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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】電気接続箱
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/03 20060101AFI20231207BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20231207BHJP
   H02G 3/16 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B60R16/03 Z
B60R16/02 610A
H02G3/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019111213
(22)【出願日】2019-06-14
(65)【公開番号】P2020203529
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2021-02-18
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 涼馬
(72)【発明者】
【氏名】山田 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】杉本 晃三
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正志
(72)【発明者】
【氏名】勝又 健一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 潤
【合議体】
【審判長】筑波 茂樹
【審判官】中村 則夫
【審判官】久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/222058(WO,A1)
【文献】特開2011-97757(JP,A)
【文献】特開2005-289375(JP,A)
【文献】特開2001-25137(JP,A)
【文献】特開2018-67987(JP,A)
【文献】特表2011-522352(JP,A)
【文献】特開2003-219538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、入力側電源ラインから供給される電源電力を複数の出力側電源ラインに分配する電力分配回路、及び/又は前記電源電力に対して所定の機能を果たす電気部品が所定の筐体内に配置された電気接続箱であって、
前記筐体内部に設置され、それぞれ配索経路が異なる複数の通信用ケーブルと接続可能な複数の通信用コネクタと、
前記筐体の内部に設置され、それぞれ配索経路が異なる複数の電力用ケーブルと接続可能な複数の出力側電力用コネクタと、
前記筐体の内部に配置され、通信の中継機能を有し前記複数の通信用コネクタの間の通信経路を制御する通信スイッチ回路と、
前記筐体の内部に配置され、前記入力側電源ラインからの電力に基づき生成した共通電力を、前記通信スイッチ回路を含む複数の電気回路に供給可能な共通電源回路と、
を備え、
前記筐体の内部にて、前記通信スイッチ回路を収容した第1回路基板と、前記電力分配回路を収容した第2回路基板とが、厚み方向に一定の間隔を空けて重ねた状態で配置され
前記複数の通信用コネクタは、それぞれ、前記第1回路基板の周縁の異なる位置に配置され、
前記複数の出力側電力用コネクタは、それぞれ、前記第2回路基板の周縁の異なる位置であって対応する前記通信用コネクタと前記厚み方向に対向する位置に配置され、
前記厚み方向に対向配置された前記通信用コネクタ及び前記出力側電力用コネクタは、前記配索経路が同じ前記通信用ケーブル及び前記電力用ケーブルとそれぞれ接続される、
電気接続箱。
【請求項2】
記複数の出力側電力用コネクタと隣接、又は接近した位置に前記複数の通信用コネクタがそれぞれ配置された、
請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記筐体の少なくとも一部分が、車両のエンジンルーム内に露出する状態で設置され、
前記複数の通信用コネクタの一部分は、前記エンジンルーム内に露出する状態で設置された、
請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項4】
前記筐体が防水機能を有し、
前記通信スイッチ回路および前記共通電源回路は、前記筐体に備わっている防水機能を、前記電気部品と共有する、
請求項3に記載の電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等において電源電力を様々な負荷に供給するための電気接続に利用可能な電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両は、主電源として一般的に車載バッテリーを備えている。また、車載バッテリーを充電するためにオルタネータ(発電機)を備えている。そして、車両の各部に搭載されている多数の様々な電装品、すなわち負荷に対して、主電源から直流の電源電力がそれぞれ供給される。車両における各負荷は、車両の走行、操舵、停止、ドア開閉、照明、通信などの様々な機能を、常時、あるいは必要に応じて果たすためにそれぞれ利用されるものであり、電源電力の供給を必要とする。
【0003】
車両上で、主として主電源から各電装品への電源電力供給を可能にするために、ワイヤハーネスを介して主電源と各電装品との間が電気的に接続される。ワイヤハーネスは基本的には多数の電線の集合体であり、一般的に形状や構造が非常に複雑になっている。
【0004】
また、主電源からの電源電力を複数の出力側経路に分配したり、各負荷への電力供給のオンオフを制御したり、電源や各負荷等の保護を可能にするために、一般的にワイヤハーネスの中間部位に電気接続箱が接続される。代表的な電気接続箱としては、ジャンクションブロック(J/B)、リレーボックス(R/B)などが知られている。
【0005】
また、近年の車両においては、車両上の様々な箇所に搭載されている多数の電子制御ユニット(ECU)、スイッチ、センサ等の間で信号やデータを伝送する必要がある。したがって、信号やデータの伝送に利用される様々な通信線も、同じワイヤハーネスに組み込まれる場合が多い。
【0006】
特許文献1には、車両上における情報伝送の例が示されている。また、特許文献1の図3に示された構成では、段落[0053]に記載されているように、情報系バス20は、イーサネット(登録商標)規格の通信バス21を備え、該通信バス21を介してIPによるDMZ60との通信が可能に接続されている。通信バス21には、ECU211と、イーサネットスイッチ212を介した2つのECU213,214とが接続されている。イーサネットスイッチ212は、スイッチング・ハブであって、通信バス21を介して入力されたDMZ60からの通信メッセージを、当該通信メッセージの送信先であるECU(213又は214)に振り分ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-165641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば、自動運転機能などを車両に搭載することを考慮すると、車両上で様々な情報の伝送を可能にするために、特許文献1に示されているようにイーサネットを利用したり、スイッチング・ハブを設置することが想定される。
【0009】
しかしながら、例えば車両の先端部等に設置したLiDAR(Light Detection and Ranging)センサの信号をイーサネットを利用して伝送し車体の中央付近まで届けようとする場合には、距離が長くなり信号の減衰などの問題が生じやすいので、ワイヤハーネスの途中に中継コネクタを介在する必要がある。そのため、ワイヤハーネスの構造が複雑化する。
【0010】
また、スイッチング・ハブは電圧の安定した電源電力を必要とするので、電源回路を搭載しなければならず小型化が難しい。また、例えば車両の先端部等に設置したLiDARセンサの信号を、エンジンルームを経由して車室内側に引き込む場合には、その信号を伝送するワイヤハーネスがエンジンルームの隔壁を貫通する箇所などに、防水機能を持たせなければならない。更に、LiDARセンサが高性能化したりその設置数が増えた場合には、隔壁を貫通するワイヤハーネスの外径増大に伴って貫通孔を広げなければならず、エンジンルーム内の振動、音などが車室内に伝わりやすくなるという問題も生じる。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、自動運転機能などの搭載により高機能化した車両においても、ワイヤハーネスの構造が複雑化したり部品点数が増大するのを抑制可能な電気接続箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するために、本発明に係る電気接続箱は、下記(1)~(4)を特徴としている。
(1) 少なくとも、入力側電源ラインから供給される電源電力を複数の出力側電源ラインに分配する電力分配回路、及び/又は前記電源電力に対して所定の機能を果たす電気部品が所定の筐体内に配置された電気接続箱であって、
前記筐体内部に設置され、それぞれ配索経路が異なる複数の通信用ケーブルと接続可能な複数の通信用コネクタと、
前記筐体の内部に設置され、それぞれ配索経路が異なる複数の電力用ケーブルと接続可能な複数の出力側電力用コネクタと、
前記筐体の内部に配置され、通信の中継機能を有し前記複数の通信用コネクタの間の通信経路を制御する通信スイッチ回路と、
前記筐体の内部に配置され、前記入力側電源ラインからの電力に基づき生成した共通電力を、前記通信スイッチ回路を含む複数の電気回路に供給可能な共通電源回路と、
を備え、
前記筐体の内部にて、前記通信スイッチ回路を収容した第1回路基板と、前記電力分配回路を収容した第2回路基板とが、厚み方向に一定の間隔を空けて重ねた状態で配置され
前記複数の通信用コネクタは、それぞれ、前記第1回路基板の周縁の異なる位置に配置され、
前記複数の出力側電力用コネクタは、それぞれ、前記第2回路基板の周縁の異なる位置であって対応する前記通信用コネクタと前記厚み方向に対向する位置に配置され、
前記厚み方向に対向配置された前記通信用コネクタ及び前記出力側電力用コネクタは、前記配索経路が同じ前記通信用ケーブル及び前記電力用ケーブルとそれぞれ接続される、
電気接続箱。
【0013】
(2) 記複数の出力側電力用コネクタと隣接、又は接近した位置に前記複数の通信用コネクタがそれぞれ配置された、
上記(1)に記載の電気接続箱。
【0014】
(3) 前記筐体の少なくとも一部分が、車両のエンジンルーム内に露出する状態で設置され、
前記複数の通信用コネクタの一部分は、前記エンジンルーム内に露出する状態で設置された、
上記(1)に記載の電気接続箱。
【0015】
(4) 前記筐体が防水機能を有し、
前記通信スイッチ回路および前記共通電源回路は、前記筐体に備わっている防水機能を、前記電気部品と共有する、
上記(3)に記載の電気接続箱。
【0016】
上記(1)の構成の電気接続箱によれば、これに内蔵されている通信スイッチ回路が複数の通信用コネクタの間の通信経路を制御するので、外側にスイッチング・ハブを接続する必要がなくなる。つまり、電気接続箱とスイッチング・ハブとを接続する電線等を削減できる。しかも、筐体に内蔵した共通電源回路が通信スイッチ回路を含む複数の電気回路に共通に電源電力を供給できるため、電気接続箱の外側にスイッチング・ハブを接続する場合と比べて部品数の削減および装置全体の小型化が可能になる。
【0017】
上記(2)の構成の電気接続箱によれば、出力側電力用コネクタと通信用コネクタとが隣接、又は接近した位置に配置されているので、ワイヤハーネスを構成する電力用ケーブルの電線と、通信用ケーブルの電線とを並べて配置することが容易になる。つまり、ワイヤハーネスを配索する際に、配索先の領域が共通の電力用ケーブルと通信用ケーブルとが共通の経路を通るように構成しやすくなり、構造や形状の複雑化を避けることが可能になる。更に、コネクタ同士の着脱作業も容易になる。また、通信スイッチ回路が通信の中継機能を有しているので、電気接続箱とLiDARセンサとの距離が小さい場合には、中継コネクタを削減できる。
【0018】
上記(3)の構成の電気接続箱によれば、これに内蔵されている通信スイッチ回路が複数の通信用コネクタの間の通信経路を制御するので、通信用ケーブルの電線がエンジンルームの隔壁を貫通する箇所においてワイヤハーネスの外径が増大するのを避けることができる。したがって、貫通孔を広げる必要がなく、エンジンルーム内の振動、音などが車室内に伝わるのを抑制できる。また、通信スイッチ回路が通信の中継機能を有しているので、電気接続箱とLiDARセンサとの距離が小さい場合には、中継コネクタを削減できる。
【0019】
上記(4)の構成の電気接続箱によれば、筐体の防水機能を電気部品、通信スイッチ回路、および共通電源回路が共有するので、特別な防水機能を新たに付加する必要がない。したがって、装置全体の部品数の削減および小型化が可能になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の電気接続箱によれば、自動運転機能などの搭載により高機能化した車両においても、ワイヤハーネスの構造が複雑化したり部品点数が増大するのを抑制できる。すなわち、電気接続箱の外側に接続するスイッチング・ハブを削減できるため、これらの間を接続する電線等も削減できる。しかも、筐体に内蔵した共通電源回路が通信スイッチ回路を含む複数の電気回路に共通に電源電力を供給できるため、電気接続箱の外側にスイッチング・ハブを接続する場合と比べて部品数の削減および装置全体の小型化が可能になる。
【0021】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、JB・スイッチボックスとして構成した電気接続箱を搭載した車両上の主要な構成要素のレイアウト概要を表す平面図である。
図2図2(a)は、JB・スイッチボックスの構成例-1における主要な構成要素のレイアウトを表す斜視図、図2(b)は図2(a)のJB・スイッチボックスの筐体に内蔵した構成要素のレイアウトを表す斜視図である。
図3図3(a)は、JB・スイッチボックスの構成例-2における主要な構成要素のレイアウトを表す斜視図、図3(b)は図3(a)のJB・スイッチボックスの筐体に内蔵した構成要素のレイアウトを表す斜視図である。
図4図4(a)は、JB・スイッチボックスの構成例-3における主要な構成要素のレイアウトを表す斜視図、図4(b)は図4(a)のJB・スイッチボックスの筐体に内蔵した構成要素のレイアウトを表す斜視図である。
図5図5は、図2(a)のJB・スイッチボックスにおける回路構成を表すブロック図である。
図6図6は、RB・スイッチボックスとして構成した電気接続箱を搭載した車両上の主要な構成要素のレイアウト概要を表す平面図である。
図7図7(a)は、RB・スイッチボックスの外観の例を示す斜視図、図7(b)は車両上におけるRB・スイッチボックスの配置例を表す平面図である。
図8図8は、図7(a)のRB・スイッチボックスにおける回路構成を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0024】
<車両上のレイアウト概要-1>
図1は、JB・スイッチボックス31、32として構成した電気接続箱を搭載した車両10上の主要な構成要素のレイアウト概要を表す平面図である。図1は車両10上の主要な構成要素を上方から視た平面図であり、図中左側が車両のフロント側、右側がリア側を表している。
【0025】
図1に示すように、車両10の内部は、大きく分けてエンジンルーム11、車室12、および荷室13の3区画に仕切られている。エンジンルーム11内に主電源である車載バッテリ19が設置されている。そして、エンジンルーム11内の車載バッテリ19から、ワイヤハーネス17、18を経由して、車両10上の様々な電装品に対して電源電力(+B:例えば直流電圧12[V]の電源)が供給される。また、イグニッション(IG)のオンオフに連動する電源線も各電装品に接続される。
【0026】
図1に示す例では、ワイヤハーネス17、18の経路の途中にJB・スイッチボックス31および32が接続されている。JB・スイッチボックス31および32それぞれは、基本的には一般的な構成要素であるジャンクションブロック(J/B)の機能と、イーサネット通信用のスイッチング・ハブの機能とを統合して1つの筐体内部に収容したものである。
【0027】
したがって、JB・スイッチボックス31および32のそれぞれに対して、ワイヤハーネス17、18の電源線だけでなく、通信線も接続することができる。また、ジャンクションブロックの機能と、スイッチング・ハブの機能とが1つの筐体内に統合されているので、これらの間を接続する電源線はワイヤハーネス17、18において不要になる。
【0028】
本実施形態においては、車両10は、自動運転機能に対応できるように、車体フロント部15の右端、中央、左端、および車体リア部16右端に、それぞれLiDAR(Light Detection and Ranging)装置21、22、23、および24が設置されている。
【0029】
LiDAR装置22、23の電源線および通信線は、ワイヤハーネス17と共にエンジンルーム11と車室12のフロア間を跨ぐようにそれらの隔壁を貫通し、JB・スイッチボックス31と接続されている。また、LiDAR装置21の電源線および通信線は、ワイヤハーネス18と共にエンジンルーム11と車室12のフロア間を跨ぐようにそれらの隔壁を貫通し、JB・スイッチボックス31と接続されている。また、イーサネットの通信を中継するために、ワイヤハーネス18の途中に中継コネクタ25が接続されている。LiDAR装置24の電源線および通信線は、中継コネクタ26を経由してJB・スイッチボックス32と接続されている。
【0030】
また、車両10は、様々な電装品41~47を搭載している。電装品41~47は、専用の通信機(DCM:Data Communication Module)、メータユニット、セントラルゲートウェイ(Central GateWay)、ADX、自動運転システム(ADS)の電子制御ユニット、SISの電子制御ユニット、DLC(Data Link Connector)などの構成や機能を有している。セントラルゲートウェイは、車両10上の複数のネットワーク(CAN等)の間でデータやプロトコルの変換を実施すると共に、車両情報管理の中枢となる機能を提供する。
【0031】
図1の例では、車室12内の前方側にJB・スイッチボックス31が配置され、車室12内の後方側にJB・スイッチボックス32が配置されている。そのため、インストルメントパネルの近傍に存在する電装品41、42、43、および47はJB・スイッチボックス31と接続されている。また、荷室13内等に配置されている電装品44、45、および46はJB・スイッチボックス32と接続されている。
【0032】
なお、LiDAR装置22、23をイーサネットの通信線で接続する場合には、通信線の距離が長くなると信号の減衰等の影響が大きくなるため、通信線の途中に中継コネクタを接続する必要がある。しかし、図1に示した例では、イーサネットの通信を中継する機能を有するスイッチング・ハブの機能がJB・スイッチボックス31に含まれているので、JB・スイッチボックス31を設置した位置と、LiDAR装置22、23との距離が大きくない場合はこれらの途中の中継コネクタを省略できる。LiDAR装置21を接続するワイヤハーネス18においては、JB・スイッチボックス31との距離が大きくなるので途中に中継コネクタ25が接続されている。
【0033】
また、図1に示した例では、ワイヤハーネス17において、車載バッテリ19とJB・スイッチボックス31との間を接続する+Bの電源ラインと、車載バッテリ19とJB・スイッチボックス32との間を接続する+Bの電源ラインとがそれぞれ独立した状態で接続されている。また、図示しないが、これらの電源ラインには個別にヒューズが挿入されている。したがって、何らかの異常が発生して一方の電源ラインのヒューズが断線し、2つのJB・スイッチボックス31、32の一方の電力供給およびイーサネット通信の機能が動作しなくなった場合でも、他方の機能を利用して電力供給およびイーサネット通信の経路を確保できる。
【0034】
<JB・スイッチボックス31の構成例-1>
図2(a)は、JB・スイッチボックス31の構成例-1における主要な構成要素のレイアウトを表す斜視図、図2(b)は図2(a)のJB・スイッチボックス31Aの筐体に内蔵した構成要素のレイアウトを表す斜視図である。なお、JB・スイッチボックス32の構成もJB・スイッチボックス31Aと同様である。
【0035】
図2(a)に示すように、JB・スイッチボックス31Aは、外形が直方体形状の中空の箱を形成する筐体51を備えている。また、筐体51の中にJB機能部52およびスイッチングハブ機能部53を含む回路基板が収容されている。
【0036】
筐体51の前面側には、エンコパ(エンジンコンパートメント、すなわちエンジンルーム11)用接続部54およびフロア用接続部55が上下二段の位置に分けて配置されている。また、筐体51の背面側にはインパネ(インストルメントパネル)用接続部56が配置されている。
【0037】
エンコパ用接続部54は、ワイヤハーネス57を構成するサブハーネスのうち、配索先がエンジンルーム11に区分された部位を接続するために利用される。また、フロア用接続部55は、ワイヤハーネス57を構成するサブハーネスのうち、配索先が車室12内のフロア領域に区分された部位を接続するために利用される。また、インパネ用接続部56は、ワイヤハーネス57を構成するサブハーネスのうち、配索先が車室12内のインストルメントパネルの領域に区分された部位を接続するために利用される。
【0038】
エンコパ用接続部54は電力系コネクタ54aおよび通信系コネクタ54bを有し、フロア用接続部55は電力系コネクタ55aおよび通信系コネクタ55bを有し、インパネ用接続部56は電力系コネクタ56aおよび通信系コネクタ56bを有している。
【0039】
JB・スイッチボックス31A上の各通信系コネクタ54b、55b、および56bは、ワイヤハーネス57を構成するサブハーネスの中で、イーサネットの通信線に連結された通信系コネクタ57bと接続される。また、JB・スイッチボックス31A上の各電力系コネクタ54a、55a、および56aは、ワイヤハーネス57を構成するサブハーネスの中で、イーサネットの通信線以外の各電線に連結された電力系コネクタ57aと接続される。
【0040】
図2(a)に示すように、同じエンコパ用接続部54に隣接した状態で電力系コネクタ54aおよび通信系コネクタ54bが配置されることにより、ワイヤハーネス57の配索作業が容易になる。すなわち、エンジンルーム11内からJB・スイッチボックス31Aの設置位置までの間でほぼ共通の経路で配索される電力系およびイーサネット通信系のサブハーネスの2つのコネクタ(57a,57b)を一緒に引き回して同じ場所で電力系コネクタ54aおよび通信系コネクタ54bと嵌合させることができる。
【0041】
同様に、車室12内のフロア領域からJB・スイッチボックス31Aの設置位置までの間でほぼ共通の経路で配索されるサブハーネスの2つのコネクタ(57a,57b)を一緒に引き回して同じ場所で電力系コネクタ55aおよび通信系コネクタ55bと嵌合させることができる。また、車室12内のインストルメントパネルの近傍からJB・スイッチボックス31Aの設置位置までの間でほぼ共通の経路で配索されるサブハーネスの2つのコネクタ(57a,57b)を一緒に引き回して同じ場所で電力系コネクタ56aおよび通信系コネクタ56bと嵌合させることができる。
【0042】
図2(b)に示すように、この例ではスイッチングハブ機能部53を収容した回路基板とJB機能部52を収容した回路基板とが独立している。また、これら2枚の回路基板が厚み方向に一定の間隔を空けて重ねた状態で配置してある。
【0043】
また、JB機能部52を含む回路基板の一端側に電力系コネクタ54aおよび55aが配置され、他端側に電力系コネクタ56aが配置されている。また、スイッチングハブ機能部53を含む回路基板の一端側に通信系コネクタ54bおよび55bが配置され、他端側に通信系コネクタ56bが配置されている。したがって、エンコパ用接続部54、フロア用接続部55、およびインパネ用接続部56の各位置で電力系コネクタ54a、55a、および56aと、通信系コネクタ54b、55b、および56bとを互いに接近した状態で配置することができる。特に、図2(b)のように2枚の回路基板を利用する場合には、電力系コネクタ54a、55a、56aと通信系コネクタ54b、55b、56bとの距離を接近させることが可能である。
【0044】
例えば図1に示したJB・スイッチボックス31と接続するワイヤハーネス17、18において、JB・スイッチボックス31を基点としてエンコパ側に向かう電力系のサブハーネスとイーサネット通信用のサブハーネスはほぼ同じ方向に向かい同じ経路で配索される場合が多い。したがって、電力系コネクタ54aと通信系コネクタ54bを隣接した位置に配置することにより、ワイヤハーネスを配索する際の電線の取り回しやコネクタ接続の作業性が改善される。
【0045】
同様に、JB・スイッチボックス31を基点としてフロア側に向かう電力系のサブハーネスとイーサネット通信用のサブハーネスについてもほぼ同じ方向に向かい同じ経路で配索される場合が多い。したがって、電力系コネクタ55aと通信系コネクタ55bを隣接した位置に配置することにより、ワイヤハーネスを配索する際の電線の取り回しやコネクタ接続の作業性が改善される。同様に、電力系コネクタ56aと通信系コネクタ56bを隣接した位置に配置することにより、ワイヤハーネスを配索する際の電線の取り回しやコネクタ接続の作業性が改善される。
【0046】
なお、例えば図2(a)の構成において、エンコパ用接続部54の電力系コネクタ54aと通信系コネクタ54bとを予め物理的に連結しておけば、間口を1つに纏めることができる。その場合、電力系コネクタ57aおよび通信系コネクタ57bをJB・スイッチボックス31Aのエンコパ用接続部54に対して着脱する作業を1回で済ませることが可能になる。フロア用接続部55およびインパネ用接続部56についても、同様に纏めることができる。
【0047】
<JB・スイッチボックス31の構成例-2>
図3(a)は、JB・スイッチボックス31の構成例-2における主要な構成要素のレイアウトを表す斜視図、図3(b)は図3(a)のJB・スイッチボックス31Bの筐体に内蔵した構成要素のレイアウトを表す斜視図である。
【0048】
図3(a)に示すように、このJB・スイッチボックス31Bは、外形が直方体形状の中空の箱を形成する筐体51を備えている。また、筐体51の中にJB機能部52およびスイッチングハブ機能部53を含む1枚の回路基板が収容されている。
【0049】
筐体51の前面側には、エンコパ用接続部54およびフロア用接続部55が上下二段の位置に分けて配置されている。また、筐体51の上面側にインパネ用接続部56が配置され、筐体51の背面側には通信専用接続部58が配置されている。
【0050】
エンコパ用接続部54は、ワイヤハーネス57を構成するサブハーネスのうち、配索先がエンジンルーム11に区分された部位を接続するために利用される。また、フロア用接続部55は、ワイヤハーネス57を構成するサブハーネスのうち、配索先が車室12内のフロア領域に区分された部位を接続するために利用される。また、インパネ用接続部56は、ワイヤハーネス57を構成するサブハーネスのうち、配索先が車室12内のインストルメントパネルの領域に区分された部位を接続するために利用される。
【0051】
図3(a)に示すように、エンコパ用接続部54は電力系コネクタ54aを有し、フロア用接続部55は電力系コネクタ55aを有し、インパネ用接続部56は電力系コネクタ56aを有している。また、通信専用接続部58は、それぞれがいずれの配索経路のサブハーネスにも対応できる複数の通信系コネクタ58bを有している。
【0052】
したがって、このJB・スイッチボックス31Bと接続するワイヤハーネス57を配索する際に、イーサネット通信用のサブハーネスと、それ以外のサブハーネスとを別々に分けて作業することができる。また、図3(a)に示すようにエンコパ用接続部54、フロア用接続部55、およびインパネ用接続部56を互いに異なる位置に分けて配置することにより、ワイヤハーネス57のうち互いに配索経路が異なるサブハーネスを、経路毎に区分して作業することが可能になる。
【0053】
図3(b)に示すように、この例では1枚の回路基板の中に、スイッチングハブ機能部53を収容した箇所と、JB機能部52を収容した箇所とが含まれている。また、図3(a)に示すように、スイッチングハブ機能部53を収容した箇所は筐体51の背面に近い側に配置され、JB機能部52を収容した箇所は筐体51の前面に近い側に配置されている。
【0054】
このように1枚の回路基板の中にJB機能部52とスイッチングハブ機能部53とを収容することにより、EMC(electromagnetic compatibility)対策が容易になる。すなわち、図示しないシールド板を1枚の回路基板に重ねた状態で配置するだけで、電磁波妨害を容易に排除できる。
【0055】
図3(b)に示すように、JB機能部52が含まれる回路基板の右側および上側に、電力系コネクタ54a、55a、および56aが配置されている。また、スイッチングハブ機能部53が含まれる回路基板の左端側に通信系コネクタ58bが配置されている。したがって、互いに配索経路又は種類が異なるサブハーネスの接続位置を、エンコパ用接続部54、フロア用接続部55、インパネ用接続部56、および通信専用接続部58の4箇所に区分することができる。また、図3(b)の例ではEMC対策を必要とするスイッチングハブ機能部53の領域が基板の左端側に片寄って配置され分かりやすいので、比較的小さい1枚のシールド板だけで、十分なEMC対策が可能である。
【0056】
<JB・スイッチボックス31の構成例-3>
図4(a)は、JB・スイッチボックス31の構成例-3における主要な構成要素のレイアウトを表す斜視図、図4(b)は図4(a)のJB・スイッチボックス31Cの筐体に内蔵した構成要素のレイアウトを表す斜視図である。
【0057】
図4(a)に示すように、JB・スイッチボックス31Cは、外形が直方体形状の中空の箱を形成する筐体51を備えている。また、筐体51の中にJB機能部52およびスイッチングハブ機能部53を含む回路基板が収容されている。筐体51の前面側には、エンコパ用接続部54およびフロア用接続部55が上下二段の位置に分けて配置されている。また、筐体51の背面側にはインパネ用接続部56が配置されている。
【0058】
エンコパ用接続部54は、ワイヤハーネス57を構成するサブハーネスのうち、配索先がエンジンルーム11に区分された部位を接続するために利用される。また、フロア用接続部55は、ワイヤハーネス57を構成するサブハーネスのうち、配索先が車室12内のフロア領域に区分された部位を接続するために利用される。また、インパネ用接続部56は、ワイヤハーネス57を構成するサブハーネスのうち、配索先が車室12内のインストルメントパネルの領域に区分された部位を接続するために利用される。
【0059】
エンコパ用接続部54は互いに隣接する状態で配置された電力系コネクタ54aおよび通信系コネクタ54bを有し、フロア用接続部55は互いに隣接する状態で配置された電力系コネクタ55aおよび通信系コネクタ55bを有し、インパネ用接続部56は互いに隣接する状態で配置された電力系コネクタ56aおよび通信系コネクタ56bを有している。
【0060】
JB・スイッチボックス31C上の各通信系コネクタ54b、55b、および56bは、ワイヤハーネス57を構成するサブハーネスの中で、イーサネットの通信線に連結された通信系コネクタ57bと接続される。また、JB・スイッチボックス31C上の各電力系コネクタ54a、55a、および56aは、ワイヤハーネス57を構成するサブハーネスの中で、イーサネットの通信線以外の各電線に連結された電力系コネクタ57aと接続される。
【0061】
図4(a)に示すように、同じエンコパ用接続部54に隣接した状態で電力系コネクタ54aおよび通信系コネクタ54bを配置することにより、ワイヤハーネス57の配索作業が容易になる。すなわち、エンジンルーム11内からJB・スイッチボックス31Cの設置位置までの間でほぼ共通の経路で配索されるサブハーネスの2つのコネクタ(57a,57b)を一緒に引き回して同じ場所で電力系コネクタ54aおよび通信系コネクタ54bと嵌合させることができる。
【0062】
上記と同様に、車室12内のフロア領域からJB・スイッチボックス31Cの設置位置までの間でほぼ共通の経路で配索されるサブハーネスの2つのコネクタ(57a,57b)を一緒に引き回して同じ場所で電力系コネクタ55aおよび通信系コネクタ55bと嵌合させることができる。また、車室12内のインストルメントパネルの近傍からJB・スイッチボックス31Cの設置位置までの間でほぼ共通の経路で配索されるサブハーネスの2つのコネクタ(57a,57b)を一緒に引き回して同じ場所で電力系コネクタ56aおよび通信系コネクタ56bと嵌合させることができる。
【0063】
図4(b)に示すように、この例では筐体51内の1枚の回路基板の中に、複数種類の機能が混在した状態で構成されている。また、この回路基板の中に、JB機能部52およびスイッチングハブ機能部53も含まれている。図4(b)の例では、JB機能部52が回路基板の下方の領域に配置され、スイッチングハブ機能部53が回路基板の上方の領域に配置されている。
【0064】
また、この回路基板の右端側に通信系コネクタ54b、55b、および電力系コネクタ54a、55aが配置され、左端側に通信系コネクタ56bおよび電力系コネクタ56aが配置されている。なお、図4(b)の例では、1枚の回路基板の中に複数種類の機能が混在しているので、各電力系コネクタ54a、55a、56a、および各通信系コネクタ54b、55b、56bの配置に関する制約が少なくなる。
【0065】
<JB・スイッチボックス31の回路構成>
図5は、図2(a)のJB・スイッチボックス31における回路構成を表すブロック図である。すなわち、筐体51内の1枚又は複数枚の回路基板の中に図5のような回路要素が含まれている。
【0066】
図5に示すJB・スイッチボックス31は、JB機能部52、スイッチングハブ機能部53、および共通電源回路59を備えている。また、JB機能部52は電力分配回路52aおよび電源制御部52bを含んでいる。
【0067】
電力分配回路52aは、入力側の経路から供給される電源電力を、複数系統の出力側経路のそれぞれに分配した状態で供給することができる。例えば、電力分配回路52aは、複数の半導体スイッチング素子を用いて経路毎に通電のオンオフを制御し、必要な経路だけに電力を供給したり、オンオフデューティの調整などにより経路毎に分配する電力量を調整することが想定される。電源制御部52bは、状況に応じて電力分配回路52aを適切に制御し、経路毎に電力の分配量を制御する。
【0068】
図5の例では、JB機能部52は、車載バッテリ19から供給される電源電力を、電力系コネクタ56aを介して受け取り、電力系コネクタ54a、55a、56aの各出力系統に分配して供給することができる。
【0069】
スイッチングハブ機能部53は、一般的な構成のスイッチング・ハブと同様に、イーサネットの通信に含まれる各信号フレームを処理して、信号の中継や信号毎の経路切替を制御することができる。例えば、通信系コネクタ56bから入力されたイーサネット通信のフレームを中継し、その宛先に応じて、通信系コネクタ54b、55bのいずれかの経路を選択し送出することができる。また、スイッチングハブ機能部53は、通信系コネクタ54bから入力されたイーサネット通信のフレームを中継し、その宛先に応じて、通信系コネクタ55b、56bのいずれかの経路を選択し送出することができる。
【0070】
なお、スイッチングハブ機能部53自体は、その動作に必要な電源回路を内蔵していないので、電圧の安定した所定の電源電力を外部から供給する必要がある。
一方、共通電源回路59は、車載バッテリ19等の主電源から+Bの電源ラインおよび電力系コネクタ56aを経由して供給される入力側の電源電力に基づいて、JB・スイッチボックス31内の電子回路の動作に必要な電圧(例えば+5[V])の安定した出力側電源電力を生成することができる。共通電源回路59が生成した電源電力は、電力分配回路52a、電源制御部52b、およびスイッチングハブ機能部53のそれぞれに対して共通の電源電力として供給される。
【0071】
図5に示すように、JB・スイッチボックス31の筐体51内でJB機能部52およびスイッチングハブ機能部53を統合した場合には、JB機能部52およびスイッチングハブ機能部53が共通電源回路59から供給される電源電力を共通に利用できる。そのため、独立したスイッチング・ハブを筐体51外に外付けする場合と比べると、回路全体の部品数の削減および容積の削減が可能になる。更に、筐体51と外付けのスイッチング・ハブとの間を接続するワイヤハーネスも不要になる。したがって、部品コストも削減できる。
【0072】
JB・スイッチボックス31の電力系コネクタ56aおよび通信系コネクタ56bに接続されるワイヤハーネス57iは、ワイヤハーネス57を構成する各サブハーネスの中でJB・スイッチボックス31とインストルメントパネルの近傍との間の配索経路を通るサブハーネスの部位に相当する。
【0073】
また、JB・スイッチボックス31の電力系コネクタ54aおよび通信系コネクタ54bに接続されるワイヤハーネス57eは、ワイヤハーネス57を構成する各サブハーネスの中でJB・スイッチボックス31とエンジンルーム11内との間の配索経路を通るサブハーネスの部位に相当する。
【0074】
また、JB・スイッチボックス31の電力系コネクタ55aおよび通信系コネクタ55bに接続されるワイヤハーネス57fは、ワイヤハーネス57を構成する各サブハーネスの中でJB・スイッチボックス31と車室12内のフロア領域との間の配索経路を通るサブハーネスの部位に相当する。
【0075】
<車両上のレイアウト概要-2>
図6は、RB・スイッチボックス33、34として構成した電気接続箱を搭載した車両10上の主要な構成要素のレイアウト概要を表す平面図である。図6は車両10上の主要な構成要素を上方から視た平面図であり、図中左側が車両のフロント側、右側がリア側を表している。
【0076】
図6に示した構成は、JB・スイッチボックス31、32がRB・スイッチボックス33、34に変更された点を除き、図1の構成とほぼ同一であるが、実際に設置する位置や細部の構成に後述するような違いがある。
【0077】
RB・スイッチボックス33および34のそれぞれは、基本的には一般的な構成要素であるリレーボックス(R/B)の機能と、イーサネット通信用のスイッチング・ハブの機能とを統合して1つの筐体内部に収容したものである。
【0078】
したがって、RB・スイッチボックス33および34のそれぞれに対して、ワイヤハーネス17、18の電源線だけでなく、通信線も接続することができる。また、リレーボックスの機能と、スイッチング・ハブの機能とが1つの筐体内に統合されているので、これらの間を接続する電源線はワイヤハーネス17、18において不要になる。
【0079】
<RB・スイッチボックス33の外観および設置位置>
図7(a)は、RB・スイッチボックス33の外観の例を示す斜視図、図7(b)は車両10上におけるRB・スイッチボックス33の配置例を表す平面図である。
【0080】
図7(a)に示すように、RB・スイッチボックス33は、外形が直方体形状の中空の箱を形成する筐体33aを備えている。また、筐体33aの中にRB機能部62およびスイッチングハブ機能部63を含む回路ユニット60の回路基板が収容されている。
【0081】
また、RB・スイッチボックス33の一端側にワイヤハーネス67が接続され、他端側にワイヤハーネス68が接続されている。ワイヤハーネス67は、一端がRB・スイッチボックス33と接続され、他端が車載バッテリ19と接続される。ワイヤハーネス68は、一端がRB・スイッチボックス33と接続され、他端がRB・スイッチボックス34など他の電装品と接続される。
【0082】
図7(b)に示すように、RB・スイッチボックス33は少なくともその筐体33aやコネクタの一部分がエンジンルーム11内の空間に位置するように設置される。エンジンルーム11内の各種電装品は防水性を要求されるので、RB・スイッチボックス33の筐体33aやその電気接続部位(コネクタなど)についても防水機能が備わっている。
【0083】
図7(a)のようにRB機能部62およびスイッチングハブ機能部63を含む回路ユニット60は防水機能を有する筐体33aの内部に収容されているので、RB機能部62およびスイッチングハブ機能部63のそれぞれについては特別な防水機能を必要としない。
【0084】
例えば、LiDAR装置21~23の高性能化や設置数の増大に伴って、これらを接続するための通信線を含むワイヤハーネスがエンジンルーム11の隔壁11aを貫通する箇所において、貫通孔の径が太くなり、エンジンルーム11内の振動や騒音が車室12内に伝わりやすくなることが懸念される。
【0085】
しかし、LiDAR装置21~23の通信線をエンジンルーム11内のRB・スイッチボックス33に直接接続する場合には、RB・スイッチボックス33内のスイッチングハブ機能部63の通信経路切り替え機能を利用できる。これにより、隔壁11aを貫通する箇所のワイヤハーネスが肥大化するのを避けることができ、エンジンルーム11内の振動や騒音が車室12内に伝わるのを抑制できる。また、各LiDAR装置21~23とRB・スイッチボックス33との距離を小さくできるので、イーサネットの通信信号を中継する中継コネクタをワイヤハーネスの途中に挿入する必要がなくなる。
【0086】
<RB・スイッチボックス33の回路構成>
図8は、図7(a)のRB・スイッチボックス33における回路構成を表すブロック図である。筐体33a内の回路ユニット60の回路基板の中に図8のような回路要素が含まれている。
【0087】
図8に示したRB・スイッチボックス33は、RB機能部62、スイッチングハブ機能部63、および共通電源回路69を備えている。また、RB機能部62は、半導体リレー回路62aおよびリレー制御部62bを含んでいる。
【0088】
半導体リレー回路62aは、入力側電源ラインの経路から供給される電源電力を、出力側電源ラインに供給する動作のオンオフを、半導体スイッチング素子を用いて行うものである。つまり、半導体リレー回路62aは、ヒューズと同様に過大な電流を遮断して電源や各負荷を保護するために利用される。リレー制御部62bは、半導体リレー回路62aにおける通電状況などを監視して、半導体リレー回路62aのオンオフを制御するための制御信号を生成する。
【0089】
図8の例では、RB機能部62は、車載バッテリ19から供給される電源電力を、電力系コネクタ66aを介して受け取る。この電力は、RB機能部62および電力系コネクタ64aを経由して負荷側の電源ラインに供給される。そして、RB機能部62は、電源系統の異常が発生すると通電を自動的に遮断する。
【0090】
スイッチングハブ機能部63は、一般的な構成のスイッチング・ハブと同様に、イーサネットの通信に含まれる各信号フレームを処理して、信号の中継や信号毎の経路切替を制御することができる。例えば、通信系コネクタ66bから入力されたイーサネット通信のフレームを中継し、その宛先に応じて、通信系コネクタ64b、64cのいずれかの経路を選択し送出することができる。また、通信系コネクタ64bから入力されたイーサネット通信のフレームを中継し、その宛先に応じて、通信系コネクタ64c、66bのいずれかの経路を選択し送出することができる。
【0091】
なお、スイッチングハブ機能部63自体は、その動作に必要な電源回路を内蔵していないので、電圧の安定した所定の電源電力を外部から供給する必要がある。
【0092】
一方、共通電源回路69は、車載バッテリ19等の主電源から+Bの電源ラインおよび電力系コネクタ66aを経由して供給される入力側の電源電力に基づいて、RB・スイッチボックス33内の電子回路の動作に必要な電圧(例えば+5[V])の安定した出力側電源電力を生成することができる。共通電源回路69が生成した電源電力は、半導体リレー回路62a、リレー制御部62b、およびスイッチングハブ機能部63のそれぞれに対して共通の電源電力として供給される。
【0093】
図8に示すように、RB・スイッチボックス33の筐体33a内でRB機能部62およびスイッチングハブ機能部63を統合した場合には、RB機能部62およびスイッチングハブ機能部63が共通電源回路69から供給される電源電力を共通に利用できる。そのため、独立したスイッチング・ハブを筐体33a外に外付けする場合と比べると、回路全体の部品数の削減および容積の削減が可能になる。更に、筐体33aと外付けのスイッチング・ハブとの間を接続するワイヤハーネスも不要になる。
【0094】
RB・スイッチボックス33の電力系コネクタ66aに接続されるワイヤハーネス67は、ワイヤハーネス全体を構成する各サブハーネスの中で、エンジンルーム11内のRB・スイッチボックス33と車載バッテリ19との間の配索経路を通るサブハーネスの部位に相当する。
【0095】
また、RB・スイッチボックス33の電力系コネクタ64aおよび通信系コネクタ64b、64cに接続されるワイヤハーネス68は、ワイヤハーネス全体を構成する各サブハーネスの中で、RB・スイッチボックス33とその他の電装品との間の配索経路を通るサブハーネスの部位に相当する。
【0096】
なお、例えば、図1に示したJB・スイッチボックス31と、図6に示したRB・スイッチボックス33とを同じ車両10に搭載してもよい。また、その場合はRB・スイッチボックス33をエンジンルーム11内に設置し、JB・スイッチボックス31を車室12内のフロア上などに設置することが想定される。
【0097】
また、図1および図6の構成では、主電源である車載バッテリ19から負荷側に向かう方向に電源電力を供給する場合を想定しているが、車載バッテリ19の他にサブバッテリーや様々な箇所に分散配置した他のバッテリーを利用することも考えられる。その場合には、必要に応じて電源ライン上を通過する電力の通電方向を切り替えたり、バックアップ用に電力供給ラインを増設してもよい。
【0098】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る電気接続箱の特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 少なくとも、入力側電源ラインから供給される電源電力を複数の出力側電源ラインに分配する電力分配回路(52a)、及び/又は前記電源電力に対して所定の機能を果たす電気部品(半導体リレー回路62a)が所定の筐体(51)内に配置された電気接続箱(JB・スイッチボックス31、又はRB・スイッチボックス33)であって、
前記筐体、又はその内部に設置された複数の通信用コネクタ(通信系コネクタ54b、55b、56b)と、
前記筐体の内部に配置され、通信の中継機能を有し前記複数の通信用コネクタの間の通信経路を制御する通信スイッチ回路(スイッチングハブ機能部53)と、
前記筐体の内部に配置され、前記入力側電源ラインからの電力に基づき生成した共通電力を、前記通信スイッチ回路を含む複数の電気回路に供給可能な共通電源回路(59)と、
を備えた電気接続箱。
【0099】
[2] 前記筐体、又はその内部に、それぞれ配索経路が異なる複数の電力用ケーブルと接続可能な複数の出力側電力用コネクタ(電力系コネクタ54a、55a)が設置され、
前記複数の出力側電力用コネクタと隣接、又は接近した位置に前記複数の通信用コネクタ(通信系コネクタ54b、55b)がそれぞれ配置された、
上記[1]に記載の電気接続箱(JB・スイッチボックス31)。
【0100】
[3] 前記筐体の少なくとも一部分が、車両のエンジンルーム(11)内に露出する状態で設置され、
前記複数の通信用コネクタ(通信系コネクタ66b、64b、64c)の一部分は、前記エンジンルーム内に露出する状態で設置された、
上記[1]に記載の電気接続箱(RB・スイッチボックス33)。
【0101】
[4] 前記筐体(33a)が防水機能を有し、
前記通信スイッチ回路(スイッチングハブ機能部63)および前記共通電源回路(69)は、前記筐体に備わっている防水機能を、前記電気部品(RB機能部62)と共有する、
上記[3]に記載の電気接続箱。
【符号の説明】
【0102】
10 車両
11 エンジンルーム
11a 隔壁
12 車室
13 荷室
14a,14b,14c,14d ドア
15 車体フロント部
16 車体リア部
17,18 ワイヤハーネス
19 車載バッテリ
21,22,23,24 LiDAR装置
25,26 中継コネクタ
31,31A,32 JB・スイッチボックス
33,34 RB・スイッチボックス
33a 筐体
41,42,43,44,45,46,47 電装品
51 筐体
52 JB機能部
52a 電力分配回路
52b 電源制御部
53,63 スイッチングハブ機能部
54 エンコパ用接続部
54a,55a,56a,57a 電力系コネクタ
54b,55b,56b,57b,58b 通信系コネクタ
55 フロア用接続部
56 インパネ用接続部
57,57e,57f,57i,67,68 ワイヤハーネス
58 通信専用接続部
59,69 共通電源回路
60 回路ユニット
62 RB機能部
62a 半導体リレー回路
62b リレー制御部
64a,66a 電力系コネクタ
64b,64c,66b 通信系コネクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8