IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社酉島製作所の特許一覧

特許7398327立軸ポンプ、ポンプシステム及び立軸ポンプの傾き自動判定方法
<>
  • 特許-立軸ポンプ、ポンプシステム及び立軸ポンプの傾き自動判定方法 図1
  • 特許-立軸ポンプ、ポンプシステム及び立軸ポンプの傾き自動判定方法 図2
  • 特許-立軸ポンプ、ポンプシステム及び立軸ポンプの傾き自動判定方法 図3
  • 特許-立軸ポンプ、ポンプシステム及び立軸ポンプの傾き自動判定方法 図4
  • 特許-立軸ポンプ、ポンプシステム及び立軸ポンプの傾き自動判定方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】立軸ポンプ、ポンプシステム及び立軸ポンプの傾き自動判定方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 13/00 20060101AFI20231207BHJP
   F04D 29/60 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
F04D13/00 A
F04D29/60 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020075560
(22)【出願日】2020-04-21
(65)【公開番号】P2021173178
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2022-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000152170
【氏名又は名称】株式会社酉島製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】半田 康雄
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-100294(JP,A)
【文献】特開2008-008747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 13/00
F04D 29/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
据付床と、
前記据付床に固定されるベースプレートと、
前記ベースプレートに連結されるベースプレート座、前記ベースプレート座に懸垂される揚水管、及び前記ベースプレート座に連続して前記揚水管に連通する吐出しエルボを有するポンプケーシングと、
前記吐出しエルボを貫通して上下方向に延び、下端部に前記ポンプケーシング内に配置される羽根車を有する回転軸と、
前記吐出しエルボの上方側外部に設けられ、前記回転軸を回転させる駆動機と、
前記駆動機に設けられ、前記回転軸を前記ポンプケーシングの外部で回転可能に支持する外軸受と、
前記ポンプケーシングに設けられ、前記回転軸を前記ポンプケーシングの内部で回転可能に支持する水中軸受と、
前記ベースプレート座又は前記駆動機のいずれか一方に配置されるレーザと、
前記ベースプレート座又は前記駆動機の残る他方に配置され、前記レーザから照射されるレーザ光を受光する測定部と、
前記据付床への設置当初における前記外軸受の中心から前記水中軸受の中心までの距離をL、前記回転軸と前記水中軸受の隙間をδとしたとき、δ/Lを基準値として、前記測定部での測定結果に基づいて、前記ポンプケーシングの傾きレベルを判定する判定部と、
を備える、立軸ポンプ。
【請求項2】
前記判定部は、
前記測定部での前記測定結果に基づいて、前記レーザの前記レーザ光が出力される位置から前記測定部までの距離をLi、前記測定部の基準点から前記測定部において前記レーザ光を受光した位置までの距離をxとしたとき、x/Liを前記ポンプケーシングの最大傾きΔmaxとして算出し、
前記最大傾きΔmaxを前記基準値δ/Lと比較して、前記ポンプケーシングの傾きレベルを判定する、
請求項1に記載の立軸ポンプ。
【請求項3】
前記判定部は、前記ポンプケーシングの最大傾きをΔmaxとすると、δ/L<Δmax≦δ/L×2を満足することにより、前記ポンプケーシングの傾きレベルを要注意と判定する、
請求項2に記載の立軸ポンプ。
【請求項4】
前記判定部は、前記最大傾きΔmaxがδ/L×2<Δmaxを満足することにより、前記ポンプケーシングの傾きレベルを要調整と判定する、
請求項3に記載の立軸ポンプ。
【請求項5】
据付床と、
前記据付床に固定されるベースプレートと、
前記ベースプレートに連結されるベースプレート座、前記ベースプレート座の下端部に懸垂される揚水管、及び前記ベースプレート座の上端部に接続される吐出しエルボを有するポンプケーシングと、
前記吐出しエルボを貫通して上下方向に延び、下端部に前記ポンプケーシング内に配置される羽根車を有する回転軸と、
前記吐出しエルボの上方側外部に設けられ、前記回転軸を回転させる駆動機と、
前記駆動機に設けられ、前記回転軸を前記ポンプケーシングの外部で回転可能に支持する外軸受と、
前記ポンプケーシングに設けられ、前記回転軸を前記ポンプケーシングの内部で回転可能に支持する水中軸受と、
前記ベースプレート座又は前記駆動機のいずれか一方に配置されるレーザと、
前記ベースプレート座又は前記駆動機の残る他方に配置され、前記レーザからのレーザ光を受光する測定部と、
を有する立軸ポンプと、
前記据付床への設置当初における前記外軸受の中心から前記水中軸受の中心までの距離をL、前記回転軸と前記水中軸受の隙間をδとしたとき、δ/Lを基準値として、前記測定部での測定結果に基づいて、前記ポンプケーシングの傾きレベルを判定する判定装置と、
を備える、ポンプシステム。
【請求項6】
据付床と、
前記据付床に固定されるベースプレートと、
前記ベースプレートに連結されるベースプレート座、前記ベースプレート座の下端部に懸垂される揚水管、及び前記ベースプレート座の上端部に接続される吐出しエルボを有するポンプケーシングと、
前記吐出しエルボを貫通して上下方向に延び、下端部に前記ポンプケーシング内に配置される羽根車を有する回転軸と、
前記吐出しエルボの上方側外部に設けられ、前記回転軸を回転させる駆動機と、
前記駆動機に設けられ、前記回転軸を前記ポンプケーシングの外部で回転可能に支持する外軸受と、
前記ポンプケーシングに設けられ、前記回転軸を前記ポンプケーシングの内部で回転可能に支持する水中軸受と、
前記ベースプレート座又は前記駆動機のいずれか一方に配置されるレーザと、
前記ベースプレート座又は前記駆動機の残る他方に配置され、前記レーザからのレーザ光を受光する測定部と、
を備えた立軸ポンプにおいて、
前記測定部の基準点と、前記レーザ光が照射される位置とに基づいて前記ポンプケーシングの最大傾きΔmaxを演算し、前記据付床への設置当初における前記外軸受の中心から前記水中軸受の中心までの距離をL、前記回転軸と前記水中軸受の隙間をδとしたとき、δ/Lを基準値として、前記最大傾きΔmaxと前記基準値δ/Lとの関係から前記ポンプケーシングの傾きレベルを判定する、
立軸ポンプの傾き自動判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立軸ポンプ、ポンプシステム及び立軸ポンプの傾き自動判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立軸ポンプは、コンクリート等で形成された据付床に、ポンプケーシングを固定することにより設置される。設置された立軸ポンプは、経年劣化により据付床に対してポンプケーシングが傾くことがある。
【0003】
従来、ポンプケーシングが傾いたときに、この傾きを再調整できるようにした立軸ポンプが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、前記従来の立軸ポンプでは、ポンプケーシングの傾き度合いを自動的に判定することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-105569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ポンプケーシングの傾きを自動的に判定することができる機能を備えた立軸ポンプ、ポンプシステム及び立軸ポンプの傾き自動判定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、据付床と、前記据付床に固定されるベースプレートと、前記ベースプレートに連結されるベースプレート座、前記ベースプレート座に懸垂される揚水管、及び前記ベースプレート座に接続される吐出しエルボを有するポンプケーシングと、前記吐出しエルボを貫通して上下方向に延び、下端部に前記ポンプケーシング内に配置される羽根車を有する回転軸と、前記回転軸を介して前記羽根車を回転させる駆動手段と、前記ベースプレート座又は前記ベースプレート座の上方側のいずれか一方に配置されるレーザと、前記ベースプレート座又は前記ベースプレート座の上方側の残る他方に配置され、前記レーザから照射されるレーザ光を受光する測定部と、前記測定部での測定結果に基づいて前記ポンプケーシングの傾きを判定する判定部と、を備える、立軸ポンプを提供する。
【0008】
この構成によれば、測定部へのレーザ光の照射位置に基づいて判定部によってポンプケーシングの傾きを自動的に判定することができる。
【0009】
前記回転軸を前記吐出エルボの上方側外部で回転可能に支持する外軸受と、前記回転軸を前記ポンプケーシングの上方側内部で回転可能に支持する水中軸受と、を備え、前記判定部は、前記外軸受から前記水中軸受までの距離をL、前記回転軸と前記水中軸受の隙間をδとしたとき、δ/Lを基準値として、前記ポンプケーシングの傾きを判定するのが好ましい。
【0010】
この構成によれば、ポンプケーシングの傾きの判定基準を明確化して適切な判定を行うことができる。
【0011】
前記判定部は、前記ポンプケーシングの最大傾きをΔmaxとすると、δ/L<Δmax≦δ/L×2を満足することにより、前記ポンプケーシングの傾きレベルを要注意と判定してもよい。
【0012】
この構成によれば、ポンプケーシングの傾きが大きくなり、軸受等が損傷に至る前に判定してメンテナンスを促すことができる。
【0013】
前記判定部は、前記最大傾きΔmaxがδ/L×2<Δmaxを満足することにより、前記ポンプケーシングの傾きレベルを要調整と判定することができる。
【0014】
この構成によれば、要調整すなわち故障に至る危険性が高いと判断し、駆動を停止する等の処置を施すことができる。
【0015】
また本発明は、前記課題を解決するための手段として、据付床と、前記据付床に固定されるベースプレートと、前記ベースプレートに連結されるベースプレート座、前記ベースプレート座に懸垂される揚水管、及び前記ベースプレート座に連続して前記揚水管に連通する吐出しエルボを含むポンプケーシングと、前記吐出しエルボを貫通して上下方向に延び、下端部に前記ポンプケーシング内に配置される羽根車を有する回転軸と、前記回転軸を介して前記羽根車を回転させる駆動手段と、前記ベースプレート座又は前記ベースプレート座の上方側のいずれか一方に配置されるレーザと、前記ベースプレート座又は前記ベースプレート座の上方側の残る他方に配置され、前記レーザからのレーザ光を受光する測定部と、を有する立軸ポンプと、前記測定部での測定結果に基づいて前記ポンプケーシングの傾きを判定する判定部と、を備えるポンプシステムを提供する。
【0016】
また本発明は、前記課題を解決するための手段として、据付床と、前記据付床に固定されるベースプレートと、前記ベースプレートに連結されるベースプレート座、前記ベースプレート座に懸垂される揚水管、前記ベースプレート座に連続して前記揚水管に連通する吐出しエルボを有するポンプケーシングと、前記吐出しエルボを貫通して上下方向に延び、下端部に前記ポンプケーシング内に配置される羽根車を有する回転軸と、前記回転軸を回転可能に支持する外軸受と、前記回転軸を前記ポンプケーシングの上方側内部で回転可能に支持する水中軸受と、前記回転軸を介して前記羽根車を回転させる駆動手段と、前記ベースプレート座又は前記ベースプレート座の上方側のいずれか一方に配置されるレーザと、前記ベースプレート座又は前記ベースプレート座の上方側の残る他方に配置され、前記レーザからのレーザ光を受光する測定部と、を備えた立軸ポンプにおいて、前記測定部の基準点と、前記レーザが照射される位置とに基づいて前記ポンプケーシングの最大傾きΔmaxを演算し、前記外軸受から前記水中軸受までの距離をL、前記回転軸と前記水中軸受の隙間をδとしたとき、δ/Lを基準値として、前記最大傾きΔと前記基準値δ/Lとの関係から前記ポンプケーシングの傾きレベルを判定する、立軸ポンプの傾き自動判定方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、レーザからのレーザ光の照射位置の変化に基づいてポンプケーシングの傾きを自動的に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る立軸ポンプの概略図。
図2図1のベースプレートの平面図。
図3図1の測定板の平面図。
図4】本実施形態に係るポンプシステムの概略図。
図5図1の制御部で実行する傾き判定方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。
【0020】
図1は、本実施形態に係る立軸ポンプ1の概略図を示す。この立軸ポンプ1を含む複数の立軸ポンプ1が、種々のポンプ機場にそれぞれ設置されている。後述するように、各立軸ポンプ1には制御装置21が設けられ、通信ネットワーク25を介してサーバ26と通信可能に接続されている(図4参照)。
【0021】
ポンプ機場は、コンクリート等の打設によって設けられ、図示しない流入管を介して雨水等が流入する吸水槽2を備える。吸水槽2の上方開口部は据付床3によって覆われている。据付床3には、段付き形状のポンプ挿通孔4が形成されている。すなわち、ポンプ挿通孔4は、凹所4aと、その底面内側部分を貫通する開口部4bとで構成されている。凹所4aには、環状のベースプレート8が配置されている。ベースプレート8は、周方向に8箇所等分で配置されて据付床3を貫通する基礎ボルト100によって据付床3に固定されている(図2参照)。基礎ボルト100による固定後、ベースプレート8はモルタルを塗布して固められ、その後の傾き調整はできなくなる。なお、本実施形態では、「据付床」は、立軸ポンプ1を支持できる構造物全般を指す用語として使用している。
【0022】
立軸ポンプ1は、ポンプケーシング5を備える。ポンプケーシング5は、ポンプ挿通孔4に挿通された状態で据付床3に設置される。ポンプケーシング5は、揚水管6、吐出しエルボ7、及びこれらを連結するベースプレート座9を有する。詳細については図示しないが、ベースプレート座9は筒状で、上下端部が径方向外側に広がったフランジ部9a,9bとなっている。揚水管6と吐出しエルボ7の各フランジ6a,7aがベースプレート座9の上下端部の各フランジ部9a,9bにそれぞれ(ボルト)固定されることによりポンプケーシング5が完成する。またベースプレート座9の上方側フランジ部9aは外径側に広がっており、ベースプレート8に裁置されてボルト101により固定される。初期据付時、揚水管6は、吸水槽2内に配置され、その中心線CLが鉛直方向に合致するように調整され、吐出しエルボ7の他端側は、据付床3の上方側で揚水管6の中心線CLとは直交する水平方向に延びる。
【0023】
ベースプレート座9には測定板10が取り付けられている。測定板10には、図3に示すように、測定部である複数の受光素子11が格子状に設けられている。受光素子11によって構成される表面は、ベースプレート座9の表面に沿っており、初期状態において水平面内に位置している。各受光素子11は、後述するレーザ20から照射されたレーザ光を受光すると、光電変換により電気信号を制御装置21へと送信する。
【0024】
吐出しエルボ7には回転軸12が貫通している。回転軸12の上端側は、駆動手段である駆動機13に回転駆動可能に支持されている。駆動機13には、回転軸12を回転可能に支持する上方側の第1軸受14と、下方側の第2軸受15(外軸受)とが設けられている(モータ等は図示せず)。ここでは、第2軸受15には転がり軸受が使用され、例えば、第2軸受15の内径寸法が100mmであれば、第2軸受15と回転軸12との隙間は0.01mm~0.03mmとなっている。回転軸12の下方側は、揚水管6内に設けた第3軸受16と第4軸受17によって回転可能に支持されている。第3軸受16は揚水管6内の上方側に配置された水中軸受である。ここでは、第3軸受16には滑り軸受が使用され、例えば、第3軸受16の内径寸法が100mmであれば、第3軸受16と回転軸12との隙間は0.2mm~0.5mmとなっている。第4軸受17は揚水管6内の下方側に配置されている。第3軸受16及び第4軸受17は、揚水管6の内面から延在した支持部(図示せず)に取り付けられている。回転軸12の下端部には、ポンプケーシング5内の下方領域(詳細には、揚水管6の下端部に連結された吐出しボウル内)に配置される羽根車18が固定されている。羽根車18は、駆動機13から回転軸12に動力が伝達されて回転する。
【0025】
駆動機13から水平方向に延びる延在部19にはレーザ20が取り付けられている。レーザ20は、制御装置21からの出力信号に基づいて駆動し、測定板10に向かってレーザ光を照射する。延在部19へのレーザ20の取付状態は、その上端部がいずれの方向にも回転できるような回転自在な態様で行われている。すなわち、後述するようにポンプケーシング5が傾いて延在部19が水平面から位置ずれしたとしても、レーザ光による照射方向が常に鉛直下方に向かうように取り付けられている。
【0026】
制御装置21は、通信部22、記憶部23、制御部24、等を備える。
【0027】
通信部22は、図4に示すように、有線通信又は無線通信によって通信ネットワーク25(インターネット、専用線、公衆通信網、電力線通信等)を介して遠隔地に設けられた他の場所に設置された立軸ポンプ1の制御装置21やサーバ26と通信する。
【0028】
記憶部23は、揮発性の記憶媒体であるRAM(Random Access Memory)や不揮発性の記録媒体であるROM(Read Only Memory)、ハードディスク等で構成されている。記憶部23には、受光素子11からの入力データや、後述する処理を実行するためのプログラム等が格納される。
【0029】
制御部24は、本発明の判定部であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等で構成されている。制御部24は、通信部22を介して受信したサーバ26からの駆動命令により起動し、記憶部23に記憶したプログラムを読み出して実行する。そして、後述するようにして、レーザ20を駆動し、受光素子11から入力される電気信号に基づいてポンプケーシング5の傾きを演算し、基準値との比較を行うことにより傾きレベルを判定する。
【0030】
前記構成の立軸ポンプ1では、経年劣化によりベースプレート8に対してポンプケーシング5が傾くことがある。例えば、駆動手段の駆動に伴う振動等が原因で、ベースプレート8とベースプレート座9の接触面が摩耗し、その摩耗箇所によってはポンプケーシング5が傾くことがある。特に、吐出しエルボ7は屈曲して延びる部分の重量が大きいため、ベースプレート8とベースプレート座9の接触面のうち、この方向側での接触圧が大きくなり、摩耗量が増大する傾向にある。この場合、ポンプケーシング5は傾くものの、回転軸12は鉛直下方に向かっている。すなわち、回転軸12は、その上端側の被支持部(図示せず)を支持されて吊り下げられた状態にある。そして、回転軸12と第3軸受との間には若干の隙間が形成されている。このため、ポンプケーシング5の傾きに対して回転軸12が自重によって鉛直下方に向かう状態を維持する。したがって、回転軸12の軸心と揚水管6の中心線CLとの間には、第2軸受15によって支持された部分(厳密には被支持部であるが、第2軸受15と回転軸12との間には殆ど隙間がないため、実質的に同一として考えることができる。)を中心としてポンプケーシング5の傾きによる角度のずれが発生する。この角度のずれが大きくなると、立軸ポンプ1を駆動する際の振動が大きくなり、場合によっては、回転軸12の回転範囲が第3軸受16との隙間寸法を超え、第3軸受16を損傷させることもある。
【0031】
制御装置21では、ポンプケーシング5が傾くことが想定される場合、以下のようにして傾き検出処理を実行する。
【0032】
ポンプケーシング5が傾くことが想定される場合としては、例えば、経年劣化であれば立軸ポンプ設置後の一定期間後、地震であればその直後が該当する。前者の場合であれば、ポンプ機場への立軸ポンプ1の設置からの一定期間後に、サーバ26から制御装置21に駆動命令を送信できるようにすればよい。後者の場合であれば、地震情報や、立軸ポンプ側に振動計等を設けておき、その計測値が予め設定した値を超えることにより、制御装置21を自動駆動できるようにすればよい。
【0033】
傾き検出処理では、図5に示すように、レーザ20を駆動して測定板10に向かってレーザ光を照射する(ステップS1)。測定板10ではレーザ光がいずれの受光素子11で受光されたのかに基づいて次のようにしてポンプケーシング5の最大傾きΔmaxを算出する(ステップS2)。
【0034】
レーザ20のレーザ光が出力される位置から設置当初の測定板10の表面までの距離Liと、受光した受光素子11の初期中心位置からの距離xとからポンプケーシング5の最大傾きΔmaxは、Δmax=x/Liと近似できる。また、いずれの受光素子11でレーザ光を受光したのかで、揚水管6の中心線CLから見て最も傾いている方向が特定される。
【0035】
ここで、最大傾きΔmaxを基準値Svと比較する(ステップS3)。基準値Svはδ/Lに設定する。Lは第2軸受15(の中心)から第3軸受16(の中心)までの距離、δは第3軸受16と回転軸12との隙間である。そして、最大傾きΔが基準値Svに対して、次のどの範囲に属しているのかを評価する。
Δmax≦Sv
Sv<Δmax≦Sv×2
Sv×2<Δmax
【0036】
最大傾きΔが、Δmax≦Sv(=δ/L)を満足していれば、ポンプケーシング5の傾きが許容範囲であり、ポンプケーシング5の設置状態は良好であると判定する(ステップS4)。これは、図3に2点鎖線で図示された内側の円の内側の領域に位置する受光素子11で受光された場合が該当する。
【0037】
最大傾きΔmaxが、Sv<Δmax≦Sv×2を満足していれば、ポンプケーシング5の設置状態は要注意であると判定する(ステップS5)。これは、図3に2点鎖線で図示された内側と外側の円の間の領域に位置する受光素子11で受光された場合が該当する。
【0038】
最大傾きΔmaxが、Sv×2<Δmaxを満足していれば、設置状態は要調整であると判定する(ステップS6)。これは、図3に2点鎖線で図示された外側の円の外側の領域に位置する受光素子11で受光された場合が該当する。
【0039】
そして、ポンプケーシング5の傾き度合いが評価されれば、その結果をサーバ26側へと送信する(ステップS7)。これにより、遠隔地であっても、サーバ26側で立軸ポンプ1の設置状態が駆動し続けても問題がないか否かを判断することができる。
【0040】
良好であると判定された場合、サーバ26から制御装置21には特に何も信号は送信せず、立軸ポンプ1の駆動をそのまま続行する。
【0041】
要注意であると判定された場合、そのまま使用し続けることもできるが、回転軸12が第2軸受15に片当たりして振動を発生させたり、第3軸受16を損傷させたりすることもあり得る。このため、要注意である旨を報知し、この傾きがなくなるように調整作業を促すのが好ましい。この場合、揚水管6の中心線CLから見て最も傾いて低くなっている方向のボルト101による締付部分(ベースプレート8とベースプレート座9の間)に、図示しないシム(shim)を介在させて傾きを調整すればよい。そして、最大傾きΔmaxが、Δmax≦Svを満足すれば、吐出しエルボ7の傾きが修正され、回転軸12の回転状態は良好なものに修正できたことになる。
【0042】
要調整と判定された場合、ボルト101による締付部分にシムを介在させるだけでは調整が難しい状態にある。この場合、立軸ポンプ1を分解してメンテナンスすると共にベースプレート8へのベースプレート座9の設置状態を再調整する必要がある。したがって、立軸ポンプ1の損傷を防止するために、駆動信号を送信し、立軸ポンプ1の駆動を停止させる。
【0043】
以上のように、本実施形態に係る立軸ポンプ1では、第2軸受15から第3軸受16までの距離L、及び第3軸受16と回転軸12との隙間δに着目している。そして、基準値δ/Lに対して最大傾きΔmaxがどの程度の大きさとなっているのかで、ポンプケーシング5の設置状態が良好であるのか否かを判定できるようにしている。したがって、従来では基準の曖昧だったポンプケーシング5の傾き度合いを適切に判定して評価することができる。
【0044】
また、立軸ポンプ1にレーザ20と受光素子11を設けてポンプケーシング5の傾きを自動検出することができる。したがって、遠隔地であっても出向く必要がなく、サーバ26側でポンプケーシング5の傾きを評価することができる。
【0045】
また、レーザ20は主軸受である第2軸受15の近傍に位置し、受光素子11は副軸受である第3軸受16の近傍に位置している。このため、基準値Svを決定する基準となる距離Lに近い状態で、僅かな傾きであっても正確に検出することができる。
【0046】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0047】
前記実施形態では、レーザ20を上方側の駆動機13の延在部19に、測定板10を下方側のベースプレート座9にそれぞれ設けるようにしたが、これらの部材は上下逆の位置に設けるようにしてもよい。すなわち、レーザ20をベースプレート座9に、測定板10を延在部19に設けるようにしてもよい。この場合、測定板10は、その測定面が水平面内に位置して下方に向かうように配置する。また測定板10は、たとえポンプケーシング5が傾いたとしても測定面が水平面を維持するように吊り下げた状態で保持する。
【0048】
前記実施形態では、立軸ポンプ1に設けた制御装置21側でポンプケーシング5の傾きの評価を行うようにしたが、受光素子11でのレーザ光の検出結果をサーバ26に送信し、サーバ26側で評価を行うようにすることも可能である。
【0049】
前記実施形態では、吐出しエルボ7とベースプレート座9を別部材とし、これらを連結するように構成したが、一体化した構成としてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…立軸ポンプ
2…吸水槽
3…据付床
4…ポンプ挿通孔
5…ポンプケーシング
6…揚水管
7…吐出しエルボ
8…ベースプレート
9…ベースプレート座
10…測定板
11…受光素子(測定部)
12…回転軸
13…駆動機(駆動手段)
14…第1軸受
15…第2軸受(外軸受)
16…第3軸受(水中軸受)
17…第4軸受
18…羽根車
19…延在部
20…レーザ
21…制御装置
22…通信部
23…記憶部
24…制御部(判定部)
25…通信ネットワーク
26…サーバ
100…基礎ボルト
101…ボルト
図1
図2
図3
図4
図5