免疫応答を調節できることが分かる(PLoS One 2013, 8, e80976)。従って、USP25の阻害は、腫瘍と感染症に対する生体の免疫応答に役立つ可能性がある。
【0013】
[発明の概要]
従来技術における問題を改善し、USP28/USP25の阻害活性を有する新しい構造を提供するために、本発明は、下記の式Iに示される化合物及びそのラセミ体、立体異性体、互変異性体、同位体標識、窒素酸化物、溶媒和物、結晶多形体、代謝物、エステル、薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグを提供する:
【0014】
【化1】
【0015】
そのうち、
XはCR5又はNであり、
mは0、1、2、3、4、5又は6であり、
nは1又は2であり、
Yは
【0016】
【化2】
【0017】
又は
【0018】
【化3】
【0019】
から選ばれ、
ZはNR10、O、S、CR11R12であり、破線の結合は、結合であっても、存在しなくてもよいことを示し、
pは1、2、3又は4であり、
qは1、2又は3であり、
wは0又は1であり、
vは1又は2であり、
R1、R2、R5は相同又は相異であってもよく、互いに独立して水素、ハロゲン、アミノ基及び任意選択的に非置換又は置換の(C1-C12)脂肪族ヒドロカルビル基から選ばれ、
R3は非置換又は置換の(C1-C12)脂肪族ヒドロカルビル基であり、
それぞれのR4、R6とR8は相同又は相異であってもよく、互いに独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、アミノ基及び任意選択的に非置換又は置換の(C1-C12)脂肪族ヒドロカルビル基から選ばれ、
R7とR9は水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、アミノ基及び任意選択的に非置換又は置換の(C1-C12)脂肪族ヒドロカルビル基から選ばれ、制限条件として、それぞれのR6とR7は同時にHとはならず(例えば、R6がHである場合、R7はHではない)、
又は、R7とR9は、非置換の、若しくは任意選択的に1つ、2つ又はそれ以上のR13で置換された3-20員ヘテロ環基又は5-20員ヘテロアリール基から選ばれ、
R10は水素、非置換又は置換の(C1-C12)脂肪族ヒドロカルビル基から選ばれ、
R11、R12とR13は水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、アミノ基及び任意選択的に非置換又は置換の(C1-C12)脂肪族ヒドロカルビル基から選ばれる。
【0020】
本発明の実施形態によれば、前記「非置換の(C1-C12)脂肪族ヒドロカルビル基」は1~12個の炭素原子及び対応する水素原子で構成された直鎖又は分岐鎖、飽和又は不飽和の鎖状又は環状ヒドロカルビル基であり、前記脂肪族ヒドロカルビル基の種類はアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基等の基から選ばれ、前記「置換の(C1-C12)脂肪族ヒドロカルビル基」は、1つ、2つ又はそれ以上のハロゲン及び/又は酸素、硫黄、窒素、リン原子を含む「(C1-C12)脂肪族ヒドロカルビル基」であり、そのうち、ハロゲン、酸素、硫黄、窒素、リンは、(C1-C12)脂肪族ヒドロカルビル基の直鎖又は分岐鎖上にあってもよく、直鎖又は分岐鎖の何れか1つの位置にあってもく、前記「(C1-C12)脂肪族ヒドロカルビル基」は、「(C1-C10)脂肪族ヒドロカルビル基」、「(C1-C8)脂肪族ヒドロカルビル基」及び「(C1-C6)脂肪族ヒドロカルビル基」が好ましい。例えば、(C1-C6)脂肪族ヒドロカルビル基、(C1-C6)脂肪族ヒドロカルビルオキシ基、N-(C1-C6)脂肪族アルキルアミノ基、N,N-ビス-(C1-C3)脂肪族アルキルアミノ基、(C1-C6)脂肪族ヒドロカルビルメルカプト基、ハロゲン化(C1-C6)脂肪族ヒドロカルビル基、ハロゲン化(C1-C6)脂肪族ヒドロカルビルオキシ基、(単一又はビス-N置換)ハロゲン化(C1-C6)脂肪族アルキルアミノ基、ハロゲン化(C1-C6)脂肪族ヒドロカルビルメルカプト基、(C1-C6)脂肪族ヒドロカルビルオキシ基(C1-C6)脂肪族ヒドロカルビル基、(C1-C6)脂肪族ヒドロカルビルメルカプト基(C1-C6)脂肪族ヒドロカルビル基、N-(C1-C6)脂肪族ヒドロカルビルアミノ基(C1-C6)脂肪族ヒドロカルビル基、N,N-ビス-(C1-C3)脂肪族ヒドロカルビルアミノ基(C1-C6)脂肪族ヒドロカルビル基から選ばれてもよい。より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、プロポキシプロピル基、N-メチルアミノメチル基、N-メチルアミノエチル基、N-エチルアミノエチル基、N,N-ジメチルアミノメチル基、N,N-ジメチルアミノエチル基、N,N-ジエチルアミノエチル基であってもよい。
【0021】
本発明の実施形態によれば、Zは窒素水素(NH)、酸素(O)、硫黄(S)又はメチレン基(CH2)である。
【0022】
本発明の実施形態によれば、R3はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、プロポキシプロピル基、N-メチルアミノメチル基、N-メチルアミノエチル基、N-エチルアミノエチル基、N,N-ジメチルアミノメチル基、N,N-ジメチルアミノエチル基、N,N-ジエチルアミノエチル基から選ばれてもよい。
【0023】
本発明の実施形態によれば、Yは
【0024】
【化4】
【0025】
又は
【0026】
【化5】
【0027】
から選ばれてもよく、そのうち、R6、R7、Z、p、qは上述したように定義される。
【0028】
本発明の実施形態によれば、Yは
【0029】
【化6】
【0030】
又は
【0031】
【化7】
【0032】
から選ばれてもよく、前記R6、R7、R8、R9、Z、p、q、vは上述したように定義される。
【0033】
本発明の実施形態によれば、R7とR9は、それぞれ独立して非置換若しくは任意選択的に1つ、2つ又はそれ以上のR13で置換された3-20員ヘテロ環基又は5-20員ヘテロアリール基から選ばれる。
【0034】
本発明の実施形態によれば、前記R7とR9は、それぞれ独立して非置換若しくは任意選択的に1つ、2つ又はそれ以上のR13で置換された、1つ、2つ又はそれ以上のN原子を含む3-20員ヘテロ環基又は5-20員ヘテロアリール基から選ばれ、更に、好ましくは、ヘテロ原子として1つ又は2つのNのみを含む3-10員ヘテロ環基である。
【0035】
本発明の実施形態によれば、R7とR9は、非置換又は任意選択的に1つ、2つ又はそれ以上のR13で置換された下記の基から選ばれてもよい:
【0036】
【化8】
【0037】
本発明の実施形態によれば、前記R13は、上記の基のC原子又はN原子において対応する水素原子を置換してもよく、2つのR13で同じC原子における2つの水素原子を置換してもよい。
【0038】
本発明の実施形態によれば、前記式Iの構造は、更に下記の式IIと式IIIの構造から選ばれる:
【0039】
【化9】
【0040】
前記式IIと式IIIにおいて、R1、R2、R3、R4、R6、R9、X、Y、Z、qの定義は前記式Iと同じである。
【0041】
本発明の実施形態によれば、前記式IIにおいて、Yは
【0042】
【化10】
【0043】
から選ばれ、好ましくは、R7はパラ位にある。
【0044】
本発明の実施形態によれば、好ましくは、下記の化合物(I-1からI-95)又はその互変異性体、光学異性体、窒素酸化物、溶媒和物、薬学的に許容可能な塩若しくはプロドラッグである:
【0045】
【化11】
【0046】
【0047】
【0048】
本発明は、式Iに示される化合物の製造方法を更に提供し、下記のステップを含む:
中間体カルボン酸Aと中間体アミンBは、塩基性条件下でペプチドカップリング試薬の作用によりアミドを形成し、そして保護基を除去して目標化合物Iを得る:
【0049】
【化12】
【0050】
(そのうち、R1、R2、R3、X、mとnの定義は式Iの通りである。R’4とY’は、それぞれ式IのR4とY、及び含まれているヒドロキシル基、メルカプト基やアミノ基等の活性基が保護基により保護されたR4とYである)
試薬と反応条件:
a) アミドカップリング反応:カップリング試薬はEDCI-HOBt、BOP、HATUから選ばれ、塩基はDEA、TEA、EDCI又はDMAPから選ばれ、溶剤はDCM又はDMFから選ばれる;
b) 脱Tfac反応:塩基はK2CO3又はNaOMeから選ばれ、溶剤はMeOHから選ばれる;
c) 脱Boc反応:希塩酸-メタノール。
【0051】
本発明の実施形態によれば、上記中間体Aは、次のステップにより製造されて得ることができる(原料は商業的に入手することができる):
【0052】
【化13】
【0053】
(そのうち、R1、R2、R3とXの定義は式Iの通りである)
試薬と反応条件:a) DMF; b) NaOMe/DMF; c) (Tfac)2O/NaHCO3/CHCl3; d) NaH/DMF、R3-I; e) TFA/DCM。
【0054】
本発明の実施形態によれば、一部の中間体B-I(例えば、B-IaとB-Ib)は、商業的に、又は従来の合成方法により得ることができる:
【0055】
【化14】
【0056】
そのうち、Z、m、n、p、q、wとvは式Iの定義と同じであり、R’4、R’6とR’8は式IのR4、R6とR8、及び含まれている活性基が保護基により保護されたR4、R6とR8に定義され、R’7とR’9は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、アミノ基及び任意選択的に非置換又は置換の(C1-C12)脂肪族ヒドロカルビル基、及び含まれている活性基が保護された前記官能基から選ばれる。制限条件として、それぞれのR’6とR'7は同時に水素原子とはならない。
【0057】
本発明の実施形態によれば、他の部分の中間体B-II(例えば、B-IIaとB-IIb)は、次のステップにより製造されて得ることができる:
【0058】
【化15】
【0059】
そのうち、Z、m、n、p、q、wとvは式Iの定義と同じであり、R’4、R’6とR’8の定義は、式IのR4、R6とR8、及び含まれている活性基が保護基により保護された前記官能基と同じであり、R’7とR’9は、非置換又は任意選択的に1つ、2つ又はそれ以上のR13で置換された3-20員ヘテロ環基又は5-20員ヘテロアリール基、及び含まれている活性基が保護基により保護された上記官能基から選ばれ、R13の定義は式Iと同じである。
【0060】
試薬と反応条件:a) BnCl、KI、K2CO3/MeCN; b) H-R7-Boc、Pd(OAc)2、X-phos、Cs(CO32、toluene; c) HCO2NH4、Pd(OH)2/C、MeOH。
【0061】
本発明の実施形態によれば、前記一般式Iに含まれている式IIと式IIIは、いずれも上記通用の製造方法により合成されて得ることができ、式IIと式IIIの構造によれば、使用されている対応する原料の構造を明確にすることができる。
【0062】
本発明は、活性成分として式Iに示される化合物、そのラセミ体、立体異性体、互変異性体、同位体標識、窒素酸化物、溶媒和物、結晶多形体、代謝物、エステル、薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグを含む医薬組成物を更に提供する。
【0063】
本発明の実施形態によれば、前記医薬組成物は、治療有効量の前記式Iの化合物又はその互変異性体、光学異性体、窒素酸化物、溶媒和物、薬学的に許容可能な塩若しくはプロドラッグ、及び薬学的に許容可能な担体を更に含む。
【0064】
前記医薬組成物における担体は「許容可能」であり、それは組成物の活性成分と相溶性があり(そして好ましくは、活性成分を安定化することができる)、かつ治療される被験者に有害ではない。活性化合物を送るために、医薬賦形剤として1種又は複数種の可溶化剤を使用することができる。
【0065】
本発明は、USP28関連の疾患又は障害の治療と阻害に用いられる医薬の製造における前記式(I)の化合物、そのラセミ体、立体異性体、互変異性体、同位体標識、窒素酸化物、溶媒和物、結晶多形体、代謝物、エステル、薬学的に許容可能な塩若しくはプロドラッグ、又は前記医薬組成物の用途を更に提供する。
【0066】
本発明は、USP25関連の疾患又は障害の治療と阻害に用いられる医薬の製造における前記式(I)の化合物、そのラセミ体、立体異性体、互変異性体、同位体標識、窒素酸化物、溶媒和物、結晶多形体、代謝物、エステル、薬学的に許容可能な塩若しくはプロドラッグ、又は前記医薬組成物の用途を更に提供する。
【0067】
本発明は、USP25とUSP28関連の疾患又は障害の治療と阻害に用いられる医薬の製造における前記式(I)の化合物、そのラセミ体、立体異性体、互変異性体、同位体標識、窒素酸化物、溶媒和物、結晶多形体、代謝物、エステル、薬学的に許容可能な塩若しくはプロドラッグ、又は前記医薬組成物の用途を更に提供する。
【0068】
本発明は、USP28及び/又はUSP25の調節に関連する疾患又は障害の治療又は予防の方法を更に提供し、前記方法は、前記疾患又は障害のうちの少なくとも1つを罹患している患者に式(I)の化合物、そのラセミ体、立体異性体、互変異性体、同位体標識、窒素酸化物、溶媒和物、結晶多形体、代謝物、エステル、薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグを投与することを含む。
【0069】
本発明の実施形態によれば、前記USP25及び/又はUSP28関連の疾患又は障害はがん、炎症、自己免疫疾患、ウイルス感染症及び細菌感染症を含む。
【0070】
本発明の実施形態によれば、前記医薬組成物は、錠剤、糖衣錠、トローチ剤、水又は油懸濁液、分散性粉末や顆粒、エマルジョン、硬質・軟質カプセル、又はシロップ剤やエリキシル剤等の経口投与に適した形態であってもよい。経口組成物は、医薬組成物を製造するための当該分野で知られている任意の方法に従って製造することができ、このような組成物は、見た目が良くて口に合う医薬製剤を提供するために、甘味料、矯味薬、着色剤及び防腐剤から選択される1種又は複数種の成分を含むことができる。錠剤は、活性成分、及び、錠剤の製造に適した混合用の無毒性の薬学的に許容可能な賦形剤を含む。これらの賦形剤は、不活性賦形剤、造粒剤、崩壊剤、接着剤及び潤滑剤であってもよい。これらの錠剤は、コーティングされなくてもよく、或いは、薬物の味を隠したり胃腸管での崩壊や吸収を遅らせたりすることでより長期間にわたって持続放出効果を果たす既知の技術によってコーティングされてもよい。
【0071】
本発明の実施形態によれば、前記医薬組成物において、活性成分と不活性固体希釈剤、又は、その中の活性成分と水溶性担体や油性溶媒が混合した軟質ゼラチンカプセルは経口製剤を提供し、水懸濁液は、活性物質、及び、水懸濁液の製造に適した混合用の賦形剤を含む。このような賦形剤は、懸濁剤、分散剤又は湿潤剤である。水懸濁液は、1種又は複数種の防腐剤、1種又は複数種の着色剤、1種又は複数種の矯味薬及び1種又は複数種の甘味料を含んでもよく、油懸濁液は、活性成分を植物油又は鉱油に懸濁させることによって調製されてもよい。油懸濁液は、増粘剤を含んでもよい。口に合う製剤を提供するために、上記甘味料や矯味薬を加えてもよい。酸化防止剤を加えることにより、これらの組成物を保存することができ、水を加えることにより、水懸濁液の製造に適した分散性粉末と顆粒は、活性成分、及び、混合用の分散剤や湿潤剤、懸濁剤や1種又は複数種の防腐剤を提供することができる。適切な分散剤又は湿潤剤と懸濁剤は、上記の例を説明することができる。甘味料、矯味薬や着色剤のような他の賦形剤を加えてもよい。アスコルビン酸のような酸化防止剤を加えることによって、これらの組成物を保存する。
【0072】
本発明の実施形態によれば、前記医薬組成物は、水中油型エマルジョンの形態であってもよい。油相は、植物油又は鉱油又はそれらの混合物であってもよい。適切な乳化剤は、自然発生のリン脂質であってもよく、エマルジョンは甘味料、矯味薬、防腐剤及び酸化防止剤を含んでもよい。このような製剤は、更に緩和剤、防腐剤、着色剤及び酸化防止剤を含んでもよい。
【0073】
本発明の実施形態によれば、前記医薬組成物は、滅菌注射水溶液の形態であってもよい。許容される使用可能な溶媒又は溶剤は、水、リンゲル液及び等張塩化ナトリウム液がある。滅菌注射製剤は、活性成分が油相に溶解された滅菌注射水中油型マイクロエマルジョンであってもよく、局所で大量に注射することによって注射液又はマイクロエマルジョンを患者の血流に注入することができる。或いは、本発明に係る化合物の一定のサイクル濃度を維持可能な方法によって、溶液とマイクロエマルジョンを投与することが最適である。一定の濃度を維持するために、連続静脈投与装置を使用することができる。このような装置の例としては、Deltec CADD-PLUS.TM.5400型静脈注射ポンプが挙げられる。
【0074】
本発明の実施形態によれば、前記医薬組成物は、筋肉内及び皮下投与に使用される滅菌注射液又は油懸濁液の形態であってもよい。当該懸濁液は、既知の技術に従って、前記の適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて調製することができる。滅菌注射製剤は、非経口的に許容可能な無毒性希釈剤又は溶剤において調製された滅菌注射液又は懸濁液であってもよい。更に、滅菌固定油を溶剤又は懸濁媒体として都合よく使用することができる。この目的のために、任意の配合用固定油を使用することができる。又、脂肪酸も注射剤を製造することができる。
【0075】
本発明の実施形態によれば、本発明の化合物は、直腸投与用の坐剤の形態で投与することができる。これらの医薬組成物は、薬物と、常温では固体であるが、直腸では液体であるので、直腸で溶けて薬物を放出する刺激性のない適切な賦形剤とを混合することによって、製造することができる。
【0076】
当業者によく知られているように、薬物の投与量は多くの要因によるものであり、その要因は、使用される具体的な化合物の活性、患者の年齢、患者の体重、患者の体調、患者の行動、患者の食事、投与時間、投与方法、排泄速度、薬物の組成等を含むが、これらに限定されず、又、治療のモード、一般式化合物(I)の1日の投与量又は薬学的に許容可能な塩の種類等の最適な治療方法は、従来の治療案に従って検証することができる。
【0077】
本発明の有益な効果:
本発明は、新しい構造のユビキチン特異的プロテアーゼ阻害剤を提供する。実験によると、本発明の化合物は、USP28及び/又はUSP25に対して良好な阻害活性を有し、従来技術の阻害剤の活性と比べて、5倍以上、例えば、10倍以上、ひいては15倍以上も向上できることが検証されている。
【0078】
用語の説明:
特に明記しない限り、本願の明細書及び特許請求の範囲に記載される基と用語の定義には、例としての定義、例示的な定義、好ましい定義、表に記載される定義、実施例における具体的な化合物の定義等が含まれ、互いに任意に組み合わせたり、結合したりすることができる。このような組み合わせ又は結合した後の基の定義及び化合物の構造は、本願に記載される範囲に含まれるべきである。
【0079】
本願の明細書及び特許請求の範囲に記載される数値範囲は、当該数値が「整数」に定義される場合、その範囲の2つの端点及びその範囲内の各整数が記載されていると理解すべきである。例えば、「0~6の整数」は、0、1、2、3、4、5と6のそれぞれの整数が記載されていると理解すべきである。「それ以上」は、3つ以上であることを示す。
【0080】
「ハロゲン」という用語は、F、Cl、BrとIを指す。言い換えれば、F、Cl、BrとIは、本明細書において、「ハロゲン」と記載され得る。
【0081】
「脂肪族ヒドロカルビル基」という用語は、飽和又は不飽和、直鎖又は分岐鎖の鎖状又は環状ヒドロカルビル基を含み、前記脂肪族ヒドロカルビル基の種類は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等から選ばれてもよく、前記脂肪族ヒドロカルビル基の炭素数は、1~12が好ましく、1~10であってもよく、1~6が更に好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチルビニル基、1-ブテニル基、1-エチルビニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、1-メチル-2-プロピニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、1-ヘキシニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基を含むが、これらに限定されず、前記脂肪族ヒドロカルビル基は、任意選択的に1つ又は複数の他の適切な置換基を含んでもよい。上記置換基の例としては、ヒドロキシル基、ハロゲン、シアノ基やアミノ基等の基を含んでもよく、例えば、前記脂肪族ヒドロカルビル基は、1つ、2つ又はそれ以上のハロゲンを含むことができ、即ち、脂肪族ヒドロカルビル基の1つ、2つ又はそれ以上の水素原子は、同数のハロゲンで置換可能であることを意味する。前記ヒドロカルビル基が1つを超える炭素を含む場合、それらの炭素は、必ずしも互いに結合されなくてもよい。例えば、そのうちの少なくとも2つの炭素は、適切な元素又は基を介して結合することができる。即ち、前記脂肪族ヒドロカルビル基は、任意選択的に1つ、2つ又はそれ以上のヘテロ原子を含んでもよい(又は、選択的なヘテロ原子が脂肪族ヒドロカルビル基における選択的なC-C結合とC-H結合に挿入されると解釈される)。適切なヘテロ原子は、当業者にとって明らかであり、例えば、硫黄、窒素、酸素、リン及びシリコンを含む。前記のヘテロ原子を含む脂肪族ヒドロカルビル基は、(C1-C6)脂肪族ヒドロカルビルオキシ基、(C1-C6)脂肪族ヒドロカルビルメルカプト基、ハロゲン化(C1-C6)脂肪族ヒドロカルビル基、ハロゲン化(C1-C6)脂肪族ヒドロカルビルオキシ基、ハロゲン化(C1-C6)脂肪族ヒドロカルビルチオ基、(C1-C6)脂肪族ヒドロカルビルオキシ(C1-C6)脂肪族ヒドロカルビル基、(C1-C6)脂肪族ヒドロカルビルメルカプト(C1-C6)脂肪族ヒドロカルビル基、N-(C1-C3)脂肪族アルキルアミノ(C1-C6)脂肪族ヒドロカルビル基、N,N-ビス-(C1-C3)脂肪族アルキルアミノ(C1-C6)脂肪族ヒドロカルビル基から選ばれてもよく、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、プロポキシプロピル基、N-メチルアミノメチル基、N-メチルアミノエチル基、N-エチルアミノエチル基、N,N-ジメチルアミノメチル基、N,N-ジメチルアミノエチル基、N,N-ジエチルアミノエチル基であってもよく、他の基に含まれる「脂肪族ヒドロカルビル基」の部分は上述した説明と同じである。
【0082】
「3-20員ヘテロ環基」という用語は、独立してN、O及びSから選ばれる1-5個のヘテロ原子を含む飽和一価単環式又は二環式炭化水素環を表し、好ましくは「3-10員ヘテロ環基」である。「3-10員ヘテロ環基」という用語は、N、O及びSから選ばれる1-5個、好ましくは1-3個のヘテロ原子を含む飽和一価単環式又は二環式炭化水素環を表す。前記ヘテロ環基は、前記炭素原子の何れか1つ又は窒素原子(存在する場合)を介して分子の残りの部分と結合してもよい。特に、前記ヘテロ環基は、アゼチジニル基、オキセタニル基等の4員環、テトラヒドロフラン基、ジオキソリル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、ピラゾリジニル基、ピロリニル基等の5員環、又はテトラヒドロピラニル基、ピペリジニル基、モルホリニル基、ジチアニル基、チオモルホリニル基、ピペラジニル基やトリチアン基等の6員環、又はジアザシクロヘプタン基等の7員環を含むが、これらに限定されない。任意選択的に、前記ヘテロ環基はベンゾ縮合であってもよい。前記ヘテロ環基は二環式であってもよく、例えば、ヘキサヒドロシクロペンタ[c]ピロリル-2(1H)-イル環等の5,5員環、又は、ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジニル-2(1H)-イル環等の5,6員二環を含むが、これらに限定されない。窒素原子含有の環は部分的に不飽和であってもよく、即ち、1つ又は複数の二重結合、例えば、2,5-ジヒドロ-1H-ピロリル基、4H-[1,3,4]チアジアジニル基、4,5-ジヒドロオキサゾリル基又は4H-[1,4]チアジニル基を含んでもよいが、これらに限定されず、又は、ベンゾ縮合、例えば、ジヒドロイソキノリニル基であってもよいが、これに限定されない。本発明によれば、前記ヘテロ環基は非芳香族である。前記3-20員ヘテロ環基は、更に、
【0083】
【化16】
【0084】
の基から選ばれてもよい。
【0085】
特に明記しない限り、ヘテロ環基又はヘテロアリール基は、全ての可能な異性体形態、例えば、その位置異性体を含む。従って、いくつかの説明的且つ非限定的な例として、ピリジニル基又はピリジリデン基は、ピリジニル-2-イル、ピリジリデン-2-イル、ピリジニル-3-イル、ピリジリデン-3-イル、ピリジニル-4-イル及びピリジリデン-4-イルを含み、チエニル基又はテニリデン基は、チエニル-2-イル、テニリデン-2-イル、チエニル-3-イル及びテニリデン-3-イルを含む。
【0086】
本発明の化合物を製造するための方法の何れにおいても、任意の関連する分子における感受性又は反応性基を保護することを要する及び/又は望み得る。これは、通常の保護基、例えば、この分野の教科書や参考書に記載されている保護基によって達成することができる。この分野で知られている方法を使用して、都合のよい後続段階で保護基を除去することができる。当業者であれば、具体的な保護基によっては、その他の試薬をこの脱保護プロセスに使用できると認識するが、その他の試薬はPd/C、Pd(OH)2、PdCl2、Pd(OAc)2/Et3SiH、ラネーニッケル、適切に選択される酸、適切に選択される塩基、フッ化物等を含むが、これらに限定されない。
【0087】
既知の方法により、例えば、抽出、ろ過、カラムクロマトグラフィー、FCC又は分取HPLCにより、目標化合物を分離することができる。
【0088】
その分子構造によって、本発明の化合物は、キラルであってもよいため、様々な鏡像異性体の形態が存在する可能性がある。従って、これらの化合物は、ラセミ形態又は光学活性形態で存在する可能性がある。本発明の化合物又はその中間体は、当業者によく知られている化学的又は物理的方法によって、鏡像異性体化合物に分離することができ、又はこの形態で合成に使用可能である。ラセミアミンの場合は、光学活性の分割試薬との反応によって、混合物から非鏡像異性体が製造される。適切な分割試薬の例としては、光学活性の酸であり、例えば、RとS形の酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、マンデル酸、リンゴ酸、乳酸、適切なN-保護されたアミノ酸(例えば、N-ベンゾイルプロリンやN-ベンゼンスルホニルプロリン)又は様々な光学活性のカンファースルホン酸である。光学活性の分割試薬(例えば、シリカゲルに固定されたジニトロベンゾイルフェニルグリシン、セルローストリアセテートやその他の炭水化物の誘導体又はキラル誘導体化されたメタクリレートポリマー)によって、クロマトグラフィーによる鏡像体の分割をよく行うこともできる。この目的のための適切な溶出剤は、ヘキサン/イソプロパノール/アセトニトリル等の水又はアルコールを含有する溶剤混合物である。
【0089】
当業者は、窒素が、酸化物として酸化されるために利用可能な孤立電子対を有する必要があるため、何れの窒素含有ヘテロ環もN-オキシドを形成できるわけではないということが理解されるが、当業者であれば、N-オキシドを形成可能な窒素含有ヘテロ環が識別される。当業者であれば、第三級アミンがN-オキシドを形成できることも認識される。ヘテロ環及び第三級アミンのN-オキシドを製造するための合成方法は、当業者にとってよく知られているが、前記合成方法は、ペルオキシ酢酸とm-クロロペルオキシ安息香酸(MCPBA)等のペルオキシ酸、過酸化水素、tert-ブチルヒドロペルオキシド等のアルキルヒドロペルオキシド、過ホウ酸ナトリウム、及びジメチルジオキシラン等のジオキシラン(dioxirane)を用いることを含む。これらのN-オキシドの製造方法は、文献に広く記載されてまとめられている。
【0090】
薬学的に許容可能な塩は、例えば、鎖又は環において窒素原子を有し、十分な塩基性がある本発明の化合物の酸付加塩であってもよく、例えば、塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、ピロ硫酸、リン酸や硝酸等の無機酸と形成された酸付加塩、又は硫酸水素塩、又は、ギ酸、酢酸、アセト酢酸、ピルビン酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、ヘプタン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、安息香酸、サリチル酸、2-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、カンファー酸、桂皮酸、シクロペンタンプロピオン酸、ジグルコン酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、パモイン酸、ペクチン酸、過硫酸、3-フェニルプロピオン酸、ピクリン酸、ピバル酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、イタコン酸、スルファミン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ドデシル硫酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、カンファースルホン酸、クエン酸、酒石酸、ステアリン酸、乳酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、アジピン酸、アルギン酸、マレイン酸、フマル酸、D-グルコース酸、マンデル酸、アスコルビン酸、グルコヘプタン酸、グリセロリン酸、アスパラギン酸、スルホサリチル酸、ヘミ硫酸やチオシアン酸等の有機酸と形成された酸付加塩である。
【0091】
更に、十分な酸性がある本発明の化合物の別の適切な薬学的に許容可能な塩は、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩又はカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩又はマグネシウム塩)、アンモニウム塩、又は、生理学的に許容可能なカチオンを提供する有機塩基と形成された塩、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、N-メチルグルカミン、ジメチルグルカミン、エチルグルカミン、リジン、ジシクロヘキシルアミン、1,6-ヘキサンジアミン、エタノールアミン、グルコサミン、メグルミン、サルコシン、セリノール、トリヒドロキシメチルアミノメタン、アミノプロパンジオール、1-アミノ-2,3,4-ブタントリオールと形成された塩である。例として、前記薬学的に許容可能な塩は、-COOH基と、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、N-メチルグルカミン、ジメチルグルカミン、エチルグルカミン、リジン、ジシクロヘキシルアミン、1,6-ヘキサンジアミン、エタノールアミン、グルコサミン、メグルミン、サルコシン、セリノール、トリヒドロキシメチルアミノメタン、アミノプロパンジオール、1-アミノ-2,3,4-ブタントリオールとから形成された塩を含む。
【0092】
又、塩基性窒素含有基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基の塩化物、臭化物やヨウ化物等の低級ハロゲン化アルキル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチルや硫酸ジペンチル等の硫酸ジアルキル、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、ステアリル基の塩化物、臭化物やヨウ化物等の長鎖ハロゲン化物、ベンジル基やフェネチル基の臭化物等のハロゲン化アラルキルという試薬により、第四級アンモニウム化することができる。例として、薬学的に許容可能な塩は、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、硫酸水素塩、臭化水素酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、ギ酸塩やメグルミン塩等を含む。
【0093】
本発明の化合物は、複数の塩形成部位があり得るため、前記「薬学的に許容可能な塩」は、本発明の化合物の1つの塩形成部位で形成された塩のみならず、2つ、3つ又は全ての塩形成部位で形成された塩も含む。そのため、前記「薬学的に許容可能な塩」において、式(I)の化合物と、塩の形成に必要な酸のイオン(アニオン)又は塩基のカチオンとのモル比は、広い範囲内で変化することができ、例えば、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3等のように、4:1~1:4であってもよい。
【0094】
本発明によれば、薬学的に許容可能なアニオンは、無機酸又は有機酸をイオン化して生成されたアニオンから選ばれるものを含む。前記「無機酸」は、塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、ピロ硫酸、リン酸又は硝酸を含むが、これらに限定されない。前記「有機酸」は、ギ酸、酢酸、アセト酢酸、ピルビン酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、ヘプタン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、安息香酸、サリチル酸、2-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、カンファー酸、桂皮酸、シクロペンタンプロピオン酸、ジグルコン酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、パモイン酸、ペクチン酸、過硫酸、3-フェニルプロピオン酸、ピクリン酸、ピバル酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、イタコン酸、スルファミン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ドデシル硫酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、カンファースルホン酸、クエン酸、酒石酸、ステアリン酸、乳酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、アジピン酸、アルギン酸、マレイン酸、フマル酸、D-グルコース酸、マンデル酸、アスコルビン酸、グルコヘプタン酸、グリセロリン酸、アスパラギン酸、スルホサリチル酸、ヘミ硫酸又はチオシアン酸を含むが、これらに限定されない。
【0095】
異なる置換基の位置及び特性によって、本発明の化合物は、更に1つ又は複数の不斉中心を含んでもよい。不斉炭素原子は、(R)又は(S)配置で存在することができ、不斉中心が1つのみある場合は、ラセミ混合物が生成され、複数の不斉中心が含まれる場合は、非鏡像異性体混合物が得られる。場合によっては、特定結合の周りの回転が妨げられるために、非対称性が生じる可能性もあり、例えば、当該中心結合が特定の化合物の2つの置換された芳香環に結合される。更に、置換基は、シス又はトランス異性体の形態で存在してもよい。
【0096】
本発明の化合物は、それぞれの全ての可能な立体異性体を更に含み、それは、単一の立体異性体又は前記立体異性体(例えば、R-異性体又はS-異性体、或いは、E-異性体又はZ-異性体)の任意比率の任意の混合物の形態である。本発明の化合物の単一立体異性体(例えば、単一鏡像異性体又は単一非鏡像異性体)は、任意の適切な従来技術の方法(例えば、クロマトグラフィー、特に、例えば、キラルクロマトグラフィー)によって分離を達成することができる。
【0097】
「互変異性体」という用語は、分子内のある原子が2つの位置で急速に移動することによって生じられた官能基異性体を指す。本発明の化合物は、互変異性を示すことができる。互変異性化合物は、2種又は複数種の相互変換可能な種類が存在する可能性がある。プロトンシフト互変異性体は、2つの原子間で共有結合した水素原子の移動によるものである。互変異性体は一般的に平衡状態で存在し、単一の互変異性体を分離しようとすると、通常、物理化学的特性が化合物の混合物と一致する混合物が生成される。平衡の位置は、分子内の化学的特性によって決められる。例えば、多くの脂肪族アルデヒド及びケトン、例えばアセトアルデヒドでは、ケト型が優勢であるが、フェノールでは、エノール型が優勢である。本発明は、化合物の全ての互変異性形態を含む。
【0098】
本発明において、係る化合物は、同位体で標識した化合物も含み、前記同位体で標識した化合物は、式Iに示されるものと同じであるが、1つ又は複数の原子は、原子質量又は質量数が通常天然に存在する原子質量又は質量数と異なる原子に置き換えられる。本発明の化合物に組込み可能な同位体の例としては、H、C、N、O、S、F及びClの同位体、それぞれ例えば、2H、3H、13C、11C、14C、15N、18O、17O、32P、35S、18F及び36Clが含まれる。上記同位体及び/又は他の原子の他の同位体を含む本発明の化合物、そのプロドラッグ、又は前記化合物若しくは前記プロドラッグの薬学的に許容可能な塩は、本発明の範囲内にある。本発明のある同位体で標識した化合物、例えば、放射性同位体(例えば3Hと14C)が組み込まれた化合物は、薬物及び/又は基質組織分布の測定に使用されることができる。トリチウム(即ち、3H)と炭素14(即ち、14C)同位体は、製造が容易で、検出可能性を有するため、特に好ましい。なお、比較的重い同位体(例えば、ジュウテリウム、即ち2H)による置換は、より高い代謝安定性に由来するある治療上の利点(例えば、インビボでの半減期の増加又は必要な投与量の減少)を提供することができ、これに従って、ある場合では好ましい。特許請求の範囲により請求される本発明の化合物は、ジュウテリウム又はトリチウムで置換されるように特に限定することができる。又、置換基において言及される水素は、ジュウテリウム又はトリチウムという用語が別々にリストされていないが、ジュウテリウム又はトリチウムが除外されることを示すのではなく、ジュウテリウム又はトリチウムも同じく含まれてもよいである。
【0099】
「有効量」又は「治療有効量」という用語は、期待される応用(以下に定義される疾患の治療を含むが、これに限定されない)の達成に本発明に記載される化合物の十分な量を指す。治療有効量は、期待される応用(インビトロ又はインビボ)、又は治療される被験者と疾患の病状、例えば、被験者の体重と年齢、病状の重症度や投与方法等によって変えることができ、これは、当業者によって容易に決定することができる。具体的な投与量は、選択された特定の化合物、準じられる投与方法、他の化合物との併用投与の有無、投与のタイムスケジュール、投与される組織及び担持する物理的送達システムによって変えられる。
【0100】
「補助剤」という用語は、薬学的に許容可能な不活性成分を指す。賦形剤の種類の例としては、接着剤、崩壊剤、潤滑剤、流動促進剤、安定剤、充填剤や希釈剤等を含むが、これらに限定されない。賦形剤は、医薬製剤の取扱性を向上させることができ、即ち、流動性及び/又は接着性を高めることにより、製剤を直接圧縮に更に適するようにすることができる。上記製剤に適した典型的な薬学的に許容可能な担体の例としては、ラクトース、スクロース、マンニトール及びソルビトール等の糖質、コーンスターチ、タピオカスターチやポテトスターチ等のデンプン質、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース及びその誘導体、リン酸二カルシウムやリン酸三カルシウム等のリン酸カルシウム系、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムやステアリン酸カルシウム等のアルカリ土類金属ステアリン酸塩、ステアリン酸、ピーナッツオイル、綿実油、ゴマ油、オリーブ油やトウモロコシ油等の植物油系、非イオン性、カチオン性及びアニオン性の界面活性剤、グリコールポリマー、脂肪アルコール系、穀物加水分解固形物及び他の無毒で相溶性のある充填剤、接着剤、崩壊剤、緩衝剤、防腐剤、酸化防止剤、潤滑剤、着色剤等、医薬製剤に一般的に使用される補助剤である。
【0101】
「溶媒和物」という用語は、本発明の化合物の前記形態を指し、固体又は液体の状態で溶媒分子と配位することによって複合体を形成する。水和物は、溶媒和物の特定の形態であり、その配位は水と行われる。本発明において、好ましい溶媒和物は水和物である。更に、本発明の一般式Iで示される化合物の薬学的に許容可能な溶媒和物(水和物)は、化合物Iと、化学量論的に1つ又は複数の分子の水又は他の溶媒とによって形成される共結晶及びクラスレートを指す。溶媒和物に使用可能な溶媒は、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール及び酢酸を含むが、これらに限定されない。
【0102】
「プロドラッグ」又は「薬物前駆体」という用語は、インビボで前記の一般式又は具体的な化合物によって示される化合物に変換された化合物を表す。そのような変換は、プロドラッグが血液において加水分解されること、或いは、血液又は組織において酵素を介して母体構造へ変換されることによって影響される。本発明のプロドラッグは、エステルであってもよく、本発明において、プロドラッグとして使用可能なエステルは、フェニルエステル系、脂肪族(C1-C24)エステル系、アシルオキシメチルエステル系、炭酸エステル系、カルバメート系及びアミノ酸エステル系がある。例えば、本発明の1つの化合物は、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を含むとすると、それをアシル化して、プロドラッグの形態の化合物を得ることができる。他のプロドラッグ形態は、リン酸エステルを含み、例えば、これらのリン酸エステル系化合物は、母体におけるヒドロキシル基のリン酸化によって得られるものである。
【0103】
本発明に記載される「がん」は、膀胱がん、乳がん(例えば腺管がん)、子宮頸がん(例えば扁平上皮がん)、結腸直腸がん(例えば腺がん)、食道がん(例えば扁平上皮がん)、胃がん(例えば、腺がん、髄芽細胞腫、結腸がん、絨毛がん、扁平上皮がん)、頭頸部がん、血液がん(例えば、急性リンパ球性貧血、急性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病B細胞、未分化大細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、慢性リンパ球性白血病、慢性好酸球性白血病/高好酸球性症候群、慢性骨髄性白血病、ホージャキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、T細胞急性リンパ芽球性白血病)、肺がん(例えば気管支肺胞腺がん、中皮腫、粘膜類表皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、腺がん、扁平上皮がん)、肝がん(例えば肝細胞がん)、リンパ腫、神経系がん(例えば、神経膠芽細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫)、卵巣がん(例えば腺がん)、膵臓がん(例えば管がん)、前立腺がん(例えば腺がん)、腎臓がん(例えば腎細胞がん、腎明細胞型腎がん)、肉腫(例えば軟骨肉腫、ユーイング肉腫、線維肉腫、多発性肉腫、骨肉腫、ラブドミオ肉腫、滑膜肉腫)、皮膚がん(例えば黒色腫、類表皮がん、扁平上皮がん)、甲状腺がん(例えば髄質がん)や子宮がん等を含むが、これらに限定されない。
【0104】
本発明に記載される「自己免疫疾患」又は「自己免疫障害」は、自己組織への攻撃による免疫介在性の疾患を指すが、微生物に対する免疫応答にもかかり得る。自己免疫疾患の例としては、多発性硬化症、乾癬、腸管の炎症性疾患、潰瘍性結腸炎、クローン病、関節リウマチ、多発性関節炎、局所と全身性強皮症、全身性エリテマトーデス、円板状エリテマトーデス、皮膚の紅斑、紅斑症(凍傷エリテマトーデス、ループス腎炎、円板状エリテマトーデス、亜急性皮膚エリテマトーデス、皮膚筋炎、多発性筋炎、特発性浮腫、慢性甲状腺炎、ギランバレー症候群、バセドウ病、重症筋無力症、シェーグレン症候群、結節性多発動脈炎、自己免疫性腸疾患、ブドウ膜炎、自己免疫性卵胞炎、慢性免疫性血小板減少性紫斑病、結腸炎、糖尿病、乾癬、尋常性天疱瘡、増殖性糸球体腎炎、ウェストコット-アルドリッチ症候群、自己免疫性リンパ増殖症候群、慢性関節炎、炎症性慢性副鼻腔炎、大腸炎、セリアック病、炎症性腸疾患、バーロウの食道がん、炎症性胃炎、自己免疫性腎炎、自己免疫性血管炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性心臓炎、自己免疫性脳炎や自己免疫介在性の血液疾患を含む)等を含むが、これらに限定されない。
【0105】
[発明を実施するための形態]
以下、具体的な実施例に合わせて本発明を更に説明する。本発明は以下の実施例を含むが、これらに限定されない。
【0106】
下記の実施例の実験方法は、特に明記しない限り、いずれも従来の方法であり、得られた化合物は、Varian Mercury-plus 400核磁気共鳴装置とWaters Q-TOF-Ultima質量分析計で1H NMRスペクトルと質量スペクトルを測定し、前記試薬と生体材料は、特に明記しない限り、いずれも商業的に入手することができる。
【0107】
下記の実施例及び本明細書の他の場所で使用されている略称の説明:
【0108】
【表1】
【0109】
【0110】
【0111】
実施例1
中間体A-1(3-(N-メチル-N-トリフルオロアセチルアミノ)-チオフェン[2,3-b]ピリジニル-2-カルボン酸)の調製:
【0112】
【化17】
【0113】
反応ステップ:
反応フラスコ(500 mL)にチオ酢酸カリウム(57.11 g、0.50 mol)と無水DMF(250 mL)を加え、r.t.で攪拌しながらブロモ酢酸tert-ブチル1a-1(97.53 g、0.50 mol)を滴下し、滴下完了後にr.t.で30 min反応を継続させる。反応液は80℃で減圧濃縮し、溶媒を除去し、冷却後に水(150 mL)を加えて溶解し、クロロホルム(150 mL)で2回抽出し、クロロホルム層は飽和NaCl溶液(100 mL)で2回洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、ろ過し、減圧濃縮し、オレンジレッドの液体1a-2(95.01g、収率99.9%)を得る。
【0114】
反応フラスコ(250 mL)に2-tert-ブチルアセチルチオアセテート1a-2(10.46 g、55 mmol)、2-クロロ-3-シアノピリジン1a-3(6.93 g、50 mmol)と無水DMF(100 mL)を加え、0-5℃に冷却し、NaOMe(3.24 g、60 mmol)を段階的に加える。r.t.に昇温し、1 h反応を継続させる。攪拌しながら反応液を水(1.2 L)に注入し、大量の淡黄色の固体が析出し、吸引ろ過し、水で洗浄し、エタノール-水で再結晶し、3-アミノチエノ[2,3-b]ピリジニル-2-tert-ブチルホルメート(1a-4、10.26 g、収率82%)を得る。
【0115】
反応フラスコ(250 mL)に1a-4(10.01 g、40 mmol)、NaHCO3(6.72 g、80 mmol)と無水クロロホルム(80 mL)を加え、r.t.で攪拌しながら(Tfac)2O 6.8 mL(48 mmol)を滴下し、滴下完了後、r.t.で30 min反応を継続させる。反応液に水(40 mL)を加え、ガスが生成されないまでr.t.で攪拌し、クロロホルム層を分離し、水層はクロロホルム(40 mL)で2回抽出する。クロロホルム層を合併し、飽和NaCl溶液(80 mL)で2回洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、吸引ろ過し、3-N-トリフルオロアセチルアミノチエノ[2,3-b]ピリジニル-2-tert-ブチルホルメート(1a-5、13.85 g、収率100%)を得る。
【0116】
反応フラスコ(250 mL)に1a-5(13.85 g、40 mmol)と無水DMF(70 mL)を加え、0-5℃に冷却し、ガスが生成されないまでNaH(1.92 g、48 mmol、含有量60%)を加え、MeI(3.24 mL、52 mmol)/DMF(10 ml)を滴下する。滴下完了後、r.t.に昇温し、2 h反応させる。反応液をpHが7になるまで酢酸で調節し、水(50 mL)を加え、クロロホルム(50 mL)で3回抽出し、クロロホルム層を合併し、飽和NaCl溶液(50 mL)で2回洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、減圧濃縮し、濃縮物をCHCl3-PEで再結晶し、N-メチル-N-トリフルオロアセチル-3-アミノチエノ[2,3-b]ピリジニル-2-tert-ブチルホルメート(1a-6、12.84 g、収率89%)を得る。
【0117】
反応フラスコ(50 mL)に1a-6(2.88 g、8 mmol)、乾燥したDCM(20 mL)とTFA(10 mL)を加え、40℃で一晩反応させる。減圧濃縮し、DCMとTFAを除去し、黄色のゲル状物を得る。シリカゲルカラムを経て、CHCl3: MeOH= 50: 1、7: 3で勾配溶出し、N-メチル-N-トリフルオロアセチル-3-アミノチエノ[2,3-b]ピリジニル-2-ギ酸(A-1、2.38 g、収率98%)を得る。ESI-MS: m/z 305 ([M+H]+); 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) ・ 8.70 (dd, J = 4.6, 1.3 Hz, 1H), 8.26 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.53 (dd, J = 8.1, 4.6 Hz, 1H), 3.28 (s, 3H).
適切な合成前駆体を使用し、上記の実施例1(中間体A-1)についての試薬と反応条件に基づいて下記の表1の実施例の中間体A-2~A-29を合成する。
【0118】
【表2】
【0119】
【0120】
実施例2
中間体A-30(3-(N-メチル-N-トリフルオロアセチルアミノ-6-ヒドロキシメチルチオフェン[2,3-b]ピリジニル-2-カルボン酸)の調製:
【0121】
【化18】
【0122】
反応ステップ:
反応フラスコ(250 mL)に2-tert-ブチルアセチルチオアセテート1a-2(10.64 g、56 mmol)、2-クロロ-3-シアノ-6-アセトキシメチルピリジン2a-1(10.53 g、50 mmol)と無水DMF(100 mL)を加え、0-5℃に冷却し、NaOMe(3.24 g、60 mmol)を段階的に加える。r.t.に昇温し、1 h反応を継続させる。攪拌しながら反応液を水(1.2 L)に注入し、大量の淡黄色の固体が析出し、吸引ろ過し、水で洗浄し、エタノール-水で再結晶し、3-アミノ-6-アセトキシメチルチエノ[2,3-b]ピリジニル-2-tert-ブチルホルメート2a-2(13.54 g、84%)を得る。
【0123】
反応フラスコ(250 mL)に2a-2(13.54 g、42 mmol)、NaHCO3(6.72 g、80 mmol)と無水クロロホルム(80 mL)を加え、r.t.で攪拌しながら(Tfac)2O(6.8 mL、48 mmol)を滴下し、滴下完了後、r.t.で30 min反応を継続させる。反応液に水(40 mL)を加え、ガスが生成されないまでr.t.で攪拌し、クロロホルム層を分離し、水層はクロロホルム(40 mL)で2回抽出する。クロロホルム層を合併し、飽和NaCl溶液(80 mL)で2回洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、吸引ろ過し、3-N-トリフルオロアセチルアミノ-6-アセトキシメチルチエノ[2,3-b]ピリジニル-2-tert-ブチルホルメート2a-3(17.22 g、98%)を得る。
【0124】
反応フラスコ(250 mL)に2a-3(16.73 g、40 mmol)と無水DMF(70 mL)を加え、0-5℃に冷却し、ガスが生成されないまでNaH(1.92 g、48 mmol、含有量60%)を加え、MeI(3.24 mL、52 mmol)/DMF(10 ml)を滴下する。滴下完了後、r.t.に昇温し、2 h反応させる。反応液をpHが7になるまで酢酸で調節し、水(50 mL)を加え、クロロホルム(50 mL)で3回抽出し、クロロホルム層を合併し、飽和NaCl溶液(50 mL)で2回洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、減圧濃縮し、濃縮物はCHCl3-PEで再結晶し、N-メチル-N-トリフルオロアセチル-3-アミノチエノ[2,3-b]ピリジニル-2-tert-ブチルホルメート2a-4(12.84 g、89%)を得る。
【0125】
反応フラスコ(50 mL)に2a-4(3.35 g、8 mmol)、乾燥したジクロロメタン(20 mL)とトリフルオロ酢酸(10 mL)を加え、40℃で一晩反応させる。減圧濃縮し、ジクロロメタンと残留したトリフルオロ酢酸を除去し、シリカゲルカラムを経て精製し、CHCl3-MeOH 20: 1→ 3: 1で勾配溶出し、3-N-メチル-N-トリフルオロアセチルアミノ-6-ヒドロキシメチルチエノ[2,3-b]ピリジニル-2-ギ酸A-30(2.54 g、95%)を得る。ESI-MS: m/z 335 ([M+H]+); 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) ・8.50 (d, J= 8.1 Hz, 1H), 7.34 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 4.91 (s, 2H), 3.28 (s, 3H).
実施例3
中間体B-1(3-(4-(2-アミノエチル)フェニル)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクチル-8-カルボン酸tert-ブチル)の調製:
【0126】
【化19】
【0127】
反応ステップ:
反応フラスコ(250 mL)にp-ブロモフェネチルアミン1b-1(10.00 g、50 mmol)、KI(0.41 g、2.5 mmol)、K2CO3(16.58 g、120 mmol)とアセトニトリル(100 mL)を加え、還流まで昇温し、BnCl(20.89 g、165 mmol)を滴下する。滴下完了後、還流し2 h反応させる。反応液は無機塩をろ過して除去し、ろ液を減圧濃縮してアセトニトリルを除去し、濃縮物にクロロホルム(200 mL)を加え、飽和NaCl溶液(100 mL × 2)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、減圧濃縮して粗生成物を得る。粗生成物を減圧濃縮して過剰のBnClと副産物であるベンジルアルコールを除去し、1b-2(浅黄色の液体18.39 g、97%)を得る。
【0128】
反応フラスコ(250 mL)に1b-3(4.25g、20 mmol)、1b-2(9.13 g、24 mmol)、Pd(OAc)2(449 mg、2 mmol)、X-phos(953 mg、2 mmol)、Cs2CO3(13.03 g、40 mmol)とトルエン(80 mL)を加え、真空引きによってN2を置換し、100℃に昇温し、18 h反応させる。反応液は不溶物をろ過して除去し、ろ液を減圧濃縮し、濃縮物はシリカゲルカラムを経て、PE: EA= 19: 1、9: 1で勾配溶出し、1b-4(8.59 g、84%)を得る。
【0129】
反応フラスコ(250 mL)に1b-4(8.15 g、15.9 mmol)、HCO2NH4(20.09 g、318.5 mmol)、Pd(OH)2/C(2.26 g、15%Pd含有)とMeOH(65 mL)を加え、真空引きによってN2を置換し、60℃に昇温し、一晩反応させる。反応液は不溶物をろ過して除去し、ろ液を減圧濃縮してメタノールを除去し、濃縮物にクロロホルム(200 mL)を加え、飽和NaCl溶液(50 mL×3)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、減圧濃縮して粗生成物を得る。粗生成物はシリカゲルカラムを経て、CHCl3-MeOH 20: 1→8: 2で勾配溶出し、B-1(5.15 g、93%)を得る。ESI-MS: m/z 332 ([M+H]+); 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.08 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 6.77 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 4.33 (m, 2H), 3.37 (d, J = 10.0 Hz, 2H), 2.95 (br s, 2H), 2.92 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 2.67 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 1.92 (m, 4H), 1.84 (m, 2H), 1.46 (s, 9H).
適切な合成前駆体を使用し、上記の実施例3(中間体B-1)についての試薬と反応条件に基づいて下記表2の実施例の中間体B-2~B-20を合成する。
【0130】
【表3】
【0131】
実施例4
中間体B-21(4-(4-アミノエチルフェニル)ピペリジル-1-カルボン酸tert-ブチル)の調製:
【0132】
【化20】
【0133】
反応ステップ
50 mLのマイクロ波管に1b-2(1.66 g、4.35 mmol)、4-(テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン2-イル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリジニル-1-tert-ブチルホルメート(2.69 g、8.70 mmol)、Pd(dppf)Cl2(0.32 g、0.44 mmol)、炭酸カリウム(1.20 g、8.68 mmol)、エタノール(10 mL)と水(2 mL)を加える。130℃でマイクロ波放射下で混合物を1 h加熱する。残留した固体をろ過して除去し、ろ液を減圧濃縮する。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、EA-PEで勾配溶出し、黄色の固体2b-1(419 mg、20%)を得る。
【0134】
反応フラスコ(25 mL)に2b-1(400 mg、0.83 mmol)、HCO2NH4(1.05 g、16.65 mmol)、Pd(OH)2/C(115 mg、15%Pd含有)とMeOH(5 mL)を加え、真空引きによってN2を置換し、60℃に昇温し、一晩反応させる。反応液は不溶物をろ過して除去し、ろ液を減圧濃縮してメタノールを除去し、濃縮物にクロロホルム(10 mL)を加え、飽和NaCl溶液(10 mL)で3回洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、減圧濃縮して粗生成物を得る。粗生成物はシリカゲルカラムを経て、CHCl3-MeOH 20: 1→ 5: 1で勾配溶出し、B-21(227 mg、90%)を得る。ESI-MS: m/z 305 ([M+H]+).
適切な合成前駆体を使用し、上記で実施例4(中間体B-21)について概述したプロセスに基づいて下記の表3中の実施例の中間体B-22~B-24を合成する。
【0135】
【表4】
【0136】
実施例5
中間体B-25(3-(4-(1-アミノ-イソプロピル)フェニル)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクチル-8-カルボン酸tert-ブチル)の調製:
【0137】
【化21】
【0138】
反応ステップ
100 mLの丸底フラスコにp-ブロモアセトフェノン3b-1(3.38 g、17.0 mmol)、3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクチル-8-tert-ブチルホルメート(3.00 g、14.1 mmol)、炭酸カリウム(5.86 g、42.4mmol)とHMPA(30 mL)を加える。得られた溶液を70℃で油浴中で一晩撹拌し、その後、r.t.に冷却し、水(30 mL)で急冷する。得られた溶液をEA(30 mL)で3回抽出し、有機層を合併し、減圧濃縮した後にシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し(EA-PE 1: 5で溶出)、褐色の油状物3b-2(1.68 g、30%)を得る。ESI-MS: m/z 331 ([M+H]+)。
【0139】
100 mLの丸底フラスコに3b-2(1.65 g、5 mmol)、カリウムtert-ブトキシド(1.13 g、13.0 mmol)、TosMIC(1.46 g、7.5 mmol)、tert-ブタノール(20 mL)とDME(20 mL)を加える。得られた溶液を90℃で油浴中で一晩撹拌し、反応完了後に冷却し、水(20 mL)を加えて急冷する。反応溶液はEA(20 mL)で3回抽出し、有機層を合併し、無水Na2SO4で乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した後にシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し(EA-PE 1: 5で溶出)、褐色の油状物3b-3(1.13 g、66%)を得る。ESI-MS: m/z 342 ([M+H]+)。
【0140】
窒素パージしているままの100 mLの丸底フラスコに3b-3(0.96 g、2.8 mmol)、NH3/MeOH(7M、20 mL)とラネーニッケル(500 mg)を加える。反応混合物に水素ガスを継続的に通し、r.t.で2h攪拌する。反応液をろ過して固体を除去し、ろ液は減圧濃縮した後にシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し(ジクロロメタン-メタノール 10: 1で溶出)、黄色の油状物B-25(790 mg、82%)を得る。ESI-MS: m/z 346 ([M+H]+)。
【0141】
実施例6
中間体B-26((S)-1-(4-ブロモフェニル)-2-アミノ-3-メトキシプロパン)の調製:
【0142】
【化22】
【0143】
反応ステップ
100 mLの丸底フラスコに4b-1(12.25 g、50 mmol)と無水アルコール(30 mL)を加え、0℃に冷却し、攪拌し、SOCl2(5.45 mL、75 mmol)を徐々に滴下し、滴下完了後にr.t.に昇温し、一晩攪拌する。反応完了後に減圧濃縮して溶媒を除去し、水(30 mL)を加え、EA(30 mL)で3回抽出し、有機層を合併し、減圧濃縮して4b-2(11.70 g、86%)を得る。
【0144】
100 mLの丸底フラスコに4b-2(9.52 g、35 mmol)、BnCl(11.5 mL、100 mmol)、KI(8.3 g、50 mmol)、K2CO3(6.91 g、50 mmol)とMeCN(30 mL)を加え、60℃で攪拌して4 h反応させる。反応完了後に冷却し、水(30 mL)を加えて急冷し、EA(30 mL)で3回抽出し、有機層を合併し、減圧濃縮した後にシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し(EA-PE 1: 5で溶出)、4b-3(14.25 g、90%)を得る。ESI-MS:m/z 452 ([M+H]+)。
【0145】
窒素パージしているままの100 mLの丸底フラスコに4b-3(13.57 g、30 mmol)、NaBH4(2.27g、60 mmol)とTHF(30 mL)を加え、r.t.で2 h攪拌する。反応液をろ過して固体を除去し、ろ液に飽和炭酸カリウム溶液20 mLを加え、有機層を分離し、減圧濃縮した後にシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し(ジクロロメタン-メタノール 20: 1で溶出)、4b-4(9.85 g、80%)を得る。ESI-MS: m/z 410 ([M+H]+)。
【0146】
反応フラスコ(25 mL)に4b-4(0.92 g、4 mmol)、無水THF(5 mL)とNaH(0.192 g、4.8 mmol、含有量60%)を加え、r.t.で30 min攪拌した後、MeI(0.33 mL、5.2 mmol)/DMF(1 ml)を滴下する。滴下完了後に2 h反応させる。反応液をpHが7になるまで酢酸で調節し、水(5 mL)を加え、クロロホルム(5 mL)で3回抽出し、クロロホルム層を合併し、飽和NaCl溶液(5 mL)で2回洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、減圧濃縮し、濃縮物はCHCl3-PEで再結晶し、B-26(859 mg、収率88%)を得て、ESI-MS: m/z 244 ([M+H]+)。
【0147】
実施例7
中間体B-27(3-(4-(2-アミノ-3-エトキシプロピル)フェニル)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクチル-8-カルボン酸tert-ブチル)の調製:
【0148】
【化23】
【0149】
反応ステップ
ステップa及びbは、実施例6のa及びbと同様である。
【0150】
反応フラスコ(250 mL)に1b-3(4.25 g、20 mmol)、4b-3(9.04 g、20 mmol)、Pd(OAc)2(449 mg、2 mmol)、X-phos(953 mg、2 mmol)、Cs2CO3(13.03 g、40 mmol)とトルエン(80 mL)を加え、真空引きによってN2を置換し、100℃に昇温し、18 h反応させる。反応液は不溶物をろ過して除去し、ろ液を減圧濃縮し、濃縮物はシリカゲルカラムを経て、PE: EA= 19: 1→ 9: 1で勾配溶出し、5b-1(9.34 g、82%)を得る。
【0151】
反応フラスコ(250 mL)に5b-1(8.15 g、15.9 mmol)、HCO2NH4(20.09 g、318.5 mmol)、Pd(OH)2/C(2.26 g、15%Pd含有)とMeOH(65 mL)を加え、真空引きによってN2を置換し、60℃に昇温し、一晩反応させる。反応液は不溶物をろ過して除去し、ろ液を減圧濃縮してメタノールを除去し、濃縮物にクロロホルム(200 mL)を加え、飽和NaCl溶液(50 mL×3)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、減圧濃縮して粗生成物を得る。粗生成物はシリカゲルカラムを経て、CHCl3-MeOH 20: 1→8: 2で勾配溶出し、B-27(4.57 g、91%)を得る。ESI-MS: m/z 390 ([M+H]+)。
【0152】
適切な合成前駆体を使用し、上記で実施例6と7(中間体B-26とB-27)について概述したプロセスに基づいて下記の表4中の実施例の中間体B-28~B-30を合成する。
【0153】
【表5】
【0154】
実施例8
中間体B-31とB-32(3-(3R-アミノクロマン-7-イル)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクチル-8-カルボン酸tert-ブチルと3-(3S-アミノクロマン-7-イル)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクチル-8-カルボン酸tert-ブチル)の調製:
【0155】
【化24】
【0156】
反応ステップ
反応フラスコ(100 mL)に4-臭素-2-ヒドロキシベンズアルデヒド(5a-1、3.02 g、15 mmol)、ジ-n-ブチルアミン塩酸塩(1.24 g、7.5 mmol)、2-ニトロエタノール(2.73 g、30 mmol)と酢酸アミル(15 mL)を加える。窒素ガス保護下で8 h加熱還流し、水分離器で水を除去する。反応完了後にr.t.に冷却し、ろ過し、暗色の固体を酢酸エチルで洗浄し、ろ液を減圧濃縮する。シリカゲルカラムクロマトグラフィーを経て(100 g、200-300メッシュ、石油エーテル-酢酸エチル20 : 1で溶出)、黄色の固体5a-2(1.92 g、収率50%)を得る。
【0157】
5a-2(1.9 g、7.42 mmol)を無水THF(32 mL)に溶解し、0℃で窒素ガス保護下でボランテトラヒドロフラン溶液(1 M、37.1 mL、37.1 mmol)を滴下する。滴下完了後に氷浴を取り除き、NaBH4(0.28 g、7.42 mmol)を加え、65℃で18 h反応させる。反応液をr.t.に冷却し、pH 1~2になるまで1 N塩酸を徐々に滴下し、70℃に昇温して1.5 h反応させる。反応液をr.t.に冷却し、エーテル(60 mL×2)で抽出し、水溶液にpH約10になるまで1 N水酸化ナトリウム溶液を加える。酢酸エチル(60 mL × 3)で抽出し、抽出液を合併し、飽和NaCl溶液(60 mL × 2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮し、淡褐色の固体rac-5a-3(1.51 g、89%)を得る。
【0158】
rac-5a-3(742 mg)を1.5 mLのHexane-EtOH(1 : 1)、Daicel IA(5 μm、10 × 250 mm)に溶解し、移動相:Hexane-EtOH-DEA = 70 : 30 : 0.2、流速:2.5 mL/min、カラム温度:25℃、検出波長:254 nm、サンプル量25 μL。(-)-(R)-5a-3(323 mg、tR1 = 14.0 min)、[α]D 25 = -77.9(c 0.2、MeOH)、立体配置はX-rayにより決定され、(+)-(S)-5a-3(306 mg、tR2 = 16.7 min)、[α]D 25 = 100.0(c 0.2、MeOH)。
【0159】
反応フラスコ(25 mL)に(R)-5a-3(313 mg、1.37 mmol)、K2CO3(568 mg、4.11 mmol)とMeCN(5 mL)を加え、60℃に昇温し、30 min以内で塩化ベンジル(520 mg、4.11 mmol)/MeCN(2 mL)を滴下する。滴下完了後に60℃で反応を3 h継続させる。反応液をr.t.に冷却し、水(10 mL)を加え、CHCl3(10 mL × 3)で抽出し、抽出液を合併し、飽和NaCl溶液(15 mL × 2)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、減圧濃縮して粗生成物を得る。シリカゲルカラムクロマトグラフィーを経て(20 g、200-300メッシュ、CHCl3で溶出)、淡黄色の油状物(R)-5a-4(347 mg、收率80%)を得る。Rf = 0.70 (CHCl3-MeOH、50: 1)。
【0160】
反応フラスコ(10 mL)に(R)-5a-4(318 mg、1.0 mmol)、8-Boc-3、8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクチル(234 mg、1.1 mmol)、Pd(OAc)2(22 mg、0.1 mmol)、Xphos(48 mg、0.1mmol)とCs2CO3(652 mg、2.0 mmol)を加え、N2保護下でPhMe(5 mL)を加える。100℃に昇温し、一晩反応させる。反応液をr.t.に冷却し、水(10 mL)を加え、CHCl3(10 mL × 3)で抽出し、抽出液を合併し、飽和NaCl溶液(15 mL × 2)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、減圧濃縮して粗生成物を得る。シリカゲルカラムクロマトグラフィーを経て(20 g、200-300メッシュ、CHCl3/MeOH = 100 : 1で溶出)、淡黄色のゲル状物(R)-5a-5(450 mg、収率100%)を得る。Rf= 0.24 (CHCl3/MeOH = 100 : 1)。
【0161】
反応フラスコ(10 mL)に(R)-5a-5(450 mg、1.0 mmol)、ギ酸アンモニウム(1.26 g、20 mmol)とMeOH(5 mL)を加え、更にPd(OH)2-C(71 mg、0.1 mmol、15%Pd含有)を加える。N2保護下で60℃に昇温し、一晩反応させる。反応液をr.t.に冷却し、ろ過し、減圧濃縮して粗生成物を得る。シリカゲルカラムクロマトグラフィーを経て(30 g、200-300メッシュ、CHCl3/MeOH = 25: 1-9: 1で溶出)、淡黄色のゲル状物B-31(450 mg、収率100%)を得る。Rf = 0.52 (CHCl3/MeOH = 9: 1)、ESI-MS: m/z 360 ([M +H]+)。
【0162】
(S)-5a-3を原料として、d、eとf反応によりB-32を得る。
【0163】
適切な合成前駆体を使用し、上記で実施例8(中間体B-31とB-32)について概述したプロセスに基づいて下記の表5中の実施例の中間体B-33~B-36を合成する。
【0164】
【表6】
【0165】
実施例9
化合物I-1(N-4-(3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクチル-3-イル)フェネチル-6-メチル-3-メチルアミノチオフェン[2,3-b]ピリジニル-2-メチルアミン)及びその塩酸塩の調製:
【0166】
【化25】
【0167】
反応フラスコ(10 mL)にA-2(382 mg、1.2 mmol)、B-1(398 mg、1.2 mmol)、EDCI(276 mg、1.44 mmol)、HOBt(178 mg、1.32 mmol)と乾燥したDMF(4 mL)を加え、DIEA(611 uL、3.6 mmol)を加え、60℃に昇温し、2 h反応させる。反応液を80℃で減圧濃縮し、濃縮物はシリカゲルカラムを経て、PE: EA= 7: 3→ 6: 4で勾配溶出し、アミド624 mg(収率82%)を得る。
【0168】
反応フラスコ(10 mL)にアミド(604 mg、0.96 mmol)とジクロロメタン(4 mL)を加え、トリフルオロ酢酸(745 uL、10 mmol)を加え、40℃に昇温し、一晩反応させる。反応完了後に、減圧してジクロロメタンとトリフルオロ酢酸を除去し、脱Boc生成物を得る。
【0169】
脱Boc生成物にMeOH(4 mL)とK2CO3(553 mg、4 mmol)を加え、r.t.で30 min攪拌する。反応液に水(10 mL)とクロロホルム(10 mL × 3)を加えて抽出し、クロロホルム層を合併し、飽和NaCl溶液(10 mL × 2)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、減圧濃縮し、脱Tfac生成物I-1(238 mg、57%)を得る。ESI-MS: m/z 436 ([M+H]+); 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.30 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 8.10 (q, J = 5.7 Hz, 1H), 7.15 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.12 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 6.80 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 5.59 (t, J = 5.6 Hz, 1H), 3.78 (br s, 2H), 3.60 (td, J = 6.9, 5.6 Hz, 2H), 3.47 (dd, J = 11.4, 2.3 Hz, 2H), 3.32 (d, J = 5.7 Hz, 3H), 3.02 (dd, J = 11.3, 1.5 Hz, 2H), 2.83 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 2.67 (s, 3H), 1.94 (br s, 4H).
I-1(237 mg)をMeOH(8 mL)で溶解し、r.t.で攪拌しながら36%塩酸(120 μL)を加え、大量のオレンジイエローの固体が析出する。吸引ろ過し、少量のMeOHで洗浄して遊離HClを除去し、I-1塩酸塩(253 mg、100%)を得る。ESI-MS: m/z 436 ([M+H]+); 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 9.50-9.46 (m, 2H), 8.49 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.87 (t, J = 4.9 Hz, 1H), 7.30 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.09 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.84 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.53 (br s, 3H), 4.09 (br s, 2H), 3.55 (dd, J = 11.2, 1.6Hz, 2H), 3.36 (tt, J = 7.8, 4.8 Hz, 2H), 3.17 (s, 3H), 3.08 (d, J = 12.8 Hz, 2H), 2.72 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 2.59 (s, 3H), 1.97 (m, 2H), 1.91 (m, 2H); 13C NMR (125 MHz, DMSO-d6) δ 164.7, 158.2, 157.6, 148.3, 146.8, 133.5, 130.1, 129.2, 124.4, 119.5, 114.6, 53.7, 50.6, 41.0, 34.4, 32.9, 25.4, 23.7.
適切な合成前駆体を使用し、前記の中間体A1~A30とB1~B36及び商業的に又は従来の合成方法により取得可能な前記B-I、上記の実施例9(化合物I-1)についての試薬と反応条件に基づいて下記の表6中の実施例の化合物I-2~I-92を合成する。
【0170】
【表7】
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
【0178】
【0179】
【0180】
実施例10
化合物I-93(N-4-(3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクチル-3-イル)フェネチル-6-アミノ-3-メチルアミノチオフェン[2,3-b]ピリジニル-2-メチルアミン)の調製:
【0181】
【化26】
【0182】
試薬と反応条件:
ステップa及びbは、実施例9のa及びcと同様である。
【0183】
25 mLのフラスコにI-82a(111 mg、0.2 mmol)、tert-ブチルカルバメート(117 mg、1.0 mmol)、Cs2CO3(326 mg、1.0 mmol)と1,4-ジオキサン(1 ml)を加え、均一に撹拌し、X-Phos Pd(II)(39.5 mg、0.05 mmol)を加える。反応混合物に窒素ガスを通して2分間発泡させ、次に反応物を90℃に加熱し、一晩放置する。反応完了後に、r.t.に冷却し、固体をろ過して除去し、ろ液を減圧して溶媒を除去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し(EA-PE 1: 5→2: 3で勾配溶出)、淡黄色の固体であるアミノ化生成物I-93a(42 mg、33%)を得て、ESI-MS: m/z 637。
【0184】
反応フラスコ(5 mL)にI-93a(21.2 mg、0.033 mmol)とDCM(1 mL)を加え、TFA(100 uL、1.535 mmol)を加え、40℃に昇温し、一晩反応させる。反応完了後に、減圧してDCMとTFAを除去し、I-93(7.92 mg、55%)を得る。ESI-MS: m/z 437 ([M+H]+); 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.91 (d, J = 8.4 Hz), 7.87 (t, J = 5.0 Hz), 7.10 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.84 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.55 (br s, 2H), 6.52 (br s), 6.45 (d, J = 8.6 Hz), 4.10 (br s, 2H), 3.56 (br d, J = 11.2 Hz, 2H), 3.37 (td, J = 7.2, 5.0 Hz, 2H), 3.18 (s, 3H), 3.09 (br d, J = 11.5 Hz, 2H), 2.73 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 2.60 (s, 3H), 1.90-2.00 (m, 4H).
適切な合成前駆体を使用し、上記の実施例10(中間体I-93)についての試薬と反応条件に基づいて下記の表7の実施例の中間体I-94とI-95を合成する。
【0185】
【表8】
【0186】
実施例11
ユビキチン-ローダミン110法によりUSP28活性を測定する。
【0187】
精製されたUSP28及びDUBsの活性を測定するための基質であるユビキチン-ローダミン110(Ubiquitin-Rhodamine 110)は、いずれもR&D Systemsから由来する。被検化合物は、まず、DMSOに溶解し、10 mMの母液を製造し、次に緩衝溶液[20 mM Tris-HCl(pH 8.0)、2 mM CaCl2、3 mM BME、0.01% Prionex、0.01% Triton X-100を含有する]を用いて必要な濃度に希釈し(ここで、DMSOの含有量≦0.5%)、事前にUSP28(最終濃度4 nM)と96ウェルプレートにおいて均一に混合し、r.t.で30分間インキュベートし、そして125 nMになるまで基質(ユビキチン-ローダミン110)を加える。全反応の最終体積は20 μLである。基質を加えた直後に、マイクロプレートリーダーで放出された蛍光(励起波長485 nm、発光波長535 nm)の検出を開始する。次の式に従って、被検化合物のUSP25に対する阻害率を計算する:
阻害%=1-[(被検化合物+基質の蛍光値-被検化合物(基質無し)の蛍光値)/DMSO対照群の平均蛍光値-被検化合物(基質無し)の蛍光値]
様々な濃度における被検化合物のUSP28に対する阻害率に基づいてそのIC50値を算出する。
【0188】
実施例12
ユビキチン-ローダミン110法によりUSP25の活性を測定する。
【0189】
精製されたUSP25及びDUBsの活性を測定するための基質であるユビキチン-ローダミン110(Ubiquitin-Rhodamine 110)はいずれもR&D Systemsから由来する。被検化合物は、まず、DMSOに溶解し、10 mMの母液を製造し、次に緩衝溶液[20 mM Tris-HCl(pH 8.0)、2 mM CaCl2、3 mM BME、0.01% Prionex、0.01% Triton X-100を含有する]を用いて必要な濃度に希釈し(ここで、DMSOの含有量≦0.5%)、事前にUSP25(最終濃度15 nM)と96ウェルプレートにおいて均一に混合し、r.t.で30分間インキュベートし、そして125 nMになるまで基質(ユビキチン-ローダミン110)を加える。全反応の最終体積は20 μLである。基質を加えた直後に、マイクロプレートリーダーで放出された蛍光(励起波長485 nm、発光波長535 nm)の検出を開始し、次の式に従って、被検化合物のUSP25に対する阻害率を計算する:
阻害%=1-[(被検化合物+基質の蛍光値-被検化合物(基質無し)の蛍光値)/DMSO対照群の平均蛍光値-被検化合物(基質無し)の蛍光値]
実施例11と同様に、様々な濃度における被検化合物のUSP25に対する阻害率に基づいてそのIC50値を算出する。
【0190】
【表9】
【0191】
上記の表8の符号と対応するIC50の範囲は、以下の通りである。
【0192】
【表10】
【0193】
実施例13
実施例11と実施例12を参照しながら、本発明に係る代表的な化合物及び関連する化合物に対してUSP28とUSP25の阻害活性(IC50)の試験を行い、本発明に係る化合物(E)の試験結果IC50(E)と関連する化合物(F)の試験結果IC50(F)とを比較する(IC50(F)/IC50(E)の比率を計算する)。その結果、本発明に係る化合物(E)の特徴となる3-メチルアミノの改善は、関連する3-アミノ化合物(F)と比べて、USP28とUSP25に対する阻害活性を効果的に向上可能であることが示されている。代表的な比較例は、下記の表9を参照する。
【0194】
【表11】
【0195】
上記実験結果から分かるように、本発明の実施例に係る化合物は、構造が最適化される前の関連する化合物(従来の化合物を含む)と比べて、USP28及び/又はUSP25の阻害活性においていずれも非常に顕著な改善があり、表9に示すように、改善された化合物のUSP28とUSP25に対する阻害活性は、いずれも従来技術における化合物の5倍以上であり、本発明の一般式Iの3-NH2の単一のヒドロカルビル基(又は置換ヒドロカルビル基)化は、当該種類の化合物のUSP28とUSP25の阻害活性のキーポイントであることが示されている。
【0196】
以上、本発明の実施形態を示して説明したが、上記の実施形態は例示的であり、本発明を限定するものと理解すべきではなく、当業者は本発明の範囲内で上記実施形態について変更、修正、置換、又は変形を行えることが理解できる。