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  • 特許-光学ガラスレンズ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】光学ガラスレンズ
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/093 20060101AFI20231207BHJP
   C03C 3/089 20060101ALI20231207BHJP
   C03C 3/091 20060101ALI20231207BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20231207BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
C03C3/093
C03C3/089
C03C3/091
G02B1/00
G02B3/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017218044
(22)【出願日】2017-11-13
(65)【公開番号】P2018118900
(43)【公開日】2018-08-02
【審査請求日】2020-10-02
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2017010896
(32)【優先日】2017-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】俣野 高宏
(72)【発明者】
【氏名】高山 佳久
【合議体】
【審判長】宮澤 尚之
【審判官】立木 林
【審判官】後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-37651(JP,A)
【文献】特開平5-193979(JP,A)
【文献】国際公開第2008/007504(WO,A1)
【文献】特開2005-225707(JP,A)
【文献】特開平8-337432(JP,A)
【文献】特開平2-74536(JP,A)
【文献】特開平6-107426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、SiO 50~70%、B 1~18%、Al 3.8~15%、ZnO 0~16%、CaO 0.1~10%、LiO 0~2.6%、Na O 5.7~18%、NaO+K5.7~18%、Sb 0~1%、SnO 0~1%、ZrO 0~5%、La 0~5%、Gd 0~5%、SiO +B +Al 66~85%、ZnO+CaO 0.1~20%、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO 5.8~25%を含有し、
MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO/(Li O+Na O+K O)が0.2~4であり、
屈折率(nd)が1.48~1.55であり、JOGISに基づく耐水性が2級以上であることを特徴とする光学ガラスレンズ。
【請求項2】
さらに、質量%で、BaO 0~15%、SrO 0~15%、MgO 0~15%、BaO+SrO+MgO 0~20%を含有することを特徴とする請求項1に記載の光学ガラスレンズ。
【請求項3】
質量%で、K O 0~5%を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の光学ガラスレンズ。
【請求項4】
質量%で、Li O+Na O+K O 8.6~18%を含有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の光学ガラスレンズ。
【請求項5】
屈折率(n1310)が1.46~1.53であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の光学ガラスレンズ。
【請求項6】
液相粘度が105.0dPa・s以上であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の光学ガラスレンズ。
【請求項7】
研磨痕を有することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の光学ガラスレンズ。
【請求項8】
プレス成型用であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の光学ガラスレンズ。
【請求項9】
円筒形状の側壁部と、側壁部の先端に設けられ且つその中心部にレンズ保持孔を有する端壁部とから構成された金属製シェルと、金属製シェルのレンズ保持孔に封着固定された請求項1~のいずれかに記載の光学ガラスレンズと、金属製のシェルのレンズ保持孔に光学ガラスレンズを固定する封着材料とを備えていることを特徴とするレンズキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学ガラスレンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
CD、MD、DVDその他各種光ディスクシステムの光ピックアップレンズ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、カメラ付き携帯電話機等の撮像用レンズ、光通信に使用される送受信用レンズ等の用途では、屈折率ndが1.48~1.55の中屈折率レンズが必要である。
【0003】
特許文献1には中屈折率を有するガラス組成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-201037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているガラス組成は、耐水性、耐薬品性、耐熱性等の耐久性が低いという問題がある。
【0006】
本発明の目的は上記課題に鑑み、耐久性に優れた中屈折率(具体的には屈折率ndが1.48~1.55)の光学ガラスレンズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光学ガラスレンズは、質量%で、SiO 50~70%、B 1~18%、Al 0~15%、ZnO 0~20%、CaO 0.1~10%、NaO+KO 0.1~18%、Sb 0~1%、SnO 0~1%を含有することを特徴とする。光学ガラスの耐久性(耐水性、耐薬品性、耐熱性等)には、Bとアルカリ成分の含有量が影響を与える。本発明ではBとアルカリ成分の含有量を各々18質量%以下に規制することにより優れた耐久性を達成している。
【0008】
本発明の光学ガラスレンズは、さらに、質量%で、BaO 0~15%、SrO 0~15%、MgO 0~15%、BaO+SrO+MgO 0~20%を含有することが好ましい。ここで、「BaO+SrO+MgO」とは、BaO、SrO及びMgOの含有量の合量を意味する。
【0009】
本発明の光学ガラスレンズは、質量%で、NaO 0.1~18%、KO 0~5%を含有することが好ましい。
【0010】
本発明の光学ガラスレンズは、さらに、質量%で、ZnO+CaO 0.1~30%を含有することが好ましい。ここで、「ZnO+CaO」とは、ZnO及びCaOの含有量の合量を意味する。
【0011】
本発明の光学ガラスレンズは、質量%で、ZrO 0~5%、La 0~10%、Gd 0~15%を含有することが好ましい。
【0012】
本発明の光学ガラスレンズは、屈折率(nd)が1.48~1.55であることが好ましい。なお、「nd」は、d線における屈折率である。
【0013】
本発明の光学ガラスレンズは、屈折率(n1310)が1.46~1.53であることが好ましい。なお、「n1310」は、1310nmにおける屈折率である。
【0014】
本発明の光学ガラスレンズは、JOGISに基づく耐水性が2級以上であることが好ましい。
【0015】
本発明の光学ガラスレンズは、液相粘度が105.0dPa・s以上であることが好ましい。
【0016】
本発明の光学ガラスレンズは、研磨痕を有していてもよい。
【0017】
本発明の光学ガラスレンズは、プレス成型用であることが好ましい。
【0018】
本発明のレンズキャップは、円筒形状の側壁部と、側壁部の先端に設けられ且つその中心部にレンズ保持孔を有する端壁部とから構成された金属製シェルと、金属製シェルのレンズ保持孔に封着固定された上記の光学ガラスレンズと、金属製のシェルのレンズ保持孔に上記の光学ガラスレンズを固定する封着材料とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、耐久性に優れた中屈折率(具体的には屈折率ndが1.48~1.55)の光学ガラスレンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】レンズキャップの構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の光学ガラスレンズは、質量%で、SiO 50~70%、B 1~18%、Al 0~15%、ZnO 0~20%、CaO 0.1~10%、NaO+KO 0.1~18%、Sb 0~1%、SnO 0~1%を含有する。以下に、各成分の含有量を上記のように特定した理由を詳述する。なお、特に断りが無い場合、以下の「%」は「質量%」を意味する。
【0022】
SiOは、屈折率を低下させ、また液相粘度を高くし、さらに耐久性を向上させる効果がある。SiOの含有量は50~70%であり、52~68%、54~66%、特に56~64%であることが好ましい。SiOの含有量が少なすぎると、屈折率を低下させることが困難になる。一方、SiOの含有量が多すぎると、ガラスの溶解性が悪化したり、SiOを含む失透物が析出しやすくなる。
【0023】
は屈折率を低下させ、また液相粘度を高くし、さらに耐久性を向上させる効果がある。Bの含有量は1~18%であり、2~16%、4~14%、特に6~12%であることが好ましい。Bの含有量が少なすぎると、屈折率を低下させることが困難になる。一方、Bの含有量が多すぎると、耐久性が悪化したり、成形時に蒸発しやすいため脈理が発生しやすくなる。
【0024】
Alは、屈折率を低下させ、また液相粘度を高くし、さらに耐久性を向上させる効果がある。Alの含有量は0~15%であり、1~13%、2~11%、特に3~9%であることが好ましい。一方、Alの含有量が多すぎると、ガラスの溶解性が悪化したり、Alを含む失透物が析出しやすくなる。
【0025】
なお、SiO+B+Alの含有量は、60~85%、62~83%、64~81%、特に66~79%であることが好ましい。SiO+B+Alの含有量が少なすぎると、屈折率を低下させることが困難になる。一方、SiO+B+Alの含有量が多すぎると、ガラスの溶解性が悪化しやすくなる。ここで、「SiO+B+Al」とは、SiO、B及びAlの含有量の合量を意味する。
【0026】
CaOは、耐久性を維持しながら、ガラスの高温粘性を低下させる効果がある。CaOの含有量は0.1~10%であり、1~9%、2~7%、特に3~6%であることが好ましい。CaOの含有量が少なすぎると、上記効果が得られにくくなる。一方、CaOの含有量が多すぎると、耐久性が悪化したり、CaOを含む失透物が析出しやすくなる。
【0027】
SiO/CaOは、8~400、10~100、特に15~70であることが好ましい。SiO/CaOが小さすぎると、CaOを含む失透物が析出しやすくなる。一方、SiO/CaOが大きすぎると、SiOを含む失透物が析出しやすくなる。ここで、「SiO/CaO」とは、SiOの含有量をCaOの含有量で除した値を指す。
【0028】
なお、SiO+CaOの含有量は、51~70%、53~68%、特に55~66%であることが好ましい。SiO+CaOの含有量が少なすぎると、屈折率を低下させることが困難になる。一方、SiO+CaOの含有量が多すぎると、ガラスの溶解性が悪化しやすくなる。ここで、「SiO+CaO」とは、SiO及びCaOの含有量の合量を意味する。
【0029】
ZnOは、耐久性を維持しながら、ガラスの高温粘性を低下させる効果がある。ZnOの含有量は0~20%であり、1~18%、2~16%、特に3~14%であることが好ましい。ZnOの含有量が多すぎると、耐久性が悪化しやすくなる。
【0030】
なお、Al+ZnOの含有量は、2~30%、5~25%、特に8~20%であることが好ましい。Al+ZnOの含有量が少なすぎると、耐久性が悪化しやすくなる。一方、Al+ZnOの含有量が多すぎると、ガラスの溶解性が悪化しやすくなる。ここで、「Al+ZnO」とは、Al及びZnOの含有量の合量を意味する。
【0031】
また、ZnO+CaOの含有量は、0.1~30%、2~25%、4~20%、特に6~15%であることが好ましい。ZnO+CaOの含有量が少なすぎても、多すぎても、耐久性が悪化しやすくなる。
【0032】
(SiO+CaO)/(Al+ZnO)は、1~20、2~15、3~10、特に5~8であることが好ましい。(SiO+CaO)/(Al+ZnO)が小さすぎると、耐久性が悪化しやすくなる。一方、(SiO+CaO)/(Al+ZnO)が大きすぎると、SiO及び/またはCaOを含む失透物が析出しやすくなる。ここで、「(SiO+CaO)/(Al+ZnO)」とは、SiO及びCaOの含有量の合量をAl及びZnOの含有量の合量で除した値を指す。
【0033】
NaO及びKOは、ガラスの高温粘性を低下し、液相粘度を高くする効果がある。NaO+KOの含有量は、0.1~18%であり、1~16%、2~14%、特に3~12%であることが好ましい。NaO+KOの含有量が少なすぎると、上記効果が得られにくくなる。一方、NaO+KOの含有量が多すぎると、耐久性が悪化しやすくなる。
【0034】
なお、NaOの含有量の好ましい範囲は、0.1~18%、1~16%、2~14%、3~12%であり、KOの含有量の好ましい範囲は、0~5%、0~4%、0~3%、0.1~2%である。
【0035】
Sbは脱泡の効果があり、またPtイオン(不純物としてガラス中に数ppm混入)による着色を抑える効果がある。Sbの含有量は、0~1%であり、0~0.09%、特に0~0.08%であることが好ましい。Sbは強い酸化力を有するため、Sbの含有量が多すぎると、溶融容器に使用するPtやRhといった金属を酸化し、量産性が低下しやすくなる。
【0036】
SnOは脱泡の効果がある。SnOの含有量は、0~1%であり、0~0.09%、特に0~0.08%であることが好ましい。SnOの含有量が多すぎると、失透しやすくなる。
【0037】
上記成分以外にも、以下に示す種々の成分を含有させることができる。
【0038】
BaOは、耐久性を維持しながら、ガラスの高温粘性を低下させる効果がある。BaOの含有量は0~15%、1~13%、2~11%、特に3~9%であることが好ましい。BaOの含有量が多すぎると、耐久性が悪化しやすくなる。
【0039】
SrOは、耐久性を維持しながら、ガラスの高温粘性を低下させる効果がある。SrOの含有量は0~15%、1~13%、2~11%、特に3~9%であることが好ましい。SrOの含有量が多すぎると、耐久性が悪化しやすくなる。
【0040】
MgOは、耐久性を維持しながら、ガラスの高温粘性を低下させる効果がある。MgOの含有量は0~15%、1~13%、2~11%、特に3~9%であることが好ましい。MgOの含有量が多すぎると、耐久性が悪化しやすくなる。
【0041】
なお、BaO+SrO+MgOの含有量は、0~20%、2~18%、4~16%、特に6~14%であることが好ましい。BaO+SrO+MgOの含有量が多すぎると、耐久性が悪化しやすくなる。
【0042】
また、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnOの含有量は、0.1~25%、1~23%、特に2~21%であることが好ましい。MgO+CaO+SrO+BaO+ZnOの含有量が少なすぎても、多すぎても、耐久性が悪化しやすくなる。ここで、「MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO」とは、MgO、CaO、SrO、BaO及びZnOの含有量の合量を意味する。
【0043】
ZrOは、屈折率を高める効果があり、また耐久性を向上させる効果がある。ZrOの含有量は、0~5%、0~4%、特に0.1~3%であることが好ましい。ZrOの含有量が多すぎると、失透しやすくなる。
【0044】
Laは、屈折率を高める効果があり、また耐久性を向上させる効果がある。Laの含有量は、0~5%、0~4%、特に0.1~3%であることが好ましい。Laの含有量が多すぎると、失透しやすくなる。
【0045】
Gdは、屈折率を高める効果があり、また耐久性を向上させる効果がある。Gdの含有量は、0~5%、0~4%、特に0.1~3%であることが好ましい。Gdの含有量が多すぎると、失透しやすくなる。
【0046】
LiOは、ガラスの高温粘性を低下させ、液相粘度を高くする効果がある。LiOの含有量は、0~10%、0.1~10%、1~8%、2~6%、特に3~5%であることが好ましい。LiOの含有量が多すぎると、耐久性が悪化しやすくなる。
【0047】
なお、LiO+NaO+KOの含有量は、0.1~20%、1~18%、特に3~16%であることが好ましい。LiO+NaO+KOの含有量が少なすぎると、ガラスの溶解性が悪化しやすくなる。一方、LiO+NaO+KOの含有量が多すぎると、耐久性が悪化しやすくなる。ここで、「LiO+NaO+KO」とは、LiO、NaO及びKOの含有量の合量を意味する。
【0048】
(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)/(LiO+NaO+KO)は、0.2~4、0.3~3.5、特に0.4~3であることが好ましい。(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)/(LiO+NaO+KO)が小さすぎても、大きすぎても、耐久性が悪化しやすくなる。ここで、「(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)/(LiO+NaO+KO)」とは、MgO、CaO、SrO、BaO及びZnOの含有量の合量をLiO、NaO及びKOの含有量の合量で除した値を指す。
【0049】
なお清澄剤として広く知られているAsは有害であるので、実質的に含有しないことが好ましい。またF成分は環境に悪影響を及ぼすおそれがあることから実質的に含有しないことが好ましい。ここで「実質的に含有しない」とは、これらの成分を意図的にガラス中に添加しないという意味であり、不可避的不純物まで完全に排除するということを意味するものではない。より客観的には、不純物を含めたこれらの成分の含有量が、Asで0.00001%以下、Fで0.01%以下であるということを意味する。
【0050】
また、Cu、Ag、Pr,Brはガラスを着色させる成分であることから、含有しないことが好ましい。Cdは環境に対する影響を考慮し、含有しないことが好ましい。
【0051】
以上の組成を有する光学ガラスレンズは、屈折率ndが1.48~1.55、1.50~1.53、特に1.51~1.52になりやすく、1310nmにおける屈折率が1.46~1.53、1.47~1.52、特に1.48~1.51になりやすい。
【0052】
本発明の光学ガラスレンズは、反射防止膜を設けてもよい。ただし、上記のように屈折率が低い場合は、反射防止膜を設けなくても構わない。
【0053】
以上の組成を有する光学ガラスレンズは、JOGISに基づく耐水性が2級以上になりやすく、さらに液相粘度が、105.0dPa・s以上になりやすい。
【0054】
本発明の光学ガラスレンズは、30~300℃の範囲における熱膨張係数が50×10-7/℃~85×10-7/℃、55×10-7/℃~80×10-7/℃、特に60×10-7/℃~75×10-7/℃であることが好ましい。熱膨張係数が小さすぎても大きすぎても、レンズキャップの構成部材として光学ガラスレンズを使用した際に、光学ガラスレンズと金属製シェルとの熱膨張係数差が大きくなり、レンズキャップを作製する際に光学ガラスレンズが破損しやすくなる。
【0055】
本発明の光学ガラスレンズは、屈伏点が640℃以下、630℃以下、特に620℃以下であることが好ましい。屈伏点が高すぎると、後述するプレス成型の際に加熱温度が高くなり、金型が破損しやすくなる。なお、屈伏点の下限は特に限定されないが、現実的には500℃以上である。
【0056】
次に、本発明の光学ガラスレンズを製造する方法を述べる。
【0057】
まず、所望の組成になるようにガラス原料を調合した後、ガラス溶融炉で溶融する。ガラスの溶融温度は1150℃以上、1200℃以上、特に1250℃以上であることが好ましい。なお溶融容器を構成する白金金属からのPt溶け込みによるガラス着色を防止する観点から、溶融温度は1450℃以下、1400℃以下、1350℃以下、特に1300℃以下であることが好ましい。
【0058】
また溶融時間が短すぎると、十分に脱泡できない可能性があるので、溶融時間は2時間以上、特に3時間以上であることが好ましい。ただし溶融容器からのPt溶け込みによるガラス着色を防止する観点から、溶融時間は8時間以内、特に5時間以内であることが好ましい。
【0059】
次に、溶融ガラスをノズルの先端から滴下して一旦液滴状ガラスを作製する。または溶融ガラスを急冷鋳造して一旦ガラスブロックを作製する。その後、研削、研磨、洗浄して光学ガラスレンズを得る。なお、作製したガラスブロックを加熱延伸成形した後に研削、研磨、洗浄しても構わない。加熱延伸成形することにより、ガラス表面が滑らかな火造り面となるため、研削、研磨工程の時間を短くすることができる。
【0060】
本発明の光学ガラスレンズは、研磨されるため、研磨痕を有しやすい。また、耐久性が良好であるため、研削、研磨、洗浄を施しても、ヤケが発生しにくい。
【0061】
続いて、精密加工を施した金型中に光学ガラスレンズを投入して軟化状態となるまで加熱しながらプレス成型し、金型の表面形状を光学ガラスレンズに転写させても構わない。このようにすれば、両凸形状(例えば球状)、平凸形状、メニスカス形状等にすることが可能である。
【0062】
なお、本発明の光学ガラスレンズを板状基板上に形成することによりレンズアレイとして使用することができる。また、本発明の光学ガラスレンズをプリズム上に形成することにより、プリズムとレンズの性能を兼ね備えることができる。
【0063】
次に、本発明の光学ガラスレンズを用いたレンズキャップの実施形態について説明する。
【0064】
図1は、レンズキャップの構成を示す説明図である。
【0065】
レンズキャップ1は、円筒形状の側壁部2と、側壁部2の先端に設けられ且つその中心部にレンズ保持孔を有する端壁部3とから構成された金属製シェル4と、金属製シェル4のレンズ保持孔に封着材料5で封着された光学ガラスレンズ6とを備えている。
【0066】
なお、金属製シェル4の材質としては、ハステロイ(登録商標)、インコネル(登録商標)、SUS等を使用することができる。また、封着材料5としては、低融点ガラス、接着剤、はんだ等を使用することができる。
【実施例
【0067】
以下、本発明の光学ガラスレンズを実施例に基づいて詳細に説明する。
【0068】
表1及び2は本発明の実施例(試料No.1~15)及び比較例(試料No.16)を示している。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
各試料は、次のようにして作製した。
【0071】
まず、表1及び2に記載の組成となるように調合したガラス原料を白金ルツボに入れ、1300℃でそれぞれ2時間溶融した。次に、溶融ガラスをカーボン板上に流し出し、冷却固化した後、アニールを行ってガラスブロックを作製した。その後、研削、研磨、洗浄して光学ガラスレンズを得た。このようにして得られた試料について、各種特性を評価した。結果を各表に示す。
【0072】
屈折率ndは、屈折率計を用いて、d線(波長:587.6nm)における測定値で示した。
【0073】
屈折率n1310は、屈折率計を用いて、1310nmにおける測定値で示した。
【0074】
30~300℃における熱膨張係数、屈伏点は、熱膨張測定装置(dilato meter)にて測定した。
【0075】
耐水性は、JOGISに定める粉末法に基づき測定した。
【0076】
液相粘度は、白金球引き上げ法にて測定した。
【0077】
表から明らかなように、本発明の実施例であるNo.1~15の各試料は、屈折率ndが1.501~1.528、屈折率n1310が1.486~1.513、熱膨張係数が64×10-7/℃~80×10-7/℃、屈伏点が536~624℃であった。またJOGIS耐水性(粉末法)は1~2級であり、液相粘度は105.0~106.5dPa・sであった。これに対して比較例であるNo.16の試料は、JOGIS耐水性(粉末法)は3級であり、液相粘度が104.3dPa・sであり、量産性に劣ることが分かった。
【符号の説明】
【0078】
1 レンズキャップ
2 側壁部
3 端壁部
4 金属製シェル
5 封着材料
6 光学ガラスレンズ
図1