(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】放射線硬化性組成物及び積層造形プロセスを使用して作製された複合材物品
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20231207BHJP
B29C 64/264 20170101ALI20231207BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20231207BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20231207BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20231207BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20231207BHJP
A61C 5/30 20170101ALI20231207BHJP
A61C 5/77 20170101ALI20231207BHJP
A61C 13/00 20060101ALI20231207BHJP
A61C 13/08 20060101ALI20231207BHJP
B33Y 10/00 20150101ALN20231207BHJP
【FI】
C08F290/06
B29C64/264
B33Y70/00
B29C64/153
B33Y30/00
C08F2/44
A61C5/30
A61C5/77
A61C13/00 Z
A61C13/08
B33Y10/00
(21)【出願番号】P 2020514195
(86)(22)【出願日】2018-08-22
(86)【国際出願番号】 IB2018056371
(87)【国際公開番号】W WO2019048963
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-08-20
(32)【優先日】2017-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】パーカー,ゼバ
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン,ジェームズ ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ウー,デンヨ
(72)【発明者】
【氏名】フランケ,カーステン
(72)【発明者】
【氏名】ダンバー,ティモシー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】コビュッセン,グレゴリー エー.
(72)【発明者】
【氏名】アブエルヤマン,アーメド エス.
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ,ブラッドリー ディー.
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/081160(WO,A1)
【文献】特表2019-504181(JP,A)
【文献】国際公開第2008/093596(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0292363(US,A1)
【文献】特開2004-238597(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0128909(US,A1)
【文献】国際公開第2016/071811(WO,A1)
【文献】特表2019-525967(JP,A)
【文献】特開2002-255722(JP,A)
【文献】特開平11-292910(JP,A)
【文献】特表2012-505889(JP,A)
【文献】米国特許第06730156(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/06
B29C 64/264
B33Y 70/00
B29C 64/153
B33Y 30/00
C08F 2/44
A61C 5/30
A61C 5/77
A61C 13/00
A61C 13/08
B33Y 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線硬化性組成物であって、
少なくとも1つの放射線硬質化性成分と、
前記放射線硬化性組成物の総重量に基づいて0.01~1重量%の量の光学的増白剤と、
光開始剤と、
前記放射線硬化性組成物の50重量%以上の量の微粒子の集合を含む充填材料と、を含み、前記微粒子の集合が、ナノ充填剤を含み、前記ナノ充填剤が、ナノクラスターを含み、前記微粒子の集合は、粒径試験方法を使用して判定したときに体積平均基準で0.3マイクロメートルより大きいメジアン径(D50)を呈し、更に、前記放射線硬化性組成物は、粘度試験方法を使用して測定したときに150Pa・s未満の粘度を呈し、任意に、前記放射線硬化性組成物は、有機溶媒を実質的に含まない、放射線硬化性組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの放射線硬質化性成分が、エチレン性不飽和であり、任意選択で、前記少なくとも1つの放射線硬質化性成分が、二量体、三量体、オリゴマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、任意に、前記放射線硬化性組成物が、重合性モノマーを実質的に含まない、請求項1に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項3】
前記光開始剤が、カチオン性光開始剤ではなく、任意選択で、前記光開始剤が、光ラジカル光開始剤である、請求項1に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項4】
前記充填材料が、無機微粒子を含み、任意選択で、前記無機微粒子が、金属、金属合金、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、炭素、及びこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項5】
前記無機微粒子が、表面処理されている、請求項4に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項6】
複合材物品の製造方法であって、前記方法が、
(a)放射線硬化性組成物が、
少なくとも1つの放射線硬質化性成分と、
前記放射線硬化性組成物の総重量に基づいて0.01~1重量%の量の光学的増白剤と、
光開始剤と、
前記放射線硬化性組成物の50重量%以上の量の微粒子の集合を含む充填材料と、を含み、前記微粒子の集合が、ナノ充填剤を含み、前記ナノ充填剤が、ナノクラスターを含み、前記微粒子の集合は、粒径試験方法を使用して判定したときに体積平均基準で0.3マイクロメートルより大きいメジアン径(D50)を呈し、更に、前記放射線硬化性組成物は、粘度試験方法を使用して測定したときに150Pa・s未満の粘度を呈し、任意に、前記放射線硬化性組成物は、有機溶媒を実質的に含まない、放射線硬化性組成物を提供するステップと、
(b)前記放射線硬化性組成物の一部分を化学線源に選択的に曝露して、前記放射線硬化性組成物の前記曝露部分を少なくとも部分的に硬化させ、それによって硬質化された層を形成するステップと、を含み、ステップ(a)及び(b)が繰り返されて、ニアネットシェイプ複合材物品を形成し、任意選択で、
前記放射線硬化性組成物を加熱するステップ、未硬化放射線硬化性組成物を前記ニアネットシェイプ複合材物品から除去するステップ、前記ニアネットシェイプ複合材物品を溶媒で洗浄するステップ、又は前記ニアネットシェイプ複合材物品を加熱するステップ、のうちの少なくとも1つを更に含む、複合材物品の製造方法。
【請求項7】
システムであって、
歯科用修復物の3Dモデルを表示するディスプレイと、
ユーザーによって選択された前記3Dモデルに応じて、積層造形方法を使用してニアネットシェイプ複合歯科用修復物を積層造形デバイスに作製させる、1つ以上のプロセッサと、を備え、前記積層造形方法が、
(a)放射線硬化性組成物が、
少なくとも1つの放射線硬質化性成分と、
前記放射線硬化性組成物の総重量に基づいて0.01~1重量%の量の光学的増白剤と、
光開始剤と、
前記放射線硬化性組成物の50重量%以上の量の微粒子の集合を含む充填材料と、を更に含み、前記微粒子の集合が、ナノ充填剤を含み、前記ナノ充填剤が、ナノクラスターを含み、前記微粒子の集合は、粒径試験方法を使用して判定したときに体積平均基準で0.3マイクロメートルより大きいメジアン径(D50)を呈し、更に、前記放射線硬化性組成物は、粘度試験方法を使用して測定したときに150Pa・s未満の粘度を呈し、任意に、前記放射線硬化性組成物は、有機溶媒を実質的に含まない、放射線硬化性組成物を提供するステップと、
(b)前記放射線硬化性組成物の一部分を化学線源に選択的に曝露して、前記放射線硬化性組成物の前記曝露部分を少なくとも部分的に硬化させ、それによって硬質化された層を形成するステップと、を含み、ステップ(a)及び(b)が逐次的に又は連続的に繰り返されて、前記ニアネットシェイプ複合歯科用修復物を形成する、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合材物品、及び放射線硬化性組成物を選択的に硬化することによってそのような複合材物品を作製するための積層造形(additive manufacturing)プロセスに関する。より具体的には、このプロセスは、積層造形デバイスを使用して、放射線硬化性組成物を選択的に硬化して複合歯科用修復物を形成する。
【背景技術】
【0002】
様々な歯科用修復物、例えば、クラウン、ブリッジ、インレー、オンレー、べニア、及びポンティックが、歯科医の業務に使用される。事前形成された歯科用修復物、例えば歯科用クラウンは、工場で造形され、歯科医にキットで出荷され、カスタム歯科用修復材を作製するために、チェアサイドで形作られるか、又は別の方法で適合されてもよい。ステンレス鋼及びアルミニウムなどの金属は、強いが展性であるため、そのような修復物に好ましい材料であった。壁厚が150~200マイクロメートルの薄壁ステンレス鋼クラウンは、低コストで大量生産することができ、必要な歯構造の除去が最小限であり、チェアサイドで歯科医によって微調整及び曲げを行うことで、緊密に嵌合し、かつ耐久性のある修復物を作製することができる。残念ながら、歯のような審美性は通常、ステンレス鋼で可能になるものではなく、金属の代わりにポリカーボネートのような(コ)ポリマーを使用する試みでは、スチールクラウンよりも耐久性が実質的に低いクラウンが得られた。
【0003】
あるいは、ジルコニアなどのセラミックが、より審美的な歯科用修復物の製作に使用されてもよく、歯の色と一致するように着色されるか又は有色であってもよい。これらの材料は、典型的には、良好な耐久性、高強度を呈し、ジルコニアの場合には、脆性破壊のリスクを低減するために、変態強化を受けるように設計することができる。セラミック材料は一般に、低い延性及び高い硬度を有するため、修復物の形状は、個々の患者の歯列と正確に一致するようにカスタム作製されることが望ましい。
【0004】
ポリマー-セラミック複合材料は、歯を修復するための代替材料である。これらの材料は、歯科実験室で事前に形作られてもよく、又は患者の口腔内で修復物を形作る及び硬化することが可能な形態で歯科医に送達されてもよい。これらの材料の硬化形態は、生来の歯のエナメル質よりも強度が低いが、大量のセラミック充填剤を組み込むことで、天然の歯構造と同等の耐摩耗性を呈する修復物を得ることができる。
【発明の概要】
【0005】
当該技術分野では、歯科用修復物を製造するための新しい方法及び材料を継続的に探索している。したがって、新しいタイプの(コ)ポリマー-セラミック材料、並びにそのような材料を歯科用修復物に加工する新しい方法が必要とされている。
【0006】
要約すると、一態様では、本開示は、少なくとも1つの放射線硬質化性成分と、光開始剤と、50重量%以上の量のプリント可能な組成物の微粒子の集合を有する充填材料と、を含む放射線硬化性組成物について記載している。微粒子の集合は、粒径試験方法を使用して判定したときに体積平均基準で0.3マイクロメートルより大きいメジアン径(D50)を呈し、放射線硬化性組成物は、粘度試験方法を使用して測定したときに150Pa・s未満の粘度を呈する。
【0007】
別の態様では、本開示は、複合材物品の製造方法について記載しており、この方法が、(a)放射線硬化性組成物が、少なくとも1つの放射線硬化性(例えば、放射線硬質化性)成分と、光開始剤と、50重量%以上の量のプリント可能な組成物の微粒子の集合を有する充填材料と、を含み、この微粒子の集合は、粒径試験方法を使用して判定したときに体積平均基準で0.3マイクロメートルより大きいメジアン径(D50)を呈し、更に、この放射線硬化性組成物は、粘度試験方法を使用して測定したときに150Pa・s未満の粘度を呈し、任意に、この放射線硬化性組成物は、有機溶媒を実質的に含まない、放射線硬化性組成物を提供するステップと、(b)この放射線硬化性組成物の一部分を化学線源に選択的に曝露して、この放射線硬化性組成物のこの曝露部分を少なくとも部分的に硬化させ、それによって硬質化された層を形成するステップと、を含み、ステップ(a)及び(b)が繰り返されて、ニアネットシェイプ複合材物品を形成する。複合材物品は、複合歯科用修復物、例えば、歯科用クラウン、ブリッジ、インレー、オンレー、べニア、ポンティック、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0008】
更なる態様では、本開示は、歯科用クラウンの作製方法について記載しており、この方法が、(a)底縁部を有する壁と、底縁部の反対側の壁と接合された咬合側部分と、を有し、壁及び咬合側部分は、内面及び対向する外面を形成し、壁及び咬合側部分の両方は、積層造形可能な材料を含む、歯科用クラウン用の設計を受信するステップと、(b)積層造形方法を使用して歯科用クラウンを作製するステップと、を含む。積層造形方法は、(i)放射線硬化性組成物が、少なくとも1つの放射線硬化性(例えば、光硬化性)成分と、光開始剤と、50重量%以上の量のプリント可能な組成物の微粒子の集合を有する充填材料と、を含み、この微粒子の集合は、粒径試験方法を使用して判定したときに体積平均基準で0.3マイクロメートルより大きいメジアン径(D50)を呈し、更に、この放射線硬化性組成物は、粘度試験方法を使用して測定したときに150Pa・s未満の粘度を呈する、放射線硬化性組成物を提供するステップと、(ii)この放射線硬化性組成物の一部分を化学線源に選択的に曝露して、この放射線硬化性組成物のこの曝露部分を少なくとも部分的に硬化させ、それによって硬質化された層を形成するステップと、を含む。ステップ(i)及び(ii)は繰り返されて、歯科用クラウンをニアネットシェイプ複合材物品として形成する。任意に、放射線硬化性組成物は、有機溶媒及び/又は重合性モノマーを実質的に含まない。
【0009】
更に別の態様では、本開示は、液槽と;液槽内の放射線硬化性組成物と;液槽内の放射線硬化性組成物に少なくとも部分的に浸漬された可動ステージと;この放射線硬化性組成物の一部分を化学線源に選択的に曝露して、この放射線硬化性組成物のこの曝露部分を少なくとも部分的に硬化させ、それによって硬質化された層を形成するように適合された化学線源と;を含む、ステレオフォトリソグラフィ装置について記載している。放射線硬化性組成物は、少なくとも1つの放射線硬質化性成分と、光開始剤と、50重量%以上の量のプリント可能な組成物の微粒子の集合を有する充填材料と、を含み、この微粒子の集合は、粒径試験方法を使用して判定したときに体積平均基準で0.3マイクロメートルより大きいメジアン径(D50)を呈し、更に、この放射線硬化性組成物は、粘度試験方法を使用して測定したときに150Pa・s未満の粘度を呈する。任意に、放射線硬化性組成物は、有機溶媒及び/又は重合性モノマーを実質的に含まない。
【0010】
更に別の態様では、本開示は、歯科用修復物の3Dモデルを表示するディスプレイと、ユーザーによって選択されたこの3Dモデルに応じて、積層造形方法を使用してニアネットシェイプ複合歯科用修復物を積層造形デバイスに作製させる、1つ以上のプロセッサと、を含む、システムについて記載している。積層造形方法は、(a)放射線硬化性組成物を提供するステップと、(b)この放射線硬化性組成物の一部分を化学線源に選択的に曝露して、この放射線硬化性組成物のこの曝露部分を少なくとも部分的に硬化させ、それによって硬質化された層を形成するステップと、を含む。ステップ(a)及び(b)は逐次的に又は連続的に繰り返されて、ニアネットシェイプ複合歯科用修復物を形成する。放射線硬化性組成物は、少なくとも1つの放射線硬質化性(例えば、放射線硬質化性)成分と、光開始剤と、50重量%以上の量のプリント可能な組成物の微粒子の集合を有する充填材料と、を含み、この微粒子の集合は、粒径試験方法を使用して判定したときに体積平均基準で0.3マイクロメートルより大きいメジアン径(D50)を呈し、更に、この放射線硬化性組成物は、粘度試験方法を使用して測定したときに150Pa・s未満の粘度を呈する。
【0011】
前述の態様のいずれかでは、放射線硬化性組成物は、好ましくは有機溶媒及び/又は重合性モノマーを実質的に含まない。好ましくは、少なくとも1つの放射線硬質化性成分は、エチレン性不飽和材料であり、これは、より好ましくは二量体、三量体、オリゴマー、及びこれらの組み合わせから選択される。好ましくは、光開始剤は、光ラジカル光開始剤であり、カチオン性光開始剤ではない。好ましくは、充填材料は、無機微粒子を含み、無機微粒子は、金属、金属合金、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、炭素、及びこれらの組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態では、無機微粒子は、表面処理されている。
【0012】
様々な予期せぬ結果及び利点が、本開示の例示的な実施形態において得られる。例示的実施形態では、組成物は、広範囲の積層造形プロセスでの使用を可能にするために十分に低い粘度を有する。特定の例示的実施形態では、本開示の組成物は、有機溶媒又は重合性モノマーなどの揮発性成分を低濃度で含有するか又は全く含有しない。更なる例示的な実施形態では、組成物は、充填材料の相分離及び/又は沈降に耐性があるので、組成物は、22℃で4ヶ月以上の期間であっても良好な貯蔵寿命及び貯蔵安定性を呈する。
【0013】
追加の例示的実施形態では、本開示は、元の3Dモデルに対する高い忠実度を有する複合材物品の、迅速な製造を可能にするプロセスを提供する。得られた複合材物品は、好ましくは歯科用修復物であってもよく、有機溶媒及びモノマーなどの揮発性成分が実質的に存在しないため、実質的な収縮又は空隙形成なしに、ニアネットシェイプで形成されてもよい。得られた複合材物品はまた、曲げ強度試験に供されたときに、高い曲げ強度(例えば、少なくとも80MPa)を呈し得る。これら及び他の予想外の結果及び利点は、以下の例示的実施形態の範囲内である。
【0014】
例示的実施形態の列挙
1. 放射線硬化性組成物であって、少なくとも1つの放射線硬質化性成分と、光開始剤と、50重量%以上の量のプリント可能な組成物の微粒子の集合を含む充填材料と、を含み、この微粒子の集合は、粒径試験方法を使用して判定したときに体積平均基準で0.3マイクロメートル以上のメジアン径(D50)を呈し、更に、この放射線硬化性組成物は、粘度試験方法を使用して測定したときに150Pa・s以下の粘度を呈し、任意に、この放射線硬化性組成物は、有機溶媒を実質的に含まない、放射線硬化性組成物。
【0015】
2. 少なくとも1つの放射線硬質化性成分が、エチレン性不飽和である、実施形態1に記載の放射線硬化性組成物。
【0016】
3. 少なくとも1つの放射線硬質化性成分が、二量体、三量体、オリゴマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、任意に、放射線硬化性組成物が、重合性モノマーを実質的に含まない、実施形態1又は2に記載の放射線硬化性組成物。
【0017】
4. 光開始剤が、カチオン性光開始剤ではない、実施形態1~3のいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【0018】
5. 光開始剤が、光ラジカル光開始剤である、実施形態1~4のいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【0019】
6. 充填材料が、無機微粒子を含む、実施形態1~5のいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【0020】
7. 無機微粒子が、金属、金属合金、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、炭素、及びこれらの組み合わせを含む、実施形態6に記載の放射線硬化性組成物。
【0021】
8. 無機微粒子が、表面処理されている、実施形態6又は7に記載の放射線硬化性組成物。
【0022】
9. 微粒子の集合が、ナノ充填剤を含み、任意に、ナノ充填剤が、ナノクラスターを含む、実施形態1~8のいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【0023】
10. 溶媒、モノマー、(コ)ポリマー、乳化剤、重合阻害剤、吸収調整剤、光増感剤、着色剤、繊維強化材料、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を更に含む、実施形態1~9のいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【0024】
11. 放射線硬化性組成物が、22℃で4ヶ月後に微粒子の集合の沈殿又は相分離を受けない、実施形態1~10のいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【0025】
12. 複合材物品の製造方法であって、この方法が、(a)放射線硬化性組成物が、少なくとも1つの光硬化性成分と、光開始剤と、50重量%以上の量のプリント可能な組成物の微粒子の集合を含む充填材料と、を更に含み、この微粒子の集合は、粒径試験方法を使用して判定したときに体積平均基準で0.3マイクロメートル以上のメジアン径(D50)を呈し、更に、この放射線硬化性組成物は、粘度試験方法を使用して測定したときに150Pa・s以下の粘度を呈し、任意に、この放射線硬化性組成物は、有機溶媒を実質的に含まない、放射線硬化性組成物を提供するステップと、(b)この放射線硬化性組成物の一部分を化学線源に選択的に曝露して、この放射線硬化性組成物のこの曝露部分を少なくとも部分的に硬化させ、それによって硬質化された層を形成するステップと、を含み、ステップ(a)及び(b)が繰り返されて、ニアネットシェイプ複合材物品を形成する、複合材物品の製造方法。
【0026】
13. 放射線硬化性組成物を加熱するステップ、未硬化放射線硬化性組成物をニアネットシェイプ複合材物品から除去するステップ、ニアネットシェイプ複合材物品を溶媒で洗浄するステップ、又はニアネットシェイプ複合材物品を加熱するステップ、のうちの少なくとも1つを更に含む、実施形態12に記載の方法。
【0027】
14. 実施形態1~13のいずれか一項に従って調製された複合材物品。
【0028】
15. 少なくとも80MPaの曲げ強度を呈する、実施形態14に記載の複合材物品。
【0029】
16. クラウン、ブリッジ、インレー、オンレー、べニア、ポンティック、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される歯科用修復物である、実施形態14又は15記載の複合材物品。
【0030】
17. ニアネットシェイプ複合材歯科用クラウンの作製方法であって、(a)底縁部を有する壁と、底縁部の反対側の壁と接合された咬合側部分と、を備え、壁及び咬合側部分は、内面及び対向する外面を形成する、歯科用クラウン用の設計を受信するステップと、(b)積層造形方法を使用して複合材歯科用クラウンを作製するステップと、を含み、この積層造形方法が、(i)放射線硬化性組成物が、少なくとも1つの放射線硬質化性成分と、光開始剤と、50重量%以上の量のプリント可能な組成物の微粒子の集合を含む充填材料と、を更に含み、この微粒子の集合は、粒径試験方法を使用して判定したときに体積平均基準で0.3マイクロメートルより大きいメジアン径(D50)を呈し、更に、この放射線硬化性組成物は、粘度試験方法を使用して測定したときに150Pa・s未満の粘度を呈し、任意に、この放射線硬化性組成物は、有機溶媒を実質的に含まない、放射線硬化性組成物を提供するステップと、(ii)この放射線硬化性組成物の一部分を化学線源に選択的に曝露して、この放射線硬化性組成物のこの曝露部分を少なくとも部分的に硬化させ、それによって硬質化された層を形成するステップと、を更に含み、ステップ(i)及び(ii)が繰り返されて、ニアネットシェイプ複合材歯科用クラウンを形成する、ニアネットシェイプ複合材歯科用クラウンの作製方法。
【0031】
18.液槽と;放射線硬化性組成物が、少なくとも1つの放射線硬質化性成分と、光開始剤と、50重量%以上の量のプリント可能な組成物の微粒子の集合を含む充填材料と、を更に含み、この微粒子の集合は、粒径試験方法を使用して判定したときに体積平均基準で0.3マイクロメートルより大きいメジアン径(D50)を呈し、更に、この放射線硬化性組成物は、粘度試験方法を使用して測定したときに150Pa・s未満の粘度を呈し、任意に、この放射線硬化性組成物は、有機溶媒を実質的に含まない、液槽内の放射線硬化性組成物と;液槽内の放射線硬化性組成物に少なくとも部分的に浸漬された可動ステージと;この放射線硬化性組成物の一部分を化学線源に選択的に曝露して、この放射線硬化性組成物のこの曝露部分を少なくとも部分的に硬化させ、それによって硬質化された層を形成するように適合された化学線源と;を備える、ステレオフォトリソグラフィ装置。
【0032】
19. システムであって、歯科用修復物の3Dモデルを表示するディスプレイと、ユーザーによって選択されたこの3Dモデルに応じて、積層造形方法を使用してニアネットシェイプ複合歯科用修復物を積層造形デバイスに作製させる、1つ以上のプロセッサと、を備え、この積層造形方法が、(a)放射線硬化性組成物が、少なくとも1つの放射線硬質化性成分と、光開始剤と、50重量%以上の量のプリント可能な組成物の微粒子の集合を含む充填材料と、を更に含み、この微粒子の集合は、粒径試験方法を使用して判定したときに体積平均基準で0.3マイクロメートルより大きいメジアン径(D50)を呈し、更に、この放射線硬化性組成物は、粘度試験方法を使用して測定したときに150Pa・s未満の粘度を呈し、任意に、この放射線硬化性組成物は、有機溶媒を実質的に含まない、放射線硬化性組成物を提供するステップと、(b)この放射線硬化性組成物の一部分を化学線源に選択的に曝露して、この放射線硬化性組成物のこの曝露部分を少なくとも部分的に硬化させ、それによって硬質化された層を形成するステップと、を含み、ステップ(a)及び(b)が逐次的に又は連続的に繰り返されて、ニアネットシェイプ複合歯科用修復物を形成する、システム。
【0033】
以上が本開示の例示的な実施形態の様々な態様及び利点の概要である。上記の「発明の概要」は、本開示の特定の例示的な実施形態の、図示される各実施形態又は全ての実現形態を説明することを意図するものではない。以下の図面及び「発明を実施するための形態」は、本明細書に開示される原理を使用する特定の好ましい実施形態を、より詳細に例示するものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
以下の本開示の様々な実施形態の詳細な説明を添付図面と併せて検討することで、本開示をより完全に理解し得る。
【
図1】本開示による積層造形を使用した複合(コ)ポリマー-セラミック歯科用修復物の作製方法のフロー図である。
【
図2】本開示によるステレオフォトリソグラフィを使用した複合(コ)ポリマー-セラミック歯科用修復物を作製するための積層造形デバイスの図である。
【
図3】積層造形プロセスを使用して作製された(コ)ポリマー-セラミック複合材歯科用クラウンの画像の第1の図である。
【
図4】積層造形プロセスを使用して作製された(コ)ポリマー-セラミック複合材歯科用クラウンの画像の第2の図である。
【
図5】積層造形プロセスを使用して作製された(コ)ポリマー-セラミック複合材歯科用クラウンの画像の第3の図である。
【
図6】複合(コ)ポリマー-セラミック歯科用修復物の積層造形のための一般化されたシステムのブロック図である。
【
図7】複合(コ)ポリマー-セラミック歯科用修復物のための一般化された造形プロセスのブロック図である。
【
図8】複合(コ)ポリマー-セラミック歯科用修復物のための例示的な造形プロセスの高レベルフロー図である。
【
図9】複合(コ)ポリマー-セラミック歯科用修復物のための例示的な積層造形プロセスの高レベルフロー図である。
【
図10】積層造形プロセスを使用して複合(コ)ポリマー-セラミック歯科用修復物を生成するのに有用な例示的な計算デバイスの概略正面図である。
【0035】
図面において、類似の参照符号は類似の要素を表す。必ずしも原寸に比例していない上記に特定した図面は、本開示の様々な実施形態を説明しているが、「発明を実施するための形態」で指摘するように、他の実施形態もまた企図される。全ての場合に、本開示は、本明細書で開示される開示内容を、明示的な限定によってではなく、例示的な実施形態を示すことによって説明する。本開示の範囲及び趣旨に含まれる多くの他の修正及び実施形態が、当業者によって考案され得ることを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下の定義された用語の用語解説に関して、これらの定義は、特許請求の範囲又は本明細書の他の箇所において異なる定義が提供されていない限り、本出願全体について適用されるものとする。
【0037】
用語解説
ある特定の用語が、本明細書及び特許請求の範囲の全体を通して使用されており、これらの大部分については周知であるが、何らかの説明が必要とされる場合もある。本明細書において使用される場合、以下の通りであることが理解されるべきである。
【0038】
用語「積層造形(additive manufacturing)」は、材料を積層することによって3次元物品を作製するのに用いられるプロセスを意味する。積層造形技術の例は、コンピュータ制御下で材料の連続層が形成され、その後放射線によって硬化される、ステレオフォトリソグラフィ(SPLA)である。物品はほとんど全ての形状又は外形することができ、3次元モデル又は他の電子データソースから製造される。積層造形プロセス又は技術の他の例としては、3Dプリンティングが挙げられる。
【0039】
特定の層又は構造的特徴に関する「接近する」という用語は、2つの層が互いに隣り合い(すなわち、隣接し)かつ直接接触しているか、又は互いと近接してはいるが直接接触はしていない(すなわち、これらの層の間に1つ以上の追加的な層が介在している)位置において、別の層と接合しているか、又はそれに取付けられていることを意味する。
【0040】
複数の粒子を含む集合に関する用語「会合した(associated)」は、凝集した(aggregated)及び/又は粒塊化した(agglomerated)2個以上の一次粒子の集合を指す。同様に、複数の粒子を含む集合に関する用語「非会合の(non-associated)」は、凝集(aggregation)及び/若しくは粒塊化(agglomeration)していないか又は実質的にしていない、2個以上の一次粒子を指す。
【0041】
複数の粒子を含む集合に関する用語「粒塊化した」は、電荷又は極性によってまとまった粒子の弱い会合を記述しており、より小さい実体に分解され得る、いる。粒塊化した充填剤は、例えば、Degussa,Cabot Corp又はWackerから商品名Aerosil(商標)、CAB-O-SIL(商標)及びHDKで市販されている。同様に、「非粒塊化充填剤」は、充填剤粒子が個別の会合していない(すなわち、非粒塊化及び非凝集で)段階で樹脂中に存在することを意味する。所望であれば、透過型電子顕微鏡法(TEM)によりこれを証明できる。非粒塊化ナノサイズシリカは、例えば、Nalco Chemical Co.(Naperville,Ill.)からNALCO COLLOIDAL SILICAS、例えばNALCO製品#1040、1042、1050、1060、2327及び2329の製品名で市販されている。非粒塊化充填剤は、例えば、欧州特許第2167013(B1)号(3M)において使用及び記載されている。この参照の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
複数の粒子を含む集合に関する用語「凝集した(aggregated)」は、例えば、残留化学物質処理又は部分的焼結によって一緒に結合されることが多い粒子の強い会合を記述している。凝集粒子の比表面積は、典型的には、一次粒子の特定の比表面積よりも小さく、凝集体が作製される(DIN 53206;1972を参照)。凝集体のより小さい実体への更なる破壊は、凝集充填剤を含有する組成物の表面に適用される研磨ステップ中に生じ得るが、凝集粒子を樹脂中に分散させる間には生じない。凝集充填剤及びその製造及び表面処理のためのプロセスは、例えば、国際公開第01/30304号及び米国特許第6,730,156号(3M)に記載されている。これらの参考文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
用語「(コ)ポリマー」は、ホモポリマー及びコ(コ)ポリマー、並びに、例えば、共押出しにより、又は例えば、エステル交換反応を含む反応により、混和性ブレンドにおいて形成され得るホモポリマー又はコ(コ)ポリマーを含む。用語「コ(コ)ポリマー」は、ランダム、ブロック、及び星型(例えば樹枝状)コ(コ)ポリマーを含む。
【0044】
用語「硬化」は、例えば、熱、光、放射線、電子ビーム、マイクロ波、化学反応又はこれらの組み合わせなどの何らかの機構による組成物の硬質化又は部分的硬質化を意味する。
【0045】
用語「硬化した」は、硬化によって硬質化又は部分的硬質化されている(例えば、(共)重合した又は架橋した)材料又は組成物を指す。
【0046】
用語「ガラス」は、熱力学的に過冷却されかつ凝固された溶融物である無機の非金属非晶質材料を意味する。ガラスは、硬く、脆性の、透明な固体を指す。典型的な例としては、ソーダ石灰ガラス及びホウケイ酸ガラスが挙げられる。ガラスは、結晶化することなく剛性状態まで冷却された融合物の無機生成物である。ほとんどのガラスは、それらの主構成成分としてのシリカ及び一定量のガラス形成剤を含有する。本開示に記載の充填材料又は複合材物品は、典型的には、ガラスを含有しない。
【0047】
用語「ガラス-セラミック」は、この材料が、ガラス材料とセラミック材料とを組み合わせて又は混合物の状態で含むように、1つ以上の結晶相がガラス相によって囲まれている無機の非金属材料を意味する。したがって、ガラスセラミックは、ガラスとより伝統的な結晶性セラミックの両方の多くの特性を併せ持つ材料である。ガラスセラミックはガラスとして形成された後、熱処理によって部分的に結晶化するように作製される。ガラスセラミックは、酸化リチウム、酸化ケイ素、及び酸化アルミニウムの混合物を指す場合がある。
【0048】
用語「硬質化性(hardenable)」は、例えば、(共)重合又は架橋、より具体的には放射線誘導(共)重合又は架橋などを引き起こすことによって、硬化又は固化され得る材料を指す。
【0049】
用語「メジアン粒径」は、本明細書で以下に定義されるように、レーザ回折粒径分析を使用する粒径試験方法を使用して判定したときに、粒子の50%がD50直径よりも大きく、粒子の50%が小さい、体積平均基準でプロットされた累積粒径曲線上の点を意味する。
【0050】
用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレート、又はこれらの組み合わせの略記であり、「(メタ)アクリル」は、アクリル、メタクリル、又はこれらの組み合わせの略記である。本明細書で使用されるとき、「(メタ)アクリレート官能性化合物」は、とりわけ(メタ)アクリレート部分を含む化合物である。
【0051】
用語「モノマー」は、重合させて、オリゴマー又はポリマーを形成することで分子量を増加させ得る、重合性基((メタ)アクリレート基を含む)を有する化学式により特徴付けることができる任意の化学物質である。通常、モノマーの分子量は、与えられた化学式に基づいて単純に算出することができる。
【0052】
用語「ナノ充填剤」は、その個々の粒子が、例えば、平均粒径約200nm未満、又は約100nm未満、又は約50nm未満のナノメートル範囲の大きさを有する充填剤を意味する。有用な例は、米国特許第6,899,948号(Zhangら)及び同第6,572,693号(Wuら)に記載されている。ナノサイズシリカ粒子に関する内容は、参照により本明細書に組み込まれる。好ましくは、ナノ粒子の粒度の測定を、TEM(透過型電子顕微鏡検査)法で行うことができ、これによって集合が分析され、平均粒径が得られる。粒径を測定するための好ましい方法を、次のように説明することができる。厚さ80nm以下の試料を、炭素安定化フォルムバール基材(Structure Probe,Inc.,West Chester,PAの一部門であるSPI Supplies)付き200メッシュの銅グリッド上に配置する。透過型電子顕微鏡写真(TEM)を、200KVでJEOL 200CX(JEOL,Ltd.of Akishima,Japan、及びJEOL USA,Inc.により販売)を使用して得る。約50~100粒子の集合の大きさを測定することができ、平均径を求める。
【0053】
用語「非架橋性」は、化学線又は高熱に曝露されたときに架橋を受けない(コ)ポリマーを指す。典型的には、非架橋性(コ)ポリマーは、架橋に関与する官能基を欠くような非官能化(コ)ポリマーである。
【0054】
用語「非反応性溶媒」は、放射線硬化性組成物中に(共)重合しない溶媒である。溶媒は、非反応性なので、一般に、例えば高粘度の放射線硬質化性成分の材料特性に有害な影響を及ぼすことなく、下記に説明する方法に従って、プリントされた(コ)ポリマーセラミック複合修復物から抜き取ることができる。一般に、非反応性溶媒は、有機溶媒であるように選択される。
【0055】
用語「咬合側」は、患者の歯の外側先端に向かう方向を意味し、「顔面」は、患者の唇又は頬に向かう方向を意味し、「舌側」は、患者の舌に向かう方向を意味する。
【0056】
用語「粒子」又は「微粒子」は、幾何学的に測定できる形状を有する固体である物質を意味する。その形状は規則的か又は不規則的であり得る。粒子は、典型的には、例えば粒径及び粒径分布に関して分析することができる。粒子は、1種以上の微結晶を含み得る。したがって、粒子は、1種以上の結晶相を含み得る。
【0057】
用語「光開始剤」は、放射線(例えば、350~600nm又は350~420nmの波長)に曝露されると(共)重合性組成物の硬化プロセスを始める又は開始することができる化学物質を説明するために使用される。
【0058】
用語「粉末」は、振とう又は傾斜された際に自由に流動し得る多数の微細粒子からなる乾燥したバルク材料を意味する。
【0059】
用語「一次粒径」は、一次粒子であるとみなされる、非会合の単結晶粒子のサイズを指す。X線回折(XRD)又は透過型電子顕微鏡(TEM)は、典型的には、一次粒径の測定に用いられる。
【0060】
用語「プリント可能な」は、硬化性の(すなわち、硬質化性の)組成物が、硬化(すなわち、硬質化)の前に、1つ以上の積層造形プロセス又はシステムの要件及びパラメータにふさわしい粘度プロファイルを有することを意味する。
【0061】
用語「放射線硬化性(radiation curable)」及び「放射線硬質化性(radiation hardenable)」は同義的に使用され、本明細書での参照目的のために、複合材物品を提供するために電磁放射線源に曝露することによって少なくとも部分的に硬化され得る(例えば、(共)重合又は架橋され得る)硬化性又は硬質化性の組成物又は成分を意味する。
【0062】
用語「樹脂」は、硬化性組成物中に存在する全ての放射線硬質化性成分(モノマー、オリゴマー、及び/又は(コ)ポリマー)を含む。樹脂は、ただ1つの放射線硬質化性成分化合物又は異なる(共)重合性化合物の混合物を含有してもよい。
【0063】
用語「樹脂変性ガラスアイオノマーセメント」は、酸反応性ガラス、ポリ酸、水、重合性成分及び開始剤を含む硬質化性歯科材料を意味する。樹脂変性ガラスアイオノマーセメントは、ガラスアイオノマー酸塩基ベースのセメント反応、及び典型的には(メタクリレート)アクリレート系モノマーの重合という、二重の硬化反応を受ける。
【0064】
用語「ゾル」は、液体中のコロイド状(すなわち、1マイクロメートル未満の粒径)の固体粒子の分散体を意味する。
【0065】
用語「熱可塑性」は、そのガラス転移点を十分に超えて加熱されると流動し、冷却されると固体になる(コ)ポリマーを指す。
【0066】
用語「熱硬化性」は、硬化時に恒久的にセットされ、その後の加熱時に流動しない(コ)ポリマーを指す。熱硬化性(コ)ポリマーは、典型的には、架橋(コ)ポリマーである。
【0067】
数値又は形状への言及に関する用語「約」又は「おおよそ」は、数値又は特性若しくは特徴の±5パーセントを意味するが、明示的に、正確な数値を含む。例えば、「約」1Pa・secの粘度とは、0.95~1.05Pa・secの粘度を指すが、1Pa・secちょうどの粘度も明示的に含むものとする。同様に、「実質的に正方形」の外辺部とは、各横方向縁部が、他のいずれかの横方向縁部の長さの95%~105%の長さを有する4つの横方向縁部を有する幾何形状を説明することを意図するが、これはまた、各横方向縁部が正確に同じ長さを有する幾何形状を含むものとする。
【0068】
用語「好ましい」及び「好ましくは」は、一定の状況下で一定の利益を提供できる、本開示の実施形態を指す。ただし、他の実施形態もまた、同じ又は他の状況において好ましい場合がある。更には、1つ以上の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用ではないことを示唆するものではなく、本開示の範囲から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
【0069】
特性又は特徴に関する用語「実質的に」は、その特性又は特徴が、その特性又は特徴の反対のものが呈される程度よりも高い程度で呈されることを意味する。例えば、「実質的に」透明な基材は、それが透過しない(例えば、吸収する及び反射する)放射線よりも多くの放射線(例えば、可視光)を透過する基材を指す。それゆえに、その表面上に入射する可視光のうちの50%より多くを伝達する基材は、実質的に透明であるが、その表面上に入射する可視光のうちの50%以下を伝達する基材は、実質的に透明ではない。
【0070】
本開示のコーティングされた(コ)ポリマーセラミック複合修復物における様々な要素の位置に関する、「~の上部」、「~上」、「~の上」、「覆う」、「最上の」、「下に存在する」などの方向の用語を使用して、この明細書では、水平に配置された上向きの基材に対する、ある要素の相対位置を指す。しかしながら、別途指示のない限り、基材又は(コ)ポリマーセラミック複合修復物は、造形中又は造形後において何らかの特定の空間的向きを有するべきであるということが意図されるわけではない。
【0071】
本開示の(コ)ポリマー-セラミック複合修復物の基材又は他の要素に対する、ある層の位置を説明するために、「オーバーコーティングされた」という用語を使用することによって、その層が、基材又は他の要素の上にあるが、必ずしも基材又は他の要素と近接してはいないことについて言及する。
【0072】
他の層に対する、ある層の位置を説明するために、「~によって分離された」という用語を使用することによって、その層が、他の2つの層の間に位置するが、必ずしもどちらかの層と近接したり、又は隣接したりしてはいないことについて言及する。
【0073】
本明細書及び添付の実施形態において使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、特に内容により明確な指示がない限り、複数の対象を含む。したがって、例えば「化合物(a compound)」を含有する微細繊維への言及は、2種以上の化合物の混合物を含む。
【0074】
本明細書及び添付の実施形態において使用されるとき、用語「又は」は、その内容が特に明確に指示しない限り、一般的に「及び/又は」を包含する意味で用いられる。
【0075】
本明細書で使用する場合、末端値による数値範囲での記述には、その範囲内に包含されるあらゆる数値が含まれる(例えば1~5には1、1.5、2、2.75、3、3.8、4、及び5が含まれる)。
【0076】
特に指示がない限り、本明細書及び実施形態で使用する量又は成分、特性の測定値などを表す全ての数は、全ての場合において、「約」という用語によって修飾されていると理解するものとする。これに応じて、特に指示がない限り、前述の明細書及び添付の実施形態の列挙において示す数値パラメータは、本開示の教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて変化し得る。最低でも、各数値パラメータは少なくとも、報告される有効桁の数に照らして端数処理技術を適用することにより解釈されるべきであるが、このことは請求項記載の実施形態の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではない。
【0077】
本開示の例示的な実施形態は、本開示の趣旨及び範囲を逸脱することなく、様々な修正及び変更を採ってもよい。したがって、本開示の実施形態は、以下に記載の例示的な実施形態に限定されるものではないが、特許請求の範囲に記載されている限定及びそれらの任意の均等物により支配されるものであることを理解すべきである。
【0078】
以下に、本開示の様々な例示的実施形態を、図面を具体的に参照しながら説明する。本開示の例示的な実施形態には、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更を加えてもよい。したがって、本開示の実施形態は、以下に記載の例示的な実施形態に限定されるものではないが、特許請求の範囲に記載されている限定及びそれらの任意の均等物により支配されるものであることを理解すべきである。
【0079】
放射線硬化性組成物
本開示は、以下に更に記載されるように、積層造形装置プロセス(例えば、ステレオフォトリソグラフィ)を使用して、ニアネットシェイプ(コ)ポリマー-セラミック複合歯科用修復物を製造するのに有用な放射線硬化性組成物について記載している。したがって、一例示的実施形態では、本開示は、少なくとも1つの放射線硬質化性成分と、光開始剤と、50重量%以上の量のプリント可能な組成物の微粒子の集合を有する充填材料と、を含む放射線硬化性組成物について記載している。微粒子の集合は、粒径試験方法を使用して判定したときに体積平均基準で0.3マイクロメートルより大きいメジアン径(D50)を呈し、放射線硬化性組成物は、粘度試験方法を使用して測定したときに150Pa・s未満の粘度を呈する。
【0080】
本明細書に記載の放射線硬化性組成物は、既知の技術によって混合することができる。いくつかの実施形態では、例えば、本明細書に記載の放射線硬化性組成物を調製するための方法は、放射線硬化性組成物の全て又は実質的に全ての成分を混合するステップと、混合物を加熱するステップと、任意に加熱した混合物を濾過するステップとを含む。混合物を軟化させることは、いくつかの実施形態では、約30℃~約85℃、より好ましくは約35℃~50℃、又は更には35~40℃の範囲の温度で行われる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の放射線硬化性組成物は、組成物の全て又は実質的に全ての成分を反応容器に入れて、生じた混合物を約30℃~約85℃、より好ましくは約35~50℃、又は更には35~40℃の範囲の温度まで、攪拌しながら加熱することによって生産される。加熱及び攪拌は、混合物が実質的に均質化された状態に達するまで継続される。
【0081】
本明細書に記載の放射線硬化性組成物はまた、未硬化の素地として及び硬化後の(コ)ポリマー-セラミック複合修復物として、種々の望ましい特性を呈することができる。放射線硬化性組成物は、未硬化の時点では、以下に更に記載されるように、1つ以上の積層造形システムの要件及びパラメータにふさわしい粘度プロファイルを有利に有してもよい。いくつかの実施形態では、放射線硬化性組成物は、良好な貯蔵安定性を呈し、22℃で4ヶ月後であっても微粒子の集合の沈殿又は相分離を起こさない。
【0082】
放射線硬質化性成分
本開示の放射線硬化性組成物は、少なくとも1つの放射線硬質化性成分又は放射線硬化性成分を含む。例えば、いくつかの実施形態では、放射線硬化は、(共)重合又は架橋反応を開始するために十分なエネルギーを有する化学線源を放射線硬質化性成分に選択的に照射することを含む。例えば、いくつかの実施形態では、紫外線(UV)、電子ビーム線、又はこれらの両方を、化学線源として使用することができる。他の実施形態では、ガンマ線を放射線源として使用してもよい。
【0083】
好適な放射線硬質化性成分は、好ましくはエチレン性不飽和であり、すなわち、これらは少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を含有し、付加又はフリーラジカル(共)重合を受けることができる。いくつかの例示的実施形態では、少なくとも1つの放射線硬質化性成分は、二量体、三量体、オリゴマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましくは、放射線硬化性組成物は、モノマーを実質的に含まない。
【0084】
ある特定の実施形態では、放射線硬質化性成分は、10,000g/モル以下、9,000g/モル以下、8,000g/モル以下、7,000g/モル以下、6,000g/モル以下、又は5,000g/モル以下の分子量を有する。このような分子量を有する放射線硬質化性成分を含むことは、液槽(共)重合法で使用するのに十分に低い粘度を有する放射線硬化性組成物を提供するのを支援することができる。更に、低分子量の放射線硬質化性成分(例えば、モノマー及び/又はオリゴマー)を使用することにより、放射線硬質化性成分が溶液中で(コ)ポリマーを相互貫入して、放射線硬質化性成分の(共)重合時に一体型(コ)ポリマー-セラミック複合修復物を提供することの容易さを向上させる。更に、選択された実施形態では、放射線硬質化性成分は、水に可溶性又は分散性である。
【0085】
放射線硬質化性成分は、放射線硬化性組成物の総重量に基づいて、5~50重量%未満、例えば、5~25重量%(両端値を含む)の量で放射線硬化性組成物中に含まれる。典型的には、放射線硬質化性成分は、放射線硬化性組成物の総重量に基づいて、5重量%以上、7重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、12重量%以上、15重量%以上、及び50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、又は20重量%以下の量で放射線硬化性組成物中に含まれる。
【0086】
光開始剤
本明細書に記載の放射線硬化性組成物は、1つ以上の光開始剤を更に含む。好ましくは、光開始剤は、カチオン性光開始剤ではない。より好ましくは、光開始剤は、光ラジカル光開始剤である。光開始剤は、典型的には、0.1~5重量%、又は0.2~4重量%、又は0.5~3重量%の量で存在する。
【0087】
特定の実施形態において、光開始剤は、以下のパラメータのうちの少なくとも1つ以上、場合によっては全てを特徴とし得る:
・200~500nm、又は300~450nmの範囲内の放射線吸収バンドを示すこと。
・わずかに黄色がかった色を有すること。
【0088】
光開始剤は、硬化性組成物中に存在する放射線硬化性構成成分の硬化又は硬質化反応を始める又は開始させることができるべきものである。光開始剤は、典型的には、300~450nmの波長範囲、好ましくは350~420nmの範囲の光吸収バンドを示す。
【0089】
好適な光開始剤は、BASF(Ludwigshafen,Germany)から商品名IRGACURE及びDAROCURで入手可能なものであり、それには、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IRGACURE184)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(IRGACURE651)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE819)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(IRGACURE2959)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン(IRGACURE369)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(IRGACURE907)、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]ESACURE ONE(Lamberti S.p.A.,Gallarate,Italy)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(DAROCUR1173)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(IRGACURE TPO)、及び2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート(IRGACURE TPO-L)が挙げられる。
【0090】
更なる好適な光開始剤には、例えば、ベンジルジメチルケタール、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル、芳香族塩化スルホニル、光活性オキシム、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
いくつかの例示的実施形態では、ホスフィンオキシド部分を含む光開始剤を使用することが好ましい場合がある。このような光開始剤の例としては、例えば、米国特許第4,737,593号に記載されているようなアシルホスフィンオキシドの部類が挙げられる。このようなアシルホスフィンオキシドは、一般式
(R9)2-P(=O)-C(=O)-R10
(式中、各R9は個々に、アルキル、シクロアルキル、アリール、及びアラルキル等のヒドロカルビル基であってもよく、そのいずれもがハロ-、アルキル-、若しくはアルコキシ基で置換されていてもよく、又は2つのR9基が結合してリン原子と共に環を形成することができ、R10はヒドロカルビル基、S-、O-、若しくはN-含有5若しくは6員複素環基、又は-Z-C(=O)-P(=O)-(R9)2基であり、式中、Zは2~6個の炭素原子を有するアルキレン又はフェニレン等の二価のヒドロカルビル基を表す)のものである。
【0092】
好ましいアシルホスフィンオキシドは、R9及びR10基が、フェニル、又は低級アルキル-若しくは低級アルコキシ-置換フェニルであるものである。「低級アルキル」及び「低級アルコキシ」とは、1~4個の炭素原子を有するこのような基を意味する。最も好ましくは、アシルホスフィンオキシドは、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE(商標)819、Ciba Specialty Chemicals,Tarrytown,NY)である。
【0093】
第三級アミン還元剤を、アシルホスフィンオキシドと組み合わせて使用してもよい。例示的な第三級アミンとしては、エチル4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾエート及びN,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートが挙げられる。
【0094】
400nmを超え、1200nmまでの波長で照射されたときにフリーラジカル開始が可能な市販のホスフィンオキシド光開始剤としては、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンとの25:75重量混合物(IRGACURE(商標)1700,Ciba Specialty Chemicals)、2-ベンジル-2-(N,N-ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン(IRGACURE(商標)369,Ciba Specialty Chemicals)、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタン(IRGACURE(商標)784 DC,Ciba Specialty Chemicals)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンとの1:1重量混合物(DAROCUR(商標)4265,Ciba Specialty Chemicals)、及びエチル-2,4,6-トリメチルベンジルフェニルホスフィネート(LUCIRIN(商標)LR8893X,BASF Corp.,Charlotte,NC)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニル-ホスピン(phospine)オキシド(LUCIRIN(商標)TPO)が挙げられる。
【0095】
光開始剤は、本明細書に記載の放射線硬化性組成物中に、積層造形プロセスの特定の制約に従うどのような量でも存在することができる。いくつかの実施形態では、光開始剤は、放射線硬化性組成物の総重量に基づいて、最大約5重量%の量で放射線硬化性組成物中に存在する。いくつかの事例では、光開始剤は、放射線硬化性組成物の総重量に基づいて、約0.1重量%~5重量%の量で存在する。光開始剤は、典型的には、以下の量で存在する:
-下限量:少なくとも0.01、又は少なくとも0.05、又は少なくとも0.1重量%;
-上限量:最大で3、又は最大で2、又は最大で1.5重量%;
-範囲:0.01~3、又は0.05~2重量%、又は0.1~1.5重量%;
ここでの重量%は組成物全体の重量に対する重量%である。
【0096】
充填材料
本明細書に記載の放射線硬化性組成物は、50重量%以上の量のプリント可能な組成物の微粒子の集合を含む充填材料を更に含む。微粒子の集合は、本明細書で以下に記載されるように、レーザ回折粒径分析を使用して判定される体積平均基準で1マイクロメートル以上のメジアン径(D50)を呈する。放射線硬化性組成物中に使用される充填剤の量及びメジアン径は、硬化性組成物の粘度、硬化組成物の耐摩耗性、又はその両方に影響を及ぼし得る。
【0097】
微粒子の集合は、典型的には以下の量のいずれかで存在する:
-下限量:プリント可能な組成物の少なくとも50重量%、55重量%、60重量%、又は更には70重量%;
-上限量:プリント可能な組成物の最大で80重量%、75重量%、70重量%、又は更には65重量%、又は55重量%;
-範囲:プリント可能な組成物の50重量%~80重量%(両端値を含む)、50重量%~75重量%(両端値を含む)、又は50重量%~65重量%。
【0098】
ここでの好ましい実施形態では、充填材料は、無機微粒子を含むか、又は完全に無機微粒子からなってもよい。無機微粒子は、金属、金属合金、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、炭素、及びこれらの組み合わせを含んでもよい。特定の例示的実施形態では、無機微粒子の少なくとも一部分は、有利には、以下に更に記載されるように、表面処理されていてもよい。
【0099】
いくつかの例示的実施形態では、無機充填材料は、ヒュームドシリカを含んでもよい。疎水性ヒュームドシリカの比表面積は、典型的には、100~300、又は150~250m2/gである。所望であれば、異なるヒュームドシリカの混合物を使用することができる。例えば、その表面が疎水性表面処理剤で処理されている及びヒュームドシリカと、その表面が親水性表面処理剤で処理されているヒュームドシリカとの混合物が使用され得る。
【0100】
好適な疎水性表面処理剤としては、-OSiR3が挙げられ、Rは、C1~4アルキル、好ましくはメチル及びこれらの混合物から選択される。疎水性ヒュームドシリカはまた、商品名HDK、特にHDK-H(商標)2000(Wacker)、又はAerosil(商標)R812(Evonik)で市販されている。
【0101】
その表面が、(メタ)アクリルシランのような重合性部分を含有する表面処理剤で処理されているヒュームドシリカを使用することは、硬化性組成物の望まれない増粘をもたらす場合があり、これは、硬化性組成物を積層造形プロセスにおいて加工材料としてあまり好適ではないものにするということが見出された。
【0102】
しかしながら、一例示的実施形態によれば、硬化性組成物は、典型的には、(メタ)アクリルシランのような重合性部分を、2重量%超、又は1.5重量%超、又は1重量%超の量で含有する表面処理剤で表面処理されたヒュームドシリカを含有しない。
【0103】
存在する場合には、ヒュームドシリカは、典型的には以下の量のいずれかで存在する:
-下限量:少なくとも0.5、又は少なくとも1、又は少なくとも1.5重量%;
-上限量:最大8、又は最大7、又は最大5重量%;
-範囲:0.5~8、又は1~7、又は1.5~5重量%;
ここでの重量%は、硬化性組成物全体の重量に対する重量%である。
【0104】
特定の例示的実施形態では、微粒子の集合は、ナノ充填剤を含んでもよい。任意に、ナノ充填剤は、ナノクラスターを含む。1種以上の異なる種類のナノクラスターが存在することができる。ナノクラスターを使用することは、他の充填剤と比較して、高い充填量を有する組成物の配合を可能にし、優れた機械的特性、例えば、研磨性又は摩耗、及びより高い審美性をもたらすことができるため、有益であり得ることが見出された。
【0105】
ナノクラスター(存在する場合)は、典型的には以下の特徴:
-比表面積:30~400、又は60~300、又は80~250m2/gであること、
-SiO2、ZrO2、Al2O3、及びこれらの混合物の粒子を含むこと、のうちの少なくとも1つ又は全てによって、特徴付けることができる。
【0106】
所望であれば、ナノクラスターの比表面積を、Quantachrome Instruments(Boynton Beach,FL)から入手可能な測定デバイス(例えばMonosorb(商標))を使用して、ブルナウアー-エメット-テラー(BET)の方法に従って決定することができる。
【0107】
凝集ナノサイズ粒子を含む好適なナノ充填剤は、例えば、米国特許第6,730,156号(調製例A)に記載のプロセスに従って製造することができる。凝集ナノサイズ粒子を含む有用なナノ充填剤は、好適なゾル、及び塩、ゾル、溶液又はナノサイズ粒子であり得る1つ以上の酸素含有重金属化合物溶液前駆体から調製することができ、これらのうちで、ゾルが好ましい。
【0108】
固体粒子は、典型的には、周囲の液体よりも密度が高く、分散力が重力よりも大きくなるように十分小さい。加えて、粒子は、可視光を概ね屈折させないように十分に小さいサイズである。前駆体ゾルを適切に選択することにより、所望の程度の視覚的不透明度、強度などをもたらす。
【0109】
ゾルの選択を導く要因は、以下の特性の組み合わせに依存する:a)個々の粒子の平均サイズ(好ましくは直径100nm未満)、b)酸性度:ゾルのpHが、好ましくは6未満、より好ましくは4未満であるべきであること、及びc)ゾルが、噴霧乾燥又は焼成などのその後のステップ中に、容易に分散又は行き来することができず、したがって、このようなナノ粒子を含む複合材から作製された歯科用修復物の半透明性及び研磨性を低下させることができないより大きなサイズの粒子への個々の離散粒子の過度の凝集(充填剤調製プロセス中)を生じさせる不純物を含まないものであるべきこと。
【0110】
出発ゾルが塩基性である場合、pHを低下させるために、例えば、硝酸又は他の好適な酸を添加することによって、酸性化されるべきである。しかしながら、塩基性出発ゾルを選択することは、追加のステップを必要とし、望ましくない不純物の導入につながる場合があるため、望ましくない。好ましくは回避される典型的な不純物は、金属塩、特にアルカリ金属の塩、例えばナトリウムの塩である。
【0111】
非重金属ゾル及び重金属酸化物前駆体は、好ましくは硬化性樹脂の屈折率と一致するようなモル比で、一緒に混合される。これは、低くかつ望ましい視覚的不透明度を付与する。好ましくは、非HMO:HMOとして表される、非重金属酸化物(「非HMO」)の重金属酸化物(「HMO」)に対するモル比範囲は、0.5:1~10:1、より好ましくは3:1~9:1、最も好ましくは4:1~7:1である。
【0112】
凝集ナノサイズ粒子がシリカ及びジルコニウム含有化合物を含有する一例示的実施形態では、調製方法は、シリカゾルと酢酸ジルコンとの約5.5:1のモル比の混合物で開始する。非重金属酸化物ゾルを重金属酸化物前駆体と混合する前に、非重金属酸化物ゾルのpHを低下させて、1.5~4.0のpHを有する酸性溶液を提供することが好ましい。次いで、非重金属酸化物ゾルを、重金属酸化物前駆体を含有する溶液とゆっくり混合し、激しく攪拌する。強力な攪拌は、好ましくは、ブレンドプロセス全体にわたって実施される。次いで、溶液を乾燥させて、水及び他の揮発性成分を除去する。乾燥は、例えば、トレー乾燥、流動床、及び噴霧乾燥を含む様々な方法で達成することができる。酢酸ジルコニルが使用される好ましい方法では、噴霧乾燥によって乾燥させる。
【0113】
得られた乾燥した材料は、好ましくは、小さな実質的に球状の粒子及び破断した中空球で構成される。次いで、これらの断片をバッチ焼成して、残留有機物を更に除去する。残留有機物の除去により、充填剤がより脆くなり、より効率的な粒径の低減がもたらされる。焼成中、灼熱温度は、好ましくは200℃~800℃、より好ましくは300℃~600℃に設定される。焼成される材料の量に応じて、0.5時間~8時間灼熱を実施する。焼成ステップの灼熱時間は、板状の表面積が得られるようなものであることが概して好ましい。目視検査によって決定したときに得られた充填剤が黒色、灰色又は琥珀色の粒子を含まず白色であるように、時間及び温度が選択されることが一般に好ましい。
【0114】
次いで、焼成された材料は、好ましくは、Sedigraph 5100(Micrometrics,Norcross,Ga.)を使用して測定することができる場合に、5μm未満、好ましくは2μm未満(体積基準で)のメジアン粒径まで粉砕される。粒径決定は、まず始めにAccuracy 1330 Pycometer(Micrometrics,Norcross,Ga.)を使用して充填剤の特定の密度を得ることによって実施することができる。ミリングは、例えば、攪拌ミリング、振動ミリング、流体エネルギーミリング、ジェットミリング及びボールミリングを含む様々な方法によって達成することができる。ボールミリングが、一般に好ましい方法である。
【0115】
得られた充填剤は、凝集ナノサイズ粒子を含む、凝集ナノサイズ粒子を含有する、凝集ナノサイズ粒子から本質的になるか、又は凝集ナノサイズ粒子からなる。所望であれば、透過型電子顕微鏡法(TEM)によりこれを証明できる。所望であれば、充填剤粒子の表面を表面処理することができる。表面処理は、米国特許第6,730,156号(Windischら)又は米国特許第6,730,156号(Wuら)に記載のプロセスに従って達成することができる。これらの参考文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0116】
樹脂中に分散されると、充填剤は凝集段階で留まる。すなわち、分散ステップ中、粒子は、離散した(すなわち、個々の)粒子及び非会合(すなわち非凝集)粒子へと破壊されない。
【0117】
存在する場合には、ナノクラスターは、典型的には以下の量のいずれかで存在する:
-下限量:少なくとも5、又は少なくとも10、又は少なくとも15重量%;
-上限量:最大40、又は最大38、又は最大35重量%;
-範囲:5~40、又は10~38、又は15~35重量%;
ここでの重量%は、硬化性組成物全体の重量に対する重量%である。
【0118】
いくつかの例示的実施形態では、硬化性組成物は、X線で観察可能な粒子(x-ray visible particles)も含み得る。X線で観察可能な粒子を歯科用組成物に添加することは、施術者が、患者の口腔内に配置された場合に材料をより良好に識別し、健全な歯の歯構造と人工材料とを区別することを可能とする点で有益である。材料は放射線不透過性になる。
【0119】
好適なX線で観察可能な粒子としては、金属酸化物及び金属フッ化物の粒子が挙げられる。約28を超える原子番号を有する重金属の酸化物又はフッ化物が好ましい場合がある。充填剤を分散させた硬質化樹脂に望ましくない色又は濃淡が付与されないように、重金属酸化物又はフッ化物を選択すべきである。例えば、鉄及びコバルトは、歯科用材料の歯の中間色に、黒ずんだ色及び明暗差のある色を付与するので好まれない。
【0120】
より好ましくは、重金属酸化物又はフッ化物は、30を超える原子番号を有する金属の酸化物又はフッ化物である。好適な金属酸化物は、イットリウム、ストロンチウム、バリウム、ジルコニウム、ハフニウム、ニオビウム、タンタル、タングステン、ビスマス、モリブデン、スズ、亜鉛、ランタニド元素(すなわち、原子番号57~71の範囲の元素)、セリウム、及びこれらの組み合わせの酸化物である。
【0121】
好適な金属フッ化物は、例えば、三フッ化イットリウム及び三フッ化イッテルビウムである。より好ましくは、30超72未満の原子番号を有する重金属の酸化物又はフッ化物が、任意に本発明の材料に含められる。放射線不透過性を付与する特に好ましい金属酸化物としては、酸化ランタン、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化セリウム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。放射線不透過性を上昇させる他の好適な充填剤は、バリウム及びストロンチウムの塩、特に、硫酸ストロンチウム及び硫酸バリウムである。
【0122】
存在する場合、X線で観察可能な粒子は、典型的には、組成物全体の重量に対して、0.1~20、又は1~15、又は2~10重量%の量で存在する。
【0123】
任意による成分
放射線硬化性組成物には、様々な追加成分を任意に含んでもよい。したがって、いくつかの例示的実施形態では、放射線硬化性組成物は、溶媒、モノマー、(コ)ポリマー、乳化剤、重合阻害剤、吸収調整剤、光増感剤、着色剤、繊維強化材料、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含む。
【0124】
いくつかの例示的実施形態では、重金属酸化物又は金属フッ化物粒子は、表面処理されてもよい。
【0125】
任意による溶媒
ここでは好ましくないが、本開示の放射線硬化性組成物は、任意に、少なくとも1種の溶媒、好ましくは非反応性有機溶媒を含んでもよい。放射線硬質化性成分の粘度は、非反応性の溶媒などの溶媒中で成分を希釈することにより大幅に低下させることができる。本開示で有用な非反応性の溶媒を、本明細書では一時的溶媒と称する。
【0126】
ある特定の実施形態では、一時的溶媒は、有利には、安価かつ環境に優しい溶媒である、水である。あるいは、一時的溶媒は、少なくとも50℃の沸点を有する有機溶媒であってもよい。沸点は、多くの場合、少なくとも100℃、少なくとも200℃で、典型的には300℃以下である。好適な一時的溶媒は、典型的には、周囲温度(20~25℃)で不揮発性であり、20℃で約150.0hPa未満(好ましくは、20℃で約15.0hPa未満、より好ましくは、20℃で約1.5hPa未満、最も好ましくは、20℃で約0.15hPa未満)の蒸気圧を有する。上記の特性を実証する一時的な溶媒は、典型的には、高温であってもプリンティングプロセス中に放射線硬化性組成物中に保持され得るが、真空補助蒸発などの従来技術を使用してプリントされた(コ)ポリマー-セラミック複合修復物から除去され得る。
【0127】
特定の例示的実施形態では、一時的溶媒は、水、炭酸プロピレン、メタノール、イソプロピルアルコール、並びにトリプロピレングリコールメチルエーテル(TPM)、エタノール、アセトン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、及びこれらの混合物のうちの1つ以上を含むことができる。
【0128】
一時的溶媒は、放射線硬化性組成物の総重量に基づいて、10~80重量%(両端値を含む)、例えば、25~60重量%の量で放射線硬化性組成物中に含まれる。典型的には、放射線硬質化性成分は、放射線硬化性組成物の総重量に基づいて、10重量%以上、12重量%以上、15重量%以上、17重量%以上、20重量%以上、22重量%以上、25重量%以上、及び80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、又は50重量%以下の量で放射線硬化性組成物中に含まれる。一定の条件下では、10重量%未満の一時的溶媒を有する放射線硬化性組成物は、液槽(共)重合に適した粘度を有さないことがあり、その場合は、放射線硬質化性成分の粘度が適切に低い状態ではない。逆に、一時的溶媒を、80重量%を超えて含む放射線硬化性組成物では、一定の条件下で、素地の生強度が不十分になる可能性があり、プリントされた(コ)ポリマー-セラミック複合修復物から一時的溶媒を適切に除去することが困難になることがある。
【0129】
任意によるモノマー
ここでは好ましくないが、1つ以上のモノマーを任意にこのようなフリーラジカル(共)重合性材料に組み込んでもよく、このようなフリーラジカル(共)重合性材料としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、アクリル酸エチル、イソプロピルメタクリレート、n-アクリル酸ヘキシル、ステアリルアクリレート、アリルアクリレート、グリセロールジアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)と2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)との反応生成物であるUDMA(例えば、Rohm Plex 6661-0などの異性体の混合物)と呼ばれるジウレタンジメタクリレート、グリセロールトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3-プロパンジオールジアクリレート、1,3-プロパンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,2,4-ブタントリオールトリメタクリレート、1,4-シクロヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ソルビトールヘキサクリレート、ビス[1-(2-アクリルオキシ)]-p-エトキシフェニルジメチルメタン、ビス[1-(3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシ)]-p-プロポキシフェニルジメチルメタン、及びトリスヒドロキシエチル-イソシアヌレートトリメタクリレートなどのモノ-、ジ-、トリ-、又は他のポリアクリレート及びメタクリレート;分子量200~500のポリエチレングリコールのビスアクリレート及びビスメタクリレート、米国特許第4,652,274号(Boettcherら)におけるものなどのアクリル化モノマーの共(共)重合可能な混合物、並びに米国特許第4,642,126号(Zadorら)におけるものなどのアクリレート化オリゴマー;欧州特許第2008636号(Hechtら)のものなどの、ウレタン、尿素又はアミド基を含む多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。放射線硬質化性成分が、任意に、ウレタン基、エポキシ基、又はその両方を含む。放射線硬質化性成分は、シリコーンアクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー又は塩素化ポリエステル(メタ)アクリレート、アリル系オリゴマー及び(メタ)アクリルオリゴマーを更に含んでもよい。所望により、これらのフリーラジカル(共)重合性材料のうちの2つ以上の混合物を使用することができる。
【0130】
放射線硬質化性成分は、好ましくは1つ以上のポリ(メタ)アクリレートを含み、例えば、ジ、トリ、テトラ又はペンタ官能性のモノマー又はオリゴマーの脂肪族、脂環式又は芳香族のアクリレート又はメタクリレートなどである。例えば、放射線硬質化性成分としては、多官能性ウレタンアクリレート又はウレタンメタクリレートを挙げることができる。これらのウレタン(メタ)アクリレートは当業者に公知であり、例えば、ヒドロキシル基末端ポリウレタンとアクリル酸若しくはメタクリル酸を反応させるか、又は、イソシアネート末端プレ(コ)ポリマーとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを反応させてウレタン(メタ)アクリレートを得ることによって公知の方法で調製することができる。好適なプロセスは、とりわけ、米国特許第8,329,776号(Hecht et al.)及び同第9,295,617号(Cub et al.)に開示されている。好適なウレタンメタクリレートは、PEGDMA(約400の分子量を有するポリエチレングリコールジメタクリレート)、脂肪族ウレタンメタクリレート、脂肪族ポリエステルウレタンメタクリレート、脂肪族ポリエステルトリウレタンアクリレートを含むことができる。
【0131】
分子内に3つ以上の(メタ)アクリレート基を有する好適な脂肪族ポリ(メタ)アクリレートの例は、ヘキサン-2,4,6-トリオールのトリアクリレート及びトリメタクリレート;グリセロール又は1,1,1-トリメチロールプロパン;エトキシル化又はプロポキシル化グリセロール又は1,1,1-トリメチロールプロパン;並びに、例えば上記トリオールのトリグリシジルエーテルなどのトリエポキシド化合物を(メタ)アクリル酸と反応させて得られる、ヒドロキシル含有トリ(メタ)アクリレートである。更に、例えば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ビストリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールモノヒドロキシトリアクリレート若しくはメタクリレート、又はジペンタエリスリトールモノヒトロキシペンタアクリレート若しくはメタクリレートを使用することも可能である。
【0132】
フリーラジカル(共)重合性化合物の別の好適な部類には、芳香族ジ(メタ)アクリレート化合物及び3官能以上の(メタ)アクリレート化合物が含まれる。三官能性又はそれを超える官能性のメタ(アクリレート)は、三、四又は五官能性のモノマー又はオリゴマーの脂肪族、脂環式又は芳香族のアクリレート又はメタクリレートであり得る。
【0133】
好適な脂肪族三、四及び五官能性(メタ)アクリレートの例は、ヘキサン-2,4,6-トリオールのトリアクリレート及びトリメタクリレート;グリセロール又は1,1,1-トリメチロールプロパン;エトキシル化又はプロポキシル化グリセロール又は1,1,1-トリメチロールプロパン;並びに、例えば上記トリオールのトリグリシジルエーテルなどのトリエポキシド化合物を(メタ)アクリル酸と反応させて得られる、ヒドロキシル含有トリ(メタ)アクリレートである。更に、例えば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ビストリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールモノヒドロキシトリアクリレート若しくはメタクリレート、又はジペンタエリスリトールモノヒトロキシペンタアクリレート若しくはメタクリレートを使用することも可能である。いくつかの実施形態では、トリ(メタ)アクリレートは、1,1-トリメチロールプロパントリアクリレート若しくはメタクリレート、エトキシル化若しくはプロポキシル化1,1,1-トリメチロールプロパントリアクリレート若しくはメタクリレート、エトキシル化若しくはプロポキシル化グリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールモノヒドロキシトリアクリレート若しくはメタクリレート、又はトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートを含む。好適な芳香族トリ(メタ)アクリレートの更なる例は、3つのヒドロキシル基を含有するトリヒドロキシベンゼンとフェノール又はクレゾールノボラックのトリグリシジルエーテルと、(メタ)アクリル酸との反応生成物である。
【0134】
いくつかの事例では、放射線硬質化性成分は、脂肪族、脂環式又は芳香族ジオールのジアクリレートエステル及び/又はジメタクリレートエステルを含み、これには、1,3-若しくは1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、エトキシル化若しくはプロポキシル化ネオペンチルグリコール、1,4-ジヒドロキシメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン若しくはビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、ヒドロキノン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、エトキシル化若しくはプロポキシル化ビスフェノールA、エトキシル化若しくはプロポキシル化ビスフェノールF、又は、エトキシル化若しくはプロポキシル化ビスフェノールSを含む。いくつかの事例では、本明細書に記載される放射線硬化性組成物の放射線硬質化性成分は、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート又はビス(トリメチロールプロパン)テトラアクリレートなどの1つ以上の高官能性アクリレート又はメタクリレートを含む。
【0135】
任意による(コ)ポリマー
ここでは好ましくないが、本開示の放射線硬化性組成物は、任意に、少なくとも1つの(コ)ポリマーを含んでもよい。少なくとも1つの(コ)ポリマーは、最終(コ)ポリマー-セラミック複合修復物に可撓性を提供する(例えば、少なくとも最小破断伸度)。いくつかの実施形態では、(コ)ポリマーが、非架橋性(コ)ポリマーを含む。非架橋性(コ)ポリマーを含めることは、放射線硬化性組成物が化学線に曝露されて放射線硬質化性成分を(共)重合させたときに、(コ)ポリマーは架橋せずその伸長能力を低下させないため、有利であり得る。
【0136】
あるいは、いくつかの実施形態では、(コ)ポリマーが、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、及びシロキサン基から選択される1つ以上の官能基を含む。これらの官能基は、プリント中の放射線硬化性組成物の他の成分、例えば(共)重合性組成物と反応性であり得る。少なくとも1つの官能基を有する(コ)ポリマーを含めることは、(コ)ポリマーを放射線硬質化性成分に結合させて、プリント後にそれらの相互貫入を維持するのを補助することが望ましい場合があるため、有利であり得る。いくつかの実施形態では、(コ)ポリマーが、熱可塑性(コ)ポリマーを含む。(コ)ポリマーが熱により軟化又は溶融し、(コ)ポリマー鎖を損傷することなく異なる形状に形成することができるため、熱可塑性(コ)ポリマーを含めることは、有利であり得る。
【0137】
典型的には、(コ)ポリマーは、1モル当たり少なくとも5,000グラム、かつ1モル当たり20,000グラム(g/モル)以下、15,000g/モル、10,000g/モル、7,500g/モル、又は更には6,000g/モルの重量平均分子量を含む。重量平均分子量は、既知の分子量を有する標準の使用に頼らずに絶対分子量を提供する光散乱検出器を使用して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。20,000/モル以下の重量平均分子量を有する(コ)ポリマーの使用は、少なくとも特定の望ましい最小破断伸度を有する最終(コ)ポリマー-セラミック複合修復物を提供する傾向がある場合がある。
【0138】
好適な(コ)ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリ(メタ)アクリレート、ポリプロピレン、ポリウレタン、スルホポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、熱可塑性フルオロ(コ)ポリマー、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。選択された実施形態では、(コ)ポリマーは、ポリ(メタ)アクリレート(例えば、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA))を含む。
【0139】
より具体的には、好適な(コ)ポリマーとしては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン(低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、及び超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)など)、ポリプロピレン、ポリブチレン、エチレンコ(コ)ポリマー(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET))、プロピレンコ(コ)ポリマー、ブチレンコ(コ)ポリマー、並びにこれらの(コ)ポリマーのコ(コ)ポリマー及びブレンドなど)が挙げられる。ポリプロピレンが使用される場合、ポリプロピレンは、アルファ及び/又はベータ相ポリプロピレンを含んでもよい。PETは、テレフタル酸又はそのエステルから形成されるカルボキシレートサブユニットと、エチレングリコールを使用して形成されたグリコールサブユニットとを含む。ポリカーボネートは、カーボネート基を含有するポリエステル(コ)ポリマーを説明するために使用される一般的な用語であり、ホスゲンとビスフェノールAとの反応によって生成され得る。
【0140】
ポリウレタンは、多官能性イソシアネートと多官能性アルコールとを反応させてウレタン結合を形成することによって調製される(コ)ポリマーを説明するために使用される一般用語である。用語「ポリウレタン」はまた、ポリイソシアネートと多官能性アルコール、アミン及びメルカプタンを含む任意の多活性水素化合物との反応生成物を指すためにより一般的に使用されてきた。ポリウレタン(コ)ポリマーは、安定化基を骨格鎖に組み込むことによって水中に分散させることができる。アニオン性、カチオン性、及び非イオン性分散安定化基が使用されてきた。様々な水性ポリウレタン分散体は、当業者によって調製されている(例えば、米国特許第3,479,310号(Dieterichら)及び米国特許第4,307,219号(Larson))。市販のポリウレタンエマルジョンの例としては、DSMからNeoRez R-620、NeoRez R-961及びNeoRez R-966として入手可能な水性脂肪族ポリウレタンエマルジョンが挙げられる。好適な市販の(コ)ポリマー分散体としては、例えば、脂肪族ポリカーボネート/ポリウレタン分散体、脂肪族ポリカーボネートポリウレタンの水性アニオン性分散体、紫外線硬化性ポリウレタン/アクリルコ(コ)ポリマー分散体、及び紫外線硬化性ポリウレタン分散体が挙げられ、これらはそれぞれAlberdingk Boley(Greensboro,NC)から入手可能である。
【0141】
好適なフルオロ(コ)ポリマーとしては、1つ以上の種類のフッ素化モノマー又は部分フッ素化モノマーを(共)重合することによって得られる熱可塑性フルオロ(コ)ポリマーが挙げられる。この場合、フルオロ(コ)ポリマーの特定の微細構造は、フルオロ(コ)ポリマーのある程度の結晶化度を可能にし、熱可塑性特性を与える。一般に、熱可塑性フルオロ(コ)ポリマーは、少なくともコ(コ)ポリマーであるが、更に4つ以上の異なる共(共)重合性モノマーを含有するター(コ)ポリマー又は熱可塑性フルオロ(コ)ポリマーであってもよい。共(共)重合により、フッ素系ホモポリマーと比較して結晶化度が低下することを可能にし、これは本開示の感圧接着剤組成物に有利に使用することができる。熱可塑性フルオロ(コ)ポリマーの架橋は概して、ペルオキシド、ポリオール、又はポリアミンを用いて行うことができるが、これらに限定されない。フルオロ(コ)ポリマーは、化学的に異なる熱可塑性フルオロ(コ)ポリマーの混合物、並びに化学的に異なるフルオロエラストマーの混合物及び熱可塑性フルオロ(コ)ポリマーとフルオロエラストマーとの混合物であってもよい。
【0142】
例えば、好適な熱可塑性フルオロ(コ)ポリマーとしては、テトラフルオロエテン(TFE)と、ペルフッ素化コモノマー、部分フッ素化コモノマー又は非フッ素化コモノマーとのコ(コ)ポリマーが挙げられ、このコモノマーの含有量は、1重量%以上、3重量%以上であり、かつ最大30重量%であってもよい(本明細書で上述し、かつ後述するように、重量%は、他に記載がない限り、(コ)ポリマーの総重量に基づく)。例としては、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)(例えば、TFE、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、及び他の任意による量のペルフルオロ化ビニルエーテルのコ(コ)ポリマー)、THV(例えば、TFE、フッ化ビニリデン(VDF)及びHFPのコ(コ)ポリマー)、ペルフルオロアルコキシ(PFA)(例えば、TFEとペルフルオロアルキルビニルエーテル及び/又はペルフルオロアルキルアリルエーテルとのコ(コ)ポリマー)、VDFのホモノマー(homonomer)及びコ(コ)ポリマー(例えば、PVDF)、並びにクロロトリフルオロエチレン(CTFE)のホモポリマー及びコ(コ)ポリマー、並びにTFEとエチレンとのコ(コ)ポリマー(例えば、ETFE)が挙げられる。熱可塑性フルオロ(コ)ポリマー(時にはフルオロ熱可塑性樹脂(fluorothermoplasts)又はフルオロ熱可塑性プラスチック(fluorothermoplastics)とも称される)は、例えば、「Fluoro(co)polymer,Organic」(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemisty,7th edition,2013,Wiley-VCH Verlag Chemie,Weinheim,Germany)に記載されている。好ましいフルオロ熱可塑性プラスチックとしては、融点が260~315℃の間、好ましくは280℃~315℃の間のフルオロ(コ)ポリマーが挙げられる。
【0143】
本明細書で使用されるとき、用語「ポリエステル」は、単一のジカルボキシレートモノマー及び単一のジオールモノマーから作製されたポリエステルを指し、また、2つ以上のジカルボキシレートモノマー及び/又は2つ以上のジオールモノマーから作製されるコポリエステルも指す。一般に、ポリエステルは、ジカルボキシレートモノマーのカルボキシレート基とジオールモノマーのヒドロキシル基との縮合によって調製される。本明細書で使用されるとき、用語「ジカルボキシレート」及び「ジカルボン酸」は、互換的に使用され、1~10個の炭素原子を有する低級アルキルエステルを含む。本明細書で使用されるとき、ジオールモノマーとしては、2つ以上のヒドロキシル基を有するモノマー、例えば、ジオール、トリオール、テトラオール、及びペンタノールを含む。一般に、有用なスルホン化ポリエステルとしては、水溶性であるもの、及び水分散性であるものが挙げられる。約8000~約50000の分子量が有用であり得る。米国特許第4,480,085号(Larson)に記載の非晶質スルホポリエステルが有用であり得る。米国特許第5,427,835号(Morrisonら)に記載されるスルホポリエステルも有用であり得る。
【0144】
スルホポリエステルは、1つ以上のペンダントスルホネート基を有する少なくとも1つのジカルボキシレートモノマーを含む。ペンダントスルホネート基は、ポリエステルの主骨格鎖を形成する(共)重合反応に関与しない基である。スルホン化ジカルボキシレートモノマーの例としては、ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、イタコン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタミン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロオクタンジカルボン酸、1,6-シクロヘキサンジカルボン酸、t-ブチルイソフタル酸、トリメリット酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、及びテトラデカンジカルボン酸のスルホン化誘導体が挙げられる。
【0145】
スルホン化ジカルボキシレートモノマーのいずれかは、約80未満の分子量を有し、(共)重合反応において不活性である基によって置換され得る。不活性ペンダント基の例としては、ハロゲン、シアノ、ニトロ、1~4個の炭素原子を有する低級アルキル及びアルコキシ基、並びにフェニル基が挙げられる。追加のジカルボキシレートモノマーは、Larsonに記載されている。ペンダントスルホネート基は、ポリエステルの側鎖上にグラフト化することによって、ポリエステルの末端基としてキャッピングすることによって、又はポリエステルを形成するために(共)重合中にペンダントスルホン化基を有するモノマーを含むことによって導入されてもよい。有用なスルホポリエステルは、典型的には、少なくとも2つのジカルボキシレートモノマーを含み、1つは上述のようにスルホン化されており、1つはそうでないものである。使用することができる非スルホン化ジカルボキシレートモノマーとしては、スルホン化誘導体について上述したもののいずれかが挙げられる。
【0146】
好適なポリ(メタ)アクリレート(コ)ポリマーとしては、好ましくは、双性イオン性コ(コ)ポリマー又はカチオン性コ(コ)ポリマーが挙げられる。双性イオン性コ(コ)ポリマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、これらの塩、又はこれらのブレンドであるアニオン性モノマー、8~12個の炭素を有するアルコールのアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル、及びアルキルアンモニウム官能性を有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルであるカチオン性モノマーの(共)重合生成物が挙げられる。任意に、1つ以上の追加のモノマーが、双性イオン性コ(コ)ポリマーに含まれる。いくつかの実施形態において、アニオン性モノマーはアクリル酸又はメタクリル酸であり、この酸は、(共)重合の前又は後のいずれかに、中和によって対応するカルボキシレートに変換される。カチオン性コ(コ)ポリマーとしては、8~12個の炭素を有するアルコールのアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル、及びアルキルアンモニウム官能性を有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルであるカチオン性モノマーを少なくとも含む、(共)重合性モノマーの(共)重合生成物が挙げられる。任意に、1つ以上の追加のモノマーが、本発明のカチオン性(コ)ポリマーに含まれる。いくつかの実施形態において、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルは、2種以上のこのようなエステルの混合物であり、いくつかの実施形態において、カチオン性モノマーは、2種以上のこのようなカチオン性モノマーの混合物である。
【0147】
8~12個の炭素を有するアルコールのアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルとしては、直鎖、分枝鎖又は環状アルコール(例えば、オクチル、イソオクチル、ノニル、イソノニル、デシル、ウンデシル、及びドデシルアルコール)の、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルが挙げられる。8~12個の炭素を有するアルコールのアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルの(共)重合生成物は、(コ)ポリマーの総重量の約50重量%~95重量%、又は(コ)ポリマーの総重量の約60重量%~90重量%、又は(コ)ポリマーの総重量の約75重量%~85重量%でカチオン性(コ)ポリマー中に存在する。
【0148】
多くの場合、カチオン性モノマーは、2-(トリアルキルアンモニウム)エチルアクリレート若しくは2-(トリアルキルアンモニウム)エチルメタクリレートなどのアルキルアンモニウム官能性を含むアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルである。好適なモノマーとしては、例えば、BASF(Ludwigshafen,Germany)から商品名AGEFLEX FA1Q80MCで入手可能なジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロリド(四級)が挙げられる。カチオン性モノマーのアンモニウム官能性に関連するアニオンは、特に限定されない。いくつかの実施形態では、アニオンは、ハロゲン化物アニオン(塩化物、臭化物、フッ化物、若しくはヨウ化物など)、BF4、N(SO2CF3)2、O3SCF3、又はO3SC4F9、硫酸メチル、及び/又は水酸化物である。
【0149】
1つ以上の追加のモノマーの(共)重合生成物は、カチオン性(コ)ポリマーに含まれてもよい。このような追加のモノマーは、構造によって特に限定されないが、アニオン性官能基を有するモノマーを除外する。追加のモノマーの非限定的な例としては、N-ビニルピロリドン、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ジメチルアクリルアミド、N-(ヒドロキシメチル)-アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリジメチルシロキサン(メタ)アクリレート)、KF2001(メルカプト変性ジメチルシロキサン)、パーフルオロブチルスルホンアミドn-メチルエチルアクリレート、及びヘキサフルオロプロピレンオキシドオリゴマーアミドール(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0150】
同様に、実施形態では、1つ以上の追加のモノマーの(共)重合生成物が、本発明の双性イオン性(コ)ポリマーに含まれる。このような追加のモノマーは、構造によって特に限定されず、いくつかの実施形態では、アニオン性官能性モノマーが挙げられる。追加のモノマーの非限定的な例は、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-プロピルアクリレート、n-プロピルメタクリレート、アクリル酸メチル、メチルメタクリレート、アクリル酸エチル、エチルメタクリレート、酢酸ビニル、N-ビニルピロリドン、ヒドロキシエチルアクリレート、又はヒドロキシエチルメタクリレートである。いくつかの実施形態では、追加のモノマーは、これらのモノマーの2つ以上の混合物である。いくつかのこのような実施形態では、追加のモノマーは、酢酸ビニル、N-ビニルピロリドン、イソブチルアクリレート、酢酸ビニルとN-ビニルピロリドンとの混合物、酢酸ビニルとイソブチルアクリレートとの混合物、又はイソブチルアクリレートとN-ビニルピロリドンとの混合物である。
【0151】
いくつかの実施形態では、追加のモノマーは、2つ以上の(共)重合性官能性を有し、このようなモノマーは架橋剤と称される。カチオン性又は双性イオン性(コ)ポリマーの形成で有用である架橋剤としては、エチレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート及びトリプロピレングリコールジアクリレートなどのジアクリレート、グリセロールトリアクリレート及びトリメチロールプロパントリアクリレートなどのトリアクリレート、エリスリトールテトラアクリレート及びペンタエリスリトールテトラアクリレートなどのテトラアクリレート、ジビニルベンゼン、及びその誘導体などが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、架橋剤は光活性架橋剤である。光活性架橋剤には、例えば、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、アントラキノン、置換アントラキノン、様々なベンゾフェノン型化合物、及び2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-p-メトキシスチリル-s-トリアジンなどの特定の発色団置換ビニルハロメチル-s-トリアジンが挙げられる。(コ)ポリマーは、放射線硬化性組成物の総重量に基づいて、1~50重量%(両端値を含む)、例えば、25~50重量%の量で放射線硬化性組成物中に含まれる。典型的には、(コ)ポリマーは、放射線硬化性組成物の総重量に基づいて、1重量%以上、2重量%以上、5重量%以上、7重量%以上、10重量%以上、12重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、又は25重量%以上、及び50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、又は30重量%以下の量で放射線硬化性組成物中に含まれる。
【0152】
任意による乳化剤
ある特定の実施形態では、エマルジョンは、放射線硬質化性成分及びいずれかの任意による成分を含有する形態であってもよい。
【0153】
エマルジョンは、油中水型又は水中油型エマルジョンである。いくつかのこのような実施形態では、エマルジョンは水中油型エマルジョンであり、(コ)ポリマー及び/又は放射線硬質化性成分は、1つ以上の乳化剤(例えば、界面活性剤)を使用することによってバルク水相で安定化される。様々な実施形態では、乳化剤は、本質的にカチオン性、アニオン性、双性イオン性、又は非イオン性であり、その構造は、別段特に限定されない。いくつかの実施形態では、乳化剤はモノマーであり、放射線硬質化性成分から形成される(コ)ポリマー分子中に組み込まれる。他の実施形態では、乳化剤は(共)重合反応容器内に存在するが、(共)重合反応の結果として、(コ)ポリマー分子中には組み込まれない。
【0154】
水中油型エマルジョンを形成するのに有用なアニオン性乳化剤の非限定的な例としては、ラウリルスルホン酸のアンモニウム、ナトリウム、リチウム、又はカリウム塩、ジオクチルナトリウムスルホコハク酸、ペルフルオロブタンスルホン酸のアンモニウム、ナトリウム、リチウム、又はカリウム塩、ペルフルオロオクタンスルホン酸のアンモニウム、ナトリウム、リチウム、又はカリウム塩、ペルフルオロオクタン酸のアンモニウム、ナトリウム、リチウム、又はカリウム塩、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、ミレス硫酸ナトリウム、パレス硫酸ナトリウム、ステアリン酸のアンモニウム、ナトリウム、リチウム、又はカリウム塩、及びこれらの1つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0155】
水中油型エマルジョンを形成することにおいて有用な非イオン性乳化剤の非限定的な例としては、BASF Corporation(Charlotte,NC)によって商品名PLURONIC、KOLLIPHOR、又はTETRONICで販売されているものなどのエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコ(コ)ポリマー;Dow Chemical Company(Midland,MI)によって商品名TRITONで販売されているものを含む、エチレンオキシドと脂肪族アルコール、ノニルフェノール、ドデシルアルコールなどとの反応によって形成されたエトキシレート;オレイルアルコール;ソルビタンエステル;デシルグルコシドなどのアルキルポリグリコシド;ソルビタントリステアレート、及びこれらの1つ以上の組み合わせが挙げられる。選択された実施形態では、好適な乳化剤は、エトキシル化アルコール、エトキシル化アミン、アミンオキシド、及びこれらの組み合わせから選択される1つ以上の非イオン性乳化剤を含む。
【0156】
水中油型エマルジョンを形成するのに有用なカチオン性乳化剤の非限定的な例としては、塩化ベンザルコニウム、臭化セトリモニウム、塩化デメチルジオクタデシルアンモニウム、ラウリルメチルグルセト-10ヒドロキシプロピルジアンモニウムクロリド、水酸化テトラメチルアンモニウム、モノアルキルトリメチルアンモニウムクロリド、モノアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ジアルキルエチルメチルアンモニウムエトスルフェート、トリアルキルメチルアンモニウムクロリド、ポリオキシエチレンモノアルキルメチルアンモニウムクロリド、及びジ-第四級アンモニウムクロリド、Akzo Nobel N.V.(Amsterdam,the Netherlands)によって商品名ETHOQUAD、ARQUAD及びDUOQUADで販売されているアンモニウム官能性乳化剤、及びこれらの混合物が挙げられる。水中油型エマルジョンの形成において特に使用されるものは、ETHOQUAD界面活性剤、例えばETHOQUAD C/12、C/25、C/12-75などである。
【0157】
カチオン性乳化剤が水中油型乳化(共)重合反応で使用される場合、これは、モノマーの総重量に基づいて、約1.0重量%~6.0重量%の量で、又はモノマーの約2.0重量%~4.0重量%の量で、あるいは1.1重量%、1.2重量%、1.3重量%、1.4重量%、1.5重量%、1.6重量%、1.7重量%、1.8重量%、1.9重量%、2.1重量%、2.2重量%などの様々な中間レベルでの量で、及び1.0~6.0重量%の間の0.1重量%の増分で表される全ての他のこのような個々の値、並びに0.1重量%の増分でこれらの個々の値に及ぶ任意の範囲、例えば、2.3重量%~4.6重量%、4.5重量%~4.7重量%などの量で使用される。
【0158】
任意による増感剤
加えて、本明細書に記載の放射線硬化性組成物は、1つ以上の増感剤を更に含んでよく、同様に存在し得る1つ以上の光開始剤の有効性を増加させ得る。いくつかの実施形態では、増感剤は、イソプロピルチオキサントン(isopropylthioxanthone、ITX)又は2-クロロチオキサントン(chlorothioxanthone、CTX)を含む。他の増感剤もまた使用されてよい。放射線硬化性組成物中で使用する場合、増感剤は、放射線硬化性組成物の総重量に基づいて、約0.01重量%又は約1重量%の範囲の量で存在することができる。
【0159】
任意による(共)重合阻害剤
本明細書に記載の放射線硬化性組成物はまた、任意に1つ以上の(共)重合阻害剤又は安定剤を含む。(共)重合阻害剤は、多くの場合、組成物に更なる熱安定性を加えるために放射線硬化性組成物に含まれる。いくつかの例では、安定剤は1種以上の酸化防止剤を含む。本開示の目的に反しない任意の酸化防止剤を使用してよい。例えば、いくつかの実施形態では、好適な酸化防止剤として様々なアリール化合物が挙げられ、これにはブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)(butylated hydroxytoluene)が含まれ、これは、本明細書に記載の実施形態で(共)重合阻害剤としてもまた使用することができる。追加的に又は代替的に、(共)重合阻害剤は、メトキシヒドロキノン(MEHQ)(methoxyhydroquinone)を含む。
【0160】
いくつかの実施形態では、(共)重合阻害剤を使用する場合、(共)重合阻害剤は、放射線硬化性組成物の総重量に基づいて、約0.001重量%~2重量%、0.001重量%~1重量%、又は0.01重量%~1重量%の量で存在する。更に、安定剤を使用する場合、安定剤は、本明細書に記載の放射線硬化性組成物中に、放射線硬化性組成物の総重量に基づいて、約0.1重量%~5重量%、約0.5重量%~4重量%、又は約1重量%~3重量%の量で存在する。
【0161】
任意による吸収調整剤
本明細書に記載の放射線硬化性組成物はまた、化学線の透過度を制御するために、1つ以上の吸収調整剤(例えば、染料、光学的増白剤、顔料、微粒子充填剤など)を含むことができる。特に好適な吸収調整剤の1つは、BASF Corporation(Florham Park,NJ)から入手可能なTinopal OB(ベンゾオキサゾール,2,2’-(2,5-チオフェンジイル)ビス[5-(1,1-ジメチルエチル)])である。吸収調整剤を使用する場合、吸収調整剤は、放射線硬化性組成物の総重量に基づいて、約0.001重量%~5重量%、約0.01重量%~1重量%、0.1重量%~3重量%、又は約0.1重量%~1重量%の量で存在し得る。
【0162】
任意による着色剤
本明細書に記載の放射線硬化性組成物はまた、染料、顔料、及び顔料染料などの1つ以上の着色剤を含んでもよい。好適な着色剤は、米国特許第5,981,621号(Clarkら)に記載され、例としては、1-ヒドロキシ-4-[4-メチルフェニルアミノ]-9,10-アントラセンジオン(FD&C紫色2号)、6-ヒドロキシ-5-[(4-スルホフェニル)オキソ]-2-ナフタレンスルホン酸の二ナトリウム塩(FD&C黄色6号)、9-(o-カルボキシフェニル)-6-ヒドロキシ-2,4,5,7-テトラヨード-3H-キサンテン-3-オン、二ナトリウム塩、一水和物(FD&C赤色3号)などが挙げられる。
【0163】
有用な顔料の非限定的な例には、酸化チタン、リン酸亜鉛、硫化亜鉛、酸化亜鉛及びリトポンなどの白色顔料と、酸化鉄(栗色、赤色、明るい赤色)、鉄/クロム酸化物、硫セレン化カドミウム及び水銀カドミウム(栗色、赤色、橙色)などの赤色及び赤橙色顔料と、ウルトラマリン(青色、ピンク色及び紫色)、クロム錫(ピンク色)、マンガン(紫色)、コバルト(紫色)と、チタン酸バリウム、硫化カドミウム(黄色)、クロム(橙色、黄色)、モリブデン酸塩(橙色)、クロム酸亜鉛(黄色)、チタン酸ニッケル(黄色)、酸化鉄(黄色)、ニッケルタングステンチタン、亜鉛フェライト及びチタン酸クロムなどの橙色、黄色及びバフ色の顔料と、酸化鉄(バフ色、褐色)、酸化マンガン/酸化アンチモン/酸化チタン、チタン酸マンガン、天然シエナ(アンバー色)、チタンタングステンマンガンなどの茶色顔料と、アルミン酸クロム(青色)、クロムコバルトアルミナ(ターコイズ色)、アイアンブルー(青色)、マンガン(青色)、クロム及びクロム酸化物(緑色)及びチタングリーンなどのなどの青緑色顔料と、酸化鉄ブラック及びカーボンブラックなどの黒色顔料とが挙げられるが、これらに限定されない。硬化した組成物で所望の色調を実現するために、顔料の組み合わせが一般に使用される。
【0164】
プリントされた組成物を不可視光下で見えるようにするときに、蛍光染料及び顔料の使用が有用な場合もある。特に有用な炭化水素可溶性蛍光染料は、2,5-ビス(5-tert-ブチル-2-ベンゾオキサゾリル)1チオフェンである。ローダミンなどの蛍光染料をカチオン性(コ)ポリマーに結合させ、樹脂の一部として組み込んでもよい。
【0165】
任意による繊維性強化材料
本明細書に記載の放射線硬化性組成物はまた、1つ以上の繊維性強化材を含むことができ、好適な繊維性強化材の例としては、米国特許第6,183,593号(Narangら)に記載されているようなPGAマイクロ繊維、コラーゲンマイクロ繊維、及びその他のものが挙げられる。不連続繊維もまた、炭素、セラミック、ガラス、又はこれらの組み合わせを含む繊維などの好適な充填剤でもある。好適な不連続繊維は、セラミック繊維などの様々な組成物を有することができる。セラミック繊維は連続長で製造され得、これらが細断又は剪断されて、不連続なセラミック繊維が得られる。セラミック繊維は、様々な市販のセラミックフィラメントから製造され得る。
【0166】
セラミック繊維を形成するのに有用なフィラメントの例としては、商標NEXTEL(3M Company,St.Paul,MN)で販売されているセラミック酸化物繊維が挙げられる。NEXTELは、操作温度では低い伸び率及び収縮率を有する連続フィラメントセラミック酸化物繊維であり、良好な耐化学薬品性、低い熱伝導率、熱ショック耐性、及び低い空隙率をもたらす。NEXTEL繊維の具体的な例としては、NEXTEL 312、NEXTEL 440、NEXTEL 550、NEXTEL 610及びNEXTEL 720が挙げられる。NEXTEL 312及びNEXTEL 440は、Al2O3、SiO2、及びB2O3を含む耐熱性アルミノホウケイ酸塩である。NEXTEL 550及びNEXTEL 720は、アルミノシリカであり、NEXTEL 610は、アルミナである。
【0167】
造形の際に、NEXTELフィラメントは、多くの場合、有機サイジング剤又は仕上げ剤でコーティングされ、これが繊維加工の補助剤として機能する。サイジングは、保護及び操作補助のためにフィラメントストランドに適用されるデンプン、油、ワックス、又は他の有機成分の使用を含み得る。サイジングは、フィラメント又はセラミック繊維を700℃の温度で1~4時間熱洗浄することによって、セラミックフィラメントから除去することができる。
【0168】
セラミック繊維は、比較的均一な長さを提供するように切断、粉砕、又は細断することができ、これは、セラミック材料の連続フィラメントを、他の切断操作の中でもとりわけ、機械的剪断操作又はレーザ切断操作で切断することによって達成することができる。特定の切断作業の高度に制御された性質を考慮すると、セラミック繊維のサイズ分布は非常に狭く、複合特性を制御することができる。例えば、CCDカメラ(Olympus DP72,Tokyo,Japan)及び分析ソフトウェア(Olympus Stream Essentials,Tokyo,Japan)を搭載した光学顕微鏡(Olympus MX61,Tokyo,Japan)を使用して、セラミック繊維の長さを測定することができる。セラミック繊維の代表試料をガラススライド上に広げ、少なくとも200個のセラミック繊維の長さを10倍で測定することによって、試料を調製することができる。
【0169】
好適な繊維としては、例えば、NEXTEL 312、440、610及び720などの、商品名NEXTEL(3M Company,St.Paul,MNから入手可能)で入手可能なセラミック繊維が挙げられる。ここで好ましいセラミック繊維の1つは、多結晶α-Al2O3を含む。好適なアルミナ繊維は、例えば、米国特許第4,954,462号(Wood et al.)及び米国特許第5,185,299号(Wood et al.)に記載されている。代表的なアルファアルミナ繊維は、NEXTEL 610(3M Company,St.Paul,MN)の商品名で市販されている。いくつかの実施形態では、アルミナ繊維は、多結晶アルファアルミナ繊維であり、理論上の酸化物ベースで、アルミナ繊維の総重量を基準として、99重量%超のAl2O3及び0.2重量%~0.5重量%のSiO2を含む。他の実施形態では、いくつかの望ましい多結晶アルファアルミナ繊維は、1マイクロメートル未満(又は更には、いくつかの実施形態では、0.5マイクロメートル未満)の平均粒度を有するアルファアルミナを含む。
【0170】
いくつかの実施形態では、多結晶アルファアルミナ繊維は、少なくとも1.6GPa(いくつかの実施形態では、少なくとも2.1GPa、又は更には少なくとも2.8GPa)の平均引張強度を有する。好適なアルミノケイ酸繊維は、例えば、米国特許第4,047,965号(Karst et al.)に記載されている。例示的なアルミノケイ酸繊維は、3M Company(St.Paul,MN)によりNEXTEL 440、及びNEXTEL 720の商品名で市販されている。アルミノホウケイ酸繊維は、例えば、米国特許第3,795,524号(Sowman)に記載されている。例示的なアルミノホウケイ酸繊維は、3M Companyによって商品名NEXTEL 312で市販されている。窒化ホウ素繊維は、例えば、米国特許第3,429,722号(Economy)及び米国特許第5,780,154号(Okano et al.)に記載されているように作製することができる。
【0171】
セラミック繊維はまた、他の好適なセラミック酸化物フィラメントから形成することもできる。そのようなセラミック酸化物フィラメントの例としては、Central Glass Fiber Co.,Ltd.から入手可能なもの(例えば、EFH75-01、EFH150-31)が挙げられる。約2%未満のアルカリを含有するか、又は実質的にアルカリを含まないもの(すなわち、「Eガラス」繊維)である、アルミノホウケイ酸塩ガラス繊維もまた、好ましい。Eガラス繊維は、多数の商業的供給業者から入手可能である。
【0172】
任意による添加剤
所望の場合、本開示の組成物は、他の添加剤、例えば、指示薬、促進剤、界面活性剤、湿潤剤、酸化防止剤、酒石酸、キレート化剤、緩衝剤、及び当業者に明らかである他の類似成分を含有してもよい。加えて、医薬又は他の治療用物質を、プリントされた組成物に任意に添加することができる。例としては、フッ化物供給源、増白剤類、抗カリエス剤類(例えば、キシリトール)、無機成分補給剤類(例えば、リン酸カルシウム化合物、並びにその他のカルシウム供給源及びホスフェート供給源)、酵素類、口臭清涼剤類、麻酔剤類、凝固剤類、酸中和剤類、化学療法剤類、免疫反応調整剤類、チキソトロープ類、ポリオール類、抗炎症剤類、抗菌剤類、抗カビ剤類、口内乾燥処理剤、減感剤類などの、多くの場合、歯科用組成物に使用されるタイプのものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0173】
上記の添加剤のうちの任意のものの組み合わせを用いてもよい。当業者であれば、所望の結果を達成するために、過度な実験を行うことなく、そのような添加剤のいずれか1種を選び、その量を選択することができる。
【0174】
積層造形方法
本開示はまた、放射線硬化性組成物を、ニアネットシェイプ(コ)ポリマー-セラミック複合歯科用修復物に加工するのに有用な積層造形プロセスについても記載している。したがって、更なる例示的実施形態では、本開示は、複合材物品の製造方法について記載しており、この方法が、(a)放射線硬化性組成物が、少なくとも1つの放射線硬化性(例えば、放射線硬質化性)成分と、光開始剤と、50重量%以上の量のプリント可能な組成物の微粒子の集合を有する充填材料と、を含み、この微粒子の集合は、粒径試験方法を使用して判定したときに体積平均基準で0.3マイクロメートルより大きいメジアン径(D50)を呈し、更に、この放射線硬化性組成物は、粘度試験方法を使用して測定したときに150Pa・s未満の粘度を呈し、任意に、この放射線硬化性組成物は、有機溶媒を実質的に含まない、放射線硬化性組成物を提供するステップと、(b)この放射線硬化性組成物の一部分を化学線源に選択的に曝露して、この放射線硬化性組成物のこの曝露部分を少なくとも部分的に硬化させ、それによって硬質化された層を形成するステップと、を含み、ステップ(a)及び(b)が繰り返されて、ニアネットシェイプ複合材物品を形成する。
【0175】
ある特定の実施形態では、積層造形プロセスは、放射線硬化性組成物を加熱するステップ、未硬化放射線硬化性組成物をニアネットシェイプ複合材物品から除去するステップ、ニアネットシェイプ複合材物品を溶媒で洗浄するステップ、又はニアネットシェイプ複合材物品を加熱するステップ、のうちの少なくとも1つを含む。
【0176】
複合材物品は、複合歯科用修復物、例えば、歯科用クラウン、ブリッジ、インレー、オンレー、べニア、ポンティック、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態では、複合材物品は、本明細書で定義される曲げ強度試験に従って、少なくとも80MPa、少なくとも90MPa、少なくとも100MPa、少なくとも110MPa、又は更には少なくとも120MPSの曲げ強度を呈する。ある特定のこのような実施形態では、本明細書で定義される曲げ強度試験による曲げ強度は、最大で200MPa、175MPa、160MPa、150MPa、又は更には140MPaである。
【0177】
別の例示的実施形態では、本開示は、歯科用クラウンの作製方法について記載しており、この方法が、(a)底縁部を有する壁と、底縁部の反対側の壁と接合された咬合側部分と、を有し、壁及び咬合側部分は、内面及び対向する外面を形成し、壁及び咬合側部分の両方は、積層造形可能な材料を含む、歯科用クラウン用の設計を受信するステップと、(b)積層造形方法を使用して歯科用クラウンを作製するステップと、を含む。積層造形方法は、(i)放射線硬化性組成物が、少なくとも1つの放射線硬化性(例えば、光硬化性)成分と、光開始剤と、50重量%以上の量のプリント可能な組成物の微粒子の集合を有する充填材料と、を含み、この微粒子の集合は、粒径試験方法を使用して判定したときに体積平均基準で0.3マイクロメートルより大きいメジアン径(D50)を呈し、更に、この放射線硬化性組成物は、粘度試験方法を使用して測定したときに150Pa・s未満の粘度を呈する、放射線硬化性組成物を提供するステップと、(ii)この放射線硬化性組成物の一部分を化学線源に選択的に曝露して、この放射線硬化性組成物のこの曝露部分を少なくとも部分的に硬化させ、それによって硬質化された層を形成するステップと、を含む。ステップ(i)及び(ii)は繰り返されて、歯科用クラウンをニアネットシェイプ複合材物品として形成する。任意に、放射線硬化性組成物は、有機溶媒及び/又は重合性モノマーを実質的に含まない。
【0178】
ここで図面を参照すると、
図1は、積層造形デバイスを使用して、歯科用クラウンなどの(コ)ポリマー-セラミック複合歯科用修復物の作製方法を表すフロー図である。
【0179】
上記のとおりに調製した後は、本開示の放射線硬化性組成物を多様な積層造形プロセスに使用して、上記のようなフィルムのキャスティングを含む、様々な物品を作製することができる。3次元物品を作製するための一般化された方法を
図1に示す。方法の各ステップについて、下記に詳細に説明する。まず、ステップ110で、所望の放射線硬化性組成物が準備され、3Dプリンタによる使用のため又は3Dプリンタ内での使用のために、リザーバ、カートリッジ、又は他の適切な容器に導入される。3Dプリンタは、ステップ120で、コンピュータ化された設計指示のセットに従ってプリントされた組成物を選択的に硬化させて、所望の物品を表現するゲル化物品を形成する。初期の硬化プロセスが完了すると、ステップ130で、加熱、溶媒の抜き取り、又は当技術分野で公知の溶媒を除去するための他の方法を通して、硬化した物品から一時的溶媒が除去される。ステップ130の溶媒除去プロセスに続いて、ステップ140で、ゲル化物品に追加の硬化が施され、ゲル化物品中に残存している未硬化放射線硬質化性成分が(共)重合される。
【0180】
本明細書に記載の3次元物品又はオブジェクトをプリントする方法は、1層ずつ重ねる方式により、本明細書に記載の放射線硬化性組成物の複数の層から物品を形成するステップを含むことができる。更に、構築される材料組成物の層を、コンピュータ可読形式の3次元物品の画像に従って堆積させることができる。いくつか又は全ての実施形態で、放射線硬化性組成物は、予め選択されたコンピュータ支援設計(computer aided design、CAD)パラメータに従って堆積される。
【0181】
加えて、本明細書に記載の積層造形方法は、いわゆる「ステレオフォトリソグラフィ」(「液槽(共)重合」としても知られる)積層造形方法を含むことができることを理解されたい。3次元物品造形のための他の技法が知られており、本明細書に記載の用途で使用するために適切に改変されてもよい。より一般的には、3次元製作技法が次々と利用可能になってきている。そのような技法は全て、指定された物品特性にかなう製作粘度及び分解能を提供する限り、本明細書に記載の放射線硬化性組成物で使用するように改変することができる。製作は、本明細書に記載の製作技術のいずれかを、単独で又は様々な組み合わせで使用し、3次元のオブジェクトを表すデータを使用して行われてもよく、このデータは必要に応じて、特定のプリンティング技術又は他の製作技術に合わせてフォーマットし直すか、あるいは他の方法で改変することができる。
【0182】
本明細書に記載の放射線硬化性組成物からステレオフォトリソグラフィ(例えば、液槽(共)重合)を使用して3D物品を形成することは、完全に可能である。例えば、いくつかの事例では、3D物品をプリントする方法は、本明細書に記載の放射線硬化性組成物を流体状態で容器内に保持し、容器内の放射線硬化性組成物に選択的にエネルギーを加えて放射線硬化性組成物の流体層の少なくとも一部分を凝固させ、それによって、3D物品の断面を画定する硬質化された層を形成するステップを含む。
【0183】
加えて、本明細書に記載の方法は、放射線硬化性組成物の硬質化された層を上昇又は下降させて、未硬質化の放射線硬化性組成物の新たな、つまり第2の流体層を容器内の流体の表面に提供し、続いて、容器内の放射線硬化性組成物に再び選択的にエネルギーを加えて、放射線硬化性組成物の新たな、つまり第2の流体層の少なくとも一部分を凝固させ、3D物品の第2の断面を画定する第2の凝固された層を形成するステップを更に含むことができる。
【0184】
更に、放射線硬化性組成物を凝固させるためのエネルギーの印加によって、3D物品の第1及び第2の断面をz方向(つまり、上記の上昇又は下降の方向に相当する構築方向)に互いに結合又は接着することができる。更に、容器内の放射線硬化性組成物に選択的にエネルギーを加えることは、放射線硬化性組成物を硬化させるのに十分なエネルギーを有する、紫外線、可視光線又は電子ビーム線などの化学線を加えることを含むことができる。
【0185】
本明細書に記載の方法はまた、昇降機のプラットフォームを昇降させることによって提供される放射線硬化性組成物の流体の新たな層を平坦化するステップを含むことができる。このような平坦化は、いくつかの事例では、ワイパー又はローラー又はリコータビーズを利用することにより行うことができる。平坦化では、分注された材料を平らにして余分の材料を除去し、プリンタの支持プラットフォーム上に均一かつ滑らかに露出した又は平らな上向きの面を作り出すことによって、1つ以上の層の厚さを、材料を硬化させる前に補正する。
【0186】
3D物品を提供するために前述のプロセスを選択された回数だけ繰り返すことができることが、更に理解される。例えば、いくつかの事例では、このプロセスを「n」回繰り返すことができる。更に、放射線硬化性組成物の層に選択的にエネルギーを加えるステップなどの、本明細書に記載の方法の1つ以上のステップをコンピュータ可読形式の3D物品の画像に従って行うことができると理解される。好適なステレオフォトリソグラフィプリンタには、3D Systems,Rock Hill,SCから入手可能なViper Pro SPLA及び、Asiga USA,Anaheim Hills,CAから入手可能なAsiga Pico Plus39が挙げられる。
【0187】
したがって、更に別の例示的実施形態では、本開示は、液槽と;液槽内の放射線硬化性組成物と;液槽内の放射線硬化性組成物に少なくとも部分的に浸漬された可動ステージと;この放射線硬化性組成物の一部分を化学線源に選択的に曝露して、この放射線硬化性組成物のこの曝露部分を少なくとも部分的に硬化させ、それによって硬質化された層を形成するように適合された化学線源と;を含む、ステレオフォトリソグラフィ装置について記載している。放射線硬化性組成物は、少なくとも1つの放射線硬質化性成分と、光開始剤と、50重量%以上の量のプリント可能な組成物の微粒子の集合を有する充填材料と、を含み、この微粒子の集合は、粒径試験方法を使用して判定したときに体積平均基準で0.3マイクロメートルより大きいメジアン径(D50)を呈し、更に、この放射線硬化性組成物は、粘度試験方法を使用して測定したときに150Pa・s未満の粘度を呈する。任意に、放射線硬化性組成物は、有機溶媒及び/又は重合性モノマーを実質的に含まない。
【0188】
図2は、本明細書に記載の放射線硬化性組成物及び方法で使用されてもよい、ステレオフォトリソグラフィ装置(SPLA)の一例を示す。一般に、SPLA200は、レーザ202、光学素子204、ステアリングレンズ206、昇降機208、プラットフォーム210、及び、直線状縁部212を、放射線硬化性組成物で満たされた液槽214内に含んでもよい。動作中、レーザ202が放射線硬化性組成物の表面にわたって操縦されて放射線硬化性組成物の断面が硬化され、それによって、歯科用修復物36の一部分を形成し、その後、昇降機208がプラットフォーム210をわずかに降下させ、別の断面を硬化させる。直線状縁部212が層と層の間の硬化した組成物の表面を掃引して、新しい層を積層する前に表面を平滑化及び正規化してもよい。任意によるスキャフォールド又は支持体218は、いくつかの例示的実施形態では、歯科用修復物36の形成を補助するために有利に使用されてもよい。
【0189】
他の実施形態では、放射線硬化性組成物の上面に1層ずつ歯科用修復物が描かれる間に、液槽214に放射線硬化性組成物を、ゆっくりと満たしてもよい。
【0190】
関連技術である、デジタル光加工(Digital Light Processing、「DLP」)による液槽(共)重合はまた、硬化性(コ)ポリマー(例えば、放射線硬化性組成物)の容器を使用する。しかしながら、DLPに基づくシステムでは、硬化性材料の上に2次元の断面を投影して、投影されたビームに直交する平面全体の所望の部分を一度に硬化させる。液槽重合の1層ずつ重ねるステレオリソグラフィ及びDLP方法に加えて、例えば、重合プロセス中に追加の液体材料が構築領域内に引き込まれるように、構築プラットフォームを重合液の表面から離れる方向に連続的に前進させることにより、これらの基本的プリンタ構成の機械での連続プリントもまた可能である。
【0191】
本明細書に記載の放射線硬化性組成物で使用するように適合されてもよい硬化性(コ)ポリマーシステムは全て、本明細書で使用するとき「ステレオフォトリソグラフィシステム」という用語の範囲内にあることが意図される。
【0192】
より一般的には、放射線硬化性組成物は、典型的には、紫外線、電子ビーム線、可視光線、又はこれらの任意の組み合わせなどの化学線を使用して硬化される。当業者は、過度の実験を行うことなく、特定の用途に好適な放射線源及び波長の範囲を選択することができる。
【0193】
3D物品は、形成された後に、典型的には、ステレオフォトリソグラフィ積層造形装置から取り外されてすすがれ(例えば、溶媒(放射線硬化性組成物中の一時的溶媒と同じでも異なってもよい)中での超音波すすぎ、泡沫すすぎ又は噴霧すすぎなど)、硬化した固体のゲル化物品(例えば、素地)を除いて一部分の未硬化放射線硬化性組成物を溶解する。また、物品を洗浄し、物品表面の未硬化物を除去するために、任意の他の従来的方法を利用してもよい。この段階で、3次元物品は、典型的には、方法の残りのステップでの取り扱いのために十分な生強度を有する。
【0194】
再び
図1を参照すると、ステップ120で得られる積層造形された生(コ)ポリマー-セラミック複合修復物は収縮し(すなわち、体積が減少し)、ステップ130の後の物品の寸法が予想よりも小さくなる。例えば、積層造形された(コ)ポリマー-セラミック複合修復物は、溶媒除去の際に約6~8%収縮するが、典型的には、これに起因して最終的なオブジェクトの形状に著しい歪みが生じることはない。したがって、硬化された最終的な物品のデジタル表現の中の寸法は、この収縮を補償する全体的な倍率に従って拡大されてもよいことが、特に企図される。例えば、いくつかの実施形態では、デジタルの物品表現の少なくとも一部分は、プリントされた装具の所望のサイズの少なくとも101%、いくつかの実施形態では少なくとも102%、いくつかの実施形態では少なくとも105%、いくつかの実施形態では少なくとも110%、いくつかの実施形態では少なくとも120%であり得る。
【0195】
全体的な倍率は、上記ステップ110及び120に従って較正用部品を作製することにより、所与の放射線硬化性組成物の配合について計算することができる。ステップ130での溶媒除去及びステップ140での後硬化の前に較正用物品の寸法を測定することができる。
【0196】
一般に、ステップ120の初期のステレオフォトリソグラフィ積層造形ステップによって形成された3次元物品は、前述したように、完全には硬化しておらず、それは、すすぎ及び溶媒除去の後であっても組成物内の全ての(共)重合性材料が(共)重合しているわけではないことを意味する。ステップ130の一時的溶媒の除去に先行する洗浄プロセス中に、典型的には、積層造形された(コ)ポリマー-セラミック複合修復物の表面からいくらかの未硬化の(共)重合性材料が除去される。典型的には、物品の表面及び、かさばった物品そのものに未硬化の(共)重合性材料がなお保持されており、更なる硬化が示唆される。残留未硬化放射線硬化性組成物を除去することは、ゲル化物品がその後後硬化されることになり、未硬化残留放射線硬化性組成物がゲル化物品上に直接不必要に硬化することを最小限に抑えるために、特に有用である。
【0197】
更なる硬化は、更なる化学線、加熱、又はその両方によって行うことができる。化学線への曝露は、約10分~60分超の範囲の時間にわたる、任意の好都合な放射線源、一般には、紫外線、可視光線、及び/又は電子ビーム線により行ってよい。加熱は概して、不活性雰囲気下で、約10分~60分超の範囲の時間、約75~150℃の範囲の温度で行われる。紫外線と熱エネルギーとを組み合わせる、いわゆる後硬化オーブンは、ステップ140の後硬化プロセスでの使用に特に好適である。一般に、後硬化は、ゲル化物品に比較して3次元物品の機械的特性及び安定性を向上させる。
【0198】
選択された実施形態では、本方法は、任意に、ゲル化物品を、第2の(コ)ポリマーのガラス転移温度(Tg)の10℃以内に少なくとも5分間加熱するステップを含む。ゲル化物品のこのような加熱は、物品中の(コ)ポリマー鎖を緩和することで、ゲル化物品のプリントされた形状を失うことなく、内部ひずみを減少させることが予想外に発見された。
【0199】
任意による後加工ステップ140は、任意に、後硬化、支持体除去、抽出、及び/又は焼却、並びに次いで、積層造形された修復物の焼結及び仕上げを含むことができる。
【0200】
複合歯科用修復物
様々な歯科用修復物(例えば、
図3~
図5に示されるような歯科用クラウン)は、上述の例示的な放射線硬化性組成物及び積層造形方法を使用して製造することができる。
【0201】
図3~
図5に示されるように、積層造形された歯科用クラウンは一般に、底縁部34を有する壁32と、底縁部34の反対側の壁32と接合された咬合側部分36と、を有する。壁32及び咬合側部分36は、内面及び対向する外面を形成する。
【0202】
(コ)ポリマー-セラミック複合修復物の形状は限定されず、フィルム又は成形一体型(コ)ポリマー-セラミック複合修復物を含んでもよい。例えば、フィルムは、第1の態様による放射線硬化性組成物をキャスティングした後、キャスト組成物を化学線にさらして(共)重合性組成物を(共)重合させることによって容易に調製することができる。多くの実施形態では、(コ)ポリマー-セラミック複合修復物は、単一の一体型(コ)ポリマー-セラミック複合修復物によって寸法の2つ以上の変動が提供される、成形一体型(コ)ポリマー-セラミック複合修復物を含む。
【0203】
例えば、(コ)ポリマー-セラミック複合修復物は、1つ以上のチャネル、1つ以上のアンダーカット、1つ以上の穿孔、又はこれらの組み合わせを含み得る。このような特徴は、従来の成形方法を使用して一体型(コ)ポリマー-セラミック複合修復物において実現することが不可能である。
【0204】
ステレオフォトリソグラフィ又は液槽(共)重合などの積層造形プロセスを採用する利点は、(コ)ポリマー-セラミック複合修復物が比較的低い空隙率(例えば、(コ)ポリマー材料内に配置された空の空間)で形成され得ることである。いくつかの実施形態では、(コ)ポリマー-セラミック複合修復物は、0.1~1.5%(両端値を含む)の範囲、又は2.0~5.5%(両端値を含む)の範囲の空隙率を含む。このような低空隙率は、(コ)ポリマー-セラミック複合修復物の曲げ強度及び/又は引張強度に関して利益を提供することができる。
【0205】
硬化した状態の本明細書中に記載の放射線硬化性組成物は、いくつかの実施形態では、1つ以上の所望の特性を呈することができる。「硬化した」状態の放射線硬化性組成物は、少なくとも部分的に(共)重合及び/又は架橋されている放射線硬質化性成分を含む放射線硬化性組成物を含むことができる。例えば、いくつかの例では、硬化した(コ)ポリマー-セラミック複合修復物は、少なくとも約10%(共)重合又は架橋されているか、少なくとも約30%(共)重合又は架橋されている。いくつかの事例では、硬化した放射線硬化性組成物は、少なくとも約50%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%(共)重合又は架橋されている。硬化した放射線硬化性組成物はまた、約10%~約99%(共)重合又は架橋され得る。
【0206】
本開示の放射線硬化性組成物から作製された実質的に硬化した(コ)ポリマー-セラミック複合修復物の適合性及び耐久性は、標準の曲げ、引張、及び伸び試験によってある程度判断することができる。放射線硬化性組成物は、典型的には、硬質化の後に、下記のパラメータの少なくとも1つによって特徴付けることができる。破断伸びは、典型的には、40%以上、50%以上、75%以上、100%以上、125%以上、150%以上、又は200%以上、及び600%以下、500%以下、400%以下、300%以下、又は250%以下である。言い換えれば、硬化した(コ)ポリマー-セラミック複合修復物の破断伸びは、40%~600%の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、破断伸びは、少なくとも50%であり、かつ500%以下である。
【0207】
本開示の放射線硬化性組成物から作製された実質的に硬化したコ)ポリマー-セラミック複合修復物の曲げ強度は、本明細書中以下において曲げ強度試験方法を使用して判定したときに、典型的には、少なくとも50MPa、75MPa、100MPa、125MPa、又は更には140MPaである。曲げ引張強度は、典型的には、最大で200MPa、175MPa、150MPa、又は更には140MPaである。
【0208】
上記の機械的特性は、適度な摩耗強度及び低吸湿性に加えて弾力性及び可撓性を必要とするポリマー-セラミック複合修復物に特によく適している。
【0209】
ポリマー-セラミック複合歯科用修復物の積層造形システム
更なる例示的実施形態では、本開示は、歯科用修復物の3Dモデルを表示するディスプレイと、ユーザーによって選択されたこの3Dモデルに応じて、積層造形方法を使用してニアネットシェイプ複合歯科用修復物を積層造形デバイスに作製させる、1つ以上のプロセッサと、を含む、システムについて記載している。積層造形方法は、(a)放射線硬化性組成物を提供するステップと、(b)この放射線硬化性組成物の一部分を化学線源に選択的に曝露して、この放射線硬化性組成物のこの曝露部分を少なくとも部分的に硬化させ、それによって硬質化された層を形成するステップと、を含む。ステップ(a)及び(b)は繰り返されて、ニアネットシェイプ複合歯科用修復物を形成する。放射線硬化性組成物は、少なくとも1つの放射線硬質化性(例えば、放射線硬質化性)成分と、光開始剤と、50重量%以上の量のプリント可能な組成物の微粒子の集合を有する充填材料と、を含み、この微粒子の集合は、粒径試験方法を使用して判定したときに体積平均基準で0.3マイクロメートルより大きいメジアン径(D50)を呈し、更に、この放射線硬化性組成物は、粘度試験方法を使用して測定したときに150Pa・s未満の粘度を呈する。
【0210】
本開示の積層造形システムは、3次元(3D)(コ)ポリマー-セラミック複合(コ)ポリマー-セラミック複合修復物を製造するための積層造形デバイス及びプロセスを使用する。1つの特に好ましい積層造形プロセスは、ステレオフォトリソグラフィである。ステレオフォトリソグラフィでは、所望の3D(コ)ポリマー-セラミック複合修復物は、任意の回数繰り返され得る、交互に行う2つのステップを使用して、液体の光硬化性組成物から構築される。
【0211】
第1のステップでは、液体の光硬化性組成物の層であって、その片側の境界がその組成物の表面である、層を、形成されるべき成形(コ)ポリマー-セラミック複合修復物のその層の高さでの所望の断面エリアに対応する表面領域内で適切な放射を用いて硬化させ、第2のステップでは、硬化した層を液体の硬化性組成物の新しい層で覆い、これらの連続するステップを、所望の形状のいわゆる素地(すなわち、ゲル化(コ)ポリマー-セラミック複合修復物)が仕上げられるまで繰り返す。この素地は、概してまだ完全に硬化しておらず、通常は後硬化を施される。硬化直後の素地の機械的強度は、生強度としても知られ、プリントされた(コ)ポリマー-セラミック複合修復物の更なる加工に関連する。
【0212】
ここで
図6を参照すると、ある特定の実施形態では、本開示はシステム600を提供する。システム600は、歯科用修復物(例えば、
図10のディスプレイに示すような個々の歯1130の3D表現上の位置に対応する歯科用クラウン36)の3Dモデル610を表示するディスプレイ620と、ユーザーにより選択された3Dモデル610に応じて、修復物660の物理的オブジェクトを積層造形デバイス650に作製させる、1つ以上のプロセッサ630と、を備える。多くの場合、入力デバイス640(例えば、キーボード及び/又はマウス)は、特にユーザーが3Dモデル610を選択するために、ディスプレイ620及び少なくとも1つのプロセッサ630と共に使用される。物品660は、8~50重量%(両端値を含む)の熱硬化性(コ)ポリマーと、30~90重量%(両端値を含む)の、熱硬化性(コ)ポリマーとは異なる第2の(コ)ポリマーとの一体型ブレンドを含み、重量%は物品の総重量に基づく。
【0213】
図7を参照すると、プロセッサ720(又は2つ以上のプロセッサ)は、機械可読媒体710(例えば、非一時的媒体)、3Dプリンタ/積層造形デバイス740、及び任意にユーザーが見るためのディスプレイ730のそれぞれと通信する。積層造形デバイス740は、機械可読媒体710から、複合修復物760(例えば、
図10のディスプレイ1100に示すような個々の歯1130の3D表現に基づく歯科用クラウン36)の3Dモデルを表すデータを提供するプロセッサ720からの命令に基づいて、1つ以上の歯科用修復物750を作製するように構成されている。
【0214】
図8(これは例を示し、限定するものではない)を参照すると、積層造形方法は、(例えば、非一時的)機械可読媒体から、本開示の少なくとも1つの実施形態による歯科用修復物の3Dモデルを表すデータを取り出すこと810を含む。方法は、1つ以上のプロセッサによって、データを使用して造形デバイスとインタフェースする積層造形アプリケーションを実行するステップ820と、造形デバイスによって、物品の物理的オブジェクトを生成するステップ830と、を更に含む。積層造形機器は、放射線硬化性組成物を選択的に硬化させて、少なくとも部分的に硬化又はゲル化された修復物を形成することができる。1つ以上の様々な任意による後加工ステップ840を実行してもよい。典型的には、次にあらゆる任意による一時的溶媒の少なくとも一部分をゲル化物品から除去し、次いで、任意に、一時的溶媒を除去する前又は除去後のいずれかに残存する未反応放射線硬質化性成分を硬化させて、実質的に硬化した複合歯科用修復物を形成することができる。
【0215】
更に、
図9を参照すると、歯科用修復物の作製方法は、1つ以上のプロセッサを有する造形デバイスによって、歯科用修復物の複数の層を指定するデータを含むデジタルオブジェクトを受信するステップ910と、積層造形プロセスによる造形デバイスを用いて、このデジタルオブジェクトに基づく物品を生成するステップ920と、を含む。複合歯科用修復物は、1つ以上の任意による後加工ステップ930、例えば、放射線硬化性組成物を加熱するステップ、未硬化放射線硬化性組成物をニアネットシェイプ複合材物品から除去するステップ、ニアネットシェイプ複合材物品を溶媒で洗浄するステップ、又はニアネットシェイプ複合材物品を加熱するステップ、のうちの少なくとも1つを受けてもよい。
【0216】
更なる例示的な実施形態では、複合歯科用修復物は、複合組成物を実質的に完全に硬化させるか、又は複数の微粒子の焼結を引き起こす温度で加熱されることが望ましい場合がある。好適な温度は、少なくとも約90℃、100℃、110℃、120℃、125℃、又は更には130℃であってもよいが、好ましくは約250℃以下、225℃以下、200℃以下、175℃以下、又は更には150℃以下であってもよい。
【0217】
本開示の操作を、以下の詳細な実施例に関連して更に説明する。これらの実施例は、様々な具体的な好ましい実施形態及び技術を更に示すために提供される。しかしながら、本開示の範囲内に留まりつつ、多くの変更及び修正を加えることができるということが理解されるべきである。
【実施例】
【0218】
これらの実施例は、単に例証を目的としたものであり、添付の特許請求の範囲を過度に限定することを意図するものではない。本開示の幅広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは近似値であるが、具体的な実施例において示される数値は、可能な限り正確に報告している。しかしながら、いずれの数値にも、それらのそれぞれの試験測定値において見出される標準偏差から結果として必然的に生じる、ある特定の誤差が本質的に含まれる。最低でも、各数値パラメータは少なくとも、報告される有効桁の数に照らして通常の丸め技法を適用することにより解釈されるべきであるが、このことは特許請求の範囲の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではない。
【0219】
材料の概要
本明細書では、全ての部及びパーセンテージは、別途特定されない限り、重量(重量%)によるものとする。全ての水は脱イオン水であり、全ての分子量は、別途特定されない限り、平均分子量である。別途特定されない限り、材料は、Sigma-Aldrich(Milwaukee,WI)から得ることができる。別途特定されない限り、3Dプリントの実施例は全て、Asiga USA(Anaheim Hills,CA)から入手可能な液槽(共)重合3Dプリンタ、ASIGA PICO 2を用いた。
【表1】
【表2】
【0220】
未充填樹脂の調製
完全な混合を確保するために、成分を一晩回転混合することによって、表1に列挙した配合に従って未充填樹脂を調製した。
【表3】
【0221】
充填樹脂の調製
充填樹脂(すなわち、プリント用組成物)を、表3に示す配合に従って、Thinkyプラネタリーミキサー内にて2000rpmで1分間高速混合することにより調製した。混合は4回繰り返し、各混合サイクルの間にプリント用組成物を室温まで放冷した。
【表4】
【0222】
試験方法
以下の試験方法を使用して、本開示の実施例のうちの一部を評価した。
【0223】
粒径試験方法
充填樹脂の粒径分布を以下のように判定した。充填樹脂を、1-メトキシ-2-プロパノールで、1:1000の体積比に希釈してから、再循環プールに導入した。粒径分布は、Horiba粒径分布分析器モデルLA-950V2でのレーザ回折粒径分析を使用して測定した。各充填樹脂の体積平均D10値、D50値(メジアン)、及びD90値(マイクロメートル、μm)を表4に示す。
【表5】
【0224】
粘度試験の方法
40℃にて0.1/秒の剪断速度で40mmコーンプレート測定システムを使用するTA Instruments AR-G2磁気ベアリングレオメーターを用いて、未充填樹脂及び充填樹脂の絶対粘度を測定した。2つの複製を測定し、平均値を粘度(Pa・s)として報告した。
【表6】
【0225】
沈殿及び相分離安定性試験方法
充填樹脂を室温で透明なガラスバイアル瓶に入れ、室温で沈降/相分離を観察した。粒子沈降が検出されなかったので、全ての充填樹脂実施例F1~F7を、室温(約22℃)で少なくとも1ヶ月間安定であると判定した。4ヶ月後、F1、F2、F7のバイアル瓶の底部でいくらかの沈殿物を検出した。充填樹脂実施例F3、F4、F5、及びF6では、沈降を検出しなかった。
【0226】
曲げ強度試験方法
比較例CE-1~CE-6及び実施例EX-1~EX-6
385nm及び約23mW/cm
2の出力のLED光源を使用して、Asiga Pico 2プリンタで、未充填樹脂及び充填樹脂をプリントした。ISO-4049標準に従って調製した曲げ試験棒(2×2×25mm)を、2x2がビルドプレートに面した状態でプリントした。プリンタの樹脂浴を、プリントの前に35~40℃に加熱し、プリントできるように粘度を低下させた。各配合物のプリント温度を表5に列挙する。使用した設定は、スライス厚さ=50μm、バーンイン層=3、分離速度=10mm/秒、1層当たりのスライド数=1、バーンイン露光時間=15.0秒、通常露光時間=1.5秒であった。次にプリントされた棒をイソプロピルアルコールで洗浄して過剰な未硬化の樹脂を除去した。次いで、試験棒を、融合ランプ下で、各側で90分間ずつ後硬化させた。次に、後硬化された試験棒を、ISO-4049標準に従う3点曲げ治具内で試験した。後硬化された試験棒の曲げ強度及び曲げ弾性率を、メガパスカル(MPa)及びギガパスカル(GPa)でそれぞれ報告する。
【表7】
【0227】
未充填樹脂及び充填樹脂の3Dプリント
上記データは、歯科用クラウンなどの恒久修復材(restoratives)に望ましい良好な曲げ強度及び曲げ弾性率を得るために、より多い粒子充填量(>50重量%)が必要であることを示唆している。低粒子充填量を有する比較例CE-5は、低い強度及び弾性率を示すのに対して、EX-1及びEX-4は、約125MPaに迫る強度を示し、この強度は、恒久修復材(restoratives)に使用される市販品であるCE-1に近い。1層ずつ重ねてプリントされているが、EX-1~EX-6は、恒久歯科用修復物に必要な範囲で許容可能な特性を示す。
【0228】
歯科用クラウンの3Dプリント
実施例EX-7
以下の設定を用いるASIGA PICO 2プリンタ上で充填樹脂F4を使用して歯科用クラウンを3Dプリントした。プリントに使用した設定は、スライス厚さ=50μm、バーンイン層=2、分離速度=10mm/秒、1層当たりのスライド数=1、バーンイン露光時間=20.0秒、通常露光時間=1.5、液槽温度=35℃であった。このクラウンを生成するために、市販の小児用クラウン(3M Stainless Steel)で3Dスキャン(3M Lava Scan)を行い、表面メッシュファイルを生成した。このファイルをGeomagic Studioにインポートし、これを加工して、300マイクロメートル厚のシェルを得た。STLファイルをエクスポートし、後加工ソフトウェア(Asiga)に送信し、ここで、支持体を積層し、スライスを生成した。プリント後、歯科用クラウンをビルドプレートから除去し、イソプロピルアルコールですすぎ、ASIGA UVチャンバ内で90分間後硬化させた。
【0229】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」、又は「ある実施形態」に対する言及は、「実施形態」という用語の前に、「例示的な」という用語が含まれているか否かに関わらず、その実施形態に関連して説明される具体的な特色、構造、材料、又は特徴が、本開示の特定の例示的な実施形態のうちの少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して、様々な箇所における「1つ以上の実施形態において」、「特定の実施形態において」、「一実施形態において」、又は「ある実施形態において」などの表現の出現は、必ずしも本開示の特定の例示的な実施形態のうちの同一の実施形態に言及するものとは限らない。更に、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、1つ以上の実施形態では任意の好適な方法で組み合わされてもよい。
【0230】
本明細書ではいくつかの例示的な実施形態について詳細に説明してきたが、当業者には上述の説明を理解した上で、これらの実施形態の修正形態、変形形態、及び均等物を容易に想起できることが、諒解されるであろう。したがって、本開示は、ここまで説明してきた例示的実施形態に、過度に限定されるものではないことを理解されたい。
【0231】
更には、本明細書で参照される全ての刊行物及び特許は、個々の刊行物又は特許を参照により組み込むことが詳細かつ個別に指示されている場合と同じ程度に、それらの全容が参照により組み込まれる。様々な例示的な実施形態について説明してきた。これらの実施形態及び他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に含まれる。