(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】樹脂モールドロータ、キャンドモータ、キャンドモータポンプ、ファンスクラバー、真空ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
H02K 1/28 20060101AFI20231207BHJP
F04D 13/06 20060101ALI20231207BHJP
F04D 25/06 20060101ALI20231207BHJP
F04D 29/70 20060101ALI20231207BHJP
H02K 5/128 20060101ALI20231207BHJP
B01D 47/06 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
H02K1/28 A
F04D13/06 H
F04D25/06
F04D29/70 N
H02K5/128
B01D47/06 B
(21)【出願番号】P 2020110723
(22)【出願日】2020-06-26
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100117640
【氏名又は名称】小野 達己
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】稲田 高典
(72)【発明者】
【氏名】真武 幸三
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-037118(JP,A)
【文献】特開2013-009528(JP,A)
【文献】特開2008-187755(JP,A)
【文献】特開2010-213413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/28
F04D 13/06
F04D 25/06
F04D 29/70
H02K 1/27
H02K 5/128
B01D 47/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂モールドロータであって、
磁石を保持するロータと、
前記ロータを装着し外部へ動力を伝達する主軸と、
前記ロータ、及び前記ロータの軸方向両側における前記主軸の一部を一体に覆う樹脂モールドと、
を備え、
前記樹脂モールドと前記主軸との間にOリングが配置され、該Oリングによって前記樹脂モールドと前記主軸との間が密封されて
おり、
前記樹脂モールドで覆われた前記主軸の外周面の部分に溝部が形成され、前記Oリングは、前記溝部内に配置された状態で、前記樹脂モールドと前記主軸との間を密封しており、前記溝部の一部が、軸方向において前記ロータと重なる、
樹脂モールドロータ。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂モールドロータにおいて、
前記Oリングは、前記ロータの端面に密着している、樹脂モールドロータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の樹脂モールドロータにおいて、
複数の前記溝部が設けられ、全ての溝部に前記Oリングが配置されている、樹脂モールドロータ。
【請求項4】
請求項1又は2の何れかに記載の樹脂モールドロータにおいて、
複数の前記溝部が設けられ、一部の溝部に前記Oリングが配置されていない、樹脂モールドロータ。
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載の樹脂モールドロータにおいて、
前記ロータの軸方向両側に前記Oリングが設けられている、樹脂モールドロータ。
【請求項6】
キャンドモータであって、
請求項1から5の何れかに記載の樹脂モールドロータと、
前記樹脂モールドロータの主軸を回転支持する軸受と、
前記樹脂モールドロータを取囲み、前記樹脂モールドロータの前記ロータに回転磁界を作用させるキャンド構造のステータと、
を備えるキャンドモータ。
【請求項7】
キャンドモータポンプであって、
請求項6に記載のキャンドモータと、
前記主軸に固定された羽根車と、
前記羽根車を取り囲むポンプケーシングと、
を備えるキャンドモータポンプ。
【請求項8】
ファンスクラバーであって、
請求項6に記載のキャンドモータと、
前記キャンドモータの前記主軸に接続されたファンと、
気体吸入口および気体吐出口を有し、前記ファンを収容するケーシングと、
前記ケーシング内に液体を噴出するノズルと、
を備えるファンスクラバー。
【請求項9】
真空ポンプ装置であって、
請求項8に記載のファンスクラバーと、
真空チャンバから気体を真空引きし、前記ファンスクラバーの前記気体吸入口に気体を吐出する真空ポンプと、
を備える真空ポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータコア及び磁石と主軸とを樹脂で一体モールドした構成の樹脂モールドロータ、樹脂モールドロータを備えるキャンドモータ、キャンドモータを備えるキャンドモータポンプ、キャンドモータを備えるファンスクラバー、及びファンスクラバーを備える真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
キャンドモータは、ポンプ、ファンスクラバーの動力源として使用され、ロータとステータとの間にキャンを配置してロータ室とステータ室とを隔離する構成を有し、ポンプ取扱液のステータへの漏洩を効果的に抑制することが可能で、安全で且つ長寿命であるという特徴を有している。一方で、モータロータはポンプ取扱い液に曝されるので、ポンプ取扱い液に腐食性がある場合、モータロータを構成する主軸、ロータコア、永久磁石等は耐食性を考慮しなくてはならない。モータロータの主軸等には耐食性の材料を使用することができるが、ロータコアは一般に電磁鋼板、また永久磁石は希土類元素等で構成され、耐食性が低いため、ロータに対する防食対策が必要である。
【0003】
一例では、主軸と同等の材料例えばステンレス材からなる円筒状のロータキャンと、ロータキャンの両軸端側のロータキャン側板によって、永久磁石及びロータコアを密封する構成が採用される(特許文献1)。他の例では、永久磁石を備えたロータと主軸とを樹脂モールドで一体化して密封する樹脂モールドロータの構成が採用される(特許文献2)。特許文献2のキャンドモータでは、ロータの両端側にて主軸の外周に1又は複数の溝を形成し、ロータ及び主軸を覆う溶融樹脂の冷却工程において、樹脂の線膨張係数とロータの構成材料の線膨張係数の差異による樹脂の収縮力を利用して樹脂を主軸の溝の側面に密着させることにより、低コストで密閉性(気密性、液密性)を向上させている。
【0004】
更に他の例では、複数の鋼板が互いに接着剤で接着されたロータコアと、ロータコア内に配置された永久磁石と、ロータコアの軸方向両端部に接着剤で固定された側板とを備えるロータにおいて、接着剤を樹脂含侵剤により封孔処理することにより、水分及び/又は腐食性ガスが鋼板内に侵入することを抑制する構成が採用される(特許文献3)。特許文献3の構成では、更に、永久磁石にノンピンホールのコーティングを施し、永久磁石をロータコアより短くして、永久磁石と各側板との間に接着剤を充填することにより、永久磁石の耐食性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-312852号公報
【文献】特許第5602615号明細書
【文献】特許第6298237号明細書
【文献】特許第6461733号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の構成では、モータ回転磁界を起因とした渦電流による熱損失(キャン損)が発生し、また、ロータキャンとロータキャン側板との間、並びにロータキャンと主軸との間を溶接する金属溶接構造のためコストが高い。特許文献2の構成では、ロータ及び主軸を覆う樹脂が熱変形などに十分追従できず密閉性を維持できない可能性があり、密閉構
造に改善の余地がある。また、特許文献3の構成では、組立て性が良いとはいえず、ノンピンホールコーティングの施工コストが高いという課題がある。このようなキャンドモータにおけるロータの密閉性の改善は、例えば、特許文献4に記載されたファンスクラバーの駆動源として使用されるキャンドモータにおいても要望される。
【0007】
本発明の目的の1つは、上述した問題の少なくとも一部を解決することにある。また、本発明の目的の1つは、モータロータの密閉性を更に向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によれば、 樹脂モールドロータであって、 磁石を保持するロータと、 前記ロータを装着し外部へ動力を伝達する主軸と、 前記ロータ、及び前記ロータの軸方向両側における前記主軸の一部を一体に覆う樹脂モールドと、を備え、 前記樹脂モールドと前記主軸との間にOリングが配置され、該Oリングによって前記樹脂モールドと前記主軸との間が密封されている、樹脂モールドロータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る樹脂モールドロータを備えるキャンドモータポンプの概要構造を示す断面図である。
【
図2】樹脂モールドロータの概要構造を示す図である。
【
図3】樹脂モールドロータの一部概要構造例を示す図である。
【
図4】第2実施形態に係る樹脂モールドロータの一部概要構造例を示す図である。
【
図5】第2実施形態の変形例に係る樹脂モールドロータの一部概要構造例を示す図である。
【
図6】他の実施形態に係る樹脂モールドロータの一部概要構造例を示す図である。
【
図7】他の実施形態に係る樹脂モールドロータの一部概要構造例を示す図である。
【
図8】主軸外周面の溝部の断面形状の例を示す図である。
【
図10】ファンスクラバーの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。添付図面において、同一または類似の要素には同一または類似の参照符号が付され、各実施形態の説明において同一または類似の要素に関する重複する説明は省略することがある。また、各実施形態で示される特徴は、互いに矛盾しない限り他の実施形態にも適用可能である。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る樹脂モールドロータ10Aを備えるキャンドモータポンプ110の概要構造を示す断面図である。図示するように、キャンドモータポンプ110は、モータフレーム13の内周面に焼嵌め等で固定したステータ14、及び該ステータ14内に回転自在に配置した樹脂モールドロータ10Aを備えるキャンドモータ30と、キャンドモータ30の主軸7の先端部分に装着固定された羽根車1と、を備えた構成である。ステータ14は、中央部に円形状の穴が形成された磁性板材を積層し内部に内周が略円筒状の貫通空間が形成されたステータコア15と、該ステータコア15に巻回した導体(巻線)16とを有する構成である。ステータコア15の内周面には、ステンレス鋼等からなる略円筒状のステータキャン18が固着されている。ステータキャン18は、ロータ10(樹脂モールドロータ10A)とステータ14とを離隔する。つまり、ステータキャン18は、モータフレーム13の内部を、ロータ10(樹脂モールドロータ10A)が配置されるロータ室と、ステータ14が配置されるステータ室とに区画する。樹脂モールドロータ10Aは、ロータ10と、ロータ10が装着される主軸7と、主軸7の一部及びロータ10を一体に覆う樹脂モールド11と、を備える。ロータ10は、ロータコア12と、ロ
ータコア12の内部に埋設された永久磁石9とを有する。樹脂モールド11は、ロータコア12の外周面及び両軸端側の端面と、主軸7のロータコア12の装着範囲外の両軸端側外周に溝を形成した部分である負荷側及び反負荷側の溝部7-1までを覆う。ロータコア12の外周に形成された樹脂モールド11の表面とステータキャン18の内周の間は均一の空隙δとなっている。
【0012】
なお、本実施形態例では、ロータ10の内部に永久磁石9を有するIPM(Internal Permanent Magnet)をモータに適用した例を示しているが、ロータ10の表面に永久磁石を有するSPM(Surface Permanent Magnet)を適用したモータやロータに電磁石を有するモータにも適用できることは勿論である。
【0013】
ステータキャン18の反負荷側(
図1の左側)の端部18-2は、モータフレーム13に当接させ、両者の当接部を溶接することによって固着している。また、ステータキャン18の負荷側(
図1の右側)の端部18-1には、円板状の板材の中心に貫通穴を設けた負荷側のステータキャン側板19が、該ステータキャン側板19の貫通穴の内部にステータキャン18の端部18-1を嵌入し、両者の当接部を端面側から溶接することによって固着している。
【0014】
モータフレーム13は、反負荷側端部を反負荷側の軸受ブラケット4で閉塞し、負荷側端部を開放する有底円筒状に形成されており、軸受ブラケット4には、主軸7の軸方向に沿って内方に円筒状に突出した円筒状突出部4aを設け、該円筒状突出部4aに主軸7を回転自在に支持する反負荷側の軸受6を設けている。円筒状突出部4aの一部には、ポンプ取扱液を流通させるための切り欠きが設けられている。モータフレーム13と軸受ブラケット4との間を密閉する、例えばゴム製のOリング等からなる密閉部材20-3を介装しポンプ取扱液が外部へ漏れることを防ぐと共に、軸受ブラケット4はボルト22を締め付けることで、モータフレーム13へ固定する構成となっている。更に、軸受6とロータ10との間に反負荷側のスラストディスク8-2が主軸7に固定されて配置されている。
【0015】
一方、モータフレーム13の負荷側端部には、負荷側の軸受ブラケット3が配置され、この軸受ブラケット3に、主軸7の出力側(
図1の右側)に配置されて該主軸7を回転自在に支持する負荷側の軸受5が固定されている。更に、軸受5とロータ10との間に負荷側のスラストディスク8-1が主軸7に固定されて配置されている。
【0016】
モータフレーム13と軸受ブラケット3との間には空間が形成され、この空間内にステーキャン側板19の外周部を挟み込み、ポンプケーシング2を固定するボルト21を締め付けることで、ステータキャン側板19は、その外周部がモータフレーム13と軸受ブラケット3とで挟持されて固定されるように構成されている。更に、軸受ブラケット3は、その外周部がモータフレーム13とポンプケーシング2とで挟持されて固定されるように構成されている。
【0017】
軸受ブラケット3とステータキャン側板19との間には、例えばゴム製のOリング等からなる密閉部材20-2が介装され、軸受ブラケット3とステータキャン側板19との間が密閉される。軸受ブラケット3とポンプケーシング2との間には、例えばゴム製のOリング等からなる密閉部材20-1が介装され、軸受ブラケット3とポンプケーシング2の間が密閉される。ステータキャン側板19と軸受ブラケット3の間及び軸受ブラケット3とポンプケーシング2の間にそれぞれ間密閉部材20-2、20-1を介装させることにより、ポンプ取扱液が外部に漏洩することを防ぐことができる。
【0018】
図2は、樹脂モールド11を形成した樹脂モールドロータ10Aの全体構成を示す図で
あり、
図2(a)は正面断面図、
図2(b)は左側面図である。また、
図3は、樹脂モールドロータ10Aの一部拡大断面図である。樹脂モールドロータ10Aは、内部に永久磁石9を埋設したロータコア12を有するロータ10の外周面と、主軸7のロータ10の装着範囲外の両軸端側外周に設けた溝部7-1までを樹脂モールド11で覆った構成となっている。
【0019】
樹脂モールド11には、耐食性の高い材料(PPS材、フッ素樹脂PFA等)を用いる。ロータキャンに相当する樹脂モールド11の樹脂膜厚さは、おおよそ0.5mm~1.0mm程度とすることで、機械的強度ならびに耐食性・耐液性を向上させることは可能である。なお、必要以上に材料を使用すると、経済性の低下や材料の「ひけ」等による形状変化が発生し易くなる等の別の視点からの問題が生じることが予想されるので、このような問題が生じないようにする。
【0020】
また、樹脂モールド11の両軸端側部11-1、11-2の厚みは軸方向の位置決め精度等を考慮して約2~3mmの厚みとするのが適している。これは、ロータキャンに相当する樹脂モールド11の樹脂膜厚さの機械的強度ならびに耐食性、耐液性に関する仕様寸法に加え、主軸7にロータコア12を装着する時のロータコア12の軸方向位置決め精度寸法公差等を考慮して決定する。
【0021】
各溝部7-1は、それぞれ、ロータ10の負荷側端部及び反負荷側端部(端面)に接する位置(ロータ10と溝部7-1がオーバラップする位置)において、主軸7の外周面を円周方向に一周するように設けられた環状の溝である。溝部7-1の断面形状は、Oリング26を保持可能な寸法及び形状を有し、例えば、
図1-3に示す直角三角形等の三角形形状、矩形形状(
図8(a))、クサビ形状(
図8(b))、傾斜溝形状(
図8(c))等の任意の形状とすることができる。
【0022】
本実施形態では、各溝部7-1内にOリング26が装着される。Oリング26は、ゴムで構成され、ロータ10、主軸7及び樹脂モールド11に良好に密着可能であり、これらの部材の熱変形に対して良好に追従して変形可能な弾性を有する。Oリング26は、PPS等の高温でモールドする樹脂モールド工程時の耐熱性を考慮し、耐熱性のあるフッ素ゴム(例えば、FKM、FFKM)などのゴムで構成すること好ましい。Oリング26は、環状の各溝部7-1内に装着された後、樹脂モールド11によってロータ10及び主軸7と一体成形され、ロータ10、主軸7及び樹脂モールド11に対して密着して固定されている。Oリング26は、各溝部7-1内に装着されているため、樹脂モールドの際に樹脂の圧力によってOリング26の位置が変位することが抑制/防止される。
【0023】
本実施形態では、Oリング26は、各溝部7-1内に装着され、ロータ10の両軸端側端面、主軸7及び樹脂モールド11に密着する。この構成により、樹脂モールド11と主軸7との密着度を向上させ、樹脂モールド11と主軸7及びロータ10との間の密閉性を向上させることができる。この結果、ポンプ取扱液及び/又は腐食性のガスがロータ10に接触することをより確実に抑制ないし防止することができる。また、本実施形態では、溝部及びOリング26がロータ10の両軸端側端面に接する位置に配置されるので、樹脂モールド11の軸方向の距離を低減でき、樹脂モールド11と主軸7との間の密着度が向上する。また、溝部7-1及びOリング26がロータ10の両軸端側端面に接する位置に配置されるので、樹脂モールド11の軸方向の長さを抑制し、モールド剤(樹脂等)の使用量を節約することができる。
【0024】
樹脂モールドロータ10Aは、例えば、以下の製造工程により製造することができる。(a)溝部7-1が形成された主軸7にロータコア12を嵌入する。
(b)主軸7の溝7-1にOリング26を装着する。
(c)ロータコア12を、主軸7を案内にして射出成形型内に位置決めする。
(d)永久磁石9をロータコア12に装着する(なお、主軸7への嵌入前にロータコア12に永久磁石9を装着してもよい)。
(e)ロータコア12、永久磁石9及びOリング26が露出しないように樹脂材をモールド(射出成形)する。これにより、ロータ10、主軸7及び樹脂モールド11を有する樹脂モールドロータ10Aを得る。
(f)出来上がった樹脂モールドロータ10Aを着磁ヨークに挿入し、着磁する。
【0025】
溶融樹脂材を射出して形成した樹脂モールド11は、金属材料からなるロータコア102や主軸7よりも線膨張係数が大きく、射出成形後自然冷却去される過程において、ロータコア12を基準とし、ロータコア12の外径側へ収縮する。そのため、樹脂モールド11の主軸7への密着部分もロータ側及び外径側に収縮する力が作用し、樹脂モールド11と主軸7との間の密閉性が低下する虞がある。本実施形態に係る樹脂モールドロータでは、型内に射出成形された樹脂モールド11は、金属材料からなるロータコア12や主軸7よりも線膨張係数が大きく、射出後自然冷却される過程において、樹脂モールド11が収縮したとしても、樹脂モールド11と主軸7との間の隙間が生じないようにOリング26が樹脂モールド11の収縮に追従して変形することで、樹脂モールド11と主軸7との間の密閉性を維持することができる。また、Oリング26が主軸7の外周面から突出する部分となるので、樹脂モールド11の収縮を利用して樹脂モールド11がOリング26に対して密着する効果もある。
【0026】
本実施形態では、キャンドモータにおいて、ロータキャン材にステンレス材等の金属材料を用いず、耐食性のよい樹脂材にて樹脂モールドすることにより、本来の目的であるロータコアや磁石材を防食することができる。また、安価であるばかりか、金属材のキャンに運転中に発生する渦電流の発生を防止することができ、効率のよいキャンドモータを提供できる。また、本実施形態の樹脂モールドロータ10Aによれば、ロータ10の密閉構造を樹脂モールド11及びOリング26によって実現することができるので、製造工程が簡易であり、組み立て性が高いという効果がある。
【0027】
次に、
図1に示すキャンドモータポンプの動作を説明する。出口線17に三相交流電源を接続し、ステータ14の導体(巻線)16に三相交流を通電することにより、発生する回転磁界がロータ10に作用し、ロータ10の主軸7に固定された羽根車1が回転する。羽根車1の回転によりポンプケーシング2の吸込口2aから吸い込まれたポンプ取扱液はポンプケーシング2内に流入し、吐出ボリュート24を通って吐出口(図示せず)から吐き出されると共に、一部は負荷側の軸受ブラケット3に設けた穴3aを通ってステータキャン18で囲まれたロータ室内に流入する。ロータ室内に流入したポンプ取扱液は樹脂モールド11とステータキャン18の間の隙間δを通って、反負荷側の軸受ブラケット4の有底円筒状の円筒状突出部4a内に流入し、ここから主軸7の中心部に設けられた貫通穴7aを通って、羽根車1内に流れ込み、吸い込んだポンプ取扱液に合流する。
【0028】
上記のようにポンプ取扱液はステータキャン18で囲まれたロータ室内に流入し、樹脂モールドロータ10Aとステータキャン18の間の隙間δを通って流れるが、ロータ10及び主軸7を一体に樹脂モールド11で密封すると共に、主軸7と樹脂モールド11の間の界面近傍に溝部7-1を設けてOリング26を配置して、Oリング26により樹脂モールド11と主軸7の間の界面の密閉性を高めるように構成している。この結果、樹脂モールド11と主軸7の間の界面が良好な密閉状態に保たれ、ロータ10にポンプ取扱液が接触することを抑制ないし防止することができる。これにより、樹脂モールドロータ10Aの長寿命化が図れる。
【0029】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態に係る樹脂モールドロータの一部概要構造例を示す図である。本実施形態では、樹脂モールドロータ10Aの構成が上記実施形態と異なるが、他の構成は上記実施形態と同様である。以下、上記実施形態と異なる点を説明し、上記実施形態と同様の構成についての説明を省略する。
【0030】
本実施形態では、ロータ10及び主軸7に樹脂モールド11を形成後に、Oリング26を装着する。本実施形態に係る樹脂モールドロータ10Aでは、ロータコア12の両軸端側、つまり負荷側及び反負荷側において、樹脂モールド11に環状突起部11Aが設けられ、環状突起部11Aと主軸7の外周面との間にOリング溝11Bが形成される。環状突起部11Aは、樹脂モールド11の両軸端側部11-1、11-2からロータ10を基準にして軸方向外側に向かって突出し、主軸7の周りを円周方向に一周するように設けられる。樹脂モールド11の環状突起部11Aは、突起部に対応する形状の部分を有する型を用いて、型内に樹脂を射出する射出成形により形成することができる。例えば、主軸7に取り付けられたロータ10を準備し、ロータ10及び主軸7を覆い且つ環状突起部11Aを有する樹脂モールド11を射出成形にて形成した後に、環状突起部11Aと主軸7との間にOリング26を嵌め込み、Oリング26を環状突起部11Aと主軸7との間に挟んで装着固定する。
【0031】
本実施形態では、Oリング26が、樹脂モールド11と主軸7との間の界面を密閉し、ポンプ取扱液が樹脂モールド11と主軸7との間の界面に接触することを抑制することができ、樹脂モールド11と主軸7との間の界面からポンプ取扱液がロータコア12に接触することを抑制することができる。また、樹脂モールド11の形成後にOリング26を装着するため、樹脂モールドの射出成形時にOリングが位置ずれすることがなく、射出成形時の熱による影響を受けることもない。
【0032】
上記では、環状突起部11Aが全周に亘って連続して設けられる例を説明したが、環状突起部11Aは、樹脂モールド11と主軸7の界面を密閉するようにOリング26を保持できる構成であれば、全周に設けられる必要はなく、円周方向に離散的に設けられてもよい。
【0033】
図5は、第2実施形態の変形例に係る樹脂モールドロータの一部概要構造例を示す図である。同図に示すように、環状突起部11Aに対応する主軸7の外周面に溝部7-1(
図1から
図3参照)を設けて、Oリング溝11B内において、Oリング26を溝部7-1と環状突起部11Aとの間でOリング26が挟まれて固定されるようにしてもよい。この場合、Oリング26が主軸7と環状突起部11Aとの間を十分に密閉するように、環状突起部11Aと主軸7の外周面(又は溝部7-1の内面)との間の距離、溝部7-1の深さ及び/又は形状を設定する。このようにすれば、主軸7の外周面の溝部7-1によりモータ運転時におけるOリング26の軸方向の変位を更に確実に抑制することができる。
【0034】
(他の実施形態)
(1)上記では、ロータ10の軸方向の各側に1つのOリングを設けたが、ロータ10の少なくとも一方の側に2つ以上のOリングを設けてもよい。
図6は、他の実施形態に係る樹脂モールドロータ10Aの一部概要構造例を示す図である。同図では、ロータ10の両軸端側の少なくとも一方の側において、主軸7の外周面に複数の溝部7-1が設けられ、各溝部7-1にOリング26が装着されている。この構成によれば、複数のOリング26により、樹脂モールド11と主軸7との間の界面を密閉することができ、密閉度をより向上させることができる。
【0035】
(2)複数の溝部のうち少なくとも1つの溝部にはOリングを配置せず、樹脂モールド11が入り込こむようにしてもよい(
図7)。
図7は、他の実施形態に係る樹脂モールド
ロータ10Aの一部概要構造例を示す図である。同図において、Oリング26が装着される溝部を溝部7-1と表記し、Oリング26が装着されない溝部を溝部7-2と表記する。この例では、主軸7の外周面に溝部7-1、7-2が設けられており、溝部7-1にOリング26が装着され、溝部7-2にOリング26が装着されない。このようにすれば、樹脂モールド11の線膨張係数とロータ10を構成する材料の線膨張係数との差異を利用して樹脂モールド11を溝部7-2の側面に密着させることができる。この構成によれば、溝部7-1のOリング26による密閉と、溝部7-2への樹脂の密着による密閉とを組みあわせて、主軸7と樹脂モールド11との間の密閉性を更に向上させることができる。Oリング26を配置しない溝部7-2の断面形状は、樹脂モールド11の密着度が向上する形状が望ましく、
図1から
図3、
図8に例示する形状を含む任意の形状とすることができる。Oリング26を装着する溝部7-1、及びOリング26を装着しない溝部7-2は、それぞれ、1又は複数設けることができる。Oリング26を装着せず樹脂モールド11を入り込ませる溝部7-2は、Oリング26を装着する溝部7-1に対して、ロータ10に近い側及び/又はロータ10から遠い側に設けることができる。
【0036】
(3)少なくとも1つのOリングと他のOリングとに、上述した異なるOリング配置構造を採用してもよい。ロータ10の両軸端側に同一のOリング配置構造を採用してもよいし、ロータ10の各軸側で異なるOリング配置構造を採用してもよい。また、ロータ10の少なくとも一方の側の2以上のOリングの全てに、同一のOリング配置構造を採用してもよいし、ロータ10の軸方向の少なくとも一方の側の2以上のOリングのうち少なくとも一部に、異なるOリング配置構造を採用してもよい。また、これらのOリング配置構造と、Oリングを配置しない溝部を組み合わせてもよい。
【0037】
(4)上記では、液体を取り扱うキャンドモータポンプを例に挙げて説明したが、上述した樹脂モールドロータ10Aを備えるキャンドモータは、液体及び/又は気体を取り扱うキャンドモータポンプに適用可能である。
【0038】
(第3実施形態)
図9は、本実施形態の真空ポンプ装置の構成概略を示す図である。
図10は、ファンスクラバーの構成概略を示す図である。本実施形態の真空ポンプ装置は、例えば半導体、液晶、太陽光パネル、又は、LED等の製造設備の一つとして利用することができる。本実施形態では、上述した樹脂モールドロータ10A及び/又はキャンドモータ30を真空ポンプ装置に適用した例を説明する。
【0039】
本実施形態の真空ポンプ装置100は、図示しない処理チャンバに接続されて処理チャンバからガスを吸引する(真空引きする)真空ポンプ120と、真空ポンプ120の後段に接続されるファンスクラバー200及び除害装置140を備える。真空ポンプ120は、一例として、ドライ真空ポンプを用いることができる。真空ポンプ120は、例えば、上述した樹脂モールドロータ10Aを有するキャンドモータ30を備えるキャンドモータポンプとすることができる。
【0040】
ファンスクラバー200は、真空ポンプ120からの気体に含まれる固形化物(例えば反応副生成物)などの異物を除去するために設けられている。また、除害装置140は、真空ポンプ120からの気体を無害化処理するために設けられている。除害装置140としては、燃焼式、乾式、湿式、ヒーター式、フッ素固定式、触媒式、プラズマ式、希釈ユニット式(ブロア、N2添加、Air添加)等のうちの1つ又は複数を用いることができる。
【0041】
本実施形態の真空ポンプ装置100では、真空ポンプ120によって真空引きされた気体がまずファンスクラバー200に案内され、ファンスクラバー200を通過した気体が
除害装置140に案内される。こうした構成により、固形化物などの異物が除害装置140に導入されるのを抑制することができ、除害装置140の詰まり又は処理効率の低下が生じるのを抑制することができる。また、
図9においてハッチングを付した部分のように、ファンスクラバー200にて異物を捕集するために利用された液体(廃液)を除害装置140に導入し、除外装置14において廃液を再利用してもよい。
【0042】
(ファンスクラバー)
ファンスクラバー200は、
図10に示すように、ケーシング220と、ファン240と、液体吐出部260と、キャンドモータ30と、を備えている。キャンドモータ30の主軸7及びロータ10は、樹脂モールド11(
図10では図示略)に覆われ、上述した樹脂モールドロータ10Aと同様の構成を有する。なお、ここで説明するファンスクラバー200の構成は一例であり、任意の構成のファンスクラバーのモータに対して、上述した樹脂モールドロータ及び/又はキャンドモータを採用することができる。
【0043】
ここで例示するファンスクラバー200では、主軸7がファン240に連結されており、ファン240に回転駆動力を提供する。キャンドモータ30は、主軸7と、ロータ10と、ステータ14と、モータフレーム13と、ステータキャン18とを備えている。なお、ロータ10は、上記実施形態と同様に主軸7の一部と共に樹脂モールド(
図1の樹脂モールド11)によって覆われており、ロータ10、主軸7及び樹脂モールド11が樹脂モールドロータ10Aを構成している。このキャンドモータ30では、ステータ14の巻線への通電による電磁誘導によってロータ10及び主軸7が回転する。本実施形態のファンスクラバー200は、真空ポンプ120から吐出される気体を気体吸入口220aから吸入する。そして、ファンスクラバー200は、吸入した気体に含まれる固形化物等の異物を取り除いて、処理した気体を気体吐出口220bから除害装置140へ送る。
【0044】
ケーシング220には、真空ポンプ120からの気体をケーシング220内のファン240へ案内する気体吸入口220a、吸入した気体を吐出する気体吐出口220b、及び、洗浄液を廃液として吐出する液体排出口220cが形成されている。ケーシング220の内部には、ファン240が配置されている。ファン240は、キャンドモータ30の主軸7に取り付けられ、キャンドモータ30からの動力によって回転してケーシング220内を撹拌する。ファン240は、一例では、対向する2枚の円盤状の側板と、これらの側板の間に固着された複数の羽根と、を有する構成とすることができる。
【0045】
また、ケーシング220の内部には、液体吐出部260が設けられている。液体吐出部260は、ケーシング220内に洗浄液を噴出する。洗浄液としては、一例として、水を使用することができる。また、洗浄液として、水酸化系(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)等の液体を含むアルカリ性の液体を使用することによって、異物の捕集効率を向上させることができると共に、ケーシング220及びファン240などの腐食を抑制することができる。なお、洗浄液は、捕集する異物に基づいて決められればよい。
【0046】
液体吐出部260は、複数の噴出口が形成されたノズル270と、ノズル270と連通する液体供給管280と、を有する。
図10中、太線矢印はノズル270から吐出される洗浄液の経路を示している。液体吐出部260は、図示しない圧送機構によって液体供給管28を介して洗浄液をノズル270に供給し、ノズル270から洗浄液を吐出する。本実施形態では、ノズル270は、ファン240の内側でファン240の回転軸(キャンドモータ30の主軸7)に対向して設けられ、ファン240の中央から外周に向けて洗浄液を吐出する。
【0047】
また、ケーシング220には、ファン240と気体吐出口220bとの間に衝突板230が形成されている。ノズル270から噴出される洗浄液はファン240の遠心力によっ
て外周に飛散するが、衝突板230が設けられていることによって気体吐出口220bに洗浄液が侵入するのを抑制することができる。なお、衝突板230は、ファン240と気体吐出口220bとの間だけではなく、例えば、ファン240の略全周を覆うように形成されてもよい。
【0048】
キャンドモータ30において、ステータキャン18は、ロータ10とステータ14とを離隔する。つまり、ステータキャン18は、モータフレーム13の内部を、ロータ10が配置されるロータ室48と、ステータ14が配置されるステータ室49とに区画する。ステータキャン18は、
図1に示す空隙δと同様に、ステータキャン18とロータ10との間に僅かなギャップを生じる状態で、ステータ14(より具体的には、ステータコア)の内面に貼り付けられている。
【0049】
フレーム側板(ステータキャン側板)19-1、19-2が、軸線AL方向におけるキャンドモータ30の両端において、モータフレーム13とステータキャン18との間に嵌め込まれている。モータフレーム13とステータキャン18とフレーム側板19-1、19-2とによってステータ室49が封止されている。フレーム側板19-1、19-2は、キャンドモータ30の両端側において、ブラケット3、4と締結されている。ロータ室48は、ステータキャン18とブラケット3,4とによって画定される。負荷側のブラケット3は、ケーシング220に連結されている。ブラケット3には、主軸7を挿通するための貫通孔が形成され、この貫通孔に主軸7を軸支するすべり軸受である軸受5が設けられている。反負荷側のブラケット4には、主軸7を軸支するすべり軸受である軸受6が設けられている。また、ブラケット4には、軸受6が外部と連通するように液体流入口4aが形成されている。この液体流入口4aには、ロータ室内に洗浄液を供給するための図示しない圧送機構が接続される。
【0050】
図10中太い一点鎖線矢印に示すように、図示しない圧送機構から液体流入口4aを通じて反負荷側の軸受6に洗浄液が供給されると、洗浄液は軸受6と主軸7との間を通ってロータ室48に移動する。続いて、洗浄液は、ロータ室48内で樹脂モールドロータ10A(ロータ10)とステータキャン18との間を通って負荷側の軸受5に向かう。そして洗浄液は、軸受5と主軸7の間(液体吐出口)を通ってケーシング220内に排出される。
【0051】
このファンスクラバー200では、キャンドモータ30の樹脂モールドロータ10Aが上記実施形態と同様の構成を有し、上記実施形態と同様の作用効果を有する。即ち、樹脂モールドロータ10Aにおいて樹脂モールド11と主軸7との間にOリング26が配置される構成であるため、従来の構成と比較して、樹脂モールドと主軸7の界面の密閉性をより確実に維持することができ、ロータコア及び永久磁石が液体に接触することをより確実に抑制することができる。
【0052】
上述した実施形態から少なくとも以下の形態が把握される。
第1形態によれば、樹脂モールドロータであって、磁石を保持するロータと、前記ロータを装着し外部へ動力を伝達する主軸と、前記ロータ、及び前記ロータの軸方向両側における前記主軸の一部を一体に覆う樹脂モールドと、を備え、前記樹脂モールドと前記主軸との間にOリングが配置され、該Oリングによって前記樹脂モールドと前記主軸との間が密封されている、樹脂モールドロータが提供される。
【0053】
この形態によれば、樹脂モールドと主軸の界面をOリングによって密閉することにより、樹脂モールドによるロータの密閉性を向上させることができる。ゴムからなるOリングは、主軸及び樹脂モールドに対する密着性が高く、樹脂モールドの熱変形に追従することが可能である。このため、樹脂モールドが線膨張係数の差異に起因してロータ及び主軸に
対して収縮したとしても、樹脂モールド及び主軸との間に隙間が生じないように、Oリングが樹脂の熱変形に追従して変形し、樹脂モールド及び主軸への密着を維持することが可能である。この結果、主軸と樹脂モールドとの間の密閉性を向上させることができる。また、モータ運転時に、ロータ、主軸及び/又は樹脂モールドが熱変形したとしても、樹脂モールド及び主軸との間に隙間が生じないように、Oリングがこれらの部材の熱変形に追従して変形し、樹脂モールド及び主軸への密着を維持することが可能である。この結果、主軸と樹脂モールドとの間の密閉性を向上させることができる。
【0054】
第2形態によれば、第1形態の樹脂モールドロータにおいて、前記樹脂モールドで覆われた前記主軸の外周面の部分に溝部が形成され、前記Oリングは、前記溝部内に配置された状態で、前記樹脂モールドと前記主軸との間を密封している。
【0055】
この形態によれば、主軸に設けられた溝部にOリングが装着することで、樹脂の射出成形時にOリングが所望の位置からずれることを抑制/防止し、安定したシール構造を提供することができる。
【0056】
第3形態によれば、第2形態の樹脂モールドロータにおいて、前記Oリングは、前記ロータの端面に密着している。
【0057】
この形態によれば、Oリングがロータ、主軸及び樹脂モールドに対して密着し、ロータ端面とOリングとの間で主軸外周面に樹脂モールドが存在しないので、樹脂モールドと主軸との密着性を向上させることができる。また、主軸軸方向において樹脂が存在する距離が低減されるので、樹脂モールドと主軸との密着性が向上し、また樹脂の使用量を低減することができる。
【0058】
第4形態によれば、第2又は3形態の樹脂モールドロータにおいて、前記溝部の一部が、軸方向において前記ロータと重なる。
【0059】
この形態によれば、Oリングを確実にロータ端面に密着させて固定できる。
【0060】
第5形態によれば、第2から4形態の何れかの樹脂モールドロータにおいて、前記樹脂モールドで覆われた前記主軸の外周面の部分に複数の前記溝部が設けられ、全ての溝部に前記Oリングが配置されている。
【0061】
この形態によれば、複数のOリングにより、主軸と樹脂モールドとの間の密閉性を更に向上させることができる。
【0062】
第6形態によれば、第2から4形態の何れかの樹脂モールドロータにおいて、複数の前記溝部が設けられ、一部の溝部に前記Oリングが配置されていない。
【0063】
この形態によれば、樹脂モールドの線膨張係数とロータを構成する材料の線膨張係数との差異を利用して樹脂モールドを、Oリングが配置されていない溝部の側面に密着させることができる。この結果、Oリングによる密閉と、樹脂の溝部への密着による密閉とを組みあわせて、主軸と樹脂モールドとの間の密閉性を更に向上させることができる。
【0064】
第7形態によれば、第1形態の樹脂モールドロータにおいて、前記樹脂モールドが前記主軸と共にOリング溝を形成するように成形されており、該Oリング溝に前記Oリングが配置されている。
【0065】
この形態によれば、樹脂モールド成形後にOリング溝にOリングを装着することが可能
である。よって、樹脂モールドの射出成形時にOリングが位置ずれすることがなく、射出成形時の熱による影響を受けることもない。
【0066】
第8形態によれば、第7形態の樹脂モールドロータにおいて、前記樹脂モールドの軸方向端面から突出する突起部が設けられ、該突起部と前記主軸の外周面との間に前記Oリング溝が形成されている。
【0067】
この形態によれば、樹脂モールドの突起部によりOリング溝を形成するので、樹脂モールドの軸方向端部全体を厚く形成する必要がなく、樹脂の使用量を低減することができる。また、樹脂モールドの軸方向端部全体が厚くなるのを抑制できるので、樹脂モールドのロータ端面への密着性が低下することを抑制/防止することができ、樹脂モールドの「ひけ」を抑制/防止することができる。
【0068】
第9形態によれば、第8形態の樹脂モールドロータにおいて、前記突起部に対向する位置において前記主軸の外周面に溝部が設けられ、前記Oリングが前記突起部と前記溝部との間に挟まれて配置されている。
【0069】
この形態によれば、主軸の外周面の溝部によりモータ運転時におけるOリングの軸方向の変位を更に確実に抑制することができる。
【0070】
第10形態によれば、第1から9形態の何れかの樹脂モールドロータにおいて、前記ロータの軸方向両側に前記Oリングが設けられている。
【0071】
この形態によれば、樹脂モールドと主軸との界面が存在するロータの軸方向両側において、樹脂モールドと主軸の界面の密閉性を向上することができる。
【0072】
第11形態によれば、キャンドモータであって、第1から第10形態の何れかの樹脂モールドロータと、前記樹脂モールドロータの主軸を回転支持する軸受と、前記樹脂モールドロータを取囲み、前記樹脂モールドロータの前記ロータに回転磁界を作用させるキャンド構造のステータと、を備えるキャンドモータが提供される。
【0073】
この形態によれば、上述した樹脂モールドロータを用いてキャンドモータを構成することにより、長寿命のキャンドモータを簡便な構成で且つ低コストで提供できる。
【0074】
第12形態によれば、キャンドモータポンプであって、第11形態のキャンドモータと、前記主軸に固定された羽根車と、前記羽根車を取り囲むポンプケーシングと、を備えるキャンドモータポンプが提供される。キャンドモータポンプは、液体及び/又は気体を吸引/吐出するものであってよい。
【0075】
この形態によれば、上述した樹脂モールドロータを用いてキャンドモータポンプを構成することにより、長寿命のキャンドモータポンプを簡便な構成で且つ低コストで提供できる。
【0076】
第13形態によれば、ファンスクラバーであって、第11形態のキャンドモータと、前記キャンドモータの前記主軸に接続されたファンと、気体吸入口および気体吐出口を有し、前記ファンを収容するケーシングと、前記ケーシング内に液体を噴出するノズルと、を備えるファンスクラバーが提供される。
【0077】
この形態によれば、上述した樹脂モールドロータを用いてファンスクラバーを構成することにより、長寿命のファンスクラバーを簡便な構成で且つ低コストで提供できる。
【0078】
第14形態によれば、真空ポンプ装置であって、第13形態のファンスクラバーと、真空チャンバから気体を真空引きし、前記ファンスクラバーの前記気体吸入口に気体を吐出する真空ポンプと、を備える真空ポンプ装置が提供される。
【0079】
この形態によれば、上述した樹脂モールドロータを採用するファンスクラバーを用いて真空ポンプ装置を構成することにより、長寿命の真空ポンプ装置を簡便な構成で且つ低コストで提供できる。
【0080】
以上、いくつかの例に基づいて本発明の実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明には、その均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 羽根車
2 ポンプケーシング
3 ブラケット
4 ブラケット
5 軸受
6 軸受
7 主軸
7a 貫通穴
7-1 溝部
7-2 溝部
8-1 スラストディスク
8-2 スラストディスク
9 永久磁石
10 ロータ
10A 樹脂モールドロータ
11 樹脂モールド
11A 環状突起部
11B Oリング溝
12 ロータコア
13 モータフレーム
14 ステータ
15 ステータコア
16 導体(巻線)
17 出口線
18 ステータキャン
19 ステータキャン側板
19-1、19-2 フレーム側板(ステータキャン側板)
20-1 密閉部材
20-2 密閉部材
20-3 密閉部材
21 ボルト
22 ボルト
23 羽根止ナット
24 吐出ボリュート
26 Oリング
30 キャンドモータ
100 真空ポンプ装置
110 キャンドモータポンプ
120 真空ポンプ
140 除害装置
200 ファンスクラバー
220 ケーシング
220a 気体吸入口
220b 気体吐出口
220c 液体排出口
230 衝突板
240 ファン
260 液体吐出部
270 ノズル
280 液体供給管