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特許7398239チューブ状編組索巻回体で作製された複合材構造体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】チューブ状編組索巻回体で作製された複合材構造体
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/32 20060101AFI20231207BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20231207BHJP
   B29C 43/02 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B29C70/32
B29C70/06
B29C43/02
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019191628
(22)【出願日】2019-10-21
(65)【公開番号】P2020097224
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】16/179,324
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】アモール オーガル
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-153428(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0102578(US,A1)
【文献】特開平05-193030(JP,A)
【文献】特開2019-015399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/32
B29C 70/06
B29C 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材構造体の製造方法であって、
前記複合材構造体は、チューブ状編組索の巻回成形体を含み、前記チューブ状編組索は、一方向性テープ及び一方向性トウからなる群から選択され、前記一方向性テープは、一方向性繊維を含み、前記製造方法は、
前記チューブ状編組索を、巻回ツールに巻き付けて、チューブ状編組索の重ね巻部を有するチューブ状編組索巻回体を形成すること、及び
前記チューブ状編組索の重ね巻部を一体化することにより、前記チューブ状編組索巻回体から前記複合材構造体を形成すること、を含む、製造方法
【請求項2】
前記一方向性繊維は、樹脂で予備含浸されている、請求項1に記載の複合材構造体の製造方法
【請求項3】
前記樹脂は、熱硬化性又は熱可塑性である、請求項2に記載の複合材構造体の製造方法
【請求項4】
前記チューブ状編組索は、熱可塑性スリットテープ、室温で不粘着性である熱硬化性テープ、エポキシ又は熱可塑性バインダが塗布されたバインダ含浸ロービングプリプレグ、不粘着性の熱硬化性プリプレグ、又は、低粘着性の熱硬化性プリプレグからなる群から選択された材料で構成されている、請求項1~3のいずれかに記載の複合材構造体の製造方法
【請求項5】
前記チューブ状編組索は、成形中に、一体化及び加熱される、請求項1~4のいずれかに記載の複合材構造体の製造方法
【請求項6】
前記チューブ状編組索は、一体化の際、フラットに押し固められる、請求項5に記載の複合材構造体の製造方法
【請求項7】
前記チューブ状編組索は、一体化により中実の断面を有する、請求項6に記載の複合材構造体の製造方法
【請求項8】
前記中実の断面は、複数のプライで構成されている、請求項7に記載の複合材構造体の製造方法
【請求項9】
前記巻回ツールは、矩形、円形、楕円形、及び卵形のいずれかの断面形状を有している、請求項8に記載の複合材構造体の製造方法
【請求項10】
前記チューブ状編組索は、前記巻回ツールに巻き付いた螺旋状パターンに配置される、請求項9に記載の複合材構造体の製造方法
【請求項11】
前記巻回ツールは、前記複合材構造体により画定された開口部に対応する外面を有する、請求項9又は10に記載の複合材構造体の製造方法
【請求項12】
チューブ状編組索を用いて、複数のプライを有する複合材積層構造体を製造する方法であって、前記チューブ状編組索は、
前記複数のプライの各々について、2軸編組索内で同じ方向に配向された一方向性繊維を含み、
前記一方向性繊維は、熱可塑性スリットテープ、室温で不粘着性である熱硬化性テープ、エポキシ又は熱可塑性バインダが塗布されたバインダ含浸ロービングプリプレグ、不粘着性の熱硬化性プリプレグ、又は、低粘着性の熱硬化性プリプレグからなる群から選択された材料で構成されており
前記方法は、
前記チューブ状編組索を、巻回ツールに巻き付けて、チューブ状編組索の重ね巻部を有するチューブ状編組索巻回体を形成すること、及び
前記チューブ状編組索の重ね巻部を一体化することにより、前記チューブ状編組索巻回体から前記複合材構造体を形成すること、を含む、方法
【請求項13】
チューブ状編組索を複数のプライへと積層すること、及び、
前記チューブ状編組索の複数のプライを圧縮及び加熱することにより、前記チューブ状編組索の複数のプライを複合材構造体へと一体化させること、を含む複合材構造体を形成するための方法であって、
前記チューブ状編組索を複数のプライへと積層するのに先立って、一方向性テープ及び一方向性トウからなる群から選択される材料で前記チューブ状編組索を作製することをさらに含み、前記一方向性テープは、一方向性繊維で作製される、方法。
【請求項14】
巻回ツールの外面に前記チューブ状編組索を巻き付けて、前記チューブ状編組索の複数のプライとなる重ね巻部を有するチューブ状編組索巻回体を作製することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
複合材構造体のためのチューブ状編組索巻回体であって、螺旋状に巻かれたチューブ状編組索を含み、前記チューブ状編組索は、一方向性テープの編組索で形成されている、チューブ状編組索巻回体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合材構造体に関する。より具体的には、本開示は、チューブ状編組索巻回体(wound tubular braiding)で作製された複合材構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機で使用される複合材料の数は益々増えてきている。複合材料は、典型的には、ポリマー樹脂マトリクスに結合した強化繊維を含む。このような繊維は、一方向性の繊維であってもよい。これに代えて、繊維は、織布又はファブリックの形態であってもよい。繊維及びポリマー樹脂を配置して硬化させることにより、複合材構造体を形成することができる。航空機で使用可能な複合材料としては、例えば、航空機の窓やドアフレームが挙げられる。
【0003】
従来の処理により複合材構造体を作製する場合、様々な課題が存在する。例えば、円形又は楕円形の複合材部品の場合、レイアップを形成するために特別なレイアップ方式を採用しなくてはならない。このようなレイアップ方式は、多くの場合、既存の処理の制限を受ける。これらの既存の処理の例には、繊維配置マシンやファブリック作製マシンが含まれる。ただし、繊維配置マシンやファブリック作製マシンは、典型的には、完成品の具体的な構成や最終構造に合わせて特別に調節される。自動化された繊維配置又は織布に基づく現在の処理は、費用と時間がかかり、半径が小さい部品には適していない場合がある。
【0004】
一部の複合材部品は、その構造に穴や開口部が形成されていなければならない。例えば、航空機の窓フレームは開口部を画定している。開口部を有する複合材部品のために強化繊維を配向する作業は特に困難且つ面倒であろう。また、開口部を有する複合材部品を作製するために従来の製造処理を利用すると、比較的大量の材料が廃棄される場合がある。
【0005】
したがって、複合材構造体を作製するための現在の方法及びシステムは、意図された目的を達成することはできるが、複合材構造体を作製するために改良された新しいシステム及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
いくつかの態様によれば、複合材構造体が開示される。複合材構造体は、チューブ状編組索の巻回成形体を含む。
【0007】
本開示の他の態様においては、巻回成形された2軸編組索を含む複合材構造体が開示される。
【0008】
いくつかの態様によれば、2軸に編み組まれたチューブ状編組索を含む複合材構造体が開示される。
【0009】
本開示の他の態様においては、複数のプライを含む複合材積層構造体が開示される。複合材構造体は、複数のプライの各々について、同じ方向に配向された2軸編組繊維を含む。
【0010】
本開示のさらに他の態様においては、編組マシンが開示される。当該編組マシンは、マンドレルと、各々が前記マンドレルに対して相対移動可能である複数のスプールを有する編組機構と、前記複数のスプールの各々に巻き付けられた一方向テープと、ガイドリングと、制御モジュールと、を含む。前記ガイドリングは、対応するスプールに巻き付けられた一方向性テープを前記マンドレルに誘導する。前記制御モジュールは、前記編組機構と電子通信する。前記制御モジュールは、前記マンドレルに前記一方向性テープを配置してチューブ状編組索を作製するために、前記複数のスプールの動作を誘導するための命令を実行する。
【0011】
本開示のさらに他の態様においては、チューブ状編組索巻回体からなる複合材構造体を作製するための装置が開示される。前記装置は、外面を有するツールと、前記ツールの外面に前記チューブ状編組索を巻き付けて複合材プリフォームを作製するためのデバイスと、前記複合材プリフォームを一体化するための成形デバイスと、制御モジュールと、を含む。前記制御モジュールは、前記デバイス及び前記成形デバイスと電子通信する。前記制御モジュールは、前記ツールの外面に前記チューブ状編組索を巻き付けるように前記デバイスを誘導するための命令、及び、前記複合材プリフォームを一体化するために前記成形デバイスを動作させるための命令を実行する。
【0012】
いくつかの態様によれば、複合材構造体を形成するための方法が開示される。前記方法は、チューブ状編組索巻回体を成形して前記複合材構造体を形成することを含む。
【0013】
本開示のさらに他の態様においては、複合材プリフォームを作製するための方法が開示される。前記方法は、一方向性繊維を折り曲げることなく互いにずらしながら、当該一方向性繊維のチューブ状編組索を巻回することを含む。
【0014】
本開示の他の態様においては、チューブ状編組索を形成するための方法が開示される。前記方法は、一方向性テープを編み組んで前記チューブ状編組索を形成することを含む。
【0015】
本開示の他の態様においては、複合材構造体のためのチューブ状編組索巻回体が開示される。前記チューブ状編組索巻回体は、螺旋状に巻かれたチューブ状編組索を含む。
【0016】
本開示は、さらに以下の付記を含む。
【0017】
付記1.チューブ状編組索(22)の巻回成形体を含む、複合材構造体(26)。
【0018】
付記2.前記チューブ状編組索(22)は、一方向性テープ(32)及び一方向性トウからなる群から選択される、付記1に記載の複合材構造体(26)。
【0019】
付記3.前記一方向性テープ(32)は、一方向性繊維(54)を含む、付記2に記載の複合材構造体(26)。
【0020】
付記4.前記一方向性繊維(54)は、樹脂で予備含浸されている、付記3に記載の複合材構造体(26)。
【0021】
付記5.前記樹脂は熱硬化性である、付記4に記載の複合材構造体(26)。
【0022】
付記6.前記樹脂は熱可塑性である、付記4に記載の複合材構造体(26)。
【0023】
付記7.前記チューブ状編組索(22)は、熱可塑性スリットテープ、室温で実質的に不粘着性である熱硬化性テープ、エポキシ又は熱可塑性バインダが塗布されたバインダ含浸ロービングプリプレグ、実質的に不粘着性の熱硬化性プリプレグ、又は、低粘着性の熱硬化性プリプレグからなる群から選択された材料で構成されている、付記1~6のいずれかに記載の複合材構造体(26)。
【0024】
付記8.前記チューブ状編組索(22)は、成形中に、一体化及び加熱される、付記1~7のいずれかに記載の複合材構造体(26)。
【0025】
付記9.前記チューブ状編組索は、一体化の際、フラットに押し固められる、付記8に記載の複合材構造体(26)。
【0026】
付記10.前記チューブ状編組索(22)は、一体化により中実の断面を有する、付記9に記載の複合材構造体(26)。
【0027】
付記11.前記中実の断面は、複数のプライ(99)で構成されている、付記10に記載の複合材構造体(26)。
【0028】
付記12.前記チューブ状編組索(22)は、一体化の前に巻回ツール(18)に巻き付けられる、付記11に記載の複合材構造体(26)。
【0029】
付記13.前記チューブ状編組索(22)は、前記巻回ツール(18)に巻き付いた螺旋状パターンに配置される、付記12に記載の複合材構造体(26)。
【0030】
付記14.前記巻回ツール(18)は、前記複合材構造体(26)により画定された開口部(96)に対応する外面(62)を有する、付記12又は13に記載の複合材構造体(26)。
【0031】
付記15.前記チューブ状編組索(22)は、2軸編組索(56)である、付記1~14のいずれかに記載の複合材構造体(26)。
【0032】
付記16.前記チューブ状編組索(22)は、3軸編組索(58)である、付記1~14のいずれかに記載の複合材構造体(26)。
【0033】
付記17.前記チューブ状編組索(22)は、ポリマーマトリクスに埋め込まれた一方向性繊維(54)を含む、付記1~16の何れかに記載の複合材構造体(26)。
【0034】
付記18.複数のプライ(99)を有する複合材積層構造体(98)であって、
前記複数のプライ(99)の各々について、2軸編組索(56)内で同じ方向に配向された一方向性繊維(54)を含む、複合材積層構造体。
【0035】
付記19.3軸編組索(58)内に一方向性繊維(54)を含む、付記18に記載の複合材積層構造体(98)。
【0036】
付記20.前記一方向性繊維(54)は、チューブ状編組索(24)の巻回体を構成している、付記18又は19に記載の複合材積層構造体(98)。
【0037】
付記21.前記複合材積層構造体(98)は、一方向性テープ(32)及び一方向性トウからなる群から選択される材料で作製される、付記18~20のいずれかに記載の複合材積層構造体(98)。
【0038】
付記22.前記一方向性繊維(54)は、ポリマーマトリクス内に配置されている、付記21に記載の複合材積層構造体(98)。
【0039】
付記23.前記一方向性繊維(54)は、前記ポリマーマトリクスに埋め込まれている、付記21又は22に記載の複合材積層構造体(98)。
【0040】
付記24.前記複合材積層構造体(98)は、所定の繊維対体積比を有する、付記21~23のいずれかに記載の複合材積層構造体(98)。
【0041】
付記25.前記ポリマーマトリクスは、熱硬化性樹脂である、付記21~24のいずれかに記載の複合材積層構造体(98)。
【0042】
付記26.前記ポリマーマトリクスは、熱可塑性樹脂である、付記21~24のいずれかに記載の複合材積層構造体(98)。
【0043】
付記27.前記一方向性繊維(54)は、熱可塑性スリットテープ、室温で実質的に不粘着性である熱硬化性テープ、エポキシ又は熱可塑性バインダが塗布されたバインダ含浸ロービングプリプレグ、実質的に不粘着性の熱硬化性プリプレグ、又は、低粘着性の熱硬化性プリプレグからなる群から選択された材料で構成されている、付記18~26のいずれかに記載の複合材積層構造体(98)。
【0044】
付記28.複合材構造体(26)を形成するための方法(300)であって、
チューブ状編組索巻回体(24)を成形して複合材構造体(26)を形成することを含む、方法(300)。
【0045】
付記29.一方向性テープ(32)及び一方向性トウからなる群から選択される材料でチューブ状編組索(22)を作製することをさらに含む、付記28に記載の方法(300)。
【0046】
付記30.前記一方向性テープ(32)は、一方向性繊維(54)で作製される、付記29に記載の方法(300)。
【0047】
付記31.巻回ツール(18)の外面(62)に前記チューブ状編組索(22)を巻き付けて、チューブ状編組索巻回体(24)を作製することをさらに含む、付記29~30のいずれかに記載の方法(300)。
【0048】
付記32.前記巻回ツール(18)に対して螺旋状に前記チューブ状編組索(22)を巻き付けることをさらに含む、付記31に記載の方法(300)。
【0049】
付記33.前記チューブ状編組索(22)が前記巻回ツール(18)に巻き付けられる際、前記一方向性テープ(32)は、折れ曲がることなく互いに滑る、付記31に記載の方法(300)。
【0050】
付記34.樹脂で前記チューブ状編組索巻回体(24)を予備含浸することをさらに含む、付記31に記載の方法(300)。
【0051】
付記35.前記チューブ状編組索巻回体(24)を一体化して前記複合材構造体(26)を形成することをさらに含む、付記34に記載の方法(300)。
【0052】
付記36.前記チューブ状編組索巻回体(24)を一体化する際、加熱を行うことをさらに含む、付記35に記載の方法(300)。
【0053】
付記37.前記チューブ状編組索巻回体(24)は、樹脂溶融温度まで加熱される、付記36に記載の方法(300)。
【0054】
付記38.前記チューブ状編組索巻回体(24)の一体化において、当該チューブ状編組索巻回体をフラットに押し固めることをさらに含む、付記35~37のいずれかに記載の方法(300)。
【0055】
付記39.前記チューブ状編組索巻回体(24)が一体化される際、前記一方向性テープ(32)は、折れ曲がることなく互いにせん断ずれする、付記35~38のいずれかに記載の方法(300)。
【0056】
付記40.前記複合材構造体(26)は、一体化により中実の断面を有する、付記35~39のいずれかに記載の方法(300)。
【0057】
付記41.前記チューブ状編組索(22)は、2軸編組索(56)である、付記28~40のいずれかに記載の方法(300)。
【0058】
付記42.前記チューブ状編組索は、3軸編組索(58)である、付記28~40のいずれかに記載の方法(300)。
【0059】
付記43.複合材構造体のためのチューブ状編組索巻回体(24)であって、
螺旋状に巻かれたチューブ状編組索(22)を含む、チューブ状編組索巻回体(24)。
【0060】
付記44.前記チューブ状編組索(22)は、第1自由端(24B)と第2自由端(24A)とを有する、付記43に記載のチューブ状編組索巻回体(24)。
【0061】
付記45.前記チューブ状編組索(22)は、当該チューブ状編組索(22)の長さに亘って延びる中心孔(24C)を有する、付記43又は44に記載のチューブ状編組索巻回体(24)。
【0062】
付記46.螺旋状に巻かれた前記チューブ状編組索(22)は、単一の長さのチューブ状編組索(22)で形成されている、付記43~45のいずれかに記載のチューブ状編組索巻回体(24)。
【0063】
付記47.前記チューブ状編組索(22)は、一方向性テープ(32)の編組索(56、58)で形成されている、付記43~46のいずれかに記載のチューブ状編組索巻回体(24)。
【0064】
付記48.前記編組索は、螺旋状編組索(56)である、付記43~47のいずれかに記載のチューブ状編組索巻回体(24)。
【0065】
付記49.前記編組索は、3軸編組索(58)である、付記43~48のいずれかに記載のチューブ状編組索巻回体(24)。
【0066】
上述した特徴、機能、利点は、本開示において達成することができ、その詳細は、以下の記載及び図面を参照することによって明らかになるものである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
本明細書で説明する図面は単に例示を目的としたものであり、本開示の範囲を何ら限定するものではない。
【0068】
図1】本開示による複合材構造体を作製するためのシステムを示す概略図である。
図2】本開示によるチューブ状編組索を作製するための編組マシンを示す概略図である。
図3】本開示による、断面線3-3の方向に見た場合の、図2に示す編組マシンを示す図である。
図4】本開示による、図3の断面線4-4によって示される一方向性テープを示す拡大図である。
図5】本開示による、図2~3に示す編組マシンによって作製された2軸編組索であるチューブ状編組索の一部を示す斜視図である。
図6】本開示による、図2~3に示す編組マシンによって作製された3軸編組索であるチューブ状編組索の一部を示す斜視図である。
図7】本開示による、膨脹式マンドレルを用いてチューブ状編組索を形成するための方法を示す例示的な処理フロー図である。
図8】本開示による、非膨脹式マンドレルを用いてチューブ状編組索を形成するための方法を示す例示的な処理フロー図である。
図9】本開示による、巻回ツールを示す正面斜視図である。
図9A】本開示による、図9の断面線9A-9Aの方向に見た巻回ツールの断面についての代替の実施形態を示す図である。
図9B】本開示による、図9の断面線9B-9Bの方向に見た巻回ツールの断面についての他の代替の実施形態を示す図である。
図10】本開示による、チューブ状編組索巻回体が配置された状態の巻回ツールを示す正面斜視図である。
図11】本開示による、チューブ状編組索巻回体を示す正面斜視図である。
図12】本開示による、開位置における成形マシンを示す正面斜視図である。
図13】本開示による、図12の断面線13-13の方向に見た場合の、閉位置における成形マシンを示す断面図である。
図14】本開示による、開位置にある成形マシンにチューブ状編組索巻回体が配置された状態を示す正面斜視図である。
図15】本開示による、図14の断面線15-15の方向に見た場合の、開位置における成形マシンにチューブ状編組索巻回体が配置された状態を示す断面図である。
図16】本開示による、図14の断面線16-16の方向に見た場合の、閉位置における成形マシンにチューブ状編組索巻回体が配置された状態を示す断面図である。
図17】本開示による、複合材構造体を示す上面図である。
図18図17の断面線18-18の方向に見た複合材構造体を示す断面図である。
図19】本開示による、複合材構造体を形成するための方法を示す例示的な処理フロー図である。
図20】本開示による、チューブ状編組索を巻き付けるための方法を示す例示的な処理フロー図である。
図21】航空機の製造及び保守方法を示すフロー図である。
図22】航空機を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
チューブ状編組索の巻回成形体で作製された複合材構造体が開示される。前記チューブ状編組索は、一方向性繊維の一方向性テープ又は一方向性トウで作製される。また、前記チューブ状編組索を作製するための編組マシンが開示される。前記編組マシンは、編組機構と、マンドレルとを含む。前記編組機構には、複数のスプールが搭載されており、各スプールには一方向性テープ又は一方向性トウが巻き付けられている。前記編組機構は、前記チューブ状編組索を作製するために、前記スプールから前記マンドレルに前記一方向性テープ又は前記一方向性トウを配置することを制御する。前記チューブ状編組索は、2軸編組索又は3軸編組索であってよい。
【0070】
また、ツールに前記チューブ状編組索を巻き付けることによって前記複合材構造体を作製するための装置が開示される。最初に、前記編組索が前記マンドレルから取り外されて前記ツールの外面に巻き付けられることにより、チューブ状編組索巻回体が作製される。前記マンドレルは、前記チューブ状編組索巻回体と共に残り、その一部を形成していてもよい。前記チューブ状編組索から前記マンドレルを取り外すために、前記チューブ状編組索に切込みを入れてもよい。前記チューブ状編組索が前記ツールに巻き付けられる際、前記一方向性テープ又は前記一方向性トウは、折れ曲がることはない。すなわち、前記チューブ状編組索が前記ツールに巻き付けられる際、前記一方向性テープ又は前記一方向性トウは、互いに滑るか、或いはせん断ずれする。このように前記一方向性テープ又は前記一方向性トウが相対的に滑ったりせん断ずれすることにより、皺が生じないように、且つ、最終的な構造に対して好適に繊維を配向して、構造体を作製することができる。その後、前記チューブ状編組索巻回体は、前記ツールから取り外され、取り外されたチューブ状編組索巻回体は、成形マシンによって加熱されるとともにフラットに押し固められて前記複合材構造体が作製される。なお、前記チューブ状編組索がフラットに押し固められる場合においても、前記一方向性テープ又は前記一方向性トウは折れ曲がらず、互いに滑るか、或いはせん断ずれする。
【0071】
複合材プリフォームの巻回及び一体化において、一方向性繊維が互いに滑ったりせん断ずれすることにより、作製する積層体のプライ毎に、構造体に対してより多くの繊維が好適に配向された複合材構造体を得ることができる。さらに、このような複合材構造体においては、所望の強度を実現するために必要な積層体のプライの数を減らすことができる。これは、上述したように、積層体のプライ毎に、構造体に対してより多くの繊維が好適に配向されるからであり、構造体をより効率的にすることができる。この結果、部品を軽量化することができる。複合材構造体を作製するための本開示の処理は、従来のレイアップ処理よりも短時間で行うことができるため、生産速度を上げることができる。さらに、複合構造体を作製するための本開示の処理は、従来の処理と比較して、廃棄物の量を減らすことができ、また、手間のかかる後処理である機械加工の負担を減らすことができる。
【0072】
以下の説明は、単に例示的な性質のものであり、本開示やその適用例又は用途を限定することを意図するものではない。
【0073】
図1を参照すると、複合材構造体を作製するためのシステム10の概略図が示されている。システム10は、概して、ツール12と、当該ツール12で処理されるワーク(work product)14とを含む。ツール12は、編組マシン16と、巻回ツール18と、成形マシン20とを含む。ワーク14は、チューブ状編組索22と、チューブ状編組索巻回体24と、複合材構造体26とを含む。チューブ状編組索巻回体24は、チューブ状編組索の巻線とも呼ばれうる。チューブ状編組索22は、編組マシン16によって形成される。チューブ状編組索巻回体24は、巻回ツール18によって、チューブ状編組索22で形成される。複合材構造体26は、成形マシン20によって、チューブ状編組索巻回体24から成形される。複合材構造体26は、開口部を囲んで支持する任意のフレームであって、設計要件を満たすための特定の繊維配向及びレイアップが求められる。例えば、複合材構造体26は、航空機の窓フレームや航空機のドアフレーム等であってもよい。ツール12は、本開示の範囲を逸脱することなく、成形マシン、後処理マシン、切断装置等の他の装置を含んでもよい。同様に、ワーク14は、チューブ状編組索22、チューブ状編組索巻回体24、及び、複合材構造体26の追加的な変形を含みうる。以下に説明するように、システム10は、航空機の製造及び保守において使用することができる。例えば、システム10は、機体及び内装を含む航空機の部品及びサブアセンブリの製造、航空機のシステムインテグレーション、及び、航空機の定例の整備及び保守に使用することができる。
【0074】
図2を参照すると、編組マシン16の概略側面図が示されている。編組マシン16は、編組機構28と、マンドレル30とを含む。以下に説明するように、編組機構28は、マンドレル30に対して一方向性テープ32又は一方向性トウを編むように構成されている。マンドレル30は、編組機構28の中心軸「A」に沿って、ホルダ31により支持及び駆動される。
【0075】
図3を参照するとともに、引き続き図2を参照すると、図2の断面線3-3の方向に見た編組マシン16が示されている。編組機構28は、ベースプレート36に支持されたキャリア34を含む。キャリア34は、リング形状をしており、開口部34Aを画定している。中心軸「A」に沿った編み作業中、開口部34Aにマンドレル30が通される。キャリア34には複数のスプール38が取り付けられている。スプール38の各々は、マンドレル30に対して、キャリア34の中心軸の周りを環状に移動可能である。スプール38の各々には、一方向性テープ32が巻き付けられている。図2には5つのスプール38が概略的に示されており、図3には多数のスプール38が示されているが、スプール38の数は、チューブ状編組索22の所望の特性に応じて決定することができる。例えば、編組機構28は、僅か40個という少数のスプール38を含んでもよいし、200個もの多くのスプール38を含んでいてもよい。スプール38は、概して、縦糸スプール38Aと、横糸スプール38Bとを含む。縦糸スプール38Aは、キャリア34によって(図3に示す)時計回り方向Cに移動し、横糸スプール38Bは、キャリア34によって(図3に示す)反時計回り方向CCに移動する。縦糸スプール38A及び横糸スプール38Bは、同じ速さで移動することが好ましい。
【0076】
編組機構28は、マンドレル30の周囲に配置されたガイドリング40をさらに含む。ガイドリング40は、対応するスプール38に巻き付けられた一方向性テープ32をマンドレル30に誘導する。具体的には、一方向性テープ32は、対応するスプール38から収束ゾーン42を通ってマンドレル30に誘導される。一方向性テープ32が最初にマンドレル30に接触する位置は、付着点(fell point)44で示されている。
【0077】
マンドレル30は、基板として機能し、当該基板上で、編組機構28によって一方向性テープ32が編み組まれ、チューブ状編組索22が形成される。マンドレル30の形状は様々であってもよいが、好ましくは、長状シリンダである。マンドレル30の直径は、5.08cm(2インチ)であってもよい。ただし、マンドレル30の直径は、複合材構造体26の設計要件によって上記直径とは異なっていてもよい。マンドレル30の寸法又は体積は調節可能である。例えば、マンドレル30は、シリコーン袋状体等の膨張可能なチューブである。しかしながら、マンドレル30の寸法又は体積は固定されていてもよい。例えば、マンドレル30は、限定するものではないが、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、ゴム、シリコーン、ネオプレン、又は天然ゴムなどの固体半剛性材料で構成される。マンドレル30は、一方向性テープ32の組成物と適合性のある薄膜ポリマーで構成することができる。
【0078】
マンドレル30は、供給ライン50によって膨張機構48と接続している。膨張機構48は、マンドレル30に対して加圧した空気や別の気体、又は液体を供給する。膨張機構48は、収縮状態と膨張状態との間でマンドレル30を繰り返し切り替える。
【0079】
図4を手短に参照すると、図2の断面ビュー4-4で示される一方向性テープ32の拡大図が示されている。一方向性テープ32は、連続した帯状の複数の一方向性繊維54を含んでおり、これらの繊維は、熱結合又は接着結合によって纏めて保持されている。一方向性繊維54は、互いに平行である。一方向性繊維54には、樹脂が予め含浸されていてもよい。樹脂は、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)等の熱可塑性樹脂であってもよいし、例えば、エポキシ、シアン酸エステル等の熱硬化性樹脂であってもよい。一方向性繊維54は、比較的細い保持糸(図示略)によって纏めて保持することができる。保持糸は、一方向性繊維54に織り込まれていない。その代わりに、保持糸は、一方向性テープ32の上面及び下面に配置されている。一方向性テープ32は、一方向性トウで構成することができる。一方向性トウは、いくつかのカーボントウに交差する縫糸により結合された一方向性繊維を含む。一方向性テープ32は、熱可塑性スリットテープ、室温で実質的に不粘着性である熱硬化性テープ、エポキシ又は熱可塑性バインダが塗布されたバインダ含浸ロービングプリプレグ、実質的に不粘着性の熱硬化性プリプレグ、又は、低粘着性の熱硬化性プリプレグで構成することができる。
【0080】
図2及び3を再び参照すると、編組マシン16の動作が制御モジュール52(図2に示す)により制御されている。制御モジュール52は、編組機構28、ホルダ31、及び、膨張機構48と通信を行う。制御モジュール52は、電子回路、組合わせ論理回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、コードを実行する(共有、専用、又は、グループの)プロセッサ、又は、例えばシステムオンチップのように、これら要素のうちのいくつか若しくは全ての組合せであるか、或いはその一部であってもよい。さらに、制御モジュール52は、少なくとも1つのプロセッサ、メモリ(RAM及び/又はROM)、及び、関連する入出力バスを有するコンピュータ等の、マイクロプロセッサベースのモジュールであってもよい。プロセッサは、メモリにあるオペレーティングシステムの制御下で動作する。オペレーティングシステムは、コンピュータリソースを管理することができ、この管理によって、メモリに常駐するアプリケーション等の、1つ以上のコンピュータソフトウェアアプリケーションとして実現されるコンピュータプログラムコードが、プロセッサによって実行される命令を有することができる。プロセッサは、直接アプリケーションを実行してもよく、その場合には、オペレーティングシステムを省いてもよい。
【0081】
制御モジュール52は、マンドレル30に対して一方向性テープ32を編んでチューブ状編組索22を形成するために、ホルダ31を介してマンドレル30の動作を制御するとともに、スプール38の動作を制御する。例えば、制御モジュール52は、マンドレル30に加圧空気を供給するコマンドを膨張機構48に対して送信することにより、マンドレル30を膨張状態まで膨張させるための命令を実行する。制御モジュール52は、軸方向「A」(図2に示す)においてキャリア34を通過するマンドレル30の動作を誘導するための命令を実行する。マンドレル30がキャリア34を通過すると、制御モジュール52は、マンドレル30の周囲において、時計回り方向Cに縦糸スプール38Aを移動させるとともに、反時計回り方向CCに横糸スプール38Bを移動させるための命令を実行する。一方向性テープ32は、対応するスプール38から引っ張られる。縦糸スプール38A及び横糸スプール38Bからの一方向性テープ32が互いに織り合わされるか、或いは編み合わされることにより、マンドレル30上にてチューブ状編組索22が形成される。制御モジュール52は、マンドレル30に一方向性テープ32が巻き付けられたことを知らせる通知を受信してもよい。具体的には、上記通知は、編組マシン16が、マンドレル30に対して一方向性テープ32を配置してチューブ状編組索22を形成し終えたことを意味する。例えば、上記通知は、ユーザの手入力であってもよい。これに代えて、編組マシン16がチューブ状編組索22の形成を完了したことを知らせる通知は、センサによって行われてもよい。制御モジュール52は、通知を受け取ると、マンドレル30を収縮させるために空気を放出させるよう膨張機構48に指示する。
【0082】
マンドレル30が膨張式でない場合、チューブ状編組索22からマンドレル30を取り外すために、当該チューブ状編組索に切込みを入れてもよい。例えば、切断マシン(図示略)又は作業者により、チューブ状編組索22の全長に沿って切込みを入れることによりマンドレル30を取り外すことができる。図2には、切込み55の例が破線によって示されている。これに代えて、マンドレル30が、一方向性テープ32の組成物と適合性のある薄膜ポリマーで構成されている場合、マンドレル30は、チューブ状編組索22と共に残り、その一部を形成していてもよい。
【0083】
制御モジュール52は、マンドレル30を部分的に膨張させるために、膨張機構48を介した空気の供給を指示する命令を実行してもよい。制御モジュール52は、一方向性テープ32がマンドレル30に巻き付けられたことを知らせる通知を受け取る。制御モジュール52は、当該通知を受け取ると、マンドレル30をさらに膨張させるために、膨張機構48による空気の供給を指示する命令を実行する。この結果、一方向性繊維54に張力がかかった状態になる。これに代えて、マンドレル30は、編み作業中、部分的に膨張した状態のままであってもよい。マンドレル30を完全に膨張させると、繊維角度がほぼゼロのレイアップ(near-zero fiber angle lay-up)を行うことができるため、一方向性テープ32がきつく編み組まれた状態でも、マンドレル30が崩壊したり体積収縮するのを防止することができる。マンドレル30が形状安定するまで当該マンドレルを部分的に膨張させる場合は、比較的柔軟に、或いは比較的緩く一方向性テープ32を編むことができる。これにより、以下に説明するように、巻回及び形成の作業において、一方向性テープ32を滑らせたりせん断ずれさせたりすることが可能となる。いずれの場合においても、マンドレル30の寸法又は体積を調節することにより、マンドレル30に対して編み組まれるチューブ状編組索22の形状をカスタマイズすることができる。
【0084】
図5には、図2の矢印5-5の方向に見たチューブ状編組索22の拡大部分が示されている。提示された例においては、チューブ状編組索22は、2軸編組索56である。2軸編組索56においては、平行一方向性テープ32Aのマトリクスは、交差する平行一方向性テープ32Bのマトリクスに織り込まれるか、或いは、編み込まれている。平行一方向性テープ32Aは、交差する平行一方向性テープ32Bに対してバイアス角αで配置される。バイアス角αは、特定の用途に基づいて決定されるが、編組索の角度が急であればある程、柔軟性が高まる。ただし、以下に説明するように、角度αは、一方向性テープが巻回又は形成されるときに変化する場合がある。
【0085】
再び図2を参照すると、編組マシン16は、3軸編組索を有するチューブ状編組索22を形成するように構成されてもよい。3軸編組索でチューブ状編組索22を形成するために、マンドレル30の長さ「L」に沿って、複数の固定スプール32C(これらのスプールのうち1つのみが図示されている)から一方向性テープ32が挿入される。固定スプール32Cは、フレーム34に沿って回転しない。なお、使用する固定スプール32Cの数はいくつであってもよい。
【0086】
図6には、図2の矢印6-6の方向に見た、3軸編組索58によるチューブ状編組索22の拡大部分が示されている。3軸編組索58は、2軸編組索56(図5)に類似している。ただし、中心軸「A」(図2)に平行であって、且つ、チューブ状編組索22の軸方向の長さに沿って延びる追加的な平行一方向性テープ32Cのマトリクスが、平行一方向性テープ32A、及び、交差する平行一方向性テープ32Bに織り込まれている。一方向性テープ32Cは、固定スプール32Cから供給される。この場合においても、以下に説明するように、バイアス角αは、一方向性テープが巻回又は形成されるときに変化する場合がある。3軸編組索58は、チューブ状編組索22の長手方向において構造的強度を高めることができる。
【0087】
図7を参照するとともに、引き続き図2~6を参照すると、マンドレル30の寸法又は体積を調節しながらチューブ状編組索22を形成するための方法100を示すフロー図が示されている。方法100は、ブロック102で開始する。ブロック102において、制御モジュール52は、編み作業の前にマンドレル30の寸法又は体積を調節する。一例においては、マンドレル30は、膨張機構48によって膨張可能である。したがって、制御モジュール52は、マンドレル30を膨張させるために空気を供給することを膨張機構48に命令する。マンドレル30は完全に膨張させることも部分的に膨張させることも可能である。次に、方法100は、ブロック104に進む。
【0088】
ブロック104において、方法100は、マンドレル30の周囲に一方向性テープ32を編み組んで、チューブ状編組索22を形成することを含む。例えば、制御モジュール52は、以下に説明するように、マンドレル30に対して軸に沿って方向「A」に移動することを命令する一方で、スプール38に回転することを命令し、これによって、マンドレル30に対して一方向性テープ32の編組体を形成する。編組機構28の構成に応じて、2軸編組索56(図5)又は3軸編組索58(図6)のうちの一方がマンドレル30に対して形成され、その後、方法100は、ブロック106又はブロック108に進む。
【0089】
ブロック106において、編組マシン16は、2軸編組索56(図5)によるチューブ状編組索22を編む。ブロック108において、編組マシン16は、3軸編組索58(図6)によるチューブ状編組索22を編む。いずれの場合においても、方法100は、ブロック110に進む。
【0090】
ブロック110において、制御モジュール52は、編み作業が完了した後、マンドレル30の寸法又は体積を調節する。例えば、制御モジュール52は、膨張機構48に対して、マンドレル30を収縮させることを命令することにより、マンドレル30からチューブ状編組索22を取り外し易くする。
【0091】
図8を参照するとともに、引き続き図2~6を参照すると、膨張式でないマンドレル30を用いてチューブ状編組索22を形成するための方法200を示すフロー図が示されている。方法200は、ブロック202で開始する。ブロック202において、方法200は、マンドレル30に一方向性テープ32を配置することを含む。例えば、一方向性テープ32A、32B、又は32Cの組合せがマンドレル30に配置される。次に、方法200は、ブロック204に進む。
【0092】
ブロック204において、制御モジュール52は、中心軸「A」(図2)に沿って軸方向に移動するようにマンドレル30に命令する。ブロック206において、制御モジュール52は、マンドレル30が中心軸「A」に沿って移動するのに伴って、当該中心軸「A」を中心として互いに逆回転するように縦糸スプール38A及び横糸スプール38Bに指示する。編組索56、58(図5、6)のうちの何れのタイプを作製するかに応じて、方法200は、ブロック208又はブロック210に進む。
【0093】
ブロック208において、一方向性テープ32A、32Bが織り合わされて2軸編組索56(図5)が形成される。例えば、マンドレル30が中心軸「A」に沿って移動すると、縦糸スプール38A及び横糸スプール38Bが互いに逆回転する。マンドレル30の移動により、縦糸スプール38A及び横糸スプール38Bに巻かれた一方向性テープ32が引き出される。マンドレル30が中心軸「A」(図2)に沿って移動するのに伴って、縦糸スプール38A及び横糸スプール38Bが相互に逆回転することにより、縦糸スプール38Aからの一方向性テープ32Aと、横糸スプール38Bからの一方向性テープ32Bとが織り合わされる。ブロック212において、2軸編組索56(図5)を用いてチューブ状編組索22が形成される。
【0094】
ブロック210において、一方向性テープ32A、32B、及び32Cが織り合わされて3軸編組索58(図6)が形成される。例えば、マンドレル30が中心軸「A」に沿って移動すると、縦糸スプール38A及び横糸スプール38Bが互いに逆回転する。マンドレル30の移動により、縦糸スプール38Aに巻かれた一方向性テープ32A、横糸スプール32Bに巻かれた一方向性テープ32B、及び、固定スプール38Cに巻かれた一方向性テープ32Cが引き出される。マンドレル30が中心軸「A」(図2)に沿って移動するのに伴って、縦糸スプール38A及び横糸スプール38Bが相互に逆回転することにより、縦糸スプール38Aからの一方向性テープ32Aと、横糸スプール38Bからの一方向性テープ32B及び固定スプール38Cからの一方向性テープ32Cとが織り合わされる。ブロック214において、3軸編組索58(図6)を用いてチューブ状編組索22が形成される。
【0095】
いずれの場合においても、方法200は、チューブ状編組索22が形成されると、終了する。マンドレル30が取り外し可能である場合、方法200は、チューブ状編組索22の全長に沿って切込みを入れることにより、マンドレル30を取り外し易くすることを、さらに含む。また、マンドレル30が一方向性テープ32の組成物と適合性のある薄膜ポリマーで構成されている場合、マンドレル30は、チューブ状編組索22と共に残り、その一部を形成する。
【0096】
次に、図9を参照しながら、巻回ツール18について説明を行う。巻回ツール18は、概して、垂直方向に延びるボディ部60を含む。なお、ボディ部60は、水平方向、又は、斜め方向に延びていてもよい。ボディ部60は、外面62を有する。外面62は、概して、複合材構造体26の形状に一致している。したがって、ボディ部60の断面形状は、複合材構造体26の最終形状によって異なる。提示された例においては、ボディ部60の断面は、丸みを帯びたコーナー64を有する矩形である。しかしながら、図9Aに示すように、ボディ部60の断面は、円形であってもよい。これに代えて、図9Bに示すように、ボディ部60の断面は、楕円形又は卵形であってもよい。なお、ボディ部60の断面は、本開示の範囲を逸脱することなく他の形状であってもよい。
【0097】
図10を参照すると、チューブ状編組索巻回体24を形成するために、チューブ状編組索22が、巻回ツール18の外面62に巻き付けられている。チューブ状編組索22は、手作業で巻回ツール18に巻き付けられてもよいし、ロボットアームやマニピュレータ等のデバイス65を用いて自動処理により当該巻回ツールに巻き付けられてもよい。チューブ状編組索巻回体24は、チューブ状編組索22の重ね巻部66で構成されている。提示された例においては、5つの重ね巻部66が示されているが、巻回ツール18に対してチューブ状編組索22を何回巻き付けてもよく、これによって、重ね巻部66の数はいくつになってもよい。なお、重ね巻部66の数は、複合材構造体26で所望するプライの数、及び、複合材構造体26の厚みに依存する。チューブ状編組索22が3軸編組索58を有する場合、巻回ツール18にチューブ状編組索22が巻き付けられた状態において、一方向性テープ32C(図6)は、巻回ツール18の外面62と略平行に配向される。したがって、一方向性テープ32C(図6)は、複合材構造体26の開口部、及び/又は、外周と略平行に配置される。
【0098】
チューブ状編組索巻回体24が形成されると、図11に示すように、当該チューブ状編組索巻回体24が、巻回ツール18から分離される。チューブ状編組索巻回体24は、手作業で巻回ツール18から分離されてもよいし、ロボットアームやマニピュレータ(図示略)等を用いて自動処理で当該巻回ツールから分離されてもよい。チューブ状編組索巻回体24は、第1自由端24Aと、第2自由端24Bとを有する。図11に示すように、チューブ状編組索巻回体24は、螺旋形状又は渦巻形状であって、一本のチューブ状編組索22で形成されている。チューブ状編組索巻回体24は、中空であって、当該チューブ状編組索巻回体24を貫通する中心孔24Cを有する。巻回ツール18から分離された状態において、チューブ状編組索巻回体24は、当該巻回ツール18により得られた全体形状を維持するのに十分な強度を有する。複合材構造体26を形成するために、チューブ状編組索巻回体24は、成形マシン20に配置される。これについては、以下に説明する。
【0099】
図12は、開位置における成形マシン20を示す正面斜視図である。成形マシン20は、上側ダイプレート70と、下側ダイプレート72とを含む。提示された例においては、電気モータ75を介して、支持部材74に沿って上側ダイプレート70を下降させて、閉位置において下側ダイプレート72と係合させることができる。これに代えて、上側ダイプレート70及び下側ダイプレート72を共にヒンジ結合することも可能である(図示略)。下側ダイプレート72は、下側成形面76と、当該下側成形面76から延びる成形マンドレル78とを含む。成形マンドレル78の寸法は、巻回ツール18の断面の寸法と実質的に同じである。下側ダイプレート72には加熱素子80が配置されている。加熱素子80は、下側成形面76を加熱するように構成されている。提示された例においては、加熱素子80は、抵抗加熱により下側成形面76を加熱する電気ワイヤを含む。これに代えて、加熱素子80は、チューブ(図示略)、誘導ヒータ、外部ヒータ等を介してポンプ送給される熱油を含んでもよい。上側ダイプレート70及び/又は成形マンドレル78は、本開示の範囲を逸脱することなく加熱素子(図示略)を、さらに含んでもよい。
【0100】
図13は、閉位置にある成形マシン20の断面を示しており、上側ダイプレート70が下側ダイプレート72と係合した状態にある。上側ダイプレート70は上側成形面82を含む。上側成形面82からは、外側成形面83が下方に延在している。上側成形面82には凹部84が形成されている。閉位置において、下側ダイプレート72の成形マンドレル78が、上側ダイプレート70の凹部84と係合する。これに加えて、下側成形面76、成形マンドレル78、上側成形面82、及び、外側成形面83は、互いに連携して、上側ダイプレート70と下側ダイプレート72との間の成形キャビティ86を画定する。成形キャビティ86は、成形マンドレル78を囲んでいる。
【0101】
成形マシン20は、真空ポート90と連通する真空源88をさらに含みうる。真空ポート90は、下側成形面76に設けられるとともに、成形キャビティ86と連通している。真空源88は、成形中、チューブ状編組索巻回体24から余分な空気、ガス、及び、空隙を除去するために、成形キャビティ86において真空を生成する。これに代えて、或いは、これに加えて、真空ポート90は、上側成形面82に設けられてもよい。
【0102】
成形マシン20は、コントローラ92をさらに含み、当該コントローラは、電気モータ75、加熱素子80、及び、真空源88と通信する。コントローラ92はまた、巻回ツール18(図10を参照)にチューブ状編組索22を巻き付けるために使用するデバイス65と通信することも可能である。コントローラ92は、電子回路、組合わせ論理回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、コードを実行する(共有、専用、又は、グループの)プロセッサ、又は、例えばシステムオンチップのように、これら要素のうちのいくつか若しくは全ての組合せであるか、或いはその一部であってもよい。さらに、コントローラ92は、少なくとも1つのプロセッサ、メモリ(RAM及び/又はROM)、及び、関連する入出力バスを有するコンピュータ等の、マイクロプロセッサベースのモジュールであってもよい。プロセッサは、メモリにあるオペレーティングシステムの制御下で動作する。オペレーティングシステムは、コンピュータリソースを管理することができ、この管理によって、メモリに常駐するアプリケーション等の、1つ以上のコンピュータソフトウェアアプリケーションとして実現されるコンピュータプログラムコードが、プロセッサによって実行される命令を有することができる。プロセッサは、直接アプリケーションを実行してもよく、その場合には、オペレーティングシステムを省いてもよい。
【0103】
コントローラ92は、電気モータ75を介して、上側ダイプレート70及び下側ダイプレート72の動作を制御する。コントローラ92はまた、加熱素子80を介してチューブ状編組索巻回体24を複合材構造体26に成形する際、成形キャビティ86に適用する温度を制御する。一例においては、コントローラ92は、チューブ状編組索巻回体24を構成する一方向性テープ32(図4)に用いられる樹脂のタイプに基づいて、成形キャビティ86における温度を制御する。熱可塑性樹脂の溶融温度の範囲は、約205℃から400℃超である。また、熱硬化性樹脂の溶融温度は、約177℃である。本明細書において、「約」なる用語は、当業者によく知られている。また、「約」なる用語は+/-10℃を意味する。コントローラ92はまた、成形キャビティ86が冷却される速度を制御して、一方向性テープ32における熱硬化性ポリマーの架橋(cross-linking)を確実に生じさせる。コントローラ92はまた、真空源88を介して成形キャビティ86に印加される真空を制御する。上述したように、真空により、成形キャビティ86におけるチューブ状編組索巻回体24から余分な空気、ガス、揮発性物質、及び、空隙を除去することができる。コントローラ92はまた、成形中、チューブ状編組索巻回体24に対する樹脂注入(図示略)を制御することも可能である。樹脂の注入は、一方向性テープ32に熱硬化性樹脂を使用する場合、及び、バインダで一方向性繊維54を互いに接着することによりトウやテープを作製する場合に、好ましいであろう。このような接着により、テープのトウにおける非含浸繊維をまとめて保持するのに十分な結合を実現することができる。樹脂注入により、一方向性繊維54に樹脂を含浸させることができる。
【0104】
図14及び15を参照すると、成形前にチューブ状編組索巻回体24が内部に配置された成形マシン20が示されている。チューブ状編組索巻回体24は、下側成形面76において成形マンドレル78の周りに配置されている。したがって、チューブ状編組索巻回体24は、成形マシン20に配置された状態においても、螺旋状又は渦巻状に巻き付けられた状態を維持することができる。
【0105】
図16は、チューブ状編組索巻回体24が配置された状態で閉位置にある成形マシン20を示している。複合材構造体26の成形においては、成形キャビティ86における上側ダイプレート70及び下側ダイプレート72によって、チューブ状編組索巻回体24が一体化、すなわち押し固められる。例えば、コントローラ92は、上側ダイプレート70が下側ダイプレート72に対して押し付けられるまで、電気モータ75を介して上側ダイプレート70及び下側ダイプレート72を互いに近づけるために、命令を実行する。下側ダイプレート72に対して上側ダイプレート70を押し付けることにより、チューブ状編組索巻回体24を一体化することができる。次に、コントローラ92は、加熱素子80を介してチューブ状編組索巻回体24を加熱する。上述したように、設定温度、並びに、加熱時間及び冷却時間は、チューブ状編組索巻回体24に用いられる樹脂材料に関する要因に基づいて決定される。一例においては、上記温度は約205℃から400℃を超える温度であり、他の例においては、上記温度は、約177℃に設定される。加熱の前又は途中に、コントローラ92は、真空源88を介して成形キャビティ86に真空を印加することにより、一体化及び/又は加熱の際にチューブ状編組索巻回体24から余分な空気、ガス、揮発性物質、及び、間隙を除去する。一体化、加熱、及び、冷却が完了すると、コントローラ92は、成形マシン20を開くように電気モータ75に命令し、その後、複合材構造体26が取り外される。複合材構造体26は、手作業で取り外してもよいし、ロボットアームやマニピュレータ(図示略)を使用して取り外してもよい。
【0106】
例えば、コネクタやリブ(図示略)等の追加的な構成要素を作製するために、複合材構造体26をはみ出し成形(over-molded)することも可能である。また、複合材構造体26をトリミングして最終形状にすることもできる。
【0107】
図17は、上述した編組マシン16、巻回ツール18、及び、成形マシン20を用いて形成された複合材構造体26の例を示す。複合材構造体26は、開口部96を画定するフレーム部94を含む。提示される例においては、複合材構造体26は、航空機の窓フレームとして図示されている。しかしながら、複合材構造体26は、開口部を画定する部品、特に、タイトな角部やアール部(radiuses)を有する部品であればどのようなものであってもよい。例えば、複合材構造体26は、ドアフレームであってもよいし、他の任意のタイプのアクセスフレームであってもよい。再び図16を参照すると、下側成形面76、上側成形面82、及び、成形マンドレル78が連携してフレーム部94の形状を画定している。具体的には、開口部96の形状は、成形マンドレル78の形状に対応しており、当該成形マンドレルの形状は、巻回ツール18(図9)の形状に対応している。したがって、巻回ツール18のボディ部60の形状は、開口部96の形状と略同じであり、チューブ状編組索巻回体24(図11)の外縁は、複合材構造体26の外周を形成している。チューブ状編組索22が3軸編組索58である場合、一方向性テープ32C(図6)は、開口部96の外周に略平行に配置される。図17を参照すると、成形マシン20における成形中、チューブ状編組索巻回体24のチューブ状編組索22(図5及び6)は、一体化される際にフラットに押し固められる。言い換えれば、複合材構造体26は、中実の断面を有する。
【0108】
図18は、図17の断面線18-18の方向に見た複合材構造体26の拡大断面図である。複合材構造体26は、複数のプライ99を含む複合材積層構造体98を有する。複数のプライ99の各々は、チューブ状編組索巻回体24の重ね巻部66(図10)に対応している。したがって、複数のプライ99の各々は、フラットに成形された2軸編組索56(図5)、又は、フラットに成形された3軸編組索58(図6)を含む。一体化及び加熱の工程において、一方向性テープ32(図5及び6)の樹脂がポリマーマトリクスを形成し、一方向性テープ32を形成する一方向性繊維54(図4)の配向により、複数のプライ99が形成される。複数のプライ99の各々について、2軸編組索56又は3軸編組索58は、所望の方向において大量の一方向性繊維54を有するフープ型構成を形成するように配向されており、複合材構造体26の効率を高めることができる。すなわち、所与の断面のいずれにおいても、複数のプライ99の各々について、一方向性繊維54(図4)が同じ方向に配向される。複合材積層構造体98は、所定の繊維対体積比を有するが、これは、繊維体積比とも呼ばれうる。繊維体積比は、複合材積層構造体98における一方向性繊維54の割合を示す。例えば限定するものではないが、引張強度などの、複合材構造体の機械的特性は、繊維対体積比に依存する。したがって、複合材積層構造体98の繊維対体積比は、特定の用途又は要件に基づいて決定される。
【0109】
なお、成形マシン20は、チューブ状編組索巻回体24を一体化してニアネットシェイプ(near net shape)にする。この結果、複合材構造体26は、従来の処理と比較して最終形状にするために必要なトリミングを少なくすることができる。また、複合材構造体を作製するために通常必要とされる広範な後処理や機械加工を行う必要がなくなる。
【0110】
次に図19を参照すると、同図には、図1~18を参照して先に説明したシステム10を用いて複合材構造体26を作製するための方法300の例示的な処理フローが示されている。方法300は、ブロック302で開始する。ブロック302において、方法300は、マンドレル30に一方向性テープ32を配置することを含む。例えば、一方向性テープ32A、32B、又は、32Cの組合せがマンドレル30に配置される。次に、方法300は、ブロック304に進む。
【0111】
ブロック304において、制御モジュール52は、中心軸「A」(図2)に沿って軸方向に移動するようにマンドレル30に命令する。ブロック306において、制御モジュール52は、マンドレル30が中心軸「A」に沿って移動するのに伴って、当該中心軸「A」を中心として互いに逆回転するように縦糸スプール38A及び横糸スプール38Bに指示する。編組索56、58(図5、6)のうちの何れのタイプを作製するかに応じて、方法300は、ブロック308又はブロック310に進む。
【0112】
ブロック308において、一方向性テープ32A、32Bが織り合わされて2軸編組索56(図5)が形成される。例えば、マンドレル30が中心軸「A」に沿って移動すると、縦糸スプール38A及び横糸スプール38Bが互いに逆回転する。マンドレル30の移動により、縦糸スプール38A及び横糸スプール38Bに巻かれた一方向性テープ32が引き出される。マンドレル30が中心軸「A」(図2)に沿って移動するのに伴って、縦糸スプール38A及び横糸スプール38Bが相互に逆回転することにより、縦糸スプール38Aからの一方向性テープ32Aと、横糸スプール38Bからの一方向性テープ32Bとが織り合わされる。ブロック312において、2軸編組索56(図5)を用いてチューブ状編組索22が形成される。
【0113】
ブロック310において、一方向性テープ32A、32B、及び32Cが織り合わされて3軸編組索58(図6)が形成される。例えば、マンドレル30が中心軸「A」に沿って移動すると、縦糸スプール38A及び横糸スプール38Bが互いに逆回転する。マンドレル30の移動により、縦糸スプール38Aに巻かれた一方向性テープ32A、横糸スプール32Bに巻かれた一方向性テープ32B、及び、固定スプール38Cに巻かれた一方向性テープ32Cが引き出される。マンドレル30が中心軸「A」(図2)に沿って移動するのに伴って、縦糸スプール38A及び横糸スプール38Bが相互に逆回転することにより、縦糸スプール38Aからの一方向性テープ32Aと、横糸スプール38Bからの一方向性テープ32B及び固定スプール38Cからの一方向性テープ32Cとが織り合わされる。ブロック314において、3軸編組索58(図6)を用いてチューブ状編組索22が形成される。上述したように、マンドレル30の構成に応じて、マンドレル30をチューブ状編組索22から分離してもよいし、チューブ状編組索22に残したままでもよい。方法300は、ブロック312又はブロック314から、ブロック316に進む。
【0114】
ブロック316は、巻回ツール18にチューブ状編組索22を巻き付けることを含む。チューブ状編組索22を巻き付けることによって、チューブ状編組索巻回体24(図11)が形成される。上述したように、上記巻き付けは、手作業で行ってもよいし、デバイス65を用いた自動処理で行ってもよい。次に、方法300は、ブロック318に進む。
【0115】
ブロック318は、チューブ状編組索巻回体24を成形して複合材構造体26を形成することを含む。例えば、チューブ状編組索巻回体24は、成形マシン20(図14~15)に配置される。次に、コントローラ92は、チューブ状編組索巻回体24を一体化、すなわちフラットにして、複数のプライ99(図18)を形成する。次に、コントローラ92は、チューブ状編組索巻回体24を加熱して複合材構造体26(図16)を形成する。
【0116】
図20を参照すると、図1~11を用いて先に説明したシステム10を用いて、チューブ状編組索22の巻回体を形成するための方法400の例示的な処理フロー図が示されている。方法400は、ブロック402で開始する。ブロック402において、方法400は、マンドレル30に一方向性テープ32を配置することを含む。例えば、一方向性テープ32A、32B、又は、32Cの組合せがマンドレル30に配置される。次に、方法400は、ブロック404に進む。
【0117】
ブロック404において、制御モジュール52は、中心軸「A」(図2)に沿って軸方向に移動するようにマンドレル30に命令する。ブロック406において、制御モジュール52は、マンドレル30が中心軸「A」に沿って移動するのに伴って、当該中心軸「A」を中心として互いに逆回転するように縦糸スプール38A及び横糸スプール38Bに指示する。編組索56、58(図5、6)のうちの何れのタイプを作製するかに応じて、方法400は、ブロック408又はブロック410に進む。
【0118】
ブロック408において、一方向性テープ32A、32Bが織り合わされて2軸編組索56(図5)が形成される。例えば、マンドレル30が中心軸「A」に沿って移動すると、縦糸スプール38A及び横糸スプール38Bが互いに逆回転する。マンドレル30の移動により、縦糸スプール38A及び横糸スプール38Bに巻かれた一方向性テープ32が引き出される。マンドレル30が中心軸「A」(図2)に沿って移動するのに伴って、縦糸スプール38A及び横糸スプール38Bが相互に逆回転することにより、縦糸スプール38Aからの一方向性テープ32Aと、横糸スプール38Bからの一方向性テープ32Bとが織り合わされる。ブロック412において、2軸編組索56(図5)を用いてチューブ状編組索22が形成される。
【0119】
ブロック410において、一方向性テープ32A、32B、及び32Cが織り合わされて3軸編組索58(図6)が形成される。例えば、マンドレル30が中心軸「A」に沿って移動すると、縦糸スプール38A及び横糸スプール38Bが互いに逆回転する。マンドレル30の移動により、縦糸スプール38Aに巻かれた一方向性テープ32A、横糸スプール32Bに巻かれた一方向性テープ32B、及び、固定スプール38Cに巻かれた一方向性テープ32Cが引き出される。マンドレル30が中心軸「A」(図2)に沿って移動するのに伴って、縦糸スプール38A及び横糸スプール38Bが相互に逆回転することにより、縦糸スプール38Aからの一方向性テープ32Aと、横糸スプール38Bからの一方向性テープ32B及び固定スプール38Cからの一方向性テープ32Cとが織り合わされる。ブロック414において、3軸編組索58(図6)を用いてチューブ状編組索22が形成される。上述したように、マンドレル30の構成に応じて、マンドレル30をチューブ状編組索22から分離してもよいし、チューブ状編組索22に残したままでもよい。方法400は、ブロック412又はブロック414から、ブロック416に進む。ブロック416は、巻回ツール18にチューブ状編組索22を巻き付けることを含む。チューブ状編組索22を巻き付けることによって、チューブ状編組索巻回体24(図11)が形成される。上述したように、上記巻き付けは、手作業で行ってもよいし、デバイス65を用いた自動処理で行ってもよい。次に、方法400は、ブロック418に進む。
【0120】
ブロック418は、巻回ツール18にチューブ状編組索22を巻き付ける際、一方向性テープ32(図5~6)を互いに滑らせるか、或いはせん断ずれさせることを含む。なお、チューブ状編組索22が巻回ツール18に巻き付けられる際、一方向性テープ32は、折れ曲がることなく互いに滑るか、或いはせん断ずれする。これにより、チューブ状編組索巻回体24において、複合材構造体26の周縁と同じ方向に配向される一方向性テープ32の数が増えるため、耐荷重力が向上する。複合材構造体26を作製するための本開示の処理は、従来のレイアップ処理よりも短時間で行うことができるため、生産速度を上げることができる。最後に、本開示の処理は、従来の処理と比較して材料廃棄物の量が少ない。
【0121】
上述したシステム10、並びに、方法100、200、300、及び、400は、図21に示すように航空機の製造及び保守方法500に関連させ、図22に示すように航空機502に関連させて説明することができる。生産開始前の工程として、例示的な方法500は、航空機502の仕様決定及び設計504と、材料調達506とを含みうる。生産中の工程としては、航空機502の部品及び小組立品の製造508、並びに、システムインテグレーション510が行われる。その後、航空機502は、認証及び納品512の工程を経て、就航514に入る。顧客による就航中、航空機502は、定例の整備及び保守516(これは、改良、再構成、改修等を含みうる)に組み込まれる。
【0122】
上記システム及び方法の各工程は、システムインテグレータ、第三者、及び/又は、オペレータ(例えば、顧客)によって実行又は実施することができる。なお、システムインテグレータは、限定するものではないが、航空機メーカ、及び、主要システム下請業者をいくつ含んでいてもよい。第三者は、限定するものではないが、売主、下請業者、及び、供給業者をいくつ含んでいてもよい。オペレータは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス組織等であってもよい。
【0123】
図22に示すように、例示的な方法500によって製造される航空機502は、複数の高水準システム520と内装522とを備えた機体518を含みうる。高水準システム520の例としては、推進系524、電気系526、油圧系528、及び、環境系530のうちの1つ又は複数が挙げられる。また、その他のシステムをいくつ含んでいてもよい。また、航空宇宙産業に用いた場合を例として説明したが、本発明の原理は、例えば自動車産業等の他の産業に適用してもよい。
【0124】
上述したシステム及び方法は、製造及び保守方法500における任意の1つ以上の段階で採用することができる。例えば、製造工程508に対応する部品又は小組立品は、航空機502の就航中に作製される部品又は小組立品と同様に作製又は製造することができる。また、上述した装置、方法、又は、これらの組合せを、例えば、製造工程である508及び510で使用することにより、航空機502の組立速度を実質的に速めたりコストを削減したりすることもできる。同様に、上述した装置、方法、又は、これらの組合せを、航空機502の就航中、例えば、限定するものではないが、整備及び保守516に使用してもよい。上述したシステム10、並びに、方法100、200、300、及び400は、部品及び小組立品の製造508、システムインテグレーション510、定例の整備及び保守516、機体518、及び、内装522において採用することができる。
【0125】
本開示の説明は、単に例示的な性質のものであり、本開示の要旨から逸脱しない変形は本開示の範囲内であることが意図されている。そのような変形は、本開示の思想及び範囲から逸脱するものと見做されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22