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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】溶接金属ブランクを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/00 20060101AFI20231207BHJP
   B23K 9/23 20060101ALI20231207BHJP
   B23K 15/00 20060101ALI20231207BHJP
   B23K 20/12 20060101ALI20231207BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20231207BHJP
   B23K 26/38 20140101ALI20231207BHJP
   B21D 22/20 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B23K9/00 501C
B23K9/23 K
B23K15/00 505
B23K20/12 360
B23K26/21 F
B23K26/38 A
B21D22/20 E
B21D22/20 Z
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020547009
(86)(22)【出願日】2019-03-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 IB2019051856
(87)【国際公開番号】W WO2019171323
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2018/051521
(32)【優先日】2018-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(73)【特許権者】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エーリング,ボルフラム
(72)【発明者】
【氏名】ファン・デル・ボルヒト,ニコ
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-314365(JP,A)
【文献】特表2017-514694(JP,A)
【文献】特開昭53-104541(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0147111(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0107757(US,A1)
【文献】特表2007-509797(JP,A)
【文献】特表2011-527640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00
B23K 9/23
B23K 15/00
B23K 20/12
B23K 26/21
B23K 26/38
B21D 22/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接金属ブランク(16)を製造する方法であって、
少なくとも第1金属ストリップ(2)から第1初期金属シート(1)及び第2金属ストリップ(4)から第2初期金属シート(3)を切断するステップ、
初期輪郭(C)を有する初期溶接金属ブランク(9)を得るように、溶接によって少なくとも前記第1及び前記第2初期金属シート(1、3)を接合するステップであって、前記初期溶接金属ブランク(9)が、前記第1及び前記第2初期金属シート(1、3)を接合する溶接継手(10)を含む、ステップ、及び
最終輪郭(C、C、...)を有する少なくとも1つの最終溶接金属ブランク(16)を得るように、金属溶融を伴う工程によって前記初期溶接金属ブランク(9)を切断するステップであって、前記最終溶接金属ブランク(16)が、前記接合ステップ中に得られた前記溶接継手(10)の一部からなる溶接継手部分(19)によって接合された第1金属ブランク部分(17)及び第2金属ブランク部分(18)を含む、
ステップ
を含み、
前記初期溶接金属ブランク(9)で実行される前記切断ステップ中に、少なくとも2つの最終溶接金属ブランク(16)が前記初期溶接金属ブランク(9)から切断され、
前記初期溶接金属ブランク(9)から切断される少なくとも2つの最終溶接金属ブランク(16)が異なる形状の輪郭を有する、
方法。
【請求項2】
前記第1及び/又は第2初期金属シート(1、3)が、四辺形の輪郭を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記接合ステップが、レーザー溶接、電子ビーム溶接、アーク溶接、摩擦攪拌溶接又は抵抗溶接ステップである、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記接合ステップ中に得られる前記溶接継手(10)が、300mm以上での長さを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記最終溶接金属ブランク(16)の前記最終輪郭(C、C、...)が、少なくとも1つの非直線部分を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
各最終溶接金属ブランク(16)が、それぞれの面積(A、A、...)を画定する最終輪郭(C、C、...)を有し、考慮される初期溶接金属ブランク(9)から切断された全ての前記最終溶接金属ブランク(16)の前記最終輪郭(C、C、...)によって画定される前記面積(A、A、...)の合計は、前記考慮される初期溶接金属ブランク(9)の前記初期輪郭(C)によって画定される面積(A)よりも厳密に小さい、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの最終溶接金属ブランク(16)では、前記溶接継手部分(19)が250mm以下の長さを有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記溶接継手部分(19)の長さと前記溶接継手部分(19)に垂直に取られた前記最終溶接金属ブランク(16)の寸法との比が1以下である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1及び前記第2金属ストリップ(2、4)が異なる特性を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1及び第2初期金属シート(1、3)が鋼基板(5)を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1及び/又は前記第2初期金属シート(1、3)が、前記基板(5)の主面の少なくとも1つに、金属間合金層(7)と、前記金属間合金層(7)の上に延在する金属合金層(8)とを含むプレコート(6)を含み、前記金属合金層(8)が、アルミニウムの層、アルミニウム合金の層又はアルミニウムベースの合金の層である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1初期金属シート(1)及び前記第2初期金属シート(3)のうちの少なくとも1つについて、溶接を通じて前記第1及び第2初期金属シート(1、3)を接合する前に、前記第1及び/又は第2初期金属シート(1、3)の少なくとも一面の溶接縁(37)の厚さの少なくとも一部にわたって前記プレコート(6)を除去するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記最終溶接金属ブランク(16)が、0.8mm~5mmの厚さを有し、前記切断作業から生じる周縁表面(22)を含み、前記周縁表面(22)が、前記最終溶接金属ブランク(16)の一方の主面から他方まで延在し、前記初期溶接金属ブランク(9)上で実行される前記切断ステップがレーザー切断ステップであり、前記レーザー切断が、9%以上のレーザー切断作業から直接的に生じる前記周縁表面(22)の基板領域上のアルミニウムの表面割合(STotal)が直接的に生じ、前記レーザー切断作業から直接的に生じる前記周縁表面(22)の前記基板領域の下半分のアルミニウムの表面割合(SBottom)が0.5%以上となるように実行される、請求項11又は請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記溶接が溶加材を使用して実行される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記初期溶接金属ブランク(9)上で実行される前記切断ステップが、プラズマ切断、レーザー切断又は火炎切断ステップである、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記初期溶接金属ブランク(9)に対する前記切断ステップが、溶接開始又は停止クレーター又は欠陥を含まない最終溶接ブランク(16)を得るように実行される、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
プレス成形溶接金属部品を製造する方法であって、
請求項1から16のいずれか一項に記載の方法を使用して最終溶接金属ブランク(16)を製造するステップ、
プレス成形溶接金属部品を得るように前記最終溶接金属ブランク(16)を三次元形状にプレス成形するステップ、及び
最終プレス成形溶接金属部品を得るように3Dレーザー切断を使用して前記プレス成形溶接金属部品の縁部を任意選択的にトリミングするステップであって、前記3Dレーザー切断が10mm以下の幅にわたって前記プレス成形溶接金属部品から材料を除去する、ステップ
を含む方法。
【請求項18】
前記プレス成形ステップが、熱間成形プレスで実行される熱間成形ステップである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記最終溶接金属ブランク(16)の前記第1及び第2金属ブランク部分(17、18)が鋼基板(5)を含み、前記方法が、プレス硬化されたプレス成形溶接金属部品を得るように前記プレス成形溶接金属部品を冷却するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記冷却速度は、前記最終溶接金属ブランク(16)の前記基板の少なくとも1つの臨界マルテンサイト又はベイナイト冷却速度以上である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記プレス成形ステップが冷間成形ステップである、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接金属ブランクを製造する方法、プレス成形溶接金属部品を製造する方法、並びにこうして得られた溶接金属ブランク及びプレス成形溶接金属部品に関する。
【背景技術】
【0002】
過去数年にわたり、車両重量と機械的抵抗との間の良好な妥協を提供するために、いわゆるテーラードブランクから製造される自動車の構造要素が増加してきた。
【0003】
テーラードブランクは、一般に、所望の形状への後続の成形作業の前に、異なる特性、たとえば異なる厚さ、強度又は延性を有する金属シートを接合して単一の溶接ブランクにすることによって得られる。したがって、考えられる各用途について、形成された部品内の必要な場所で最適な材料特性を正確に得ることができる。たとえば、以前補強部品を必要とした場所では、通常、より厚い、及び/又はより強いシート材が使用される。
【0004】
一般に、このような溶接ブランクを使用して三次元部品を製造するために、異なる特性を有する少なくとも2つの金属シートがそれぞれの金属ストリップから切断され、次にこれら2つのシートは、テーラードブランクを形成するように、たとえばレーザー溶接を使用する溶接を通じて接合される。次に、三次元部品を製造するように、こうして得られた溶接ブランクに成形工程が適用される。部品の所望の機械的特性に応じて、この成形工程は、適合した成形プレスで実行される冷間成形又は熱間成形工程であってもよい。成形後、部品の縁部は、所望の寸法を有する最終部品を得るようにトリミングされる。
【0005】
この方法は、完全に満足できるものではない。実際、たとえばプレス成形を通じて、正確に適切な場所で所望の特性を有する部品を製造できるようにするために、溶接ブランクの寸法には高い公差が必要とされる。このような高公差は、大量のスクラップを生じ、したがって大量の材料が無駄になるため、有害である。さらに、溶接ブランクの比較的高い寸法公差のため、通常、溶接ブランクの寸法公差から生じる比較的大量の余分な材料を除去するために、最終三次元部品に対してトリミング作業を実行する必要がある。このような切断作業は、部品の三次元形状のため、実行するのが複雑かつ高額である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、より費用効果の高い方法でプレス成形溶接鋼部品を製造できるようにする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のために、本発明は、溶接金属ブランクを製造する方法であって、
少なくとも第1金属ストリップから第1初期金属シート及び第2金属ストリップから第2初期金属シートを切断するステップ、
初期輪郭を有する初期溶接金属ブランクを得るように、溶接によって少なくとも第1及び第2初期金属シートを接合するステップであって、初期溶接金属ブランクは、第1及び第2初期金属シートを接合する溶接継手を含む、ステップ、及び
最終輪郭を有する少なくとも1つの最終溶接金属ブランクを得るように、金属溶融を伴う工程によって前記初期溶接金属ブランクを切断するステップであって、最終溶接金属ブランクは、接合ステップ中に得られた溶接継手の一部からなる溶接継手部分によって接合された第1金属ブランク部分及び第2金属ブランク部分を含む、ステップ
を含む方法に関する。
【0008】
方法は、単独で、又は技術的に可能ないずれかの組み合わせにしたがって、以下の特徴の1つ以上をさらに含んでもよい。
【0009】
・第1及び/又は第2初期金属シートは、四辺形の輪郭、特に長方形、平行四辺形又は台形の輪郭から選択された輪郭を有する。
【0010】
・接合ステップは、レーザー溶接、電子ビーム溶接、アーク溶接、摩擦攪拌溶接又は抵抗溶接ステップであり、好ましくはレーザー溶接ステップである。
【0011】
・接合ステップ中に得られる溶接継手は、長さが300mm以上、好ましくは600mm以上である。
【0012】
・最終溶接金属ブランクの最終輪郭は、少なくとも1つの非直線部分、特に少なくとも1つの曲線部分を含む。
【0013】
・初期溶接金属ブランクで実行される切断ステップ中に、少なくとも2つの最終溶接金属ブランクが初期溶接金属ブランクから切断される。
【0014】
・各最終溶接金属ブランクは、それぞれの面積を画定する最終輪郭を有し、考慮される初期溶接金属ブランクから切断された全ての最終溶接金属ブランクの最終輪郭によって画定される面積の合計は、それぞれの初期溶接金属ブランクの初期輪郭によって画定される面積よりも厳密に小さい。
【0015】
・少なくとも1つの最終溶接金属ブランクでは、溶接継手部分は250mm以下の長さを有する。
【0016】
・溶接継手部分の長さと溶接継手部分に垂直に取られた最終溶接金属ブランクの寸法との比が1以下である。
【0017】
・第1及び第2金属ストリップは異なる特性を有する。
【0018】
・第1及び第2初期金属シートは鋼基板を含む。
【0019】
・第1及び/又は第2初期金属シートは、基板の主面の少なくとも1つに、金属間合金層と、金属間合金層の上に延在する金属合金層とを含むプレコートを含み、金属合金層は、アルミニウムの層、アルミニウム合金の層又はアルミニウムベースの合金の層である。
【0020】
・方法は、第1初期金属シート及び第2初期金属シートのうちの少なくとも1つについて、溶接を通じて第1及び第2初期金属シートを接合する前に、第1及び/又は第2初期金属シートの少なくとも一面の溶接縁の厚さの少なくとも一部にわたってプレコートを除去するステップをさらに含む。
【0021】
・最終溶接金属ブランクは、0.8mm~5mmの厚さを有し、切断作業から生じる周縁表面を含み、周縁表面は最終溶接金属ブランクの一方の主面から他方まで延在し、初期溶接金属ブランク上で実行される切断ステップはレーザー切断ステップであり、レーザー切断は、9%以上のレーザー切断作業から直接的に生じる周縁表面の基板領域上のアルミニウムの表面割合が直接的に生じ、レーザー切断作業から直接的に生じる周縁表面の基板領域の下半分のアルミニウムの表面割合が0.5%以上となるように実行される。
【0022】
・溶接、特にレーザー溶接は溶加材を使用して実行される。
【0023】
・第1及び第2初期金属シートを得るように第1及び/又は第2金属ストリップ上で実行される切断ステップは、機械的切断ステップ、特に剪断ステップである。
【0024】
・初期溶接金属ブランク上で実行される切断ステップは、プラズマ切断、レーザー切断又は火炎切断ステップ、好ましくはレーザー切断ステップであり、及び
・初期溶接金属ブランクに対する切断ステップは、溶接開始又は停止クレーター又は欠陥を含まない最終溶接ブランクを得るように実行される。
【0025】
本発明はまた、プレス成形溶接金属部品を製造する方法であって、
上記のような方法を使用して最終溶接金属ブランクを製造するステップ、
プレス成形溶接金属部品を得るように前記最終溶接金属ブランクを三次元形状にプレス成形するステップ及び、
最終プレス成形溶接金属部品を得るように3Dレーザー切断を使用して前記溶接金属部品の縁部を任意選択的にトリミングするステップであって、3Dレーザー切断は10mm以下の幅にわたってプレス成形溶接金属部品から材料を除去する、ステップ
を含む方法に関する。
【0026】
方法は、単独で、又は技術的に可能ないずれかの組み合わせにしたがって、以下の特徴の1つ以上をさらに含んでもよい。
【0027】
・プレス成形ステップは、熱間成形プレスで実行される熱間成形ステップである。
【0028】
・最終溶接金属ブランクの第1及び第2金属ブランク部分は鋼基板を含み、方法は、プレス硬化されたプレス成形溶接金属部品を得るようにプレス成形溶接金属部品を冷却するステップをさらに含み、冷却速度は、好ましくは最終溶接金属ブランクの基板の少なくとも1つの臨界マルテンサイト又はベイナイト冷却速度以上である。
【0029】
・プレス成形ステップは、冷間成形ステップである。
【0030】
本発明はさらに、溶接継手によって接合された第1金属ブランク部分及び第2金属ブランク部分を含む溶接金属ブランクに関し、溶接金属ブランクは、溶接金属ブランクの輪郭全体にわたって溶接金属ブランクの一方の主面から他方まで延在する周縁表面を含み、周縁表面は、溶接金属ブランクの輪郭全体にわたって、及び周縁表面の高さの少なくとも一部にわたって延在する凝固線条を含む。
【0031】
溶接金属ブランクは、単独で、又は技術的に可能ないずれかの組み合わせにしたがって、以下の特徴の1つ以上をさらに含んでもよい。
【0032】
・溶接金属ブランクの輪郭は、少なくとも1つの非直線部分、特に少なくとも1つの曲線部分を含む。
【0033】
・溶接継手は250mm以下の長さを有する。
【0034】
・第1及び第2金属ブランク部分は鋼基板を含む。
【0035】
・第1及び第2金属ブランク部分の各々は、その表面の少なくとも1つに、金属間合金層と、金属間合金層の上に延在する金属合金層とを含むプレコートを含み、金属合金層は、アルミニウムの層、アルミニウム合金の層又はアルミニウムベースの合金の層である。
【0036】
・溶接金属ブランクの厚さは0.8mm~5mmであり、周縁表面の基板領域上のアルミニウムの表面割合は9%以上であり、周縁表面の基板領域の下半分のアルミニウムの表面割合は0.5%以上である。
【0037】
・溶接継手は溶接開始又は停止クレーター又は欠陥を含まない。
【0038】
本発明はさらに、溶接継手によって接合された第1金属部品部分及び第2金属部品部分を含むプレス成形溶接金属部品に関し、プレス成形溶接金属部品は、溶接金属部品の輪郭全体にわたって延在する周縁表面を含み、周縁表面は、溶接金属部品の輪郭全体にわたって、及び周縁表面の高さの少なくとも一部にわたって延在する凝固線条を含む。
【0039】
プレス成形溶接金属部品は、単独で、又は技術的に可能ないずれかの組み合わせにしたがって、以下の特徴の1つ以上をさらに含んでもよい。
【0040】
・第1金属部品部分及び第2金属部品部分は鋼基板を含む。
【0041】
・プレス成形溶接金属部品はホットプレス成形金属部品であり、第1及び/又は第2金属部品部分の基板は、主にベイナイト系及び/又はマルテンサイト系微細組織を有する。
【0042】
・プレス成形溶接金属部品はコールドプレス成形金属部品である。
【0043】
本発明はさらに、溶接金属ブランクを製造するための設備であって、
少なくとも第1金属ストリップから第1初期金属シート及び第2金属ストリップから第2初期金属シートを切断するように構成された、第1切断ステーション、
初期輪郭を有する初期溶接金属ブランクを得るように、溶接によって少なくとも第1及び第2初期金属シートを接合するように構成された、溶接ステーションであって、初期溶接金属ブランクは、第1及び第2初期金属シートを接合する溶接部を含む、溶接ステーション、及び
最終輪郭を有する少なくとも1つの最終溶接金属ブランクを得るように金属溶融を伴う切断工程を使用して前記初期溶接金属ブランクを切断するように構成された、第2切断ステーションであって、最終溶接金属ブランクは、接合ステップ中に得られた溶接継手の一部からなる溶接継手部分によって接合された第1金属ブランク部分及び第2金属ブランク部分を含む、第2切断ステーション
を含む設備に関する。
【0044】
本発明はさらに、プレス成形溶接金属部品を製造するための設備であって、
上記のような溶接金属ブランクを製造するための設備、
プレス成形溶接金属部品を得るように前記溶接金属ブランクを三次元形状にプレス成形するように構成されたプレス、及び
任意選択的に、最終プレス成形溶接金属部品を得るように3Dレーザー切断を使用して前記溶接金属部品の縁部をトリミングするように構成された、3Dレーザー切断ステーション
を含む設備に関する。
【0045】
本発明は、例としてのみ与えられ、添付の図面を参照し、以下の明細書を読むことにより、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本発明による溶接金属ブランクを製造する方法の概略図である。
図2】本発明の第1の実施形態で使用される金属ストリップの概略側面図である。
図3】本発明の一実施形態による溶接金属ブランクの概略斜視図である。
図4図3の溶接金属ブランクの一部の概略斜視図である。
図5】溶接金属ブランクを製造する方法の追加の任意選択的ステップの概略図である。
図6】除去ゾーンを含む初期金属シートの概略図である。
図7】本発明によるプレス成形溶接金属部品を製造する方法を実行するための設備の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1は、本発明の一実施形態による溶接金属ブランクを製造する方法の異なるステップを概略的に示す。
【0048】
この方法は、少なくとも第1金属ストリップ2から第1初期金属シート1及び第2金属ストリップ4から第2初期金属シート3を切断するステップを含む(図1、A及びB参照)。
【0049】
第1及び第2金属ストリップ2、4は、最初に非コイル状態又はコイル状態で提供され得る。
【0050】
図2に示されるように、第1の実施形態では、第1及び第2金属ストリップ2、4は各々、その面の少なくとも一方、好ましくはその両方の面に、プレコート6を担持する鋼基板5を含む。
【0051】
基板5の鋼は、より具体的にはフェライトパーライト系微細組織を有する鋼である。
【0052】
好ましくは基板5は、熱処理向けの鋼であり、より具体的にはプレス硬化可能な鋼、たとえば22MnB5タイプの鋼のようなマンガン-ホウ素鋼でできている。
【0053】
この実施形態では、プレコート6は、少なくとも基板5と接触する金属間合金層7と、金属間合金層7の上方に延在する金属合金層8とを含む。金属合金層8は、より具体的には、アルミニウムの層、アルミニウム合金の層又はアルミニウムベースの合金の層である。この文脈において、アルミニウム合金は、50重量%を超えるアルミニウムを含む合金を指す。アルミニウムベースの合金は、重量でアルミニウムが主要な元素である合金である。
【0054】
たとえば、金属合金層8は、ケイ素をさらに含むアルミニウム合金の層である。より具体的には、金属合金層8は、重量で、
-8%≦Si≦11%、
-2%≦Fe≦4%、
を含み、残りはアルミニウム及び可能性のある不純物である。
【0055】
プレコート6は、特に溶融浸漬コーティングによって、すなわち溶融金属の槽内への基板5の浸漬によって、得られる。
【0056】
溶融浸漬コーティングによって得られた金属間合金層7及び金属合金層8を含むプレコート6の特定の構造は、欧州特許第EP2007545号で特に開示されている。
【0057】
第1及び第2金属ストリップ2、4は、好ましくは異なる特性を有する。特に、第1及び第2金属ストリップ2、4は、異なる組成、厚さ、幅、機械的特性、及び/又はコーティングを有することができる。異なる機械的特性は、たとえば、異なる引張強度、降伏強度、及び/又は延性を含み得る。
【0058】
第1及び/又は第2金属ストリップ2、4はたとえば、0.8mm~10mm、より具体的には0.8mm~5mm、さらに具体的には0.8mm~2.5mmの厚さを有する。
【0059】
第1及び第2初期金属シート1、3は、非コイル状態の第1及び第2金属ストリップ2、4から切断される。
【0060】
好ましくは、第1及び第2初期金属シート1、3は各々、直線状の縁部のみを含む輪郭を有する。
【0061】
第1及び第2初期金属シート1、3の輪郭は、好ましくは四辺形の形状を有し、有利には、長方形、平行四辺形及び台形の輪郭から選択される。
【0062】
第1及び第2金属ストリップ2、4から第1及び第2初期金属シート1、3をそれぞれ切断するステップは、機械的切断を通じて、又はレーザー切断、火炎切断又はプラズマ切断など、金属溶融を伴う工程を通じて実行される。
【0063】
レーザー切断の場合、切断ステップは、COレーザー、若しくはNd:YAG(ネオジムドープイットリウムアルミニウムガーネット)レーザー、ダイオードレーザー、ファイバーレーザー又はディスクレーザーなどの固体レーザー又はレーザー切断に適したその他いずれかのタイプのレーザーを使用して実行され得る。
【0064】
COレーザーが使用される場合、レーザーの出力は、たとえば2kW~7kWである。
【0065】
固体レーザーが使用される場合、レーザーの出力は、たとえば1kW~8kWである。
【0066】
レーザーは、有利には連続波レーザーである。
【0067】
レーザー切断は、レーザー切断のアシストガスとして不活性ガス、特に窒素、アルゴン又はヘリウム、若しくはこれらの混合物を使用して、さらに有利に実行される。代替例によれば、活性ガス、たとえば酸素がアシストガスとして使用される。
【0068】
機械的切断が使用される場合、切断作業は、たとえば剪断工具又は切断ダイを使用して実行される。
【0069】
機械的切断は、レーザー切断よりも切断コストが低くなるので好ましい。実際、第1及び第2初期金属シート1、3の非常に単純な形状を考慮すると、切断作業を実行するために特別に製造されたダイを使用する必要はない。特に、従来の剪断工具が使用されてもよい。切断を実行するためにダイが使用される場合、初期金属シート1、3は不特定であるため、異なる最終溶接金属ブランクを製造するために同じダイが再利用され得る。
【0070】
一実施形態によれば、第1及び/又は第2初期金属シート1、3の1つの寸法は、それぞれ第1又は第2金属ストリップ2、4の幅と同一である。この場合、第1及び/又は第2初期金属シート1、3の縁部のうちの2つは、それぞれの金属ストリップ2、4の縁部と一致する。代替例によれば、第1及び/又は第2金属ストリップ2、4の縁部の全ては、それぞれ第1、第2金属ストリップ2、4から切断することによって得られる。
【0071】
たとえば、第1及び/又は第2初期金属シート1、3の1つの縁部、たとえば最も長い縁部は、300mm以上、好ましくは500mm以上、さらに好ましくは600mm以上、さらに好ましくは1000mm以上の長さを有する。
【0072】
一例によれば、第1及び第2金属シート1、2は、異なる表面積を有する。
【0073】
図1Cに示されるように、第1及び第2初期金属シート1、3はその後、初期輪郭Cを有する初期溶接金属ブランク9を得るように、溶接によって接合される。
【0074】
溶接は、レーザー溶接、電子ビーム溶接、アーク溶接、摩擦攪拌溶接又は抵抗溶接を通じて実行され得る。
【0075】
接合ステップは、好ましくは、突き合わせ溶接による接合のステップである。初期金属シート1、3は、たとえば、必要に応じて最も長い縁部に沿って、又は最も短い縁部に沿って溶接され得る。
【0076】
一例によれば、溶接は、自生溶接、すなわち溶加材を添加せずに実行される溶接である。代替例によれば、溶接、たとえばレーザー溶接は、溶加材、たとえば溶加ワイヤを使用して実行される。
【0077】
図1Cに見られるように、こうして得られた初期溶接金属ブランク9は、第1及び第2初期金属シート1、3と、第1及び第2初期金属シート1、3を接合する溶接継手10とを含む。
【0078】
初期溶接金属ブランク16は、実質的に平坦である。
【0079】
溶接継手10は、好ましくは実質的に直線状である。
【0080】
一例によれば、溶接継手10は、300mm以上、好ましくは500mm以上、さらに好ましくは600mm以上、さらに好ましくは1000mm以上の長さを有する。
【0081】
方法は、少なくとも1つの最終溶接金属ブランク16を得るように、金属溶融を伴う工程を使用して前記初期溶接金属ブランク9を切断するステップをさらに含む(図1D参照)。
【0082】
金属溶融を伴う切断工程は、たとえばレーザー切断、プラズマ切断又は火炎切断である。これは、適合された切削工具、たとえばレーザービーム、プラズマトーチ又は酸化ガスに関連する火炎切断に適合された熱源を使用して実行される。
【0083】
図1に示される例では、最終溶接金属ブランク16を得るように前記初期溶接金属ブランク9を切断するステップは、レーザービーム15を使用するレーザー切断ステップである。
【0084】
このステップで使用され得るレーザータイプ及びアシストガスは、初期金属シート1、3を得る観点から初期切断ステップについて前述されたものと同じである。
【0085】
所与のレーザービームについて、レーザー切断速度は、特に第1及び第2初期金属シート1、3の厚さに応じて選択され得る。
【0086】
一実施形態によれば、最終溶接金属ブランク16の輪郭全体C、C、...にわたって一定の切断速度が使用される。代替例によれば、切断速度は第1及び第2初期金属シート1、3の間で、特にこれらのシート1、3が異なる厚さを有する場合に、変化する。
【0087】
好ましくは、切断ステップは、初期溶接金属ブランク9に対して切削工具を、たとえばレーザービーム15を位置決めするステップを含む。
【0088】
この位置決めステップは、好ましくは、溶接継手10を基準として使用して実行される。実際、この場合、位置決めは、初期溶接金属ブランク9の可能な寸法公差とは無関係である。この目的のために、溶接継手10の位置は、たとえば初期溶接金属ブランク9の1つの縁部で、2つの初期金属シート1、3の間の遷移を検出することによって、任意の適合した光学的手段を通じて、又は代わりに機械的に、検出され得る。
【0089】
代替例によれば、位置決めは、初期溶接金属ブランク9の縁部を基準として使用して実行される。この位置決め方法は、たとえば、初期溶接金属ブランク9の寸法にわずかな公差しかない場合に使用され得る。
【0090】
図1D及びEに見られるように、各最終溶接金属ブランク16は、溶接継手19によって接合された第1金属ブランク部分17及び第2金属ブランク部分18を含む。
【0091】
図3及び図4に示されるように、各最終溶接金属ブランク16は、2つの主面23、24と、最終溶接金属ブランク16の一方の面23から他方24まで最終溶接金属ブランク16の輪郭全体C、C、...に沿って延在する周縁表面22とをさらに含む。周縁表面22は、切断作業から生じた切断面、特にレーザー切断が使用される場合にはレーザー切断面である。
【0092】
主面23、24は、互いに実質的に平行に延在する。
【0093】
周縁表面22は、たとえば、主面23、24の少なくとも1つに対して65°~90°の間の角度で、有利には主面23、24に対して90°の角度で延在する。
【0094】
より具体的には、第1金属ブランク部分17は第1初期金属シート1の一部であり、第2金属ブランク部分18は第2初期金属シート3の一部である。したがって、第1及び第2金属ブランク部分17、18は、それぞれの初期金属シート1、3の組成、機械的特性、及び厚さを有する。特に、第1及び第2金属ブランク部分17、18は各々、それぞれの初期金属シート1、3の組成を有する基板と、場合により、それぞれの初期金属シート1、3のプレコート6の組成及び構造を有するプレコートとを含む。
【0095】
溶接継手19は、接合ステップ中に得られた溶接継手10の一部からなる。
【0096】
溶接継手19は、好ましくは、250mm以下、より具体的には150mm以下、さらに具体的には100mm以下の長さを有する。
【0097】
図1に示される例では、溶接継手19は、最終溶接金属ブランク16の一方の縁部20からその反対の縁部21まで延在する。
【0098】
有利には、所与の最終溶接金属ブランク16について、溶接継手19の長さと溶接継手19の方向に対して垂直に取られた最終溶接金属ブランク16の最大寸法との比は、1以下、より具体的には0.7以下である。このような形状は、初期溶接金属ブランク9から切断され得る最終溶接金属ブランク16の数が増加するので、生産性の観点から有利である。
【0099】
各最終溶接金属ブランク16は、実質的に平坦である。
【0100】
各最終溶接金属ブランク16は、それぞれの面積A、Aなどを画定する最終輪郭C、Cなどを有する。
【0101】
好ましくは、最終輪郭C、C...は、初期輪郭Cの形状と相似ではない形状を有する。これは好ましくは、長方形、台形又は平行四辺形ではなく、たとえば四辺形の形状ではない。
【0102】
好ましくは、最終溶接金属ブランク16の各々の輪郭C、C、...は、非直線部分、たとえば曲線部分を含む。
【0103】
初期溶接金属ブランク9から切断される最終溶接金属ブランク16の数は、最終溶接金属ブランク16の形状、並びに初期溶接金属ブランク9の寸法に依存する。有利には、切断ステップ中に、少なくとも2つの最終溶接金属ブランク16、たとえば3個から10個の最終溶接金属ブランク16が、初期溶接金属ブランク9から切断される。好ましくは、切断ステップ中に初期溶接金属ブランク9から切断され得る最終溶接金属ブランク16の数を最大化させるように、入れ子が行われる。
【0104】
図1に示される例では、考慮される初期溶接金属ブランク9から切断された全ての最終溶接金属ブランク16の最終輪郭C、C、...によって画定された面積A、Aの合計は、それぞれの初期溶接金属ブランク9の初期輪郭Cによって画定された面積よりも厳密に小さい。言い換えると、切断作業は、非ゼロ量の廃材を生み出す。
【0105】
好ましくは、所与の初期溶接金属ブランク9から得られた全ての最終溶接金属ブランク16の輪郭C、C、...は、実質的に同じ形状を有する。
【0106】
代替例によれば、少なくとも2つの最終溶接金属ブランク16は、異なる形状の輪郭C、Cなどを有する。このような代替例は、同じ厚さ及び組成の組み合わせを有する異なるタイプの最終溶接ブランク16を1つのバッチで製造できるようにするという利点を提供する。最終溶接ブランク16のタイプごとに異なる量は初期溶接ブランク9に各タイプの最終溶接ブランク16の発生頻度を適合させることによって、管理することができる。
【0107】
最終溶接金属ブランク16は、最終溶接金属ブランク16を得るための金属溶融を伴う切断方法の使用から生じる特定の特徴を有する。
【0108】
特に、このような切断方法の使用は、切断縁部に材料の融合をもたらし、これは後に凝固して、凝固リップルとも呼ばれる凝固線条を形成する。これらの凝固線条の間隔及び傾斜は、特に切断速度、最終溶接金属ブランク16の厚さ、及びアシストガスが使用される場合には、切断に使用されるアシストガスの性質及び圧力に依存する。したがって、図3及び図4に示されるように、最終溶接金属ブランク16の周縁表面22は、複数の凝固線条又はリップル28を含む。
【0109】
図3及び図4に示される例は、より具体的には、レーザー切断を通じて得られる周縁表面22に関する。しかしながら、類似の線条28は、金属溶融を伴うその他いずれのタイプの切断方法でも得られる。
【0110】
輪郭全体C、C、...は初期溶接金属ブランク9から切断されたという事実のため、凝固線条28は、溶接継手19の表面上を含む、溶接金属ブランク16の輪郭全体C、C、...にわたって周縁表面22上に延在する。
【0111】
より具体的に図4に見られるように、凝固線条28は、周縁表面22の高さhの少なくとも一部にわたって、最終溶接金属ブランク16の一方の主面23から延在する。
【0112】
周縁表面22の高さhは、図3及び図4に示されており、周縁表面22に沿った2つの主面23、24の間の距離に対応する。周縁表面22が主面23、24に垂直である場合、これは最終溶接金属ブランク16の厚さに対応する。
【0113】
凝固線条28が延在し始める主面23は、最終溶接金属ブランク16の、切断を実行する切削工具、たとえば図示される例ではレーザービーム15と同じ側に位置する面に対応する。
【0114】
図4に示される例では、凝固線条28は、周縁表面22の高さhの一部にわたってのみ延在する。この例では、周縁表面22は、凝固線条を含まないゾーン29を含む。無線条ゾーン29は、最終溶接金属ブランク16の一方の主面24から、及びより具体的には、最終溶接金属ブランク16の、切断を実行する切削工具が位置している側と反対の側に位置する主面24から、周縁表面22の高さhの一部にわたって延在する。
【0115】
代替例によれば、凝固線条28は、最終溶接ブランク16の一方の主面23から他方24まで、全高hにわたって延在してもよい。
【0116】
一般に、線条28は、主面23から、すなわち切削工具、特にレーザー切断の場合にはレーザービーム15の衝撃のゾーンからの距離を増加させるほど、強調されなくなる。
【0117】
図4に見られるように、凝固線条28は、特に多くの場合、主面23から延在する、周縁表面22の第1のゾーン25内で最終溶接ブランク16の主面23に対して実質的に垂直に延在する傾向があり、これらは、第1のゾーン25に隣接する第2のゾーン26内で主面23に対する垂線に対して角度を形成する傾向がある。図4では、Dで記された矢印は、切断ステップ中に切削工具が変位した場合の切断中の最終溶接ブランク16に対する切削工具、特にレーザービーム15の相対移動の方向を示し、その間、初期溶接金属ブランク9は所定位置に固定されたままである。
【0118】
図3及び図4に示されるように、金属溶融を伴う切断、特にレーザー切断は、最終溶接金属ブランク16の周囲に熱影響ゾーン(Heat Affected Zone:HAZ)30を追加で作成する。
【0119】
HAZは、最終溶接金属ブランク16の輪郭全体C1、C2、...にわたって延在する。より具体的には、HAZは、最終溶接金属ブランク16の全厚さにわたって溶接金属ブランク16の縁部からの幅Wにわたって延在する。レーザー切断の場合、HAZはより具体的には、溶接金属ブランク16の縁部から、0.1mm以上、及び好ましくは3mm以下の幅Wにわたって延在する。
【0120】
HAZは、金属溶融を伴う切断中の周縁表面22の加熱から生じる。
【0121】
HAZは、熱影響ゾーンの存在を検出する従来の手段を通じて、たとえばマイクロ硬度又はナノ硬度測定を通じて、又は適合されたエッチング後の金属組織観察を通じて、観察され得る。
【0122】
HAZの構造は、最終溶接金属ブランク16の残りの部分の構造、特に第1及び第2金属ブランク部分17、18の構造とは異なっている。HAZのこの修整された構造は、切断工程中の切断縁部の加熱に起因する。
【0123】
特に、HAZでは、基板の微細組織が、第1又は第2金属ブランク部分17、18の残りの部分における基板5の微細組織とは異なっている。特に、オーステナイト結晶粒度は、HAZでは第1又は第2金属ブランク部分17、18の残りの部分よりも厳密に大きい。
【0124】
さらに、切断中の切断縁部におけるプレコート6の加熱のため、HAZは、第1及び第2金属ブランク部分17、18の残りの部分のプレコート6の構造とは異なる構造を有するコーティングを含む。特に、HAZのコーティングは、プレコート6のように金属間合金層7及び金属合金層8を含まない。
【0125】
特定の一実施形態によれば、最終溶接金属ブランク16を得るための初期溶接金属ブランク9の切断は、レーザー切断を使用して実行され、切断ステップ中、レーザー切断は、以下の2つの特徴が最終溶接金属ブランク16の周縁表面22に存在するような方法で実行される。
【0126】
(a)レーザー切断作業から直接生じる周縁表面22の基板領域上のアルミニウムの総表面割合STotalは9%以上であり、
(b)レーザー切断作業から直接生じる周縁表面22の基板領域の下半分におけるアルミニウムの表面割合SBottomは0.5%以上である。
【0127】
この文脈において、「直接生じる」とは、特に、レーザー切断装置のレーザービームが初期溶接金属ブランク9から最終溶接金属ブランク16を切断した直後、特に周縁表面22上でさらなるステップが実行される前、たとえばブラッシング、機械加工、フライス加工、サンドブラスト又はストリッピングなど、周縁表面22の可能な仕上げステップの前に、アルミニウムの割合又は比率が測定されることを意味する。
【0128】
この文脈において、周縁表面22の基板領域は、周縁表面22に位置する基板5の表面に対応する。これは、基本的に基板5の材料からなる。
【0129】
周縁表面22の基板領域上のアルミニウムの総表面割合STotalは、以下のように測定され得る。
【0130】
・走査型電子顕微鏡を使用して周縁表面22の基板領域が撮影される。
【0131】
・全ての合金元素のうち、考慮される基板領域上に存在するアルミニウムのみを示すEDS(エネルギー分散型X線分光分析:Energy Dispersive X-Ray Spectroscopy)を得るために、走査型電子顕微鏡から得られた情報を処理する。たとえば、画像は、考慮される基板領域上に存在するアルミニウムの痕跡が、黒の背景に対照して強く引き立つ赤などの色で現れるように、処理される。切断中のレーザー変位の結果として、アルミニウムは傾斜した滴下痕として現れる。
【0132】
・こうして得られたEDS画像はその後、画像内のアルミニウムの表面割合を測定するために、画像処理を通じて処理される。
【0133】
この目的のために、考慮される基板領域のEDS画像内のアルミニウムに対応する画素の数Nは、画像処理を使用して測定される。
【0134】
たとえば、この画像処理は、たとえばGimp画像分析ソフトウェアなど、それ自体既知の従来の画像処理分析ソフトウェアを通じて実行され得る。
【0135】
次いで、周縁表面22の基板領域内のアルミニウムの総表面割合STotalは、こうして測定されたアルミニウム画素の数Nを考慮される基板領域の画像内の画素の総数で除することによって得られる。
【0136】
周縁表面22の基板領域の下半分におけるアルミニウムの表面割合SBottomを測定するために、同じ方法が使用されるが、ただし周縁表面22の基板領域の下半分の画像の分析に基づく。
【0137】
周縁表面22の少なくとも部分的なアルミニウム被覆は、レーザー切断中の最終溶接ブランク16の周縁におけるプレコート6の溶融に起因し、溶融したプレコート6の一部は周縁表面22上に流れる。
【0138】
この実施形態では、レーザー切断パラメータ、特にレーザー切断線形エネルギー及びレーザー切断ステップで使用されるアシストガスの圧力は、上述の特徴(a)及び(b)が得られるように選択される。
【0139】
この文脈において、レーザー切断線形エネルギーは、単位長さあたりのレーザー切断中のレーザービームによって送られるエネルギーの量に対応する。これは、レーザービームの出力を切断速度で除することによって計算される。
【0140】
この実施形態は、特徴(a)及び(b)による周縁表面22の被覆が保管中及び/又は後続の熱処理中、たとえば熱間成形中に腐食又は酸化からの周縁表面22の良好な保護をもたらすので、特に有利である。
【0141】
図5に示されるように、溶接金属ブランク16を製造する方法は、任意選択的に、少なくとも1つのパッチ35を初期溶接金属ブランク9に溶接するステップを含み得る。
【0142】
特に、各パッチ35は、初期溶接金属ブランク9の面積よりも厳密に小さい面積、より具体的には最終溶接金属ブランク16の面積よりも厳密に小さい面積を有する、平坦な金属片からなる。
【0143】
図5に示されるように、パッチ35は、パッチ表面全体にわたって初期溶接ブランク9と表面接触している。これはたとえば、抵抗スポット溶接、レーザー遠隔溶接、電子ビーム溶接又は摩擦攪拌溶接を通じて溶接される。一般に、抵抗スポット溶接又はレーザー遠隔溶接が好ましい。これらの中で、抵抗スポット溶接が好適な溶接方法である。
【0144】
パッチ35は、好ましくは、初期溶接金属ブランク9内の第1及び第2初期金属シート1、3の一方のみに延在する。
【0145】
代替例によれば、パッチ35は、溶接継手10を横切って延在し得る。この場合、これは、初期溶接金属ブランク9のいずれかの側に延在する初期金属シート1、3の各々の上に延在する。
【0146】
パッチ35は、使用時に特に強い要求を受ける領域内の最終溶接ブランク16から形成された部品を補強するように意図される。パッチ35の材料及び厚さは、必要に応じて部品の補強を最適化するように選択される。一例によれば、パッチ35は鋼でできている。これはたとえば、これが溶接される初期金属シート1、3の一方と同じ材料でできている。
【0147】
好ましくは、いくつかの最終溶接ブランク16が同じ初期溶接ブランク9から切断される場合、パッチ溶接ステップは、そこから切断されるように意図される最終溶接ブランク16と同じ数のパッチ35を初期溶接ブランク9に溶接するステップを含む。好ましくは、初期溶接ブランク9上のパッチ35の位置は、全てのパッチ35がそれぞれの最終溶接金属ブランク16内で同じ位置に配置されるような方法で選択される。
【0148】
初期溶接金属ブランク9を製造する方法は、溶接の前に、任意選択的に、第1及び/又は第2初期鋼シート1、3の溶接縁37の除去ゾーン36にわたるその厚さの少なくとも一部にわたってプレコート6を除去するステップを、さらに含み得る。溶接縁37は、少なくとも部分的に溶接継手10と一体化されるように意図される第1及び/又は第2初期鋼シート1、3の縁部を指す。このような除去ゾーン36を含む初期金属シート1の例が、図6に示されている。
【0149】
鋼シート1、3の各々の除去ゾーン36の幅Wは、たとえば0.2~2.2mmである。
【0150】
好ましくは、除去ステップは、その高さの少なくとも一部にわたって除去ゾーン36内に金属間合金層7を残しながら、金属合金層8のみを除去するように実行される。この場合、残留金属間合金層7は、溶接継手10に直接隣接する初期溶接金属ブランク9の領域を、後続の熱間成形ステップ中の酸化及び脱炭、並びに使用時のサービス中の腐食から保護する。
【0151】
除去は、好ましくは、レーザービーム、特にパルスレーザービームを使用して実行される。
【0152】
本発明はさらに、上記のような溶接金属ブランク16を製造する方法を実行するための設備38に関する。このような設備の例は、図7に概略的に示されている。この設備は、
少なくとも第1金属ストリップ2から第1初期金属シート1及び第2金属ストリップ4から第2初期金属シート3を切断するように構成された、第1切断ステーション40、
初期輪郭Cを有する初期溶接金属ブランク9を得るように溶接することによって少なくとも第1及び第2初期金属シート1、3を接合するように構成された、溶接ステーション42であって、初期溶接金属ブランク9は、第1及び第2初期金属シート1、3を接合する溶接継手10を含む、溶接ステーション42、及び
最終輪郭C、C、...を有する少なくとも1つの最終溶接金属ブランク16を得るように、金属溶融を伴う切断工程を使用して前記初期溶接金属ブランク9を切断するように構成された、第2切断ステーション44であって、最終溶接金属ブランク16は、接合ステップ中に得られた溶接継手10の一部からなる溶接継手19によって接合された第1金属ブランク部分17及び第2金属ブランク部分18を含む、第2切断ステーション44
を含む。
【0153】
第1切断ステーション40は、切断作業を実行するように構成された切削工具を含む。これはたとえば、レーザービームを放出するように構成されたレーザーヘッドを含む少なくとも1つのレーザー工具を含む、レーザー切断ステーションである。一実施形態によれば、第1切断ステーション40は、異なる初期金属シートが並行して得られるように、切断すべきストリップと同じ数のレーザーヘッドを含む。
【0154】
有利には、第1切断ステーション40は機械的切断ステーションである。特に、機械的切断ステーションは、少なくとも1つの剪断工具を含み、好ましくは、異なる初期金属シートが並行して得られるように、切断すべきストリップと同じ数の剪断工具を含む。
【0155】
溶接ステーション42は、レーザー溶接、電子ビーム溶接、アーク溶接、摩擦攪拌溶接又は抵抗溶接を実行するように構成されている。
【0156】
第2切断ステーション44は、金属溶融を伴う切断作業を実行するように構成された切削工具を含む。これは特に、レーザービームを放出するように構成されたレーザーヘッドを含む少なくとも1つのレーザー工具を含む、レーザー切断ステーションである。あるいは、切断ステーション44によって実行される切断工程のタイプに応じて、第2切断ステーション44は、プラズマトーチ又は熱源及び関連する酸化ガスを含んでもよい。
【0157】
一実施形態によれば、溶接ステーション42はレーザー溶接ステーションであり、第2切断ステーション44はレーザー切断ステーションであり、設備38は、溶接及びレーザー切断を実行するように構成された、複合型の溶接及び切断ヘッドを含む。
【0158】
代替例によれば、溶接ステーション42はレーザー溶接ステーションであり、第2切断ステーション44はレーザー切断ステーションであり、溶接ステーション42及び第2切断ステーション44は互いに区別され、特に各々が専用のレーザーヘッドを含む。
【0159】
設備38は、任意選択的に、第1及び/又は第2初期鋼シート1、3の溶接縁の除去ゾーンにわたりその厚さの少なくとも一部にわたってプレコート6を除去するように構成された、プレコート除去ステーションをさらに含む。この任意選択的な除去ステーションは、溶接ステーション42の上流、かつ第1切断ステーション40の下流に配置されている。プレコート除去ステーションは、有利には、プレコートを除去するためのレーザービーム、より具体的にはパルスレーザービームを放出するように構成されたレーザーヘッドを含む、レーザー工具を含む。
【0160】
本発明はさらに、プレス成形溶接金属部品を製造する方法であって、
上記のような方法を使用して最終溶接金属ブランク16を製造するステップ、
プレス成形溶接金属部品(図示せず)を得るように前記最終溶接金属ブランク16を三次元形状にプレス成形するステップ、及び
最終金属部品を得るように3Dレーザー切断を使用して前記溶接金属部品の縁部を任意選択的にトリミングするステップであって、3Dレーザー切断は、10mm以下、たとえば7mm以下、さらに具体的には5mm以下の幅にわたってプレス成形溶接金属部品から材料を除去する、ステップ
を含む方法に関する。
【0161】
最後のトリミングステップは、任意選択的である。したがって、これは実行されてもされなくてもよい。
【0162】
いくつかの実施形態によれば、プレス成形の直後の、後続のトリミングステップがない場合のプレス成形溶接金属部品の寸法は、部品の所望の最終寸法に対応する。この場合、トリミングは実行されない。
【0163】
代替例によれば、トリミングステップは、プレス成形溶接金属部品に対して実行され、この最後のトリミングステップは、10mm以下、たとえば7mm以下、より具体的には5mm以下の幅にわたって溶接金属部品の周囲から材料を除去する。トリミングは、3Dレーザー切断を使用して実行される。このような切断技術は、プレス成形ステップの終わりに得られる三次元金属部品の縁部をトリミングするように適合されている。
【0164】
こうして得られたプレス成形溶接金属部品は、三次元形状を有し、溶接継手によって接合された第1金属部品部分及び第2金属部品部分を含む。
【0165】
第1及び第2金属部品部分はそれぞれ、第1及び第2金属ブランク部分17、18のプレス成形から生じる。これらは各々、その厚さの少なくとも一部、特にその厚さの少なくとも95%にわたって、第1及び第2鋼シート1、3とそれぞれ実質的に同じ組成を有する鋼基板を含む。この実施形態では、第1及び第2金属部品部分は、コーティングをさらに含む。このコーティングは、第1及び第2初期金属シート1、3のプレコート6のプレス成形から生じる。
【0166】
プレス成形溶接金属部品は好ましくは、展開不可能な表面を有し、これは部品の表面が、歪みのない平面に平坦化され得ないことを意味する。
【0167】
可能なトリミングステップの前に、プレス成形溶接金属部品は、溶接金属部品の輪郭全体にわたって延在する周縁表面を含む。周縁表面は、部品の一方の面からその反対側の面まで延在する。
【0168】
周縁表面は、プレス成形ステップ中に変形した可能性のある、最終溶接金属ブランク16の周縁表面22に対応する。
【0169】
プレス成形金属部品の周縁表面は、プレス成形溶接金属部品の輪郭全体にわたって、並びに周縁表面の高さの少なくとも一部にわたって延在する、凝固線条を含む。
【0170】
凝固線条は、最終溶接金属ブランク16に関して既に説明されたものと類似である。
【0171】
一実施形態によれば、プレス成形ステップは、熱間成形プレスで実行される熱間成形ステップである。
【0172】
より具体的には、熱間成形ステップは、
最終溶接金属ブランク16を、最終溶接金属ブランク16の基板少なくとも1つの、好ましくは最も高い完全オーステナイト化温度を有する基板の完全オーステナイト化温度以上の温度に加熱するステップ、続いて、
こうして加熱された最終溶接金属ブランク16をプレスでホットプレス成形するステップ
を含む。
【0173】
好ましくは、ホットプレス成形ステップの後に、プレス硬化された熱間成形溶接金属部品を得るようにプレス成形溶接金属部品を冷却するステップが続く。
【0174】
冷却速度は好ましくは、最終溶接金属ブランク16の鋼基板の少なくとも1つ、好ましくは最も高い臨界マルテンサイト又はベイナイト冷却速度を有する基板の臨界マルテンサイト又はベイナイト冷却速度以上である。
【0175】
冷却ステップは、好ましくは、ホットプレス成形プレスで実行される。
【0176】
プレス硬化された熱間成形金属部品は、周縁表面にわたって延在する酸化層を含み得る。このような酸化層は、ホットプレス成形の前に、酸素を含む炉内で実行される熱処理から生じる。さらに、第1及び第2金属部品部分の基板は、主にベイナイト系及び/又はマルテンサイト系微細組織を有する。
【0177】
代替例によれば、プレス成形ステップは冷間成形ステップである。
【0178】
典型的には、コールドプレス成形によって得られた第1及び第2金属部品部分の基板は、等方性微細組織を有していない。粒子の配向は、第1及び第2金属部品部分にわたって、特に考慮されるそのゾーンがコールドプレス成形中に受ける応力に応じて、異なる。
【0179】
さらに、冷間成形を通じて得られた部品では、溶接継手の硬度は一般に、第1及び第2金属部品部分の基板の硬度よりも高い。
【0180】
たとえば、第1及び第2金属部品部分の基板の微細組織は、最大で40%のマルテンサイトを含む。
【0181】
特に、第1及び第2金属部品部分のコーティングは、第1及び第2初期金属シート1、3のコーティングと同じ構造及び組成を有する。
【0182】
プレス成形溶接金属部品は、たとえば自動車の部品、たとえばAピラー、Bピラー又はCピラーなどのピラー、補強部品、フロント又はリアレールなどのフロント又はリア車体構造の部品、又はドア枠部品などのドア部品である。
【0183】
本発明はまた、プレス成形溶接金属部品を製造するための設備50にも関する。このような設備は、図7に概略的に示されている。設備50は、
上記のような最終溶接金属ブランク16を製造するための設備38、
プレス成形溶接金属部品51を得るように前記最終溶接金属ブランク16を三次元形状にプレス成形するように構成されたプレス52、及び
任意選択的に、最終プレス成形溶接金属部品56を得るようにプレス成形溶接金属部品の縁部をトリミングするように構成された、3Dレーザー切断ステーション54
を含む。
【0184】
プレス52は、たとえばホットプレス成形プレスである。この実施形態では、設備38は、最終溶接金属ブランク16を、最終溶接金属ブランク16の基板の少なくとも1つ、好ましくは最も高い完全オーステナイト化温度を有する基板の完全オーステナイト化温度以上の温度に加熱するように適合された、炉をさらに含む。この炉は、ホットプレス成形ステップの上流に配置される。任意選択的に、この実施形態による設備内で、ホットプレス成形プレスは、プレス硬化されたプレス成形溶接金属部品を得るようにホットプレス成形金属部品を冷却するように構成された、冷却ユニットをさらに含む。
【0185】
前述の説明では、第1及び第2金属ストリップ1、3は、鋼基板を含むものとして説明されてきた。しかしながら、変形例によれば、第1及び第2金属ストリップ1、3の基板は、その他いずれかの適合された金属、たとえばアルミニウム、アルミニウム合金又はアルミニウムベースの合金からなってもよい。
【0186】
さらに、第1の実施形態では、第1及び第2金属ストリップ1、3は、金属間合金層7及び金属合金層8を含むプレコート6を含み、金属合金層8は、アルミニウム、アルミニウム合金又はアルミニウムベースの合金の層である。代替例によれば、第1及び第2金属ストリップ1、3は、未被覆であってもよく、又は第1の実施形態に関して説明されたものとは異なるコーティング、たとえば亜鉛、亜鉛ベースの合金又は亜鉛合金からなる亜鉛コーティング、マグネシウムを含有するコーティング又はその他いずれか適合されたコーティング組成を含んでもよい。
【0187】
第1の実施形態の代替例によれば、第1及び第2金属ストリップ1、3は、冷間成形、より具体的にはコールドプレス成形に適合された鋼からなる鋼基板をさらに含んでもよい。この代替例によれば、第1及び第2金属ストリップは、たとえば上記のようなコーティング又はプレコートで被覆されてもよく、又は未被覆であってもよい。
【0188】
第1の実施形態では、初期溶接金属ブランク9は、2つのみの初期金属シート1、3を含むものとしてより具体的に説明されてきた。代替例によれば、初期溶接金属ブランク9は、最終溶接金属ブランク16及び最終プレス成形溶接金属部品の所望の構造に応じて、3つ以上の初期金属シートを含んでもよい。たとえば、初期溶接金属ブランクは、3~5個の初期金属シートを含み得る。必要に応じて、初期金属シートのいくつかは、同じ組成、厚さ、及び/又は機械的特性を有してもよい。さらに必要に応じて、初期金属シートのいくつかは同じ金属ストリップに由来してもよく、又は金属シートの全てが異なる金属ストリップに由来してもよい。
【0189】
Nが2よりも厳密に大きい、N個の初期金属シートが使用される場合、初期金属シートは、初期金属シート1、3に関連して既に先に開示された特徴を有する。
【0190】
この場合、接合ステップは、溶接を通じて初期金属シートを接合するステップを含み、これにより、2つ以上の溶接継手10、特にN-1個の溶接継手10が得られる。好ましくは、全ての溶接継手10は、上述の特性を有する。さらに、溶接継手10は、好ましくは互いに平行である。この場合、最終溶接金属ブランク16はN個の金属ブランク部分を含み、各金属ブランク部分は、それぞれの初期金属シートから生じ、その特性を有する。
【0191】
さらなる代替例によれば、最終溶接金属ブランク16は未被覆であり、プレス成形ステップの前にコーティング作業を受ける。たとえば、コーティング作業は溶融浸漬コーティング作業である。このような代替例は、最終溶接ブランク及びそこから得られたプレス成形溶接部品の耐食性の改善をもたらす。
【0192】
本発明による方法は、特に有利である。
【0193】
実際、溶接ステップを間に挟む二段階切断方法は、最初の切断ステップで金属ストリップから非常に単純な形状を切断できるようにする。したがって、この最初の切断ステップは、たとえば剪断工具を使用して、費用効果の高い方法で実行することができる。特に、本発明による方法は、1つのタイプの部品のために特別に調整された高額なブランキングダイの使用を回避する。
【0194】
本発明による方法は、多種多様な部品を製造するために同じ工具が使用され得るので、さらに非常に柔軟である。特に、初期切断ステップは従来の剪断工具を使用して実行されてもよく、溶接後の切断ステップは、所望の最終輪郭向けの切削工具の再プログラミングのみを必要とする切断工程を使用して実行される。この柔軟性は、望ましければ部品の設計を変更しやすくするので、有利である。このような柔軟性は、投資コストを削減できるので、より少ない数量でより多くの派生品及び異なる自動車モデルを製造するという自動車業界の傾向を考慮すると、特に有利である。
【0195】
溶接後にレーザー切断を使用する第2の切断ステップの提供により、スクラップ、ひいては製造コストをさらに最小限に抑えることができる。実際、本発明による方法では、所与の初期溶接金属ブランク内の隣接する最終溶接金属ブランク間の距離は、約2~3mmの小ささであり得る。反対に、溶接後に追加のレーザー切断ステップを伴わない溶接前の機械的ダイブランキングの場合、ブランク部分とストリップ縁部との間には一般に少なくとも5mm、隣接するブランク部分の間には少なくとも8~10mmの距離が設けられなくてはならず、このため比較的大量のスクラップが生じる。
【0196】
最終溶接金属ブランクの輪郭が溶接の前ではなく後のレーザー切断を通じて切断されるという事実は、プレス成形の時点でのブランクの寸法に対する公差を大幅に減少させることをさらに可能にする。その結果、プレス成形溶接金属部品の周囲には除去すべき余分な材料が全く又はほとんどなくなる。特に、溶接後に追加のレーザー切断ステップを伴わない、溶接前のブランキングダイを使用する初期金属ストリップから最終溶接ブランク部分が直接切断される方法と比較すると、本発明による方法の使用により、最終溶接金属ブランクの寸法に対する公差を±2mmから±0.2mmに減少させることができる。これらの厳しい公差により、プレス成形溶接部品に対する比較的高額な3Dレーザー切断ステップを回避するか、又は少なくとも最小限に抑えることが可能である。
【0197】
さらに、溶接後及びプレス成形前に追加のレーザー切断ステップを使用することにより、こうして製造された最終溶接ブランク間の形状ばらつきは、もしあったとしても、溶接を通じて得られた最終溶接ブランクが直接プレス成形される方法と比較すると、非常に限定される。これらの限られた形状ばらつきにより、プレス成形工具内の最終溶接ブランクの位置決めの再現性が向上し、結果的にプレス成形作業全体の再現性も向上する。
【0198】
本発明による方法は、比較的短い溶接継手19、特に250mm以下、さらには150mm以下の溶接継手19を有するプレス成形用の溶接金属ブランク16を提供すること、ひいてはこのような短い溶接継手を有するプレス成形部品を製造することをさらに可能にする。この可能性は、この方法で製造され得る様々な部品に関して、方法の柔軟性をさらに高める。
【0199】
本発明による方法はさらに、プレス成形溶接部品の品質の改善をもたらす。
【0200】
特に、溶接作業後の切断ステップの存在のため、最終溶接金属ブランク16、ひいてはそこから得られたプレス成形溶接部品において、溶接開始及び停止欠陥又はクレーターを回避することができる。実際、これらの欠陥が初期溶接金属ブランクに存在できたとしても、これらはそこから最終溶接金属ブランクを製造するための切断作業中に除去され得る。この種の局所的欠陥は、さもなければプレス成形工程中に高い応力を受けたときにより重大な欠陥を生じる可能性があり、この局所的欠陥を広げて破損を生じ、安全上の理由からプレス成形溶接部品を使用不可能にする可能性があるため、最終溶接ブランク内のこのような欠陥の回避は有利である。溶接開始及び停止欠陥又はクレーターは、溶接工程の開始時及び終了時(又は停止時)に作成される欠陥である。このような欠陥又はクレーターは、当業者によく知られている。レーザー溶接の場合、これらの欠陥は、毛細管現象に起因する。
【0201】
本発明による方法はさらに、必要に応じて、さらには最終溶接金属ブランク又はプレス硬化された溶接金属部品を製造する方法の実施の過程においても、初期溶接金属ブランク9内の、特にその溶接継手10に対する最終溶接金属ブランク16の位置を調整できるようにする。
【0202】
このような調整の可能性は、最終溶接金属ブランク16の溶接継手10で検出された可能性のある欠陥を包含することを回避できるようにするので、スクラップの量を削減する。反対に、溶接後及びプレス成形前の切断ステップがない場合、金属ブランク部分間の溶接継手に欠陥があった場合に溶接金属ブランク全体が廃棄されなければならなくなる。
【0203】
このような調整の可能性はまた、最終溶接金属ブランク16内の、したがって、たとえばプレス成形問題が監察される場合には、間接的にプレス成形溶接金属部品内でも、溶接継手19の相対位置を調節できるようにし、こうして最終部品の品質の向上及びコストの削減に寄与する。特に、溶接後及びプレス成形前に切断ステップがない場合、この場合には、最終ブランク部分を製造するための新しいブランキングダイを考える必要が出てくるが、これは高額な追加費用をもたらすことになる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7