(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】インダクタの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 41/04 20060101AFI20231207BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20231207BHJP
H01F 27/255 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
H01F41/04 C
H01F17/04 F
H01F27/255
(21)【出願番号】P 2019044775
(22)【出願日】2019-03-12
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】奥村 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】古川 佳宏
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-165363(JP,A)
【文献】特開2009-009985(JP,A)
【文献】実開昭48-088475(JP,U)
【文献】特開2014-183193(JP,A)
【文献】特開平11-040979(JP,A)
【文献】国際公開第2015/119004(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/075110(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-19/08、27/24-27/255
H01F 27/28、37/00、41/02
H01B 7/00-7/02、11/06-11/10、13/00
H01B 13/06-13/26
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導線と、前記導線を被覆する絶縁層とを備え、断面視略円形状を有する配線を、基板の厚み方向一方面に配置する第1工程と、
前記配線と、第1の磁性粒子
および前記第1の磁性粒子を分散させる第1のバインダを含有する第1磁性シート
とを、
離型クッションシートを介する熱プレスをすることによって、前記第1磁性シートが前記配線の円周面において断面視で180°を超過する領域を被覆するように、
前記第1磁性シートを前記基板の厚み方向一方面に配置する第2工程と、
第4工程前に、前記離型クッションシートを、前記第1磁性シートの厚み方向一方面から剥離する工程と、
面方向に配向する第2の異方性磁性粒子を含む第2の磁性粒子と、前記第2の磁性粒子を分散させる第2のバインダとを含有する第2磁性シートによって、前記円周面の前記領域および前記基板の前記一方面を被覆する前記第1磁性シートの厚み方向一方面を被覆する第4工程とを備えることを特徴とする、インダクタの製造方法。
【請求項2】
前記第1の磁性粒子が、前記第1磁性シートにおいて面方向に配向する第1の異方性磁性粒子を含むことを特徴とする、請求項1に記載のインダクタの製造方法。
【請求項3】
前記基板は、離型シートであり、
前記基板を除去する第3工程と、
第3の磁性粒子と、前記第3の磁性粒子を分散させる第3のバインダとを含有する第3磁性シートを、前記第1磁性シートの厚み方向他方面から露出する前記円周面を被覆するように、前記第1磁性シートの厚み方向他方面に配置する第5工程とをさらに備えることを特徴とする、請求項1または2に記載のインダクタの製造方法。
【請求項4】
前記第3の磁性粒子が、前記第3磁性シートにおいて面方向に配向する第3の異方性磁性粒子を含むことを特徴とする、請求項3に記載のインダクタの製造方法。
【請求項5】
前記第1工程と、前記第2工程と、前記第3工程とを順に実施し、次いで、前記第4工程および前記第5工程を同時に実施することを特徴とする、請求項3または4に記載のインダクタの製造方法。
【請求項6】
前記第2工程における前記第1のバインダおよび前記第5工程における前記第3のバインダがBステージの熱硬化性成分を含有しており、
さらに、前記第1のバインダおよび前記第3のバインダの前記Bステージの熱硬化性成分を同時にCステージ化する第6工程をさらに備えることを特徴とする、請求項3~5のいずれか一項に記載のインダクタの製造方法。
【請求項7】
前記基板が、第3の磁性粒子と、前記第3の磁性粒子を分散させる第3のバインダとを含有する第3磁性シートであり、
前記第3のバインダが、熱硬化性成分の硬化物を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載のインダクタの製造方法。
【請求項8】
前記第3の磁性粒子が、前記第3磁性シートにおいて面方向に配向する第3の異方性磁性粒子を含むことを特徴とする、請求項7に記載のインダクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インダクタは、電子機器などに搭載されて、電圧変換部材などの受動素子として用いられることが知られている。
【0003】
例えば、磁性体材料からなる直方体状のチップ本体部と、そのチップ本体部の内部に埋設された銅などの内部導体とを備えるインダクタが提案されている(特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1では、導体ペーストからなる導体層を印刷で複数積層して、インダクタを製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、近年、インダクタには、より一層高いインダクタンスが要求される。
【0007】
本発明は、インダクタンスに優れるインダクタを製造することができる製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(1)は、導線と、前記導線を被覆する絶縁層とを備え、断面視略円形状を有する配線を、基板の厚み方向一方面に配置する第1工程と、第1の磁性粒子と、前記第1の磁性粒子を分散させる第1のバインダとを含有する第1磁性シートを、前記配線の円周面において断面視で180°を超過する領域を被覆するように、前記基板の厚み方向一方面に配置する第2工程と、面方向に配向する第2の異方性磁性粒子を含む第2の磁性粒子と、前記第2の磁性粒子を分散させる第2のバインダとを含有する第2磁性シートによって、前記円周面の前記領域および前記基板の前記一方面を被覆する前記第1磁性シートの厚み方向一方面を被覆する第4工程とを備える、インダクタの製造方法を含む。
【0009】
この方法では、第2工程で、第1磁性シートを、配線の円周面において断面視で180°を超過する領域を被覆するように、基板の厚み方向一方面に配置するので、第1の磁性粒子を密に配置することができる。その結果、インダクタンスに優れるインダクタを製造することができる。
【0010】
さらに、第4工程で、第2磁性シートが、第1磁性シートの厚み方向一方面を被覆するので、配線の周辺領域における第1の磁性粒子および第2の磁性粒子を密に配置することができる。そのため、インダクタンスにより一層優れるインダクタを製造することができる。
【0011】
従って、この製造方法によれば、周辺領域における第1の磁性粒子および第2の磁性粒子の配置を密にでき、優れたインダクタンスを有するインダクタを製造することができる。
【0012】
本発明(2)は、前記第1の磁性粒子が、前記第1磁性シートにおいて面方向に配向する第1の異方性磁性粒子を含む、(1)に記載のインダクタの製造方法を含む。
【0013】
この方法によれば、第2工程では、第1磁性シートを基板の厚み方向一方面に配置し、第1磁性シートにおいて、第1の異方性磁性粒子が基板の厚み方向一方面に沿って配向する。そのため、かかる厚み方向一方面に面し、配線の上記した領域における円周方向両端縁においては、第1の異方性磁性粒子を、配線の円周方向に沿って配向させることを抑制でき、そのため、インダクタは、直流重畳特性に優れる。
【0014】
しかも、第1磁性シートは、配線の円周面の180°を超過する領域を被覆するので、かかる領域の円周方向両端縁では、配線の円周方向から、基板の一方面に沿う方向に、第1の異方性磁性粒子の配向方向を変化させながら、第1の異方性磁性粒子を密に配置することができる。その結果、インダクタンスにより一層優れるインダクタを製造することができる。
【0015】
従って、この方法によれば、インダクタンスおよび直流重畳特性に優れるインダクタを製造することができる。
【0016】
本発明(3)は、前記基板は、離型シートであり、前記基板を除去する第3工程と、第3の磁性粒子と、前記第3の磁性粒子を分散させる第3のバインダとを含有する第3磁性シートを、前記第1磁性シートの厚み方向他方面から露出する前記円周面を被覆するように、前記第1磁性シートの厚み方向他方面に配置する第5工程とをさらに備える、(1)または(2)に記載のインダクタの製造方法を含む。
【0017】
この方法では、第3磁性シートを、第1磁性シートの厚み方向他方面にさらに配置するので、配線の周辺領域における第1の磁性粒子、第2の異方性磁性粒子および第3の磁性粒子を密に配置することができる。そのため、インダクタンスにより一層優れるインダクタを製造することができる。
【0018】
とりわけ、第3磁性シートが、第1磁性シートの厚み方向他方面から露出する円周面を被覆するので、第1磁性シートから露出する配線の円周面に対応する領域において、第3の磁性粒子を密に配置できる。その結果、インダクタンスに優れるインダクタを製造することができる。
【0019】
本発明(4)は、前記第3の磁性粒子が、前記第3磁性シートにおいて面方向に配向する第3の異方性磁性粒子を含む、(3)に記載のインダクタの製造方法を含む。
【0020】
この方法によれば、第5工程では、第3の異方性磁性粒子を、第1磁性シートから露出する配線の円周面に対応する領域において、第3の異方性磁性粒子を配向させながら、密に配置できる。その結果、インダクタンスにより一層優れるインダクタを製造することができる。
【0021】
本発明(5)は、前記第1工程と、前記第2工程と、前記第3工程とを順に実施し、次いで、前記第4工程および前記第5工程を同時に実施する、(3)または(4)に記載のインダクタの製造方法を含む。
【0022】
この方法では、第4工程および第5工程を同時に実施するので、第4工程および第5工程を順に実施する方法に比べて、製造時間を短縮することができる。そのため、インダクタを効率よく製造することができる。
【0023】
本発明(6)は、前記第2工程における前記第1のバインダおよび前記第5工程における前記第3のバインダがBステージの熱硬化性成分を含有しており、さらに、前記第1のバインダおよび前記第3のバインダの前記Bステージの熱硬化性成分を同時にCステージ化する第6工程をさらに備える、(3)~(5)のいずれか一項に記載のインダクタの製造方法を含む。
【0024】
この方法では、第6工程において、第1のバインダおよび第3のバインダのBステージの熱硬化性成分を同時にCステージ化するので、第1のバインダおよび第3のバインダのBステージの熱硬化性成分を順に実施する方法に比べて、製造時間を短縮することができる。そのため、インダクタを効率よく製造することができる。
【0025】
本発明(7)は、前記基板が、第3の磁性粒子と、前記第3の磁性粒子を分散させる第3のバインダとを含有する第3磁性シートであり、前記第3のバインダが、熱硬化性成分の硬化物を含有する、(1)または(2)に記載のインダクタの製造方法を含む。
【0026】
この方法では、基板が第3磁性シートであるため、離型フィルムのような基板を除去する工程を実施する必要がない。そのため、工数を削減することができ、インダクタを簡便に製造することができる。
【0027】
本発明(8)は、前記第3の磁性粒子が、前記第3磁性シートにおいて面方向に配向する第3の異方性磁性粒子を含む、(7)に記載のインダクタの製造方法を含む。
【0028】
この方法では、第3の磁性粒子が第3磁性シートにおいて面方向に配向する第3の異方性磁性粒子を含むので、第3の異方性磁性粒子が、配線において第3磁性シートに面する部分に沿って配向することができる。そのため、インダクタンスにより一層優れるインダクタを製造することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のインダクタの製造方法は、インダクタンスに優れるインダクタを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1A~
図1Bは、本発明の第1実施形態により得られるインダクタの断面図であり、
図1Aが、断面がハッチング処理された断面図、
図1Bが、磁性層における異方性磁性粒子の配向を示す断面図である。
【
図2】
図2A~
図2Cは、第1実施形態のインダクタを製造する方法を説明する工程図であり、
図2Aが、配線を第1離型シートに配置する第1工程、
図2Bが、第1磁性シートにより配線を被覆する第2工程、
図2Cが、第1離型シートを除去する第3工程を示す。
【
図3】
図3D~
図3Fは、
図2Cに引き続き、第1実施形態のインダクタを製造する方法を説明する工程図であり、
図3Dが、第2磁性シートおよび第3磁性シートを配置する工程、
図3Eが、第2磁性シートにより第1磁性シートの一方面を被覆する第4工程、および、第3磁性シートによりBステージの第1磁性シートの他方面を被覆する第5工程、
図3Fが、インダクタを取り出す工程を示す。
【
図4】
図4A~
図4Cは、第1実施形態の変形例の製造方法を説明する工程図であり、
図4Aが、配線を第1離型シートに配置する第1工程、
図4Bが、第1磁性シートにより配線を被覆する第2工程、
図4Cが、第2磁性シートを配置する工程を示す。
【
図5】
図5D~
図5Fは、
図4Cに引き続き、第1実施形態の変形例の製造方法を説明する工程図であり、
図5Dが、第2磁性シートにより第1磁性シートの一方面を被覆する第4工程、
図5Eが、第1離型シートを除去する第3工程、
図5Fが、第3磁性シートを配置する工程を示す。
【
図6】
図6G~
図6Hは、
図5Fに引き続き、第1実施形態の変形例の製造方法を説明する工程図であり、
図6Gが、第3磁性シートによりBステージの第1磁性シートの他方面を被覆する第5工程、
図6Hが、インダクタを取り出す工程を示す。
【
図7】
図7A~
図7Bは、本発明の第2実施形態により得られるインダクタの断面図であり、
図7Aが、断面がハッチング処理された断面図、
図7Bが、磁性層における異方性磁性粒子の配向を示す断面図である。
【
図8】
図8A~
図8Cは、第2実施形態のインダクタを製造する方法を説明する工程図であり、
図8Aが、配線を第1離型シートに配置する第1工程、
図8Bが、第1磁性シートにより配線を被覆する第2工程、
図8Cが、第1離型シートを除去する第3工程を示す。
【
図9】
図9D~
図9Fは、
図8Cに引き続き、第2実施形態のインダクタを製造する方法を説明する工程図であり、
図9Dが、第2磁性シートおよび第3磁性シートを配置する工程、
図9Eが、第2磁性シートにより第1磁性シートの一方面を被覆する第4工程、および、第3磁性シートによりCステージの第1磁性シートの他方面を被覆する第5工程、
図9Fが、インダクタを取り出す工程を示す。
【
図10】
図10A~
図10Cは、第2実施形態の変形例の製造方法を説明する工程図であり、
図10Aが、配線を第1離型シートに配置する第1工程、
図10Bが、第1磁性シートにより配線を被覆する第2工程、
図10Cが、第2磁性シートを配置する工程を示す。
【
図11】
図11D~
図11Fは、
図10Cに引き続き、第2実施形態の変形例の製造方法を説明する工程図であり、
図11Dが、第2磁性シートにより第1磁性シートの一方面を被覆する第4工程、
図11Eが、第1離型シートを除去する第3工程、
図11Fが、第3磁性シートを配置する工程を示す。
【
図12】
図12G~
図12Hは、
図11Fに引き続き、第2実施形態の変形例の製造方法を説明する工程図であり、
図12Gが、第3磁性シートによりCステージの第1磁性シートの他方面を被覆する第5工程、
図12Hが、インダクタを取り出す工程を示す。
【
図13】
図13A~
図13Cは、第2実施形態のさらなる変形例の製造方法を説明する工程図であり、
図13Aが、配線を、Cステージの第3磁性シートに配置する工程、
図13Bが、第1磁性シートにより配線および第3磁性シートの一方面を被覆する工程、
図13Cが、第2磁性シートを配置する工程を示す。
【
図15】
図15A~
図15Cは、インダクタの製造方法の変形例の断面図であり、
図15Aが、配線を、感圧接着層を介して第1離型シートの一方面に配置する工程、
図15Bが、第1磁性シートで、配線の円周面において断面視で180°を超過する領域、および、第1磁性シートの一方面を被覆する工程、
図15Cが、インダクタを得る工程を示す。
【
図16】
図16A~
図16Cは、インダクタの製造方法の変形例の断面図であり、
図16Aが、配線を第1離型シートに対して隙間を隔てて配置する工程、
図16Bが、第1磁性シートで、配線の円周面、および、第1磁性シートの一方面を被覆する工程、
図16Cが、インダクタを得る工程を示す。
【
図18】
図18は、実施例2のインダクタのSEM写真の画像処理図である。
【
図19】
図19は、比較例1のインダクタのSEM写真の画像処理図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<第1実施形態>
1.インダクタ
本発明の第1実施形態により得られるインダクタを、
図1A~
図2Bを参照して説明する。
【0032】
なお、
図1Aは、断面をハッチング処理して示し、
図1Bは、磁性層における異方性磁性粒子の配向を示す断面図である。なお、
図1Bを含む本願図面では、本発明の理解を容易にするために、磁性粒子(異方性磁性粒子を含む)の形状および配置等を誇張して描画している。
【0033】
図1A~
図1Bに示すように、このインダクタ1は、面方向に延びる形状を有する。具体的には、インダクタ1は、厚み方向に対向する一方面および他方面を有しており、これら一方面および他方面のいずれもが、面方向に含まれる方向であって、配線2(後述)が電流を伝送する方向(紙面奥行き方向に相当)および厚み方向に直交する第1方向に沿う平坦形状を有する。
【0034】
インダクタ1は、配線2と、磁性層3とを備える。
【0035】
配線2は、断面視略円形状を有する。具体的には、配線2は、電流を伝送する方向である第2方向(伝送方向)(紙面奥行き方向)に直交する断面(第1方向断面)で切断したときに、略円形状を有する。
【0036】
配線2は、絶縁層が被覆された電線であり、具体的には、導線6と、それを被覆する絶縁層7とを備える。
【0037】
導線6は、第2方向に長尺に延びる形状を有する導体線である。また、導線6は、配線2と中心軸線を共有する断面視略円形状を有する。
【0038】
導線6の材料としては、例えば、銅、銀、金、アルミニウム、ニッケル、これらの合金などの金属導体が挙げられ、好ましくは、銅が挙げられる。導線6は、単層構造であってもよく、コア導体(例えば、銅)の表面にめっき(例えば、ニッケル)などがされた複層構造であってもよい。
【0039】
導線6の半径R1は、例えば、25μm以上、好ましくは、50μm以上であり、また、例えば、2000μm以下、好ましくは、200μm以下である。
【0040】
絶縁層7は、導線6を薬品や水から保護し、また、導線6と磁性層3との短絡を防止する。絶縁層7は、導線6の外周面(円周面)全面を被覆する。
【0041】
絶縁層7は、配線2と中心軸線(中心C)を共有する断面視略円環形状を有する。
【0042】
絶縁層7の材料としては、例えば、ポリビニルホルマール、ポリエステル、ポリエステルイミド、ポリアミド(ナイロンを含む)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリウレタンなどの絶縁性樹脂が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0043】
絶縁層7は、単層から構成されていてもよく、複数の層から構成されていてもよい。
【0044】
絶縁層7の厚みR2は、円周方向のいずれの位置においても配線2の径方向において略均一であり、例えば、1μm以上、好ましくは、3μm以上であり、また、例えば、100μm以下、好ましくは、50μm以下である。
【0045】
絶縁層7の厚みR2に対する、導線6の半径R1の比(R1/R2)は、例えば、1以上、好ましくは、10以上であり、例えば、500以下、好ましくは、100以下である。
【0046】
配線2の半径R(=導線6の半径R1+絶縁層7の厚みR2)は、例えば、25μm以上、好ましくは、50μm以上であり、また、例えば、2000μm以下、好ましくは、200μm以下である。
【0047】
磁性層3は、インダクタ1のインダクタンスを向上させる。磁性層3は、配線2の外周面(円周面)全面を被覆する。磁性層3は、インダクタ1の外形を形成する。具体的には、磁性層3は、面方向(第1方向および第2方向)に延びる矩形状を有する。より具体的には、磁性層3は、厚み方向に対向する一方面および他方面を有しており、磁性層3の一方面および他方面のそれぞれが、インダクタ1の一方面および他方面のそれぞれを形成する。
【0048】
磁性層3は、異方性磁性粒子8と、バインダ9とを含有する。具体的には、磁性層3の材料は、異方性磁性粒子8およびバインダ9を含有する磁性組成物である。好ましくは、磁性層3は、熱硬化性樹脂組成物(異方性磁性粒子8および後述する熱硬化性成分を含む組成物)の硬化体である。
【0049】
異方性磁性粒子8を構成する磁性材料としては、例えば、軟磁性体、硬磁性体が挙げられる。好ましくは、インダクタンスの観点から、軟磁性体が挙げられる。
【0050】
軟磁性体としては、例えば、1種類の金属元素を純物質の状態で含む単一金属体、例えば、1種類以上の金属元素(第1金属元素)と、1種類以上の金属元素(第2金属元素)および/または非金属元素(炭素、窒素、ケイ素、リンなど)との共融体(混合物)である合金体が挙げられる。これらは、単独または併用することができる。
【0051】
単一金属体としては、例えば、1種類の金属元素(第1金属元素)のみからなる金属単体が挙げられる。第1金属元素としては、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、その他、軟磁性体の第1金属元素として含有することが可能な金属元素の中から適宜選択される。
【0052】
また、単一金属体としては、例えば、1種類の金属元素のみを含むコアと、そのコアの表面の一部または全部を修飾する無機物および/または有機物を含む表面層とを含む形態、例えば、第1金属元素を含む有機金属化合物や無機金属化合物が分解(熱分解など)された形態などが挙げられる。後者の形態として、より具体的には、第1金属元素として鉄を含む有機鉄化合物(具体的には、カルボニル鉄)が熱分解された鉄粉(カルボニル鉄粉と称される場合がある)などが挙げられる。なお、1種類の金属元素のみを含む部分を修飾する無機物および/または有機物を含む層の位置は、上記のような表面に限定されない。なお、単一金属体を得ることができる有機金属化合物や無機金属化合物としては、特に制限されず、軟磁性体の単一金属体を得ることができる公知乃至慣用の有機金属化合物や無機金属化合物から適宜選択することができる。
【0053】
合金体は、1種類以上の金属元素(第1金属元素)と、1種類以上の金属元素(第2金属元素)および/または非金属元素(炭素、窒素、ケイ素、リンなど)との共融体であり、軟磁性体の合金体として利用することができるものであれば特に制限されない。
【0054】
第1金属元素は、合金体における必須元素であり、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)などが挙げられる。なお、第1金属元素がFeであれば、合金体は、Fe系合金とされ、第1金属元素がCoであれば、合金体は、Co系合金とされ、第1金属元素がNiであれば、合金体は、Ni系合金とされる。
【0055】
第2金属元素は、合金体に副次的に含有される元素(副成分)であり、第1金属元素に相溶(共融)する金属元素であって、例えば、鉄(Fe)(第1金属元素がFe以外である場合)、コバルト(Co)(第1金属元素がCo以外である場合)、ニッケル(Ni)(第1金属元素Ni以外である場合)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、銅(Cu)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ストロンチウム(Sr)、各種希土類元素などが挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0056】
非金属元素は、合金体に副次的に含有される元素(副成分)であり、第1金属元素に相溶(共融)する非金属元素であって、例えば、ホウ素(B)、炭素(C)、窒素(N)、ケイ素(Si)、リン(P)、硫黄(S)などが挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0057】
合金体の一例であるFe系合金として、例えば、磁性ステンレス(Fe-Cr-Al-Si合金)(電磁ステンレスを含む)、センダスト(Fe-Si-Al合金)(スーパーセンダストを含む)、パーマロイ(Fe-Ni合金)、Fe-Ni-Mo合金、Fe-Ni-Mo-Cu合金、Fe-Ni-Co合金、Fe-Cr合金、Fe-Cr-Al合金、Fe-Ni-Cr合金、Fe-Ni-Cr-Si合金、ケイ素銅(Fe-Cu-Si合金)、Fe-Si合金、Fe-Si―B(-Cu-Nb)合金、Fe-B-Si-Cr合金、Fe-Si-Cr-Ni合金、Fe-Si-Cr合金、Fe-Si-Al-Ni-Cr合金、Fe-Ni-Si-Co合金、Fe-N合金、Fe-C合金、Fe-B合金、Fe-P合金、フェライト(ステンレス系フェライト、さらには、Mn-Mg系フェライト、Mn-Zn系フェライト、Ni-Zn系フェライト、Ni-Zn-Cu系フェライト、Cu-Zn系フェライト、Cu-Mg-Zn系フェライトなどのソフトフェライトを含む)、パーメンジュール(Fe-Co合金)、Fe-Co-V合金、Fe基アモルファス合金などが挙げられる。
【0058】
合金体の一例であるCo系合金としては、例えば、Co-Ta-Zr、コバルト(Co)基アモルファス合金などが挙げられる。
【0059】
合金体の一例であるNi系合金としては、例えば、Ni-Cr合金などが挙げられる。
【0060】
これら軟磁性体の中でも、磁気特性の点から、好ましくは、合金体、より好ましくは、Fe系合金、さらに好ましくは、センダスト(Fe-Si-Al合金)が挙げられる。また、軟磁性体として、好ましくは、単一金属体、より好ましくは、鉄元素を純物質の状態で含む単一金属体、さらに好ましくは、鉄単体、あるいは、鉄粉(カルボニル鉄粉)が挙げられる。
【0061】
異方性磁性粒子8の形状としては、異方性の観点から、例えば、扁平状(板状)、針状などが挙げられ、好ましくは、面方向(二次元)に比透磁率が良好である観点から、扁平状が挙げられる。
【0062】
扁平状の異方性磁性粒子8の扁平率(扁平度)は、例えば、8以上、好ましくは、15以上であり、また、例えば、500以下、好ましくは、450以下である。扁平率は、例えば、異方性磁性粒子8の平均粒子径(平均長さ)(後述)を異方性磁性粒子8の平均厚さで除したアスペクト比として算出される。
【0063】
異方性磁性粒子8の平均粒子径(平均長さ)は、例えば、3.5μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、200μm以下、好ましくは、150μm以下である。異方性磁性粒子8が扁平状であれば、その平均厚みが、例えば、0.1μm以上、好ましくは、0.2μm以上であり、また、例えば、3.0μm以下、好ましくは、2.5μm以下である。
【0064】
バインダ9は、磁性層3内において異方性磁性粒子8を分散する。また、バインダ9は、磁性層3において所定方向に分散する。好ましくは、バインダ9は、Bステージの熱硬化性成分の硬化物を含有する。なお、バインダ9は、後の製造方法における第1磁性シート51、第2磁性シート52および第3磁性シート53の説明で詳説する。
【0065】
磁性層3では、異方性磁性粒子8がバインダ9内に配向しながら均一に配置されている。
【0066】
磁性層3は、断面視において(第1方向断面で切断したときに)、周辺領域4と、外側領域5とを有する。
【0067】
周辺領域4は、配線2の周辺領域であって、配線2の外周面(円周面)全面と接触するように、配線2の周囲に位置する。周辺領域4は、配線2と中心軸線を共有する断面視略円環状を有する。より具体的には、周辺領域4は、磁性層3のうち、配線2の中心Cから配線2の半径Rの1.5倍以内の範囲に位置する領域である。すなわち、周辺領域4は、配線2の外周縁(周辺領域4の内周縁)から、径方向外側に配線2の半径Rの0.5倍の距離の範囲に位置する領域である。
【0068】
周辺領域4は、第1領域11と、第2領域12とを備える。
【0069】
第1領域11は、周辺領域4において円周方向に互いに間隔を隔てて2つ配置されている。具体的には、第1領域11は、第3領域13と、第3領域13に対して厚み方向他方側に間隔を隔てて配置される第4領域14とを備える。
【0070】
第3領域13は、少なくとも配線2の厚み方向一端縁E1を含む外周円弧面を被覆し、例えば、配線2の厚み方向一端縁E1を含む第1半円弧(配線2の厚み方向一方側において、配線2の第1方向両端縁E2およびE3を結ぶ一の半円弧)面23の一部または全部を、少なくとも被覆する。好ましくは、第3領域13は、配線2の上記した第1半円弧面23の一部を被覆しており、より具体的には、径方向に投影したときに、配線2の一の半円弧面に包含される一方、配線2の第1方向両端縁E2およびE3と重複せず、第1方向両端縁E2およびE3の内側に配置される。
【0071】
なお、配線2の厚み方向一端縁E1は、配線2の中心Cを厚み方向に沿って通過する第1仮想線L1と、配線2の厚み方向一方側における円弧面(第1半円弧面23)とが交わる部分である。
【0072】
また、配線2の第1方向両端縁E2およびE3は、配線2の中心Cを第1方向に沿って通過する第3仮想線L3と、配線2の円周面とが交わる2つの部分である。
【0073】
第4領域14は、第3領域13に対して、配線2の中心Cを挟んで対向配置されている。第4領域14は、少なくとも配線2の厚み方向他端縁E4を含む外周円弧面を被覆し、例えば、配線2の厚み方向他端縁E4を含む第2半円弧(配線2の厚み方向他方側において、第1方向両端縁E2およびE3を結ぶ他の半円弧)面24の一部を被覆する。具体的には、第4領域14は、径方向に投影したときに、配線2の第2半円弧面24に包含される一方、配線2の第1方向両端縁E2およびE3と重複せず、配線2の第1方向両端縁E2およびE3の内側に配置される。
【0074】
配線2の厚み方向他端縁E4は、配線2の中心Cを厚み方向に沿って通過する第1仮想線L1と、第2円弧面24とが交わる部分である。
【0075】
第3領域13の中心角C1の角度α1と、第4領域14の中心角C2の角度α2とは、それぞれ、用途および目的に応じて適宜設定されており、それらの合計角度(α1+α2)は、例えば、360°未満、好ましくは、270°以下であり、また、例えば、180°超過、好ましくは、200°以上である。
【0076】
具体的には、第3領域13の中心角C1の角度α1は、例えば、90°以上、好ましくは、90°超過、より好ましくは、120°以上であり、また、例えば、180°未満、好ましくは、165°以下である。また、角度α1は、好ましくは、鈍角である。
【0077】
第4領域14の中心角C2の角度α2は、例えば、15°以上であり、また、例えば、60°以下、好ましくは、45°以下である。また、角度α2は、好ましくは、鋭角である。
【0078】
第3領域13の中心角C1の角度α1は、第4領域14の中心角C2の角度α2に対して、大きく、その比(角度α1/角度α2)が、例えば、1超過、好ましくは、1.5以上であり、また、3以下、好ましくは、2以下である。
【0079】
この第1領域11では、異方性磁性粒子8が配線2の円周方向に沿って配向する。
【0080】
第3領域13および第4領域14のそれぞれでは、異方性磁性粒子8の比透磁率が高い方向(例えば、異方性磁性粒子8が扁平形状であれば、異方性磁性粒子8の面方向)が、円周方向と略一致する。具体的には、異方性磁性粒子8の面方向と、その異方性磁性粒子8と径方向内側に対向する円周面に接する接線とがなす角度が、15°以下である場合を、異方性磁性粒子8が円周方向に配向していると定義する。
【0081】
第1領域11に含まれる異方性磁性粒子8全体の数に対して、円周方向に配向している異方性磁性粒子8の数の割合は、例えば、50%超過、好ましくは、70%以上、より好ましくは、80%以上である。すなわち、第1領域11では、円周方向に配向していない異方性磁性粒子8を、例えば、50%未満、好ましくは、30%以下、より好ましくは、20%以下含んでいてもよい。
【0082】
第1領域11の面積(第3領域13および第4領域14の総面積)割合は、周辺領域4全体に対して、例えば、40%以上、好ましくは、50%以上、より好ましくは、60%以上であり、また、例えば、90%以下、好ましくは、80%以下である。
【0083】
第1領域11の円周方向の比透磁率は、例えば、5以上、好ましくは、10以上、より好ましくは、30以上であり、また、例えば、500以下である。径方向の比透磁率は、例えば、1以上、好ましくは、5以上であり、また、例えば、100以下、好ましくは、50以下、より好ましくは、25以下である。また、径方向に対する円周方向の比透磁率の比(円周方向/径方向)は、例えば、2以上、好ましくは、5以上であり、また、例えば、50以下である。比透磁率が上記範囲であれば、インダクタンスに優れる。
【0084】
比透磁率は、例えば、磁性材料テストフィクスチャを使用したインピーダンスアナライザ(Agilent社製、「4291B」)によって測定することができる。
【0085】
第2領域12は、異方性磁性粒子8が、配線2の円周方向に沿って配向していない円周方向非配向領域である。換言すると、第2領域12では、異方性磁性粒子8が、配線2の円周方向以外の方向(例えば、第1方向や径方向)に沿って配向するか、または、配向していない。
【0086】
第2領域12は、周辺領域4において円周方向に互いに間隔を隔てて2つ配置されている。具体的には、第2領域12は、配線2の厚み方向一端縁E1および他端縁E2を通過する第1仮想直線L1を挟んで互いに間隔を隔てて配置される第5領域15と第6領域16とを備える。
【0087】
第5領域15は、第1仮想直線L1に対して第1方向一方側に配置される。第5領域15は、第3領域13の円周方向一端面と、第4領域14の円周方向他端面とに挟まれており、具体的には、第3領域13の円周方向一端面と、第4領域14の円周方向他端面とに連続している。
【0088】
第6領域16は、第5領域15に対して第1方向他方側に間隔を隔てて対向配置されている。第6領域16は、第1仮想直線L1に対して第1方向他方側に配置されており、第5領域15に対して第1仮想直線L1を軸とする線対称である。つまり、第6領域16は、第3領域13の円周方向他端面と、第4領域14の円周方向一端面とに連続している。
【0089】
これによって、第1領域11では、第3領域13、第5領域15、第4領域14、および、第6領域16が円周方向において順に配置されている。
【0090】
そして、第5領域15における円周方向一端である第1端E5および円周方向他端である第2端E6を結ぶ仮想円弧の一例としての第1仮想円弧A1の中心C3と、第6領域16における円周方向一端である第3端E7および円周方向他端である第4端E8を結ぶ仮想円弧の一例としての第2仮想円弧A2の中心C4とを結ぶ仮想直線の一例としての第2仮想直線L2上には、配線2の中心Cが存在しない。
【0091】
なお、第1端E5は、第5領域15における円周方向一端面における径方向中央部に位置する部分である。第2端E6は、第5領域15における円周方向他端面における径方向中央部に位置する部分である。第3端E7は、第6領域16における円周方向一端面における径方向中央部に位置する部分である。第4端E8は、第6領域16における円周方向他端面における径方向中央部に位置する部分である。
【0092】
具体的には、配線2の中心Cは、第2仮想直線L2の第1方向一方側に間隔を隔てて配置されている。
【0093】
詳しくは、配線2の中心Cは、例えば、第2仮想直線L2よりも配線2の半径Rの0.2倍以上、0.7倍以下の距離分、厚み方向一方側に位置し、好ましくは、第2仮想直線L2よりも配線2の半径Rの0.3倍以上、0.5倍以下の距離分、厚み方向一方側に位置する。
【0094】
また、配線2の厚み方向他端縁E4は、第2仮想直線L2上に存在せず、具体的には、第2仮想直線L2の厚み方向他方側に間隔を隔てて位置する。
【0095】
また、第2領域12(第5領域15および第6領域16のそれぞれ)では、配向方向が異なる少なくとも2種類の異方性磁性粒子8により交差部(頂部)20が形成されている。例えば、第5領域15においては、第1端E5(第3領域13に接する部分)から第2端E6に向かうに従って配線2の径方向外側に配向する異方性磁性粒子8である第1粒子17と、第2端E6から第1端E5に向かうに従って第1方向に配向する異方性磁性粒子8である第2粒子18とが、略三角形状の少なくとも2辺を構成して、これによって、第1交差部(第1頂部)21を形成する。具体的には、第1粒子17と、第2粒子18とは、第5領域15において配線2が最近接する領域において円周方向に配向する異方性磁性粒子8である第3粒子19とともに、略三角形状(好ましくは、鋭角三角形状)を形成する。
【0096】
また、第6領域16においては、第4端E8(第3領域13に接する部分)から第3端E7に向かうに従って配線2の径方向外側に配向する異方性磁性粒子8である第1粒子17と、第3端E7から第4端E8に向かうに従って第1方向に配向する異方性磁性粒子8である第2粒子18とが、略三角形状の少なくとも2辺を構成して、これによって、第2交差部(第2頂部)22を形成する。具体的には、第1粒子17と、第2粒子18とは、第6領域16において配線2が最近接する領域において円周方向に配向する異方性磁性粒子8である第3粒子19とともに、略三角形状(好ましくは、鋭角三角形状)を形成する。
【0097】
交差部20(第1交差部21および第2交差部22のそれぞれ)は、第1方向に投影したときに、配線2の中心Cと重複しない。具体的には、交差部20は、第1方向に投影したときに、配線2の中心Cより厚み方向他方側に間隔を隔てて配置される。
【0098】
また、交差部20は、第1方向に投影したときに、配線2の厚み方向他端縁E4の厚み方向一方側に間隔を隔てて配置されている。
【0099】
第2領域12(第5領域15および第6領域16のそれぞれ)では、異方性磁性粒子8の比透磁率が高い方向(例えば、扁平状異方性磁性粒子では、粒子の面方向)が、配線2の中心Cを中心とした円周面の接線と一致しない。より具体的には、異方性磁性粒子8の面方向と、その異方性磁性粒子8が位置する配線2の外周面(円周面)とがなす角度が、15度を超過する場合を、異方性磁性粒子8が円周方向に配向していないと定義する。
【0100】
第2領域12に含まれる異方性磁性粒子8全体の数に対して、円周方向に配向していない異方性磁性粒子8の数の割合は、例えば、50%超過、好ましくは、70%以上であり、また、例えば、95%以下、好ましくは、90%以下である。
【0101】
第2領域12では、例えば、円周方向に配向する異方性磁性粒子8を含んでいてもよい。第2領域12に含まれる異方性磁性粒子8全体の数に対して、円周方向に配向する異方性磁性粒子8の数の割合は、例えば、50%未満、好ましくは、30%以下であり、また、例えば、5%以上、好ましくは、10%以上である。
【0102】
なお、円周方向に配向する異方性磁性粒子8を含む場合、好ましくは、円周方向に配向する異方性磁性粒子8は、第2領域12の最内側領域、すなわち、配線2の表面近傍に配置される。
【0103】
第2領域12の面積(第5領域15および第6領域16の総面積)割合は、周辺領域4全体に対して、例えば、10%以上、好ましくは、20%以上であり、また、例えば、60%以下、好ましくは、50%以下、より好ましくは、40%以下である。
【0104】
そして、周辺領域4において、異方性磁性粒子8の充填率(存在割合)は、例えば、40体積%以上、好ましくは、45体積%以上、より好ましくは、50体積%以上、さらに好ましくは、55体積%以上、とりわけ好ましくは、60体積%以上である。周辺領域4における異方性磁性粒子8の充填率が上記下限以上であれば、インダクタ1が優れたインダクタンスを得ることができる。
【0105】
また、周辺領域4における異方性磁性粒子8の充填率は、例えば、95体積%以下、好ましくは、90体積%以下である。異方性磁性粒子8の充填率が上記した上限以下であれば、インダクタ1は優れた機械強度を有する。
【0106】
とりわけ、第1領域11および第2領域12のそれぞれの領域において、異方性磁性粒子8の充填率が、例えば、40体積%以上、好ましくは、45体積%以上、より好ましくは、50体積%以上、さらに好ましくは、55体積%以上、とりわけ好ましくは、60体積%以上であり、また、例えば、95体積%以下、好ましくは、90体積%以下である。
【0107】
なお、第1領域11における異方性磁性粒子8の充填率、および、第2領域12における異方性磁性粒子8の充填率は、同一および相異なることのいずれであってもよい。
【0108】
異方性磁性粒子8の充填率は、実比重の測定、SEM写真の二値化などによって算出することができる。
【0109】
一方、周辺領域4におけるバインダ9の存在割合は、例えば、異方性磁性粒子8の上記した充填率の残部である。
【0110】
また、周辺領域4には、ボイド(空隙、隙間)の形成が可及的に抑制されており、好ましくは、配線2および磁性層3間のボイドが存在しない。つまり、周辺領域4は、好ましくは、ボイドレスである。
【0111】
外側領域5は、磁性層3のうち、周辺領域4以外の領域である。外側領域5は、周辺領域4の外側において、周辺領域4と連続するように配置されている。
【0112】
外側領域5では、異方性磁性粒子8が面方向(とりわけ、第1方向)に沿って配向している。
【0113】
外側領域5では、異方性磁性粒子8の比透磁率が高い方向(例えば、扁平状異方性磁性粒子では、粒子の面方向)が、第1方向と略一致する。より具体的には、異方性磁性粒子8の面方向と、第1方向とがなす角度が、15°以下である場合を、異方性磁性粒子8が第1方向に配向していると定義する。
【0114】
外側領域5では、外側領域5に含まれる異方性磁性粒子8全体の数に対して、第1方向に配向している異方性磁性粒子8の数の割合が、50%を超過し、好ましくは、70%以上、より好ましくは、90%以上である。すなわち、外側領域5では、第1方向に配向していない異方性磁性粒子8を50%未満、好ましくは、30%以下、より好ましくは、10%以下含んでいてもよい。
【0115】
また、外側領域5における異方性磁性粒子8の充填率は、周辺領域4における異方性磁性粒子8の充填率と同一または相異なっていてもよい。
【0116】
外側領域5において、第1方向の比透磁率は、例えば、5以上、好ましくは、10以上、より好ましくは、30以上であり、また、例えば、500以下である。厚み方向の比透磁率は、例えば、1以上、好ましくは、5以上であり、また、例えば、100以下、好ましくは、50以下、より好ましくは、25以下である。また、厚み方向に対する第1方向の比透磁率の比(第1方向/厚み方向)は、例えば、2以上、好ましくは、5以上であり、また、例えば、50以下である。
【0117】
外側領域5において、異方性磁性粒子8の充填率は、特に限定されず、例えば、40体積%以上、好ましくは、45体積%以上、より好ましくは、50体積%以上、さらに好ましくは、55体積%以上、とりわけ好ましくは、60体積%以上であり、また、例えば、95体積%以下、好ましくは、90体積%以下である。
【0118】
磁性層3の厚みは、配線2の半径Rの、例えば、2倍以上、好ましくは、3倍以上であり、また、例えば、20倍以下である。具体的には、磁性層3の厚みは、例えば、100μm以上、好ましくは、200μm以上であり、また、例えば、2000μm以下、好ましくは、1000μm以下である。なお、磁性層3の厚みは、磁性層3の一方面および他方面間の距離である。
【0119】
2.インダクタの製造方法
このインダクタ1の製造方法を、
図2A~
図3Fを参照して説明する。
【0120】
このインダクタ1の製造方法は、第1工程~第6工程を備える。このインダクタ1の製造方法では、第1工程と、第2工程と、第3工程とを順に実施し、次いで、第4工程、第5工程および第6工程を同時に実施する。
【0121】
(第1工程)
図2Aに示すように、第1工程では、まず、配線2と、基板の一例である離型フィルムとしての第1離型シート41とを準備する。
【0122】
第1離型シート41は、面方向に延びる略シート形状を有する。第1離型シート41の材料は、その用途および目的に応じて、適宜選択され、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、例えば、ポリメチルペンテン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンなどが挙げられる。また、第1離型シート41の厚み方向一方面および/または他方面は、離型処理が施されていてもよい。第1離型シート41の厚みは、例えば、1μm以上、また、例えば、1000μm以下である。
【0123】
その後、第1工程では、配線2および第1離型シート41を平板プレス42に配置する。
【0124】
平板プレス42は、厚み方向に加圧可能な第1板43および第2板44を備える。平板プレス42において、第2板44は、第1板43の厚み方向一方側に間隔を隔てて対向配置されている。なお、平板プレス42は、図示しない熱源を備える。
【0125】
また、平板プレス42には、平板プレス42に配置されてプレスに供される部材を真空状態にするためのチャンバーが設けられている。
【0126】
第1工程では、まず、第1離型シート41を、第1板43に配置し、次いで、配線2を第1離型シート41の厚み方向一方面に配置する。具体的には、配線2の厚み方向他端縁E4を第1離型シート41の一方面に接触させる。
【0127】
なお、この際、第1離型シート41および第1板43は、チャンバー内に配置される。その後の工程において配置される各部材は、いずれも、チャンバー内に配置される。
【0128】
(第2工程)
第2工程では、まず、
図2Aに示すように、第1磁性シート51を準備する。同時に、第2離型シート45および離型クッションシート46を準備する。
【0129】
[第1磁性シート]
第1磁性シート51は、面方向に延びる略シート形状を有する。具体的には、第1磁性シート51は、厚み方向に対向する一方面および他方面を有する。
【0130】
第1磁性シート51は、磁性層3における少なくとも第2領域12、第3領域13(の一部または全部)と、外側領域5の一部を形成するための磁性シートである。
【0131】
なお、第1磁性シート51は、第2工程における熱プレス(
図2B参照)によって、変形(流動)するように構成されている。
【0132】
また、第1磁性シート51は、第1の磁性粒子の一例としての第1の異方性磁性粒子81と、第1のバインダ91とを含有する。第1の異方性磁性粒子81は、異方性磁性粒子8と同様である。具体的には、第1磁性シート51は、第1の異方性磁性粒子81および第1のバインダ91を含有する第1の磁性組成物から略シート形状に形成されている。
【0133】
この第1磁性シート51では、第1の異方性磁性粒子81が面方向に配向するように、第1のバインダ91によって均一に分散されている。
【0134】
第1磁性シート51は、単数シートまたは複数のシートの積層体(積層シート)であり、好ましくは、積層シート、より好ましくは、熱プレス時に配線2と接触する内側シート54、および、内側シート54の厚み方向一方側に配置される外側シート55からなる2層シートである。
【0135】
第1の異方性磁性粒子81の第1の磁性組成物(第1磁性シート51)における体積割合は、例えば、40体積%以上、好ましくは、45体積%以上、より好ましくは、50体積%以上、さらに好ましくは、55体積%以上、とりわけ好ましくは、60体積%以上であり、また、例えば、95体積%以下、好ましくは、90体積%以下である。第1の異方性磁性粒子81の体積割合が上記した範囲であれば、周辺領域4において第1の異方性磁性粒子81を密に配置することができる。これにより、インダクタンスに優れるインダクタ1を得ることができる。
【0136】
また、第1の異方性磁性粒子81の第1の磁性組成物(第1磁性シート51)における体積割合は、例えば、40体積%以下、さらには、35体積%以下であり、また、20体積%以上、さらには、25体積%以上であることも好適である。第1の異方性磁性粒子81の体積割合が上記した範囲であれば、周辺領域4におけるボイドの存在を可及的に抑制でき、そのため、周辺領域4において、第1の異方性磁性粒子81を、第2の異方性磁性粒子82および第3の異方性磁性粒子83(後述)とともに密に配置することができる。その結果インダクタンスに優れるインダクタ1を得ることができる。
【0137】
第1磁性シート51が内側シート54と、外側シート55との2層の積層シートであれば、外側シート55の異方性磁性粒子8の体積割合が、好ましくは、内側シート54のそれよりも高い。そうすれば、第1磁性シート51がより柔軟に配線2の円周面において断面視で180°を超過する領域(以下、優弧という)に追従することができる。
【0138】
第1のバインダ91としては、例えば、アクリル樹脂などの熱可塑性成分、例えば、エポキシ樹脂組成物などの熱硬化性成分が挙げられる。アクリル樹脂は、例えば、カルボキシル基含有アクリル酸エステルコポリマーを含む。エポキシ樹脂組成物は、例えば、主剤であるエポキシ樹脂(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂など)と、エポキシ樹脂用硬化剤(フェノール樹脂など)と、エポキシ樹脂用硬化促進剤(イミダゾール化合物など)とを含む。
【0139】
第1のバインダ91としては、熱可塑性成分および熱硬化性成分をそれぞれ単独使用または併用することができ、好ましくは、熱可塑性成分および熱硬化性成分を併用する。
【0140】
つまり、好ましくは、第1のバインダ91は、少なくとも熱硬化性成分を含有する。第1のバインダ91が少なくとも熱硬化性成分を含有すれば、第1磁性シート51を流動性を有するBステージとして第1の異方性磁性粒子81を高い配合割合で均一に分散できながら、第2工程の熱プレスにおいて、第1磁性シート51が柔軟に変形しつつ、配線2の円周面における優弧に追従して被覆することができる。
【0141】
なお、第1のバインダ91(第1の磁性組成物)のより詳細な処方については、特開2014-165363号公報などに記載される。
【0142】
第1のバインダ91の第1の磁性組成物(第1磁性シート51)における体積割合は、上記した磁性粒子48の体積割合の残部である。
【0143】
第1磁性シート51を作製するには、第1の異方性磁性粒子81および第1のバインダ91を配合して、これらを均一に混合して第1の磁性組成物を調製する。この際、必要により、溶媒(有機溶媒)を用いて、第1の磁性組成物のワニスを調製する。その後、ワニスを、図示しない剥離フィルムに塗布し、乾燥して、第1磁性シート51を作製する。
【0144】
第1磁性シート51の厚み(積層シートであれば、総厚み)は、第2工程の熱プレスによって、外側領域5の少なくとも配線2の厚み方向一端縁E1を被覆できる形状が維持されるように、適宜設定される。具体的には、第1磁性シート51の厚みは、配線2の半径Rの、例えば、3倍以下、好ましくは、2倍以下、より好ましくは、2倍未満、さらに好ましくは、1.5倍以下、とりわけ好ましくは、1.25倍以下であり、また、例えば、0.1倍以上、好ましくは、0.2倍以上である。
【0145】
(第2離型シート)
第2離型シート45は、第1離型シート41と同様の構成を有しており、その材料は、上記から、用途および目的に応じて適宜選択される。
【0146】
(離型クッションシート)
離型クッションシート46は、次に説明する第2工程において、熱プレス後(
図2C参照)に、第1磁性シート51を第2板44から離型することができる離型シートである。また、離型クッションシート46は、第2工程における熱プレス時(
図2B参照)に、第2板44の圧力を配線2の円周面の優弧の形状に対応して分散して第1磁性シート51に作用させ、第1磁性シート51に変形を生じさせ、第1磁性シート51を配線2の円周面の優弧に追従させるためのクッションシートでもある。
【0147】
離型クッションシート46は、面方向に延びるシート形状を有しており、厚み方向一方面および他方面を有する。
【0148】
離型クッションシート46の一方面は、第2工程において、第2板44(後述)に面状に接触することができる。離型クッションシート46の一方面は、面方向に沿う平坦面である。
【0149】
離型クッションシート46の他方面は、第2離型シート45の厚み方向一方面と接触して、第1磁性シート51を変形させることができる。離型クッションシート46の他方面は、一方面と厚み方向他方側に間隔を隔てて対向配置されている。離型クッションシート46の他方面は、一方面に対して平行しており、面方向に沿う平坦面である。
【0150】
離型クッションシート46は、第1層47と、第2層48と、第3層49とを厚み方向一方側に順に備える。
【0151】
(第1層)
第1層47は、第1磁性シート51に対する離型層(第1離型層)である。第1層47は、面方向に沿って延びる形状を有する薄膜(スキン膜)である。また、第1層47は、次に説明する第2層48を厚み方向他方側から被覆する被覆層(外殻層)である。第1層47の厚み方向他方面には、適宜の剥離処理が施されていてもよい。
【0152】
第1層47は、次の第2工程における熱プレスにおいて、第1磁性シート51の一方面に対して第2離型シート45を介して追従できる一方、その厚みが熱プレスの前後で実質的に変化しない物性を有する。また、第1層47は、熱プレスにおいて、面方向(具体的には、第1方向)に伸長できる層である。なお、第1層47は、第2工程における熱プレスの温度(例えば、110℃)において、次に説明する第2層48より、硬い。
【0153】
第1層47の材料としては、後述する第2工程における熱プレスによって少なくとも第1方向に流動しない非熱流動材料が挙げられる。
【0154】
非熱流動材料は、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの芳香族ポリエステル、例えば、ポリオレフィンなどを主成分として含有する。
【0155】
(第2層)
第2層48は、第1層47および第3層49に挟まれる中間層である。第2層48は、第1工程における熱プレス時に、第1方向および厚み方向に流動して、第1層47を第1磁性シート51の一方面に追従させる流動層である。
【0156】
第2層48は、第1層47より柔らかい柔軟層であり、具体的には、第2工程における熱プレス時において、変形することができる。具体的には、第2層48の110℃における引張貯蔵弾性率E’は、例えば、第1層47の110℃における引張貯蔵弾性率E’より低い。
【0157】
第2層48の材料としては、後述する第2工程における熱プレスによって第1方向および厚み方向に流動する熱流動材料が挙げられる。熱流動材料は、例えば、オレフィン-(メタ)アクリレートコポリマー(エチレン-メチル(メタ)アクリレートコポリマーなど)、オレフィン-酢酸ビニルコポリマーなどを主成分として含む。
【0158】
(第3層)
第3層49は、第2板44に対する離型層(第2離型層)である。第3層49の形状、物性、材料および厚みは、第1層47におけるそれらと同一である。
【0159】
(離型クッションシートの厚み)
離型クッションシート46の厚みは、例えば、50μm以上であり、また、例えば、500μm以下である。また、第1層47、および、第3層49の厚みが、それぞれ、例えば、5μm以上、50μm以下であり、第2層48の厚みが、例えば、30μm以上、300μm以下である。第2層48の厚みの、第1層47の厚みに対する比は、例えば、2以上、好ましくは、5以上、より好ましくは、7以上であり、また、例えば、15以下である。
【0160】
離型クッションシート46は、市販品を用いることができ、例えば、離型フィルムOT-A、離型フィルムOT-Eなどの、離型フィルムOTシリーズ(積水化学工業社製)などが用いられる。
【0161】
そして、平板プレス42により、第1離型シート41、配線2、第1磁性シート51、第2離型シート45および離型クッションシート46をそれらの順に挟む。
【0162】
続いて、配線2および第1磁性シート51を、第1離型シート41、第2離型シート45および離型クッションシート46を介して、平板プレス42により熱プレスする。
【0163】
例えば、第2板44を、第1板43に対して近接するように移動させて、第2板44を離型クッションシート46および第2離型シート45を介して第1磁性シート51に押し付ける(プレスする)。
【0164】
同時に、熱源により、第1磁性シート51と離型クッションシート46とを加熱する。
【0165】
プレス圧は、例えば、0.1MPa以上、好ましくは、0.3MPa以上であり、また、例えば、10MPa以下、好ましくは、5MPa以下である。
【0166】
加熱温度は、具体的には、例えば、100℃以上、好ましくは、105℃以上であり、また、例えば、190℃以下、好ましくは、150℃以下である。
【0167】
プレス時間は、例えば、10秒間以上、好ましくは、20秒間以上であり、また、例えば、1000秒間以下、好ましくは、100秒間以下である。
【0168】
第2工程において、第2板44が第1板43に対して移動することで、チャンバーが閉鎖され、続いて、チャンバー内の雰囲気を真空状態にし、続いて、第1板43、第1離型シート41、配線2、第1磁性シート51、第2離型シート45、離型クッションシート46、および、第2板44は、厚み方向に隣接する部材同士が互いに接触(密着、密接)し、続いて、さらに、第2板44の移動がさらに進行する(熱プレスが開始する)。
【0169】
すると、厚み方向に投影したときに、離型クッションシート46において配線2と重複する重複部分34は、配線2における第1半円弧面23と、第2板44とによって、厚み方向に狭まれながら押圧(狭圧)される。
【0170】
一方、厚み方向に投影したときに、離型クッションシート46において配線2と重複しない非重複部分35は、上記した狭圧を受けない。
【0171】
すると、第2層48の重複部分34における熱流動材料は、非重複部分35に向かって流動する(押し出される)(変形する)(詳しくは、塑性変形する)。すると、非重複部分35には、上記した重複部分34からの熱流動材料の流動(押出し)に基づく流動圧が増大する。非重複部分35における流動圧は、厚み方向両方側に作用する。
【0172】
流動圧のうち、厚み方向他方側に作用する流動圧は、非重複部分35における第1層47を、厚み方向他方側に押し出す(押し下げる)とともに、かかる第1層47を介して、第1磁性シート51において非重複部分35と厚み方向に対向する被押出部分38を厚み方向他方側に押し出す(押し下げる)。
【0173】
その後、上記した流動圧に基づく被押出部分38の押し出し(押し下げ)は、被押出部分38が、配線2の第1方向両端縁E3およびE4を回り込み、さらに、配線2の第2円弧面24(但し、厚み方向他端縁E4を除く)を被覆(に接触)するまで続く。
【0174】
そして、被押出部分38が、第2円弧面24に接触することにより、
図2Bに示すように、第2領域12が形成される。
【0175】
熱プレス後において、離型クッションシート46の他方面は、例えば、配線2の第1半円弧面23に対応する形状を有する。
【0176】
第2離型シート45は、離型クッションシート46の他方面に追従し、具体的には、第1層47に追従する。
【0177】
なお、熱プレス後における第1磁性シート51は、例えば、Bステージである。具体的には、第1磁性シート51の第1のバインダ91が含有する熱硬化性成分がBステージである。
【0178】
これにより、熱プレス後の第1磁性シート51は、上記した少なくとも第2領域12を含む形状を有する。つまり、
図2Bの拡大図で示すように、第2領域12では、異方性磁性粒子8が、配線2の円周方向に沿って配向していない。
【0179】
また、第1磁性シート51は、隆起部25および平坦部26を有する。
【0180】
隆起部25は、配線2の外周面(厚み方向他端縁E4を除く)を被覆しており、第1半円弧面23と類似(あるいは相似)する断面視湾曲形状を有する。隆起部25は、第1方向中央が厚み方向一方側に向かって突出(隆起)する形状を有する。隆起部25は、1つの第2頂部27を有する。
【0181】
平坦部26は、隆起部25の第1方向両端面から第1方向両外側のそれぞれに延びる略平板形状を有する。
【0182】
これによって、第1磁性シート51は、配線2の円周面の優弧を被覆するように、第1離型シート41の厚み方向一方面に配置される。
【0183】
配線2の円周面の優弧は、第1半円弧面23と、それの円周方向両端のそれぞれから、厚み方向他端縁E4に円周方向に沿って向かうが、厚み方向他端縁E4には達しない、円弧面(円周面の一部)である。
【0184】
熱プレス後の第1磁性シート51の厚みは、上記した隆起部25および平坦部26を有する形状が確保されるように設定される。具体的には、第1磁性シート51の第2頂部27における厚みの、配線2の半径Rに対する割合が、例えば、0.01以上、好ましくは、0.03以上であり、また、例えば、8以下、好ましくは、2以下である。平坦部26の厚みの、配線2の半径Rに対する割合が、例えば、0.05以上、好ましくは、0.2以上であり、また、例えば、5未満、好ましくは、1.5以下である。
【0185】
具体的には、第1磁性シート51の第2頂部27における厚みが、例えば、1μm以上、好ましくは、5μm以上であり、また、例えば、200μm以下、好ましくは、100μm以下である。また、平坦部26の厚みが、例えば、25μm以上、好ましくは、50μm以上であり、また、例えば、200μm以下、好ましくは、150μm以下である。
【0186】
(第3工程)
第3工程では、まず、
図2Bに示す平板プレス42のプレスを解放し、続いて、第1離型シート41、配線2、第1磁性シート51、第2離型シート45および離型クッションシート46を、平板プレス42から取り出す。
【0187】
続いて、
図2Cに示すように、第1離型シート41を、第1磁性シート51の他方面、および、配線2の厚み方向他端縁E4から、剥離する。
【0188】
また、第2離型シート45および離型クッションシート46を、第1磁性シート51の一方面から剥離する。
【0189】
(第4工程、第5工程および第6工程)
図3Eに示すように、第4工程、第5工程および第6工程を同時に実施する。
【0190】
第4工程では、第2磁性シート52によって、第1磁性シート51の厚み方向一方面を被覆する。第5工程では、第3磁性シート53によって、第1磁性シート51の厚み方向他方面を被覆する。第6工程では、第1のバインダ91(
図2A参照)、第2のバインダ92(
図3D参照)および第3のバインダ93(
図3D参照)の熱硬化性成分をCステージ化する。
【0191】
図3Dに示すように、第4工程および第5工程では、まず、第2磁性シート52および第3磁性シート53を準備する。
【0192】
第2磁性シート52および第3磁性シート53のそれぞれは、第1磁性シート51と同様の構成を有することができる。
【0193】
なお、第2磁性シート52は、第2の異方性磁性粒子82および第2のバインダ92を含有しており、第2のバインダ92中において、例えば、第2の異方性磁性粒子82が面方向に配向されている。第2のバインダ92が含有する熱硬化性成分は、Bステージであるため、第2磁性シート52は、Bステージである。また、第2磁性シート52は、積層体(積層シート)であれば、各シートは、第2の異方性磁性粒子82の存在割合が同一または相異なり、好ましくは、同一である。また、第2の異方性磁性粒子82の第2磁性シート52における存在割合は、第1の異方性磁性粒子81における存在割合と同一または相異なっていてもよい。
【0194】
第2の異方性磁性粒子82の存在割合が第1の異方性磁性粒子81の存在割合と異なり、かつ、第1の異方性磁性粒子81の存在割合が40体積%以下である場合には、第2の異方性磁性粒子82の存在割合を、第1の異方性磁性粒子81の存在割合に比べて高く設定することができる。具体的には、第2の異方性磁性粒子82の第2磁性シート52における存在割合の、第1の異方性磁性粒子81の第1磁性シート51における存在割合の比(第2の異方性磁性粒子82の第2磁性シート52における存在割合/第1の異方性磁性粒子81の第1磁性シート51における存在割合)は、例えば、1.1以上、好ましくは、1.2以上、より好ましくは、1.5以上であり、また、例えば、3以下、好ましくは、2.5以下である。その場合には、具体的には、第2の異方性磁性粒子82の第2磁性シート52における存在割合は、例えば、45体積%以上、好ましくは、50体積%以上、より好ましくは、55体積%以上、さらに好ましくは、60体積%以上であり、また、例えば、95体積%以下、好ましくは、90体積%以下である。
【0195】
第2の異方性磁性粒子82の上記した比および/または存在割合が上記した範囲にあれば、第2磁性シート52と第1磁性シート51との間におけるボイドの存在を可及的に抑制でき、そのため、周辺領域4において第1の異方性磁性粒子81および第2の異方性磁性粒子82を密に配置することができる。その結果、インダクタンスに優れるインダクタ1を得ることができる。
【0196】
第2磁性シート52の厚み(積層シートであれば、総厚み)は、配線2の半径Rの、例えば、0.5倍以上、好ましくは、1倍以上、より好ましくは、1.5倍以上であり、また、例えば、5倍以下、好ましくは、3倍以下である。
【0197】
第3磁性シート53は、第3の磁性粒子の一例としての第3の異方性磁性粒子83および第3のバインダ93を含有しており、例えば、第3のバインダ93中において、第3の異方性磁性粒子83が面方向に配向されている。第3のバインダ93が含有する熱硬化性成分は、Bステージであるため、第3磁性シート53は、Bステージである。また、第3磁性シート53は、積層体(積層シート)であれば、各シートは、第3の異方性磁性粒子83の存在割合が同一または相異なり、好ましくは、同一である。また、第3の異方性磁性粒子83の第3磁性シート53における存在割合は、第1の異方性磁性粒子81における存在割合と同一または相異なっていてもよい。
【0198】
第3の異方性磁性粒子83の存在割合が第1の異方性磁性粒子81の存在割合と異なり、かつ、第1の異方性磁性粒子81の存在割合が40体積%以下である場合には、第3の異方性磁性粒子83の存在割合を、第1の異方性磁性粒子81の存在割合に比べて高く設定する。具体的には、第3の異方性磁性粒子83の第3磁性シート53における存在割合の、第1の異方性磁性粒子81の第1磁性シート51における存在割合の比(第3の異方性磁性粒子83の第3磁性シート53における存在割合/第1の異方性磁性粒子81の第1磁性シート51における存在割合)は、例えば、1.1以上、好ましくは、1.2以上、より好ましくは、1.5以上であり、また、例えば、2.5以下、好ましくは、2以下である。その場合には、具体的には、第3の異方性磁性粒子83の第3磁性シート53における存在割合は、例えば、40体積%以上、好ましくは、45体積%以上、より好ましくは、50体積%以上、さらに好ましくは、55体積%以上、とりわけ好ましくは、60体積%以上であり、また、例えば、95体積%以下、好ましくは、90体積%以下である。
【0199】
第3の異方性磁性粒子83の上記した比および/または存在割合が上記した範囲にあれば、第3磁性シート53と第1磁性シート51との間におけるボイドの存在を可及的に抑制でき,その結果、周辺領域4において第1の異方性磁性粒子81および第3の異方性磁性粒子83を密に配置することができる。従って、インダクタンスに優れるインダクタ1を得ることができる。
【0200】
第3磁性シート53の厚み(積層シートであれば、総厚み)は、配線2の半径Rの、例えば、0.5倍以上、好ましくは、1倍以上であり、また、例えば、5倍以下、好ましくは、3倍以下である。
【0201】
次いで、第2磁性シート52および第3磁性シート53を、平板プレス42に配置する。具体的には、第1板43および第2板44の間に、第1離型シート41と、第3磁性シート53と、配線2および第1磁性シート51と、第2磁性シート52と、第2離型シート45とを、厚み方向一方側に向かって順に配置する。
【0202】
なお、第1離型シート41および/または第2離型シート45は、上記した第3工程で除去した第1離型シート41および/または第2離型シート45を再利用してもよく、また、別の第1離型シート41および/または第2離型シート45を準備し、これを配置してもよい。
【0203】
なお、この第4工程および第5工程の熱プレスでは、第2工程で用いたような離型クッションシート46を平板プレス42に配置しない。
【0204】
次いで、第3磁性シート53と、配線2および第1磁性シート51と、第2磁性シート52とを、平板プレス42により熱プレスする。熱プレスの条件は、第2工程におけるそれと同様である。
【0205】
熱プレスによって、第2磁性シート52の他方面が、第1磁性シート51の隆起部25の形状に追従する。但し、第2磁性シート52の一方面は、その平坦形状が維持される。
【0206】
つまり、第2磁性シート52が、配線2の円周面の優弧、および、第1離型シート41の一方面を被覆する第1磁性シート51の厚み方向一方面を被覆する(第4工程の実施)。
【0207】
また、熱プレスによって、第3磁性シート53の他方面は、その平坦形状が維持される。
【0208】
一方、第3磁性シート53の一方面において、配線2の厚み方向他端縁E4に対向する対向部28が、厚み方向他方側にわずかに移動する(後退する、下がる、めり込まれる)。つまり、第3磁性シート53の一方面において、対向部28が、その第1方向外側に移動し、第1離型シート41の一方面に平行な第2平坦部29に対して、厚み方向一方側にわずかに凹む。
【0209】
第1磁性シート51の他方面は、第3磁性シート53の一方面の第2平坦部29と密着しており、配線2の厚み方向他端縁E4に対して厚み方向一方側にわずかに移動する。
【0210】
つまり、第3磁性シート53が、第1磁性シート51の厚み方向他方面から露出する配線2の円周面(厚み方向他端縁E4を含む円弧面)を被覆するように、第1磁性シート51の厚み方向他方面に配置される(第5工程の実施)。
【0211】
これによって、厚み方向に投影したときに、配線2と重複する部分では、第3磁性シート53、配線2、第1磁性シート51、および、第2磁性シート52が順に厚み方向一方側に向かって順に配置される。また、厚み方向に投影したときに、配線2と重複しない部分では、第3磁性シート53、第1磁性シート51、および、第2磁性シート52が順に厚み方向一方側に向かって順に配置される。
【0212】
上記した熱プレスによって、第6工程が、第4工程および第5工程と同時に実施される。
【0213】
熱プレスの条件は、第1のバインダ91、第2のバインダ92および第3のバインダ93の熱硬化性成分をCステージ化できるように、選択される。
【0214】
この第6工程では、上記した熱プレスによって、第1磁性シート51における第1のバインダ91、第2磁性シート52における第2のバインダ92、および、第3磁性シート53における第3のバインダ93が同時にCステージ化する。
【0215】
そのため、バインダ9は、Bステージの熱硬化性成分の硬化物(Cステージ状物)を含有する。
【0216】
なお、第1磁性シート51、第2磁性シート52および第3磁性シート53のCステージ化により、第1磁性シート51および第2磁性シート52の境界と、第1磁性シート51および第3磁性シート53の境界とは、それぞれ、消滅して、第1磁性シート51、第2磁性シート52および第3磁性シート53からなる1つの磁性層3(
図1A参照)が形成される。但し、
図3Fでは、第1磁性シート51、第2磁性シート52および第3磁性シート53の配置を明確に示すために、上記した境界を記載している。
【0217】
3.用途
インダクタ1は、電子機器の一部品、すなわち、電子機器を作製するための部品であり、電子素子(チップ、キャパシタなど)や、電子素子を実装する実装基板を含まず、部品単独で流通し、産業上利用可能なデバイスである。
【0218】
インダクタ1は、例えば、電子機器などに搭載される(組み込まれる)。図示しないが、電子機器は、実装基板と、実装基板に実装される電子素子(チップ、キャパシタなど)とを備える。そして、インダクタ1は、はんだなどの接続部材を介して実装基板に実装され、他の電子機器と電気的に接続され、コイルなどの受動素子として作用する。
【0219】
そして、この方法では、
図2Bに示すように、第2工程で、第1磁性シート51を、配線2の優弧を被覆するように、第1離型シート41の厚み方向一方面に配置するので、配線2の優弧に対応する領域を被覆する第1磁性シート51において、異方性磁性粒子8を配線2の円周方向に沿って配向させることができる。そのため、得られるインダクタ1は、インダクタンスに優れる。
【0220】
また、第2工程では、第1磁性シート51を第1離型シート41の厚み方向一方面に配置するので、第1磁性シート51において、第1の異方性磁性粒子81が第1離型シート41の厚み方向一方面に沿って配向する。そのため、第1離型シート41の厚み方向一方面に面し、配線2の優弧に対応する領域における円周方向両端縁、つまり、第2領域12においては、第1の異方性磁性粒子81を、配線2の円周方向に沿って配向させることを抑制でき、そのため、インダクタ1は、直流重畳特性に優れる。
【0221】
しかも、第1磁性シート51は、配線2の円周面の優弧を被覆するので、かかる優弧の円周方向両端縁では、配線2の円周方向から、第1離型シート41の一方面に沿う方向に、第1の異方性磁性粒子81の配向方向を変化させながら、第1の異方性磁性粒子81を密に配置することができる。その結果、インダクタンスに優れるインダクタ1を製造することができる。
【0222】
さらに、
図3Fに示すように、第4工程で、第2磁性シート52が、第1磁性シート51の厚み方向一方面を被覆するので、配線2の周辺領域4における第1の異方性磁性粒子81および第2の異方性磁性粒子82を含む異方性磁性粒子8の配置を密にすることができる。そのため、インダクタンスにより一層優れるインダクタ1を製造することができる。
【0223】
従って、この製造方法によれば、周辺領域4における異方性磁性粒子8の配置を密にすることができるので、優れたインダクタンスを有するとともに、直流重畳特性にも優れるインダクタ1を製造することができる。
【0224】
また、この方法では、
図3Fに示すように、第3磁性シート53を、第1磁性シート51の厚み方向他方面にさらに配置するので、配線2の周辺領域4における第1の異方性磁性粒子81、第2の異方性磁性粒子および第3の異方性磁性粒子83を含む異方性磁性粒子8の配置を密にすることができる。そのため、インダクタンスにより一層優れるインダクタ1を製造することができる。
【0225】
とりわけ、第3磁性シート53が、第1磁性シート51の厚み方向他方面から露出する円周面を被覆するので、第1磁性シート51から露出する配線2の円周面に対応する領域において、第3の異方性磁性粒子83を密に配置できる。その結果、インダクタンスに優れるインダクタ1を製造することができる。
【0226】
また、この方法では、第4工程および第5工程を同時に実施するので、第4工程および第5工程を順に実施する方法(後述する変形例参照)に比べて、製造時間を短縮することができる。そのため、インダクタ1を効率よく製造することができる。
【0227】
この方法では、第6工程において、第1のバインダ91および第3のバインダ93のBステージの熱硬化性成分を同時にCステージ化するので、第1のバインダ91および第3のバインダ93のBステージの熱硬化性成分を順に実施する方法(後述する変形例参照)に比べて、製造時間を短縮することができる。そのため、インダクタを効率よく製造することができる。
【0228】
<第1実施形態の変形例>
変形例において、第1実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、変形例は、特記する以外、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、第1実施形態およびその変形例を適宜組み合わせることができる。
【0229】
第1実施形態では、第4工程および第5工程と、第6工程とを同時に実施している。しかし、第4工程および第5工程を実施し、その後、第6工程を実施することができる。
【0230】
第1実施形態では、第4工程と第5工程とを同時に実施している。しかし、第4工程と第5工程とを順に実施することもできる。具体的には、この変形例では、
図4A~
図6Hに示すように、第1工程、第2工程、第4工程、第3工程、第5工程および第6工程を順に実施する。
【0231】
図4Aに示すように、第1工程では、配線2を第1離型シート41の厚み方向一方面に配置する。
【0232】
図4Bに示すように、次いで、第2工程では、平板プレス42により、第1離型シート41、配線2、第1磁性シート51、第2離型シート45および離型クッションシート46を挟み、次いで、配線2および第1磁性シート51を、第1離型シート41、第2離型シート45および離型クッションシート46を介して、平板プレス42により熱プレスする。これにより、第1磁性シート51が、配線2の円周面の優弧を被覆するように、第1離型シート41の厚み方向一方面に配置される。
【0233】
図5Dに示すように、次いで、第4工程を実施する。具体的には、まず、
図4Bに示す平板プレス42のプレスを解放し、続いて、
図4Cに示すように、第1離型シート41、配線2および第1磁性シート51を平板プレス42に配置したままで、第2離型シート45および離型クッションシート46を、平板プレス42から取り出す。
【0234】
第4工程では、その後、別途、第2磁性シート52および第2離型シート45を、第1磁性シート51の厚み方向一方側に配置する。
【0235】
図5Dに示すように、続いて、平板プレス42を用いて、第2磁性シート52を熱プレスする。これによって、第2磁性シート52が第1磁性シート51の一方面を被覆する。
【0236】
図6Gに示すように、第3工程を実施する。具体的には、まず、
図5Dに示す平板プレス42のプレスを解放して、第1離型シート41、配線2、第1磁性シート51、第2磁性シート52および第2離型シート45を平板プレス42から取り出す。
【0237】
第3工程では、続いて、
図5Eに示すように、第1離型シート41を、第1磁性シート51の他方面および配線2の厚み方向他端縁E4から剥離する。
【0238】
【0239】
具体的には、第5工程では、第1離型シート41、第3磁性シート53、配線2、第1磁性シート51、第2磁性シート52および第2離型シート45を、平板プレス42に配置する。
【0240】
第5工程では、
図6Gに示すように、平板プレス42によって、第3磁性シート53を熱プレスする。これにより、第3磁性シート53が、配線2の厚み方向他端縁E4を被覆するように、Bステージの第1磁性シート51の他方面に配置される。このとき、配線2の厚み方向他端縁E4が対向部28にめり込む。
【0241】
第5工程の後、あるいは、第5工程と同時に、第6工程を実施する。具体的には、第1磁性シート51、第2磁性シート52および第3磁性シート53をCステージ化して、Cステージの磁性層3を形成する。これにより、配線2と、配線2を被覆する磁性層3とを備えるインダクタ1が得られる。
【0242】
図6Hに示すように、その後、インダクタ1を、平板プレス42から取り出す。
【0243】
この変形例および第1実施形態のうち、好ましくは、第1実施形態である。第1実施形態であれば、第4工程と第5工程とを同時に実施するので、製造工数を低減でき、インダクタ1を簡便に製造することができる。
【0244】
第1実施形態の第2工程では、
図2Bに示すように、第2離型シート45を平板プレス42に配置しているが、第2離型シート45を配置せず、熱プレスを実施することができる。
【0245】
第2磁性シート52において、第2の異方性磁性粒子82が面方向に配向しているが、第2の異方性磁性粒子82が面方向に配向していなくてもよい。
【0246】
<第2実施形態>
第2実施形態において、第1実施形態およびその変形例と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、第2実施形態は、特記する以外、第1実施形態およびその変形例と同様の作用効果を奏することができる。さらに、第1実施形態、第2実施形態およびそれらの変形例を44適宜組み合わせることができる。
【0247】
図1A~
図1Bに示す第1実施形態では、厚み方向に投影したときに、交差部20が、配線2の厚み方向他端縁E4の厚み方向一方側に間隔を隔てて配置されているが、例えば、
図7A~
図7Bに示すように、配線2の厚み方向他端縁E4と重複することもできる。
【0248】
図7A~
図7Bに示すように、第2実施形態のインダクタ1の第4領域14は、第1実施形態のインダクタ1の第4領域14より、狭い。具体的には、第4領域14の中心角C2の角度α2は、15°未満であり、また、0°超過である。
【0249】
次に、このインダクタ1の製造方法を、
図8A~図
9Fを参照して、説明する。
【0250】
インダクタ1の製造方法は、第1工程~第6工程を備える。このインダクタ1の製造方法では、第1工程と、第2工程と、第3工程とを順に実施し、次いで、第4工程および第5工程を同時に実施する。また、第6工程は、分割して実施し、具体的には、第2工程における熱プレス時と、第4工程および第5工程における熱プレス時とに分割して実施する。
【0251】
(第1工程)
図8Aに示すように、第1工程では、配線2を、第1離型シート41の厚み方向一方面に配置する。
【0252】
(第2工程、および、第6工程の一部)
図8Bに示すように、次いで、平板プレス42により、第1離型シート41、配線2、第1磁性シート51、第2離型シート45および離型クッションシート46を順に挟む。続いて、平板プレス42によって、第1磁性シート51を熱プレスする。これにより、第1磁性シート51は、配線2の円周面の優弧を被覆するように、第1離型シート41の厚み方向一方面に配置される。
【0253】
第2工程の後、または、第2工程と同時に、平板プレス42の熱源によって、第1磁性シート51を加熱して、第1磁性シート51をCステージ化する(第6工程の一部の実施)。
【0254】
(第3工程)
第3工程では、まず、
図8Bに示す平板プレス42のプレスを解放し、続いて、
図8Cに示すように、第1離型シート41、配線2、第1磁性シート51、第2離型シート45および離型クッションシート46を、平板プレス42から取り出す。
【0255】
続いて、第1離型シート41を、第1磁性シート51の他方面、および、配線2の厚み方向他端縁E4から、剥離する。
【0256】
また、第2離型シート45および離型クッションシート46を、第1磁性シート51の一方面から剥離する。
【0257】
(第4工程および第5工程と、第6工程の残部)
図9Eに示すように、第4工程および第5工程を同時に実施する。
【0258】
図9Dに示すように、第4工程および第5工程では、まず、平板プレス42に、第1離型シート41、第3磁性シート53、配線2、第1磁性シート51、第2磁性シート52および第2離型シート45を配置する。なお、第1磁性シート51および第3磁性シート53は、いずれも、Bステージである。
【0259】
図9Eに示すように、次いで、平板プレス42によって、第1磁性シート51および第3磁性シート53をプレスする。
【0260】
これにより、第2磁性シート52が、第1磁性シート51の厚み方向一方面を被覆する。
【0261】
第3磁性シート53が、配線2の厚み方向他端縁E4を被覆するように、第1磁性シート51の厚み方向他方面に配置される。このとき、Cステージで比較的硬質の第1磁性シート51の他方面の移動が抑制され、また、配線2の厚み方向他端縁E4の第3磁性シート53の対向部28へのめり込みが抑制される。つまり、第3磁性シート53の一方面が平坦状を維持することができる。
【0262】
その後、平板プレス42の熱源によって、第2磁性シート52および第3磁性シート53を加熱して、第2磁性シート52および第3磁性シート53をCステージ化する(第6工程の残部の実施)。
【0263】
これにより、配線2および磁性層3を備えるインダクタ1が得られる。
【0264】
図9Fに示すように、インダクタ1を平板プレス42から取り出す。
【0265】
第1実施形態、および、第2実施形態のうち、好ましくは、第1実施形態である。第1実施形態であれば、第6工程において、第1のバインダ91および第3のバインダ93のBステージの熱硬化性成分を同時にCステージ化するので、第1のバインダ91および第3のバインダ93のBステージの熱硬化性成分を順に実施する第2実施形態に比べて、製造時間を短縮することができる。そのため、インダクタ1を簡便に製造することができる。
【0266】
<第2実施形態の変形例>
変形例において、第2実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、変形例は、特記する以外、第2実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、第2実施形態およびその変形例を適宜組み合わせることができる。
【0267】
第2実施形態で、第4工程および第5工程と、第6工程の残部とを同時に実施している。しかし、第4工程および第5工程を実施し、その後、第6工程の残部を実施することができる。
【0268】
第2実施形態では、第4工程と第5工程とを同時に実施している。しかし、第4工程と第5工程とを順に実施することもできる。
【0269】
この変形例では、
図10A~
図12Hに示すように、第1工程、第2工程、第4工程、第3工程および第5工程を順に実施する。第6工程は、分割して実施する。
【0270】
図10Aに示すように、第1工程では、配線2を第1離型シート41の厚み方向一方面に配置する。
【0271】
図10Bに示すように、次いで、第2工程を実施するとともに、第1磁性シート51をCステージ化する。つまり、第6工程の一部を実施する。具体的には、平板プレス42により、第1離型シート41、配線2、第1磁性シート51、第2離型シート45および離型クッションシート46をそれらの順に挟み、次いで、配線2および第1磁性シート51を、第1離型シート41、第2離型シート45および離型クッションシート46を介して、平板プレス42により熱プレスする。また、平板プレス42を熱源により、第1磁性シート51をCステージ化する(第6工程の一部の実施)。
【0272】
図11Dに示すように、次いで、第4工程を実施する。具体的には、まず、
図10Bに示す平板プレス42のプレスを解放し、続いて、
図10Cに示すように、第1離型シート41、配線2および第1磁性シート51を平板プレス42に配置したままで、第2離型シート45および離型クッションシート46を、平板プレス42から取り出す。
【0273】
第4工程では、その後、別途、第2磁性シート52および第2離型シート45を、第1磁性シート51の厚み方向一方側に配置する。
【0274】
図11Dに示すように、続いて、平板プレス42を用いて、第2磁性シート52を熱プレスする。これによって、第2磁性シート52が第1磁性シート51の一方面を被覆する。
【0275】
図11Fに示すように、次いで、第3工程を実施する。
【0276】
第3工程では、具体的には、まず、
図11Dに示す平板プレス42のプレスを解放して、第1離型シート41、配線2、第1磁性シート51、第2磁性シート52および第2離型シート45を平板プレス42から取り出す。
【0277】
第3工程では、続いて、
図11Eに示すように、第1離型シート41を、第1磁性シート51の他方面および配線2の厚み方向他端縁E4から剥離する。
【0278】
図12Gに示すように、次いで、第5工程を実施する。
【0279】
図11Fに示すように、第5工程では、まず、具体的には、第1離型シート41、第3磁性シート53、配線2、第1磁性シート51、第2磁性シート52および第2離型シート45を、平板プレス42に配置する。
【0280】
第5工程では、
図12Gに示すように、平板プレス42によって、第3磁性シート53を熱プレスする。これにより、第3磁性シート53が、配線2の厚み方向他端縁E4を被覆するように、Cステージの第1磁性シート51の他方面に配置される。
【0281】
第5工程の後、または、第5工程と同時に、第6工程の残部を実施する。具体的には、平板プレス42の熱源によって、第2磁性シート52および第3磁性シート53をCステージ化して、第3磁性シート53、第1磁性シート51および第2磁性シート52からなる磁性層3を形成する。これにより、配線2と、配線2を被覆する磁性層3とを備えるインダクタ1が得られる。
【0282】
図12Hに示すように、その後、インダクタ1を、平板プレス42から取り出す。
【0283】
また、上記の変形例では、
図10Bに示す、第1磁性シート51の配線2への配置する第2工程とともに、第1磁性シート51をCステージ化しているが、第1磁性シート51をCステージ化する時期は、第3磁性シート53で第1磁性シート51の他方面を配置する第5工程(
図5G参照)前であれば、特に限定されず、例えば、
図11Dに示す、第2磁性シート52を配置する第4工程とともに、実施することもできる。
【0284】
また、第1磁性シート51および第2磁性シート52を同時にCステージ化することができる。第2磁性シート52を、Bステージの第1磁性シート51の一方面に配置し、その後、第1磁性シート51および第2磁性シート52を同時にCステージ化する。
また、第2磁性シート52をCステージ化し、その後、第3磁性シート53を第1磁性シート51の他方面に配置し、続いて、Cステージ化することができる。
【0285】
また、第3磁性シート53を第1磁性シート51の他方面に配置し、その後、第2磁性シート52を第1磁性シート51の一方面に配置することもできる。この場合には、第3磁性シート53および第2磁性シート52を同時にCステージ化することができ、また、第3磁性シート53をCステージ化し、その後、第2磁性シート52をCステージ化することもできる。
【0286】
また、
図13Aに示すように、第1工程において、配線2を、第1離型シート41ではなく、Cステージの第3磁性シート53(基板の一例)の厚み方向の一方面に配置することもできる。
【0287】
具体的には、まず、Cステージの第3磁性シート53を作製し、第1離型シート41の厚み方向一方面に、配置する。第3磁性シート53における第3のバインダ93は、Bステージの熱硬化性成分の硬化物を含有する。
【0288】
続いて、平板プレス42によって、第1離型シート41、Cステージの第3磁性シート53、配線2、第1磁性シート51、第2離型シート45および離型クッションシート46を挟む。
【0289】
図13Bに示すように、第2工程を実施する。この第2工程では、平板プレス42により、第1離型シート41、第3磁性シート53、配線2、第1磁性シート51、第2離型シート45および離型クッションシート46をそれらの順に挟む。
【0290】
続いて、第3磁性シート53、配線2および第1磁性シート51を、第1離型シート41、第2離型シート45および離型クッションシート46を介して、平板プレス42により熱プレスする。これによって、第1磁性シート51は、配線2の円周面の優弧を被覆するように、Cステージの第3磁性シート53の厚み方向一方面に配置される。
【0291】
次いで、第4工程では、まず、
図13Bに示す平板プレス42のプレスを解放し、続いて、
図13Cに示すように、第1離型シート41、第3磁性シート53、配線2および第1磁性シート51を平板プレス42に配置したままで、第2離型シート45および離型クッションシート46を、平板プレス42から取り出す。
【0292】
次いで、第4工程では、その後、別途、第2磁性シート52および第2離型シート45を、第1磁性シート51の厚み方向一方側に配置する。平板プレス42によって、第1離型シート41、第3磁性シート53、配線2、第1磁性シート51、第2磁性シート52および第2離型シート45を挟む。
【0293】
図14Dに示すように、その後、平板プレス42によって、第2磁性シート52をプレスする。
【0294】
その後、第2磁性シート52および第1磁性シート51をCステージ化する。これにより、第3磁性シート53、第1磁性シート51および第2磁性シート52からなる磁性層3を形成する。
【0295】
図14Eに示すように、その後、インダクタ1を得る。
【0296】
上記の変形例では、第1磁性シート51および第2磁性シート52を同時にCステージ化しているが、例えば、第1磁性シート51をCステージ化した後、第2磁性シート52をCステージ化することもできる。
【0297】
<その他の変形例>
この変形例において、第1および第2実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、変形例は、特記する以外、第1および第2実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、第1および第2実施形態およびその変形例を適宜組み合わせることができる。
【0298】
図15Aに示すように、第1工程において、配線2を、感圧接着層61を介して第1離型シート41の一方面に配置することができる。
【0299】
感圧接着層61は、第2方向に延び、薄肉の細片状をなす。感圧接着層61の第1方向長さの、配線2の半径Rに対する割合は、例えば、0.5以下、0.25以下である。
【0300】
図15Bに示すように、第2工程では、第1磁性シート51が感圧接着層61の第1方向両側に充填されるように、配線2の円周面の優弧を被覆する。
【0301】
図15Cに示すように、インダクタ1は、第3磁性シート53と厚み方向他端縁E4との間に感圧接着層61が残存してもよく、あるいは、図示しないが、第2工程後に、除去することもできる。
【0302】
また、
図16Aに示すように、第1工程において、配線2を、隙間62を隔てて第1離型シート41の一方側に配置することができる。例えば、配線2の第2方向両端部と、第1離型シート41との間にスペーサ
(図示せず)を介在させることにより、第2方向両側に緊張させながら、配線2の厚み方向他端縁E4と、配線2の一方面とを隔てる隙間62を確保する。
【0303】
図16Bに示すように、第2工程の熱プレスでは、第1磁性シート51が、隙間62に充填されて、配線2の円周面全面を被覆する。
【0304】
その後、
図16Cに示すように、第2磁性シート52によって、第1磁性シート51の一方面を被覆する。
【0305】
その後、例えば、加熱および加圧を同時に実施して、第1磁性シート51の第1のバインダ91、および、第2磁性シート52の第2のバインダ92とをCステージ化する。
【0306】
これによって、第1磁性シート51および第2磁性シート52からなる磁性層3が形成される。
【0307】
この方法では、第3磁性シート53を配置することなく、配線2の厚み方向他端縁E4を磁性層3で被覆することができる。そのため、工数を削減できる。
【0308】
なお、
図16Cの仮想線で示すように、必要により、さらに、第3磁性シート53を第2磁性シート52の他方面に配置することもできる。
【0309】
また、
図2Aに示すように、第1工程において、配線2を第1離型シート41の一方面に接触させ、
図6Bの仮想線矢印で示すように、次いで、第2工程におけるプレス条件等を調整して、第1磁性シート51をなす第1の磁性組成物が配線2の厚み方向他端縁E4を被覆するように、配線2の厚み方向他方側に潜り込ませることもできる。この変形例では、上記したスペーサが不要となり、そのため、インダクタ1を簡便に製造することができる。
【0310】
第1実施形態および第2実施形態では、第1の磁性粒子の一例として第1の異方性磁性粒子81を挙げているが、例えば、第1の磁性粒子は、異方性を有さず、例えば、等方性を有することもできる。そのような第1の等方性磁性粒子の形状としては、例えば、略球形状が挙げられる。略球形状の第1の等方性磁性粒子としては、例えば、略球形状の鉄粒子などが挙げられる。第1の等方性磁性粒子の平均粒子径は、例えば、0.1μm以上、好ましくは、0.5μm以上であり、また、例えば、200μm以下、好ましくは、150μm以下である。
【0311】
また、第1実施形態の
図2A、その変形例の
図4A、第2実施形態の
図8A、および、その変形例の
図10Aおよび
図13Aに示すように、第1の異方性磁性粒子81は、第1磁性シート51において面方向に配向しているが、これに限定されず、第1磁性シート51に面方向に沿って配向していなくてもよい。
【0312】
第1実施形態および第2実施形態では、第3の磁性粒子の一例として第3の異方性磁性粒子83を挙げているが、例えば、第3の磁性粒子は、異方性を有さず、例えば、等方性を有することもできる。そのような第3の等方性磁性粒子の形状としては、例えば、略球形状が挙げられる。略球形状の第3の等方性磁性粒子としては、例えば、略球形状の鉄粒子などが挙げられる。第3の等方性磁性粒子の平均粒子径は、例えば、0.1μm以上、好ましくは、0.5μm以上であり、また、例えば、200μm以下、好ましくは、150μm以下である。
【0313】
また、第1実施形態の
図3D、その変形例の
図5F、第2実施形態の
図9D、その変形例の
図11Fおよび
図13Cに示すように、第3の異方性磁性粒子83は、第3磁性シート53において面方向に配向しているが、これに限定されず、第3磁性シート53に面方向に沿って配向していなくてもよい。
【0314】
図1Bおよび
図7Bに示すように、第1実施形態および第2実施形態では、異方性磁性粒子8は、少なくとも、第1領域11において、配線2の円周方向に沿って配向しているが、これに限定されず、配線2の円周方向に沿って配向していなくてもよい。
【0315】
また、磁性層3における磁性粒子(第1の磁性粒子、第2の異方性磁性粒子82、および、第3の磁性粒子)の割合(充填率)は、上記に限定されず、例えば、配線2から離れるに従って、高くなってもよく、あるいは、低くなってもよい。磁性層3における磁性粒子の割合が、配線2から離れるに従って、高くなるインダクタ1を製造するには、例えば、第2磁性シート52における第2の異方性磁性粒子82の存在割合を、第1磁性シート51における磁性粒子の存在割合に比べて高く設定する。
【0316】
また、上記したように、磁性層3における磁性粒子の充填率が、配線2から離れるに従って、高くなる、または、低くなる変形例では、磁性層3が、複数層であってもよい。その場合には、複数の磁性シートのうち、配線2の外周面を被覆するための1つの磁性シートで配線2をプレスし、その後、残りの磁性シートをそれらに対してプレスしてもよく、あるいは、複数の磁性シートを配線2に対して1度に(まとめて)プレスすることもできる。例えば、一実施形態の第1磁性シート51、第2磁性シート52および第3磁性シート53で、配線2に対して一度にプレスすることができる。具体的には、
図13Aに示す第1工程、
図13Bに示す第2工程、および、
図13Cに示す
第4工程を同時に実施することができる。
【実施例】
【0317】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0318】
実施例1
<第1実施形態に基づくインダクタの製造例>
実施例1では、第1実施形態に基づいて、インダクタ1を製造した。具体的には、
図2A~3Fに示すように、第1工程と、第2工程と、第3工程とを順に実施し、次いで、第4工程、第5工程および第6工程を同時に実施した。
【0319】
(第1工程)
配線2および第1離型シート41を準備した。
【0320】
具体的には、半径Rが110μmの配線2を準備した。導線6の半径R1が100μmであり、絶縁層7の厚みR2が10μmである。
【0321】
別途、厚み50μmのPETからなる第1離型シート41を準備した。
【0322】
図2Aに示すように、続いて、配線2を、第1離型シート41の厚み方向一方面に配置した。
【0323】
(第2工程)
第1磁性シート51、第2離型シート45および離型クッションシート46を準備した。
【0324】
具体的には、異方性磁性粒子8の割合が50体積%である内側シート54と、異方性磁性粒子8の割合が60体積%である外側シート55との積層シートからなる第1磁性シート51をBステージシートとして準備した。内側シート54および外側シート55の処方は、表1に記載される通りである。
【0325】
また、第2離型シート45として、TPX(登録商標)からなる離型フィルム(三井化学東セロ社製)を準備した。
【0326】
また、離型フィルムOT-A110(積水化学工業社製)を2枚積層した離型クッションシート46を準備した。
【0327】
離型クッションシート46の厚み(離型フィルムOT-A110の総厚み)は、110μmであって、厚みが15μmの第1層47と、厚みT2が80μmの第2層48と、厚みが15μmの第3層49とを備える。第1層47および第3層49は、110℃における引張貯蔵弾性率E’が190MPaであって、その材料が、ポリブチレンテレフタレートを主成分として含有する。第2層48は、110℃における引張貯蔵弾性率E’が5.6MPaであって、その材料が、エチレン-メチルメタクリレートコポリマーを主成分として含有する。
【0328】
次いで、平板プレス42により、第1離型シート41、配線2、第1磁性シート51、第2離型シート45および離型クッションシート46をそれらの順に挟んだ。
【0329】
図2Bに示すように、続いて、プレス圧2MPa、110℃で、60秒間のプレス条件で、配線2および第1磁性シート51を、平板プレス42により熱プレスした。
【0330】
第2工程後の配線2および第1磁性シート51の断面のSEM写真を
図17Aに示す。
【0331】
(第3工程)
第3工程では、まず、
図2Bに示す平板プレス42のプレスを解放し、続いて、
図2Cに示すように、第1離型シート41、配線2、第1磁性シート51、第2離型シート45および離型クッションシート46を、平板プレス42から取り出した。続いて、第1離型シート41を、第1磁性シート51の他方面、および、配線2の厚み方向他端縁E4から、剥離した。また、第2離型シート45および離型クッションシート46を、第1磁性シート51の一方面から剥離した。
【0332】
(第4工程、第5工程および第6工程)
第2磁性シート52および第3磁性シート53を準備した。
【0333】
具体的には、第1磁性シート51における外側シート55と同一処方(異方性磁性粒子8の割合が60体積%)のシートを5枚準備して、それらの積層シートからなる第2磁性シート52をBステージシートとして準備した。
【0334】
また、第1磁性シート51における外側シート55と同一処方(異方性磁性粒子8の割合が60体積%)のシートを4枚と、第1磁性シート51における内側シート54と同一処方(異方性磁性粒子8の割合が50体積%)のシート1枚とを積層して準備して、それらの積層シートからなる第3磁性シート53をBステージシートとして準備した。
【0335】
図3Dに示すように、次いで、第1板43および第2板44の間に、第1離型シート41と、第3磁性シート53と、配線2および第1磁性シート51と、第2磁性シート52と、第2離型シート45(PETフィルム)とを、厚み方向一方側に向かって順に配置した。
【0336】
図3Eに示すように、続いて、プレス圧2MPa、170℃で、900秒間のプレス条件で、第3磁性シート53、配線2、第1磁性シート51および第2磁性シート52を、平板プレス42により熱プレスした。これにより、第1のバインダ91、第2のバインダ92および第3のバインダ93における熱硬化性成分をCステージ化した。
【0337】
これにより、Cステージの第1磁性シート51、第2磁性シート52および第3磁性シート53からなる磁性層3によって、配線2の円周面を被覆して、
図1A~
図1Bに示すインダクタ1を製造した。
【0338】
図3Fに示すように、その後、インダクタ1を平板プレス42から取り出した。
【0339】
【0340】
実施例2
<第1実施形態の変形例に基づくインダクタの製造例>
実施例2では、
図4A~
図6Hに示す第1実施形態の変形例に基づいて、インダクタ1を製造した。具体的には、第1工程、第2工程、第4工程、第3工程、第5工程および第6工程を順に実施した以外は、実施例1と同様に処理した。
【0341】
【0342】
実施例3~実施例5
表1に従って、第1磁性シート51の処方を変更した以外は、実施例1と同様に処理して、インダクタ1を製造した。
【0343】
比較例1
第1板43の厚み方向一方側に、順に、厚み50μmのPETからなる第1離型シート41、Cステージの第3磁性シート53、Bステージの第1接着層、実施例1と同様の配線2、Bステージの第2接着層、Cステージの第2磁性シート52と、TPXからなる第2離型シート45と、離型フィルムOT-A110(積水化学工業社製)を2枚積層した離型クッションシート46とを配置して、これらからなる積層体を、第1板43および第2板44で挟み込んだ。
【0344】
なお、第1接着層および第2接着層は、いずれも、異方性磁性粒子8を含まず、熱硬化性樹脂からなるBステージシートである。第1接着層および第2接着層の厚みは、それぞれ、2μmであった。
【0345】
Cステージの第2磁性シート52、および、Cステージの第3磁性シート53の処方は、表1に記載の通りであり、いずれも、完全硬化した硬化体であった。
【0346】
次いで、平板プレス42で、プレス圧2MPa、170℃で、900秒間のプレス条件で、上記した積層体を、平板プレス42により熱プレスして、インダクタ1を製造した。
【0347】
比較例1のインダクタ1の断面のSEM写真を
図19に示す。
【0348】
図19から分かるように、配線2の第2円弧面24および第1方向両端縁E2およびE3と、第1磁性シート51(磁性層3)との間にボイドが形成されていた。
【0349】
比較例2
第1板43の厚み方向一方側に、順に、厚み50μmのPETからなる第1離型シート41、Cステージの第3磁性シート53、第1感圧接着層、実施例1と同様の配線2、第2感圧接着層、Cステージの第2磁性シート52と、TPXからなる第2離型シート45と、離型フィルムOT-A110(積水化学工業社製)を2枚積層した離型クッションシート46とを配置して、これらからなる積層体を、第1板43および第2板44で挟み込んだ。
【0350】
なお、第1感圧接着層および第2感圧接着層は、いずれも、異方性磁性粒子8を含まず、アクリル系感圧接着剤(粘着剤)からなる感圧接着テープ(粘着テープ)である。第1感圧接着層および第2感圧接着層の厚みは、それぞれ、5μmであった。
【0351】
Cステージの第2磁性シート52、および、Cステージの第3磁性シート53の処方は、表1に記載の通りであり、いずれも、完全硬化した硬化体であった。
【0352】
次いで、平板プレス42で、プレス圧2MPa、110℃で、60秒間のプレス条件で、上記した積層体を、平板プレス42により熱プレスして、インダクタ1を製造した。
【0353】
配線2の第2円弧面24および第1方向両端縁E2およびE3と、第1磁性シート51(磁性層3)との間にボイドが形成されていた。
【0354】
<充填率>
インダクタ1の周辺領域4における異方性磁性粒子8の充填率を、SEM写真の断面図の二値化に従って算出した。具体的には、SEM写真において、白色を異方性磁性粒子8と同定し、黒色をバインダ9と同定し、そして、第1領域11における白色の断面積の割合から、異方性磁性粒子8の充填率(存在割合)を求めた。
【0355】
それらの結果を表1に示す。
【0356】
<インダクタンス>
導線6における伝送方向両端部を絶縁層7および磁性層3から露出させて2つの露出部を形成し、それらをインピーダンス・アナライザ(Agilent社製:4294A)に接続して、インダクタンスを求め、下記の基準で、インダクタ1のインダクタンスを評価した。
◎:インダクタンスが、110H以上
○:インダクタンスが、90H以上、110H未満
△:インダクタンスが、60H以上、90H未満
×:インダクタンスが、60H未満
それらの結果を表1に示す。
【0357】
【符号の説明】
【0358】
1 インダクタ
2 配線
3 磁性層
4 周辺領域
6 導線
7 絶縁層
8 異方性磁性粒子
9 バインダ
41 第1離型シート
51 第1磁性シート
52 第2磁性シート52
53 第3磁性シート
81 第1の異方性磁性粒子(第1の磁性粒子の一例)
82 第2の異方性磁性粒子(第2の磁性粒子の一例)
83 第3の異方性磁性粒子(第3の磁性粒子の一例)
91 第1のバインダ
92 第2のバインダ
93 第3のバインダ