(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】液体中の高分子膜の結合部位の占有率および/または相対濃度の測定方法および電気的吸着装置および/または電気濾過装置
(51)【国際特許分類】
B01D 35/06 20060101AFI20231207BHJP
B03C 5/02 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B01D35/06 G
B03C5/02
(21)【出願番号】P 2022082020
(22)【出願日】2022-05-19
(62)【分割の表示】P 2019534955の分割
【原出願日】2017-12-28
【審査請求日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】102016125818.0
(32)【優先日】2016-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516205317
【氏名又は名称】アイスリー メンブレイン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】I3 Membrane GmbH
【住所又は居所原語表記】Theodorstr.41P,22761 Hamburg Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】ブリンケ-ザイフェルト,シュテファン
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02087916(EP,A1)
【文献】特表2016-539795(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0108804(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0218227(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 35/06
B01D 43/00
B01D 57/00-57/02
B03C 3/00-11/00
B01D 39/00-41/04
B01D 53/02-53/12
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
C12N 1/00- 7/08
F01N 3/01- 3/038
G01N 27/00-27/10
G01N 27/14-27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的吸着および/または電気濾過を使って、液体中の平らな多孔性の金属被覆を有する高分子膜の結合部位の占有率、および/または少なくとも一つの相対濃度を測定する液体中の高分子膜の結合部位の占有率および/または相対濃度の測定方法であって、
少なくとも第1面上に平らな多孔性の金属被覆を有する高分子膜を提供する工程aと、
対電極を提供する工程bと、
前記高分子膜の前記金属被覆と前記対電極との間に電圧を印加する工程cと、
前記高分子膜と前記対電極との間に少なくとも1つの接続を生成するように液体を前記高分子膜および前記対電極と接触させる工程dと、を有し、
前記液体は、生理活性荷電物質を含み、前記生理活性荷電物質は、少なくとも一時的に前記金属
被覆を有する前記高分子膜に結合され、
印加された前記電圧によって引き起こされる電流が、境界を下回る、かつ/または陽性および/または陰性の変化率および/またはその時間経過を上回るという観点から評価されることを特徴とする液体中の高分子膜の結合部位の占有率および/または相対濃度の測定方法。
【請求項2】
前記電流が、前記境界を下回る場合、かつ/または、前記変化率および/または前記時間経過を上回る場合に警報が発生することを特徴とする請求項1に記載の液体中の高分子膜の結合部位の占有率および/または相対濃度の測定方法。
【請求項3】
リアルタイムで監視が行われることを特徴とする請求項1に記載の液体中の高分子膜の結合部位の占有率および/または相対濃度の測定方法。
【請求項4】
少なくとも一つの濃度に関する前記境界および/または前記変化率を監視することを特徴とする請求項1に記載の液体中の高分子膜の結合部位の占有率および/または相対濃度の測定方法。
【請求項5】
所定の濃度限度および/または電流の変化率として測定された変化率を上回る場合に、音響的、光学的および/または電気的に、警報が発生することを特徴とする請求項1に記載の液体中の高分子膜の結合部位の占有率および/または相対濃度の測定方法。
【請求項6】
前記工程cが前記工程aおよび前記工程bの後、および前記工程dの前に行われ、または、前記工程dが前記工程aおよび前記工程bの後、および前記工程cの前に行われることを特徴とする請求項1に記載の液体中の高分子膜の結合部位の占有率および/または相対濃度の測定方法。
【請求項7】
前記工程a~dの後、前記液体が前記高分子膜を通して少なくとも部分的に除去され、かつ/または、少なくとも部分的に前記液体を前記高分子膜に通過させることを特徴とする請求項1に記載の液体中の高分子膜の結合部位の占有率および/または相対濃度の測定方法。
【請求項8】
前記工程a~dの後に実施する極性逆転および/または電圧低下の前および/または後に前記高分子膜の洗浄が行われることを特徴とする請求項1に記載の液体中の高分子膜の結合部位の占有率および/または相対濃度の測定方法。
【請求項9】
前記高分子膜および前記対電極が10ml以下のホールドアップ容積を有するハウジングに挿入され、濾過されるべき前記液体が前記ハウジングを通して導かれることを特徴とする請求項1に記載の液体中の高分子膜の結合部位の占有率および/または相対濃度の測定方法。
【請求項10】
前記液体が、注入器の動作により前記高分子膜に対して前記注入器から押し出される、および/または、前記高分子膜を通して押し出されることを特徴とする請求項1に記載の液体中の高分子膜の結合部位の占有率および/または相対濃度の測定方法。
【請求項11】
前記対電極が、互いに前記高分子膜によって絶縁されて前記第1面と反対側の第2面上に配置された平らな多孔性の金属被覆を有する電極と、絶縁性の透過性スペーサが介在する金属網によって形成される透過性電極と、のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の液体中の高分子膜の結合部位の占有率および/または相対濃度の測定方法。
【請求項12】
金属被覆を有する前記高分子膜の多孔性が、最初の泡立ち点細孔および/または平均の多孔径に関して、被覆されていない高分子膜に対して1%~50%減少することを特徴とする請求項1に記載の液体中の高分子膜の結合部位の占有率および/または相対濃度の測定方法。
【請求項13】
前記金属被覆の厚さが5~50nmであり、前記被覆されていない高分子膜の細孔径が0,01μmより大きいことを特徴とする請求項1に記載の液体中の高分子膜の結合部位の占有率および/または相対濃度の測定方法。
【請求項14】
少なくとも一側面上に平らな多孔性の金属被覆を有する少なくとも1つの高分子膜、および、もう1つの電極である対電極を含む電気的吸着装置および/または電気濾過装置であって、
前記高分子膜および前記対電極が、注入付属装置として形成された10ml以下のホールドアップ容積のハウジング中に配置され、
前記高分子膜および前記対電極が、前記高分子膜と前記対電極の間に電圧を形成する電圧源と接続され、
前記高分子膜と前記対電極の間に流れる電流および/またはその変化率を測定し、境界値と比較する電流測定装置が設けられていることを特徴とする電気的吸着装置および/または電気濾過装置。
【請求項15】
音響的、光学的および/または電気的警報を警報手段として有し、測定値が境界値を下回るか上回る場合に警報が発生するように設定されることを特徴とする請求項14に記載の電気的吸着装置および/または電気濾過装置。
【請求項16】
前記対電極が、さらなる平らな多孔性の金属被覆によって、第1側面と反対側の第2側面上に形成されるか、または、絶縁された透過性スペーサが介在された金属網製の透過性電極によって形成されることを特徴とする請求項14に記載の電気的吸着装置および/または電気濾過装置。
【請求項17】
金属被覆を有する前記高分子膜の多孔性が、最初の泡立ち点細孔および/または平均の細孔径に関して、前記被覆されていない高分子膜に対して1%~50%減少することを特徴とする請求項14に記載の電気的吸着装置および/または電気濾過装置。
【請求項18】
前記金属被覆の厚さが5~50nmであり、前記被覆されていない高分子膜の細孔径が0.01μm~15μmであることを特徴とする請求項14に記載の電気的吸着装置および/または電気濾過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばエンドトキシン、ウィルス、蛋白質などの荷電生理活性物質を液体から少なくとも一時的に保持し、より良い用途のために後で遊離できるようにするための方法および電気的吸着装置および/または電気濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンドトキシンはリポ多糖類(LPS)でありグラム陰性菌の細胞壁の外膜の構成要素であり、親油性かつ膜内に固定された脂質、並びに抗原性を表す親水性多糖から成る。エンドトキシンは細菌細胞の溶解時に遊離される。エンドトキシンは非常に熱安定的であり、殺菌後、すなわちバクテリアを殺した後でさえ検出されうる。免疫反応を誘発することができるため、エンドトキシンは発熱性に属する。熱性反応を引き起こすために、体重1kg当たり1ngの量のエンドトキシンがすでに十分であると見なされている(ARDUINO(1989))。エンドトキシンは、炎症による熱の他、人間の場合には粘膜との接触後および特に血流に侵入する場合、夥しい生理反応を引き起こしうる。ここでは血圧降下、血液凝固および補体活性化、並びに生命を脅かすショック状態が挙げられる。
【0003】
エンドトキシンは通常、ウサギまたはカブトガニアメーバ様細胞溶解液(LAL)試験で検出される。LAL試験は、その発色において非常に敏感にグラム陰性菌のエンドトキシンに反応するカブトガニの血を基礎とする。その感度のために、LAL試験は、薬理学的および医学的分野において最も多く採用される試験となっている。但しながら、エンドトキシンは、この試験では透明な染色されていない液体でしか測定されない。そのため、人間の血液中のエンドトキシンの直接の測定は不可能である。そのため、近年、いわゆる単球活性化試験が発達した。この試験は、人間の熱反応を模倣する酵素反応の様々な段階に亘って機能する。全ての試験道具の反応体が異なった反応をするため、測定毎にも標準曲線の設定が必要である。この試験は特殊な訓練を要し、それには高額の特別な費用がかかり、その上LAL試験よりも遥かに時間がかかる。
【0004】
微多孔膜は長い間知られていた。これらは主にポリマーから製造され、水処理(下水、飲料水、工業用水)のため、製薬産業における超純水製造のため、さらに医療技術における滅菌フィルタまたは呼吸用フィルタとしても使用される。使用領域は広く非常に多様である。微多孔膜は通常0.01μm~10μmの細孔径を有し、この細孔径に応じて物質を保持する。
【0005】
微多孔性フィルタは、水中に溶解した物質を分離し透明な濾液を得るために典型的に使用される。これは通常、細孔径を介して機械的に行われる。細孔のサイズより大きい全ての物質は、機械的に保持される。この性質の他に、膜を透過する際に物質を保持するための、もう1つのメカニズムがある。それは、例えばポリエーテルスルホン、ポリプロピレンまたはフッ化ポリビニリデン(PVDF)のような、膜自体を生成する材料による定義されない吸着である。そのとき、様々な材料が、様々な濃度の、異なる溶解物質を吸着する(M. Carlson and R.D. Thompson,“Analyte Loss Due to Membrane Filter Adsorption as Determined by High-Performance Liquid Chromatography”,Journal of Chromatographic Science,Vol.38,Feb,2000)。
【0006】
微多孔膜の細孔径より小さい物質の定方向吸着は、膜材料の材料特性を利用して膜材料の化学組成の処理によって達成される。陽電荷は、例えば膜材料と陽性荷電された4基から成るアンモニウム化合物との結合によって生成される。陽性荷電された膜は米国特許第5282971号明細書または米国特許第7396465号明細書から、陰性荷電された膜は米国特許第7132049号明細書から公知である。例えば陽性荷電された微多孔性の膜は、バクテリアを機械的に保持し、陽性電荷物質を通過させ、膜材料による無向の定量化不可能な吸着を回避するために使用される。しかしながら、陽電荷された膜およびまた陰電荷された膜は、吸着によって蛋白質を結合し濃縮するためにも使用される。例えば独国特許出願公開第1999981099947号明細書で示されるように、陽電荷された微多孔性の膜は、濾過以外に吸着を介してエンドトキシンとウィルスとを結合するためにも使われる。
【0007】
スイス国特許発明第678403号明細書から、一方の側のマクロ細孔と金属側のミクロ細孔との間に可能な限り少ない多孔性の通路を有する、金属を使って被覆された膜が知られている。例えば独国特許出願公開第10164214号明細書から、トンネル状の通路を有する金属膜も公知である。これらの金属膜は、特許申請書の慣用表現による、例えば多孔性高分子膜で公知の多孔性通路とは、金属膜が膜内の本来の通路菅の外に空洞を形成しないことにおいて相違する。そのため、多孔性ということは、例えば独国特許出願公開第10164214号明細書のように、膜が細孔、つまり通路を備えるという言及と同一視はできない。そのため、多孔性の通路は膜内に表面を備え、該表面は同じ細孔径を有する丸いトンネルの表面を同じ厚さの膜によって、少なくとも50%、特に何倍も、特に少なくとも3倍明確に超える。
【0008】
さらに国際公開第1999/22843号から、高分子膜に金属をスパッタ蒸着することが公知である。
【0009】
米国特許第4857080号明細書からも、膜を金属被覆で閉塞することが公知である。
【0010】
吸着のもう1つの形態は電気的吸着である。電気的吸着は、2つの電極に陽性電圧および陰性電圧をかけることによって、表面に荷電場を生成することによって行われる。電気的吸着と超多孔性フィルトレーションとの組み合わせは、“Removal of arsenic and humic substances(HSs) by electro-ultrafiltration(EUF)”(Weng,Y.-H.et al.,Chem.Eng.R&D Vol.77,July 1999,Pages461-468)に記載されている。この場合、限外濾過膜の近くに位置決めされた外部電極により電場を作り出すことによって、陰性電荷をされた砒素(V)の吸着が、限外濾過による汚染水の砒素の濾過中に30%から90%に増加する。膜と組み合わせた電気的吸着の類似の使用が米国特許出願公開第2013/0240361号明細書に記載されている。電荷による強い吸着性およびその再生を有する物質の組み合わせにおける透析用水の浄化が記載されている。上記の方法は透析膜フィルタとの組み合わせで行われる。
【0011】
電気的吸着膜が欧州特許出願公開第0872278号明細書に記載されている。ここでは、セラミック膜に熱分解炭素から成る導電層が設けられる。そこでは細孔は熱分解炭素で閉塞され、セラミック表面はその後、高温によるセラミック表面の炭化カルシウムへの変成を通じて伝導性となる。このセラミック膜により、塩分が電気的吸着を介して表面に吸着結合した。セラミック膜の伝導性表面上の起こり得る電気的吸着は、物質のより柔軟な吸着を可能にするが、但しその製造方法は非常に複雑である。そのとき、膜孔は、続く製造工程中で非常な高温でセラミック表面に伝導性炭化層を設けるために、伝導性表面の製造工程中に閉塞される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許第5282971号明細書
【文献】米国特許第7396465号明細書
【文献】米国特許第7132049号明細書
【文献】独国特許出願公開第1999981099947号明細書
【文献】スイス国特許発明第678403号明細書
【文献】独国特許出願公開第10164214号明細書
【文献】国際公開第1999/22843号
【文献】米国特許第4857080号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/0240361号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0872278号明細書
【非特許文献】
【0013】
【文献】M. Carlson and R.D. Thompson,“Analyte Loss Due to Membrane Filter Adsorption as Determined by High-Performance Liquid Chromatography”,Journal of Chromatographic Science,Vol.38,Feb,2000
【文献】“Removal of arsenic and humic substances(HSs) by electro-ultrafiltration(EUF)”(Weng,Y.-H.et al.,Chem.Eng.R&D Vol.77,July 1999,Pages461-468)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
化学処理によって陽性荷電または陰性荷電された膜の利点、つまり機械的濾過と吸着の組み合わせの利点以外に、これらには不利もある。電荷を変化させることはできないため、吸着により結合された物質は、膜の電荷後に、通過すべき溶液による電荷の移動のみにより、通常はpH-値変化により、再び膜から切離、または抽出することができる。特に例えば凝縮による蛋白質のような、有効成分の抽出の場合、これは付加的な手間となる。エンドトキシンはpH値を塩基性範囲に移行することによって変性する。しかしながら、このpH値の変化は、エンドトキシンを陽性荷電された膜から再生するために必要であろう。このため、持続的に荷電された膜を使ってエンドトキシンを例えば血液から得て、これを続いて無色の液体に移し、これをより単純な分析に供給することは不可能である。
【0015】
課題は、特にエンドトキシンである荷電生理活性物質を、液体、特に着色液体から少なくとも一時的に分離および/または検出するための方法を確立することである。
【0016】
例えば原液の他の物質とは無関係に達成され得る、エンドトキシン含有量の測定を可能にするために、特にエンドトキシンである荷電生理活性物質の少なくとも一時的な保持のための方法を確立することも課題である。
【0017】
適切な装置を指定することも同様に課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、電気的吸着および/または電気濾過を使って、液体中の平らな多孔性の金属被覆を有する高分子膜の結合部位の占有率、および/または少なくとも一つの相対濃度を測定する液体中の高分子膜の結合部位の占有率および/または相対濃度の測定方法であって、少なくとも第1面上に平らな多孔性の金属被覆を有する高分子膜を提供する工程aと、対電極を提供する工程bと、前記高分子膜の前記金属被覆と前記対電極との間に電圧を印加する工程cと、前記高分子膜と前記対電極との間に少なくとも1つの接続を生成するように液体を前記高分子膜および前記対電極と接触させる工程dと、を有し、前記液体は、生理活性荷電物質を含み、前記生理活性荷電物質は、少なくとも一時的に前記金属被覆を有する前記高分子膜に結合され、印加された前記電圧によって引き起こされる電流が、境界を下回る、かつ/または陽性および/または陰性の変化率および/またはその時間経過を上回るという観点から評価されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】注入付属フィルタとしての本発明の電気濾過装置
【
図3】折りたたまれた膜を有する、ハウジング内のカートリッジとして形成された本発明の電気濾過装置
【発明を実施するための形態】
【0020】
本方法および/または平らで多孔性の金属被覆を有する装置における適用のための高分子膜の製造は、例えばマグネトロンスパッタリングを使った蒸着を介して可能である。これは均等な層厚さを有する薄い層を大きな面で製造することおよび複雑な層構造も可能にする。マグネトロン蒸着の基礎は例えばアルゴンである不活性ガス雰囲気中でのプラズマ放電であり、該プラズマ放電は静磁場によって強化される(A. Anders, “Handbook of Plasma Immersion Ion Implantation and Deposition”, Wiley-VHC, 2004)。プロセスガスのイオンは陰極に向け加速され、原子に突き当たってたたき出される。したがって、陰極(ターゲット)は分離されるべき材料から構成される必要がある。その後、ターゲットからたたき出された原子は、被覆されるべき基板上で凝結し連続した薄い層を成形する。この層厚は数ナノメートルから数ミクロンまで制御して生成することができる。丸いマグネトロンの他に、特に例えば建築のガラス被覆のような比較的大きな面の被覆のために、数メートルの長さの長方形の変形が広く普及している。これによって膜表面が被覆できる。
【0021】
平らな多孔性の金属被覆を有する高分子膜の製造のために、高分子膜(例えばポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリプロピレンまたはフッ化ポリビニリデン)にはマグネトロンスパッタリング法を使って金属の薄い層が設けられる。そのとき膜のプロセス中の滞留時間は、温度が200℃未満、特に100℃未満に維持され、高分子膜のその元来の化学構造に影響が及ばないように短く選択される。例として、多孔性構造を備えたポリエーテルスルホン膜にはアルミニウム製の20nmの薄さの層が設けられた。この膜に多孔性検査が実施された。以下の表は1つには元の状態で、もう1つは定義された20nmの厚さのアルミニウム層での膜の多孔性測定の結果を示す。
【0022】
【0023】
表1:元の状態の多孔性ポリエーテルスルホン膜および20nmの厚さのアルミニウム層を有する多孔性ポリエーテルスルホン膜の細孔径
【0024】
膜の多孔性が10%未満で影響を受けることがわかる。
【0025】
そのとき、金属被覆が少なくとも平らに、高分子膜の第1側面上および/または少なくとも1つの側面から到達できる表面上に塗布され、特に高分子膜の金属被覆の層厚は、最初の泡立ち点細孔および/または被覆していない高分子膜の中位の細孔径に関して1%~45%である。
【0026】
特に200nmまでの厚さまでの好ましい被覆では、高分子膜、特にポリスルホン膜の、特に0.1μm~10μmの範囲の細孔径にほとんど影響を与えず、それによってほぼ変化なしのままになることが可能である。
【0027】
被覆は特に多孔であり特に直接塗布される。
【0028】
被覆用金属として特に銅、アルミニウム、銀、金、ニッケル、プラチナおよび/またはタングステン、またはアルミニウム、銀、金、ニッケル、プラチナおよび/またはタングステンを含む合金が適合する。
【0029】
高分子膜として例えばポリスルホン、ポリプロピレン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ポリビニリデン(PVDF)および/またはポリテトラフルオロエチレンから成る膜、またはそのようなポリスルホン、ポリプロピレン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルアミド、ポリアクリロニトリル、セルロース、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)および/またはポリテトラフルオロエチレンを含む膜が適合する。
【0030】
特に有利には、金属が、高分子膜の金属被覆の層厚が最初の泡立ち点細孔径および/または被覆していない高分子膜の中位の細孔径に関して1%~45%になるまで蒸着される。
【0031】
この値の場合、優れた導電率が優れた処理能力および高多孔性と合致しうる。
【0032】
好ましくは、金属被覆を有する高分子膜の多孔性が最初の泡立ち点細孔径および/または被覆していない高分子膜の中位の細孔径に関して1%~50%、特に1%~20%減少するまで金属が蒸着される。この値でも優れた導電率が優れた処理能力および高多孔性と合致しうる。
【0033】
好ましくは、金属被覆および/またはアルミナを有する高分子膜の最初の泡立ち点細孔径および/または中位の細孔径が0.01~10μmになるまで金属が蒸着される。さらに0.01μm超10μm以下の最初の泡立ち点細孔径および/または中位の細孔径を有する高分子膜が選択される。
【0034】
有利には、高分子膜は、第1側面および第1側面に向き合う第2側面上に、平らに金属によって多孔性に直接塗布される。特に、平らな被覆、メタライゼーションも互いに対して電気的に絶縁される。
【0035】
両側面間に導電接続が発生しない程度の多孔性の通路並びに端部の被覆の省略により、膜は2つの導電的および互いに対して絶縁的な表面を生成することができる。
【0036】
有利には、金属を、金属被覆の厚さまたは金属被覆の中位の厚さが少なくとも1nm、特に少なくとも5nmであり最大50nmとなるまで蒸着する。この値の際、少なくとも5nmで優れた導電率が優れた処理能力および高多孔性と合致し得る。
【0037】
有利には、被覆していない高分子膜の細孔径が0.01~15μm、特に10μmまで、および/または0.1μm以上に選択される。ここでは細孔の金属による閉塞が良好に防止される。
【0038】
有利には、膜内の細孔の金属被覆の厚さまたは膜内の細孔の金属被覆の中位の厚さが少なくとも1nm、最大50nmまでで、金属が蒸着される。
【0039】
金属被覆された高分子膜が多孔性の通路を有する内側の高分子膜および金属被覆を有する、多孔性の通路を有する金属被覆された高分子膜の使用によっても、課題が解決され、高分子膜が完全に金属被覆によってカプセル化され、金属被覆が1nm、特に5nm、500nmまでの厚さを有することを特徴とする。
【0040】
そのとき、被覆は特に高分子膜に直接塗布される。特に、被覆された高分子膜は、高分子膜および金属被覆のみから成る。
【0041】
特に有利には、金属被覆を有する高分子膜は、それによって最初の泡立ち点細孔径および/または中位の細孔径に関して、被覆していない高分子膜に対して1%~50%、特に1%~20%減少した多孔性を備える。
【0042】
従来の膜で公知であるように、膜は、例えば折りたたむことも、かつ/または折りたたんで使用することもできる。特に、少なくとも1つの絶縁折りたたみ補助が、特に膜の各側面に少なくとも1つ使用され、かつ/または含まれる。これは、液体の流出を可能にし、特に個々の折れが互いからの絶縁を図る。特に少なくとも1つの折りたたみ補助は、折る前に膜の一方または両方の側面上に配置され、膜と一緒に折りたたまれる。折りたたみ補助は完全に絶縁材料から成形されなくてもよく、例えば、特に1面または両面が伝導性に被覆され、しかしフリースそのものが絶縁を図るポリマーフリースが使用され得る。
【0043】
荷電生理活性物質の少なくとも一時的分離および/または検出のための課題を解決するために、以下の方法に従う。
【0044】
a.特に上述したような、金属製の平らな多孔被覆を有する高分子膜を、該高分子膜の少なくとも第1側面、特に両側面上に高分子膜を提供し、
b.対電極を提供し、
c.高分子膜の金属被覆と対電極との間に電圧を印加し、
d.高分子膜および特に対電極を液体と接触させ、該接触は特に、液体が高分子膜と対電極との少なくとも1つの接続を生成するように行われる。
【0045】
そのような方法によって、液体、例えば血液から、荷電物質、特に生理活性荷電物質、さらに他の荷電物質が、少なくとも一時的に金属被覆を有する高分子膜に結合することによって吸着および/または保持され、それによって特に分離される。そのとき、公知の(イオンによって)荷電される膜の場合に可能であるよりも、明白により適合しより柔軟な方法の実施が可能である。逆符号を有する電圧の同じ高さを前提とせず、より低いまたはより高い値を有し得る電圧の極性逆転、および/または電圧の減少によっても、例えば他の液体への再生のための剥離を、特にそのためにpH値の変化を要さずに達成することができる。
【0046】
電圧量は有利には最大1.5Vである。特に電圧量は極性逆転後も最大1.5Vである。電圧またはその生成に必要なエネルギーは、例えば容量性、誘導性および/またはケーブルで伝達することができる。特に電圧またはその生成に必要なエネルギーは、高分子膜および対電極を包囲するハウジングの中に特に誘導性に伝達され得る。電圧またはその生成に必要なエネルギーは、例えば誘導性にハウジングの中で連結され、ハウジング内でケーブルを介して高分子膜および対電極にもたらされ得る。
【0047】
荷電生理活性物質には多くの物質がある。そのとき、例えば電圧および/または膜表面の合目的的選択によって、多かれ少なかれ特別な保持、分離、あるいは個々のまたは多くの物質のための多かれ少なかれ特別な検出が可能になり得る。そのとき、より強く荷電された粒子の膜への保持および/または吸着、より強く荷電された粒子の膜による保持および/または吸着が、より少なく荷電された粒子よりもすでにより少ない電圧の場合に可能である。それによって特定の選択性が電圧の選択により実現される。そのとき、1つだけの物質を分離しおよび/または検出することは必ずしも必要ではない。荷電生理活性物質としては、例えばウィルス、バクテリア、エンドトキシン、蛋白質、アミノ酸、双性イオン、等電点を持つ物質、エキソソームおよび/またはベシクルが問題となる。荷電したと見做されるためには、上記物質はいずれの環境でも電荷を有してはならない。上記物質が膜と接触されるか、または接触され得る状態で電荷を有し、特に液体の中で少なくとも部分的に荷電された状態にあれば十分である。そのようにして、特に蛋白質、特にウィルスの分離および/または検出の場合には、特に溶液中でpH値によって処理され、そこでは保持および/または吸着されるべき物質が、可能な限り大きな電荷を、特に保持も吸着もされない物質に関して有する。
【0048】
通常、金属被覆を有する高分子膜、および特に対電極も広範囲に液体と接触され、特に大きな面で湿らされる。しかし小さい面での接触または小さい面での接続、例えば対電極と金属被覆された高分子膜との間の一滴ですでに十分である。両面を金属被覆された、1つの側面が対電極として使用される高分子膜の1つまたは多数の細孔の充填による接触も達成可能である。
【0049】
特に有利には、対電極は、第1側面に向き合う第2側面上にさらなる平らな多孔金属被覆であって、平らな金属被覆が互いに対して高分子膜によって絶縁される多孔金属被覆によって成形されるか、または絶縁された透過性スペーサの中間層の下に、および/または間隔の下に配置された透過性電極、特に金属製網および/またはスティック電極によって成形される。
【0050】
有利には、金属被覆を有する高分子膜の多孔性は、最初の泡立ち点細孔および/または中位の孔径に関して、被覆していない高分子膜に対して1%~50%、特に1%~20%減少して選択される。そのとき、信頼できる伝導性が、より高い多孔性と同時に与えられる。
【0051】
有利には、高分子膜が、金属被覆の厚さが1nm、特に5~50nmであり、かつ/または被覆していない高分子膜の細孔径が特に0.01μmより大きく、特に15μmより小さくなるように選択される。そのとき、信頼できる伝導性が、より高い多孔性と同時に与えられる。
【0052】
特に有利には、測定目的のための参照電極が提供され、参照電極で電位が測定される。
【0053】
有利には、本発明で電極として使用される金属被覆を有する高分子膜、および対電極並びに場合によっては参照電極の他に、少なくとも1つのさらなる電極が設けられ、特に少なくとも1つのさらなる金属被覆を有する高分子膜または金属被覆を有する高分子膜のさらなる側面が、特に上記で説明されたように、さらなる電極として設けられる。この付加的な電極は、特に同様に共通のハウジングの中で電気的に金属被覆を有する高分子膜および対電極から絶縁されて配置される。共通のハウジングは外部ハウジングであってもよく、該外部ハウジングは、その中に高分子膜および対電極が配置される内部ハウジングを包囲する。
【0054】
特に少なくとも1つのさらなる電極に電圧が印加され、該電極は、対電極の電位が金属被覆を有する高分子膜の電位と少なくとも1つのさらなる電極の電位との間になるように選択される。特にハウジング中の対電極は金属被覆を有する高分子膜と少なくとも1つのさらなる電極との間に配置される。
【0055】
この場合、複数の参照電極を使用し、それぞれ電極および/または対電極の間に配置することも有意義であり得る。
【0056】
0.2μmの細孔径のポリエーテルスルホン膜での電気的吸着の試みは、
図1のような配置で実施された。それには直径d=47mmの実験用濾過膜に15nmのアルミニウム層がマグネトロンスパッタを使って設けられた。アルミニウム表面に銅ケーブルが接着され、絶縁塗料が施された。約30cmの長さの残ったケーブルは絶縁された。膜は市販の負圧濾過ユニットに導入された。レシーバ容器は純水で充填され、その中にプラチナの対電極が挿入された。
【0057】
レシーバ容器中の純水中にエンドトキシンが導入されたため、レシーバ容器中の純水中にエンドトキシン濃度1.000IE(エンドトキシン国際単位)が生じた。濾過は圧力なしで行われた。続いて被覆なしの元の状態の膜の濾過、および15nmの被覆膜の濾過が行われた。被覆された膜には+500mVの電圧が印加された。結果は以下の表に表される。
【0058】
【0059】
荷電されたアルミニウム被覆を介してエンドトキシンはほぼ完全に保持され、特に吸着されるため、回収容器の濃度はゼロに近いことがはっきりと判別できる。しかし金属被覆のない元の状態の高分子膜も金属被覆された高分子膜も電圧なしで僅かに吸着する。
【0060】
吸着されたエンドトキシンは電圧の極性逆転および膜の洗浄により再び溶解し膜から除去することができる。
【0061】
上記で説明されたエンドトキシンの保持の試みに類似して、ウィルスの保持も達成できる。ウィルスがその等電点以上で陰性電荷を有し、陽性荷電した表面に吸着結合され得ることが公知である(Adsorption of Viruses to charged-modified Silica,Zerda et al.Applied and Environmental Microbiology,Jan 1985,p.91-95)。バクテリアの保持についての上記と同じ実験構造でウィルスの保持の試みも実施された。そのとき、25nmの大きさ(直径)のバクテリオファージMS2が適用された。このバクテリオファージの等電点はpH3.9である。15mlの水溶液105PFU/ml(プラーク形成単位/ml)が膜を介して溶液pH値7で濾過された。被覆なしの、およびチタン被覆(20nm)の、並びに金被覆(20nm)のポリエーテルスルホン0.2μmが検査された。以下の表でこの試験結果が表される。
【0062】
【0063】
被覆なし、および電圧なしの特に吸着のための保持の試験結果を見ると、被覆のない膜ではウィルスのより少ない保持が達成される。高分子膜は被覆なしでゼータ電位(表面電位)を有する。チタンおよび金はより低い(ゼロに近い)ゼータ電位を有する。そのため電圧なしで被覆のない膜では被覆された膜に比較すると最も多いウィルスが吸着されることがわかる。なぜならチタンまたは金による膜の被覆はゼータ電位およびそれによって膜の電荷を削減するためである。
【0064】
電圧1.0ボルトでの吸着の試験結果を見ると、チタン被覆でウィルスの保持は1.4Log10(つまり保持は95%超)の大きさ、および金被覆の場合には2.4Log10(つまり保持は99%超)の大きさに達する。
【0065】
金属層を設けた膜およびもたらされた0.5ボルトあるいは1.0ボルトの電圧を使って、荷電されない膜に対する、エンドトキシンおよびウィルスの保持、特に吸着の大幅な改善が達成されることが示された。
【0066】
さらにエンドトキシンの保持の試験の際の+500mVから-500mVへの電圧の切り替え後、吸着的に結合したエンドトキシンの少なくとも50%が水で膜を洗浄することによって再び水中に再生され得ることが示された。これによって少なくともエンドトキシンの一部が電圧の逆転により再び脱着されることが示された。
【0067】
本課題は、平らな多孔性の金属被覆を有する高分子膜の結合部位の割り当てを決定する、かつ/または少なくとも1つの少なくとも相対的液体濃度を決定する方法によっても解決され、該方法は、液体中の荷電生理活性物質の少なくとも一時的な分離および/または検出のための方法に則り、全ての有利な形態を使用することができ、印加された電圧によって引き起こされる電流が検知され、かつ/または評価され、特に境界を下回り、かつ/または陽性および/または陰性の変化率を上回り、かつ/またはその時間的経過が評価され、特に下回るか上回る場合に警報が発生することによって特徴付けられる。それによって例えば濃度の限度または濃度の変化率が監視される。そのような監視は非常に緊密にそれもリアルタイムで行われ得る。そのようにして例えば血液中のエンドトキシン濃度が監視され得る。電流は膜上の結合部位の割り当てに関連する。結合部位が足りなければ電流が減少する。そのとき濃度は絶対的な値として決定される必要はなく、参照値を下回るか上回るかを感知すれば十分である。該参照値はそのとき電流の形で与えることもできる。
【0068】
そのように例えば所定の濃度限度および/または特に電流の変化率として測定される変化率を上回るときの警報は、例えば聴覚、視覚または電気的に行われ得る。
【0069】
具体的に、本課題は、対電極と、平らで多孔性の金属被覆を特に上述のように少なくとも高分子膜の1側面に有する高分子膜とを含む電気的吸着装置および/または電気濾過装置、および対電極に対する電圧の印加のための金属被覆の接触によって解決される。そのとき、特に電極、膜、被覆、対電極、参照電極および/または装置のための配置にも関連する上記の記述が有効である。
【0070】
そのとき、高分子膜および特に対電極もハウジング中に配置され、該ハウジングは、特に注入装置として形成され、かつ/または僅かなホールドアップ容積、特に最大10ml、および/または最大20mm^3/mm^2の金属被覆を高分子膜上に備え、特に最大2mm^3/mm^2の金属被覆を高分子膜上に備え、かつ/または高分子膜および対電極が電圧源と接続されるために配設され、または高分子膜と対電極との間に電圧を形成するために配設される電圧源に準ずるものと接続され、ここで、特に電圧源が高分子膜および対電極とともに共通のハウジング中に配置され、かつ/または高分子膜と対電極との間に流れる電流および/またはその変化率を測定かつ/または境界値と比較する電気測定装置が設けられ、かつ/または電圧の極性逆転のための電圧源が設けられる。
【0071】
電圧源との接続および/または金属被覆との接触のために、膜の金属被覆は、例えば導電体、例えばケーブルと直接接続され、かつ/または例えばはんだ付けまたは溶接によって接触され得る。しかしながら、上記被膜は、付加的または代替的に例えば他の電導性部材、例えばその中に膜が挿入されるケージと、および/または少なくとも1つの電導性の被覆された折りたたみ補助と接触することができ、該部材を使って、かつ場合によりさらなる部材および/またはケーブルを使って電圧源と接続し、または接続され、かつ/またはそれによって接触することができる。
【0072】
電圧源との接続の中に誘導性および/または容量性結合を組み込むことも可能であり、その結果、例えば電圧源との接続も閉じたハウジングを介して相応のケーブル敷設なしに可能である。
【0073】
共通のハウジングは外部ハウジングであってもよく、該ハウジングは、その中に高分子膜および対電極が配置された内部ハウジングを包囲する。
【0074】
そのとき、ハウジングの中に、特にその中で液体が滞留し、またはそれを通って液体が移動することができる液体のための滞留容積が設けられる。するとこの容積内に高分子膜の平らな多孔性の金属被覆および特に対電極も配置される。この滞留容積は、特にルアーロック接続として形成された、管および/または注入器のための特に少なくとも1つの、特に2つの接続とともに液体透過性化合物の中に配置される。特にこの滞留容積は少なくとも1つの、特に2つの接続および液体透過性化合物の容積とともにホールドアップ容積を成形する。
【0075】
本装置は、特に共通のハウジング中で、電圧の生成のための装置、例えば電池も含み、該装置は特に高分子膜の金属被覆と対電極との間に電位を生成できるように配置および/または接触される。
【0076】
本装置は特に付属フィルタおよび/または注入装置として形成される。
【0077】
対電極および平らな多孔性の金属被覆を有する高分子膜は特に互いに対して電気的に絶縁される。
【0078】
高分子膜と対電極とが互いに対して電気的に絶縁されて配置されることにより、電気的吸着装置および/または電気濾過装置は、特に容器および/またはハウジングを液体の配置および/または電導のために備える。
【0079】
本電気的吸着装置および/または電気濾過装置は1つまたは複数の参照電極を含む。
【0080】
上記で電気的吸着装置および/または電気濾過装置に関して説明されたように、参照電極は、有利には少なくとも1つのさらなる電極も含む。この方法に関して説明されたさらなる具体的な特徴も、有利に電気的吸着装置および/または電気濾過装置に適用することができる。
【0081】
金属被覆を有する高分子膜は有利には前述のような金属被覆された高分子膜である。特に多孔性の通路も金属で被覆されているとき上記高分子膜は特に良好に適応する。なぜなら電気的に活性な表面が明らかにより大きいためである。しかしながら、他の金属被覆された高分子膜も適用することができる。
【0082】
特に有利には、対電極は、第1側面に向き合う第2側面上のさらなる平らな多孔性の金属被覆であるか、または絶縁された透過性スペーサの中間層の下に配置された、特に金属網で成形された透過性電極である。
【0083】
有利には、荷電生理活性物質の少なくとも一時的な分離および/または検出のための方法の実施のための装置が、特にいくつかのまたは全ての有利な特徴とともに配設される。特に上記装置は平らな多孔性の金属被覆を有する高分子膜の結合部位の割り当ての決定および/または液体中の少なくとも1つの濃度の決定のための方法を実施するためにも配設される。本方法は特に本発明の装置によって実施される。
【0084】
さらなる有利な実施形態は以下で単に例示的に以下の概略図を基に説明される。
【0085】
図1は本発明の電気濾過装置を示す。これによって本発明の電気濾過方法を実施することができる。
【0086】
液体はレシーバ容器(5)の中に注入され、電極として形成された膜(6)と対電極(2)との間のポテンショスタット(4)によって印加される、電圧印加下で金属被覆された高分子膜によって成形された膜(6)を介して、回収容器(3)中に濾過される。フリット(7)は膜の安定化に用いられる。
【0087】
図2は注入付属フィルタとして形成された本発明の電気濾過装置を示す。示されているのは高分子材料から成る円形膜(8)であり、一面または両面がメタライゼーションされている。メタライゼーションは、そのとき、(上図中の)膜の上流側もしくは(下図中の)膜の下流の一面、または両面に行われ得る。両側に実施する場合、メタライゼーションされた側面は特に互いに絶縁される。
【0088】
図2は基本的に2つの可能な実施形態を1つの図で示す。全ての補記bで表される部分あるいは全ての補記aで示される部分のいずれかは省略することができる。
【0089】
フィルタは特に少なくとも1つの対電極(10aまたは10b、12aまたは12b)も備える。これは例えば金属グリッドとして実施され得る。
【0090】
矢印で示された方向への液体の流れを可能にするが、円形膜(8)と対電極(10aまたは10b)との間の電気絶縁を図る、電気絶縁するが透過性である剥離フィルム(9aまたは9b)が含まれ得る。しかしながら、他の構造的手段によって相応の絶縁が保証される場合はこのような境界線のない実施も可能である。
【0091】
注入付属フィルタはフィルタ入口(13)を備える。注入付属フィルタはフィルタ出口(14)も備える。これら入口および出口は接触のための通路も含むことができ、ケーブルによって、誘導性、容量性によっても、プラグおよび/またはそれに類似するものでも実現することができる。
【0092】
電気導体(12aまたは12bおよび11aまたは11b)も含まれる。導体(12aまたは12b)はそれ自体が対電極としても用いられ、それによって対電極(10aまたは10b)の代わりをすることができる。
【0093】
フィルタ入口およびフィルタ出口は、特にフィルタ全体の気密封止のためのハウジングの一部分であるため、液体損失はフィルタ入口とフィルタ出口の間でのみ起こり得る、つまり、液体の流れの中に配置された、透過性またはグリッドとして形成されている限りにおいて、円形膜、剥離フィルムおよび対電極のような部材の通過の下でのみ起こり得る。
【0094】
そのとき、注入付属フィルタは、円形膜のメタライゼーションと対電極との間に電位を生じるように形成される。さらに注入付属フィルタは、特に相応の導体、通路および/または接触および/または(特に誘導性および/または容量性の)伝達装置を備える。電圧の印加は、そのとき、例えば電圧源(15aまたは15b)および電気導体(12aまたは12bおよび11aまたは11b)を介して実現され得る。
【0095】
電圧源(15aまたは15b)を有するそのような注入付属フィルタを使って、例えば電圧源の第1分極の下で、特に血液である液体の注入付属フィルタを通じた流入の際、液体中に含まれる例えばエンドトキシンのような物質の、円形膜(8)での吸着が行われ得る。
【0096】
その後、特に逆転した分極の下で、または電圧のない状態で、さらなる液体、例えば水が、特に矢印で示された流れの方向に逆行して流入すると、物質が放出され得る。
【0097】
図3は折りたたまれた膜(16)を有するハウジング中の本発明のカートリッジを示す。従来技術によるとそのような折りたたみフィルタカートリッジは次のように製造される。
【0098】
1.膜(16)は特にポリマーフリースおよび/またはポリマー箔から成る2つの折りたたみ補助(17aおよび17b)の間に位置付けられ折りたたまれる。
2.折りたたまれ終わった膜は丸い檻(ケージ)(18)に押圧され、それによって再び展開されず核(コア)が設けられる。檻および核は特に合成樹脂から成り、特に液体がそれを通って流出することができ、特に長方形または丸い穴を設けるように形成される。
3.折りたたみ補助および檻および核を有する膜は、閉じた合成樹脂蓋の上部シールとともに溶接され、続いて下部シール(開口部を有する板)とともに溶接される。
【0099】
そのようにして、本実施形態例でも処理され、一般に本発明に含まれる、かつ/または適用される膜で処理することができる。
【0100】
図3ではポリマー材料から成る一面または両面メタライゼーションされた折りたたまれた膜(16)が示される。メタライゼーションはそのとき、(図では外側の)膜の上流側もしくは(図では内側の)膜の下流側の一面、または両面に施されうる。両側への塗布の場合、メタライゼーションされた側面は特に互いに対して膜自体によって絶縁される。膜の折りたたみは特に膜とともに折りたたまれる、特にポリマーフリースから成る折りたたみ補助(17a、17b)を使って行われる。ポリマーフリースは(両側に金属被覆を有し)伝導性としても、電圧を絶縁するフリースとしても実施され得る。
【0101】
基本的に
図3は2つの可能な実施形態を1つの図に示す。全ての補記bで表される部分、あるいは全ての補記aで示される部分のいずれかは省略することができる。有利には、補記aで示される部分が保持される変形形態で、膜が電導体を介して電極として直接接触するか、または補記bで示される部分が保持される変形形態で、膜が電極として電導的な折りたたみ補助(17b)および折りたたまれた膜を保持する伝導性の核(コア)を介して接触する。
【0102】
フィルタは特に少なくとも1つの対電極(25aまたは25c)も備える。これは例えば金属グリットおよび/またはスティック電極として実施され得る。
【0103】
折りたたまれた膜を有するカートリッジとして実施される膜は、フィルタ入口(22)を備える。上記膜はフィルタ出口(23)をも備える。これらは接触のための通路も含む。これら入口および出口はケーブルによって、誘導性および/または容量性によっても、プラグおよび/またはそれに類似したものによっても実現され得る。
【0104】
電導体(24aおよび25aまたは24bおよび25b)も含まれる。導体(25aまたは25b)は対電極として用いることができ、それによって対電極の代わりをする。
【0105】
フィルタ入口およびフィルタ出口は、特にフィルタ全体の気密封止のためのハウジングの一部分であるため、液体損失はフィルタ入口とフィルタ出口の間でのみ起こり得り、つまり、液体の流れの中に配置された、それらが透過性またはグリッドとして形成されている限りにおいて、膜および対電極のような部材の通過の下でのみ起こり得る。
【0106】
折りたたまれた膜を有するカートリッジは、膜のメタライゼーションと対電極との間に電位を生じるように形成される。そのため、カートリッジは特に相応の導体、通路および/または接触および/または(特に誘導性および/または容量性の)伝達装置を備える。電圧の印加は、そのとき、例えば電圧源(26aまたは26b)および電導体(25aまたは25bおよび24aまたは24b)を介して実現され得る。
【0107】
電圧源(26aまたは26b)を有する折りたたまれた膜を有するそのようなカートリッジを使って、例えば電圧源の第1分極の下で、液体の流入の際に、折りたたまれた膜を有するカートリッジによって、液体中に含まれた物質の折りたたまれた膜(8)への吸着が行われ得る。
【0108】
その後、特に逆の分極の下で、または電圧のない状態で、特にさらなる液体、例えば水が、特に矢印で示された流れの方向とは逆の流れの方向に流入すると、それ以前にフィルタの折りたたまれた膜に電気的に結合していた物質の脱着が起こる。
【符号の説明】
【0109】
1 ケーブル
2 対電極
3 回収容器
4 ポテンショスタット
5 レシーバ容器
6 膜
7 フリット
8 片面(上流側または下流側)または両面がメタライゼーションされた円形膜(ポリマー)
9a、9b 電気絶縁性透過性剥離フィルム
10a、10b 透過性金属グリッドの形態の切り替え可能な円形膜1の上流(a)あるいは下流(b)の対電極
11a 円形膜8の上流側のメタライゼーションの接触のための金属線
11b 円形膜8の下流側のメタライゼーションの接触のための金属線
12a、12b 対電極/金属グリッド10aあるいは10bへの導電体
13 電極/膜と対電極との電気的接触のための通路(単数または複数)を有するフィルタ入口
14 対電極/金属グリッドの電気的接触のための通路を任意に有するフィルタ出口
15a 電極および対電極に電位を印加するための電圧源
15b 電極および対電極に電位を印加するための電圧源
16 折りたたまれた膜
17a、17b 膜の前あるいは後ろにある電気絶縁性透過性剥離フィルム
18 カートリッジの伝導性外側スリーブ
19 カートリッジの伝導性内側スリーブ
20 上部シールおよびカートリッジのフラッパー
21 下部シールおよびカートリッジの出口
22 フィルタ入口およびフィルタハウジング
23 フィルタ出口およびフィルタハウジング
24a 膜16の上流側のメタライゼーションの電気的接触のための接触通路
24b 膜16の下流側のメタライゼーションの電気的接触のための接触通路
25a 金属被覆膜16の上流側の接触通路および対電極
25b 対電極の電気接触のための金属被覆膜16の下流側の接触通路
25c 金属被覆膜16の下流側の対電極
26a 電極および対電極に電位を印加するための電圧源
26b 電極および対電極に電位を印加するための電圧源