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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】工具
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/02 20060101AFI20231207BHJP
   B24B 23/02 20060101ALI20231207BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20231207BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20231207BHJP
   B24B 55/05 20060101ALI20231207BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B25F5/02
B24B23/02
B24B49/10
B24B49/12
B24B55/05
B25F5/00 A
B25F5/00 C
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020071239
(22)【出願日】2020-04-10
(65)【公開番号】P2021167047
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 彰良
(72)【発明者】
【氏名】石川 純也
(72)【発明者】
【氏名】今井田 大樹
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/180083(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0272494(US,A1)
【文献】国際公開第2017/051893(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/02
B24B 23/02
B24B 49/10
B24B 49/12
B24B 55/05
B25F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具であって、
第1の付属品と、
第2の付属品と、
前記第1の付属品が着脱可能に取り付けられるように構成された第1の取付部と、
前記第2の付属品が着脱可能に取り付けられるように構成された第2の取付部と、
前記第1の付属品を前記第1の取付部へ取り付けることによって、第1の非取付位置から第1の取付位置まで変位されるように構成された第1の中間部材と、
前記第2の付属品を前記第2の取付部へ取り付けることによって、第2の非取付位置から第2の取付位置まで変位されるように構成された第2の中間部材と、
前記第1の中間部材が前記第1の取付位置にあり、かつ、前記第2の中間部材が前記第2の取付位置にある特定状態を検出するように構成された1つのセンサと
を備える工具。
【請求項2】
請求項1に記載の工具であって、
前記1つのセンサは、発光部と受光部とを有する光電センサ、または、超音波センサであり、
前記第1の中間部材は、前記発光部から放出された光または前記超音波センサから発信された超音波を遮る位置と、前記光または前記超音波を遮らない位置と、の間を、前記第1の取付部への前記第1の付属品の取付けの有無に起因して変位されるように構成され、
前記第2の中間部材は、前記光または前記超音波を遮る位置と、前記光または前記超音波を遮らない位置と、の間を、前記第2取付部への前記第2の付属品の取付けの有無に起因して変位されるように構成された
工具。
【請求項3】
請求項2に記載の工具であって、
前記1つのセンサは反射型フォトセンサである
工具。
【請求項4】
請求項2に記載の工具であって、
前記1つのセンサは透過型フォトセンサである
工具。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の工具であって、
電動モータと、
前記電動モータの駆動を制御するように構成されたコントローラと
を備え、
前記コントローラは、前記1つのセンサが前記特定状態を検出したときは、前記電動モータの駆動を許可し、前記1つのセンサが前記特定状態を検出しないときは、前記電動モータの駆動を禁止する
工具。
【請求項6】
請求項5に記載の工具であって、
前記工具は、前記電動モータによって回転されるように構成された先端工具を備えるグラインダであり、
前記第1の付属品は、サイドグリップであり、
前記第2の付属品は、前記先端工具を部分的に覆うカバーである
工具。
【請求項7】
請求項6に記載の工具であって、
前記第1の取付部は、前記サイドグリップを選択的に取り付けるための少なくとも2つのサイドグリップ取付部を含み、
前記第1の中間部材は、前記少なくとも2つのサイドグリップ取付部に共通して設けられ、前記電動モータの回転軸線を中心として回転可能に構成された単一の部材であり、
前記少なくとも2つのサイドグリップ取付部は、前記回転軸線の周方向に互いに離間した位置にそれぞれ位置しており、
前記第1の中間部材は、前記少なくとも2つのサイドグリップ取付部のうちから任意に選択される1つのサイドグリップ取付部に前記サイドグリップが取り付けられたときに該サイドグリップに直接的または間接的に押圧される少なくとも1つの被押圧部を有し、該少なくとも1つの被押圧部が押圧されたときに前記回転軸線を中心として回転する
工具。
【請求項8】
請求項7に記載の工具であって、
前記第1の中間部材は、前記回転軸線を中心とする環または部分的な環の形状を有する第1の中間部材本体を備える
工具。
【請求項9】
請求項8に記載の工具であって、
前記少なくとも1つの被押圧部は、
前記第1の中間部材本体から径方向外側に向けて突出し、
前記少なくとも2つのサイドグリップ取付部の位置にそれぞれ対応する少なくとも2つの位置にそれぞれ設けられた
工具。
【請求項10】
請求項7ないし請求項9のいずれか一項に記載の工具であって、
前記少なくとも1つの被押圧部は、前記1つのサイドグリップ取付部に前記サイドグリップが取り付けられたときの該サイドグリップの長手方向とは異なる方向に前記第1の中間部材が変位するように、前記サイドグリップの前記長手方向に対して角度付けられた被押圧面を備える
工具。
【請求項11】
請求項7ないし請求項10のいずれか一項に記載の工具であって、
前記第1の中間部材は
前記回転軸線を中心とする円弧形状を有する第1の貫通孔を有し、
前記円弧形状に沿って回転可能に前記第1の貫通孔を介してネジ止めされている
工具。
【請求項12】
少なくとも請求項2ないし請求項4のいずれか一項を従属元に含む請求項7ないし請求項11のいずれか一項に記載の工具であって、
前記第1の中間部材は、第2の貫通孔を有し、
前記第1の中間部材が前記光または前記超音波を遮らない位置にあるときに、前記光または前記超音波は前記第2の貫通孔内を通過する
工具。
【請求項13】
請求項6ないし請求項12のいずれか一項に記載の工具であって、
前記第2の中間部材は、前記カバーが前記第2の取付部に取り付けられたときに前記カバーに直接的または間接的に押圧されて、直動するように構成された
工具。
【請求項14】
請求項13に記載の工具であって、
前記第2の中間部材は、
前記第2の中間部材が直動する方向を長手方向とする長孔の形態の第3の貫通孔を有し、
前記長孔に沿って直動可能に前記第3の貫通孔を介してネジ止めされている
工具。
【請求項15】
請求項1ないし請求項14のいずれか一項に記載の工具であって、
前記第1の中間部材と前記第2の中間部材とを保持する単一の保持部材を備える
工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種類の付属品を着脱可能に取り付けられるように構成された工具に関する。
【背景技術】
【0002】
原動機を備える工具には、各種の付属品が着脱可能に取り付けられることがある。例えば、回転駆動するように構成された先端工具を有するグラインダでは、先端工具の一部分を覆うためのカバー(ホイールカバー、ディスクカバー、ブレードケースなどとも称される)と、ユーザが一方の手でグラインダのハンドルを把持するときに他方の手で把持するためのサイドハンドルと、が着脱可能な付属品として用意されている。
【0003】
このようなグラインダでは、付属品が装着されていない状態でグラインダが使用されることを防止するという要望がある。例えば、下記の特許文献1は、カバーが装着されているか否かを検出するセンサと、カバーが装着されていないときには先端工具の回転を禁止するコントローラと、を備えるグラインダを開示している。また、下記の特許文献2は、カバーが装着されているか否かを検出するセンサと、サイドハンドルが装着されているか否かを検出するセンサと、を備えるグラインダを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/051893号
【文献】米国特許出願公開第2018/272494号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載の技術では、カバーとサイドハンドルとの両方が装着されていなければ先端工具の回転を禁止する構成では、カバー、サイドハンドルのそれぞれに個別のセンサを設ける必要があり、コストの増加につながる。このような問題は、グラインダに限らず、2種類の付属品を着脱可能に取り付けることができる任意の工具に共通する。このため、工具において、2種類の付属品が装着されたことを1つのセンサで検出することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、工具が提供される。この工具は、第1の付属品と、第2の付属品と、第1の付属品が着脱可能に取り付けられるように構成された第1の取付部と、第2の付属品が着脱可能に取り付けられるように構成された第2の取付部と、第1の付属品を第1の取付部へ取り付けることによって、第1の非取付位置から第1の取付位置まで変位されるように構成された第1の中間部材と、第2の付属品を第2の取付部へ取り付けることによって、第2の非取付位置から第2の取付位置まで変位されるように構成された第2の中間部材と、第1の中間部材が第1の取付位置にあり、かつ、第2の中間部材が第2の取付位置にある特定状態を検出するように構成された1つのセンサと、を備えている。
【0007】
この工具によれば、第1の中間部材が第1の取付位置にあり、かつ、第2の中間部材が第2の取付位置にあることを1つのセンサで検出する。第1の中間部材が第1の取付位置にあることは、第1の付属品が取り付けられていることを意味し、第2の中間部材が第2の取付位置にあることは、第2の付属品が取り付けられていることを意味するので、2種類の付属品が装着されたことを1つのセンサで検出できる。
【0008】
本発明の一態様によれば、1つのセンサは、発光部と受光部とを有する光電センサ、または、超音波センサであってもよい。第1の中間部材は、発光部から放出された光または超音波センサから発信された超音波を遮る位置と、光または超音波を遮らない位置と、の間を、第1の取付部への第1の付属品の取付けの有無に起因して変位されるように構成されてもよい。第2の中間部材は、光または超音波を遮る位置と、光または超音波を遮らない位置と、の間を、第2取付部への第2の付属品の取付けの有無に起因して変位されるように構成されてもよい。この態様によれば、1つの光電センサまたは1つの超音波センサを利用して、2種類の付属品が装着されたことを容易に検出できる。
【0009】
本発明の一態様によれば、1つのセンサは反射型フォトセンサであってもよい。本発明の一態様によれば、1つのセンサは透過型フォトセンサであってもよい。
【0010】
本発明の一態様によれば、工具は、電動モータと、電動モータの駆動を制御するように構成されたコントローラと、を備えていてもよい。コントローラは、1つのセンサが特定状態を検出したときは、電動モータの駆動を許可し、1つのセンサが特定状態を検出しないときは、電動モータの駆動を禁止してもよい。
【0011】
本発明の一態様によれば、工具は、電動モータによって回転されるように構成された先端工具を備えるグラインダであってもよい。第1の付属品は、サイドグリップであってもよく、第2の付属品は、先端工具を部分的に覆うカバーであってもよい。
【0012】
本発明の一態様によれば、第1の取付部は、サイドグリップを選択的に取り付けるための少なくとも2つのサイドグリップ取付部を含んでいてもよい。第1の中間部材は、少なくとも2つのサイドグリップ取付部に共通して設けられ、電動モータの回転軸線を中心として回転可能に構成された単一の部材であってもよい。少なくとも2つのサイドグリップ取付部は、回転軸線の周方向に互いに離間した位置にそれぞれ位置していてもよい。第1の中間部材は、少なくとも2つのサイドグリップ取付部のうちから任意に選択される1つのサイドグリップ取付部にサイドグリップが取り付けられたときにサイドグリップに直接的または間接的に押圧される少なくとも1つの被押圧部を有し、少なくとも1つの被押圧部が押圧されたときに回転軸線を中心として回転してもよい。この態様によれば、少なくとも2つのサイドグリップ取付部のいずれにサイドグリップが取り付けられた場合でも、そのことを検知することができる。しかも、少なくとも2つのサイドグリップ取付部に対して単一の第1の中間部材が共用されるので、部品点数を低減することができる。
【0013】
本発明の一態様によれば、第1の中間部材は、環または部分的な環の形状を有していてもよい。この態様によれば、第1の中間部材は、少なくとも2つのサイドグリップ取付部の配置に対応した形状を有しているので、簡単な構成で、少なくとも2つのサイドグリップ取付部に対して単一の第1の中間部材を共用化できる。
【0014】
本発明の一態様によれば、少なくとも1つの被押圧部は、第1の中間部材本体から径方向外側に向けて突出していてもよく、少なくとも2つのサイドグリップ取付部の位置にそれぞれ対応する少なくとも2つの位置にそれぞれ設けられてもよい。この態様によれば、第1の中間部材を容易に回転させることができる。
【0015】
本発明の一態様によれば、少なくとも1つの被押圧部は、1つのサイドグリップ取付部にサイドグリップが取り付けられたときのサイドグリップの長手方向とは異なる方向に第1の中間部材が変位するように、サイドグリップの長手方向に対して角度付けられた被押圧面を備えていてもよい。この態様によれば、第1の中間部材を容易に回転させることができる。
【0016】
本発明の一態様によれば、第1の中間部材本体は、回転軸線を中心とする円弧形状を有する第1の貫通孔を有していてもよい。第1の中間部材本体は、円弧形状に沿って回転可能に第1の貫通孔を介してネジ止めされていてもよい。この態様によれば、簡単な構成で、第1の中間部材を回転可能に保持することができる。
【0017】
本発明の一態様によれば、第1の中間部材は、第2の貫通孔を有していてもよい。第1の中間部材が光または超音波を遮らない位置にあるときに、光または超音波は第2の貫通孔内を通過してもよい。この態様によれば、第1の中間部材のサイズをコンパクトにできる。
【0018】
本発明の一態様によれば、第2の中間部材は、カバーが第2の取付部に取り付けられたときにカバーに直接的または間接的に押圧されて、直動するように構成されてもよい。この態様によれば、カバーの取り付け方向を第2の中間部材の直動方向とすれば、方向変換機構が不要になるので、簡単な構成で第2の中間部材を変位させることができる。
【0019】
本発明の一態様によれば、第2の中間部材は、第2の中間部材が直動する方向を長手方向とする長孔の形態の第3の貫通孔を有していてもよい。第2の中間部材は、長孔に沿って直動可能に第3の貫通孔を介してネジ止めされていてもよい。この態様によれば、簡単な構成で、第2の中間部材を直動可能に保持することができる。
【0020】
本発明の一態様によれば、工具は、第1の中間部材と第2の中間部材とを保持する単一の保持部材を備えていてもよい。この態様によれば、第1の中間部材および第2の中間部材の各々を保持部材に取り付ければ、第1の中間部材と第2の中間部材との相対位置が自然に定まる。つまり、工具の組み立て時に、第1の中間部材と第2の中間部材との相対位置を調整する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態によるグラインダの縦断面図であり、サイドグリップとホイールカバーとが取り付けられた状態を示している。
図2】グラインダの縦断面図であり、サイドグリップとホイールカバーとが取り外された状態を示している。
図3図1に示すグラインダの部分拡大図である。
図4図2に示すグラインダの部分拡大図である。
図5】第1の中間部材の斜視図である。
図6】第2の中間部材の斜視図である。
図7】第1の中間部材および第2の中間部材を保持する保持部材の斜視図である。
図8】センサ固定部材の斜視図である。
図9】グラインダの内部構造を示す図であり、サイドグリップとホイールカバーとが取り外された状態を示している。
図10】グラインダの内部構造を示す図であり、サイドグリップが取り付けられ、ホイールカバーが取り外された状態を示している。
図11】グラインダの内部構造を示す図であり、サイドグリップとホイールカバーとが取り付けられた状態を示している。
図12】サイドグリップとホイールカバーとが取り外された状態におけるセンサと第1の中間部材60と第2の中間部材70との位置関係を示す模式図である。
図13】サイドグリップが取り付けられ、ホイールカバーが取り外された状態におけるセンサと第1の中間部材60と第2の中間部材70との位置関係を示す模式図である。
図14】サイドグリップとホイールカバーとが取り付けられた状態におけるセンサと第1の中間部材60と第2の中間部材70との位置関係を示す模式図である。
図15】本発明の第2実施形態によるグラインダの部分縦断面図であり、サイドグリップとホイールカバーとが取り付けられた状態を示している。
図16】第2実施形態によるグラインダの縦断面図であり、サイドグリップとホイールカバーとが取り外された状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図1~14を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。なお、以下の実施形態では、工具として手持ち式の電動ディスクグラインダ(以下、単にグラインダという)10を例示する。
【0023】
図1および図2に示すように、グラインダ10は、スピンドル25に装着された略円盤状の先端工具28を回転駆動するように構成されている。スピンドル25は、原動機としての電動モータ31によって提供される回転駆動力によって回転される。グラインダ10に装着可能な先端工具28として、砥石、ゴムパッド、ブラシ、ブレード等が用意されている。使用者は、所望の加工作業に応じて適切な先端工具28を選択し、グラインダ10に装着する。グラインダ10によれば、先端工具28の種類に応じて、被加工材に対して研削、研磨、切断等の加工作業を行うことができる。
【0024】
以下の説明では、電動モータ31の回転軸線AX1(換言すれば、モータシャフト32)が延在する方向をグラインダ10の前後方向と定義する。前後方向のうち、先端工具28が位置する側を前側と定義し、その反対側を後側と定義する。また、スピンドル25の回転軸線AX2(換言すれば、先端工具28の回転軸線)が延在する方向をグラインダ10の上下方向と定義する。上下方向のうち、先端工具28が位置する側を下側と定義し、その反対側を上側と定義する。また、上下方向および前後方向に直交する方向を、グラインダ10の左右方向と定義する。左右方向のうち、後側から前側を見たときの右側をグラインダ10の右側と定義し、その反対側をグラインダ10の左側と定義する。
【0025】
図1および図2に示すように、グラインダ10は、ギアハウジング20と、モータハウジング30と、ハンドルハウジング40と、を備えている。前後方向、すなわち、グラインダ10の長手方向においてギアハウジング20とハンドルハウジング40との間に位置するモータハウジング30内には、電動モータ31が収容されている。電動モータ31は、外部から供給される電力(本実施形態ではAC電源から供給される交流電力であるが、バッテリから供給される直流電力であってもよい)によって駆動されるように構成される。また、ハンドルハウジング40内には、前後方向における電動モータ31とスイッチ41との間でコントローラ33が収容されている。コントローラ33は、外部から供給される電力を受け取り、当該電力を電動モータ31と、後述するセンサ80と、に供給する。コントローラ33は、電動モータ31への供給電力を制御することによって、電動モータ31の駆動を制御する。
【0026】
ギアハウジング20内には、電動モータ31の回転駆動力を先端工具28に伝達するための機構が収容されている。具体的には、ギアハウジング20内には、小ベベルギア23と、大ベベルギア24と、スピンドル25と、が収容されている。小ベベルギア23は、電動モータ31のモータシャフト32の前端部において、モータシャフト32の周りに固定されている。スピンドル25は、上下方向に離間して配置された軸受によって、回転軸線AX2を中心に回転可能に支持されている。回転軸線AX2は、電動モータ31の回転軸線AX1と交差(より具体的には、直交)している。大ベベルギア24は、スピンドル25の上側において、スピンドル25の周りに固定されており、小ベベルギア23と噛み合っている。ギアハウジング20は、その下端部に、カバー300を着脱可能に取り付けるための第2の取付部22を有している。第2の取付部22は、上下方向に延在する円筒の形状を有している。スピンドル25は、ギアハウジング20内を上下方向に延在し、下側においてギアハウジング20(より具体的には、第2の取付部22)から延出している。
【0027】
ギアハウジング20から延出したスピンドル25の下端部において、スピンドル25の周りにはインナーフランジ26が取り付けられている。スピンドル25のうちのインナーフランジ26よりも下方には、雄ネジ部が形成されており、当該雄ネジ部には、ロックナット27が取り付けられている。インナーフランジ26とロックナット27との間に先端工具28を挟み、ロックナット27を締め付けることによって、スピンドル25に対する先端工具28の位置が固定される。
【0028】
ハンドルハウジング40は、グラインダ10の使用時にユーザが一方の手で把持するための部分である。ハンドルハウジング40は、概ね前後方向に延在する円筒状の形状を有している。ハンドルハウジング40の内部には、電動モータ31を駆動するためのスイッチ41が収容されている。ハンドルハウジング40の下側には、スイッチ41をオフ状態にするオフ位置と、スイッチ41をオン状態にするオン位置と、の間で変位可能に構成された操作部材50が設けられている。図1,2では、オフ位置にある操作部材50が示されている。前後方向における操作部材50の前端付近には、操作部材50をオフ位置に係止させて、オン位置への変位を阻止するためのロックオフスイッチ57が設けられている。
【0029】
ユーザによって操作部材50がオフ位置からオン位置へ操作されると、スイッチ41が、それを検知して、検知信号をコントローラ33に送出する。コントローラ33は、この検知信号を受信すると、電動モータ31に電力を供給して、電動モータ31を駆動する。電動モータ31が駆動されると、モータシャフト32の回転が、小ベベルギア23および大ベベルギア24を介して、減速されつつ、スピンドル25に伝達される。このとき、回転運動の方向も、モータシャフト32周りの方向から、スピンドル25の回転軸線AX2周りの方向へと変換される。この機構によれば、モータシャフト32の回転に伴って、スピンドル25が回転軸線AX2周りに回転され、その結果、インナーフランジ26およびロックナット27によって固定された先端工具28がスピンドル25とともに回転される。
【0030】
図1に示すように、グラインダ10は、さらに、その付属品として、サイドハンドル200とカバー300とを備えている。サイドハンドル200は、ユーザが、ハンドルハウジング40を把持する手と反対の手で把持するために用意されている。サイドハンドル200を使用することにより、ユーザは、グラインダ10をより安定的に保持することができる。サイドハンドル200は、ユーザが把持するためのグリップ部210と、ギアハウジング20に取り付けるための取付部220と、を備えている。取付部220は、サイドハンドル200の長手方向に延在する円柱形状を有しており、サイドハンドル200の長手方向におけるグリップ部210の一端から延出している。取付部220の外周面には、雄ネジが形成されている。
【0031】
図9に示すように、ギアハウジング20は、サイドハンドル200を着脱可能に取り付けるための3つの第1の取付部29a~29cを有している。第1の取付部29a~29cは、回転軸線AX1周りの周方向に互いに離間した位置に配置されている。より具体的には、第1の取付部29aは、ギアハウジング20の左側面に形成され、第1の取付部29bは、ギアハウジング20の上面に形成され、第1の取付部29cは、ギアハウジング20の右側面に形成されている。3つの第1の取付部29a~29cは、回転軸線AX1に対して回転対称の位置にそれぞれ設けられている。第1の取付部29a~29cの各々は、ギアハウジング20の内部と外部とを連通させる貫通孔の形態である。当該貫通孔を形成する内面には、取付部220の雄ネジに螺合する雌ネジが形成されている。
【0032】
3つの第1の取付部29a~29cから選択される1つにサイドハンドル200の取付部220をねじ込むことによって、サイドハンドル200をギアハウジング20に取り付けることができる。ユーザは、グラインダ10を用いて行う作業の種類に応じて、または、右利きか、もしくは、左利きかに応じて、サイドハンドル200の取付け箇所を第1の取付部29a~29cから任意に選択可能である。本実施形態では、3つの第1の取付部29a~29cが設けられているが、第1の取付部の数は、特に限定されるものではなく、1以上の任意の数であってもよい。例えば、2つの第1の取付部29a,29cのみが設けられてもよい。
【0033】
図1に示すように、カバー300は、先端工具28の一部分を覆うカバー本体310と、第2の取付部22に取り付けるための取付部320と、を備えている。カバー本体310は、先端工具28の後側略半分を覆っている。本実施形態では、カバー本体310は、先端工具28の上面と、下面と、上面と下面との間の周面と、を覆っているが、使用される先端工具28の種類によっては、上面と周面のみを覆っていてもよい。取付部320は、開いた略円環状の形状を有しており、カバー本体310の上面から上方に向けて延在している。取付部320の構造は周知であるので、図示は省略するが、取付部320は、周方向の2つの先端のところに、対向する2つのフランジを有している。取付部320がギアハウジング20の第2の取付部22を取り囲むように配置された状態で、フランジに形成されたネジ孔にボルトを挿入して締め付けることによって、取付部320の円環形状の半径が小さくなり、取付部320が第2の取付部22に固定される。
【0034】
上述したグラインダ10は、サイドハンドル200がギアハウジング20の第1の取付部29a~29cのいずれかに取り付けられ、かつ、カバー300がギアハウジング20の第2の取付部22に取り付けられた状態においてのみ、電動モータ31を駆動させることができる。サイドハンドル200およびカバー300の少なくとも一方が取り付けられていない状態では、ユーザが操作部材50をオン位置に操作し、スイッチ41からコントローラ33に検知信号が送出されたとしても、コントローラ33は、電動モータ31の駆動を禁止する。サイドハンドル200およびカバー300の両方が取り付けられた状態は、後述する単一のセンサ80によって検知され、センサ80から信号線(図示省略)を介してコントローラ33に出力される。以下、この検知のための構成について、図面を参照して詳細に説明する。
【0035】
図1および図2に示すように、グラインダ10は、さらに、第1の中間部材60と、第2の中間部材70と、保持部材140と、センサ80と、を備えている。まず、第1の中間部材60、第2の中間部材70、保持部材140およびセンサ80の概要について説明する。
【0036】
第1の中間部材60は、第1の取付部29a~29cのいずれかにサイドハンドル200を取り付けることによってサイドハンドル200の取付部220に押圧され、変位されるように構成される。第1の中間部材60は、本実施形態では、このような変位動作として、回転軸線AX1を中心として所定の角度だけ回転する。サイドハンドル200がギアハウジング20の第1の取付部29a~29cのいずれにも取り付けられていないときの第1の中間部材60の位置を第1の非取付位置(図4,9参照)とも呼ぶ。サイドハンドル200が第1の取付部29a~29cのいずれかに取り付けられたときの第1の中間部材60の位置を第1の取付位置(図3,10,11参照)とも呼ぶ。第1の中間部材60は、略環状の部材であり、電動モータ31よりも前側において、モータシャフト32を取り囲むようにギアハウジング20の内部に配置される。
【0037】
第2の中間部材70は、第2の取付部22にカバー300を取り付けることによってカバー300の取付部320に押圧され、変位されるように構成される。第2の中間部材70は、本実施形態では、このような変位動作として、上側に直動する。カバー300がギアハウジング20の第2の取付部22に取り付けられていないときの第2の中間部材70の位置を第2の非取付位置(図4,9,10参照)とも呼ぶ。カバー300が第2の取付部22に取り付けられたときの第2の中間部材70の位置を第2の取付位置(図5,16参照)とも呼ぶ。第2の中間部材70は、第1の中間部材60よりも前側において、モータシャフト32と先端工具28との間に配置される。
【0038】
保持部材140は、第1の中間部材60よりも前側に配置されており、第1の中間部材60と第2の中間部材70とを一緒に保持する。
【0039】
センサ80は、第1の中間部材60が第1の取付位置にあり、かつ、第2の中間部材70が第2の取付位置が第2の取付位置にある状態を検知する。本実施形態では、センサ80は光電センサである。
【0040】
以下、第1の中間部材60、第2の中間部材70、保持部材140およびセンサ80の詳細について説明する。まず、第1の中間部材60について説明する。図5に示すように、第1の中間部材60は、単一の部材であり、第1の取付部29a~29cに対して共通して設けられる。第1の中間部材60は、第1の中間部材本体61を備えている。第1の中間部材本体61は、本実施形態では、電動モータ31の回転軸線AX1を中心とする環の形状を有している。ただし、第1の中間部材60は、部分的な環の形状(換言すれば、閉じられてない環の形状)を有していてもよい。第1の中間部材本体61の中央部には、モータシャフト32が貫通する貫通孔が形成されている。
【0041】
第1の中間部材60は、さらに、3つの被押圧部62a~62cと、第2の貫通孔64と、を備えている。3つの被押圧部62a~62cは、周方向に互いに離間して配置されている。被押圧部62aは、ギアハウジング20の第1の取付部29aにサイドハンドル200が取り付けられたときにサイドハンドル200(より具体的には、取付部220の先端)に押圧される部分である。同様に、被押圧部62bは、第1の取付部29bにサイドハンドル200が取り付けられたときにサイドハンドル200に押圧される部分であり、被押圧部62cは、第1の取付部29cにサイドハンドル200が取り付けられたときにサイドハンドル200に押圧される部分である。このため、被押圧部62a~62cは、第1の取付部29a~29cの角度位置に対応する角度位置にそれぞれ配置されている(図14参照)。被押圧部62a~62cの各々は、第1の中間部材本体61から径方向外側に突出している。
【0042】
上述したように、第1の中間部材60は、被押圧部62a~62cのいずれかがサイドハンドル200によって押圧されたときに、回転軸線AX1を中心として回転するように構成される。図9図10とを比べると、第1の取付部29cにサイドハンドル200が取り付けられたことによって、被押圧部62cがサイドハンドル200に押圧されて、第1の中間部材60が、図9に示す位置から図10に示す位置まで反時計回りに回転していることが分かる。
【0043】
図5および図9に示すように、被押圧部62aは、第1の取付部29aにサイドハンドル200が取り付けられたときのサイドハンドル200の長手方向(換言すれば、サイドハンドル200の取付方向)に対して角度付けられた被押圧面63aを有している。同様に、被押圧部62bは、第1の取付部29bにサイドハンドル200が取り付けられたときのサイドハンドル200の長手方向に対して角度付けられた被押圧面63bを有している。同様に、被押圧部62cは、第1の取付部29cにサイドハンドル200が取り付けられたときのサイドハンドル200の長手方向に対して角度付けられた被押圧面63cを有している。被押圧面63a~63cは、対応するサイドハンドル200の長手方向に対して、約45度で角度付けられている(図9参照)。この角度は、サイドハンドル200の長手方向とは異なる方向に第1の中間部材60が変位するように、任意の角度で設定され得る。代替形態では、この角度は、30度以上、60度以下の範囲内で設定されてもよい。このように角度付けられた被押圧面63a~63cによれば、第1の中間部材60を容易に回転させることができる。
【0044】
第2の貫通孔64は、第1の中間部材60を前後方向に貫通している。第1の中間部材60が図9に示す第1の非取付位置にあるときには、第2の貫通孔64は、第1の中間部材60の最下部よりも僅かに左側かつ上側にオフセットした角度位置(換言すれば、前後方向に見て、後述する第2の中間部材70の遮断部73と重複しない位置)にある。一方、第1の中間部材60が図10に示す第1の取付位置にあるときには、第2の貫通孔64は、第1の中間部材60の最下部の角度位置(換言すれば、前後方向に見て、後述する第2の中間部材70の遮断部73と重複する位置)にある。
【0045】
図5に示すように、第1の中間部材本体61は、第1の貫通孔65,66を備えている。第1の貫通孔65,66の各々は、回転軸線AX1を中心とする円弧形状を有している。第1の貫通孔65,66は、回転軸線AX1に対して180度回転対称の位置に配置されている。第1の中間部材60は、この第1の貫通孔65,66を介して保持部材140にネジ止めされる。具体的には、第1の貫通孔65,66には、図9~11に示すようにボルト91が挿入される。このボルト91は、後述する保持部材140のネジ穴143a,144aと螺合する。なお、図9~11では、図示を省略しているが、実際には、第1の中間部材60とボルト91の頭との間には、後述するセンサ基板保持部材85(図8参照)が配置され、ボルト91は、センサ基板保持部材85の貫通孔87,88と第1の貫通孔65,66とを通って配置される。保持部材140および/またはセンサ基板保持部材85と、第1の中間部材60と、の間に所定のクリアランスが確保されることによって、第1の中間部材60は、第1の貫通孔65,66の円弧形状に沿って回転可能に保持部材140に保持される。この構成によれば、簡単な構成で第1の中間部材60を保持できる。
【0046】
第1の中間部材60は、さらに、突起67を備えている。突起67は、第1の中間部材本体61の前面から前方に向けて延在している。この突起67は、後述するバネ68(図7参照)によって第1の中間部材60を第1の非取付位置(図4,9参照)に向けて付勢するために使用される。
【0047】
次いで、第2の中間部材70について説明する。図6に示すように、第2の中間部材70は、ベース71と、被押圧部72と、遮断部73と、支持部74,75と、バネ座78と、を備えている。ベース71は、前後方向を長手方向とし、上下方向と直交する平板状の部分である。被押圧部72は、カバー300を第2の取付部22に取り付ける際に、カバー300の取付部320によって上側に向けて押圧される部分であり、第2の中間部材70の前端に位置している。被押圧部72は、ベース71と平行な平板状の形状を有している。ベース71と被押圧部72との間には段部が形成されている。この段部によって、カバー300が取り付けられるときの第2の中間部材70の変位量を小さくできる。具体的には、カバー300の取付け時において、カバー300の取付部320がベース71と同一の位置まで持ち上げられた状態から、取付部320が被押圧部72に当接する状態までは、第2の中間部材70は変位されないので、被押圧部72がベース71と同じ上下方向位置にある構成と比べて、段差分だけ、第2の中間部材70の変位量が小さくなる。このため、第2の中間部材70の変位スペースを小さくすることができる。換言すれば、グラインダ10の上下方向のサイズが大きくなることを抑制できる。
【0048】
遮断部73は、第2の中間部材70が第2の取付位置にあるときに、センサ80から放出された光を遮る部分である。遮断部73は、第2の中間部材70の後端に位置しており、ベース71の後端から上側に向けて延在している。遮断部73は、前後方向と直交する平板状の形状を有している。
【0049】
支持部74,75は、遮断部73の近傍において、遮断部73よりも前側で、左右方向に対向するように配置される。支持部74,75は、ベース71から左右方向に互いに離れる方向に延在し、その後、折れ曲がって、上側に延在する略L字状の形状を有している。支持部74,75には、支持部74,75をそれぞれ前後方向に貫通する第3の貫通孔76,77が、それぞれ形成されている。第3の貫通孔76,77は、上下方向(つまり、カバー300に押圧されるときに直動する方向)を長手方向とする長孔の形態である。第2の中間部材70は、この第3の貫通孔76,77を介して保持部材140にネジ止めされる。具体的には、第3の貫通孔76,77には、図9~11に示すようにボルト92が挿入される。このボルト92は、後述する保持部材140のネジ穴145a,146aと螺合する。ボルト92の頭と支持部74,75との間に所定のクリアランスがそれぞれ確保されることによって、第2の中間部材70は、第3の貫通孔76,77に沿って直動可能に保持部材140に保持される。この構成によれば、簡単な構成で第2の中間部材70を保持できる。
【0050】
バネ座78は、ベース71から上側に向けて突出するように設けられている。バネ座78と、保持部材140のバネ座148(図7参照)との間には、バネ79が保持される(図4参照)。バネ79は、第2の中間部材70を第2の非取付位置(図4図9,10参照)に向けて付勢する。
【0051】
次いで、保持部材140について説明する。図7に示すように、保持部材140は、円環部141と、円筒部142と、突出部143,144と、突出部145,146と、バネ座148と、バネ収容部149と、を備えている。円環部141は、電動モータ31の回転軸線AX1を中心とする円盤形状を有しており、その中央には、貫通孔が形成されている。円環部141の下側には、第2の中間部材70の変位スペースを確保するために切欠147が形成されている。
【0052】
円筒部142は、円環部141から後側に向けて延在する円筒形状を有している。円筒部142の径は、円環部141の径よりも小さい。円筒部142に隣接して、円筒部142の上側にはバネ収容部149が形成されている。バネ収容部149は、回転軸線AX1を中心とする円弧状に形成されている。バネ収容部149内には、バネ収容部149の円弧形状に沿って伸縮可能なバネ68が収容されている。バネ収容部149の後側は開口しており、この開口を介して、第1の中間部材60の突起67がバネ収容部149内に挿入される。バネ68の一端は、バネ収容部149の内面(円弧形状の一方の端部に位置する平面)に支持され、バネ68の他端は、突起67に係合する。これによって、第1の中間部材60は、時計回り方向に(換言すれば、第1の非取付位置に向けて)付勢される。
【0053】
突出部143,144は、左右方向に互いに離間して配置される。突出部143,144は、円環部141の上下方向における略中央において、円環部141から後側に向けて延在している。突出部143、144は、雌ネジが形成されたネジ穴143a,144aをそれぞれ有している。ネジ穴143a,144aは、突出部143、144の後端面から前側に向けて延在している。ネジ穴143a,144aには、上述した態様で第1の中間部材60を保持部材140に取り付けるために、ボルト91が螺合される(図9参照)。
【0054】
突出部145,146は、突出部143,144よりも下方において、左右方向に互いに離間して配置される。突出部145,146は、雌ネジが形成されたネジ穴145a,146aをそれぞれ有している。ネジ穴145a,146aは、突出部145,146の後端面から前側に向けて延在している。ネジ穴145a,146aには、上述した態様で第2の中間部材70を保持部材140に取り付けるために、ボルト92が螺合される(図9参照)。第2の中間部材70を第1の中間部材60よりも前側で保持するために、突出部145,146の前後方向の長さは、突出部143,144の前後方向の長さよりも小さい。
【0055】
円筒部142の下端には、上述したバネ座148が形成されている。この保持部材140は、第1の中間部材60と第2の中間部材70とを取り付けた状態で、円環部141の外周と円筒部142の内周とがギアハウジング20に当接するように、ギアハウジング20内に嵌め込まれる。それによって、保持部材140は、ギアハウジング20に固定される。単一の保持部材140に、第1の中間部材60と第2の中間部材70とを取り付けると、第1の中間部材60と第2の中間部材70との相対位置が自然に定まるので、グラインダ10の組み立て時において、第1の中間部材60と第2の中間部材70との相対位置を調整する必要がない。しかも、上述したように、保持部材140は、センサ80を保持するセンサ基板保持部材85と、第1の中間部材60と、を一緒に保持する。したがって、センサ基板保持部材85を取り付けると、第1の中間部材60および第2の中間部材70に対するセンサ80の相対位置も自然に定まるので、センサ80の位置調整も必要がない。
【0056】
次に、センサ80について説明する。センサ80は、本実施形態では、反射型フォトセンサである。図4に示すように、センサ80は、発光部82と、受光部83と、発光部82および受光部83が一緒に搭載されるセンサ基板81と、を備えている。発光部82お60よび受光部83は、センサ基板81の前面に配置されている。センサ80は、第1の中間部材60および第2の中間部材70の変位を検出するために、ギアハウジング20の底部付近に配置されている。より具体的には、センサ基板81および発光部82は、第1の中間部材本体61に近接して、第1の中間部材本体61の後側に配置されている。
【0057】
このセンサ80は、図8に示すセンサ基板保持部材85によって保持される。センサ基板保持部材85は、略Y字状の板状の部材である。センサ基板保持部材85の二股に分岐する基部には、発光部82と受光部83とが搭載されたセンサ基板81が保持されている。センサ基板81は、任意の方法(例えば、ネジ止め、スナップ嵌め、部分的に加熱変形させることによる係合など)によってセンサ基板保持部材85に固定される。また、センサ基板保持部材85の二股に分岐した先端付近には、貫通孔87,88が形成されている。
【0058】
第1の中間部材60は、サイドハンドル200の取付けに起因して、発光部82から放出された光を遮る位置と、当該光を遮らない位置と、の間を変位する。同様に、第2の中間部材70は、カバー300の取付けに起因して、発光部82から放出された光を遮る位置と、当該光を遮らない位置と、の間を変位する。センサ80は、この第1の中間部材60および第2の中間部材70の位置の違いに基づく受光部83での受光の有無によって、サイドハンドル200およびカバー300が取り付けられた状態を検知する。以下、より具体的に説明する。
【0059】
図12は、サイドハンドル200およびカバー300のいずれも取り付けられていないときの第1の中間部材60および第2の中間部材70(図4,9参照)と、センサ80と、の位置関係を模式的に示している。サイドハンドル200およびカバー300のいずれも取り付けられていない状態では、図12に示すように、第1の中間部材60は、第1の中間部材本体61が発光部82から放出された光を遮る位置に位置している。第1の中間部材本体61は、発光部82および受光部83に近接しているので、受光部83は、発光部82から放出された光を受光することができない。図示は省略するが、サイドハンドル200およびカバー300のうちのカバー300のみが取り付けられた状態でも、第1の中間部材本体61は、図12に示す位置にあるので、受光部83は、発光部82から放出された光を受光することができない。
【0060】
図12に示した状態に対してサイドハンドル200のみが取り付けられると、第1の中間部材60が図3,10に示す第1の取付位置まで変位する。このとき、図13に示すように、発光部82から放出された光89は、第2の貫通孔64を通過するので、第1の中間部材本体61によって遮られることはない。また、このとき、第2の中間部材70の遮断部73は、光89を遮らない位置にあるので、受光部83は、発光部82から放出された光を受光することができない。
【0061】
図13に示した状態に対してカバー300が取り付けられると、第2の中間部材70が
図3,11に示す第2の取付位置まで変位する。このとき、図14に示すように、発光部82から放出された光89は、第2の貫通孔64を通過した後、遮断部73によって遮られる。その結果、光89は、遮断部73で反射され、受光部83によって受光される。
【0062】
このように、上述したグラインダ10によれば、サイドハンドル200およびカバー300の両方が取り付けられた状態においてのみ、1つのセンサ80において、発光部82から放出された光89を受光部83で受光することができる。つまり、サイドハンドル200およびカバー300の両方が取り付けられた状態を1つのセンサ80で検知することができる。したがって、サイドハンドル200およびカバー300のそれぞれに個別のセンサを用意する構成と比べて、部品点数およびコストを低減できる。
【0063】
さらに、第1の中間部材60は、被押圧部62a~62cのいずれかがサイドハンドル200によって押圧されたときに回転軸線AX1を中心として回転するように構成される。このため、前後方向に第1の中間部材60の変位スペースを確保する必要が無いので、前後方向におけるグラインダ10のサイズをコンパクトにすることができる。
【0064】
さらに、第2の中間部材70は、カバー300が取り付けられたときに、カバー300(より具体的には、取付部320)に押圧されて、カバー300の取付け方向(つまり、上方向)に直動する。このため、方向変換機構が不要であり、装置構成を簡素化できる。
【0065】
以下、図15,16を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態は、センサ80に代えてセンサ180が使用される点と、第1の中間部材60に代えて第1の中間部材160が使用される点と、第2の中間部材70に代えて第2の中間部材170が使用される点と、が第1実施形態と異なっている。図15,16では、第1実施形態の構成要素と同一の構成要素には、第1実施形態と同一の符号を付している。以下では、第2実施形態について、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。センサ180は、本実施形態では透過型フォトセンサである。図15,16に示すように、センサ180は、発光部182と、受光部183と、発光部182および受光部183が一緒に搭載されるセンサ基板181と、を備えている。第1の中間部材160は、第2の貫通孔64を有していない代わりに、径方向の外縁部に切欠を有している。第2の中間部材170は、遮断部73に代えて、遮断部173を備えている。遮断部173は、ベース71の後端から、下側に延している。
【0066】
発光部182および受光部183は、前後方向において発光部182と受光部183との間に遮断部173と第1の中間部材本体61とが位置するように配置される。この構成では、第1の中間部材160が第1の非取付位置にあるときは、第1の中間部材本体61が発光部182から放出された光を遮る位置にあり、第2の中間部材170が第1の非取付位置にあるときは、遮断部173が発光部182から放出された光を遮る位置にある(図16参照)。つまり、サイドハンドル200およびカバー300のうちの少なくとも一方が取り付けられていないときは、発光部182から放出された光は、第1の中間部材160および第2の中間部材170の少なくとも一方によって遮られる。このため、受光部183は、発光部182から放出された光を受光することができない。一方、第1の中間部材160が第1の取付位置にあるときは、発光部182から放出された光が第1の中間部材160の切欠を通過でき、第2の中間部材170が第1の取付位置にあるときは、遮断部173が発光部182から放出された光を遮らない位置まで変位している(図15参照)。つまり、サイドハンドル200およびカバー300の両方が取り付けられたときは、発光部182から放出された光は、受光部183によって受光される。したがって、サイドハンドル200およびカバー300の両方が取り付けられた状態を1つのセンサ180で検知することができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、上述した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各要素の任意の組み合わせ、または、任意の省略が可能である。
【0068】
例えば、上述したグラインダ10の構成部品の形状および形態は、例示に過ぎず、その構成部品の作用が確保される限り、任意の変更が可能である。例えば、第1の中間部材60の被押圧部62a~62cは、径方向外側に突出する代わりに、前側または後側に突出していてもよい。あるいは、第1の中間部材60は、第2の貫通孔64に代えて、第1の中間部材本体61から径方向外側に突出する遮断部を備えていてもよい。この場合、第1の中間部材60が第1の非取付位置にあるときは、発光部82から放出される光を遮断部が遮り、第1の中間部材60が第1の取付位置にあるときは、遮断部が、発光部82から放出される光を遮らない位置まで変位された状態になる。
【0069】
さらに、第1の中間部材60は、サイドハンドル200が取り付けられたときに、サイドハンドル200によって間接的に押圧されてもよい。つまり、サイドハンドル200によって押圧されて変位される追加的な部材が設けられ、この追加的な部材によって、第1の中間部材60が変位されてもよい。同様に、第2の中間部材70は、カバー300が取り付けられたときに、カバー300によって間接的に押圧されてもよい。
【0070】
さらに、第1の中間部材60は、サイドハンドル200が取り付けられたときに回転する構成に代えて、サイドハンドル200が取り付けられたときにサイドハンドル200に押圧されて傾斜するように構成されてもよい。例えば、第1の中間部材60は、第1の中間部材60の下側に支軸を有し、当該支軸を中心として、第1の中間部材60の下端が前側に近づくように傾斜してもよい。
【0071】
さらに、第2の中間部材70は、第2の非取付位置では発光部82から放出する光を遮る位置にあり、第2の取付位置では発光部82から放出する光を遮らない位置にあってもよい。この場合、例えば、第2の中間部材70に低反射性の塗料を塗っておき、反射板を、前後方向において反射板とセンサ80との間に第1の中間部材60および第2の中間部材70が位置するように配置してもよい。こうすれば、受光部83は、サイドハンドル200およびカバー300の両方が取り付けられた状態でのみ、発光部82から放出する光を受光することができる。
【0072】
センサ80,180は、光電センサに限らず、公知の他の形式のセンサであってもよい。例えば、超音波式の距離センサが使用されてもよい。この場合も、第1の中間部材60および第2の中間部材70が、サイドハンドル200またはカバー300の取付けの有無に応じて、センサから発信された超音波を遮る位置(以下、遮断位置とも呼ぶ)と、当該超音波を遮らない位置(以下、非遮断位置とも呼ぶ)と、の間で変位するように構成されれば、サイドハンドル200およびカバー300の両方が取り付けられた状態を検知できる。例えば、第1の中間部材60は、サイドハンドル200が取り付けられていないときに遮断位置をとり、サイドハンドル200が取り付けられているときに、非遮断位置をとってもよい。また、第2の中間部材70は、カバー300が取り付けられていないときに遮断位置をとり、カバー300が取り付けられているときに、非遮断位置をとってもよい。こうすれば、検出される距離の違いに基づいて、サイドハンドル200およびカバー300の両方が取り付けられた状態を検知できる。あるいは、渦電流式の変位センサが使用されてもよい。この場合、第1の中間部材60および第2の中間部材70の各々は、少なくとも一部が金属で形成される。あるいは、カラーセンサが使用されてもよい。この場合、第1の中間部材60および第2の中間部材70は、互いに異なる色に着色される。
【0073】
さらに、サイドハンドル200およびカバー300の取付状態に応じて、電動モータ31の駆動を許可または禁止する構成に代えて、または、加えて、グラインダ10は、サイドハンドル200およびカバー300のうちの少なくとも一方が取り付けられていないことをユーザに報知するための報知部を備えていてもよい。報知の態様は、発光、発音、文字表示、または、これらの組み合わせであってもよい。例えば、報知部は、LEDなどの発光素子、GUI画面、スピーカのうちの少なくとも1つを備えていてもよい。
【0074】
さらに、上述の実施形態は、グラインダ10に限らず、2種類の付属品を着脱可能に取り付けることができる任意の工具に適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
10...グラインダ
20...ギアハウジング
22...第2の取付部
23...小ベベルギア
24...大ベベルギア
25...スピンドル
26...インナーフランジ
27...ロックナット
28...先端工具
29a~29c...第1の取付部
30...モータハウジング
31...電動モータ
32...モータシャフト
33...コントローラ
40...ハンドルハウジング
41...スイッチ
50...操作部材
60,160...第1の中間部材
61...第1の中間部材本体
62a~62c...被押圧部
63a~63c...被押圧面
64...第2の貫通孔
65...第1の貫通孔
67...突起
68...バネ
70,170...第2の中間部材
71...ベース
72...被押圧部
73,173...遮断部
74...支持部
76...第3の貫通孔
78...バネ座
79...バネ
80,180...センサ
81,181...センサ基板
82,182...発光部
83,183...受光部
85...センサ基板保持部材
87,88...貫通孔
89...光
91,92...ボルト
140...保持部材
141...円環部
142...円筒部
143,144,145,146...突出部
143a,144a,145a,146a...ネジ穴
147...切欠
148...バネ座
149...バネ収容部
200...サイドハンドル
210...グリップ部
220...取付部
300...カバー
310...カバー本体
320...取付部
AX1,AX2...回転軸線
図1
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