(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】水質浄化装置
(51)【国際特許分類】
C02F 3/08 20230101AFI20231207BHJP
C02F 3/10 20230101ALI20231207BHJP
C02F 3/34 20230101ALI20231207BHJP
【FI】
C02F3/08 A
C02F3/08 B
C02F3/10 Z
C02F3/34 101B
(21)【出願番号】P 2020011684
(22)【出願日】2020-01-28
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】504077308
【氏名又は名称】安斎 聡
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安斎 聡
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特公平08-004795(JP,B2)
【文献】国際公開第2017/217402(WO,A1)
【文献】特開2019-010608(JP,A)
【文献】実開昭58-019797(JP,U)
【文献】特開昭56-073596(JP,A)
【文献】特開2017-112969(JP,A)
【文献】特開2003-024979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F3/00-3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧状態の酸素を貯蔵する貯蔵容器と、
前記高圧状態の酸素の圧力を用いて水流を発生させる水流発生装置と、
高圧状態の酸素を微細気泡として供給する微細気泡発生装置と、
前記水流によって駆動され、菌担体を保持しつつ、水中及び空気中を交互に移動する菌担体移動装置と、を備え、
前記微細気泡発生装置は、高圧状態の酸素を微細気泡として水中へ放出する気泡発生媒体を備え、
前記気泡発生媒体は、炭素系の多孔質素材で形成されてお
り、
前記水流発生装置は、高圧状態の酸素の圧力を利用して容積を変化させることで液流を発生させる容積式ポンプである、
水質浄化装置。
【請求項2】
前記菌担体移動装置は、水車であり、
水車のバケット部に、菌担体を収納することで保持する、
ことを特徴とする請求項1に記載の水質浄化装置。
【請求項3】
前記貯蔵容器から供給される酸素の気圧は、前記微細気泡発生装置に供給される酸素の気圧よりも高い、
ことを特徴とする請求項1
または2に記載の水質浄化装置。
【請求項4】
前記菌担体は、セルロースを含む炭素供給源とともにバケット部に収納される
ことを特徴とする請求項2に記載の水質浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質浄化装置の技術に関し、より詳しくは、湖沼や海などの自然界に存在する水の浄化を行う水質浄化装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、湖沼や海などの自然界に存在する水中に水生生物の代謝によりアンモニア態窒素(NH4
+-N)が排出される。アンモニア態窒素は環境指標の一つであり、アンモニア態窒素の数値が高いと、生物の生育に悪影響が出る。
アンモニア態窒素は、硝化細菌により酸化され亜硝酸態窒素に、さらに酸化されて硝酸態窒素となる。また、これらが脱窒細菌により窒素ガスや一酸化二窒素へ還元される脱窒の過程により、自然環境では一連の窒素の循環が成立している。
【0003】
しかし、湖沼や内海のような半閉鎖循環系では、自然脱窒のための環境を整えることが困難であった。そこで、従来は、硝化反応が起こる好気性条件と、脱窒反応が起こる嫌気性条件とを交互に人工的に実現することで、アンモニアを除去していた。硝化反応が起こる好気性条件と、脱窒反応が起こる嫌気性条件とを交互に人工的に実現させるためには、水を汲み上げるポンプ、酸素を供給するためのエアコンプレッサなどが必要となり、ポンプやエアコンプレッサを駆動するための電力が必要となっていた。しかし、湖沼や内海のような場所に水質浄化装置を設置する際には、周囲に電力を供給するための手段を用意することが困難な場合があった。また、発展途上国のような電力供給網が発達していない地域では、人工的な脱窒を行うことは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、以上に示したかかる課題に鑑み、電力を用いずに脱窒を行うことができ、また、高好気性脱窒菌を活性化して効率よく水処理を行うことができる水質浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、本発明においては、高圧状態の酸素を貯蔵する貯蔵容器と、
前記高圧状態の酸素の圧力を用いて水流を発生させる水流発生装置と、
高圧状態の酸素を微細気泡として供給する微細気泡発生装置と、
前記水流によって駆動され、菌担体を保持しつつ、水中及び空気中を交互に移動する菌担体移動装置と、を備え、
前記微細気泡発生装置は、高圧状態の酸素を微細気泡として水中へ放出する気泡発生媒体を備え、
前記気泡発生媒体は、炭素系の多孔質素材で形成されており、前記水流発生装置は、高圧状態の酸素の圧力を利用して容積を変化させることで液流を発生させる容積式ポンプであるものである。
【0008】
また、本発明においては、前記菌担体移動装置は、水車であり、
水車のバケット部に、菌担体を収納することで保持するものであってもよい。
【0010】
また、本発明においては、前記貯蔵容器から供給される酸素の気圧は、前記微細気泡発生装置に供給される酸素の気圧よりも高いものであってもよい。
【0011】
また、本発明においては、前記菌担体は、セルロースを含む炭素供給源とともにバケット部に収納されるものであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
本発明においては、電力を用いずに液体酸素の気化圧を利用して、水流を発生させて菌担体を活性化することができるものである。さらに、菌担体移動装置が水中と空気中を交互に移動することで、菌担体が好気性条件と嫌気性条件に交互に置かれることとなり、硝化反応および脱窒反応が起こりやすくなる。これにより、電力が供給できない条件下でも水質浄化を達成し、生物の生育に好適な条件を作成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る水質浄化装置を示す正面概略図。
【
図2】本発明の第一の実施形態に係る水質浄化装置を示す正面概略図。
【
図3】本発明の第二の実施形態に係る水質浄化装置を示す正面概略図。
【
図4】本発明の第二の実施形態に係る水質浄化装置を示す正面概略図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0016】
まず、本発明の一実施形態にかかる水質浄化装置の全体構成について
図1を用いて説明する。
【0017】
水質浄化装置1は、自然環境に存在する水、例えば、海洋や河川、湖沼などで用いられる水質を浄化するための装置である。特に、内海や湖沼などの自然環境における半閉鎖循環水系で効果を奏する。発展途上国や、日本国内であっても電力供給網が整っていない環境下においては、揚水ポンプやエアコンプレッサを駆動するための電力が準備できない。このような場所において、駆動させることのできる水質浄化装置1を供給することが本発明の目的である。
【0018】
水質浄化装置1は、高圧状態の酸素を貯蔵する貯蔵容器2と、高圧状態の酸素の気化圧を用いて水流を発生させる水流発生装置と、前記水流によって駆動され、菌担体21を保持しつつ、水中及び空気中を交互に移動する菌担体移動装置と、を備える。本実施形態においては、水流発生装置及び菌担体移動装置は水車3によって構成されている。また、気化した酸素を微細気泡として供給する微細気泡発生装置4と、液体酸素の気化圧を、水車3を回転駆動させるための駆動力に変換するエアシリンダ5と、エアシリンダ5へ気化した酸素を供給する際に、供給先を切り換える切換弁6と、を備える。
【0019】
貯蔵容器2は、例えばボンベなどの運搬可能な容器で構成されている。貯蔵容器2には、圧縮された液体酸素が貯蔵されている。液体酸素は、例えば、14.7MPaの圧力で圧縮された酸素が充填されている。なお、貯蔵容器2は液体酸素を貯蔵する容器に限定されるものではなく気体の高圧状態の酸素を貯蔵するボンベであってもよい。
【0020】
貯蔵容器2は、開閉弁11を有している。開閉弁11は、貯蔵容器2の吐出口の開閉を行う弁であり、減圧器13に直結されている。減圧器13は、高い貯蔵容器内圧力を減圧して、出力側に接続された機器に低圧力酸素を供給する機器である。また、減圧器13の出力側は、ゴムホース等の気体通路14と連結されている。
【0021】
気体通路14は、切換弁6に連結されており、切換弁6が連通状態となれば、エアシリンダ5側へ圧縮された酸素が供給される。切換弁6を通過する際の高圧気体酸素の圧力は、減圧器13によって0.1-0.8Mpa程度に減圧されている。
【0022】
切換弁6は、高圧の酸素をエアシリンダ5のピストン17によって区切られた二つの空間に供給する弁であり、本実施形態においては、2位置5ポートのバルブによって形成されている。また、切換弁6は、カム軸22の回転力によって位置を周期的に変化させることで開閉を切り換えるものである。より詳細には、カム軸22に設けられたカムプレート22aが回転することにより、切換弁6の切替スイッチ6aと当接、離間を繰り返すことで、切換弁6のブロックを切り換えて開閉を切り換えるものである。
【0023】
エアシリンダ5は、円筒状のシリンダチューブ16と、シリンダチューブ16の内部で摺動するピストン17と、ピストン17に連結されたピストンロッド18と、を備える。
また、シリンダチューブ16のピストン17で仕切られた各空間には、給排ポート19A・19Bが設けられており、各空間に交互に酸素を供給することにより、ピストン17及びピストンロッド18が往復動を行う。また、エアシリンダ5は揺動軸5aを中心に揺動可能に構成されている。
【0024】
水車3は、エアシリンダ5の往復動を回転運動に変えて水流を発生させる装置であり、また、菌担体21を空気中及び水中に交互に移動させる装置である。水車3は、カム軸22と、円周上に配置されたバケット部23とから構成される。
【0025】
カム軸22は、エアシリンダ5のピストンロッド18と連結されている。ピストンロッド18の先端の連結位置とカム軸22の回転中心との間の距離は、ピストンロッド18の摺動距離の2分の1または2分の1より大きくなるように構成されている。これにより、ピストンロッド18の摺動運動が、カム軸22の回転運動へと変換される。また、ピストンロッド18の摺動距離の2分の1より大きくすることにより、遊びが生まれて、ピストンロッド18の摺動運動がカム軸22の回転運動に変換されやすい。このように構成することにより、エアシリンダ5のピストンロッド18の往復動により、カム軸22は回転運動を行う。
【0026】
なお、本実施形態においては、エアシリンダを一つ設ける構成としたがこれに限定されるものではなく、二つ設けることも可能である。例えばエアシリンダを一つ設けた場合に、カム軸22の回転運動が上死点または下死点で止まることがある。二つのピストンロッドが90度移相を変えてカム軸22と連結されることで、カム軸22を連続的に回転運動させることができるため、より安定してカム軸22の回転方向を決定することができるものである。
【0027】
バケット部23は、菌担体21を収納する箱状の容器であり、菌担体21は、バケット部23から飛散することの無いようにネット等に収納されている。菌担体21は、多孔質の菌が着床しやすい材質でできており、無機物、有機物どちらであってもかまわない。また、バケット部23には、好気性の硝化細菌に対してアンモニア態窒素の酸化に必要な炭素を供給するためのセルロースを含む炭素供給源が配置されている。これにより、硝化反応が進みアンモニア態窒素は、硝化細菌により酸化され亜硝酸態窒素に変化させることができるのである。菌担体21には、好気性条件を好む硝化細菌と、嫌気性条件を好む脱窒細菌とを担持させている。これにより、バケット部の菌担体21が空気中にある場合は硝化反応が、バケット部23の菌担体21が水中にある場合は脱窒反応が促進される。なお、炭素供給源は、セルロースに限られるものではなく、例えば、カーボン繊維等で構成することも可能である。
【0028】
また、カム軸22には、切換弁6の駆動を行う駆動リンク機構25と連結されている。これによりカム軸22の回転運動が切換弁6の往復運動に変換され、周期的に切換弁6が切り換わる。
【0029】
微細気泡発生装置4は、エアシリンダ5の給排ポート19A・19Bから排出された酸素を微細気泡として水中に放出するための装置である。微細気泡発生装置4と給排ポート19A・19Bとの間には、減圧器30が設けられている。減圧器30は、給排ポートから排出された酸素の圧力を減圧して、出力側に接続された機器に供給する機器である。減圧器30によって、酸素は、0-0.3Mpa程度に減圧されている。微細気泡は、直径数百nm~数μmの細かい気泡であり、水面へと浮上せず液体中に存在し続ける。また、微細気泡は、非常に高い界面張力を生じさせる性質を有する。微細気泡と液相との間には界面張力が発生し、微細気泡は圧力により一層小さくなり易い。
微細気泡発生装置4は、気化した酸素を微細気泡として水中へ放出する気泡発生媒体31を備える。
【0030】
気泡発生媒体31は、炭素系の多孔質素材で構成されており、
図2に示すように、直径数μm~数十μmの細かな孔31Aを多数有している。また、気泡発生媒体31は導電体であり、気泡発生媒体31から発生する気泡は負の電荷が帯電される。言い換えれば、導電体である気泡発生媒体31を通過する際に微細気泡に自由電子が付加されることにより、負の電荷が帯電するものである。この負の電荷により、気泡同士が互いに反発し、合体して大きな気泡になることを防ぐことができる。
【0031】
炭素系の多孔質素材とは、炭素のみ若しくは炭素及びセラミックを含む複合素材であり、無機質の素材である。また、炭素系の多孔質素材の表面には、厚さ数nmの膜が形成されている。前記膜はケイ素を含む無機質の膜で形成されている。
【0032】
次に、液体酸素の気化圧を利用した水質浄化について
図1及び
図2を用いて説明する。
まず、貯蔵容器2の開閉弁11を開状態にして、貯蔵されている液体酸素を放出する。高圧の気体状態の酸素は、減圧器13によって0.1-0.8Mpa程度に減圧され切換弁6側へ供給される。
図1に示すように、切換弁6は、高圧の酸素をピストン17で区切られた第一の空間A1に供給する位置にあるので、高圧の酸素は、第一の空間A1へと供給される。
第一の空間A1に酸素が供給されると、ピストン17が第二の空間A2側へと移動し、ピストンロッド18の摺動及びエアシリンダ5の揺動によって、カム軸22が回動する。
カム軸22の回動によって、水車3は回転し、バケット部23が水中及び空気中を移動する。バケット部23の移動により水中に水流が発生する。
またカム軸22の回動により、切換弁6が第一の空間A1の酸素を微細気泡発生装置4側へ放出し、
図2に示すように、第二の空間A2へ酸素を供給する位置へ移動する。
【0033】
第二の空間A2に酸素が供給されると、ピストン17が第一の区間A1側へ移動し、ピストンロッド18の摺動及びエアシリンダ5の揺動によって、カム軸22が回動する。カム軸22の回動によって、水車3は回転し、バケット部23が水中及び空気中を移動する。バケット部23の移動により水中に水流が発生する。
【0034】
またカム軸22の回動により、切換弁6が第二の空間A2の酸素を微細気泡発生装置4側へ放出し、第一の空間A1へ酸素を供給する位置へ移動する。これを繰り返すことで、水車3が回転し、酸素が微細気泡発生装置4から放出される。
【0035】
微細気泡発生装置4側へ放出された酸素は、減圧器30によって、0-0.3Mpa程度に減圧されている。微細気泡発生装置4の表面から放出された微細気泡は、水流によって表面から離間して水中に放出される。水中にあるバケット部23に収納された菌担体21に酸素を供給することにより、脱窒反応とともに硝化反応も促進される。
【0036】
このように構成することにより、電力が供給されない場所であっても、圧縮液体酸素の気化圧を用いて、水質浄化装置1を駆動することができる。水質浄化装置1が駆動することにより、湖沼や内海などのような汚泥が滞留しやすい半閉鎖循環水系において、水中の窒素化合物やリンなどの濃度が上昇した場合であっても、脱窒反応とともに硝化反応を人工的に発生させることで、水質を浄化することができるのである。
【0037】
なお、本実施形態においては、菌担体移動装置として水車3を採用したがこれに限定されるものではなく、例えば、ピストンロッド18の摺動に合わせて上下移動を行うコンベア型の汲み上げ装置であってもよい。
【0038】
上記のように、液体酸素を貯蔵する貯蔵容器2と、前記液体酸素の気化圧を用いて水流を発生させる水流発生装置と、気化した酸素を微細気泡として供給する微細気泡発生装置4と、前記水流によって駆動され、菌担体21を保持しつつ、水中及び空気中を交互に移動する菌担体移動装置と、を備え、水流発生装置及び菌担体移動装置は、水車3であり、水車3のバケット部23に、菌担体21を収納することで保持しており、微細気泡発生装置4は、気化した酸素を微細気泡として水中へ放出する気泡発生媒体31を備え、気泡発生媒体31は、炭素系の多孔質素材で形成されているものである。
このように構成することにより、電力を用いずに液体酸素の気化圧を利用して、水流を発生させて菌担体21を活性化することができるものである。詳しくは、液体酸素の気化圧を利用して、水車3を駆動することにより、電力を用いずに水流を発生させることができる、また、水車3の駆動によって、菌担体21が水中及び空気中を交互に移動することにより、菌担体21が好気性条件と嫌気性条件に交互に置かれることとなり、硝化反応および脱窒反応が起こりやすくなる。これにより、電力が供給できない条件下でも水質浄化を達成し、生物の生育に好適な条件を作成することが可能となる。また、微細気泡発生装置4から酸素が微細気泡として供給されることにより、水中にあるバケット部23に収納された菌担体21に酸素を供給することにより、脱窒反応とともに硝化反応も促進される。
【0039】
また、貯蔵容器2から供給される酸素の気圧は、微細気泡発生装置4に供給される酸素の気圧よりも高いものである。
このように構成することにより、貯蔵容器2に貯蔵された高圧酸素の気化圧を効率よく水車3の駆動に利用することができる。また、水車3の駆動に利用した後の酸素の圧力を用いて、酸素を微細気泡として水中に発生させることができるため、エアコンプレッサ等を設ける必要を省くことができるのである。
【0040】
また、菌担体21は、セルロースを含む炭素供給源とともにバケット部に収納されるものである。このように構成することにより、硝化細菌及び脱窒細菌を担持しやすくなり、また、長期間の使用後には自然分解されるため廃棄処理を容易にすることができる。
【0041】
次に、第二の実施形態に係る水質浄化装置101について
図3を用いて説明する。
第二の実施形態においては水流発生手段として、ダイヤフラム式ポンプ102を用いた水質浄化装置101である。なお、本実施形態において、第一の実施形態と同様の構成については同一の符号を用いて説明を省略するものである。
【0042】
水質浄化装置101は、液体酸素を貯蔵する貯蔵容器2と、液体酸素の気化圧を用いて水流を発生させる水流発生装置と、前記水流によって駆動され、菌担体21を保持しつつ、水中及び空気中を交互に移動する菌担体移動装置と、を備える。本実施形態においては、水流発生装置は、容積式ポンプの一例であるダイヤフラム式ポンプ102によって構成されている。また、菌担体移動装置は、波力を利用して上下へ浮き沈みする浮きブイ105によって構成されている。また、気化した酸素を微細気泡として供給する微細気泡発生装置4と、気化した酸素を供給する際に、供給先を切り換える切換弁6と、を備える。なお、容積式ポンプは、気化圧を利用して容積を変化させることで液流を発生させるポンプであればよく、例えば、スクロールポンプで構成してもよい。
【0043】
貯蔵容器2は、例えばボンベなどの運搬可能な容器で構成されている。貯蔵容器2には、圧縮された液体酸素が貯蔵されている。液体酸素は、例えば、14.7MPaの圧力で圧縮された酸素が充填されている。
【0044】
貯蔵容器2は、開閉弁11を有している。開閉弁11は、貯蔵容器2の吐出口の開閉を行う弁であり、減圧器13に直結されている。減圧器13は、高い貯蔵容器内圧力を減圧して、出力側に接続された機器に低圧力酸素を供給する機器である。また、減圧器13の出力側は、ゴムホース等の気体通路14と連結されている。
【0045】
気体通路14は、切換弁6に連結されており、切換弁6が連通状態となれば、ダイヤフラム式ポンプ102側へ圧縮された酸素が供給される。切換弁6を通過する際の高圧気体酸素の圧力は、減圧器13によって0.1-0.8Mpa程度に減圧されている。
切換弁6は、高圧の酸素をダイヤフラム式ポンプ102の二つのエア室Ra1・Ra2に供給する弁であり、本実施形態においては、2位置5ポートのバルブによって形成されている。また、切換弁6は、ダイヤフラム式ポンプ102のシャフト111の往復動に対応して位置を周期的に変化させることで開閉を切り換えるものである。
【0046】
ダイヤフラム式ポンプ102は、二つのエア室Ra1・Ra2を備えている。第一のエア室Ra1に酸素が入ると、ダイヤフラム112と連結しているシャフト111が第一の液室Rr1側に移動するため第二の液室Rr2が負圧となり、第二の吸引側ボール114bが開き第二の液室Rr2に液を吸引する。そのとき、第二の吐出側ボール114aは液室の吐出圧により閉じられる。一方、第一の液室Rr1はダイヤフラム112の移動により加圧され、第一の吸引側ボール113bは閉じ、第一の吐出側ボール113aが開き、液が吐出される。このとき、第二のエア室Ra2内の空気は通路を通り切換弁6側へ排気される。シャフト111の移動に連動して切換弁6が移動し、酸素と液体の流れが逆になり、第二の液室Rr2が吐出側、第一の液室Rr1が吸入側となる。各ボールの動きも逆となる。これが交互に繰り返されるので、ダイヤフラム式ポンプ102は吸入・吐出を繰り返すこととなる。
【0047】
菌担体移動装置は、浮きブイ105で構成されており、各浮きブイ105には菌担体21が担持されている。自然界の波力もしくはダイヤフラム式ポンプ102からの水流を受けて浮沈することにより、菌担体21が水中及び空気中の間を移動することが可能となっている。菌担体21は、セルロースを含む材質で構成される。
【0048】
次に、液体酸素の気化圧を利用した水質浄化について
図3及び
図4を用いて説明する。
まず、貯蔵容器2の開閉弁を開状態にして、貯蔵されている液体酸素を放出する。高圧の気体状態の酸素は、減圧器13によって0.1-0.8Mpa程度に減圧され切換弁6側へ供給される。切換弁6は、
図3に示すように高圧の酸素を第一のエア室Ra1に供給する位置にあるので、高圧の酸素は、第一のエア室Ra1へと供給される。
【0049】
第一のエア室Ra1に酸素が供給されると、ダイヤフラム112と連結しているシャフト111が第一の液室Rr1側に移動するため第二の液室Rr2が負圧となり、第二の吸引側ボールが開き第二の液室Rr2に液を吸引する。これにより、第二の液室Rr2側に液体が供給される。一方、第一の液室Rr1に溜まっていた水は、シャフト111の動きにより押圧され、第一の吐出側ボール113aが開くため、吐出側へ排出され、水中へと放出される。また、第二のエア室Ra2に溜まっていた空気は、シャフト111の動きにより圧縮され、吐出側へと排出され、切換弁6を通って、微細気泡発生装置4へと放出される。
【0050】
図4に示すように、シャフト111の移動によって切換弁6が切り換えられ、高圧の酸素を第二のエア室Ra2に供給する位置に移動する。第二のエア室Ra2に高圧の酸素が供給されることにより、ダイヤフラム112と連結しているシャフト111が第二の液室Rr2側に移動するため第一の液室Rr1が負圧となり、第一の吸引側ボール113bが開き第一の液室Rr1に液体が供給される。一方、第二の液室Rr2に溜まっていた水は、シャフト111の動きにより押圧され、第二の吐出側ボール114aが開くため、吐出側へ排出され、水中へと放出される。また、第二のエア室Ra2に溜まっていた空気は、シャフト111の動きにより圧縮され、吐出側へと排出され、切換弁6を通って、微細気泡発生装置4へと放出される。
【0051】
これを繰り返すことにより、ダイヤフラム式ポンプ102から、加圧された水が水中に放出されるとともに、酸素が微細気泡発生装置4から放出される。
【0052】
また、ダイヤフラム式ポンプ102から放出される水によって水流が発生する。
微細気泡発生装置4側へ放出された酸素は、減圧器30によって、0-0.3Mpa程度に減圧されている。微細気泡発生装置4の表面から放出された微細気泡は、水流によって表面から離間して水中に放出される。また、水面に浮遊した浮きブイ105が水流によって浮沈する。水中に沈んだ浮きブイ105に収納された菌担体21に酸素を供給することにより、脱窒反応とともに硝化反応も促進される。
【0053】
このように構成することにより、電力が供給されない場所であっても、圧縮液体酸素の気化圧を用いて、水質浄化装置101を駆動することができる。水質浄化装置101が駆動することにより、湖沼や内海などのような汚泥が滞留しやすい半閉鎖循環水系において、水中の窒素化合物やリンなどの濃度が上昇した場合であっても、脱窒反応とともに硝化反応を人工的に発生させることで、水質を浄化することができるのである。
【0054】
以上のように、水質浄化装置101は、液体酸素を貯蔵する貯蔵容器2と、液体酸素の気化圧を用いて水流を発生させる容積式ポンプの一例であるダイヤフラム式ポンプ102と、気化した酸素を微細気泡として供給する微細気泡発生装置4と、水流によって駆動され、菌担体を保持しつつ、水中及び空気中を交互に移動する菌担体移動装置である浮きブイ105と、を備え、微細気泡発生装置4は、気化した酸素を微細気泡として水中へ放出する気泡発生媒体31を備え、気泡発生媒体31は、炭素系の多孔質素材で形成されているものである。
このように構成することにより、電力を用いずに液体酸素の気化圧を利用して、水流を発生させて菌担体21を活性化することができるものである。詳しくは、菌担体移動装置である浮きブイ105が水中と空気中を交互に移動することで、菌担体21が好気性条件と嫌気性条件に交互に置かれることとなり、硝化反応および脱窒反応が起こりやすくなる。これにより、電力が供給できない条件下でも水質浄化を達成し、生物の生育に好適な条件を作成することが可能となる。
【符号の説明】
【0055】
1 水質浄化装置
2 貯蔵容器
3 水車
4 微細気泡発生装置
5 エアシリンダ
6 切換弁
6a 切換スイッチ
11 開閉弁
13 減圧器
16 シリンダチューブ
17 ピストン
18 ピストンロッド
19A・19B 給排ポート
21 菌担体
22 カム軸
22a カムプレート
23 バケット部
25 駆動リンク機構
30 減圧器
31 気泡発生媒体
31A 孔
101 水質浄化装置
102 ダイヤフラム式ポンプ
105 浮きブイ
111 シャフト
112 ダイヤフラム
113a 第一の吐出側ボール
113b 第一の吸引側ボール
114a 第二の吐出側ボール
114b 第二の吸引側ボール