(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】成形機用洗浄剤、その製造方法およびそれを用いる成形機の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/72 20060101AFI20231207BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20231207BHJP
B29C 48/27 20190101ALI20231207BHJP
C11D 7/22 20060101ALI20231207BHJP
C11D 17/06 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B29C33/72
B29C45/17
B29C48/27
C11D7/22
C11D17/06
(21)【出願番号】P 2022136192
(22)【出願日】2022-08-29
(62)【分割の表示】P 2019087159の分割
【原出願日】2019-05-01
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】399033795
【氏名又は名称】有限会社アイピーク
(74)【代理人】
【識別番号】100087918
【氏名又は名称】久保田 耕平
(72)【発明者】
【氏名】小濱 健二郎
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-335699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00- 33/76
B29C 45/00- 45/84
B29C 48/00- 48/96
C08J 3/12
C08J 3/20
C11D 1/00- 19/00
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂粒状体と、前記樹脂粒状体の外表面に被覆された洗浄成分とからなる成形機用洗浄剤であって、
前記洗浄成分の臨界表面張力が、22dyne/cm以下であり、
前記洗浄成分の含有量が、前記樹脂粒状体100重量部に対し、0.01重量部未満の有効量である成形機用洗浄剤において、
前記洗浄成分が、少なくとも一種のフッ素樹脂および少なくとも一種のケイ素樹脂とからなる混合体であることを特徴とする成形機用洗浄剤。
【請求項2】
前記フッ素樹脂が、ポリテトラフルオロエチレン、変性ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレンプロペンコポリマーおよびエチレン-テトラフルオロエチレンコポリマーからなる群より選択される少なくとも一種のフッ素含有高分子化合物である請求項1に記載の成形機用洗浄剤。
【請求項3】
前記ケイ素樹脂が、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、アルキルシリコーン、フッ素変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイルおよびアルコール変性シリコーンオイルからなる群より選択される少なくとも一種のケイ素化合物の重合体を含有するものである請求項1に記載の成形機用洗浄剤。
【請求項4】
前記洗浄成分の被覆層上に、常態において粉状体または粒状体であって、臨界表面張力22dyne/cm以下の洗浄成分を含有する付加成分が、さらに付着されてなる請求項1に記載の成形機用洗浄剤。
【請求項5】
前記樹脂粒状体が、平均粒径0.5~10mmの粒子集合体である請求項1に記載の成形機用洗浄剤。
【請求項6】
前記洗浄成分の臨界表面張力が、21dyne/cm以下である請求項1に記載の成形機用洗浄剤。
【請求項7】
前記粉状体または粒状体の付加成分の粒径が1~80μmである請求項4に記載の成形機用洗浄剤。
【請求項8】
樹脂粒状体の外表面に洗浄成分が被覆されてなる成形機用洗浄剤の製造方法であって、
前記樹脂粒状体と、
前記樹脂粒状体100重量部に対し、臨界表面張力22dyne/cm以下の前記洗浄成分0.01重量部未満の有効量が含有されるように添加された前記洗浄成分の液状体とを
混合工程に供し、前記樹脂粒状体の外表面に前記洗浄成分が被覆されるまで前記樹脂粒状体と前記洗浄成分とを、十分な時間接触させることからなる成形機用洗浄剤の製造方法において、
前記洗浄成分が、少なくとも一種のフッ素樹脂および少なくとも一種のケイ素樹脂との混合体であることを特徴とする成形機用洗浄剤の
製造方法。
【請求項9】
前記フッ素樹脂が、ポリテトラフルオロエチレン、変性ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレン-プロペンコポリマーおよびエチレン-テトラフルオロエチレンコポリマーからなる群より選択される少なくとも一種のフッ素含有高分子化合物である請求項8に記載の成形機用洗浄剤の製造方法。
【請求項10】
前記ケイ素樹脂が、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、アルキルシリコーン、フッ素変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイルおよびアルコール変性シリコーンオイルからなる群より選択される少なくとも一種のケイ素化合物の重合体を含有するものである請求項8に記載の成形機用洗浄剤
の製造方法。
【請求項11】
前記洗浄成分の液状体が、前記フッ素樹脂がフッ素溶剤に溶解されてなるものおよび前記ケイ素樹脂とからなる混合液体である請求項8に記載の成形機用洗浄剤の製造方法。
【請求項12】
前記混合工程において、得られた成形機用洗浄剤の湿潤状態の被覆層上に、常態において粉状体または粒状体の洗浄成分を含有する付加成分が付着される付着工程が、さらに付加されてなる請求項8に記載の成形機用洗浄剤の製造方法。
【請求項13】
さらに、乾燥工程が付加されてなる請求項8または12に記載の成形機用洗浄剤の製造方法。
【請求項14】
請求項1~7のいずれかの1項に記載の成形機用洗浄剤を用いることを特徴とする成形機の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形機用洗浄剤、その製造方法およびそれを用いる成形機の洗浄方法に関す
るものであり、さらに詳しくは、樹脂粒状体の外表面のみに特定の臨界表面張力を有する
洗浄成分を特定量被覆してなる樹脂成形機用洗浄剤であって、射出成形機、押出成形機等
において、色替え、材料替えをあらゆる樹脂について短時間かつ少量で行うことができ、
さらに安定した洗浄効果を奏することが可能な樹脂成形機用洗浄剤、および従来の混練法
とは異なる微細コーティング法による樹脂成形機用洗浄剤の製造方法ならびにそれを用い
る樹脂成形機の洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチック成形加工の射出成形機、押出成形機等の色替え、材料替えの洗浄工程にお
いて、先行樹脂(前材)の影響を排除するために、その次の成形に使用する樹脂(後材)
による洗浄が行われる場合がある。しかし、そのような方法による成形機の洗浄は長時間
作業となり、しかも多量の樹脂が必要とされ不経済な面がある。
【0003】
そこで、従来から例えば、特許文献1に示す如き熱可塑性樹脂粒状体に洗浄成分を配合
し、さらに無機充填剤等を添加して約200~250℃の高温で混練して製造(いわゆる混練法)された成形機用洗浄剤が使用されてきた。しかし、かかる混練法により製造された洗浄剤は、洗浄成分が樹脂粒状体内部に分散して介在し、高価な洗浄成分が多量に使用されているにもかかわらず、その洗浄作業の際には、洗浄成分が洗浄剤の表面まで溶出するには時間を要し、溶出したとしても洗浄剤表面の一部にとどまり、結果として洗浄時間が長くなり、同時に添加された無機充填剤は成形機内に残留し易いため、使用した洗浄剤自体を排出するのに後材の使用量も多くなるという問題が指摘され、一層の改良が求められている。
一方、本発明者により、特許文献2および特許文献3に示す如く、従来の混練法(約200~250℃における高温製造方法)とは全く異なる方法で、常温状態における製造により洗浄成分を樹脂粒状体の外表面のみに薄い被覆層として形成させ、洗浄工程の際に速やかに溶出するように、また成形機内の最深部まで洗浄成分を到達させることができ、短時間でかつ少量使用による洗浄を可能にした新しい微細コーティング法(命名)による樹脂成形機用洗浄剤が開発された。
しかしながら、かかる樹脂成形機用洗浄剤の構成成分として、従来使用されてきた洗浄成分については、種類および化学構造の相違により、洗浄効果において変動が生じ、安定性を欠如する場合があり、改善が求められてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-107433号公報
【文献】特許第4274447号公報
【文献】米国特許第6,277,809号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の第一の課題は、合成樹脂の射出成形機、押出成形機等の洗浄において
、成形機内の成形用樹脂の色替え、材料替えが短時間で、かつ少量で可能であると共に、
洗浄効果における変動が抑制され、安定した洗浄効果を奏することが可能な成形機用洗浄
剤を提供することにある。
また、本発明の第二の課題は、かかる安定性を有する洗浄効果を奏する成形機用洗浄剤の簡素で、かつ簡便な製造方法を提供することにある。
さらに、本発明の第三の課題は、簡易な操作にて、プラスチック成形加工時の色替え、材料替えを短時間に効率よく実施することが可能な成形機の洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者は、前記の本発明の課題を解決するために鋭意検討した結果、第一の
課題に対しては、樹脂粒状体と、該樹脂粒状体の外表面のみに被覆された洗浄成分とから
なる成形機用洗浄剤の構成成分として、特定の臨界表面張力を有する洗浄成分を選択し、
かつ洗浄成分の含有量を極めて少量の有効量に特定することにより、前記課題を解決でき
ることに着目し、かかる知見に基いて本発明に想到するに至った。
また、第二の課題に対しては、かかる成形機用洗浄剤は、樹脂粒状体の集合体に特定の臨界表面張力を有する洗浄成分の液状体を特定量混合し、常温において撹拌することにより製造できる点に着目し、かかる知見に基いて本発明に想到するに至ったものである。
さらに、第三の課題に対しては、第一の課題を解決できる成形機用洗浄剤を用いることにより、解決可能である点に着目し、かかる知見に基いて本発明に想到したものである。
(なお、本願の特許請求の範囲および明細書等で記載の「臨界表面張力」の表示は、いず
れも20℃における臨界表面張力(γc)値を包含するものである。)
【0007】
かくして、本発明の要旨は、次の(1)~(11)に記載の通りのものである。
(1)樹脂粒状体と、前記樹脂粒状体の外表面に被覆されてなる洗浄成分とからなる成形機用浄剤であって、
前記洗浄成分の臨界表面張力が、22dyne/cm以下であり、
前記洗浄成分の含有量が、前記樹脂粒状体100重量部に対し、0.01重量部未満の有
効量であることを特徴とする成形機用洗浄剤。
(2)前記洗浄成分の被覆層上に、常態において粉状体または粒状体であり、臨界表面張力が22dyne/cm以下の洗浄成分を含有する付加成分が、さらに付着されてなる前
記(1)に記載の成形機用洗浄剤。
(3)前記樹脂粒状体が、平均直径0.5~10mmの粒子集合体である前記(1)に記載の成形機用洗浄剤。
(4)前記洗浄成分の臨界表面張力が、21dyne/cm以下である前記(1)に記載の成形機用洗浄剤。
(5)前記粉状体および/または粒状体の付加成分の粒径が1μm~80μmであることを特徴とする前記(2)に記載の成形機用洗浄剤。
(6)前記洗浄成分が、フッ素樹脂および/またはケイ素樹脂である前記(1)に記載の成形機用洗浄剤。
(7)樹脂粒状体の外表面に洗浄成分が被覆されてなる成形機用洗浄剤の製造方法であって、
前記樹脂粒状体と、
前記樹脂粒状体100重量部に対し、臨界表面張力22dyne/cm以下の前記洗浄成分0.01重量部未満の有効量が含有されるように添加された前記洗浄成分の液状体とを
混合工程に供し、前記樹脂粒状体の外表面に前記洗浄成分が被覆されるまで前記樹脂粒状体と前記洗浄成分とを、十分な時間接触させることからなる成形機用洗浄剤の製造方法において
前記洗浄成分が、少なくとも一種のフッ素樹脂および少なくとも一種のケイ素樹脂との混合体であることを特徴とする成形機用洗浄剤の製造方法。
(8)前記混合工程において、得られた成形機用洗浄剤の湿潤状態の被覆層上に、常態において粉状体または粒状体の洗浄成分を含有する付加成分が付着される付着工程が、さらに付加されてなる前記(7)に記載の成形機用洗浄剤の製造方法。
(9)さらに、乾燥工程が付加されてなる前記(7)または前記(8)に記載の成形機用洗浄剤の製造方法。
(10)前記洗浄成分が、フッ素樹脂および/またはケイ素樹脂である前記(7)または前記(8)に記載の成形機用洗浄剤の製造方法。
(11)前記(1)~(6)のいずれかの1項に記載の成形機用洗浄剤を用いることを特徴とする成形機の洗浄方法。
【0008】
前記の通り、本発明の成形機用洗浄剤については少なくとも二つの特異性が存在し、そ
の第一の特異性は、洗浄成分を実質的に樹脂粒状体の外表面に被覆層として存在させたも
のであり、被覆層を構成する洗浄成分としては、その臨界表面張力22dyne/cm以
下の洗浄成分が選択された点である。
本発明に係る成形機用洗浄剤の第二の特異性は、洗浄成分の含有量が、樹脂粒状体への表面被覆との関連により極めて少量の範囲にあり、かつ有効量が存在する点にある。
第一の特異性に関しては、かかる臨界表面張力は、固体表面の濡れ易さを定量的に示す一つの特性値として、W.A.Zismanによって提唱されたものであり、本発明は、特定範囲の臨界表面張力を有する洗浄成分が著しく顕著な洗浄効果を奏すると共に、安定した洗浄効果が得られる点に着目して完成されたものである。
すなわち、臨界表面張力22dyne/cm以下の洗浄成分が、臨界表面張力22dyne/cmを超える洗浄成分と対比して、著しく顕著な洗浄効果を安定的に奏することが本発明者による多数の実験の結果により見い出したものである。
第二の特異性に関しては、樹脂粒状体100重量部に対し、0.01重量部未満の範囲内での有効量で十分洗浄効果を奏するものであり、過剰な洗浄成分を樹脂粒状体に添加しても増量に応じて洗浄効果が向上しないばかりでなく、むしろ洗浄効果が低下する点に特異性が包蔵される。すなわち、樹脂粒状体の外表面への被覆に要する前記有効量の洗浄成分の量に対し、過剰な洗浄成分は、製造工程において通常の製造条件下において、容易に乾燥することができず、また、樹脂粒状体の被履層から脱落し、担体としての樹脂粒状体から分離された洗浄成分単独では、洗浄作用に寄与できないものと解される。かかる観点から、本発明に係る成形機用洗浄剤中の洗浄成分の含有量において有効量が存在することは、後述の実施例においても示す通りである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る成形機用洗浄剤は、樹脂粒状体と、樹脂粒状体の外表面のみに被覆された
洗浄成分とから構成されたものであり、当業界において、従前から現在まで使用されてい
る「混練法」(樹脂粒状体と洗浄成分を高温下の溶融状態で混合し、樹脂粒状体内部に洗
浄成分を配合・混練する方法。)により製造された洗浄剤とは構成が全く異なり、プラス
チック成形加工時、色替え・材料替えの洗浄工程の際、外表面の洗浄成分が速やかに溶出
し成形機内の最深部まで到達・浸透し、極めて洗浄が早い。しかも外表面のみの極めて少
量の洗浄成分であり、洗浄成分を大幅に減らしながらも、自己排出性も早く、非残留性の
ため、成形機用洗浄剤で最も重視されるべき洗浄性と排出性を速やかに行うことが可能な
優れた成形機用洗浄剤を提供するものである。
また、本発明に係る成形機用洗浄剤の製造方法(以下、「微細コーティング方法」ということがある。)によれば、樹脂粒状体の集合体に極めて少量の有効量の洗浄成分の液状体を添加し、非加熱状態の常温における混合・撹拌処理のみであり、簡便な操作により短時間で成形機用洗浄剤を提供することができる。過剰に添加された洗浄成分は、容易に乾燥することができないため、湿潤状態では形成機内への装入が操作上円滑に行うことができず、また、被覆層の固定が十分でないことから被覆位置から脱落する、という現象が生じるため、添加する洗浄成分は適量有効量であることが重要である。
本発明に係る微細コーティング法の特徴である洗浄剤中の洗浄成分が非常に少ないことは、非残留性に通じ、引いては洗浄後の排出品の再利用がし易くなり、成形材料と同一の樹脂ベースの樹脂成形機用洗浄剤を提供することにより高純度のリサイクルが実現される。
従って、資源が有効利用され、ゼロエミッションをめざす今後の「プラスチック資源環境戦略」に極めて有用である。
このように、本発明に係る成形機の洗浄方法によれば、前記の成形機用洗浄剤を用いることにより、洗浄性および排出性において顕著な効果を奏することが確認された。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について具体的に説明する。もっとも、本発明は、下記の具体例のみに限定されるものではない。
本発明に係る成形機用洗浄剤の構成成分である樹脂粒状体は、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでも用いることができる。分類すれば汎用樹脂、エンジニアリング樹脂、スーパーエンジニアリング樹脂、さらには生分解性プラスチック等、多種多様に展開できる。
かかる樹脂粒状体を構成する原料樹脂としては、臨界表面張力が28dyne/cm以上、好ましくは、30dyne/cm以上のものであり、洗浄成分の臨界表面張力との差が少なくとも6dyne/cmを有するものが好適である。具体的には、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン類、ポリスチレン、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジェン・スチレン樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル・スチレン樹脂)、MS樹脂(メタクリル酸メチル・スチレン樹脂)、MBS樹脂(メタクリル酸メチル・ブタジェン・スチレン樹脂)等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアクリロニトリル(PAN)等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、EPDM、EMMA(エチレンメタクリル酸メチル)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、フッ素系樹脂、ケイ素系樹脂、エポキシ樹脂等を例示することができる。これらの樹脂は単独で使用することができるが、二種以上混合して用いることもできる。
【0011】
樹脂粒状体の形態としては、粉末状のものからかなり大きい球状、円筒状、角形状、碁石状、シート状、フレーク状またはペレット状のものまで使用することができ、これらは
、単軸ないし多軸押出機、コンティニュアスミキサ、バンバリーミキサ、インターナルミ
キサ、コニーダ、加圧ニーダ、オープン2本ロール等を使用する混練方法によりシートカ
ット、ストランドカット、空中ホットカット、水中ホットカット等のカッティング方式で
製造することができる。
樹脂粒状体のサイズは、各々の粒状体の形状において最長の箇所を測定し、これを基準として平均粒径0.5mm~10mm、好ましくは1mm~5mm、さらに好ましくは、2mm~4mmのものが有効である。さらに、特定の大きさの粒径分布を有する粒子集合体が成形機等内の複雑な構造部の洗浄にとって特に好ましい。すなわち、粒子集合体の全量に対して粒径10mm以上の粒子が5%以下であり、また、粒径0.5mm以下の粒子が全量の5%以下である粒子集合体が有用である。
【0012】
次に、本発明に係る成形機用洗浄剤を構成する洗浄成分は、臨界表面張力が22dyn
e/cm以下、好ましくは、21dyne/cm以下、さらに好ましくは、20dyne
/cm以下、特に、好ましくは、1~19dyne/cmのものであれば、特に限定され
ることなく選択することができ、単独または2種以上を混合して使用することもできる。
前記の通り、成形機用洗浄剤の担体となる構成要素の樹脂粒状体の臨界表面張力は、28dyne/cm以上であることから、洗浄成分の臨界表面張力は、樹脂粒状体の臨界表面張力との関係において、臨界表面張力が少なくとも6dyne/cm以上、特に、8dyne/cm以上離れているものが強固な被履層の形成が可能である観点から好ましく、臨界表面張力が22dyne/cm以下の前記洗浄成分は、前記樹脂粒状体の外表面を容易に濡らすことができ、その結果、その外表面に容易に強固な被覆層を形成させることができ、洗浄効果の高い成形機用洗浄剤を提供することができる。
【0013】
かかる洗浄成分として、具体的には、フッ素化合物、フッ素樹脂、フッ素オイル、フッ素ゴム、水溶性フッ素樹脂等のフッ素含有成分、ケイ素樹脂、ストレートシリコーンオイル、変性シリコーンオイル、シリコーンゴム等のシリコーンを挙げることができる。
前記フッ素化合物は、分子中にフッ素原子を有する有機フッ素化合物であり、具体的には、パーフルオロアルキル化合物、パーフルオロアルケニル化合物であり、さらに具体的にはC6F13基、C8F17基、C6F11基、C9F17基のパーフルオロアルキル基、またはパーフルオロアルケニル基を有する有機フッ素化合物を挙げることができる。
例えば、パーフルオロアルキル基を有する化合物の具体例として、
C6F13-CH2-CH2--P(O)(OH)2およびC6F13-CH2-CH2--S(O)2(OH)
また、パーフルオロアルケニル基を有する化合物の具体例として、
C9H17-O-C6H4-CH2-P(O)(OH)2 等を挙げることができる。
かかる有機フッ素化合物のなかでもC9F17基を有する含フッ素カルボン酸ジエステルが好ましい。また、パーフルオロアルキル化合物として、C9F18(HFP:ヘキサフルオロプロペントリマー)を挙げることができる。
【0014】
前記フッ素樹脂は、分子中にフッ素原子を含有する高分子化合物であり、さらに具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、変性ポリテトラフルオロエチレン(変性PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、水溶性フッ素樹脂等がある。特に好適なフッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン等を挙げることができる。
かかるフッ素樹脂は、重量平均分子量が100万~1000万、好ましくは、200万~800万であり、さらに好ましくは、300万~800万のものである。
【0015】
前記ケイ素樹脂は、架橋による網状構造を有する有機ケイ素化合物の重合体であり、具
体例として、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジ
ェンシリコーンオイル、アルキルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、アミ
ノ変性シリコーンオイル、メルカブト変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーン
オイル等が挙げられる。特に好ましいケイ素樹脂は、ジメチルシリコーン、フッ素変性シ
リコーンオイルである。
かかるケイ素樹脂は、重量平均分子量が2千~20万、好ましくは、1万~18万であり、さらに好ましくは、1万~15万のものを挙げることができる。
【0016】
かかるフッ素化合物、フッ素樹脂およびケイ素化合物、ケイ素樹脂は、各々単独で使用することができるが、両者を併用することが好ましく、フッ素化合物にケイ素樹脂を加え混合液体にすることにより、分散性が高められ、洗浄作用の相乗効果があり、良好な経時的安定性が得られる。
水溶性フッ素樹脂は、上記のフッ素樹脂をフッ素系溶剤で溶解・懸濁させたものであり、一般に市販されている。フッ素系溶剤としては、例えば、ハイドロフルオロオレフィンを挙げることができる。
前記フッ素化合物、フッ素樹脂およびケイ素化合物は、特性として共に離型性などに優れ、非粘着性、潤滑性、撥水撥油性、耐熱性、低摩擦係数、低表面エネルギーなどを示す。
【0017】
本発明に係る成形機用洗浄剤は、樹脂成形機内において溶融状態で洗浄に使用することにより、先ず外表面の洗浄成分(γc:22以下)が速やかに溶出し、成形機内の被洗浄物と金属との間に浸透し、臨界表面張力が大きく違う金属表面(γc:1,000以上)に広がり、接触度が高まり、成形機の金属表面を急速に低エネルギー化する。この低エネルギー化により,被洗浄物を浮き上がらせた状態にして、極めて少ない洗浄成分で効率よい洗浄を行うことができる。
【0018】
さらに洗浄効果を高めるために、本発明に係る成形機用洗浄剤の製造の過程において、
洗浄成分の湿潤状態の被覆層上に、粉状体または粒状体のフッ素樹脂および/またはケイ
素樹脂からなる洗浄成分を付加成分として付着させることができる。
かかるフッ素樹脂は、分子内にフッ素原子を含有する低分子量合成高分子であり、臨界表面張力22以下のものである。かかる付加成分としての洗浄成分の具体例としては、低分子量のポリテトラフルオロエチレン(PTEF)およびパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレン・プロペンコポリマー(FEP)が好ましい。
かかる付加成分は、低分子量のものであり、具体的には重量平均分子量が2千~80万、好ましくは、5千~60万であり、さらに好ましくは、1万~50万のものである。
前記付加成分の粒径は1μm~80μmであり、作業性の観点から1μm~70μmが好ましく、1μm~50μmが最も好ましい。
【0019】
洗浄成分の含有量については、樹脂粒状体100重量部に対し、0.01重量部未満の
有効量であり、極めて少量の含有量で優れた洗浄効果を奏することができる。洗浄成分の
具体例として、フッ素化合物、フッ素樹脂、およびケイ素樹脂について各々単独で使用す
る場合、または、これらを混合して使用する場合において、0.001~0.005重量
部、好ましくは0.0015~0.0045重量部、さらに好ましくは0.001~0.
004重量部である。また、これらを混合系として使用する場合、フッ素化合物(A)、
フッ素樹脂(B)およびケイ素樹脂(C)の量比は、それぞれ、等量の範囲を採用するこ
とで差し支えがなく、適宜決定することができ、かかる3成分の合計量として、0.00
1~0.005重量部、好ましくは、0.0015~0.0045重量部の含有量の範囲
を採用することができる。
本発明に係る成形機用洗浄剤を構成する洗浄成分の含有量が、樹脂粒状体100重量部
に対し、0.01重量部未満である点において臨界性を有するものであり、洗浄成分が0
.01重量部未満の場合と0.01重量部以上の場合の対比とで洗浄効果において著しい
差があることは後述の実施例と比較例において示す通りである。
洗浄部分の含有量が、少量であることは、本発明の特異性の一つであり、本発明に係る
成形機用洗浄剤は、洗浄成分が樹脂粒状体の外表面に被履された形態であることと関連し
ており、樹脂成形機内において短時間で洗浄効果を発揮することが可能であることとも関
連したものであり、実施例においても示す通りである。
【0020】
次に、本発明に係る成形機用洗浄剤の製造方法について説明する。
本発明によれば、樹脂粒状体の外表面に洗浄成分が被覆されてなる成形機用洗浄剤であって、
前記樹脂粒状体100重量部に対し前記洗浄成分0.01重量部未満の有効量が含有さ
れるように、前記樹脂粒状体の集合体に前記洗浄成分の液状体が添加され、両者を混合・
撹拌処理する混合工程に供される。
前記洗浄成分の液状体は、洗浄成分の溶液または懸濁液である。洗浄成分の溶液として
は、洗浄成分の溶解可能な溶媒を用いることができるが、洗浄成分がフッ素樹脂の場合、
フッ素系溶媒を用いることが好ましい。フッ素系溶媒として具体的には、ハイドロフルオロオレフィン等を挙げることができる。また、洗浄成分の懸濁液としては、水媒体を使
用することが好適である。かかる洗浄成分の溶液または懸濁液としては、洗浄成分が、0
.5~40%、好ましくは、1~10%のものを採用することができる。
前記混合工程における混合・撹拌処理は、前記樹脂粒状体集合体と、通常、液状の前記洗浄成分の液状体との接触が可能な容器内において両者を混合し、前記樹脂粒状体の外表面上に前記洗浄成分の被覆層が形成されるまで非加熱条件下、例えば、常温で撹拌処理が行なわれ、洗浄成分の被覆層が形成されるまで混合・撹拌処理が継続される。
前記混合工程における混合・攪拌処理は、前記樹脂粒状体と前記洗浄成分液状体をミキサーなどの適当な手段を用いることにより適当な容器内で行うことができる。
前記混合・撹拌処理後、洗浄成分が被覆された湿潤状態の洗浄剤は必要に応じて乾燥工程に供され、乾燥処理に供することができる。
乾燥処理は、洗浄成分が樹脂粒状体に強固に固定され、脱落防止が可能な条件で実施できればよいが、乾燥温度としては、20~50℃、好ましくは、25~45℃、さらに好ましくは、30~40℃の範囲を採用することができる。
かかる乾燥処理により、湿潤状態の洗浄成分の被履層上に付着された付加成分としての洗浄成分の固定化も図ることができる。乾燥工程においては混合工程において得られた洗浄剤の被覆層の湿潤状態の程度により1~10時間、好ましくは、1.5~3時間の乾燥時間を採用することができる。
【実施例】
【0021】
次に実施例および比較例により、本発明をさらに具体的に説明する。もっとも、本発明
はこれらの実施例等により限定されるものではない。
尚、実施例等において洗浄方法の対象として使用した各種樹脂、樹脂粒状体、洗浄成分および洗浄効果の評価方法等については次の通りである。
【0022】
・使用樹脂:次の市販樹脂を使用した。
ABS 東レ(株)700-314
ABS(透明グレード)東レ(株)900-352
PPE(変性PPE)SABICジャパン合同会社「ノリルSE-90」
PE (株)プライムポリマー640UF
PP (株)プライムポリマーE-105GM
PP(透明グレード)(株)プイムポリマーJ3021GR
PC(透明グレード)出光興産(株)IR1900
【0023】
A.樹脂粒状体
成形機用洗浄剤の構成要素である担体としての樹脂粒状体として次の二種を用いた。
・樹脂粒状体1
(株)プライムポリマー社製市販品の高密度ポリエチレン粒状体「ハイゼックス640UF」、MI(メルトインデックス:JIS:K7210、5kg荷重)0.21
密度:0.947、平均粒径3±0.5mmを使用した。
・樹脂粒状体2
(株)プライムポリマー社製市販品のポリプロピレン粒状体「プライムポリプロE-105GM」、MI(JIS:K7210、2.16kg荷重)0.5、密度:0.900、平均粒径3±0.5mmを使用した。
B.洗浄成分
成形機用洗浄剤の構成要素としての洗浄成分として次の八種を用いた。
・パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(略号FEP)
・ポリテトラフルオロエチレン(略号PTFE)
・パーフルオロアルコキシアルカン(略号PFA)
・ヘキサフルオロプロペントリマー(略号HFP)
・ジメチルシリコーン
・流動パラフィン
・パラフィン系プロセスオイル
・フッ素系界面活性剤(3MFC-4430)
【0024】
C.溶剤
フッ素系溶剤(ハイドロフルオロオレフィン(HFO)1233Z(セントラル硝子社製))
【0025】
1.臨界表面張力測定方法:臨界表面張力(γc)値は、周知の方法により求めることができる。具体的には、ジスマンプロットより求めることができる。すなわち、一定の固体表面上の、数種類の表面張力の異なる液体に対する接触角θを測定し、cosθを各種液体の表面張力に対しプロット(ジスマンプロット)し、この直線がcosθ=1となる値が臨界表面張力γc(dyne/cm)である。この接触角の測定およびジスマンプロットの作成については、協和界面科学(株)製全自動接触角計等により測定することができる。
臨界表面張力(γc)値については、各合成樹脂固有のものであり、文献値として報告
されているので、本発明においては、可能な範囲でこれらのデータを利用した。
【0026】
2.洗浄剤の洗浄成分被履層の測定方法:顕微分光を用いた非接触で、絶対反射率測定に
より膜厚値を測定する顕微分光膜厚計OPTMシリーズ、非接触光学厚み計(大塚電子(
株)製)により測定した。
【0027】
3.洗浄効果の評価:型締力100トン射出成形機を使用し、前材(カーボンブラック1
%含有の黒着色樹脂材料)の成形操作を終了し、5分間充満させた後、シリンダー内の樹
脂を全量排出し、成形機用洗浄剤を投入して、計量-射出の操作により洗浄を行い、目視
により黒着色が完全に消失するまでの洗浄剤の使用量を求め、洗浄性とした。該成形機用洗浄剤は、後材により、透明、かつ異物がなくなるまで排出し、その使用量を求め排出性とした。
洗浄効果は洗浄性と排出性の和で示した。
【0028】
4.表面張力の表記:上記、ジスマンプロットから求められる固体の臨界表面張力(γc
)≒ 液体の表面張力の間接的な関係から、表1記載および下記の成形機用洗浄剤に使用
する洗浄成分の表面張力は全て記号γcで表記した。
製造例
【0029】
成形機用洗浄剤として、次のA~Jを製造し、洗浄効果の評価に用いた。
製造例1
成形機用洗浄剤A
樹脂粒状体1(高密度ポリエチレン粒状体(640UF))20.0kgに、洗浄成分としてフッ素系溶剤(γc:17.9)に溶解したフッ素樹脂FEPパーフルオロエチレン-プロペンコポリマー(γc:17.8)の10%溶液20gとジメチルシリコーン(γc:20.0)40gとを混合して得られた混合液体60g(高密度ポリエチレン粒状体100重量部に対し、0.003重量部に相当する。)投入し、15分間、常温で混合攪拌後、洗浄成分で被覆された粒状体を混合容器から取り出し、乾燥機内に装填し30℃で1時間乾燥し、洗浄剤Aとした。
【0030】
製造例2-1
成形機用洗浄剤B1
樹脂粒状体2(ポリプロピレン粒状体(E-105GM))20.0kgに、洗浄成分として、フッ素系溶剤(γc:17.9)に溶解したフッ素樹脂PTFE(γc:18.5)の10%溶液を60g投入し(ポリプロピレン粒状体100重量部に対し、0.003重量部に相当する。)、15分間、常温で混合攪拌後、洗浄成分で被覆された粒状体を混合容器から取り出し、乾燥機内に装填し30℃で1時間乾燥し、洗浄剤B1とした。
【0031】
製造例2-2
成形機用洗浄剤B2
樹脂粒状体2(ポリプロピレン粒状体(E-105GM))20.0kgに、洗浄成分として、フッ素溶剤(γc:17.9)に溶解したフッ素樹脂PTFE(γc:18.5)の10%溶液を120g投入し(ポリプロピレン100重量部に対し、0.006重量部に相当する。)、15分間、常温で混合攪拌後、洗浄成分で被覆された粒状体を混合容器から取り出し、乾燥機内に装填した。や々湿潤状態のため30℃で5時間乾燥し、洗浄剤B2とした。
【0032】
製造例2-3
成形機用洗浄剤B3
樹脂粒状体2(ポリプロピレン粒状体(E-105GM))20.0kgに、洗浄成分として、フッ素溶剤(γc:17.9)に溶解したフッ素樹脂PTFE(γc:18.5)の10%溶液を160g投入し(ポリプロピレン粒状体100重量部に対し、0.008重量部に相当する。)、15分間、常温で混合攪拌後、洗浄成分で被覆された粒状体を混合容器から取り出し、乾燥機内に装填した。かなり湿潤状態のため30℃で8時間乾燥し、洗浄剤B3とした。
【0033】
製造例2-4
成形機用洗浄剤B4(比較例)
樹脂粒状体2(ポリプロピレン粒状体(PP-105GM))20.0kgに、洗浄成分として、フッ素系溶剤(γc:17.9)に溶解したフッ素樹脂PTFE(γc:18.5)の10%溶液を、200g投入し(ポリプロピレン粒状体100重量部に対し0.01重量部に相当する。)、15分間、混合攪拌後、混合容器から取り出し、乾燥機内に装填したが、洗浄成分が多過ぎて、30℃において8時間加熱の条件においても乾燥することができず、樹脂粒状体2の外表面への付着保持が困難となり、過剰成分は一部脱落して洗浄剤の製造は不能となった。
【0034】
製造例2-5
成形機用洗浄剤B5(比較例)
樹脂粒状体2(ポリプロピレン粒状体(PP-105GM))20.0kgに、洗浄成分として、フッ素系溶剤(γc:17.9)に溶解したフッ素樹脂PTFE(γc:18.5)の10%溶液を、600g投入し(ポリプロピレン粒状体100重量部に対し0.03重量部に相当する。)、15分間混合攪拌後、取り出した段階で洗浄成分が多過ぎて、30℃において8時間加熱の条件においても乾燥することができず、樹脂粒状体2の外表面への洗浄成分の付着保持が困難となり、過剰成分は一部脱落して洗浄剤の製造は不能となった。
【0035】
製造例3
成形機用洗浄剤C(付加成分の添加)
樹脂粒状体2(ポリプロピレン粒状体(E-105GM))20.0kgに、洗浄成分として、フッ素溶剤(γc:17.9)に溶解したフッ素樹脂PTFE(γc:18.5)の10%溶液を60g投入し(ポリプロピレン粒状体100重量部に対し、0.003重量部に相当する。)、15分間、常温で混合攪拌して、被覆層を形成させ、さらに付加成分としてフッ素樹脂(低分子量タイプPTFE)(γc:18.5)を20g(0.001重量部)添加、混合し、被覆上に付加成分を付着させた後、洗浄成分で被覆された粒状体を混合容器から取り出し、乾燥機内に装填し30℃で1時間乾燥し、洗浄剤Cとした。
【0036】
製造例4
成形機用洗浄剤D(付加成分の添加)
樹脂粒状体1(高密度ポリエチレン粒状体(640UF))20.0kgに、洗浄成分として、フッ素溶剤(γc:17.9)に溶解したフッ素樹脂PFA(γc:17.8)の10%溶液を20gとジメチルシリコーン(γc:20)40gとの混合液体を60g投入し(高密度ポリエチレン粒状体100重量部に対し、0.003重量部に相当する。)、15分間、常温で混合攪拌して、被覆層を形成させ、さらに付加成分としてフッ素樹脂(低分子量タイプPTFE)(γc:18.5)を20g添加(0.001重量部)、混合し、被覆上に付加成分を付着させた後、洗浄成分で被覆された粒状体を混合機から取り出し、乾燥機内に装填し、30℃で1時間乾燥し洗浄剤Dとした。
【0037】
製造例5
成形機用洗浄剤E(有機フッ素化合物)
樹脂粒状体2(ポリプロピレン粒状体(E-105GM))20.0kgに、洗浄成分として、有機フッ素化合物HFP(臨界表面張力γc:19.5)の50%乳化液20gと、ジメチルシリコーン(γc:20)の50%乳化液40gとの混合液体60gを投入し(ポリプロピレン粒状体100重量部に対し0.003重量部に相当する)、15分間、常温で混合攪拌後、洗浄成分で被覆された粒状体を混合容器から取り出し、乾燥機内に装填し30℃1時間乾燥し洗浄剤Eとした。
【0038】
製造例6
成形機用洗浄剤F(比較例)
樹脂粒状体2(ポリプロピレン粒状体(E-105GM))20.0kgに、洗浄成分として、流動パラフィン(臨界表面張力γc:26.4)(純正化学(株)製)を60g投入し(ポリプロピレン粒状体100重量部に対し、0.003重量部に相当する。)、15分間、常温で混合攪拌後、洗浄成分で被覆された粒状体を混合容器から取り出し、乾燥機内に装填し30℃で1時間乾燥し洗浄剤Fとした。
【0039】
製造例7
成形機用洗浄剤G(比較例)
樹脂粒状体1(高密度ポリエチレン粒状体(640UF)) 20.0kgに、洗浄成分として、パラフィン系プロセスオイル(γc:28.0)(日本サン石油(株)製)を70g投入し(高密度ポリエチレン粒状体100重量部に対し、0.0035重量部に相当する。)、15分間、常温で混合攪拌後、洗浄成分で被覆された粒状体を混合機から取り出し、乾燥機内に装填し、30℃で1時間乾燥し洗浄剤Gとした。
【0040】
製造例8
成形機用洗浄剤H(比較例)
樹脂粒状体2(ポリプロピレン粒状体(E-105GM))20.0kgに、洗浄成分として、流動パラフィン(γc:26.4)(純正化学(株)製)を60g投入し(ポリプロピレン粒状体100重量部に対し0.003重量部に相当する。)、15分間、常温で混合攪拌してさらに付加成分としてフッ素樹脂(低分子量タイプPTFE)(γc:18.5)を20g(0.001重量部)添加し、混合付着させた後、洗浄成分で被覆された粒状体を混合機から取り出し、乾燥機内に装填し、30℃で1時間乾燥し洗浄剤Hとした。
【0041】
製造例9
成形機用洗浄剤I(比較例)
高密度ポリエチレン粒状体(PE-640UF)20.0kgに,洗浄成分として、フッ素系界面活性剤(γc:23.8)(3M FC-4430)を70g投入し(高密度ポリエチレン粒状体100重量部に対し0.0035重量部に相当する。)、15分間、常温で混合攪拌後、洗浄成分で被覆された粒状体を混合容器から取り出し、乾燥機内に装填し30℃で1時間乾燥し洗浄剤Iとした。
【0042】
製造例10
成形機用洗浄剤J(比較例―混練法)
高密度ポリエチレン(PE-640UF)100重量部、フッ素樹脂(低分子量タイプPTFE)3.0重量部、メタクリル酸メチル・メタクリル酸アルキルエステル・アクリル酸アルキルエステル共重合体(三菱ケミカル商品名:メタブレンL-1000)2.0重量部を高速ミキサーで混合後、単軸押出機で220℃(混練法)にてペレット状に造粒し、洗浄剤Jとした。
【0043】
実施例1
前材(PP樹脂の黒着色材料5kg)成形操作を終了した後、シリンダー内の樹脂を全量排出し、洗浄剤Aを投入し、230℃で計量―射出の操作により洗浄を行ったところ、洗浄剤Aを280g使用した(洗浄性)。次に、洗浄剤Aの排出確認のため、後材として透明性ABS樹脂を投入し、洗浄剤Aを置換排出するため、計量―射出により洗浄を繰り返し、透明性PP樹脂使用量を測定したところ110gであった(排出性)。洗浄効果を洗浄性と排出性の和で示すと390gであった。
【0044】
実施例2
前材(ABS樹脂の黒着色材料5kg)成形操作を終了した後、シリンダー内の樹脂を全量排出し、洗浄剤Dを投入し、220℃で計量―射出の操作により洗浄を行ったところ、洗浄剤Dを280g使用した(洗浄性)。次に、洗浄剤Dの排出確認のため、後材として透明性ABS樹脂を投入し、洗浄剤Dを置換排出するため、計量―射出の操作により洗浄を繰り返し、透明性ABS樹脂使用量を測定したところ90gであった(排出性)。洗浄効果を洗浄性と排出性の和で示すと370gであった。
【0045】
実施例3
前材(PP樹脂の黒着色材料5kg)成形操作を終了した後、シリンダー内の樹脂を全量排出し、洗浄剤B1を投入し、230℃で計量―射出の操作により洗浄を行ったところ、洗浄剤B1を290g使用した(洗浄性)。次に、洗浄剤B1の排出確認のため、後材として透明性PP樹脂を投入し、洗浄剤B1を置換排出するため、計量―射出の操作を繰り返し、透明性PP樹脂使用量を測定したところ90gであった(排出性)。洗浄効果を洗浄性と排出性の和で示すと380gであった。
【0046】
実施例4
前材(ABS樹脂の黒着色樹脂材料5kg)成形操作を終了した後、シリンダー内の樹脂を全量排出し、洗浄剤Eを投入し、240℃で計量―射出の操作により洗浄を行ったところ、洗浄剤Eを280g使用した(洗浄性)。次に、洗浄剤Eを排出確認のため、後材として透明性PP樹脂を投入し、洗浄剤Eを排出確認のため、計量―射出の操作に繰り返し、透明性PP樹脂使用量を測定したところ130gであった(洗浄性)。洗浄効果を洗浄性と排出性の和示すと410gであった。
【0047】
実施例5
前材(PPE樹脂の黒着色材料5kg)成形操作を終了した後、シリンダー内の樹脂を全量排出し、洗浄剤Cを投入し、300℃で計量―射出の操作により洗浄を行ったところ、洗浄剤Cを430g使用した(洗浄性)。次に、洗浄剤Cの排出確認のため、後材として透明性PC樹脂を投入し、洗浄剤Cを置換排出するため、計量―排出の操作を繰り返し、透明性PC樹脂使用量を測定したところ180gであった(排出性)。洗浄効果を洗浄性と排出性の和で示すと610gであった。
【0048】
実施例6
前材(PP樹脂の黒着色材料5kg)成形操作を終了した後、シリンダー内の樹脂を全量排出し、洗浄剤B2を投入し、230℃で計量―射出の操作により洗浄洗浄を行ったところ、洗浄剤B2を300g使用した(洗浄性)。次に、洗浄剤B2排出確認のため、後材として透明性PP樹脂を投入し、洗浄剤B2を置換排出するため、計量―射出の操作を繰り返し、透明性PP樹脂使用を測定したところ140gであった(排出性)。洗浄効果を洗浄性と排出性の和で示すと440gであった。
【0049】
実施例7
前材(PP樹脂の黒着色材料5kg)成形操作を終了した後、シリンダー内の樹脂を全量排出し、洗浄剤B3を投入し、230℃で計量―射出の操作により洗浄洗浄を行ったところ、洗浄剤B3を310g使用した(洗浄性)。次に、洗浄剤B3排出確認のため、後材として透明性PP樹脂を投入し、洗浄剤B3を置換排出するため、計量―射出の操作を繰り返し、透明性PP樹脂使用量を測定したところ160gであった(排出性)。洗浄効果を洗浄性と排出性の和で示すと470gであった。
【0050】
比較例1
前剤(PP樹脂の黒着色材料5kg)成形操作を終了した後、シリンダー内の樹脂を全量排出し、洗浄剤Gを投入し、230℃で計量―射出の操作により洗浄を行ったところ、洗浄剤Gを430g使用した(洗浄性)。次に、洗浄剤Gの排出確認のため、後材として透明性ABS樹脂を投入し、洗浄剤Gを置換排出するため、計量―射出の操作を繰り返し、透明性ABS樹脂使用量を測定したところ330gであった。(排出性)。洗浄効果を洗浄性と排出性の和で示すと760gであった。
【0051】
比較例2
前材(PP樹脂の黒着色材料5kg)成形操作を終了した後、シリンダー内の樹脂を全量排出し、洗浄剤Fを投入し、230℃で計量―射出の操作により洗浄を行ったところ、洗浄剤Fを410g使用した(洗浄性)。次に、洗浄剤Fの排出確認のため、後材として透明性PP樹脂を投入し、洗浄剤Fを置換排出するため、計量―射出の操作を繰り返し、透明性PP樹脂使用量を測定したところ310gであった(排出性)。洗浄効果を洗浄性と排出性の和で示すと720gであった。
【0052】
比較例3
前材(ABS樹脂の黒着色材料5kg)成形操作を終了した後、シリンダー内の樹脂を全量排出し、洗浄剤Fを投入し、220℃で計量―射出の操作により洗浄を行ったところ、洗浄剤Fを430g使用した(洗浄性)。次に、洗浄剤Fの排出確認のため、後材として透明性ABS樹脂を投入し、洗浄剤Fを置換排出するため、計量―射出の操作を繰り返し、透明性ABS樹脂使用量を測定したところ320gであった(排出性)。洗浄効果を洗浄性と排出性の和で示すと750gであった。
【0053】
比較例4
前材(PP樹脂の黒着色材料5kg)成形操作を終了した後、シリンダー内の樹脂を全量排出し、洗浄剤Hを投入し、230℃で計量―射出の操作により洗浄を行ったところ、洗浄剤Hを410g使用した(洗浄性)。次に洗浄剤H排出確認のため、後材として透明性ABS樹脂を投入し、洗浄剤Hを置換排出するため、計量―射出の操作を繰り返し、透明性ABS樹脂使用量を測定したところ300gであった(排出性)。洗浄効果を洗浄性と排出性の和で示すと710gであった。
【0054】
比較例5
前材(ABS樹脂の黒着色樹脂材料5kg)成形操作を終了した後、シリンダー内の樹脂を全量排出し、洗浄剤Iを投入し、240℃で計量―射出の操作により洗浄を行ったところ、洗浄剤Iを370g使用した(洗浄性)。次に洗浄剤I排出確認のため、後材として透明性PP樹脂を投入し、洗浄剤Iを置換排出するため、計量―射出の操作を繰り返し、透明性PP樹脂使用量を測定したところ260gであった(排出性)。洗浄効果を洗浄性と排出性の和で示すと630gであった。
【0055】
比較例6
前材(PPE樹脂の黒着色材料5kg)成形操作を終了した後、シリンダー内の樹脂を全量排出し、洗浄剤Gを投入し、300℃で計量―射出の操作により洗浄を行ったところ、洗浄剤Gを710g使用した(洗浄性)。次に洗浄剤G排出確認のため、後材として透明性PC樹脂を投入し、洗浄剤Gを置換排出するため、計量―射出の操作を繰り返し、透明性PC樹脂使用量を測定したところ780gであった(排出性)。洗浄効果を洗浄性と排出性の和で示すと1490gであった
【0056】
比較例7
前材(PPE樹脂の黒着色材料5kg)成形操作を終了した後、シリンダー内の樹脂を全量排出し、洗浄剤Jを投入し、300℃で計量―射出の操作により洗浄を行ったところ、洗浄剤Jを700g使用した(洗浄性)。次に洗浄剤Jの排出確認のため、後材として透明性PC樹脂を投入し、洗浄剤Jを置換排出するため、計量―射出の操作を繰り返し、透明性PC樹脂使用量を測定したところ760gであった(排出性)。洗浄効果を洗浄性と排出性の和で示すと1460gであった。
【0057】
比較例8
製造例2-4に示すように、成形機用洗浄剤B4は、洗浄成分の過多(0.01重量部)により、乾燥できず、洗浄成分は、樹脂粒状体2上から脱落したため、脱落後の洗浄剤を使用して洗浄効果を評価したところ、洗浄効果は得られなかった。
【0058】
比較例9
製造例2-5に示すように、製造例2-4と同様に成形機用洗浄剤B5は、洗浄成分の過多(0.03重量部)により、乾燥できず、洗浄成分は、樹脂粒状体2上から脱落したため、脱落後の洗浄剤の洗浄効果は得られなかった。
【表1】