IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社国際電気通信基礎技術研究所の特許一覧 ▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電子ミラー用表示装置 図1
  • 特許-電子ミラー用表示装置 図2
  • 特許-電子ミラー用表示装置 図3
  • 特許-電子ミラー用表示装置 図4
  • 特許-電子ミラー用表示装置 図5
  • 特許-電子ミラー用表示装置 図6
  • 特許-電子ミラー用表示装置 図7
  • 特許-電子ミラー用表示装置 図8
  • 特許-電子ミラー用表示装置 図9
  • 特許-電子ミラー用表示装置 図10
  • 特許-電子ミラー用表示装置 図11
  • 特許-電子ミラー用表示装置 図12
  • 特許-電子ミラー用表示装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】電子ミラー用表示装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 1/20 20220101AFI20231207BHJP
   B60R 1/26 20220101ALI20231207BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B60R1/20 100
B60R1/26 100
H04N7/18 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019188422
(22)【出願日】2019-10-15
(65)【公開番号】P2021062756
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】393031586
【氏名又は名称】株式会社国際電気通信基礎技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(72)【発明者】
【氏名】内海 章
(72)【発明者】
【氏名】蘆田 宏
(72)【発明者】
【氏名】長澤 勇
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/109991(WO,A1)
【文献】特開2009-010915(JP,A)
【文献】特開2018-055075(JP,A)
【文献】特開2013-216286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/00
B60R 1/04
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置により取得された画像または映像を表示するための電子ミラー用表示装置であって、
表示スクリーンを含み、前記撮像装置により取得された画像または映像を左右反転して表示するための制御信号を生成し、当該制御信号に基づいて、前記画像または前記映像を前記表示スクリーンに表示する表示部と、
前記表示スクリーンの中心点の接平面の法線方向の無限遠から前記表示スクリーンを見たときの平面視において、前記表示スクリーンの一部を覆うように設置される遮光部であって、前記表示スクリーン側に、前記表示スクリーンから離間した位置に設置される前記遮光部と、
を備え
ユーザーが前方を見ながら後方を見るためのミラーが配置される位置である第1の位置に配置され、
前記第1の位置に配置されたときに、前記ユーザーが前方を直視したときに前記ユーザーの視線を遮らない大きさである、
電子ミラー用表示装置。
【請求項2】
撮像装置により取得された画像または映像を表示するための電子ミラー用表示装置であって、
表示スクリーンを含み、前記撮像装置により取得された画像または映像を左右反転して表示するための制御信号を生成し、当該制御信号に基づいて、前記画像または前記映像を前記表示スクリーンに表示する表示部と、
ユーザーが前記表示スクリーンを見たときに、前記表示スクリーン上に半遮蔽領域が生じるように配置される遮光部と、
を備え
ユーザーが前方を見ながら後方を見るためのミラーが配置される位置である第1の位置に配置され、
前記第1の位置に配置されたときに、前記ユーザーが前方を直視したときに前記ユーザーの視線を遮らない大きさである、
電子ミラー用表示装置。
【請求項3】
前記遮光部は、第1遮光部と、第2遮光部とを含み、
前記第1遮光部は、前記表示スクリーンの中心点の接平面の法線方向の無限遠から前記表示スクリーンを見たときの平面視において、前記表示スクリーンに画像または映像を表示するときの水平方向の左側端部を含む所定の領域を覆うように配置され、
前記第2遮光部は、前記表示スクリーンの中心点の接平面の法線方向の無限遠から前記表示スクリーンを見たときの平面視において、前記表示スクリーンに画像または映像を表示するときの水平方向の右側端部を含む所定の領域を覆うように配置される、
請求項1または2に記載の電子ミラー用表示装置。
【請求項4】
前記表示スクリーンと前記遮光部との間に設置される光学距離延長部をさらに備える、
請求項1から3のいずれかに記載の電子ミラー用表示装置。
【請求項5】
前記光学距離延長部は、1つまたは複数のレンズからなる光学系を含む、
請求項4に記載の電子ミラー用表示装置。
【請求項6】
前記光学距離延長部は、1つまたは複数の反射鏡を含む、
請求項4または5に記載の電子ミラー用表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ミラーに映像を表示するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、後方確認のために自動車等に取り付けられるルームミラー(バックミラー)やドアミラーを電子ミラーに置き換える検討が進んでいる。電子ミラーは、撮像装置により自動車等の周囲を撮影した映像を表示する装置であり、電子ミラーを設置した位置にミラーを置いた場合において、ユーザーが当該ミラーを見たときに当該ユーザーが認識する鏡像(鏡に映った風景)と同様の映像(画像)を表示する装置である。
【0003】
しかしながら、電子ミラーは、映像を表示する装置であるので、ユーザーが電子ミラーに表示される映像を認識する感覚と、ユーザーがミラーに写った像を認識する感覚とは、大きく相違する。このため、ミラーに慣れているユーザーが電子ミラーに表示される映像を見たときに違和感を頂く。この原因として、例えば、以下のものが考えられる。
(1)ミラーでは、ユーザーの注視点(ユーザーがピントを合わせて見ている対象物)がミラーに写った鏡像であるため、ユーザーの視点からユーザーの注視点までの距離(被写体距離に相当)が長い。それに対して、電子ミラー(映像表示装置)では、ユーザーの注視点(ユーザーがピントを合わせて見ている対象物)が電子ミラーの表示面上の点(あるいは、所定の領域)となるため、ユーザーの視点からユーザーの注視点までの距離(被写体距離に相当)が短い。
(2)ミラーでは、ユーザーの見る角度により、視野が変化するのに対して、電子ミラーでは、ユーザーの見る角度により、視野が変化しない。
【0004】
上記違和感を低減するための技術が開発されている。例えば、特許文献1には、バックミラーの使用感に近い車両周囲確認用モニターを提供する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-216286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の技術(特許文献1に開示されている技術)では、複雑な処理を実行する必要があり、当該処理を実行するために高性能な処理を設置する必要がある。具体的には、特許文献1に開示されている車両周囲確認用モニター装置は、車両後方を撮像するバックカメラで撮像された入力画像を処理する画像処理手段と、処理された出力画像を表示する画像表示手段と、運転手の頭部の相対的位置を検知する姿勢検知手段と、を備えている。そして、画像処理手段は、姿勢検知手段が検知した運転者頭部の相対的位置に基づいて、入力画像の全撮像範囲から一部を切出して出力画像とする処理を実行するとともに、姿勢検知手段に検知される運転者頭部の相対的位置の変位量に応じて、その変位方向と逆方向に入力画像の切出し範囲を移動させる処理を実行する。
【0007】
このように、特許文献1に開示されている技術では、ユーザー(運転手)が車両周囲確認用モニター装置の表示スクリーンを見たときの違和感を低減するために、複雑な処理を実行する必要がある。また、特許文献1に開示されている技術では、当該複雑な処理を実行するために、高性能な装置(高価な装置)が必要となる。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、複雑な処理を実行することなく、また、高性能な装置(高価な装置)を設置することなく、簡便な機構で、ユーザーが表示スクリーンを見たときの違和感を低減する電子ミラー用表示装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、第1の発明は、撮像装置により取得された画像または映像を表示するための電子ミラー用表示装置であって、表示部と、遮光部と、を備える。
【0010】
表示部は、表示スクリーンを含み、撮像装置により取得された画像または映像を表示するための制御信号を生成し、当該制御信号に基づいて、画像または映像を表示スクリーンに表示する。
【0011】
遮光部は、表示スクリーンの中心点の接平面の法線方向の無限遠から表示スクリーンを見たときの平面視において、表示スクリーンの一部を覆うように設置される。そして、遮光部は、表示スクリーン側に、表示スクリーンから離間した位置に設置される。
【0012】
この電子ミラー用表示装置では、遮光部が、表示スクリーンの手前に、表示スクリーンの一部を覆うように設置されているので、擬似的に半遮蔽領域を発生させることができる。そして、この電子ミラー用表示装置では、遮光部を設けることにより発生させた半遮蔽領域が、両眼の視点の移動に応じて、鏡に映った像(鏡像)を見ているときと同様に移動するため、表示部の表示スクリーンに表示されている画像(映像)を見たときの違和感が劇的に低減される。
【0013】
したがって、この電子ミラー用表示装置では、複雑な処理を実行することなく、また、高性能な装置(高価な装置)を設置することなく、簡便な機構で、ユーザーが表示スクリーンを見たときの違和感を低減することができる。
【0014】
なお、「半遮蔽領域」とは、片眼でしか観察できない範囲のことをいう。
【0015】
第2の発明は、撮像装置により取得された画像または映像を表示するための電子ミラー用表示装置であって、表示部と、遮光部と、を備える。
【0016】
表示部は、表示スクリーンを含み、撮像装置により取得された画像または映像を表示するための制御信号を生成し、当該制御信号に基づいて、画像または映像を表示スクリーンに表示する。
【0017】
遮光部は、ユーザーが表示スクリーンを見たときに、表示スクリーン上に半遮蔽領域が生じるように配置される。
【0018】
この電子ミラー用表示装置では、遮光部が、ユーザーが表示スクリーンを見たときに、表示スクリーン上に半遮蔽領域が生じるように配置されているので、擬似的に半遮蔽領域を発生させることができる。そして、この電子ミラー用表示装置では、遮光部を設けることにより発生させた半遮蔽領域が、両眼の視点の移動に応じて、鏡に映った像(鏡像)を見ているときと同様に移動するため、表示部の表示スクリーンに表示されている画像(映像)を見たときの違和感が劇的に低減される。
【0019】
したがって、この電子ミラー用表示装置では、複雑な処理を実行することなく、また、高性能な装置(高価な装置)を設置することなく、簡便な機構で、ユーザーが表示スクリーンを見たときの違和感を低減することができる。
【0020】
第3の発明は、第1または第2の発明であって、遮光部は、第1遮光部と、第2遮光部とを含む。
【0021】
第1遮光部は、表示スクリーンの中心点の接平面の法線方向の無限遠から表示スクリーンを見たときの平面視において、表示スクリーンに画像または映像を表示するときの水平方向の左側端部を含む所定の領域を覆うように配置される。
【0022】
第2遮光部は、表示スクリーンの中心点の接平面の法線方向の無限遠から表示スクリーンを見たときの平面視において、表示スクリーンに画像または映像を表示するときの水平方向の右側端部を含む所定の領域を覆うように配置される。
【0023】
これにより、この電子ミラー用表示装置では、第1遮光部および第2遮光部を設けることにより発生させた半遮蔽領域が、両眼の視点の移動に応じて、鏡に映った像(鏡像)を見ているときと同様に移動するため、表示部の表示スクリーンに表示されている画像(映像)を見たときの違和感が劇的に低減される。
【0024】
したがって、この電子ミラー用表示装置では、複雑な処理を実行することなく、また、高性能な装置(高価な装置)を設置することなく、簡便な機構で、ユーザーが表示スクリーンを見たときの違和感を低減することができる。
【0025】
第4の発明は、第1から第3のいずれかの発明であって、表示スクリーンと遮光部との間に設置される光学距離延長部をさらに備える。
【0026】
これにより、この電子ミラー用表示装置では、光学距離延長部により光学距離を延長できるので、表示スクリーンと遮光部との配置間隔を短くすることできる。その結果、この電子ミラー用表示装置では、サイズを小さくすることができる。
【0027】
第5の発明は、第4の発明であって、光学距離延長部は、1つまたは複数のレンズからなる光学系を含む。
【0028】
これにより、1つまたは複数のレンズからなる光学系を用いて、光学距離延長部を実現することができる。
【0029】
第6の発明は、第4または第5の発明であって、光学距離延長部は、1つまたは複数の反射鏡を含む。
【0030】
これにより、1つまたは複数の反射鏡を用いて、光学距離延長部を実現することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、複雑な処理を実行することなく、また、高性能な装置(高価な装置)を設置することなく、簡便な機構で、ユーザーが表示スクリーンを見たときの違和感を低減する電子ミラー用表示装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】第1実施形態に係る電子ミラー表示システム1000の概略構成図。
図2】第1実施形態に係る電子ミラー用表示装置100の概略構成図。
図3】第1実施形態に係る電子ミラー用表示装置100の表示部1および撮像装置Cam1の概略構成図。
図4】表示スクリーン11に表示される画像(映像)の一例を示す図。
図5】ユーザーが両眼で鏡Mrr1を見た場合において、発生する半遮蔽領域(片眼でしか観察できない範囲)を説明するための図。
図6】ユーザーが両眼で電子ミラー用表示装置100の表示部1の表示スクリーン11を見た場合において、発生するける半遮蔽領域を説明するための図。
図7】ユーザーが両眼で電子ミラー用表示装置100の表示部1の表示スクリーン11を見た場合において、発生するける半遮蔽領域を説明するための図。
図8】第2実施形態に係る電子ミラー用表示装置200の概略構成図。
図9】(1)ユーザーが両眼で第1実施形態の電子ミラー用表示装置100の表示部1の表示スクリーン11を見た場合(状態5)と、(2)ユーザーが両眼で第2実施形態の電子ミラー用表示装置200の表示部1の表示スクリーン11を見た場合(状態6)とを模式的に示した図。
図10】表示部1の表示スクリーン11と、複数のミラーにより光学距離を延長する機構とを模式的に示した図。
図11】ユーザーが両眼で電子ミラー用表示装置の表示部1の表示スクリーン11を見た場合を模式的に示した図。
図12】他の実施形態に係る電子ミラー用表示装置の概略構成図。
図13】CPUバス構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[第1実施形態]
第1実施形態について、図面を参照しながら、以下、説明する。
【0034】
なお、以下では、電子ミラー用表示装置を用いた電子ミラー表示システムを自動車に搭載した場合を一例として説明する。
【0035】
<1.1:電子ミラー表示システムの構成>
図1は、第1実施形態に係る電子ミラー表示システム1000の概略構成図である。なお、図1は、自動車Vhcl1内に、電子ミラー表示システム1000が設置されている場合を示しており、自動車Vhcl1を上方から見たときの各装置、運転手Drv1の位置関係(配置)を模式的に示している。
【0036】
図2は、第1実施形態に係る電子ミラー用表示装置100の概略構成図である。具体的には、図2は、電子ミラー用表示装置100の上面図、正面図、および、A-A線による断面図を示している。
【0037】
図3は、第1実施形態に係る電子ミラー用表示装置100の表示部1および撮像装置Cam1の概略構成図である。
【0038】
電子ミラー表示システム1000は、図1に示すように、自動車Vhcl1内に設けられており、撮像装置Cam1と、電子ミラー用表示装置100と、を備える。
【0039】
(1.1.1:撮像装置の構成)
撮像装置Cam1は、図3に示すように、撮像レンズC_optと、絞りC_apと、撮像素子C11と、制御部C12と、アナログ信号処理部C13と、デジタル信号処理部C14と、カメラインターフェース部C15とを備える。
【0040】
撮像レンズC_optは、自動車Vhcl1の後方からの光(自動車Vhcl1の後方の被写体からの光)を集光する撮像レンズである。なお、撮像レンズC_optは、複数のレンズを用いて構成されるものであってもよい。
【0041】
絞りC_apは撮像レンズC_optで集光した自動車Vhcl1の後方からの光(自動車Vhcl1の後方の被写体からの光)の光量を調整する絞りである。
【0042】
撮像素子C11は、例えば、CMOSイメージセンサやCCDイメージセンサにより実現される撮像素子であり、自動車Vhcl1の後方からの光(自動車Vhcl1の後方の被写体からの光)を光電変換により画像信号(映像信号)に変換する。そして、撮像素子C11は、光電変換により取得した画像信号(映像信号)をアナログ信号処理部C13に出力する。
【0043】
制御部C12は、撮像装置Cam1の各部を制御するための制御部である。制御部C12は、カメラインターフェース部C15を介して、表示部1から出力される撮像装置Cam1を制御するための制御信号CTLを入力する。
【0044】
制御部C12は、制御信号CTLに基づいて、撮像レンズC_optを制御するための制御信号CTL_c1を生成し、生成した制御信号CTL_c1により、撮像レンズC_optを制御する(例えば、撮像レンズC_optの光軸上の位置を変更して、フォーカス制御を行う)。
【0045】
また、制御部C12は、制御信号CTLに基づいて、絞りC_apを制御するための制御信号CTL_c2を生成し、生成した制御信号CTL_c2により、絞りC_apを制御する(例えば、絞りC_apの開口状態を調整する(絞り値を調整する))。
【0046】
また、制御部C12は、制御信号CTLに基づいて、アナログ信号処理部C13を制御するための制御信号CTL_c3を生成し、生成した制御信号CTL_c3をアナログ信号処理部C13に出力する。
【0047】
また、制御部C12は、制御信号CTLに基づいて、デジタル信号処理部C14を制御するための制御信号CTL_c4を生成し、生成した制御信号CTL_c4をデジタル信号処理部C14に出力する。
【0048】
アナログ信号処理部C13は、撮像素子C11から出力される画像信号(映像信号)と、制御部C12から出力される制御信号CTL_c3とを入力する。そして、アナログ信号処理部C13は、制御信号CTL_c3に基づいて、撮像素子C11から出力される画像信号(映像信号)に対して、アナログ信号処理(例えば、信号ゲインの調整処理、ノイズ低減処理等)を施し、アナログ信号処理を施した画像信号(映像信号)を、A/D変換により、デジタル信号に変換し、当該デジタル信号をデジタル信号処理部C14に出力する。
【0049】
デジタル信号処理部C14は、アナログ信号処理部C13から出力されるデジタル画像信号(デジタル映像信号)と、制御部C12から出力される制御信号CTL_c4とを入力する。そして、デジタル信号処理部C14は、制御信号CTL_c4に基づいて、アナログ信号処理部C13から出力されるデジタル画像信号(デジタル映像信号)に対して、デジタル信号処理(例えば、ダイナミックレンジ調整処理、画素補間処理等)を施し、デジタル信号処理を施したデジタル画像信号(デジタル映像信号)を、カメラインターフェース部C15に出力する。
【0050】
カメラインターフェース部C15は、撮像装置Cam1が外部の装置または機能部とデータ通信を行うためのインターフェースである。カメラインターフェース部C15は、図3に示すように、表示部1のインターフェース部122と接続されており、表示部1のインターフェース部122を介して、表示部1とデータ通信を行うことができる。カメラインターフェース部C15は、表示部1のインターフェース部122から出力される制御信号CTLを受信し、受信した当該制御信号CTLを制御部C12に出力する。また、カメラインターフェース部C15は、デジタル信号処理部C14から出力されるデジタル画像信号(デジタル映像信号)をデジタル画像信号(デジタル映像信号)D_imgとして、表示部1のインターフェース部122に出力する。
【0051】
(1.1.2:電子ミラー用表示装置の構成)
電子ミラー用表示装置100は、図2に示すように、支持部材B1と、表示部1と、遮光部2とを備える。電子ミラー用表示装置100は、図1に示すように、自動車Vhcl1において、例えば、バックミラーが設置される場所に、バックミラーの代わりに設置される。
【0052】
支持部材B1は、表示部1と、遮光部2とを支持するための部材である。
【0053】
表示部1は、図2図3に示すように、表示スクリーン11と、カメラ制御部121と、インターフェース部122と、表示制御部123とを備える。また、表示部1は、カメラ制御部121と、インターフェース部122と、表示制御部123とを収納する収納部12を備える。表示部1は、図2に示すように、支持部材B1により支持されている。
【0054】
表示スクリーン11は、映像(または画像)を表示するための表示パネルであり、例えば、液晶表示パネルや有機EL表示パネル(EL:electro-luminescence)により実現される。表示スクリーン11は、その表示面が、遮光部2が配置されている側となるように配置される。表示スクリーン11は、表示制御部123により制御されることにより、映像(または画像)を表示する。具体的には、表示制御部123により生成された画像データ(映像データ)および制御信号(表示制御信号)を入力し、入力した画像データ(映像データ)および制御信号(表示制御信号)に基づいて、表示スクリーン11の各画素の表示制御を行うことで、表示スクリーン11に映像(または画像)を表示する。
【0055】
カメラ制御部121は、撮像装置Cam1を制御するための制御信号CTLを生成し、生成した制御信号CTLを、インターフェース部122を介して、撮像装置Cam1に出力する。
【0056】
インターフェース部122は、カメラ制御部121が生成した制御信号CTLを入力し、当該制御信号CTLを撮像装置Cam1に出力する。また、インターフェース部122は、撮像装置Cam1から出力されるデジタル画像信号(デジタル映像信号)D_imgを入力する。そして、インターフェース部122は、当該デジタル画像信号(デジタル映像信号)D_imgを表示制御部123に出力する。
【0057】
表示制御部123は、インターフェース部122から出力されるデジタル画像信号(デジタル映像信号)D_imgを入力する。表示制御部123は、入力したデジタル画像信号(デジタル映像信号)D_imgを表示スクリーンに表示するための画像データ(映像データ)と、当該画像データ(映像データ)を表示スクリーンに表示するための制御信号(表示スクリーン(表示パネル)を駆動するための信号(例えば、ゲート駆動信号、ソース駆動信号))とを生成し、生成した画像データ(映像データ)および制御信号(表示制御信号)を表示スクリーンに出力する。なお、表示制御部123は、撮像装置Cam1により取得(撮像)された画像(映像)に対して、左右が反転した画像(映像)(鏡像の画像(映像))が表示スクリーン11に表示されるように表示制御を行う。
【0058】
遮光部2は、光を遮断する材質で形成されている。なお、遮光部2は、直進する光を散乱させる部材や、光の透過率が所定の値以下(例えば、光の透過率が50%以下)の材質から形成されるものであってもよい。
【0059】
遮光部2は、表示スクリーン11の中心点(表示スクリーン11の表示面の中心点)の接平面の法線方向の無限遠から表示スクリーン11を見たときの平面視において、表示スクリーン11の一部を覆うように設置される。そして、遮光部2は、表示部1の表示スクリーン11が配置されている側であって、表示スクリーン11から離間した位置に設置される。
【0060】
また、遮光部2は、複数の部材から構成されるものであってもよい。遮光部2は、例えば、図2に示すように、第1遮光部21と、第2遮光部22とから構成されるものであってもよい。
【0061】
第1遮光部21は、図2に示すように、電子ミラー用表示装置100の表示スクリーン11を正面から見た場合において、表示スクリーン11の左端部を含む所定の領域を覆うように配置される。
【0062】
第2遮光部22は、図2に示すように、電子ミラー用表示装置100の表示スクリーン11を正面から見た場合において、表示スクリーン11の右端部を含む所定の領域を覆うように配置される。
【0063】
<1.2:電子ミラー表示システムの動作>
以上のように構成された電子ミラー表示システム1000の動作について、以下、説明する。
【0064】
図4は、表示スクリーン11に表示される画像(映像)の一例を示す図である。
【0065】
電子ミラー表示システム1000は、例えば、自動車Vhcl1が所定の状態(例えば、エンジンが作動し、自動車Vhcl1の電気系統が利用可能になった状態や自動車Vhcl1が走行している状態)になったときに自動で、あるいは、運転手Drv1により手動で、起動される。
【0066】
電子ミラー表示システム1000が起動されると、撮像装置Cam1により、自動車Vhcl1の後方の風景が撮影される。具体的には、以下の処理が実行されることで、撮像装置Cam1により、自動車Vhcl1の後方の風景が撮影される。
【0067】
自動または手動により、撮像装置Cam1の撮影パラメータ(撮像装置Cam1の光学系の光軸の方向、画角、焦点距離、絞り値等)が設定される。手動の場合、例えば、ユーザー(例えば、運転手Drv1)により表示部1のインターフェース部に撮影パラメータを設定するためのデータが入力され(ユーザーの入力手段は、不図示)、表示部1のカメラ制御部121は、ユーザーにより入力されたデータに基づく撮影パラメータが設定するための制御信号CTLを生成し、生成した制御信号CTLを、インターフェース部122を介して、撮像装置Cam1に送信する。
【0068】
撮像装置Cam1の制御部C12は、表示部1から送信された制御信号CTLを、カメラインターフェース部C15を介して、受信し、受信した制御信号CTLに基づいて、撮像装置Cam1の撮影パラメータを設定する。
【0069】
撮影パラメータが設定された後、表示部1のカメラ制御部121は、撮像を実行するように指示する制御信号CTLを生成し、生成した制御信号CTLを、インターフェース部122を介して、撮像装置Cam1に送信する。
【0070】
撮像装置Cam1は、表示部1から上記の制御信号CTLを受信し、当該制御信号CTLに基づいて、撮像処理を実行する。つまり、撮像レンズC_optにより集光された、自動車Vhcl1の後方からの光(自動車Vhcl1の後方の被写体からの光)が、撮像素子C11で、光電変換されて画像信号(映像信号)として取得される。そして、取得された画像信号(映像信号)は、撮像素子C11からアナログ信号処理部C13に出力される。
【0071】
アナログ信号処理部C13は、撮像素子C11から出力される画像信号(映像信号)に対して、アナログ信号処理(例えば、信号ゲインの調整処理、ノイズ低減処理等)を施し、アナログ信号処理を施した画像信号(映像信号)を、A/D変換により、デジタル信号に変換し、当該デジタル信号をデジタル信号処理部C14に出力する。
【0072】
デジタル信号処理部C14は、アナログ信号処理部C13から出力されるデジタル画像信号(デジタル映像信号)に対して、デジタル信号処理(例えば、ダイナミックレンジ調整処理、画素補間処理等)を施し、デジタル信号処理を施したデジタル画像信号(デジタル映像信号)を取得する。そして、デジタル信号処理部C14は、取得したデジタル画像信号(デジタル映像信号)を、デジタル画像信号(デジタル映像信号)D_imgとして、カメラインターフェース部C15を介して、表示部1に出力する。
【0073】
表示制御部123は、インターフェース部122から出力されるデジタル画像信号(デジタル映像信号)D_imgを入力する。表示制御部123は、入力したデジタル画像信号(デジタル映像信号)D_imgを表示スクリーンに表示するための画像データ(映像データ)と、当該画像データ(映像データ)を表示スクリーンに表示するための制御信号(表示スクリーン(表示パネル)を駆動するための信号(例えば、ゲート駆動信号、ソース駆動信号))とを生成し、生成した画像データ(映像データ)および制御信号(表示制御信号)を表示スクリーンに出力する。なお、表示制御部123は、撮像装置Cam1により取得(撮像)された画像(映像)に対して、左右が反転した画像(映像)(鏡像の画像(映像))が表示スクリーン11に表示されるように表示制御を行う。
【0074】
表示スクリーン11は、表示制御部123により制御されることにより、画像(映像)を表示する。具体的には、表示制御部123により生成された画像データ(映像データ)および制御信号(表示制御信号)を入力し、入力した画像データ(映像データ)および制御信号(表示制御信号)に基づいて、表示スクリーン11の各画素の表示制御を行うことで、表示スクリーン11に映像(または画像)を表示する。
【0075】
このように処理することで、電子ミラー表示システム1000において、例えば、図4の上図に模式的に示すような自動車Vhcl1の後方の風景の撮像画像(撮像映像)(撮像装置Cam1により取得(撮像)された画像(映像)に対して、左右が反転した画像(映像))が、表示スクリーン11に表示される。なお、電子ミラー表示システム1000では、上記処理により、例えば、1秒間に30フレーム分の画像(撮像画像)を取得する。つまり、電子ミラー表示システム1000では、上記処理により、例えば、30fps(frame per second)の映像を取得し、当該映像を表示スクリーン11に表示する。
【0076】
そして、電子ミラー用表示装置100には、遮光部2(第1遮光部21、第2遮光部22)が設けられているので、電子ミラー用表示装置100の表示スクリーン11に図4の上図の映像が表示されている場合において、ユーザー(例えば、運転手Drv1)が電子ミラー用表示装置100を見たとき、図4の下図のように認識される(映像(画像)の左端部と右端部とが、それぞれ、第1遮光部21、第2遮光部22により隠された状態として認識される)。
【0077】
ここで、図5図7を用いて、電子ミラー用表示装置100により、ユーザーが表示スクリーン11を見たときの違和感を低減できる原理について、説明する。
【0078】
図5は、ユーザーが両眼で鏡Mrr1を見た場合において、発生する半遮蔽領域(片眼でしか観察できない範囲)を説明するための図である。具体的には、図5は、上方から見た場合における、ユーザーの左眼視点VP、右眼視点VP、鏡Mrr1、物体Obj1、物体Obj2、鏡Mrr1に写った物体Obj1の鏡像Obj1_mrr、鏡Mrr1に写った物体Obj2の鏡像Obj2_mrr、および、半遮蔽領域の位置関係を模式的に示した図である。
【0079】
図6は、ユーザーが両眼で電子ミラー用表示装置100の表示部1の表示スクリーン11を見た場合において、発生するける半遮蔽領域を説明するための図である。具体的には、図6は、上方から見た場合における、ユーザーの左眼視点VP、右眼視点VP、表示スクリーン11、遮光部2(第1遮光部21、第2遮光部22)、および、半遮蔽領域の位置関係を模式的に示した図である。
【0080】
図7は、ユーザーが両眼で電子ミラー用表示装置100の表示部1の表示スクリーン11を見た場合において、発生するける半遮蔽領域を説明するための図である。具体的には、図7は、上方から見た場合における、ユーザーの左眼視点VP、右眼視点VP、表示スクリーン11、遮光部2(第1遮光部21、第2遮光部22)、および、半遮蔽領域の位置関係を模式的に示した図である。さらに、図7では、表示部1の表示スクリーン11に表示される画像(映像)において、両眼で知覚される領域と、半遮蔽領域とを明示した図を示している。
【0081】
まず、図5を用いて、鏡の場合における両眼の視点移動と、半遮蔽領域の移動との関係について、説明する。
【0082】
図5の左図の場合(図5の左図に示した状態を「状態A」という)について、説明する。図5の左図の場合、左眼視点VP(stateA)と、右眼視点VP(stateA)との中点と、鏡Mrr1の中心点とを結ぶ直線が、鏡Mrr1の中心点を通る、鏡面の法線と一致しているとする。この場合(状態Aの場合)、図5の左図において、L_hs(stateA)で示した領域、および、R_hs(stateA)で示した領域が、半遮蔽領域となる。つまり、状態Aの場合、左側の半遮蔽領域L_hs(stateA)は、左眼では観察できず、右眼のみで観察できる領域であり、右側の半遮蔽領域R_hs(stateA)は、右眼では観察できず、左眼のみで観察できる領域である。
【0083】
なお、状態Xの場合の左眼視点、右眼視点、左側の半遮蔽領域、右側の半遮蔽領域を、それぞれ、VP(stateX)、VP(stateX)、L_hs(stateA)、R_hs(stateA)と表記する(以下、同様)。
【0084】
図5の右図は、図5の左図の場合(状態A)において、視点を右方向に移動させた場合の状態(この状態を「状態B」という)を示している。図5の右図から分かるように、視点を右方向に移動させると、半遮蔽領域は、視点の移動方向とは逆方向(図5の場合、右方向)に移動する。
【0085】
つまり、ユーザーが鏡に映った像(鏡像)を見る場合、ユーザーの両眼の視点を鏡面に対して平行な方向に移動させると、半遮蔽領域は、両眼の視点の移動方向の反対の方向に移動する。そして、両眼の視点の移動に応じて半遮蔽領域が移動することを知覚することで、人間は、鏡に映った像(鏡像)の奥行き感を認識することができる。
【0086】
次に、図6を用いて、電子ミラー用表示装置100の場合における両眼の視点移動と、半遮蔽領域の移動との関係について、説明する。
【0087】
図6の左図の場合(図6の左図に示した状態を「状態1」という)について、説明する。図6の左図の場合、左眼視点VP(state1)と、右眼視点VP(state1)との中点と、表示スクリーン11の中心点とを結ぶ直線が、表示スクリーン11の中心点を通る、表示面の法線と一致しているとする。この場合(状態1の場合)、遮光部2(第1遮光部21、第2遮光部22)により、左眼視点VP(state1)による視野と、右眼視点VP(state1)による視野が制限されるため、図6の左図において、L_hs(state1)で示した領域、および、R_hs(state1)で示した領域が、半遮蔽領域となる。つまり、状態1の場合、左側の半遮蔽領域L_hs(state1)は、左眼では観察できず、右眼のみで観察できる領域であり、右側の半遮蔽領域R_hs(state1)は、右眼では観察できず、左眼のみで観察できる領域である。
【0088】
図6の右図は、図6の左図の場合(状態1)において、視点を右方向に移動させた場合の状態(この状態を「状態2」という)を示している。図6の右図から分かるように、視点を右方向に移動させると、半遮蔽領域は、視点の移動方向とは逆方向(図6の場合、右方向)に移動する。
【0089】
つまり、ユーザー(例えば、運転手Drv1)が電子ミラー用表示装置100の表示部1の表示スクリーン11に表示されている画像(映像)を見る場合、ユーザーの両眼の視点を表示スクリーン11の表示面に対して平行な方向に移動させると、半遮蔽領域は、両眼の視点の移動方向の反対の方向に移動する。
【0090】
そして、両眼の視点の移動に応じて半遮蔽領域が移動することを知覚することで、ユーザー(例えば、運転手Drv1)は、電子ミラー用表示装置100の表示部1の表示スクリーン11に表示されている画像(映像)の奥行き感(画像(映像)に写っている物体の奥行き感)を認識することができる。
【0091】
遮光部2を設けない場合において、ユーザー(例えば、運転手Drv1)が両眼で表示スクリーン11に表示されている画像(映像)を見ても半遮蔽領域が発生せず、さらに、両眼の視点を移動させても、半遮蔽領域の移動が生じない。このため、ユーザー(例えば、運転手Drv1)が両眼で表示スクリーン11に表示されている画像(映像)中の物体を知覚する感覚と、ユーザーがバックミラー等の鏡に写った像(鏡像)を見ている感覚とは大きく異なる。つまり、ユーザー(例えば、運転手Drv1)が両眼で表示スクリーン11に表示されている画像(映像)中の物体を知覚する場合、ユーザーがバックミラー等の鏡に写った像(鏡像)を見るときに、両眼の視点の移動に伴う半遮蔽領域の移動がないため、違和感が生じる。
【0092】
それに対して、電子ミラー用表示装置100は、遮光部2を備えており、遮光部2により、ユーザーが鏡を見ているときと同様に、両眼の視点の移動に伴い、半遮蔽領域が移動する。このため、ユーザー(例えば、運転手Drv1)が電子ミラー用表示装置100の表示スクリーン11に表示されている画像(映像)中の物体を知覚する場合、ユーザーがバックミラー等の鏡に写った像(鏡像)を見るときと同様に、両眼の視点の移動に伴って半遮蔽領域が移動するため、自然な奥行き感を認識できる。その結果、電子ミラー用表示装置100では、ユーザーが表示スクリーン11を見たときの違和感を劇的に低減させることができる。
【0093】
図7に示すように、図7の左図の場合(図7の左図に示した状態を「状態3」という)における両眼の視点を図7の右方向に移動させて、図7の右図の状態(この状態を「状態4」という)となった場合、ユーザーがバックミラー等の鏡に写った像(鏡像)を見るときと同様に、両眼の視点の移動方向と逆方向に半遮蔽領域が移動する。つまり、表示スクリーン11に表示されている画像(映像)上の半遮蔽領域、両眼で視覚できる領域も、視点の移動に伴って、図7に示すように移動する。なお、図7において、状態3における表示スクリーン11に表示されている画像(映像)上の左側の半遮蔽領域、右側の半遮蔽領域、および、両眼で視覚できる領域を、それぞれ、L’_hs(state3)、R’_hs(state3)、および、RL(state3)と表記し、状態4における表示スクリーン11に表示されている画像(映像)上の左側の半遮蔽領域、右側の半遮蔽領域、および、両眼で視覚できる領域を、それぞれ、L’_hs(state4)、R’_hs(state4)、および、RL(state4)と表記している。
【0094】
図7からも分かるように、電子ミラー用表示装置100では、表示スクリーン11の手前に遮光部2(第1遮光部21、第2遮光部22)を設けることで、擬似的に半遮蔽領域を発生させることができる。そして、電子ミラー用表示装置100では、遮光部2を設けることにより発生させた半遮蔽領域が、両眼の視点の移動に応じて、鏡に映った像(鏡像)を見ているときと同様に移動するため、表示スクリーン11に表示されている画像(映像)を見たときの違和感が劇的に低減される。
【0095】
以上のように、電子ミラー表示システム1000では、電子ミラー用表示装置100において表示スクリーン11の手前に遮光部2(第1遮光部21、第2遮光部22)を設けるだけで、表示スクリーン11に表示されている画像(映像)を見たときの違和感が劇的に低減できる。すなわち、電子ミラー用表示装置100では、従来技術のように、複雑な処理を実行することなく、また、高性能な装置(高価な装置)を設置することなく、簡便な機構で、ユーザーが表示スクリーンを見たときの違和感を低減させることができる。
【0096】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について、説明する。なお、上記実施形態と同様の部分については、同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0097】
図8は、第2実施形態に係る電子ミラー用表示装置200の概略構成図である。具体的には、図8は、電子ミラー用表示装置200の上面図、正面図、および、A-A線による断面図を示している。
【0098】
図9は、(1)ユーザーが両眼で第1実施形態の電子ミラー用表示装置100の表示部1の表示スクリーン11を見た場合(状態5)と、(2)ユーザーが両眼で第2実施形態の電子ミラー用表示装置200の表示部1の表示スクリーン11を見た場合(状態6)とを模式的に示した図である。具体的には、図9は、上方から見た場合における、ユーザーの左眼視点VP、右眼視点VP、表示スクリーン11、遮光部2(第1遮光部21、第2遮光部22)、および、光学距離延長部3の位置関係を模式的に示した図である。さらに、図9では、表示部1の表示スクリーン11に表示される画像(映像)において、両眼で知覚される領域と、半遮蔽領域とを明示した図を示している。
【0099】
図10は、表示部1の表示スクリーン11と、複数のミラーにより光学距離を延長する機構とを模式的に示した図である。具体的には、図10の上図は、上方から見たときのユーザーの視点と、表示部1の表示スクリーン11と、複数のミラーにより光学距離を延長する機構との位置関係を示している。図10の下図は、側方から見たときのユーザーの視点と、表示部1の表示スクリーン11と、複数のミラーにより光学距離を延長する機構との位置関係を示している。なお、図10では、説明便宜のため、片方の視点(図10では、右眼の視点VP)からの光路のみを示している。
【0100】
第2実施形態の電子ミラー表示システムでは、第1実施形態の電子ミラー表示システム1000において、電子ミラー用表示装置100を電子ミラー用表示装置200に置換した構成を有している。
【0101】
第2実施形態の電子ミラー用表示装置200は、図8に示すように、第1実施形態の電子ミラー用表示装置100において、光学距離延長部3を追加した構成を有している。
【0102】
光学距離延長部3は、光学距離を延長する部材であり、例えば、(1)1または複数のレンズから構成される光学系、あるいは、(2)1または複数のレンズから構成される光学系と、1または複数の反射鏡とを組み合わせた機構により実現される。光学距離延長部3は、図8に示すように、遮光部2(第1遮光部21、第2遮光部22)と、表示スクリーン11との間に設置されている。
【0103】
光学距離延長部3は、ユーザーの両眼の視点の位置と、表示スクリーン11との位置関係が同じ場合に、表示スクリーン11の表示面上における半遮蔽領域、および、両眼で視覚できる領域が略同一となり、かつ、表示スクリーン11と遮光部2との間の距離が短くなるように、光学距離を延長する部材である。
【0104】
例えば、図8に示すように、状態5と状態6とで、ユーザーの両眼の視点と表示スクリーン11との位置関係は同じである場合、図8の右図に示すように、光学距離延長部3を表示スクリーン11と遮光部2(第1遮光部21、第2遮光部22)との間に設置する。つまり、図8の右図に示すように、光学距離延長部3により、両眼の視点から離れる方向に光学距離が延長されるので、以下のことを実現できる。
(1)表示スクリーン11と遮光部2との間の距離(図9の右図の距離w2)を短くすることができる。
(2)状態6において、ユーザーが両眼の視点VP(state6)、VP(state6)から、表示スクリーン11を見たときの表示スクリーン11の表示面上における半遮蔽領域L’_hs(state6)、R’_hs(state6)、および、両眼で視覚できる領域RL(state6)と、状態5において、ユーザーが両眼の視点VP(state5)、VP(state5)から、表示スクリーン11を見たときの表示スクリーン11の表示面上における半遮蔽領域L’_hs(state5)、R’_hs(state5)、および、両眼で視覚できる領域RL(state5)とを同様にすることができる。
【0105】
以上のように、本実施形態の電子ミラー表示システムでは、電子ミラー用表示装置200において、光学距離延長部3をさらに設けたので、ユーザーの両眼の視点からの光学距離を延長でき、その結果、表示スクリーン11と遮光部2との距離を短くできる。したがって、電子ミラー用表示装置200では、電子ミラー用表示装置100と同様の機能を実現しつつ、電子ミラー用表示装置100よりも小さいサイズにすることができる。
【0106】
なお、上記では、光学距離延長部3が、1または複数のレンズから構成される光学系を想定しているが、これに限定されず、光学距離延長部3として、例えば、反射鏡を用いて、光学距離を延長する機構を採用してもよい。例えば、図10に示すように、光学距離延長部3として、複数枚の反射鏡(図10では、第1ミラー、第2ミラー)を用いて光学距離を延長する機構を採用してもよい。また、光学距離延長部3は、1または複数の反射鏡と、1または複数のレンズからなる光学系とを組み合わせて実現されるものであってもよい。
【0107】
[他の実施形態]
上記実施形態では、表示部1の表示スクリーン11の表示面が平面である場合を想定しているが、これに限定されることはなく、例えば、表示スクリーン11は、表示面が湾曲しているものであってもよい。これについて、図11を用いて説明する。
【0108】
図11は、ユーザーが両眼で電子ミラー用表示装置の表示部1の表示スクリーン11を見た場合を模式的に示した図である。具体的には、図11は、上方から見た場合における、ユーザーの左眼視点VP、右眼視点VP、平面でない表示面を有する表示スクリーン11、および、遮光部2(第1遮光部21、第2遮光部22)の位置関係を模式的に示した図である。
【0109】
表示部1の表示スクリーン11は、例えば、上方から見た場合に、図11に示すように、表示面が湾曲しているものであってもよい。また、この場合において、遮光部2も図11に示すように、上方から見た場合において、湾曲しているものであってもよい。本発明の電子ミラー用表示装置は、図11の表示スクリーン11の表示面の中心点をPcとし、点Pcにおける接平面をTngt_plane1とし、接平面Tngt_plane1の点Pcを通る法線をNorm(Tngt_plane1)とすると、法線Norm(Tngt_plane1)の無限遠から見たときに、表示スクリーン11の表示面の端部を覆う領域(図11の領域AR_L、および、領域AR_R)が生じるように、遮光部2が設けられるものであれば、いずれの形態をとるものであってもよい。
【0110】
また、遮光部2についても、上記の形状、大きさ、構成要素数、配置等に限定されることはなく、ユーザーが両眼で表示スクリーン11を見たときに半遮蔽領域を発生させるものであれば、他の形態のものであってもよい。
【0111】
また、遮光部2と表示スクリーン11との離間距離は、ユーザーが両眼で表示スクリーン11を見たときに半遮蔽領域を発生させる距離であればいずれの距離でもよい。なお、遮光部2と表示スクリーン11との離間距離は、例えば、数センチメートル以上の距離とすることが好ましい。
【0112】
また、上記実施形態では、遮光部2が第1遮光部21および第2遮光部22から構成される場合について説明したが、これに限定されることはない。遮光部2は、例えば、中央部に開口を有する枠状の形状を有するものであってもよい。
【0113】
図12に、他の実施形態に係る電子ミラー用表示装置の概略構成図を示す。遮光部2は、図12に示すように、中央部に開口を有する枠状の形状を有するものであってもよい。
【0114】
この場合、図12に示すように、遮光部2は、表示スクリーン11の左端部を覆う位置に配置される第1遮光部2aと、表示スクリーン11の右端部を覆う位置に配置される第2遮光部2bと、表示スクリーン11の上端部を覆う位置に配置される第3遮光部2cと、表示スクリーン11の下端部を覆う位置に配置される第4遮光部2dと、から構成される。図12に示した遮光部2では、上下方向の視線の動きに対しても、表示スクリーン11上の画像(映像)の見える領域(知覚できる領域)が、鏡を見たときと同様に変化する。このため、ユーザーが上下方向に視線を動かした場合においても、ユーザーが表示スクリーン11を見たときの違和感を低減できる。
【0115】
また、図12に示した構成において、第2実施形態と同様に、光学距離延長部3を、表示スクリーン11と遮光部2との間に追加してもよい。
【0116】
また、上記では、自動車のバックミラーの代わりに設置されるバックモニターを想定した場合について、説明したが、これに限定されることはなく、鏡の代わりに、電子モニターを使用する場合であれば、いずれに場合においても、本発明を適用することができる。
【0117】
また、上記実施形態で説明した電子ミラー表示システム、電子ミラー用表示装置において、各ブロックは、LSIなどの半導体装置により個別に1チップ化されても良いし、一部又は全部を含むように1チップ化されても良い。
【0118】
なお、ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0119】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサーを利用しても良い。
【0120】
また、上記各実施形態の各機能ブロックの処理の一部または全部は、プログラムにより実現されるものであってもよい。そして、上記各実施形態の各機能ブロックの処理の一部または全部は、コンピュータにおいて、中央演算装置(CPU)により行われる。また、それぞれの処理を行うためのプログラムは、ハードディスク、ROMなどの記憶装置に格納されており、ROMにおいて、あるいはRAMに読み出されて実行される。
【0121】
また、上記実施形態の各処理をハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェア(OS(オペレーティングシステム)、ミドルウェア、あるいは、所定のライブラリとともに実現される場合を含む。)により実現してもよい。さらに、ソフトウェアおよびハードウェアの混在処理により実現しても良い。
【0122】
例えば、上記実施形態の各機能部を、ソフトウェアにより実現する場合、図13に示したハードウェア構成(例えば、CPU、ROM、RAM、入力部、出力部等をバスBusにより接続したハードウェア構成)を用いて、各機能部をソフトウェア処理により実現するようにしてもよい。
【0123】
また、上記実施形態における処理方法の実行順序は、必ずしも、上記実施形態の記載に制限されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、実行順序を入れ替えることができるものである。
【0124】
前述した方法をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム及びそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、本発明の範囲に含まれる。ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD-ROM、MO、DVD、DVD-ROM、DVD-RAM、大容量DVD、次世代DVD、半導体メモリを挙げることができる。
【0125】
上記コンピュータプログラムは、上記記録媒体に記録されたものに限られず、電気通信回線、無線又は有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク等を経由して伝送されるものであってもよい。
【0126】
なお、本発明の具体的な構成は、前述の実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更および修正が可能である。
【符号の説明】
【0127】
1000 電子ミラー表示システム
100、200 電子ミラー用表示装置
1 表示部
11 表示スクリーン
2 遮光部
21 第1遮光部
22 第2遮光部
3 光学距離延長部
Cam1 撮像装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13