(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】塗工装置
(51)【国際特許分類】
B05C 5/02 20060101AFI20231207BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20231207BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B05C5/02
B05C11/10
H01M4/04 Z
(21)【出願番号】P 2020146729
(22)【出願日】2020-09-01
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】元井 昌司
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 敦
(72)【発明者】
【氏名】北島 賢司
(72)【発明者】
【氏名】前田 和紀
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-113382(JP,A)
【文献】特開2015-153527(JP,A)
【文献】特開2014-237106(JP,A)
【文献】特開2016-167402(JP,A)
【文献】特開2020-32361(JP,A)
【文献】特開2020-131145(JP,A)
【文献】特開2002-45762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00-21/00
B05D 1/00-7/26
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイに設けられた幅方向に長いスリットから塗液を吐出し、基材に塗膜を形成する塗工装置であり、
前記ダイへ向けて塗液を供給する流路である第1の流路と、
前記第1の流路と連結し、前記第1の流路から流入する塗液を溜める第1のマニホールドと、
前記第1のマニホールドと連結した複数の第2の流路と、
前記第2の流路および前記スリットに連結し、前記幅方向に長く、前記第2の流路から流入する塗液を溜める第2のマニホールドと、
少なくとも一つの前記第2の流路の途中に設けられ、前記第2の流路を流れる塗液の流量を調節する調節部と、
を備えることを特徴とする、塗工装置。
【請求項2】
前記第1のマニホールドおよび前記調節部は、前記ダイの外部に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の塗工装置。
【請求項3】
前記第1のマニホールドおよび前記調節部の少なくとも塗液の流路部分は、前記ダイの内部に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の塗工装置。
【請求項4】
複数の前記第2の流路の長さは、互いに等しいことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の塗工装置。
【請求項5】
前記第1のマニホールドは一方向に長く、複数の前記第2の流路と前記第1のマニホールドとの連結部は、前記第1のマニホールドの長手方向に配列されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の塗工装置。
【請求項6】
前記第1の流路への塗液の供給経路には、塗液を間欠的に供給する間欠供給部を有していることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の塗工装置。
【請求項7】
塗液は、電池用極板の製造用のスラリーであることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の塗工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材に塗工膜を塗工する塗工装置、及び塗工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロールツーロールで送られる基材に、スラリーをダイの吐出口から塗工して塗膜を形成し、電池の極板等を製造することが行われている。基材上に形成される塗膜の厚さは、例えば電池の場合、電池の充放電量に直接影響を与えることから、基材に塗工する塗液(スラリー)の膜厚管理は非常に重要となる。つまり、塗液は、基材の幅方向及び送り方向に沿って均一な厚さで塗工される必要がある。
【0003】
特許文献1には、排出ポート(調整部)を設けることにより、塗液の吐出作業を長時間継続して行っていても、基材上に形成される塗膜層の厚さを均一にする構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許文献1:特開2015-97198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の塗工装置では、ダイ内部でスラリーに圧力が印加されることでスラリーが分離しやすい。そのため、排出ポートから排出したスラリーをタンクに戻して再利用し、スラリーを効率的に使用する場合に、塗膜の品質に影響を与えるおそれがあるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、品質が良く厚さが均一な塗膜を塗工することが可能な塗工装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために本発明の塗工装置は、ダイに設けられた幅方向に長いスリットから塗液を吐出し、基材に塗膜を形成する塗工装置であり、前記ダイへ向けて塗液を供給する塗液を供給する流路である第1の流路と、前記第1の流路と連結し、前記第1の流路から流入する塗液を溜める第1のマニホールドと、前記第1のマニホールドと連結した複数の第2の流路と、前記第2の流路および前記スリットに連結し、前記幅方向に長く、前記第2の流路から流入する塗液を溜める第2のマニホールドと、少なくとも一つの前記第2の流路の途中に設けられ、前記第2の流路を流れる塗液の流量を調節する調節部と、を備えることを特徴としている。
【0008】
上記塗工装置によれば、品質が良く厚さが均一な塗膜を塗工することができる。具体的には、第1のマニホールドを有し、また、第2の流路に調節部が設けられていることにより、幅方向に対して基材に均一な塗膜を形成するためにダイのスリットから塗液が精度良く吐出できるよう、第2のマニホールドに流入する塗液の幅方向の流量分布を精度良く調節することができる。また、塗液を排出してタンクへ戻すことが無いため、品質が良い塗膜を形成することができる。
【0009】
また、前記第1のマニホールドおよび前記調節部は、前記ダイの外部に設けられていると良い。
【0010】
こうすることにより、ダイの構成が複雑化することを防ぐことができる。
【0011】
また、前記第1のマニホールドおよび前記調節部の少なくとも塗液の流路部分は、前記ダイの内部に設けられていると良い。
【0012】
こうすることにより、ダイまでの配管構造が複雑化することを防ぐことができる。
【0013】
また、複数の前記第2の流路の長さは、互いに等しいことが好ましい。
【0014】
こうすることにより、第2のマニホールドに流入する塗液の幅方向の流量分布の調節が容易となる。
【0015】
また、前記第1のマニホールドは一方向に長く、複数の前記第2の流路と前記第1のマニホールドとの連結部は、前記第1のマニホールドの長手方向に配列されていると良い。
【0016】
こうすることにより、各々の第2の流路の長さを容易に調節することができる。
【0017】
また、前記第1の流路への塗液の供給経路には、塗液を間欠的に供給する間欠供給部を有していると良い。
【0018】
こうすることにより、幅方向の厚さが均一な塗膜を間欠的に基材へ塗工することができる。
【0019】
また、塗液は、電池用極板の製造用のスラリーであると良い。
【0020】
電池用極板の製造用のスラリーは分離しやすいため、ダイへ供給した塗液の一部をタンクへ戻すことが無い本発明の塗工装置が好適に用いられる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の塗工装置によれば、品質が良く厚さが均一な塗膜を塗工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態における塗工装置の概略構成を説明する図である。
【
図3】(a)は、
図1のb矢視の断面図であり、(b)は、シム板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態における塗工装置1について、
図1~
図3を参照して説明する。
図1は、本実施形態における塗工装置の概略構成を説明する図である。
図2は、
図1のa矢視の断面図である。
図3は、(a)は、
図1のb矢視の断面図であり、(b)は、シム板15の平面図である。
【0024】
塗工装置1は、ロールツーロールで送られる基材2に、塗液3を塗工するための装置である。塗液3は、基材2の送り方向MDに沿って均一な厚さ(均一な塗工量)で塗工される。なお、基材2の幅方向TDは、基材2の送り方向MDに直交する方向であり、
図1におけるY軸方向がこれに相当する。
【0025】
塗工装置1は、基材2の幅方向に沿って長く構成されたダイ10と、このダイ10に塗液3を供給する供給手段20とを備えている。ダイ10において、その長手方向(
図1におけるY軸方向)を幅方向TDといい、基材2の幅方向TDと同じである。この塗工装置1では、ダイ10に対向するローラ5が設置されており、ダイ10の幅方向TDとローラ5の回転中心線の方向とは平行である。基材2は、このローラ5に案内され、基材2とダイ10(後述のスリット12の先端)との間隔(隙間)が一定に保たれ、この状態で塗液3の塗工が行われる。
【0026】
また、本実施形態における塗液3は、電池用極板の製造用のスラリーであり、溶媒内に活物質、バインダー、および導電助剤が分散している。なお、本実施形態では、ダイ10から吐出されるスラリーとして、粘度が数千から数万cP(剪断速度=1の場合)のものが採用される。
【0027】
ダイ10は、先細り形状である第一リップ13aを有する第一分割体13と、先細り形状である第二リップ14aを有する第二分割体14とを、これらの間にシム板15を挟んで、組み合わせた構成からなる。
図2は、
図1のa矢視の断面図である。
図3(a)は、
図1のb矢視の断面図であり、シム板15を、
図3(b)に示している。ダイ10は、その内部に、幅方向TDに長い略円柱状の空間からなる塗液3を溜めるための第2のマニホールド11と、この第2のマニホールド11と繋がるスリット12とが形成され、また、第一リップ13aと第二リップ14aとの間には、スリット12の解放端である吐出口18が形成されている。すなわち、第2のマニホールド11と吐出口18とは、スリット12を経由して繋がっている。
【0028】
スリット12は、第2のマニホールド11と同様に幅方向TDに長く形成されており、スリット12の幅方向寸法は、シム板15の内寸W(
図3(b)参照)によって決定され、スリット12の幅方向寸法と略同一の幅方向寸法の塗液3を、基材2上に塗工することができる。スリット12の隙間寸法(高さ寸法)は、例えば0.4~1.5mmである。本実施形態では、スリット12の隙間方向が上下方向であり、幅方向が水平方向となる姿勢でダイ10は設置されている。つまり、第2のマニホールド11とスリット12とが水平方向に並んで配置される姿勢でダイ10は設置されている。したがって、第2のマニホールド11に溜められている塗液3をスリット12および吐出口18を通じて基材2へと流す方向は水平方向となる。
【0029】
なお、シム板15の厚さを変更することにより、第2のマニホールド11内部の圧力(塗工圧力)を調整することができ、この調整によって、塗工膜厚を自由に変更する事が可能となる。
【0030】
また、第2のマニホールド11には、
図2に示す通り幅方向にわたって複数の塗液3の流入口27(流入口27a乃至27d)が設けられ、この流入口27を介して塗液3が第2のマニホールド11内に充填される。
【0031】
また、本実施形態においては、塗液3が吐出口18を通じて基材2へと流れる方向を水平方向としたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、上方向としてもよいし、下方向としてもよく、任意の方向に設定することができる。
【0032】
供給手段20は、塗液3を貯留しているタンク22と、タンク22に接続されダイ10へ向けて塗液3を供給する流路となるパイプである第1の流路21と、タンク22内の塗液3を第1の流路21を通じてダイ10へ供給するためのポンプ23と、を有している。
【0033】
塗液3の流れにおける供給手段20と第2のマニホールド11の間には、一方向に長く塗液3を溜める略円柱状の空間である第1のマニホールド6を有するマニホールド部材7が設けられている。また、本実施形態では、第1のマニホールド6の長手方向は、ダイ10、第2のマニホールド11の長手方向(すなわち幅方向TD)と同一の方向であり、それぞれのマニホールドサイズ(断面積)は、おおよそ第1のマニホールド6よりも第2のマニホールド11の方が小さいが、それぞれの役割が異なる為、一概に大小サイズの関係はこれに当てはまらない。第1のマニホールド6はポンプ23からダイ10の幅方向に複数配列しているそれぞれの調整部30に対して均等に供給する為のマニホールドであってできる限り大きい方が好ましい。
【0034】
一方、調整部30より下流側に配置されている第2のマニホールド11は幅方向の膜厚量調整の為の機能を有している為、塗液供給量、供給速度、厚み、調整部の調整量により適切なサイズが求められる。また、第2のマニホールド11は幅方向に対して必ずしも連通している訳では無く、幅方向に複数分割されている場合もある。
【0035】
第1のマニホールド6の所定箇所(本実施形態では中央部)には、流入口25が設けられており、この流入口25を介して供給手段20から供給された塗液3が第1のマニホールド6内に充填される。
【0036】
第1のマニホールド6の長手方向には、
図2に示す通り複数の塗液3の流出口26(流出口26a乃至26d)が設けられている。第1のマニホールド6の流出口26a乃至26dと第2のマニホールド11の流入口27a乃至27dはそれぞれパイプなどを介して連結されており、塗液3の流路を形成している。本発明では、これらの流路を第2の流路24と呼び、本実施形態では、
図2に示す通り第1のマニホールド6と第2のマニホールド11の間に4本の第2の流路(第2の流路24a乃至24b)が形成されている。
【0037】
また、本実施形態では、第1のマニホールド6はダイ10の近傍に配置されており、また、上述の通り第1のマニホールド6の長手方向は、ダイ10の幅方向と平行である。これにより、各第2の流路24を形成する配管の長さは比較的短く、また、各第2の流路24の長さは互いに等しくなっている。具体的には、第1のマニホールド6とダイ10とをつなぐ各配管の長さは30mm~300mmである。これにより、各第2の流路24を形成する配管における圧力損失は互いに略等しくなる。
【0038】
ここで、少なくとも一つの第2の流路24の途中でありダイ10の外部には、その第2の流路24を流れる塗液3の流量を調節する調節部30が設けられている。本実施形態では、
図2に示す通り全ての第2の流路24(第2の流路24a乃至24b)に調節部30(調節部30a乃至30d)が設けられている。これら調節部30a乃至30dによって第2の流路24a乃至24dの終端である流出口26a乃至26dにおける塗液3の流量が調節されることにより、幅方向TDにおける第2のマニホールド11への塗液3の流入量の分布が調節される。これにより、幅方向TDにおける吐出口18からの塗液の吐出量分布が調節される。
【0039】
調節部30は、本実施形態では、電気制御により弁の開度が調節可能なバルブであり、自身を通過する塗液3の流量を調整する機能を有している。なお、調節部30は、自身を通過する塗液3の圧力を調整してもよい。
【0040】
塗工装置1には、基材2上へ塗工した塗液3の膜厚を測定するセンサ36を備えている(
図1参照)。センサ36は、幅方向に沿って複数設けられていてもよい。センサ36は、非接触式であり、基材2上の塗液3の膜厚を、幅方向に沿って複数カ所、又は、幅方向TDの全長にわたって計測可能であり、計測結果は、塗工装置1が備えている制御装置(コンピュータ)37に出力される。制御装置37はセンサ36からの計測結果に基づくフィードバック制御を行い、調節部30a乃至30dの開度が互いに独立して調整される。つまり、塗液3の膜厚の計測結果に応じて、制御装置37は、調節部30a乃至30dそれぞれに対して制御信号を出力し、調節部30a乃至30dのそれぞれの開度を調整する。
【0041】
また、本実施形態では、タンク22と第1の流路21の間、すなわち第1の流路21への塗液3の供給経路には、塗液3を間欠的に供給する間欠供給部40が設けられており、
図1に示すように塗液3を基材2に間欠的に塗工することが可能である。具体的には、間欠供給部40は供給バルブ41を有し、供給バルブ41の内部に設けられた弁体42の位置がエアシリンダ43によるシャフトの動作によって変化することにより、塗液3の流路を形成する開状態と塗液3の流路を遮断する閉状態との2つの状態が切り替え制御される。ここで、供給バルブ41が開状態になった時にダイ10の吐出口18から塗液3が吐出されて塗工が開始し、供給バルブ41が閉状態になった時にダイ10への塗液3の供給が途切れて基材2上の塗液3の塗工が中断される。すなわち、エアシリンダ43の動作を制御して弁体42の位置を制御し、供給バルブ41の開状態と閉状態とを繰り返すことにより、基材2に間欠的に塗工膜が形成される。
【0042】
また、間欠供給部40は供給バルブ41の手前にリターンバルブ44を有し、供給バルブ41の弁体42が閉状態であってダイ10への塗液3の供給が中断されている間、リターンバルブ44の弁体45が開状態となることにより、塗液3はタンク22へ回収される。また、供給バルブ41の弁体42が開状態であってダイ10へ塗液3が供給されている間、リターンバルブ44の弁体45は閉状態となっている。この弁体45の駆動は、エアシリンダ46によって行われる。
【0043】
以上の形態を有する塗工装置1による効果を以下に示す。
【0044】
塗工装置1は、第2のマニホールド11の長手方向(ダイ10の幅方向)に複数配列、接続された第2の流路24に調節部30が設けられている。これにより、たとえばセンサ36からの計測結果に基づくフィードバック制御を各調節部30に対して行い、それぞれの流入口27から第2のマニホールド11に流入する塗液3の流量を調節することによって、幅方向に対して基材2に所定の形状(たとえば均一な膜厚の)塗膜を形成するためにダイ10のスリット12から塗液3が精度良く吐出できるよう、精度良く調節することができる。また、この塗工装置1では、塗液3を排出してタンク22へ戻すことが無いため、塗液3が電池用極板の製造に用いるスラリーである場合などに、分離してしまった塗液3がタンク22内に混入することがなく、品質が良い塗膜を基材2上に形成することができる。また、塗液3の一部をダイ10から排出する形態と異なり、全ての第2の流路24から第2のマニホールド11へ供給される塗液3の流量の合計を変化させずにそれぞれの第2の流路24における流量を調節することができるため、所定の流量の塗液3を基材2に対して安定して塗工することができる。
【0045】
また、第1の流路21が複数の第2の流路24に分岐されるにあたり第1のマニホールド6が配置され、一度第1のマニホールド6に塗液3が溜められてから第2の流路24に塗液3が流入することにより、略均等の流量の塗液3を各流出口25を介して各第2の流路24に送液することが可能であり、弁の開度範囲にロバスト性が無い調節部30であってもその性能を最大限活用することができる。これによって、幅方向に対して基材2に所定の形状の塗膜を形成するためにダイ10のスリット12から塗液3が精度良く吐出できるよう、さらに精度良く調節することができる。
【0046】
また、第1のマニホールド6の長手方向が第2のマニホールド11の長手方向と同じとなるようにダイ10の近傍に配置され、第1のマニホールド6と第2の流路24との連結部である流出口26が第1のマニホールド6の長手方向に配列されていることにより、複数の前記第2の流路24の長さが互いに等しくなるよう、設計することが容易である。複数の前記第2の流路24の長さが互いに等しいことにより、第2の流路24を形成する配管における圧力損失が均等となり、第2のマニホールド11に流入する塗液3の幅方向の流量分布の調節が容易となる。
【0047】
また、第1の流路21への塗液3の供給経路には、塗液3を間欠的に供給する間欠供給部40を有していることにより、幅方向の厚さが均一な塗膜を間欠的に基材2へ塗工することができる。
【0048】
ここで、調節部30は電気制御方式に限らず手動で開度を調節するものであっても良い。この手動方式の調節部30を使用する場合、センサ36による基材2上の塗膜の膜厚の計測結果に基づいて、それぞれの調節部30の最適な開度をオペレータが判断し、調節部30の開度を手動で調節しても良い。
【0049】
次に、本発明における他の実施形態の塗工装置1、特にダイ10について、
図4(a)および(b)を用いて説明する。
【0050】
図4(a)および(b)に示すダイ10では、第1のマニホールド6もダイ10の内部に構成されており、第1のマニホールド6と第2のマニホールド11とを連結する第2の流路24もダイ10の内部に構成されている。
【0051】
このようなダイ10の場合、
図1乃至3で示すダイ10よりも構成が複雑化するが、ダイ10に接続される流路は第1の流路21のみとなり、ダイ10までの配管構造が複雑化することを防ぐことができる。
【0052】
図4(a)に示すダイ10では、調節部30は電気制御されるものであり、ダイ10の内部に配置されている。そして、配管30と接続される電気配線31がダイ10の外部に引き出されており、図示しない制御装置37と電気的に接続されている。これにより、ダイ10の内部に配置された調節部30の弁の開度をダイ10の外部から電気制御することができる。
【0053】
一方、
図4(b)に示すダイ10では、調節部30は塗液流量の変化にともなって第2の流路24の開口面積を変化させる変位部32を有している。変位部32は第2の流路11の途中に有しており、たとえばニードルバルブであっても良く、手動で開度の調節が行われるバルブのハンドルであっても良い。
【0054】
以上の塗工装置により、品質が良く厚さが均一な塗膜を塗工することが可能である。
【0055】
ここで、本発明の塗工装置は、以上で説明した形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。たとえば、複数の第2の流路の長さは必ずしも均一でなくても良く、また、ダイの外部に設けられた第1のマニホールドの長手方向は必ずしもダイおよび第2のマニホールドの長手方向と一致していなくても構わない。
【0056】
また、上記の説明では、全ての第2の流路の途中に調節部が設けられているが、一部の第2の流路には調節部が設けられていなくても良い。たとえば、複数ある第2の流路のうち1本の第2の流路には調節が設けられていなくても良い。
【0057】
また、間欠供給部40を形成する供給バルブ41およびリターンバルブ44はエア駆動に限らず、たとえばモータ駆動であっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、基材に塗液を塗工する塗工装置に幅広く適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 塗工装置
2 基材
3 塗液
5 ローラ
6 第1のマニホールド
7 マニホールド部材
10 ダイ
11 第2のマニホールド
12 スリット
18 吐出口
20 供給手段
21 第1の流路
22 タンク
23 ポンプ
24 第2の流路
25 流入口
26 流出口
26a 流出口
26b 流出口
26c 流出口
26d 流出口
27 流入口
27a 流入口
27b 流入口
27c 流入口
27d 流入口
28 流出口
30 調整部
31 電気配線
32 変位部
36 センサ
37 制御装置
40 間欠供給部
41 供給バルブ
42 弁体
43 エアシリンダ
44 リターンバルブ
45 弁体
46 エアシリンダ