(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】ポンプ及びポンプ据付用ベース
(51)【国際特許分類】
F04D 13/00 20060101AFI20231207BHJP
F04D 29/60 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
F04D13/00 A
F04D29/60 D
(21)【出願番号】P 2020185135
(22)【出願日】2020-11-05
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000152170
【氏名又は名称】株式会社酉島製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】兼森 祐治
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-176568(JP,A)
【文献】特開2018-165497(JP,A)
【文献】特開2004-108316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 13/00
F04D 29/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ床の貫通孔から下向きに突出する揚水管を有する筒状のポンプケーシングと、
球面凹部及び前記球面凹部を相補する球面凸部のうちの一方からなる摺接部を有し、前記貫通孔を取り囲むように前記ポンプ床に取り付けられた環状の固定プレートと、
前記球面凹部及び前記球面凸部のうちの他方からなる摺接部を有し、前記ポンプケーシングを取り囲むように前記ポンプケーシングに取り付けられるとともに、前記固定プレート上に載置され、前記固定プレートに対する姿勢の調整によって、前記ポンプ床に対する前記ポンプケーシングの姿勢を調整するための環状の可動プレートと、
前記固定プレートに対して前記可動プレートを移動不可能に締結する締結部材と、
前記固定プレートの内周部に水密に取り付けられた第1端と、前記可動プレートの内周部に水密に取り付けられた第2端とを有し、弾性的に変形可能な筒状のシール部材と
を備える、ポンプ。
【請求項2】
前記シール部材は、前記固定プレートに取り付けられた第1ベローズ51と、前記第1ベローズ51に連なり、前記可動プレートに取り付けられた第2ベローズとを有し、
前記第1ベローズ51の弾性率と前記第2ベローズの弾性率とは異なる、
請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
前記第1ベローズ51の弾性率は、前記第2ベローズの弾性率よりも小さい、請求項2に記載のポンプ。
【請求項4】
前記固定プレートと前記可動プレートの間に介設された調整部材を備える、請求項1から3のいずれか1項に記載のポンプ。
【請求項5】
球面凹部及び前記球面凹部を相補する球面凸部のうちの一方からなる摺接部を有し、ポンプ床の貫通孔を取り囲むように前記ポンプ床に取り付けられた環状の固定プレートと、
前記球面凹部及び前記球面凸部のうちの他方からなる摺接部を有し、筒状のポンプケーシングを取り囲むように前記ポンプケーシングに取り付けられるとともに、前記固定プレート上に載置され、前記固定プレートに対する姿勢の調整によって、前記ポンプ床に対する前記ポンプケーシングの姿勢を調整するための環状の可動プレートと、
前記固定プレートに対して前記可動プレートを移動不可能に締結する締結部材と、
前記固定プレートの内周部に水密に取り付けられた第1端と、前記可動プレートの内周部に水密に取り付けられた第2端とを有し、弾性的に変形可能な筒状のシール部材と
を備える、ポンプ据付用ベース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ及びポンプ据付用ベースに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポンプ床に筒状のポンプケーシングを取り付けるための据付用水密ベースが開示されている。この水密ベースは、ポンプ床の貫通孔内に取り付けられた環状のベース本体と、ポンプケーシングに取り付けられてベース本体内に配置された環状の保持具と、これらの間に配置された一対の弾性リングとを備える。ポンプ据付後に何らかの原因でポンプ床が傾いた場合、テーパライナ等を用いてポンプ床に対するポンプケーシングの姿勢を調整する一方、水密ベースの弾性リングによってポンプ床下側の吸水槽とポンプ床上側のポンプ室との間の水密性維持を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の水密ベースでは、ポンプ床に対するポンプケーシングの姿勢の許容調整角度は、ベース本体と保持具の間の間隙寸法に依存する。姿勢の許容調整角度を広くしたい場合、ベース本体と保持具の間隙寸法を大きくする必要があるが、この場合にはベース本体又は保持具から弾性リングが離間するため、吸水槽とポンプ室の間の水密性を確保できない。よって、ポンプ床に対するポンプケーシングの姿勢の許容調整角度を拡張し、吸水槽とポンプ室の間の水密性を確保することについて、特許文献1の水密ベースには改善の余地がある。
【0005】
本発明は、ポンプ床に対するポンプケーシングの姿勢の許容調整角度範囲を拡張するとともに、吸水槽とポンプ室の間の水密性を確保することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、ポンプ床の貫通孔から下向きに突出する揚水管を有する筒状のポンプケーシングと、球面凹部及び前記球面凹部を相補する球面凸部のうちの一方からなる摺接部を有し、前記貫通孔を取り囲むように前記ポンプ床に取り付けられた環状の固定プレートと、前記球面凹部及び前記球面凸部のうちの他方からなる摺接部を有し、前記ポンプケーシングを取り囲むように前記ポンプケーシングに取り付けられるとともに、前記固定プレート上に載置され、前記固定プレートに対する姿勢の調整によって、前記ポンプ床に対する前記ポンプケーシングの姿勢を調整するための環状の可動プレートと、前記固定プレートに対して前記可動プレートを移動不可能に締結する締結部材と、前記固定プレートの内周部に水密に取り付けられた第1端と、前記可動プレートの内周部に水密に取り付けられた第2端とを有し、弾性的に変形可能な筒状のシール部材とを備える、ポンプを提供する。
【0007】
本発明の他の態様は、球面凹部及び前記球面凹部を相補する球面凸部のうちの一方からなる摺接部を有し、ポンプ床の貫通孔を取り囲むように前記ポンプ床に取り付けられた環状の固定プレートと、前記球面凹部及び前記球面凸部のうちの他方からなる摺接部を有し、筒状のポンプケーシングを取り囲むように前記ポンプケーシングに取り付けられるとともに、前記固定プレート上に載置され、前記固定プレートに対する姿勢の調整によって、前記ポンプ床に対する前記ポンプケーシングの姿勢を調整するための環状の可動プレートと、前記固定プレートに対して前記可動プレートを移動不可能に締結する締結部材と、前記固定プレートの内周部に水密に取り付けられた第1端と、前記可動プレートの内周部に水密に取り付けられた第2端とを有し、弾性的に変形可能な筒状のシール部材とを備える、ポンプ据付用ベースを提供する。
【0008】
本態様では、可動プレートが固定プレート上に載置されているため、固定プレートに対する可動プレートの姿勢の許容調整角度は、可動プレートを固定プレートの内側に配置した場合よりも広い。よって、ポンプ床に対するポンプケーシングの姿勢の許容調整角度を拡張できる。
【0009】
据付用ベースは、固定プレートの内周部に取り付けられた第1端と、可動プレートの内周部に取り付けられた第2端とを有する筒状のシール部材を備えている。つまり、シール部材は、固定プレートと可動プレートの境界を完全に覆っている。しかも、シール部材は弾性的に変形可能なため、固定プレートに対する可動プレートの姿勢調整(移動)に追従して変形する。よって、固定プレートと可動プレートとの間からの水の流出を防止できるため、ポンプ床下側の吸水槽とポンプ床上側のポンプ室との間の水密性を確保できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、ポンプ床に対するポンプケーシングの姿勢の許容調整角度範囲を拡張するとともに、吸水槽とポンプ室の間の水密性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1B】
図1Aの状態からポンプ床が傾いた状態を示す断面図。
【
図1C】
図1Bの状態からポンプケーシングの姿勢を調整した状態を示す断面図。
【
図3】
図2の固定プレート、据付プレート、及びカバーの分解斜視図。
【
図8】
図7Aよりも過度に傾いたポンプ床に対するポンプケーシングの姿勢調整状態を示す断面図。
【
図11A】据付プレートに対する座金本体の姿勢を変更した状態の平面図。
【
図11B】据付プレートに対する座金本体の姿勢を変更した他の状態の平面図。
【
図11C】据付プレートに対する座金本体の姿勢を変更した他の状態の平面図。
【
図12A】座金本体に対する回転座の姿勢を変更した状態の平面図。
【
図12B】座金本体に対する回転座の姿勢を変更した他の状態の平面図。
【
図12C】座金本体に対する回転座の姿勢を変更した他の状態の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0013】
図1Aから
図1Cは、本発明の実施形態に係るポンプ10を示す。このポンプ10は、排水機場のポンプ床1に取り付けられ、ポンプ床1の下側に位置する吸水槽2に流入した雨水等の液体を下流側へ排出する立軸ポンプである。
図1Aに示すように、ポンプ10は、ポンプケーシング12、回転軸23、羽根車25、及び据付用ベース30を備える。
【0014】
図1Aに示す初期状態では水平方向に延びるポンプ床1が、何らかの原因で
図1Bに示すように傾くことがある(水平方向に対する傾斜角α)。ポンプ床1の傾斜によって回転軸23が撓み、羽根車25がポンプケーシング12に干渉すると、排水運転時の負荷が過度になる。この過負荷を防ぐためには、
図1Cに示すように、ポンプケーシング12(揚水管13)の軸線ALを鉛直方向に延びる基準線PLに一致させる必要がある。
【0015】
据付用ベース30は、ポンプ床1に対してポンプケーシング12を据え付けるとともに、ポンプ床1に対するポンプケーシング12の姿勢(傾斜角度)を調整するために設けられている。本実施形態では、このような据付用ベース30を用いたポンプ10の据付構造において、ポンプ床1に対するポンプケーシング12の姿勢の許容調整角度範囲を拡張するとともに、ポンプ床1の上側に位置するポンプ室3と吸水槽2との間の水密性を確保するものである。
【0016】
以下、ポンプ10の構成について、具体的に説明する。
【0017】
図1Aを参照すると、ポンプケーシング12は、ポンプ床1に形成された貫通孔1aに上方から差し込まれ、据付用ベース30を介してポンプ床1に取り付けられている。ポンプケーシング12は、吸水槽2内に配置された揚水管13と、ポンプ室3内に配置された吐出管19とを備える。
【0018】
揚水管13は、揚水管本体14、ベーンケース15、及びベルマウス17を備え、これらが上側から下側へ順に接続された筒体である。そのうち、ベーンケース15の内部には、ベーンケース15と同軸で筒状の軸受ケーシング16が設けられている。ベルマウス17の下端は、吸水槽2内の水を吸い込む吸込口18である。
【0019】
吐出管19は、軸線が90度湾曲した吐出エルボ(曲がり管)20を備え、揚水管13の上端に接続されている。吐出エルボ20の下部には、据付用ベース30に固定するためのベースプレート21が設けられている。
【0020】
ベースプレート21は、円環状であり、揚水管13の軸線ALを中心として吐出管19の外周から径方向外向きに突出している。ベースプレート21の外径は、貫通孔1aの内径よりも大きい。但し、ベースプレート21は、周方向に断続的に設けられた環状であってもよいし、揚水管本体14の上端側に設けられてもよい。
【0021】
回転軸23は、吐出管19を貫通して揚水管13の軸線ALに沿って配置されている。回転軸23は、ポンプケーシング12の内部に配置された内側部23aと、ポンプケーシング12の外部に配置された外側部23bとを備える。内側部23aの下端は、軸受ケーシング16を貫通し、軸受ケーシング16と吸込口18との間に配置されている。外側部23bは、吐出管19から外部へ突出し、駆動モータ26に機械的に接続されている。
【0022】
回転軸23は、ポンプケーシング12の内部で水中軸受24によって回転可能に支持されている。水中軸受24の数は、揚水管13の全長によって定められており、本実施形態では2個用いられている。回転軸23のうち吐出エルボ20を貫通した部分は、軸封装置によって水密にシールされている。
【0023】
羽根車25は、軸受ケーシング16の下側に配置され、内側部23aの下端に取り付けられている。駆動モータ26によって回転軸23が回転されると、羽根車25は、回転軸23と一体に回転し、ポンプケーシング12内を通して吸水槽2内の液体を下流側へ排出する。
【0024】
図1A及び
図2を参照すると、据付用ベース30は、ポンプ床1に取り付けられた固定プレート32と、ポンプケーシング12に取り付けられた可動プレート34と、固定プレート32と可動プレート34を移動不可能に締結する締結部材37と、シール部材50とを備える。
【0025】
締結部材37による固定プレート32と可動プレート34の締結を解除することで、固定プレート32に対して可動プレート34の姿勢(角度と位置)を所定の範囲内で調整できる(
図7A、
図7B及び
図8参照)。これにより、ポンプ床1に対するポンプケーシング12の姿勢を調整できる(
図1C参照)。シール部材50は、固定プレート32に対する可動プレート34の姿勢がどの様な状態であっても、これらの間からの水の流出を防止する。
【0026】
次に、主に
図2及び
図3を参照して、据付用ベース30の構成について具体的に説明する。
【0027】
図2、
図3及び
図4を参照すると、固定プレート32は、固定部32a、摺接部(第1摺接部)32c、及び取付部32iを備える。固定プレート32は、鋳造によって円環状に形成されており、貫通孔1aを取り囲み、その軸線が貫通孔1aの中心を通る基準線PLと一致するようにポンプ床1に敷設されている。
【0028】
固定部32aは、固定プレート32の径方向の最も外側に設けられ、摺接部32cから径方向外側へ突出するフランジである。固定部32aの外径は、貫通孔1a及び揚水管13の外径よりも大きい。固定部32aには、軸方向に沿って固定部32aを貫通する貫通孔32bが、周方向に間隔をあけて複数設けられている。貫通孔32bにはアンカーボルト(図示せず)が差し込まれ、このアンカーボルトがポンプ床1に埋設される。これによりポンプ床1の定められた位置に固定プレート32が固定される。
【0029】
摺接部32cは、後述する可動プレート34の摺接部34eと協働して、固定プレート32に対する可動プレート34の姿勢を調整するために設けられている。摺接部32cは、固定部32aの径方向内側に隣接して設けられている。摺接部32cの内径は、揚水管13の外径よりも大きく、貫通孔1aの内径と概ね同一である。
【0030】
摺接部32cの上面には、所定曲率の球面状に窪む球面凹部からなる摺接面32dが設けられている。摺接面32dは、ポンプ床1に対する取付状態で吸水槽2に向けて窪んでいる。
【0031】
摺接部32cには、締結部材37を取り付ける取付孔32eが、周方向に間隔をあけて複数設けられている。本実施形態の取付孔32eは、固定プレート32に対して貫通孔32bと周方向の同じ角度位置に設けているが、その形成位置と数は必要に応じて変更可能である。なお、取付孔32eの具体的構造については、後で詳述する。
【0032】
取付部32iは、シール部材50の下端を水密に取り付けるために設けられている。取付部32iは、摺接部32cの径方向内側に隣接して設けられている。取付部32iは、固定プレート32の軸線(基準線PL)に向けて、摺接部32cから内向きに突出した円環状のフランジによって構成されている。取付部32iの内径は、揚水管13の外径よりも大きく、貫通孔1aの内径よりも小さい。本実施形態の取付部32iは、鋳造によって固定プレート32に対して一体に設けられているが、固定プレート32とは別に設けて所定の固着手段で後付けしてもよい。
【0033】
図2、
図3及び
図6を参照すると、可動プレート34は、載置部34a、摺接部(第2摺接部)34e、収容部34h、及び取付部34jを備える。可動プレート34は、鋳造によって円環状に形成されており、ポンプケーシング12を取り囲み、その軸線が揚水管13の軸線ALと一致するようにベースプレート21の下面に取り付けられている。
【0034】
載置部34aは、板状で円環状の上壁部34bと、円筒状の内壁部34cとを備える。上壁部34bには、ボルトによってベースプレート21に締結するためのボルト孔34dが、周方向に間隔をあけて複数設けられている。内壁部34cは、上壁部34bの内周縁から下向きに突出している。内壁部34cの上端は上壁部34bの下面に連なり、内壁部34cの下端は摺接部34eの上面に連なっている。
【0035】
摺接部34eは、載置部34aの下側(固定プレート32側)に連設され、固定プレート32の摺接部32c上に面接触した状態で載置される。摺接部34eの内径は、揚水管13の外径よりも大きく、貫通孔1a及び固定プレート32の摺接部32cの内径と同一である。摺接部34eの外径は、貫通孔1aの内径よりも大きく、固定プレート32の外径よりも小さい。
【0036】
摺接部34eの下面には、所定曲率の球面状に突出する球面凸部からなる摺接面34fが設けられている。摺接面34fの曲率は、固定プレート32の第1摺接面の曲率と同一である。つまり、可動プレート34の摺接部34eと固定プレート32の摺接部32cとは、相補する形状を呈する。但し、相補する形状とは、幾何学的に厳密な意味での同一曲率の球面状に限られず、可動プレート34と固定プレート32の相対移動を実現できる構成であればよい。固定プレート32の摺接面32d上を可動プレート34の摺接面34fが摺動することで、固定プレート32に対して可動プレート34を揺動可能である。これにより、ポンプ床1に対するポンプケーシング12の姿勢を調整できる。
【0037】
摺接部34eには、軸方向に沿って摺接部34eを貫通する遊嵌孔34gが、周方向に間隔をあけて複数設けられている。遊嵌孔34gは、可動プレート34の軸線と固定プレート32の軸線とを一致させた状態で、取付孔32eの直上に位置するようにそれぞれ設けられている。遊嵌孔34gの直径は、ポンプ床1が定められた許容範囲の最大角度で傾いた状態で、固定プレート32に対する可動プレート34の補正、つまり貫通させた締結部材37の移動を許容する寸法に設定されている。
【0038】
なお、固定プレート32に上向きに突出する球面凸部からなる摺接面32dを形成し、可動プレート34に上向きに窪む球面凹部からなる摺接面34fを形成してもよい。また、摺接面32d,34fのうち、一方には他方と硬度及び摩擦係数が異なる表面層を設けることが好ましい。例えば表面層は、例えばハードクロムメッキ又はフッ素樹脂コーティングによって形成される。
【0039】
収容部34hは、締結部材37のうち、摺接部34eから突出する上部を収容する円環状の空間である。収容部34hは、上壁部34bの下面、内壁部34cの外面、及び摺接部34eの上面によって画定されている。つまり、収容部34hは、可動プレート34の外周側から内周側に向けて窪むように、載置部34aに設けられている。
【0040】
収容部34hの径方向外側に位置する開口部分は、円筒状のカバー35によって開放可能に塞がれている。カバー35の内径は、上壁部34bの外径よりも大きく、摺接部34eの外径よりも小さい。カバー35の軸方向の寸法は、摺接部34eの上面から上壁部34bの上面までの距離と概ね同一である。
【0041】
上壁部34bには更に、締結部材37を露出させる複数の開口部34iが設けられている。個々の開口部34iは、上壁部34bを貫通する円形状の孔であり、遊嵌孔34gの直上に形成されている。
【0042】
取付部34jは、シール部材50の上端を水密に取り付けるために設けられている。取付部34jは、摺接部34eの径方向内側に隣接して設けられている。取付部34jは、可動プレート34の軸線(軸線AL)に向けて内向きに突出した円環状のフランジによって構成されている。取付部34jの内径は、揚水管13の外径よりも大きく、貫通孔1aの内径よりも小さい。本実施形態の取付部34jは、鋳造によって可動プレート34に対して一体に設けられているが、固定プレート32とは別に設けて所定の固着手段で後付けしてもよい。
【0043】
図2、
図7A及び
図7Bに示すように、締結部材37は、スタットボルト(ネジ軸)38、第1ナット(頭部)39、第2ナット(ナット)40、及び座金43を備える。そのうち、スタットボルト38の上側部分、第2ナット40、及び座金43が、前述した収容部34h内に収容される上部である。
【0044】
スタットボルト38の一端に第1ナット39を螺合させた状態で、固定プレート32の下方からスタットボルト38を取付孔32eに差し込み、第1ナット39を取付孔32e内に配置する。続いて、可動プレート34の遊嵌孔34gを通して収容部34h内に配置したスタットボルト38の上端側に座金43を配置し、第2ナット40を螺合する。これにより、固定プレート32に対して可動プレート34が締め付けられ、これらが移動不可能に締結される。また、第2ナット40を緩めること又は取り外すことで、固定プレート32と可動プレート34の締結が解除され、固定プレート32に対して可動プレート34が相対的に移動可能になる。
【0045】
図2を参照すると、シール部材50は、固定プレート32の取付部32iと可動プレート34の取付部34jとの間に架設された円筒状の部材であり、固定プレート32と可動プレート34との隙間を通した吸水槽2内の水の流出を防ぐ。シール部材50には、リン青銅やステンレス鋼などの金属によって形成された金属ベローズが用いられており、この金属ベローズは、気密性、伸縮性及びバネ性を有し、弾性的に変形可能である。本実施形態のシール部材50は、弾性率が異なる2種のベローズ51,52によって構成されている。
【0046】
第1ベローズ51と第2ベローズ52はそれぞれ、軸方向の下側から上側に向けて次第に縮径した第1部分51b,52bと、軸方向の下側から上側に向けて次第に拡径した第2部分51c,52cとを、軸方向に沿って交互に繰り返す筒状の外周壁51a,51aを備える。外周壁51a,51aのうち、径方向の最も小さい部分の内径は、揚水管13の外径よりも大きく、径方向の最も大きい部分の外径は、貫通孔1a、固定プレート32、及び可動プレート34それぞれの内径よりも外径が小さい。
【0047】
外周壁51aの両端には円環状のフランジ部51d,51eがそれぞれ設けられ、外周壁52aの両端には円環状のフランジ部52d,52eがそれぞれ設けられている。第1ベローズ51のフランジ部51d,51eは外周壁51aから径方向内向きに突出し、第2ベローズ52のフランジ部52d,52eは外周壁52aから径方向外向き突出している。但し、フランジ部51d,51e,52d,52eが突出する向き、及び径方向の突出寸法は、必要に応じて変更が可能である。
【0048】
第1ベローズ51の下端(シール部材50の第1端)に位置するフランジ部51eは、溶接等によって固定プレート32の取付部32iに水密に接合されている。これにより第1ベローズ51が固定プレート32及び可動プレート34の内周部に間隔をあけて取り付けられている。
【0049】
第2ベローズ52の上端(シール部材50の第2端)に位置するフランジ部52dは、溶接等によって可動プレート34の取付部34jに水密に接合されている。これにより第2ベローズ52が可動プレート34の内周部に間隔をあけて取り付けられている。
【0050】
第1ベローズ51の上端に位置するフランジ部51dと、第2ベローズ52の下端に位置するフランジ部52eとは、互いに面接触するように配置され、溶接等によって水密に接合されている。これにより第1ベローズ51と第2ベローズ52が、一体的に連なっている。
【0051】
なお、取付部32i,34jに対するフランジ部51e,52dの取り付け、フランジ部51d,52e同士の取り付けは、いずれも接合に限られず、パッキンを介在させてボルト止めによって行ってもよく、水密に取り付けることが可能な構成であれば必要に応じて変形が可能である。
【0052】
第1ベローズ51と第2ベローズ52それぞれの材質、又は外周壁51a,52aそれぞれの厚みは異なり、これによりそれぞれの弾性率k1,k2が異なっている。第1ベローズ51の弾性率k1は、第2ベローズ52の弾性率k2よりも小さく(k1<k2)、第2ベローズ52よりも第1ベローズ51の方が変形し易い。第1ベローズ51には移動した可動プレート34が干渉するため、第1ベローズ51の弾性率k1を大きくした場合、可動プレート34の干渉により外周壁51aが破損する虞があるうえ、干渉した可動プレート34の移動を妨げる可能性がある。これらの不都合を抑制するために、材質や厚みの変更によって得られる第1ベローズ51の弾性率k1(例えば1~3MPaから1×105MPa)は、第2ベローズ52の弾性率k2(例えば1~2×105MPa)よりも小さくされている。
【0053】
また、可動プレート34の内周部からシール部材50の第1外周壁51a,52aまでの距離Lが以下を満たすように、シール部材50の直径を設定することが好ましい。ここで、シール部材50の半径は、中心(シール部材50の軸線)から外周壁51a,52aのうち径方向の外端と内端の間の中央までの距離として定義される。また、以下の固定ボルト部穴径とは、可動プレート34の遊嵌孔34gの直径のことを意味する。
【0054】
[数1]
L>dh/2+Tk2
L:可動プレートからシール部材までの距離
dh:固定ボルト部穴径
Tk2:外周壁の厚み
【0055】
このように、可動プレート34とシール部材50の間の距離Lを設定することで、シール部材50による可動プレート34の移動阻害をより抑制でき、シール部材50の破損をより抑制できる。
【0056】
次に、据付用ベース30によるポンプケーシング12の姿勢調整作業の一例について説明する。
【0057】
図1Bに示すように、意図しない負荷によってポンプ床1が傾いた場合、まず、開口部34iを通して第2ナット40を操作して締結部材37を緩め、固定プレート32と可動プレート34の締結を解除する。
【0058】
続いて、
図7A及び
図7Bに示すように、固定プレート32の摺接部32cに対して可動プレート34の摺接部34eを移動(摺動)させ、固定プレート32に対して可動プレート34を揺動させる。また、
図1Cに示すように、揚水管13の軸線ALと基準線PLが一致するように、ポンプ床1に対してポンプケーシング12を移動させる。このように、固定プレート32に対する可動プレート34の姿勢(角度)を調整することで、ポンプ床1に対するポンプケーシング12の姿勢を調整できる。
【0059】
図1Cに示すように、ポンプケーシング12の姿勢調整によって揚水管13の軸線ALと基準線PLとを一致させると、開口部34iを通して第2ナット40をスタットボルト38に対して締め付ける。締結部材37によって固定プレート32に対して可動プレート34を再び締結することで、ポンプ床1に対するポンプケーシング12の姿勢が維持される。
【0060】
ここで、筒状のベース本体の内側に筒状の保持具を配置した特許文献1の水密ベースの場合、許容調整角度範囲は、概ね層間変位角1/200(0.3度)~1度(業界の推奨値)である。これに対して、固定プレート32の摺接部32cに対する可動プレート34の摺接部34eの許容調整角度範囲、つまりポンプ床1に対するポンプケーシング12の許容調整角度範囲は、概ね1度から2度である。しかも、本実施形態では、それ以上の角度調整を可能とするために調整部材55が用意されている。
【0061】
図8を参照すると、調整部材55は、固定プレート32と可動プレート34の間に介設される楔形の金属部材によって構成されている。調整部材55は、扇形状を呈し、径方向の外側から内側に向けて次第に厚みが薄くなっている。また、調整部材55の周方向の厚みは、周方向の中央部分が最も厚く、周方向の外側に向けて次第に薄くなっている。調整部材55は1種のみでなく、厚みが異なる複数種の調整部材55が用意されている。
【0062】
ポンプ床1の傾斜角α(
図1B参照)に応じて、複数種の調整部材55の中から最適な厚みの調整部材55を選択し、傾斜方向の下端(
図1Cにおいて左側)に位置するように、固定プレート32と可動プレート34の間に調整部材55を配置する(
図8参照)。これにより、固定プレート32に対する可動プレート34の許容調整角度範囲、つまりポンプ床1に対するポンプケーシング12の許容調整角度範囲を、調整部材55を用いない場合よりも拡張できる。例えば、調整部材55を用いない場合、前述のようにポンプケーシング12の許容調整角度範囲は概ね1度から2度であるのに対して、調整部材55を用いる場合、ポンプケーシング12の許容調整角度範囲を概ね5度まで拡張できる。
【0063】
このように、ポンプ床1が傾いた場合、据付用ベース30によって揚水管13の軸線ALが基準線PLに一致するように、ポンプケーシング12の姿勢を調整できる。よって、調整後のポンプ10では、排水運転の実行によって、羽根車25が揚水管13の内周面に干渉したり、回転軸23の軸受けや軸封装置19に過負荷が加わったりしないため、初期と同様の能力で液体を排出できる。
【0064】
図1Cに示す調整完了状態でポンプ床1は、傾斜角αで傾いたままである。
図1C及び
図7Aを参照すると、据付用ベース30のうち傾斜の下側に位置する部分では、固定プレート32の摺接部32cに対して可動プレート34の摺接部34eが径方向外側に移動し、固定プレート32の下端から可動プレート34の上端までの高さは、
図2に示す調整前の状態よりも高くなっている。
図1C及び
図7Bを参照すると、据付用ベース30のうち傾斜の上側に位置する部分では、固定プレート32の摺接部32cに対して可動プレート34の摺接部34eが径方向内側に移動し、固定プレート32の下端から可動プレート34の上端までの高さは、
図2に示す調整前の状態よりも低くなっている。これに伴い、固定プレート32の取付部32iと可動プレート34の取付部34jとの間隔は、据付用ベース30の周方向の位置でそれぞれ異なっている。また、固定プレート32の軸線と可動プレート34の軸線の角度も異なっている。
【0065】
図7A及び
図7Bを参照すると、シール部材50は、可動プレート34の移動に追従して変形する。具体的には、
図7Aに示すように、シール部材50のうちポンプ床1の傾斜の下側に位置する部分は、可動プレート34の移動に従って傾斜するとともに、シール部材50の軸方向に延びている。
図7Bに示すように、シール部材50のうちポンプ床1の傾斜の上側に位置する部分は、可動プレート34の移動に従って傾斜するとともに、シール部材50の軸方向に縮んでいる。
【0066】
これにより、固定プレート32の取付部32i、可動プレート35の取付部34j、及びシール部材50によって区画された内部空間と外部空間を、水密状態に維持できる。そのため、ポンプ床1の貫通孔1aまで吸水槽2内に水が溜まった状態であっても、シール部材50の内部から外部に水が流出することを防止できる。よって、固定プレート32と可動プレート34の間からポンプ室3への水の流出を防止できる。特に、
図8に示すように、調整部材55を用いて角度調整を行った場合、固定プレート32と可動プレート34の間の少なくとも一部には、隙間が生じ得る。しかし、このような状態であっても、シール部材50によって吸水槽2からポンプ室3への水の流出を確実に防止できる。
【0067】
次に、締結部材37の構成について、より具体的に説明する。
【0068】
図2、
図7A及び
図7Bを参照すると、固定プレート32の取付孔32eの軸線A1の角度は、ポンプ床1の傾きに依存する。可動プレート34の遊嵌孔34gの軸線A2の角度は、ポンプケーシング12の傾きに依存する。これらの軸線A1,A2は、
図2に示す初期状態では一致しているが、
図7A及び
図7Bに示すように、傾斜したポンプ床1に対してポンプケーシング12の姿勢を調整すると不一致となる。
【0069】
締結部材37は、軸線A1,A2の位置及び角度が許容範囲内で異なる場合でも、固定プレート32に対する可動プレート34の締結を可能とする。
【0070】
スタットボルト38は、外周部にネジ溝が形成されたネジ軸である。スタットボルト38は、固定プレート32の取付孔32e内に配置された第1ナット39に螺合され、固定プレート32の摺接部32cから突出している。スタットボルト38の上端は、可動プレート34の遊嵌孔34gを貫通して収容部34h内に配置されている。可動プレート34の移動によって据付用ベース30の高さが変化するため、全長が異なる複数種のスタットボルト38を用意することが好ましい。
【0071】
第1ナット39は、前述のように、スタットボルト38の下端に取り付けられ、取付孔32e内に配置されている。第1ナット39は、上向きに突出する球面状の突部39aを有する。なお、第1ナット39をスタットボルト38の下端に一体に設けてもよい。つまり、スタットボルト38及び第1ナット39の代わりに、ネジ軸の一端に頭部を一体に備えるボルトを用いてもよい。
【0072】
図4及び
図5を参照すると、固定プレート32の取付孔32eは、摺接部32cの下面から摺接面32dかけて貫通している。取付孔32eは、収容部32f、球面受部32g、及び挿通部32hを備え、この順で摺接部32cの下側から上側へ互いに連通して設けられている。
【0073】
収容部32fは円柱状の空間である。収容部32fの直径は、第1ナット39のうち、スタットボルト38の軸線に対して直交する方向の寸法よりも大きい。
図2を参照すると、ポンプ床1に面する収容部32fの下端開口は、弾力性を有する樹脂等によって形成されたキャップ41によって閉塞され、水の侵入が防止されている。
【0074】
図2、
図4及び
図5を参照すると、球面受部32gは収容部32fに連通した空間である。球面受部32gの上側部分には、突部39aを相補する球面状の窪みが設けられている。収容部32fの下端から球面受部32gの上端までの寸法は、スタットボルト38の軸方向における第1ナット39の寸法よりも大きい。
【0075】
挿通部32hは、球面受部32gに連通した円柱状の空間である。挿通部32hの直径は、スタットボルト38の揺動を許容する大きさである。より具体的には、挿通部32hの直径は、スタットボルト38の直径よりも大きく、遊嵌孔34gの直径よりも小さい。
【0076】
図2、
図7A及び
図7Bを参照すると、第2ナット40は、スタットボルト38の上端に取り付けられている。第2ナット40は、下向きに突出する球面状の突部40aを有する。第2ナット40と可動プレート34の摺接部34eの間には、突部40aを相補する球面状の窪み(凹部45b)を備える座金43が配置されている。
【0077】
図2を参照すると、座金43は、可動プレート34の複数の遊嵌孔34gにそれぞれ配置されている。座金43は、座金本体(第1部材)44と回転座(第2部材)45とを備える。回転座45は、スタットボルト38を挿通する挿通孔45aを備える。座金43は、座金本体44と回転座45の姿勢を調整することで、回転軸23が延びる方向から見て、遊嵌孔34gに対する挿通孔45aの位置を調整可能である。
【0078】
図2及び
図9を参照すると、座金本体44は、摺接部34eの上面に移動可能に配置された所定の厚みの円板状である。座金本体44の外径は、遊嵌孔34gの内径よりも大きく、可動プレート34の径方向における摺接部34eの上面の寸法よりも小さい。座金本体44には、遊嵌孔34gに連通する連通孔44aと、回転座45を回転可能に保持する保持部44bとが設けられている。
【0079】
連通孔44aは、スタットボルト38が貫通される円形状の孔である。座金本体44が延びる方向(つまり軸線ALと直交する方向)へのスタットボルト38の相対的な移動を許容するように、連通孔44aの直径はスタットボルト38の直径よりも大きく形成されている。
図10及び
図11Aから
図11Cに示すように、遊嵌孔34gに対する連通孔44aの位置は、可動プレート34に対する座金本体44の姿勢(回転角度位置)によって変更可能である。
【0080】
具体的には、
図2及び
図10を参照すると、遊嵌孔34gの軸線A2上に座金本体44の中心点O1を配置した状態で、連通孔44aは次のように形成されている。連通孔44aの中心点O2は、座金本体44の中心点O1(遊嵌孔34gの軸線A2)と間隔D1をあけて位置する。この間隔D1は、遊嵌孔34gの半径r1の半分未満に設定されている。連通孔44aの半径r2は、遊嵌孔34gの半径r1よりも小さく、遊嵌孔34gの半径r1の半分よりも大きい。より具体的には、連通孔44aの半径r2は、平面視で遊嵌孔34gの内周面に内接する寸法に設定されている。
【0081】
図2及び
図9を参照すると、保持部44bは、円形状に形成された凹部からなり、その円形状の底面に連通孔44aが同心円状に設けられている。保持部44bの直径は連通孔44aの直径よりも大きい。保持部44bの軸方向の深さは、本実施形態では回転座45の軸方向の厚みと同一にしているが、回転座45の厚みとは異なっていてもよい。
【0082】
回転座45は、保持部44bの直径と概ね同一直径の円板状で、保持部44b内(座金本体44上)に回転可能に配置されている。回転座45には、連通孔44aに連通し、スタットボルト38が挿通される挿通孔45aが設けられている。
【0083】
挿通孔45aは、回転座45の軸方向に貫通する円形状の孔である。挿通孔45aの直径は、スタットボルト38の直径よりも大きく、挿通孔45aの軸線に対して定められた角度で傾斜したスタットボルト38を挿通可能な大きさに設定されている。
図10に示すように、座金本体44の中心点O1から挿通孔45aが最も離れて位置する回転座45の姿勢において、挿通孔45aは遊嵌孔34g内に位置する。
図12Aから
図12Cに示すように、連通孔44aに対する挿通孔45aの位置は、座金本体44に対する回転座45の姿勢(回転角度位置)によって変更可能である。
【0084】
具体的には、
図10に示すように、挿通孔45aの中心点O3は、回転座45の中心(つまり連通孔44aの中心点O2)と間隔D2をあけて位置する。この間隔D2は、前述した間隔D1と同一に設定されている。これにより、保持部44b内での回転座45の回転によって、挿通孔45a(つまりスタットボルト38)は、座金本体44の中心点O1(つまり遊嵌孔34gの軸線A2)に位置することが可能である(
図10B参照)。
【0085】
回転座45には、第2ナット40の球面状の突部40aが嵌合する凹部45bが形成されている。凹部45bは、突部40aを相補する球面状の窪みであり、回転座45を軸方向から見て挿通孔45aと同心円状に設けられている。
【0086】
このように構成された座金43は、可動プレート34に対する座金本体44の自転と、座金本体44に対する回転座45の自転とを、個別に行うことが可能である。これらの自転によって、遊嵌孔34gに対する連通孔44aの位置と、連通孔44aに対する挿通孔45aの位置とを調整できる。その結果、遊嵌孔34g内の所定位置に挿通孔45a(つまりスタットボルト38)を配置できる。
【0087】
具体的には、
図10及び
図11Aから
図11Cに示すように、遊嵌孔34gの軸線A2を中心として座金本体44が自転することにより、遊嵌孔34g内において連通孔44a(回転座45)が軸線A2(中心点O1)を中心として公転する。連通孔44aは、回転座45が特定の姿勢の場合には遊嵌孔34g内の一部にしか連通しないが、回転座45の自転によって遊嵌孔34g内の全領域に順次連通可能である。なお、座金本体44の中心点O1から挿通孔45aが最も離れて位置する回転座45の姿勢の場合、挿通孔45aは、遊嵌孔34gの内周面に沿って公転する(回転軌跡T1)。
【0088】
図10及び
図12Aから
図12Cに示すように、中心点O2を中心として回転座45が自転することにより、連通孔44a内において挿通孔45aが中心点O2を中心として公転する(回転軌跡T2)。これにより、挿通孔45aは、連通孔44a内において中心点O1と中心点O3の間の所定位置に移動できる。
【0089】
このように、座金本体44の自転によって遊嵌孔34gの周方向における挿通孔45aの配置領域が調整され、回転座45の自転によって遊嵌孔34gの径方向における挿通孔45aの位置が調整される。これにより、遊嵌孔34g内における取付孔32eの上方に挿通孔45aを配置し、挿通孔45aを貫通させたスタットボルト38に第2ナット40を螺合できる。
【0090】
例えば、
図1Aに示すように、ポンプ床1が水平な場合、基準線PLに一致させた固定プレート32の軸線と可動プレート34の軸線を一致させることで、基準線PLとポンプケーシング12の軸線ALとが一致する。この場合、
図2に示すように、取付孔32eの軸線A1と遊嵌孔34gの軸線A2も一致する。そのため、
図12Bに示すように、座金本体44に対する回転座45の姿勢は、挿通孔45aが座金本体44の中心点O1に位置するように、調整される。
【0091】
図1Bに示すように、ポンプ床1が左下がりに傾いた場合、ポンプケーシング12の軸線ALを基準線PLと一致させるには、
図1Cに示すように、ポンプ床1に対してポンプケーシング12を時計回りに揺動させる必要がある。この場合、ポンプケーシング12と一緒に可動プレート34が固定プレート32に対して移動するため、
図7A及び
図7Bに示すように、取付孔32eの軸線A1と遊嵌孔34gの軸線A2とは離反する。
【0092】
ポンプ床1が右下がりに傾いた場合、ポンプケーシング12の軸線ALを基準線PLと一致させるには、ポンプ床1に対してポンプケーシング12を反時計回りに揺動させる必要がある。この場合、ポンプケーシング12と一緒に可動プレート34が固定プレート32に対して移動するため、
図7A及び
図7Bとは逆向き(線対称)に、取付孔32eの軸線A1と遊嵌孔34gの軸線A2とは離反する。
【0093】
座金43の挿通孔45a(スタットボルト38)は、前述のように遊嵌孔34g内の希望位置に配置可能である。よって、遊嵌孔34gに対する座金本体44の姿勢と、座金本体44に対する回転座45の姿勢とを調整することで、
図7A及び
図7Bに示すように、取付孔32eの軸線A1上に挿通孔45aを配置し、遊嵌孔34gの軸線A2上に座金本体44の中心点O1を一致させることができる。
【0094】
このように構成したポンプ10は、以下の特徴を有する。
【0095】
可動プレート34は固定プレート32上に載置されているため、固定プレート32に対する可動プレート34の姿勢の許容調整角度は、可動プレート34を固定プレート32の内側に配置した場合よりも広い。よって、ポンプ床1に対するポンプケーシング12の姿勢の許容調整角度を拡張できる。
【0096】
据付用ベース30は、固定プレート32の取付部(内周部)32iに取り付けられたフランジ部51e(第1端)と、可動プレート34の取付部(内周部)34jに取り付けられたフランジ部51d(第2端)とを有するシール部材50を備えている。つまり、シール部材50は、固定プレート32と可動プレート34の境界を完全に覆っている。しかも、シール部材50は弾性的に変形可能なため、固定プレート32に対する可動プレート34の姿勢調整(移動)に追従して変形する。よって、固定プレート32と可動プレート34との間からの水の流出を防止できるため、ポンプ床1の下側の吸水槽2とポンプ床1の上側のポンプ室3との間の水密性を確保できる。
【0097】
固定プレート32の摺接部32cと可動プレート34の摺接部34eの間には、パッキン等のシール部材は配置されていない。よって、固定プレート32に対する可動プレート34の移動抵抗を低減できるため、据付用ベース30を介してポンプケーシング12の姿勢を調整する作業性を向上できる。
【0098】
シール部材50は、固定プレート32に取り付けられた第1ベローズ51と、可動プレート34に取り付けられた第2ベローズ52とを有し、第1ベローズ51の弾性率k1は、第2ベローズ52の弾性率k2よりも小さい。つまり、第2ベローズ52よりも第1ベローズ51の方が変形し易い。そのため、可動プレート34の一部が第1ベローズ51に干渉したとしても、第2ベローズ52よりも柔軟性を有する第1ベローズ51の破損を抑制できる。また、第1ベローズ51への当接による可動プレート34の移動の妨げを抑制できるため、姿勢の許容調整角度を確実に拡張できる。
【0099】
固定プレート32と可動プレート34の間に介設された調整部材55を備える。そのため、固定プレート32に対する可動プレート34の許容調整角度を大幅に拡張できる。
【0100】
なお、本発明は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0101】
例えば、シール部材50は、2個のベローズ51,52によって構成したが、1個のベローズによって構成してもよいし、3個以上(複数)のベローズによって構成してもよい。また、シール部材50は、伸縮可能なベローズ51,52に限られず、弾性的に変形可能なものであれば、取付部32iと取付部34jの間隔よりも長尺で伸縮不可能な筒状部材であってもよく、必要に応じて変更が可能である。
【0102】
シール部材50を2以上の部材で構成する場合、個々の部材の弾性率は同じにしてもよいし、固定プレート32に取り付けた第1部材の弾性率を可動プレート34に取り付けた第2部材の弾性率よりも大きくしてもよい。
【0103】
座金43は、座金本体44と、座金本体44に対して回転可能に配置された回転座45とを備え、大径の遊嵌孔34gの所定位置に締結部材37の挿通孔45aを配置可能な構成としたが、単一部材からなる汎用の球面座金によって構成してもよい。
【0104】
ポンプ10は、垂直方向に延びる回転軸23を備える立軸ポンプに限られず、垂直方向に延びる揚水管13を備える構成であれば、水平方向に延びる回転軸を備える横軸ポンプであってもよい。
【0105】
排水機場は、ポンプ床1の上方に駆動モータ26の上端を保持するモータ床を備える二床式であってもよく、このような排水機場であっても本発明のポンプ10及び据付用ベース30は適用可能である。
【符号の説明】
【0106】
1 ポンプ床
1a 貫通孔
2 吸水槽
3 ポンプ室
10 ポンプ
12 ポンプケーシング
13 揚水管
14 揚水管本体
15 ベーンケース
16 軸受ケーシング
17 ベルマウス
18 吸込口
19 吐出管
20 吐出エルボ
21 ベースプレート
23 回転軸
23a 内側部
23b 外側部
24 水中軸受
25 羽根車
26 駆動モータ
30 据付用ベース
32 固定プレート
32a 固定部
32b 貫通孔
32c 摺接部
32d 摺接面
32e 取付孔
32f 収容部
32g 球面受部
32h 挿通部
32i 取付部
34 可動プレート
34a 載置部
34b 上壁部
34c 内壁部
34d ボルト孔
34e 摺接部
34f 摺接面
34g 遊嵌孔
34h 収容部
34i 開口部
34j 取付部
35 カバー
37 締結部材
38 スタットボルト
39 第1ナット
39a 突部
40 第2ナット
40a 突部
41 キャップ
43 座金
44 座金本体
44a 連通孔
44b 保持部
45 回転座
45a 挿通孔
45b 凹部
50 シール部材
51 第1ベローズ51
51a 外周壁
51b 第1部分
51c 第2部分
51d フランジ部
51e フランジ部(第1端)
52 第2ベローズ
52a 外周壁
52b 第1部分
52c 第2部分
52d フランジ部(第2端)
52e フランジ部
55 調整部材
PL 基準線
AL 揚水管の軸線