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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】軽量気泡コンクリート
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/00 20060101AFI20231207BHJP
   C04B 28/18 20060101ALI20231207BHJP
   C04B 14/04 20060101ALI20231207BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20231207BHJP
   C04B 111/40 20060101ALN20231207BHJP
【FI】
C04B38/00 301Z
C04B28/18
C04B14/04 Z
E04B1/94 B
C04B111:40
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019159580
(22)【出願日】2019-09-02
(65)【公開番号】P2020040871
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2018169034
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390018717
【氏名又は名称】旭化成建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】小川 晃博
(72)【発明者】
【氏名】土屋 晴義
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 裕隆
(72)【発明者】
【氏名】林 由紀子
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-179148(JP,A)
【文献】特開2001-253758(JP,A)
【文献】特開2015-168604(JP,A)
【文献】特開2007-099546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
04B2/00-32/02
C04B40/00-40/06
C04B103/00-111/94
C04B38/00-38/10
E04B1/76-1/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
比重0.2以上0.45未満の軽量気泡コンクリートであって、該軽量気泡コンクリート中の不溶残分の比率が全固形分に対し5質量%以上20質量%未満であり、かつ、該不溶残分の粒径が10μm未満のものを微粒、10μm以上100μm未満のものを中粒、100μm以上のものを粗粒としたとき、該不溶残分中の該粗粒の含有率が2.0質量%以下であり、かつ、該中粒に対する該微粒の質量比(微粒/中粒)が0.75以上1.20以下であることを特徴とする軽量気泡コンクリート、ここで、該不溶残分の比率は、JIS R5202のポルトランドセメントの化学分析方法に記載の塩酸-炭酸ナトリウム方法による不溶残分の定量方法に準拠した方法において、ろ紙による不溶残分とろ液の分離を、遠心分離機(製品名:インバータ・テーブルトップ遠心機 形式8400 久保田製作所社製)による分離に変更し、その遠心分離条件を、3000rpm×10分間とし、温水による不溶残分の洗浄において温水量を50mlとし、上記遠心分離機による洗浄に変更し、その遠心分離条件を、3000rpm×10分間とし、洗浄回数を5回とし、電気炉での950±25℃×30分間の強熱処理を、乾燥機による110℃×48時間の処理に変更し、水浴上での加熱処理における温度条件を80℃に変更し、そしてオートクレーブ養生後の気泡コンクリートの重量に対する不溶残分の質量%として求めたものであり、かつ、該軽量気泡コンクリートの組成と略対応する原料組成として、CaO/SiO 2 モル比が、0.5以上1.2以下であり、かつ、Al 換算量/SO 換算量比が、0.92以上3以下である
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量気泡コンクリート(以下、ALCともいう。)に関する。より詳しくは、本発明は、表面目地(切削溝)加工における微欠損が少なく、意匠性の高い表面剥離加工特性に優れる、比重0.2以上0.45未満の低比重の軽量気泡コンクリート(以下、低比重ALCともいう。)に関する。
【背景技術】
【0002】
ALCは、嵩比重が0.45~0.55と軽量でありながら、結晶性の高いトバモライト(5CaO・6SiO2・5H2O)を多量に含むことから、建築材料として必要な強度を有し、長期の耐候性、耐火性、耐不朽性に優れ、軽量、かつ、加工性に優れるために施工が容易であり、建築物の外壁材、床材、内壁材、屋根材等として広く利用されており、例えば、建築物の設計仕様に基づいて各種寸法に切断したり、長辺小口面に溝を切削加工したり、縁部の面取り加工等を施したりする場合がある。さらに、近年においては、例えば、図3に示すように、ALCの表面に複雑なデザイン模様を切削加工や剥離加工により施し、高付加価値化等を図る場合もある。
ALCは、セメント及び珪石粉を主原料とし、これに必要により生石灰粉、石膏等を加え、水を添加してスラリー状とし、大気圧下でアルミニウム粉末等の気泡剤により発泡した後、型枠で成形してオートクレーブ養生して製造される。ALCの圧縮強度は、通常、4~5N/mm2の範囲にあり、曲げ強度は1~1.5N/mm2の範囲にある。
【0003】
通常のコンクリートは、比重が2.0程度であるのに対し、ALCは比重が0.45~0.55であり、その軽量化は内部に多くの空隙を含有させることによって実現されている。ALCでは、体積分率で約80%が空隙であるが、0.2以上0.45未満の低比重ALCでは、通常、従来のALCよりもさらに空隙量が多い。
【0004】
以下の特許文献1には、珪酸質原料として用いる珪石の粒度を調整することにより、強度などの諸物性に優れたALCを製造できる方法を提供することを目的として、珪石原料として用いる粉砕後の珪石が、粒径10μm未満を微粒、10μm以上100μm未満を中粒、100μm以上を粗粒と規定したとき、微粒、中粒、粗粒の全てを含み、粗粒の質量百分率が9~15%で、微粒/中粒の質量比が0.9~1.2であることを特徴とするALCの製造方法が開示されている。
特許文献1には、微粒と中粒の質量比を0.9~1.2に調整することで、トバモライトの結晶核の生成と結晶成長とがバランス良く促進され、十分なトバモライトが生成すると同時に、粗粒の質量百分率を9~15%とすることによって、残留する粗粒が骨材効果を果たし、これらが相乗してALCの強度が向上するとの考察がなされている。
特許文献1に記載されたALCは、4.8N/mm以上の圧縮強度を達成しているものの、原料としての粉砕珪石の粗粒を9質量%以上含むため、以下に説明する不溶残分の比率は全固形分に対して35質量%程度、不溶残分中の粗粒珪石は10質量%以上であると推定され、また、その絶乾嵩比重は0.5程度である。すなわち、特許文献1には、比重0.2~0.45未満の低比重ALCは開示されておらず、また、低比重ALCにおける表面目地加工における微欠損の発生の問題や表面意匠性の高い剥離加工特性については一切記載されていない。
【0005】
以下の特許文献2には、かさ比重が0.45~0.55と軽量でありながら、建築材料として必要な強度を有し、長期の耐候性、耐火性及び耐不朽性に優れるALCにおいて、建築物の設計仕様に基づいて各種寸法に切断したり、長辺小口面に溝を切削加工したり、縁部の面取り加工等を施す場合において発生する欠損やひび割れを防止することを目的として、珪石及び珪砂を主成分とする珪酸質原料と、石灰質原料と、水と、発泡剤と、を含有するALCであって、当該軽量気泡コンクリート中の不溶残分の粒径が10μm未満のものを微粒、10μm以上100μm未満のものを中粒、100μm以上のものを粗粒とした場合に、上記不溶残分における上記粗粒の含有率が0.1~40質量%であり、上記中粒に対する上記微粒の質量比が0.01~0.7であるALCが開示されている。
特許文献2には、粉砕後の珪石及び珪砂の粒径が10μm未満である微粒には、ある一定量まではトバモライトの生成を促す性質があるが(一定量より多くなると逆にトバモライトの生成を阻害する性質がある)、その反面、ALC中の不溶残分が微粒になり、ALCの加工時における欠損やひび割れの発生を増大させる性質があること;粒径が10μm以上100μm未満である中粒には、トバモライトの生成を促す性質があると共に、ALC中の不溶残分も適度な粒径となることにより、ALCの加工時における欠損やひび割れの発生を抑制できること;そして粒径が100μm以上である粗粒には、微粒(ある一定量まで)及び中粒ほど、トバモライトの生成を促す性質はないが、ALC中の不溶残分が粗粒になるため、ALCの加工時における欠損やひび割れの発生を大きく抑制できること;が記載されている。そして、不溶残分中の微粒/中粒質量比として0.1~0.7を教示し、不溶残分中の粗粒の含有率として0.1~40質量%を教示している。また、特許文献2の実施例における不溶残分中の粗粒の含有率は、4.2~19.5質量%である。
特許文献2に記載されたALCは、欠損やひび割れの極めて低い発生率を達成しているものの、原料としての粉砕珪石の粗粒を4.3~17.0質量%含むため、不溶残分比率は全固形分に対して30質量%程度であると推定され、また、その絶乾嵩比重も0.5程度である。すなわち、特許文献2には、比重0.2~0.45未満の低比重ALCは開示されておらず、また、低比重ALCにおける表面目地加工における微欠損の発生の問題や表面意匠性の高い剥離加工特性については一切記載されていない。
【0006】
ところで、近年、建築物のさらなる軽量化への要望、現場作業時の安全性向上や作業者への負担低減の観点から、従来のALCの特長を保持したまま、さらに比重の低い低比重ALCが求められている。低比重ALCとしては、従来よりも気泡剤に起因する気泡の量を多く含有するものが一般的である。低比重化を実現する方法として、気泡を多く含有させると、気泡径が巨大化し、全容積に対する気泡剤による粗大気泡割合が大きくなり、強度の大幅な低下を招く。そこで、熱可塑性樹脂やアルカリ土類金属炭酸塩を含有させたり、比表面積の大きな珪石粉を用いることが提案されているが、嵩比重の低減に伴う圧縮強度の低下をまぬがれず、例えば、嵩比重0.35~0.40では圧縮強度が1.5~3.25N/mm2程度であり、従来のALCと比較して強度が弱いものが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-99546号公報
【文献】特許第6134278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記したように、ALCは、建築物の設計仕様に基づいて各種寸法に切断したり、長辺小口面に溝を切削加工したり、縁部の面取り加工等を施したりする場合があり、さらに、近年においてはALCの表面に複雑なデザイン模様を切削加工や剥離加工により施し、高付加価値化等を図る場合があるが、この際、ALCの切断や切削、面取り加工、表面切削・剥離加工の際、欠損やひび割れが生じることがある。しかしながら、従来のALCとは比重や、不溶残分、該不溶残分中の粒度分布等が異なる低比重ALCに関して、欠損やひび割れを抑制する目的で、原料である珪石や珪砂の粒度や生成物であるALC中の不溶残分の粒度を検討したものはない。
かかる状況下、本発明が解決しようとする課題は、低比重ALCにおいても、長時間、表面目地加工や溝切削加工しても微欠損が少なく、かつ、表面意匠性の高い剥離加工特性に優れる軽量気泡コンクリートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究し実験を重ねた結果、従来、低比重ではない通常のALCにおいて、粉砕後の珪石及び珪砂の粒径が10μm未満である微粒は、一定量より多くなるとトバモライトの生成を阻害する性質があり、ALC中の不溶残分の微粒比率が高くなると、ALCの加工時における欠損やひび割れの発生を増大させ、また、不溶残分中の粗粒の割合が高くなると、ALCの加工時における欠損やひび割れの発生を大きく抑制できると教示されていたところ、かかる教示に反し、嵩比重0.2以上~0.45未満の低比重ALCにおいて、不溶残分の比率が全固形分に対し5質量%以上20質量%未満であり、かつ、不溶残分中の粗粒の含有率が2.0質量%以下である場合に、長時間切削加工した時でも微細な欠損(微欠損)が少なく、また、不溶残分中の微粒/中粒比率が0.75以上1.40以下と(特許文献2に教示された0.1~0.7の範囲よりも)高い場合に、溝部に挿入した刃物の揺動や打撃などのはつりによる表面剥離加工特性が良好となり表面デザイン性や意匠性が高い軽量気泡コンクリートの製造が可能になることを予想外に見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0010】
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
[1]比重0.2以上0.45未満の軽量気泡コンクリートであって、該軽量気泡コンクリート中の不溶残分の比率が全固形分に対し5質量%以上20質量%未満であり、かつ、該不溶残分の粒径が10μm未満のものを微粒、10μm以上100μm未満のものを中粒、100μm以上のものを粗粒としたとき、該不溶残分中の該粗粒の含有率が2.0質量%以下であることを特徴とする軽量気泡コンクリート。
[2]前記中粒に対する前記微粒の質量比(微粒/中粒)が0.75以上1.40以下である、前記[1]に記載の軽量気泡コンクリート。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る比重0.2以上~0.45未満の低比重ALCは、不溶残分の比率が全固形分に対し5質量%以上20質量%未満であり、かつ、該不溶残分の粒径が10μm未満のものを微粒、10μm以上100μm未満のものを中粒、100μm以上のものを粗粒としたとき、該不溶残分中の該粗粒の含有率が2.0質量%以下であることで、切削加工時における微細な欠損(微欠損)が少なくなり、さらに、不溶残分中の微粒/中粒比率が0.75以上1.40以下と高いことで、溝部に挿入した刃物の揺動や打撃などのはつりによる、デザイン性や意匠性が高い表面剥離加工特性が良好となる。
通常、切削加工に用いる刃物は摩耗するため、約1万m切断で新品に交換する。また、通常、切削初期の刃物状態では、切削加工装置のモーター負荷に特段の変化はないが、使用開始後の後半、5千~1万m加工時には、モーター負荷が上がり、切削時に小さな欠損(微欠損)が生じる。これに反し、本実施態様の低比重ALCでは、切削加工時の刃物の摩耗が軽減され、1.5万mまでの使用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】剥離性の評価方法を説明するための図面である。
図2】切削加工に用いた切削刃の概要図である。
図3】表面剥離加工の一例の平面図である。50×100mmのブロック単位で剥離した石割調デザインのパネルである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0014】
本実施形態の軽量気泡コンクリートは、比重0.2以上~0.45未満の低比重ALCであって、該低比重ALC中の不溶残分の比率が全固形分に対し5質量%以上20質量%未満であり、かつ、該不溶残分の粒径が10μm未満のものを微粒、10μm以上100μm未満のものを中粒、100μm以上のものを粗粒としたとき、該不溶残分中の該粗粒の含有率が2.0質量%以下であることを特徴とし、前記不溶残分中の粗粒の含有率は、好ましくは0.5質量%以下であり、前記不溶残分の比率は、好ましくは5質量%以上15質量%以下であり、前記中粒に対する前記微粒の質量比(微粒/中粒)は、好ましくは0.75以上1.40以下、より好ましくは0.75以上1.20以下である。
【0015】
不溶残分の比率が全固形分に対し5質量%以上20質量%未満であれば、切削加工時、使用開始後の後半、5千~1万m加工時に、モーター負荷が上がり、切削時に小さな欠損(微欠損)が生じることがない。
不溶残分の比率が5質量%以上であれば、量産性、品質安定化を損なうおそれがない。他方、不溶残分の比率が20質量%未満であれば、切削加工時のモーター負荷を抑えることができる。不溶残分の比率が15質量%以下であれば、切削加工時のモーター負荷の上昇と微欠損の発生の低減を両立できる点から好ましいものとなる。
【0016】
不溶残分中の粗粒の含有率が2.0質量%以下であれば、切削加工時、使用開始後の後半、5千~1万m加工時に、モーター負荷が上がり、切削時に小さな欠損(微欠損)が生じることがない。
【0017】
不溶残分中の中粒に対する微粒の質量比(微粒/中粒)が0.75以上であれば、剥離性が高くなるため、剥離加工性が良好となり、他方、1.20以下であれば、剥離性が高くなりすぎる(全剥離)ことを回避することができる。例えば、以下の実施例の欄で説明する剥離性試験において、剥離度を60~75%に制御することができる。例えば、図3に示すような石割調デザインのパネルを作製することができるが、剥離加工時、剥離度が60~75%程度であれば、デザイン・意匠上好ましいものとなる。剥離度が80%以上となると、全面が剥離する(全剥離)する可能性が高くなり、全面が剥離した箇所が発生するとデザイン上好ましくない。
【0018】
本実施形態の低比重ALCの(嵩)比重は、0.20以上0.45未満であるが、建築材料として好適な強度を得るという観点から、好ましくは0.23以上である。また、嵩比重は、軽量性、現場作業時の安全性向上や作業者への負担低減効果の観点から、好ましくは0.40以下である。本明細書中、「嵩比重」又は「比重」とは、105℃で24時間乾燥させた際の嵩比重、すなわち、絶乾比重をいう。
嵩比重又は比重がこの範囲にあれば、切削加工時のモーターの負荷が大きくなり、また、切削抵抗が大きくなりすぎることがない。
【0019】
以下、本実施形態の低比重ALCの製造方法を説明する。
本実施形態の低比重ALCの製造方法は、少なくとも珪酸質原料とセメントと石灰質原料を含む水性スラリーに、気泡剤として金属アルミニウム粉を加えて型枠に注入し、予備硬化した後にオートクレーブ養生する工程を含み、該珪酸質原料として、結晶性珪酸質原料を主体とし、結晶性珪酸質原料を粉砕後の粒径が10μm未満のものを微粒、10μm以上100μm未満のものを中粒、100μm以上のものを粗粒とした場合に、粗粒の含有率を、1.5質量%未満、好ましくは0.8質量%以下に、中粒に対する微粒の質量比を、0.75以上2.0未満にしたものを用いることが好ましい。
【0020】
また、珪酸質原料とセメントと石灰質原料の比率は、CaO/SiO2 モル比として0.5以上1.2以下であることが好ましい。CaO/SiO2 モル比が0.5以上であれば、前記した不溶残分の比率を20%未満とすることができる。他方、CaO/SiO2 モル比が1.2以下であれば、トバモライトの生成が十分に進み、品質上の問題が生じない。
前記したように、本実施形態の製造方法に使用される原料は、トバモライトを多く生成し、強度を十分に発揮するという観点、及び、不溶残分を20質量%未満とする観点から、CaO/SiO2モル比が0.55以上となるように混合することがより好ましい。他方、CaO/SiO2モル比は、高結晶性のトバモライトを多く生成するという観点から、より好ましくは1.0以下、最も好ましくは0.8以下である。
【0021】
また、型枠に注入する前のスラリー中の全固形原料中において、硫酸化合物のSO換算での含有量に対するアルミニウム化合物の酸化物換算(Al換算)での含有量は、質量比0.92以上3以下であることが好ましい。尚、気泡剤として用いる金属アルミニウム粉末もアルミニウム化合物源として作用するため、アルミニウム化合物の酸化物換算(Al換算)での含有量として含める。
【0022】
[珪酸質原料]
珪酸質原料としては、例えば、結晶質の珪石、珪砂、石英、及びそれらの含有率の高い岩石等を使用することができる。
本明細書中、「結晶性珪酸質原料を主体とする」とは、用いる珪酸質原料のうち65質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上が、結晶質の珪石、珪砂、石英及びそれらの含有率の高い岩石であることをいう。
【0023】
結晶性の珪酸質原料の中でも、用いる結晶質珪酸質原料のうち、石英結晶成分が80質量%以上である高結晶性珪酸質原料が好ましい。石英結晶成分が高い高結晶性珪酸質原料を多く用いると、低比重軽量気泡コンクリート中に生成するトバモライトの結晶性が高い傾向がある。
結晶質珪酸質原料中の石英結晶成分の割合は、結晶性珪酸質原料の粉末X線回折を用いて評価される。石英粉末の粉末X線回折で観測される石英の回折強度の総和に対する、結晶性珪酸質原料の粉末X線回折の石英の回折強度の総和の比率を以て石英結晶成分の割合とする。
【0024】
本実施形態の低比重ALCの製造方法の原料として使用する珪酸質原料は、粉砕後の粒径は、10μm未満であるものを微粒、10μm以上100μm未満であるものを中粒、100μm以上であるものを粗粒とした場合に、粗粒の含有率は、珪石及び珪砂の全質量の1.5質量%未満、好ましくは0.8質量%以下であることが好ましい。粗粒の含有率が1.5質量%未満であれば、不溶残分中の粗粒の含有率を2.0質量%以下、好ましくは0.5質量%以下にすることができる。
また、粉砕後の珪酸質原料における中粒に対する上記微粒の質量比が0.75以上であれば、不溶残分中の中粒に対する微粒の質量比を0.75以上にすることができる。他方、粉砕後の珪酸質原料における中粒に対する微粒の質量比が2.0未満であれば、不溶残分中の中粒に対する微粒の質量比を1.40以下にすることができる。さらに好ましくは粉砕後の珪酸質原料における中粒に対する微粒の質量比が1.4未満であれば、不溶残分中の中粒に対する微粒の質量比を1.20以下にすることができる。
【0025】
粉砕後の珪石及び珪砂の粒度及び粒度分布は、レーザー光回折・散乱式の粒度分布計を用いて測定することができる。測定の形式は特に限定されないが、例えば湿式測定であってもよい。また、測定範囲も適宜設定することができ、例えば、0.12μm~704μmに設定することができる。
【0026】
[セメント]
セメントは、特に限定されるものではなく、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、ビーライトセメント等の珪酸成分とカルシウム成分を主体とするものである。但し、生産性の観点から、用いるセメントのうち30質量%以上が水和反応性の早いセメントであることが好ましい。
【0027】
[石灰質原料]
石灰質原料としては、生石灰及び消石灰が挙げられる。
本実施形態の製造方法においては、セメントに対する石灰質原料の質量比は、特に限定されるものではないが、強度の観点から0.3以上、スラリー粘度、成型性の観点から1.0以下であることが好ましい。
【0028】
[アルミニウム化合物]
アルミニウム化合物原料も特に限定されるものではなく、硫酸アルミニウム又はその含水物、γ-アルミナ、水酸化アルミニウム、炭酸アルミニウム、硝酸アルミニウム等を用いることができるが、硫酸化合物とのバランスを取る上で硫酸アルミニウム又はその含水物或いは水酸化アルミニウムが好ましい。低比重軽量気泡コンクリートの気泡剤として用いる金属アルミニウム粉末もアルミニウム化合物源として作用する。
【0029】
[硫酸化合物(石膏)]
本実施形態の製造方法においては、含有する硫酸化合物量、アルミニウム化合物の絶対量は特に限定されるものではないが、硫酸化合物の量が少ないとトバモライトの生成が遅くなる、予備硬化時間が長くなってプロセス性が低下する等の傾向があり、多すぎると適正な細孔構造を得られにくい、高い結晶性のトバモライトを得にくい等の傾向がある。そのため、型枠に注入する前のスラリー中の全固形原料中の硫酸化合物の絶対含有量は、SO換算で好ましくは、トバモライトの生成速度、予備硬化時間等プロセス性の観点から、1.5質量%以上、適切な細孔構造、高い結晶性のトバモライトを得るという観点から、5質量%以下であることが好ましく、1.5~4.5質量%であることがより好ましい。
【0030】
本実施形態の製造方法で用いられる硫酸化合物原料は特に限定されるものではなく、SO又はSOを含有する化合物であれば構わない。例えば、亜硫酸、硫酸、無水石膏(CaSO)、二水石膏(CaSO・2HO)、半水石膏(CaSO4・1/2H2O)、硫酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属の硫酸塩、硫酸ナトリウムなどのアルカリ金属の硫酸塩、硫酸アルミニウム(Al(SO))又はその含水物、硫酸銅や硫酸銀などの金属硫酸塩等であり、これらを単独で用いても、複数同時に用いてもよい。これら硫酸化合物原料のうち、その構成元素が、通常、ALCに含まれる点から、二水石膏、硫酸アルミニウム(Al(SO)又はその含水物が好ましい。
【0031】
[気泡剤(発泡剤)]
発泡剤は、珪酸質原料、石灰質原料及び水を含むスラリーを発泡できるものであれば特に限定されることなく用いることができ、例えば、金属アルミニウム粉末などを用いることができる。
【0032】
[撥水性物質]
本実施形態の気泡コンクリートには、必要に応じて撥水性物質を0.1~3.0質量%含有させてもよい。撥水性物質とは、特に限定されるものではなく、シロキサン化合物、アルコキシシラン化合物、脂肪酸、脂肪酸塩、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂等の樹脂エマルジョン等であり、このうち一種又は二種以上の混合物を用いることもできる。中でも特に、シロキサン化合物、すなわち、ポリジメチルシロキサンやポリジメチルシロキサンのメチル基の一部が水素、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換されたシリコーンオイル、アルコキシシラン化合物、すなわち、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン化合物を使用することが好ましい。
【0033】
[その他成分]
また、上記以外の原料であっても、所望の効果に影響を及ぼさない範囲で各種材料を適宜用いてもよい。例えば、補強繊維、メチルセルロース等の界面活性剤、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール等の増粘剤、減水剤、高性能減水剤等のセメント系材料において一般に用いられる分散剤、リグニンスルホン酸、グルコン酸塩等のセメント系材料において一般に用いられる硬化遅延剤、リン酸塩等の発泡遅延剤が挙げられる。
【0034】
本実施形態の製造方法においては、珪酸質原料、セメント、石灰質原料、アルミニウム化合物原料、硫酸化合物原料、アルカリ化合物原料、他の原料の投入方法、投入順序、混合時間は特に限定されるものではない。
例えば、従来のように、それら原料を同時に投入して短時間混合し、界面活性剤、金属アルミニウム粉もしくはそのスラリーを添加して型枠に注入してもよく、原料を同時に投入して一定時間の混合後に界面活性剤、金属アルミニウム粉又はそのスラリーを添加して型枠に注入してもよい。また、例えば、珪酸質原料と水と必要に応じて石灰質原料の一部、アルミニウム化合物原料、アルカリ化合物原料を混合する第一工程に引き続き、セメント、硫酸化合物原料及び残りの石灰質原料を加えてさらに混合する第二工程の後にアルミニウム粉等の気泡剤を添加して型枠に注入する方法を用いてもよい。このような方法を用いる場合においても、混合時の方法や、混合時の温度、混合時間は特に限定されるものではない。
【0035】
本実施形態の製造方法においては、従来のALCと同様に補強鉄筋又は補強金網を気泡コンクリート内に埋設させるように成型することが好ましく行われる。ここで補強鉄筋とは、鉄筋を所望の形状に配列し、交叉接点を溶接加工したものをいう。補強金網とは、鉄を網状に加工したもので、例えば、ラス網等がその代表的な例である。補強鉄筋又は補強金網の形状、寸法、鉄筋の太さ、金網の目の大きさ、さらに軽量コンクリート中に埋設する際の位置等、配筋の仕方については、限定されるものではなく、板の大きさ、用途等によって適宜選択されることが好ましい。
これら補強鉄筋又は補強金網は、耐久性上有効な防錆剤処理が施されていることが好ましい。防錆剤としては合成樹脂系等、公知のものを使用できる。この様に鉄筋または金網を内部に配置することにより破壊時の耐力が著しく向上する。
【0036】
型枠に注入されたスラリーは、アルミニウム粉に由来して発泡、生石灰及びセメントの自己発熱により、好ましくは50~85℃の間で1時間以上かけて予備硬化される。予備硬化は、蒸気養生室等の水分が蒸発を抑制した環境下で行うことが好ましい。得られた予備硬化体は、必要に応じて任意の形状に切断された後に、オートクレーブを用いて高温高圧養生される。切断は軽量気泡コンクリートの製造に一般に用いられるワイヤーによる切断法も使用できる。オートクレーブの条件としては160℃(ゲージ圧力:約5.3kgf/cm2)以上、220℃(ゲージ圧力:約22.6kgf/cm2)以下が好ましい。
【実施例
【0037】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はかかる実施例に限定解釈されるべきでないことはいうまでもない。
以下、実施例、比較例に用いた原料、及び各種の測定方法を説明する。
【0038】
[(嵩)比重]
オートクレーブ後の硬化体を、105℃にて24時間乾燥させた時の重量と寸法から算出した。
【0039】
[珪酸質原料]
珪酸質原料として、国内外8箇所の鉱山から産出する珪石又は珪砂(A~H)を用いた。
尚、珪酸質原料の粉砕後の粒径の測定方法は、以下に説明する不溶残分の粒径の測定方法と同じであった。
【0040】
[全固形分に対する不溶残分の比率]
不溶残分の抽出方法は、JIS R5202のポルトランドセメントの化学分析方法に記載の塩酸-炭酸ナトリウム方法による不溶残分の定量方法に準拠した方法により行ったが、この定量方法における処理のうち、不溶残分の粒度に影響を与える処理については処理内容を変更した。具体的には、JIS R5202に規定されているろ紙による不溶残分とろ液の分離を遠心分離機(製品名:インバータ・テーブルトップ遠心機 形式8400 久保田製作所社製)による分離に変更した。遠心分離条件は、3000rpm×10分間とした。また、JIS R5202の上記定量方法に規定されている温水による不溶残分の洗浄は、温水量を50mlとし、上記遠心分離機による洗浄に変更した。遠心分離条件は、3000rpm×10分間とし、洗浄回数を5回とした。また、JIS R5202の上記定量方法に規定されている電気炉での950±25℃×30分間の強熱処理を、乾燥機による110℃×48時間の処理に変更した。また、JIS R5202の上記定量方法に規定されている水浴上での加熱処理について、その温度条件を80℃に変更した。
不溶残分の比率を、オートクレーブ養生後の気泡コンクリートの重量に対する不溶残分の質量%として求めた。
【0041】
[不溶残分の粒径]
不溶残分の粒度分布測定は、レーザー光回折・散乱式の粒度分布計(製品名:マイクロトラック 9320 HRA X100、日機装社製)を用い、下記の条件で湿式にて測定した。
粒度測定範囲:0.12~704μm
流速:60ml/sec
超音波分散:25watts×60sec
物質情報:屈折率=1.54、物質=珪石(非球形粒子)
溶媒情報:屈折率=1.33、溶媒=水
ゼロ点調整時間:30sec
測定条件:60sec×2回
測定結果:測定2回の平均値
【0042】
[5000~10000m切削加工時のモーター負荷[A]]
切削加工装置として以下の電気ルーターに、図2に示す先端部直径9mmの切削刃取り付け、低比重ALCの表面を溝深さ9mmで、5000~10000mの直線状の切削溝を形成した時のモーター負荷[A]を測定した。尚、形成された切削溝の長さは、所定のサイズの多数の低比重ALCパネルに形成された直線状切削溝の長さの累計である。通常、切削加工に用いる刃物は摩耗するため、約1万m切断で新品に交換する。また、切削初期の刃物状態では、切削加工装置のモーター負荷に特段の変化はないが、使用開始後の後半、5千~1万m加工時には、モーター負荷が上がり、切削時に小さな欠損(微欠損)が生じる。本実施例、比較例では、約7500m切削加工時のモーター負荷を測定した。
[電気ルーター]
モーター型式:富士電機 MVH6107L
回転数:6000rpm
送り速度:5m/分
【0043】
[切削加工時の微欠損数/m]
前記[5000~10000m切削加工時のモーター負荷[A]]の測定における約7500m切削加工時の微欠損の発生率を、切削溝1m当たりの数で評価した。
ここで、「微欠損」とは、図2に示す切削刃を用いて溝深さ9mmに表面を切削加工するとき、断面において、凹部の壁と表面が交わる点(平面図では直線状に見える)における角部が該直線方向において5mm以上欠けて、平面図状での直線の連続性が失われた状態をいう。
【0044】
[剥離度(%)、全剥離(%)]
図1に示すように、気泡コンクリートパネルの溝にプレート状の刃物(チップ(2))を挿入し、揺動させる(こじる)ことによって、パネル表面を欠けさせた。チップ幅(W)を50mm、溝深さ(D)を9mmとした。
図1中、2つの刃物間の、剥離前パネル表面に対する、欠けたパネル表面の面積の百分率を剥離度(%)とした。サンプル数を100とし、平均値を求めた。また、全剥離(%)とは、サンプル数100当たりの、2つの刃物間のパネル表面が100%の剥離度であったサンプル数の百分率である。
尚、上記揺動を2つの刃物の外側にも実施すれば、例えば、図3に示すような石割調デザインのパネルを作製することができる。
【0045】
[実施例1]
珪酸質原料として珪石A(石英結晶成分割合75質量%)、珪石B(石英結晶成分割合92質量%)をそれぞれ独立してミルにて粉砕した後に混合し、100μm以上の粗粒の比率が0質量%、10μm以上100μm未満の中粒の比率が53質量%、10μm未満の微粒の比率が47質量%の珪石粉を得た。45℃の水92.1重量部に、上記珪石粉を46.3重量部、生石灰2.4重量部、水酸化アルミ0.47重量部、カリ明礬12水和物を1.27重量部を加え、混合、攪拌した。
次いで、該水性スラリーに早強ポルトランドセメント36.1重量部、二水石膏2.0重量部、生石灰12重量部、予め水2.0重量部に界面活性剤を0.0095重量部混合して得た水性スラリーを投入し、さらに混合、攪拌した。
続いて、予め水0.72重量部に金属アルミニウム粉末0.09重量部を分散させた金属アルミニウムスラリーを投入、攪拌し、型枠に注入して発泡させ、予備硬化を行った。所定の硬度となった予備硬化体をオートクレーブに入れ、飽和水蒸気雰囲気下180℃で4時間、オートクレーブ養生を行った。オートクレーブから出缶後、乾燥して低比重軽量気泡コンクリートを得た。珪酸質原料、セメント及び石灰質原料は、CaO/SiOモル比で0.78とした。
【0046】
[実施例2]
珪酸質原料として珪石A(石英結晶成分割合75質量%)、珪石C(石英結晶成分割合94質量%)をそれぞれ独立してミルにて粉砕した後に混合し、100μm以上の粗粒の比率が0質量%、10μm以上100μm未満の中粒の比率が50.7質量%、10μm未満の微粒の比率が49.3質量%の珪石粉を得た。45℃の水92.1重量部に、上記珪石粉を46.3重量部、生石灰2.4重量部、水酸化アルミ0.47重量部、カリ明礬12水和物を1.27重量部を加え、混合、攪拌した。
次いで、該水性スラリーに、早強ポルトランドセメント36.1重量部、二水石膏2.0重量部、生石灰12重量部、予め水2.0重量部に界面活性剤を0.0095重量部混合して得た水性スラリーを投入、混合、攪拌した。
続いて、予め水0.72重量部に金属アルミニウム粉末0.09重量部を分散させた金属アルミニウムスラリーを投入、攪拌し、型枠に注入して発泡させ、予備硬化を行った。所定の硬度となった予備硬化体をオートクレーブに入れ、飽和水蒸気雰囲気下180℃で4時間、オートクレーブ養生を行った。オートクレーブから出缶後、乾燥して低比重軽量気泡コンクリートを得た。珪酸質原料、セメント及び石灰質原料は、CaO/SiOモル比で0.78とした。
【0047】
[実施例3]
珪酸質原料として珪石D(石英結晶成分割合82質量%)、珪石C(石英結晶成分割合94質量%)をそれぞれ独立してミルにて粉砕した後に混合し、100μm以上の粗粒の比率が0質量%、10μm以上100μm未満の中粒の比率が53.1質量%、10μm未満の微粒の比率が46.9質量%の珪石粉を得た。45℃の水92.1重量部に、上記珪石粉を46.3重量部、生石灰2.4重量部、水酸化アルミ0.47重量部、カリ明礬12水和物を1.27重量部加え、混合、攪拌した。
次いで、該水性スラリーに、早強ポルトランドセメント36.1重量部、二水石膏2.0重量部、生石灰12重量部、予め水2.0重量部に界面活性剤を0.0095重量部混合して得た水性スラリーを投入、混合、攪拌した。
続いて、予め水0.72重量部に金属アルミニウム粉末0.09重量部を分散させた金属アルミニウムスラリーを投入、攪拌し、型枠に注入して発泡させ、予備硬化を行った。所定の硬度となった予備硬化体をオートクレーブに入れ、飽和水蒸気雰囲気下180℃で4時間、オートクレーブ養生を行った。オートクレーブから出缶後、乾燥して低比重軽量気泡コンクリートを得た。珪酸質原料、セメント及び石灰質原料は、CaO/SiOモル比で0.78とした。
【0048】
参考例4]
珪酸質原料として珪石A(石英結晶成分割合75質量%)をミルにて粉砕し、100μm以上の粗粒の比率が0質量%、10μm以上100μm未満の中粒の比率が39.1質量%、10μm未満の微粒の比率が60.9質量%の珪石粉を得た。45℃の水92.1重量部に、上記珪石粉を46.3重量部、生石灰2.4重量部、水酸化アルミ0.47重量部、カリ明礬12水和物を1.27重量部加え、混合、攪拌した。
次いで、該水性スラリーに、早強ポルトランドセメント36.1重量部、二水石膏2.0重量部、生石灰12重量部、予め水2.0重量部に界面活性剤を0.0095重量部混合して得た水性スラリーを投入、混合、攪拌した。
続いて、予め水0.72重量部に金属アルミニウム粉末0.09重量部を分散させた金属アルミニウムスラリーを投入、攪拌し、型枠に注入して発泡させ、予備硬化を行った。所定の硬度となった予備硬化体をオートクレーブに入れ、飽和水蒸気雰囲気下180℃で4時間、オートクレーブ養生を行った。オートクレーブから出缶後、乾燥して低比重軽量気泡コンクリートを得た。珪酸質原料、セメント及び石灰質原料は、CaO/SiOモル比で0.78とした。
【0049】
[実施例5]
珪酸質原料として珪石D(石英結晶成分割合82質量%)をミルにて粉砕し、100μm以上の粗粒の比率が0質量%、10μm以上100μm未満の中粒の比率が39.1質量%、10μm未満の微粒の比率が60.9質量%の珪石粉を得た。45℃の水92.1重量部に、上記珪石粉を46.3重量部、生石灰2.4重量部、水酸化アルミ0.47重量部、カリ明礬12水和物を1.27重量部加え、混合、攪拌した。
次いで、該水性スラリーに、早強ポルトランドセメント36.1重量部、二水石膏2.0重量部、生石灰12重量部、予め水2.0重量部に界面活性剤を0.0095重量部混合して得た水性スラリーを投入、混合、攪拌した。
続いて、予め水0.72重量部に金属アルミニウム粉末0.09重量部を分散させた金属アルミニウムスラリーを投入、攪拌し、型枠に注入して発泡させ、予備硬化を行った。所定の硬度となった予備硬化体をオートクレーブに入れ、飽和水蒸気雰囲気下180℃で4時間、オートクレーブ養生を行った。オートクレーブから出缶後、乾燥して低比重軽量気泡コンクリートを得た。珪酸質原料、セメント及び石灰質原料は、CaO/SiOモル比で0.78とした。
【0050】
[実施例6]
珪酸質原料として珪石A(石英結晶成分割合75質量%)、珪石B(石英結晶成分割合92質量%)をそれぞれ独立してミルにて粉砕した後に混合し、100μm以上の粗粒の比率が0.8質量%、10μm以上100μm未満の中粒の比率が55.1質量%、10μm未満の微粒の比率が44.1質量%の珪石粉を得た。45℃の水92.1重量部に、上記珪石粉を46.3重量部、生石灰2.4重量部、水酸化アルミ0.47重量部、カリ明礬12水和物を1.27重量部を加え、混合、攪拌した。
次いで、該水性スラリーに早強ポルトランドセメント36.1重量部、二水石膏2.0重量部、生石灰12重量部、予め水2.0重量部に界面活性剤を0.0095重量部混合して得た水性スラリーを投入し、さらに混合、攪拌した。
続いて、予め水0.72重量部に金属アルミニウム粉末0.09重量部を分散させた金属アルミニウムスラリーを投入、攪拌し、型枠に注入して発泡させ、予備硬化を行った。所定の硬度となった予備硬化体をオートクレーブに入れ、飽和水蒸気雰囲気下180℃で4時間、オートクレーブ養生を行った。オートクレーブから出缶後、乾燥して低比重軽量気泡コンクリートを得た。珪酸質原料、セメント及び石灰質原料は、CaO/SiOモル比で0.78とした。
【0051】
[比較例1]
珪酸質原料として珪石E(石英結晶成分割合81質量%)、珪石F(石英結晶成分割合85質量%)を1:1に混合し、ミルにて粉砕し100μm以上の粗粒の比率が9.4質量%、10μm以上100μm未満の中粒の比率が68.2質量%、10μm未満の微粒の比率が22.4質量%の珪石粉を得た。45℃の水75重量部に、この珪石粉を60.8重量部、生石灰7.5重量部、早強ポルトランドセメント29.2重量部、二水石膏2.5重量部を混合し、攪拌した。
続いて、予め水0.48重量部に金属アルミニウム粉末0.06重量部を分散させた金属アルミニウムスラリーを投入、攪拌し、型枠に注入して発泡させ、予備硬化を行った。所定の硬度となった予備硬化体をオートクレーブに入れ、飽和水蒸気雰囲気下180℃で4時間、オートクレーブ養生を行った。オートクレーブから出缶後、乾燥して軽量気泡コンクリートを得た。珪酸質原料、セメント及び石灰質原料は、CaO/SiOモル比で0.45とした。
【0052】
[比較例2]
珪酸質原料として珪石A(石英結晶成分割合75質量%)、珪石G(石英結晶成分割合75質量%)をそれぞれ独立してミルにて粉砕した後に混合し、100μm以上の粗粒の比率が1.5質量%、10μm以上100μm未満の中粒の比率が56.7質量%、10μm未満の微粒の比率が41.8質量%の珪石粉を得た。45℃の水92.1重量部に、上記珪石粉46.3重量部、生石灰2.4重量部、水酸化アルミ0.47重量部、カリ明礬12水和物1.27重量部を加え、混合、攪拌した。
次いで、該水性スラリーに、早強ポルトランドセメント36.1重量部、二水石膏2.0重量部、生石灰12重量部、予め水2.0重量部に界面活性剤を0.0095重量部混合して得た水性スラリーを投入、混合、攪拌した。
続いて、予め水0.72重量部に金属アルミニウム粉末0.09重量部を分散させた金属アルミニウムスラリーを投入、攪拌し、型枠に注入して発泡させ、予備硬化を行った。所定の硬度となった予備硬化体をオートクレーブに入れ、飽和水蒸気雰囲気下180℃で4時間、オートクレーブ養生を行った。オートクレーブから出缶後、乾燥して低比重軽量気泡コンクリートを得た。珪酸質原料、セメント及び石灰質原料は、CaO/SiOモル比で0.78とした。
【0053】
[比較例3]
珪酸質原料として珪石H(石英結晶成分割合68質量%)をミルにて粉砕し、100μm以上の粗粒の比率が13.8質量%、10μm以上100μm未満の中粒の比率が43.2質量%、10μm未満の微粒の比率が43.0質量%の珪石粉を得た。45℃の水75重量部に、この珪石粉を56重量部、生石灰6重量部、早強ポルトランドセメント36重量部、二水石膏2重量部を混合し、攪拌した。
続いて、予め水0.48重量部に金属アルミニウム粉末0.06重量部を分散させた金属アルミニウムスラリーを投入、攪拌し、型枠に注入して発泡させ、予備硬化を行った。所定の硬度となった予備硬化体をオートクレーブに入れ、飽和水蒸気雰囲気下180℃で4時間、オートクレーブ養生を行った。オートクレーブから出缶後、乾燥して軽量気泡コンクリートを得た。珪酸質原料、セメント及び石灰質原料は、CaO/SiOモル比で0.53とした。
【0054】
評価結果を以下の表1に示す。
【0055】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る比重0.2以上~0.45未満の低比重ALCは、不溶残分の比率が全固形分に対し5質量%以上20質量%未満であり、かつ、該不溶残分の粒径が10μm未満のものを微粒、10μm以上100μm未満のものを中粒、100μm以上のものを粗粒としたとき、該不溶残分中の該粗粒の含有率が2.0質量%以下であるため、切削加工時における微細な欠損(微欠損)が少なく、さらに、不溶残分中の微粒/中粒比率が0.75以上1.40以下と高いことで、溝部に挿入した刃物の揺動や打撃などのはつりによる、表面デザイン性や意匠性が高い剥離加工特性が良好となる。それゆえ、本発明に係る比重0.2以上~0.45未満の低比重ALCは、建築物の外壁材、床材、内壁材、屋根材等として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
W チップ幅
D 溝深さ
1 気泡コンクリート
2 チップ(プレート状の刃物)
図1
図2
図3