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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/64 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
H01R13/64
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019190393
(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公開番号】P2021068498
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】奈良間 俊祐
【審査官】鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-018737(JP,A)
【文献】特開2017-152272(JP,A)
【文献】特開2017-098222(JP,A)
【文献】特開2015-011833(JP,A)
【文献】特開2016-171002(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0147901(US,A1)
【文献】中国実用新案第209088165(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/56-13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手ハウジングが外嵌される嵌合面のCPAストッパ壁側壁面の嵌合検知部材が搭載される側に前記相手ハウジングが係止するロック部を備えたコネクタハウジングと、
前記CPAストッパ壁側壁面よりも前記ロック部に接近する位置で前記コネクタハウジングに形成され、前記嵌合検知部材が仮係止位置から本係止位置へ摺動される検知部材搭載面と、
前記嵌合検知部材から前記CPAストッパ壁側壁面の前記ロック部に接近する側に延出した延出自由端に設けられた係合突部が、前記仮係止位置では前記ロック部に当接するアーム部と、
を備え、
前記CPAストッパ壁側壁面は、前記コネクタハウジングの長手方向に延びて前記コネクタハウジングの長手方向の前記相手ハウジングと嵌合する側で開放する凹溝の底面として前記検知部材搭載面に形成されることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記アーム部の前記係合突部が、前記コネクタハウジングの長手方向に延びる前記凹溝の相手ハウジング側とは反対となる端に位置する前記CPAストッパ壁側壁面と前記検知部材搭載面の境界に形成される段差部に対して、前記コネクタハウジングの長手方向の相手ハウジング側に配置されることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
相手コネクタとの正規嵌合を検知して保証する嵌合検知部材(CPA:Connector Position Assurance)を備えるコネクタが知られている(例えば特許文献1等)。
図9に、特許文献1に開示される従来の電気コネクタ501の分解斜視図を示す。電気コネクタ501は、嵌合検知部材(CPA装置とも称す)503に加え、端子位置保証(TPA:Terminal Position Assurance)装置を備える。
【0003】
端子位置保証装置(TPA装置とも称す)505は、コネクタハウジング507の空洞部509の中で端子挿入位置から端子係止位置まで移動可能となっている。TPA装置505は、端子係止位置にあるときに、電気端子511の係止表面に係合し、電気端子511を空洞部509の中に固定する。一方、CPA装置503は、コネクタと相手コネクタ(図示略)が結合完了したときに仮係止位置から本係止位置(嵌合保証位置)に移動が可能となる。
【0004】
CPA装置503は、仮係止位置において、係止部513がコネクタハウジング507の係止突起515に係止される。また、アーム部517の係合突部519がコネクタハウジング507に係合されることで本係止位置への移動が規制される。一方、CPA装置503は、コネクタハウジング507に相手ハウジングが嵌合されると、相手ハウジングのロック爪等がアーム部517の係合突部519を押下し、コネクタハウジング507との係合が解除されて本係止位置へ移動できる。これにより、CPA装置503は、本係止位置に至ることをもって、コネクタハウジング507に相手ハウジングが正規嵌合されたことを検知することができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-98222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、CPA装置503は、アーム部517の可動スペースが十分に確保できていない場合、ロック爪等が係合突部519を押下した際、コネクタハウジング507との係合がスムーズに解除できず、本係止状態に移行しにくくなったり、移行できなくなったりする可能性があった。
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、嵌合保証位置への移行操作を円滑に行うことができるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 相手ハウジングが外嵌される嵌合面のCPAストッパ壁側壁面の嵌合検知部材が搭載される側に前記相手ハウジングが係止するロック部を備えたコネクタハウジングと、前記CPAストッパ壁側壁面よりも前記ロック部に接近する位置で前記コネクタハウジングに形成され、前記嵌合検知部材が仮係止位置から本係止位置へ摺動される検知部材搭載面と、前記嵌合検知部材から前記CPAストッパ壁側壁面の前記ロック部に接近する側に延出した延出自由端に設けられた係合突部が、前記仮係止位置では前記ロック部に当接するアーム部と、を備え、前記CPAストッパ壁側壁面は、前記コネクタハウジングの長手方向に延びて前記コネクタハウジングの長手方向の前記相手ハウジングと嵌合する側で開放する凹溝の底面として前記検知部材搭載面に形成されることを特徴とするコネクタ。
【0009】
上記(1)の構成のコネクタによれば、相手ハウジングを係止するロック部は、相手ハウジングが外嵌されるコネクタハウジングの嵌合面側上面の上方に設けられる。即ち、コネクタハウジングは、嵌合面側上面から上方に離間した位置にロック部が配置されている。
コネクタハウジングに装着される嵌合検知部材は、相手コネクタとの正規嵌合を検知して保証する部材である。コネクタハウジングに装着された嵌合検知部材は、仮係止位置から本係止位置に至ることをもって、コネクタハウジングに相手ハウジングが正規嵌合されたことを検知する。
コネクタハウジングは、この嵌合検知部材が仮係止位置から本係止位置へ摺動して案内される検知部材搭載面を有する。この検知部材搭載面は、嵌合面側上面よりもロック部に接近する方向の高い位置でコネクタハウジングに形成されている。
検知部材搭載面に装着された嵌合検知部材は、嵌合面側上面の上方に延出するアーム部を有する。アーム部は、延出自由端に係合突部が設けられている。嵌合検知部材は、このアーム部の係合突部がロック部に当接することにより、本係止位置への摺動が規制されて検知部材搭載面の仮係止位置に保持される。
嵌合検知部材は、相手ハウジングがコネクタハウジングに嵌合されると、相手ハウジングのロック爪によりロック部に当接している係合突部が押下される。ロック爪に押下された係合突部は、本係止位置への摺動規制が解除されて、本係止位置へ移動が可能となる。これにより、相手ハウジングのロック爪が、コネクタハウジングのロック部を確実に係止したことが検出される。
ロック部に対する係止が解除された係合突部は、嵌合検知部材の本係止位置への移動に伴い、ロック部の下面に摺接しながら、アーム部をロック部からの反力により下方へ弾性変形させる。即ち、アーム部の延出自由端が、嵌合面側上面に接近する方向に変位する。このとき、嵌合検知部材は、嵌合面側上面よりも高い位置の検知部材搭載面に装着されているので、嵌合面側上面と検知部材搭載面とが同一平面である場合に比べ、アーム部の下方に確保される弾性変位空間が大きくなる。
その結果、アーム部の可動スペースが十分に確保でき、延出自由端が嵌合面側上面に接触して本係止状態に移行しにくくなったり、移行できなくなったりすることが抑制される。
また、本構成のコネクタは、嵌合面側上面と検知部材搭載面とからなる段違いの面が、コネクタハウジングの内方のみに設定されているので、コネクタハウジングの外形を変化させずに済む。これにより、コネクタは、従来同様の設置スペースや、他部材との取り合いを踏襲しながら(即ち、設計変更等を必要とせずに)、嵌合検知機能の操作性、信頼性を向上させることができる。
【0010】
(2) 前記アーム部の前記係合突部が、前記コネクタハウジングの長手方向に延びる前記凹溝の相手ハウジング側とは反対となる端に位置する前記CPAストッパ壁側壁面と前記検知部材搭載面の境界に形成される段差部に対して、前記コネクタハウジングの長手方向の相手ハウジング側に配置されることを特徴とする上記(1)に記載のコネクタ。
【0011】
上記(2)の構成のコネクタによれば、アーム部の係合突部が、嵌合面側上面と検知部材搭載面の段差部よりも、嵌合検知部材が本係止位置へ摺動される方向の前側に配置される。例えば、アーム部は、検知部材搭載面に装着された嵌合検知部材よりも前方に延出した片持ち梁状に形成でき、弾性を付与しやすい構造とすることができる。そして、嵌合検知部材から延出したアーム部の延出自由端が、嵌合面側上面の上方に配置されることから、アーム部の可動スペースに、段差部による高低差を確実に加えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るコネクタによれば、嵌合保証位置への移行操作を円滑に行うことができる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るコネクタの分解斜視図である。
図2図1に示したコネクタの縦断面図である。
図3図1に示したコネクタハウジングの縦断面斜視図である。
図4図1に示したコネクタハウジングを後方より見た斜視図である。
図5】端子挿入途中におけるコネクタの縦断面図である。
図6】端子の挿入が完了したコネクタの縦断面図である。
図7】嵌合検知部材のアーム部の動作を説明するコネクタの縦断面図である。
図8】嵌合検知部材が本係止位置に移動したコネクタの縦断面図である。
図9】CPA装置を含む従来の電気コネクタの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るコネクタ11の分解斜視図である。図2は、図1に示したコネクタ11の縦断面図である。
本実施形態に係るコネクタ11は、コネクタハウジング13と、検知部材搭載面15と、アーム部17とを主要な構成として有する。
【0016】
コネクタハウジング13は、電気絶縁性を有する合成樹脂材により略直方体の外形状を有して一体成形される。コネクタハウジング13は、長手方向の一方の面が、相手ハウジング(図示略)と嵌合する側の前面となり、その反対側の他方の面が、装着する端子19(図5参照)を挿入する後面となる。コネクタハウジング13は、長手方向に直交する一方が、相手ハウジングとの嵌合を固定するロックアーム21を備えた上面となり、長手方向に直交する他方が、下面となる。また、コネクタハウジング13は、長手方向及び上下方向に直交し、かつコネクタハウジング13から前方を向いたときの左右が側面となる。
【0017】
コネクタハウジング13の前面には、相手ハウジングに収容された例えば雄端子(図示略)を受け入れる複数の端子受入口23が縦横に開口する。
【0018】
なお、ここで、雄端子を収容する相手コネクタは、雄コネクタである。この場合、コネクタハウジング13に装着される端子19は、雄端子と電気的に接触する雌端子となる。雌端子を収容するコネクタ11は、雌コネクタである。なお、コネクタ11は、雄端子を収容する雄コネクタとしてもよく、この場合、相手コネクタは、雌コネクタとなる。
【0019】
端子受入口23は、例えば左右方向に5つ、上下方向に2段の合計10個が設けられている。この端子受入口23のそれぞれは、コネクタハウジング13の内方に画成される端子収容室25に通じ、それぞれの端子収容室25は、後面で端子挿入口27(図4参照)となって開口する。つまり、コネクタハウジング13には、10個の端子収容室25が形成される。なお、端子収容室25の数や配列はこれに限定されない。
【0020】
コネクタハウジング13の前面には、端子位置保証(TPA:Terminal Position Assurance)装置としてのフロントホルダ29が装着される。フロントホルダ29は、それぞれの端子受入口23と連なって通じる連通口31を有する。相手コネクタの雄端子は、この連通口31を介して端子受入口23に挿入される。フロントホルダ29には、それぞれの端子収容室25に挿入される複数のランス接触板33が突出する。ランス接触板33は、フロントホルダ29が前面に装着されると、それぞれの端子収容室25に設けられた弾性可撓係止片(ランスとも称す)35に接触する。
【0021】
フロントホルダ29は、コネクタハウジング13の前面に挿入されると、端子19に正規に係止して配置された弾性可撓係止片35により形成される退避空間37に、ランス接触板33を挿入する。弾性可撓係止片35は、端子収容室25に挿入された端子19に不完全係止のとき、一部が退避空間37に突出する。そうすると、前面に挿入されたフロントホルダ29は、ランス接触板33が弾性可撓係止片35に干渉して装着が不能となる。これにより、フロントホルダ29は、装着不能となることにより、端子19が不完全係止であることを検知可能とする。また、フロントホルダ29は、全ての弾性可撓係止片35が端子19を完全に係止していると、前面への装着が完了する。前面に装着されたフロントホルダ29は、ランス接触板33が退避空間37に嵌入することにより、弾性可撓係止片35の係止解除方向の移動を規制して、端子19を二重に抜け止めするようにも作用する。
【0022】
コネクタハウジング13は、相手ハウジングが外嵌される嵌合面側上面39の上方に、相手ハウジングが係止するロック部41を備える。ロック部41は、ロックアーム21に設けられる。ロックアーム21は、基端がコネクタハウジング13の前部に接続し、上向き後方に向かって延出した片持ち梁状に形成される。従って、ロックアーム21の延出端は自由端となって上下に弾性変位可能となっている。ロックアーム21は、一対の平行な側板部43(図1参照)が架橋部45と、自由端側の操作部47とに連結されて形成される。ロック部41は、架橋部45と操作部47の間で、一対の側板部43に渡って形成されている。
【0023】
コネクタ11は、コネクタハウジング13の後面に、検知部材装着部49を開口する。コネクタハウジング13は、検知部材装着部49の前方に、CPAストッパ壁51が起立して形成される。この検知部材装着部49には、相手コネクタとの正規嵌合を検知して保証する嵌合検知部材(CPA:Connector Position Assurance)が装着される。この嵌合検知部材(CPA装置とも称す)53は、検知部材装着部49において、仮係止位置(図5に示す位置)から本係止位置(図8に示す位置)へ移動される。
【0024】
図3は、図1に示したコネクタハウジング13の縦断面斜視図である。
CPA装置53は、検知部材装着部49の検知部材搭載面15に摺動して案内されることにより、仮係止位置から本係止位置へ移動される。検知部材搭載面15は、コネクタハウジング13の後面から更に後方へ延出した突出板部55の上側面となる。検知部材搭載面15は、嵌合面側上面39よりもロック部41に接近する方向の高い位置でコネクタハウジング13に形成されている。嵌合面側上面39と検知部材搭載面15との間には、段差部57が形成されている。即ち、コネクタハウジング13は、段差部57を挟み、検知部材搭載面15よりも低い位置で、嵌合面側上面39が配置される。この場合、嵌合面側上面39は、コネクタハウジング13の前面で開放する凹溝として形成されていてもよい。
【0025】
図4は、図1に示したコネクタハウジング13を後方より見た斜視図である。
検知部材搭載面15の中央後部には、係止突起59が突設される。この係止突起59は、CPA装置53の後部下面に形成される係止部61を係止する。係止突起59に係止部61が係止されたCPA装置53は、検知部材装着部49からの後抜けが規制される。
【0026】
図1に示すように、CPA装置53は、左右に長い矩形状の底板部63の両側に一対の平行な起立壁部65が形成される。底板部63は、後縁の下面が切り欠かれて上記係止部61となる。起立壁部65の上端には、進退操作部67が架橋される。底板部63は、両側が起立壁部65よりも外側に突出した凸板部69となる。進退操作部67は、両側が起立壁部65よりも外側に突出して垂下する垂下部71を有する。垂下部71と起立壁部65との間には、下方に開口する係合溝73が形成される。
【0027】
CPA装置53は、進退操作部67が手指により把持されて底板部63が検知部材搭載面15に摺動される。CPA装置53は、一対の凸板部69が、検知部材装着部49の内面に形成された一対の案内溝75(図4参照)にそれぞれ挿入される。また、CPA装置53は、一対の係合溝73が、検知部材装着部49の両側でコネクタハウジング13に起立する一対の案内壁77(図4参照)に係合する。
【0028】
CPA装置53は、CPA本体部79(図4参照)の底板部63から嵌合面側上面39の上方に延出自由端81が延出して形成されるアーム部17を有する。アーム部17は、延出自由端81の上側面に係合突部83が形成される。この係合突部83は、CPA装置53の仮係止位置でロック部41に当接する。
【0029】
アーム部17の係合突部83は、嵌合面側上面39と検知部材搭載面15の境界に形成される段差部57に対して、CPA装置53が本係止位置へ摺動される方向の前側に配置される。従って、係合突部83が当接するロック部41も、段差部57よりも前側に配置されている。
【0030】
次に、コネクタ11の組付け手順を説明する。
図5は、端子挿入途中におけるコネクタ11の縦断面図である。
コネクタ11は、フロントホルダ29が未挿入とされたコネクタハウジング13において、電線85の末端に取り付けられた端子19が、端子挿入口27より各端子収容室25に挿入される。端子19は、所定の位置に挿入されると、弾性復帰した弾性可撓係止片35が弾接して後抜けが規制される。このとき、CPA装置53は、係止部61が係止突起59に係止されるとともに、係合突部83がロック部41に当接(若しくはクリアランスを有して近接)した仮係止位置となっている。
【0031】
図6は、端子19の挿入が完了したコネクタ11の側断面図である。
全ての端子19が各端子収容室25に装着完了すると、フロントホルダ29がコネクタハウジング13の前面に装着される。フロントホルダ29は、ランス接触板33が退避空間37に嵌入することにより、弾性可撓係止片35の係止解除方向の移動を規制して、端子19を二重に抜け止めする。
【0032】
図7は、CPA装置53(嵌合検知部材)のアーム部17の動作説明図である。
コネクタ11は、相手コネクタが嵌合されると、相手コネクタのロック爪(図示略)がロック部41を押下し、ロックアーム21を押し下げる。相手コネクタのロック爪は、嵌合が完了すると、コネクタハウジング13の後面に向かってロック部41を通過する。すると、ロックアーム21は、弾性復帰してロック部41がロック爪を係止し、相手コネクタとコネクタ11とが嵌合状態で固定(ロック)される。
【0033】
このとき、ロック部41を通過したロック爪は、係合突部83を下方向(矢印U方向)に押下する。アーム部17は、係合突部83が押下されると、延出自由端81が円弧状の軌跡を描いてR方向に揺動される。これにより、CPA装置53のアーム部17は、ロック部41との係合が解除され、本係止位置への移動が可能となる。
【0034】
図8は、CPA装置53(嵌合検知部材)が本係止位置に移動したコネクタ11の縦断面図である。
検知部材搭載面15を前方に摺動されたCPA装置53は、アーム部17の係合突部83がロック部41の下面に摺接する。アーム部17は、係合突部83がロック部41を通過すると、弾性復元力により上方へ揺動し、上側の面がロック部41に当接する。CPA装置53は、CPA本体部79が、CPAストッパ壁51に当接することで、本係止位置への移動が完了する。
【0035】
次に、上記した構成の作用を説明する。
本実施形態に係るコネクタ11では、相手ハウジングを係止するロック部41は、相手ハウジングが外嵌されるコネクタハウジング13の嵌合面側上面39の上方に設けられる。即ち、コネクタハウジング13は、嵌合面側上面39から上方に離間した位置にロック部41が配置されている。
【0036】
コネクタハウジング13に装着されるCPA装置53は、相手コネクタとの正規嵌合を検知して保証する部材である。コネクタハウジング13に装着されたCPA装置53は、仮係止位置から本係止位置に至ることをもって、コネクタハウジング13に相手ハウジングが正規嵌合されたことを検知する。
【0037】
コネクタハウジング13は、このCPA装置53が仮係止位置から本係止位置へ摺動して案内される検知部材搭載面15を有する。この検知部材搭載面15は、嵌合面側上面39よりもロック部41に接近する方向の高い位置でコネクタハウジング13に形成されている。
【0038】
検知部材搭載面15に装着されたCPA装置53は、嵌合面側上面39の上方に延出するアーム部17を有する。アーム部17は、延出自由端81に係合突部83が設けられている。CPA装置53は、このアーム部17の係合突部83がロック部41に当接することにより、本係止位置への摺動が規制されて検知部材搭載面15の仮係止位置に保持される。
【0039】
CPA装置53は、相手ハウジングがコネクタハウジング13に嵌合されると、相手ハウジングのロック爪によりロック部41に当接している係合突部83が押下される。ロック爪に押下された係合突部83は、本係止位置への摺動規制が解除されて、本係止位置へ移動が可能となる。これにより、相手ハウジングのロック爪が、コネクタハウジング13のロック部41に確実に係止したことが検出される。
【0040】
ロック部41に対する係止が解除された係合突部83は、CPA装置53の本係止位置への移動に伴い、ロック部41の下面に摺接しながら、アーム部17をロック部41から反力により下方へ弾性変形させる。即ち、アーム部17の延出自由端81が、嵌合面側上面39に接近する方向に変位する。
【0041】
このとき、CPA装置53は、嵌合面側上面39よりも高い位置の検知部材搭載面15に装着されているので、嵌合面側上面39と検知部材搭載面15とが同一平面である場合に比べ、アーム部17の下方に確保される弾性変位空間が大きくなる。
【0042】
その結果、アーム部17の可動スペースが十分に確保でき、延出自由端81が嵌合面側上面39に接触して本係止状態に移行しにくくなったり、移行できなくなったりすることが抑制される。
【0043】
また、本実施形態のコネクタ11は、嵌合面側上面39と検知部材搭載面15とからなる段違いの面が、コネクタハウジング13の内方のみに設定されているので、コネクタハウジング13の外形を変化させずに済む。これにより、コネクタ11は、従来同様の設置スペースや、他部材との取り合いを踏襲しながら(即ち、設計変更等を必要とせずに)、嵌合検知機能の操作性、信頼性を向上させることができる。
【0044】
更に、本実施形態のコネクタ11では、アーム部17の係合突部83が、嵌合面側上面39と検知部材搭載面15の段差部57よりも、CPA装置53が本係止位置へ摺動される方向の前側に配置される。アーム部17は、検知部材搭載面15に装着されたCPA装置53よりも前方に延出した片持ち梁状に形成でき、弾性を付与しやすい構造とすることができる。そして、CPA装置53から延出したアーム部17の延出自由端81が、嵌合面側上面39の上方に配置されることから、アーム部17の可動スペースに、段差部57による高低差を確実に加えることができる。
【0045】
従って、本実施形態に係るコネクタ11によれば、嵌合保証位置への移行操作を円滑に行うことができる。
【0046】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0047】
ここで、上述した本発明に係るコネクタの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[2]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 相手ハウジングが外嵌される嵌合面側上面(39)の上方に前記相手ハウジングが係止するロック部(41)を備えたコネクタハウジング(13)と、
前記嵌合面側上面(39)よりも前記ロック部(41)に接近する方向の高い位置で前記コネクタハウジング(13)に形成され、嵌合検知部材(CPA装置53)が仮係止位置から本係止位置へ摺動される検知部材搭載面(15)と、
前記嵌合検知部材(CPA装置53)から前記嵌合面側上面(39)の上方に延出した延出自由端(81)に設けられた係合突部(83)が、前記仮係止位置では前記ロック部(41)に当接するアーム部(17)と、
を備えることを特徴とするコネクタ(11)。
[2] 前記アーム部(17)の前記係合突部(83)が、前記嵌合面側上面(39)と前記検知部材搭載面(15)の境界に形成される段差部(57)に対して、前記嵌合検知部材(CPA装置53)が前記本係止位置へ摺動される方向の前側に配置されることを特徴とする上記[1]に記載のコネクタ(11)。
【符号の説明】
【0048】
11…コネクタ
13…コネクタハウジング
15…検知部材搭載面
17…アーム部
39…嵌合面側上面
41…ロック部
53…CPA装置(嵌合検知部材)
57…段差部
81…延出自由端
83…係合突部
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9