(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】内燃エンジンのそれぞれのシリンダーの中に捕捉される空気の質量を特定する方法
(51)【国際特許分類】
F02D 41/18 20060101AFI20231207BHJP
F02D 23/02 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
F02D41/18
F02D23/02 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019202425
(22)【出願日】2019-11-07
【審査請求日】2022-09-16
(31)【優先権主張番号】102018000010164
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519372043
【氏名又は名称】マレリ・ヨーロッパ・エッセ・ピ・ア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・パンチロリ
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-255205(JP,A)
【文献】特開2013-011270(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0146130(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 13/00-29/06
41/00-45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジン(1)のそれぞれのシリンダー(3)の中に捕捉される空気の質量(m)を特定する方法であって、前記内燃エンジン(1)は、複数のシリンダー(3)を含み、前記シリンダー(3)は、吸気マニホールド(4)および排気マニホールド(6)にそれぞれ接続されており、前記シリンダー(3)は、前記吸気マニホールド(4)から少なくとも1つのそれぞれの吸気バルブ(5)を通して新鮮な空気を受け入れており、前記シリンダー(3)は、燃焼によって作り出された排気ガスを少なくとも1つのそれぞれの排気バルブ(7)を通して前記排気マニホールド(6)の中へ導入し、前記吸気バルブ(5)および/または前記排気バルブ(7)は、そのタイミングを変化させるように制御されており、前記方法は、
前記吸気マニホールド(4)の内側の圧力P、前記内燃エンジン(1)の回転の速度n、および、前記吸気バルブ(5)の閉鎖遅角IVCを検出するステップと、
以前の作業サイクルの中の燃焼によって作り出されて前記シリンダー(3)の内側に存在しているガスの質量OFFを特定するステップと、
前記内燃エンジン(1)の前記回転の速度nおよび前記吸気バルブ(5)の前記閉鎖遅角IVCの関数として、それぞれのシリンダー(3)の内側体積Vを特定するステップと、
前記圧力Pとそれぞれのシリンダー(3)の前記内側体積Vの積を通して、それぞれのシリンダー(3)の中に捕捉される空気の前記質量を特定するステップであって、前記ガスの質量OFFが、前記積から引かれる、ステップと
を含む、方法において、
前記ガスの質量OFFを特定する前記ステップは、
それぞれの吸気バルブ(5)および前記それぞれの排気バルブ(7)が同時に開いているオーバーラップ局面の間に、排気から吸気へ流れ、それに続く吸気局面の間に、前記吸気バルブ(5)を通して前記シリンダー(3)の中へ再び吸い込まれる
か、あるいは、その逆の順序で流れる、ガスの質量M
OVLを以下の公式によって計算するサブステップであって、前記シリンダー(3)の燃焼室は、通路断面を表しており、
【数1】
S
id 理想的な通路断面の面積;
n 前記内燃エンジン(1)の速度;
P
0_REF 前記通路断面の上流の基準圧力;
T
0_REF 前記通路断面の上流の基準温度;
T
0 前記通路断面の上流の温度;
P
0、P それぞれ、前記通路断面の上流および下流の圧力;
ここで、前記理想的な通路断面の前記面積S
idは、前記内燃エンジン(1)の前記速度nおよび前記オーバーラップ局面の持続期間OVLの第1の関数(A)と、前記内燃エンジン(1)の前記速度nおよび上死点PMSと前記オーバーラップ局面の重心Gとの間の角度差の第2の関数(G)との間の積によって計算される、サブステップと、
前記質量M
OVLの関数として前記ガスの質量OFFを計算するサブステップと
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記方法は、
前記排気の中のガスフローの圧力P
EXHおよび前記排気の中の前記ガスフローの温度T
EXHを検出するさらなるステップと、
以下の式によって前記ガスの質量OFFを計算するさらなるステップと
OFF=P
EXH*V
CC/R*T
EXH+M
OVL
V
CC 前記シリンダー(3)の前記燃焼室の死体積;ならびに、
R 新鮮な空気および/または排気ガスの混合物の定数
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、前記吸気マニホールド(4)の内側のPが前記排気の中
のガスフロー
の圧力P
EXHよりも大きいケースでは、前記ガスの質量OFFを以下の式によって計算するさらなるステップ
OFF=P
EXH*V
CC/(R*T
EXH)-M
EXH_SCAV [16]
V
CC 前記シリンダー(3)の前記燃焼室の死体積;
M
EXH_SCAV 前記シリンダー(3)の前記燃焼室の内側に存在しており、前記それぞれの排気バルブ(7)を通して前記排気マニホールド(6)に向けて直接的に方向付けられる、排気ガスの残留質量;ならびに、
R 新鮮な空気および/または排気ガス
の混合物の定数
を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記内燃エンジン(1)は、低圧排気ガス再循環回路を含み、前記方法は、吸気ダクト(6)の中を流れる前
記混合物
に関する前記低圧
排気ガス再循環回路のインシデンスを示す量(R
EGR)を計算するさらなるステップと、また、前記低圧
排気ガス再循環回路の前記インシデンスを示す前記量の関数として前記ガスの質量OFFを計算するさらなるステップとを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
それぞれのシリンダー(3)の前記内側体積Vは、第1の
関数(f
V
(IVC,n))および第2の
関数(f
P
(P,n))によってさらに計算され、前記第1の
関数(f
V
(IVC,n))は、前記吸気バルブ(5)の前記閉鎖遅角(IVC)および前記内燃エンジン(1)の前記回転の速度nの関数であり、前記第2の
関数(f
P
(P,n))は、前記吸気マニホールド(4)の内側の前記圧力Pおよび前記内燃エンジン(1)の前記回転の速度の関数である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
それぞれのシリンダー(3)の中に捕捉される空気の前記質量mは、
(i)第1の
因子関数f
1
(T,P)および
(ii)第2の
因子関数f
2
(T
H2O
,P)の積を用いて計算され、前記第1の
因子関数f
1
(T,P)は、前記吸気マニホールド(4)の内側の前記温度(T)および前記圧力
(P)の関数であり、前記第2の
因子関数f
2
(T
H2O
,P)は、前記内燃エンジン(1)
の温度(T
H2O)および前記圧力(P)の関数である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
それぞれのシリンダー(3)の中に捕捉される空気の前記質量mは、1対の乗算係数(K
1、K
2)の関数として計算され、前記1対の乗算係数(K
1、K
2)は、前記吸気バルブ(5)
の開放角度の基準値に対する差の角度範囲(VVT
I)、前記排気バルブ(7)
の開放角度の基準値に対する差の角度範囲(VVT
E)、および、前記内燃エンジン(1)の前記回転の速度(n)を考慮に入れる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
それぞれのシリンダー(3)の中に捕捉される空気の前記質量(m)は、第1の乗算係数(K
1)および第2の乗算係数(K
2)の関数として計算され、前記第1の乗算係数(K
1)は、前記吸気バルブ(5)
の前記開放角度の前記基準値に対する差の前記角度範囲(VVT
I)、および、前記排気バルブ(7)
の前記開放角度の前記基準値に対する差の前記角度範囲(VVT
E)を考慮に入れ、前記第2の乗算係数(K
2)は、前記内燃エンジン(1)の前記回転の速度(n)、および、前記排気バルブ(7)
の前記開放角度の前記基準値に対する差の前記角度範囲(VVT
E)を考慮に入れる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記内燃エンジン(1)は、EGR排気ガス再循環回路(EGR
LP、EGR
HP)をさらに含み、そして、前記EGR排気ガス再循環回路(EGR
LP、EGR
HP)は、バイパスダクト(34、26)を含み、前記バイパスダクト(34、26)に沿って、EGRバルブ(35、27)が配置されており、前記EGRバルブ(35、27)は、前記バイパスダクト(34、26)を通って流れる前記排気ガスの流量を調節するように設計されており、前記方法は、それぞれのシリンダー(3)に関して前記EGR
排気ガス再循環回路(EGR
LP、EGR
HP)を通して再循環させられる質量(M
EGR)の関数として、それぞれのシリンダー(3)の中に捕捉される空気の前記質量(m)を特定するステップを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記シリンダー(3)の前記燃焼室の前記死体積V
CCは、前記内燃エンジン(1)の前記回転の速度nおよび第1のパラメーター(TVC)の関数であり、前記第1のパラメーター(TVC)は、代替的に、前記排気バルブ(7)の前記閉鎖遅角(EVC)に等しく、または、ゼロと、前記排気バルブ(7)の前記閉鎖遅角(EVC)と前記吸気バルブ(5)の開放進角(IVO)の値に-1を掛けたものとの間の最小値との間の最大値に等しい、請求項
2または3に記載の方法。
【請求項11】
前記シリンダー(3)の前記燃焼室の前記死体積(V
CC)は、第3のマップおよび第4のマップによって特定され、前記第3のマップは、前記内燃エンジン(1)の前記回転の速度(n)および第1のパラメーター(TVC)の関数であり、前記第1のパラメーター(TVC)は、代替的に、前記排気バルブ(7)の前記閉鎖遅角(EVC)に等しく、または、ゼロと、前記排気バルブ(7)の前記閉鎖遅角(EVC)と前記吸気バルブ(5)の前記開放進角(IVO)の値に-1を掛けたものとの間の最小値との間の最大値に等しく、前記第4のマップは、前記内燃エンジン(1)の前記回転の速度(n)および前記オーバーラップ局面(OVL)の前記持続期間の関数である、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、
測定されるおよび/または推定される物理量を使用する計算モデルに基づいて、トルク要求(C
t*)を満たすためにそれぞれのシリンダー(3)によって必要とされる燃焼空気の質量(m
obj)を特定するさらなるステップと、
前記トルク要求(C
t*)を満たすためにそれぞれのシリンダー(3)によって必要とされる燃焼空気の前記質量(m
obj)の関数として
、および、それぞれのシリンダー(3)の実際の内側体積(V)の関数とし
て、前記モデルに基づいて、前記吸気マニホールド(4)の内側の目標圧力値(P
OBJ)を決定するさらなるステップとを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記内燃エンジン(1)は、バルブ(12)を含み、前記バルブ(12)は、排気ガスおよび新鮮な空気、すなわち、前記吸気マニホールド(4)に向けて方向付けられる前記吸気ダクト(8)を通って外側から来る空気の両方を含む前
記混合物の流量を調節するように設計されており、前記方法は、前記吸気マニホールド(4)の内側の前記目標圧力値(P
OBJ)を取得するように、前記バルブ(12)を制御するステップを含む、
請求項4を引用する場合の請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、前記オーバーラップを通って流れる質量(M
OVL)、すなわち、前記吸気バルブ(5)および前記排気バルブ(7)を通って流れる質量(M
OVL)と、前記シリンダー(3)の前記燃焼室の内側に存在しており、前記それぞれの排気バルブ(7)を通して前記排気マニホールド(6)に向けて直接的に方向付けられる排気ガスの前記残留質量(M
EXH_SCAV)との間の差によって、前記排気マニホールド(6)に向けて直接的に方向付けられる前記吸気マニホールド(4)の内側の新鮮な空気の質量(M
SCAV)を計算するさらなるステップを含む、請求項
3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本特許出願は、2018年11月8日に出願されたイタリア特許出願第102018000010164号の優先権を主張し、その開示全体は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、内燃エンジンのそれぞれのシリンダーの中に捕捉される空気の質量を特定する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
知られているように、ターボチャージャー過給システムによって過給される内燃エンジンは、それぞれのシリンダーの中へ燃料を噴射する複数のインジェクターを含み、それぞれのシリンダーは、少なくとも1つのそれぞれの吸気バルブによって吸気マニホールドにそれぞれ接続されており、また、少なくとも1つのそれぞれの排気バルブによって排気マニホールドにそれぞれ接続されている。
【0004】
吸気マニホールドは、排気ガスおよび新鮮な空気、すなわち、吸気ダクトを通って外側から来る空気の両方を含むガス混合物を受け入れ、吸気ダクトは、新鮮な空気フローのための空気フィルターを設けられており、スロットルバルブによって調整される。吸気ダクトに沿って、好ましくは、空気フィルターの下流に、空気流量計も設けられている。
【0005】
空気流量計は、電子制御ユニットに接続され、内燃エンジンによって取り込まれる新鮮な空気の流量を検出するように設計されたセンサーである。内燃エンジンによって取り込まれる新鮮な空気の流量は、とりわけ、排気マニホールドの下流の排気ダクトの中の所与の空気/燃料比を取得するように、シリンダーの中へ噴射されるべき燃料の量を決定するために、エンジン制御に関する極めて重要なパラメーターである。しかし、空気流量計は、典型的に、非常に高価で極めて繊細なコンポーネント(油蒸気およびダストがそれを汚す可能性があるため)であり、したがって、内燃エンジンによって取り込まれる新鮮な空気の流量の値の読み値を変更する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、内燃エンジンのそれぞれのシリンダーの中に捕捉される空気の質量を特定する方法であって、前記方法は、実装されるのに容易かつ経済的である、方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲において特許請求されているような内燃エンジンのそれぞれのシリンダーの中に捕捉される空気の質量を特定する方法が提供される。
【0008】
ここで、本発明は、その非限定的な実施形態を示す添付の図面を参照して説明されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明による方法を実装する電子制御ユニットを設けられた内燃エンジンの好適な実施形態を概略的に示す図である。
【
図2】
図1のエンジンのシリンダーを詳細に示す図である。
【
図3】
図1のエンジンの吸気バルブおよび排気バルブのオーバーラップ局面を概略的に示す図である。
【
図4】
図1のエンジンの吸気バルブおよび排気バルブのオーバーラップ局面を概略的に示す図である。
【
図5】本発明による方法の中で使用される関数βの進展を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1および
図2では、数字1は、全体として、内燃エンジンを示しており、内燃エンジンは、好ましくは、ターボチャージャー過給システムによって過給されている。
【0011】
内燃エンジン1は、複数のインジェクター2を含み、複数のインジェクター2は、4つのシリンダー3(好ましくは、1列に配置されている4つのシリンダー)の中へ燃料を直接的に噴射し、4つのシリンダー3は、少なくとも1つのそれぞれの吸気バルブ5(
図3に示されている)によって吸気マニホールド4にそれぞれ接続されており、また、少なくとも1つのそれぞれの排気バルブ7(
図2に示されている)によって排気マニホールド6にそれぞれ接続されている。それぞれのシリンダー3に関して、対応するインジェクター2が設けられている。
図2に示されている実施形態によれば、噴射は、間接的な噴射であり、したがって、それぞれのインジェクター2は、吸気マニホールド4をシリンダー3に接続する吸気ダクト8の中において、シリンダー3の上流に配置されている。本明細書には示されていない代替的な実施形態によれば、噴射は、直接的な噴射であり、したがって、それぞれのインジェクター2は、シリンダー3のクラウン端部(crown end)を通してシリンダー3の内側に部分的に配置されている。
【0012】
図1によれば、それぞれのシリンダー3は、それぞれのピストン9を収容しており、ピストン9は、コネクティング・ロッドによって、ドライブシャフト10に機械的に接続されており、公知の様式で、シリンダー3の内側の燃焼によって発生させられる力をドライブシャフト10自身に伝達するようになっている。
【0013】
吸気マニホールド4は、(より詳細に下記に説明されているような)排気ガスおよび新鮮な空気、すなわち、吸気ダクト8を通して外側から来る空気の両方を含むガス混合物を受け入れ、吸気ダクト8は、好ましくは、新鮮な空気フローのための空気フィルターを設けられており、スロットルバルブ12によって調整されており、スロットルバルブ12は、好ましくは、電子的に制御されるバルブであり、閉鎖位置および最大開放位置との間で移動可能である。そのうえ、空気流量計は、吸気ダクト8に沿って設けられていない。
【0014】
吸気バルブ5および/または排気バルブ7は、VVT(可変バルブタイミング)デバイスによって制御され、VVTデバイスは、吸気バルブ5および/または排気バルブ7を動作させるシャフトに液圧式に作用し、それぞれ、ドライブシャフトに対するその傾斜を変化させる。
【0015】
とりわけ、それぞれの排気バルブ7の位置は、カムシャフト13によって直接的に制御され、カムシャフト13は、ドライブシャフト10の運動を受け取る。同様に、それぞれの吸気バルブ5の位置は、カムシャフト14によって直接的に制御され、カムシャフト14は、ドライブシャフト10の運動を受け取る。
【0016】
吸気パイプ8に沿って、好ましくは、中間冷却器が配置されており、中間冷却器は、取り込まれた空気を冷却する機能を果たし、好ましくは、吸気マニホールド4の中に埋め込まれている。排気マニホールド6は、排気ダクト18に接続されており、排気ダクト18は、燃焼によって作り出される排気ガスを排気システムへ給送し、排気システムは、燃焼によって作り出されるガスを大気中へ放出し、また、通常は、少なくとも1つの触媒コンバーター(必要である場合には、ディーゼル粒子フィルターを設けられている)と、触媒コンバーターの下流に配置されている少なくとも1つのサイレンサーとを含む。
【0017】
内燃エンジン1の過給システムは、タービンおよび圧縮機を設けられたターボチャージャーを含み、タービンは、排気ダクト18に沿って配置されており、シリンダー3から排出される排気ガスの作用に起因して高速で回転するようになっており、圧縮機は、吸気ダクト8に沿って配置されており、タービンに機械的に接続されており、給送ダクト8の中に存在する空気の圧力を増加させるために、タービン自身によって回転させられるようになっている。
【0018】
上記の説明は、明示的に、ターボチャージャーによって過給される内燃エンジン1に言及している。代替的に、上記に説明されている制御方法は、たとえば、動的なまたは容積式の圧縮機によって過給されるエンジンなど、任意の過給される内燃エンジンの中に有利な用途を見出すことが可能である。
【0019】
好適な変形例によれば、排気ダクト18に沿って、バイパスダクトが設けられており、バイパスダクトは、タービンに並列に接続されており、タービン自身の上流および下流に接続されたその端部を有するようになっている。
【0020】
内燃エンジン1は、有利には、そのうえ、高圧排気ガス再循環回路EGRHPを含み、そして、高圧排気ガス再循環回路EGRHPは、バイパスダクトを含み、バイパスダクトは、4つのシリンダー3、吸気マニホールド4、および排気マニホールド6から構成されるアッセンブリに並列に接続されている。バイパスダクトに沿って、EGRバルブが設けられており、EGRバルブは、バイパスダクトを通って流れる排気ガスの流量を調節するように設計されており、電気モーターによって制御されている。バイパスダクトに沿って、EGRバルブの下流に、熱交換器が設けられており、熱交換器は、排気マニホールドから流れ出るガスを冷却する機能を果たす。
【0021】
代替的に、吸気ダクト8に沿って、バイパスダクトが設けられており、バイパスダクトは、圧縮機に並列に接続されており、圧縮機自身の上流および下流に接続されたその端部を有するようになっている。バイパスダクトに沿って、バルブPoffが設けられており、バルブPoffは、バイパスダクトを通って流れる空気の流量を調節するように設計されており、電気アクチュエーターによって制御されている。
【0022】
内燃エンジン1は、電子制御ユニット30によって制御されており、電子制御ユニット30は、内燃エンジン1のすべてのコンポーネントの動作を制御する。とりわけ、電子制御ユニット30は、圧縮機の上流で吸気ダクト8に沿って温度Toおよび圧力Poを測定するセンサーに接続されており、また、スロットルバルブ12の上流で吸気ダクト8に沿って温度および圧力を測定するセンサーに接続されており、また、吸気マニホールド4の中に存在するガス混合物の温度および圧力を測定するセンサー31に接続されている。そのうえ、電子制御ユニット30は、ドライブシャフト10の角度位置(ひいては、回転速度)を測定するセンサーに接続されており、また、触媒コンバーターの上流の排気ガスの空気/燃料比を測定するセンサー(典型的に、UHEGOまたはUEGOリニア酸素センサー(それは、公知であり、詳細には説明されない))に接続されており、最後に、吸気バルブおよび/または排気バルブのストロークを測定するセンサーに接続されている。
【0023】
好適な変形例によれば、内燃エンジン1は、最後に、低圧排気ガス再循環回路EGRLPを含み、そして、低圧排気ガス再循環回路EGRLPは、バイパスダクトを含み、バイパスダクトは、排気ダクト18から、好ましくは、触媒コンバーターの下流から生じており、吸気ダクト8の中へ、好ましくは、圧縮機の上流につながっている。バイパスダクトは、ターボチャージャーに並列に接続されている。バイパスダクトに沿って、EGRバルブが設けられており、EGRバルブは、バイパスダクトを通って流れる排気ガスの流量を調節するように設計されている。また、バイパスダクトに沿って、EGRバルブの上流に、熱交換器が設けられており、熱交換器は、排気マニホールド6から流れ出て圧縮機の中へ流れ込むガスを冷却する機能を果たす。
【0024】
電子制御ユニット30の中には、計算モデルが記憶されており、計算モデルは、なかでも、(それぞれのサイクルに関して)それぞれのシリンダー3の中に捕捉される空気の質量m、および、内燃エンジン1によって取り込まれる空気の質量MTOTを特定するために使用される。
【0025】
モデルは、複数の入力パラメーターを含み、複数の入力パラメーターの中には、回転数(rpm)、吸気マニホールド4の中の圧力値、および、他の周辺条件(たとえば、吸気マニホールド4の内側の温度、および、過給される内燃エンジン1の中で使用される冷却剤流体の温度など)が存在する。
【0026】
VVTデバイスは、吸気バルブ5のタイミング、および、排気バルブ7との交差のタイミング(すなわち、吸気バルブ5および排気バルブ7が同時に開く間の局面)を変化させるので、モデルは、それぞれのシリンダー3に関する以下の入力パラメーターも同様に知ることを必要とする。いくつかのパラメーターは、(上死点TDCおよび下死点BDCに関して)
図5に概略的に図示されている。
IVC
ref 吸気バルブ5の基準閉鎖角度;
IVO
ref 吸気バルブ5の基準開放角度;
EVC
ref 排気バルブ7の基準閉鎖角度;
EVO
ref 排気バルブ7の基準開放角度;
IVC 吸気バルブ5の閉鎖進角;
IVO 吸気バルブ5の開放進角;
EVC 排気バルブ7の閉鎖進角;および、
EVO 排気バルブ7の開放進角。
【0027】
上記に列挙された入力パラメーターを通して、以下の量が定義される。
VVTI=IVC-IVCref=IVO-IVOref [1]
VVTE=EVO-EVOref=EVC-EVCref [2]
VVTI 吸気バルブ5に関して基準値に対する開放または閉鎖の差の角度の範囲;および、
VVTE 排気バルブ7に関して基準値に対する開放または閉鎖の差の角度の範囲。
【0028】
それぞれのサイクルに関してそれぞれのシリンダー3の中に捕捉される空気の質量mを特定するために、モデルは、理想気体の法則(文献から公知である)を使用する。理想気体の法則によれば、
m=(P*V)/(R*T) [3]
P 吸気マニホールド4の内側のエンジンサイクルに関する圧力の平均;
T 吸気マニホールド4の内側の新鮮な空気および/または排気ガスの混合物の温度;
R 新鮮な空気および/または排気ガスの混合物の定数;
V それぞれの吸気バルブ5およびそれぞれの排気バルブ7が閉じられているときのシリンダー3の内側体積。
【0029】
理想気体の法則[3]は、新鮮な空気および/または排気ガスの混合物の定数Rを組み込むことによって、モデルのために実験的に調節され、それぞれのサイクルに関してそれぞれのシリンダー3の中に捕捉される空気の質量mは、以下の通り表現されるようになる。
m=P*V*f1(T,P)*f2(TH2O,P) [4]
ここで、TH2Oは、内燃エンジン1の温度である(好ましくは、内燃エンジン1の冷却剤液体の温度を通して表現される)。
【0030】
パラメーターP、V、Tは、他方では、公式[3]に関して上記に説明されている意味を有している。
【0031】
最後に、理想気体の法則[4]は、充填モデルに関して実験的にさらに調節され、それぞれのサイクルに関してそれぞれのシリンダー3の中に捕捉される空気の質量mが、以前の作業サイクルの中の燃焼によって作り出されてシリンダー3の内側に存在しているガス(それらがシリンダー3から流れ出なかったため、または、それらがシリンダー3の中へ再び吸い込まれたため)を考慮に入れるようになっている。
m=(P*V-OFF)*f1(T,P)*f2(TH2O,P) [5]
ここで、OFFは、以前の作業サイクルの中の燃焼によって作り出されてシリンダー3の内側に存在しているガス(それらがシリンダー3から流れ出なかったため、または、それらがシリンダー3の中へ再び吸い込まれたため)を考慮に入れた変数(質量)である。
【0032】
繰り返しになるが、パラメーターP、V、Tは、公式[3]に関して上記に説明されている意味を有している。
【0033】
基準条件において、モデルをキャリブレートするために、内燃エンジン1の温度TH2O、すなわち、内燃エンジン1の冷却剤液体の温度は、90℃に等しいと仮定され、温度Tは、40℃に等しいと仮定される。
【0034】
上述の関数f1およびf2は、それぞれ、関数f1に関しては、吸気マニホールド4の内側の圧力P、および、吸気マニホールド4の内側の温度Tの関数として、また、関数f2に関しては、吸気マニホールド4の内側の圧力P、および、内燃エンジン1の温度TH2Oの関数として、(2d)マップを通して実験的な局面において定義される。基準条件(たとえば、吸気マニホールド4の内側の基準温度は、25℃に等しい)において、関数f1およびf2は、ユニタリー値を有するということが明白である。
【0035】
シリンダー3の内側体積Vは、それぞれの吸気バルブ5の閉鎖進角IVCの関数として、可変である(幾何学的な観点から)。実際に、実際のシリンダー3の内側体積Vは、シリンダー3の燃焼室の死体積VCC(すなわち、それぞれのピストン9によって掃気されない体積)と、それぞれの吸気バルブ5の閉鎖までそれぞれのピストン9によって掃気される体積Vcとの総和から結果として生じる(すなわち、上死点PMSに対するクランクの回転の角度の)。
【0036】
以降では、αによって示されるクランク角度のエリアの中のシリンダー3の内側体積Vを計算するために使用される運動学的な法則(文献から公知であり、詳細には説明されない)を見出すことが可能である。
V(α)=VCC+VC(α)
【0037】
【0038】
V シリンダー3の内側体積;
VCC シリンダー3の燃焼室の死体積;
α 上死点PMSに対するクランクの回転の角度;
r クランク半径;
S ピストン9の表面積;
L コネクティング・ロッドの長さ;
d シリンダー3の軸線とドライブシャフト10の回転軸線との間のオフセット;
λ r/L比;および、
δ d/L比。
【0039】
好適な変形例によれば、一般的に言えば、シリンダー3の内側体積Vは、それぞれの吸気バルブ5の閉鎖進角IVCによって表される幾何学的因子の関数として、内燃エンジン1の回転の速度n(または、回転数rpm)によって表される動的因子によって、および、吸気マニホールド4の内側のエンジンサイクルに関して測定される圧力Pによって可変である。
【0040】
とりわけ、シリンダー3の内側体積Vを特定するための法則[6]が、2つの関数fvおよびfpを導入することによって、モデルに関して実験的に調節され、以下の通り表現される。
V=fV(IVC,n)*fP(P,n) [7]
【0041】
パラメーターP、n、IVCは、すでに上記に議論されている意味を有している。
【0042】
そのうえ、任意のエンジンサイクルの吸気ストロークの始めにおいて、シリンダー3の内側には、以前のエンジンサイクルの燃焼の残留ガスも存在しているという事実を考慮に入れるべきである。
【0043】
幾何学的な観点から、以前のエンジンサイクルの燃焼の残留ガスによって占有される体積は、シリンダー3の燃焼室の死体積VCC、および、シリンダー3の内側のそれぞれのピストン9によって掃気される体積VCの総和を通して表現され得る。
【0044】
シリンダー3の内側のピストン9によって掃気される体積VCは、パラメーターTVCの関数として可変であり、それは、より良好に下記に説明されている。
【0045】
とりわけ、第1の変形例によれば、シリンダー3の内側のピストン9によって掃気される体積VCは、それぞれの排気バルブ7の閉鎖に続いてそれぞれの吸気バルブ5が開くケースでは、それぞれの排気バルブ7が閉じる瞬間まで前記ピストン9によって掃気される体積に対応している。
【0046】
第2の変形例によれば、シリンダー3の内側のピストン9によって掃気される体積VCは、それぞれの吸気バルブ5の開放に続いてそれぞれの排気バルブ7が閉じるケースでは、それぞれの吸気バルブ5が開く瞬間まで前記ピストン9によって掃気される体積に対応している。
【0047】
第3の変形例によれば、シリンダー3の内側のピストンによって掃気される体積VCは、それぞれの吸気バルブ5の開放の瞬間が前記上死点PMSの前であるケースでは、上死点PMSまでの前記ピストン9によって掃気される体積に対応している。このケースでは、シリンダー3の内側のそれぞれのピストンによって掃気される体積VCはゼロであり、シリンダー3の内側体積Vは、シリンダー3の燃焼室の死体積VCCに対応しているということが明白である。
【0048】
換言すれば、パラメーターTVCは、代替的に、排気バルブ7の閉鎖進角EVCに対応することが可能であり、または、ゼロと、排気バルブ7の閉鎖進角EVCと吸気バルブ5の開放進角IVOとの間の最小値との間の最大値に対応することが可能である。
【0049】
VVTシステムは、吸気バルブ5のタイミング、および、排気バルブ7とのそれらのオーバーラップのタイミングを変化させるので、モデルは、また、それぞれの吸気バルブ5とそれぞれの排気バルブ7との間のオーバーラップ局面の間に流れる質量流量の特定を可能にする。下記の説明では、オーバーラップという用語は、それぞれの吸気バルブ5およびそれぞれの排気バルブ7が同時に開いている局面(時間間隔)を定義している。
【0050】
図4に概略的に示されているものによれば、以下の幾何学的な量が、(上死点TDCに対して、および、下死点BDCに対して)定義される。
OVL 排気バルブ7の閉鎖進角EVCと吸気バルブ5の開放進角IVOとの間に含まれるオーバーラップ局面の持続期間;
G それぞれの吸気バルブ5とそれぞれの排気バルブ7との間のオーバーラップ局面の重心;
g 上死点PMSと重心Gとの間の差。
【0051】
以降では、ダクトの断面を通る(または、オリフィスを通る)質量流量を計算するために使用される法則(文献から公知であり、詳細には説明されない)を見出すことが可能である。このケースでは、法則は、吸気バルブ5および排気バルブ7を通って排気から吸気へ流れる質量MOVLを計算するために使用される。
【0052】
【0053】
A 通路断面の面積;
CD 流量係数;
P 通路断面の下流の圧力;
P0 通路断面の入口部における圧力;
T0 通路断面の入口部における温度;
R 通路断面の中に流れる流体の定数;
B 以下の式[8']によって表現されるフロー圧縮性関数。
【0054】
【0055】
ここで、Kは、一定の圧力における比熱Cpと一定の体積における比熱Cvとの間の比を表している。
【0056】
法則[8]は、下記の式[9]にしたがって、オーバーラップ局面が始まる瞬間t1とオーバーラップ局面が終了する瞬間t2との間でそれを積分することによって、モデルに関して実験的に調節される。
【0057】
【0058】
変数dtをdθ/ω(ここで、θは、エンジン角度を表しており、ωは、内燃エンジン1の回転の速度を表している)と交換する場合には、以下の式[10]を取得する。
【0059】
【0060】
最後に、内燃エンジン1の回転の速度ωがオーバーラップ局面の間に一定であると仮定すると、式[10]は、以下の式[11]で簡単化され得る。
【0061】
【0062】
先行する式において、AISは、等エントロピーエリアを表している。
【0063】
電子制御ユニット30の内側において、式[11]は、モデルに関してさらに実験的に調節され、以下の通り質量MOVLを取得するようになっている。
【0064】
【0065】
Sid 理想断面;
n 内燃エンジン(1)の速度;
P0_REF 通路断面の上流の基準圧力;
T0_REF 通路断面の上流の基準温度;
T0 通路断面の上流の温度;
P0、P それぞれ、通路断面の上流および下流の圧力;ならびに、
Β 圧縮比。
【0066】
通路の理想断面Sidは、2つの関数の積から取得され、ここで、第1の関数Aは、内燃エンジン1の速度nおよびパラメーターOVLの関数として可変の(2d)マップを通して実験的に特定され、一方、第2の関数Gは、内燃エンジン1の速度nおよびパラメーターgの関数として可変の(2d)マップを通して実験的に特定される。
【0067】
シリンダー3の燃焼室は、(好ましくは、それぞれのバルブ5、7の上流および下流の)通路断面であると考えられる。吸気圧力が排気圧力よりも大きいケースでは、考慮に入れられるべき「上流」の圧力および温度は、吸気バルブ5の上流の圧力および温度であり(したがって、吸気マニホールド4の中に存在するセンサーによって測定される)、一方、考慮に入れられるべき「下流」の圧力および温度は、排気バルブ7の下流の圧力および温度であり、ひいては、排気ガスの圧力および温度である(典型的に、モデルから取得されるか、または、可能な場合には、専用のセンサーによって測定される)。
【0068】
排気圧力が吸気圧力よりも大きい場合には、逆のロジックが適用される。すなわち、考慮に入れられるべき「下流」の圧力および温度は、吸気バルブ5の上流の圧力および温度であり(したがって、吸気マニホールド4の中に存在するセンサーによって測定される)、一方、考慮に入れられるべき「上流」の圧力および温度は、排気バルブ7の下流の圧力および温度であり、ひいては、排気ガスの圧力および温度である(典型的に、モデルから取得されるか、または、可能な場合には、専用のセンサーによって測定される)。
【0069】
両方のケースにおいて、エンジンサイクルにわたって、すなわち、ドライブシャフト10の回転の720°にわたって、平均値を取り扱っている。
【0070】
排気マニホールド6の中の圧力が吸気マニホールド4の中の圧力よりも大きいケースでは、燃焼によって作り出される排気ガスの一部分は、燃焼室から吸気マニホールド4に向かって流れる。それに続く燃焼サイクルの間に、前記排気ガス部分が、次いで、吸気バルブ5を通して燃焼室の中へ再び導入されることとなる。この動作モードは、「内側EGR」として示され、公式[12]は、下流圧力P0を排気圧力PEXHと交換することによって、および、下流温度T0を排気温度TEXHと交換することによって調節される。したがって、このケースでは、質量MOVLは、以下の通り表現される。
【0071】
【0072】
「内側EGR」の質量MEGRIは、以下の通り表現され得る。
MEGRI=MOVL+PEXH*VCC/(R*TEXH) [14]
【0073】
量MOVL、PEXH、VCC、R、およびTEXHは、すでに上記に議論された意味を有している。
【0074】
吸気マニホールド4の中の圧力が排気マニホールド6の中の圧力よりも大きいケースでは、オーバーラップ局面の間の吸気マニホールド4の内側の新鮮な空気のMSCAVによって示される一部分が、それぞれの排気バルブ7を通して排気マニホールド6に向けて直接的に方向付けられ、また、燃焼室の内側に存在する排気ガスの残留流量MEXH_SCAVを排気マニホールド6に向けて引っ張る。他方では、この現象は、「掃気」として示され、公式[12]は、下流圧力P0を(吸気マニホールド4の中へ流れ込む)流入空気の圧力Pと交換することによって、上流圧力Pを排気圧力PEXHと交換することによって、および、下流圧力T0を(吸気マニホールド4の中へ流れ込む)流入空気の温度TAIRと交換することによって調節される。したがって、このケースでは、質量MOVLは、以下の通り表現される。
【0075】
【0076】
燃焼室の内側に存在しており、排気マニホールド6に向けて引っ張られる排気ガスの残留流量MEXH_SCAVは、以下の通り表現され得る。
MEXH_SCAV=fSCAV(MOVL,n)*PEXH*VCC/(R*TEXH) [16]
【0077】
量MOVL、n、PEXH、VCC、R、およびTEXHは、すでに上記に議論された意味を有している。関数fSCAVは、内燃エンジン1の速度nおよび質量MOVLの関数として可変の(2d)マップを通して実験的に特定される。
【0078】
オーバーラップ局面の間にそれぞれの排気バルブ7を通して排気マニホールド6に向けて直接的に方向付けられる吸気マニホールド4の内側の新鮮な空気の部分MSCAVは、したがって、以下の通り表現され得る。
MSCAV=MOVL-MEXH_SCAV [17]
【0079】
換言すれば、排気マニホールド6に向けて直接的に方向付けられる吸気マニホールド4の内側の新鮮な空気の部分MSCAVは、燃焼室の内側に存在しており、排気マニホールド6に向けて引っ張られる、排気ガスの残留流量MEXH_SCAVを、質量MOVLからマイナスしたものに等しい。
【0080】
モデルは、最後に、変数OFFを特定するために適しており、それは、以前の作業サイクルの中の燃焼によって作り出されてシリンダー3の内側に存在しているガス(それらがシリンダー3から流れ出なかったため、または、それらがシリンダー3の中へ再び吸い込まれたため)を考慮に入れる。変数OFFの計算は、作業条件の関数として、とりわけ、吸気マニホールド4の中の圧力と排気マニホールド6の中の圧力との間の比の関数として変化する。
【0081】
排気マニホールド6の中の圧力が吸気マニホールド4の中の圧力よりも大きいケースでは(「内側EGR」動作モード)、変数OFFは、公式[14]を通して表現される「内側EGR」の合計質量MEGRIに対応している。
【0082】
他方では、吸気マニホールド4の中の圧力が排気マニホールド6の中の圧力よりも大きいケースでは(「ウォッシング」動作モード)、変数OFFは、以下の公式[16]を通して表現される。
OFF=PEXH*VCC/(R*TEXH)-MEXH_SCAV [18]
【0083】
吸気マニホールド4の中の圧力が排気マニホールド6の中の圧力よりも大きいケースでは、実際に、以前の作業サイクルの中の燃焼によって作り出されてシリンダー3の内側に存在しているガス(それらがシリンダー3から流れ出なかったため)は、オーバーラップ局面の間にそれぞれの排気バルブ7を通して排気マニホールド6に向けて少なくとも部分的に直接的に方向付けられる。以前の作業サイクルの中の燃焼によって作り出されてシリンダー3の内側に存在しているガスの流量全体が、オーバーラップ局面の間に排気マニホールド6に向けて直接的に方向付けられるケースでは、変数OFFによって仮定される値は、実質的にプラスであるかまたはゼロに等しい。電子制御ユニット30は、変数OFFをゼロ値に飽和させるように構成されている。
【0084】
さらなる変形例によれば、シリンダー3の燃焼室の動的なおよび冷却の効果に起因して、変数OFFがマイナスの値をとるケースでは、電子制御ユニット30は、変数OFFをマイナスの値に飽和させるように構成されている。
【0085】
さらなる変形例によれば、理想気体の法則[5]は、シリンダー3の中に捕捉される空気の質量mを推定するために、下記の公式[19]および[20]によって表現される方式でさらに一般化され得る。
m=(P*V-OFF)*Kt*K1(VVTI,VVTE)*K2(VVTE,n) [19]
m=(P*V(IVC,n)*K(P,n)-OFF)*Kt*K1*K2 [20]
【0086】
Ktは、以前に議論された関数f1(T,P)およびf2(TH2O,P)の積を表しており、
OFFは、以前の作業サイクルの中の燃焼によって作り出されてシリンダー3の内側に存在しているガス(それらがシリンダー3から流れ出なかったため、または、それらがシリンダー3の中へ再び吸い込まれたため)を考慮に入れる変数(質量)であり、
K1(VVTI,VVTE)は、吸気バルブ5の基準値に対する差の角度範囲VVTI、および、排気バルブ7の基準値に対する差の角度範囲VVTEを考慮に入れる乗算係数であり、
K2(VVTE,n)は、排気バルブ7の基準値に対する差の角度範囲VVTE、および、内燃エンジン1の回転の速度n(または、回転数rpm)を考慮に入れる乗算係数である。
【0087】
シリンダー3の中に捕捉される空気の質量mを取得するために使用される法則[19]は、排気ガスの空気/燃料比の目標値を取得するために、シリンダー3の中へ噴射されるべき燃料の量を計算するためのモデルとして使用される。換言すれば、それぞれのサイクルに関してそれぞれのシリンダー3の中に捕捉される空気の質量mが、モデルを通して特定されると、電子制御ユニット30は、前記シリンダー3の中へ噴射されるべき燃料の量を決定するように構成されており、排気ガスの空気/燃料比の目標値が到達されることを可能にする。
【0088】
好適な実施形態によれば、電子制御ユニット30の中には、また、計算チェーンが記憶されており、計算チェーンは、アクセルペダルに作用することによってユーザーにより作製されるトルクに関する要求から、トルク要求を満たすためにそれぞれのシリンダー3によって必要とされる燃焼空気の質量mobjを提供することができる。計算チェーンは、ユーザーがアクセルペダルに作用することを要求し、したがって、電子制御ユニット30の中に記憶されているマップを通して、および、内燃エンジン1の回転の速度n(または、回転数)を知ることを通して、ドライブシャフト10に要求されるトルクCrを特定する。ドライブシャフト10に要求されるトルクCrは、次いで、好ましくは、ポンピングトルクに、および、補助エレメントのトルクに追加され、ドライブシャフト10に要求される合計トルクCtを取得するようになっている。次いで、それぞれのシリンダー3に関して要求されるトルクCt*が計算される。それぞれのシリンダー3に関して要求されるトルクCt*が特定されると、計算チェーンは、それぞれのシリンダー3によって必要とされる燃焼空気の質量mobjを特定し、前記トルク値Ct*を取得するように構成されている。
【0089】
前記トルク値Ct*を取得するためにそれぞれのシリンダー3によって必要とされる燃焼空気の質量mobjが取得されると、電子制御ユニット30は、上記に議論されているものに対して逆の様式で、モデルの法則[19]または[20]を使用するように設計されている。換言すれば、それぞれのシリンダー3によって必要とされる燃焼空気の質量mobjの所与の値に関して(それは、このケースでは、公式[19]または[20]においてそれぞれのサイクルに関してそれぞれのシリンダー3の中に捕捉される空気の質量mに対応している)、法則[19]または[20]は、吸気マニホールド4の内側の目標圧力値POBJを計算するために使用される。とりわけ、それぞれのサイクルに関してそれぞれのシリンダー3の中に捕捉される空気の質量mを、それぞれのシリンダー3によって必要とされる燃焼空気の質量mobjと交換することによって、および、吸気マニホールド4の内側のエンジンサイクルに関する圧力の平均Pを、公式[20]における吸気マニホールド4の内側の目標圧力値POBJと交換することによって、以下の法則[21]が取得される。
POBJ=[mobj/(Kt*K1*K2)+OFF]/(V(IVC,n)*K(P,n)) [21]
【0090】
スロットルバルブ12は、電子制御ユニット30によって制御され、吸気マニホールド4の内側において、法則[21]を通して特定される目標圧力値POBJを取得するようになっている。
【0091】
電子制御ユニット30の内側に記憶されているモデルは、測定されるおよび/または推定される物理量(たとえば、温度値および圧力値など)、ならびに、測定されるおよび/または目標の物理量(たとえば、吸気バルブ5のVVTタイミング、および、排気バルブ7とのそれらのオーバーラップのVVTタイミングなど)を使用する。
【0092】
内燃エンジン1が低圧排気ガス再循環回路EGRLPを含むケースでは、低圧回路EGRLPを通して再循環させられる合計質量MEGR_TOTが、公式[8]を通して計算され、公式[8]は、上記の説明の中で議論された。
【0093】
他方では、それぞれのシリンダー3に関して低圧回路EGRLPを通して再循環させられる質量MEGRは、以下の公式を通して計算される。
MEGR=MEGR_TOT/(n*120*NCYL) [22]
n 内燃エンジン1の回転の速度(または、回転数rpm);
NCYL シリンダー3の数;および、
MEGR_TOT モデルを備えた電子制御ユニット30によって計算されるか、または、代替的に、専用のセンサーによって測定される、低圧回路EGRLPを通して再循環させられる合計質量。
【0094】
MEGR それぞれのシリンダー3に関して低圧回路EGRLPを通して再循環させられる質量。
【0095】
したがって、法則[19]および[20]は、低圧回路EGRLPを通して再循環させられる質量MEGRも考慮に入れるために、以下の通りさらに一般化され得る。
m=(P*V-OFF)*Kt*K1*K2-MEGR [23]
m=(P*V(IVC,n)*K(P,n)-OFF)*Kt*K1*K2-MEGR [24]
【0096】
Ktは、以前に議論された関数f1(T,P)およびf2(TH2O,P)の積を表しており、
OFFは、以前の作業サイクルの中の燃焼によって作り出されてシリンダー3の内側に存在しているガス(それらがシリンダー3から流れ出なかったため、または、それらがシリンダー3の中へ再び吸い込まれたため)を考慮に入れる変数(質量)であり、
MEGRは、それぞれのシリンダー3のためのEGR回路を通して再循環させられる質量であり、
K1 K2は、吸気バルブ5の基準値に対する差の角度範囲VVTI、排気バルブ7の基準値に対する差の角度範囲VVTE、および、内燃エンジン1の回転の速度n(または、回転数rpm)を考慮に入れる経験的な乗算係数である。
【0097】
上記の説明は、それぞれのシリンダー3に関して低圧回路EGRLPを通して再循環させられる質量MEGRの計算を取り扱っており、上記の説明は、また、同等の様式で、高圧排気ガス再循環回路EGRHPのケースにも適用され得る。
【0098】
最後に、内燃エンジン1によって取り込まれる空気の合計質量MTOTは、以下の公式を通して計算される。
MTOT=(m+MSCAV+MEXH_SCAV)*NCYL [23]
MTOT 内燃エンジン1によって取り込まれる空気の合計質量;
m それぞれのシリンダー3の中に捕捉される空気の質量;
MSCAV それぞれのシリンダー3に関してオーバーラップ局面の間にそれぞれの排気バルブ7を通して排気マニホールド6に向けて直接的に方向付けられ、公式[17]によって取得される、吸気マニホールド4の内側の新鮮な空気の部分;
MEXH_SCAV 以前のサイクルからシリンダー3の中に存在しており、排気のときに掃気フローによって排出される排気ガスの質量;
NCYL シリンダー3の数。
【0099】
他方では、吸気マニホールド4の圧力が排気マニホールド6の中の圧力よりも大きいケースでは、以前の作業サイクルの中の燃焼によって作り出されてシリンダー3の内側に存在しているガスOFFの質量が、以下の式を通して計算される。
OFF=PEXH*VCC/(R*TEXH)-MEXH_SCAV
PEXH 排気の中のガスフローの圧力;
TEXH 排気の中のガスフローの温度;
VCC シリンダー3の燃焼室の死体積;
MEXH_SCAV シリンダー3の燃焼室の内側に存在しており、それぞれの排気バルブ7を通して排気マニホールド6に向けて直接的に方向付けられる、排気ガスの残留質量;および、
R 新鮮な空気および/または排気ガスの混合物の定数。
【0100】
内燃エンジン1が低圧ガス再循環回路を含む場合には、方法は、吸気ダクト6の中を流れるガス混合物の上の低圧回路のインシデンス(incidence)を示す量REGRを計算するさらなるステップを含み、
REGR=MEGR_LP/MTOT
MTOT 吸気ダクト6を通って流れるガス混合物の質量;
MEGR_LP 吸気ダクト6の中を流れる低圧回路を通して再循環させられる排気ガスの質量;
また、方法は、以前の作業サイクルの中の燃焼によって作り出されてシリンダー3の内側に存在しているガスの質量OFFを以下の式によって計算するさらなるステップを含む。
OFF=PEXH*VCC/(R*TEXH)-MEXH_SCAV*(1-REGR)
【0101】
以前の作業サイクルの中の燃焼によって作り出されてシリンダー3の内側に存在しているガスの流量全体が、オーバーラップ局面の間にそれぞれの排気バルブ7を通して排気マニホールド6に向けて直接的に方向付けられるケースでは、以前の作業サイクルの中の燃焼によって作り出されてシリンダー3の内側に存在しているガスの質量OFFは、ゼロに等しくなる(飽和されている)ことが引き起こされる。
【0102】
他方では、排気ガスの前記残留質量MEXH_SCAVは、吸気バルブ5および排気バルブ7を通って吸気から排気へ流れる質量MOVLの関数として計算される。排気ガスの前記残留質量MEXH_SCAVは、内燃エンジン1の回転の速度nの関数として計算される。排気ガスの前記残留質量MEXH_SCAVは、有利には、排気の中のガスフローの圧力PEXHおよび温度TEXH、ならびに、シリンダー3の燃焼室の死体積VCCの関数として計算される。
【0103】
排気ガスの前記残留質量MEXH_SCAVは、とりわけ、以下の式によって計算される。
MEXH_SCAV=f(MOVL,n)*PEXH*VCC/(R*TEXH) [14]
PEXH、TEXH 排気の中のガスフローの圧力および温度;
VCC シリンダー3の燃焼室の死体積;
n 内燃エンジン1の回転の速度;
MOVL 排気から吸気へ流れ、吸気ストロークの間に吸気バルブ5を通ってシリンダー3の中へ再び吸い込まれる質量;
【0104】
排気ガスの前記残留質量MEXH_SCAVは、以下の式によって計算される。
MEXH_SCAV=MOVL*f(MOVL,n)*g1(G,n)
n 内燃エンジン1の回転の速度;
MOVL 吸気バルブ5および排気バルブ7を通って吸気から排気へ流れる質量;ならびに、
G オーバーラップ局面の重心。
【0105】
関数g1は、それぞれ、内燃エンジン1の回転の速度nおよびオーバーラップ局面の重心Gの関数として、(2d)マップを通して、実験的な局面において定義される。
【0106】
前記質量MOVLは、以下の式によって特定される。
【0107】
【0108】
Sid 理想断面;
n 内燃エンジン(1)の速度;
P0_REF 通路断面(または、オーバーラップ)の上流の基準圧力;
T0_REF 通路断面(または、オーバーラップ)の上流の基準温度;
T0 通路断面(または、オーバーラップ)の上流の温度;および、
P0、P それぞれ、通路断面(または、オーバーラップ)の上流および下流の圧力。
【0109】
関数βの進展が、圧縮性因子P/P
0の関数として
図5に示されている。関数βは、内燃エンジン1の速度nの関数として実験的に特徴付けられる。
【0110】
理想断面Sは、内燃エンジン1の速度nおよびオーバーラップ局面の持続期間OVLの第1の関数A(オーバーラップ局面の間に、それぞれの吸気バルブ5およびそれぞれの排気バルブ7は、同時に開いている)と、内燃エンジン1の速度nおよび上死点PMSとオーバーラップ局面の重心Gとの間の角度差の第2の関数Gとの間の積によって計算される。
【0111】
それぞれのシリンダー3の中に捕捉される空気の質量(m)が、複数の(2つの)乗算係数K1、K2の関数としてさらに計算され、乗算係数K1、K2は、吸気バルブ5の基準値に対する差の角度範囲VVTI、排気バルブ7の基準値に対する差の角度範囲VVTE、および、内燃エンジン1の回転の速度nを考慮に入れる。
【0112】
とりわけ、それぞれのシリンダー3の中に捕捉される空気の質量mは、第1の乗算係数K1および第2の乗算係数K2の関数として計算され、第1の乗算係数K1は、吸気バルブ5の基準値に対する差の角度範囲VVTI、および、排気バルブ7の基準値に対する差の角度範囲VVTEを考慮に入れ、第2の乗算係数K2は、内燃エンジン1の回転の速度n、および、排気バルブ7の基準値に対する差の角度範囲VVTEを考慮に入れる。
【0113】
内燃エンジン1が排気ガス再循環回路EGRLP、EGRHPをさらに含むケースでは、方法は、また、それぞれのシリンダー3に関して回路EGRLP、EGRHPを通して再循環させられる質量MEGRの関数として、それぞれのシリンダー3の中に捕捉される空気の質量mを特定することを必要とする。
【0114】
したがって、それぞれのシリンダー3の中に捕捉される空気の質量mは、以下の公式によって計算される。
m=(P*V-OFF)*f1(T,P)*f2(TH2O,P)*-MEGR [22]
f1 f2 吸気マニホールド4の内側の温度T、内燃エンジン1の冷却剤流体の吸気圧力Pおよび温度TH2Oを考慮に入れる関数;
OFF 以前の作業サイクルの中の燃焼によって作り出されてシリンダー3の内側に存在しているガスの質量;
MEGR それぞれのシリンダー3に関してEGR回路を通して再循環させられる質量;
【0115】
シリンダー3の燃焼室の死体積VCCは、内燃エンジン1の回転の速度nおよび第1のパラメーターTVCの関数であり、第1のパラメーターTVCは、代替的に、排気バルブ7の閉鎖遅角EVCに等しく、または、ゼロと、排気バルブ7の閉鎖遅角EVCと吸気バルブ5の開放進角IVOの値に-1を掛けたものとの間の最小値との間の最大値に等しい。体積は、内燃エンジン1の回転の速度nおよび第1のパラメーターTVCの関数であるマップ、ならびに、内燃エンジン1の回転の速度nおよびオーバーラップ局面の持続期間OVLの関数であるマップによって特定される。
【0116】
方法は、測定されるおよび/または推定される物理量を使用する計算モデルに基づいて、トルク要求Ct*を満たすためにそれぞれのシリンダー3によって必要とされる燃焼空気の質量mobjを特定するステップと、トルク要求Ct*を満たすためにそれぞれのシリンダー3によって必要とされる燃焼空気の質量mobjの関数として、それぞれのシリンダー3の実際の内側体積Vの関数として、および、基準量の第1のグループの関数として、前記モデルに基づいて、吸気マニホールド4の内側の目標圧力値POBJを特定するステップとをさらに含む。方法は、吸気マニホールド4の内側の目標圧力値POBJを取得するために、スロットルバルブ12を制御するステップをさらに必要とする。
【0117】
最後に、方法は、吸気バルブ5に関する基準値に対する開放差または閉鎖差の第1の角度範囲VVTIを検出するステップと、吸気バルブ5の基準閉鎖角度IVCrefを獲得するステップと、それぞれの基準角度IVCrefによって、および、前記第1の角度範囲VVTIによって、吸気バルブ5の閉鎖遅角IVCを決定するステップとを含む。そのうえ、方法は、排気バルブ7に関する基準値に対する開放差または閉鎖差の第2の角度範囲VVTEを検出するステップと、排気バルブ7の基準閉鎖角度EVCrefを獲得するステップと、それぞれの基準角度EVCrefによって、および、前記第2の角度範囲VVTEによって、排気バルブ7の閉鎖遅角EVCを決定するステップとを含む。
【0118】
排気マニホールド6に向けて直接的に方向付けられる吸気マニホールド4の内側の新鮮な空気の質量MSCAVは、オーバーラップを通って流れる質量MOVLと、シリンダー3の燃焼室の内側に存在しており、それぞれの排気バルブ7を通して排気マニホールド6に向けて直接的に方向付けられる排気ガスの残留質量MEXH_SCAVとの間の差によって計算される。
【0119】
内燃エンジン1が低圧排気ガス再循環回路を含むケースでは、方法は、量REGRを計算するステップと、排気マニホールド6に向けて直接的に方向付けられる、吸気マニホールド4の内側の新鮮な空気の質量MSCAVを、以下の公式によって計算するステップとを含む。
MSCAV=(MOVL-MEXH_SCAV)*(1-REGR)
【0120】
次いで、シリンダー3の数、および、エンジン速度nを考慮に入れて(とりわけ、シリンダー3の数とエンジン速度nに1/2を掛けたものとを掛ける)、内燃エンジン1の流量を計算するために、それぞれのシリンダー3に関する質量、および、それぞれのエンジンサイクルに関する質量を使用することが可能である。
【0121】
上記の説明は、明示的に、過給される内燃エンジン1に関するが、本明細書で説明されている戦略は、過給システムには提供されていない内燃エンジン1の中の有利な用途を見出すことも可能である。
【0122】
本明細書で説明されているモデルの利点は、上記の説明から明白である。
【0123】
とりわけ、本明細書で説明されているモデルは、効率的であり(すなわち、十分な精度を有する)、効果的であり(すなわち、迅速に、および、過度の計算パワーを電子制御ユニット30に要求することなく)、および経済的である(すなわち、高価な追加的なコンポーネントおよび/またはセンサー、たとえば、空気流量計などの据え付けを要求することがない)とみなされる様式で、それぞれのシリンダー3の中に捕捉される空気の質量m、内燃エンジン1によって取り込まれる空気の合計質量MTOT、掃気質量MSCAV、および内側EGR質量MEGRIを、製造業者が特定することを可能にする方法を表している。
【符号の説明】
【0124】
1 内燃エンジン
2 インジェクター
3 シリンダー
4 吸気マニホールド
5 吸気バルブ
6 排気マニホールド、吸気ダクト
7 排気バルブ
8 吸気ダクト
9 ピストン
10 ドライブシャフト
12 スロットルバルブ
13 カムシャフト
14 カムシャフト
18 排気ダクト
30 電子制御ユニット
31 センサー
TDC 上死点
BDC 下死点
IVC 吸気バルブ5の閉鎖進角
IVO 吸気バルブ5の開放進角
EVC 排気バルブ7の閉鎖進角
EVO 排気バルブ7の開放進角
G オーバーラップ局面の重心
g 上死点PMSと重心Gとの間の差
OVL オーバーラップ局面の持続期間
VVTI 吸気バルブ5の基準値に対する差の角度範囲
VVTE 排気バルブ7の基準値に対する差の角度範囲