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特許7398224光ファイバの製造に使用される伸長されたシリカのシリンダーの加熱方法、加熱装置及び加熱システム
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  • 特許-光ファイバの製造に使用される伸長されたシリカのシリンダーの加熱方法、加熱装置及び加熱システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】光ファイバの製造に使用される伸長されたシリカのシリンダーの加熱方法、加熱装置及び加熱システム
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/012 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
C03B37/012 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019154596
(22)【出願日】2019-08-27
(65)【公開番号】P2020037509
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】2021543
(32)【優先日】2018-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】507112468
【氏名又は名称】ドラカ・コムテツク・ベー・ベー
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】イゴール ミリセビク
(72)【発明者】
【氏名】ハーチャン クラブスハイス
(72)【発明者】
【氏名】マテーウス ヤコブス ニコラース ファン ストラーレン
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-132555(JP,A)
【文献】特表2003-505321(JP,A)
【文献】特表2004-513863(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0088253(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0100064(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0000253(US,A1)
【文献】特開2013-010660(JP,A)
【文献】特開昭59-217641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/00-37/16
C03B 23/043,23/047
C03B 8/00-8/04
G02B 6/02-6/10
G02B 6/44
F27D 7/00-7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの製造に使用される伸長されたシリカのシリンダーの加熱方法であって、光ファイバのためのコアロッドを形成するために、伸長された空洞のシリカのシリンダーをコラプスするための方法であり、
-加熱装置を与えるステップと、
-伸長されたシリカのシリンダーが前記加熱装置のキャビティを通って延びるように、当該伸長されたシリカのシリンダーを与えるステップと、
-前記加熱装置の加熱要素で生成された熱により、前記伸長されたシリカのシリンダーを、前記伸長されたシリカのシリンダーの軟化温度を超える温度まで局所的に加熱するステップと、
-前記加熱するステップを実行中に、ガス洗浄装置を用いて、少なくとも加熱要素空間を通るガスの流れを生成するステップと、を備え、
前記加熱装置は、
伸長されたキャビティと、
円柱壁を有する、伸長された円柱形のライナーと、
加熱要素と、
ガス洗浄装置と、を備え、
前記キャビティは、前記加熱装置の軸方向に延び、使用中に前記シリカのシリンダーが前記キャビティを通って延びることができるように構成され、
前記ライナーは、カーボン製であって、軸方向に延び、前記円柱壁により前記キャビティを境界づけ、
前記加熱要素は、使用中に、前記伸長されたシリカのシリンダーを加熱するためのものであり、
前記加熱要素は、環状の加熱要素空間に与えられ、
前記加熱要素は、前記ライナーの少なくとも一部を取り囲み、
前記ライナーの前記円柱壁は、前記加熱要素空間を前記キャビティから隔て、
前記加熱要素空間は、外側が、前記加熱装置のフレーム部分のさらなる包囲壁によって境界づけられ、
前記ガス洗浄装置は、少なくとも前記加熱要素空間を通るガスの流れを生成するためのものであり、
前記ガスの流れは、少なくともアルゴンガスと窒素ガスとを含むことを特徴とする加熱方法。
【請求項2】
前記ガスの流れの中に、窒素ガスが体積率で、0.2%以上20%以下存在することを特徴とする請求項1に記載の加熱方法。
【請求項3】
前記加熱するステップを実行中に、前記シリンダーは、1800℃より高温まで少なくとも局所的に加熱されることを特徴とする請求項1または2に記載の加熱方法。
【請求項4】
前記ライナーは前記円柱壁に複数の貫通する孔を含み、
前記ガスの流れを生成するステップを実行中に、ガスが、前記孔を通って、前記加熱要素空間から前記キャビティに流れることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の加熱方法。
【請求項5】
前記加熱装置を予熱するステップをさらに備え、
前記加熱装置を予熱するステップを実行中に、前記加熱要素は、前記加熱するステップを実行するのに適した温度まで加熱され、
前記加熱装置を予熱するステップを実行中に、前記ガス洗浄装置を用いて、ガスの流れが生成され、
前記ガスの流れは、少なくともアルゴンガスと窒素ガスとを含み、
このガスの流れの中で、アルゴンガスの体積流率は窒素ガスの体積流率より大きく、
アルゴンガスの体積流率は、窒素ガスの体積流率の50倍以上400倍以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の加熱方法。
【請求項6】
前記加熱要素は抵抗型であり、
前記シリンダーを加熱するステップは、前記加熱要素に電力を与えることにより実行されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の加熱方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の加熱方法に使われる、伸長されたシリカのシリンダーの加熱装置であって、光ファイバの製造に使用される装置であり
この目的のために、前記装置は、前記コアロッドを形成するために、前記シリンダーをコラプスするように構成され、
-伸長されたキャビティと、
-カーボン製の伸長された円柱形のライナーと、
-加熱要素と、を備え、
前記キャビティは、前記装置の軸方向に延び、使用中に前記シリンダーが前記キャビティを通って延びることができるように構成され、
前記ライナーは、軸方向に延び、前記ライナーの円柱壁によりキャビティを境界づけ、
前記加熱要素は、使用中に前記シリンダーを加熱するためのものであり、
前記加熱要素は、環状の加熱要素空間に与えられ、
前記加熱要素は、前記ライナーの少なくとも一部を取り囲み、
前記ライナーの前記円柱壁は、前記加熱要素空間を前記キャビティから隔て、
前記加熱装置は、少なくとも前記加熱要素空間を通るガスの流れを生成するための、ガス洗浄装置を有し、
前記ガスの流れは、少なくともアルゴンと窒素とを含むことを特徴とする加熱装置。
【請求項8】
前記ライナーは、前記円柱壁に複数の貫通する孔を含み、
前記ガスの流れを生成するステップを実行中に、ガスが、前記孔を通って、前記加熱要素空間から前記キャビティに流れることを特徴とする請求項7に記載の加熱装置。
【請求項9】
前記加熱要素は抵抗型であることを特徴とする請求項7または8に記載の加熱装置。
【請求項10】
前記加熱要素はグラファイト製であり、
前記加熱要素は、前記ライナーの長さ部分に沿って、複数の屈曲した伸長部品または「フィンガー」を備えることを特徴とする請求項7から9のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項11】
前記加熱要素は、前記ライナーから自由な状態にあり、
前記加熱要素は、前記ライナーの外面との間に半径方向に4mm以上9mm以下の隙間を残すことを特徴とする請求項7から10のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項12】
アルゴン源と窒素源と、
それぞれ前記アルゴン源と前記窒素源から加熱要素空間へのアルゴンと窒素の流れを実現するそれぞれのバルブ要素と、
窒素の流れに対するアルゴンの流れを調整するための調整要素と、をさらに備えることを特徴とする請求項7から11のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項13】
請求項1から6のいずれかに記載の加熱方法に使われる、伸長されたシリカのシリンダーの加熱システムであって、光ファイバの製造に使用される加熱システムであり、
請求項7から12のいずれかに記載の加熱装置を備え、
前記システムは、前記シリンダーと前記加熱装置とを軸方向に相対的に往復運動させるように構成された運動装置をさらに備えることを特徴とする加熱システム。
【請求項14】
前記シリンダーの2つの対向した端部を保持するための、2つの保持要素を有し、
前記運動装置は、前記システムの使用中に前記加熱装置が前記シリンダーを通過するように、前記加熱装置を軸方向に往復運動させるように構成されることを特徴とする請求項13に記載の加熱システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの製造に使用される伸長されたシリカのシリンダーの加熱方法、加熱装置及び加熱システムに関する。好ましくは、本方法は、光ファイバのコアロッドを形成するためのシリカの堆積層を、内側表面の少なくとも一部に含む、チューブなどの伸長された空洞のシリカのシリンダーをコラプシングするための方法である。
【0002】
本教示は、化学気相堆積法(CVD)を用いた光ファイバの製造の分野に関する。この場合、シリカの層が基板の上に堆積する。CVDの例には、内付化学気相堆積法(MCVD)、プラズマ化学気相堆積法(PECVDまたはPCVD)および外付気相堆積法(OVD)などがある。
【0003】
PCVDなどによりシリカの堆積層を与えられたチューブは、シリカチューブを加熱することによりコアロッドを形成するために、加熱装置に送られてよい。このような装置は、コラプシング・レース(collapsing lathe)またはガラスワーキング・レース(glass-working lathe)とも呼ばれる。コラプシングの役割は、チューブからコアロッドを形成することにある。シリカの堆積層を有するチューブの場合、中心を貫く孔があるのに対し、コアロッドにはない。これは、チューブを、その融点を超える温度まで局所的に加熱した結果である。シリカが溶け出すと、チューブの直径は表面張力により小さくなる。この局所的な加熱のプロセスはチューブの中心の孔が完全に閉じるまで行われ、コアロッドの形成が完了する。加熱中に、装置とチューブとは互いに沿う形で往復運動する。これにより、装置は、チューブを局所的に(しかしチューブの長さ全体にわたって)加熱する。
【背景技術】
【0004】
米国特許出願公開第2002/0097774A1号明細書は、プリフォームの製造装置に関する。ここでは、キャリアチューブがプリフォームにコラプスされる。この装置は、円柱形のエンベロープを生成する加熱要素と、エンベロープ内のキャリアチューブと、キャリアチューブとエンベロープとの間の空間に非酸化性ガスを供給する手段と、を備える。加熱装置は、キャリアチューブに対して軸方向に運動可能である。この装置を使用中に、エンベロープとキャリアチューブとの間の空間は非酸化性ガスで洗浄される。
【0005】
米国特許出願公開第2003/0209039A1号明細書は、光ファイバのためのプリフォームの製造方法に関する。1つ以上のクォーツ層が、クォーツガラスサポートチューブの内面に堆積する。炉は、サポートチューブに対して軸方向に移動する。クォーツ層が堆積した後、サポートチューブは加熱され回転されて、棒状のプリフォームに収縮する。回転するサポートチューブと炉との間の空間は、サポートチューブの収縮中に、不活性ガスで洗浄される。
【0006】
米国特許出願公開第2002/0088253A1号明細書は、径の大きな光プリフォームを、光ファイバまたは径のより小さなプリフォームに線引する方法に関する。この方法は、光プリフォームを、線引炉に接続された頂上煙突を通して線引炉に導入するステップと、頂上煙突の上部を機械的に封止するステップと、炉内のプリフォームの底部端をその軟化温度にまで加熱するステップと、頂上煙突にコンデショニングガスの流れを導入するステップと、を備える。
【0007】
米国特許出願公開第2011/0100064A1号明細書は、光ファイバのコアロッドの製造方法に関する。この方法は、長さ方向に延びる中心開口を有する円柱形のシリカガラスのプリフォームを与えるステップと、プリフォームの中心開口の端部を閉じるステップと、プリフォーム中心開口を通して焼結ガスを導入しながら、シリカガラスのプリフォームを焼結するステップと、光ファイバの製造に適した密なコアロッドを形成するために、プリフォームの中心開口内に真空を引きながら、焼結したシリカガラスのプリフォームを伸長するステップと、を有する。
【0008】
米国特許出願公開第2005/0000253A1号明細書は、低ウォーターピークのシングルモードファイバを製造するために、光ファイバプリフォームのヒドロキシル成分を低減する方法に関する。ここでは、プロセスパラメータを調節し、母材と環境因子とを制御しながら、プラズマ化学気相堆積法を用いて光ファイバプリフォームが製造される。
【0009】
欧州特許出願公開第EP2727888号明細書は、ガラスベースの材料のための炉に関する。ガラスプリフォーム加熱炉は、ガラスプリフォームが供給されるサセプタと、スリットヒータと、スリットヒータの外部を取り囲む断熱部と、全体を取り囲む炉基部と、を備える。スリットヒータのスリットは、サセプタを取り囲む円柱材に、当該円柱材の頂部と底部から交互に刻まれている。
【0010】
このような加熱装置または加熱炉では、炉を洗浄するために、アルゴンやヘリウムのような不活性ガスが使われる。これにより、サセプタやライナー炉などの部品が、焼損や腐食から保護される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
エネルギー損失を制限するためには、(一般に抵抗型の)加熱要素は、ライナーの近くに配置されることが望ましい。シリンダー状の(クォーツ)ガラスのチューブを加熱するのに必要な高温と、システムを加熱するのに必要な電流とにより、洗浄ガスがイオン化され、加熱要素とライナーとの間にアーク放電が発生する可能性がある。これにより、エネルギーのリークが発生する。これは深刻であり、これにより加熱要素やライナーが腐食する。これにより加熱装置のエネルギーバランスが変化し、プロセスが変動する。さらに、このようなイオン化および/またはアーク放電が発生する箇所では、装置の部品に破損が生じる。
【0012】
本発明の目的は、上記の課題を解決することにある。本発明の目的は、光ファイバの製造に使用される伸長されたシリカのシリンダーを加熱するための改良された方法、加熱装置及びシステムを与えることにある。本発明の目的は、光ファイバの製造に使用される伸長されたシリカのシリンダーを加熱するための改良された方法、加熱装置及びシステムであって、長時間にわたり安定で信頼性の高い、および/または、より効率の高い方法および装置を与えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
ある態様では、本発明は、光ファイバの製造に使用される伸長されたシリカのシリンダーの加熱方法であって、好ましくは、光ファイバのためのコアロッドを形成するために、伸長された空洞のシリカのシリンダー(例えば、少なくとも内面の一部にシリカの堆積層を含むチューブ)をコラプスするための方法に関する。
この加熱方法は、
-加熱装置を与えるステップと、
-伸長されたシリカのシリンダーが加熱装置のキャビティを通って延びるように、当該伸長されたシリカのシリンダーを与えるステップと、
-加熱装置の加熱要素で生成された熱により、伸長されたシリカのシリンダーを、当該伸長されたシリカのシリンダーの軟化温度を超える温度まで局所的に加熱するステップと、
-加熱するステップを実行中にガス洗浄装置を用いて、少なくとも加熱要素空間を通るガスの流れを生成するステップと、を備え、
加熱装置は、
伸長されたキャビティと、
円柱壁を有する、伸長された円柱形のライナーと、
加熱要素と、
ガス洗浄装置と、を備え、
キャビティは、加熱装置の軸方向に延び、使用中にシリカのシリンダーがキャビティを通って延びることができるように構成され、
ライナーは、カーボン製であって、軸方向に延び、円柱壁によりキャビティを境界づけ、
加熱要素は、使用中に伸長されたシリカのシリンダーを加熱するためのものであり、
加熱要素は、環状の加熱要素空間に与えられ、
加熱要素は、ライナーの少なくとも一部を取り囲み、
ライナーの円柱壁は、加熱要素空間をキャビティから隔て、
加熱要素空間は、外側が、加熱装置のフレーム部分のさらなる包囲壁によって境界づけられ、
ガス洗浄装置は、少なくとも加熱要素空間を通るガスの流れを生成するためのものであり、
ガスの流れは、少なくともアルゴンガスと窒素ガスとを含むことを特徴とする。
【0014】
さらなる態様では、本発明は、それぞれ、このような伸長されたシリカのシリンダーの加熱方法および加熱システムに関し、好ましくは前述の本発明に係る方法に使われる。
【0015】
本発明に係る方法の効果は、加熱するステップを実行中に、ガス洗浄装置を用いて少なくとも加熱要素空間を通るガスの流れ(このガスの流れは、少なくともアルゴンガスと窒素ガスとを含む)を与えることにより、特に以下で定義されるように比較的少量の窒素がアルゴン洗浄ガスに付加された場合、前述の加熱要素とライナーとの間のアーク放電やリーク電流を含む潜在的な問題が未然に防がれる、または少なくとも激減されることを、本発明者らが見出した点にある。
【0016】
ある実施の形態では、シリカはガラス状シリカである。別の実施の形態では、シリカは非ガラス状シリカである。別の実施の形態では、伸長されたシリカのシリンダーは、ガラス状シリカ層と非ガラス状シリカ層の両方を含む。
【0017】
好ましくは、商用グレードの窒素内の汚染物が加熱装置の部品上に堆積するのを避けるため、窒素の量は5%より少ない。
【0018】
シリカのシリンダーを局所的に加熱する目的で、シリンダーと加熱装置とは、シリンダーの軸方向に相対的に往復運動してもよい。この目的で、ある実施の形態では、加熱装置は、シリンダーの対向する2つの端部を保持するための2つの保持要素を有する、運動装置を有してもよい。運動装置はさらに、この方法を実行中に加熱装置がシリンダーを通過するように、加熱装置を軸方向に往復運動させるように構成されてもよい。このようにすれば、シリンダーは局所的にのみ加熱される。このときシリンダーの加熱領域は、往復運動に起因して、シリンダーの長さ方向に沿って動く。
【0019】
加熱するステップにおいて、伸長されたシリカは、加熱装置の加熱要素で生成された熱により、軟化温度まで(これは、少なくとも軟化温度、または軟化温度より高い温度を意味する)局所的に加熱される。
【0020】
前述の本発明に係る方法の効果は、アナロジー的に、本発明の加熱装置および加熱システムにも当てはまる。逆も真である。
【0021】
本発明の実施の形態が、添付の請求項と以下の実施の形態の説明で開示される。以下で説明する方法に対応する実施の形態は、本発明に係る加熱装置および加熱システムにも当てはまる。逆も真である。
【0022】
(定義)
説明される主題を定義するために、以下の定義が本明細書および請求項で使われる。以下に引用しないその他の用語は、本技術分野で一般に受け入れられている内容を意味する。
-「コラプシング」は、チューブを融点を超える温度まで局所的に加熱することにより、縮小させることを意味する。これにより、チューブの中心を貫通す孔が閉じ、チューブの外径が縮小する。
-本明細書で使われる「コアロッド」は、チューブをコラプシングすることによって得られる固体のロッドを意味する。「コアロッド」は、中心から周辺に向けて、少なくとも光コアと光クラッドとを含む。
-本明細書で使われる「プリフォーム」または「最終プリフォーム」は、伸長されたシリンダー状のシリカのガラス構造を意味する。「プリフォーム」または「最終プリフォーム」は、光ファイバの線引のために直接使うことができる。伸長されたシリンダー状のシリカのガラス構造は、コアロッド、または1つ以上の同心シリカガラスチューブで取り囲まれたコアロッド、またはコアロッドの円柱外周上に堆積した追加的なシリカを含むコアロッドである。
-本明細書で使われる「シリカ」は、正規組成であるか否かを問わず、また結晶であるかアモルファスであるかを問わず、SiOの形をした任意の物質である。シリカは、非ガラス状シリカであっても、ガラス状シリカであってもよい。
-本明細書で使われる「非ガラス状シリカ」または「スート」は、不完全にガラス化した(ガラス化していない、または一部ガラス化した)シリカである。ドープされていないことも、ドープされていることもある。
-本明細書で使われる「ガラス状シリカ」または「シリカガラス」は、シリカのガラス化によって生成されたガラス状の物質である。ドープされていないことも、ドープされていることもある。ドープされていないガラス状合成シリカは、融解水晶または融解シリカとして知られ、高純度で、主にアモルファスのSiOからなる。最大1500ppmまで塩素を含んでもよく、なおドープされていないとみなされる。ガラス状天然シリカは、天然シリカの粒子または粉末から作られ、複数の不純物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
以下、本発明を、添付の高度に模式化された図面を参照して説明する。そこでは、本発明の実施の形態が示される。同一または類似の部品は、同様の符号で示される。
【0024】
図1】本発明に係る加熱装置の実施の形態の、縦方向の断面図である。
図2図1のII-II断面図である。
図3a】本発明に係る加熱装置を用いてコラプスされたチューブの典型的な例の短縮図である。
図3b】本発明に係る加熱装置を用いて、図3aのチューブをコラプスして形成されたコアロッドの典型的な例の短縮図である。
図4図1の装置を備える、本発明に係るシステムの実施の形態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
前述のように、ある態様における本発明は、光ファイバの製造に使用される伸長されたシリカのシリンダーを加熱するための方法に関する。以下、前述の方法、加熱装置およびこの装置におけるシステムのいくつかの実施の形態を説明する。
【0026】
ある実施の形態では、ガスの流れの中に、窒素ガスが体積率で、0.2%以上20%以下、好ましくは0.25%以上10%以下、さらに好ましくは0.25%以上5%以下存在する。好ましくは、ガスの流れの中に、アルゴンガスが存在する。アルゴンガスの体積流率は窒素ガスの体積流率より大きく、窒素ガスの体積流率の5倍以上500倍以下、好ましくは10倍以上400倍以下、さらに好ましくは20倍以上400倍以下である。ある実施の形態では、少なくとも加熱要素空間を通るガスの流れが生成されてよい。この場合、窒素の流れは約3×10-6/s(0.2Slm(毎分標準リットル))であり、アルゴンの流れは約5×10-4/s(30Slm(毎分標準リットル))である。
【0027】
ある実施の形態では、加熱するステップを実行中に、シリンダーが1800℃より高温に、好ましくは最大約2300℃まで(少なくとも局所的に)加熱される。
【0028】
ある実施の形態では、ライナーは、円柱壁に複数の孔を含む。ガスの流れを生成中に、これらの孔を通して、加熱要素空間からキャビティにガスが流れる。好ましくは、すべての孔のサイズの合計に対してガスの体積流率が与えられる。これにより、使用中に、加熱要素空間の内部に、大気圧よりわずかに高いレベルの陽圧(例えば、1.1バール以上1.5バール以下(例えば1.15バール))が形成される。
【0029】
ある実施の形態では、この方法は、装置を予熱するステップを備える。この予熱中に、加熱要素は加熱ステップを実行するのに適した温度まで加熱される。予熱するステップを実行中に、ガス洗浄装置を用いて、ガスの流れが生成される。このガスの流れは、少なくともアルゴンガスと窒素ガスとを含む。このガスの流れの中で、アルゴンガスの体積流率は窒素ガスの体積流率より大きい。前者は後者の50倍以上400倍以下であり、好ましくは75倍以上250倍以下である。好ましくは、予熱するステップを実行中における「結果ガス」(これはアルゴンと窒素の混合ガスを意味する)内の窒素ガスの相対量は、それに続く加熱するステップを実行中におけるガス内の相対量より多い(好ましくは約5倍である)。
【0030】
ある実施の形態では、加熱要素は抵抗型であり、シリンダーを加熱するステップ(追加的に予熱するステップが与えられる場合は、それも)は、加熱要素に電力を与えることによって実行される。
【0031】
ある態様における本発明は、伸長されたシリカのシリンダーの加熱装置(好ましくは、本発明に係る方法で使われる)に関する。この装置は、光ファイバを製造するために使われる。好ましくはこの装置は、光ファイバのためのコアロッドを形成するために使われる。この目的のために、この装置は、シリンダー(このシリンダーは、シリカの堆積層を備えたチューブであってよい)をコラプスするように構成される。コアロッドを形成するために、この加熱装置は、
-装置の軸方向に延び、使用中にシリンダーがキャビティを通って延びることができるように構成された、伸長されたキャビティと、
-軸方向に延び、円柱壁によりキャビティを境界づける、カーボン製の伸長された円柱形のライナーと、
-使用中にチューブを加熱するための加熱要素と、
を備える。
加熱要素は、環状の加熱要素空間に与えられる。この加熱要素は、少なくともライナーの一部を取り囲む。ライナーの円柱壁は、加熱要素空間をキャビティから隔てる。
【0032】
本発明によれば、加熱装置は、ガス(このガスは、少なくともアルゴンと窒素を備え、少なくとも加熱要素空間を通る)を生成するための、ガス洗浄装置をさらに有する。
【0033】
加熱装置のある実施の形態では、ライナーは、円柱壁内に複数の貫通した孔を含む。加熱装置を使用中に、ガスの流れを生成するステップが実行される間、この孔を通して、加熱要素空間からキャビティにガスが流れる。さらに、加熱要素は抵抗型であってよい。
【0034】
加熱要素は、グラファイト製であり、および/または、ライナーの長さ部分に沿って、複数の屈曲した伸長部品(または「フィンガー」)を備えてよい。
【0035】
好ましくは、加熱要素はライナーから自由な状態にあり、ライナーの外面との間に半径方向に4mm以上9mm以下(好ましくは5mm以上7mm以下)の隙間を残す。この点で、加熱要素がこうした複数のフィンガーを備える(好ましくは、円周方向に均等に配置される)場合、断面で見たときの加熱要素の内径は、加熱要素のフィンガーの内接円によって定義されることに注意されたい。
【0036】
好ましくは、加熱装置は、アルゴン源と窒素源とをさらに備え、それぞれアルゴン源と窒素源から加熱要素空間へのアルゴンと窒素の流れを実現するための、それぞれのバルブ要素をさらに備え、窒素の流れに対するアルゴンの流れを調整するための調整要素をさらに備える。調整要素は、一体化されてもよく、1つ以上のバルブ要素によって形成されてもよい。それぞれの源に操作可能に接続されたアルゴン供給ラインと窒素供給ラインは、それぞれが別々に加熱要素空間に進出してもよいし、あるいは、アルゴンと窒素とが共通の供給ラインを通って加熱要素空間に流入するように、上流で結合していてもよい。
【0037】
代替的に、加熱装置は、アルゴンと窒素の混合ガス源と、この混合ガス源から加熱要素空間へのアルゴンと窒素を含むガスの流れを実現する(さらに選択的に、調整する)ためのバルブ要素と、を備えてもよい。
【0038】
ある態様における本発明は、伸長されたシリカのシリンダーの加熱システム(好ましくは、前述の本発明に係る方法で使われる)に関する。このシステムは、光ファイバを製造するためのものである。このシステムは、前述の本発明に係る加熱装置を備える。このシステムは、シリンダーと加熱装置とを軸方向に相対的に往復運動させるための、運動装置をさらに備える。
【0039】
この目的のために、運動装置は、シリンダーの2つの対向した端部を保持するための、2つの保持要素を有してよい。運動装置は、システムの使用中に加熱装置がシリンダーを通過するように、加熱装置を軸方向に往復運動させるように構成される。2つの保持要素は、本方法を実施するためにシステムを使用中に、シリンダーを保持し回転させるように構成された、2つのそれぞれ回転可能なチャックで形成されてもよい。
【0040】
図1に、前述の本発明に係る方法で使うための、加熱装置1を示す。使用中に加熱装置1は、光ファイバ用の伸長されたコアロッド3を形成するため、伸長されたシリカのシリンダーをコラプスするように、伸長されたシリカのシリンダーを加熱する。コアロッド3は、軸方向を定義する中心軸5を有する円柱状である。コアロッド3は、複数の同心のシリカ層4(これは堆積により得られてよい)を有する、伸長されたチューブ2から形成される。このようなチューブ2が図4に示される。図3aでは、チューブ2の長さが短縮して描かれている。すなわち図3aは原寸通りではない。実際にはこのチューブは、1mを超える(または1m以上5m以下の、または2m以上2.25m以下の、または例えば2.5mの)長さを有してよい。さらにこのチューブは、20mm以上150mm以下の(例えば45mmといった)外径を有してよい。一般にこのチューブは、より径が大きい場合は、より長くてもよい。同様に図3bでは、コアロッド3の長さが短縮して描かれている。実際にはコアロッド3は、元となるチューブ2より短い(コラプス中またはコラプス後に伸長されない限り)。例えば、チューブの外径が45mmの場合、コアロッド3の外径は35mmといったように縮小する。別の例では、チューブの外径が80mmの場合、コアロッドの外径は60mmであってもよい。チューブ2がキャビティ(すなわち、中央内部を貫通する孔6)を持つのに対し、コアロッド3は中身が詰まっている。これは、コアロッド3は、もはやキャビティ/中央を貫通する孔を持たないことを意味する。コアロッド3は、加熱装置1を用いてチューブ2をコラプスすることによって得られる。コアロッド3は、中心から周辺に向けて、少なくとも光コア7と光クラッド8とを含む。
【0041】
加熱装置1は、チューブ2をコラプスしてコアロッド3を形成するために、チューブ2を加熱するように構成される。この目的のために加熱装置1は、加熱装置1の軸方向14に延びる、伸長されたキャビティ12を備える。キャビティ12は、使用中にチューブ2(後にこれは、コアロッド3が形成されるように、加熱されコラプスされる)がキャビティ12を通って延びることができるように構成される。このようにキャビティ12は、加熱装置1内を通って延び、装置を通る通路を形成する。加熱装置1の長さ(すなわち、軸方向14に延びる装置のサイズ)は、コラプスされるチューブ2の長さより短い。装置の長さ、言い換えれば装置全体のスケールは、加熱されコラプスされるチューブのサイズに関係する。前述のチューブ2のように、チューブの長さが約1.5m以上3m以下の場合、装置の長さは150mm以上600mm以下(例えば400mm)であってよい。やはり前述のように、チューブの長さは1mより長くてもよく、さらには2mより長くてもよい。
【0042】
加熱装置1はまた、中心軸17を持つ、カーボン(より具体的にはグラファイト)製の、伸長された円柱形のライナー16を有する。ライナー16は、軸方向14に延び、ライナー16の円柱壁18でキャビティ12を境界づける。ライナー16の長さの内径に対する比は、3以上10以下であってよく、好ましくは6以上7以下である。すなわち、長さは内径の3倍以上10倍以下(または6倍以上7倍以下)である。前述のチューブ2のようなチューブの場合、ライナーの内径は、チューブとライナー16の円柱壁18との間に2mm以上10mm以下(好ましくは3mm以上4mm以下)の隙間があるように選択されてもよい。前述の45mmのチューブの場合、ライナー16は、内径が52mm(3.5mmの隙間を残す)であってよく、長さが350mmであってよい。ライナー16の円柱壁18の壁の厚さは、2mm以上10mm以下(例えば4mm)であってよい。
【0043】
ライナー16は、リング状のクランプ28および36を用いて、ライナーの対向する端部22、24で、装置のフレーム20に接続されている。クランプ28および36は、ライナー16の第1端部22および第2端部24に与えられたそれぞれのフランジ30および38をそれぞれ挟んで固定する。その結果、ライナー16は、加熱装置1のフレーム20にクランプされる。第1端部および/または第2端部に、防護熱消費スリーブ(不図示)が与えられてよい。このスリーブは、キャビティ内に部分的に突出し、ライナーの内径とほぼ同じ外径を持つ。使用中に加熱装置1の使用により温度が上昇した結果、ライナーが伸長することを許すために、クランプ28はフランジ30をバネ仕掛けで固定する(バネは図1に示されない)。代替的に、ライナーのバネ仕掛けによるフレームへの固定は、クランプ36とフランジ38との間にバネを与えることにより、ライナーの別の端部24で行われてもよいし、ライナーの両端部22、24で行われてもよい。本発明では、ライナーのフレームへの接続方法は、前述の特定の方法に限定されない。
【0044】
加熱装置1はまた、ライナー16の少なくとも一部を軸方向に取り囲む加熱要素40を備える。加熱要素40は抵抗型であり、ライナー16を取り囲む環状の空間19に与えられる。典型的には、加熱要素はグラファイト製であり、ライナーの長さ部分に沿って、複数の屈曲した伸長部品(または「フィンガー」)を備える。これにより、「フィンガー」で形成された、複数の伸長された加熱要素部品42が実現される。加熱要素部品42の各々は、軸方向に延びる。こうして加熱要素40が、ライナー16の周囲に同心に与えられるということができる。すなわち加熱要素40は、チューブ2をコラプスしてコアロッド3を形成する目的で、キャビティ12内のチューブ2を均一に加熱することができる。ライナーの円柱壁18は、加熱要素空間19を、貫通するキャビティ12から隔てる。加熱要素40は、ライナー16から自由な状態にある。図2に示されるように、加熱要素40の内径は、ライナー16の外面に対して、約6mmの半径方向の隙間「a」を残す。この点で、加熱要素40の内径は、加熱要素40のフィンガー型の加熱要素部品42(図2に示される)の内接円(図2に部分的に示される)によって定義されることに注意されたい。
【0045】
加熱装置1は、少なくとも加熱要素空間19にガスの流れを生成するための、ガス洗浄装置70をさらに備える。本発明によれば、このガスは少なくともアルゴンと窒素とを含む。すなわちこのガスは、少なくともアルゴンと窒素とを含む混合ガスである。ガス洗浄装置70は、それぞれリザーバ71とリザーバ72の形で、アルゴン源と窒素源とを有する。ガス洗浄装置70は、それぞれリザーバ71、72から加熱要素空間19への共通供給ライン75を介した、バルブ要素73、74の下流方向のアルゴンと窒素の流れを実現するために、リザーバ71、72からのそれぞれの供給ラインに、それぞれのバルブ要素73、74を備える。この共通供給ラインは、加熱装置の断熱材料46を通って延びる。より広範囲にわたって加熱要素空間にガスを供給するために、それぞれが加熱要素空間内に進出した複数の供給ラインが与えられてもよい。バルブ要素73、74からのそれぞれのラインは、図1に示されるようなT字型接合部などにより接合される。バルブ要素73、74は、流れ調整バルブ(流れ制御バルブ)として与えられ、連携して、窒素の流れに対するアルゴンの流れを調整するための、調整要素を形成する。共通供給ライン75は、その少なくとも一部がフレキシブルであってよい。その結果、リザーバを静的に与えることができ、加熱時に使用中の前述の加熱装置1の往復運動が共通供給ライン75から干渉を受けることがない。本発明の範囲内で、バルブ、調整要素および流れラインの別の構成が可能である。これらは、例えば、アルゴンの供給ラインと窒素の供給ラインとが、加熱要素空間19内に別々に進出している実施の形態を含む。代替的な実施の形態では、ガス(アルゴン-窒素混合ガス)は、単一の外部リザーバから、加熱要素空間19内に供給されてもよい。
【0046】
ライナー16は、複数の貫通した孔44を円柱壁内に含む。使用中に、ガスが、この孔44を通して、ライナー16の外側の加熱要素空間19から、ライナー16の円柱壁18によって境界づけられたキャビティ12へ流れる。キャビティ12の両端、すなわちライナー16の対向した端部22、24で、ガスが、加熱装置1から、加熱装置1を取り囲む空間内に流れる。これにより酸素の進入が避けられる。すなわち、キャビティ12内に酸素が存在することが避けられる。その結果、加熱装置1内のグラファイト部品の焼損などの望まれない劣化が避けられる。加熱するステップを実行中に、ガス洗浄装置70を用いてアルゴンと窒素の混合ガスを供給することにより、特にガス中に存在する窒素の量がアルゴンの量より比較的少ない(好ましくは、窒素の量が約5%未満の)場合、前述のアーク放電やリーク電流を含む潜在的な問題が未然に防がれる、または少なくとも激減される。前述のクランプ28、36(これらは、ライナー16のフランジ30、38を挟んで固定する)を用いたライナーとフレームとのクランプ接続(バネ仕掛けであってよい)は、ガスタイトである。加熱要素空間19は、円柱壁部分48により、その外側が境界づけられる。この円柱壁部分の48の外側に、断熱材料46が与えられる。
【0047】
前述の加熱装置1は、例えば光ファイバ用のコアロッド3を形成するための、伸長されたシリカのシリンダーの加熱システム50の一部を形成してもよい。加熱システム50は、使用中にコアロッド3を形成するために、シリカの堆積層4を有するチューブ2をコラプスするように構成される。このシステムは、チャック60、62を備える2つの保持要素56、58が与えられたフレーム54をさらに有する。2つの保持要素のうちの1つは、回転駆動されてよい。これらの保持要素は、シリンダーを保持し、連携してシリンダーをチューブの中心軸5の周りに回転させるように構成される。チューブ2は、保持要素によって保持されたチューブ2の2つの対向する端部を有した状態で、システム内に配置される。チューブは、延長した端部(これは、コラプス後に廃棄されてもよい)を有してもよいことに注意されたい。システムは、スピンドルやリニア駆動などの運動装置64をさらに備える。運動装置64は、加熱装置1を運動させる(より具体的には、加熱装置1をフレーム54に沿って、軸方向52に往復並進運動させる)ように構成される。チューブは、チューブが加熱装置1のキャビティ12を通るように、保持要素によって保持される。チューブ2の中心軸5は、加熱装置1のライナー16の中心軸17と一致する。こうして、使用中に加熱装置1は、チューブ2に沿って往復運動する。
【0048】
本発明に係る方法、すなわち、光ファイバを製造するために使われる伸長されたシリカのシリンダーの加熱方法であって、好ましくは伸長された空洞のシリカのシリンダー(すなわち、光ファイバのためのコアロッドを形成するために、内面の少なくとも一部にシリカの堆積層を含む、チューブ)をコラプスするための方法に従い、以下のステップが実行される。
-前述の、伸長されたキャビティ12と、伸長された円柱形のライナー16と、加熱要素40と、ガス洗浄装置70と、を備える加熱装置1を与えるステップ。
-シリカの堆積層4を含むチューブ2の形の、伸長されたシリカのシリンダーが加熱装置1のキャビティ12を通って延びるように、当該伸長されたシリカのシリンダーを与えるステップ。この目的のために、チューブ2は、自身の対向する2つの端部で保持される。
-伸長されたシリカのシリンダーを加熱するステップ。すなわち、チューブ2は、加熱装置の加熱要素で生成された熱により伸長されたシリカのシリンダーの軟化温度を超える温度まで、局所的に加熱される。この目的のために、シリンダーは約2000℃まで加熱されてよい。
-少なくとも加熱するステップを実行中に、ガス洗浄装置70を用いて、ガスの流れを生成するステップ。ただしこのガスの流れは、少なくともアルゴンガスと窒素ガスとを含む。ライナー16はその円柱壁18に複数の貫通する孔44を含むため、ガスは、加熱要素空間19からキャビティ12内に流れる。
【0049】
少なくとも本例におけるガスの流れを生成するステップにおいては、ガスの流れの中に、窒素ガスが体積率で約0.7%存在し、アルゴンが体積率で約99.3%存在する。
【0050】
この方法は選択的に、装置を予熱するステップを備える。この予熱するステップの実行中に、加熱要素は、加熱するステップを実行するのに適した温度まで加熱される。この予熱するステップを実行中に、ガス洗浄装置を用いて、ガスの流れが生成される。このガスの流れは、少なくともアルゴンガスと窒素ガスとを含む。少なくとも本例では、窒素ガスが体積率で約3%存在し、アルゴンが体積率で約97%存在する。
【0051】
加熱するステップを実行中に、チューブ2と加熱装置1は、運動装置64により、相対的に運動してよい。これにより、加熱装置1は、往復運動してチューブ2を通過することができる。これは、少なくとも1つの回転可能な保持要素を用いてチューブを回転させている間に実行されてもよい。図4では、コアロッドになるチューブは符号2で表される。図4において、加熱装置1の左側でにおけるチューブの直径は、加熱装置1の右側における直径より大きい。これは、説明のみを目的として、チューブの直径を徐々に縮小させ、最終的にコアロッドを得るプロセスを示す。装置がチューブ2に沿って図4の左に向けて動く間、当該箇所におけるチューブ2の直径も縮小するだろう。
図1
図2
図3a
図3b
図4