(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】化粧料、及び化粧料の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/67 20060101AFI20231207BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
A61K8/67
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2023062465
(22)【出願日】2023-04-07
【審査請求日】2023-04-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501406004
【氏名又は名称】プリマール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100171310
【氏名又は名称】日東 伸二
(72)【発明者】
【氏名】西 和夫
【審査官】▲高▼橋 明日香
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112245371(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112294696(CN,A)
【文献】国際公開第2013/027525(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第114804192(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112754947(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105639408(CN,A)
【文献】特開平06-298637(JP,A)
【文献】Vitamin C Facial NanoSpray (ID: 4194893),Mintel GNPD [online],2016年08月, https://www.gnpd.com
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスコルビン酸及び/又はその塩と、
超純水と
、
酸化防止剤と
を含み、
前記アスコルビン酸の塩は、アスコルビン酸のトリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、モノエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ピリジン塩、アルギニン塩、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、及びアルミニウム塩からなる群から選択される少なくとも一つであり、
前記酸化防止剤は、グルタチオン又はピロ亜硫酸ナトリウムであり、
pHを5.0~7.0に調整してあり、
溶存酸素量が0~5mg/Lである化粧料。
【請求項2】
アスコルビン酸及び/又はその塩と、
超純水と
を含み、
前記アスコルビン酸の塩は、アスコルビン酸のトリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、モノエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ピリジン塩、アルギニン塩、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、及びアルミニウム塩からなる群から選択される少なくとも一つであり、
溶存酸素量が0~5mg/Lであり、
エチレンビニルアルコールコポリマーからなる層を含む内層と、外部環境と接触する外層とを備えるエアレス容器に収容されてな
り、
前記エアレス容器は、前記内層が前記エアレス容器の側面を外側から押圧したとき、内部空間の減少に追従して萎むものであり、前記外層が、前記エアレス容器の側面を外側から押圧したとき、内側に撓み、前記外側からの押圧を解除すると元の形状に復元するものであり、前記内層と前記外層との間に、前記外側からの押圧を解除したとき、前記内層と前記外層との間に外部環境から空気を流入させ、かつ流入させた空気を逆流させない逆止弁が設けられている化粧料。
【請求項3】
前記アスコルビン酸及び/又はその塩を1w/v%以上含む請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項4】
前記超純水は、溶存酸素量が0~5mg/Lである請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項5】
前記超純水を65w/v%以上含む請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項6】
アスコルビン酸及び/又はその塩と、超純水と
、酸化防止剤とを混合する混合工程と、
前記混合工程により得られた混合物を容器に封入する封入工程と
を包含し、
前記アスコルビン酸の塩は、アスコルビン酸のトリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、モノエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ピリジン塩、アルギニン塩、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、及びアルミニウム塩からなる群から選択される少なくとも一つであり、
前記酸化防止剤は、グルタチオン又はピロ亜硫酸ナトリウムであり、
pHを5.0~7.0に調整してあり、
前記混合物の溶存酸素量は0~5mg/Lである化粧料の製造方法。
【請求項7】
アスコルビン酸及び/又はその塩と、超純水とを混合する混合工程と、
前記混合工程により得られた混合物を容器に封入する封入工程と
を包含し、
前記アスコルビン酸の塩は、アスコルビン酸のトリメチルアミン塩、トリエチルアミン
塩、モノエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ピリジン塩、アルギニン塩、ア
ンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、及びアルミ
ニウム塩からなる群から選択される少なくとも一つであり、
前記混合物の溶存酸素量は0~5mg/Lであり、
前記容器は、エチレンビニルアルコールコポリマーからなる層を含む内層と、外部環境
と接触する外層とを備えるエアレス容器であ
り、
前記エアレス容器は、前記内層が前記エアレス容器の側面を外側から押圧したとき、内部空間の減少に追従して萎むものであり、前記外層が、前記エアレス容器の側面を外側から押圧したとき、内側に撓み、前記外側からの押圧を解除すると元の形状に復元するものであり、前記内層と前記外層との間に、前記外側からの押圧を解除したとき、前記内層と前記外層との間に外部環境から空気を流入させ、かつ流入させた空気を逆流させない逆止弁が設けられている化粧料の製造方法。
【請求項8】
前記混合工程及び前記封入工程は、脱酸素雰囲気下において実行される
請求項6又は7に記載の化粧料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスコルビン酸及び/又はその塩を含有する化粧料、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アスコルビン酸(ビタミンC:VC)及び/又はその塩(以下、「アスコルビン酸類」ともいう。)は、美白、抗老化といった効果を発揮させる化合物であることから、これらの効果を期待して化粧料に配合されている。
【0003】
一方、アスコルビン酸類は、酸化され易く、その安定性に懸念があり、特に水中においてその傾向が高い。ところが、この種の化粧料は、通常、水を含んでいる。このため、化粧料を容器に収容する際に外部環境から容器内に、あるいは使用時に外部環境から容器内に空気が入り込むと、空気中に含まれる酸素が化粧料中の水に溶解し、溶解した酸素によってアスコルビン酸類が酸化分解され、化粧料の安定性の低下を招く虞がある。
【0004】
そこで、化粧料におけるアスコルビン酸類の安定化を図る技術が提案されている。
【0005】
例えば、アスコルビン酸類に、3-O-エチルアスコルビン酸又はその塩と、ポリエチレングリコールとを併用することにより、外用組成物(化粧料)の安定化を図ることが提案されている(特許文献1参照)。また、アスコルビン酸類に、炭素数3のジオールと、トコフェロール類とを併用することにより、外用組成物(化粧料)の安定化を図ることが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-138617号公報
【文献】国際公開第2020/067132号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2においては、有機溶媒が比較的多く配合されているため、その分、相対的に水の配合量が少なく、このことがアスコルビン酸類の酸化分解を抑制する一因となっている。しかし、有機溶媒を多く配合すると、皮膚への刺激が生じる虞がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、安定性に優れ、皮膚への刺激も低減されたアスコルビン酸及び/又はその塩を含有する化粧料、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明に係る化粧料の特徴構成は、
アスコルビン酸及び/又はその塩と、
超純水と
を含むことにある。
【0010】
超純水は、不純物(固形物、塩類、溶解している気体等)を除去し、限りなく理論純水(理論上完全に純粋な水)に近づけた水である。このため、超純水は、通常化粧料に使用されている精製水等と比較して溶存酸素量が顕著に低減されている。
【0011】
従って、本構成の化粧料によれば、アスコルビン酸類に、溶媒として超純水を併用することにより、アスコルビン酸類と酸素との接触を低減することができ、その結果、アスコルビン酸類の酸化分解を抑制することができるため、当該化粧料の安定性を高めることができる。また、有機溶媒を併用しなくても、あるいは有機溶媒を併用する場合であっても比較的少量で化粧料の安定性を高めることができるため、有機溶媒に起因する皮膚への刺激を低減することができる。このように、安定性に優れ、皮膚への刺激も低減された化粧料となる。
【0012】
本発明に係る化粧料において、
前記アスコルビン酸及び/又はその塩を1w/v%以上含むことが好ましい。
【0013】
一般に、化粧料中のアスコルビン酸類の含有量が1w/v%程度まで多くなると、アスコルビン酸類は酸化分解し易いものとなる。
【0014】
しかし、本構成の化粧料によれば、アスコルビン酸類の含有量が1w/v%以上であっても、超純水を併用することにより、アスコルビン酸類の酸化分解を抑制し、化粧料の安定性を高めることができる。従って、アスコルビン酸類の含有量を上記範囲に設定する場合には、本発明の効果を際立たせることができる。
【0015】
本発明に係る化粧料において、
前記超純水は、溶存酸素量が0~5mg/Lであることが好ましい。
【0016】
本構成の化粧料によれば、超純水の溶存酸素量を上記範囲に設定することにより、アスコルビン酸類と酸素との接触をより低減することができるため、アスコルビン酸類の酸化分解をより抑制することができ、安定性がより高められた化粧料となる。
【0017】
本発明に係る化粧料において、
前記超純水を65w/v%以上含むことが好ましい。
【0018】
本構成の化粧料によれば、超純水の含有量を上記範囲に設定することにより、アスコルビン酸類の酸化分解を抑制して化粧料の安定性を高めるとともに、皮膚への刺激をより低減することができる。
【0019】
本発明に係る化粧料において、
pHを5.0~7.0に調整してあることが好ましい。
【0020】
一般に、化粧料のpHが弱酸性域から中性域であると、アスコルビン酸は酸化分解され易く、化粧料の安定性が低下するのに対し、pHが2~3程度の酸性域であると、アスコルビン酸類は酸化分解され難く、安定性が良好となる傾向にあることが知られている。一方、スキンケアに使用される化粧料においては、pHが低くなると、皮膚に対する刺激が強くなる傾向にあることも知られている。
【0021】
この点に関し、本構成の化粧料によれば、アスコルビン酸類に超純水を併用することにより、pHを5.0~7.0と比較的高く設定しても、アスコルビン酸類の酸化分解を抑制することができるため、安定性が高められた化粧料となる。また、pHを5.0~7.0に設定することにより、皮膚への刺激がより低減された化粧料となる。従って、化粧料のpHを上記範囲に設定する場合には、本発明の効果を際立たせることができる。
【0022】
本発明に係る化粧料において、
酸化防止剤をさらに含むことが好ましい。
【0023】
本構成の化粧料によれば、酸化防止剤をさらに含むことにより、アスコルビン酸類の酸化分解をより抑制することができるため、安定性がより高められた化粧料となる。
【0024】
上記課題を解決するための本発明に係る化粧料の製造方法の特徴構成は、
アスコルビン酸及び/又はその塩と、超純水とを混合する混合工程と、
前記混合工程により得られた混合物を容器に封入する封入工程と
を包含することにある。
【0025】
本構成の化粧料の製造方法によれば、アスコルビン酸類と超純水とを混合する混合工程と、当該混合工程により得られた混合物を容器に封入する封入工程とを実行することにより、アスコルビン酸類と酸素との接触を低減することができ、その結果、アスコルビン酸類の酸化分解を抑制することができるため、安定性が高められた化粧料を得ることができる。また、有機溶媒を併用しなくても、あるいは有機溶媒を併用する場合であっても比較的少量で化粧料の安定性を高めることができるため、有機溶媒に起因する皮膚への刺激が低減された化粧料を得ることができる。このように、安定性に優れ、皮膚への刺激も低減された化粧料を得ることができる。
【0026】
本発明に係る化粧料の製造方法において、
前記混合工程及び前記封入工程は、脱酸素雰囲気下において実行されることが好ましい。
【0027】
本構成の化粧料の製造方法によれば、混合工程及び封入工程が脱酸素雰囲気下において実行されることにより、アスコルビン酸類と酸素との接触をより低減することができるため、アスコルビン酸類の酸化分解をより抑制することができ、安定性がより高められた化粧料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る化粧料の製造手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の化粧料及びその製造方法について説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態に記載される構成に限定されることを意図しない。なお、本明細書において数値範囲を示す表記「~」がある場合、その数値範囲には、「~」を挟む各数値が上限値及び下限値として含まれることを意味し、また、各上限値及び各下限値を適宜組み合わせて数値範囲としてもよい。また、本明細書において、含有量の単位「w/v%」は、「g/100mL」と同義である。
【0030】
[化粧料]
本実施形態の化粧料は、アスコルビン酸及び/又はその塩と、超純水とを含む。
【0031】
(アスコルビン酸及び/又はその塩)
アスコルビン酸は、ビタミンC(VC)として知られているL-アスコルビン酸を意味し、皮膚に対して美白、抗老化効果等を発揮させる化合物である。本実施形態の化粧料において、アスコルビン酸は、有効成分である。
【0032】
アスコルビン酸の塩は、アスコルビン酸の薬学上許容される塩であり、例えば有機塩基との塩(トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、モノエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ピリジン塩等の第3級アミンとの塩、アルギニン等の塩基性アンモニウム塩等)、無機塩基との塩(アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩等)等が挙げられる。これらのうち、アスコルビン酸の塩は、ナトリウム塩、カリウム塩が好ましく、具体的には、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウムがより好ましい。なお、アスコルビン酸の塩は、水に溶解すると、酸塩基が解離し、アスコルビン酸を水に溶解させた場合と同様の状態となり、アスコルビン酸と同様の効果を発揮する。
【0033】
アスコルビン酸及び/又はその塩(アスコルビン酸類)は、一種を単独で使用することができるが、二種以上の混合物として使用することもできる。
【0034】
化粧料中におけるアスコルビン酸類の含有量は、1~37w/v%が好ましく、3~15w/v%がより好ましい。一般に、化粧料中のアスコルビン酸類の含有量が1w/v%程度まで多くなると、アスコルビン酸類が酸化分解され易くなる傾向にある。しかし、本実施形態の化粧料によれば、アスコルビン酸類の含有量が1w/v%以上であっても、超純水を併用することにより、アスコルビン酸類の酸化分解を抑制し、化粧料の安定性を高めることができる。従って、アスコルビン酸類の含有量を1w/v%以上に設定する場合には、当該化粧料の効果を際立たせることができる。一方、アスコルビン酸類の含有量が多くなる程、酸化分解され易くなり、また、温度変化によって析出し易くなる傾向にある。アスコルビン酸類の含有量を37w/v%以下とすることにより、含有量が過度に多すぎないため、高含有量に起因する酸化分解、及び温度変化による析出を抑制することができる。
【0035】
なお、アスコルビン酸の塩には、アスコルビン酸の化学構造に対して特定の置換基を共有結合によって導入したアスコルビン酸の誘導体(例えばアスコルビン酸1分子の水酸基に2分子のグリセリンを付加したビスグリセリルアスコルビン酸等)の塩も含まれるが、アスコルビン酸の誘導体は、アスコルビン酸の塩(イオン結合体)と比較して10~50倍程度高価であるため、コスト面の点においては(誘導体ではない)アスコルビン酸の塩を採用することが好ましい。なお、アスコルビン酸の誘導体は、置換基が脱離(分解)することによってアスコルビン酸としての機能を発現する(いわゆるプロビタミンCである)ため、かかる分解が生じない場合には、アスコルビン酸としての機能を発現し得ない。これに対し、(誘導体ではない)アスコルビン酸の塩は、超純水に溶解することによって解離し、アスコルビン酸が生じるため、上記誘導体と比較して、確実にアスコルビン酸としての機能を発現することができる。
【0036】
(超純水)
超純水は、本実施形態の化粧料において、基剤である溶媒として機能する成分である。超純水は、不純物(固形物、塩類、溶解している気体等)を除去し、限りなく理論純水(理論上完全に純粋な水)に近づけた水である。水中の不純物が少なくなるに従って電気が流れ難くなるため、電気伝導率(導電率)は小さくなる。本明細書において、超純水は、25℃における電気伝導率が0.060μS/cm以下(1μS/cm = 0.1mS/mとして換算すると、0.0060mS/m以下)の水と定義する。なお、理論純水の25℃における電気伝導率は、0.05479μS/cm(0.005479mS/m)とされている。電気伝導率は、電気伝導率計(例えば卓上型電気伝導率計 CM-42X、東亜ディーケーケー株式会社製)によって測定することができる。
【0037】
かかる超純水は、通常化粧料に使用されている精製水等と比較して溶存酸素量が顕著に低減されている。従って、アスコルビン酸類に、溶媒として超純水を併用することにより、アスコルビン酸類と酸素との接触を低減することができ、その結果、アスコルビン酸類の酸化分解を抑制することができるため、当該化粧料の安定性を高めることができる。また、有機溶媒を併用しなくても、あるいは有機溶媒を併用する場合であっても比較的少量で化粧料の安定性を高めることができるため、有機溶媒に起因する皮膚への刺激を低減することができる。このように、安定性に優れ、皮膚への刺激も低減された化粧料となる。
【0038】
超純水は、超純水製造装置(例えばMilli-Q EQ7000、メルク株式会社ライフサイエンス製)によって得ることができる。
【0039】
超純水は、溶存酸素量が0~5mg/Lであることが好ましく、0~3mg/Lがより好ましく、0~1mg/Lがさらに好ましい。一般に、1気圧、25℃の条件下では、水の溶存酸素量(DO)は8.0mg/L程度とされている。この点に関し、超純水の溶存酸素量を0~5mg/Lに設定することにより、アスコルビン酸類と酸素との接触をより低減することができるため、アスコルビン酸類の酸化分解をより抑制することができ、安定性がより高められた化粧料となる。なお、本明細書において、溶存酸素量は、1気圧、25℃における溶存酸素量(DO:Dissolved Oxygen)を意味する。また、溶存酸素量は、従来公知の溶存酸素計(例えばDOメーター ID-160T、飯島電子工業株式会社製)によって測定することができる。
【0040】
化粧料中における超純水の含有量は、65w/v%以上が好ましく、70w/v%以上がより好ましく、85w/v%以上がさらに好ましい。超純水の含有量を65w/v%以上とすることにより、アスコルビン酸類の酸化分解を抑制して化粧料の安定性を高めるとともに、皮膚への刺激をより低減することができる。一方、化粧料中の他の成分との関係で超純水の含有量の上限は適宜設定することができ、超純水の含有量は、例えば90w/v%以下に設定することができる。
【0041】
(その他の成分)
化粧料には、超純水によるアスコルビン酸類の酸化分解の抑制効果を妨げない限りにおいて、上述したアスコルビン酸類、超純水以外の成分を配合してもよい。かかる他の成分として、pH調整剤、酸化防止剤、超純水以外の基剤である溶媒として有機溶媒、アスコルビン酸類以外の有効成分、各種のエキス、香料、防腐剤等が挙げられる。
【0042】
pH調整剤は、化粧料のpHを調整するための成分である。pH調整剤は、化粧料のpHを、皮膚に対する刺激が少ないpH(例えば後述するようにpH5.0~7.0)に調整し得るものであればよく、特に限定されるものではない。かかるpH調整剤としては、例えば苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)等が挙げられる。pH調整剤の含有量は、化粧料のpHが所望のpHとなるように適宜設定すればよい。
【0043】
酸化防止剤は、アスコルビン酸類を含む化粧料中の配合成分の酸化を防止するための成分である。酸化防止剤は、アスコルビン酸類を含む化粧料中の配合成分の酸化を防止し得るものであればよく、特に限定されるものではない。かかる酸化防止剤としては、例えばグルタチオン、ピロ亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。化粧料が酸化防止剤をさらに含むことにより、アスコルビン酸類の酸化分解をより抑制することができるため、安定性がより高められた化粧料となる。化粧料中における酸化防止剤の含有量は、アスコルビン酸類の酸化を防止することができるような量に適宜設定することができ、例えば、0.0025~0.3w/v%が好ましく、0.05~0.3w/v%がより好ましく、0.1~0.3w/v%がさらに好ましい。酸化防止剤の含有量を上記範囲に設定することにより、アスコルビン酸類の酸化分解をより抑制することができ、化粧料の安定性をより高めることができる。
【0044】
有機溶媒は、基剤である溶媒として機能する成分である。有機溶媒としては、プロパンジオール、プロピレングリコール、エタノール等が挙げられる。通常、有機溶媒は、水よりも酸素が溶解し難いため、有機溶媒の含有量を多くする程、化粧料の安定性が高まるが、その一方で、皮膚に対する刺激が強くなる傾向にある。かかる観点を考慮し、化粧料中における有機溶媒の含有量は、10w/v%以下が好ましく、5w/v%以下がより好ましく、1w/v%以下がさらに好ましい。有機溶媒の含有量を上記範囲に設定することにより、有機溶媒に起因する皮膚への刺激がより低減された化粧料となる。一方、有機溶媒の含有量は、0.01w/v%以上とすることができる。
【0045】
アスコルビン酸以外の有効成分は、超純水によるアスコルビン酸類の酸化分解の抑制効果を妨げないような含有量で配合することができる。
【0046】
エキス、香料、防腐剤等は、例えば化粧料中の含有量が0.01~0.5w/v%となるように配合することができる。
【0047】
(化粧料の特性)
化粧料は、pHが5.0~7.0に調整してあることが好ましい。一般に、化粧料のpHが弱酸性域から中性域であると、アスコルビン酸は酸化分解され易く、化粧料の安定性が低下するのに対し、pHが2~3程度の酸性域であると、アスコルビン酸類は酸化分解され難く、安定性が良好となる傾向にあることが知られている。一方、スキンケアに使用される化粧料においては、pHが低くなると、皮膚に対する刺激が強くなる傾向にあることも知られている。
【0048】
この点に関し、本実施形態の化粧料によれば、アスコルビン酸類に超純水を併用することにより、pHを5.0~7.0と比較的高く設定しても、アスコルビン酸類の酸化分解を抑制することができるため、安定性が高められた化粧料となる。また、pHを5.0~7.0に設定することにより、皮膚への刺激がより低減された化粧料となる。従って、当該化粧料のpHを上記範囲に設定する場合には、その効果を際立たせることができる。
【0049】
化粧料のpHは、pH調整剤によって適宜設定することができる。例えば、通常、アスコルビン酸類を水に溶解させると、水のpHは4以下程度にまで低下する。この場合には、化粧料のpHを5.0~7.0に調整すべく、アルカリ性化合物(例えば水酸化ナトリウム)を適宜の量で配合すればよい。
【0050】
化粧料は、溶存酸素量が0.5mg/L以下であることが好ましい。化粧料の溶存酸素量を0.5mg/L以下に設定することにより、アスコルビン酸類と酸素との接触をより低減することができるため、アスコルビン酸類の酸化分解をより抑制することができ、安定性がより高められた化粧料となる。
【0051】
(容器)
化粧料は、通常、容器に収容されて使用される。容器としては、使用前の保管時、使用時、及び使用後の保管時において、内容物である化粧料と、外部環境の空気中に含まれる酸素とが接触しないように構成された容器(以下、「エアレス容器」ともいう。)が好ましい。
【0052】
エアレス容器としては、例えば化粧料を収容する容器本体と、容器本体から化粧料を外部環境に吐出する吐出部を有する蓋体とを備えるものが挙げられる。当該エアレス容器において、蓋体の吐出部は、化粧料の外部環境への吐出を可能とする一方、外部環境から容器本体内への空気(酸素)の流入を遮断する逆止弁を有する。容器本体は、化粧料と接触する内層(内袋)と、外部環境と接触する外層(外殻)との二層が仮接着されることによって形成されている。内袋は、高い酸素バリア性能を有するエチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH:ethylene-vinylalcohol copolymer)からなる層を含み、容器の側面を外側から押圧したとき、化粧料の吐出による化粧料の体積減少(及び内部空間の減少)に追従して外殻から剥離して萎むような柔軟性を有するように構成されている。外殻は、上記のように容器の側面を外側から押圧した際は、一旦内側に撓むものの、押圧を解除すると、元の形状に復元されるような剛性を有するように構成されている。内袋と外殻との間には、上記押圧を解除したとき、内袋と外殻との間に外部環境から空気を流入させ、かつ流入させた空気を逆流させない逆止弁が設けられており、この逆止弁により、分離した内袋と外殻との間の空間が空気で満たされるようになっている。
【0053】
このように構成されたエアレス容器においては、化粧料の吐出の際に、吐出部を通って空気が逆流せず、しかも内袋が外殻から剥離して萎むため、内袋内への空気(及びそれに含まれる酸素)の流入が抑制されている。また、内袋は、高い酸素バリア性を有するため、内袋と外殻との間に流入した空気中の酸素との接触も抑制されている。
【0054】
かかるエアレス容器としては、例えばキョーラク株式会社製のエアレス容器(ハクリボトル)を使用することができる。また、エアレス容器には、脱酸素雰囲気下において化粧料が封入されることが好ましい。このように封入されることにより、アスコルビン酸類と酸素との接触をより抑制することができるため、容器内での化粧料の安定性をより高めることができる。
【0055】
[化粧料の製造方法]
図1は、本発明の一実施形態に係る化粧料の製造手順を示すフローチャートである。上述した化粧料の製造方法は、
図1に示すように、アスコルビン酸及び/又はその塩(アスコルビン酸類)と、超純水とを混合する混合工程S1と、混合工程S1により得られた混合物を容器に封入する封入工程S2とを包含する。
【0056】
(混合工程)
混合工程S1においては、アスコルビン酸類と、超純水とを混合する。この混合工程S1は、脱酸素雰囲気下で行うことが好ましい。脱酸素雰囲気下に設定する方法として、窒素置換処理を採用することができる。
【0057】
具体的には、超純水製造装置(例えばMilli-Q EQ7000、メルク株式会社ライフサイエンス製)によって超純水を生成させる。窒素ガス精製ユニット(CKD株式会社製)によって窒素(N2)ガスを発生させる。超純水及びアスコルビン酸類を含む原料に対して窒素ガスを、例えばマイクロバルブジェネレーター(株式会社ニクニ製)によって吹き込み、これら全原料に対して窒素置換処理を実行する。
【0058】
窒素置換処理された超純水を混合容器内に添加し、混合容器内にマイクロバルブジェネレーターによって窒素ガスを吹き込み、添加された超純水に対して窒素置換処理を実行する。次いで、窒素置換処理されたアスコルビン酸、及びその他の原料を混合容器に添加し、混合することにより、化粧料である混合物を得る。混合後、混合容器内にマイクロバルブジェネレーターによって窒素ガスを吹き込み、混合物に対して窒素置換処理を実行した後、酸素透過性が低い保管用タンクに収容し、混合物を保管する。
【0059】
混合工程S1における各窒素置換処理は、最終的な混合物の溶存酸素量が0.5mg/L以下となるように実行する。混合容器に原料を添加する順序は、上記の順序に特に限定されるものではない。また、複数回に分けて原料を添加し、混合する場合には、各原料を添加した後、夫々窒素処理工程を実行する。
【0060】
(封入工程)
封入工程S2においては、混合工程S1により得られた混合物を容器に封入する。この封入工程S2は、混合工程S1と同様に脱酸素雰囲気下で行うことが好ましい。
【0061】
具体的には、封入工程S2においては、混合工程S1によって得られた混合物を容器(例えば上述したエアレス容器)に小分けして供給し、充填するための充填ライン(経路)を有する充填部と、混合物が充填された容器を閉栓するための閉栓部とを備えた充填設備を用いて実行する。窒素ガス精製ユニットを使用して発生させた窒素ガスを、直接、空の充填ライン内に吹き込み、窒素置換処理を実行する。窒素ガスを、空の容器内に吹き込み、窒素置換処理を実行する。次いで、保管用タンクに収容されている混合物を、窒素置換処理された充填ラインを通して、窒素置換処理された容器内に充填する。かかる充填においては、充填の進行に伴って上昇する充填物の液面に対して窒素ガスを吹き込みながら実行する(液面追従充填)。このように液面追従充填を実行することにより、充填物の泡立ちを抑制することができる。混合物を容器に充填した後、容器内に窒素ガスを吹き込み、窒素置換処理を実行した後、容器を閉栓する。封入工程S2が脱酸素雰囲気下において実行されることにより、アスコルビン酸類の酸化分解をより抑制することができる。
【0062】
封入工程S2における各窒素置換処理は、閉栓後の充填物である化粧料の溶存酸素量が0.5mg/L以下となるように実行する。
【0063】
上記のように混合工程S1及び封入工程S2を実行することにより、アスコルビン酸類と酸素との接触を低減することができ、アスコルビン酸類の酸化分解を抑制することができるため、安定性が高められた化粧料を得ることができる。また、有機溶媒を併用しなくても、あるいは有機溶媒を併用する場合であっても比較的少量で化粧料の安定性を高めることができるため、有機溶媒に起因する皮膚への刺激が低減された化粧料を得ることができる。このように、安定性に優れ、皮膚への刺激も低減された化粧料を得ることができる。また、混合工程S1及び封入工程S2が脱酸素雰囲気下において実行されることにより、アスコルビン酸類と酸素との接触をより低減することができるため、アスコルビン酸類の酸化分解をより抑制することができ、安定性がより高められた化粧料を得ることができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0065】
[超純水の製造]
超純水製造装置(Milli-Q EQ7000、メルク株式会社ライフサイエンス製)によって超純水(電気伝導率:0.054μS/cm、溶存酸素量:0~5mg/L)を得た。得られた超純水を、以下の実施例1~16において使用した。
【0066】
[使用容器]
容器として、エアレス容器(ハクリボトル、キョーラク株式会社製)を用いた。
【0067】
[実施例1、比較例1]:超純水と精製水との比較
下記表1に示す配合に従い、非脱酸素雰囲気下において(脱酸素雰囲気下とすることなく)、混合容器にアスコルビン酸と超純水とを添加して混合した後、得られた混合物をエアレス容器に封入することにより、実施例1の化粧料を得た。一方、超純水に代えて通常の精製水(電気伝導率:0.300μS/cm)を使用すること以外は実施例1と同様にして、比較例1の化粧料を得た。
【0068】
実施例1及び比較例1の化粧料を42℃の恒温槽に保管し、2ヶ月経過後、各アスコルビン酸の濃度を測定し、保管前のアスコルビン酸の濃度に対する保管後のアスコルビン酸の濃度の比率(百分率)を、アスコルビン酸の残存率として算出した。結果を表1に示す。
【0069】
【0070】
精製水を使用した比較例1の化粧料は、アスコルビン酸の残存率が93.0%であるのに対し、超純水を使用した実施例1の化粧料は、アスコルビン酸の残存率が95.3%であった。これら実施例1及び比較例1の比較より、超純水を使用することにより、アスコルビン酸の酸化分解(劣化)を抑制し得る(遅らせ得る)ことが示された。
【0071】
[実施例2、3]:窒素置換処理の有無の比較
上述した混合工程S1及び混合工程S2と同様に、窒素ガス精製ユニット(CKD株式会社製)及びマイクロバルブジェネレーター(株式会社ニクニ製)を使用して窒素置換処理を実行することにより、脱酸素雰囲気下に設定した。かかる脱酸素雰囲下において、表2に示す配合に従い、混合容器に超純水とアスコルビン酸とを添加して混合した後、得られた混合物をエアレス容器に封入することにより、実施例2の化粧料を得た。各窒素置換処理は、使用する超純水の溶存酸素量が0.5mg/L以下となり、エアレス容器に封入後の化粧料の溶存酸素量が0.5mg/L以下となるように実行した。溶存酸素量は、溶存酸素計(DOメーター ID-160T、飯島電子工業株式会社製)によって測定した。一方、アスコルビン酸、超純水、及び空のエアレス容器に対しても、混合工程及び封入工程においても、窒素置換処理を一切行わないこと以外は実施例2と同様にして、実施例3の化粧料を得た。
【0072】
実施例2及び3の化粧料を42℃の恒温槽に保管し、1ヶ月経過後、各アスコルビン酸の濃度を測定し、保管前のアスコルビン酸の濃度に対する保管後のアスコルビン酸の濃度の比率(百分率)を、アスコルビン酸の残存率として算出した。結果を表2に示す。
【0073】
【0074】
窒素置換処理されていない実施例3の化粧料は、アスコルビン酸の残存率が96.6%であるのに対し、窒素置換処理された実施例2の化粧料は、アスコルビン酸の残存率が98.4%であった。これら実施例2及び3の比較より、窒素置換処理を実行する(脱酸素雰囲気下とする)ことにより、アスコルビン酸の酸化分解をより抑制し得ることが示された。また、超純水の溶存酸素量を0~5mg/mLに設定し、化粧料の溶存酸素量を0.5mg/L以下に設定することにより、アスコルビン酸の酸化分解をより抑制し得ることも示された。肉眼で観察したところ、実施例3の化粧料は、実施例2の化粧料と比較して、経時的に着色される傾向にあることが判明した。
【0075】
[実施例4~8]:化粧料のpHに関する検討
pH調整剤として水酸化ナトリウムを使用し、表3に示す処方に従い、非脱酸素雰囲気下において(脱酸素雰囲気下とすることなく)、混合容器にアスコルビン酸と超純水の大部分とを添加して混合した後、水酸化ナトリウムを微量添加してpHを3.0に調整し(すなわち、最終的な化粧料としてのpHが3.0となるように水酸化ナトリウムを添加し)、さらに全量が100w/v%となるように残りの超純水を添加し、混合することにより、混合物を得た。得られた混合物をエアレス容器に封入することにより、実施例4の化粧料を得た。水酸化ナトリウムの添加量を化粧料のpHが夫々4.0、5.0、6.0、7.0になるように調整すること以外は実施例4と同様にして、実施例5~8の化粧料を得た。
【0076】
実施例4~8の化粧料を42℃の恒温槽に保管し、1ヶ月経過後、各アスコルビン酸の濃度を測定し、保管前のアスコルビン酸の濃度に対する保管後のアスコルビン酸の濃度の比率(百分率)を、アスコルビン酸の残存率として算出した。結果を表3に示す。
【0077】
【0078】
pHが3.0である実施例4の化粧料は、アスコルビン酸の残存率が90.4%であり、pHが4.0である実施例5の化粧料は、アスコルビン酸の残存率が86.7%であるのに対し、pHが5.0である実施例6の化粧料は、アスコルビン酸の残存率が95.5%であり、pHが6.0である実施例7の化粧料は、アスコルビン酸の残存率が95.5%であり、pHが7.0である実施例8の化粧料は、アスコルビン酸の残存率が98.6%であった。これら実施例4~8の比較より、pHを5.0~7.0に調整することにより、アスコルビン酸の酸化分解をより抑制し得ることが示された。
【0079】
なお、実施例4~8の化粧料において、超純水に代えて精製水を使用した場合には、上記表2に示すように、超純水を使用した場合よりもアスコルビン酸の残存率が低くなることは、合理的に推察される。
【0080】
[実施例9~16]:酸化防止剤に関する検討
表4に示す配合に従い、pH調整剤として水酸化ナトリウムを使用し、非脱酸素雰囲気下において(脱酸素雰囲気下とすることなく)、混合容器にアスコルビン酸と超純水の大部分とを添加して混合した後、水酸化ナトリウムを微量添加してpHを6.2に調整し(すなわち、最終的な化粧料としてのpHが6.2となるように水酸化ナトリウムを添加し)、さらに全量が100w/v%となるように残りの超純水を添加し、混合することにより、混合物を得た。得られた混合物をエアレス容器に封入することにより、実施例9の化粧料を得た。表4に示す配合に従い、アスコルビン酸の酸化防止剤としてグルタチオンを添加すること以外は実施例9と同様にして、実施例10~12の化粧料を得た。
【0081】
表5に示す配合に従い、実施例9と同様にして、実施例13の化粧料を得た。表5に示す配合に従い、酸化防止剤としてピロ亜硫酸ナトリウムを添加すること以外は実施例13と同様にして、実施例14~16の化粧料を得た。
【0082】
実施例9~16の化粧料を42℃の恒温槽に保管し、2ヶ月経過後、各アスコルビン酸の濃度を測定し、保管前のアスコルビン酸の濃度に対する保管後のアスコルビン酸の濃度の比率(百分率)を、アスコルビン酸の残存率として算出した。また、実施例9~16の化粧料について、42℃での保管前後にて、色差計(分光色差計SE6000、日本電色工業株式会社製)によってL*、a*、b*を測定し、保管前後の測定値の差ΔL*、Δa*、Δb*を算出し、下記式(1)を用いて色差ΔE76(国際照明委員会(CIE)によって1976年に制定された色差式による色差)を算出した。色差ΔE76の数値が小さい程、化粧料の経時的な変色が少ないことを示す。結果を表4及び5に示す。
ΔE76 = {(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2}1/2 ・・・(1)
【0083】
【0084】
【0085】
グルタチオンが配合されていない実施例9の化粧料は、アスコルビン酸の残存率が94.8%であるのに対し、グルタチオンが0.05w/v%配合された実施例10の化粧料は、アスコルビン酸の残存率が95.9%であり、グルタチオンが0.10w/v%配合された実施例11の化粧料は、アスコルビン酸の残存率が97.6%であり、グルタチオンが0.30w/v%配合された実施例12の化粧料は、アスコルビン酸の残存率が99.9%であった。これら実施例9~12の比較より、グルタチオンを配合することにより、化粧料の安定性をより高めることができ、また、グルタチオンの配合量が大きくなる程、化粧料の安定性をより高め得ることが示された。
【0086】
グルタチオンが配合されていない実施例9の化粧料は、色差ΔE76が36.1であるのに対し、グルタチオンが0.05w/v%配合された実施例10の化粧料は、色差ΔE76が37.8であり、グルタチオンが0.10w/v%配合された実施例11の化粧料は、色差ΔE76が28.6であり、グルタチオンが0.30w/v%配合された実施例12の化粧料は、色差ΔE76が20.9であった。これら実施例9~12の比較より、グルタチオンを配合することにより、化粧料の色における安定性をより高めることができ、また、グルタチオンの配合量が大きくなる程、化粧料の色における安定性をより高める得ることが示された。
【0087】
ピロ亜硫酸ナトリウムが配合されていない実施例13の化粧料は、アスコルビン酸の残存率が96.1%であるのに対し、ピロ亜硫酸ナトリウムが0.05w/v%配合された実施例14の化粧料は、アスコルビン酸の残存率が97.6%であり、ピロ亜硫酸ナトリウムが0.10w/v%配合された実施例15の化粧料は、アスコルビン酸の残存率が97.1%であり、ピロ亜硫酸ナトリウムが0.20w/v%配合された実施例16の化粧料は、アスコルビン酸の残存率が95.8%であった。これら実施例13~16の比較より、ピロ亜硫酸ナトリウムを配合することにより、化粧料の安定性をより高めることができ、また、ピロ亜硫酸ナトリウムの配合量が0.05~0.10w/v%であると、化粧料の安定性をより高める得ることが示された。
【0088】
ピロ亜硫酸ナトリウムが配合されていない実施例13の化粧料は、色差ΔE76が35.6であるのに対し、ピロ亜硫酸ナトリウムが0.05w/v%配合された実施例14の化粧料は、色差ΔE76が23.2であり、ピロ亜硫酸ナトリウムが0.10w/v%配合された実施例15の化粧料は、色差ΔE76が22.8であり、ピロ亜硫酸ナトリウムが0.20w/v%配合された実施例16の化粧料は、色差ΔE76が19.8であった。これら実施例13~16の比較より、ピロ亜硫酸ナトリウムを配合することにより、化粧料の色における安定性をより高めることができ、また、ピロ亜硫酸ナトリウムの配合量が大きくなる程、化粧料の外観色における安定性をより高め得ることが示された。
【0089】
上記実施例1~16及び比較例1の比較より、アスコルビン酸類に超純水を併用することにより、アスコルビン酸類の酸化分解を抑制することができるため、当該化粧料の安定性を高め得ることが示された。また、有機溶媒を併用しなくても、あるいは有機溶媒を併用する場合であっても比較的少量で化粧料の安定性を高めることができるため、有機溶媒に起因する皮膚への刺激を低減し得ることが示された。
【0090】
アスコルビン酸類の含有量が1w/v%以上であっても、超純水を併用することにより、アスコルビン酸類の酸化分解を抑制し、化粧料の安定性を高める得ることが示された。超純水の溶存酸素量を0~5mg/Lに設定することにより、アスコルビン酸類の酸化分解をより抑制することができるため、安定性がより高められた化粧料となることが示された。アスコルビン酸類に超純水を併用することにより、pHを5.0~7.0と比較的高く設定しても、アスコルビン酸類の酸化分解を抑制することができるため、安定性が高められた化粧料となり、また、pHを上記範囲に設定することにより、皮膚への刺激がより低減された化粧料となることが示された。化粧料が酸化防止剤をさらに含むことにより、アスコルビン酸類の酸化分解をより抑制することができるため、安定性がより高められた化粧料となることが示された。
【0091】
アスコルビン酸及び/又はその塩と、超純水とを混合する混合工程と、混合工程により得られた混合物を容器に封入する封入工程とを実行することにより、安定性に優れ、皮膚への刺激も低減された化粧料が得られることが示された。混合工程及び封入工程が脱酸素雰囲気下において実行されることにより、アスコルビン酸類の酸化分解をより抑制することができるため、安定性がより高められた化粧料が得られることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の化粧料及び化粧料の製造方法は、安定性に優れるとともに、皮膚に対する刺激が低減された化粧料とすることができるため、アスコルビン酸類の効果を発揮させることを目的として利用することが可能である。
【要約】
【課題】安定性に優れ、皮膚への刺激も低減されたアスコルビン酸及び/又はその塩を含有する化粧料を提供する。
【解決手段】アスコルビン酸及び/又はその塩と、超純水とを含む化粧料。化粧料は、アスコルビン酸及び/又はその塩を1w/v%以上含むことが好ましく、超純水は、溶存酸素量が0~5mg/Lであることが好ましく、超純水を65w/v%以上含むことが好ましく、pHを5.0~7.0に調整してあることが好ましく、酸化防止剤をさらに含むことが好ましい。
【選択図】なし