(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】画像表示装置用粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20231207BHJP
C09J 7/10 20180101ALI20231207BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20231207BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231207BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/10
C09J11/08
C09J11/06
C09J133/04
(21)【出願番号】P 2019072360
(22)【出願日】2019-04-04
【審査請求日】2022-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】城下 知輝
(72)【発明者】
【氏名】松原 圭佑
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-045213(JP,A)
【文献】特開2017-095654(JP,A)
【文献】特開2018-111754(JP,A)
【文献】特開2011-006662(JP,A)
【文献】特開2014-173011(JP,A)
【文献】特開2009-167281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/38
C09J 7/10
C09J 11/08
C09J 11/06
C09J 133/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分としての、(メタ)アクリル酸エステル共重合体と、
イソシアネート系架橋剤と、
ロジンエステル系粘着付与性樹脂と、
を含有し、
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体100重量部に対し、前記ロジンエステル系粘着付与性樹脂を5重量部以上30重量部以下含有し、粘着性組成物の架橋物を含む粘着層
のみからなる画像表示装置用粘着シートであって、
前記粘着層は、1Hzでのtanδの極大値
(ガラス転移温度)が-20℃以下であり、
前記粘着層は、1Hz、25℃における貯蔵弾性率が1.0×10
5Pa以下であり、1Hz、-20℃における貯蔵弾性率が4.6×10
4Pa以下5.4×10
4Pa以下である、画像表示装置用粘着シート。
【請求項2】
厚みが、5~100μmである、請求項1に記載の画像表示装置用粘着シート。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像表示装置用粘着シートの少なくとも一方の面に取り付けられる、剥離用の基材シートと、
を備えている、画像表示装置用粘着シート積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置用粘着シート及び画像表示装置用粘着シート積層体。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンなどに用いられるタッチパネルディスプレイを構成するカバーフィルム、電極フィルム、筐体等を貼り合わせて積層するために、例えば、特許文献1に記載のような粘着シートが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、タッチパネルディスプレイ等の画像表示装置には、曲面または屈曲面を有しているもの、さらに繰り返し屈曲して使用される場合があるため、その構成部材であるカバーフィルム等も曲面等に追従して貼り付ける必要がある。しかしながら、そのような曲面にカバーフィルムを貼り付けると、カバーフィルムに割れや剥がれが生じるおそれがあり、改良が望まれていた。本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、画像表示装置にカバーフィルム等を取付ける際に、カバーフィルムに割れや剥がれが生じるのを防止することができる、画像表示装置用粘着シート及び画像表示装置用粘着シート積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
項1.主成分としての、(メタ)アクリル酸エステル共重合体と、
イソシアネート系架橋剤と、
ロジンエステル系粘着付与性樹脂と、
を含有し、
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体100重量部に対し、前記ロジンエステル系粘着付与性樹脂を1~40重量部含有し、粘着性組成物の架橋物を含む粘着層を備える画像表示装置用粘着シートであって、
前記粘着層は、1Hzでのtanδの極大値が-20℃以下であり、
前記粘着層は、1Hz、25℃における貯蔵弾性率が1.0×105Pa以下である、画像表示装置用粘着シート。
【0006】
項2.1Hz、-20℃における貯蔵弾性率が1.0×105Pa以下である、項1に記載の画像表示装置用粘着シート。
【0007】
項3.厚みが、5~100μmである、項1または2に記載の画像表示装置用粘着シート。
【0008】
項4.項1から3のいずれかに記載の画像表示装置用粘着シートの少なくとも一方の面に取り付けられる、剥離用の基材シートと、
を備えている、画像表示装置用粘着シート積層体。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る粘着シートによれば、画像表示装置にカバーフィルムを取付ける際に、カバーフィルムに割れや剥がれが生じるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る粘着シート積層体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る粘着シートの一実施形態について説明する。この粘着シートは、タッチパネルディスプレイなどの画像表示装置を構成するカバーフィルム、電極フィルム、筐体等を取り付けるための粘着シートであり、特に、表面が湾曲したり屈曲するディスプレイにカバーフィルムを取り付けるために好適に用いられる。この粘着シートは、主成分としての(メタ)アクリル酸エステル共重合体と、イソシアネート系架橋剤と、ロジンエステル系粘着付与性樹脂と、を含有する粘着性組成物を架橋したものである。以下、詳細に説明する。
【0012】
<1.(メタ)アクリル酸エステル共重合体>
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、アルキル基の炭素数が2~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、分子内に反応性官能基を有するモノマー(反応性官能基含有モノマー)とを、モノマー単位として含有することが好ましい。これにより、好ましい粘着性を発現することができる。
【0013】
アルキル基の炭素数が2~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、ホモポリマーとしてのガラス転移温度(Tg)が-40℃以下であるもの(以下「特定アクリレート」という場合がある。)が好ましい。このような特定アクリレートを構成モノマー単位として含有することにより、本実施形態に係る粘着シートのtanδの極大値を後述する範囲に設定し易くなる。
【0014】
特定アクリレートとしては、例えば、アクリル酸n-ブチル(Tg-55℃)、アクリル酸n-オクチル(Tg-65℃)、アクリル酸イソオクチル(Tg-58℃)、アクリル酸2-エチルヘキシル(Tg-70℃)、アクリル酸イソノニル(Tg-58℃)、アクリル酸イソデシル(Tg-60℃)、メタクリル酸イソデシル(Tg-41℃)、メタクリル酸n-ラウリル(Tg-65℃)、アクリル酸トリデシル(Tg-55℃)、メタクリル酸トリデシル(-40℃)等を用いることが好ましい。中でも、より効果的に貯蔵弾性率を小さくする観点から、特定アクリレートとして、ホモポリマーのTgが、-45℃以下であるものであることがより好ましく、-50℃以下であるものであることが特に好ましい。具体的には、アクリル酸n-ブチルおよびアクリル酸2-エチルヘキシルが特に好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。なお、アルキル基の炭素数が2~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基とは、直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基をいう。
【0015】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、特定アクリレートを、モノマー単位として、60質量%以上含有することが好ましく、80質量%以上含有することがさらに好ましく、90質量%以上含有することが特に好ましい。上記特定アクリレートを60質量%以上含有することにより、本実施形態に係る粘着シートのtanδの極大値を後述する範囲により設定し易くなる。
【0016】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、特定アクリレートを、モノマー単位として、99.9質量%以下含有することが好ましく、99質量%以下含有することがさらに好ましく、98質量%以下含有することが特に好ましい。上記特定アクリレートを99.9質量%以下含有することにより、(メタ)アクリル酸エステル重合体中に他のモノマー成分(特に反応性官能基含有モノマー)を好適な量導入することができる。
【0017】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、モノマー単位として反応性官能基含有モノマーを含有することで、当該反応性官能基含有モノマー由来の反応性官能基を介して、後述する架橋剤と反応し、これにより架橋構造(三次元網目構造)が形成され、所望の凝集力を有する粘着シートが得られる。
【0018】
(メタ)アクリル酸エステル重合体が、モノマー単位として含有する反応性官能基含有モノマーとしては、分子内に水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)などが好ましい。これらの中でも、水酸基含有モノマーが特に好ましい。水酸基含有モノマーは、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下であるものが多く、本実施形態に係る粘着シートのtanδの極大値を後述する範囲に設定し易い。
【0019】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等を挙げることができる。中でも、ガラス転移温度(Tg)、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体における水酸基の架橋剤との反応性、および他の単量体との共重合性の点から、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、およびアクリル酸4-ヒドロキシブチルの少なくとも一つであることが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体の水酸基価は、特に制限されないが、粘着シートを被着体と密着した状態で繰り返し屈曲させた場合に、被着体からの剥がれを抑制する観点から、下限については、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上が挙げられる。一方、上限については、好ましくは100mgKOH/g以下、より好ましくは90mgKOH/g以下が挙げられる。
【0021】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、モノマー単位として、反応性官能基含有モノマーを、0.1質量%以上含有することが好ましく、0.5質量%以上含有することがさらに好ましく、1質量%以上含有することが特に好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、モノマー単位として、反応性官能基含有モノマーを、30質量%以下含有することが好ましく、20質量%以下含有することがさらに好ましく、8質量%以下含有することが特に好ましい。
【0022】
但し、本実施形態に係る(メタ)アクリル酸エステル重合体は、モノマー単位として、カルボキシ基含有モノマー、特にアクリル酸を含まない。カルボキシ基は酸成分であるため、カルボキシ基含有モノマーを含有しないことにより、粘着シートの貼付対象に、酸により不具合が生じるもの、例えばスズドープ酸化インジウム(ITO)等の透明導電膜や、金属膜、金属メッシュなどが存在する場合にも、酸によるそれらの不具合(腐食、抵抗値変化等)を抑制することができる。
【0023】
(メタ)アクリル酸エステル重合体の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0024】
(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量の下限値は、20万以上であることが好ましく、30万以上であることがさらに好ましく、40万以上であることが特に好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量の下限値が上記以上であると、粘着シートを加工する際に粘着の浸み出し等の不具合が抑制される。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0025】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量の上限値は、100万以下であることが好ましく、90万以下であることがさらに好ましく、80万以下であることが特に好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量の上限値が上記以下であると、得られる粘着シートの被着体との密着力及び貯蔵弾性率が後述の好適な範囲に入り易くなる。
【0026】
なお、本実施形態に係る粘着剤において、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、上述した中の1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
<2.イソシアネート系架橋剤>
本実施形態に係る粘着性組成物を加熱すると、イソシアネート系架橋剤は(メタ)アクリル酸エステル重合体を架橋し、三次元網目構造を形成する。これにより、得られる粘着シートの凝集力が向上する。
【0028】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。中でも水酸基との反応性の観点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートおよびトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0029】
粘着性組成物中におけるイソシアネート系架橋剤の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.05質量部以上であることが好ましく、さらには0.1質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、10質量部以下であることが好ましく、特に8質量部以下であることが好ましく、さらには5質量部以下であることが好ましい。
【0030】
<3.ロジンエステル系粘着付与性樹脂>
本実施形態に係るロジンエステル系粘着付与樹脂は、アビエチン酸、パラストリン酸、ネオアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸等の樹脂酸を主成分とするガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等のロジン系粘着付与樹脂と、各種アルコールとのエステルであるロジンエステル系粘着付与樹脂である。
【0031】
粘着性組成物中におけるロジンエステル系粘着付与性樹脂の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、1~40重量部であることが好ましく、1.5~35重量部であることがより好ましく、2~30重量部であることがさらに好ましい。含有量が1重量部以上であれば、粘着シートによってカバーフィルムを画像表示装置に取り付けたときの耐屈曲性能が向上する。一方、含有量が40重量部以下にすることで、粘着シートの白濁を抑制することができる。
【0032】
<4.添加剤>
粘着性組成物中には、必要に応じて、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えば、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、屈折率調整剤などを添加することができる。なお、後述の重合溶媒や希釈溶媒は、粘着性組成物を構成する添加剤に含まれないものとする。
【0033】
<5.粘着シートの物性>
<5-1.粘着シートの厚み>
粘着シートの厚みは、5~100μmであることが好ましく、10~50μmであることがさらに好ましい。これは、厚みを5μm未満とすると、カバーフィルムが剥がれやすい可能性があることによる。一方、厚みが100μmを超えると、カバーフィルムを押圧したときに、カバーフィルムが沈み込むため、鉛筆硬度が低下するおそれがある。
【0034】
<5-2.貯蔵弾性率及びtanδ>
本実施形態に係る粘着シートは、1Hzでのtanδの極大値(ガラス転移温度)が-20℃以下であり、且つ1Hz、25℃における貯蔵弾性率が1.0×105Pa以下である。tanδの極大値が低いほど、貯蔵弾性率が低くなり、粘着シートが柔らかくなる。したがって、粘着シートの1Hzでのtanδの極大値は、-30℃以下が好ましく、-50℃以下がさらに好ましい。粘着シートの1Hz、25℃における貯蔵弾性率は、より低いことが好ましく、1.0×105Pa以下であることが好ましく、8.0×104Pa以下であることがより好ましく、5.0×104Pa以下であることがさらに好ましく、3.0×104Pa以下であることが特に好ましい。また、低温においても柔らかさを保つため、粘着シートの1Hz、-20℃における貯蔵弾性率は、1.0×105Pa以下であることが好ましく、7.0×104Pa以下であることがさらに好ましく、5.5×104Pa以下であることが特に好ましい。
【0035】
なお、tanδの極大値は、例えば、ティー・エイ・インスツルメント社製 「Discovery HR-3」を用いて測定することができ、貯蔵弾性率は、JIS K7244-6に準拠した方法により測定することができる。
【0036】
<6.粘着シートの製造方法>
本実施形態に係る粘着シートの製造方法は、特には限定されないが、例えば、次のように行うことができる。
【0037】
まず、(メタ)アクリル酸エステル重合体、イソシアネート系架橋剤、及びロジンエステル系粘着付与性樹脂を混合し、必要に応じて、上述した添加剤を加える。
【0038】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、重合体を構成するモノマーの混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル重合体の重合は、必要に応じて重合開始剤を使用し、溶液重合法により行うことが好ましい。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
【0039】
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等を挙げることができ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2'-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。
【0040】
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0041】
なお、上記重合工程において、2-メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
【0042】
(メタ)アクリル酸エステル重合体が得られたら、(メタ)アクリル酸エステル重合体の溶液に、イソシアネート系架橋剤、ロジンエステル系粘着付与性樹脂、及び所望により添加剤および希釈溶剤を添加し、十分に混合することにより、溶剤で希釈された粘着性組成物(塗布溶液)を得る。
【0043】
なお、上記各成分のいずれかにおいて、固体状のものを用いる場合、あるいは、希釈されていない状態で他の成分と混合した際に析出を生じる場合には、その成分を単独で予め希釈溶媒に溶解もしくは希釈してから、その他の成分と混合してもよい。
【0044】
上記希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
【0045】
このようにして調製された塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物の濃度が10~60質量%となるように希釈することができる。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物がコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着性組成物は、(メタ)アクリル酸エステル重合体の重合溶媒をそのまま希釈溶剤とする塗布溶液となる。
【0046】
上述した粘着性組成物の架橋は、通常は加熱処理により行うことができる。なお、この加熱処理は、所望の対象物に塗布した粘着性組成物の塗膜から希釈溶剤等を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。
【0047】
加熱処理の加熱温度は、50~150℃であることが好ましく、70~120℃であることがさらに好ましい。また、加熱時間は、例えば、10秒~10分であることが好ましく、50秒~2分であることがさらに好ましい。
【0048】
加熱処理後、必要に応じて、常温(例えば、23℃、50%RH)で1~2週間程度の養生期間を設けることもできる。この養生期間が必要な場合は、養生期間経過後、粘着シートが形成される。一方、養生期間が不要な場合には、加熱処理終了後、粘着シートが形成される。
【0049】
上記の加熱処理(及び養生)により、イソシアネート系架橋剤を介して(メタ)アクリル酸エステル重合体が十分に架橋されて架橋構造が形成され、粘着シートが得られる。
【0050】
<7.粘着シート積層体>
次に、本実施形態に係る粘着シート積層体について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る粘着シート積層体は、第1剥離シート1と、この第1剥離シート1上に積層された粘着層2と、この粘着層2上に配置された第2剥離シート3と、を備えている。第1及び第2剥離シート1,3は、公知の剥離シートであり、少なくとも一方に剥離面を有している。
【0051】
この粘着シート積層体は、例えば、次のように製造することができる。まず、第1剥離シート1を巻き取った繰り出しロールから第1剥離シート1を繰り出す。そして、第1剥離シート1の剥離面に、上述した粘着剤組成物の塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着剤組成物を熱架橋することで、粘着層2を形成する。この粘着層2が、本発明の粘着シートに相当する。その後、この粘着層2を覆うように、第2剥離シート3を貼り付ける。このとき、第2剥離シート3の剥離面が粘着層2に接するようにする。こうして、
図1に示すような粘着シート積層体が形成される。
【0052】
<8.カバーフィルム>
上述した粘着シートを介して画像表示装置に貼り付けられるカバーフィルムは、特には限定されず、公知のものを採用することができる。カバーフィルムに上述した粘着シートを取付けるには、種々の方法がある。例えば、上述した粘着シート積層体の第1または第2剥離シート剥がした後、露出した粘着層をカバーフィルムに転写することで、カバーフィルムに取付けることができる。あるいは、カバーフィルムの一方の面に、上述した粘着剤組成物の塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着剤組成物を熱架橋することで、粘着層(粘着シート)を形成することができる。
【0053】
<9.特徴>
本発明に係る粘着シートは、貯蔵弾性率が低く、ロジンエステル系粘着性樹脂を含有しているため、この粘着シートが設けられたカバーフィルムを、屈曲部分を有する画像表示装置に沿って貼り付けるとき、屈曲によりカバーフィルムに作用する応力を粘着シートによって緩和することができる。そのため、カバーフィルムが屈曲したときにクラックを含む割れや剥がれが生じるのを防止することができる。
【実施例】
【0054】
次に、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0055】
<1.実施例及び比較例の作製>
実施例1~7及び比較例1~4に係る粘着シートを準備した。さらに、各粘着シートによって、カバーフィルムを対象フィルムに貼り付け、
図2に示すような積層体を作製した。カバーフィルム及び対象フィルムは、以下の通りである。
(1) カバーフィルム:100μm厚の屈曲試験でR=3.0mmにてクラックの発生しないアクリル樹脂フィルム
(2) 対象フィルム:30μm厚のポリイミド樹脂フィルム
なお、対象フィルムは、カバーフィルムの貼付対象である画像表示装置を想定したものである。
【0056】
実施例1~7及び比較例1~4に係る粘着剤の組成は、以下の通りである。イソシアネート系架橋剤を構成するコロネートL‐55Eは、東ソー社製であり、BXX8515は、東洋インキ社製、デュラネートTPA-100は、旭化成社製である。また、ロジンエステル系粘着付与性樹脂を構成するパインクリスタルME-GHは、荒川化学工業株式会社製である。アクリル酸エステル共重合体については、重量平均分子量と水酸基価を示している。
【表1】
【0057】
実施例1~7及び比較例1~4に係る粘着シートの物性値は、以下の通りである。
【0058】
粘着シートの貯蔵弾性率及び損失正接tanδの測定は、ティー・エイ・インスツルメント社製 「Discovery HR-3」を用いて測定した。測定条件については以下の通りである。
(測定条件)
測定モード:せん断モード
歪み:0.1%
測定周波数:1Hz
測定温度:-60~25℃(昇温5℃/min)
測定サンプル:各粘着シートの粘着層を重ねあわせ、総厚約1mmにして測定した。
【0059】
【0060】
また、各粘着シートについて、ガラス/粘着シート/PETフィルム積層構成で全光線透過率及びヘイズ率を測定した。全光線透過率は、JIS K7136-1、ヘイズは、JIS K7136に従って測定した結果は、表3に示すとおりである。
【0061】
さらに、各粘着シートを用いた
図2に示す積層体に対し、屈曲試験を行った。屈曲試験は、
図3に示す無負荷U字試験機を用いた。この試験機は、旋回可能な2つの可動板を有し、可動板の回転軸が平行になるように、回転軸同士を近接して配置している。そして、
図3(a)に示す水平状態の可動板上に、サンプル片である積層体を配置した。このとき、積層体のカバーフィルム面が可動板と接するように、積層体を配置した。続いて、
図3(b)に示すように、両可動板を90度旋回することで、サンプル片をU字状に屈曲させた。このような屈曲を、常温において、試験速度0.85秒/回で、繰り返し行った。そして、試験後に、サンプル片のカバーフィルムにクラックが発生するか否かを確認し、以下の(1)~(3)の基準で耐屈曲性を評価した。サンプル片の屈曲径Rが2.5mmと3.0mmとなるように試験を実施し、結果として、次の(1)~(3)の何れに該当するか否かを試験した。
(1)R=2.5mm、屈曲回数10万回以上でクラックが生じなかった(R=2.5mm クラック無し)、
(2)R=2.5mm、屈曲回数10万回未満でクラックが生じたが、R=3.0mm、屈曲回数10万回以上でクラックが生じなかった(R=3.0mm クラック無し)、
(3)R=3.0mm、屈曲回数10万回未満でクラックが生じた(R=3.0mm クラック発生)
【表3】
【0062】
表3によれば、実施例1~7は、R=2.5mmまたは3.0mm、屈曲回数10万回以上でカバーフィルムにクラックが生じなかったが、比較例1~4はR=3.0mm、屈曲回数10万回未満でクラックが生じた。実施例6では、R=2.5mm、屈曲回数10万回未満でクラックが生じているが、これは、ロジンエステル系粘着付与性樹脂の含有量が少なかったことが理由であると考えられる。
【0063】
比較例1~4は、いずれも25℃貯蔵弾性率が高いため、耐屈曲性能が低いと考えられる。なお、比較例2は、上記のように貯蔵弾性率が高いため、ロジンエステル系粘着付与性樹脂が含有されていても、耐屈曲性能は低かったと考えられる。
【符号の説明】
【0064】
1 第1剥離シート
2 粘着シート(粘着層)
3 第2剥離シート