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特許7398303ポリウレタンポリアミン組成物、ポリウレタンポリアミンの製造方法、及びポリウレタンポリアミン組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】ポリウレタンポリアミン組成物、ポリウレタンポリアミンの製造方法、及びポリウレタンポリアミン組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 71/04 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
C08G71/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020049604
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021147528
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100161942
【弁理士】
【氏名又は名称】鴨 みどり
(72)【発明者】
【氏名】川本 教博
【審査官】山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-311144(JP,A)
【文献】特開2004-263063(JP,A)
【文献】特開昭50-041996(JP,A)
【文献】特表2017-525795(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102391821(CN,A)
【文献】O. Ihata et al.,Aliphatic Poly(urethane-amine)s Synthesized by Copolymerization of Aziridines and Supercritical Carbon Dioxide,Macromolecules,米国,American Chemical Society,2005年,Vol. 38,Pages 6429-6434.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G18/00-18/87;71/00-71/04
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)~(3)で表されるウレタンユニットと下記式(4)~(6)で表されるアミンユニットとが繋がった構成単位を含むポリウレタンポリアミン(I)を含有し、エチレンイミンの含有量が、該ポリウレタンポリアミン(I)100質量%に対して0.1質量%未満であり、該ポリウレタンポリアミン(I)におけるウレタン比率が15%以上である、ポリウレタンポリアミン組成物。
【化1】
【請求項2】
超臨界状態にある二酸化炭素に、エチレンイミンを添加・混合して反応させ、下記式(1)~(3)で表されるウレタンユニットと下記式(4)~(6)で表されるアミンユニットとが繋がった構成単位を含むポリウレタンポリアミン(I)を製造する工程を含むことを特徴とする、ポリウレタンポリアミンの製造方法。
【化2】
【請求項3】
下記式(19)~(21)で表されるウレタンユニットと下記式(22)~(24)で表されるアミンユニットとが繋がった構成単位を含むポリウレタンポリアミン(G)と、該ポリウレタンポリアミン(G)100質量%に対して0.1質量%以上のアジリジン化合物とを含むポリウレタンポリアミン粗製物に対して、該アジリジン化合物よりも沸点の高い溶媒を該粗製物100質量%に対して1質量%以上添加し、該溶媒100質量%中1質量%以上を溜去させる工程を含むことを特徴とする、ポリウレタンポリアミン組成物の製造方法。
【化3】
上記式中、A~A、B~B、C~C、D~D、E~E、Fは、同一又は異なって、それぞれ置換基を有していても良いメチレン基である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンポリアミン組成物、ポリウレタンポリアミンの製造方法、及びポリウレタンポリアミン組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリウレタンポリアミン(ポリウレタンポリアミン樹脂)を製造する際には、毒性の懸念されるエチレンイミンを原料として使用するが、生成物であるポリウレタンポリアミン樹脂中に未反応のエチレンイミンが残留し、安全性、安定性に悪影響を与える問題点があった。非特許文献1の処方では、液体窒素温度に冷却した反応器で原料を混合し、その後80℃まで昇温して高圧下で18時間反応し、減圧下にてエチレンイミンを除去して固形分を回収するという、消費エネルギーと操作の煩雑さの点で非効率なプロセスであった。
【0003】
非特許文献2には、アルゴンガスで満たしたオートクレーブに2-メチルアジリジン(プロピレンイミン)を導入後、冷却したCOを加えて100℃で24時間反応させて、2-メチルアジリジンとCOの共重合体を合成したことが記載されている。しかしながら、非特許文献2には、エチレンイミンを原料として使用してポリウレタンポリアミンを合成することについては記載されていない。エチレンイミンとプロピレンイミンとは、構造的に類似するが反応性は全く異なるものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】K.Soga,et.al.,Die Maklomolekulare Chemie 1974,175,3309-3313
【文献】T.Ikariya et.al.,Macromolecules 2005,38,6429-6434
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、エチレンイミンを原料として効率的にポリウレタンポリアミンを合成できる方法を提供することにある。また、ポリウレタンポリアミン中に残留するアジリジン化合物が除去された低毒性、高安定性のポリウレタンポリアミン組成物、ならびに該組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、反応器内にて昇温した高圧CO下にエチレンイミンを導入することで、効率的にポリウレタンポリアミンを合成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
また、反応後に特定の溶媒を添加し、加熱しながら該溶媒を溜去することにより、ポリウレタンポリアミン粗製物中に残留するアジリジン化合物を除去することが可能になり、低毒性、高安定性のポリウレタンポリアミン組成物を製造、提供できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち本発明のポリウレタンポリアミン組成物は、下記式(1)~(3)で表されるウレタンユニットと下記式(4)~(6)で表されるアミンユニットとが繋がった構成単位を含むポリウレタンポリアミン(I)を含有し、エチレンイミンの含有量が、該ポリウレタンポリアミン(I)100質量%に対して0.1質量%未満である。
【0008】
【化1】
【0009】
また、本発明のポリウレタンポリアミンの製造方法では、超臨界状態にある二酸化炭素に、エチレンイミンを添加・混合して反応させ、上記式(1)~(3)で表されるウレタンユニットと上記式(4)~(6)で表されるアミンユニットとが繋がった構成単位を含む上記ポリウレタンポリアミン(I)を製造する工程を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明はまた、下記式(19)~(21)で表されるウレタンユニットと下記式(22)~(24)で表されるアミンユニットとが繋がった構成単位を含むポリウレタンポリアミン(G)と、該ポリウレタンポリアミン(G)100質量%に対して0.1質量%以上のアジリジン化合物とを含むポリウレタンポリアミン粗製物に対して、該アジリジン化合物よりも沸点の高い溶媒を該粗製物100質量%に対して1質量%以上添加し、該溶媒100質量%中1質量%以上を溜去させる工程を含むことを特徴とする、ポリウレタンポリアミン組成物の製造方法である。
【0011】
【化2】
【0012】
上記式中、A~A、B~B、C~C、D~D、E~E、Fは、同一又は異なって、それぞれ置換基を有していても良いメチレン基である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、エチレンイミンを原料として効率的なポリウレタンポリアミンの合成方法を提供できる。また、ポリウレタンポリアミン粗製物中に残留するアジリジン化合物が除去され、低毒性、高安定性のポリウレタンポリアミン組成物、ならびに該組成物の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.ポリウレタンポリアミン組成物
本発明のポリウレタンポリアミン組成物は、下記式(1)~(3)で表されるウレタンユニットと下記式(4)~(6)で表されるアミンユニットとが繋がった構成単位を含むポリウレタンポリアミン(I)を含有し、該ポリウレタンポリアミン(I)100質量%に対してエチレンイミンの含有量が0.1質量%未満である。上記ポリウレタンポリアミン(I)は、好ましくは、以下の構成単位を含んでいる。
・下記式(1)で表されるウレタンユニットと下記式(4)で表されるアミンユニットとが繋がった構成単位、
・下記式(1)で表されるウレタンユニットと下記式(5)で表されるアミンユニットとが繋がった構成単位、
・下記式(1)で表されるウレタンユニットと下記式(6)で表されるアミンユニットとが繋がった構成単位、
・下記式(2)で表されるウレタンユニットと下記式(4)で表されるアミンユニットとが繋がった構成単位、
・下記式(2)で表されるウレタンユニットと下記式(5)で表されるアミンユニットとが繋がった構成単位、
・下記式(2)で表されるウレタンユニットと下記式(6)で表されるアミンユニットとが繋がった構成単位、
・下記式(3)で表されるウレタンユニットと下記式(4)で表されるアミンユニットとが繋がった構成単位、
・下記式(3)で表されるウレタンユニットと下記式(5)で表されるアミンユニットとが繋がった構成単位、及び
・下記式(3)で表されるウレタンユニットと下記式(6)で表されるアミンユニットとが繋がった構成単位。
【0015】
【化3】
【0016】
また、上記ポリウレタンポリアミン(I)は、下記式(7)~(9)で表されるカルバミン酸ユニット、下記式(10)~(11)で表されるアジリジンユニット、下記式(12)~(18)で表される尿素ユニットを含んでいてもよい。
【0017】
【化4】
【0018】
本明細書において、ポリウレタンポリアミンとは、ウレタン比率が7%以上の物を指す。ここで、ポリウレタンポリアミン(I)におけるウレタン比率は、HNMRの面積比より、ウレタンユニット由来メチレンピーク面積/総メチレンピーク面積=モル%として求められる値である。
【0019】
上記ポリウレタンポリアミン(I)は、上記式(1)~(18)で表される構造単位を質量比で70質量%以上有するポリウレタンポリアミンであることが好ましく、80質量%以上有するポリウレタンポリアミンであることがより好ましく、90質量%以上有するポリウレタンポリアミンであることがさらに好ましい。上限としては100質量%である。
【0020】
上記ポリウレタンポリアミン(I)におけるウレタン比率は、用途に応じて任意に選択することができるが、10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましい。上限としては100%程度である。ウレタン比率が好ましい範囲にあることで、ウレタン構造に由来する分散性、密着性等の性能が十分に発現されるようになる。ここで、ポリウレタンポリアミン(I)におけるウレタン比率の測定方法は、上記の通りである。
【0021】
上記ポリウレタンポリアミン(I)の平均分子量は、用途によって好ましい範囲が異なるが、分散剤等に用いる場合、重量平均分子量Mwとしては、1,000~20,000程度が好ましい。数平均分子量Mnとしては、500~10,000程度が好ましい。Mw/Mnとしては、1.0~3.0程度が好ましい。成形材料や粘着剤に用いる場合には、高分子量体が好ましく、重量平均分子量Mwとしては、3,000~300,000程度が好ましい。数平均分子量Mnとしては、2,000~200,000程度が好ましい。Mw/Mnとしては、1.0~5.0程度が好ましい。
【0022】
本発明のポリウレタンポリアミン組成物におけるエチレンイミンの含有量は、ポリウレタンポリアミン(I)100質量%に対して1000ppm以下であることが好ましい。労働安全衛生法でも危険有害性の観点から、エチレンイミンを1000ppm以上含有する物質を、表示・通知義務対象物質に指定している。取扱いにおける安全性を高めるため、100ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることがさらに好ましく、1ppm以下であることが特に好ましい。エチレンイミンの含有量の下限としては、0ppmである。
【0023】
本発明のポリウレタンポリアミン組成物における上記ポリウレタンポリアミン(I)の含有量は、使用目的に応じて任意に選択することができるが、機能付与と輸送効率の点からは、組成物100質量%中、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。上限としては100質量%である。
【0024】
本発明のポリウレタンポリアミン組成物は、溶媒を含んでいても良い。上記溶媒としては、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類:酢酸エチル、酢酸セルソルブ等のエステル類;アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒等が例示される。上記溶媒の含有量は、組成物100質量%中、0~90質量%が好ましく、0~80質量%がより好ましく、0~60質量%がさらに好ましい。
【0025】
本発明のポリウレタンポリアミン組成物は、低毒性、高安定性を有するため、分散剤、コーティング剤、粘着剤、ガスバリアフィルム、ガス分離膜等の種々の用途に利用できる。ポリウレタンはあらゆる分野で機能的に採用されており、特に、上記式(4)~(6)で表される構造単位を有するポリウレタンポリアミン(I)は、求電子剤との高い反応性を有する1級アミン及び/又は2級アミンを有するポリウレタンであるため、種々の求電子剤を用いることで多様な機能化が期待できる。
【0026】
2.ポリウレタンポリアミンの製造方法
本発明のポリウレタンポリアミンの製造方法は、超臨界状態にある二酸化炭素に、エチレンイミンを添加・混合して反応させ、上記式(1)~(3)で表されるウレタンユニットと上記式(4)~(6)で表されるアミンユニットとが繋がった構成単位を含むポリウレタンポリアミン(I)を製造する工程を含むことを特徴とする。
【0027】
超臨界状態にある二酸化炭素は、反応容器に二酸化炭素を導入し、反応容器内を二酸化炭素の臨界点以上の温度、圧力にすることにより得られる。反応容器を二酸化炭素の臨界点以上の温度に昇温し、二酸化炭素を導入して二酸化炭素の臨界圧力以上としても良い。二酸化炭素の臨界点以上の温度、圧力としては、温度31.1~180℃、圧力7.38~60MPaが好ましく、温度50~150℃、圧力10~50MPaがより好ましく、温度70~120℃、圧力20~40MPaがさらに好ましい。反応の進行に伴う二酸化炭素の消費により圧力が降下する場合は、二酸化炭素を追加し、好ましい圧力範囲を反応終了まで維持することが特に好ましい。超臨界状態にない二酸化炭素とエチレンイミンとを混合後に昇温した場合には、ウレタンユニットの導入率が低く、ポリウレタンポリアミンは得られず、主としてポリエチレンイミンが得られる。
【0028】
また、超臨界状態にある二酸化炭素は、溶媒を含んでいてもよい。上記溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸セルソルブ等のエステル類;アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒等が好ましい。これらの溶媒は、1種を使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。上記溶媒の使用量としては、二酸化炭素100質量%に対し、0~500質量%が好ましく、0~200質量%がより好ましく、0~100質量%がさらに好ましい。
【0029】
二酸化炭素とエチレンイミンの混合比としては、モル比で、二酸化炭素/エチレンイミン=100~0.2が好ましく、50~0.5がより好ましく、20~1.0がさらに好ましい。反応容器内において、常に二酸化炭素が過剰に存在するよう、エチレンイミンを逐次的に導入する混合方法が、ウレタン比率を高める場合には好ましい。
【0030】
上記エチレンイミンは、溶媒で希釈して反応系に添加してもよい。上記溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸セルソルブ等のエステル類;アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒等が好ましい。これらの溶媒は、1種を使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。上記溶媒の使用量としては、エチレンイミン100質量%に対し、20~1000質量%が好ましく、50~500質量%がより好ましく、100~200質量%がさらに好ましい。
【0031】
本発明のポリウレタンポリアミンの製造方法では、触媒は特に必要としないが、触媒又は重合開始剤の使用により、反応条件を温和にしたり、分子量を制御することが可能になる。触媒としては、酸触媒、塩基触媒共に使用することが可能であるが、塩基触媒が好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機強塩基;1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、1,4-ジアザビシクロオクタン、金属アルコキシド、金属フェノキシド等の有機強塩基等が挙げられる。上記触媒の使用量としては、エチレンイミン100質量%に対し、0.001~10質量%程度が好ましい。
【0032】
超臨界状態にある二酸化炭素にエチレンイミンを添加・混合して反応させる際には、反応による発熱を十分に徐熱できるよう添加・混合速度を調節する必要があるため、規模に応じて適宜設定する必要があるが、添加・混合時間としては1分以上が好ましく、5分以上がより好ましく、30分以上がさらに好ましい。添加・混合後に反応を完結させるための熟成時間としては、10分以上が好ましく、30分以上がより好ましく、1時間以上がさらに好ましい。添加・混合と熟成に要する合計時間の上限としては、経済性等の観点から48時間以内が好ましく、24時間以内がより好ましい。
【0033】
本発明のポリウレタンポリアミンの製造方法では、流通系反応装置を使用することも可能であり、反応器としては、管型もしくは連続槽型等を任意に選択することができる。反応条件については、前述の好ましい形態から任意に選択できるが、流通系内での閉塞を避けるため、溶媒で希釈して送液することが好ましい。上記溶媒の使用量としては、エチレンイミン100質量%に対し、20~1000質量%が好ましく、50~800質量%がより好ましく、100~600質量%がさらに好ましい。
【0034】
3.ポリウレタンポリアミン組成物の製造方法
本発明のポリウレタンポリアミン組成物の製造方法は、下記式(19)~(21)で表されるウレタンユニットと下記式(22)~(24)で表されるアミンユニットとが繋がった構成単位を含むポリウレタンポリアミン(G)と、該ポリウレタンポリアミン(G)100質量%に対して0.1質量%以上のアジリジン化合物とを含むポリウレタンポリアミン粗製物に対して、該アジリジン化合物よりも沸点の高い溶媒を該粗製物100質量%に対して1質量%以上添加し、該溶媒100質量%中1質量%以上を溜去させる工程を含むことを特徴とする。
【0035】
【化5】
【0036】
上記式中、A~A、B~B、C~C、D~D、E~E、Fは、同一又は異なって、それぞれ置換基を有していても良いメチレン基である。該置換基としては、メチル基、エチル基等が挙げられる。上記ポリウレタンポリアミン(G)は、上記ポリウレタンポリアミン(I)を含んでいてもよく、上記ポリウレタンポリアミン(I)であってもよい。
【0037】
上記ポリウレタンポリアミン粗製物に含まれる上記ポリウレタンポリアミン(G)の含有量としては、使用目的に応じて任意に選択することができるが、機能付与と輸送効率の点からは、粗製物100質量%中、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。
【0038】
上記ポリウレタンポリアミン粗製物に含まれるアジリジン化合物としては、エチレンイミン、プロピレンイミン、2,2-ジメチルアジリジン、2-エチルアジリジン等が挙げられる。
【0039】
上記アジリジン化合物よりも沸点の高い溶媒としては、水;エタノール、プロパノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸セルソルブ等のエステル類;アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ガンマ-ブチロラクトン等の非プロトン性極性溶媒等が例示される。これらの溶媒は、1種を使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。溶媒の種類については、使用目的によって適宜選択することが可能であるが、中でも好ましくは、水、エタノール、プロパノール、テトラヒドロフランである。上記溶媒の添加量については、溶媒の種類とポリウレタンポリアミン組成物の使用目的によって適宜選択することが可能であるが、組成物100質量%に対して、1質量%以上であり、10~1000質量%が好ましく、20~500質量%がより好ましく、50~200質量%がさらに好ましい。なお、上記溶媒の添加方法としては、上記溶媒を溜去しながら、逐次的に添加する方法が特に好ましい。
【0040】
上記アジリジン化合物よりも沸点の高い溶媒の溜去条件としては、溶媒の種類や濃度によって適宜選択することが可能であるが、温度60~120℃、圧力-0.1~0.20MPa(ゲージ圧)であることが好ましく、時間については、溶媒の種類と得ようとするポリウレタンポリアミン組成物の濃度により適宜調整することが可能であるが、1~24時間程度とすることが好ましい。
【0041】
上記アジリジン化合物よりも沸点の高い溶媒の溜去量としては、上記アジリジン化合物の含有量と得ようとするポリウレタンポリアミン組成物の濃度により適宜調整することが可能であるが、上記溶媒100質量%中1質量%以上であり、10~90質量%が好ましく、20~80質量%がより好ましく、30~70質量%がさらに好ましい。上記アジリジン化合物よりも沸点の高い溶媒の溜出量は、添加量のほぼ1/2(質量比)であって、ボトム残留溶媒量とほぼ等しいことが特に好ましい。
【0042】
本発明のポリウレタンポリアミン組成物の製造方法によれば、ポリウレタンポリアミン(G)100質量%に対してアジリジン化合物の含有量が0.1質量%未満であり、低毒性、高安定性のポリウレタンポリアミン組成物が得られる。
【実施例
【0043】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0044】
反応生成物のウレタン比率は、以下の方法でHNMRを測定し、ピーク面積比より算出した。
装置:JEOL ECA400
周波数:400MHz
溶媒:D
式:ウレタン比率(モル%)=ウレタンユニット由来メチレンピーク面積/総メチレンピーク面積×100
【0045】
反応生成物の分子量は、以下の方法でGPC測定し、算出した。構成曲線を作成するために標準物質としては、ポリエチレングリコール(PEG)を使用した。緩衝液としては、モノエタノールアミンを添加した酢酸水溶液を使用した。
装置:Agilent Tech. LC1620、Biotage ELSD A-120
カラム:Asahipak GF-710HQ,510HQ,310HQ
【0046】
組成物のエチレンイミンの含有量は、以下の方法でガスクロマトグラフ測定し、ピーク面積より絶対検量線法により算出した。
装置:Perkin Turbomatrix 40,Shimadzu GC-2014
キャピラリーカラム:GL Science Inert Cap 210
【0047】
実施例1
オートクレーブに二酸化炭素を圧入しながら、120℃に昇温した。オートクレーブ内の圧力は27MPaであり、二酸化炭素は超臨界状態であった。ここへ、エチレンイミン(日本触媒社製)4.9gをエタノール4.9gと混合した溶液を5分間かけて導入し、3時間熟成させて室温に冷却後、降圧して反応生成物を得た。上記反応生成物に水20gを加え、反応生成物を溶解させた。温度90℃、圧力0.05MPaにて2時間、減圧溜去した。溜分はエタノール4gと水20gであり、最終生成物として、ポリウレタンポリアミン3.75gが得られた。
得られたポリウレタンポリアミンのウレタン比率は21%、Mwは27,000、Mnは3,900、上記混合物中のエチレンイミンの含有量は検出限界以下(1ppm以下)であった。
【0048】
比較例1 非特許文献1の処方
オートクレーブに、エチレンイミン(日本触媒社製)1gを入れ、-70℃に冷却し、二酸化炭素29gを導入し密閉した。オートクレーブを100℃に加熱したところ、内圧は20MPaに到達し、16時間反応させた。その後、未反応の二酸化炭素を排出し、反応生成物を室温で、圧力-0.1MPaで乾燥して、反応生成物1.4gを得た。
反応生成物のウレタン比率は23%、Mwは6,000、Mnは2,400であり、エチレンイミンの含有量は1200ppmであった。
【0049】
比較例2 エチレンイミンを原料として使用した非特許文献2の処方
オートクレーブに、エチレンイミン(日本触媒社製)1.6gを入れ、30℃にて二酸化炭素12gを導入したところ、重合反応が開始し、オートクレーブの内温は150℃以上まで上昇した。オートクレーブ内の圧力は6MPaから20MPaに上昇した。室温に冷却後、未反応の二酸化炭素を排出し、反応生成物1.9gを得た。反応生成物のウレタン比率は6%、Mwは23,000、Mnは6,500であり、ポリウレタンポリアミンは得られず、ポリエチレンイミンが得られた。
【0050】
実施例2
オートクレーブに二酸化炭素300gを入れ、100℃に昇温した。オートクレーブ内の圧力は10MPaであり、二酸化炭素は超臨界状態であった。ここへ、アセトニトリル50gを入れ、エチレンイミン(日本触媒社製)とアセトニトリルと重量比1対1で混合した溶液300gを90分間かけて導入し、100~117℃で1時間熟成させて50℃に冷却後、オートクレーブに水300gを加え、反応生成物を溶解させ未反応の二酸化炭素を排出し、ポリウレタンポリアミン粗製物を得た。エチレンイミンの含有量は、1160ppmであった。
ポリウレタンポリアミン粗製物から溶媒を温度60~90℃、圧力-0.09~0.05MPaにて2時間、減圧溜去した。溜分はアセトニトリル200gと水180gであり、最終生成物として、ポリウレタンポリアミン146gと水110gの混合物が得られた。
得られたポリウレタンポリアミンのウレタン比率は19%、Mwは63,000、Mnは3,700、上記混合物中のエチレンイミンの含有量は54ppmであった。
【0051】
実施例3
オートクレーブに二酸化炭素300gを入れ、105℃に昇温した。オートクレーブ内の圧力は10MPaであり、二酸化炭素は超臨界状態であった。ここへ、エチレンイミン(日本触媒社製)とメタノールとテトラヒドロフランとを重量比1対1対1で混合した溶液1100gを210分間かけて導入し、105~119℃で1時間熟成させ、100℃にて水200gを加え、反応生成物を溶解させた。未反応の二酸化炭素を排出し、温度80~90℃、圧力-0.05~0MPaにて5時間、水1000gを導入しながら減圧溜去した。溜分はメタノール210gとテトラヒドロフラン150gと水700gであり、最終生成物として、ポリウレタンポリアミン680gと水460gの混合物が得られた。
得られたポリウレタンポリアミンのウレタン比率は17%、Mwは3,900、Mnは2,000、上記混合物中のエチレンイミンの含有量は検出限界以下(1ppm以下)であった。
【0052】
実施例4
オートクレーブに二酸化炭素340gを入れ、85℃に昇温した。オートクレーブ内の圧力は10MPaであり、二酸化炭素は超臨界状態であった。ここへ、エチレンイミン(日本触媒社製)をイソプロピルアルコールと重量比1対2で混合した溶液800gを90分間かけて導入し、85~100℃で1時間熟成させて水310gを加え、反応生成物を溶解させた。未反応の二酸化炭素を排出し、温度90℃、圧力0MPaにて0.5時間、溜去した。溜分はイソプロピルアルコール400gと水200gであり、最終生成物として、ポリウレタンポリアミン250gと水110gの混合物が得られた。
得られたポリウレタンポリアミンのウレタン比率は23%、Mwは5,200、Mnは3,200、上記混合物中のエチレンイミンの含有量は2ppmであった。
【0053】
実施例5
オートクレーブに二酸化炭素300gと触媒として水酸化ナトリウム0.2gを入れ、90℃に昇温した。オートクレーブ内の圧力は10MPaであり、二酸化炭素は超臨界状態であった。ここへ、エチレンイミン(日本触媒社製)をエタノールと重量比1対2で混合した溶液840gを90分間かけて導入し、110~118℃で1時間熟成させて100℃に冷却後、水260gを加え、反応生成物を溶解させた。未反応の二酸化炭素を排出し、温度90℃、圧力-0.05~0MPaにて水360gを導入しながら、2時間減圧溜去した。溜分はエタノール470gと水240gであり、最終生成物として、ポリウレタンポリアミン340gと水310gの混合物が得られた。
得られたポリウレタンポリアミンのウレタン比率は26%、Mwは3,000、Mnは1,800、上記混合物中のエチレンイミンの含有量は検出限界以下(1ppm以下)であった。
【0054】
実施例6
オートクレーブにアルゴンガスを満たし、30℃以下の室温にてプロピレンイミン(東京化成社製)2gを入れた。さらに、二酸化炭素30gを導入して密閉し、その後、オートクレーブを100℃に昇温した。オートクレーブ内の圧力は22MPaであり、この状態で20時間反応させた。室温に冷却後、未反応の二酸化炭素を排出し、反応生成物3gを得た。反応生成物は、ウレタン比率48%のポリウレタンポリアミンであった。このポリウレタンポリアミンは、メチレン基にメチル基を置換基として有していた。
上記反応生成物3gに水10gを加え、反応生成物を溶解させポリウレタンポリアミン組成物を得た。プロピレンイミンの含有量は5000ppmであった。溶媒を温度90℃、圧力-0.06MPaにて2時間、減圧溜去した。溜分は水9gであり、最終生成物として、ポリウレタンポリアミン2.5gと水1gの混合物が得られた。
得られたポリウレタンポリアミンのウレタン比率は48%、上記混合物中のプロピレンイミンの含有量は50ppmであった。
【0055】
実施例7
オートクレーブに二酸化炭素35gを入れ、100℃に昇温した。オートクレーブ内の圧力は30MPaであり、二酸化炭素は超臨界状態であった。ここへ、エチレンイミン(日本触媒社製)をエタノールと重量比1対2で混合した溶液15gを30分間かけて導入し、100℃で16時間熟成させ水15gを加え、反応生成物を溶解させ、未反応の二酸化炭素を排出し、ポリウレタンポリアミン組成物30gを得た。エチレンイミンの含有量は1600ppmであった。
得られたポリウレタンポリアミン組成物から溶媒を温度90℃、圧力-0.06MPaにて2時間、減圧溜去した。溜分はエタノールと水であり、最終生成物として、ポリウレタンポリアミン組成物4.9gが得られた。
得られたポリウレタンポリアミンのウレタン比率は36%、Mwは4,700、Mnは1,900、上記組成物中のエチレンイミンの含有量は30ppmであった。
【0056】
実施例8
オートクレーブに二酸化炭素35gを入れ、100℃に昇温した。オートクレーブ内の圧力は30MPaであり、二酸化炭素は超臨界状態であった。ここへ、エチレンイミン(日本触媒社製)をイソプロピルアルコールと重量比1対2で混合した溶液13gを30分間かけて導入し、100℃で16時間熟成させ水15gを加え、反応生成物を溶解させ、未反応の二酸化炭素を排出し、ポリウレタンポリアミン粗製物30gを得た。エチレンイミンの含有量は1800ppmであった。
得られたポリウレタンポリアミン粗製物から溶媒を温度90℃、圧力-0.06MPaにて2時間、減圧溜去した。溜分はエタノールと水であり、最終生成物として、ポリウレタンポリアミン組成物4.3gが得られた。
得られたポリウレタンポリアミンのウレタン比率は31%、Mwは8,400、Mnは2,600、上記組成物中のエチレンイミンの含有量は20ppmであった。
【0057】
上記実施例1~8に示すように、反応器内にて昇温した高圧CO下にエチレンイミンを導入することで、効率的にポリウレタンポリアミンを合成できた。また、上記実施例1~8に示すように、反応後に特定の溶媒を添加し、加熱しながら該溶媒を溜去することにより、ポリウレタンポリアミン粗製物中に残留するアジリジン化合物を除去でき、低毒性、高安定性のポリウレタンポリアミン組成物を製造できた。