(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】導電性ペースト
(51)【国際特許分類】
H01B 1/22 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
H01B1/22 A
(21)【出願番号】P 2020553000
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2019037492
(87)【国際公開番号】W WO2020080049
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2018197579
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000224123
【氏名又は名称】藤倉化成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】若林 克知
(72)【発明者】
【氏名】阿座上 結花
(72)【発明者】
【氏名】阿部 雄二
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 章紀
(72)【発明者】
【氏名】小清水 和敏
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/042724(WO,A1)
【文献】特開2016-003306(JP,A)
【文献】特開2016-196606(JP,A)
【文献】特開2008-269876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物(A1)及びポリイソシアネート(A2)を含むバインダー(A)と、銀粉(B)と、ガラス転移温度が35℃以下の架橋樹脂粒子(C)と、有機溶媒(D)と、を含有
し、
前記架橋樹脂粒子(C)がアクリル架橋樹脂粒子及びウレタン架橋樹脂粒子からなる群から選択される少なくとも一方であることを特徴とする導電性ペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペーストに関する。
本願は、2018年10月19日に、日本に出願された特願2018-197579号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
現在、身体に装着して、人の健康状態等をリアルタイムに検知するウエアラブルデバイスの開発が進められている。ウエアラブルデバイスの回路は、例えば、導電性粒子とバインダー樹脂を含む導電性ペーストで形成されている。ウエアラブルデバイスは、身体に密着させて使用する。特に、衣服にデバイスを組み込んだウエアラブルデバイスは、衣服の伸縮に伴ってデバイス及びその回路が伸縮することが求められる。さらに、導電性ペーストとしては、伸縮を繰り返しても電気抵抗値が上がらずに、高い導電性を維持することができるもの(以下、「伸縮耐久性」ともいう。)が求められている。このような導電性ペーストとしては、例えば、特許文献1~3に記載されているものが挙げられる。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載されているように、導電性ペーストが水性分散液を含む場合、スクリーン印刷する際に有機溶剤系のものよりも印刷適性に劣る。また、特許文献2,3に記載されているように、導電性ペーストを用いて緩衝層や複層を形成する場合、単層の場合よりも回路形成の工程が多くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-54192号公報
【文献】特開2017-183207号公報
【文献】特開2017-168438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、スクリーン印刷により回路を形成することができ、単層で伸縮耐久性に優れる塗膜を形成できる導電性ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]バインダー(A)と、銀粉(B)と、ガラス転移温度が35℃以下の架橋樹脂粒子(C)と、有機溶媒(D)と、を含有する導電性ペースト。
[2]前記架橋樹脂粒子(C)がアクリル架橋樹脂粒子及びウレタン架橋樹脂粒子からなる群から選択される少なくとも一方である、[1]に記載の導電性ペースト。
[3]前記バインダー(A)がポリオール化合物(A1)及びポリイソシアネート(A2)を含む、[1]又は[2]に記載の導電性ペースト。
[4]前記バインダーが、ポリエステル樹脂(A3)を含む、[1]~[3]のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
[5]前記バインダー(A)がポリオール化合物(A1)及びポリイソシアネート(A2)を含み、前記ポリオール化合物(A1)が、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリカプロラクトンポリオールからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
[6]前記バインダー(A)がポリオール化合物(A1)及びポリイソシアネート(A2)を含み、前記ポリイソシアネート(A2)が、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)をブロック剤でマスクしたブロックイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)をブロック剤でマスクしたブロックイソシアネート、及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)をブロック剤でマスクしたブロックイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
[7]前記バインダー(A)がポリエステル樹脂(A3)を含み、前記ポリエステル樹脂(A3)が、ジカルボン酸とジオール化合物を反応させて得られる化合物であり、前記ジカルボン酸が、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、ヘキサクロロヘプタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、イソフタル酸、4-スルホイソフタル酸、5-スルホイソフタル酸、5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラクロロフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、及び2,3-ナフタレンジカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種であり、前記ジオール化合物が、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,18-オクタデカンジオールなどのC2-C22アルカンジオールや、2-ブテン-1,4-ジオール、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[6]のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
[8]前記架橋樹脂粒子(C)がアクリル架橋樹脂粒子及びウレタン架橋樹脂粒子からなる群から選択される少なくとも一方であり、前記アクリル架橋樹脂粒子が、架橋剤の存在下、アクリル系モノマーを含む単量体成分を重合して得られるポリマーを含み、前記架橋剤が、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、デカエチレングリコールジメタクリレート、ペンタデカエチレングリコールジメタクリレート、ペンタコンタヘプタエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブチレンジメタクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、N,N-ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン酸、ポリブタジエン、及びポリイソプレン不飽和ポリエステルからなる群から選択される少なくとも1種であり、前記アクリル系モノマーが、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸へプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-(n-プロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(n-ブトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-(n-プロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2-(n-ブトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、及び(メタ)アクリル酸イソボルニルからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[7]のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
[9]前記架橋樹脂粒子(C)がアクリル架橋樹脂粒子及びウレタン架橋樹脂粒子からなる群から選択される少なくとも一方であり、前記ウレタン架橋樹脂粒子が、ポリオールとポリイソシアネートとを重合させることにより得られるポリマーを含み、前記ポリオールが、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ヒドロキシビバリルヒドロキシピバレート、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、グリセリン、及びヘキサントリオールからなる群から選択される少なくとも1種であり、前記ポリイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)をブロック剤でマスクしたブロックイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)をブロック剤でマスクしたブロックイソシアネート、及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)をブロック剤でマスクしたブロックイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[8]のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
[10]前記銀粉(B)が球状又は不定形である、[1]~[9]のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
[11]前記有機溶媒(D)が、ブチルカルビトールアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、イソプロパノール、ブタノール、テルピネオール、テキサノール、ブチルセロソルブアセテート、及びイソホロンからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[10]のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
[12]前記銀粉(B)の粒子径は、7μm以下が好ましく、3~7μmがより好ましく、3~6μmがさらに好ましい、[1]~[11]のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
[13]前記架橋樹脂粒子(C)の平均粒子径は、1~20μmが好ましく、3~15μmがより好ましい、[1]~[12]のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
[14]前記バインダー樹脂(A)の含有量が、導電性ペーストの総質量に対し、5~20質量%が好ましく、10~18質量%がより好ましく、15~18質量がさらに好ましい、[1]~[13]のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
[15]前記バインダー樹脂(A)がポリオール化合物(A1)を含み、前記ポリオール化合物(A1)の含有量が、導電性ペーストの総質量に対し、5~15質量%が好ましく、7~11質量%がより好ましい、[1]~[14]のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
[16]前記バインダー樹脂(A)がポリイソシアネート(A2)を含み、前記ポリイソシアネート(A2)の含有量が、導電性ペーストの総質量に対し、3~10質量%が好ましく、5~9質量%がより好ましく、6~9質量%がさらに好ましい、[1]~[15]のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
[17]前記バインダー樹脂(A)がポリエステル樹脂(A3)を含み、前記ポリエステル樹脂(A3)の含有量が、導電性ペーストの総質量に対し、1~10質量%が好ましく、2~5質量%がより好ましい、[1]~[16]のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
[18]前記銀粉(B)の含有量が、導電性ペーストの総質量に対し、50~80質量%が好ましく、60~70質量%がより好ましい、[1]~[17]のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
[19]前記架橋樹脂粒子(C)の含有量が、導電性ペーストの総質量に対し、1~10質量%が好ましく、2~8質量%がより好ましく、3~5質量%がさらに好ましい、[1]~[18]のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
[20]前記有機溶媒(D)の含有量が、導電性ペーストの総質量に対し、5~20質量%が好ましく、8~18質量がより好ましく、10~16質量%がさらに好ましい、[1]~[19]のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
[21][バインダー(A)の含有量]/[銀粉(B)の含有量]で表される質量比は、0.1~1が好ましく、0.2~0.5がより好ましい、[1]~[20]のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
[22][バインダー(A)の含有量]/[架橋樹脂粒子(C)の含有量]で表される質量比は、1~10が好ましく、3~5がより好ましい、[1]~[21]のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
[23][銀粉(B)の含有量]/[架橋樹脂粒子(C)の含有量]で表される質量比は、10~30が好ましく、15~20がより好ましい、[1]~[22]のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
[24][バインダー(A)の含有量]/[有機溶媒(D)の含有量]で表される質量比は、0.5~2.0が好ましく、0.7~1.8がより好ましい、[1]~[23]のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
[25][銀粉(B)の含有量]/[有機溶媒(D)の含有量]で表される質量比は、1~10が好ましく、3~7がより好ましい、[1]~[24]のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
[26][架橋樹脂粒子(C)の含有量]/[有機溶媒(D)の含有量]で表される質量比は、1~10が好ましく、3~7がより好ましい、[1]~[25]のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、スクリーン印刷により回路を形成することができ、単層で伸縮耐久性に優れる導電性ペーストを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の導電性ペーストの実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0009】
[導電性ペースト]
本実施形態の導電性ペーストは、バインダー(A)と、銀粉(B)と、ガラス転移温度が35℃以下の架橋樹脂粒子(C)と、有機溶媒(D)と、を含有する。
本明細書において、「ペースト」とは、有機溶媒(D)中に銀粉(B)が分散して存在することにより流動性が低減された流体となっている状態を意味する。
【0010】
「バインダー(A)」
バインダー(A)としては、導電性ペーストの結着樹脂として作用するものであれば特に限定されず、例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネートとの組み合わせ(即ち、ウレタン樹脂バインダー)、ポリエステル系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン、スチレン-アクリル樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、シリコーン樹脂 、フッ素系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、可撓性と伸縮耐久性の観点から、バインダー(A)は、ポリオール化合物(A1)とポリイソシアネート(A2)とを含むことが好ましい。
【0011】
バインダー(A)における、ポリオール化合物(A1)に対するポリイソシアネート(A2)の配合比(A2/A1)は、ポリイソシアネート(A2)のイソシアネート基(-NCO)とポリオール化合物(A1)の水酸基とのモル比で、1/1~2/1であることが好ましい。
配合比(A2/A1)が上記の数値範囲内であると、伸縮耐久性に優れる。
【0012】
「ポリオール化合物(A1)」
ポリオール化合物(A1)としては、ポリイソシアネート(A2)のイソシアネート基(-NCO)と反応する水酸基(-OH)を2つ以上有し、その水酸基とイソシアネート基が反応してポリウレタン樹脂を形成するものであれば特に限定されない。ポリオール化合物(A1)としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。なかでも、ポリエステルポリオールが好ましい。
ポリエステルポリオールは、多価アルコールの1種以上と、多価カルボン酸との共縮合によって得られる。
多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ヒドロキシビバリルヒドロキシピバレート、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、グリセリン、及びヘキサントリオール等が挙げられる。
多価カルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサトリカルボン酸、及び2,5,7-ナフタレントリカルボン酸等が挙げられる。ポリオール化合物(A1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
ポリオール化合物(A1)の重量平均分子量(Mw)は、500~6000であることが好ましく、1000~6000であることがより好ましい。
ポリオール化合物(A1)の重量平均分子量(Mw)が500以上であれば、本実施形態の導電性ペーストによって形成された塗膜は可撓性及び伸縮耐久性に優れる。一方、ポリオール化合物(A1)の重量平均分子量(Mw)が6000以下であれば、本実施形態の導電性ペーストによって形成された塗膜は伸縮耐久性に優れる。すなわち、本実施形態の導電性ペーストによって形成された塗膜は、例えば、長手方向に引っ張って伸ばした後、引張力を解放した場合に、元の状態(元の長さ)に戻る(縮む)性能に優れる。
【0014】
ポリオール化合物(A1)の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography、GPC)で測定される。
【0015】
ポリオール化合物(A1)の水酸基価は、18.7mgKOH/g~336.7mgKOH/gであることが好ましく、18.7mgKOH/g~168.7mgKOH/gであることがより好ましい。
ポリオール化合物(A1)の水酸基価が18.7mgKOH/g以上であれば、本実施形態の導電性ペーストによって形成された塗膜は可撓性及び伸縮耐久性に優れる。一方、ポリオール化合物(A1)の水酸基価が336.7mgKOH/g以下であれば、本実施形態の導電性ペーストによって形成された塗膜は伸縮耐久性に優れる。
【0016】
ポリオール化合物(A1)の水酸基価は、JIS K0070「化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法」に準ずる方法で測定される。
【0017】
「ポリイソシアネート(A2)」
ポリイソシアネート(A2)は、分子内にイソシアネート基を2つ以上有する化合物である。ポリイソシアネート(A2)を構成するイソシアネート化合物としては、脂肪族イソシアネート、芳香族イソシアネートが挙げられる。
脂肪族イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4-ジイソシアネート-1,1-メチルシクロヘキサン、ジイソシアネートシクロブタン、テトラメチレンジイソシアネート、o-,m-若しくはp-キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ドデカンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、及びイソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
芳香族イソシアネートとしては、トリレン-2,4-ジイソシアネート、トリレン-2,6-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、3-メチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、m-若しくはp-フェニレンジイソシアネート、クロロフェニレン-2,4-ジイソシアネート、ナフタリン-1,5-ジイソシアネート、ジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニル-1,3,5-トリイソプロピルベンゼン-2,4-ジイソシアネートカルボジイミド変性ジフェニルメタジイソシアネート、ポリフェニルポリメチレンイソシアネート、及びジフェニルエーテルジイソシアネート等が挙げられる。
なかでも、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等が好ましい。これらイソシアネート化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、導電性ペーストの取り扱い作業性の観点から1液型の導電性ペーストを選択する場合は、貯蔵安定性やポットライフを向上させるために、前記イソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック剤でマスクし、反応を抑制したブロックイソシアネートを用いることがより好ましい。前記ブロック剤としては、解離温度(イソシアネート化合物のイソシアネート基から解離する温度)が90℃~130℃のものが好ましい。このようなブロック剤としては、例えば、ポリプロピレングリコール、メチルエチルケトオキシム(MEKO)、マロン酸ジエチル(DEM)等が挙げられる。ブロック剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、ポリプロプレングリコールでブロックされた1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
また、ポリイソシアネート(A2)としては、市販品を用いてもよい。
【0018】
「ポリエステル樹脂(A3)」
バインダー(A)は、ポリエステル樹脂(A3)をさらに含んでいてもよい。ポリエステル樹脂(A3)を含むことにより、スクリーン印刷時の印刷性がより向上する。なお、ポリエステル樹脂(A3)は、ポリオール化合物(A1)又はポリイソシアネート(A2)に該当する化合物を含まない。
ポリエステル樹脂(A3)は、ジカルボン酸とジオール化合物を反応させて得られる。
ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、ヘキサクロロヘプタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、イソフタル酸、4-スルホイソフタル酸、5-スルホイソフタル酸、5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラクロロフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
ジオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,18-オクタデカンジオールなどのC2-C22アルカンジオールや、2-ブテン-1,4-ジオール、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオールなどのアルケンジオール等の脂肪族ジオール;1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオールなどが挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
ポリエステル樹脂(A3)としては、ガラス転移温度(Tg)が室温(23℃)以下のポリエステル樹脂であれば特に限定されない。ポリエステル樹脂(A3)としては、例えば、ユニチカ社製のUE-3510(商品名、Tg=-25℃)、UE-3400(商品名、Tg=-20℃)、UE-3220(商品名、Tg=5℃)、UE-3500(商品名、Tg=15℃)等が挙げられる。ポリエステル樹脂(A3)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
本実施形態の導電性ペーストにおいて、ポリエステル樹脂(A3)を含む場合、その含有量は、ポリオール化合物(A1)100質量部に対して5質量部~200質量部であることが好ましく、20質量部~50質量部であることがより好ましい。
【0020】
ポリエステル樹脂(A3)の数平均分子量(Mn)は、15000~35000であることが好ましい。
ポリエステル樹脂(A3)の数平均分子量(Mn)が上記の数値範囲内であれば、印刷性がより向上する。
【0021】
ポリエステル樹脂(A3)の数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定される。
【0022】
バインダー樹脂(A)の含有量は、導電性ペーストの総質量に対し、5~25質量%が好ましく、10~20質量%がより好ましい。バインダー樹脂(A)の含有量が上記範囲内であると、導電性ペーストを樹脂製シートに塗布して形成される塗膜の可撓性、及び樹脂製シートに対する塗膜の接着性をより向上することができる。
【0023】
バインダー樹脂(A)がポリオール化合物(A1)を含む場合、ポリオール化合物(A1)の含有量は、導電性ペーストの総質量に対し、5~15質量%が好ましく、7~11質量%がより好ましい。ポリオール化合物(A1)の含有量が上記範囲内であると、導電性ペーストを樹脂製シートに塗布して形成される塗膜の可撓性、及び樹脂製シートに対する塗膜の接着性をより向上することができる。
【0024】
バインダー樹脂(A)がポリイソシアネート(A2)を含む場合、ポリイソシアネート(A2)の含有量は、導電性ペーストの総質量に対し、3~10質量%が好ましく、5~9質量%がより好ましく、6~9質量%がさらに好ましい。ポリイソシアネート(A2)の含有量が上記範囲内であると、導電性ペーストを樹脂製シートに塗布して形成される塗膜の可撓性、及び樹脂製シートに対する塗膜の接着性をより向上することができる。
【0025】
バインダー樹脂(A)がポリエステル樹脂(A3)を含む場合、ポリエステル樹脂(A3)の含有量は、導電性ペーストの総質量に対し、1~10質量%が好ましく、2~5質量%がより好ましい。ポリエステル樹脂(A3)の含有量が上記範囲内であると、導電性ペーストを樹脂製シートに塗布して形成される塗膜の、樹脂製シートに対する塗膜の接着性をより向上することができる。
【0026】
「銀粉(B)」
銀粉(B)としては、導電性ペーストに用いる公知のものであれば特に限定されないが、本実施形態の導電性ペーストによって形成された塗膜が伸縮を繰り返す場合における銀粉同士の導通点(接点)が多く発生する観点から、球状又は不定形の銀粉がより好ましい。
また、印刷性の観点から、銀粉(B)の粒子径(D50)は7μm以下が好ましく、3~7μmがより好ましく、3~6μmがさらに好ましい。銀粉(B)の粒子径(D50)が上記範囲内であると、導電性ペーストから形成される塗膜の導電性を向上できる。
なお、粒子径(D50)とは、体積粒度分布における累積体積百分率が50体積%の粒子径(メジアン径)のことである。
【0027】
銀粉(B)の体積粒度分布は、JIS Z8825「粒子径解析-レーザ回折・散乱法」に準ずる方法で測定される。
【0028】
銀粉(B)の含有量は、導電性ペーストの総質量に対し、50~80質量%が好ましく、60~70質量%がより好ましい。銀粉(B)の含有量が上記範囲内であると、導電性ペーストから形成される塗膜の導電性を向上できる。
【0029】
[バインダー(A)の含有量]/[銀粉(B)の含有量]で表される質量比は、0.1~1が好ましく、0.2~0.5がより好ましい。上記質量比が上記範囲内であると、導電性ペーストから形成される塗膜の可撓性と導電性とを両立しやすくなる。
【0030】
「架橋樹脂粒子(C)」
本実施形態の導電性ペーストは、ガラス転移温度(Tg)が35℃以下の架橋樹脂粒子(C)を含むことを最大の特徴とする。前記ガラス転移温度の架橋樹脂粒子(C)は、塗膜の内部において塗膜伸縮時に伸縮応力を緩和させて塗膜の伸縮劣化を抑制し、さらに、塗膜内部の限られた空間に架橋樹脂粒子(C)が占有することで、塗膜が伸縮状態であっても局所的に銀粉(B)の導通点が多く発生し易くなると考えられる。その結果、伸縮耐久性が向上すると考えられる。
また、有機溶媒(D)を含むため、耐溶剤性の観点から、非架橋ではなく架橋樹脂粒子であることが好ましい。
【0031】
架橋樹脂粒子(C)としては、ガラス転移温度(Tg)が-55℃~35℃の架橋樹脂粒子がより好ましい。ガラス転移温度が前記の範囲内であれば、伸縮耐久性がさらに優れる。ガラス転移温度が、上記の範囲内の架橋樹脂粒子としては、アクリル架橋樹脂粒子及びウレタン架橋樹脂粒子からなる群から選択される少なくとも一方が好適に用いられる。
【0032】
アクリル架橋樹脂粒子は、架橋剤の存在下、アクリル系モノマーを含む単量体成分を重合して得られる。
架橋剤としては、分子内に複数のラジカル重合性の二重結合を有するものが挙げられ、具体的には、分子中に複数のラジカル重合性の二重結合を有する(メタ)アクリル系単量体やスチレン系単量体などが挙げられる。
このような架橋剤としては、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、デカエチレングリコールジメタクリレート、ペンタデカエチレングリコールジメタクリレート、ペンタコンタヘプタエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブチレンジメタクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;N,N-ジビニルアニリン;ジビニルエーテル;ジビニルサルファイド;ジビニルスルホン酸;ポリブタジエン;ポリイソプレン不飽和ポリエステルなどが挙げられる。
アクリル系モノマーとしては、アクリル系モノマーとしては、単官能(メタ)アクリレートが挙げられ、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸へプチル、(メタ)アクリル酸オクチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-(n-プロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(n-ブトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-(n-プロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2-(n-ブトキシ)プロピル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の脂環構造を有する(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0033】
なかでも、アクリル架橋樹脂粒子としては、トリメチロールプロパントリアクリレートから誘導される構成単位、及びアクリル酸ブチルから誘導される構成単位を含むポリマーを含むものが好ましい。
【0034】
アクリル架橋樹脂粒子において、[架橋剤から誘導される構成単位]:[アクリル系モノマーから誘導される構成単位]で表される質量比は、1:99~10:90が好ましく、1:99~5:95がさらに好ましい。
【0035】
ウレタン架橋樹脂粒子は、2個以上のイソシアネート基及び親水基を有する自己乳化型イソシアネート、及び前記自己乳化型イソシアネートとポリオールとを反応させて得た第1の末端イソシアネート基プレポリマーからなる群から選択される少なくとも一方を含むビーズ原料を重合させることにより得られる。
自己乳化型イソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネートから形成され、分子内にビュウレット、イソシアヌレート、ウレタン、ウレトジオン、及びアロファネートよりなる群からなるいずれか1つの構造を有するポリイソシアネートポリマーに親水基(例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基等)が導入された化合物が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、上記ポリイソシアネート(A2)として例示したものが挙げられる。
ポリオールとしては、上記ポリオール化合物(A1)として例示したものが挙げられる。
【0036】
架橋樹脂粒子(C)の平均粒子径は、伸縮耐久性の観点から、1~20μmであることが好ましく、3μm~15μmであることがより好ましい。
ここで、平均粒子径は、体積粒度分布における累積体積百分率が50体積%の粒子径(メジアン径)のことである。
架橋樹脂粒子(C)の体積粒度分布は、JIS Z8825「粒子径解析-レーザ回折・散乱法」に準ずる方法で測定される。
【0037】
本実施形態の導電性ペーストにおいて、架橋樹脂粒子(C)の含有量は、架橋樹脂粒子(C)を除いた導電性ペーストの固形分100質量部に対して3.0質量部~8.0質量部であることが好ましい。
架橋樹脂粒子(C)の含有量が3.0質量部未満の場合、伸縮耐久性が悪くなることがある。一方、架橋樹脂粒子(C)の含有量が8.0質量部を超える場合、塗膜にクラックが入ることがある。
【0038】
架橋樹脂粒子(C)の含有量は、導電性ペーストの総質量に対し、1~10質量%が好ましく、2~8質量%がより好ましく、3~5質量%がさらに好ましい。架橋樹脂粒子(C)の含有量が上記範囲内であると、伸縮耐久性を向上しやすく、且つ塗膜にクラックが入ることを抑制しやすい。
【0039】
[バインダー(A)の含有量]/[架橋樹脂粒子(C)の含有量]で表される質量比は、1~10が好ましく、3~5がより好ましい。上記質量比が上記範囲内であると、ができる。
【0040】
[銀粉(B)の含有量]/[架橋樹脂粒子(C)の含有量]で表される質量比は、10~30が好ましく、15~20がより好ましい。上記質量比が上記範囲内であると、導電性ペーストから形成される塗膜の可撓性と導電性とを両立しやすくなる。
【0041】
「有機溶媒(D)」
有機溶媒(D)としては、一般的な導電性ペースト(導電性粒子とバインダー樹脂を含むもの)に用いられる公知の有機溶媒であれば特に限定されない。有機溶媒(D)としては、例えば、ブチルカルビトールアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、イソプロパノール、ブタノール、テルピネオール、テキサノール、ブチルセロソルブアセテート、イソホロン等が挙げられ、なかでも、テルピネオール、イソホロンが好ましい。
【0042】
本実施形態の導電性ペーストにおいて、有機溶媒(D)の含有量は、スクリーン印刷により、対象物に導電性ペーストを印刷する際の印刷適性が確保できれば特に限定されない。有機溶媒(D)の含有量は、導電性ペーストの不揮発分(有機溶媒(D)以外の成分)の含有量が、導電性ペーストの総質量に対し、70質量%~90質量%となるように調整することが好ましい。
【0043】
有機溶媒(D)の含有量は、導電性ペーストの総質量に対し、5~20質量%が好ましく、8~18質量がより好ましく、10~16質量%がさらに好ましい。有機溶媒(D)の含有量が上記範囲内であると、導電性ペーストの取り扱い性を向上できる。
【0044】
[バインダー(A)の含有量]/[有機溶媒(D)の含有量]で表される質量比は、0.5~2.0が好ましく、0.7~1.8がより好ましい。上記質量比が上記範囲内であると、導電性ペーストの取り扱い性を向上できる。
【0045】
[銀粉(B)の含有量]/[有機溶媒(D)の含有量]で表される質量比は、1~10が好ましく、3~7がより好ましい。上記質量比が上記範囲内であると、導電性ペースト中に銀粉(B)を均一に分散できるため、銀粉(B)が均一に分散された塗膜を形成できる。
【0046】
[架橋樹脂粒子(C)の含有量]/[有機溶媒(D)の含有量]で表される質量比は、1~10が好ましく、3~7がより好ましい。上記質量比が上記範囲内であると、導電性ペースト中に架橋樹脂粒子(C)を均一に分散できるため、架橋樹脂粒子(C)が均一に分散された塗膜を形成できる。
【0047】
「その他の成分」
本実施形態の導電性ペーストは、バインダー(A)、銀粉(B)、架橋樹脂粒子(C)及び有機溶媒(D)以外の成分(その他の成分)を含有していてもよい。
その他の成分としては、例えば、分散剤、表面調整剤、チクソトロピック剤等の塗料用添加剤等が挙げられる。
本発明の導電性ペーストは、本質的に水を含まないことが好ましい。
水の含有量は、導電性ペーストの総質量に対し、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましい。水の含有量が上記範囲内であると、スクリーン印刷に適したペーストにすることができる。
成分(A)~(D)の含有量の合計は、導電性ペーストの総質量に対して、100質量%を超えない。
【0048】
「導電性ペーストの製造方法」
本実施形態の導電性ペーストは、上述したバインダー(A)と、銀粉(B)と、架橋樹脂粒子(C)と、有機溶媒(D)と、必要に応じてその他の成分とを混合することで得られる。
混合には、例えば、ロールミル、プラネタリーミキサー等の混合機を用いればよい。
【0049】
本実施形態の導電性ペーストによれば、バインダー(A)と、銀粉(B)と、ガラス転移温度(Tg)が35℃以下の架橋樹脂粒子(C)と、有機溶媒(D)と、を含有するため、可撓性と伸縮耐久性に優れる塗膜を形成できる導電性ペーストが得られる。
【0050】
また、本実施形態の導電性ペーストによれば、伸縮耐久性に優れる塗膜を形成することができる。ここで、伸縮耐久性とは、導電性ペーストによって形成された塗膜を、例えば、長手方向に引っ張って伸ばした後、引張力を解放して元の状態(元の長さ)に戻すことを繰り返した場合に、塗膜の電気抵抗値が変化し難い(電気抵抗値が上がり難い)性質のことである。
具体的には、([伸縮回数N回目の電気抵抗値]-[伸縮前の電気抵抗値])/[伸縮前の電気抵抗値]×100(%)が小さい程、塗膜は伸縮耐久性に優れると言える。また、塗膜の電気抵抗値は、例えば、塗膜の長手方向の両端に電極を接続し抵抗率計を用いて測定される。
【0051】
「用途」
本発明の導電性ペーストは、可撓性が求められる用途に好適であり、例えば、スマートウェアに代表されるウエアラブルデバイス分野、その他ベンダブルやフォルダブル、ストレッチャブルが必要な医療・介護分野、電子デバイス分野での回路形成等に好適である。
【実施例】
【0052】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0053】
(導電性ペーストの製造)
本発明に用いる導電性ペーストの組成を表1に示す。
【0054】
<製造例1>
ポリオール化合物(A1)としてポリエステルポリオール(株式会社クラレ製「P2010」(重量平均分子量:2000、水酸基価:56.1))を12.0質量部、ポリイソシアネート(A2)としてポリプロピレングリコール(PPG)変性1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートブロック化体(旭化成株式会社製「E402-B80B」(固形分80質量%、イソシアネート理論値6.0質量%))を10.0質量部、銀粉(B)としてAmes Advanced Materials Corporation製「Silver Powder SPS」(D50=3.0μm、不定形銀粉)を80.0質量部、架橋樹脂粒子(C)として根上工業株式会社製ウレタン架橋樹脂粒子「アートパールC-800」(平均粒子径6μm、ガラス転移点:-13℃)を5.0質量部、有機溶媒(D)としてテルピネオール18.0質量部を3本ロールミルで混練し、製造例1の導電性ペーストを製造した。
【0055】
<製造例2~製造例12>
製造例2~製造例12の導電性ペーストについても、表1に示す組成に従い、製造例1と同様に製造した。なお、表1において、数値の単位は「質量部」である。「質量部」を「質量%」に換算した数値を表2に示す。
なお、表1に示すように、ポリエステル樹脂(A3)としては、ユニチカ株式会社製「UE-3400」(数平均分子量:25000、ガラス転移温度:-20℃)を用いた。
銀粉(B)としては、エイムス・アドバンストマテリアルス社製「SF-70M」(D50=2.0μm、フレーク状銀粉)も用いた。架橋樹脂粒子(C)としては、根上工業株式会社製「アートパールJB-800T」(平均粒子径6μm、ガラス転移点:-54℃)、根上工業株式会社製「アートパールC-1000」(平均粒子径3μm、ガラス転移点:-13℃)、根上工業株式会社製「アートパールC-400」(平均粒子径15μm、ガラス転移点:-13℃)、根上工業株式会社製「アートパールU-600T」(平均粒子径10μm、ガラス転移点:35℃)も用いた。
【0056】
表1に示すアクリル架橋樹脂粒子A~Dについては、下記に従い樹脂粒子を製造した。
「アクリル架橋樹脂粒子A」
n-ブチルアクリレート98質量部と、架橋剤としてトリメチロールプロパントリアクリレート2質量部とを混合し、重合開始剤として過酸化ラウロイル0.25質量部を溶解し、モノマー混合液を調製した。
別途、2Lビーカーに水380質量部と、分散安定剤として第三リン酸カルシウム5質量部と、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.05質量部とを投入、混合し、先に調製したモノマー混合液を投入し、分散機にて懸濁させ、冷却コンデンサ、温度計を備えた2L4つ口フラスコに移し、フラスコ内の温度を80℃に維持しながら2時間反応を行った。
重合後、第三リン酸カルシウムを硝酸にて分解し、得られた粒子スラリーを洗浄、濾過、乾燥させ、平均粒子径9μm、ガラス転移温度-46℃のアクリル架橋樹脂粒子Aを得た。
【0057】
「アクリル架橋樹脂粒子B」
n-ブチルアクリレート40質量部と、ブチルメタクリレート58質量部と、架橋剤としてトリメチロールプロパントリアクリレート2質量部とを混合し、重合開始剤として過酸化ラウロイル0.25質量部を溶解し、モノマー混合液を調製した。
別途、2Lビーカーに水380質量部と、分散安定剤として第三リン酸カルシウム5質量部と、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.05部とを投入、混合し、先に調製したモノマー混合液を投入し、分散機にて懸濁させ、冷却コンデンサ、温度計を備えた2L4つ口フラスコに移し、フラスコ内の温度を80℃に維持しながら2時間反応を行った。
重合後、第三リン酸カルシウムを硝酸にて分解、得られた粒子スラリーを洗浄、濾過、乾燥させ、平均粒子径9μm、ガラス転移温度-15℃のアクリル架橋樹脂粒子Bを得た。
【0058】
「アクリル架橋樹脂粒子C」
n-ブチルアクリレート10質量部と、ブチルメタクリレート88質量部と、架橋剤としてトリメチロールプロパントリアクリレート2質量部とを混合し、重合開始剤として過酸化ラウロイル0.25質量部を溶解し、モノマー混合液を調製した。
別途、2Lビーカーに水380質量部と、分散安定剤として第三リン酸カルシウム5質量部と、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.05部とを投入、混合し、先に調製したモノマー混合液を投入し、分散機にて懸濁させ、冷却コンデンサ、温度計を備えた2L4つ口フラスコに移し、フラスコ内の温度を80℃に維持しながら2時間反応を行った。
重合後、第三リン酸カルシウムを硝酸にて分解、得られた粒子スラリーを洗浄、濾過、乾燥させ、平均粒子径10μm、ガラス転移温度15℃のアクリル架橋樹脂粒子Cを得た。
【0059】
「アクリル架橋樹脂粒子D」
n-ブチルアクリレート90質量部と、架橋剤としてトリメチロールプロパントリアクリレート10質量部とを混合し、重合開始剤として過酸化ラウロイル0.25質量部を溶解し、モノマー混合液を調製した。
別途、2Lビーカーに水380質量部と、分散安定剤として第三リン酸カルシウム5質量部と、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.05部とを投入、混合し、先に調製したモノマー混合液を投入し、分散機にて懸濁させ、冷却コンデンサ、温度計を備えた2L4つ口フラスコに移し、フラスコ内の温度を80℃に維持しながら2時間反応を行った。
重合後、第三リン酸カルシウムを硝酸にて分解、得られた粒子スラリーを洗浄、濾過、乾燥させ、平均粒子径10μm、ガラス転移温度40℃のアクリル架橋樹脂粒子Dを得た。
【0060】
<実施例1>
(伸縮耐久性の評価)
製造例1の導電性ペーストを用いて、ウレタンシート上に幅1mm×長さ50mmのパターンとなるようにスクリーン印刷により導電性ペーストを塗布した。その後、150℃で30分乾燥し配線パターンを形成した。
次に、上記の配線パターンの長手方向の両端を電極端子に接続し抵抗値を測定しながら、ストログラフ(VES5D、株式会社東洋精機製作所製)に固定し、初期長50mmの配線パターンを65mmまで伸長した後、初期長の50mmまで戻した。このような伸縮を100回繰り返し、電気抵抗値の変化率{([伸縮回数100回目の電気抵抗値]-[伸縮前の電気抵抗値])/[伸縮前の電気抵抗値]}×100(%)を算出した。
電気抵抗値の変化率が4000%未満の場合、伸縮耐久性の評価を合格とし、電気抵抗値の変化率が4000%以上の場合、伸縮耐久性の評価を不合格とした。結果を表3に示す。
【0061】
<実施例2~実施例10、比較例1、比較例2>
実施例2~実施例10、比較例1、比較例2についても実施例1と同様に伸縮耐久性の評価を行った。結果を表3に示す。
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
表3の結果から、実施例1~実施例10の配線パターンと比較例1及び比較例2の配線パターンとを比較すると、実施例1~実施例10の配線パターンは伸縮耐久性に優れることが分かった。一方、架橋樹脂粒子(C)を含まない比較例1、及びガラス転移温度が35℃超の架橋樹脂粒子(C)を使用した比較例2は、伸縮耐久性において劣ることが判った。
【0066】
<実施例13、比較例3>
(可撓性の評価)
上記製造例1の導電性ペーストを用いて100μm厚TPUフィルム(日本マタイ(株)製エスマーURS)に0.4mm幅×175mm長の回路パターンをスクリーン印刷し130℃で30分乾燥し試験片を作成した。
次に回路抵抗を測定し、初期値R0とし、回路を内側に180°折り曲げ、(株)大場計器製作所製棒状コンプレッションゲージにて5kgの静荷重を5秒間印加した。次に回路を外側に180°折り曲げて5kgの静荷重を5秒間印加した。これを折り曲げ1サイクルとし20サイクル後の回路抵抗値R20を測定した。20サイクル後の抵抗変化率を{(R20-R0)/R0}×100により算出した。その数値を実施例13とする。
製造例11の導電性ペーストについても実施例13と同様に20サイクル後の抵抗変化率を算出した。その数値を比較例3とする。
その結果、実施例13は1.0%、比較例3は23%となり実施例13の配線パターンの方が比較例3の配線パターンよりも抵抗変化率が小さく可撓性に優れることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明によれば、スクリーン印刷により回路を形成することができ、単層で伸縮耐久性に優れる塗膜を形成できる導電性ペーストを提供することができる。