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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】乳飲食品及びその苦味低減方法
(51)【国際特許分類】
   A23C 9/13 20060101AFI20231207BHJP
   A23C 9/123 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
A23C9/13
A23C9/123
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019066554
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020162489
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006884
【氏名又は名称】株式会社ヤクルト本社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100157772
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 武孝
(72)【発明者】
【氏名】前田 穣
(72)【発明者】
【氏名】小林 恭子
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-086042(JP,A)
【文献】特開昭58-183038(JP,A)
【文献】特開昭60-210955(JP,A)
【文献】国際公開第2017/029802(WO,A1)
【文献】特開2016-077253(JP,A)
【文献】特開2018-074913(JP,A)
【文献】特開2018-074915(JP,A)
【文献】特開2018-074911(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0173386(US,A1)
【文献】五訂 日本食品標準成分表,2004年01月09日,pp.254,256,258,260
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳原料を原料とする乳酸菌発酵液と、前記乳酸菌発酵液に由来しない乳原料由来のタンパク質と、酸成分と、チーズとを含み、前記乳酸菌発酵液に由来しない乳原料由来のタンパク質の含量が3質量%以上であり、前記乳原料由来のタンパク質は、総合乳タンパク質であり、前記酸成分として、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、フィチン酸、レモン果汁から選ばれた1種又は2種以上を含有し、pH4.9以下であり、前記チーズは、クリームチーズ、カマンベールチーズ、ホワイトチェダーチーズ、ブルーチーズから選ばれた1種又は2種以上であり、前記チーズの含量が1.8~9.0質量%であることを特徴とする乳飲食品。
【請求項2】
更に前記乳酸菌発酵液に由来しない粉乳を含有し、前記乳酸菌発酵液由来の粉乳と前記乳酸菌発酵液に由来しない粉乳との合計量が5.0~30.0質量%である請求項記載の乳飲食品。
【請求項3】
乳原料を原料とする乳酸菌発酵液と、前記乳酸菌発酵液に由来しない乳原料由来のタンパク質と、チーズとを含み、前記乳酸菌発酵液に由来しない乳原料由来のタンパク質の含量が3質量%以上であり、前記乳原料由来のタンパク質が総合乳タンパク質であり、前記チーズは、クリームチーズ、カマンベールチーズ、ホワイトチェダーチーズ、ブルーチーズから選ばれた1種又は2種以上であり、前記チーズの含量が1.8~9.0質量%である乳飲食品の苦味低減方法において、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、フィチン酸、レモン果汁から選ばれた1種又は2種以上の酸成分を添加して、前記乳飲食品のpHを4.9以下に調整することを特徴とする乳飲食品の苦味低減方法。
【請求項4】
前記乳飲食品は、更に前記乳酸菌発酵液に由来しない粉乳を含有し、前記乳酸菌発酵液由来の粉乳と前記乳酸菌発酵液に由来しない粉乳との合計量が5.0~30.0質量%である、請求項記載の乳飲食品の苦味低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸菌発酵液と乳原料由来のタンパク質とを含有する乳飲食品及びその苦味低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質を含有する飲料として、下記特許文献1には、安定剤としてペクチンまたはカルボキシメチルセルロースナトリウムを含有し、そのpHが4.5~5.2に調整されたことを特徴とする苦味および渋味の抑制された酸性豆乳飲料が開示されている。これによれば、酸性領域において生じる大豆特有の苦味や渋味を改善し、且つ優れた安定性を得ることができることが記載されている。
【0003】
また、下記特許文献2には、タンパク質を高濃度で含む発酵乳の製造方法であって、 脱脂粉乳と、ホエイタンパク質濃縮物と、乳タンパク質濃縮物とを含む原料乳を発酵させ、前記脱脂粉乳に含まれるタンパク質と、前記ホエイタンパク質濃縮物に含まれるタンパク質と、前記乳タンパク質濃縮物に含まれるタンパク質の合計を100質量%としたときに、前記脱脂粉乳に含まれるタンパク質が20~60質量%、前記ホエイタンパク質濃縮物に含まれるタンパク質が20~30質量%、前記乳タンパク質濃縮物に含まれるタンパク質が20~60質量%となるように、前記脱脂粉乳と、前記ホエイタンパク質濃縮物と、前記乳タンパク質濃縮物を配合することを特徴とする、発酵乳の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-261139号公報
【文献】WO2017/029802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の技術は、大豆特有の苦味や渋味を改善することを目的とし、乳タンパク質を含有する場合の課題については何ら記載されていない。
上記特許文献2に記載の技術は、脱脂粉乳と、ホエイタンパク質濃縮物と、乳タンパク質濃縮物を配合した培地を乳酸発酵させて得られるものであり、タンパク質原料は、乳酸発酵によって風味が変化しているため、乳酸菌発酵液とは別に乳タンパク質を添加した乳飲食品の有する課題については何ら記載されていない。
【0006】
乳酸菌発酵液とは別に、乳タンパク質などの他の原料を調製して、それらを混合して乳飲食品を作る方法は、乳酸発酵液を共通化して、バラエティーに富んだ製品を生産性よく作ることができるというメリットがある。
【0007】
しかしながら、本発明者らによる試みの結果、乳酸菌発酵液に、該乳酸菌発酵液に由来しない乳タンパク質を添加して、タンパク質含有量の高い乳飲食品を製造すると、理由はよくわからないが、苦味が発生して、風味の劣るものとなるという問題が生じることがわかった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、乳原料を原料とする乳酸菌発酵液と、前記乳酸菌発酵液に由来しない乳原料由来のタンパク質とを含む乳飲食品の苦味を低減できるようにした乳飲食品及びその苦味低減方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、上記のような乳飲食品のpHを4.9以下に調整することにより、当該乳飲食品が呈する特有の苦味が顕著に低減されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の1つは、乳原料を原料とする乳酸菌発酵液と、前記乳酸菌発酵液に由来しない乳原料由来のタンパク質とを含み、前記乳酸菌発酵液に由来しない乳原料由来のタンパク質の含量が3質量%以上であり、pH4.9以下であることを特徴とする乳飲食品を提供するものである。
【0011】
本発明の乳飲食品においては、前記乳原料由来のタンパク質は、総合乳タンパク質であることが好ましい。
【0012】
また、本発明の乳飲食品においては、更に酸成分を含有することが好ましい。
【0013】
また、前記酸成分は、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、フィチン酸、クエン酸、アスコルビン酸、レモン果汁から選ばれた1種又は2種以上であることが好ましい。
【0014】
また、本発明の乳飲食品においては、更にチーズを含有し、前記酸成分として、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、フィチン酸、レモン果汁から選ばれた1種又は2種以上を含有することが好ましい。
【0015】
また、本発明のもう1つは、乳原料を原料とする乳酸菌発酵液と、前記乳酸菌発酵液に由来しない乳原料由来のタンパク質とを含み、前記乳酸菌発酵液に由来しないタンパク質の含量が3質量%以上である乳飲食品の苦味低減方法において、前記乳飲食品のpHを4.9以下に調整することを特徴とする乳飲食品の苦味低減方法を提供するものである。
【0016】
本発明の乳飲食品の苦味低減方法においては、酸成分を添加して、前記乳飲食品のpHを4.9以下に調整することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、乳原料を原料とする乳酸菌発酵液と、前記乳酸菌発酵液に由来しない乳原料由来のタンパク質とを含む乳飲食品の苦味を効果的に低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の乳飲食品は、乳原料を原料とする乳酸菌発酵液と、前記乳酸菌発酵液に由来しない乳原料由来のタンパク質とを含有する。以下、これらの原料について、その好ましい態様を具体的に説明する。
【0019】
本発明で用いる乳酸菌発酵液は、乳原料を含有する培地原料を乳酸菌によって発酵させることにより得られる。
上記培地原料における乳原料としては、例えば脱脂粉乳、全脂粉乳等の粉乳、牛乳・山羊乳等の生乳、練乳、クリーム等を用いることができる。
【0020】
培地原料には、その他に、ぶどう糖、果糖、異性化糖、ショ糖等の糖類や、乳酸菌による発酵を促進するためのペプチド、酵母エキス、各種ミネラル類等を含有させてもよい。培地原料は、好ましくは殺菌を施して、乳酸発酵に用いられる。
【0021】
発酵に用いられる乳酸菌は、特に制限されるものではなく、例えば、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ガッセリ、ラクトバチルス・ゼアエ、ラクトバチルス・ジョンソニー、ラクトバチルス・デルブルッキー サブスピーシーズ デルブルッキー、ラクトバチルス・デルブルッキー サブスピーシーズ ブルガリカス等のラクトバチルス属細菌、ストレプトコッカス・サーモフィルス等のストレプトコッカス属細菌、ラクトコッカス・ラクチス、ラクトコッカス・プランタラム、ラクトコッカス・ラフィノラクチス等のラクトコッカス属細菌、ロイコノストック・メセンテロイデス、ロイコノストック・ラクチス等のロイコノストック属細菌、エンテロコッカス・フェカリス、エンテロコッカス・フェシウム等のエンテロコッカス属細菌等を例示することができる。
【0022】
また、ビフィドバクテリウム属細菌としては、例えば、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス、ビフィドバクテリウム・アンギュラータム、ビフィドバクテリウム・カテヌラータム、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム等が例示できる。
【0023】
これらの微生物は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、中でもラクトバチルス・カゼイ、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ビフィドバクテリム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ビフィダム等が、得られる乳製品の風味が良好であるという点で好適に用いられる。
【0024】
発酵条件は通常の発酵乳と同様の条件で行うことができ、例えば、30~40℃でpH2~6、好ましくは3~5.5になるまで発酵すればよい。発酵方法は、静置発酵、攪拌発酵、振盪発酵、通気発酵等から、使用する微生物の発酵に適した方法を適宜選択して用いればよい。
【0025】
本発明では、こうして予め発酵させて得られた乳酸発酵液を、乳酸菌の生菌が含まれる状態で、乳飲食品の原料の1つとして用いる。
本発明の乳飲食品は、上記乳酸発酵液の他に、上記乳酸発酵液に由来しない乳タンパク質を含有する。乳タンパク質を添加することにより、タンパク質含量を高めた栄養価の高い、乳飲食品を提供することができる。この場合、上記乳酸発酵液に由来しない乳タンパク質は、乳飲食品中の含有量が3質量%以上となるように添加することが好ましい。上記乳タンパク質としては、特に限定されないが、例えば、ミルクプロテインコンセントレート(MPC)、ミルクプロテイン分離物(MPI)、トータルミルクプロテイン(TMP)、ミセラカゼイン分離物(MCI)、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)、ホエイタンパク質分離物(WPI)等が用いられ、カゼインタンパク、ホエイタンパクを両方含む総合乳タンパク質が好ましく用いられる。
【0026】
総合乳タンパク質は、例えば、脱脂乳から限外濾過膜装置(UF膜装置)等を用いた膜処理等により乳糖やミネラル等の低分子成分を除くことにより得ることができる。
【0027】
総合乳タンパク質の主成分はカゼインタンパク質とホエイタンパク質である。すなわち、総合乳タンパク質はカゼインタンパク質とホエイタンパク質の両方の成分を含む。
本実施形態において、総合乳タンパク質におけるカゼインタンパク質とホエイタンパク質の比率は特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。総合乳タンパク質としては、MPC(Milk Protein Concentrate)、MPI(Milk Protein Isolate)、MCI(Miceller Casein Isolate)、TMP(Total Milk Protein)などを挙げることができるが、市販のものを適宜利用することができ、特に限定されない。MCI(Miceller Casein Isolate)は、例えば、Refit MCI88(日本新薬株式会社製)を用いることができる。
【0028】
なお、本発明において、乳飲食品中のタンパク質含量は、例えばケルダール法により測定することができる。
【0029】
本発明の乳飲食品には、上記原料の他に、ぶどう糖、果糖、異性化糖、ショ糖、パラチノース、トレハロース、ラクトース、キシロース等の糖類や、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット、還元水飴、還元麦芽糖水飴等の糖アルコール類や、アスパルテーム、アドバンテーム、スクラロース、ステビア等の高甘味度甘味料や、粉乳などの乳原料や、チーズなどの副原料や、ゲル化・増粘剤や、乳化剤や、洋酒などの風味材料などを含有させることができる。
【0030】
例えば、チーズを加えることによって、タンパク質含量を高めると共に、チーズ風味を付与することができる。チーズとしては、各種のチーズを用いることができるが、特にクリームチーズ、カマンベールチーズ、ホワイトチェダーチーズ、ブルーチーズから選ばれた1種又は2種以上が好ましく用いられ、クリームチーズ及びカマンベールチーズを含むことがより好ましく、クリームチーズ、カマンベールチーズ及びホワイトチェダーチーズを含むことが最も好ましい。クリームチーズ、カマンベールチーズ及びホワイトチェダーチーズは、比較的くせのないチーズ風味を有しているので、乳酸菌発酵液を含む乳飲食品に適したチーズ風味を付与することができる。これらのチーズは、パウダー状に調製されたものを好ましく用いることができる。
【0031】
本発明の乳飲食品において、チーズを含有させる場合、乳飲食品全体中におけるチーズの含有量は、1.8~9.0質量%が好ましく、3.6~7.2質量%がより好ましい。
【0032】
また、チーズを含有させる場合、チーズ風味を高めるために、前記乳酸菌発酵液に由来しない粉乳を含有させることが好ましい。ここで、粉乳としては、脱脂粉乳、全脂粉乳、調整粉乳など、いずれの粉乳も用いることができるが、特に脱脂粉乳が好ましい。
【0033】
なお、前記乳酸菌発酵液の培地原料として粉乳を用いる場合、乳飲食品全体中における乳酸菌発酵液由来の粉乳と前記乳酸菌発酵液に由来しない粉乳の合計量は5.0~30.0質量%が好ましく、10.0~20.0質量%がより好ましい。また、合計量に対する前記乳酸菌発酵液由来の粉乳の割合が0~60質量%、前記乳酸菌発酵液に由来しない粉乳の割合が40~100質量%であることが好ましく、60~100質量%であることがより好ましい。
【0034】
チーズを含有させる場合、乳酸菌発酵液に由来しない粉乳の含有量が上記の範囲にあることによって、チーズ風味を効果的に増強することができる。
【0035】
また、本発明の乳飲食品は、ゼラチン、寒天、ペクチン、スクシノグリカン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、澱粉、加工澱粉などのゲル化・増粘剤を含有することができる。ゲル化・増粘剤は、得られる乳飲食品に、クリーム状、ゼリー状、プリン状等の適度の粘性や保形性を与えて、良好な食感を付与するのに寄与する。
【0036】
本発明の乳飲食品は、前述したように、上記乳酸発酵液の他に、上記乳酸発酵液に由来しない乳タンパク質を含有し、該乳酸発酵液に由来しない乳タンパク質は、乳飲食品中の含有量が3質量%以上となるように添加されることを特徴としている。
【0037】
このように、乳酸発酵液の他に、乳酸発酵液に由来しない乳タンパク質を添加してタンパク質含量を高めた場合、理由はわからないが、苦味が発生し、風味が劣るものとなるという問題があった。本発明は、上記苦味を軽減するために、乳飲食品のpHを4.9以下に調整することを特徴としている。乳飲食品のpHは、4.0~4.9に調整することが好ましく、4.0~4.8に調整することがより好ましく、4.2~4.8であることがより好ましく、4.4~4.8であることがさらに好ましい。
【0038】
上記pHの調整は、例えば酸味料を添加することによって行うことができる。酸味料としては、例えば、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、フィチン酸、クエン酸、アスコルビン酸、酢酸等の有機酸や、ベリー系、柑橘系等の果汁などが好ましく用いられる。特に、チーズを含有させた場合には、酸味料として、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、フィチン酸、クエン酸、アスコルビン酸、レモン果汁から選ばれた1種又は2種以上を用いることにより、良好な風味が得られる。特に、リンゴ酸、乳酸、フィチン酸、酒石酸、レモン果汁が好ましい。
本発明の乳飲食品は、上記のような各原料を混合し、均質化して、容器に充填することにより製造することができる。この場合、乳酸菌発酵液を予め作成しておき、一方、その他の原料を水に溶解して製造したシロップを作成し、乳酸菌発酵液とシロップとを混合することによって乳飲食品を調製することが好ましい。シロップは、所定量の水に、乳酸菌発酵液以外の原料を混合して加熱溶解し、殺菌を施してから、前記乳酸菌発酵液と混合することが好ましい。
【0039】
こうして得られた本発明の乳飲食品は、前述したゲル化・増粘剤の有無など、原料を調整することによって、クリーム状、ゼリー状、プリン状等の好みの性状にすることができ、ソフトな食感の食べやすいデザートにすることができる。そして、pHを4.9以下に調整することによって、乳酸発酵液に由来しない乳タンパク質を添加してタンパク質含量を高めた場合に発生する苦味を軽減し、良好な風味の美味しい乳飲食品となる。
【0040】
本発明の乳飲食品には、ハードタイプ、ソフトタイプ等のヨーグルト、チルドデザートなどが包含され、その形態は特に限定されるものではない。
【実施例
【0041】
以下実施例を挙げて本発明について更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0042】
[試験例1](pHの検討)
下記表1に示したベース配合で、酸味料として酒石酸を添加し、表2に示すpHに調整した乳飲食品を製造した。
【0043】
なお、表1中の「Refit MCI88」(商品名、日本新薬株式会社製)は、カゼインタンパクとホエイタンパクの割合が9:1である総合乳タンパク質である。
【0044】
菌液(乳酸菌発酵液)は、培地原料を溶解し、殺菌した後、乳酸菌(ラクトバチルス・カゼイ・YIT9029株)を接種して、37℃でpH3.6になるまで培養した。
【0045】
シロップは、表1に示した原料を混合し、溶解した後、120±2℃で3秒間殺菌し、20~40℃に冷却した。
また、粉末寒天(伊那食品工業株式会社製)を水に分散させた後、加熱溶解し、98℃で10分間殺菌処理後60~65℃に冷却して1%寒天液を調製した。
【0046】
上記菌液とシロップを混合した混合液を高圧ホモジナイザーを用いて均質化した後、30~34℃に調整し、上記寒天液を加えて混合し、容器に充填して冷却・固化し、乳製品を得た。
【0047】
そして、上記混合液を調製する際に、酸味料として酒石酸を添加し、表2に示すpHに調整した乳飲食品を製造した。
こうして得られたそれぞれの乳飲食品について、その風味を評価した。評価は名のパネラーにより、苦味については、○:ない、△:ややある、×:あるの基準で評価し、酸味については、1:弱い、2:程よい、3:強いの基準で評価し、全パネラーの平均的な評価で結果を表示した。この結果を表2に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
表2に示すように、pHを4.9以下にすることにより、苦味が低減され、さらに、pHを4.8以下にすることにより、苦味が顕著に低減され、乳飲食品の風味が良好になることがわかった。
【0051】
[試験例2](酸味料の検討)
前記表1に示したベース配合で、酸味料として表3に示す種々の酸味料を用い、pH4.6に調整した乳飲食品を製造した。こうして得られたそれぞれの乳飲食品について、前記試験例1と同様な評価方法で、その風味を評価した。この結果を表3に示す。
【0052】
【表3】
【0053】
表3に示すように、No.7~14の乳飲食品はpHが4.6に調整されているため、苦味が顕著に低減されていた。また、チーズを含有させた場合には、酸味料として、リンゴ酸、乳酸、フィチン酸、酒石酸、レモン果汁が好ましい風味を与えることがわかった。