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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】工具折損検出システム及び工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/155 20060101AFI20231207BHJP
   B23Q 17/09 20060101ALI20231207BHJP
   G05B 19/4065 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B23Q3/155 E
B23Q17/09 C
G05B19/4065
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020029088
(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公開番号】P2021133435
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000133593
【氏名又は名称】株式会社ツガミ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】加藤 駿
(72)【発明者】
【氏名】今泉 雄太
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第2003-0058492(KR,A)
【文献】特開2005-028522(JP,A)
【文献】特開2003-136371(JP,A)
【文献】特開2002-283163(JP,A)
【文献】実開平03-113740(JP,U)
【文献】特開昭63-002648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/155-3/157
B23Q 17/00-23/00
G05B 19/18-19/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
具折損検出装置と、
工具を前記工具の刃部に沿う方向に搬送し、前記工具を搬送する途中の停止位置で前記工具の移動を停止させる工具交換搬送部と、を備える工具折損検出システムであって、
前記工具折損検出装置は、ワークを加工する工具ユニットから前記工具交換搬送部を通じて取り外されて搬送される前記工具の折損の有無をツーリングゾーンの外部で検出する検出部と、針支持部と、前記針支持部により支持される検出針と、前記検出針を旋回させる針駆動部と、を有し、
前記工具折損検出システムは、前記工具における前記刃部に沿う長さに合わせて前記工具の前記刃部が前記検出針に対応する位置となるように前記停止位置を設定し、前記工具交換搬送部を通じて前記工具を設定した前記停止位置に停止させる制御部を備え
前記工具折損検出装置の前記検出針は、前記停止位置にある前記工具の前記刃部に交わる方向に沿って旋回可能に設けられ、
前記工具折損検出装置の前記検出部は、前記針駆動部による前記検出針の旋回が前記工具交換搬送部により搬送される前記工具により制限されたときに前記工具の折損がない旨を検出し、前記検出針の旋回が前記工具交換搬送部により搬送される前記工具により制限されないときに前記工具の折損がある旨を検出する、
工具折損検出システム。
【請求項2】
請求項に記載の工具折損検出システムと、
前記ワークを把持する主軸ユニットと、
前記主軸ユニットにより把持された前記ワークを加工する前記工具ユニットと、を備える、
工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具折損検出装置、工具折損検出システム及び工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の加工装置は、X方向及びY方向に移動するテーブルと、テーブル上に設けられたワークを位置決め固定する位置決め台と、テーブル上に設けられた加工工具の折損を検出する工具検出スイッチと、を備える。テーブルを移動させることにより工具検出スイッチを検出位置に位置づけて加工工具を降下させる。その際に工具検出スイッチが押下されたか否かにより加工工具の折損の有無が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-70295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の構成では、工具検出スイッチは、ワークが固定されるテーブル上に設けられる。このため、工具検出スイッチは、加工工具によりワークの加工が行われるツーリングゾーン内又は近傍に位置する。よって、加工工具によるワークの加工の伴い発生する切り粉、クーラント液又は振動等が工具検出スイッチに到達し、工具検出スイッチの検出に悪影響が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、より正確に工具の折損の有無を検出することができる工具折損検出装置、工具折損検出システム及び工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る工具折損検出システムは、工具折損検出装置と、工具を前記工具の刃部に沿う方向に搬送し、前記工具を搬送する途中の停止位置で前記工具の移動を停止させる工具交換搬送部と、を備える工具折損検出システムであって、前記工具折損検出装置は、ワークを加工する工具ユニットから前記工具交換搬送部を通じて取り外されて搬送される前記工具の折損の有無をツーリングゾーンの外部で検出する検出部と、針支持部と、前記針支持部により支持される検出針と、前記検出針を旋回させる針駆動部と、を有し、前記工具折損検出システムは、前記工具における前記刃部に沿う長さに合わせて前記工具の前記刃部が前記検出針に対応する位置となるように前記停止位置を設定し、前記工具交換搬送部を通じて前記工具を設定した前記停止位置に停止させる制御部を備え、前記工具折損検出装置の前記検出針は、前記停止位置にある前記工具の前記刃部に交わる方向に沿って旋回可能に設けられ、前記工具折損検出装置の前記検出部は、前記針駆動部による前記検出針の旋回が前記工具交換搬送部により搬送される前記工具により制限されたときに前記工具の折損がない旨を検出し、前記検出針の旋回が前記工具交換搬送部により搬送される前記工具により制限されないときに前記工具の折損がある旨を検出する。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る工作機械は、前記工具折損検出システムと、前記ワークを把持する主軸ユニットと、前記主軸ユニットにより把持された前記ワークを加工する前記工具ユニットと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、工具折損検出装置、工具折損検出システム及び工作機械において、より正確に工具の折損の有無を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る工作機械の概略正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る工作機械の概略側面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る工作機械の概略平面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る工作機械を部分的に拡大した概略平面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る工具交換処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係る工具折損検出装置、工具折損検出システム及び工作機械について図面を参照して説明する。
図1に示すように、工作機械1は、ワークWを加工するNC(Numerical Control)旋盤である。詳しくは、工作機械1は、工作機械1全体の台であるベッドSと、主軸ユニット10と、工具スピンドル20と、工具折損検出システム5と、を備える。
図3に示すように、工具折損検出システム5は、工具スピンドル20に装着される工具TLを交換及び運搬する工具交換搬送部3と、工具折損検出装置60と、制御部300と、を備える。工具交換搬送部3は、工具交換装置30と、工具搬送装置40と、工具マガジン装置50と、を備える。
【0013】
図1に示すように、主軸ユニット10は、ワークWを把持し、Z軸方向に沿う回転軸を中心に把持したワークWを軸回転させる。主軸ユニット10は、ワークWを把持する主軸11と、主軸11を軸回転可能に支持する主軸台15と、主軸台15を主軸11とともにZ軸方向に移動させる図示しない主軸移動機構と、を備える。
【0014】
図3に示すように、工具スピンドル20、工具交換装置30、工具搬送装置40、工具マガジン装置50及び工具折損検出装置60は、主軸ユニット10の上側にZ軸方向に沿って並べられる。工具スピンドル20と工具マガジン装置50の間には、工具交換装置30、工具搬送装置40及び工具折損検出装置60が配置される。
図1に示すように、工具スピンドル20は、主軸ユニット10により把持されたワークWに高さ方向であるY軸方向に対向して位置する。工具マガジン装置50は、主軸ユニット10の主軸11とは反対側の後部にY軸方向に対向して位置する。
【0015】
図1に示すように、工具スピンドル20は、主軸ユニット10により把持されたワークWをツーリングゾーンTZにて加工する。ツーリングゾーンTZは、主軸ユニット10により把持されたワークWを中心としたエリアに設定され、工具スピンドル20によるワークWの加工に伴って生じる切り粉又はクーラント液等が到達すると予想されるエリアに設定される。
工具スピンドル20は、工具TLが着脱可能であり、制御部300による制御のもと、装着された工具TLを軸回転させるとともに、互いに直交するX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能に、かつ、X軸方向に沿う旋回軸Bを中心に旋回可能に構成されている。工具スピンドル20は、交換位置PsからツーリングゾーンTZに進入したうえでワークWの加工を行う。交換位置Psは、ツーリングゾーンTZの外部であって、ツーリングゾーンTZの上側に位置し、工具交換装置30により工具TLが交換可能な位置に設定される。
【0016】
図3に示すように、工具交換装置30は、Z軸方向において、工具スピンドル20と工具搬送装置40の間に位置する。図1に示すように、工具交換装置30は、工具スピンドル20に装着される工具TLを交換する。工具交換装置30は、回転軸部31と、アーム部32,33と、を備える。回転軸部31は、Y軸方向に延びる円柱状に形成され、図示しないモータにより、Y軸方向に沿う回転軸31Jを中心に軸回転可能に設けられる。アーム部32,33は、それぞれ、回転軸部31の径方向の外側に向けて延びる。アーム部32,33は、回転軸部31の周囲に180°間隔で配置される。アーム部32,33は、回転軸部31とともに回転軸31Jを中心に旋回する。アーム部32,33は、交換位置Psに存在する工具スピンドル20に装着された工具TLと同一の高さに設けられる。アーム部32,33のそれぞれの先端部は工具TLを把持可能に形成される。
【0017】
図2及び図3に示すように、工具搬送装置40は、工具交換装置30により工具スピンドル20から取り外された工具TLを受け取り、受け取った工具TLを工具マガジン装置50に搬送する。また、工具搬送装置40は、工具TLの搬送中に工具折損検出装置60により工具TLの折損の有無を検出可能となるように工具TLの移動を停止する。図3に示すように、工具搬送装置40は、Z軸方向において、工具交換装置30と工具マガジン装置50の間に位置する。
工具搬送装置40は、工具TLを保持する工具保持部43と、Y軸移動機構41Y(図2参照)と、Z軸移動機構41Z(図3参照)と、を備える。
図2に示すように、工具保持部43は、工具TLの刃部TLaがY軸方向に沿い、かつ、刃部TLaの刃先がベッドSを向くように工具TLを保持する。
【0018】
図2に示すように、Y軸移動機構41Yは、Y軸方向において、工具保持部43を下側位置YLと上側位置YHの間で移動させる。下側位置YLは、工具保持部43により保持される工具TLが工具交換装置30のアーム部32,33及び工具マガジン装置50の後述する把持部52aと同一の高さとなるように設定される。上側位置YHは、工具保持部43により保持される工具TLが工具マガジン装置50の後述する把持部51aと同一の高さとなるように設定される。また、Y軸移動機構41Yは、Y軸方向において、工具保持部43を下側位置YLと上側位置YHの間の停止位置YSにて工具保持部43の移動を停止させる。停止位置YSは、工具保持部43により保持される工具TLの刃部TLaが工具折損検出装置60の後述する検出針62と同一の高さとなる位置に設定される。後述するように、停止位置YSは、制御部300により工具TLの刃部TLaのY軸方向の長さに応じて設定される。Y軸移動機構41Yは、例えば、モータ41aと、モータ41aにより軸回転するボールねじ41bと、ボールねじ41bに嵌まり、ボールねじ41bに沿って工具保持部43と一体でY軸方向に移動するナット41cと、を備える。
【0019】
図3に示すように、Z軸移動機構41Zは、Z軸方向において、Y軸移動機構41Y及び工具保持部43をアーム対向位置ZLとマガジン把持部対向位置ZRの間で移動させる。アーム対向位置ZLは、Y軸方向にアーム部32,33の何れかに重なる位置であり、工具保持部43が工具交換装置30のアーム部32,33の何れかとの間で工具TLを授受可能となる位置である。マガジン把持部対向位置ZRは、Y軸方向にマガジン51,52の後述する把持部51a,52aに重なる位置であり、工具保持部43が把持部51a,52aとの間で工具TLを授受可能となる位置である。
Z軸移動機構41Zは、例えば、モータ41dと、モータ41dにより軸回転するボールねじ41eと、ボールねじ41eに嵌まり、ボールねじ41eに沿って工具保持部43と一体でZ軸方向に移動するナット41fと、を備える。
【0020】
図1に示すように、工具マガジン装置50は、工具搬送装置40(図2参照)により出し入れ可能に複数の工具TLを収容する。工具マガジン装置50は、主軸ユニット10の主軸11とは反対側の端部の上側に位置する。工具マガジン装置50は、2つのマガジン51,52と、マガジン駆動モータ53と、マガジン支持軸55と、支柱54と、支持フレーム56と、を備える。
マガジン51,52は、それぞれ円板状に形成される。マガジン51,52は、それぞれ、マガジン51,52の外周に沿って並び、工具TLを把持するU字状の把持部51a,52aを有する。2つのマガジン51,52は、Y軸方向に重なるように並べられ、Y軸方向に沿うマガジン回転軸50Jを中心にマガジン支持軸55により回転可能に支持される。支持フレーム56は、X軸方向及びZ軸方向に沿って延び、主軸ユニット10の主軸台15の上側に位置する。支持フレーム56の上面にマガジン支持軸55及び支柱54が固定される。マガジン駆動モータ53は、マガジン支持軸55の上端に位置し、マガジン回転軸50Jを中心にマガジン51,52を回転させる。
支柱54は、Y軸方向に沿って延び、マガジン51,52の外周に対して隙間を持った位置に設けられる。支柱54は、工具マガジン装置50の周囲を覆う図示しないカバーを支持するために設けられている。図3に示すように、支柱54は、工具搬送装置40の工具保持部43に対してX軸方向に隙間を持つように設けられる。支柱54には工具折損検出装置60が固定される。
【0021】
図4に示すように、工具折損検出装置60は、Z軸方向において、工具交換装置30とマガジン51,52の間に位置する。また、工具折損検出装置60は、X軸方向において、工具保持部43のZ軸方向の移動経路R1を避けつつ、工具折損検出装置60の後述する検出針62が工具保持部43により保持される工具TLに到達可能な位置に設けられる。
図2及び図4に示すように、工具折損検出装置60は、停止位置YS,ZSにて移動が停止した工具保持部43に保持される工具TLの折損の有無を検出する。
工具折損検出装置60は、針支持部61と、検出針62と、検出部63aと、針駆動部63bと、固定金具64と、を備える。針支持部61は、Y軸方向に延びる円柱状に形成される。直線状に延びる検出針62の端部は、針支持部61の上端に旋回可能に支持される。針駆動部63bは、針支持部61を中心に検出針62を旋回させる。検出部63aは、検出針62の旋回が工具TL1の刃部TLaにより制限されるか否かを通じて工具TLの折損の有無を検出する。例えば、検出部63aは、検出針62の角度を検出する角度検出センサである。検出部63aは、工具TLの折損の有無を検出した結果を制御部300に出力する。固定金具64は、針支持部61を支柱54に固定する。
【0022】
制御部300は、工作機械1の各部の動作を制御する。制御部300は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等からなる。制御部300は、数値制御によって、主軸ユニット10、工具スピンドル20、工具交換装置30、工具搬送装置40、工具マガジン装置50及び工具折損検出装置60を制御する。
【0023】
次に、図5のフローチャートを参照しつつ、制御部300により実行される工具交換処理について説明する。
まず、制御部300は、ツーリングゾーンTZにおいて、工具スピンドル20に装着された工具TLを介して主軸ユニット10により把持されるワークWの加工を行う(ステップS101)。
【0024】
そして、制御部300は、工具スピンドル20に装着された工具TLの交換が必要であるか否かを判別する(ステップS102)。制御部300は、工具TLの交換が必要でない旨判別すると(ステップS102;NO)、ステップS101に戻り、工具スピンドル20に装着された工具TLでの加工を継続する。
【0025】
一方、制御部300は、工具TLの交換が必要である旨判別すると(ステップS102;YES)、工具スピンドル20を交換位置Psに移動させる(ステップS103)。
【0026】
そして、制御部300は、工具交換装置30を通じて、工具スピンドル20から工具TL1を取り外し、工具TL1とは別の工具TL2を工具スピンドル20に取り付ける(ステップS104)。このステップS104においては、図1に示すように、まず、アーム部32が工具スピンドル20に装着された工具TL1を把持し、アーム部33が工具搬送装置40により搬送された工具TL1を把持する。この状態で、回転軸部31をY軸方向に移動させる図示しない軸部駆動機構によってアーム部32が工具スピンドル20に対して退避する。これにより、工具TL1が工具スピンドル20から取り外される。次に、回転軸部31を中心に180°回転したうえで、上記軸部駆動機構によってアーム部33が工具スピンドル20に接近する。これにより、アーム部33に把持された工具TL2が工具スピンドル20に装着される。
工具スピンドル20は、後述するステップS105以降と同時に、装着された工具TL2を利用してワークWの加工を行う。
【0027】
そして、制御部300は、工具搬送装置40を介して工具TL1を工具交換装置30から受け取る(ステップS105)。このステップS105において、詳しくは、制御部300は、図3に示すように、Z軸移動機構41Zを介して工具搬送装置40の工具保持部43をアーム部32に対応するアーム対向位置ZLまで移動させる。そして、制御部300は、図2に示すように、Y軸移動機構41Yを介して工具保持部43を下側位置YLまで移動させる。これにより、工具保持部43は、アーム部32により把持される工具TL1に近づいて工具TL1を受け取る。
【0028】
次に、制御部300は、工具TL1の長さに合わせて停止位置YSを設定する(ステップS106)。具体的には、制御部300は、工具TL1の刃部TLaの長さに関わらず、刃部TLaの先端が検出針62と同一の高さとなるように停止位置YSを設定する。停止位置YSは、刃部TLaの長さが短いほどY軸方向においてベッドSに近い位置に設定され、刃部TLaの長さが長いほどY軸方向においてベッドSから遠い位置に設定される。例えば、工具の種類に合わせた複数の停止位置がデータテーブルとして予めメモリに記憶される。そして、制御部300は、このデータテーブルに基づき、工具の種類に応じた停止位置を設定してもよい。停止位置YSは工具TL1の刃部TLaの長さによって可変であるが、停止位置ZSは工具TL1の刃部TLaの長さに関わらず一定である。
なお、停止位置YSを設定するタイミングは、ステップS107よりも前であれば、本例に限らず、どのタイミングであってもよい。
【0029】
次に、制御部300は、工具保持部43に保持された工具TL1を停止位置YS,ZSまで移動させ、工具TL1を停止位置YS,ZSで停止させる(ステップS107)。このステップS107において、詳しくは、制御部300は、図2に示すように、Y軸移動機構41Yを介して工具保持部43に保持される工具TL1を下側位置YLから停止位置YSまで移動させ、工具TL1を停止位置YSで停止させる。これの後又はこれと同時に、制御部300は、図3及び図4に示すように、Z軸移動機構41Zを介して工具保持部43に保持される工具TL1を停止位置ZSまで移動させ、工具TL1を停止位置ZSで停止させる。これにより、工具TL1の刃部TLaの先端側は、旋回する検出針62に接触可能な位置となる。
【0030】
そして、制御部300は、工具折損検出装置60を通じて工具TL1の折損の有無を検出する(ステップS108)。このステップS108において、詳しくは、制御部300は、図4に示すように、検出針62をZ軸方向に沿う実線で示す原位置から針駆動部63bを介して上側から見て反時計回りに所定角度αだけ回転させる。所定角度αは、検出針62の回転軌跡が工具TL1の刃部TLaを含む角度に設定される。所定角度αは、例えば、135°に設定される。検出部63aは、検出針62の旋回が工具TL1の刃部TLaに接触することにより制限されたときに工具TL1の折損がない旨を検出し、検出針62の旋回が工具TL1の刃部TLaに接触せずに制限されないとき、言い換えると、検出針62が空振りしたときに工具TL1の折損がある旨を検出する。制御部300は、工具折損検出装置60により検出された工具TL1の折損の有無を図示しないディスプレイ又は発音部を通じて作業者に伝えてもよい。
【0031】
次に、制御部300は、Y軸移動機構41Yを介して工具保持部43を上側位置YH又は下側位置YLまで移動させる(ステップS109)。このステップS109において、詳しくは、制御部300は、工具TL1を工具マガジン装置50のマガジン51に収納する場合には工具保持部43を上側位置YHまで移動させ、工具TL1を工具マガジン装置50のマガジン52に収納する場合には工具保持部43を下側位置YLまで移動させる。
【0032】
次に、制御部300は、Z軸移動機構41Zを介して工具保持部43が保持する工具TL1を工具マガジン装置50に収容する(ステップS110)。このステップS110において、詳しくは、制御部300は、マガジン駆動モータ53を駆動させて、マガジン51,52のうち工具TLを把持していない把持部51a,52aが工具保持部43により保持される工具TL1に対向するようにマガジン回転軸50Jを中心にマガジン51,52を回転させる。そして、制御部300は、Y軸移動機構41Y及びZ軸移動機構41Zを介して工具保持部43をマガジン51,52に近づくように移動させて、工具保持部43が保持する工具TL1を把持部51a,52aに受け渡す。
【0033】
最後に、制御部300は、工具搬送装置40を介して工具マガジン装置50から新たな工具を受け取り、新たな工具を工具交換装置30に受け渡し(ステップS111)、工具交換処理を終了する。このステップS111において、詳しくは、制御部300は、マガジン駆動モータ53を駆動させて、マガジン51,52のうち新たな工具を把持する把持部51a,52aが工具保持部43に対向するようにマガジン回転軸50Jを中心にマガジン51,52を回転させる。そして、制御部300は、Y軸移動機構41Y及びZ軸移動機構41Zを介して工具保持部43をマガジン51,52に近づくように移動させ、工具保持部43が新たな工具を把持部51a,52aから受け取る。そして、制御部300は、工具保持部43を工具交換装置30のアーム部32に対向する位置まで移動させた後に、工具保持部43が保持する新たな工具を工具交換装置30のアーム部32に受け渡す。この状態で、工具交換装置30は、工具スピンドル20の工具TLの交換のタイミングまで待機する。
【0034】
(効果)
以上、説明した一実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)工具折損検出装置60は、ワークWを加工する工具ユニットの一例である工具スピンドル20から工具交換搬送部3を通じて取り外されて搬送される工具TLの折損の有無をツーリングゾーンTZの外部で検出する検出部63aを備える。
この構成によれば、検出部63aによりツーリングゾーンTZの外部で工具TLの折損の有無が検出される。よって、ワークWの加工の伴い発生する切り粉、クーラント液又は振動等が検出部63aによる検出に影響が及ぶことが抑制される。よって、工具折損検出装置60を通じて、より正確に工具の折損の有無を検出することができる。
さらに、工具スピンドル20によるワークWの加工中にも、工具折損検出装置60を通じて工具TLの折損の有無を検出可能である。このため、工具TLの折損の有無を検出のために加工時間が長くなることが抑制される。
【0035】
(2)検出部63aは、工具交換搬送部3の工具搬送装置40により工具TLを搬送する途中の停止位置YS,ZSで工具TLの移動を停止させた状態の工具TLの折損の有無を検出する。
この構成によれば、移動が停止した状態の工具TLの折損の有無が検出される。このため、工具折損検出装置60を通じて、より正確に工具の折損の有無を検出することができる。
【0036】
(3)工具折損検出装置60は、針支持部61と、針支持部61により旋回可能に支持される検出針62と、検出針62を旋回させる針駆動部63bと、を備える。検出部63aは、停止位置YS,ZSで工具TLの移動が停止している際に、針駆動部63bによる検出針62の旋回が工具TLにより制限されたときに工具TLの折損がない旨を検出し、検出針62の旋回が工具TLにより制限されないときに工具TLの折損がある旨を検出する。
この構成によれば、工具TLの折損の有無を検出するため検出針62が旋回しても、工具スピンドル20の動作を阻害することがなく、より簡単で正確に工具TLの折損の有無を検出することができる。
【0037】
(4)工具折損検出システム5は、工具折損検出装置60と、工具交換搬送部3と、を備える。工具交換搬送部3は、工具スピンドル20に装着される工具TLを交換する工具交換装置30と、複数の工具TLを収容する工具マガジン装置50と、工具交換装置30及び工具マガジン装置50の間で工具TLを搬送する工具搬送装置40と、を備える。検出針62は、停止位置YS,ZSにある工具TLの刃部TLaに交わるX軸方向及びZ軸方向に沿って旋回可能に設けられる。工具搬送装置40は、工具TLを刃部TLaに沿うY軸方向に搬送する。工具折損検出システム5は、工具TLにおける刃部TLaに沿う長さに合わせて工具TLの刃部TLaが検出針62に対応する位置となるように停止位置YSを設定し、工具搬送装置40を通じて工具TLを設定した停止位置YSに停止させる制御部300を備える。
工具TLの長さに関わらず停止位置YSが一定である比較例においては、例えば、工具TLの長さが短い場合、工具TLの折損がないのにも関わらず、検出針62が工具TLの刃部TLaに接触せずに空振りとなり、誤って工具折損検出装置60により工具TLの折損がある旨の検出がされるおそれがある。また、この比較例において、工具TLの長さが長い場合、工具TLの刃部TLaの先端が折損しているのにも関わらず、検出針62が刃部TLaの折損していない部分に接触し、誤って工具折損検出装置60により工具TLの折損がない旨の検出がされるおそれがある。
上記構成によれば、工具TLの長さに合わせて、工具TLの停止位置YSが設定される。よって、上記比較例のような誤検出を抑制することができる。また、作業者による工具折損検出装置60の位置調整が不要となる。
【0038】
(5)工作機械1は、工具折損検出システム5と、ワークWを把持する主軸ユニット10と、工具スピンドル20と、を備える。
この構成によれば、工作機械1において、工具スピンドル20が主軸ユニット10により把持されたワークWを加工している際であっても、工具折損検出装置60を通じて工具スピンドル20から取り外された工具TLの折損の有無を正確に検出することができる。
【0039】
なお、本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。以下に、変形の一例を説明する。
【0040】
上記実施形態においては、工作機械1は1つの主軸ユニット10を備えていたが、これに限らず、工作機械1は互いに対向する2つの主軸ユニット10を備えていてもよい。
【0041】
上記実施形態においては、制御部300は、工具TLの長さに合わせて停止位置YSを設定していたが、これに限らず、工具TLの長さに関わらず、停止位置YSを一定に設定してもよい。
【0042】
上記実施形態においては、工具折損検出装置60は検出針62を旋回させる指針式であったが、これに限らず、工具TLの折損を検出することができれば、他のタイプが採用されてもよい。
例えば、工具折損検出装置60は、工具TLの先端により押されるプッシュスイッチ式の検出装置、又は非接触で工具TLの折損の有無を検出する光又は電磁波を利用した非接触式の検出装置であってもよい。
【0043】
上記実施形態においては、工具交換搬送部3における工具交換装置30及び工具搬送装置40は別の装置として構成されていたが、同一の装置として構成されてもよい。この場合、工具搬送装置40は、工具保持部43から直接に工具スピンドル20に工具TLを授受することにより工具搬送装置40の機能を有していてもよい。さらに、この場合、工具保持部43は複数の工具TLを保持可能に構成され、第1の工具を工具スピンドル20から受け取り、第2の工具を工具スピンドル20に受け渡してもよい。
【0044】
上記実施形態においては、工具折損検出装置60は、支柱54に固定されていたが、ツーリングゾーンTZの外部であれば、これに限らず、例えば、マガジン51,52、工具保持部43又は工具交換装置30に固定されてもよい。工具折損検出装置60が工具保持部43に固定される場合には、例えば、工具保持部43を停止位置YS,ZSに停止させることなく、工具保持部43を移動させつつ工具折損検出装置60による検出が行われてもよい。
また、工具折損検出装置60は、マガジン51,52の把持部51a,52aに把持された工具TL又は工具交換装置30のアーム部32,33により把持される工具TLの折損の有無を検出してもよい。
また、マガジン51,52の数は、単数又は3つ以上であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…工作機械、3…工具交換搬送部、5…工具折損検出システム、10…主軸ユニット、11…主軸、15…主軸台、20…工具スピンドル、30…工具交換装置、31…回転軸部、31J…回転軸、32,33…アーム部、40…工具搬送装置、41Y…Y軸移動機構、41Z…Z軸移動機構、41a,41d…モータ、41b,41e…ボールねじ、41c,41f…ナット、43…工具保持部、50…工具マガジン装置、50J…マガジン回転軸、51,52…マガジン、51a,52a…把持部、53…マガジン駆動モータ、54…支柱、55…マガジン支持軸、56…支持フレーム、60…工具折損検出装置、61…針支持部、62…検出針、63a…検出部、63b…針駆動部、64…固定金具、300…制御部、α…角度、B…旋回軸、S…ベッド、R1…移動経路、W…ワーク、TL,TL1,TL2…工具、TZ…ツーリングゾーン、YH…上側位置、YL…下側位置、ZL…アーム対向位置、YS,ZS…停止位置、ZR…マガジン把持部対向位置、Ps…交換位置、TLa…刃部
図1
図2
図3
図4
図5