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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】基地局装置及び同期制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 56/00 20090101AFI20231207BHJP
   H04W 72/0446 20230101ALI20231207BHJP
   H04W 88/08 20090101ALI20231207BHJP
   H04W 92/16 20090101ALI20231207BHJP
【FI】
H04W56/00 110
H04W72/0446
H04W88/08
H04W92/16
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020185402
(22)【出願日】2020-11-05
(65)【公開番号】P2022074947
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】椎葉 比路樹
【審査官】新井 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-192658(JP,A)
【文献】特開2007-006196(JP,A)
【文献】特開2020-010404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
H04L 7/00 - 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非公衆セルラネットワークに含まれ、TDD方式の無線通信を行う基地局装置であって、
所定の周波数帯を利用してユーザ装置と前記無線通信を行う第1及び第2の無線ユニットと、
前記第1及び第2の無線ユニットを制御する制御部と、
同期信号を受信する受信部と、を備え、
前記制御部は、前記受信部において前記同期信号を正常に受信できない場合、前記基地局装置を運用する事業者とは異なる他の事業者が運用する他の基地局装置から前記第1の無線ユニットにおいて受信した第1の時刻情報に基づいて、前記第1及び第2の無線ユニットを同期させる、基地局装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の無線ユニットと接続され、前記第1及び第2の無線ユニットを制御する分散ユニットと、
前記分散ユニットと接続され、前記分散ユニットを制御する集約ユニットと、を備え、
前記制御部は、前記分散ユニット又は前記集約ユニットに設けられる、請求項1記載の基地局装置。
【請求項3】
前記制御部は、複数の前記他の基地局装置から各々時刻情報を受信したときは、電波強度の最も高い前記第1の時刻情報に基づいて、前記第1及び第2の無線ユニットを同期させる、請求項1記載の基地局装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1の無線ユニットにおいて複数の前記他の基地局装置から各々受信した、時刻情報と、電波強度、及び前記他の基地局装置の識別情報に基づいて、電波強度も最も高い前記第1の時刻情報を決定する、請求項3記載の基地局装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1及び第2の無線ユニットにおいて、複数の前記他の基地局装置から各々受信した時刻情報のうち、電波強度の最も高い前記第1の時刻情報に基づいて、前記第1及び第2の無線ユニットを同期させる、請求項1記載の基地局装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記受信部において前記同期信号を正常に受信できない場合、前記第1の無線ユニットに対して、前記他の基地局装置に対する無線電波のサーチを指示する、請求項1記載の基地局装置。
【請求項7】
所定の周波数帯を利用してユーザ装置と無線通信を行う第1及び第2の無線ユニットと、前記第1及び第2の無線ユニットを制御する制御部と、同期信号を受信する受信部とを有し、非公衆セルラネットワークに含まれ、TDD方式の無線通信を行う基地局装置における同期制御方法であって、
前記受信部が、前記同期信号を正常に受信できたか否かを判断するステップと、
前記制御部が、前記受信部において前記同期信号を正常に受信できない場合、前記基地局装置を運用する事業者とは異なる他の事業者が運用する他の基地局装置から前記第1の無線ユニットにおいて受信した時刻情報に基づいて、前記第1及び第2の無線ユニットを同期させるステップと、を含む同期制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局装置及び同期制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、地域ニーズ又は個別ニーズに応じて様々な主体が利用可能な第5世代移動通信システムが注目されつつある。このような移動通信システムを、例えば、ローカル5G(5th Generation)と称する場合がある。
【0003】
ローカル5Gでは、携帯通信事業者による全国向けの5Gシステムとは別に、地域企業や自治体等の様々な主体が自ら建物や敷地内でスポット的にネットワークを構築することが可能である。そのため、ローカル5Gは、地域などに密着した様々なニーズに用いられることが期待されている。
【0004】
他方、移動通信システムの仕様の検討及び作成を行う標準化プロジェクトである3GPP(3rd Generation Partnership Project)では、非公衆ネットワーク(NPN: Non-Public Networks)の標準化が進められている。
【0005】
3GPPでは、非公衆ネットワークとして、5G公衆網とは独立したSNPN(Stand-alone NPN)と、5G公衆網の全部又は一部を共有するPNI NPN(Public Network Integrated NPN)とが規定されている。
【0006】
また、移動通信システムにおいては、従来から、TDD(Time Division Duplex)方式が用いられる場合がある。TDD方式は、例えば、下りリンク方向(基地局から端末へ向けた通信リンク方向)の通信と上りリンク方向(端末から基地局へ向けた通信リンク方向)の通信とが同一の周波数帯域を用いて異なるタイミングで行われる方式である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】ローカル5G導入に関するガイドライン、令和元年12月、総務省
【文献】3GPP TS38.300 V16.2.0 (2020-07)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、TDD方式では、各基地局間でタイミングがずれた場合、上りリンク方向の時間と下りリンク方向の時間とが同一のタイミングとなる場合がある。かかる場合、基地局において干渉が発生する。干渉の発生により、基地局は安定したサービスを継続して端末へ提供することができなくなってしまう。
【0009】
そこで、本発明は、安定したサービスを継続して提供できるようにした基地局装置及び同期制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様に係る基地局装置は、非公衆セルラネットワークに含まれ、TDD方式の無線通信を行う。基地局装置は、第1及び第2の無線ユニットと、制御部と、受信部とを備える。第1及び第2の無線ユニットは、所定の周波数帯を利用してユーザ装置と無線通信を行う。制御部は、第1及び第2の無線ユニットを制御する、受信部は、同期信号を受信する。制御部は、受信部において同期信号を正常に受信できない場合、基地局装置を運用する事業者とは異なる他の事業者が運用する他の基地局装置から第1の無線ユニットにおいて受信した第1の時刻情報に基づいて、第1及び第2の無線ユニットを同期させる。
【0011】
第2の態様に係る同期制御方法は、所定の周波数帯を利用してユーザ装置と無線通信を行う第1及び第2の無線ユニットと、第1及び第2の無線ユニットを制御する制御部と、同期信号を受信する受信部とを有し、非公衆セルラネットワークに含まれ、TDD方式の無線通信を行う基地局装置における同期制御方法である。同期制御方法は、受信部が、同期信号を正常に受信できたか否かを判断するステップを含む。また、同期制御方法は、制御部が、受信部において同期信号を正常に受信できない場合、基地局装置を運用する事業者とは異なる他の事業者が運用する他の基地局装置から第1の無線ユニットにおいて受信した時刻情報に基づいて、第1及び第2の無線ユニットを同期させるステップを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、安定したサービスを継続して提供できるようにした基地局装置及び帯域幅制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、移動通信システムの構成例を示す図である。
図2図2は、O-RANフロントホールのプロトコルスタックの例を示す図である。
図3図3(A)はCU、図3(B)はDUの構成例をそれぞれ示す図である。
図4図4は、RUの構成例を示す図である。
図5図5は、移動通信システムの構成例を示す図である。
図6図6は、移動通信システムの構成例を示す図である。
図7図7は、動作例を示す図である。
図8図8は、移動通信システムの構成例を示す図である。
図9図9(A)は同期している場合の動作例、図9(B)は同期していない場合の動作例をそれぞれ示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して実施形態について説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0015】
(移動通信システムの構成例)
まず、一実施形態に係る移動通信システム10の構成例について説明する。図1は、一実施形態に係る移動通信システム10の構成例を示す図である。
【0016】
図1に示すように、移動通信システム10は、gNB(next generation Node B)100とUE(User Equipment)(又はユーザ装置。以下、「UE」と称する場合がある。)200-1~200-3を有する。
【0017】
一実施形態に係るgNB100は、基地局装置の一例である。gNB100は、3GPPの5Gシステムにおける基地局装置として機能する。gNB100は、UE200-1~200-3と無線通信を行って、UE200-1~200-3に対して、様々なサービスを提供する。
【0018】
また、gNB100は、ローカル5Gシステムに含まれる基地局装置である。ローカル5Gシステムは、非公衆セルラネットワークであってもよい。非公衆セルラネットワークは、上述したNPNの一例であってもよい。また、ローカル5Gシステムは、建物内又は土地内において、建物又は土地の所有者等が自ら構築した5Gシステムであってもよい。移動通信システム10は、非公衆セルラネットワークの一例である。
【0019】
ローカル5GシステムにおけるgNB100は、所定の周波数帯を用いて無線通信が行われる。所定の周波数帯の例として、例えば、4.5GHz帯がある。本実施形態におけるgNB100は、ローカル5Gシステムの基地局装置が使用する所定の周波数帯であれば、4.5GHz帯以外の周波数帯であってもよい。
【0020】
UE200-1~200-3は、例えば、スマートフォン、フィーチャーフォン、IoT(Internet of Things)機器、パーソナルコンピュータ、車両若しくは車両に設けられる装置、飛行体若しくは飛行体に設けられる装置である。図1の例では、3台のUE200-1~200-3が示されているが、1~2台でもよいし、4台以上あってもよい。
【0021】
なお、図1には、人工衛星300が示されている。gNB100は、人工衛星300から送信された同期信号(Global Navigation Satellite System)信号を受信することが可能である。このような同期信号としては、GNSS(Global Navigation Satellite System)信号がある。GPS(Global Positioning System)信号は、GNSS信号の一例である。
【0022】
(gNB100の構成例)
図1に示すように、gNB100は、CU(Centralized Unit)110と、複数のDU(Distributed Unit)120-1,120-2、及び複数のRU(Radio Unit)130-1~130-4を有する。
【0023】
CU110は、集約ユニットと称される場合がある。CU110は、各DU120-1,120-2と接続されて、複数のDU120-1,120-2を制御する。CU110は、外部のネットワークと接続されて、外部のネットワークとの間で、データの送受信が行われてもよい。
【0024】
各DU120-1,120-2は、分散ユニットと称される場合がある。各DU120-1,120-2は、CU110と接続される。また、DU120-1は、RU130-1,130-2と接続され、DU120-2は、RU130-3,130-4と接続される。
【0025】
なお、図1の例では、DU120-2が同期信号を受信することができ、DU120-1は同期信号を受信しないものとして説明する。
【0026】
各RU130-1~130-4は、無線ユニットと称される場合がある。RU130-1,130-2は、DU120-1に制御されて、TDD方式による無線通信を行う。また、RU130-3,130-4は、DU120-2に制御されて、TDD方式による無線通信を行う。
【0027】
すなわち、各RU130-1~130-4は、gNB100からUE200-1~200-3への下りリンク方向の第1の通信と、UE200-1~200-3からgNB100への上りリンク方向の第2の通信とが、同一の周波数帯域を用いて異なるタイミングで行われる。さらに、各RU130-1~130-4は、同期信号に基づいて、互いに同期して第1の通信と第2の通信を行う。
【0028】
図9(A)と図9(B)はTDDシステムにおける動作例を表す図である。このうち、図9(A)は、各RU130-1,130-2が同期信号と同期がとれている場合の動作例を表している。なお、図9(A)と図9(B)では、RU130-1~130-4のうち、代表して、RU130-1,130-2の例を示している。
【0029】
図9(A)に示すように、RU130-1とRU130-2とは、同じタイミングで、D(Downlink方向)と、S(Special Frame)、及びU(Uplink方向)の通信が行われている。「D」は下りリンク方向の通信が行われるサブフレーム、「U」は上りリンク方向の通信が行われるサブフレームをそれぞれ表す。また、「S」は、スペシャルサブフレームであり、上りリンク期間、下りリンク期間、及びガード区間が含まれる。
【0030】
また、図9(A)では、「GPS(Global Positioning System)基準」が示されている。gNB100は、受信した同期信号に基づいて、「GPS基準」のタイミングで、各RU130-1~130-4のタイミング同期を行う。図9(A)の例では、「GPS基準」のタイミングで、各RU130-1,130-2が「D」となるようになされている。
【0031】
図9(A)の例において、例えば、「D」のタイミングでは、RU130-1から無線信号が送信される。その無線信号はRU130-2に届く。しかし、RU130-2は、RU130-1と同じタイミングで無線信号の送信を行う。そのため、RU130-2は、RU130-1から送信された無線信号を受信しない。よって、干渉は発生しない。
【0032】
一方、図9(B)は、干渉が発生する場合の動作例を表している。図9(B)に示すように、「GPS基準」において、GPS信号を正常に受信することができずに、RU130-1,130-2間でタイミングが同期していない状態となっている。
【0033】
すなわち、「D」、「S」、「U」の各タイミングがRU130-1,130-2間で異なる状態となる。例えば、図9(B)の矢印で示されるように、RU130-1が「D」のタイミングで、RU130-2が「U」のタイミングとなっている。この場合、RU130-1は、「D」のタイミングで、UE200-1へ無線信号を送信し、その無線信号は、RU130-2へ届く。RU130-2は、「U」のタイミングのため、RU130-1から送信された無線信号を受信する。従って、RU130-2において干渉が発生する。同様に、RU130-1においても干渉が発生する。
【0034】
このような干渉の発生に対して、gNB100は、無線電波の送信を停波すると、UE200-1~200-3に対して、継続したサービスを提供できない。また、このような干渉が発生したとしても、gNB100が、そのままサービスの提供を継続すると、UE200-1~200-3では、干渉の影響から、サービスの提供を受けたり受けることができなかったりする。そのため、UE200-1~200-3は、安定したサービスを受けることができない。
【0035】
そこで、本実施の形態におけるgNB100は、同期信号を正常に受信できなかった場合、他の事業者の基地局から受信した時刻情報に基づいて、RU130-1~130-4を同期させる。
【0036】
具体的には、非公衆セルラネットワークに含まれ、TDD方式で無線通信を行うgNB100において、CU110の制御部は、DU120-2の受信部において同期信号を正常に受信できない場合、gNB100を運用する事業者とは異なる他の事業者が運用する他の基地局からRU130-1において受信した時刻情報に基づいて、RU130-1~130-4を同期させる。
【0037】
これにより、gNB100では、各RU130-1~130-4を同期させることが可能となる、従って、gNB100では、無線電波の送信を停波させることなく、UE200-1~200-3に対して、継続したサービスを提供できる。また、gNB100は、干渉の発生がなく、UE200-1~200-3に対して、安定したサービスを提供できる。
【0038】
なお、以下では、とくに断らない限り、DU120-1,120-2を、DU120と称する場合がある。また、RU130-1~130-4をRU130、UE200-1~200-3をUE200とそれぞれ称する場合がある。
【0039】
(CU110、DU120、RU130の機能分離について)
本実施の形態におけるgNB100において、DU120とRU130との間は、O-RAN(Open Radio Access Network)フロントホール仕様が採用されている。ただし、DU120とRU130との間は、他の通信プロトコルを使用することもでき、O-RANフロントホール仕様(以下、「O-RAN」と称する場合がある。)の使用には限定されない。従って、O-RANの例は、1つの実施例にすぎない。
【0040】
O-RANは、複数の通信事業者を含むO-RAN Allianceによって策定された仕様である。O-RANでは、CU110、DU120、RU130の機能分離について、Split Option 7-2xが採用されている。
【0041】
図2は、Split Option 7-2xによるCU110、DU120、RU130の機能分離の例を表す図である。図2に示すように、CU110は、RRC(Radio Resource Control)とSDAP(Service Data Adaptation Protocol)、及びPDCP(Packet Data Convergence Protocol)の各レイヤの機能を実行することが可能である。また、DU120は、RLC(Radio Link Control)、MAC(Media Access Control)、PHY-High(Physical-High)(PHYの一部)の各レイヤの機能を実行することが可能である。さらに、RU130は、PHY-Low(PHYの一部)とRF(Radio Frequency)の各レイヤの機能を実行することが可能である。
【0042】
O-RANの特徴の一つとして、PHYレイヤの一部をRU130に配置させている。これにより、例えば、DU120における負担軽減を図ることができる。
【0043】
図2に示すように、PHY-HIghレイヤでは、ユーザプレーンの下り方向においては、MACレイヤからのデータに対して、誤り訂正符号化処理、スクランブリング処理、変調処理、レイヤマッピング等の処理が行われる。PHY-HIghレイヤでは、これらの処理により、周波数領域におけるOFDM(Orthogonal Frequency Division)信号のIQ(In-phase and Quadrature)サンプル列を生成する。DU120は、このIQサンプル列を、RU130へ送信する。
【0044】
RU130では、OFDM信号のIQサンプル列を受信する。PHY-Lowレイヤにおいては、IFFT(Inverse Fast Fourier Transfer)処理とアナログ変換処理が行われる。PHY-Lowレイヤでは、OFDM信号のIQサンプル列を時間領域のアナログ信号に変換する。そして、RU130では、アナログ信号を無線信号へ変換する。
【0045】
また、図2に示すように、ユーザプレーンの上りリンク方向では、基本的には下り方向と逆の処理がPHY-LowレイヤとPHY-Highレイヤにおいて行われる。RU130は、周波数領域のOFDM信号のIQサンプル列を、DU120へ送信する。
【0046】
なお、DU120とRU130との間においても、O-RANが採用されていてもよい。
【0047】
(CU110、DU120、RU130の各構成例)
図3(A)はCU110、図3(B)はDU120、図4はRU130の各構成例を表す図である。
【0048】
図3(A)に示すように、CU110は、インタフェース部111と制御部112を有する。
【0049】
インタフェース部111は、ネットワーク500から受信した所定フォーマットのパケットデータを制御部112へ出力し、制御部112から出力されたデータ又は制御信号などを、DU120へ送信する。また、インタフェース部111は、DU120から送信されたデータ又は制御信号などを、制御部112へ出力し、制御部112から出力された所定フォーマットのパケットデータをネットワーク500へ送信する。
【0050】
制御部112は、CU110における各種制御を行う。また、制御部112は、RRC、SDAP、PDCPの各機能を実行することで、例えば、パケットデータからデータを抽出したり、制御信号を生成したりする。制御部112は、データ又は制御信号などをインタフェース部111へ出力する。また、制御部112は、RRC、SDAP、PDCPの各機能を実行することで、例えば、データを所定フォーマットのパケットデータに変換する。制御部112は、パケットデータをインタフェース部111へ出力する。
【0051】
図3(B)に示すように、DU120は、インタフェース部121、受信部122、及び制御部123を備える。図3(B)は、DU120-2の構成例である。
【0052】
インタフェース部121は、CU110から受信したデータ又は制御信号を制御部123へ出力し、制御部123から受け取った所定のメッセージなどをRU130-1,130-2へ送信する。また、インタフェース部121は、RU130-1,130-2から受信した所定のメッセージなどを制御部123へ出力し、制御部123から受け取ったデータ又は制御信号などをCU110へ送信する。
【0053】
受信部122は、人工衛星300から送信された同期信号を受信する。受信部122は、受信した同期信号を制御部123へ出力する。また、受信部122は、同期信号を正常に受信できなかったとき、その旨を表す信号を制御部123へ出力する。
【0054】
ここで、「GPS信号を正常に受信できなかったとき」とは、例えば、GPS信号を受信できなかったとき、或いは、GPS信号を受信できたものの受信電力が閾値よりも低かったときも含まれる。また、「GPS信号を正常に受信できなかったとき」とは、例えば、周期的に受信すべきGPS信号を一回でも受信できなかったとき、周期的に受信すべきGPS信号を連続して複数回受信できなかったとき、などが含まれてもよい。さらに、「GPS信号を受信できなかったとき」とは、例えば、周期的かどうかに拘わらず、GPS信号を一定期間受信できなかったとき、GPS信号を一定期間連続して受信できなかったとき、なども含まれてよい。
【0055】
制御部123は、RLC、MAC、PHY-Highの各機能を実行することで、インタフェース部121から出力されたデータ又は制御信号に対して、これらを含む所定のメッセージを生成する。所定のメッセージとしては、O-RANのeCPRメッセージであってもよい。制御部123は、所定のメッセージをインタフェース部121へ出力する。また、制御部123は、これらの各機能を実行することで、インタフェース部121から出力された所定のメッセージからデータ又は制御信号を抽出する。制御部123は、データ又は制御信号を、インタフェース部121へ出力する。
【0056】
また、制御部123は、受信部122から正常に受信した同期信号を受け取ると、同期信号に基づいて、各RU130-1,130-2に対して同期制御を行う。同期制御は、PTP(Precision Time Protocol)が用いられてよい。PTPは、O-RANのS-Plane(Synchronization-Plane)により利用される。
【0057】
さらに、制御部123は、GPS信号を正常に受信できなかったことを表す信号を受信部122から受け取ったとき、その旨を示すメッセージ(又は制御信号)を生成する。そして、制御部123は、生成したメッセージを、インタフェース部121を経由して、CU110へ送信する。
【0058】
なお、DU120-1は、受信部122がなく、インタフェース部121と制御部123とを有する構成となる。
【0059】
図4に示すように、RU130は、インタフェース部131、無線処理部132、及びアンテナ133を有する。
【0060】
インタフェース部131は、DU120から送信された所定のメッセージからデータ又は制御信号などを抽出し、抽出したデータ又は制御信号などを無線処理部132へ出力する。また、インタフェース部131は、無線処理部132から出力されたデータ又は制御信号などに対して、データ又は制御信号などを含む所定のメッセージを生成し、DU120へ出力する。
【0061】
無線処理部132は、PHY-Lowレイヤの処理を行い、さらに、データ又は制御信号などに対して無線信号への変換(アップコンバート)処理を行う。無線処理部132は、無線信号をアンテナ133へ出力する。また、無線処理部132は、アンテナ133から受け取った無線信号をベースバンド帯域のデータ又は制御信号への変換(ダウンコンバート)処理を行い、さらにPHY-Lowレイヤの処理を行う。無線処理部132は、処理後のデータ又は制御信号などをインタフェース部131へ出力する。
【0062】
アンテナ133は、無線処理部132から出力された無線信号をUE200へ送信する。また、アンテナ133は、UE200から送信された無線信号を受信し、受信した無線信号を無線処理部132へ出力する。
【0063】
(動作例)
図5は、gNB100において、人工衛星300からの同期信号を正常に受信できなかった場合の動作例を示す図である。
【0064】
gNB100は、このような場合、同期信号に基づく同期制御を正確に行うことができなくなる。そのため、図5に示すように、各RU130-1~130-4は、「D」、「U」、又は「S」が同じタイミングとならない場合が発生する。この場合、RU130-1~130-4及びUE200において、干渉が発生する。
【0065】
図6は、gNB100を含む移動通信システム10と、他の事業者が運用する基地局400-1~400-3との関係例を示す図である。図6の例では、移動通信システム10を運用する事業者とは、異なる第1~3の事業者がそれぞれ運用する基地局400-1~400-3が配置される例を示している。
【0066】
すなわち、第1の事業者が基地局400-1、第2の事業者が基地局400-2、第3の事業者が基地局400-3を運用し、各々、ローカル5Gシステムを利用している。つまり、基地局400-1~400-3では、gNB100と同じ所定の周波数帯域を同じタイミングで、各々の配下のユーザ装置と無線通信を行っている。
【0067】
図6では、RU130-1が、各基地局400-1~400-3から送信された無線信号を受信する例を表している。
【0068】
図7は、本実施形態における動作例を示す図である。
【0069】
図7に示すように、ステップS10において、gNB100は、処理を開始する。
【0070】
ステップS11において、CU110は、人工衛星300から同期信号を正常に受信できなかったことを検出する。例えば、CU110の制御部112は、DU120の制御部123において生成された、同期信号を正常に受信できなかったことを示すメッセージを、DU120から受信することで、当該検出を行ってもよい。
【0071】
ステップS12において、CU110は、特定のRU130に対して、他の事業者の基地局400-1~400-3から送信される送信電波のサーチを指示する。そして、ステップS12において、CU110は、他事業者の基地局400-1~400-3から、基地局ID(Identification)、電波強度、時刻情報を取得する。図6の例では、CU110は、RU130-1に対して、サーチ指示を行う。CU110は、例えば、以下のようにして、情報を取得してもよい。
【0072】
(電波強度の取得)
すなわち、CU110の制御部112は、同期信号を正常に受信できなかったことを示すメッセージの受信に応じて、RU130-1に対して、他事業者の基地局400-1~400-3のサーチを行うよう指示する。制御部112は、サーチ指示を示すメッセージを、DU120-1,120-2を介して、RU130-1へ送信してもよい。RU130-1の無線処理部132は、サーチ指示メッセージの受信に応じて、各基地局400-1~400-3から送信される電波をサーチする。無線処理部132は、このサーチにより、各基地局400-1~400-3から送信される電波の電波強度を測定する。無線処理部132は、各基地局400-1~400-3から送信される参照信号(CSI-RS(Channel State Information - Reference Signal):チャネル状態用参照信号など)に基づいて、電波強度を測定してもよい。又は、無線処理部132は、各基地局400-1~400-3から送信される報知情報(SIB(System Information Block))の電波強度を測定してもよい。電波強度自体は、RSSI(Received Signal Strength Indicator)であってもよく、RSRP(Reference Signal Received Power)、RSRQ(Reference Signal Received Quality)などであってもよい。
【0073】
(基地局IDと時刻情報の取得)
また、RU130-1の無線処理部132は、各基地局400-1~400-3から報知される報知情報を受信する。報知情報には、各事業者の基地局IDと時刻情報とが含まれる。RU130-1の無線処理部132は、サーチ指示メッセージの受信に応じて、各基地局400-1~400-3から送信される電波をサーチし、各基地局400-1~400-3から報知される報知情報を受信する。RU130-1の無線処理部132は、受信した報知情報から、基地局IDと時刻情報とを抽出する。RU130-1の無線処理部132は、抽出した基地局IDと時刻情報、さらに、測定した電波強度とを、DU120-1,120-2を経由して、CU110へ送信する。RU130-1のインタフェース部131が、RU130-1の無線処理部132から基地局400-1~400-3毎の基地局ID、時刻情報、電波強度を受け取ると、これらの情報を含むメッセージを生成して、DU120-1,120-2経由で、CU110へ送信してもよい。なお、基地局400-1~400-3を識別する識別情報である基地局IDに代えて、事業者を識別する識別情報である事業者IDでもよい。
【0074】
ステップS13において、CU110は、各事業者の基地局400-1~400-3から取得した情報に基づいて、どの時刻情報を使用するかを決定する。CU110は、以下のようにして、使用する時刻情報を決定してよい。
【0075】
すなわち、基地局400-1~400-3から取得した電波強度のうち、最も強い電波強度の基地局400-1~400-3から取得した時刻情報を、使用対象の時刻情報としてもよい。その理由は、例えば、以下である。すなわち、gNB100とすれば、各基地局400-1~400-3から報知される時刻情報を定期的に取得して、gNB100内において安定して時刻同期を行うためには、電波強度の最も高い基地局400-1~400-3から送信された時刻情報を使用するべきだからである。又は、CU110は、基地局400-1~400-3から取得した電波強度と閾値と比較して、閾値を超えた電波強度の中から最も高い電波強度となっている基地局400-1~400-3から送信された時刻情報を用いてもよい。
【0076】
ステップS14において、CU110は、決定した時刻情報を用いて、各RU130-1~130-4の運用を開始する。CU110は、例えば、以下のようにして運用を開始してもよい。
【0077】
すなわち、CU110は、どの基地局400-1~400-3から送信された時刻情報を用いるかを決定すると、決定した時刻情報を報知する基地局400-1~400-3の基地局IDを、RU130-1へ送信する。例えば、CU110は、基地局400-1の基地局IDを、DU120-1を経由して、RU130-1へ送信する。RU130-1は、基地局IDに対応する基地局400-1から報知される報知情報を定期的に受信する。RU130-1は、受信した報知情報から時刻情報を抽出し、抽出した時刻情報を、PTPを利用して、CU110,DU120-1,120-2,及びRU130-2~130-4へ送信する。
【0078】
CU110の制御部112が、当該基地局IDをRU130-1へ送信することで、RU130-1では、基地局400-1から報知される時刻情報を取得し、gNB100の各部へ、時刻情報を送信している。従って、制御部112は、基地局400-1から受信した時刻情報に基づいて、RU130-1~130-4を同期させるように制御している、といえる。
【0079】
図8は、基地局400-1から取得した時刻情報が、gNB100内の各部へ送信される例を示す図である。図8に示すように、gNB100内の各ブロックは、時刻情報を定期的に取得できる。そのため、RU130-1~130-4は、同期して処理を行うことが可能となる。したがって、各RU130-1~130-4から送信される無線フレームは、同じタイミングで「D」、「U」、「S」となる。よって、移動通信システム10は、干渉の発生を防止できる。
【0080】
図7に戻り、ステップS15において、gNB100は、一連の処理を終了する。
【0081】
(その他の実施形態)
上述した実施形態では、RU130-1が基地局400-1~400-3から報知された時刻情報を取得する例を説明した。例えば、RU130-1~130-4が、基地局400-1~400-3から報知された時刻情報等を取得するようにしてもよい。この場合、例えば、以下のようにして、最良の電波強度の時刻情報を取得するようにしてもよい。
【0082】
すなわち、CU110は、DU120-1,120-2を介して、全てのRU130-1~130-4へ、サーチ指示を示すメッセージを送信する。各RU130-1~130-4の無線処理部132は、当該メッセージの受信に応じて、基地局400-1~400-3から送信される電波をサーチする。各RU130-1~130-4の無線処理部132は、上述した実施形態と同様に、各基地局400-1~400-3の電波強度を測定し、基地局400-1~400-3から報知された報知情報を受信する。各RU130-1~130-4の無線処理部132は、測定した電波強度と、報知情報から抽出した基地局IDと時刻情報とを、DU120-1,120-2を介して、CU110へ送信する。CU110は、取得した電波強度の中で最も電波強度の高い時刻情報を決定する。例えば、CU110は、各RU130-1~130-4の中から、RU130-1から取得した基地局400-1からの電波強度が最も高いと判定する。そして、CU110は、基地局400-1から取得した時刻情報を最良の時刻情報と判定する。この場合、CU110は、RU130-1へ、基地局400-1の基地局IDを送信する。RU130-1は、基地局400-1からの時刻情報を定期的に取得する。RU130-1は、PTPを利用して、gNB100の各部へ、時刻情報を送信する。これにより、上述した実施形態と同様に、gNB100は時刻同期を行うことが可能となる。
【0083】
なお、RU130-1~130-4の全てにおいて、基地局400-1~400-3から送信された報知情報を取得できなかった場合、CU110は、全RU130-1~130-4を停波させてもよい。
【0084】
また、上述した実施形態では、DU120-2が人工衛星300からの同期信号を検出する例について説明した。例えば、DU120-1,120-2が双方とも同期信号を検出してもよい。この場合、例えば、DU120-2において、同期信号を正常に受信することができないとき、DU120-1において正常に同期信号を受信できていれば、この同期信号を用いて同期制御を行うことも可能である。例えば、以下のようにして同期信号を取得してもよい。
【0085】
すなわち、DU120-2は、同期信号を正常に受信できなかったことを示すメッセージをCU110へ送信し、CU110は、DU120-1へ、同期信号を正常に受信できたか否かを問い合わせる。問い合わせも、所定のメッセージを用いて行われてもよい。DU120-1は、問い合わせの受信に応じて、同期信号を正常に受信できているか否かを確認する。DU120-1は、当該同期信号を正常に受信できていれば、PTPを利用して、RU130-1~130-4へ、同期信号を送信し、RU130-1~130-4に対する同期制御を行う。
【0086】
なお、DU120-1も、同期信号を正常に受信できなかった場合、CU110へ、その旨を通知する。当該通知も、その旨を示すメッセージにより行われてもよい。CU110は、その通知の受信に応じて、サーチ指示を、RU130-1へ送信する。以降は、上述した実施形態と同様に実施可能である。
【0087】
さらに、上述した実施形態では、DU120が複数の例について説明した。例えば、DU120は、1つでもよい。この場合、DU120は、同期信号を受信するDU120-2となる。
【0088】
さらに、上述した実施形態では、DU120-2が同期信号を検出する例について説明した。例えば、CU110が、人工衛星300から送信された同期信号を受信してもよい。この場合、同期信号を受信する受信部122が、CU110に配置され、制御部112に接続されてよい。受信部122が同期信号を正常に受信できなかった場合に、CU110の制御部112は、DU120-1を経由して、RU130-1へ、サーチ指示を行えばよい。
【0089】
さらに、上述した実施形態では、CU110が使用する時刻情報を決定する(図7のステップS13)例について説明した。例えば、DU120の制御部123が、使用する時刻情報を決定してもよい。この場合、受信部122において正常に同期信号を受信できなかったとき、DU120-2の制御部123が、DU120-1を介してRU130-1へ、サーチ指示を行う。RU130-1は、測定した電波強度と、取得した時刻情報と基地局IDとを、DU120-1を介してDU120-2へ、送信する。そして、DU120-2の制御部123が、取得したこれらの情報に基づいて、使用する時刻情報を決定し、当該基地局IDを、DU120-1を介して、RU130-1へ送信すればよい。
【0090】
以上、図面を参照して実施形態について詳しく説明したが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。また、上述した例は、矛盾しない範囲で組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0091】
10 :移動通信システム
100 :gNB
110 :CU
111 :インタフェース部
112 :制御部
120(120-1,120-2):DU
121 :インタフェース部
122 :受信部
123 :制御部
130(130-1~130-4):RU
131 :インタフェース部
132 :無線処理部
133 :アンテナ
200 :UE
300 :人工衛星
400-1~400-3:基地局
500 :ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9