(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】圧力調整装置、及び排水管構造
(51)【国際特許分類】
E03C 1/122 20060101AFI20231207BHJP
E03C 1/28 20060101ALI20231207BHJP
F16L 55/07 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
E03C1/122 A
E03C1/28 B
F16L55/07 B
(21)【出願番号】P 2019225171
(22)【出願日】2019-12-13
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 樹
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-206901(JP,A)
【文献】特開2016-217096(JP,A)
【文献】登録実用新案第3099342(JP,U)
【文献】特開2019-196612(JP,A)
【文献】特開平09-126333(JP,A)
【文献】特開2001-262655(JP,A)
【文献】特開2004-019131(JP,A)
【文献】特開2019-203271(JP,A)
【文献】特開2017-145677(JP,A)
【文献】特公昭49-041053(JP,B1)
【文献】英国特許出願公開第02547408(GB,A)
【文献】実開平06-054994(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12 - 1/33
F16L 55/00 - 55/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性材料で形成され、2つの開口部を有する拡縮可能な筒体と、
前記筒体の一方の開口部に連結され、前記筒体の内部と外気との間で通気を行う通気部と、
一方の前記開口部を覆うように前記筒体に取り付けられると共に前記通気部が取り付けられ、前記筒体と前記通気部とを連通する第1連通孔を備えた出口カバーと、
他方の前記開口部を覆うように前記筒体に取り付けられ、排水管と前記筒体とを連通する第2連通孔を備えた入口カバーと、
前記入口カバーと前記出口カバーとに取り付けられ、前記筒体の周囲を取り囲む本体カバーと、
を有する圧力調整装置。
【請求項2】
前記本体カバーは、前記入口カバー、及び前記出口カバーを、軸方向と交差する方向から支持している、請求項
1に記載の圧力調整装置。
【請求項3】
前記本体カバーの内周面には、前記入口カバー、及び前記出口カバーと係合して前記入口カバー、及び前記出口カバーを支持する支持部が設けられている、請求項
2に記載の圧力調整装置。
【請求項4】
前記入口カバーと前記本体カバーとは相対回転可能とされ、
前記出口カバーと前記本体カバーとは相対回転を阻止する固定部によって相対回転が阻止されている、請求項
1~請求項
3の何れか1項に記載の圧力調整装置。
【請求項5】
弾性材料で形成され、2つの開口部を有する拡縮可能な筒体と、
前記筒体の一方の開口部に連結され、前記筒体の内部と外気との間で通気を行う通気部と、
を有し、
前記筒体の内部には、一方の前記開口部と他方の前記開口部とに連通する第1空間と、前記第1空間と連通して放射方向及び軸方向に延びる複数の第2空間とが設けられ、
軸線に交差する方向から見て、前記第1空間の最大幅は、前記第2空間の最大幅よりも大に設定されている
、圧力調整装置。
【請求項6】
弾性材料で形成され、2つの開口部を有する拡縮可能な筒体と、
前記筒体の一方の開口部に連結され、前記筒体の内部と外気との間で通気を行う通気部と、
を有し、
前記筒体は、径方向に延設され前記開口部が形成された基部と、前記基部に立設され軸方向及び放射方向に向けて延びて第2空間を区画する壁部と、を備え、
前記基部と少なくとも前記壁部の軸心側の部分とは、前記基部に対して傾斜した傾斜面を介して接続されている
、圧力調整装置。
【請求項7】
前記筒体と前記筒体の上側に配置される前記通気部との間にフロート弁が設けられており、前記フロート弁は、弁座、及び前記弁座の下方に離間して配置されて水に浮く弁体とを含んで構成されている、請求項1~請求項
6の何れか1項に記載の圧力調整装置。
【請求項8】
流入した排水を下方へ向けて流す流入部と、前記流入部の下方に設けられ、鉛直方向上側から水平方向に向けて下向きに湾曲する第1下り湾曲管部と、前記第1下り湾曲管部の排水方向下流側に設けられ、水平方向から鉛直方向上側へ上向きに向けて湾曲する第1上り湾曲管部と、前記第1上り湾曲管部の排水方向下流側に設けられ、鉛直方向下側から水平方向へ向けて上向きに湾曲する第2上り湾曲管部と、前記第2上り湾曲管部の排水方向下流側に設けられ、水平方向から鉛直方向下側へ向けて下向きに湾曲する第2下り湾曲管部と、を備えた管トラップと、
前記第2下り湾曲管部の上部に取り付けられる請求項1~請求項
7の何れか1項に記載の前記圧力調整装置と、
を有する排水管構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力調整装置、及び排水管構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧力緩和装置と通気手段とが設けられた排水管構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この排水管構造では、圧力緩和装置と通気手段とが設けられているため、排水配管の正圧を圧力緩和装置で抑制し、排水配管の負圧を通気手段で抑制することができる。しかしながら、圧力緩和装置と通気手段とが別々に設けられており、正圧、負圧の両方を調整しつつ、コンパクトな形状にすることについて改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、正圧、負圧の両方を調整しつつ排水管構造をコンパクトにすることが可能な圧力調整装置、及び排水管構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る圧力調整装置は、弾性材料で形成され、2つの開口部を有する拡縮可能な筒体と、前記筒体の一方の開口部に連結され、前記筒体の内部と外気との間で通気を行う通気部と、を有する。
【0007】
この圧力調整装置では、一例として、筒体の他方の開口部を、トラップの下流側の排水配管に接続して使用することができる。この圧力調整装置では、正圧を抑制する筒体と負圧を抑制する通気部とが連結され、通気部を連結した筒体を排水配管の1箇所に取り付けることができるため、通気部と筒体とを排水配管の別々の箇所に取り付ける場合に比較して、排水管構造をコンパクトにすることができる。
【0008】
一例として、トラップの下流側の排水配管内の圧力が外気圧よりも高くなった場合は、言い換えれば正圧となった場合、トラップの下流側に設けられた筒体が拡径、言い換えれば膨張することで、トラップ側へ作用する正圧が低減される。これにより、トラップの封水が上流側へ噴き出すこと、言い換えれば、正圧によるトラップの破封が抑制される。
【0009】
一方、トラップの下流側の排水配管内の圧力が外気圧よりも低くなった場合は、言い換えれば負圧になった場合、トラップの下流側に設けられた通気手段から外気が流入し、外気は筒体を介してトラップの下流側の排水配管内に流入する。これにより、トラップ側へ作用する負圧が低減され、トラップの封水が下流側へ吸い込まれること、言い換えれば、負圧によるトラップの破封を抑制することができる。
【0010】
第2の態様は、第1の態様に係る圧力調整装置において、一方の前記開口部を覆うように前記筒体に取り付けられると共に前記通気部が取り付けられ、前記筒体と前記通気部とを連通する第1連通孔を備えた出口カバーと、他方の前記開口部を覆うように前記筒体に取り付けられ、排水管と前記筒体とを連通する第2連通孔を備えた入口カバーと、前記入口カバーと前記出口カバーとに取り付けられ、前記筒体の周囲を取り囲む本体カバーと、を有する。
【0011】
この圧力調整装置では、弾性材料で形成された筒体の一方側に取り付けられた出口カバーと、筒体の他方側に取り付けられた入口カバーとが本体カバーに取り付けられている。一例として、通気部が取り付けられた出口カバーを入口カバーよりも上側に配置されるように圧力調整装置を配置した場合、通気部の重量を、出口カバー、本体カバーを介して入口カバーで支持することができる。即ち、通気部の重量が筒体に伝達されないので、筒体を潰すことなく拡縮させることができる。
【0012】
第3の態様は、第2の態様に係る圧力調整装置において、前記本体カバーは、前記入口カバー、及び前記出口カバーを、軸方向と交差する方向から支持している。
【0013】
この圧力調整装置では、本体カバーが、入口カバー、及び出口カバーを軸方向と交差する方向から支持しているため、弾性材料で形成された筒体に正圧、及び負圧が作用しても筒体の軸方向の変形は抑制される。このため、筒体に圧力変動が作用しても圧力調整装置を軸方向に動かないように抑えることができる。
【0014】
第4の態様は、第3の態様に係る圧力調整装置において、前記本体カバーの内周面には、前記入口カバー、及び前記出口カバーと係合して前記入口カバー、及び前記出口カバーを支持する支持部が設けられている。
【0015】
この圧力調整装置では、本体カバーの内周面に設けた支持部に入口カバー、及び出口カバーが係合することで、入口カバー、及び出口カバーが本体カバーに支持されているため、入口カバー、及び出口カバーに取り付けられた筒体に圧力変動が作用しても圧力調整装置を軸方向に動かないように抑えることができる。
【0016】
第5の態様は、第2~第4の態様の何れか1態様に係る圧力調整装置において、前記入口カバーと前記本体カバーとは相対回転可能とされ、前記出口カバーと前記本体カバーとは相対回転を阻止する固定部によって相対回転が阻止されている。
【0017】
この圧力調整装置では、入口カバーと本体カバーとは相対回転可能とされ、出口カバーと本体カバーとは相対回転を阻止する固定部によって相対回転が阻止されているため、筒体は出口カバーと本体カバーとに相対回転不能に一体的に連結され、筒体に取り付けられた入口カバーは、本体カバーに対して相対回転可能となる。
【0018】
したがって、組立時に、筒体を捩じること無く入口カバーと出口カバーと本体カバーと筒体とを一体化することができる。
また、一例として、出口カバーに通気手段を捩じ込んで取り付ける場合、出口カバーと相対回転不能とされる本体カバーを把持しておけば、出口カバーを回転させることなく通気手段を捩じ込むことができ、組立作業性が向上する。
【0019】
第6の態様は、第2~第5の態様の何れか1態様に係る圧力調整装置において、前記筒体の内部には、一方の前記開口部と他方の前記開口部とに連通する第1空間と、前記第1空間と連通して放射方向及び軸方向に延びる複数の第2空間とが設けられ、軸線に交差する方向から見て、前記第1空間の最大幅は、前記第2空間の最大幅よりも大に設定されている。
【0020】
この圧力調整装置では、筒体の内部が負圧になった場合、筒体は全体的に縮径し、第2空間を形成していた筒体の壁面同士が密着し、第2空間が消滅する場合が考えられる。しかし、筒体の一方の開口部と他方の開口部とを連通する第1空間の最大幅が、第2空間の最大幅よりも大に設定されているため、負圧の作用で第2空間が消滅した場合であっても、第1空間は幅が狭くはなるが、消滅を免れる。
そのため、負圧となった場合でも、筒体の一方の開口部と他方の開口部とは、第1空間を介して連通状態を維持し、通気部から導入した外気を、第1空間を介して排水配管側へ導入させることができる。
【0021】
第7の態様は、第1~第6の態様の何れか1態様に係る圧力調整装置において、前記筒体は、径方向に延設され前記開口部が形成された基部と、前記基部に立設され軸方向及び放射方向に向けて延びて第2空間を区画する壁部と、を備え、前記基部と少なくとも前記壁部の軸心側の部分とは、前記基部に対して傾斜した傾斜面を介して接続されている。
【0022】
この圧力調整装置では、第2空間を区画する壁部の少なくとも軸心側の部分と基部とを、傾斜面を介して接続することで、該壁部と基部とを直角に接続した場合に比較して、壁部と基部との連結部分が変形し易くなり、これにより、筒体全体が拡径し易くなり、正圧を吸収し易くなる。
【0023】
第8の態様は、第1~第7の態様の何れか1態様に係る圧力調整装置において、前記筒体と前記筒体の上側に配置される前記通気部との間にフロート弁が設けられており、前記フロート弁は、弁座、及び前記弁座の下方に離間して配置されて水に浮く弁体とを含んで構成されている。
【0024】
この圧力調整装置では、万が一、下流側から逆流してくる排水が筒体の内部を上昇してきた場合、フロート弁が排水に浮いて弁座に当接し、フロート弁と弁座との間の隙間を塞ぐので、排水が通気部へ侵入することが抑制される。これにより、逆流した排水が通気部を介して外部へ流出することが抑制される。
【0025】
なお、排水が筒体に侵入していない状態では、フロート弁は、弁座から下方に離間しているため、弁座とフロート弁との間の隙間を介して、通気部から導入した外気を排水配管へ通過させることができる。
【0026】
第9の態様に係る排水管構造は、流入した排水を下方へ向けて流す流入部と、前記流入部の下方に設けられ、鉛直方向上側から水平方向に向けて下向きに湾曲する第1下り湾曲管部と、前記第1下り湾曲管部の排水方向下流側に設けられ、水平方向から鉛直方向上側へ上向きに向けて湾曲する第1上り湾曲管部と、前記第1上り湾曲管部の排水方向下流側に設けられ、鉛直方向下側から水平方向へ向けて上向きに湾曲する第2上り湾曲管部と、前記第2上り湾曲管部の排水方向下流側に設けられ、水平方向から鉛直方向下側へ向けて下向きに湾曲する第2下り湾曲管部と、を備えた管トラップと、前記第2下り湾曲管部の上部に取り付けられる第1~第8の態様の何れか1態様に係る前記圧力調整装置と、を有する。
【0027】
この管トラップでは、流入部に排水が流入すると、該排水は、第1下り湾曲管部、第1上り湾曲管部、第2上り湾曲管部、及び第2下り湾曲管部を介して下流側へ排出され、第1下り湾曲管部、と第1上り湾曲管部及び第2上り湾曲管部の一部とで形成される湾曲部分に排水が溜まり、溜まった排水が封水となる。
第2下り湾曲管部は、水平方向から鉛直方向下側へ向けて下向きに湾曲しているので、排水の流れの向きが徐々に下方へ変更され、排水の向きが上向きになることが抑制されている部位である。
したがって、この第2下り湾曲管部の上部に圧力調整装置を取り付けることで、圧力調整装置に排水が逆流し難く、筒体の内部に排水が流入することを抑制でき、圧力調整装置の能力低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明の圧力調整装置、及び排水配管構造によれば、正圧、負圧の両方を調整しつつ排水管構造をコンパクトにすることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施形態に係る排水管構造が適用された建物の一部を示す断面図である。
【
図2】本発明の排水管構造に用いた管トラップを示す側面図である。
【
図3A】
図2に示す管トラップの軸線に沿った断面図である。
【
図5】圧力緩和装置を示す、一部を断面にした斜視図である。
【
図6】圧力緩和装置の弾性拡縮体を示す断面図である。
【
図7】変形例に係る圧力緩和装置を示す断面図である。
【
図9】一時貯留部、圧力低減配管及び立ち上がり部を示す断面図である。
【
図12】圧力低減配管の変形例1を示す斜視図である。
【
図13】圧力低減配管の変形例1を示す縦断面図である。
【
図14】圧力低減配管の変形例1を示す横断面図である。
【
図15】圧力低減配管の変形例2を示す縦断面図である。
【
図16】圧力低減配管の変形例3を示す縦断面図である。
【
図17】排水管構造において、第2排水系統の作用を模式的に示す断面図である。
【
図18】一時貯留部及び立ち上がり部の作用を模式的に示す断面図である。
【
図19】第2の変形例に係る整流部材を示す断面図である。
【
図20】第2の変形例に係る整流部材を示す側面図である。
【
図21】第2の変形例に係る整流部材を示す下面図である。
【
図22】第2の変形例に係る圧力緩和装置を示す斜視図である。
【
図23】第2の変形例に係る圧力緩和装置を示す軸線に沿った断面図である。
【
図24】カバーを外した圧力緩和装置を示す斜視図である。
【
図25】(A)は弾性拡縮体を示す斜視図であり、(B)は弾性拡縮体を示す軸線に沿った断面図(
図25(B)の25(B)-25(B)線断面図)である。
【
図26】(A)は弾性拡縮体を示す軸線方向から見た平面図であり、(B)は弾性拡縮体を示す軸線に直角な断面図(
図26(B)の26(B)-26(B)線断面図)であり、(C)は内部が負圧になった状態の弾性拡縮体を示す軸線に直角な断面図である。
【
図27】下側支持部材、及び上側支持部材が取り付けられた弾性拡縮体の断面を示す斜視図である。
【
図28】第1半割部材、及び第2半割部材を示す斜視図である。
【
図29】(A)は、通常時の弁体を示す斜視図であり、(B)逆流した排水により浮いて弁座の開口部を閉塞した弁体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。
図1において、本実施形態に係る排水管構造10は、第1の排水系統1と、第2の排水系統2と、サイホン排水管30と、第1の排水トラップとしての管トラップ24と、第2の排水トラップとしての一次排水トラップ202と、一時貯留部204と、圧力低減配管206と、立ち上がり部208と、を有している。
第1の排水系統1は、第1の水廻り機器の一例としての台所流し16からの排水を流す配管構造である。また、第2の排水系統2は、第2の水廻り機器の一例としての食洗機18からの排水を流す配管構造である。
【0031】
図1に示すように、住戸のスラブ12の上には、間隔をあけて床パネル14が配置されており、床パネル14の上には、第1の水廻り機器としての台所流し16、及び第2の水廻り機器としての食洗機18が配置されている。
【0032】
台所流し16の排水口16Aにはディスポーザ20が取り付けられている。ディスポーザ20の排水方向下流側には、配管22、水封式の管トラップ24、配管26が接続されている。
【0033】
配管26の排水方向下流側には、合流継手28、及びサイホン排水管30が配置されている。サイホン排水管30は、配管26と同じ内径とされた横引き管30A、及び竪管30Bを含んで構成されている。
【0034】
配管26の排水方向下流側の端部には、合流継手28を介してサイホン排水管30の横引き管30Aが接続されている。また、後述する食洗機18からの排水が排出される配管210が合流継手28に接続されている。
【0035】
横引き管30Aは、スラブ12の上に配置されており、サイホン排水管30の竪管30Bは、スラブ12に形成された縦孔32を介して垂下され、住戸の鉛直方向に延びる排水立て管34に接続されている。
【0036】
(管トラップ)
図2に示すように、本実施形態の管トラップ24は、側面視で略S字形状とされた、所謂水封式のトラップである。なお、本実施形態の管トラップ24には、後述する圧力調整装置65が接続されている。
【0037】
図3Aに示すように、本実施形態の管トラップ24は、配管22の下端部分を接続する流入側配管接続部36、略U字形状とされた第1屈曲管部38、第1屈曲管部38の排水方向下流側に形成される鉛直管部40、鉛直管部40の排水方向下流側に形成され略逆U字形状とされた第2屈曲管部42、第2屈曲管部42の排水方向下流側に形成される縮径管部44、縮径管部44の排水方向下流側に形成され、配管26の上端部分を接続する排出側配管接続部46を備えている。
【0038】
流入側配管接続部36は、軸線が鉛直方向とされた円筒形状に形成されている。流入側配管接続部36は、一例として、呼び径が30Aとされた配管22の下端部分が挿入される内径D1を有している。
【0039】
流入側配管接続部36の上端側の外周には、雄螺子36Aが形成されており、この雄螺子36Aには、配管22を固定する環状のナット48の雌螺子48Aが螺合する。
【0040】
流入側配管接続部36には、排水方向下流側の端部分に段部36Bが形成されている。この段部50には、流入側配管接続部36に挿入された配管22の下端部が突き当たる。
【0041】
第1屈曲管部38は、排水方向下流側に向けて内径が徐々に縮径しており、排水流入側端部における内径D2は配管22の内径(一例として、φ30mm)と同一内径であり、排水排出側端部における内径D3は、一例として、φ25mmである。
【0042】
なお、第1屈曲管部38において、排水方向上流側で上方向から横方向へ下向きに湾曲する部分が第1下り湾曲管部38Aとされ、排水方向下流側で横方向から上方向へ上向きに湾曲する部分が第1上り湾曲管部38Bとされている。
【0043】
ここで、第1屈曲管部38の軸線38CLの排水方向上流側の端部における接線L1は、流入側配管接続部36の軸線36CL(流入側配管接続部36に挿入された配管22の軸線22CLと同軸)に対して、角度θ1を有して交差している。
したがって、角度θ1を有して交差しない場合に比較して、流入側配管接続部36(配管22)から第1屈曲管部38へ流れる排水は、抵抗を受ける。
言い換えれば、第1屈曲管部38から流入側配管接続部36(配管22)へ気体が流れようとする場合にも、該気体は抵抗を受ける。ここで、「排水は、抵抗を受ける」と説明しているが、角度θ1を有して交差しない場合に比較しての説明であり、実際に台所流し16から排水を排出する際に問題となることは無い。
【0044】
第1下り湾曲管部38Aの軸線38ACLの曲率半径をR1、第1上り湾曲管部38Bの軸線の曲率半径をR2としたときに、R1>R2とされている。これら曲率半径R1、曲率半径R2は、各々単一の曲率半径である。
また、第1屈曲管部38の排水方向上流側端部(内径D2の記載部分)は、排水方向下流側端部(内径D3の記載部分)よりも低い位置にある。
【0045】
第1屈曲管部38の下部端には、筒状の清掃口52が設けられている。清掃口52の外周には、雄螺子52Aが形成されており、この雄螺子52Aにキャップ54の雌螺子54Aを螺合させて締め付けることで、キャップ54が清掃口52に取り付けられて清掃口52が塞がれる。なお、本実施形態では、第1屈曲管部38の下部端に清掃口52を設けたが、清掃口52は必要に応じて設ければよく、設けなくてもよい。
【0046】
第1上り湾曲管部38Bの排水方向下流側に配置される鉛直管部40は、円筒形状とされ、軸線40CLが鉛直方向とされている。この鉛直管部40の内径D4は、第1屈曲管部38の排水排出側端部における内径D3と同一内径(φ25mm)である。
【0047】
なお、鉛直管部40の軸線40CLと、第1上り湾曲管部38Bの軸線38CLの排水方向下流側の端部における接線L2とは、同軸的に一致する。
【0048】
鉛直管部40の排水方向下流側に配置される第2屈曲管部42は、排水方向下流側に向けて内径が徐々に縮径している。
【0049】
第2屈曲管部42において、排水方向上流側で下方向から横方向へ上向きに湾曲する部分が第2上り湾曲管部42Aとされ、排水方向下流側で横方向から下方向へ下向きに湾曲する部分が第2下り湾曲管部42Bとされている。
【0050】
第2屈曲管部42の排水流入側端部(鉛直管部40との接続部分)の内径D5は、鉛直管部40の内径D4と同一内径であり、第2屈曲管部42の排水排出側端部(縮径管部44との接続部分)の内径D6は、一例として、φ20mmである。
【0051】
第2屈曲管部42の軸線42CLの曲率半径はR3である。第2屈曲管部42の軸線42CLの排水方向上流側端部における接線L3と、鉛直管部40の軸線40CLとは、角度を有することなく同軸的に一致する(重なる)。
【0052】
第2下り湾曲管部42Bの排水方向中間部には、鉛直方向上側に延びて上方に開口する円筒状の圧力緩和装置取付部56が一体的に形成されている。圧力緩和装置取付部56の外周には雄螺子56Aが形成されており、この雄螺子56Aには、後述する圧力調整装置65の圧力緩和装置66に設けられた挿入管部82を固定する環状のナット57の雌螺子57Aが螺合する。
【0053】
圧力緩和装置取付部56の内部には、整流部材58が挿入されている。整流部材58は、圧力緩和装置取付部56に挿入される筒部58Aを備え、筒部58Aの下端には、一体的にフィン58Bが形成されている。フィン58Bは、第2下り湾曲管部42Bの内部に突出しており、上流側から流れてくる排水の向きを縮径管部44側へ誘導するように鉛直方向に対して傾斜している。言い換えれば、フィン58Bは、上流側から流れてくる排水が、後述する圧力調整装置65側へ流入し難くなるようにしている。
【0054】
第2下り湾曲管部42Bの排水方向の排水方向下流側に設けられる縮径管部44は、排水方向下流側に向けて内径が徐々に縮径した円筒形状であり、軸線44CLが鉛直方向とされている。縮径管部44の排水流入側端部(第2下り湾曲管部42Bとの接続部分)の内径は、第2下り湾曲管部42Bの排水方向下流側の端部の内径D6と同一内径である。一方、縮径管部44の排水排出側端部の内径D7は、一例としてφ16mmである。
【0055】
なお、第2屈曲管部42の軸線42CLの排水方向下流側端部における接線L4と、縮径管部44の軸線44CLとは、角度を有することなく同軸的に一致する(重なる)。
【0056】
縮径管部44の排水方向下流側には、円筒状の縮径管部44と同軸的に設けられている。なお、排出側配管接続部46には、排水方向上流側の端部分に、縮径管部44に向けて縮径する段部47が形成されている。この段部47には、排出側配管接続部46に挿入された配管26の上端部が突き当たる。
【0057】
排出側配管接続部46の下端側の外周には、雄螺子46Aが形成されており、この雄螺子46Aには、配管26を固定する環状のナット64の雌螺子64Aが螺合する。なお、本実施形態の排出側配管接続部46は、一例として、呼び径が20Aとされた配管26が挿入可能な内径D8を有している。
【0058】
この管トラップ24には、流入側配管接続部36、第1屈曲管部38、鉛直管部40、第2屈曲管部42に、台所流し16から排出される排水の一部が封水として貯留される。なお、
図3Aの符号Wsで示す2点鎖線は、通常時の封水の水面を表している。
【0059】
なお、管トラップ24に貯留される通常時の封水の液面Wsの高さは、第2屈曲管部42における屈曲半径内側の内部流路壁面の最上端部Ptの高さ位置と一致している。仮に、排水の液面Wsが最上端部Ptよりも上昇すると、排水は、最上端部Ptを超えて排水方向下流側へ流れ、最終的には、液面Wsは、最上端部Ptの高さ位置と一致する。
【0060】
また、
図3Bに示すように、本実施形態の管トラップ24において、封水の封水深さhは、略U字形状とされた第1屈曲管部38の管路上側内周面38UFの最下端Puから第2屈曲管部42における屈曲半径内側の内部流路壁面の最上端部Ptまでの鉛直方向に計測する寸法を指す。なお、封水深さhには、管トラップ24の破封を抑制するために、一例として、規格(一例として排水設備技術基準)で決められた寸法(一例として50mm以上)がある。
【0061】
管トラップ24において、排水流入側の端部、即ち、流入側配管接続部36の排水方向上流側の上端部36Tの高さ位置は、第1屈曲管部38の内部の管路における最下端部Pbと、第2屈曲管部42の最上端部Ptとの間に設けられることが好ましい。本実施形態では、流入側配管接続部36の上端部36Tの高さ位置が、第2屈曲管部42の最上端部Ptの高さ位置と同じ高さにある。
【0062】
(圧力調整装置)
本実施形態の圧力調整装置65は、圧力緩和装置66、逆止弁90、及び通気弁110を含んで構成されている。
(圧力緩和装置)
図4、及び
図5に示すように、圧力緩和装置取付部56に取り付けられる圧力緩和装置66は、ゴム等の弾性材料で形成された薄肉の弾性拡縮体68と、弾性拡縮体68の下端側を支持する下側支持部材70と、弾性拡縮体68の上端側を支持する上側支持部材72と、カバー74とを含んで構成されている。
【0063】
弾性拡縮体68は、自由状態の断面形状が、
図6に示すような略十字形状に形成された筒状の拡縮部68Aを備えている。拡縮部68Aの軸方向両端部には、径方向外側へ延びる円環状の基部68Bが一体的に形成されており、基部68Bの外周部には、弾性拡縮体68を下側支持部材70、及び上側支持部材72に取り付けるための環状の取付部68Cが一体的に形成されている。なお、取付部68Cの端部には、肉厚のリブ68Dが形成されている。
【0064】
図4、及び
図5に示すように、弾性拡縮体68の下側の取付部68Cは、下側支持部材70とカバー74との間に挟持されて固定され、リブ68Dは、下側支持部材70の外周に形成された環状溝78に挿入される。
【0065】
また、弾性拡縮体68の上側の取付部68Cは上側支持部材72とカバー74との間に挟持されて固定され、リブ68Dは、上側支持部材72の外周に形成された環状溝78に挿入される。
【0066】
下側支持部材70の中央にはテーパー形状の貫通孔80が形成されており、下面中央には貫通孔80と連通する挿入管部82が下方に向けて突出している。
図3Aに示すように、この挿入管部82が管トラップ24の圧力緩和装置取付部56に挿入されて、圧力緩和装置66が管トラップ24に取り付けられる。
【0067】
図4に示すように、上側支持部材72の中央にはテーパー形状の貫通孔84が形成されており、上面中央には貫通孔84と連通する筒状の逆止弁取付部86が上方に向けて突出している。この逆止弁取付部86の外周には雄螺子86Aが形成されている。
【0068】
(逆止弁)
図4に示すように、圧力緩和装置66の逆止弁取付部86には、逆止弁90が取り付けられている。
逆止弁90は、円筒状の本体92、球状の弁体94、キャップ96等を含んで構成されている。本体92の下部の内周には雌螺子92Aが形成されており、この雌螺子92Aに圧力緩和装置取付部56の逆止弁取付部86の雄螺子86Aを螺合して締め付けることで、逆止弁90が圧力緩和装置66に取り付けられる。
【0069】
本体92の内部には、内部を上下に隔てる隔壁98が形成されており、隔壁98の中央には上方に向けて凸となるドーム状の弁体支持部100が一体的に形成されている。弁体支持部100は、弁体94が下方の圧力緩和装置66に落下しないように、弁体94の下方への移動を阻止している。
【0070】
隔壁98には、弁体支持部100の径方向外側に複数の貫通孔102が形成されている。貫通孔102は、隔壁98の上側の空間と下側の空間とを連通し、排水、及び空気が通過可能となっている。
【0071】
球状の弁体94は、貫通孔102を介して排水が隔壁98の上側の空間に流入した際に、該排水に浮くように比重が設定されている。
【0072】
キャップ96には、本体92の上部外周に形成された雄螺子92Bが螺合する雌螺子96Aが形成されており、該雌螺子96Aを雄螺子92Bに螺合して締め付けることで、キャップ96が本体92に取り付けられる。
【0073】
キャップ96には弁座104が設けられており、弁座104の中央に弁孔106が形成されている。この弁孔106は、排水に浮かんだ弁体94で塞がれるようになっている。したがって、仮に圧力緩和装置66の内部に排水が浸入した場合であっても、逆止弁90の上方に該排水が流出することは抑制される。なお、逆止弁90は必要に応じて設ければよく、設けなくてもよい。
【0074】
(通気部)
逆止弁90の上部には、通気弁110が取り付けられている。本実施形態の通気弁110は、排水トラップや排水配管に取り付けられ、一般的な構造のものであるため、構造に関する説明は省略する。なお、通気弁110は、排水方向下流側が負圧となった際に、外気を取り込み、管トラップ24の破封(溜められた封水が負圧により排水方向下流側に吸引されて消失する)を抑制することができる。
通気弁110は、排水時に大気を吸い込んで管トラップ24の封水を保護し、平常時に弁閉して悪臭の漏れ等を防止するものである。通気弁110としては、公知のもの(一例として、特開2009-299866号公報に記載のもの)を用いることができる。
なお、「負圧」とは、排水管構造10が配置されている環境の外気よりも圧力が低いことを意味する。
【0075】
(圧力緩和装置の第1変形例)
図7には、
図4に示す圧力緩和装置66とは構造の異なる圧力緩和装置120が示されている。
図7に示す圧力緩和装置120は、基本的には
図4に示す圧力緩和装置66と同じ構成であり、一部の形状、及び部品が異なっている。なお、形状が異なっていても基本的に同じ構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0076】
本実施形態の圧力緩和装置120の弾性拡縮体68は、2点鎖線で示す自由状態では円筒形状であり、内部の圧力が上昇した際には実線で示すように径方向外側へ弾性変形して膨出し、圧力を緩衝することができる。
【0077】
弾性拡縮体68の取付部68Cは、外周側に配置されたリング122で固定されている。また、弾性拡縮体68の上端側を支持する上側支持部材72と、弾性拡縮体68の下端端側を支持する下側支持部材70とは、円筒状の支持部材124で連結されている。なお、支持部材124は径方向に2分割可能に構成されており、図示しないヒンジで連結されて開閉可能とされている。
【0078】
(逆止弁の第1変形例)
なお、
図4に示す逆止弁90、及び
図7に示す逆止弁90では、弁体94が球状であったが、弁体94を、一例として、
図8に示すような大径部112Aと弁孔106に進入する小径部112Bとを有した円柱形状の弁体112であってもよく、その形状は問わない。このような形状にすることで、大径部112Aの上面で止水を行うことができるという効果を奏し、球体のように点で止水を行わないので、止水機能が向上する。
【0079】
(第2の排水系統)
図1において、第2の排水系統2は、第2の水廻り機器の一例としての食洗機18からの排水を流す配管構造である。食洗機18の排水部には圧送ポンプ(図示せず)が内蔵されており、圧送ポンプにより排水を押し流すようになっている。食洗機18又は第2の排水系統2には、第2の排水トラップとしての一次排水トラップ202が設けられている。第2の排水系統2には、例えば第3の排水トラップとしての二次排水トラップ203、一時貯留部204、圧力低減配管206及び立ち上がり部208が設けられている。
図1においては、一次排水トラップ202が食洗機18に内蔵されている。なお、一次排水トラップ202が第2の食洗機18とは別に排水系統2に設けられていてもよい。この場合、二次排水トラップ203が一次排水トラップ202を兼ねていてもよい。
【0080】
第2の排水系統2は、サイホン排水管30の横引き管30Aのうち、第1の排水系統1より下流側に接続されている。具体的には、横引き管30Aにおける第1の排水系統1より下流側に合流継手28が設けられており、第2の排水系統における立ち上がり部208の下流側の配管210が、該合流継手28に接続されている。
【0081】
二次排水トラップ203は、第2の排水系統2における一次排水トラップ202と一時貯留部との間に設けられた、例えば下方に凸に湾曲したU字形の管トラップである。二次排水トラップ203の下流側の配管212は、上方に延びてから横方向に延び、一時貯留部204の入口204Aに接続されている。
【0082】
(一時貯留部)
図9において、一時貯留部204は、第2の排水系統2に設けられると共に入口204Aが出口204Bよりも高い位置に設けられ、第2の排水系統2における単位長さ当たりの容積が部分的に拡大されている。換言すれば、一時貯留部204は、排水を一時的に貯留可能なチャンバである。一時貯留部204は、例えば上下方向を軸心方向とする筒状(例えば円筒状又は四角筒状)に形成されている。具体的には、一時貯留部204は、円筒状の本体部214と、上部体216と、下部体218とを有して構成されている。上部体216は、上端と下端にそれぞれ大径部216A,216Bを有している。本体部214の内径は、配管212の内径よりも大きく設定されている。上端の大径部216Aには、例えば蓋部材220が着脱可能に嵌入されている。
図10では、蓋部材220(
図9)が取り外されている。このように蓋部材220を取り外すことにより、大径部216Aには開口部216Dが形成される。この開口部を清掃口として用いることが可能である。なお、蓋部材220を設けず、上部体216(一時貯留部204)の上端が閉塞された構成であってもよい。
【0083】
下端の大径部216Bには、本体部214の上端が例えば嵌入されている。大径部216A,216Bの間には、小径部216Cが設けられている。一時貯留部204の入口204Aは、小径部216Cに設けられている。
図11に示されるように、入口204Aは横方向を軸心方向としており、入口204Aの軸心X1は一時貯留部204の軸心Zに対して偏心している。
【0084】
下部体218の上端には、大径部218Aが設けられている。この大径部218Aには、本体部214の下端が例えば嵌入されている。一時貯留部204の出口204Bは、下部体218の下端部に設けられ、横方向を軸心方向としている。
図11に示されるように、出口204Bの軸心X2は、一時貯留部204の軸心Zに対して偏心していない。
【0085】
図9に示されるように、一時貯留部204において、出口204Bの軸芯方向における出口204Bと反対側の内面218Bは、一時貯留部204から排水が排出される際に、排水が出口204B側に向かうように湾曲している。換言すれば、内面218Bと出口204Bとの横方向距離は、下方に向かうにしたがって縮小している。同様の構成であれば、内面218Bは、斜面や、斜面と湾曲面の組合せ等であってもよい。
【0086】
(圧力低減配管)
図9において、第2の排水系統2における一時貯留部204と立ち上がり部208との間には、圧力低減配管206が設けられている。この圧力低減配管206は、第2の排水系統2における排水圧力を低減するための配管である。
図9に示される例では、圧力低減配管206は、折れ曲がった管路を有している。この管路は、一時貯留部204の径方向に振幅を有する波状に形成されており、例えば2か所の折返し部206A,206Bを有している。これにより、折返し部206A,206Bでは、排水の流れ方向がそれぞれ反転するようになっている。
【0087】
圧力低減配管206の構成はこれに限られず、
図12から
図16に示される構成であってもよい。
図12から
図14に示される変形例1例では、入口222と出口224がそれぞれ上下方向に設けられており、入口222と出口224の間に渦巻き部226が設けられている。入口222は渦巻き部226の中央側の端部に開口し、出口224は渦巻き部226の外側の端部に開口している。排水の流れ方向は、入口222から渦巻き226に入ったところで例えば上下方向から横方向に略直角に曲がる(
図13の曲がり部226A)。その後横方向のまま折返し部226Bで反転し、曲がり部226C,226Dでそれぞれ略直角に曲がる。そして、渦巻き部226から出口224へ出るところで横方向から上下方向に略直角に曲がる(
図14の曲がり部226E)。
【0088】
図15に示される変形例2では、圧力低減配管206が、内径が小径に変化する管路を有しており、内径が周期的に変化している。具体的には、圧力低減配管206が例えば直線的に延びる筒状に形成されている。圧力低減配管206の内面には、大径部228と小径部230が軸方向に交互に形成されている。大径部228と小径部230の境界は、例えば軸方向に直交する段差とされている。圧力低減配管206の両端は例えば何れも大径部228とされており、その一方が入口232とされ、他方が出口234とされている。
図16に示される変形例3では、圧力低減配管206が、枝管路236を有している。枝管路236は、上流(入口238)から下流(出口240)に向かう管路から分岐し、かつ末端が閉塞されている。この例では、入口238と出口240に向かって管路が略直角に曲がっており、その曲がり部における入口238からの延長上に枝管路236が設けられている。枝管路236の長さは、例えば管路の内径以下である。排水が枝管路236に一旦入り込み、排水の流れを阻害することで、該排水に圧力損失が生じるようになっている。
また、図示は省略するが、圧力低減配管が、入口から出口に向かう管路の内径が次第に拡径する構成であってもよい。更に、図示は省略するが、管路の内径が一旦拡径した後に縮径して通常の内径に戻る箇所が、管路に複数形成されていてもよい。換言すれば、管路の内壁がその軸方向に対してジグザグ状に形成されていてもよい。この内壁と軸方向がなす角度の範囲は、例えば30~40°であり、好適には33~36°である。
【0089】
なお、圧力低減配管206の構成はこれらに限られず、圧力低減配管206を流れる排水に圧力損失が生じる構成であればよい。例えば、管路の内面に突起を設けて乱流を発生させるようにしてもよい。
【0090】
(立ち上がり部)
図9において、立ち上がり部208は、第2の排水系統2における一時貯留部204とサイホン排水管30(
図1、
図17、
図18)との間に設けられた、一旦下がってから上がる部位である。立ち上がり部208は、U字形或いはS字形の管トラップのように封水を貯留できる構造であればよい。一例として、立ち上がり部208は、下がり部208Aと、最下部208Bと、上がり部208Cと、最上部208Dとを有している。
【0091】
下がり部208Aは、一時貯留部204の下流側に接続され、管路が下方に進む部位である。本実施形態では、圧力低減配管206が一時貯留部204の下流側に接続され、圧力低減配管206の下端の出口206Cが下がり部208Aに接続されている。一時貯留部204の下流側では、圧力低減配管206においても管路が下方に進むので、圧力低減配管206の一部が下がり部208Aを兼ねていると考えることもできる。圧力低減配管206が省略されている場合には、一時貯留部204の出口204Bから下方に延びる部位が下がり部208Aを構成する(
図17、
図18)。
【0092】
最下部208Bは、立ち上がり部208のうち最も低い位置にある。最上部208Dは、例えば水平な部分であるが、
図17、
図18に示されるように、水平でなくてもよい。上がり部208Cは、最下部208Bの下流側端部から例えば斜め上方に直線状に延びる部位である。上がり部208Cの形状は直線状に限られず、湾曲していてもよい。最上部208Dは、上がり部208Cの上端から例えば水平方向に延びる部位であり、立ち上がり部208において最も高い位置にある。最上部208Dは必ずしも水平部分を有している必要はなく、水平部分を省略して最上部208Dが配管210に直接接続されていてもよい。配管210は、立ち上がり部208の下流側の配管210であり、下方に延びて横引き管30A(サイホン排水管30)に接続されている(
図1、
図17)。
【0093】
立ち上がり部208の最上部208Dは、一時貯留部204の出口204Bの高さ以上の位置に設定されていてもよい。
図9における線Lは、一時貯留部204の出口204Bの底部の高さ位置を示している。この例では、最上部208Dにおける内面の天井部分208Eの高さ位置が、線Lの高さ以上の位置に設定されている。線Lの高さ以上の位置とは、線Lと等しい高さ位置、又は線Lの高さよりも高い高さ位置である。
【0094】
なお、最上部208Dの高さ位置を高くすれば一時貯留部204に貯留される排水242の量が多くなり、最上部208Dの高さ位置を低くすれば一時貯留部204に貯留される排水の量が少なくなる。
図17に示される例では、立ち上がり部208の最上部208Dは、一時貯留部204の出口204Bの高さよりも低い位置に設定されている。最上部208Dの高さ位置が低すぎると、一時貯留部204内の排水242が流出してしまうため、最上部208Dの高さ位置は、一時貯留部204に排水242を貯留可能な限度において、任意に変更することができる。
【0095】
(作用、効果)
次に、本実施形態の排水管構造10の作用、効果を説明する。
台所流し16の使用により台所流し16から排水が排出されると、排水はディスポーザ20、配管22、管トラップ24を介して配管26に至る。
【0096】
その後、排水は、サイホン排水管30の横引き管30A、及び竪管30Bを流れ、竪管30Bの一部が排水で満たされた状態で、竪管30B内の排水が重力により落下すると、竪管30Bの内部に竪管30Bにおける水頭差に対応するサイホン力が発生する。
【0097】
横引き管30A内の排水は、サイホン力によって竪管30Bに向かって吸引され、横引き管30A、及び竪管30B内が排水で満たされる満流流れとなって流速を増して横引き管30A、及び竪管30Bを流下し、台所流し16からの排水が、排水立て管34へ排出される。
【0098】
一方、食洗機18から排水が排出されると、排水が配管210の内部の空気を排水方向下流側へ押すため、横引き管30Aの内部の空気、及び配管が押されて横引き管30Aの内部が正圧になると共に、該正圧が配管26を介して管トラップ24側へも作用する。
なお、「正圧」とは、排水管構造10が配置されている環境の外気よりも圧力が高いことを意味する。
【0099】
ここで、食洗機18から瞬間的に排水が排出されると、横引き管30A、及び配管26に一時的に大きな正圧が作用する場合があり、これにより、封水が台所流し16側へ逆流して管トラップ24が破封する虞がある。また、食洗機18から瞬間的に多量の排水が排出されると、食洗機18から排出された排水が、管トラップ24側へ逆流し、管トラップ24を越流する場合がある。本実施形態では、以下のようにして管トラップ24の封水の破封、及び食洗機18から排出された排水が管トラップ24を越流することを抑制できる。
【0100】
(1) 食洗機18から瞬間的に排水が排出され、配管26内の正圧が瞬間的に高くなると、配管26内が正圧となり、配管26内の空気が管トラップ24の内部を逆流しようとするが、封水の排水方向下流側に設けられた圧力緩和装置66が、該正圧を緩衝することで、封水の破封(ここでは、空気の逆流による破封)が抑制される。
【0101】
(2) 次に、本実施形態の管トラップ24と従来構造の管トラップとを比較して、食洗機18から逆流した排水が、本実施形態の管トラップ24を越流し難い説明をする。
従来の管トラップは、
図3Bに示すように、本実施形態の第1屈曲管部38に相当する部分の側面視形状が、単一の曲率半径を有した円形状であり、本実施形態の管路上側内周面38UFに相当する管路上側内周面は、2点鎖線FC1で示す仮想円の一部の円弧形状となっている。なお、2点鎖線FC1で示す仮想円の直径は、P1とP2とを結ぶ直線の長さである。
【0102】
封水深さhは、一例として、規格等で決められた寸法があるため、従来の管トラップの封水の下流側の液面の位置は、2点鎖線FC1で示す円弧形状とされた管路上側内周面の最下端P’uから上方へhの高さ位置にある。
【0103】
即ち、本実施形態の管トラップ24の最上端部Ptに相当する従来の管トラップの最上端部P’tは、本実施形態の管トラップ24の最上端部Ptよりもαだけ低い位置にある。
【0104】
したがって、本実施形態の管トラップ24は、従来の管トラップと同じ高さ位置に取り付けた場合において、封水の水面Wsの位置を、従来の管トラップの封水の水面よりもαだけ高い位置に配置することができる。
【0105】
これにより、本実施形態の管トラップ24では、下流側の食洗機18から排出されて上昇した排水、即ち、逆流した排水が、管トラップ24に貯留した封水に到達し難くなり、管トラップ24の封水を越流することが抑制される。
【0106】
(3) なお、仮に、管トラップ24の封水の排水方向下流側が負圧になった場合には、通気弁110、及び圧力緩和装置66を介して管トラップ24の第2下り湾曲管部42Bに外気が導入され、封水に作用する負圧が低減され、負圧による破封を抑制することができる。
【0107】
(4) 本実施形態の管トラップ24では、水平方向距離Laよりも水平方向距離Lbを小さく設定しているので、水平方向距離Laと水平方向距離Lbとを同一にした場合に比較して、第1上り湾曲管部38Bの管路の立ち上がり具合が変わり、排水が流れ易くなる。
【0108】
(5) なお、台所流し16から排水が排出されると、排水はディスポーザ20、配管22、及び管トラップ24を順に流れる。管トラップ24の第2屈曲管部42を排水が流れる際に、排水は、第2下り湾曲管部42Bの内部に突出するフィン58Bによって縮径管部44側へ誘導されるので、台所流し16から排出される排水は、圧力緩和装置66に進入し難い。
【0109】
(6) 食洗機18からの排水時には、排水が一次排水トラップ202、一時貯留部204及び立ち上がり部208を通ってサイホン排水管30に流入する。サイホン排水管30の内部が満流となってサイホン力が発生することで、排水が下流側に吸引される。第2の排水系統2には一時貯留部204が設けられているので、食洗機18の排水圧力が大きく、排水の流量が大きくても、一時貯留部204でその排水を受け入れ、排水圧力を解放することができる。したがって、食洗機18からの排水時に、食洗機18より上流側に接続された第1の水廻り機器側への排水の逆流が抑制される。
【0110】
更に、一時貯留部204の入口204Aが横方向を軸心方向とし、入口204Aの軸心X1が一時貯留部204の軸心Zに対して偏心しているので(
図11)、一時貯留部204内の空気と排水242の入れ替えが生じ易い。具体的には、排水242が一時貯留部204の内壁に沿って下方へ流れることで、排水242の流入時に空気の抵抗を受け難い。したがって、一時貯留部204に排水242がスムーズに流入する。これによって、一時貯留部204からの空気の排出が抑制される。またこれによって、第1の水廻り機器側に流入する空気を減少させ、該第1の水廻り機器側の圧力上昇を抑制できる。
【0111】
また、一時貯留部204の出口204Bが横方向を軸心方向とし、出口204Bの軸心X2が一時貯留部204の軸心Zに対して偏心していないので(
図11)、一時貯留部204に流入した排水242が出口204Bに集まり易くなる。更に、一時貯留部204において、出口204Bの軸芯方向における出口204Bと反対側の内面が、一時貯留部204から排水242が排出される際に、排水242が出口204B側に向かうように湾曲しているので、出口204Bと反対側の内面に沿って流下した排水242が出口204Bに集まり易くなる。このため、出口204Bからの排水242の流出がスムーズになる。
【0112】
図17、
図18において、サイホン力の発生が終わったとき、第2の排水系統2においては、一次排水トラップ202から一時貯留部204内の上流側の部分に空気が残り、一時貯留部204内の下流側から立ち上がり部208まで排水242が残った状態となる。具体的には、一時貯留部204の下流側の立ち上がり部208には封水高さH1の封水が形成される。一方、第2の排水系統2における一時貯留部204より上流側は一次排水トラップ202で閉塞されているため、一時貯留部204に残った排水242が下流側に移動する(水位が下がる)ことに伴い、一次排水トラップ202から一時貯留部204内に残った空気が膨張する。したがって、一時貯留部204に残った排水242の水頭圧H2(排水が下流側へ移動しようとする力)と、一次排水トラップ202から一時貯留部204内の上流側における空気の膨張による負圧(排水の下流側へ移動を妨げる力)とが釣り合う位置まで、一時貯留部204内の水位が下がる。つまり、一時貯留部204内の水位は、上記した空気の膨張による負圧との関係で、排水が立ち上がり部208の最上部208Dを乗り越えられなくなる位置まで下がることになる。換言すれば、一時貯留部204には、その水位の排水242が貯留される。
【0113】
また、一次排水トラップ202とは別に二次排水トラップ203が設けられているので、一時貯留部204より上流側の管内の閉塞状態が形成され易くなる。これにより、該管内に一時貯留部204に排水を貯留するための負圧を安定して生じさせることができる。
【0114】
これにより、一時貯留部204の一部から立ち上がり部208までの管路が排水242で満たされるため、立ち上がり部208からサイホン排水管30までの管路内において空気が少ない状態を保つことができる。またこれによって、次回の食洗機18からの排水時に第1の水廻り機器側に流入する空気を減少させ、該第1の水廻り機器側の圧力上昇を抑制できる。また、一時貯留部204に溜まる排水242の水面が一定に保たれ、湿潤と乾燥を繰り返すことがないため、一時貯留部204に汚れが蓄積し難い。
【0115】
更に、一時貯留部204は、第2の排水系統2における単位長さ辺りの容積が部分的に拡大された部位であるので、一時貯留部204の内部が排水242で密になることがない。したがって、サイホン力は、一時貯留部204より上流側(食洗機18側)にはほとんど及ばす、一次排水トラップ202の封水や二次排水トラップ203の封水が破れ難い。
【0116】
更に、立ち上がり部208の最上部208Dが、一時貯留部204の出口204Bの高さ以上の位置に設定されているので、一時貯留部204から立ち上がり部208までを排水で満たし易くなる。
【0117】
また、第2の排水系統2に圧力低減配管206が設けられているので、食洗機18の排水圧力が大きく、排水242の流量が大きくても、圧力低減配管206で排水圧力を低減させ、排水速度が低下させることができる。したがって、食洗機18からの排水時に、食洗機18より上流側に接続された第1の水廻り機器側への排水242の逆流が抑制される。
【0118】
図9、
図13、
図14の変形例1に係る圧力低減配管206では、折れ曲がった管路を排水が通過する際に、該排水に圧力損失を生じさせることができる。
図15の変形例2に係る圧力低減配管206では、内径が小径に変化する管路を排水242が通過する際に、該排水に圧力損失を生じさせることができる。このため、排水圧力を低減させることができる。
図16の変形例3に係る圧力低減配管206では、排水の一部が枝管路236に入り込むことで、排水に圧力損失を生じさせることができる。このため、排水圧力を低減させることができる。このように、各種の圧力低減配管206により、排水圧力を低減させることができる。
【0119】
このように、本実施形態によれば、1つのサイホン排水管30に複数の水廻り機器が接続される排水管構造において、下流側に接続された水廻り機器からの排水時における上流側の水廻り機器側への逆流と該水廻り機器側の圧力上昇を抑制することができる。
【0120】
本実施形態の圧力調整装置65は、圧力緩和装置66と通気弁110とが一体化されて管トラップ24に取り付けられているため、圧力緩和装置66と通気弁110とを管トラップ24の別々の箇所に取り付ける場合に比較して、排水管構造10をコンパクトにすることができる。
【0121】
本実施形態の圧力調整装置65では、通気弁110の重量を、上側支持部材72、カバー74を介して下側支持部材70で支持することができ、弾性拡縮体68を潰すことなく拡縮させることができる。
【0122】
本実施形態の圧力調整装置65では、弾性拡縮体68が上側支持部材72、カバー74、及び下側支持部材70で支持されているため、弾性拡縮体68に圧力変動が作用しても、圧力調整装置65を軸方向に動かないように抑えることができる。
【0123】
[整流部材の第2変形例、及び圧力緩和装置の第2変形例]
次に、上記実施形態で説明した圧力緩和装置66の第2変形例、及び整流部材58の第2変形例を
図19乃至
図21にしたがって説明する。
【0124】
(整流部材の第2変形例)
図19乃至
図21に示す第2変形例に係る整流部材300は、全体がゴム、合成樹脂等の弾性体で形成されており、弾性変形可能となっている。整流部材300は、圧力緩和装置取付部56に挿入される筒部300Aを備えている。
【0125】
筒部300Aの上端には、フランジ300Cが形成されている。フランジ300Cが圧力緩和装置66の挿入管部82の下端と圧力緩和装置取付部56の内周面に形成された段部との間に挟持されることで整流部材300が圧力緩和装置取付部56に固定されている。
【0126】
図19、及び
図20に示すように、筒部300Aの下端には、筒部300Aの軸線に対して傾斜した開口部302が形成されている。開口部302は、排水方向上流側が排水方向下流側よりも上側となるように傾斜している。このため、開口部302は、正面視すると略楕円形状(図示は省略)となっている。
【0127】
開口部302の上端側には、開口部302を開閉する弁体の役目をするフィン300Bの一端が一体的に連結されている。フィン300Bの一端部分と開口部302との連結部分304は、ヒンジの役目をしており、この連結部分304を支点としてフィン300Bは揺動(
図19の矢印A方向、及び矢印A方向とは反対方向)して開口部302を開閉することができる。なお、フィン300Bは、開口部302を閉塞するため、開口部302と同様の略楕円形状とされている。
【0128】
図19に示すように、通常時(排水が流れていない、自由状態)のフィン300Bは、第2下り湾曲管部42Bの内部に突出している。より詳しくは、第2下り湾曲管部42Bに設けられた圧力緩和装置取付部56の開口部分に、第2下り湾曲管部42Bの内周面に繋がる仮想線FLを設定したとき、フィン300Bは、該仮想線FLよりも、第2下り湾曲管部42Bの内側へ突出している。
なお、本実施形態では、フィン300Bを仮想線FLよりも、第2下り湾曲管部42Bの内側へ突出させているが、フィン300Bは必要に応じて突出させればよく、突出させなくてもよい。
【0129】
通常時、開口部302とフィン300Bとの間には隙間としてのスリットSが設けられており、通常時は開口部302からフィン300Bが離間している。したがって、通常時の整流部材300では、筒部300Aを介して空気を上下方向に通過させることができる。
【0130】
フィン300Bは、上流の台所流し16から流れてくる排水の向きを縮径管部44側へ誘導するように鉛直方向に対して傾斜している。言い換えれば、フィン300Bは、上流側から流れてくる排水が圧力緩和装置66側へ流入し難くなるように、排水の流れの向きを排水方向下流側の斜め下側へ向ける役目をしている。なお、フィン300Bは、第2下り湾曲管部42Bと同様に湾曲しており、排水は湾曲したフィン300Bに沿って流れるため、通常の排水の流れは阻害されないようになっている。
【0131】
ところで、第2下り湾曲管部42Bの内部に突出しているフィン300Bに対し、台所流し16から一時的に大量の排水が排出された場合(例えば、台所流し16に溜めた多量の水を一度に流した場合。所謂溜め流し。)には、フィン300Bが大量の排水に押されて矢印A方向に揺動し、開口部302を閉塞することができる。これにより、台所流し16から排出された排水が、圧力緩和装置66側へ逆流することを抑制しつつ、下流側へ効率的に流すことができる。
【0132】
フィン300Bが大量の排水に押されて矢印A方向に揺動し、開口部302に接触して開口部302を閉塞した場合、言い換えれば、開口部302が閉じられた場合、
図19の2点鎖線で示すように、フィン300Bが、開口部302を介して筒部300Aの内側へ入り込まず、開口部302の外側(第2下り湾曲管部42Bの内部側)へ突出するように、フィン300Bの大きさ(一例として、楕円形状の長軸方向の長さ)が、開口部302よりも大きく設定されている。
【0133】
仮にフィン300Bの大きさが開口部302よりも小さく、排水に押されたフィン300Bが開口部302を介して筒部300Aの内側へ入り込むような場合、フィン300Bが筒部300Aの内面に引っ掛かり、排水が流れなくなったときにフィン300Bが元の位置に戻らなくなる懸念がある。
【0134】
なお、本実施形態では、フィン300Bで開口部302を閉塞した場合に、フィン300Bの一部が開口部302の外側へ突出するようになっているが、フィン300Bが排水で押された場合にフィン300Bが筒部300Aの内側へ入り込まず、排水が流れなくなった場合にフィン300Bが元の位置に戻ればよい。
【0135】
例えば、排水でフィン300Bが押されて開口部302を閉塞した場合に、フィン300Bの表面が第2下り湾曲管部42Bの内周面に繋がる仮想線FLに一致するようになっていてもよい。
【0136】
大量の排水が流れて開口部302を閉塞している際に、フィン300Bの表面が第2下り湾曲管部42Bの内周面に繋がる仮想線FLに一致していると、第2下り湾曲管部42Bの内部に排水の流れの抵抗となるような段差が生じず、大量の排水をより効率的に流すことができる。
【0137】
図19、及び
図21に示すように、フィン300Bの外表面、言い換えれば、第2下り湾曲管部42Bの内側に面している外表面には、複数のリブ306が形成されている。リブ306は、第2下り湾曲管部42Bの長手方向、言い換えれば、排水の流れに沿って延びている。
【0138】
フィン300Bの外表面が平坦面であると、排水中のゴミ(一例として、玉ねぎの皮の様な、薄くてへばり付き易いゴミ)がへばり付き易いが、フィン300の外表面に複数のリブ306が形成されていると、フィン300Bとゴミとの接触面積が減少するので、ゴミはリブ306に触れるだけに止まり、ゴミがフィン300Bにへばり付くこと、言い換えれば密着することが抑制される。なお、排水中のゴミのへばり付きが抑制できれば、リブ306の代わりに、半球状等、他の形状の突起をフィン300Bの外表面に設けてもよい。
【0139】
(圧力緩和装置の第2変形例)
次に、
図22乃至
図29にしたがって、第2変形例に係る圧力緩和装置400を説明する。
図22~
図24に示すように、第2変形例に係る圧力緩和装置400は、ゴム等の弾性材料で形成された薄肉の弾性拡縮体468と、弾性拡縮体468の下端側を支持する下側支持部材470と、弾性拡縮体468の上端側を支持する上側支持部材472と、カバー474等を備えている。
【0140】
図25、及び
図26に示すように、弾性拡縮体468は、出口と入口とを有する筒状体である。弾性拡縮体468は、軸線方向から見て、軸線から放射方向(径方向外側)に向けて延びる4つ拡縮片488を備えた十字形状とされた筒状の拡縮部468Aを備えている。したがって、拡縮部468Aの内部には、断面十字形状で軸方向に延びる空間Sが設けられている。
【0141】
拡縮部468Aの軸方向両端部には、外形が円形とされた基部468Bが一体的に形成されている。基部468Bの外周部には、弾性拡縮体468を下側支持部材470、及び上側支持部材472に取り付けるための環状の取付部468Cが一体的に形成されている。また、取付部468Cの端部には、肉厚のリブ468Dが形成されている。
【0142】
図26(B)に示すように、拡縮片488は、互いに平行とされ間隔を開けて配置された一対の壁部488Aを備えており、一対の壁部488Aは、各々の径方向外側端部同士が連結壁488Bを介して連結されている。
また、互いに隣接する一方の拡縮片488と他方の拡縮片488とは、互いに隣接する壁面488A同士が、断面円弧形状とされた円弧壁部488Cを介して連結されている。
【0143】
ここで、
図26(B)に示すように、弾性拡縮体468の軸方向中間部を軸線に対して交差する方向に切断して軸方向から見たときの拡縮片488の一対の壁部488Aの間隔をA、弾性拡縮体468の中心部における4つの円弧壁部488Cに内接する仮想の内接円FCの径をBとしたときに、間隔A<径Bとされている。
【0144】
図26Cに示すように、断面十字形状の空間Sの内で、弾性拡縮体468の中心部における4つの円弧壁部488Cに内接する仮想の内接円FCの内側部分が、本発明の第1空間に相当し、内接円FCから放射方向に延びる部分が本発明の第2空間に相当している。なお、本実施形態において、径Bが本発明の第1空間の最大幅に相当している。また、間隔Aが本発明の第2空間の最大幅に相当している。
【0145】
図25に示すように、互いに隣接する一方の拡縮片488の壁部488Aと、他方の拡縮片488の壁部488Aと、基部468Bとで形成される隅部分490には、基部468Bから壁部488Aに向けて滑らかに立ち上がる断面円弧形状(または基部468Bに対して傾斜する傾斜面であってもよい)とされた立上部492が形成されている。
図26(A)に示すように、立上部492は、軸方向から見た形状が略三角形とされている。
【0146】
この立上部492が形成されている部分では、前述した仮想の内接円FCの径B(
図26(B)参照)が、軸方向外側へ向かうにしたがって徐々に大きくなっている。
【0147】
拡縮部468Aは、内部の空間Sの圧力が外部の圧力(大気圧)よりも高くなると、径方向内側へ凹となった部分が径方向外側(一例として、
図26(B)に示す矢印方向)に膨張する。
【0148】
仮に、拡縮部468Aが円筒形状であった場合、拡縮部468Aを径方向外側に膨張させるには、拡縮部468Aを構成する弾性部材自身が伸びなければならない。言い換えれば、拡縮部468Aを膨張させる際には、拡縮部468Aの内圧が相当に大きくなければならない。
【0149】
一方、本実施形態の拡縮部468Aは、
図26(B)に示すように、断面形状が十字形状に形成されているため、膨張過程では、径方向内側へ凹となった部分が内圧で径方向外側へ押されて拡縮部468Aの形状は変形するが、弾性体自身には、拡縮部468Aが円筒形状であった場合対比で、張力は少ししか掛からない。
【0150】
したがって、拡縮部468Aは、空気が流入した際に、その容積を容易に拡大させることができ、拡縮部468Aが円筒形状であった場合対比で内圧の上昇をより抑制することができる。
【0151】
また、本実施形態のように弾性拡縮体468の隅部分490に立上部492が形成されていると、隅部分490に立上部492が形成されていない場合、言い換えれば、隅部分490で一方の壁部488Aと他方の壁部488Aと基部468Bとが相互に直角に接続されている場合に比較して、拡縮部468Aが外側に膨らみ易くなり、内圧の上昇、言い換えれば、正圧をさらに抑制し易くなる。
【0152】
一方、管トラップ24の排水方向下流側が負圧になり、拡縮部468Aの内部の空間Sの圧力が外部の圧力(大気圧)よりも低くなると、
図26(C)に示すように、拡縮片488の互いに対向する一方の壁部488Aと他方の壁部488Aとが互いに密着してしまう場合がある。しかし、拡縮部468Aの軸心部分には、4つの円弧壁部488Cで囲まれて弾性拡縮体468の出口と入口とを一直線状に挿通する貫通空間S1(空間Sの一部であって、空気の通路となる隙間。本発明の第1空間)が残るように円弧壁部488Cの形状、大きさ(曲率半径)等が設定されている。
【0153】
即ち、拡縮部468Aは、内部の空間Sが負圧になった際に、内周面同士が密着して、空間Sが完全に消滅することが抑制されている。したがって、本実施形態の弾性拡縮体468では、内部の空間Sが負圧になった場合でも、軸方向に挿通する貫通空間S1が確保されるので、軸方向の通気が可能となっている。
【0154】
図23、
図24、及び
図27に示すように、弾性拡縮体468の下側の取付部468Cには下側支持部材470が挿入されており、取付部468Cは、下側支持部材470と、取付部468Cの外側に配置される取付リング496との間に挟持されて下側支持部材470に固定されている。なお、取付部468Cのリブ468Dは、下側支持部材40の外周に形成された環状溝478に挿入されて圧縮されている。
【0155】
また、弾性拡縮体468の上側の取付部468Cには上側支持部材472が挿入されており、取付部468Cは、上側支持部材472と、取付部468Cの外側に配置される取付リング496との間に挟持されて上側支持部材472に固定されている。なお、取付部468Cのリブ468Dは、上側支持部材472の外周に形成された環状溝478に挿入されて圧縮されている。
【0156】
図22、及び
図28に示すように、円筒形状とされたカバー474は、軸線を挟んで一方側の第1半割部材474Aと、他方側の第2半割部材474Bとで構成されている。本実施形態のカバー474は、合成樹脂の成形品(一例として、インジェクション成型品)である。
【0157】
第1半割部材474Aは、円筒を半分にした円弧壁部474Aaを備え、上端に円弧形状のフランジ474Abが形成され、下端に円弧形状のフランジ474Acが形成されている。
第2半割部材474Bは、円筒を半分にした円弧壁部474Baを備え、上端に円弧形状のフランジ474Bbが形成され、下端に円弧形状のフランジ474Bc(
図23参照)が形成されている。
【0158】
第1半割部材474Aの円弧壁部474Aaの内面側の端部には、第2半割部材474Bの円弧壁部474Baの内面側に向けて突出し、第2半割部材474Bの円弧壁部474Baに形成された係合孔474Bdに引っかけられる爪部材474Aeが複数形成されている。
【0159】
また、第2半割部材474Bの円弧壁部474Baの内面側の端部には、第1半割部材474Aの円弧壁部474Aaの内面側に向けて突出し、第1半割部材474Aの円弧壁部474Aaに形成された係合孔474Adに引っかけられる爪部材474Beが複数形成されている。
【0160】
第1半割部材474Aと第2半割部材474Bとを向かい合わせ、爪部材474Beを係合孔474Adに引っかけると共に、爪部材474Aeを係合孔474Bdに引っかけることで、第1半割部材474Aと第2半割部材474Bとが互いに固定されて円筒形状のカバー474となる。
【0161】
図28に示すように、第1半割部材474Aの内周の軸方向両側には、フランジに隣接して溝474Afが形成されており、第2半割部材474Bの内周の軸方向両側には、フランジに隣接して溝474Bfが形成されている。
図23に示すように、第1半割部材474Aの溝474Af、及び第2半割部材474Bの溝474Bfには、弾性拡縮体468を固定した取付リング496が挿入されている。
【0162】
これにより、弾性拡縮体468を固定した上側の取付リング496が、カバー474の上側の溝474Afの幅方向端部に形成された段部、及び溝474Bfの幅方向端部に形成された段部に引っ掛かり、弾性拡縮体468を固定した下側の取付リング496が、カバー474の下側の溝474Afの幅方向端部に形成された段部、及び溝474Bfの幅方向端部に形成された段部に引っ掛かる。これにより、カバー474の内部に、下側支持部材470、及び上側支持部材472の取り付けられた弾性拡縮体468が固定される。
【0163】
このようにして弾性拡縮体468を固定した上側支持部材472、及び下側支持部材470がカバー474の内部に固定されるので、弾性拡縮体468が内圧の変化で変形した場合であっても、弾性拡縮体468の軸方向の動きは抑制される。
【0164】
弾性拡縮体468は、下側支持部材470、及び上側支持部材472を、それぞれ弾性拡縮体468の拡縮方向(弾性拡縮体468軸方向と交差する方向)、及び拡縮方向とは交差する軸方向からカバー474で覆われて、カバー474以外の部材に接触しないように保護される。
【0165】
なお、カバー474の内部で弾性拡縮体468が拡縮した際に、カバー474と弾性拡縮体468との間の空間S2とカバー474の外側の外気との間で、空気が行き来できるように、第1半割部材474A、及び第2半割部材474Bには、軸方向の下側にスリット474gが形成されている。これにより、弾性拡縮体468は容易に拡縮することができる。
【0166】
下側支持部材470の中央にはテーパー形状の貫通孔480が形成されており、下面中央には貫通孔480と連通する挿入管部482が下方に向けて突出している。この挿入管部482が管トラップ24の圧力緩和装置取付部56に挿入されて、圧力緩和装置400が管トラップ24に取り付けられる。
【0167】
図23、及び
図27に示すように、上側支持部材472の中央には筒状の逆止弁取付部486が上方に向けて突出している。この逆止弁取付部486の外周には雄螺子486Aが形成されており、この雄螺子486Aによって通気弁110が逆止弁取付部486に取り付けられている。
【0168】
図27に示すように、逆止弁取付部486の内周面には、径方向内側に突出し、軸方向に沿って延びるリブ502が複数形成されている。これにより、
図29(A)に示すように、後述する弁体412と逆止弁取付部86の内周面との間に、軸方向に空気を流す隙間S3が形成されるようになっている。
【0169】
図27、及び
図29に示すように、逆止弁取付部86の下端には、後述する弁体412が下方の圧力緩和装置466に落下しないように弁体支持部504が形成されている。なお、弁体支持部504には、空気を通過させる複数の孔506が形成されている。
【0170】
図23、及び
図29(A)に示すように、逆止弁取付部486の内部には、弁体支持部504の上に弁体412が配置されている。弁体412は、排水に浮くように比重が設定されている。
【0171】
弁体412は、全体的に略円錐台形状に形成されている。弁体412は、上側の径方向外側部分に、断面が円弧形状とされた環状凹部412Aが形成されている。
【0172】
逆止弁取付部486の上部には、ゴム等の弾性体で形成された環状の弁座508が取り付けられている。
図29(A)に示すように、通常時、弁体支持部504の上に配置された弁体412は、弁座508と離間しており、弁体412と弁座508との間の隙間S4を介して上下方向に空気が流れるようになっている。
【0173】
一方、下方の圧力緩和装置466から逆流して上昇する排水が弁体412に到達すると、
図29(B)に示すように、弁体412は排水(図示せず)に浮いて弁座508に接触し、弁座508の中央に形成された弁孔508Aを閉塞する。
したがって、仮に圧力緩和装置466の内部に排水が浸入した場合であっても、上方に配置された通気弁110に、圧力緩和装置466から逆流して上昇する排水が流入することは抑制される。逆止弁取付部86、弁体412、及び弁座508で本発明のフロート弁が構成されている。
【0174】
図27に示すように、上側支持部材472の外周部には、径方向外側に向けて突出する複数の突起472A(
図27では、1個のみ図示)が形成されており、
図22に示すように、この突起472Aが第1半割部材474A、及び第2半割部材474Bに形成された嵌合孔510に挿入されている。これにより、上側支持部材472とカバー474とは、相対的に回転不能とされている。突起472Aと嵌合孔510とで本発明の固定部が構成されている。
【0175】
なお、下側支持部材474の外周部には、このような突起472Aは形成されていないため、下側支持部材474は、取付リング496がカバー474の溝474Af、及び溝474Bfに挿入されて軸方向の移動は阻止された状態で、カバー474に対して相対回転可能となっている。
【0176】
(圧力緩和装置400の組立手順)
圧力緩和装置400は、一例として、以下のようにして組み立てられる。
【0177】
(1) 弾性拡縮体468の軸方向の一方に取付リング496を用いて上側支持部材472を取り付け、弾性拡縮体468の軸方向の他方に取付リング496を用いて下側支持部材474を取り付ける。
【0178】
(2) 互いに向い合せた第1半割部材474Aと第2半割部材474Bとの間に、上側支持部材472と下側支持部材474とが取り付けられた上記の弾性拡縮体468を配置し、上側支持部材472の突起472Aが、嵌合孔510に挿入されるように、第1半割部材474Aと第2半割部材474Bとを組み合わせる。
【0179】
(3) 逆止弁取付部486に弁体412を挿入し、逆止弁取付部486の上部に弁座508を取り付ける。
【0180】
(4) 最後に、上側支持部材472の逆止弁取付部486に、通気弁110を捩じ込み、逆止弁取付部486に通気弁110を固定する。このとき、圧力緩和装置400のカバー474を一方の手で把持して固定し、通気弁110を他方の手で把持して通気弁110を逆止弁取付部486に捩じ込むことができる。上側支持部材472とカバー474とは、相対回転不能に取り付けられているので、カバー474を手で把持して固定していればば、通気弁110を逆止弁取付部486に捩じ込むときに上側支持部材472が回転することはない。
【0181】
(5) 通気弁110の取り付けられた圧力緩和装置466の挿入管部482を管トラップ24の圧力緩和装置取付部56に挿入し、圧力緩和装置400を管トラップ24に取り付ける。
【0182】
なお、本実施形態の圧力緩和装置400では、下側支持部材474がカバー474に対して相対回転可能となっている。しかし、仮に、下側支持部材474の外周部に上側支持部材472と同様の突起472Aを形成し、該突起472Aをカバー474の嵌合孔510に挿入して下側支持部材474とカバー474とを相対的に回転不能にすると、以下のように圧力緩和装置400の組み立てに注意が必要となる。
【0183】
第1半割部材474A、及び第2半割部材474Bは、成形品であるため、上側の嵌合孔510、及び下側の嵌合孔510の位置は決まってしまう。即ち、上側の嵌合孔510と下側の嵌合孔510とは、周方向の位置関係が決まってしまう。
【0184】
このため、弾性拡縮体468に、下側支持部材470と上側支持部材472とを取り付ける際には、下側支持部材470の突起472Aと上側支持部材472の突起472Aとの周方向の位置関係(周方向角度)を、第1半割部材474A、及び第2半割部材474Bに形成された2つの嵌合孔510の位置関係に合わせて決める必要がある。
【0185】
ここで、第1半割部材474A、及び第2半割部材474Bに形成された上側の嵌合孔510と下側の嵌合孔510との周方向の位置関係に対して、弾性拡縮体468に取り付けられた下側支持部材470の突起472Aと上側支持部材472の突起472Aとの周方向の位置関係が合っていない場合には、下側支持部材470と上側支持部材472とを周方向に捩じって位置関係を合わせてから各々の突起472Aを各々の嵌合孔510に挿入しなければならない。
【0186】
こうすることによって、カバー474を取り付けることは可能であるが、弾性拡縮体468が捩じられた状態でカバー474の内部に固定されてしまうと、弾性拡縮体468に無用な変形(歪み)が残ったままとなり、弾性拡縮体468が拡縮し難くなる等の問題が生じる虞がある。
【0187】
一方、本実施形態の圧力緩和装置400では、下側支持部材474に、嵌合孔510に挿入する突起472Aが形成されていないので、上側支持部材472の突起472Aを第1半割部材474A、及び第2半割部材474Bに形成された上側の嵌合孔510に合わせて第1半割部材474Aと第2半割部材474Bとを組み合わせるだけで、弾性拡縮体468を捩じらずにカバー474の内部に固定することができる。これにより、カバー474の取り付けが容易になると共に、弾性拡縮体468の拡縮性能を確保することができる。
【0188】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0189】
上記実施形態では、台所流し16が本発明の第1の水廻り機器に相当し、食洗機18が本発明の第2の水廻り機器に相当していたが、第1の水廻り機器、及び第2の水廻り機器は、排水を行うものであれば良く、特に種類は限定されない。水廻り機器としては、例えば、洗面台、洗濯機、浴槽、及び洗い場等を挙げることができるが、他のものであっても良い。
【0190】
上記実施形態の排水管構造10では台所流し16にディスポーザ20が設けられていたが、ディスポーザ20は設けられていなくても良い。
【0191】
上記実施形態では、通気部の一例としての通気弁110を用いたが、本発明はこれに限らず、管トラップ24の下流側の配管内が負圧になった場合に、外気を導入して該負圧を抑制できるものであれば通気部に代えて、他の構成を採用してもよい。例えば、通気弁110に代えて、配管の一端を圧力緩和装置66、または圧力緩和装置466に接続し、該配管の他端を排水立て管34等に接続する構成としてもよい。この場合、排水立て管34の内部の空気を管トラップ24の下流側の配管内に導入して該配管内の負圧を抑制することができる。
【0192】
一時貯留部204が、上下方向を軸心方向とする筒状に形成されるものとしたが、形状はこれに限られず、直方体等任意の形状であってもよい。また、入口204Aの軸心X1が一時貯留部204の軸心Zに対して偏心しているものとしたが、偏心していない構成であってもよい。出口204Bの軸心X2が一時貯留部204の軸心Zに対して偏心していないものとしたが、偏心している構成であってもよい。
【0193】
上記実施形態の圧力緩和装置66、及び圧力緩和装置400では、下側支持部材70、上側支持部材72、カバー74、下側支持部材470、上側支持部材472、カバー474が設けられていたが、これらは必要に応じて設ければよく、設けなくてもよい。
上記実施形態の圧力緩和装置400では、カバー474の内周面に溝470が設けられていたが、溝470は必要に応じて設ければよく、設けなくてもよい。
上記実施形態の圧力緩和装置400では、カバー474と上側支持部材472とが相対回転しないように突起472A、及び嵌合孔510が設けられていたが、これらは必要に応じて設ければよく、設けなくてもよい。
上記実施形態の圧力緩和装置400の弾性拡縮体468では、間隔A<径Bとされていたが、必要に応じて間隔A<径Bとすればよく、間隔A≧Bとしてもよい。
上記実施形態の圧力緩和装置400の弾性拡縮体468では、立上部492が設けられていたが、立上部492は必要に応じて設ければよく、備えられていなくてもよい。
上記実施形態の圧力緩和装置400では、逆止弁取付部86、弁体412、及び弁座508で構成されるフロート弁が設けられていたが、これらは必要に応じて設ければよく、設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0194】
1…第1の排水系統、2…第2の排水系統、10…排水管構造、16…台所流し(第1の水廻り機器)、36…流入側配管接続部、24…管トラップ(第1の排水トラップ)、38A…第1下り湾曲管部、38B…第1上り湾曲管部、42A…第2上り湾曲管部、42B…第2下り湾曲管部、65…圧力調整装置、66…圧力緩和装置、68…弾性拡縮体(筒体)、70…下側支持部材(入口カバー)、72…上側支持部材(出口カバー)、74…カバー(本体カバー)、90…逆止弁(フロート弁)、94…弁体、104…弁座、110…通気弁(通気部)、400…圧力緩和装置、412…弁体、468…弾性拡縮体(筒体)、468B…基部、470…下側支持部材(入口カバー)、472…上側支持部材(出口カバー)、474…カバー(本体カバー)、492…立上部(傾斜面)、508…弁座、474…溝(支持部)、472A…突起(固定部)、488A…壁部、510…嵌合孔(固定部)、S1…貫通空間(第1空間)、S…(第2空間(S1を除く))