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  • 特許-汚泥減容装置及び汚泥減容方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】汚泥減容装置及び汚泥減容方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/02 20060101AFI20231207BHJP
   C02F 3/32 20230101ALI20231207BHJP
【FI】
C02F11/02 ZAB
C02F3/32
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020053648
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021151647
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 裕哉
(72)【発明者】
【氏名】山口 欣秀
(72)【発明者】
【氏名】福▲崎▼ 康司
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110357377(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0092339(US,A1)
【文献】国際公開第2019/053456(WO,A1)
【文献】特開2008-188503(JP,A)
【文献】特開2014-083025(JP,A)
【文献】特開2010-110307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F11/00-11/20
C02F3/28-3/34
A23K10/00-50/90
B09B3/00-3/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水処理設備において生じる汚泥を減容する汚泥減容装置であって、
前記下水処理設備で生じた前記汚泥を減容する汚泥減容部を備え、
前記汚泥減容部は、前記汚泥を利用して成長可能な昆虫により前記汚泥を減容するものであり、
前記汚泥減容部は、前記下水処理設備の下水熱を前記汚泥減容部へと伝熱させることで当該汚泥減容部の温度を所定に保つための熱交換器を備え、
前記汚泥減容部に前記汚泥を流通させることで前記昆虫に汚泥を摂食させる
ことを特徴とする汚泥減容装置。
【請求項2】
前記汚泥を食べて成長した前記昆虫を前記汚泥減容部から回収することを特徴とする請求項1に記載の汚泥減容装置。
【請求項3】
前記汚泥減容部は、前記汚泥減容部内の昆虫の育成段階を撮影することができる撮影部を備えることを特徴とする請求項1に記載の汚泥減容装置。
【請求項4】
下水処理設備において生じる汚泥を減容する汚泥減容方法であって、
前記下水処理設備で生じた前記汚泥を減容する汚泥減容部を備え、
前記汚泥減容部は、前記汚泥を利用して成長可能な昆虫により前記汚泥を減容するものであり、
前記汚泥減容部は、前記下水処理設備の下水熱を前記汚泥減容部へと伝熱させることで当該汚泥減容部の温度を所定に保つための熱交換器を備え
前記汚泥減容部に前記汚泥を流通させることで前記昆虫に汚泥を摂食させる
ことを特徴とする汚泥減容方法。
【請求項5】
前記汚泥を食べて成長した前記昆虫を前記汚泥減容部から回収することを特徴とする請求項に記載の汚泥減容方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥減容装置及び汚泥減容方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水中の汚濁成分を処理する水処理装置においては、流入する固形物や特に生物の代謝を利用する水処理過程で発生する余剰汚泥が回収される。例えば、下水の水処理過程で発生した下水汚泥は、産業廃棄物として埋立て処理されることがあるが、その量は全産業廃棄物の約2割にも及ぶとされている。そのため、これら水処理過程から発生する汚泥の減容化技術が求められている。
【0003】
汚泥の減容化技術には、濃縮や脱水、嫌気性消化、焼却、オゾンや電気分解または、食物連鎖による汚泥発生量の削減などがある。また近年では、単に処理をするだけでなく、汚泥処理後の産物をリサイクル利用する必要性が国の方針として掲げられている。例えば、汚泥処理後の産物のリサイクル利用としては、セメント化や、コンポスト(肥料)化や固形燃料化が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-188503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、特許文献1では、生物の代謝を利用する水処理過程で発生する汚泥を、その水処理過程中で微小動物に消費させ、最終的に回収される汚泥量を減らす方法が記載されている。最終的な汚泥処理後のリサイクル利用としては、通常と同様にセメント化や肥料等に用いるしかない。しかし、セメントは建設需要に影響され、肥料は利用先の確保が難しいといった問題がある。
【0006】
このような観点から、本発明は、汚泥処理後の産物をより好適にリサイクル利用できる汚泥処減容置及び汚泥減容方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために本発明は、下水処理設備において生じる汚泥を減容する汚泥減容装置であって、前記下水処理設備で生じた前記汚泥を減容する汚泥減容部を備え、前記汚泥減容部は、前記汚泥を利用して成長可能な昆虫により前記汚泥を減容するものであり、前記汚泥減容部は、前記下水処理設備の下水熱を前記汚泥減容部へと伝熱させることで当該汚泥減容部の温度を所定に保つための熱交換器を備え、前記汚泥減容部に前記汚泥を流通させることで前記昆虫に汚泥を摂食させることを特徴とする。
【0008】
また、下水処理設備において生じる汚泥を減容する汚泥減容方法であって、前記下水処理設備で生じた前記汚泥を減容する汚泥減容部を備え、前記汚泥減容部は、前記汚泥を利用して成長可能な昆虫により前記汚泥を減容するものであり、前記汚泥減容部は、前記下水処理設備の下水熱を前記汚泥減容部へと伝熱させることで当該汚泥減容部の温度を所定に保つための熱交換器を備え、前記汚泥減容部に前記汚泥を流通させることで前記昆虫に汚泥を摂食させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、汚泥処理後の産物をより好適にリサイクル利用できる汚泥減容装置及び汚泥減容方法を提供することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る汚泥減容装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更及び修正が可能である。
【0012】
まずは、本実施形態に係る汚泥減容装置に用いる昆虫について説明する。以下の実施形態で用いる昆虫は、チョウバエを例に説明するが、本実施形態の汚泥減容装置に用いることのできる昆虫はチョウバエに限定されない。例えば、ユスリカ等の汚泥を食べて成長する昆虫であれば、他の昆虫を用いてもよい。
【0013】
本実施形態で用いる昆虫は、汚泥に含まれる成分を摂食する習性がある、チョウバエを用いることが好ましい。チョウバエは、汚泥中に含まれる有機物を好んで摂餌するという特徴的な食性を有している。そのため、チョウバエは、汚泥を摂食してチョウバエの体内で消化吸収して自らの体細胞に変換し、成長する。摂餌された有機物の一部は代謝され、二酸化炭素として系外に排出されるが、一部は生物の体細胞として同化される。つまり、チョウバエに汚泥を摂食させることにより、汚泥を減容することができる。
【0014】
また、チョウバエ等の双翅目類の幼虫の体組織は、アミノ酸の濃度が高く、成長させることで、貴重なたんぱく源として用いることができる。そのため、育成した昆虫は、飼料的な価値が高く、例えば、鶏餌、豚餌、魚餌等に用いることができる。つまり、チョウバエに対して、汚泥を供給することでチョウバエは汚泥を餌として摂食する。汚泥を摂食した昆虫は、貴重なたんぱく源として成長する。よって、汚泥の減容とたんぱく源の産出を同時に行うことができる。
【0015】
また、双翅目昆虫の幼虫のいくつかの種(例えばチョウバエ等)は、汚泥中で過ごすが、蛹になる前の段階で汚泥から移動することが知られており、この生物の習性を利用することで、汚泥とチョウバエとをエネルギを掛けずに分離することができる。そのため、成長した昆虫と汚泥の分離を容易に行うことができる。また、チョウバエは、成虫状態となってしまうと、羽や足などの難消化性の組織が発達するため飼料としての価値も下がり、回収の観点からも難しくなるため、幼虫または、蛹の状態で回収することが好ましい。
【0016】
また、汚泥中には、病原菌や汚染物質、重金属等が含まれている可能性があり、汚泥減容後に有効な産物を回収できたとしても、それらを取り除くプロセスが必要となる。しかし、汚泥の減容にチョウバエを用いることで、自らの感染を防止する生体防御システムである免疫系の働きによって、雑多な細菌・病原菌等の感染を防止するばかりか、それらの菌類を溶菌するための特殊な物質(抗菌性ペプチド)を分泌し、溶菌によって得られるタンパク等を自らの成長に活用している。つまりチョウバエ自身の免疫機構によって病原菌や汚染物質の多くを無害化できる。また、無害化することのできない、重金属等を含む汚泥については、チョウバエは摂食しにくいため、チョウバエ自身によって自然に分別することも可能とされる。そのため、回収するチョウバエの幼虫または、蛹は、安全性の高いたんぱく源として得ることができる。また、低コストで重金属を含む汚泥と重金属を含まない汚泥とを分別することができる。
【0017】
次に、本実施形態に用いる下水処理設備について、図1を参照しながら説明する。下水処理設備1は、例えば、最初沈殿池11と、生物反応槽12と、最終沈殿池13とを備える。なお、ここでは、下水処設備1は、本実施形態に関する最低限の構成を例示しているが、下水処理設備1の構成はこれらの構成に限定されるものではない。
【0018】
最初沈殿池11は、下水処理設備1による浄化処理の対象となる有機性排水(下水)が下水流入配管18を介して流入する貯水池である。最初沈殿池11では、比較的比重の大きな固形物が重力沈降して沈澱することにより被処理水から分離される。最初沈殿池11において固形物が分離された上澄水は後段の生物反応槽12に送られる。
【0019】
生物反応槽12では、活性汚泥中に含まれる微生物の働きによって被処理水に含まれる汚濁物質が分解される。汚濁物質が分解された被処理水は後段の最終沈殿池13に送られる。
【0020】
最終沈殿池13では、被処理水中に残存する活性汚泥等の固形物が重力沈降して沈澱することにより被処理水から分離される。最終沈殿池13において固形物が分離された上澄水は、必要に応じて砂濾過や塩素処理等の高度処理が施された後に、放水配管19を介して処理水として公共用水域等に放流される。また、最終沈殿池13で沈殿した余剰汚泥は、最終沈殿池13から引き抜かれて、汚泥減容装置2へと運ばれる。
【0021】
次に、本実施形態に係る汚泥減容装置2の構成について説明する。汚泥減容装置2は、汚泥減容部20と、熱交換器21と、撮影部22とを備えて構成される。汚泥減容装置2は、下水処理設備1で発生した、余剰汚泥を減容するための装置である。下水処理設備1で発生した汚泥は、引抜配管17を通って汚泥減容部20へと運ばれ、先述した昆虫による汚泥減容が行われる。
【0022】
汚泥減容装置2は、通常の汚泥処理のプロセスである汚泥処理部3の前に設置されることが好ましい。汚泥減容装置2を介さない場合と比べて、汚泥処理部3で処理する汚泥の量は最も好適な場合には、当初汚泥量の約90%減となる。
【0023】
つまり、汚泥減容装置2は、下水処理設備1において生じる汚泥を減容する汚泥減容装置であり、下水処理設備1で生じた汚泥を減容する汚泥減容部20を備え、汚泥減容部20は、汚泥を利用して成長可能な昆虫を有しており、汚泥減容部20に汚泥を流通させることで昆虫に汚泥を摂食させることができる。そのため、汚泥の大幅な減容ができる。また、汚泥を減容するとともにたんぱく源を産出することができる。
【0024】
汚泥処理部3は、通常の下水処理設備に設けられており、汚泥に対して、濃縮処理や、脱水を行うことで、汚泥をセメントや肥料として使うことのできる状態にする。
【0025】
汚泥減容部20は、例えばチョウバエを培養するプラント等である。汚泥減容部20は、昆虫保有部23と、昆虫植え付部24と、処理部25と、一次回収部26と、二次回収部27と、最終処理部28とを含んだ構成とすることができる。なお、汚泥減容部20の構成は、これに限定されず、汚泥を対象の昆虫に摂食させて、汚泥を減容させた後、成長した昆虫を回収できる構成であれば、どのような構成としてもよい。
【0026】
昆虫植え付部24は、引抜配管17を介して、最終沈殿池13から供給された余剰汚泥に対して、チョウバエの卵を植え付ける部位である。チョウバエの卵は昆虫保有部23で飼育しているチョウバエから回収することができる。
【0027】
次に、処理部25は、昆虫植え付部24で植え付けたチョウバエの卵が孵化して、チョウバエの幼虫が汚泥を摂食して成長する部位である。この時に撮影部22によってチョウバエの育成段階や、汚泥の減容を把握することができる。減容処理が完了したと判断されると、汚泥は一次回収部26へ移動する。
【0028】
一次回収部26は、成長したチョウバエの幼虫もしくは、蛹を回収するための部位である。この段階では、チョウバエの幼虫及び、蛹は、チョウバエの習性によって汚泥中からその表面に出てきている。そのため、汚泥とチョウバエの幼虫または、蛹を大きなエネルギをかけることなく容易に分離することができる。汚泥から分離したチョウバエの幼虫及び蛹は、たんぱく源として回収することができる。一次回収部26でチョウバエの幼虫を回収し、一部チョウバエの蛹を残して、汚泥は、二次回収部27へと運ばれる。つまり汚泥減容部20は、汚泥を摂食して成長したチョウバエ(昆虫)を汚泥減容部20から回収する構成とすることで、昆虫をたんぱく源として回収することができるため、汚泥減容処理で発生した産物を利用価値の高い産物として回収することができる。
【0029】
汚泥減容部20から取り出した昆虫は、そのまま家畜や養殖魚等の飼料とて活用することも可能であるが、輸送コストの観点からはオンサイトでさらに処理をして配合飼料の原料となる、油脂成分、アミノ酸含有の水分、たんぱく質を含有する固形分等に分離することが好ましい。
【0030】
二次回収部27では、一部のチョウバエの蛹を回収して、昆虫保有部23へ返送する部位である。昆虫保有部23では、チョウバエの飼育が行われており、チョウバエの卵を生み出す部位である。二次回収部27から一部の蛹を回収することで、汚泥減容に使用するチョウバエのリサイクルが可能となる。昆虫保有部23で管理するチョウバエは、撮影部22によって管理することができるので、昆虫保有部23で不要と判断されれば、すべてのチョウバエの幼虫または、蛹を一次回収部26で回収してもよい。
【0031】
最終的にチョウバエの回収が終わり、処分しきれなかった汚泥は、最終処理部28へ移動する。最終処理部28では、チョウバエと汚泥の分離が行われているか最終的にチェックが行われ、その後、汚泥は汚泥減容部20から脱水処理汚泥引抜配管29を介して、汚泥処理部3に送られる。このような構成とすることで、チョウバエが外部へ流出するのを防ぐことができる。
【0032】
熱交換器21は、下水処理設備1にかかわる熱源を利用することができる。そのため、下水処理設備1にかかわる熱源は、熱交換器21を介して汚泥減容部20へ伝熱することができる。「下水処理設備1にかかわる熱源」とは、例えば、下水熱や、消化ガスの排熱等である。下水熱の利用としては例えば、最終沈殿池13の上澄み水を冷媒を介して汚泥減容部20へ伝熱させる構成としてもよい。
【0033】
下水は、一年を通して温度が一定(18度~28度)に保たれており、外気温と比べて、温度変化が小さく、冬は暖かく、夏は涼しいという特性を持っている。よって、下水熱を利用することで、この温度差分のエネルギをヒートポンプ等(熱交換器21)で活用することで、少ない電力で、汚泥減容部20の温度を昆虫の育成に最適な25度付近に保つことができる。
【0034】
一般的に昆虫の育成に最適な温度は、25度付近となっているため、汚泥を効率的に減容するために、汚泥減容部20内の温度を25度付近に保つ必要がある。つまり、汚泥減容部20は、熱交換器21を備えることで、下水処理設備1にかかわる熱源を熱交換器21を介して、汚泥減容部20へ伝熱させることができる。よって、汚泥減容部20の温度を一定に保つための大規模な設備が必要なく、また、下水は常に供給されるため、低コストで汚泥減容部20内の温度を昆虫の育成に好適な環境に保つことができる。
【0035】
撮影部22は、例えば、CMOS(Complementary metal-oxide-semiconductor)イメージセンサやCCD(Charged-coupled devices)イメージセンサを備えるカメラである。撮影部22は、汚泥減容部20内の昆虫の育成状況及び、汚泥減容状況を撮影するように設置されている。撮影部22の設置場所や設置台数は、本実施形態に限定されず、設備の規模や用途に応じて適宜設定すればよい。
【0036】
撮影部22は、不図示の表示部を外部に備え、外部から汚泥減容部20内の様子を観察することができる。表示部は例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等である。また、撮影部22は、通信手段を備え、外部の携帯端末等に汚泥減容部20の状況を表示できる構成としてもよい。また、エッジ処理により、オペレーションに反映する判定結果のみを通信手段を介して、管理者へ知らせるような形式でもよい。または、回収作業のトリガをエッジで判定して、自動的に回収操作が為されるような形式でもよい。
【0037】
小型昆虫の成長サイクルは、数日であり非常に短いサイクルで成長する。そのため、単位時間あたりの体長、体重、変態による変化が大きく、撮影部22を設けることで、容易に昆虫の育成段階を観察することができる。撮影部22からの情報により、昆虫が収穫できる育成段階であると判断できれば、昆虫をたんぱく源として回収する。昆虫がたんぱく源として回収できる程度に育成が進めば、汚泥の減容も完了しているので、短い時間で効率的に汚泥の減容をすることができる。
【0038】
また、先述のとおり、汚泥中には、病原菌や汚染物質、重金属等が含まれている可能性がある。その場合昆虫は、汚泥を摂食しにくいため、昆虫が成長することはない。そのため、撮影部22からの情報で昆虫が成長しない場合、汚泥中に多量の昆虫の育成に不適切な成分(例えば重金属等)が含まれていると判断することができる。多量の昆虫の育成に不適切な成分が含まれていると判断された汚泥は、通常の汚泥処理と同様に、汚泥処理部3に運ばれて、セメントとすることができる。小型昆虫の成長速度が速いため、減容可能な汚泥と、重金属等を含む汚泥の分別も短い時間で行うことができる。また、回収する成長した昆虫は、昆虫の育成に不適切な成分(例えば重金属等)を含まない汚泥によって成長した昆虫であるため、安全性の高いたんぱく源を得ることができる。
【0039】
つまり、汚泥減容部20は、昆虫の育成段階を撮影する撮影部22を備えることで、昆虫の育成段階を観察することができるため、昆虫を所望の成長段階で回収することができる。また、昆虫の育成状況を継続的にモニタリングできるため、昆虫の育成に不適切な成分が含まれる汚泥が供給された場合や、汚泥の供給量や含水率等が適切でない場合には、速やかに判別することができるため、効率的に汚泥の減容が可能であり、かつ安全性の高いたんぱく源を回収することができる。
【0040】
以上説明した本実施形態に係る汚泥減容装置2によれば、昆虫を有する汚泥減容部20を設けるだけのシンプルな構造で、下水処理設備1で発生する汚泥の減容をすることができる。また、汚泥の減容に用いた、昆虫は汚泥に含まれる成分によって成長し、飼料としての価値の高いたんぱく源として回収することができる。また、汚泥減容部20を経ない過程と比して、汚泥処理部3へ排出される汚泥量は大幅に削減される。削減される汚泥の量は当該昆虫の代謝および体成長に相当し、最も好適な場合には、当初汚泥量の約90%減とすることができる。
【0041】
また、熱交換器21を備えることで、下水処理設備1にかかわる熱源を熱交換器21を介して、汚泥減容部20へ伝熱させることができる。つまり、汚泥減容部20内の温度を昆虫育成に好適な温度に保つことができるので、効率よく汚泥の減容を行うことができる。また、熱交換器21によって下水処理設備1にかかわる熱源を汚泥減容部20へと伝熱させない場合と比べて、汚泥減容部20内の温度を常温付近に保つためにかかる電力を大幅に削減できる。
【0042】
また、撮影部22を備えることで、汚泥減容部20内の昆虫の育成状況を観察することができる。そのため、所望の成長段階で昆虫をたんぱく源として回収することができ、また、効率的に汚泥の減容を行うことができる。
【0043】
また、撮影部22は、昆虫の育成段階を観察することができるため、所望の育成段階で昆虫を回収できる。つまり、蛹の段階や、蛹になる少し前の状態で、昆虫を回収することができる。また、昆虫の育成段階を観察できるため昆虫が育ちすぎてしまい成虫が大量に発生してしまうのを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0044】
1 下水処理設備
2 汚泥減容装置
3 汚泥処理部
11 最初沈殿池
12 生物反応槽
13 最終沈殿池
20 汚泥減容部
21 熱交換器
22 撮影部
図1