(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】基板実装型のコネクタ、及び、コネクタ付き基板
(51)【国際特許分類】
H01R 13/6587 20110101AFI20231207BHJP
H01R 13/66 20060101ALI20231207BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20231207BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20231207BHJP
H01R 13/6598 20110101ALI20231207BHJP
【FI】
H01R13/6587
H01R13/66
H01L33/00 H
G02B6/42
H01R13/6598
(21)【出願番号】P 2019154565
(22)【出願日】2019-08-27
【審査請求日】2022-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮成 素範
(72)【発明者】
【氏名】原田 剛
(72)【発明者】
【氏名】山形 智枝美
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 雅仁
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-128817(JP,A)
【文献】特開2003-168805(JP,A)
【文献】特開2010-210655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/6581
H01R 12/51
H01L 33/00
G02B 6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換素子を有し且つ回路基板に接続可能な光電変換モジュールと、前記光電変換モジュールを覆うノイズ低減用のシールドケースと、を備える基板実装型のコネクタであって、
前記光電変換モジュールは、
当該光電変換モジュールの外表面に設けられる導電性皮膜を有し、
前記シールドケースは、
前記導電性皮膜に接触する接触部と、前記回路基板が有する導体パターンに接続可能なアース部と、を有し、
前記シールドケースは、
前記光電変換モジュールに向けて梁状に突出する前記接触部を有する第1シールド部と、前記接触部の突出に伴って前記第1シールド部の内外を連通するように前記第1シールド部に画成される貫通空間を覆う第2シールド部と、によって前記光電変換モジュールを多層的に覆う積層構造を有し、
前記第2シールド部は、前記貫通空間の全体を前記第1シールド部の外側から覆
い、
前記接触部は、
前記光電変換モジュールの前記導電性皮膜に接触するとともに、前記第2シールド部に接触する、
基板実装型のコネクタ。
【請求項2】
請求項1
に記載の基板実装型のコネクタと、前記コネクタが実装される回路基板と、を備え、
前記光電変換モジュール及び前記シールドケースの前記アース部が、前記回路基板が有する前記導体パターンに電気的に接続されている、
コネクタ付き基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子を有し且つ回路基板に接続可能な光電変換モジュールと、光電変換モジュールを覆うノイズ低減用のシールドケースと、を備える基板実装型のコネクタ、及び、そのコネクタと回路基板とを備えるコネクタ付き基板、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光ファイバと電子機器との接続や光ファイバ同士の接続を目的として、光コネクタが用いられている。例えば、従来の光コネクタの一つは、光電変換素子を有する光電変換モジュール(例えば、FOT。Fiber Optical Transceiver)と、光電変換モジュールを収容する樹脂製のハウジングと、ハウジングを覆うように取り付けられるノイズ低減用の金属製のシールドケースと、を備える(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したシールドケースは、一般に、電気的ノイズ等の原因となる電磁波がシールドケースの外部から内部へ侵入すること及び内部から外部へ放出されることを抑制する目的で、コネクタに設けられている。上述した従来のコネクタが有するシールドケースは、金属製の薄板を折り曲げ加工して製造されている。そのため、製造上の公差などに起因し、その薄板の端面同士の間などに微小な隙間が存在し得る。また、その薄板の一部を片持ち梁状に切り起こしたバネ部が、光電変換モジュール(FOT)をハウジングに対して押さえ付けて固定するために設けられる場合もある。このようなバネ部の切り起こしに伴い、薄板には、孔や切り欠き等が画成されることになる。
【0005】
ところが、上述した隙間、孔や切り欠き等のようにシールドケースの内外を連通する箇所(即ち、貫通空間)は、電磁波の意図しない侵入や放出を引き起こし、シールドケースによる電磁波の遮蔽性能を低下させる原因となり得る。そこで、このような遮蔽性能の低下を出来る限り抑制し、コネクタから外部に放出する電磁波を低減するとともにコネクタを介した通信の信頼性を向上させることが望まれる。
【0006】
本発明の目的の一つは、外部に放出する電磁波を低減可能であるとともに通信の信頼性を向上可能な基板実装型のコネクタ、及び、そのコネクタを用いたコネクタ付き基板、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る基板実装型のコネクタ及びコネクタ付き基板は、下記[1]~[2]を特徴としている。
[1]
光電変換素子を有し且つ回路基板に接続可能な光電変換モジュールと、前記光電変換モジュールを覆うノイズ低減用のシールドケースと、を備える基板実装型のコネクタであって、
前記光電変換モジュールは、
当該光電変換モジュールの外表面に設けられる導電性皮膜を有し、
前記シールドケースは、
前記導電性皮膜に接触する接触部と、前記回路基板が有する導体パターンに接続可能なアース部と、を有し、
前記シールドケースは、
前記光電変換モジュールに向けて梁状に突出する前記接触部を有する第1シールド部と、前記接触部の突出に伴って前記第1シールド部の内外を連通するように前記第1シールド部に画成される貫通空間を覆う第2シールド部と、によって前記光電変換モジュールを多層的に覆う積層構造を有し、
前記第2シールド部は、前記貫通空間の全体を前記第1シールド部の外側から覆い、
前記接触部は、
前記光電変換モジュールの前記導電性皮膜に接触するとともに、前記第2シールド部に接触する、
基板実装型のコネクタであること。
[2]
上記[1]に記載の基板実装型のコネクタと、前記コネクタが実装される回路基板と、を備え、
前記光電変換モジュール及び前記シールドケースの前記アース部が、前記回路基板が有する前記導体パターンに電気的に接続されている、
コネクタ付き基板であること。
【0008】
上記[1]の構成の基板実装型のコネクタによれば、光電変換モジュールの外表面に導電性皮膜(例えば、金属製のメッキ)が設けられる。更に、シールドケースは、この導電性皮膜に接触するようになっている。そのため、光電変換モジュールの内部から外部に向けて放出される電磁波や、光電変換モジュールの外部から内部に向かう電磁波を、導電性皮膜で捕集することで低減できる。更に、導電性皮膜に捕集された電磁波に起因する電流を、導電性皮膜から、シールドケースの接触部およびアース部を介し、回路基板の導体パターン(例えば、アース回路。GND回路)に放出できる。したがって、本構成のコネクタは、光電変換モジュールに導電性皮膜が設けられない場合に比べ、外部に放出する電磁波を低減可能であるとともに通信の信頼性を向上可能である。
【0009】
更に、上記[1]の構成の基板実装型のコネクタによれば、シールドケースの第1シールド部から梁状に突出するように(例えば、切り起こされるように)、接触部が形成される。この接触部を光電変換モジュールの導電性皮膜に押し付けるように接触させることで、導電性皮膜と接触部との間の接触抵抗を低減できる。その結果、導電性皮膜に捕集された電磁波に起因する電流を、効率良くシールドケースに向けて放出できる。更に、接触部を第1シールド部に形成する際に第1シールド部に隙間(貫通空間)が生じても、その貫通空間が第2シールド部によって塞がれる。このような第1シールド部と第2シールド部との積層構造により、仮に第1シールド部に貫通空間が存在しても、シールドケースによる電磁波の遮蔽性能の低下を抑制できる。なお、第1シールド部と第2シールド部とは、一体的に連続した部材であってもよいし、互いに独立した別体の部材であってもよい。
【0010】
更に、上記[1]の構成の基板実装型のコネクタによれば、第1シールド部から延びる梁状の接触部が、光電変換モジュールに接触し、且つ、第2シールド部にも接触する。そのため、導電性皮膜に捕集された電磁波に起因する電流が、複数の経路(即ち、接触部を経て第1シールド部を通過してアース部に向かう経路と、接触部を経て第2シールド部を通過してアース部に向かう経路)を経て、外部に放出され得る。その結果、シールドケースは、高強度の電磁波に対しても適正な電磁波遮蔽性能を発揮できる。更に、光電変換モジュールが接触部を介して第1シールド部および第2シールド部の双方に支持されることとなり、光電変換モジュールの位置ズレ(ガタツキ)を抑制できる。その結果、光電変換モジュールを介した信号の伝送品質を向上でき、コネクタによる通信の信頼性を向上できる。
【0011】
上記[2]の構成のコネクタ付き基板によれば、基板実装型のコネクタ内の光電変換モジュールの外表面に、導電性皮膜(例えば、金属製のメッキ)が設けられる。更に、コネクタが有するシールドケースは、この導電性皮膜に接触するようになっている。そのため、光電変換モジュールの内部から外部に向けて放出される電磁波や、光電変換モジュールの外部から内部に向かう電磁波を、導電性皮膜で捕集することで低減できる。更に、導電性皮膜に捕集された電磁波に起因する電流を、導電性皮膜から、シールドケースの接触部およびアース部を介し、回路基板の導体パターン(アース回路、GND回路)に放出できる。したがって、本構成のコネクタ付き基板は、光電変換モジュールに導電性皮膜が設けられない場合に比べ、コネクタから外部に放出する電磁波を低減するとともにコネクタの通信の信頼性を向上可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、通信の信頼性を向上可能な基板実装型のコネクタ、及び、そのコネクタを用いたコネクタ付き基板、を提供できる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1(a)は、本発明の実施形態に係るコネクタ付き基板を前側からみた斜視図であり、
図1(b)は、そのコネクタ付き基板を後側からみた斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すコネクタ付き基板の分解斜視図である。
【
図3】
図3(a)は、
図1に示すコネクタ付き基板に含まれる光電変換モジュールの斜視図であり、
図3(b)は、内部断面の図示を省略した
図3(a)のB-B断面図である。
【
図4】
図4(a)は、
図1に示すコネクタ付き基板に含まれるシールドケースの斜視図であり、
図4(b)は、
図4(a)のC-C断面図である。
【
図5】
図5(a)は、
図1(b)のA-A断面図であり、
図5(b)は、
図5(a)のD部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る基板実装型のコネクタ1及びコネクタ付き基板3について説明する。コネクタ1は、光ファイバと電子機器との接続や光ファイバ同士の接続を目的とする光コネクタであり、
図1及び
図2に示すように、回路基板2に実装されてコネクタ付き基板3として使用される。
【0016】
以下、説明の便宜上、
図2に示すように、「前後方向」、「上下方向」、「幅方向」、「前」、「後」、「上」及び「下」を定義する。「前後方向」、「上下方向」及び「幅方向」は、互いに直交している。前後方向は、コネクタ1と相手側光コネクタ(図示省略)との嵌合方向と一致している。以下、コネクタ1を構成する各部材について順に説明する。
【0017】
コネクタ1は、
図2に示すように、光電変換モジュール10と、光電変換モジュール10を収容する樹脂製のハウジング20と、ハウジング20を覆うようにハウジング20に取り付けられるノイズ低減用の金属製のシールドケース30と、を備える。
【0018】
まず、光電変換モジュール10(例えば、FOT。Fiber Optical Transceiver)について説明する。光電変換モジュール10は、
図3に示すように、略矩形箱状の樹脂製の本体部11と、本体部11の前壁の中央部から前方へ突出する円筒状の樹脂製の筒状部12と、を備える。
【0019】
図5(a)に示すように、本体部11の前壁における筒状部12の後端開口(根本側開口)が接続する箇所には、導光性を有する透明樹脂製のレンズ体13が、筒状部12の後端開口に同軸的に隣接するように内蔵されている。本体部11の内部には、光電変換素子14が、レンズ体13から後方に所定距離だけ離れてレンズ体13と同軸的に位置するように内蔵されている。
【0020】
本体部11の後壁には、インサート成形により、金属製の複数本のリードフレーム15が一体化されている。複数本のリードフレーム15は、光電変換素子14と電気的に接続されていると共に、本体部11の後端面の下端部から、幅方向に並ぶように下方且つ後方に向けて延びている。複数のリードフレーム15の延出端部(後端部)は、回路基板2の上面にて幅方向に並ぶように設けられた複数のパッド41(
図2参照)にそれぞれハンダ付けされることになる。
【0021】
コネクタ1では、
図2に示すように、一対の光電変換モジュール10が使用される。一対の光電変換モジュール10のうち一方は、発光側の光電変換モジュール10である。発光側の光電変換モジュール10の光電変換素子14は、例えば、LED(Light Emitting Diode)、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER)等の発光素子である。一対の光電変換モジュール10のうち他方は、受光側の光電変換モジュール10である。受光側の光電変換モジュール10の光電変換素子14は、例えば、PD(Photo Diode)などの受光素子である。
【0022】
本体部11の外表面における、複数のリードフレーム15の根本部近傍領域を除く略全域には、
図2及び
図3(b)に示すように、導電性皮膜16が形成されている。導電性皮膜16は、例えば、金属製のメッキにより形成される。導電性皮膜16は、光電変換素子14から光電変換モジュール10の外部に向けて放出される電磁波や、光電変換モジュール10の外部から内部に向かう電磁波、を捕集して低減する機能を果たし得る。
【0023】
次いで、ハウジング20について説明する。
図2に示すように、ハウジング20は略直方体状の形状を有する樹脂成形体である。ハウジング20の前面には、
図1(a)及び
図5(a)に示すように、前方に開口し且つ後方に窪む直方体状の嵌合空間21が形成されている。嵌合空間21には、相手側光コネクタが嵌合することになる。
【0024】
ハウジング20の後面には、
図2に示すように、後方に開口し且つ前方に窪む直方体状の一対の収容部22が、幅方向に並ぶように形成されている。一対の収容部22には、一対の光電変換モジュール10が収容されることになる。
【0025】
嵌合空間21の底面(後端面)における一対の収容部22に対応する箇所には、
図5(a)に示すように、前方へ突出する円筒状の一対の筒状部23が一体に設けられている。一対の筒状部23の後端開口(根本側開口)は、一対の収容部22とそれぞれ連通している。筒状部23の先端部(前端部)には、筒状部23の他の部分と比べて開口径が僅かに小さい先端開口部24が形成されている。コネクタ1と相手側光コネクタとの嵌合時、相手側光コネクタに収容されている相手側光ファイバ(図示省略)が、先端開口部24を介して筒状部23に挿入されることになる。
【0026】
次いで、シールドケース30について説明する。シールドケース30は、一枚の金属板に対して所定のプレス加工及び曲げ加工等を施すことによって形成される。シールドケース30は、
図4に示すように、矩形平板状の天板31と、天板31の幅方向両端縁から垂下する一対の矩形平板状の側板32と、を備える。
【0027】
一対の側板32の後端縁からは、天板31及び一対の側板32の後端縁により画成されるシールドケース30の後端開口を塞ぐように、一対の矩形平板状の後板33が幅方向内側に延びている(
図4(b)参照)。一対の後板33の上下方向に延びる延出端縁同士は、シールドケース30の後端開口の幅方向中央位置にて多少の隙間をあけて対向しているが、対面接触するようにしてもよい。天板31の後端縁からは、矩形平板状の遮蔽板34が垂下している(
図4(a)参照)。遮蔽板34は、一対の後板33全体を後方から覆っている。
【0028】
各後板33には、
図4(b)及び
図5に示すように、その一部を切り起こすことで、片持ち梁状に上方に延びる接触部35が形成されている。接触部35の延出端近傍には、
図5(b)に示すように、前方へ向けて湾曲して前方に突出する突出部35aが形成されている。接触部35の延出端には、延出端部35bが設けられている。延出端部35bは、上方且つ後方に斜めに延びている。
【0029】
後板33から接触部35が切り起こされていることで、後板33における接触部35の周囲には、後板33の前後を貫通する隙間(貫通空間)が画成されている。これらの隙間は、一対の後板33全体を後方から覆う遮蔽板34によって塞がれている。このような積層構造により、これらの隙間が存在しても、シールドケース30の電磁波遮蔽性能を維持できる。接触部35の突出部35aは、光電変換モジュール10の本体部11の後面に形成された導電性皮膜16を弾性的に前方へ押し付けることになり、接触部35の延出端部35bは、シールドケース30の遮蔽板34に接触することになる。
【0030】
各側板32の前後方向に延びる下端縁からは、
図4に示すように、3本の棒状のアース部36が、前後方向に所定距離を空けて並ぶように下方に向けて延びている。一対の後板33の一方の延出端近傍の下端縁からは、
図4(b)に示すように、1本の棒状のアース部37が下方に向けて延びている。遮蔽板34の下端縁の幅方向中央部からは、
図4(a)に示すように、1本の棒状のアース部38が下方に向けて延びている。以上、コネクタ1を構成する各部材について説明した。
【0031】
次いで、コネクタ1の組み付け手順について説明する。まず、ハウジング20の一対の収容部22(
図2参照)に、一対の光電変換モジュール10をそれぞれ、光電変換モジュール10の筒状部12がハウジング20の筒状部23に内挿されるように、挿入する(
図5(a)参照)。挿入は、光電変換モジュール10の本体部11の前面が収容部22の底面に当接するまで継続される。挿入が完了すると、一対の光電変換モジュール10がハウジング20の一対の収容部22に収容された状態が得られる。
【0032】
次いで、シールドケース30を、
図2に示すように、ハウジング20を覆うようにハウジング20に上方から取り付ける。シールドケース30のハウジング20への取り付けが完了すると、コネクタ1の組み付けが完了し、
図1に示すコネクタ1が得られる。
【0033】
組み付けが完了したコネクタ1では、ハウジング20を覆うシールドケース30により、光電変換モジュール10が覆われている。更に、
図5(b)に示すように、接触部35の突出部35aが、シールドケース30の本体部11の後面に形成された導電性皮膜16を弾性的に前方へ押し付け、且つ、接触部35の延出端部35bは、シールドケース30の遮蔽板34に接触している。
【0034】
これにより、導電性皮膜16に捕集された電磁波に起因する電流が、接触部35を経て一対の後板33を通過してアース部36,37に向かう経路と、接触部35を経て遮蔽板34を通過してアース部38に向かう経路と、の複数の経路を経て、外部に放出される。更に、導電性皮膜16に対して接触部35を弾性的に押し付けることで、導電性皮膜16と接触部35との間の接触抵抗を低減でき、導電性皮膜16に捕集された電磁波に起因する電流を効率良く外部に放出できる。更に、光電変換モジュール10が、接触部35を介してシールドケース30の後板33及び遮蔽板34の双方に支えられることになる。この結果、光電変換モジュール10の収容部22内での位置ズレが抑制されるので、光電変換モジュール10を介した信号の伝送品質を向上できる。
【0035】
シールドケース30に設けられたアース部36,37,38は、ハウジング20の下面から下方に突出している。光電変換モジュール10に設けられた複数のリードフレーム15の延出端部は、シールドケース30の遮蔽板34の下端縁から下方且つ後方に向けて延びている。
【0036】
組み付けが完了したコネクタ1は、
図1及び
図2に示すように、回路基板2の上面に実装される。具体的には、まず、シールドケース30に設けられた複数(合計6本)のアース部36、1本のアース部37、及び1本のアース部38をそれぞれ、回路基板2に形成された複数(合計6つ)のスルーホール42、1つのスルーホール43、及び1つのスルーホール44にそれぞれ挿入する。
【0037】
次いで、ハウジングの下面に形成されている位置決め機構(図示省略)を、回路基板2に設けられた位置決め部(図示省略)に係合させて、回路基板2に対するハウジング20の位置決めを行うと共に、コネクタ1を回路基板2の上に載置する。これにより、光電変換モジュール10に設けられた複数のリードフレーム15の延出端部が、回路基板2の上面に形成された複数のパッド41にそれぞれ載置された状態となる。
【0038】
次いで、光電変換モジュール10の複数のリードフレーム15の延出部を、回路基板2の複数のパッド41に対してそれぞれハンダ付けすると共に、シールドケース30の複数のアース部36、1本のアース部37、及び1本のアース部38をそれぞれ、回路基板2の複数のスルーホール42、1つのスルーホール43、及び1つのスルーホール44に対してそれぞれハンダ付けする。
【0039】
以上より、コネクタ1の回路基板2への実装が完了し、コネクタ付き基板3が完成する(
図1参照)。完成したコネクタ付き基板3では、一対の光電変換モジュール10の複数のリードフレーム15が、回路基板2の所定の回路に接続されている。この結果、回路基板2に実装されたコネクタ1に相手側光コネクタが嵌合された状態では、回路基板2にて生成された電気信号が、発光側の光電変換モジュール10の光電変換素子14により光信号に変換され、変換された光信号が、発光側のレンズ体13に入射し、相手側光コネクタに収容されている一方の光ファイバへ導かれる。また、相手側光コネクタに収容されている他方の光ファイバから受光側のレンズ体13へ入射した光信号は、受光側の光電変換モジュール10の光電変換素子14で受光されて電気信号に変換され、変換された電気信号が、回路基板2へ伝送される。
【0040】
また、完成したコネクタ付き基板3では、シールドケース30のアース部36,37,38が、回路基板2のアース回路(GND回路)に接続されている。この結果、導電性皮膜16に捕集された電磁波に起因する電流が、接触部35を経て一対の後板33を通過してアース部36,37に向かう経路と、接触部35を経て遮蔽板34を通過してアース部38に向かう経路と、の複数の経路を経て、回路基板2のアース回路に放出され得る。その結果、高強度の電磁波に対しても適正な電磁波遮蔽性能が発揮され得る。
【0041】
以上、本実施形態に係るコネクタ1(及びコネクタ付き基板3)によれば、光電変換モジュール10の外表面に導電性皮膜16(例えば、メッキ)が設けられる。更に、シールドケース30の接触部35は、この導電性皮膜16に接触している。そのため、光電変換素子14から光電変換モジュール10の外部に向けて放出される電磁波や、光電変換モジュール10の外部から内部に向かう電磁波を、導電性皮膜16で捕えられる。更に、導電性皮膜16に捕集された電磁波に起因する電流は、導電性皮膜16から、シールドケース30の接触部35を経て、アース部36,37,38を介して回路基板2のアース回路(GND回路)に放出される。したがって、本実施形態に係るコネクタ1は、光電変換モジュール10に導電性皮膜16が設けられない場合に比べ、コネクタ1から外部に放出する電磁波を低減するとともにコネクタ1の通信の信頼性を向上可能である。
【0042】
更に、本実施形態に係るコネクタ1によれば、シールドケース30の後板33から梁状に突出するように(切り起こされるように)接触部35が構成される。よって、光電変換モジュール10の導電性皮膜16に対して接触部35を弾性的に押し付けることで、導電性皮膜16と接触部35との間の接触抵抗を低減でき、導電性皮膜16に捕集された電磁波に起因する電流を効率良く外部に放出できる。更に、接触部35を後板33に形成する際に後板33における接触部35の周囲に生じた隙間(貫通空間)が、シールドケース30の遮蔽板34によって塞がれる。本実施形態に係るコネクタ1は、このような積層構造により、シールドケース30の一部に貫通空間が存在しても、シールドケース30による電磁波遮蔽性能の低下を抑制できる。
【0043】
更に、本実施形態に係るコネクタ1によれば、後板33から延びる梁状の接触部35が、光電変換モジュール10に接触しつつ、シールドケース30にも接触する。そのため、導電性皮膜16に捕集された電磁波に起因する電流が、接触部35を経て一対の後板33を通過してアース部36,37に向かう経路と、接触部35を経て遮蔽板34を通過してアース部38に向かう経路と、の複数の経路を経て放出され得る。その結果、高強度の電磁波に対しても適正な電磁波遮蔽性能を発揮できる。更に、光電変換モジュール10が接触部35を介して一対の後板33および遮蔽板34に支えられることとなり、光電変換モジュール10におけるハウジング20の収容部22内での位置ズレを抑制できる。その結果、光電変換モジュール10を介した信号の伝送品質を向上できる。
【0044】
<他の態様>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用できる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0045】
例えば、上記実施形態では、シールドケース30における一対の後板33と遮蔽板34とは、一体的に連続した部材である。これに対し、シールドケース30における一対の後板33と遮蔽板34とは、互いに独立した別体の部材であってもよい。更には、遮蔽板34が省略されていてもよい。
【0046】
更に、上記実施形態では、接触部35の延出端部35bは、シールドケース30の遮蔽板34に接触している(
図5(b)参照)。これに対し、接触部35が、シールドケース30の遮蔽板34に接触していなくてもよい。
【0047】
ここで、上述した本発明に係るコネクタ1及びコネクタ付き基板3の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
光電変換素子(14)を有し且つ回路基板(2)に接続可能な光電変換モジュール(10)と、前記光電変換モジュール(10)を覆うノイズ低減用のシールドケース(30)と、を備える基板実装型のコネクタ(1)であって、
前記光電変換モジュール(10)は、
当該光電変換モジュール(10)の外表面に設けられる導電性皮膜(16)を有し、
前記シールドケース(30)は、
前記導電性皮膜(16)に接触する接触部(35)と、前記回路基板(2)が有する導体パターン(42,43,44)に接続可能なアース部(36,37,38)と、を有する、
基板実装型のコネクタ(1)。
[2]
上記[1]に記載のコネクタ(1)において、
前記シールドケース(30)は、
前記光電変換モジュール(10)に向けて梁状に突出する前記接触部(35)を有する第1シールド部(33)と、前記接触部(35)の突出に伴って前記第1シールド部(33)の内外を連通するように前記第1シールド部(33)に画成される貫通空間を覆う第2シールド部(34)と、によって前記光電変換モジュール(10)を多層的に覆う積層構造を有する、
基板実装型のコネクタ(1)。
[3]
上記[2]に記載のコネクタ(1)において、
前記接触部(35)は、
前記光電変換モジュール(10)の前記導電性皮膜(16)に接触するとともに、前記第2シールド部(34)に接触する、
基板実装型のコネクタ(1)。
[4]
上記[1]~上記[3]の何れか一つに記載の基板実装型のコネクタ(1)と、前記コネクタ(1)が実装される回路基板(2)と、を備え、
前記光電変換モジュール(10)及び前記シールドケース(30)の前記アース部(36,37,38)が、前記回路基板(2)が有する前記導体パターン(42,43,44)のに電気的に接続されている、
コネクタ付き基板(3)。
【符号の説明】
【0048】
1 基板実装型のコネクタ
2 回路基板
3 コネクタ付き基板
10 光電変換モジュール
14 光電変換素子
16 導電性皮膜
30 シールドケース
33 後板(第1シールド部)
34 遮蔽板(第2シールド部)
35 接触部
36 アース部
37 アース部
38 アース部
42 スルーホール(導体パターン)
43 スルーホール(導体パターン)
44 スルーホール(導体パターン)