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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20231207BHJP
   G05D 1/00 20060101ALI20231207BHJP
   G05D 1/02 20200101ALN20231207BHJP
【FI】
A01B69/00 303A
A01B69/00 303M
A01B69/00 303V
G05D1/00 B
G05D1/02 N
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020077088
(22)【出願日】2020-04-24
(65)【公開番号】P2021170988
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】都田 洋三
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-110880(JP,A)
【文献】特開2016-023973(JP,A)
【文献】特開2020-018236(JP,A)
【文献】特開2015-112068(JP,A)
【文献】特開2018-147421(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0255470(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00 - 69/08
G05D 1/00
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体と、
前記走行機体の学習走行に基づいて所定方向の基準ラインを演算する基準ライン演算手段と、
前記基準ラインと平行で、かつ等間隔に並列する複数の所定方向仮想ラインを演算する所定方向仮想ライン演算手段と、
前記走行機体の位置を検出する機体位置検出手段と、
前記走行機体の現在位置から近い前記所定方向仮想ラインを目標ラインとし、該目標ラインに沿って走行するように前記走行機体を自動的に操舵する自動操舵制御手段と、を備える作業車両であって、
所定の人為的切換え操作に応じて、前記所定方向と直交する方向に沿う直交方向仮想ラインを演算し、前記自動操舵制御手段の目標ラインを前記直交方向仮想ラインに切換える目標ライン切換え手段をさらに備えることを特徴とする作業車両。
【請求項2】
走行機体と、
前記走行機体の学習走行に基づいて所定方向の基準ラインを演算する基準ライン演算手段と、
前記基準ラインと平行で、かつ等間隔に並列する複数の所定方向仮想ラインを演算する所定方向仮想ライン演算手段と、
前記走行機体の位置を検出する機体位置検出手段と、
前記走行機体の現在位置から近い前記所定方向仮想ラインを目標ラインとし、該目標ラインに沿って走行するように前記走行機体を自動的に操舵する自動操舵制御手段と、を備える作業車両であって、
前記走行機体が前記所定方向と直交する方向へ方向転換したことを判断する方向転換判断手段と、
前記方向転換の判断に応じて、前記所定方向と直交する方向の直交方向仮想ラインを演算し、前記自動操舵制御手段の目標ラインを前記直交方向仮想ラインに切換える目標ライン切換え手段と、をさらに備えることを特徴とする作業車両。
【請求項3】
前記走行機体の作業再開を判断する作業再開判断手段をさらに備え、
前記目標ライン切換え手段は、前記方向転換及び前記作業再開の判断に応じて、前記所定方向と直交する方向の直交方向仮想ラインを演算し、前記自動操舵制御手段の目標ラインを前記直交方向仮想ラインに切換えることを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記目標ライン切換え手段は、前記自動操舵制御の目標ラインを切換えるとき、前記所定方向仮想ラインと前記直交方向仮想ラインを交互に切換えることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用田植機などの作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
等間隔に並列する複数の仮想ラインに沿って走行するように走行機体を自動的に操舵する自動操舵制御手段を備える作業車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような作業車両では、運転者の操作負担を軽減できるだけでなく、作業精度が向上するという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-123804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の作業車両では、並列する1方向の仮想ラインにおいて自動操舵を行うに過ぎないため、2方向の作業走行が必要な場合には、手動操舵による走行比率が増加してしまい、自動操舵の利点を十分に活かせない虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、走行機体と、前記走行機体の学習走行に基づいて所定方向の基準ラインを演算する基準ライン演算手段と、前記基準ラインと平行で、かつ等間隔に並列する複数の所定方向仮想ラインを演算する所定方向仮想ライン演算手段と、前記走行機体の位置を検出する機体位置検出手段と、前記走行機体の現在位置から近い前記所定方向仮想ラインを目標ラインとし、該目標ラインに沿って走行するように前記走行機体を自動的に操舵する自動操舵制御手段と、を備える作業車両であって、所定の人為的切換え操作に応じて、前記所定方向と直交する方向に沿う直交方向仮想ラインを演算し、前記自動操舵制御手段の目標ラインを前記直交方向仮想ラインに切換える目標ライン切換え手段をさらに備えることを特徴とする。
請求項2の発明は、走行機体と、前記走行機体の学習走行に基づいて所定方向の基準ラインを演算する基準ライン演算手段と、前記基準ラインと平行で、かつ等間隔に並列する複数の所定方向仮想ラインを演算する所定方向仮想ライン演算手段と、前記走行機体の位置を検出する機体位置検出手段と、前記走行機体の現在位置から近い前記所定方向仮想ラインを目標ラインとし、該目標ラインに沿って走行するように前記走行機体を自動的に操舵する自動操舵制御手段と、を備える作業車両であって、前記走行機体が前記所定方向と直交する方向へ方向転換したことを判断する方向転換判断手段と、前記方向転換の判断に応じて、前記所定方向と直交する方向の直交方向仮想ラインを演算し、前記自動操舵制御手段の目標ラインを前記直交方向仮想ラインに切換える目標ライン切換え手段と、をさらに備えることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2に記載の作業車両であって、前記走行機体の作業再開を判断する作業再開判断手段をさらに備え、前記目標ライン切換え手段は、前記方向転換及び前記作業再開の判断に応じて、前記所定方向と直交する方向の直交方向仮想ラインを演算し、前記自動操舵制御手段の目標ラインを前記直交方向仮想ラインに切換えることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1~3のいずれか1項に記載の作業車両であって、前記目標ライン切換え手段は、前記自動操舵制御の目標ラインを切換えるとき、前記所定方向仮想ラインと前記直交方向仮想ラインを交互に切換えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、所定の人為的切換え操作に応じて、自動操舵制御手段の目標ラインを直交方向仮想ラインに切換える目標ライン切換え手段を備えるので、所定方向だけでなく、その直交方向の作業走行でも自動操舵を適用することができる。また、所定の人為的切換え操作に応じて、所定方向と直交する方向に沿う直交方向仮想ラインを演算するので、圃場の外形データが取得できない場合でも、自動操舵の適用範囲を広げることができる。
請求項2の発明によれば、走行機体の方向転換に応じて、自動操舵制御手段の目標ラインを直交方向仮想ラインに切換える目標ライン切換え手段を備えるので、所定方向だけでなく、その直交方向の作業走行でも自動操舵を適用することができる。また、方向転換の判断に応じて、自動操舵制御手段の目標ラインを直交方向仮想ラインに切換えるので、人為的な切換え操作を不要とし、作業者の操作負担をさらに低減させることができる。また、方向転換の判断に応じて、所定方向と直交する方向に沿う直交方向仮想ラインを演算するので、圃場の外形データが取得できない場合でも、自動操舵の適用範囲を広げることができる。
請求項3の発明によれば、方向転換及び作業再開の判断に応じて、所定方向と直交する方向の直交方向仮想ラインを演算し、自動操舵制御手段の目標ラインを直交方向仮想ラインに切換えるので、目標ラインの誤った切換えを抑制し、自動操舵の信頼性を高めることができる。
請求項4の発明によれば、自動操舵制御の目標ラインを切換えるとき、所定方向走行仮想ラインと直交方向仮想ラインを交互に切換えるので、圃場の4辺を周回状に走行する枕地走行などにおける利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る乗用田植機の側面図である。
図2】乗用田植機の平面図である。
図3】自動操舵ユニットを示す図であり、(A)は自動操舵ユニットの斜視図、(B)は自動操舵ユニットの操作パネルを示す正面図である。
図4】乗用田植機の制御構成を示すブロック図である。
図5】入場から作業開始までの走行経路を示す説明図である。
図6】作業開始から退場までの走行経路を示す説明図であり、植付位置合わせを省いた説明図である。
図7】作業開始から退場までの走行経路を示す説明図であり、植付位置合わせを含む説明図である。
図8】ティーチング走行制御の処理手順を示すフローチャートである。
図9】自動操舵制御の処理手順を示すフローチャートである。
図10】直交線作成/方向切換え制御(第1モード)の処理手順を示すフローチャートである。
図11】直交線作成/方向切換え制御(第2モード)の処理手順を示すフローチャートである。
図12】直交線作成/方向切換え制御(第3モード)の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(作業車両)
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1及び図2において、1は乗用田植機P(作業車両)の走行機体であって、該走行機体1の後部には、昇降リンク機構2を介して植付作業機3が昇降可能に連結されている。
【0009】
植付作業機3は、マット苗が載置される苗載台4と、苗載台4の下端部から苗を掻き取って圃場に植え付ける植付機構5とを備える。本実施形態の植付作業機3は、同時に8条分の苗を植え付け可能な8条植え仕様であり、8つの植付機構5が車幅方向に所定間隔を存して並設されている。
【0010】
走行機体1は、エンジン(図示せず)が搭載されるエンジン搭載部6と、エンジン動力を変速し、走行動力及び作業動力として出力するミッションケース7と、ミッションケース7が出力する走行動力で駆動され、かつ、ステアリングハンドル8の操作に応じて操舵される前輪9と、ミッションケース7が出力する走行動力で駆動される後輪10と、作業者が乗車する操縦部11とを備える。なお、走行機体1は、次行程に目標走行ラインを引く左右一対のマーカ装置12を備えるが、本実施形態では使用しないため、詳細な説明は省略する。
【0011】
操縦部11は、作業者が座る運転席13と、運転席13の前方に配置される前述のステアリングハンドル8と、走行動力及び作業動力を変速操作する主変速レバー14と、主変速レバー14の変速レンジを切り換える副変速レバー(図示せず)と、植付作業機3の昇降操作具及び植付クラッチ操作具を兼ねる作業機昇降レバー(図示せず)とを備える。
【0012】
図3の(A)に示すように、ステアリングハンドル8には、自動操舵ユニット15が連結されている。自動操舵ユニット15は、ステアリングハンドル8の手動操作に代えて、ステアリングハンドル8をモータ動力で回転操作するステアリングモータ16(図4参照)と、後述する自動操舵制御関連の操作具及びモニタランプが配置される操作パネル17とを備える。なお、ステアリングモータ16の駆動中でもステアリングハンドル8の手動操作は許容される。
【0013】
図3の(B)に示すように、操作パネル17には、電源スイッチ18と、自動操舵制御が自動操舵を行わない自動操舵オフ状態から自動操舵を行う自動操舵オン状態への切換操作や自動操舵オン状態から自動操舵オフ状態への切換操作が可能な自動操舵スイッチ19と、後述する始点A点を登録する始点A点登録スイッチ20と、後述する終点B点を登録する終点B点登録スイッチ21と、後述する直交線作成/方向切換えを行う直交線作成/方向切換えスイッチ22と、ランプ表示による報知を行う報知表示部23と、を備える。報知表示部23には、速度超過を報知する速度超過報知ランプ23aと、速度アップ可能状態を報知する速度アップOK報知ランプ23bと、目標ライン上を走行していることを報知する目標ライン上報知ランプ23cと、が含まれる。なお、各スイッチ19~24には、その切換状態を表示するランプ19a~22aが並設されている。
【0014】
また、図1及び図2に示すように、操縦部11には、正面視冂字状の測位用フレーム25が立設されている。測位用フレーム25は、上方に延在する左右一対の縦フレーム部25aと、左右の縦フレーム部25aの上端部同士を連結する横フレーム部25bとを有する。横フレーム部25bには、後述する測位システム26の構成要素である2つのGNSSアンテナ27、28などが取付けられ、左右いずれか一方の縦フレーム25aには、ナビゲーション表示などを行うタブレット29が取付けられている。
【0015】
(測位システム及び制御部)
図4に示すように、走行機体1は、自動操舵制御(自動操舵制御手段)を行うための制御構成として、測位システム26(機体位置検出手段)及び制御部30を備える。測位システム26としては、例えば、数cmの誤差で高精度な測位が可能なRTK-GNSS測位システムが採用される。RTK-GNSS測位システムは、固定設置された基地局と、移動する移動局とのそれぞれで、GPSなどのGNSS測位を行い、基地局から移動局に送信される補正信号でリアルタイムに測位データを補正することで、誤差数cmの高精度な測位を実現するものである。また、移動局に所定の間隔をあけて2つのGNSSアンテナを設置すれば、移動局の絶対位置だけでなく、2つの測位結果に基づいて、移動局の進行方向(方位)も高精度に検出することが可能になる。
【0016】
具体的に説明すると、本実施形態の測位システム26は、図4に示すように、RTK-GNSS測位を実行する制御ユニットであるGNSSユニット31と、測位用フレーム25の横フレーム部25bに車幅方向に所定の間隔をあけて取付けられる基準用GNSSアンテナ27及び方位用GNSSアンテナ28と、固定設置されるRTK基地局32から補正信号を受信する補正信号受信装置33とを備える。GNSSユニット31は、RTK-GNSS測位による測位データ(絶対位置データ及び進行方向データ)を、CANなどの有線通信手段を介して制御部30に送信するとともに、Bluetooth(登録商標)などの無線通信手段を介してタブレット29に送信する。
【0017】
制御部30は、自動操舵制御を実行する制御ユニットであり、制御部30の入力側には、前述した自動操舵スイッチ19、始点A点登録スイッチ20、終点B点登録スイッチ21及び直交線作成/方向切換えスイッチ22に加え、主変速レバー14の操作位置を検出する主変速レバーセンサ35と、副変速レバーの操作位置を検出する副変速レバーセンサ36と、前輪9の操舵角を検出する操舵角センサ37と、走行機体1の車速を検出する車速センサ38と、車軸の回転(走行距離)を検出する回転センサ39と、植付クラッチの入り/切りを検出する植付クラッチセンサ40と、が接続される一方、制御部30の出力側には、前述したステアリングモータ16及び報知表示部23に加え、報知音を出力する報知ブザー41が接続されている。
【0018】
(自動操舵制御)
自動操舵制御は、予め演算された所定方向の仮想ライン(LY1、LY2、…LYn)に沿って走行するように走行機体1を自動的に操舵する自動制御機能である。図5に示すように、仮想ライン(LY1、LY2、…LYn)は、最初の植付作業行程である基準ライン(LY0)の始点位置で始点A点登録スイッチ20を操作して始点A点の測位データを登録するとともに、基準ライン(LY0)の終点位置で終点B点登録スイッチ21を操作して終点B点の測位データを登録すると、後述するティーチング走行制御によって自動的に演算される。具体的には、基準ライン(LY0)と平行で、かつ等間隔(作業幅間隔)に並列する複数の仮想ライン(LY1、LY2、…LYn)が演算される。
【0019】
自動操舵制御では、演算した仮想ライン(LY1、LY2、…LYn)のうち最も走行機体1に近い仮想ラインを目標ラインとし、該目標ラインの座標データと、測位システム26による走行機体1の測位データに基づいて、目標ラインに対する走行機体1の横ズレ量D及びズレ方向θを演算するとともに、横ズレ量D及びズレ方向θに基づいて修正操舵角θsを演算し、該修正操舵角θsをステアリングモータ16に出力することにより、走行機体1を目標ラインに沿って走行させる。
【0020】
走行機体1が目標の終点位置に到達したら、作業者によるステアリングハンドル8の手動操作に基づいて、走行機体1を次の目標ラインの始点位置に向けて枕地旋回させる。走行機体1が次の目標ラインの始点位置に到達すると、手動又は自動で自動操舵制御が再開され、走行機体1は、次の目標ラインに沿って走行する。
【0021】
図6及び図7に示すように、通常の田植作業では、所定方向(Y方向)の仮想ライン(LY1、LY2、…LYn)に沿った植付けを行った後、その周囲に残った未植え領域である枕地の植付けを行う。枕地の植付作業は、所定方向(Y方向)の仮想ライン(LY1、LY2、…LYn)と直交する方向(X方向)の枕地植付走行と、所定方向(Y方向)の仮想ライン(LY1、LY2、…LYn)と平行する方向(Y方向)の枕地植付走行が交互に発生する。従来の自動操舵制御は、所定方向(Y方向)の仮想ライン(LY1、LY2、…LYn)と平行する方向(Y方向)の枕地植付走行においては適用可能であるが、所定方向(Y方向)の仮想ライン(LY1、LY2、…LYn)と直交する方向(X方向)の枕地植付走行においては適用が困難であった。
【0022】
(直交線作成/方向切換え制御:第1モード)
本実施形態の自動操舵制御は、所定の人為的切換え操作である直交線作成/方向切換えスイッチ22の操作に応じて、所定方向(Y方向)の仮想ライン(LY1、LY2、…LYn)と直交する方向(X方向)に沿い、かつ現在の機体位置を含む直交方向の仮想ライン(LX)を演算し、自動操舵制御の目標ラインを直交方向の仮想ライン(LX)に切換える直交線作成/方向切換え制御機能(目標ライン切換え手段)を備える。
【0023】
このような制御機能によれば、所定の人為的切換え操作に応じて、自動操舵制御の目標ラインを直交方向(X方向)の仮想ライン(LX)に切換えることができるので、所定方向(Y方向)の作業走行だけでなく、その直交方向(X方向)の作業走行でも自動操舵を適用することができる。また、所定の人為的切換え操作に応じて、所定方向(Y方向)と直交する方向(X方向)に沿う仮想ライン(LX)を演算するので、圃場の外形データが取得できない場合でも、自動操舵制御の適用範囲を広げることができる。
【0024】
また、直交線作成/方向切換え制御機能は、自動操舵制御の目標ラインを切換えるとき、所定方向の仮想ライン(LY1、LY2、…LYn)と直交方向の仮想ライン(LX)を交互に切換えることが好ましい。このようにすると、圃場の4辺を周回状に走行する枕地走行などにおける利便性を向上させることができる。
【0025】
(直交線作成/方向切換え制御:第2モード)
また、直交線作成/方向切換え制御は、走行機体1が所定方向(Y方向)と直交する方向(X方向)へ方向転換したことを判断し(方向転換判断手段)、この方向転換の判断に応じて、所定方向(Y方向)と直交する方向(X方向)の仮想ライン(LX)を演算し、自動操舵制御の目標ラインを直交方向の仮想ライン(LX)に切換えるようにしてもよい。
【0026】
このような制御機能によれば、走行機体1の方向転換の判断に応じて、自動操舵制御の目標ラインを直交方向の仮想ライン(LX)に切換えるので、人為的な切換え操作を不要とし、作業者の操作負担をさらに低減させることができる。
【0027】
また、直交線作成/方向切換え制御は、走行機体1の方向転換だけでなく、作業再開(植付クラッチ入り)の判断に応じて(作業再開判断手段)、所定方向(Y方向)と直交する方向(X方向)の仮想ライン(LX)を演算し、自動操舵制御の目標ラインを直交方向の仮想ライン(LX)に切換えるようにしてもよい。このようにすると、目標ラインの誤った切換えを抑制し、自動操舵制御の信頼性を高めることができる。
【0028】
(直交線作成/方向切換え制御:第3モード)
上述した第1モード及び第2モードの直交線作成/方向切換え制御は、圃場の外形データを事前に取得できない場合を想定しているが、第3モードの直交線作成/方向切換え制御は、圃場の外形データを事前に取得し、この外形データに基づいて、少なくとも2方向(Y方向及びX方向)の仮想ライン(LY1・・・、LX1・・・)を予め演算し、これを仮想ラインデータとして記憶することを想定している。なお、2方向は、必ずしも直交する方向である必要はない。また、仮想ラインデータは、3方向以上の仮想ラインを含んでもよい。
【0029】
具体的に説明すると、第3モードの直交線作成/方向切換え制御は、所定の人為的切換え操作である直交線作成/方向切換えスイッチ22の操作に応じて、現在の機体方向と近い方向の仮想ライン(予め演算したY方向の仮想ライン、又はX方向の仮想ライン)を選択し、自動操舵制御の目標ラインを選択した仮想ラインに切換えるものである。このような制御機能であっても、1方向だけでなく、少なくとも2方向の作業走行で自動操舵制御を適用することができる。なお、第3モードの直交線作成/方向切換え制御では、所定の人為的切換え操作に代えて、第2モードのような走行機体1の方向転換や作業再開の判断に応じて仮想ラインの切換えを行うようにしてもよい。
【0030】
(制御部の処理手順)
つぎに、上記のような制御機能を実現するティーチング走行制御、自動操舵制御及び直交線作成/方向切換え制御(第1モード~第3モード)の処理手順について、図8図12を参照して説明する。なお、直交線作成/方向切換え制御のモードは、所定の操作に基づいて任意に切換えられるものとする。また。フローチャートでは、ラインを線と表記する場合がある。
【0031】
制御部30は、基準ライン(LY0)の走行に際してティーチング走行制御を実行する。図8に示すように、ティーチング走行制御を実行する制御部30は、基準ライン(LY0)の始点位置における始点A点登録スイッチ20の操作に応じて始点A点の測位データを登録するとともに(S101)、基準ライン(LY0)の終点位置における終点B点登録スイッチ21の操作に応じて終点B点の測位データを登録する(S102)。つぎに、制御部30は、始点A点の測位データ及び終点B点の測位データに基づいて基準ライン(LY0)の座標を演算するとともに(S103)、基準ライン(LY0)と所定間隔を介して平行する所定方向(Y方向)の仮想ライン(LY1、LY2、…LYn)の座標を演算する(S104)。
【0032】
図9に示すように、自動操舵制御を実行する制御部30は、まず、現在位置から近い任意の仮想ライン(LY1、LY2、…LYn)を目標ラインとして設定した後(S201)、サブルーチンである直交線作成/方向切換え制御を実行する(S202)。制御部30は、サブルーチン実行後、自動操舵ON状態であるか否かを判断し(S203)、この判断結果がYESの場合は、走行機体1の目標ラインに対する横ずれ量Dが所定量Dt以下であるか否かを判断するとともに(S204)、走行機体1の目標ラインに対するずれ方向θが所定角θt以下であるか否かを判断する(S205)。
【0033】
制御部30は、ステップS204及びS205の判断結果がいずれもYESの場合、走行機体1の走行速度を上げられる旨の報知を行う(S206)。一方、制御部30は、ステップS204及びS205の少なくとも一方の判断結果がNOの場合、横ズレ量D及びズレ方向θに基づいて修正操舵角θsを演算し(S207)、該修正操舵角θsをステアリングモータ16に出力するとともに(S208)、現行速度Vが所定値Vt以上であるか否かを判断し(S209)、この判断結果がYESの場合は、速度超過の警告報知を行う(S210)。
【0034】
図10に示すように、直交線作成/方向切換え制御(第1モード)を実行する制御部30は、現在の目標ライン設定(目標ラインとする仮想ラインの方向)がY方向であるか否かを判断しつつ(S301)、直交線作成/方向切換えスイッチ22の操作を判断する(S302、S303)。制御部30は、ステップS301の判断結果に拘わらず、ステップS302、S303の判断結果がNOである場合は、そのまま上位ルーチンに復帰するが、ステップS301及びステップS302の判断結果がいずれもYESの場合は、現在位置を基準としたX方向の仮想ライン(LX)を作成するとともに(S304)、目標ライン設定をX方向仮想ラインに切換える(S305)。また、制御部30は、ステップS301の判断結果がNOで、かつステップS302の判断結果がYESの場合は、目標ライン設定をY方向仮想ラインに切換える(S306)。
【0035】
図11に示すように、直交線作成/方向切換え制御(第2モード)を実行する制御部30は、まず、走行機体1の方向転換を判断する(S401~S404)。具体的に説明すると、制御部30は、所定距離又は所定時間略Y方向を走行し(S401:YES)、かつその後に所定距離又は所定時間略X方向を走行したと判断した場合(S402:YES)、走行機体1がY方向からX方向に方向転換したと判断し、一方、所定距離又は所定時間略X方向を走行し(S403:YES)、かつその後に所定距離又は所定時間略Y方向を走行したと判断した場合(S404:YES)、走行機体1がX方向からY方向に方向転換したと判断する。
【0036】
制御部30は、走行機体1がY方向からX方向に方向転換したと判断し、かつ植付クラッチの入りにより作業再開を判断した場合(S405:YES)、所定距離又は所定時間における略X方向の走行データ(座標)に基づいてX方向の仮想ライン(LX)を作成するとともに(S406)、目標ライン設定をX方向仮想ラインに切換える(S407)。
【0037】
また、制御部30は、走行機体1がX方向からY方向に方向転換したと判断し、かつ植付クラッチの入りにより作業再開を判断した場合(S408:YES)、目標ライン設定をY方向仮想ラインに切換える(S409)。
【0038】
図12に示すように、直交線作成/方向切換え制御(第3モード)を実行する制御部30は、現在の目標ライン設定がY方向であるか否かを判断しつつ(S501)、直交線作成/方向切換えスイッチ22の操作を判断する(S502、S503)。制御部30は、ステップS501の判断結果に拘わらず、ステップS502、S503の判断結果がNOである場合は、そのまま上位ルーチンに復帰するが、ステップS501及びステップS502の判断結果がいずれもYESの場合は、現在の機体方向がX方向に最も近いか否かを確認した後(S504:YES)、目標ライン設定をX方向仮想ラインに切換える(S505)。また、制御部30は、ステップS501の判断結果がNOで、かつステップS502の判断結果がYESの場合は、現在の機体方向がY方向に最も近いか否かを確認した後(S506:YES)、目標ライン設定をY方向仮想ラインに切換える(S507)。
【0039】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、走行機体1の学習走行に基づいて所定方向の基準ライン(LY0)を演算し、基準ライン(LY0)と平行で、かつ等間隔に並列する複数の所定方向仮想ライン(LY1、LY2、…LYn)を演算し、走行機体1の現在位置から近い所定方向仮想ライン(LY1、LY2、…LYn)を目標ラインとし、該目標ラインに沿って走行するように走行機体1を自動的に操舵する自動操舵制御を備える乗用田植機Pであって、第1モードの直交線作成/方向切換え制御は、所定の人為的切換え操作(直交線作成/方向切換えスイッチ22の操作)に応じて、所定方向と直交する方向に沿う直交方向仮想ライン(LX)を演算し、自動操舵制御の目標ラインを直交方向仮想ライン(LX)に切換えるので、所定方向だけでなく、その直交方向の作業走行でも自動操舵制御を適用することができる。また、所定の人為的切換え操作に応じて、所定方向と直交する方向に沿う直交方向仮想ライン(LX)を演算するので、圃場の外形データが取得できない場合でも、自動操舵制御の適用範囲を広げることができる。
【0040】
また、第2モードの直交線作成/方向切換え制御は、走行機体1が所定方向と直交する方向へ方向転換したことを判断し、該判断に応じて、所定方向と直交する方向の直交方向仮想ライン(LX)を演算し、自動操舵制御の目標ラインを直交方向仮想ライン(LX)に切換えるので、所定方向だけでなく、その直交方向の作業走行でも自動操舵制御を適用することができる。また、方向転換の判断に応じて、自動操舵制御の目標ラインを直交方向仮想ライン(LX)に切換えるので、人為的な切換え操作を不要とし、作業者の操作負担をさらに低減させることができる。
【0041】
また、第2モードの直交線作成/方向切換え制御は、走行機体1の作業再開を判断し、方向転換及び作業再開の判断に応じて、所定方向と直交する方向の直交方向仮想ライン(LX)を演算し、自動操舵制御の目標ラインを直交方向仮想ライン(LX)に切換えるので、目標ラインの誤った切換えを抑制し、自動操舵制御の信頼性を高めることができる。
【0042】
また、直交線作成/方向切換え制御は、自動操舵制御の目標ラインを切換えるとき、所定方向仮想ライン(LY1、LY2、…LYn)と直交方向仮想ライン(LX)を交互に切換えるので、圃場の4辺を周回状に走行する枕地走行などにおける利便性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0043】
P 乗用田植機
1 走行機体
3 植付作業機
8 ステアリングハンドル
15 自動操舵ユニット
22 直交線作成/方向切換えスイッチ
26 測位システム
30 制御部
40 植付クラッチセンサ
図1
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