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特許7398159カゼインキナーゼ1δ及び/又はアクチビン受容体様キナーゼ5の阻害剤としての複素環化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】カゼインキナーゼ1δ及び/又はアクチビン受容体様キナーゼ5の阻害剤としての複素環化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 405/14 20060101AFI20231207BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
C07D405/14 CSP
A61K31/4439
A61P17/14
A61P25/20
A61P25/28
A61P27/02
A61P35/00
A61P43/00 111
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022532529
(86)(22)【出願日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 JP2021023905
(87)【国際公開番号】W WO2021261544
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2020109452
(32)【優先日】2020-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519305627
【氏名又は名称】株式会社アークメディスン
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100152331
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100168893
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 正路
(72)【発明者】
【氏名】田中 圭悟
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-524010(JP,A)
【文献】国際公開第2009/047163(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/071605(WO,A2)
【文献】特表2014-503527(JP,A)
【文献】特表2018-509438(JP,A)
【文献】国際公開第2015/064768(WO,A1)
【文献】特表2004-517068(JP,A)
【文献】特表2005-508344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 405/14
A61K 31/4439
A61P 17/14
A61P 25/20
A61P 25/28
A61P 27/02
A61P 35/00
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】
[式中、
1~R10は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル又はハロゲンであり、
ただし、R2及びR3、又はR4及びR5は、それらが結合する2つの炭素原子と共に、アルキルで置換されていてもよい下記の構造:
【化2】
[アスタリスク(*)が付された炭素原子は、R2及びR3、又はR4及びR5が結合するベンゼン環の炭素原子を表わす]
を有するテトラヒドロフラン環を形成している]
で表される化合物又はその医薬上許容可能な塩。
【請求項2】
1~R10が、それぞれ独立して、水素、アルキル、又はハロゲンである、請求項1に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
【請求項3】
2及びR3が、それらが結合する2つの炭素原子と共に、アルキルで置換されていてもよい、前記テトラヒドロフラン環を形成している、請求項1又は2に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
【請求項4】
2及びR3が、それらが結合する2つの炭素原子と共に、無置換の前記テトラヒドロフラン環を形成している、請求項に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
【請求項5】
下記化合物:
【化3】
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩を含む、カゼインキナーゼ1δ阻害剤。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩を含む、日リズム睡眠障害の治療薬。
【請求項8】
前記日リズム睡眠障害が、不規則睡眠覚醒リズム障害又はアルツハイマー型認知症に伴う夕暮れ症候群である、請求項7に記載の治療薬。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩を含む、アルツハイマー型認知症の治療薬。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩を含む、アクチビン受容体様キナーゼ5阻害剤。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩を含む、癌の治療薬。
【請求項12】
前記癌が、脳腫瘍、肝臓癌、膀胱癌、骨髄異形成症候群、大腸癌、又は膵臓癌である、請求項11に記載の治療薬。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の治療薬と異なる癌治療薬及び/又は放射線療法と併用するための、請求項11又は12に記載の治療薬。
【請求項14】
請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩を含む、角膜ジストロフィーの治療薬。
【請求項15】
請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩を含む、男性型脱毛症の治療薬。
【請求項16】
請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩を含む、カゼインキナーゼ1δ及びアクチビン受容体様キナーゼ5の阻害剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、カゼインキナーゼ1δ及び/又はアクチビン受容体様キナーゼ5の阻害剤、日リズム睡眠障害治療薬、アルツハイマー型認知症治療薬、角膜ジストロフィー治療薬、癌治療薬並びに男性型脱毛症治療薬に関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠及び覚醒のリズムは、体内時計によって約1日のリズムに調節されており、このようなリズムを概日リズムと称する。ヒトの体内時計の周期は約25時間であるのに対し、地球の1日の周期は24時間であり、約1時間のずれが存在している。通常、この1時間のずれは、様々な刺激(例えば、光、運動、食事)を受けて修正されるが、このずれを修正できない状態が長く続くと、適切な時刻に睡眠及び覚醒ができなくなり、また、このずれを無理に修正しようとすると、倦怠感、食欲不振、頭痛等の身体的な不調が生じる場合がある。このような概日リズムが関連する睡眠障害は、概日リズム睡眠障害と呼ばれている。
【0003】
概日リズム睡眠障害の一種である家族性睡眠相前進症候群は、ヒトのカゼインキナーゼ1δ(CK1δ)遺伝子の点変異により起こる疾患であることが知られており(非特許文献1)、ヒトの概日リズムがCK1δのモジュレーションによって変化することが示唆されている。また、マウス等のげっ歯類、及びサル等の非げっ歯類の概日リズムの制御にもCK1δが関与していることが報告されている(非特許文献2)。
【0004】
また、非臨床研究において、インビトロ及びインビボで、CK1δ阻害剤が概日リズムを変化させることが複数報告されており、概日リズム睡眠障害の治療薬としてCK1δ阻害剤に期待が寄せられている。
【0005】
また、CK1δとアルツハイマー型認知証との関係についても報告されている(特許文献1)。具体的には、アルツハイマー型認知証は、過剰にリン酸化されたタウタンパク質の細胞内凝集(神経原線維変化)が原因であると考えられており、タウタンパク質のリン酸化はCK1δによって引き起こされることが示唆されている。そのため、CK1δを阻害することによって、アルツハイマー型認知症を治療することが期待されている。
【0006】
ところで、角膜ジストロフィー(特許文献2)や癌(非特許文献3)とアクチビン受容体様キナーゼ5(ALK5)との関係も報告されている。なお、ALK5は、アクチビン様キナーゼと簡略的に表現されることもあるが、正式名称はアクチビン受容体様キナーゼである。角膜ジストロフィーは、角膜組織に過剰に蓄積された変性タンパク質が小胞体ストレス応答を介して角膜内皮細胞の細胞死を誘導することによって生じるものであり、ALK5(TGF-β I型受容体)シグナルの活性化が小胞体ストレスを引き起こすと報告されている。また、TGF-βは細胞増殖抑制作用を有することが知られているが、癌化後期過程では、TGF-βが癌細胞の増殖及び転移を促進させることが報告されている。そのため、ALK5を阻害することによって、角膜ジストロフィー及び癌を治療することが期待されている。なお。ALK5阻害剤として、例えば特許文献3及び4に記載の化合物等が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2014-503527号公報
【文献】国際公開第2015/064768号
【文献】特表2004-517068号公報
【文献】国際公開第2001/062756号
【0008】
【文献】Nature 2005,434,640-644
【文献】Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2010,107,15240-15245
【文献】Anticancer Res.2007,27,4149-4158
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、CK1δ阻害活性及び/又はALK5阻害活性を有する化合物、並びに前記化合物を含むCK1δ及び/又はALK5の阻害剤、日リズム睡眠障害治療薬、アルツハイマー型認知症治療薬、角膜ジストロフィー治療薬、癌治療薬及び男性型脱毛症治療薬を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等が鋭意検討した結果、所定の構造を有する化合物がCK1δ阻害活性及び/又はALK5阻害活性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は以下の実施形態を含む。
[1]
下記式(1):
【化1】
[式中、
1~R10は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル又はハロゲンであり、
ただし、R2及びR3、又はR4及びR5は、それらが結合する2つの炭素原子と共に、アルキルで置換されていてもよい、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子からなる群から選択される1個のヘテロ原子を含む5員環を形成している]
で表される化合物又はその医薬上許容可能な塩(ただし、2-[4-(2,3-ジヒドロ-5-ベンゾフラニル)-2-(1,1-ジメチルエチル)-1H-イミダゾール-5-イル]-6-メチルピリジンは除く)。
[2]
1~R10が、それぞれ独立して、水素、アルキル、又はハロゲンであり、
ただし、R2及びR3、又はR4及びR5は、それらが結合する2つの炭素原子と共に、アルキルで置換されていてもよい、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子からなる群から選択される1個のヘテロ原子を含む5員環を形成している、[1]に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
[2-1]
1~R5が、5員環を形成しているR2及びR3、又はR4及びR5を除いて、水素である、[1]又は[2]に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
[2-2]
6が、水素、アルキル又はシクロアルキルである、[1]~[2-1]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
[2-3]
6が、水素又はアルキルである、[1]~[2-2]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
[2-4]
6が、水素である、[1]~[2-3]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
[2-5]
7が、水素又はアルキルである、[1]~[2-4]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
[2-6]
7が、水素である、[1]~[2-5]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
[2-7]
8が、水素又はハロゲンである、[1]~[2-6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
[2-8]
8が、水素である、[1]~[2-7]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
[2-9]
9が、水素である、[1]~[2-8]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
[2-10]
10が、水素である、[1]~[2-9]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
[3]
2及びR3、又はR4及びR5が、それらが結合する2つの炭素原子と共に、アルキルで置換されていてもよい、テトラヒドロフラン環を形成している、[1]~[2-10]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
[3-1]
4及びR5が、それらが結合する2つの炭素原子と共に、アルキルで置換されていてもよい、テトラヒドロフラン環を形成している、[3]に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
[4]
2及びR3が、それらが結合する2つの炭素原子と共に、アルキルで置換されていてもよい、テトラヒドロフラン環を形成している、[3]に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
[5]
2及びR3が、それらが結合する2つの炭素原子と共に、無置換のテトラヒドロフラン環を形成している、[4]に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
[5-1]
2及びR3、又はR4及びR5が形成しているテトラヒドロフラン環が、下記の構造

【化2】
[アスタリスク(*)が付された炭素原子は、R2及びR3、又はR4及びR5が結合するベンゼン環の炭素原子を表わす]
を有する、[3]~[5]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
[6]
下記化合物:
【化3】
からなる群から選択される、[1]に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
[7]
[1]~[6]のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩を含む、カゼインキナーゼ1δ阻害剤。
[8]
[1]~[6]のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩を含む、日リズム睡眠障害の治療薬。
[9]
前記日リズム睡眠障害が、不規則睡眠覚醒リズム障害又はアルツハイマー型認知症に伴う夕暮れ症候群である、[8]に記載の治療薬。
[10]
[1]~[6]のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩を含む、アルツハイマー型認知症の治療薬。
[11]
[1]~[6]のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩を含む、アクチビン受容体様キナーゼ5阻害剤。
[12]
[1]~[6]のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩を含む、癌の治療薬。
[13]
前記癌が、脳腫瘍、肝臓癌、膀胱癌、骨髄異形成症候群、大腸癌、又は膵臓癌である、[12]に記載の治療薬。
[14]
[12]又は[13]に記載の治療薬と異なる癌治療薬及び/又は放射線療法と併用するための、[12]又は[13]に記載の治療薬。
[15]
[1]~[6]のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩を含む、角膜ジストロフィーの治療薬。
[16]
[1]~[6]のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩を含む、男性型脱毛症の治療薬。
[17]
[1]~[6]のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩を含む、カゼインキナーゼ1δ及びアクチビン受容体様キナーゼ5の阻害剤。
【0012】
また、本発明は以下の実施形態も含む。
[A1]
カゼインキナーゼ1δ及び/又はアクチビン受容体様キナーゼ5を阻害する方法であって、その必要のある患者に有効量の[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩を投与することを含む方法。
[A2]
日リズム睡眠障害を治療する方法であって、その必要のある患者に有効量の[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩を投与することを含む方法。
[A3]
アルツハイマー型認知症を治療する方法であって、その必要のある患者に有効量の[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩を投与することを含む方法。
[A4]
角膜ジストロフィーを治療する方法であって、その必要のある患者に有効量の[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩を投与することを含む方法。
[A5]
癌を治療する方法であって、その必要のある患者に有効量の[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩を投与することを含む方法。
[A6]
男性型脱毛症を治療する方法であって、その必要のある患者に有効量の[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩を投与することを含む方法。
[B1]
カゼインキナーゼ1δ及び/又はアクチビン受容体様キナーゼ5の阻害に使用するための、[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
[B2]
日リズム睡眠障害の治療に使用するための、[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
[B3]
アルツハイマー型認知症の治療に使用するための、[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
[B4]
角膜ジストロフィーの治療に使用するための、[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
[B5]
癌の治療に使用するための、[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
[B6]
男性型脱毛症の治療に使用するための、[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
[C1]
カゼインキナーゼ1δ及び/又はアクチビン受容体様キナーゼ5を阻害するための、[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩の使用。
[C2]
日リズム睡眠障害を治療するための、[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩の使用。
[C3]
アルツハイマー型認知症を治療するための、[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩の使用。
[C4]
角膜ジストロフィーを治療するための、[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩の使用。
[C5]
癌を治療するための、[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩の使用。
[C6]
男性型脱毛症を治療するための、[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩の使用。
[D1]
カゼインキナーゼ1δ阻害剤及び/又はアクチビン受容体様キナーゼ5阻害剤の製造における[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩の使用。
[D2]
日リズム睡眠障害の治療薬の製造における[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩の使用。
[D3]
アルツハイマー型認知症の治療薬の製造における[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩の使用。
[D4]
角膜ジストロフィーの治療薬の製造における[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩の使用。
[D5]
癌の治療薬の製造における[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩の使用。
[D6]
男性型脱毛症の治療薬の製造における[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩の使用。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、CK1δ阻害活性及び/又はALK5阻害活性を有する化合物、並びに前記化合物を含むCK1δ及び/又はALK5の阻害剤、日リズム睡眠障害治療薬、アルツハイマー型認知症治療薬、角膜ジストロフィー治療薬、癌治療薬及び男性型脱毛症治療薬を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0015】
<化合物>
本発明の一実施形態は、下記式(1):
【化4】
[式中、
~R10は、ぞれぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル又はハロゲンであり、
ただし、R及びR、又はR及びRは、それらが結合する2つの炭素原子と共に、アルキルで置換されていてもよい、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子からなる群から選択される1個のヘテロ原子を含む5員環を形成している]
で表される化合物又はその医薬上許容可能な塩(ただし、2-[4-(2,3-ジヒドロ-5-ベンゾフラニル)-2-(1,1-ジメチルエチル)-1H-イミダゾール-5-イル]-6-メチルピリジンは除く)に関する。なお、式(1)のイミダゾール部分においてプロトンと二重結合が移動した互変異性体も、式(1)に包含されるものとする。
【0016】
式(1)において、R及びR、又はR及びRは、それらが結合する2つの炭素原子と共に、アルキルで置換されていてもよい、1個の酸素原子を含む5員環(テトラヒドロフラン環)を形成していることが好ましい。
【0017】
式(1)において、R及びRは、それらが結合する2つの炭素原子と共に、アルキルで置換されていてもよい、テトラヒドロフラン環を形成していることがより好ましい。
【0018】
式(1)において、R及びRは、それらが結合する2つの炭素原子と共に、アルキルで置換されていてもよい、テトラヒドロフラン環を形成していてもよい。
【0019】
式(1)において、R及びRは、それらが結合する2つの炭素原子と共に、無置換のテトラヒドロフラン環を形成していることが更に好ましい。
【0020】
式(1)において、R及びR、又はR及びRが形成しているテトラヒドロフラン環は、下記の構造を有することが好ましい。
【化5】
[アスタリスク(*)が付された炭素原子は、R及びR、又はR及びRが結合するベンゼン環の炭素原子を表わす。]
【0021】
式(1)において、R~Rは、5員環を形成しているR及びR、又はR及びRを除いて、水素であることが好ましい。
【0022】
式(1)において、Rは、水素、アルキル又はシクロアルキルであることが好ましく、水素又はアルキルであることがより好ましく、水素であることが更に好ましい。
【0023】
式(1)において、Rは、水素又はアルキルであることが好ましく、水素であることがより好ましい。
【0024】
式(1)において、Rは、水素又はハロゲンであることが好ましく、水素であることがより好ましい。
【0025】
式(1)において、R及びR10は、水素であることが好ましい。
【0026】
本明細書において、アルキルは、炭素数1~6のアルキルであることが好ましく、炭素数1~3のアルキルであることがより好ましく、メチルであることが更に好ましい。アルキルには、直鎖状のアルキル及び分岐状のアルキルのいずれもが含まれるものとする。
【0027】
本明細書において、シクロアルキルは、炭素数3~6のシクロアルキルであることが好ましく、炭素数3~5のシクロアルキルであることがより好ましい。
【0028】
本明細書において、ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素であることが好ましく、フッ素であることがより好ましい。
【0029】
式(1)で表される化合物は、特に限定するものではないが、下記の化合物であることが好ましい。
【化6】
【0030】
式(1)で表される化合物の医薬上許容可能な塩は、医薬として使用可能なものであれば特に限定されないが、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩等の無機酸塩、及びフマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、パルミチン酸塩等の有機酸塩を挙げることができる。
【0031】
式(1)で表される化合物又はその医薬上許容可能な塩は、水和物等の溶媒和物を形成していてもよい。本明細書において、溶媒和物は、式(1)で表される化合物又はその医薬上許容可能な塩に包含されるものとする。
【0032】
<キナーゼ阻害剤>
本発明の一実施形態は、上記の化合物又はその医薬上許容可能な塩を含む、CK1δ及び/又はALK5の阻害剤に関する。
【0033】
(カゼインキナーゼ1δ阻害剤)
本発明の一実施形態はCK1δ阻害剤に関する。既存のCK1δ阻害剤であるPF-670462は、CK1δを阻害する濃度と、p38αを阻害する濃度とが近接していることから、副作用が懸念されるところ、本実施形態のCK1δ阻害剤は、CK1δ阻害濃度と、p38α阻害濃度とが十分に離れており、CK1δを選択的に阻害することができる。
【0034】
具体的には、p38α阻害濃度(IC50)/CK1δ阻害濃度(IC50)が、10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましく、40以上であることが更に好ましく、80以上であることがより更に好ましく、150以上であることが特に好ましい。p38α阻害濃度(IC50)/CK1δ阻害濃度(IC50)の上限は特に限定されないが、例えば、10,000、1,000、500等としてもよい。p38α阻害濃度、及びCK1δ阻害濃度は、下記試験例1に記載の方法により測定することができる。
【0035】
本実施形態のCK1δ阻害剤のCK1δ阻害濃度(IC50)は、200nM以下であることが好ましく、160nM以下であることがより好ましく、120nM以下であることが更に好ましく、80nM以下であることがより更に好ましく、60nM以下であることが特に好ましい。CK1δ阻害濃度(IC50)の下限は特に限定されないが、例えば、0.1nM、1nM、10nM等としてもよい。
【0036】
本実施形態のCK1δ阻害剤を使用することにより、CK1δが関与する疾患を治療することができる。
【0037】
(アクチビン受容体様キナーゼ5阻害剤)
本発明の一実施形態はALK5阻害剤に関する。本実施形態のALK5阻害剤のALK5阻害濃度(IC50)は、400nM以下であることが好ましく、300nM以下であることがより好ましく、200nM以下であることが更に好ましく、100nM以下であることがより更に好ましく、50nM以下であることが特に好ましい。ALK5阻害濃度(IC50)の下限は特に限定されないが、例えば、0.1nM、1nM、10nM等としてもよい。ALK5阻害濃度は、下記試験例3に記載の方法により測定することができる。
【0038】
本実施形態のALK5阻害剤を使用することにより、ALK5が関与する疾患を治療することができる。
【0039】
<治療薬>
本発明の一実施形態は、上記の化合物又はその医薬上許容可能な塩を含む、日リズム睡眠障害、アルツハイマー型認知症、角膜ジストロフィー、癌及び/又は男性型脱毛症の治療薬に関する。
【0040】
日リズム睡眠障害としては、例えば、人為的又は社会的な理由によって体内時計を短期間にずらすことによって生じる睡眠障害、及び体内時計を外界の周期に合わせる機能の不調によって生じる内因性の睡眠障害を挙げることができる。より具体的には、例えば、時差症候群、交代勤務睡眠障害、睡眠相前進症候群、睡眠相後退症候群、非24時間睡眠覚醒症候群、不規則睡眠覚醒リズム障害、アルツハイマー型認知症に伴う概日リズム障害(例えば、アルツハイマー型認知症に伴う夕暮れ症候群)、及びパーキンソン病に伴う概日リズム障害を挙げることができる。特に限定するものではないが、不規則睡眠覚醒リズム障害、又はアルツハイマー型認知症に伴う夕暮れ症候群の治療に使用することが好ましい。
【0041】
アルツハイマー型認知症としては、例えば、脳内アミロイドβ蓄積を伴うアルツハイマー型認知症、及びタウ蓄積を伴うアルツハイマー型認知症を挙げることができる。
【0042】
角膜ジストロフィーとしては、例えば、上皮性、実質性及び内皮性の角膜ジストロフィーを挙げることができる。特に限定するものではないが、内皮性のフックス角膜内皮ジストロフィーの治療に使用することが好ましい。
【0043】
癌としては、例えば、脳腫瘍(例えば、グリオーマ及び多形性膠芽細胞腫)、肝臓癌(例えば、肝細胞癌)、膀胱癌、骨髄異形成症候群、大腸癌、及び膵臓癌を挙げることができる。特に限定するものではないが、脳腫瘍又は肝臓癌の治療に使用することが好ましい。
【0044】
癌を治療する場合には、更なる癌治療薬(以下「第2癌治療薬」という。)及び/又は放射線療法を併用してもよい。第2癌治療薬としては、既存の癌治療薬を使用することができる。特に限定するものではないが、第2癌治療薬として、免疫チェックポイント阻害剤、癌ワクチン療法、癌抗体医薬、遺伝子治療薬、その他抗腫瘍薬(例えば、テモゾロミド、ゲムシタビン、ポマリドマイド、及びパクリタキセル)を挙げることができる。第2癌治療薬は、1種でもよいし、2種以上でもよい。本実施形態の癌治療薬と第2癌治療薬とは、配合剤として提供されてもよいし、別々に提供されてもよい。
【0045】
本実施形態の治療薬は、経口的又は非経口的に投与することができる。経口投与用の剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、及び懸濁剤が挙げられる。非経口投与用の剤形としては、例えば、注射剤、注入剤、点滴剤、点眼剤及び坐剤が挙げられる。
【0046】
本実施形態の治療薬は、必要に応じて、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、甘味剤、界面活性剤、懸濁化剤、乳化剤、着色剤、保存剤、芳香剤、矯味剤、安定剤、粘稠剤等を含んでいてもよい。
【0047】
本実施形態の治療薬の投与量は、患者の状態や体重、化合物の種類、疾患の種類、投与経路等によって異なるが、適切な量を医師が決定することができる。一例として、日リズム睡眠障害を治療する場合、成人(体重約60kg)に対して、経口投与の場合には0.1~3000mg、非経口投与の場合には0.01~1000mg投与してもよい。アルツハイマー型認知症を治療する場合、成人(体重約60kg)に対して、経口投与の場合には0.1~3000mg、非経口投与の場合には0.01~1000mg投与してもよい。角膜内皮ジストロフィーを治療する場合、成人(体重約60kg)に対して、経口投与の場合には0.1~3000mg、非経口投与の場合には0.001~1000mg投与してもよい。癌を治療する場合、成人(体重約60kg)に対して、経口投与の場合には0.1~3000mg、非経口投与の場合には0.01~1000mg投与してもよい。
【0048】
<化合物の製造方法>
上記の化合物又はその医薬上許容可能な塩は、公知の方法を適宜利用して合成することができる。合成方法の一例として、下記のスキームAを挙げることができる。
【化7】
[R~R10は上記のとおりである。]
【0049】
(工程A1)
工程A1では、化合物(A1)を、縮合剤の存在下でN,O-ジメチルヒドロキシルアミンと反応させて化合物(A2)を得る。化合物(A1)は、市販品でもよいし、公知の方法に従って製造してもよい。
【0050】
工程A1で使用する縮合剤は、特に限定されないが、例えば、1,1'-カルボニルジイミダゾール(CDI)、水溶性カルボジイミド(WSC)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、1,3-ジシクロヘキサンカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩(EDC)、ヨウ化2-クロロ-1-メチルピリジニウム、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HBTU)、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HATU)等が挙げられる。
【0051】
(工程A2)
工程A2では、化合物(A3)を有機リチウム化合物と反応させ、更に、化合物(A2)と反応させて化合物(A4)を得る。化合物(A3)は、市販品でもよいし、公知の方法に従って製造してもよい。
【0052】
工程A2で使用する有機リチウム化合物は、特に限定されないが、例えば、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、メチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、フェニルリチウム等が挙げられる。
【0053】
(工程A3)
工程A3では、化合物(A4)を、酢酸の存在下で亜硝酸ナトリウムと反応させて化合物(A5)を得る。
【0054】
(工程A4)
工程A4では、化合物(A5)を、酢酸アンモニウム及び酢酸の存在下で化合物(A6)と反応させて化合物(A7)を得る。
【0055】
(工程A5)
工程A5では、化合物(A7)をトリエチルホスファイトと反応させて化合物(A8)を得る。
【0056】
上記の化合物又はその医薬上許容可能な塩の別の合成方法として、下記のスキームBを挙げることもできる。
【化8】
[R~R10は上記のとおりである。]
【0057】
(工程B1)
工程B1では、化合物(B1)を4-メチルベンゼンスルフィン酸及びホルムアミドと反応させて化合物(B2)を得る。化合物(B1)は、市販品でもよいし、公知の方法に従って製造してもよい。
【0058】
(工程B2)
工程B2では、化合物(B2)をオキシ塩化リンと反応させて化合物(B3)を得る。
【0059】
(工程B3)
工程B3では、化合物(B4)をアンモニアと反応させ、更に、化合物(B3)と反応させて化合物(B5)を得る。化合物(B4)は、市販品でもよいし、公知の方法に従って製造してもよい。
【0060】
合成方法は、上記スキームA及びBに限定されるものではなく、例えば下記製造例を参考にして別の合成ルートで合成してもよい。
【実施例
【0061】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
【0062】
[製造例1-1]
N-メトキシ-N-メチル-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボキサミド
【化9】
1,1'-カルボニルジイミダゾール(16g、98mmol)とN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(160ml)の混合物に0℃で1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸(12g、76mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。反応混合物を0℃とし、同温でN,O-ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(9.6g、98mmol)を加え、室温で12時間撹拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチル-テトラヒドロフラン(2:1)で3回抽出した(400mlx3回)。有機層を水(50mlx2回)及び飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、減圧下溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘプタン=1:1)で精製し、標記化合物(11g)を得た。
1H-NMR Spectrum (CDCl3)δ(ppm): 3.37 (s, 3H), 3.56 (s, 3H), 5.14 (s, 4H), 7.25-7.29 (m, 1H), 7.56 (d, J=1.10 Hz, 1H), 7.60 (dd, J=7.68, 1.46 Hz, 1H)
【0063】
[製造例1-2]
1-(1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-イル)-2-(ヒドロキシイミノ)-2-(ピリジン-2-イル)エタノン
【化10】
ジイソプロピルアミン(1.9ml、14mmol)とテトラヒドロフラン(THF)(50ml)の混合物に-78℃でn-ブチルリチウム(5.0ml、13mmol)を滴下した。同温で30分撹拌後、同温で2-ピコリン(1.5ml、15mmol)を滴下した。反応混合物を0℃で30分撹拌後、反応混合物を-78℃冷却し、製造例1-1で得たN-メトキシ-N-メチル-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボキサミド(2.5g、12mmol)とTHF(10ml)の混合物を同温で滴下した。反応混合物を徐々に室温まで昇温させ、室温で終夜撹拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、減圧下溶媒留去した。残渣をNH-シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘプタン=0:1から2:3のグラジエント)で精製後、同条件で再度精製し、粗体の1-(1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-イル)-2-(ピリジン-2-イル)エタノン(600mg)を得た。
【0064】
粗体の1-(1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-イル)-2-(ピリジン-2-イル)エタノン(1.5g)、THF(10ml)及び酢酸(15ml)の混合物に、亜硝酸ナトリウム(0.52g、7.6mmol)と水(4ml)の混合物を0℃で滴下し、次いで、室温で3時間撹拌した。溶媒を減圧下留去後、酢酸エチルと飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた。有機層を分離し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で順次洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、減圧下溶媒留去した。残渣をNH-シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:酢酸エチル:メタノール=1:1:0から0:1:0のグラジエント、次いで0:1:0から0:9:1のグラジエント)で精製し、標記化合物(1.3g)をE体とZ体の混合物として得た。下記に示すNMRデータは、E体とZ体の混合物のものである。
1H-NMR Spectrum (CDCl3)δ(ppm): 5.14 (s, 4H), 5.16 (s, 4H), 7.28-7.30 (m, 1H), 7.36 (d, J=7.68 Hz, 1H), 7.36 (d, J=7.68 Hz, 1H), 7.52-7.55 (m, 1H), 7.33-7.91 (m, 5H), 7.33-7.91 (m, 4H), 7.94-8.02 (m, 1H), 8.48-8.56 (m, 1H), 8.58-8.64 (m, 1H)
【0065】
[実施例1]
2-(4-(1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-イル)-1H-イミダゾール-5-イル)ピリジン
【化11】
製造例1-2で得た1-(1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-イル)-2-(ヒドロキシイミノ)-2-(ピリジン-2-イル)エタノン(300mg、1.1mmol)、酢酸アンモニウム(520mg、6.7mmol)、及び酢酸(6ml)の混合物に室温でパラホルムアルデヒド(50mg、0.56mmol)を加え、同温で1時間撹拌後、100℃で15時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、溶媒を減圧下留去した。残渣(310mg)とN-メチルピロリジノン(NMP)(7mL)の混合物に、室温でトリエチルホスファイト(0.38mL、2.2mmol)を加え、120℃で3時間撹拌した。反応混合物を室温とし、水と酢酸エチルを加え、次いで飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた。有機層を分離し、水層を酢酸エチル-テトラヒドロフラン(2:1)で抽出した。2つの有機層を合わせて、有機層を水と飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、減圧下溶媒留去した。残渣をNH-シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=20:1)で精製し、標記化合物(44mg)を得た。
1H-NMR Spectrum (CDCl3)δ(ppm): 5.15 (s, 2H), 5.18 (d, J=1.46 Hz, 2H), 7.12 (ddd, J=6.59, 4.76, 2.20 Hz, 1H), 7.29 (d, J=8.05 Hz, 1H), 7.48-7.57 (m, 4H), 7.75 (s, 1H), 8.55 (d, J=4.76 Hz, 1H), 10.39 (br. s., 1H)
【0066】
[実施例2]
2-(4-(1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-イル)-2-メチル-1H-イミダゾール-5-イル)ピリジン
【化12】
製造例1-2で得た1-(1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-イル)-2-(ヒドロキシイミノ)-2-(ピリジン-2-イル)エタノン(61mg、0.22mmol)、酢酸アンモニウム(110mg、1.4mmol)、及び酢酸(1.5ml)の混合物に室温でアセトアルデヒド(13mg、0.27mmol)を加え、同温で15分間撹拌後、115℃で15時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、溶媒を減圧下留去した。残渣(67mg)とNMP(1.5mL)の混合物に、室温でトリエチルホスファイト(0.38mL、2.2mmol)を加え、120℃で6時間撹拌した。反応混合物を室温とし、水と酢酸エチルを加え、次いで飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた。有機層を分離し、水層を酢酸エチル-テトラヒドロフラン(2:1)で抽出した。2つの有機層を合わせて、有機層を水と飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、減圧下溶媒留去した。残渣をNH-シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=40:1)で精製し、標記化合物(44mg)を得た。
1H-NMR Spectrum (CDCl3)δ(ppm): 2.50 (s, 3H), 5.12 (s, 2H), 5.15 (d, J=1.36 Hz, 2H), 7.04-7.09 (m, 1H), 7.22-7.28 (m, 1 H), 7.43-7.54 (m, 4H), 8.50 (dt, J=4.98, 1.36 Hz, 1H), 9.97 (br d, J=3.17 Hz, 1H)
【0067】
[製造例3-1]
N-((1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-イル)(トシル)メチル)ホルムアミド
【化13】
1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルバルデヒド(3.3g、22mmol)、4-メチルベンゼンスルフィン酸(5.3g、34mmol)、ホルムアミド(2.2ml、56mmol)、アセトニトリル(30ml)、及びトルエン(30ml)の混合物に0℃でクロロトリメチルシラン(3.1ml、25mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。その後50℃で8時間20分撹拌し、反応混合物を室温に冷却した。ろ過により不溶物を取り除き、ろ液を減圧下溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘプタン=4:1)で精製し、標記化合物(2.9g)を得た。
1H-NMR Spectrum (CDCl3)δ(ppm): 2.38-2.43 (m, 3H), 5.01 (t, J=5.47 Hz, 4H), 6.36-6.43 (m, 1H), 7.34-7.39 (m, 1H), 7.40-7.51 (m, 4H), 7.69-7.76 (m, 2H), 7.90-7.95 (m, 1H), 9.72-9.80 (m, 1H)
【0068】
[実施例3]
2-(4-(1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-イル)-1H-イミダゾール-5-イル)-5-フルオロピリジン
【化14】
製造例3-1で得たN-((1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-イル)(トシル)メチル)ホルムアミド(210mg、0.62mmol)とTHF(2ml)の混合物に、室温でオキシ塩化リン(0.12ml、1.2mmol)を加え、同温で20分間撹拌した。反応混合物を0℃に冷却し、同温でトリエチルアミン(0.52ml、3.7mmol)を加え、同温で2時間撹拌した。反応混合物に0℃で水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、減圧下溶媒留去した。残渣をNH-シリカゲルカラムクロマトグラフィーでろ過した(酢酸エチル)。減圧下溶媒留去して、粗体の5-(イソシアノ(トシル)メチル)-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン(190mg)を得た。190mgのうち49mgを次の反応に用いた。
【0069】
5-フルオロ-2-ホルミルピリジン(19mg、0.16mmol)と28%アンモニア水溶液(0.50ml)の混合物を50℃で1時間撹拌し、その後溶媒を減圧下留去した。残渣に、粗体の5-(イソシアノ(トシル)メチル)-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン(49mg)とDMF(1ml)の混合物を室温で加え、次いで炭酸カリウム(54mg、0.39mmol)を加え、室温で終夜撹拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、減圧下溶媒留去した。残渣をLC-MS(0.1%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリル-水の溶媒系)で精製し、次いでNH-シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=20:1)で精製し、標記化合物(1.2mg)を得た。
1H-NMR Spectrum (CDCl3)δ(ppm): 5.13 (s, 2H), 5.16 (d, J=1.36 Hz, 2H), 7.26 (br s, 1H), 7.28 (s, 1H), 7.49 (br s, 1H), 7.51 (br s, 2H), 7.73 (s, 1H), 8.39 (br d, J=2.27 Hz, 1H), 9.98-10.35 (m, 1H)
【0070】
[実施例4]
2-(4-(1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-イル)-1H-イミダゾール-5-イル)-6-メチルピリジン
【化15】
6-メチル-2-ピリジンカルボキシアルデヒド(19mg、0.16mmol)と28%アンモニア水溶液(0.50ml)の混合物を50℃で1時間撹拌し、その後溶媒を減圧下留去した。残渣に、実施例3で得た粗体の5-(イソシアノ(トシル)メチル)-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン(49mg)とDMF(1ml)の混合物を室温で加え、次いで炭酸カリウム(54mg、0.39mmol)を加え、室温で終夜撹拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、減圧下溶媒留去した。残渣をLC-MS(0.1%トリフルオロ酢酸含有のアセトニトリル-水の溶媒系)で精製し、次いでNH-シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=20:1)で精製し、標記化合物(2.0mg)を得た。
1H-NMR Spectrum (CDCl3)δ(ppm): 2.54 (s, 3H), 5.13 (s, 2H), 5.15 (d, J=1.36 Hz, 2H), 6.96 (d, J=7.25 Hz, 1H), 7.26-7.33 (m, 2H), 7.37-7.43 (m, 1H), 7.51-7.55 (m, 2H), 7.72 (s, 1H), 10.22-10.57 (m, 1H)
【0071】
[製造例5-1]
N-メトキシ-N-メチル-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボキサミド
【化16】
1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸(1.20g、7.31mmol)、N,O-ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(1.42g、14.6mmol)、及びジクロロメタン(20mL)の混合物に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(4.05mL、21.9mmol)を0℃でゆっくり加え、同温で10分間攪拌した。反応混合物にプロピルホスホン酸無水物(50%酢酸エチル溶液、9.20mL、30.6mmol)をゆっくり加え、室温で16時間攪拌した。反応混合物に氷冷水を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製し、標記化合物(0.90g)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.51-7.48 (m, 2H), 7.38-7.36 (m, 1H), 5.02 (s, 4H), 3.53 (s, 3H), 3.25 (s, 3H).
【0072】
[製造例5-2]
1-(1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-イル)-2-(ピリジン-2-イル)エタン-1-オン
【化17】
アルゴン雰囲気下、2-メチルピリジン(0.757mL、7.72mmol)、及びテトラヒドロフラン(8.0mL)の混合物に、リチウムジイソプロピルアミド(2Mテトラヒドロフラン溶液、2.51mL、5.02mmol)を-78℃でゆっくり加え、同温で30分間攪拌した。反応混合物にN-メトキシ-N-メチル-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボキサミド(800mg、3.86mmol)、及びテトラヒドロフラン(4mL)の混合物をゆっくり加え、室温で2時間攪拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製し、標記化合物(0.60g)を得た。
ESI-MS: m/z 240.10 [M+1]+
【0073】
[製造例5-3]
1-(1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-イル)-2-(ヒドロキシイミノ)-2-(ピリジン-2-イル)エタン-1-オン
【化18】
1-(1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-イル)-2-(ピリジン-2-イル)エタン-1-オン(600mg、2.51mmol)、テトラヒドロフラン(10mL)、及び酢酸(10mL)の混合物に、少量の水を加えた亜硝酸ナトリウム(260mg、3.76mmol)を0℃でゆっくり加え、室温で2時間攪拌した。反応混合物を減圧下溶媒留去し、残渣に飽和炭酸水素ナトリウムを加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製し、標記化合物(0.50g)を得た。
ESI-MS: m/z 266.91 [M-1]-
【0074】
[製造例5-4]
2-シクロプロピル-4-(1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-イル)-5-(ピリジン-2-イル)-1H-イミダゾール-1-オール
【化19】
1-(1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-イル)-2-(ヒドロキシイミノ)-2-(ピリジン-2-イル)エタン-1-オン(800mg、2.98mmol)、及びアセトニトリル(12mL)の混合物に、酢酸アンモニウム(460mg、5.96mmol)、及びシクロプロパンカルバルデヒド(209mg、2.98mmol)を0℃で加え、室温で10分間攪拌した。反応混合物にトリフルオロ酢酸(34.0mg、0.298mmol)を加え、50℃で16時間攪拌した。反応混合物を減圧下溶媒留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール)により精製し、標記化合物(0.20g)を得た。
ESI-MS: m/z 319.13 [M+1]+
【0075】
[実施例5]
2-(2-シクロプロピル-4-(1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-イル)-1H-イミダゾール-5-イル)ピリジン
【化20】
2-シクロプロピル-4-(1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-イル)-5-(ピリジン-2-イル)-1H-イミダゾール-1-オール(200mg、0.626mmol)、及びメタノール(2mL)の混合物に塩化チタン(III)溶液(12%塩酸溶液、2.0mL)を0℃でゆっくり加え、室温で16時間攪拌した。反応混合物を減圧下溶媒留去し、残渣に飽和炭酸水素ナトリウムを加え、セライトを用いて20%メタノール/ジクロロメタンで洗浄しながら濾過した。濾液から分離させた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒留去した。残渣を高速液体クロマトグラフィー(X Bridge Shield(19x250mm)10μm、5mM酢酸アンモニウム/水)により精製し、標記化合物(0.035g)を得た。
ESI-MS: m/z 304.29 [M+1]+
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 12.39, 12.13 (s, 1H), 8.57, 8.33 (d, 1H, J = 4.0 Hz), 7.76-7.15 (m, 6H), 5.01, 4,99 (s, 4H), 2.08-1.97 (m, 1H).
【0076】
[試験例1]
CK1δ阻害作用及びp38α阻害作用の評価
1.被験物質溶液の調製
被験物質はジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、さらにDMSOにて希釈して試験濃度の100倍濃度の溶液を調製した。その溶液をさらにアッセイバッファーにて25倍希釈して被験物質溶液とした。陽性対照物質についても、同様に陽性対照物質溶液を調製した。
【0077】
2.キナーゼタンパク質の調製
CK1δ:ヒトCK1δの酵素活性ドメイン(accession number NP_001884.2の1-294アミノ酸配列部位)のN末にGST(61KDa)を融合し、大腸菌にて発現させ、グルタチオンセファロースクロマトグラフィーシステムにて精製したものを用いた。
p38α:ヒトp38αはaccession number NP_620581.1の9-352アミノ酸配列部位のN末にGST(66KDa)を融合し、大腸菌にて発現させ、グルタチオンセファロースクロマトグラフィーシステムにて精製し、His-tag化MAP2K6で活性化させ、再度グルタチオンセファロースクロマトグラフィーシステムにて精製したものを用いた。
【0078】
3.試薬及び試験方法
アッセイバッファー(20mM HEPES、0.01%Triton X-100、2mM DTT、pH7.5)にて調製した5μLの4倍濃度被験物質溶液、5μLの4倍濃度基質/ATP/金属溶液及び10μLの2倍濃度キナーゼ溶液をポリプロピレン製384ウェルプレートのウェル内で混合し、室温にて1時間反応させた。70μLのTermination Buffer (QuickScout Screening Assist MSA;Carna Biosciences)を添加して反応を停止させた。反応溶液中の基質ペプチドとリン酸化ペプチドをLabChip system(Perkin Elmer)にて分離、定量した。キナーゼ反応は基質ペプチドピーク高さ(S)とリン酸化ペプチドピーク高さ(P)から計算される生成物比(P/(P+S))にて評価した。
【0079】
4.反応条件
【表1】
【0080】
5.データ解析
全ての反応コンポーネントを含むコントロールウェルの平均シグナルを0%Inhibition、バックグランドウェル(酵素非添加)の平均シグナルを100%Inhibitionとし、各被験物質試験ウェルの平均シグナルから阻害率を計算した。IC50値は被験物質濃度と阻害率によるプロットを非線形最小二乗法により4パラメータのロジスティック曲線に近似させて求めた。結果を表2に示す。実施例の化合物は良好なCK1δ阻害活性を示し、また、CK1δ阻害濃度とp38α阻害濃度に大きな解離が見られた。
【表2】
【0081】
[試験例2]
ALK5阻害作用の評価
1.被験物質溶液の調製
0.1mg/mLのBSA(ウシ血清アルブミン)を含む10%DMSOのストック溶液(化合物濃度10mM)を調製し、被験物質溶液とした。
【0082】
2.キナーゼ
ALK5:Human ALK5, GenBank ID=BC071181.
【0083】
3.試薬、試験方法及び反応条件
キナーゼアッセイは、Promega社のADP-GloTMアッセイキットを用い、下記のアッセイ反応レシピに従い実施した。
コンポネント1:1μLのdiluted active protein kinase
コンポネント2:1μLのsubstrate
コンポネント3:1μLのkinase assay buffer
コンポネント4:1μLのcompound (10 concentrations) or 10% DMSO
コンポネント5:1μLのATP stock (25 μM final well concentration)
【0084】
反応混合物を384ウェルプレート中、40分間室温でインキュベーションすることから開始した。インキュベーション後、5μLのADP-GloTM試薬を加えた。そのプレートを振とうさせ、その後40分間室温でインキュベーションした。次いで、10μLのKinase Detection Reagentを加え、そのプレートを振とうさせ、その後30分間室温でインキュベーションした。そのプレートをGloMax plate reader上でADP-GloTM Luminescence Protocolを用いて計測した。ブランクコントロールは、適切なsubstrate(同じ量のassay dilution bufferに置きかえる)の添加以外は全てのアッセイコンポネントを用いて実施した。補正した活性値は、ブランクコントロールの値を引いて算出した。
【0085】
4.データ解析
0.3nMから10,000nMの間の10の化合物濃度でRelative Luminescence Units (RLU)を測定した。阻害率は以下のように計算した。
{(Control RLU-Test RLU)/(Control RLU-Background RLU)}×100
GraphPad Prism version 5.01を用いて、非線形回帰分析を実施し、IC50値を決定した。結果を表3に示す。実施例1の化合物は良好なALK5阻害活性を示すことが明らかとなった。
【表3】
【0086】
[試験例3]
ALK5阻害作用の評価
SignalChem社のヒトリコンビナントGSTタグ化TGFB(カタログ番号T07-11G)、基質ペプチドTGFBR1 Peptide(カタログ番号T36-58)、及びADP-Glo assay kit(プロメガ社)を用い、ADP-Glo assay kitの添付文書に従って384穴プレート上で5μL反応系にて測定した(GloMax plate reader)。反応条件は酵素濃度5ng/μL、基質濃度200ng/μL、ATP濃度25μM、反応時間2時間を用いた。被験物質(3000nMから3倍希釈で8-10濃度)添加による阻害率を元にGraphPad Prism version 5.01を用いてIC50値を算出した。
【表4】
【0087】
[試験例4]
CK1δ阻害作用の評価
SignalChem社のヒトリコンビナントGSTタグ化CK1 delta(カタログ番号C65-10G)、基質ペプチドCasein Dephosphorylated(カタログ番号C03-54BN)、及びADP-Glo assay kit(プロメガ社)を用い、ADP-Glo assay kitの添付文書に従って384穴プレート上で5μL反応系にて測定した(GloMax plate reader)。反応条件は酵素濃度2ng/μL、基質濃度200ng/μL、ATP濃度25μM、反応時間40分を用いた。被験物質(3000nMから3倍希釈で8-10濃度)添加による阻害率を元にGraphPad Prism version 5.01を用いてIC50値を算出した。
【表5】
【0088】
[試験例5]
p38α阻害作用の評価
SignalChem社のヒトリコンビナントGSTタグ化p38 alpha(カタログ番号M39-10BG)、基質ペプチドp38 Substrate(カタログ番号P03-58)、及びADP-Glo assay kit(プロメガ社)を用い、ADP-Glo assay kitの添付文書に従って384穴プレート上で5μL反応系にて測定した(GloMax plate reader)。反応条件は酵素濃度2ng/μL、基質濃度100ng/μL、ATP濃度25μM、反応時間40分を用いた。被験物質(3000nMから3倍希釈で8-10濃度)添加による阻害率を元にGraphPad Prism version 5.01を用いてIC50値を算出した。
【表6】