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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】テレマティクスデータに基づく車両分類
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/015 20060101AFI20231207BHJP
   G08G 1/13 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
G08G1/015 A
G08G1/13
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2020553524
(86)(22)【出願日】2019-04-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 US2019025730
(87)【国際公開番号】W WO2019199561
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-04-01
(31)【優先権主張番号】62/654,742
(32)【優先日】2018-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517411036
【氏名又は名称】ケンブリッジ モバイル テレマティクス,インク.
【氏名又は名称原語表記】CAMBRIDGE MOBILE TELEMATICS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】グエン、リン ボン
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106650801(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0327397(US,A1)
【文献】特開2005-165421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが実施する方法であって、前記方法は、
ユーザによって自動車においてトリップ中にデバイスによって生成されたモーションデータを取得する工程と、
前記モーションデータから特徴を抽出する工程と、
訓練された分類器に前記特徴を適用することで、前記特徴と複数の自動車タイプとにわたって、同時確率分布を決定する工程と
各々が特定自動車タイプを表す複数のグループのうちの少なくとも1つのグループに、前記トリップを割当する工程であって、前記割当は、前記同時確率分布に基づくとともに、
(i)前記自動車における前記トリップ中に前記デバイスによって生成された前記モーションデータから抽出された1つまたは複数の特徴と、および
(ii)1つまたは複数の以前のトリップ中に前記デバイスによって生成された前記モーションデータから抽出された1つまたは複数の特徴と、
のうちの1つまたは複数へのヒューリスティックの適用に前記割当は基づく、前記トリップを割当する工程と、および
前記少なくとも1つのグループに少なくとも部分的に基づき、前記トリップ中に使用される前記自動車の特定自動車タイプを決定する工程と、
を備える、方法。
【請求項2】
前記モーションデータは、加速度、位置、および高度のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記デバイスは、センサーを含む、
請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記センサーは、加速度計、GPSコンポーネント、ジャイロスコープ、気圧計、および磁力計、のうちの少なくとも1つを含む、
請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記デバイスは、前記自動車に取り付けられたハードウェアデバイスを備える、
請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記デバイスは、スマートフォンを含む、
請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法はさらに、
前記トリップのモーションデータを使用して自動車タイプに基づいて前記分類器を構築する工程を含み、
各トリップは、前記トリップで使用された自動車自動車タイプでラベル付けされる、
請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記特徴は、統計的特徴を含む、
請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記特徴は、時間依存特徴を含む、
請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記時間依存特徴は、鉛直加速度の自己相関係数を含む、
請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記特徴は、イベントベースの特徴を含む、
請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記特徴は、サスペンション応答と、パワーウェイトレシオと、ならびに、空気力学および軸方向摩擦と、のうちの少なくとも1つを含む、
請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記特徴は、横方向動力学を含む、
請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記特徴は、ハード加速またはハード減速を含む、
請求項に記載の方法。
【請求項15】
前記特徴は、スペクトル特徴を含む、
請求項に記載の方法。
【請求項16】
前記スペクトル特徴は、エンジン振動に関連する、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記スペクトル特徴は、ジャイロスコープの変動から導出される、
請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記特徴は、メタデータ特徴を含む、
請求項に記載の方法。
【請求項19】
前記メタデータ特徴は、時刻、トリップ期間、または道路のタイプのうちの1つまたは複数を含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ヒューリスティックは、2つの連続するマッチングトリップを考慮する工程を含む、
請求項に記載の方法。
【請求項21】
前記ヒューリスティックは、軌道が一致する2つのトリップを考慮する工程を含む、
請求項に記載の方法。
【請求項22】
前記方法はさらに、前記自動車のモーションデータおよび前記自動車のタイプに基づいて、前記自動車のドライバーのドライビングスコアを決定する工程を含む、
請求項に記載の方法。
【請求項23】
プロセッサと、
前記プロセッサによって実行される命令のためのストレージと
を備えるシステムであって、
前記命令は、
ユーザによって自動車においてトリップ中にデバイスによって生成されたモーションデータを取得する工程と、
前記モーションデータから特徴を抽出する工程と、
練された分類器に前記特徴を適用することで、前記特徴と複数の自動車タイプとにわたって、同時確率分布を決定する工程と
各々が特定自動車タイプを表す複数のグループのうちの少なくとも1つのグループに、前記トリップを割当する工程であって、前記割当は、前記同時確率分布に基づくとともに、
(i)前記自動車における前記トリップ中に前記デバイスによって生成された前記モーションデータから抽出された1つまたは複数の特徴と、および
(ii)1つまたは複数の以前のトリップ中に前記デバイスによって生成された前記モーションデータから抽出された1つまたは複数の特徴と、
のうちの1つまたは複数へのヒューリスティックの適用に前記割当は基づく、前記トリップを割当する工程と、および
前記少なくとも1つのグループに少なくとも部分的に基づき、前記トリップ中に使用される前記自動車の特定自動車タイプを決定する工程と、を備える、システム。
【請求項24】
プロセッサによって実行可能な命令を格納する非一時的な記憶媒体であって、前記命令は、
ユーザによって自動車においてトリップ中にデバイスによって生成されたモーションデータを取得する工程と、
前記モーションデータから特徴を抽出する工程と、
訓練された分類器に前記特徴を適用することで、前記特徴と複数の自動車タイプとにわたって、同時確率分布を決定する工程と
各々が特定自動車タイプを表す複数のグループのうちの少なくとも1つのグループに、前記トリップを割当する工程であって、前記割当は、前記同時確率分布に基づくとともに、
(i)前記自動車における前記トリップ中に前記デバイスによって生成された前記モーションデータから抽出された1つまたは複数の特徴と、および
(ii)1つまたは複数の以前のトリップ中に前記デバイスによって生成された前記モーションデータから抽出された1つまたは複数の特徴と、
のうちの1つまたは複数へのヒューリスティックの適用に前記割当は基づく、前記トリップを割当する工程と、および
前記少なくとも1つのグループに少なくとも部分的に基づき、前記トリップ中に使用される前記自動車の特定自動車タイプを決定する工程と、
を備える、非一時的な記憶媒体。
【請求項25】
前記方法はさらに、
前記複数の自動車タイプから、前記ユーザに関連付けられた自動車タイプサブセットを識別する工程と、
前記特徴と、前記ユーザに関連付けられた前記自動車タイプサブセットと、にわたって前記同時確率分布を決定するように構成された前記訓練された分類器に、前記特徴を適用する工程と、
を備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記方法はさらに、前記ユーザによって1つまたは複数の以前のトリップから取得された前記モーションデータに基づき、前記ユーザに関連付けられた前記自動車タイプサブセットを識別する工程を備えている、
請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレマティクスデータに基づく車両分類に関する。
【背景技術】
【0002】
アメリカでは、平均して年間290時間以上運転し、10,500マイル(16,898km)以上を記録している。車両テレマティクスは、ユーザーの運転行動を理解するための豊富な情報源を提供する。ビッグデータ処理、機械学習、センサーネットワークからの最近の進歩によって、効果的なテレマティクスデータの収集と処理が可能になり、多くの従来の問題が解決されただけでなく、新しい質問を研究するための新しい道が開かれた。2006年から、MITのCarTelプロジェクトは、スマートフォンデバイスを使用して運転するときにテレマティクスデータを収集して分析しようとした(非特許文献1)。このプロジェクトでは、ビッグデータの処理と分析を組み合わせて、ユーザーの運転行動を評価し、運転を改善するための提案も行った。
【0003】
ビッグデータ技術の発展に伴い、自動車保険会社も保険の価格設定に対するアプローチを変えている。従来のアプローチは、ドライバーの年齢、性別、経験年数などの静的で簡単に定義できる特徴、および車両の製造とモデルに基づいている。ただし、ビッグデータの進歩によって、テレメトリーベースの保険モデル、たとえば、従量制モデル(非特許文献2)の台頭が可能になった。新しい方法では、車両の走行距離、使用パターン、危険な運転行動などの追加情報が考慮され、リスク評価に複雑な機械学習モデルが採用されている。これによって、保険会社はユーザーごとに保険プランを調整できる。移行プロセスによって、多くの興味深い問題が生じ、従来の保険の価格設定方法が強制的に改訂された。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Bret Hull, Vladimir Bychkovsky, Yang Zhang, Kevin Chen, Michel Goraczko, Allen Miu, Eugene Shih, Hari Balakrishnan, and Samuel Madden. Cartel: a distributed mobile sensor computing system(分散型モバイルセンサーコンピューティングシステム). In Proceedings of the 4th international conference on Embedded networked sensor systems(組み込みネットワークセンサーシステムに関する第4回国際会議の議事録), pages 125-138. ACM, 2006年
【文献】J Ferreira and E Minike. Pay-as-you-drive auto insurance in massachusetts(マサチューセッツ州の従量制自動車保険): A risk assessment and report on consumer, industry and environmental benefits(消費者、産業、および環境上の利益に関するリスク評価とレポート). Department of Urban Studies and Planning, Massachusetts Institute of Technology(マサチューセッツ工科大学都市研究計画部). Massachusetts Institute of Technology (http://dusp.mit.edu/) for the Conservation Law Foundation(保全法財団), http://www.clf.org/, http://www.clf.org/our-work/healthy-communities/modernizing-transportation/pay-as-you- drive-auto-insurance-payd, 2010年
【文献】Giancarlo Genta. “Motor vehicle dynamics”(自動車動力学): modeling and simulation, volume 43. World Scientific, 1997年
【文献】Rajesh Rajamani. “Vehicle dynamics and control” (車両動力学と制御). Springer Science & Business Media, 2011年
【文献】Samuli Hemminki, Petteri Nurmi, and Sasu Tarkoma. “Accelerometer-based transportation mode detection on smartphones”(スマートフォンでの加速度計ベースの輸送モード検出). In Proceedings of the 11th ACM Conference on Embedded Networked Sensor Systems(組み込みネットワークセンサーシステムに関する第11回ACM会議の議事録), page 13. ACM, 2013年
【文献】Phong X Nguyen, Takayuki Akiyama, Hiroki Ohashi, Masaaki Yamamoto, and Akiko Sato. “Vehicle’s weight estimation using smartphone’s acceleration data to control overloading”(スマートフォンの加速度データを使用して過負荷を制御する車両の重量推定). International Journal of Intelligent Transportation Systems Research(インテリジェント交通システム研究の国際ジャーナル), pages 1-12, 2015年
【文献】Geoffroy Peeters. “A large set of audio features for sound description (similarity and classification) in the cuidado project”(cuidadoプロジェクトのサウンドの説明(類似性と分類)のためのオーディオ特徴の大規模なセット). 2004年
【文献】Weishan Dong, Jian Li, Renjie Yao, Changsheng Li, Ting Yuan, and Lanjun Wang. “Characterizing driving styles with deep learning”(深層学習による運転スタイルの特徴付け). arXiv preprint arXiv:1607.03611, 2016年
【文献】Hiroki Ohashi, Takayuki Akiyama, Masaaki Yamamoto, and Akiko Sato. “Modality classification method based on the model of vibration generation while vehicles are running”(車が走っている間の振動発生モデルに基づくモダリティ分類手法). In Proceedings of the Sixth ACM SIGSPATIAL International Workshop on Computational Transportation Science(第6回ACM SIGSPATIAL国際ワークショップの計算輸送科学に関する議事録), page 37. ACM, 2013年
【文献】Dengsheng Lu and Qihao Weng. “A survey of image classification methods and techniques for improving classification performance”(分類性能を改善するための画像分類方法と技術の調査). International journal of Remote sensing, 28(5):823-870, 2007年
【文献】Leo Breiman. Random forests. “Machine learning”(機械学習), 45(1):5-32, 2001年
【文献】Robert A White and Helmut Hans Korst. “The determination of vehicle drag contributions from coast-down tests”(コーストダウンテストからの車両抗力の寄与の決定). Technical report, SAE Technical Paper, 1972年
【文献】Robert C Weast et al. “Handbook of physics and chemistry”(物理化学ハンドブック). CRC Press, Boca Raton, 1983-1984, 1986年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
テレマティクスデータに基づく車両分類を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一般に、一態様では、モーションデータは、トリップ中に車両内のデバイスから取得される。モーションデータは、訓練された分類器に適用され、車両の商用分類を生成する。
実施形態には、以下の特徴の1つまたは2つ以上の組み合わせを含めることができる。モーションデータには、加速度、位置、高度の少なくとも1つが含まれる。商用分類には車両タイプが含まれる。商用分類には車両モデルが含まれる。商用分類には車両メーカーが含まれる。デバイスにはセンサーが含まれている。センサーには加速度計が含まれている。センサーにはGPSコンポーネントが含まれている。センサーにはジャイロスコープが含まれている。センサーには気圧計が含まれている。センサーには磁力計が含まれる。デバイスにはタグが含まれている。デバイスにはスマートフォンが含まれる。分類器は、トリップのモーションデータを使用して車両タイプに基づいて構築され、各トリップには、トリップで使用された車両の商用分類がラベル付けされる。トリップの分類を修正するために、訓練された分類器の出力にヒューリスティックが適用される。訓練された分類器で使用するために、モーションデータから特徴が抽出される。特徴には統計特徴が含まれる。特徴には、時間依存特徴が含まれる。時間依存特徴には、自己相関係数と鉛直加速度が含まれる。特徴には、イベントベースの特徴が含まれる。特徴には、サスペンション応答が含まれる。特徴には、パワーウェイトレシオが含まれる。特徴には、空気力学と縦方向摩擦が含まれる。特徴には、横方向動力学が含まれる。特徴には、ハード加速(ハードアクセラレーション)またはハード減速(ハードデアクセラレーション)が含まれる。特徴には、スペクトル特徴が含まれる。スペクトルの特徴は、エンジンの振動に関連している。スペクトルの特徴はジャイロスコープの変動から導き出される。特徴にはメタデータ特徴が含まれる。メタデータ特徴には、時刻、トリップ時間、または道路のタイプの1つ以上が含まれる。分類器は、車両のさまざまな商用分類にわたって確率分布を生成する。ヒューリスティックには、2つの連続する一致するトリップの考慮が含まれる。ヒューリスティックには、軌跡が一致する2つのトリップを考慮することが含まれる。特徴には暗黙的にドライバー入力が含まれる。分類器は、ドライバーの使用パターンを考慮する。
【0007】
これらおよび他の態様、特徴、および実施形態は、方法、装置、システム、コンポーネント、プログラム製品、ビジネスを行う方法、機能を実行するための手段または工程として、および他の方法で表すことができる。
【0008】
これらおよびその他の側面、特徴、および実施形態は、特許請求の範囲を含む以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】記録されたデータ対時間のグラフ。
図2】記録されたデータと時間の比較図。
図3】時間に対するサスペンション応答のグラフ。
図4】鉛直加速度の統計的特徴のグラフ。
図5】パワーウェイトレシオのグラフ。
図6】畳み込みニューラルネットワークのブロック図。
図7】模式図。
図8】模式図。
図9】模式図。
図10】模式図。
図11】模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで説明する技術は、特に車両モデルの認識のために、トリップで収集された豊富なテレマティクスデータを使用している。この技術のいくつかの実施形態では、車両モデル認識は、ユーザーの車両識別に使用される。つまり、テレマティクスデータで表される複数のトリップでのユーザーの運転履歴が与えられると、技術は利用可能なすべての車両を識別し、人が使用している車両に基づいてトリップをクラスター化する。
【0011】
結果には複数の用途がある。たとえば、ユーザーが運転した車両を特定すると、運転行動の分析的および行動的研究が可能になり、運転を改善するための提案を行うのに役立つ。保険会社の観点から、これによって、ユーザーは車両モデルに関するユーザーの大規模な行動を調査して、たとえば、どの車両モデルが安全でない運転行動を起こしやすいかを判断できる。
【0012】
いくつかの実施形態では、車両識別を使用して、車両のドライバーの運転スコアを決定するのを助けることができる。一般に、ハードアクセル、ブレーキ、コーナリングなどの安全でない運転行動は、SUV、セダン、オートバイ、小型車、RV車などのさまざまな車両モデルまたは車両タイプによって異なる場合がある。たとえば、特定のモデルまたはタイプの車両では安全でない運転行動は、別のモデルまたはタイプの車両では安全でないと見なされない場合がある。ここで説明する技術は、ドライバーが使用する車両のモデルまたはタイプを識別することによって、ドライバーに関連付けられたテレマティクスデータの分析に通知して、ドライバーによる安全な運転と安全でない運転との動作を認識することができる。たとえば、場合によっては、技術がモデルまたはタイプ固有の閾値またはその他のメトリックをテレマティクスデータに適用して、ドライバーが使用する車両に基づいて安全な運転と安全でない運転とを区別できる。場合によっては、テレマティクスデータを既知の運転行動情報の複数のインスタンスと比較して、安全な運転行動および安全でない運転行動を認識したり、ドライバーが使用している車両を識別したり、運転行動を車両モデルやタイプ、または他の中でもこれらの組み合わせと関連付けたりすることができる。この技術は、他のデータの中でも、車両識別と認識された安全な運転行動および安全でない運転行動を使用して、車両のドライバーの運転スコアを決定することができる。運転スコアは、例えば、ドライバーが運転行動を改善するのを助けるために、ドライバーに提示されてもよい。場合によっては、たとえば、保険会社がドライバーの保険プランを調整できるように、運転スコアを保険会社または別の第三者に提示することができる。テレマティクスデータを操作する上での重要な問題は、データの質の悪さである。これにはさまざまな原因がある。テレマティクスデータは一般道の状態で記録されるため、そのようなデータは、道路の段差、交通量、または標高などの外部要因の影響を受ける可能性がある。そのような外部要因は、せいぜい測定にノイズを追加し、最悪の場合、記録されたデータを破損する可能性がある(たとえば、トンネルをドライブするとGPSデータが利用できなくなる)。もう1つの問題は、人間の入力の予測できない性質にある。これは、多くの場合、ケース固有である。スマートフォンの位置は、スマートフォンからデータが記録されている場合、測定にノイズを追加する可能性もある。また、サンプリングレートが低いと、より詳細な特徴を抽出する機能が制限され、さまざまな車両モデルを区別できる優れた特徴を設計することが難しくなる。
【0013】
これまでの研究は、異なる測定条件下での車両分類のさまざまな側面に焦点を当ててきた。車両モデリングの理論は、非特許文献3と非特許文献4に記述されている。伝統的に、ほとんどの測定は制御された環境で行われ、工場の条件で車両が閉じた周回路トラックで走行するか、風洞やさまざまなカスタムセンサーなどの高価な準備が必要である。このような制御された環境は、一般に、外部の影響や駆動特性が測定に影響を与える可能性がある実際の状況では、適用できない。
【0014】
最近の研究では、スマートフォンからの測定のみを使用して、一般的な条件下でアルゴリズムを開発しようとしている。研究者は、スマートフォンの加速度計を使用して交通手段を検出し(非特許文献5)、鉛直加速度を使用して車両の重量を推定している(非特許文献6)。
【0015】
テレマティクスデータは時系列データのクラスに属するため、統計的特徴、時間依存の特徴、スペクトル分析など、時系列データから特徴を抽出する多くの手法が関連する。ある情報源は、特徴抽出技術と音楽フィンガープリントでのそれらの応用に関する概要を提供する(非特許文献7)。
【0016】
同様の問題は、ドライビングスタイルに関してトリップを分類することである。1人の著者がディープラーニングソリューションを提案した(非特許文献8)。対照的に、ここで説明する技術は、テレマティクスデータがドライバーの入力に大きく影響され、ドライバーに大きく依存するため、運転スタイルに依存しない不変の車両ベースの特徴を抽出する方法が不明確になるという事実に対応する必要がある。
【0017】
ここで説明する技術には、車両タイプを認識し、ユーザーの車両識別の一部として車両タイプを適用するためのアルゴリズムが含まれている。結果には、正しいタイプの車両(SUV、コンパクト、セダン)に応じて、トリップの45%が分類された。この技術は、さまざまな車両モデル(ホンダアコード対BMW5シリーズ)を効果的に区別できる特徴を判定することもできる。
【0018】
この技術は、現実の世界で簡単に変更とスケーリングができる2つの重要な条件を考慮する。粒度(granularity。電車、車、徒歩などの交通手段だけでなく、車両タイプや車両モデルを識別する機能)と、ユビキタス(スマートフォンのセンサーのみが必要であり、閉じた周回路や風洞などの制御された環境に対する一般路状態のデータを収集する)である。
【0019】
一部の実施形態では、テレマティクスデータは、ユーザーのスマートフォンから、またはマサチューセッツ州ケンブリッジのケンブリッジモバイルテレマティクスによって設計され、車両に取り付けられた、ここでは単にタグと呼ばれるカスタマイズされたハードウェアデバイスから記録される。一部のアプリケーションでは、スマートフォンとタグの両方からデータを収集できる。テレマティクスデータの1つのボディで、トリップは2013年から2017年までの複数の場所で記録された。さまざまなセンサーが異なるサンプリングレートでデータを記録したが、簡略化のために、すべてのセンサーが一定のレートでサンプリングされ、サンプリングレートが高いセンサーのサブサンプリングと、サンプリングレートが低いセンサーの線形補間とによって実現されたと仮定する。表1に、利用可能な測定値と対応するセンサーを示す。
【0020】
【表1】
【0021】
図1に示すように、タグは所定のトリップのデータを未加工(生)の形式で記録し、そのデータは測定に影響を与える可能性のあるすべての外部要因を説明する。たとえば、重力によって、加速度計の鉛直方向に一定の下向きの加速度が発生する。道路の隆起や悪天候も、タグの読み取り品質に影響を与える可能性がある。その後、処理アルゴリズムがそのような外部効果をフィルタリングし、測定値を道路の方向に対応するように調整する。多くのトリップのサンプルデータには、車両のメーカーとモデルのラベルが含まれており、正しいものとして受け入れられた。ただし、ラベルはユーザーによって提供されたものであり、多くのユーザーにとって、自分の車に関する情報はない。分析された一連のデータには、このようなラベルの付いたトリップが3,000万件あり、ラベルのないトリップが9000万件ある。このデータには、トリップ情報(トリップの開始/終了のタイムスタンプ、開始位置と終了位置、所要時間と距離)、匿名化されたユーザーIDなど、分析に役立つメタデータも含まれていた。
【0022】
この技術は、半教師あり学習アルゴリズムを使用している。分類器は、多くのユーザーの多くのトリップからのデータを使用して、車両タイプ(SUV、コンパクト、セダンなど)に基づいて構築される。次に、分類器を適用して、特定のユーザーによるトリップの車両タイプを予測できる。車両の使用パターンにヒューリスティックを適用して、特定のトリップを同じ車両タイプのクラスにグループ化できる。
【0023】
この技術はクラスタリングタスクに対応するものとして特徴付けることができるが、類似性の概念を必要とする可能性のあるクラスタリングアルゴリズムを実施しておらず、一部のアルゴリズムではクラスターの数を事前に知る必要がある。クラスタリングアルゴリズムから得られた結果は解釈が難しい場合があり、試行錯誤プロセスであることが多い特徴エンジニアリング以外に結果を改善する方法に関する明確な戦略はない。大量のラベル付きデータが利用可能な場合、正しく解釈されれば、半教師付きアプローチを使用できる。
【0024】
グローバル特徴に依存するアルゴリズム(トリップ中のグローバル分析など)は、交通状況など、トリップのさまざまな要因によって発生する識別可能な特徴の欠如とノイズとに悩まされている。
【0025】
図2の異なる車両モデルで駆動された2つの異なるトリップの比較に示されているように、長期的には、トリップの軌跡が識別要素になり、異なる車両の駆動に起因する局所的な違いを支配する。したがって、この技術は、時系列データのローカル構造を利用する分類アルゴリズムを使用する。このアルゴリズムでは、さまざまな車両モデルを区別するのに十分である。運転行動は車両の特性によって左右されるため、この技術は、ドライバーの影響を受ける特徴をある程度受け入れる。一方、道路状況、天候、交通は除外される。
【0026】
機械学習の手法では、加速、エンジン特性、サスペンション、ステアリング、コーナリングなどの特徴として、ローカルベースの特性を収集することをお勧めする。物理学や機械工学からのさまざまな研究は、そのようなモデルを構築するための最初の直感を与えるが、従来の工学モデルから2つの出発点がある。一つには、この技術は、路上テストでモデルの有効性を確認するのではなく、経験的データに基づいてモデルを再構築することを目的としている。もう一つには、測定誤差、制限されたサンプリングレート、一般道路の状態は、理想的なモデルからの逸脱を引き起こす可能性がある。この技術では、計算効率を高めるために、より抽象的または簡略化されたモデルを使用する。
【0027】
サンプリングレートは、パラメーターの正確な値を取得する機能を制限するが、実際には、このような精度は必要ない。データセット内の異なるトリップからの同じ特徴は同じアルゴリズムを使用して計算されるため、特徴抽出関数が適切に定義され、連続的である限り、関数を少し調整すると、特徴値が少し変化し、分類能力が維持される。
【0028】
分類器は必然的にノイズが多いため、ユーザーのトリップの分類で誤差が発生する。したがって、この技術はヒューリスティック補正を適用する。ヒューリスティック補正は、トリップ履歴を一連のポイントとして見て、トリップのペア間の相関関係を見つける。これらの相関関係によって、技術は、一般分類器が確実に決定できない同じ車両タイプにトリップを入れることができる。
【0029】
要約すると、この技術は3つの工程を使用する。
1.ラベル付きのデータを持つトリップを使用して、車両タイプの分類器を作成する。
2.各ユーザーについて、分類器を使用して、ラベルのないトリップを分類する。
【0030】
3.後続のヒューリスティック補正を適用して、特定のトリップを同じクラスターにグループ化し、最終クラスターを出力する。
[特徴抽出]
通常の高次元データとは異なり、時系列データは、さまざまな次元およびさまざまなチャネルで取得されることが多く、主成分分析(PCA)または特異値分解(SVD)などの一般的な特徴抽出または次元削減アプローチが困難または実行不可能になる。この技術は3つのアプローチを使用する。
【0031】
1.データ内の無効なデータポイントを削除した後の統計的特徴を抽出する。選択した特徴には、平均、標準偏差、歪度、尖度、25、50、75パーセンタイル、および最小/最大値が含まれる。このアプローチは、データの時間依存の性質を無視する。ただし、その単純さは、基本的に時系列の性質を捉え、車両の特性を捉える物理量に直接関連し、実際に良好な分類結果を得ることができる。
【0032】
2.時間依存の特徴をデータから抽出する。最も注目すべき特徴は、信号のスペクトログラムを評価することである。逆に言えば、これらの手法から得られる特徴は、物理量に接線的に関連付けられているだけなので、簡単には説明できない。ただし、車両の局所的な異常な動作をキャプチャできるため、分類の強力な指標になる。
【0033】
3.ハードブレーキやハード加速などのイベントベースの特徴を抽出する。これらのイベントは多くの場合、時間的に局所化され、ドライバーの道路状況からの外部ソースによって引き起こされる。これらの特徴は、優れた識別精度を達成するために、より多くのエンジニアリングとパラメーターの調整を必要とする。
【0034】
いくつかの特徴は、車両動力学のモデリングから発想を得ている。表2は動力学と、関連する測定値との一覧である。後の説明では、特徴を抽出する方法を直感的に説明する。これらのモデルの正式な導出は、付録に委ねられている。
【0035】
【表2】
【0036】
[サスペンション応答]
サスペンションシステムは、ポットホール(凹み)などの道路のアーチファクトに遭遇したときに車両に加わる衝撃を軽減するように設計されている。この技術は、サスペンションを、次の微分方程式を満たす減衰調和振動子としてモデル化する。
【0037】
【数1】
【0038】
ここで、ωは発振器の減衰されていない角周波数であり、ζは減衰比である。ここでは0 <ζ<1である。これは、減衰されたバネが、道路の衝撃によって引き起こされる振動を徐々に打ち消すためである。時間t = 0での衝撃値Aでは、減衰値は次のようになる。
【0039】
【数2】
【0040】
パラメーターωとζを学習するために、技術は鉛直加速度データの自己相関を計算する。v(t)を、時間tにおける鉛直加速度とする。ラグs≧0の場合、sに対応する自己相関は、
【0041】
【数3】
【0042】
によって表され、対象ドメイン外のtの値の場合、v(t)= 0である。分母はs = 0の自己相関に対応しているため、a(0)= 1であることに注意されたい。値a(s)は、実際のデータから導出されたサスペンション応答の経験的減衰値に対応する。ωおよびζの値は、誤差を最小限に抑えるように選択されている。
【0043】
【数4】
【0044】
図3に示す時間に対するサスペンション応答で示されているように、この技術は経験的データを使用しているため、測定誤差を説明する戻り値にばらつきがあることは避けられない。ただし、トリップ全体にパターンがある。乗り心地の良い車の場合、減衰率は通常で低く(0.2~0.3)、ユーザーの快適性を最大にする。一方、オフロード車やレースカーの場合は減衰率が高く(通常、0.5~0.7)、衝撃をすばやく滑らかにする。
【0045】
図4のプロットが示すように、横軸は減衰比を表し、縦軸は振動周波数を表す。鉛直加速度は、重量やサスペンション応答などの多くの車固有の特徴から明らかになる(非特許文献6)。したがって、この技術では、減衰係数と周波数の計算に加えて、鉛直加速度の統計的特徴も計算できる。ただし、鉛直加速度は車速の影響を受けるため、鉛直加速度の値を車速で分割し、その特徴を個別に収集する(非特許文献9)。
【0046】
もう1つの問題は、車両の重量である。実際には、鉛直加速度からの読み取り値は、車両の負荷に依存する。これには、車両重量(curb weight)の他に、乗客の重量、燃料、追加の負荷が含まれる場合がある。車両の重量は異なるトリップ間で大きく異なるため、追加の負荷は、SUVタイプの車両のパラメーターを推定する場合に特に問題になる。
【0047】
[パワーウェイトレシオ]
ニュートンの第2法則によって、力は次のように表すことができる。
【0048】
【数5】
【0049】
ただし、加速度計とGPSセンサーのみを使用すると、車両の質量を推測する明白な方法がないため、技術はP/W = avであるパワーウェイトレシオ(Power to weight ratio)に依存する。
【0050】
有効なサンプルごとにこのような比率を収集すると、車両の加速能力とエンジンの応答性に関する時系列表現が得られる。パワーウェイトレシオはエンジンの瞬間的な変化を捉えることができるため、ブレーキ距離や0~60 mph(96.6kph)時間など、従来の測定基準よりも信頼性の高い測定基準と考えている。この技術は、時系列から統計的特徴を収集する。
【0051】
図5は、さまざまな車両の標準偏差と平均パワーウェイトレシオのプロットを示している。経験的なパワーウェイトレシオは、メーカーから引用されたパワーウェイトレシオとは異なることに注意されたい。メーカーから引用されたパワーウェイトレシオは、車両重量(curb weight)でのピークエンジンパフォーマンスで測定されることが多い(ドライバーが乗っていない)が、パワーウェイトレシオはエンジンのパフォーマンスにのみ依存するため、重要な指標である。快適な乗り心地でコンパクトな車は、多くの場合、パワーウェイトレシオが低く、スポーツカー、高級車、およびSUVは、車両の大型化を補うためにパワーウェイトレシオが高い。
【0052】
[空気力学と縦方向の摩擦]
車両の縦方向の動力学は、次の式となる。
【0053】
【数6】
【0054】
ここで、Fは前向きのタイヤ力、Faero(F空力)は空力抵抗、Fは縦方向の転がり摩擦である。高速では、支配的な抗力は空気力学的抗力であり、車両の速度の2乗に比例する。
【0055】
【数7】
【0056】
ここで、ρは大気密度、Cは車両の抗力係数、Aは車両の正面面積である。車両の空力仕様に関する情報は、付録の表8に記載されている。SUVなどの特定のタイプの車両は、他のタイプの車両に比べて抗力面積が大きくなる。したがって、他のタイプの車両と比較して、動作するにはより高いエンジン出力が必要であり、ブレーキやアクセルへの応答性が低くなる。したがって、縦加速度と速度の2乗の統計的特徴は、車両タイプ間の違いを捉える。
【0057】
[横方向動力学;ステアリング特徴]
ステアリングからの入力インパルスの大きさが小さく、非常に短い時間で発生するため、車両のハンドリングの測定は注意が必要である。自然なアプローチは、車両が曲がることができるタイトさに対応する曲がり半径を測定することである。このアプローチには2つの問題がある。
【0058】
1.運転行動によるノイズ。ターン半径は、ドライバーが行うターンのきつい角度と相関する傾向があるため、これは小さな問題である。
2.交通からのノイズ。多くの場合、交通は車両が設計どおりに小さく曲がることを妨げるため、これは大きな問題である。また、交通法によって、ドライバーは左折を右折よりも大きくすることができる(この法律では、ドライバーが道路の右側を運転することが義務付けられていると想定している)。
【0059】
より良いアプローチは、ジャイロスコープセンサーの統計的特徴、特にヨーレートに依存することである。遠心加速度は次の方程式で導出されることを思い出されたい。
【0060】
【数8】
【0061】
ここで、aはヨーレート、Rは旋回の半径、vは車両の速度である。したがって、いつでもv/aは車両の回転能力を特徴付ける。aの小さな値(車両が曲がっていない、または数値の安定性が確保されていないことを示す)を除外すると、旋回半径の統計的特徴を収集できる。
【0062】
[自己相関係数]
以前の特徴は、車両の特性に関する重要な情報を含む時系列の時間依存の性質を無視する。たとえば、自己相関は車両のホイールベースを表す。これは、車両が路面の隆起に刺激を受けると、2つの連続するバンプ間のタイムラグは、車両のホイールベースの長さと相関する。この技術は、次の方程式に従って鉛直加速度の自己相関係数
【0063】
【数9】
【0064】
を計算し(ここではc = 1を正規化する)、最初の5つの係数を特徴として使用する。他のタイプの測定についても、同様の定義を行うことができる。
[ハード加速とハードブレーキ]
これらの特徴は時間的に局所化されており、車両のブレーキングおよびトランスミッションと直接相関するため、車両の特性の多くを特徴付けている。この技術では、ハード加速(ハードアクセラレーション)を、縦方向の加速度が0.5m/sを超えることと定義し、加速フレームを、ハード加速がそのような閾値を超える連続した期間と定義している。この技術は、フレームごとに、その期間の持続時間と平均加速度を計算し、統計的抽出を使用してさまざまなフレームにわたって集計する。
【0065】
同じ考え方がブレーキイベントにも当てはまり、閾値として-0.5m/sを使用する。同様に、この技術は、横加速度と縦加速度を入力として特徴を抽出できる。
[スペクトル分析]
時系列のスペクトルコンテンツには、時系列の特性に関する豊富な情報が含まれていることが多く、計算に役立つ特徴となっている。スペクトル分析は、画像分類(非特許文献10)や音声認識(非特許文献7)など、多くの分野で広く適用されている。車両では、スペクトルコンテンツは、車両が動いているとき、またはアイドル状態にあるときのエンジン振動に由来する。車両モデルの分類は、ジャイロスコープの変動によって検出された、車両の移動時にエンジンが発する音の分析に基づくことができる。ただし、センサーのサンプリングレートは、そのような情報を取得するのに十分高くない場合がある。したがって、この技術では、周波数が1~2Hzのアイドル状態の振動など、より低い周波数特性を使用できる。車両は加速やブレーキなどの非アイドルイベントを経験する可能性があるため、グローバルフーリエ変換ではなく、短時間フーリエ変換を使用すると便利である(非特許文献7)。この技術は、時間領域信号を重複する短いフレームに分割し、各フレームにフーリエ変換を個別に適用する。フレームのオーバーラップを使用すると、フレームの作成に起因する人為的な境界が緩和される。
【0066】
各フレームで、この技術はスペクトルエネルギー、スペクトルの重心、およびスペクトルの分散を計算し、統計的抽出を使用してさまざまなフレームにわたって集計する。この技術は、フレーム全体のスペクトルフラックスも計算する。これは、時間の経過に伴うスペクトルコンテンツの変化を特徴付ける。これらの特徴を計算する方法の詳細は、付録A.2で説明されている。
【0067】
[特徴エンジニアリング]
技術はトリップから特徴を抽出しようとするが、一部のトリップの信号は破損しているため、特徴の抽出の影響を受けない。このような場合、アルゴリズムはトリップ全体を検討対象から除外する。実験によると、特定の特徴セットでは、トリップの10%のみが破棄される。
【0068】
識別の精度は、時刻、トリップ時間、道路のタイプなどのメタデータ特徴を含めることによって、いくつかの特殊なケースで改善できる。直感は、一人のドライバーにとって、各車両モデルに関連付けられた一貫した運転行動があるということである。ただし、1つの目的はすべてのドライバーからのデータを利用して車両タイプに関する分類器を構築することであり、ドライバー間のばらつきが大きいため、そのようなメタデータ特徴は役に立たなくなる。したがって、これらの特徴は分類器を作成するときに考慮されない。この技術は、これらのメタデータ特徴をユーザーごとにのみ使用する。
【0069】
[アルゴリズム]
[粒度]
分類の課題は、アルゴリズムが機能する粒度のレベルを決定することである。800を超える車両モデルがあり、使用頻度がモデルによって大きく異なるため、車両のメーカーとモデルを直接使用するのは細かすぎる場合がある。さらに、特定の車両モデルを運転するドライバーが少なすぎると、分類器はこれらの特定のドライバーに適合しすぎる危険性がある。同様に、同じメーカー内には複数のタイプの車両があり、それぞれが非常に異なる車両特性を持っているため、ラベルとして車両メーカーを選択することも適切な選択肢ではない。
【0070】
その代わり、この技術は粒度を車両タイプに制限する。つまり、この技術は、トリップがコンパクト、セダン、SUVのどちらで運転されているかを分類する。人気のある車両モデルの一部に対応する車両タイプを手動でラベル付けし、これらの車両モデルのみを使用してコーパスを作成する。
【0071】
【表3】
【0072】
以下の説明では、車両の製造元とモデルについてのみ説明し、車両モデル内のバリアント(製造年、エンジン出力、車両のドアの数など)を無視する。
このリストは、車両のメーカー/モデルとそれに対応するラベルクラスの両方の点で、アルゴリズムの変更を最小限に抑えて拡張できる可能性がある。ここでは、対応するタイプの同様の車両特性に基づくパーティションについて説明する。ただし、リストされている車両モデルのいくつかは2つの異なる車両タイプの特性を共有しているため、この分類は完全ではない。
【0073】
[分類]
分類は、多くの利用可能なアプローチによる機械学習の古典的な問題である。この技術は、異種データタイプを処理する機能のおかげで、ランダムフォレスト分類器を使用する(非特許文献11)。分類器を使用して、トリップごとに技術が車両のタイプの確率分布を取得する。
【0074】
分類器は一般的なケースでトレーニングされるため、分類工程中に導入される可能性がある特定のユーザーベースの情報は無視される。たとえば、ユーザーが持っている車両の数の上限に関する知識があると、仮説空間を制限するのに役立つ。関数h:X×Y → [0,1]としてモデル化された分類器があるとする。ここで、Xはすべてのトリップ特徴の空間であり、Yはすべての可能なラベルの空間である。各x∈Xについて、分類器はYに亘る確率分布を持つ。つまり
【0075】
【数10】
【0076】
であり、
【0077】
【数11】
【0078】
と表記する。トリップx,...,xを持つドライバーの場合、トリップが独立して行われると仮定すると、それらの同時確率は
【0079】
【数12】
【0080】
である。
重要な観察は、セットM ={p(x),...,p(x)}が、ドライバーが使用する車両に対応することであるので、そのカーディナリティは非常に大きくなることはない。合理的な仮定は、いくつかの小さなkについては M ≦kに制限し、YのすべてのkサブセットMを検索してプロセスを逆にし、同時確率を計算することである。
【0081】
【数13】
【0082】
P(x,...,x,M)を最大化するMを選択し、目的のトリップの車両タイプの可能性を正規化する。
[ヒューリスティック補正]
説明ではテレメトリ情報のみを使用した予測について説明したが、このアプローチでは、トリップが行われた時刻、場所、所要時間、距離など、トリップのメタデータは無視される。ドライバーの行動は予測可能なパターンに従っているため、この技術は特定のヒューリスティックを使用して、特定のトリップを、同じ車両を共有する1つのグループに高い信頼度でグループ化できる。重要なのは、運転履歴を一連のトリップと見なし、連続するトリップ間の相関関係を見つけることである。
【0083】
技術は、ここで2つの注目すべき発見的手法を適用する。
1.連続した照合:2つのトリップが時間的に近く、2番目のトリップの開始位置が最初のトリップの終了位置に近い場合、ドライバーは後のトリップで同じ車両を使用した可能性が高いため、2つのトリップが同じ車両から来る。
【0084】
2.軌跡の一致:ドライバーが一定の軌跡を繰り返す可能性が高いと想定すると、この技術は、同じ車両が運転する(どちらの方向にも)似た軌跡を持つトリップを割り当てることができる。これは、開始位置と終了位置などのいくつかの主要な位置を確認することによって、簡単かつ正確に実施できる。多くのトリップを検索する必要をなくすために、この技術は3日間のウィンドウ内のトリップのみを考慮することができる。
【0085】
2つのヒューリスティックによって導入された等価関係は必ずしも推移的ではないが、それでも、同じ車両へのそのようなリンクされたトリップをすべてグループ化できる。これらのトリップにクラスターラベルを割り当てるには、同時確率を計算する。
【0086】
【数14】
【0087】
そして、同時確率を最大化するラベルcを選択する。
[他のアプローチ]
比較のために、技術は代替アルゴリズムを実施できる。これらのアプローチは、データセットの性質と、差別的特徴の特性とを明らかにするのにも役立つ。
【0088】
1. 未加工(生)の値:各トリップについて、特徴エンジニアリングを行わずに、センサーの測定値で構成される特徴ベクトルを作成する。2分の間隔を選び、3つの加速度センサーを使用して、2×60×15×3 = 5400要素の特徴ベクトルを作成する。これらの特徴に基づいてランダムフォレスト分類器をトレーニングする。
【0089】
2. 特徴エンジニアリングベースのアルゴリズムであるが、一部のコンポーネントが削除されている。この技術は2つのケースを実施できる。1つは統計特徴のみ、もう1つは統計特徴とイベントベースの特徴とを組み合わせたものである(スペクトログラム特徴はない)。
【0090】
3. 1次元の畳み込みニューラルネットワーク(1D-CNN)。このアプローチは、運転スタイルによってトリップを分類することに成功した(非特許文献8)。ディープラーニングベースのアルゴリズムでは、手作りの広範な特徴エンジニアリングを行う代わりに、特定のアプリケーションに応じて適切な特徴を自動的に選択し、トレーニング中にそのような特徴を暗黙的に学習するニューラルネットワークを実施できる。
【0091】
一部の実施形態では、この技術は、2分間のトリップのセグメントを使用できる。これは、2秒の長さのフレームにさらに分割され、連続するフレーム間で1秒がオーバーラップする。各フレームで、技術は測定値の統計的特徴を計算し、特徴を配置して統計的特徴マトリックスを形成する。図6に示す1次元(1D)畳み込みニューラルネットワーク図で示されているように、この技術は、時間領域でのみフレーム全体に畳み込みと最大プーリングを適用する。畳み込みとプーリングの後の結果は、完全(フル)に接続された層に接続され、続いて出力層に接続される。
【0092】
[車両識別へのドライバーの影響]
上で説明したように、技術は影響を減らすためのエンジニアリング手法を実行しているにもかかわらず、ドライバー入力を含む特徴を暗黙的に抽出する。ドライバーの入力はテレマティクス信号の重要な部分であるため、自然な疑問が生じる。それは、車両識別への影響がどれほど大きいかである。1つのドライバーのみを含むトリップと、複数のドライバーからのトリップとの2つのケースがある。
【0093】
技術が同じドライバーのケースに制限されている場合でも、監視ありの方法では、良好な分類結果が得られる。その理由は、ドライバーの運転スタイルは一貫しており、ドライバーを調整することによって、残りの信号が車両モデル間の違いを明らかにするからである。
【0094】
一方、データセットに複数のユーザーからのトリップが含まれている場合、分類は非常に困難になる。異なるドライバーは同じ車両モデルの異なるバリアントを所有しており、同じ車両モデルであっても、その使用法には大きなばらつきがある。分類器を構築することに加えて、適切な粒度を選択することも、ユーザーの車両識別に適用するために重要である。
【0095】
[結果]
上記のように、分類またはクラスタリングアルゴリズムは、さまざまな条件で堅牢である必要がある。運転スタイルは、分類の精度に影響を与える主要な要因である可能性がある。したがって、以下のシナリオをカバーする一連のテストを設計する。
【0096】
1. 複数の車両モデルを運転する同じドライバーによる同じドライバーテスト。分類器は、車両モデルに基づいてトリップを分類することが期待されている。
2. 運転スタイルテスト。トリップ履歴は複数のドライバーから来て、ドライバーによってラベルが付けられる。分類器は、対応するドライバーによってトリップを分類することが期待されている。
【0097】
3. 車両モデルテスト。トリップ履歴は、多くのドライバーがそれぞれ運転するいくつかの所定の車両モデルから取得される。分類器は、対応する車両モデルによってトリップを分類することが期待されている。
【0098】
4. 車両タイプテスト。トリップ履歴は多くの車両モデルから取得され、それぞれに車両タイプのラベルが付けられる。分類器は、対応する車両タイプによってトリップを分類することが期待されている。
【0099】
テストは、ユーザーの車両を識別するための追加のヒューリスティックと組み合わせて、説明されている分類器を使用して行うこともできる。
実験では、計算上の制約によって、通常、データセットのサイズを制限する。各テストでは、説明したテストスキームに準拠したデータを収集し、トレーニングデータとテストデータに分割して、10分割交差検証(CV)で精度を報告する。ここでの精度は、正しいラベルで分類されたトリップの割合を示す。精度が十分なデータで安定していることがわかる。すべての分析は、Amazon AWS c4.x8largeインスタンスを使用して行われる。
【0100】
[分類]
[同じドライバーテスト]
複数のテストを実行する。各テストでは、少なくとも2つの車両モデルを定期的に運転するドライバーを選択する(各車両モデルは、全トリップ数の少なくとも10%を表す)。ユーザーごとに最も人気のある2つのモデルを選択し、車両の代表性をデータでバランスさせる。分類器は、前述のすべての特徴を備えたランダムフォレストを使用してトレーニングされる。次の精度は、同じユーザーが運転する車両のペアごとに報告される。
【0101】
【表4】
【0102】
ここに示すように、同じドライバーを条件として、分類器は車両モデルを高精度で区別できる。すべてのテストは2つの車両モデルのみを使用して設計されているが、複数の車両モデルに拡張して、精度のわずかな低下を受け入れることは簡単である。したがって、ドライバーごとに、車両モデルごとのトリップ履歴に関する十分なラベル付きデータ(車両ごとに約20トリップ)があれば、問題を効率的に解決できる。この技術は、ユーザーごとに分類器を作成し、ユーザーの車両識別に適用できる。
【0103】
難しい問題として残っているのは、ラベル付きデータなしでユーザーの車両モデルを特定することである。
[運転スタイルテスト]
複数のドライバーのトリップ履歴を収集し、使用している車両モデルに関係なく、ドライバーのトリップのラベルを付ける。ドライバーごとに100回のトリップを選択し、ランダムフォレスト分類器を実行して、10倍のCVで測定された精度を報告する。
【0104】
【表5】
【0105】
ここに示されているように、この方法は運転スタイルの分類に関して高い精度を報告する。
[車両モデルテスト]
複数の車両ペアで実験を行う。各テストでは、車両モデルごとに2000回のトリップを収集するが、同じドライバーからのトリップは30回以下である。ランダムフォレスト分類器を使用して分類器をトレーニングする。
【0106】
【表6】
【0107】
同じドライバーテストと比較した場合の精度の低下は、提案された特徴エンジニアリングアプローチがドライバーの特性を考慮に入れていることを示唆している。これは、同じクラス内のドライブ間の差異を考慮に入れている。結果はまた、異なるタイプの車両のペアの方が分類精度が高いことを示しており、ノイズが多いにもかかわらず、車両タイプ別の分類器がユーザーの車両識別問題の優れた指標として役立つ可能性があることを示唆している。
【0108】
[車両タイプテスト]
この実験では、表3にリストされている車両モデルのみを使用して、各タイプの車両から20000のトリップをサンプリングし、データセットに30を超えるトリップがないように条件付けした。次に、車両タイプの分類器を作成する。ここでは、SUV、コンパクト、セダンの3種類の車両タイプがある。結果は、車両タイプが正しく分類されたトリップの割合として表示される。
【0109】
【表7】
【0110】
表7では、次の省略表記を使用している。
ベーシック:統計的抽出方法と時間依存の特徴を介して収集されたすべての特徴を示す。主に車両の動力学特徴であるが、スペクトル特徴は除く。
【0111】
イベント:ハード加速やブレーキングなどのイベントベースの特徴を示す。
スペクトログラム:スペクトログラムの計算から得られた特徴を示す。
ここに示すように、未加工(生)の値を直接使用しても、ランダムな推測より優れた予測能力は得られない。CNNと基本的な特徴は、いくつかの差のある正確さを取得するのに役立つが、重要な貢献は、スペクトルの特徴によって明らかにされる車両の短時間応答を使用することから来る。
【0112】
[クラスタリング]
分類器をクラスタリング問題に適用した。結果を評価するには、評価基準が異なるため、1台の車両を持つユーザーと、2台以上の車両を持つユーザーとを区別する必要がある。
【0113】
車両が1台しかないユーザーの場合、メトリックは、最大のクラスターのサイズとトリップの総数との比率である。この場合、ヒューリスティックを使用しない場合の平均比率は0.75で、ヒューリスティックを使用した場合の平均比率は0.9である。これは、分類器アプローチが、クラスターが1つしかないことを認識していることを意味する。
【0114】
2つ以上の車両を所有しているユーザーの場合、取得したクラスターとグラウンドトゥルースデータをラベルの順列に従って比較する必要がある。混同行列を作成し、最大サイズの順列の合計をトリップの総数で割ることによって、ヒューリスティックを使用しない場合の平均比率は0.55、ヒューリスティックを使用する場合の平均比率は0.60であることがわかる。この場合、分類器は、ある程度異なる車両を認識する。
【0115】
結果は、分類器が同じ車両によるトリップを異なるクラスターに割り当てる傾向があるため、ヒューリスティックがある程度修正できることを示している。より堅牢な分類器は、識別精度を向上させる可能性がある。したがって、複数の車両で得られる精度には制限要因があり、教師ありアプローチはより良い結果をもたらす可能性がある。
【0116】
私たちが説明した技術は、簡単なセットアップでスマートフォンのセンサーから収集されたデータのみを必要とし、さまざまな環境でのスケーラビリティとユビキタスを可能にする。アルゴリズムの成功は、車両動力学の研究とドライバーの使用パターンの理解の両方を組み合わせたものであり、後者は「純粋な」機械学習アルゴリズムの実施の難しさを補うためのものである。アルゴリズムの単純な拡張によって、電車、自転車、徒歩などの交通手段を分類できる。
【0117】
結果の変動は、電話の位置(手やポケットなど)やスマートフォンのモデル(Android(登録商標)対iPhone(登録商標)など)に関連している場合がある。基本的な測定は同じであるが、スマートフォンのモデルが異なれば、モーション検出またはノイズのフィルタリングのためのアルゴリズムの適用も異なる。スマートフォンモデルごとに収集されたデータ品質の違いを区別すると、分類結果の改善に役立つ場合がある。
【0118】
実際には、ユーザー入力のトリップは、交通手段(車からバスや電車など)の間で交互に切り替わることがある。トリップで1台の車両のみを使用する場合でも、収集されたすべてのデータが運転のみから得られるわけではない。たとえば、ユーザーはガソリンスタンドで車両を停止し、給油して運転を再開できる。特定のトリップでインターリーブされたさまざまな交通手段を分離するトリップセグメンテーションは、分析精度を向上させ、ユーザーの運転行動に関するより多くの洞察を提供する。
【0119】
時系列分析で説明した技術は、多くの場合、単一の時系列から一度に1つずつ特徴を抽出する。複数の時系列の特徴を抽出するベクトル化されたアプローチは、車両の異なる測定値間のさらなる洞察と関係を提供する可能性がある。同様に、抽出工程中に取得される特徴は、車両の動力学に大きく依存する。より体系的なアプローチは、車両の動的モデルを構築し、基礎となるパラメーターを推測することである。
【0120】
車両タイプを分類することに加えて、同様の技術を適用して、車両重量(curb weight)、寸法、空気力学係数などの車両のパラメーターを推定することができる。これは、さまざまな車両モデルのパラメーターの可用性と、可用性からのグラウンドトゥルースデータの整合性とに依存する。
【0121】
ユーザーの行動の特定の側面は分類に役立つと考えられているが、これらのプロパティは多くの場合、ケース固有でヒューリスティックである。ユーザーの行動を研究する際に体系的なアプローチをとることは、より堅牢な車両識別モデルの実施に役立ち、ドライバーが車両を使用する方法を明らかにするのに役立つ。
【0122】
[ハードウェアとソフトウェア]
上記の説明では、コンピュータデバイス、モバイルデバイス、およびその他のデバイスの構造と機能について言及することがある。このようなデバイスのさまざまな実施が可能である。いくつかの実施形態において、コンピュータデバイスは、例えば、ラップトップ、タブレット、ノートブック、デスクトップ、ワークステーション、携帯情報端末、サーバー、ブレードサーバー、メインフレームを含む、様々な形態のデジタルコンピューター、デジタルデバイス、またはデジタルマシンとして実施され得る。その他、モバイルデバイスは、携帯情報端末、タブレット、携帯電話、スマートフォン、およびその他の同様のデバイスとして実施できる。
【0123】
コンピューティングデバイスは、プロセッサ、メモリ、ストレージデバイス、メモリおよび高速拡張ポートに接続する高速インターフェース、ならびに低速バスおよびストレージデバイスに接続する低速インターフェースを含むことができる。これらのコンポーネントは、さまざまなバスを使用して相互接続でき、一般的なマザーボードまたは他の方法でマウントできる。プロセッサは、メモリまたはストレージデバイスに格納された命令を含む、コンピューティングデバイス内で実行するための命令を処理して、例えば、高速に接続されたディスプレイを含む外部入出力デバイスにGUIのグラフィックデータを表示することができる。インターフェース。いくつかの実施形態では、複数のプロセッサおよび/または複数のバスを、複数のメモリおよびメモリのタイプとともに使用することができる。また、複数のコンピューティングデバイスを相互接続して、各デバイスが必要な操作の一部を提供することができる(たとえば、サーバーバンク、ブレードサーバーのグループ、またはマルチプロセッサシステムとして)。
【0124】
メモリは、コンピューティングデバイス内にデータを格納する。いくつかの実施形態では、メモリは、揮発性メモリユニットまたはユニット群を含む。いくつかの実施形態では、メモリは、1つまたは複数の不揮発性メモリユニットを含む。メモリはまた、例えば、磁気ディスクまたは光ディスクを含む、別の形態のコンピュータ可読媒体であり得る。
【0125】
ストレージデバイスは、コンピューティングデバイスに大容量ストレージを提供することができる。いくつかの実施形態では、記憶装置は、たとえば、ハードディスク装置、光ディスク装置、テープ装置、フラッシュメモリまたは他の同様の固体メモリ装置、または、ストレージエリアネットワークまたはその他の構成のデバイスを含むデバイス。コンピュータプログラム製品は、データキャリアに具体的に具体化することができる。コンピュータプログラム製品はまた、実行されると、例えば、上述したものを含む1つまたは複数の方法を実行する命令を含むことができる。データ担体は、例えば、メモリ、記憶装置、またはプロセッサ上のメモリを含む、コンピュータまたは機械可読媒体である。
【0126】
各デバイスは、必要に応じてデジタル信号処理回路を含むことができる通信インターフースを介してワイヤレスで通信できる。通信インターフェースは、例えば、とりわけ、GSM(登録商標)音声通話、SMS、EMS、またはMMSメッセージング、CDMA、TDMA、PDC、WCDMA(登録商標)、CDMA2000、またはGPRSを含む、様々なモードまたはプロトコルの下での通信を提供することができる。このような通信は、例えば、無線周波数トランシーバーを介して行うことができる。さらに、例えば、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi、または他のそのようなトランシーバー(図示せず)を使用することを含む、短距離通信が起こり得る。さらに、GPS(全地球測位システム)受信機モジュールは、デバイスに追加のナビゲーションおよび位置関連のワイヤレスデータを提供できる。これは、デバイス上で実行されているアプリケーションによって適切に使用できる。
【0127】
コンピューティングデバイスは、いくつかの異なる形で実施することができる。たとえば、携帯電話として実施できる。また、スマートフォン、携帯情報端末、パッド、またはその他の同様のモバイルデバイスの一部として実施することもできる。
【0128】
ユーザーとの対話を提供するために、ここで説明するシステムと技術は、ユーザーにデータ(拡張現実情報を含む)を表示するためのディスプレイデバイスと、ユーザーがコンピュータに入力を提供できるキーボードとポインティングデバイス(例えばマウスやトラックボールなど)を備えたコンピュータで実施できる。他の種類のデバイスを使用して、ユーザーとの対話を提供することもできる。例えば、ユーザーに提供されるフィードバックは、感覚的フィードバック(例えば、視覚的フィードバック、聴覚的フィードバック、または触覚的フィードバック)の形態であり得る。ユーザーからの入力は、音響、音声、または触覚入力を含む形式で受け取ることができる。
【0129】
他の実施形態も、以下の特許請求の範囲内にある。
[付録A]
[形式的な導出]
このセクションでは、明細書で使用されるモデルの機械的および数学的な知識を示す。
【0130】
[A.車両動力学]
いくつかの式は、車両の動力学を詳細に説明している非特許文献4から導出している。
[A.1 縦方向の車両動力学]
図7に示すように、縦方向の動力学は、車両のエンジン出力と縦方向の加速度の特性を数値化したものである。このモデルでは、クォーターカーモデルを想定している。道路のピッチがゼロであると仮定すると、車両に作用する縦方向の力は、次の式で表すことができる。
【0131】
【数15】
【0132】
ここで、Fは、タイヤ力である。
aero(F空力)は、空力抵抗である。
は、転がり摩擦である。
【0133】
mは、車両の質量である。
は、車両の縦方向加速度である。
転がり摩擦は、タイヤと道路の間の摩擦によって発生し、車両に作用する鉛直力に比例するため、次のように説明できる。
【0134】
【数16】
【0135】
ここで、cRは転がり抵抗係数である。
空力抵抗は、速度の2乗に比例する。
【0136】
【数17】
【0137】
ここで、ρは空気密度、vwindは風速(正の値は車両の動きに対する風向を示す)、Cは車両の抗力係数、Aは車両の正面面積である。量CAは、コーストダウンテスト(非特許文献12)によって経験的に決定できる。典型的な実験では、ρは101.325kPaで一定値で、海抜15度の気温で測定される(非特許文献13)。
【0138】
どちらの式でも、マイナス符号は、車両の動きに対向して作用する力を示す。
実験では、タイヤ力はスリップ力によって生成されることが示されている。スリップ力は、タイヤの回転速度と、車軸の縦方向速度との差として発生する。差はrω-vであり、ここでrはタイヤの半径であり、ωはタイヤの角速度である。次のように、縦方向のスリップ率を定義する。
【0139】
σ=(rω-v)/v ただし、車両がブレーキ中の場合。
σ=(rω-v)/(rω) ただし、車両が加速中の場合。
タイヤ力は、次のように計算される。
【0140】
【数18】
【0141】
ここで、Cσは、縦方向のタイヤの剛性である。
【0142】
【表8】
【0143】
[A.2 パッシブサスペンションの設計]
車両が道路を走行するとき、道路入力による摂動を受ける。サスペンションの目的は、そのような摂動を吸収することである。これによって、乗り心地が向上し、車両の制御が保証される。乗り心地は、鉛直加速度の測定によって定量化できる。
【0144】
パッシブサスペンションは、ばね-質量システムとしてモデル化できる。パッシブサスペンションは純粋に路面の摂動を吸収するが、アクティブサスペンションは、電子制御によってアクチュエーターに外力を減衰させることができる。このセクションでは、パッシブサスペンションのみを考慮する。図8の四分車モデルを使用すると、そのパラメーターは以下を表す。
【0145】
は、車体質量に相当する。
は、軸質量である。
は、サスペンション係数である。
【0146】
は、タイヤの剛性である。
は、減衰係数である。
クォーターカーモデルに代わるものは、フロントとリアの両方のサスペンションを含むハーフカーモデルの図9である。本文で説明したように、フロントサスペンションとリアサスペンションの加速度間のレイテンシ(待ち時間)を使用して、車両のホイールベースを推定できる。
【0147】
ハーフカーモデルのパラメーターは、以下を含む。
t1,kt2は、前後タイヤの剛性である。
u1,mu2は、前車軸と後車軸の質量である。
【0148】
,kは、前後のサスペンションの係数である。
mは、車体の質量である。
、lは、フロントサスペンションとリアサスペンションの重心までの距離である。したがって、l+lは、車両のホイールベースに対応する。
【0149】
[A.3 ロール動力学]
転がり(ローリング)は致命的な事故の主な原因の一つである。ロールは、車両が車両のボディに沿った軸に沿ってバランスを保つことができなくなったときに発生する。車両のロールを制御することは、トラクションと、車両の安定性とにとって非常に重要である。
【0150】
図10に示すように、直感的に、車両は軌道幅が広く、高さが低いほど転がりにくくなる。正式には、ロールの安定性は、次のように定義される静的安定性係数(SSF)によって定量化される。
【0151】
【数19】
【0152】
ここで、lは、車両のトラック幅である。
hは、車両の重心の高さである。
その結果、SSFは、リフトオフ加速度、または横転が発生する横方向加速度の閾値を定義する。
【0153】
【数20】
【0154】
上記の量は純粋に、車両の幾何学的形状に基づいており、電子的安定性制御などのロール防止メカニズムを無視していることに注意されたい。
【0155】
【表9】
【0156】
【表10】
【0157】
SSFは、図11に示すように、ロールモーメントバランスの式から導出できる。ここで、車両の横加速度はaで、内側と外側のタイヤの荷重はFzlとFzrである。外側のタイヤの下部におけるモーメント方程式は
【0158】
【数21】
【0159】
したがって、内側のタイヤにかかる力は
【0160】
【数22】
【0161】
zl =0を設定すると、ロールオーバーが発生する原因となる閾値の加速度は、a=(l/(2h))gとなる。
[B 短時間フーリエ変換]
時系列Tの場合、重複する可能性のある短いフレームc,...,cへと時系列Tを分割する。各フレームでフーリエ変換を適用し、係数の絶対値を取得する。変換後のフレームをd,…,dと表す。ここで、フレームiの係数はdi1,…,dimであり、mは係数の番号である。次の特徴抽出を適用する。表記法を簡略化するために、以下のすべての特徴(スペクトルフラックスを除く)について、係数d,…,dの単一フレームを考慮し、値は統計的抽出によってフレーム間で集計される。
【0162】
加重平均を計算するスペクトル重心は、
【0163】
【数23】
【0164】
である。
フレーム内の係数の二乗の合計の平均であるスペクトルエネルギーは、
【0165】
【数24】
【0166】
である。
標準偏差と同等となるスペクトル拡散は、
【0167】
【数25】
【0168】
である。
スペクトル歪度は、データセットの歪度を測定する。最初に3次モーメントを計算する。
【0169】
【数26】
【0170】
次に、スペクトル拡散の3乗で除算する。γ=m/σ
スペクトル尖度:最初に4次モーメントを計算する。
【0171】
【数27】
【0172】
次に、スペクトル拡散の4乗で除算する。γ=m/γ
スペクトルフラックスは、スペクトル成分の変化を特徴付ける。この特徴では、すべてのフレームc, c,...を連続して考慮して計算する。
【0173】
【数28】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11