(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】歯車機構、減速機、および、その減速機を用いる駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 1/20 20060101AFI20231207BHJP
F16H 1/06 20060101ALI20231207BHJP
F16H 57/022 20120101ALI20231207BHJP
【FI】
F16H1/20
F16H1/06
F16H57/022
(21)【出願番号】P 2019127992
(22)【出願日】2019-07-09
【審査請求日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2019086552
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】中村 江児
(72)【発明者】
【氏名】長屋 雄太
(72)【発明者】
【氏名】島本 光
(72)【発明者】
【氏名】沖村 隆行
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-120316(JP,A)
【文献】特開平7-256969(JP,A)
【文献】実開昭63-182238(JP,U)
【文献】米国特許第2436746(US,A)
【文献】特開2002-317857(JP,A)
【文献】米国特許第4532822(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/20
F16H 1/06
F16H 57/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持ブロックと、
前記支持ブロックに回転可能に支持された入力歯車と、
前記入力歯車と噛み合う中間歯車と、
前記中間歯車と噛み合う出力歯車と、
前記入力歯車と前記出力歯車に対する前記中間歯車の位置を変更可能な歯車位置変更機構と、
を備え
、
前記歯車位置変更機構は、前記中間歯車の支持軸を保持するとともに、前記支持ブロックに脱着可能に取り付けられる保持部材を備え、
前記保持部材は、当該保持部材上の基準位置から離間した位置に前記支持軸の保持部を有し、
前記支持ブロックは、前記保持部材の外周面が嵌合される保持孔を有し、
前記保持部材の外周面と前記保持孔とは、前記基準位置に対して、前記保持部材の回転位置を変更可能な回転位置変更部であり、
前記保持孔と前記保持部材とは、前記支持軸の軸方向からみて、前記出力歯車の中心及び前記入力歯車の中心を通る第1直線と、前記第1直線と交差する第2直線に沿う方向に長い形状に形成されるとともに、前記第2直線と直交する第3直線を中心に対称となるように形成されている減速機。
【請求項2】
前記支持軸は、前記保持部材の前記保持部に一体に形成されている請求項
1に記載の減速機。
【請求項3】
支持ブロックと、
前記支持ブロックに回転可能に支持された入力歯車と、
前記入力歯車と噛み合う中間歯車と、
前記中間歯車と噛み合う出力歯車と、
前記中間歯車の支持軸を保持するとともに、前記支持ブロックに脱着可能に取り付けられる保持部材と、を備え、
前記保持部材は、当該保持部材の軸心位置から離間した位置に前記支持軸が一体に形成され、
前記支持ブロックは、前記保持部材の外周面が嵌合される保持孔を有し
、
前記保持孔と前記保持部材とは、前記支持軸の軸方向からみて、前記出力歯車の中心及び前記入力歯車の中心を通る第1直線と、前記第1直線と交差する第2直線に沿う方向に長い形状に形成されるとともに、前記第2直線と直交する第3直線を中心に対称となるように形成され、
前記保持部材の外周面と、前記支持ブロックの前記保持孔は、前記保持部材の軸心を中心とした回転位置を変更可能な回転位置変更部を構成する減速機。
【請求項4】
支持ブロックと、
前記支持ブロックに回転可能に支持された入力歯車と、
前記入力歯車と噛み合う中間歯車と、
前記中間歯車と噛み合う出力歯車と、
前記中間歯車の支持軸の位置を変更可能な軸位置変更部と、
を備え
、
前記支持ブロックは、前記中間歯車の軸方向に対向して前記中間歯車の両側に位置する第一ベース部と第二ベース部とを有し、
前記支持ブロックには、前記支持軸を回転可能に支持可能として離間して形成されるとともに、前記入力歯車の回転中心から所定の距離にある円周に沿って配置される複数の支持軸嵌合穴が形成され、
複数の前記支持軸嵌合穴は、前記円周上において前記第一ベース部の対向面と前記第二ベース部の対向面とに交互に配置され、
前記軸位置変更部は、複数の前記支持軸嵌合穴によって構成されている減速機。
【請求項5】
回転駆動源の回転を減速して出力する減速機と、
前記減速機の出力部に連結された回転ブロックと、を備えた駆動装置であって、
前記減速機は、
支持ブロックと、
前記支持ブロックに回転可能に支持された入力歯車と、
前記入力歯車と噛み合う中間歯車と、
前記中間歯車と噛み合う出力歯車と、
前記入力歯車と前記出力歯車に対する前記中間歯車の位置を変更可能な歯車位置変更機構と、
を備え
、
前記支持ブロックは、前記中間歯車の軸方向に対向して
前記中間歯車の両側に位置する第一ベース部と第二ベース部とを有し、
前記支持ブロックには、前記中間歯車を回転可能に支持可能として離間して形成されるとともに、前記入力歯車の回転中心から所定の距離にある円周に沿って配置される複数の支持穴部が形成され、
複数の前記支持穴部は、前記円周上におい
て前記第一ベース部の対向面と前記第二ベース部の対向面とに交互に配置され、
前記歯車位置変更機構は、複数の前記支持穴部を有する
駆動装置。
【請求項6】
支持ブロックと、
前記支持ブロックに回転可能に支持された第一歯車と、
前記第一歯車と噛み合う第二歯車と、
前記第二歯車と噛み合う第三歯車と、
歯数の異なる前記第三歯車に対応して前記第二歯車の支持軸の位置を変更可能な軸位置変更部と、
を備え
、
前記支持ブロックは、前記第二歯車の軸方向に対向して前記第二歯車の両側に位置する第一ベース部と第二ベース部とを有し、
前記支持ブロックには、前記支持軸を回転可能に支持可能として離間して形成されるとともに、前記第一歯車の回転中心から所定の距離にある円周に沿って配置される複数の支持穴部が形成され、
複数の前記支持穴部は、前記円周上において前記第一ベース部の対向面と前記第二ベース部の対向面とに交互に配置され、
前記軸位置変更部は、複数の前記支持穴部を有する
歯車機構。
【請求項7】
支持ブロックと前記支持ブロックに回転可能に支持された第一歯車と前記第一歯車と噛み合う第二歯車と前記第二歯車と噛み合う第三歯車と歯数の異なる前記第三歯車に対応して前記第二歯車の支持軸の位置を変更可能な軸位置変更部とを備える歯車機構と、
前記歯車機構に接続される減速部と、
を備え
、
前記支持ブロックは、前記第二歯車の軸方向に対向して前記第二歯車の両側に位置する第一ベース部と第二ベース部とを有し、
前記支持ブロックには、前記支持軸を回転可能に支持可能として離間して形成されるとともに、前記第一歯車の回転中心から所定の距離にある円周に沿って配置される複数の支持穴部が形成され、
複数の前記支持穴部は、前記円周上において前記第一ベース部の対向面と前記第二ベース部の対向面とに交互に配置され、
前記軸位置変更部は、複数の前記支持穴部を有する減速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車機構、減速機、および、その減速機を用いる駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットや工作機械等においては、モータ等の回転駆動源の回転を減速するために減速機が用いられる。減速機では、入力歯車と出力歯車の間に、両歯車に噛み合う中間歯車が介装されることがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の減速機は、出力回転体やケーシング等の支持ブロックに入力歯車と出力歯車が回転可能に支持されている。中間歯車は、同様に出力回転体やケーシング等の支持ブロックに回転可能に支持されるとともに、入力歯車と出力歯車とに噛み合っている。入力歯車の回転は、出力歯車と入力歯車の歯数比に応じた速度比に減速されて出力歯車に伝達される。中間歯車の支持軸は、中間歯車の歯面が、入力歯車と出力歯車の両歯面に噛み合う位置において、支持ブロックの保持穴に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の減速機では、減速比を変更する等の目的で入力歯車を歯数の異なる別の入力歯車と交換することがある。この場合、駆動源の出力軸に新たな入力歯車を取り付けると、入力歯車と出力歯車の歯面の距離が変化する。このため、中間歯車の歯面を新たな入力歯車の歯面と噛み合わせるためには、中間歯車の支持軸の位置を変更しなければならない。この場合、中間歯車の支持軸が固定される出力回転体やケーシング等の支持ブロックを、保持穴の位置の異なる別のものと交換する必要がある。また、出力歯車を歯数の異なるものと交換する場合にも、同様の理由から支持ブロックの交換が必要となる。
したがって、従来の減速機では、入力歯車や出力歯車を歯数の異なるものと交換する場合には、大掛かりな部品交換が必要となり、部品コストが高騰してしまう。
【0006】
本発明は、大掛かりな部品交換を要することなく、入力歯車と出力歯車の変速比を変更できるようにして、部品コストの高騰を抑制することができる減速機、および、その減速機を用いる駆動装置を提供する。
本発明は、さらに、大掛かりな部品交換を要することなく、変速比の変更範囲を拡大できるようにして、部品コストの高騰を抑制することができる歯車機構、減速機、および、その減速機を用いる駆動装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の減速機は、支持ブロックと、前記支持ブロックに回転可能に支持された入力歯車と、前記入力歯車と噛み合う中間歯車と、前記中間歯車と噛み合う出力歯車と、前記入力歯車と前記出力歯車に対する前記中間歯車の位置を変更可能な歯車位置変更機構と、を備えている。
【0008】
上記の構成により、入力歯車と出力歯車の少なくともいずれか一方を交換する場合には、入力歯車と出力歯車の間の歯面間の距離の変化に応じて、歯車置変更機構によって中間歯車の位置を変更する。本構成では、支持ブロックを交換することなく、入力歯車と出力歯車の減速比の変更に対応することができる。このため、大掛かりな部品交換を要することなく、入力歯車と出力歯車の変速比を変更でき、部品コストの高騰を抑制することができる。
【0009】
前記歯車位置変更機構は、前記中間歯車の支持軸を保持するとともに、前記支持ブロックに脱着可能に取り付けられる保持部材を備えるようにしても良い。
【0010】
この場合、支持ブロックに対する保持部材の組付け向きや、保持部材自体を変更することによって中間歯車の位置を変更することができる。
【0011】
前記保持部材は、当該保持部材上の基準位置から離間した位置に前記支持軸の保持部を有し、前記保持部材と前記支持ブロックは、前記基準位置を中心とした前記保持部材の回転位置を変更可能な回転位置変更部を有し、前記歯車位置変更機構は、前記保持部材の前記保持部と、前記回転位置変更部と、を有する構成であっても良い。
【0012】
入力歯車と出力歯車の少なくともいずれか一方を交換する場合には、入力歯車と出力歯車の間の歯面間の距離の変化に応じて、回転位置変更部によって保持部材の基準位置回りの回転位置を変更する。これにより、保持部材が支持ブロックに取り付けられた状態での中間歯車の支持軸の位置が変更される。本構成を採用した場合には、保持部材の回転位置を変えるだけで、中間歯車の位置を容易に変更することができる。
【0013】
前記保持部材は、前記基準位置を軸心とした円柱状に形成され、前記支持ブロックは、前記保持部材の外周面が嵌合される円形状の保持孔を有し、前記回転位置変更部は、前記保持部材の外周面と、前記保持孔と、を有する構成であっても良い。
【0014】
入力歯車と出力歯車の少なくともいずれか一方を交換する場合には、入力歯車と出力歯車の間の歯面間の距離の変化に応じて、保持部材の軸心回りの回転角度を適宜変え、その状態で保持部材を支持ブロックの保持孔に嵌合する。
【0015】
前記支持軸は、前記保持部材の前記保持部に一体に形成されるようにしても良い。
【0016】
この場合、中間歯車の支持軸が保持部材と一体に形成されるため、構成部品の部品点数を削減することができる。
【0017】
本発明の一態様の減速機は、支持ブロックと、前記支持ブロックに回転可能に支持された入力歯車と、前記入力歯車と噛み合う中間歯車と、前記中間歯車と噛み合う出力歯車と、前記中間歯車の支持軸を保持するとともに、前記支持ブロックに脱着可能に取り付けられる保持部材と、を備え、前記保持部材は、円柱状に形成されるとともに、当該保持部材の軸心位置から離間した位置に前記支持軸が一体に形成され、前記支持ブロックは、前記保持部材の外周面が嵌合される円形状の保持孔を有し、前記保持部材の外周面と、前記支持ブロックの前記保持孔は、前記保持部材の軸心を中心とした回転位置を変更可能な回転位置変更部を構成する。
【0018】
上記の構成により、入力歯車と出力歯車の少なくともいずれか一方を交換する場合には、入力歯車と出力歯車の間の歯面間の距離の変化に応じて、保持部材の回転位置を適宜変更して、保持部材の外周面を支持ブロックの保持孔に嵌合する。これにより、支持ブロック上における中間歯車の位置が変更される。本構成では、支持ブロックの保持孔に対する保持部材の回転位置を変えるだけで、入力歯車と出力歯車の減速比の変更に対応することができる。このため、大掛かりな部品交換を要することなく、入力歯車と出力歯車の変速比を変更でき、部品コストの高騰を抑制することができる。
【0019】
本発明の一態様の減速機は、支持ブロックと、前記支持ブロックに回転可能に支持された入力歯車と、前記入力歯車と噛み合う中間歯車と、前記中間歯車と噛み合う出力歯車と、前記中間歯車の支持軸の位置を変更可能な軸位置変更部と、を備えている。
【0020】
入力歯車と出力歯車の少なくともいずれか一方を交換する場合には、入力歯車と出力歯車の間の歯面間の距離の変化に応じて、軸位置変更部によって中間歯車の支持軸の位置を変更する。本構成では、支持ブロックを交換することなく、入力歯車と出力歯車の減速比の変更に対応することができる。
【0021】
前記支持ブロックは、前記支持軸を嵌合可能な複数の支持軸嵌合穴を有し、前記軸位置変更部は、複数の前記支持軸嵌合穴によって構成されるようにしても良い。
【0022】
入力歯車と出力歯車の少なくともいずれか一方を交換する場合には、入力歯車と出力歯車の間の歯面間の距離の変化に応じて、支持ブロック上の支持軸嵌合穴を適宜選択し、最適な支持軸嵌合穴に支持軸を嵌合する。
【0023】
本発明の一態様の駆動装置は、回転駆動源の回転を減速して出力する減速機と、前記減速機の出力部に連結された回転ブロックと、を備えた駆動装置であって、前記減速機は、支持ブロックと、前記支持ブロックに回転可能に支持された入力歯車と、前記入力歯車と噛み合う中間歯車と、前記中間歯車と噛み合う出力歯車と、前記入力歯車と前記出力歯車に対する前記中間歯車の位置を変更可能な歯車位置変更機構と、を備えている。
【0024】
本発明の一態様の歯車機構は、
支持ブロックと、
前記支持ブロックに回転可能に支持された第一歯車と、
前記第一歯車と噛み合う第二歯車と、
前記第二歯車と噛み合う第三歯車と、
歯数の異なる前記第三歯車に対応して前記第二歯車の支持軸の位置を変更可能な軸位置変更部と、
を備える。
【0025】
これにより、軸位置変更部によって、歯数の異なる前記第三歯車に対応して前記第二歯車の支持軸の位置を変更することで、第三歯車と第二歯車の間の歯面間の距離の変化に応じて、支持ブロックを交換することなく、第一歯車と第三歯車との変速比の変更範囲を拡大することができる。
【0026】
本発明は、前記軸位置変更部が、挿入された前記支持軸を回転可能に支持可能として前記支持ブロックに離間して形成した複数の支持穴部を有することができる。
【0027】
本発明は、前記支持ブロックは、前記第一歯車の回転中心から所定の距離にある円周に沿って複数の前記支持穴部を有することができる。
【0028】
本発明は、前記支持ブロックが前記第二歯車の軸方向に対向して前記第二歯車の両側に位置する第一ベース部と第二ベース部とを有し、
前記第一ベース部と前記第二ベース部との少なくとも一方の対向面に前記支持穴部を有することができる。
【0029】
本発明は、前記支持穴を前記第一歯車の回転中心から所定の距離にある円周に沿って複数配置するとともに前記円周上において前記第一ベース部の前記対向面と前記第二ベース部の前記対向面とに交互に形成する。
【0030】
本発明の一態様の減速機は、支持ブロックと前記支持ブロックに回転可能に支持された第一歯車と前記第一歯車と噛み合う第二歯車と前記第二歯車と噛み合う第三歯車と歯数の異なる前記第三歯車に対応して前記第二歯車の支持軸の位置を変更可能な軸位置変更部とを備える歯車機構と、
前記歯車機構に接続される減速部と、
を備える。
【0031】
前記支持穴を複数配置する前記円周は、前記第一歯車の回転中心を中心とし、前記円周の半径が、前記第一歯車の回転中心から前記第二歯車の回転中心までの距離と一致することができる。
【発明の効果】
【0032】
上述の減速機と駆動装置は、大掛かりな部品交換を要することなく、入力歯車と出力歯車の変速比を変更することができる。したがって、上述の減速機や駆動装置を採用した場合には、部品コストの高騰を抑制することができる。
さらに、上述の歯車機構と減速機と駆動装置は、大掛かりな部品交換を要することなく、変速比を変更することができるとともに、変速比の変更範囲を拡大することができる。したがって、上述の歯車機構、減速機や駆動装置を採用した場合には、部品コストの高騰を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図3】第1実施形態の減速機の
図2のIII-III線に沿う断面図である。
【
図4】第1実施形態の減速機の
図3の一部を拡大して示した断面図である。
【
図5】第1実施形態の減速機の
図3のV-V線にほぼ沿う断面図である。
【
図6】第1実施形態の減速機の
図3のV-V線にほぼ沿う断面図である。
【
図7】第2実施形態の減速機の
図5の一部に対応する断面図である。
【
図8】第2実施形態の減速機の
図6の一部に対応する断面図である。
【
図9】第3実施形態の減速機の内部の端面図である。
【
図10】第4実施形態の歯車機構、減速機の断面図である。
【
図11】第4実施形態の歯車機構、減速機の
図10のXI-XI線に沿う断面図である。
【
図12】第4実施形態の軸位置変更部の説明図である。
【
図13】第4実施形態の歯車機構、減速機の
図12のXIII-XIII線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下で説明する各実施形態においては、共通部分に同一符号を付し、重複する説明を一部省略するものとする。
【0035】
(第1実施形態)
最初に、
図1~
図6に示す第1実施形態について説明する。
図1は、溶接や部品組付け等を行う際に用いられる駆動装置1の斜視図である。
駆動装置1は、床面F上に設置されるベースブロック11と、ベースブロック11の長手方向の一端側の上面に固定設置された減速機10と、減速機10に動力を出力する回転駆動源であるモータ2と、ベースブロック11の長手方向の他端側の上面に固定設置された保持装置12と、減速機10と保持装置12とに長手方向の両端部を支持された回転ブロック13と、を備えている。モータ2は、減速機10の入力側に一体に取り付けられている。減速機10は、モータ2の回転を減速し、その回転を回転ブロック13の長手方向の一端側に伝達する。保持装置12は、回転ブロック13の長手方向の他端側を回転可能に支持する。回転ブロック13は、減速機10を介してモータ2から動力が伝達されることにより、水平方向に略沿う軸線o1回りに回転する。
【0036】
本実施形態の場合、回転ブロック13は、軸線o1回りに複数のワーク支持面13aを有する。各ワーク支持面13aには、作業対象であるワークwが取り付けられる。ワーク支持面13aに取り付けられたワークwは、モータ2による回転ブロック13の回転により、作業位置に向けて移動させられる。作業位置には、例えば、溶接ロボット等の作業装置3が設置されている。
【0037】
図2は、減速機10を出力側(回転ブロック13が取り付けられる側)から見た正面図であり、
図3は、
図2のIII-III線に沿う断面図である。また、
図4は、
図3の一部を拡大した減速機10の断面図であり、
図5は、
図4のV-V線にほぼ沿う減速機10の断面図である。なお、
図5では、後述する中央歯車30やクランク軸歯車31、中間歯車32等は断面にされていない。また、
図5では、後述する保持部材40や取付ベース38が併せて記載されている。
減速機10は、下端がベースブロック11(
図1参照)の一端側の上面に固定設置される固定ブロック14と、固定ブロック14に一体に結合された第1キャリアブロック15Aおよび第2キャリアブロック15Bと、第1キャリアブロック15Aと第2キャリアブロック15Bの外周側に軸受16を介して回転可能に支持された外筒17と、第1キャリアブロック15Aと第2キャリアブロック15Bに回転可能に支持された複数(三つ)のクランク軸18と、各クランク軸18の二つの偏心部18a,18bとともに旋回する第1旋回歯車19Aおよび第2旋回歯車19Bと、を備えている。減速機10は、出力部の回転中心軸線c1が駆動装置1の軸線o1と合致するようにベースブロック11に設置される。
【0038】
固定ブロック14は、中央に円形の貫通孔25を有する孔空き円板状のベースフランジ14a(
図3参照)と、ベースフランジ14aから下方に延出する脚部14b(
図2参照)と、を有する。固定ブロック14は、脚部14bの下端がボルト締結等によってベースブロック11に固定される。ベースフランジ14aの厚み方向の一方の端面には、孔空き円板状の第1キャリアブロック15Aが重ねられ、当該第1キャリアブロック15Aがボルト締結等によって一体に固定されている。また、第1キャリアブロック15Aのベースフランジ14aと逆側の端面には、第2キャリアブロック15Bがボルト締結等によって固定されている。第2キャリアブロック15Bは、孔空き円板状の基板部15Baと、当該基板部15Baの端面から第1キャリアブロック15Aの方向に向かって延びる図示しない複数の支柱部と、を有する。第2キャリアブロック15Bは、支柱部の端面が第1キャリアブロック15Aの端面に突き合わされ、各支柱部が第1キャリアブロック15Aに固定されている。第1キャリアブロック15Aと第2キャリアブロック15Bの基板部15Baとの間には、軸方向の隙間が確保されている。この隙間には、第1旋回歯車19Aと第2旋回歯車19Bが配置されている。
なお、第1旋回歯車19Aと第2旋回歯車19Bには、第2キャリアブロック15Bの各支柱部が貫通する図示しない逃げ孔が形成されている。逃げ孔は、各支柱部が第1旋回歯車19Aと第2旋回歯車19Bの旋回動作を妨げないように、支柱部に対して充分に大きい内径に形成されている。
【0039】
外筒17は、第1キャリアブロック15Aの外周面と、第2キャリアブロック15Bの基板部15Baの外周面とに跨って配置されている。外筒17の軸方向の両端部は、第1キャリアブロック15Aと、第2キャリアブロック15Bの基板部15Baとに軸受16を介して回転可能に支持されている。また、外筒17の軸方向の中央領域(第1旋回歯車19Aと第2旋回歯車19Bの外周面に対向する領域)の内周面には、回転中心軸線c1と平行に延びる複数のピン溝(図示せず)が形成されている。各ピン溝には、略円柱状の内歯ピン20が回転可能に収容されている。外筒17の内周面に取り付けられた複数の内歯ピン20は、第1旋回歯車19Aと第2旋回歯車19Bの各外周面に対向している。
【0040】
第1旋回歯車19Aと第2旋回歯車19Bは、外筒17の内径よりも若干小さい外径に形成されている。第1旋回歯車19Aと第2旋回歯車19Bの各外周面には、外筒17の内周面に配置された複数の内歯ピン20に噛み合い状態で接触する外歯19Aa,19Baが形成されている。第1旋回歯車19Aと第2旋回歯車19Bの各外周面に形成された外歯19Aa,19Baの歯数は、内歯ピン20の数よりも僅かに少なく(例えば、一つ少なく)設定されている。
【0041】
複数のクランク軸18は、第1キャリアブロック15Aと第2キャリアブロック15Bの回転中心軸線c1を中心とした同一円周上に配置されている。各クランク軸18は、軸受22を介して第1キャリアブロック15Aと第2キャリアブロック15Bとに回転可能に支持されている。各クランク軸18の偏心部18a,18bは、第1旋回歯車19Aと第2旋回歯車19Bを夫々貫通している。各偏心部18a,18bは、第1旋回歯車19Aと第2旋回歯車19Bに夫々形成された支持孔21に偏心部軸受23を介して回転可能に係合されている。なお、各クランク軸18の二つの偏心部18a,18bは、クランク軸18の軸線回りに位相が180°ずれるように偏心している。
【0042】
複数のクランク軸18が外力を受けて一方向に回転すると、クランク軸18の偏心部18a,18bが所定の半径で同方向に旋回し、それに伴って第1旋回歯車19Aと第2旋回歯車19Bが同じ半径で同方向に旋回する。このとき、第1旋回歯車19Aと第2旋回歯車19Bの各外歯19Aa,19Baが、外筒17の内周に保持された複数の内歯ピン20と噛み合うように接触する。
本実施形態の減速機10では、外筒17側の内歯ピン20の数が、第1旋回歯車19Aと第2旋回歯車19Bの各外歯19Aa,19Baの歯数よりも僅かに多く設定されているため、第1旋回歯車19Aと第2旋回歯車19Bが一旋回する間に、外筒17が所定のピッチだけ旋回方向と同方向に押し回される。この結果、クランク軸18の回転は大きく減速されて外筒17の回転として出力される。なお、本実施形態では、各クランク軸18の偏心部18aと偏心部18bとが軸心回りに180°ずれるように偏心しているため、第1旋回歯車19Aと第2旋回歯車19Bの旋回位相は180°ずれることになる。
【0043】
外筒17のベースフランジ14aと逆側の軸方向の端部には、孔空き円板状の出力プレート26が取り付けられている。出力プレート26は、第2キャリアブロック15Bの端部を非接触状態で覆い、軸方向外側の端面には、ワーク保持用の回転ブロック13(
図1参照)がボルト締結等によって取り付け可能とされている。また、出力プレート26の内周部には、第2キャリアブロック15B,第2旋回歯車19B、第1旋回歯車19A、第1キャリアブロック15A、ベースフランジ14aの各内周部を非接触状態で貫通する筒部27が取り付けられている。筒部27は、出力プレート26と一体に回転する。
【0044】
また、減速機10は、モータ2の図示しない回転軸に連結される入力歯車33と、ベースフランジ14aと第1キャリアブロック15Aの内周面に回転可能に保持された中央歯車30(出力歯車)と、入力歯車33と中央歯車30とに噛み合って入力歯車33の回転を中央歯車30に伝達する中間歯車32と、を備えている。中央歯車30は、入力歯車33よりも大径で、かつ入力歯車の歯数よりも歯数が多く設定されている。したがって、モータ2による入力歯車33の回転は、所定の減速比に減速され、その状態で中央歯車30に伝達される。
【0045】
入力歯車33は、ベースフランジ14aの貫通孔25から径方向外側に離間した縁部に、軸受34を介して回転可能に支持されている。入力歯車33の回転中心軸c4は、減速機10の出力側の回転中心軸線c1と平行に設定されている。
【0046】
中央歯車30は、ベースフランジ14aと第1キャリアブロック15Aとに跨る軸長に形成されている。中央歯車30の軸方向の中央領域には外歯30aが形成されている。中央歯車30の軸方向の一端部側は、ベースフランジ14aの貫通孔25の内周面に軸受35Aを介して回転可能に保持されている。中央歯車30の軸方向の他端部側は、第1キャリアブロック15Aの内周面に軸受35Bを介して回転可能に保持されている。中央歯車30は、回転中心軸線c1を中心として回転する。
【0047】
また、第1キャリアブロック15Aのベースフランジ14a側の端部には、前述した複数(三つ)のクランク軸18の位置に対応して複数(三つ)の凹部28が形成されている。各凹部28は、第1キャリアブロック15Aの内周面側に開口している。また、各クランク軸18のベースフランジ14a側の端部には、クランク軸18に回転を伝達するためのクランク軸歯車31が取り付けられている。各クランク軸18に取り付けられたクランク軸歯車31は、対応する凹部28の内側に配置されている。各クランク軸歯車31は外歯31aを有する。各クランク軸歯車31の外歯31aは、中央歯車30の外歯30aの軸方向の他端部寄り領域と噛み合っている。したがって、入力歯車33から中間歯車32を介して中央歯車30に入力された回転は、クランク軸歯車31を通して各クランク軸18に伝達される。
本実施形態の減速機10では、入力歯車33と中央歯車30とによる前段の減速部と、クランク軸18、第1,第2旋回歯車19A,19B、外筒17等による後段の減速部と、によって減速が行われる。
【0048】
また、ベースフランジ14aの第1キャリアブロック15A寄りの端部には、入力歯車33の外歯33a部分と中間歯車32とを収容する窪み部36が形成されている。ベースフランジ14aの窪み部36の底面(第1キャリアブロック15Aの端面と対向する面)には、中間歯車32を支持するための取付ベース38が取り付けられている。また、窪み部36の一部は、ベースフランジ14aの中央の貫通孔25に対して開放されている。窪み部36内に配置された中間歯車32は、窪み部36の径方向内側の開放部を通して中央歯車30の外歯30aと噛み合っている。
【0049】
中間歯車32は、円柱状の支持軸39に回転可能に支持されている。支持軸39は、当該支持軸39よりも外径が大きく、軸長の短い円柱状の保持部材40に一体に形成されている。支持軸39は、保持部材40の軸心c2からずれた位置に一体に形成されている。つまり、支持軸39は、保持部材40の軸心c2に対して偏心して(径方向にオフセットして)配置されている。支持軸39の軸心c3は、保持部材40の軸心c2と平行に設定されている。
本実施形態では、軸心c2の位置が保持部材40上の基準位置とされ、保持部材40上の支持軸39に連なる部分40aが支持軸39の保持部とされている。支持軸39の保持部は、基準位置である軸心c2の位置から離間した位置に配置されている。
【0050】
窪み部36の内部に取り付けられる取付ベース38には、保持部材40の外周面が嵌合固定される円形状の保持孔41が形成されている。本実施形態の場合、保持孔41に対する保持部材40の軸心c2回りの回転位置を変更することにより、ベースフランジ14a(ベースブロック11)上における中間歯車32の支持軸39の位置を変更することができる。中間歯車32の支持軸39は、例えば、減速機10の減速比を変えるために入力歯車33の歯数と外径を変更するとき等に、位置を変更する。
なお、本実施形態の場合、取付ベース38は、固定ブロック14や第1キャリアブロック15Aとともに、入力歯車33、中央歯車30(出力歯車)、中間歯車32をそれぞれ回転可能に支持する支持ブロックを構成している。また、本実施形態では、取付ベース38の保持孔41と、保持孔41に嵌合される保持部材40の外周面と、が回転位置変更部を構成している。
【0051】
入力歯車33の歯数と外径を変更した場合、入力歯車33の外歯33aと中央歯車30(出力歯車)の外歯30aの歯面間の距離が変化するため、従前の支持軸39の位置では、中間歯車32を入力歯車33と中央歯車30とに確実に噛み合わせることができない。この場合に、支持軸39の位置を適正に変更することにより、中間歯車32を入力歯車33と中央歯車30とに確実に噛み合わせることができる。
【0052】
図6は、入力歯車33をより小径の歯車と交換したときにおける減速機10の
図5と同様の断面図である。
図5の示す例では、入力歯車33(A)と中央歯車30の歯面間を最短距離で結ぶ直線L1に対し、中間歯車32の支持軸39の軸心c3が大きく離間している。このとき、支持軸39の軸心c3は、保持部材40の軸心c2に対し、直線L1から最も離間する側に偏心している。
図6の例のように、入力歯車33(B)の外径が小さくなると、入力歯車33(B)と中央歯車30の歯面間の距離が広がり、
図5に示す支持軸39の位置では、中間歯車32を入力歯車33と中央歯車30とに確実に噛み合わせることができない。この場合、保持部材40を保持孔41から取り外し、その保持部材40を軸心c2回りに180°回転させて再度保持孔41に嵌合する。これにより、支持軸39の軸心c3は、保持部材40の軸心c2に対し、入力歯車33(B)と中央歯車30の歯面間を最短距離で結ぶ直線L1に最も近接する側に偏心する。この結果、中間歯車32を入力歯車33と中央歯車30(B)とに確実に噛み合わせることが可能になる。
【0053】
なお、本実施形態では、保持部材上の軸心c2(基準位置)から離間して配置された保持部(支持軸と連なる部分40a)と、回転位置変更部である保持孔41及び保持部材40の外周面と、が歯車位置変更機構(軸位置変更部)を構成している。
【0054】
以上のように、本実施形態の減速機10は、中間歯車32の支持軸39を保持する保持部材40と、支持ブロックである取付ベース38とが、中間歯車32の位置を変更可能な歯車位置変更機構を構成している。このため、入力歯車33を歯数と外径の異なる別の歯車と交換する場合には、入力歯車33と中央歯車30(出力歯車)の間の歯面間の距離の変化に応じて、歯車位置変更機構によって中間歯車32の位置を変更することができる。したがって、固定ブロック14等の支持ブロックを交換することなく、入力歯車33と中央歯車30(出力歯車)の減速比の変更に対応することができる。よって、本実施形態の減速機10を採用した場合には、大掛かりな部品交換を要することなく、入力歯車33と中央歯車30(出力歯車)の変速比を変更でき、部品コストの高騰を抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態の減速機10は、保持部材40上の基準位置(軸心c2)から離間した位置に、支持軸39の保持部(支持軸39に連なる部分40a)が配置され、保持部材40と支持ブロックである取付ベース38の間には、保持部材40の回転位置を変更可能な回転位置変更部(保持部材40と保持孔41の嵌合構造)が設けられている。したがって、本実施形態の減速機10を採用した場合には、保持部材40の回転位置を変えるだけで、中間歯車32の位置を容易に変更することができる。
【0056】
特に、本実施形態の場合、保持部材40が円柱状に形成されるとともに、支持ブロックである取付ベース38に、保持部材40の嵌合される保持孔41が形成されている。そして、保持部材40の外周面と取付ベース38の保持孔41とよって回転位置変更部が構成されている。このため、保持孔41に保持部材40を嵌合する際に、保持部材40の回転角度を変えるだけで、中間歯車32の位置を容易に変更することができる。
なお、本実施形態では、保持部材40が円柱状に形成されているが、保持部材40の外周面は円形以外の形状、例えば、四角形等の多角形状であっても良い。
【0057】
また、本実施形態の減速機10では、中間歯車32の支持軸39が保持部材40と一体に形成されているため、構成部品の部品点数を削減して、コストの削減を図ることができる。
ただし、支持軸39を保持部材40と別体部品として形成し、支持軸39を保持部材40に対して圧入等によって固定することも可能である。
【0058】
(変形例)
上記の実施形態では、保持部材40が取付ベース38の保持孔41に脱着可能に取り付けられ、入力歯車33を外径の異なるものと交換する際に、保持部材40を180°回転させて再度保持孔41に嵌合状態で固定している。これに対し、
図5,
図6に示す取付ベース38を、ベースフランジ14a(支持ブロック)に対して、軸心c3の回りに180°回転させた状態で取り付けられる構造としても良い。具体的には、例えば、取付ベース38の図中左右の締結固定部50を左右対称形状に配置することで実現することができる。
この場合、保持部材40は取付ベース38から取り外す必要がないため、取付ベース38は、保持部材40と一体構造としても良い。この変形例の場合、取付ベース38は支持ブロックの一部ではなく、支持軸39を保持する保持部材の一部となる。
【0059】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態の減速機110の
図5の一部に対応する断面図であり、
図8は、第2実施形態の減速機110の
図6の一部に対応する断面図である。
本実施形態の減速機110は、保持部材40Aと取付ベース38Aの嵌合部の構造のみが第1の実施形態と異なっている。保持部材40Aは、円柱状の外周面に、相互に平行な一対の面取り部40Aaが設けられている。一対の面取り部40Aaは、保持部材40Aの軸心c3を挟んで対称に形成されている。取付ベース38Aには、保持部材40Aの外周形状と合致する形状の保持孔41Aが形成されている。すなわち、取付ベース38Aの保持孔41Aには、相互に平行な二つの平面41Aaが設けられている。二つの平面Aaは、保持部材40Aが取付ベース38Aの保持孔41Aに嵌合されるときに、保持部材40A側の二つの面取り部40Aaが当接する。したがって、保持部材40Aは、軸心c2の回りに180°ずれた二つの回転位置でのみ、保持孔41Aに嵌合される。
【0060】
本実施形態の減速機110は、軸心c2の回りに180°ずれた二つの回転位置でのみ保持部材40Aを保持孔41Aに嵌合することができるため、保持部材40Aの回転位置を二つの位置で正確に位置決めすることができる。このため、歯数と外径の異なる二種類の入力歯車33に対し、中間歯車32の歯面を正確に噛み合わせることができる。
【0061】
(第3実施形態)
図9は、第3の実施形態の減速機210のベースフランジ14a(固定ブロック14)の内側端面(第1キャリアブロックと対向する側の端面)を正面から見た端面図である。
図9では、外径と歯数の異なる二種類の入力歯車33(A),33(B)と、中間歯車32と、中央歯車30(出力歯車)が仮想線で示されている。
本実施形態の減速機210は、ベースフランジ14aの内側端面に中間歯車32の支持軸239を嵌合可能な複数の支持軸嵌合穴45A,45Bが形成されている。各支持軸嵌合穴45A,45Bの形成位置は、支持軸239に支持された中間歯車32の歯面が、使用する入力歯車33と中央歯車30とに噛み合う位置に設定されている。なお、
図9に示す例では、支持軸嵌合穴45A,45Bは二つであるが三つ以上であっても良い。また、本実施形態では、支持軸239を保持する保持部材が設けられておらず、支持軸239は単純な円柱形状に形成されている。
本実施形態の場合、複数の支持軸嵌合穴45A,45Bは、中間歯車32の支持軸239の位置を変更可能な軸位置変更部を構成している。
【0062】
外径の大きい一方の入力歯車33(A)を使用する場合には、入力歯車33(A)と中央歯車30の歯面間を最短距離で結ぶ直線L1から離れた側の支持軸嵌合穴45Aに支持軸239を嵌合状態で固定する。この状態から入力歯車33(A)を外径の小さい他方の入力歯車33(B)と交換する場合には、支持軸239を支持軸嵌合穴45Aから取り外した後に、入力歯車33(B)と中央歯車30の歯面間を最短距離で結ぶ直線L1に近接する側の支持軸嵌合穴45Bに支持軸239を嵌合状態で固定する。
【0063】
本実施形態の減速機210の場合、入力歯車33の交換時には、入力歯車33と中央歯車30(出力歯車)の間の歯面間の距離の変化に応じて、ベースフランジ14a上の支持軸嵌合穴45A,45Bを適宜選択し、最適な支持軸嵌合穴45A,45Bに中間歯車32の支持軸39を固定することができる。このため、固定ブロック14等の支持ブロックを交換することなく、入力歯車33と中央歯車30(出力歯車)の減速比の変更に対応することができる。よって、本実施形態の減速機210を採用した場合にも、大掛かりな部品交換を要することなく、入力歯車33と中央歯車30(出力歯車)の変速比を変更でき、部品コストの高騰を抑制することができる。
【0064】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
例えば、上記の実施形態の説明では、入力歯車を歯数と外径の異なる別の歯車に交換する場合について詳述したが、出力歯車(例えば、中央歯車)を歯数と外径の異なる別の歯車に交換する場合にも、同様にして中間歯車の支持軸の位置を変更することができる。また、入力歯車と出力歯車の両方を異なる別の歯車に交換する場合にも、同様にして中間歯車の支持軸の位置を変更することができる。
【0065】
また、上記の実施形態では、中間歯車と入力歯車が固定ブロック側に回転可能に支持されているが、中間歯車や入力歯車は、第1キャリアブロック側に回転可能に支持させるようにしても良い。
【0066】
以下、本発明に係る歯車機構、減速機の第4実施形態を、図面に基づいて説明する。
図10は、本実施形態における歯車機構、減速機を示す断面図であり、
図11は、
図10のXI-XI線に沿う断面図である。図において、符号301は減速機である。
【0067】
本実施形態に係る減速機301は、
図10,
図11に示すように、歯車機構320を介してモータ(回転駆動源)310の回転駆動力を減速部(出力部)330に伝達し、減速部330の出力軸線T0の周りの回転力として所定の減速比で出力するものである。
なお、出力軸線T0に沿った方向を上下方向(鉛直方向)と呼ぶことがある。本実施形態の減速機301は、例えばターンテーブルのテーブル駆動に適用されることができる。
【0068】
減速機301において、歯車機構320と減速部330とはケーシング302に収納される。モータ310は、ケーシング302の外部に取り付けられる。モータ310は略水平方向に延びる駆動軸線(入力軸線)T10に沿った駆動軸310aを駆動する。駆動軸310aには、同軸となる入力軸線を有する入力軸311が取り付けられる。入力軸311は、ケーシング302に回転自在に支持される。歯車機構320は、入力軸311に連動する。減速部330は、歯車機構320から入力された回転数よりも低い回転数を出力する。
【0069】
モータ310と歯車機構320は、出力軸線T0に沿った方向に見て、互いに隣接するように配置される。同様に、歯車機構320と減速部330は、出力軸線T0に沿った方向に見て、互いに隣接するように配置される。モータ310と減速部330は、出力軸線T0に沿った上下方向における位置がほぼ重なっている。歯車機構320は、出力軸線T0に沿った上下方向における位置がモータ310と減速部330に対して、ほぼ同じであるが、やや下側に隣接した位置に配置される。
【0070】
歯車機構320は、センター軸線T2を回転軸線とするセンターギア(第三歯車)322と、センターギア322に噛み合うアイドラギア(第二歯車)323と、アイドラギア323に噛み合いモータ310からの駆動力を入力軸311から入力されるインプットギア(第一歯車)321と、を備えている。センターギア322と、アイドラギア323と、インプットギア321とは、いずれも平歯車とされて同一の水平面に沿って配置される。
【0071】
アイドラギア323のアイドラ軸線T3と、インプットギア321のインプット軸線T1と、センターギア322のセンター軸線T2とは、いずれも出力軸線T0と平行である。センターギア322のセンター軸線T2は、出力軸線T0と一致している。
センターギア322はセンター軸線T2を回転中心とする。アイドラギア323はアイドラ軸線T3を回転中心とする。インプットギア321はインプット軸線T1を回転中心とする。
【0072】
ケーシング302は、ベース部302aと第一ブロック302bと第二ブロック302cとを有する。
ベース部302aは、板状に形成されて出力軸線T0に直交する水平面に沿うように配置される。ベース部302aは、減速機301の下面に沿って配置される。ベース部302aの上面には、出力軸線T0に沿った方向に見て、歯車機構320を収容する第一ブロック302bと、減速部330を収容する筒状の第二ブロック302cとが並んで配置されている。
ベース部302aは、少なくともインプットギア321、センターギア322、アイドラギア323をそれぞれ回転可能に支持する支持ブロックを構成している。
【0073】
第一ブロック302bと第二ブロック302cとは、並んだ状態でそれぞれベース部302aの上面に結合される。第一ブロック302bと第二ブロック302cとは、ベース部302aの上面から上向きに突出する。第一ブロック302bとベース部302aとは互いに減速機301の内部を密閉可能に結合される。
【0074】
筒状の第二ブロック302cは、その中心軸線が出力軸線T0と一致するように配置される。第二ブロック302cには、第一ブロック302bが隣接して配置される。第二ブロック302cの上端は、減速機301の上面に沿って配置される。第二ブロック302cは、ボルト302j等によってベース部302aの上面に締結される。第二ブロック302cとベース部302aとは互いに減速機301の内部を密閉可能に結合される。
【0075】
ベース部302aは、板状の第一ベース部302a1と、第一ベース部302a1より小さな輪郭を有する板状の第二ベース部302a2と、を有する。第一ベース部302a1は、第一ブロック302bと第二ブロック302cとの両方を取り付け可能な輪郭を有する。第二ベース部302a2は、第一ブロック302bに対応する輪郭を有し、後述するように第一ブロック302bに対応する領域に一体として第一ベース部302a1に嵌め込まれる。第一ベース部302a1と第二ベース部302a2とは互いに減速機301の内部空間328bを密閉可能に結合される。
第一ベース部302a1は、後述するように第二ベース部302a2を嵌め込み可能なように第二ベース部302a2よりも肉厚に形成される。第二ベース部302a2は、減速機1の下面に露出している。第一ベース部302a1には、上下方向で第一ブロック302bと反対となる位置に第二ベース部302a2が一体に結合される。
【0076】
第一ブロック302bは、第一ベース部302a1の上面に一体に結合される第一ブロック側部302b1と、第一ブロック側部302b1の上面に一体に結合される第一ブロック板302b2とを有する。
第一ブロック側部302b1は、板状の第一ベース部302a1の上面から上方向に突出する。第一ブロック板302b2は、第一ブロック側部302b1の内部を閉塞するように結合される。第一ブロック板302b2は、第一ベース部302a1および第二ベース部302a2と略平行に配置される。第一ブロック板302b2は、減速機301の上面に沿って配置される。
第一ブロック302bには、歯車機構320にモータ310の回転駆動力を伝達する入力軸311の先端が貫通している。入力軸311は水平方向を向いている。
【0077】
モータ310は、駆動軸310aを有する。モータ310は、第一ブロック側部302b1の側部に固定される。駆動軸310aの先端は、ケーシング302を貫通する入力軸311とされる。
入力軸311の外端面には、モータ310の駆動軸310aが嵌め込まれる圧入穴311aが形成されている。モータ310は、第一ブロック302bに取り付けられたモータ支持部材326に固定されている。モータ310の駆動軸310aは、その駆動軸線T10が水平方向(ベース部302aと平行な方向)に延びる姿勢として、入力軸311の圧入穴311aに挿入されている。モータ310は、ベース部302aの上外面よりもやや上側(第一ブロック302b側)に位置している。
【0078】
入力軸311の先端部には駆動側歯車311bが取り付けられている。
駆動側歯車311bは、入力軸311の外周面から径方向に突出した円板状の部位の外端部に歯が形成された構成である。駆動側歯車311bには、従動側歯車311cが噛み合う。駆動側歯車311bおよび従動側歯車311cは傘歯車(ベベルギア)からなる。なお、駆動側歯車311bおよび従動側歯車311cは、傘歯車に限られるものでなく、駆動側歯3車11bの駆動軸線T10と従動側歯車311cのインプット軸321aのインプット軸線T1が交差する位置関係で、かつ、駆動側歯車311bから従動側歯車311cへ駆動力を伝達できるものであればよい。従動側歯車311cは、上下方向に延びるインプット軸321aを回転軸とする。従動側歯車311cは、インプット軸321aの上下方向において第二ブロック302cに近接して配置される。
【0079】
インプット軸321aは従動側歯車311cの回転軸線と同心状に直線状に延びる軸部材からなる。インプット軸321aは、インプット軸線T1が入力軸311の駆動軸線T10に対して直交する姿勢で、後述する軸受321gに支持されている。すなわち、インプット軸321aは、ケーシング302に回転可能に支持されている。
本実施形態では、入力軸311の駆動軸線T10が減速機301の上面と平行であり、インプット軸321aのインプット軸線T1は、減速機301の上面に対して直交している。
なお、インプット軸321aのインプット軸線T1と入力軸311の駆動軸線T10は、直交する位置関係に限られるものではなく、平行以外の位置関係であればよい。例えば、入力軸311の駆動軸線T10が水平位置よりもモータ310側が下降するように上下方向に傾いた構成が可能である。
【0080】
従動側歯車311cは、インプット軸321aの外周面から径方向に突出した円板状の部位の外端部に歯が形成された構成である。従動側歯車311cの外端部は第一ブロック302bに形成された拡径部328d1の中に入り込んでいる。拡径部328d1は、後述するように、第一ブロック側部302b1に形成された内部空間328dの上端位置とされて、第一ブロック板302b2により閉塞されている。
【0081】
第一ベース部302a1には、上下方向の中程に内部空間328bが形成される。内部空間328bは、出力軸線T0に直交する水平面に沿って形成される。
【0082】
第一ベース部302a1には、上下方向に貫通する二つの貫通孔328aおよび貫通孔328d2が形成されている。貫通孔328aおよび貫通孔328d2はいずれも内部空間328bに連通する。
貫通孔328aは、出力軸線T0を中心線として配置され、筒状の第二ブロック302cと同心となる形状に形成される。貫通孔328aは、内部空間328bから減速機301の下面の外部に貫通する。
貫通孔328d2は、インプットギア321の中心に対応する位置に形成されている。貫通孔328d2は、内部空間328bから、後述する第一ブロック302bの内部空間328dに連通している。
【0083】
内部空間328bには、歯車機構320のインプットギア(第一歯車)321とアイドラギア(第二歯車)323とセンターギア(第三歯車)322とが互いに噛み合った状態で収容される。内部空間328bは、インプット軸(支持軸)321aと同心となる形状に形成された部分と、アイドラ軸(支持軸)323aと同心となる形状に形成された部分と、センターギア322と同心となる形状に対応した部分と、を連続した平面輪郭形状を有する。
【0084】
内部空間328bにおいては、歯車機構320として、インプットギア321がモータ310から回転駆動力を伝達する側の入力軸311に連結される。アイドラギア323が、内部空間328bの内部においてインプットギア321に噛み合って第一ベース部302a1と第二ベース部302a2とに回転可能に保持される。センターギア322が、内部空間328bの内部に位置しアイドラギア323に噛み合ってインプットギア321の回転を伝達される。
【0085】
センターギア322は、インプットギア321よりも大径で、かつインプットギア321の歯数よりも歯数が多く設定されている。したがって、モータ310によるインプットギア321の回転は、所定の減速比に減速され、その状態でセンターギア322に伝達される。
【0086】
第一ベース部302a1には、内部空間328bにおけるインプットギア321とアイドラギア323とに対向する下側位置に開口328b1が形成されている。開口328b1は、第二ベース部302a2が下側から嵌め込まれて閉塞されている。第二ベース部302a2は、上下方向における内部空間328bの途中まで挿入した位置で固定される。
【0087】
第一ベース部302a1には、内部空間328bの下向きとなる開口328b1の縁部に、段差を有して拡径された拡径部328b2が形成される。拡径部328b2には、第二ベース部302a2の周囲に張り出すように形成されたフランジ部302a2aが嵌め込まれている。この状態で、上下方向において互いに対向する拡径部328b2とフランジ部302a2aとの面が互いに接触する。これにより、上下方向における第一ベース部302a1に対する第二ベース部302a2の位置が固定される。なお、拡径部328b2は、水平方向において第一ベース部302a1の輪郭となる端部まで形成されてもよい。開口328b1における周囲には、フランジ部302a2aより上側となる位置にOリング等の密閉手段を設けることもできる。
【0088】
第二ベース部302a2には、内部空間328bの内側となる面に断面円形で有底の支持穴321fが形成されている。
支持穴321fには軸受321gが装着されている。軸受321gは支持穴321fの内周面に取り付けられている。軸受321gはインプット軸321aの下端部を支持する。インプット軸321aは、出力軸線T0に沿った上下方向のインプット軸線T1を有する。インプット軸321aの下端部は、支持穴321fに挿入されている。インプット軸321aには、下端部に近接してインプットギア321が取り付けられる。
【0089】
図12は、本実施形態における軸位置変更部を示す説明図であり、
図13は、
図12のXIII-XIII線に沿う断面図である。
第二ベース部302a2には、内部空間328bの内側となる面に断面円形で有底の支持穴(支持穴部)351A,351C,351Eが形成されている。
第一ベース部302a1には、内部空間328bの内側となる面に断面円形で有底の支持穴(支持穴部)351B,351D,351Fが形成されている。
つまり、ベース部302aがアイドラギア323の軸方向に対向してアイドラギア323の両側に位置する第一ベース部302a1と第二ベース部302a2とを有し、第一ベース部32a1と第二ベース部302a2との少なくとも一方の対向面に支持穴(支持穴部)351A~351Fが形成される。
【0090】
支持穴(支持穴部)351A~351Fは、歯数の異なるインプットギア321に対応してアイドラギア323のアイドラ軸(支持軸)323aの位置を変更可能な軸位置変更部350とされる。支持穴(支持穴部)351A~351Fは、いずれも、内部空間328bに対して開口している。支持穴(支持穴部)351A~351Fは、いずれも、インプットギア321の回転中心であるインプット軸線T1から所定の距離にある円周R50に沿って配置される。
支持穴(支持穴部)351A~351Fは、円周R50上で第一ベース部302a1と第二ベース部302a2とに交互に配置されている。支持穴(支持穴部)351A~351Fは、円周R50上において、互いに離間して配置されている。
【0091】
支持穴351A~351Fには、そのいずれか一箇所に、円柱状のアイドラ軸323aの先端部が挿入される。これにより、支持穴351A~351Fのうち、アイドラ軸323aの挿入された一箇所は、アイドラ軸323aを回転可能に支持する。アイドラ軸323aにはアイドラギア323が接続される。
支持穴351A~351Fから、アイドラ軸323aの挿入位置を選択することでアイドラギア323を回転可能に支持する。アイドラ軸323aは、出力軸線T0に沿った上下方向のアイドラ軸線T3を有する。
【0092】
支持穴(支持穴部)351A~351Fと支持穴321fとは、出力軸線T0に沿った方向に見た平面内で、いずれも離間して形成されている。また、支持穴351A~351Fから、アイドラ軸323aの挿入位置を選択しても、インプットギア321とアイドラギア323との回転中心どうしの距離は変化しない。
【0093】
なお、
図10には、アイドラギア323のアイドラ軸323aが、支持穴(支持穴部)351A~351Fのうち、支持穴(支持穴部)351Bに取り付けられた状態を示している。
ここでは、円柱状のアイドラ軸323aの先端部が、支持穴351Bに挿入されている。アイドラ軸323aにはアイドラギア323が接続される。
【0094】
第一ブロック側部302b1の支持穴321fに対向する位置には、上下方向に延びる内部空間328dが形成される。内部空間328dは上方向に延びて形成され、その下端は貫通孔328d2を介して内部空間328bと連通している。
内部空間328dは、貫通孔328d2に対応して断面円形とされる。内部空間328dの上端は第一ブロック板302b2によって閉塞されている。内部空間328dの内側となる第一ブロック板302b2の下面位置には、断面円形で有底の支持穴321hが形成されている。支持穴321hには軸受321gが装着されている。軸受321gは支持穴321hの内周面に取り付けられている。軸受321gはインプット軸321aを支持する。インプット軸321aの上端部は、支持穴321hに挿入されている。
【0095】
第一ブロック302bにおいて、内部空間328dの上端には拡径部328d1が形成されている。拡径部328d1には、軸受321gの下側となる位置に従動側歯車311cが収納されている。第一ブロック板302b2の下端は、内部空間328dの上端に嵌め込まれている。第一ブロック板302b2における上端の周囲には、フランジ部302b2aが径方向外側に突出して設けられる。フランジ部302b2aは第一ブロック側部302b1の上端に接触しており、これにより、第一ブロック側部302b1に対する第一ブロック板302b2の上下方向位置が固定される。同時に、第一ブロック側部302b1と第一ブロック板302b2とが密着されて、内部空間328dを密閉している。第一ブロック板302b2の外周面には、フランジ部302b2aより下側で第一ブロック側部302b1に挿入された位置にOリング等の密閉手段を設けることもできる。
【0096】
第一ブロック302bにおいて、内部空間328dの下端付近には、インプット軸321aの軸方向の中央位置を支持する軸受321gが取り付けられている。軸受321gは第一ブロック側部302b1における内部空間328dの内周面に取り付けられている。
内部空間328dの下端位置となる第一ブロック側部302b1の下端には、貫通孔328d2の周囲となる位置に下向きに突出する突条302b4が形成されている。突条302b4は貫通孔328d2に挿入されており、第一ブロック側部302b1と第一ベース部302a1との位置決めに用いられる。
【0097】
第一ブロック302bにおいて、上下方向で拡径部328d1に対応する内部空間328dの位置およびその下側位置には、水平方向に延びる貫通孔328d4が形成される。貫通孔328d4は、インプット軸321aからモータ310に向かう方向に延びて形成される。貫通孔328d4の内部には、駆動側歯車311bが収納される。貫通孔328d4の外側には、入力軸311の周囲を囲む位置に入力軸支持部325が第一ブロック側部302b1に連続して形成される。入力軸支持部325は、入力軸311の周囲を囲む筒状とされ、その内側には軸受324が配置されている。軸受324は、入力軸311を回転可能に支持する。入力軸支持部325のモータ310に近接する外側には、モータ支持部材326が固定されている。入力軸支持部325の内部は貫通孔328d4に対応した径寸法を有している。入力軸支持部325および第一ブロック側部302b1は、入力軸311および駆動側歯車311bを収納して外部に対して密閉されている。
【0098】
第一ベース部302a1には、センターギア322に対向する内部空間328bの上側に開口328b3が形成されている。開口328b3は、第二ブロック302cおよび減速部330によって閉塞される。開口328b3は、出力軸線T0を中心として第二ブロック302cおよびセンターギア322と同心となる平面輪郭形状に形成される。
【0099】
内部空間328bにおいては、センターギア322が、筒体334に回転可能に支持されている。
筒体334は、内部空間328bを上下方向に貫通する。筒体334は、出力軸線T0を中心として配置される。筒体334は、減速機301を上下方向に貫通する。筒体334の下端は、貫通孔328aに嵌め込まれている。筒体334の下端と貫通孔328aの内面との間にはシール部材334bが設けられてもよい。筒体334の上端には、減速部330の上面に露出するフランジ部334aが形成されている。フランジ部334aは、減速機301の上面に対して下向きに凹んで形成されている。筒体334は、開口328b3のほぼ中心に配置される。
【0100】
センターギア322には、同軸となるギア322dが一体として形成されている。ギア322dは、センターギア322よりも小さな歯数を有し、小径とされる。センターギア322とギア322dとは一体として筒体334の周りに回転可能である。ギア322dは、センターギア322よりも上側に配置される。ギ3ア22dは、センターギア322よりも減速部330に近接して配置される。ギア322dは減速部330への入力側とされる。ギア322dは開口328b3の内部に収容される。センターギア322の下端は、軸受334cを介して貫通孔328aの付近に回転可能に支持される。センターギア322の上端は、軸受334cを介して減速部330に対して回転可能に支持される。
【0101】
減速部330は、第一ベース部302a1に固定される筒状の第二ブロック302cに収納される。減速部330は、例えば偏心揺動型の減速機構であってよい。減速部330は、第二ブロック302cの内側に配されるキャリア333と、センターギア322の回転に伴って回転する伝達軸331と、を有する。
【0102】
キャリア333は、第二ブロック302cに対して出力軸線T0を中心に相対的に回転可能となっている。具体的に、第二ブロック302cとキャリア333との相対的な回転は、第二ブロック302cの内周とキャリア333の外周との間に設けられた軸受336によって許容されている。キャリア333は、減速部330の上面に露出する。キャリア333は、減速部330の出力側となる。減速部330の下端は、開口328b3に対向している。キャリア333の中央部には筒体334が貫通する。キャリア333の軸線は、筒体334の軸線である出力軸線T0と一致している。筒体334は例えばキャリア333に固定されてもよい。
【0103】
伝達軸331は、センターギア322から回転駆動力を伝達される減速部330の入力側とされる。伝達軸331は、出力軸線T0に平行する方向を軸として、キャリア333に対して回転可能に取り付けられている。減速部330は、伝達軸331の回転に基づいて伝達軸331の回転速度よりも遅い速度で第二ブロック302cおよびキャリア333を相対的に回転させる。伝達軸331には、ギア322dに噛み合う伝達ギア332が設けられている。伝達ギア332は、平歯車である。伝達ギア332は、センターギア322よりも上側に配置される。
【0104】
本実施形態の減速機301は、平坦な減速機取付け面に固定されてもよい。そして、この状態で、キャリア333の上面にターンテーブル等が載せられてもよい。この場合、ターンテーブルは、締結ボルト等によってキャリア333の上面に固定される。
【0105】
この減速機301では、モータ310が駆動されると、駆動軸310aが回転し、駆動軸310aと同軸で一体とされた入力軸311が回転する。これにより、入力軸311に設けられた駆動側歯車311bと噛み合う従動側歯車311cが駆動され、歯車機構320のインプット軸321aがインプット軸線T1の回りに回転する。インプット軸321aが回転すると、インプット軸321aに結合されたインプットギア321はインプット軸線T1の回りに回転する。インプットギア321の回転により、インプットギア321に噛み合ったアイドラギア323がアイドラ軸323aの回りに回転する。アイドラギア323が回転すると、アイドラギア323に噛み合ったセンターギア322が出力軸線T0の回りに回転する。センターギア322が回転すると、センターギア322と一体とされた同軸となるギア322dが回転する。これにより、ギア322dに噛み合った伝達ギア332が回転し、伝達ギア332と一体とされた伝達軸331が回転する。伝達軸331の回転により、減速部330の外筒となる第二ブロック302cとキャリア333とが、伝達軸331の回転速度よりも遅い速度で相対的に回転する。これにより、ターンテーブルが回転する。
【0106】
本実施形態の減速機301では、複数種類のインプットギア321を選択するとともに、軸位置変更部350によってアイドラギア323の取り付け位置を対応させることで、異なる変速比を選択して設定することができる。
図12,
図13には、軸位置変更部350として、6箇所の支持穴(支持穴部)351A~351Fが示され、そのうち、支持穴351Aにアイドラギア323のアイドラ軸323aが挿入されている。
支持穴351Fは、インプット軸線T1に沿った方向に見て、アイドラ軸線T3が、インプット軸線T1とセンター軸線T2とを結ぶ直線上となるように配置される。
さらに、支持穴351A~351Eは、インプット軸線T1に沿った方向に見て、インプット軸線T1とセンター軸線T2とを結ぶ直線から離間する距離が大きくなるように、遠い順に支持穴351E,支持穴351D,支持穴351C,支持穴351B,支持穴351Aの順に並んでいる。支持穴351Aは、支持穴351A~351Fのうちで、インプット軸線T1とセンター軸線T2とを結ぶ直線から最も離間する。
【0107】
ここで、インプットギア321(A)は、本実施形態の減速機301において、最も大きな外径と歯数とを有する。この場合、アイドラギア323は、アイドラ軸323aを支持穴351Aに挿入されている。アイドラギア323は、支持穴351Aを用いてベース部302aの第一ベース部302a1に取り付けられる。
【0108】
これに対して、
図12,
図13に仮想線で示すように、インプットギア321(A)よりも外径と歯数とが小さなインプットギア321(D)を適応する場合には、アイドラギア323は、アイドラ軸323aを支持穴351Dに挿入されている。アイドラギア323は、支持穴351Dを用いてベース部302aの第二ベース部302a2に取り付けられる。
【0109】
同様にして、支持穴351A~351Fのいずれかを用いてアイドラギア323をベース部302aに取り付けることで、異なる外径と歯数とを有するインプットギア321に対応することができる。
【0110】
本実施形態の減速機301において、異なる外径と歯数とを有するインプットギア321に交換する際には、インプットギア321とセンターギア322との間の歯面間の距離の変化に応じて、軸位置変更部350としてベース部302aに形成された複数の支持穴351A~351Fから適宜選択して、最適な場所にアイドラギア323のアイドラ軸323aを固定することができる。
このため、ベース部302a等の支持ブロックを交換することなく、インプットギア321とセンターギア322との減速比を変更するとともに、変更範囲をさらに拡大することができる。これにより、本実施形態の減速機301を採用した場合には、大掛かりな部品交換を要することなく、インプットギア321とセンターギア322との変速比の変更範囲を拡大でき、部品コストの高騰を抑制することができる。
【0111】
また、複数の支持穴351A~351Fが、円周R50に沿って配置されることで、異なる外径と歯数とを有するインプットギア321(A)~(F)に対して、アイドラギア323の取り付け位置を変更することのみで、インプットギア321とセンターギア322との変速比の変更範囲を拡大でき、部品コストの高騰を抑制することができる。
【0112】
複数の支持穴351A~351Fが、円周R50上で第一ベース部302a1と第二ベース部302a2とに交互に配置されていることにより、第一ベース部302a1と第二ベース部302a2との片側だけに、複数の支持穴351A~351Fが配置された場合に比べて、変速比の細かい変動に対応する事が可能となる。しかも、変速比の細かい変動に対応した場合でも、第一ベース部302a1と第二ベース部302a2とのいずれか一方において、隣接する支持穴351A~351Fの距離を充分な強度を有する範囲に設定することができる。
【0113】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
例えば、上記の実施形態の説明では、支持穴351A~351Fとして6箇所配置された例を示したが、これに限定されない。さらに、支持穴351A~351Fを第一ベース部302a1と第二ベース部302a2とに交互に配置したが、これに限定されない。軸位置変更部350としては、設定されるインプットギア321とセンターギア322との変速比に応じて、適宜その配置を変更することが可能である。
【0114】
さらに、本実施形態では、減速機301が水平方向に延びる面の上に載置される構成として、減速機301をターンテーブルの駆動に用いるものとしたが、この構成および用途に限るものではない。本実施形態での減速機301は、水平以外の方向に延びる取付け面に固定される構成であってもよい。
また、減速部330において、出力側はキャリア333として説明したが、この構成に限る物ではなく、キャリア333と筒状の第二ブロック302cとのいずれかが出力側とされていればよい。
【0115】
本発明に係る歯車機構は、上述した実施形態の減速機301に適用されることに限らず、任意の機械や装置に適用されてよい。
【符号の説明】
【0116】
1…駆動装置、2…モータ(回転駆動源)、10,110,210,301…減速機、13…回転ブロック、14…固定ブロック(支持ブロック)、15A…第1キャリアブロック(支持ブロック)、30…中央歯車(出力歯車)、32…中間歯車、33…入力歯車、38,38A…取付ベース(支持ブロック)、39,239…支持軸、40,40A…保持部材、40a…支持軸に連なる部分(保持部)、41…保持孔、45A,45B…支持軸嵌合穴、c2…軸心、302a1…第一ベース部(支持ブロック)、302a2…第二ベース部(支持ブロック)、320…歯車機構、321…インプットギア(第一歯車)、321a…インプット軸(支持軸)、322…センターギア(第三歯車)、322a…センター軸(支持軸)、323…アイドラギア(第二歯車)、323a…アイドラ(支持軸)、350…軸位置変更部、351A~351F…支持穴(支持穴部)