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  • 特許-ガスケット、及び流路継手構造 図1
  • 特許-ガスケット、及び流路継手構造 図2
  • 特許-ガスケット、及び流路継手構造 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】ガスケット、及び流路継手構造
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20231207BHJP
   F16L 17/067 20060101ALI20231207BHJP
   F16L 23/02 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
F16J15/10 L
F16J15/10 T
F16J15/10 U
F16L17/067
F16L23/02 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020154758
(22)【出願日】2020-09-15
(65)【公開番号】P2022048757
(43)【公開日】2022-03-28
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大前 清敬
(72)【発明者】
【氏名】刀谷 真史
(72)【発明者】
【氏名】黒▲崎▼ 歩
(72)【発明者】
【氏名】樋口 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】手嶋 一清
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-083972(JP,A)
【文献】特開2006-316806(JP,A)
【文献】特開2019-210984(JP,A)
【文献】特開2018-096457(JP,A)
【文献】特開2019-173844(JP,A)
【文献】特開2006-153180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/10
F16L 17/06
F16L 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの流体デバイスにそれぞれ形成された流路同士を接続するために、前記両流体デバイスの流路の接続端部にそれぞれ形成された環状のシール溝に圧入される一対の環状のシール部を軸方向両側に備え、内周面の径内側に流体流路が形成されたガスケットであって、
前記シール部が前記シール溝に圧入される前の状態において、前記内周面の軸方向外端部に、軸方向内側から軸方向外端へ向かって漸次拡径して形成されたテーパ面を備え、
前記テーパ面の拡径始点は、前記シール部が前記シール溝に圧入されたときに前記シール部が前記流体デバイスから外力を受けることによって前記内周面が変形する起点となる変形起点位置から、前記内周面の軸方向の中心位置までの範囲内に位置する、ガスケット。
【請求項2】
前記テーパ面の前記拡径始点は、前記変形起点位置上に位置する、請求項1に記載のガスケット。
【請求項3】
2つの流体デバイスにそれぞれ形成された流路同士を接続するための請求項1又は請求項2に記載のガスケットと、
前記両流体デバイスの流路の接続端部にそれぞれ形成され、前記ガスケットの各シール部が圧入される一対の環状のシール溝と、を備える流路継手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケット、及び流路継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造、医療・医薬品製造、及び食品加工・化学工業等の各種技術分野の製造工程で取り扱われる薬液、高純度液、超純水、或いは洗浄液等の流体の配管経路では、ポンプ、バルブ、アキュムレータ、フィルタ、流量計、圧力センサ、及び配管ブロック等の2つの流体デバイスに形成された流路同士を接続する接続構造として、流体の漏洩を防止するガスケットが採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4は、従来のガスケットを示す軸方向の断面図である。従来のガスケット100は、円筒状の本体部110と、本体部110の軸方向両端部の径内側において軸方向外側に突出して形成された一対の環状の一次シール部111と、本体部110の軸方向両端部の径外側において軸方向外側に突出して形成された一対の環状の二次シール部112と、を備えている。ガスケットの内周面における軸方向外端部には、軸方向内側から軸方向外端へ向かって漸次拡径するテーパ面113が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-173844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5は、従来のガスケット100により2つの流体デバイス150に形成された流路153同士を接続した状態を示す軸方向の断面図である。本体部110の内部空間は、両流体デバイス150の流路153同士を連通する流体流路114とされている。一次シール部111及び二次シール部112は、各流体デバイス150に形成された環状の一次シール溝151及び二次シール溝152に圧入される。これにより、各流体デバイス150とガスケット100との間のシール性能が確保され、流体の漏洩を防止することができる。
【0006】
しかし、図5に示すように、ガスケット100の一次シール部111は、流体デバイス150の一次シール溝151に押圧されることによって、径内側へ倒れ込むように変形する。これにより、ガスケット100の内周面における軸方向外端部が流体流路114内へ突出するため、流体流路114を流れる流体の置換特性が低下し、ガスケット100内のフラッシングに時間を要する等の悪影響が生じる。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ガスケットの内周面の軸方向外端部が流体流路内へ突出するのを抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、2つの流体デバイスにそれぞれ形成された流路同士を接続するために、前記両流体デバイスの流路の接続端部にそれぞれ形成された環状のシール溝に圧入される一対の環状のシール部を軸方向両側に備え、内周面の径内側に流体流路が形成されたガスケットであって、前記シール部が前記シール溝に圧入される前の状態において、前記内周面の軸方向外端部に、軸方向内側から軸方向外端へ向かって漸次拡径して形成されたテーパ面を備え、前記テーパ面の拡径始点は、前記シール部が前記シール溝に圧入されたときに前記シール部が前記流体デバイスから外力を受けることによって前記内周面が変形する起点となる変形起点位置上に位置する、ガスケットである。
【0009】
本発明のガスケットによれば、ガスケットの内周面の軸方向外端部に形成されたテーパ面の拡径始点は、シール部が流体デバイスから外力を受けることによって前記内周面が変形する起点となる変形起点位置から軸方向内側に位置する。これにより、ガスケットの内周面の変形起点位置よりも軸方向外側の部分が、径内側へ変形する変形代が確保されるので、ガスケットの内周面における軸方向外端部が流体流路内へ突出するのを抑制することができる。
【0010】
(2)前記テーパ面の前記拡径始点は、前記変形起点位置上に位置するのが好ましい。
この場合、ガスケットの内周面の変形起点位置よりも軸方向外側において、径内側への変形代が確保されたテーパ面だけが径内側に変形するので、ガスケットの内周面における軸方向外端部が流体流路内へ突出するのをさらに抑制することができる。
【0011】
(3)他の観点から見た本発明は、2つの流体デバイスにそれぞれ形成された流路同士を接続するための前記(1)又は(2)のガスケットと、前記両流体デバイスの流路の接続端部にそれぞれ形成され、前記ガスケットの各シール部が圧入される一対の環状のシール溝と、を備える流路継手構造である。
本発明の流路継手構造によれば、前記ガスケットと同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ガスケットの内周面の軸方向外端部が流体流路内へ突出するのを抑制することできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る流路継手構造を示す軸方向の断面図である。
図2】前記流路継手構造のガスケットを示す軸方向の断面図である。
図3】前記ガスケットの内周面におけるテーパ面を示す図2の要部拡大断面図である。
図4】従来のガスケットを示す軸方向の断面図である。
図5】従来のガスケットの使用状態を示す軸方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
[流路継手構造の全体構成]
図1は、本発明の実施形態に係る流路継手構造を示す軸方向の断面図である。図1に示す流路継手構造1は、例えば、半導体製造装置内で使用される薬液が流れる配管経路において、隣り合う2つの流体デバイス2,2にそれぞれ形成された流路2a,2a同士を接続する接続構造として使用される。本実施形態の流体デバイス2としては、ポンプ、バルブ、アキュムレータ、フィルタ、流量計、圧力センサ、又は配管ブロック等が挙げられる。
【0015】
流路継手構造1は、ガスケット3と、各流体デバイス2にそれぞれ形成された環状の一次シール溝(シール溝)2b及び円筒状の二次シール溝2cと、を備えている。ガスケット3は、2つの流体デバイス2,2の流路2a,2a同士をシールして接続するシール部材である。以下、本実施形態では、便宜上、ガスケット3の軸方向中央から軸方向両側へ向かう方向を軸方向外側といい、ガスケット3の軸方向両側から軸方向中央へ向かう方向を軸方向内側という(図2図3についても同様)。
【0016】
各流体デバイス2の一次シール溝2bは、流路2aの接続端部の周面において、軸方向外端から軸方向内端へ向かって漸次拡径するように切り欠かれたテーパ形状とされている。各流体デバイス2の二次シール溝2cは、各流体デバイス2において一次シール溝2bよりも径外側に位置し、円筒状に形成されている。
【0017】
[ガスケットの構成]
図2は、ガスケット3を示す軸方向の断面図である。ガスケット3は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、又はフッ素樹脂(パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又はポリフッ化ビニリデン(PVDF)等)の合成樹脂材料によって形成されている。
【0018】
図1及び図2において、ガスケット3の内周面3aの径内側には、流体流路3bが形成されている。流体流路3bは、2つの流体デバイス2,2の流路2a,2a同士を連通する。ガスケット3は、円筒状に形成された本体部10と、一対の環状の一次シール部(シール部)11と、一対の円筒状の二次シール部12と、を備えている。
【0019】
一対の一次シール部11は、本体部10における軸方向両側の外端部の径内側から、それぞれ軸方向外側に突出して形成されている。各一次シール部11の外周面11aは、軸方向内端から軸方向外端へ向かって漸次縮径して形成されている。各一次シール部11は、対応する流体デバイス2の一次シール溝2bに圧入される。
【0020】
一対の二次シール部12は、本体部10における軸方向両側の外端部の径外側から、それぞれ軸方向外側に突出して形成されている。各二次シール部12は、円筒状に形成されており、対応する流体デバイス2の二次シール溝2cに圧入される。一次シール部11と二次シール部12との間には断面円弧状に形成された環状溝13が形成されている。
【0021】
以上の構成により、ガスケット3の一対の一次シール部11及び一対の二次シール部12は、各流体デバイス2の一次シール溝2b及び二次シール溝2cに圧入されるため、ガスケット3により2つの流体デバイス2,2における流路2a,2a同士の接続部分のシール性能を確保することができる。
【0022】
[ガスケットの内周面]
図2は、ガスケット3を示す軸方向の断面図であり、一次シール部11及び二次シール部12が、それぞれ流体デバイス2の一次シール溝2b及び二次シール溝2cに圧入される前の状態を示している。図2に示すように、ガスケット3は、内周面3aの軸方向両側の外端部にそれぞれ形成された一対のテーパ面14を備えている。
【0023】
各テーパ面14は、内周面3aの軸方向外端部において、軸方向内側から軸方向外端へ向かって漸次拡径して形成されている。本実施形態のテーパ面14は、例えば断面視において曲線状に傾斜するように形成されている。なお、テーパ面14は、断面視において直線状に傾斜するように形成されていてもよい。
【0024】
図3は、ガスケット3の内周面3aにおけるテーパ面14を示す図2の要部拡大断面図である。図3において、テーパ面14の拡径始点P1は、内周面3aの変形起点位置P2から、内周面3aの軸方向の中心位置P3までの範囲R内に位置するのが好ましい。ここで、「変形起点位置P1から・・・中心位置P3までの範囲R内」とは、変形起点位置P1上及び中心位置P3上も含む意味である。
【0025】
本実施形態では、テーパ面14の拡径始点P1は、前記範囲R内において変形起点位置P2上に位置している。変形起点位置P2は、一次シール部11が一次シール溝2bに圧入されたときに、一次シール部11が対応する流体デバイス2から一次シール溝2bを介して外力を受けることによって、ガスケット3の内周面3aにおける軸方向外端部が径内側へ倒れ込むように変形する起点となる位置である。本実施形態における変形起点位置P2は、環状溝13の径方向に延びる仮想接線Kと内周面3aとの交点に位置する。
【0026】
以上の構成により、ガスケット3の内周面3aにおける軸方向外端部では、変形起点位置P2よりも軸方向外側の部分が、径内側へ倒れ込むように変形する。そして、前記軸方向外側の部分が、軸方向内端(拡径始点P1)から軸方向外端へ向かって漸次拡径するテーパ面14とされているので、テーパ面14の径内側に、前記軸方向外側の部分が倒れ込む変形代が確保されている。
【0027】
図1に示すように、本実施形態におけるテーパ面14は、一次シール部11が一次シール溝2bに圧入されたときに、テーパ面14全体が径内側へ倒れ込むように変形することで、拡径始点P1よりも軸方向内側の内周面3aに沿って軸方向に真っすぐ延びた状態となる。したがって、一次シール部11が一次シール溝2bに圧入されたときに、ガスケット3の内周面3aにおける軸方向外端部は、径内側へ倒れ込むように変形しても、流体流路3b内に突出することはない。
【0028】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態の流路継手構造1によれば、ガスケット3の内周面3aの軸方向外端部に形成されたテーパ面14の拡径始点P1は、一次シール部11が流体デバイス2から外力を受けることによって内周面3aが変形する起点となる変形起点位置P2から、内周面3aの軸方向の中心位置P2までの範囲R内に位置する。これにより、ガスケット3の内周面3aの変形起点位置P2よりも軸方向外側の部分が、径内側へ変形する変形代が確保されるので、ガスケット3の内周面3aにおける軸方向外端部が流体流路3b内へ突出するのを抑制することができ、流体流路3bを流れる流体の置換特性の低下を抑制することが可能となる。
【0029】
また、本実施形態では、テーパ面14の拡径始点P1は、前記範囲R内において変形起点位置P2上に位置する。これにより、ガスケット3の内周面3aの変形起点位置P2よりも軸方向外側において、径内側への変形代が確保されたテーパ面14だけが径内側に変形するので、ガスケット3の内周面3aにおける軸方向外端部が流体流路3b内へ突出するのをさらに抑制することができ、流体流路3bを流れる流体の置換特性の低下をさらに抑制することが可能となる。
【0030】
[その他]
上記実施形態のガスケット3は、一次シール部11と二次シール部12とを備えているが、少なくとも一次シール部11を備えていればよい。また、ガスケット3には、軸方向両側の一対の一次シール部11のうち、少なくとも一方にテーパ面14が形成されていればよい。また、本発明の流路継手構造及びガスケットは、半導体製造装置以外に、液晶・有機EL分野、医療・医薬分野、または自動車関連分野などにおいても適用することができる。
【0031】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0032】
1 流路継手構造
2 流体デバイス
2a 流路
2b 一次シール溝(シール溝)
3 ガスケット
3a 内周面
3b 流体流路
11 一次シール部(シール部)
14 テーパ面
P1 拡径始点
P2 変形起点位置
P3 中心位置
R 範囲
図1
図2
図3
図4
図5