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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】乳化性濃縮物
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/02 20060101AFI20231207BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20231207BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20231207BHJP
   A01P 13/00 20060101ALI20231207BHJP
   A01P 21/00 20060101ALI20231207BHJP
   A01N 43/40 20060101ALI20231207BHJP
   A01N 37/40 20060101ALI20231207BHJP
   A01N 39/04 20060101ALI20231207BHJP
   A01N 43/653 20060101ALI20231207BHJP
   A01N 53/06 20060101ALI20231207BHJP
   C07C 49/175 20060101ALN20231207BHJP
【FI】
A01N25/02
A01P3/00
A01P7/04
A01P13/00
A01P21/00
A01N43/40 101A
A01N37/40
A01N39/04 A
A01N43/653 C
A01N53/06 150
C07C49/175 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020557298
(86)(22)【出願日】2019-04-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 US2019028714
(87)【国際公開番号】W WO2019212803
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-04-11
(31)【優先権主張番号】62/664,994
(32)【優先日】2018-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】クレモ、サラ ビー.
(72)【発明者】
【氏名】レイター、デヴィット エス.
(72)【発明者】
【氏名】ケイド、コーシャ エル.
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-046933(JP,A)
【文献】米国特許第06376718(US,B1)
【文献】特開昭53-095910(JP,A)
【文献】特開2004-137192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/
C07C 49/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
(a)N,N-ジアルキル脂肪アミド、芳香族ケトン、アルキルケトン、環状ケトン、または芳香族炭化水素溶媒のうちの少なくとも1つに可溶な、5重量パーセント以上の化合物と、
(b)式1によるエーテルケトン溶媒と、を含み、
【化1】

式中、Rが、4~8個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基であり、Rが、CHまたはCHCHであり、xが、0、1、または2であり、RがCHの場合、Rが、CHであり、RがCHCHである場合、Rが、CHCHであり、
前記成分(a)の化合物は、ピレスロイド、有機ホスフェート、有機サルファイト、カルバメート、シクロヘキサンジオン、イソオキサゾール、フェノキシ、クロロフェノキシ酢酸、アニリド、クロロアセトアニリド、クロロメトキシ安息香酸、オキシアセトアニリド、ストロビルリン、トリアゾール、トリアザペンタジエン、合成オーキシン、アリールオキシフェノキシプロピオネート、ベンゾフラン、ピリミジン、フェニルピラゾール、フェニル尿素、ジフェニルエーテル、ヒドロキシベンゾニトリル、チオリン酸トリアミド、およびクロロピリジンからなる群から選択される、組成物。
【請求項2】
組成物であって、
(a)N,N-ジアルキル脂肪アミド、芳香族ケトン、アルキルケトン、環状ケトン、または芳香族炭化水素溶媒のうちの少なくとも1つに可溶な、5重量パーセント以上の化合物と、
(b)式1によるエーテルケトン溶媒と、を含み、
【化2】
式中、R が、4~8個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基であり、R が、CH またはCH CH であり、xが、0、1、または2であり、R がCH の場合、R が、CH であり、R がCH CH である場合、R が、CH CH であり、
前記成分(a)の化合物は、ビフェントリン、テブコナゾール、2-メチル-4-クロロフェノキシ酢酸、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸、N-(n-ブチル)チオリン酸トリアミド、ジカンバ酸、およびニトラピリンからなる群から選択される、組成物。
【請求項3】
50重量パーセント未満の芳香族炭化水素溶媒を含有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
芳香族炭化水素溶媒を含まない、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
50重量パーセント未満のN,N-ジアルキル脂肪アミド溶媒を含有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項6】
N,N-ジアルキル脂肪アミド溶媒を含まない、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項7】
50重量パーセント未満の芳香族、アルキル、および環状ケトン溶媒を含有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項8】
芳香族、アルキル、および環状ケトン溶媒を含まない、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、最大20重量パーセントの前記1つ以上の構成成分(a)化合物と、10~80重量パーセントの前記エーテルケトン溶媒と、を含む、請求項1~のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、21~50重量パーセントの前記1つ以上の構成成分(a)化合物と、10~50重量パーセントの前記エーテルケトン溶媒と、を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項11】
前記エーテルケトン溶媒が、前記組成物のための唯一の溶媒である、請求項または10に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農産業において乳化性濃縮物として使用できる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
農産業では、極性、低い水溶性、および農薬や肥料添加物などの農薬活性成分の優れた可溶化を有する有機溶媒が利用されている。芳香族炭化水素は、乳化性濃縮物中の溶媒としてよく使用される。これらの芳香族溶媒の多くは、健康に有害な作用を呈し、環境に悪影響を及ぼすことがある。また、多くの乳化性濃縮物は、芳香族炭化水素溶媒に特に可溶ではない、例えば、20%未満の溶解度を呈する、1つ以上の活性成分(AI)を含む。健康および環境への懸念がないか、または少なくとも軽減され、かつ20%以上のAIを可溶化できる代替の溶媒が、継続的な関心となっている。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、いくつかの実施形態において、農業関連用途で使用するための望ましい量の1つ以上の活性成分を可溶化できる代替の溶媒を提供する。いくつかの実施形態において、そのような溶媒(複数可)および活性成分(複数可)を組み込んでいる組成物は、有利には、健康および/または環境への懸念を軽減することができる。
【0004】
一態様では、本発明は、(a)N,N-ジアルキル脂肪アミド、芳香族ケトン、アルキルケトン、環状ケトン、または芳香族炭化水素溶媒のうちの少なくとも1つに可溶である、5重量パーセント以上の化合物と、(b)式1によるエーテルケトン溶媒と、を含む組成物を提供し、
【化1】
式中、Rが、4~8個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基であり、Rが、CHまたはCHCHであり、xが、0、1、または2であり、RがCHである場合、Rが、CHであり、RがCHCHである場合、Rが、CHCHである。
【0005】
これらおよび他の実施形態は、発明を実施するための形態においてより詳細に記載される。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、「少なくとも1つ」、および「1つ以上」は、互換的に使用される。
【0007】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する」という用語、およびそれらの派生語は、任意の追加の構成要素、ステップ、または手順が、具体的に開示されているか否かに関わらず、それらの存在を除外することを意図していない。疑義が生じないようにするために、「含む」という用語の使用を通じて特許請求されるすべての組成物は、矛盾する記載がない限り、1つ以上の追加の化合物を含むことができる。対照的に、「本質的に~から成る」という用語は、実施可能性に必須ではないものを除いて、あらゆる後続の列挙の範囲から、他のいかなる構成成分、ステップ、または手順も除外する。「から成る」という用語は、具体的に描写または列挙されていないいかなる構成要素、ステップ、または手順も除外する。「または」という用語は、別途記載がない限り、列挙された要素を個々に、ならびに任意の組み合わせで指す。単数形の使用には、複数形の使用が含まれ、逆の場合も同じである。
【0008】
また、本明細書において、端点による数値範囲の列挙は、その範囲に包含されるすべての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。本発明の目的のために、当業者が理解することと一致して、数値範囲は、その範囲に含まれる可能性のあるすべての部分範囲を含み、かつサポートすることを意図することを理解されたい。例えば、1~100の範囲は、1.01~100、1~99.99、1.01~99.99、40~60、1~55などを伝達することを意図している。
【0009】
文脈から暗黙のうちに、または当該技術分野において慣習的にそうでないと述べられていない限り、全ての部およびパーセントは重量に基づいており、全てのテスト方法は本開示の出願日現在のものである。
【0010】
化合物(例えば、活性成分)が溶媒に可溶であると特徴付けられる場合(例えば、「N,N-ジアルキル脂肪アミドに可溶な化合物」、「芳香族ケトンに可溶な化合物」、「アルキルケトンに可溶な化合物」、「環状ケトンに可溶な化合物」、「芳香族炭化水素溶媒に可溶な化合物」など)、そのような用語は、化合物が周囲条件、すなわち23℃および大気圧下で特定の溶媒に可溶であることを意味する。この文脈では、溶解度は、1グラム(g)の溶質を溶解させるのに必要な溶媒のミリリットル(mL)でのおおよその体積によって定義される。表1は、一般的な溶解度の説明の概要を提供する。
【表1】
【0011】
化合物(例えば、活性成分)の溶解度を測定するための方法は、特定の温度および時間条件下での攪拌または振とうを用いて、固体溶質を溶媒に溶解させることを含む。次いで、濾過を用いて飽和溶液を固体から分離する。飽和溶液中の溶質の濃度は、紫外(UV)分光法、蒸発光散乱、UV、もしくは質量分析検出を伴う高圧液体クロマトグラフィ、またはNMR分光法を用いた分析によって判定される。
【0012】
「芳香族炭化水素」、「アレーン」、「アリール炭化水素」などの用語は、単環または多環を形成する炭素原子間にσ結合および非局在化π電子を有する炭化水素を意味する。例としては、これらに限定されないが、ベンゼン、トルエン、ナフタレンなどが挙げられる。
【0013】
「炭化水素」などの用語は、炭素原子および水素原子のみから成る化合物を意味する。
【0014】
「溶液」などの用語は、(1)可変、すなわち溶媒中異なる濃度の溶質で存在することができ、(2)すべて、しかし1つではない構成成分が、最も単純な単位、例えば、分子で存在し、かつ(3)物理的方法によって2つ以上の純粋な物質に分離することができる、均質組成物を意味する。本発明の文脈において、溶液は液体組成物を指す。
【0015】
「組成物」などの用語は、2つ以上の成分の混合物またはブレンドを意味する。
【0016】
「乳状液」などの用語は、互いに通常は混和しない(混合できない、またはブレンドできない)、すなわち液体が溶液を形成しない、2つ以上の液体の混合物を意味する。
【0017】
「乳化性濃縮物」などの用語は、濃縮物が、典型的には水中で希釈され、安定した乳状液が形成されている製剤を意味する。「安定した」などの用語は、乳状液が、周囲条件下、例えば、23℃、および大気圧下で24時間にわたり、劣化したとしても、劣化をほとんど呈さないことを意味する。
【0018】
「芳香族炭化水素溶媒を含まない」などの用語は、本発明の組成物の文脈において、組成物が、ピレスロイド、有機ホスフェート、有機サルファイト、カルバメート、シクロヘキサンジオン、イソキサゾール、フェノキシ、クロロフェノキシ酢酸、アニリド、クロロアセトアニリド、クロロメトキシ安息香酸、オキシアセトアニリド、ストロビルリン、トリアゾール、トリアザペンタジエン、合成オーキシン、アリールオキシフェノキシプロピオネート、ベンゾフラン、ピリミジン、フェニルピラゾール、フェニル尿素、ジフェニルエーテル、ヒドロキシベンゾニトリル、チオリン酸トリアミド、およびクロロピリジンなどの芳香族炭化水素可溶性化合物を周囲条件下(23℃および大気圧)で可溶化できる芳香族炭化水素を、(<)5未満、または<4、または<3、または<2、または<1、または<0.5、または<0.1、または<0.05、または<0.01重量%含有することを意味する。組成物中の任意のそのような量の芳香族炭化水素は、典型的には汚染物質として存在し、組成物の形成、維持、および意図された使用にいかなる顕著な影響も有さない。一実施形態では、「芳香族炭化水素溶媒を含まない」とは、組成物が、従来のガスクロマトグラフィ(GC)または高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)によって測定されるとき、いかなる量のそのような溶媒も含有しないことを意味する。
【0019】
「N,N-ジアルキル脂肪アミド溶媒を含まない」などの用語は、本発明の組成物の文脈において、組成物が、ピレスロイド、有機ホスフェート、有機サルファイト、カルバメート、シクロヘキサンジオン、イソキサゾール、フェノキシ、クロロフェノキシ酢酸、アニリド、クロロアセトアニリド、クロロメトキシ安息香酸、オキシアセトアニリド、ストロビルリン、トリアゾール、トリアザペンタジエン、合成オーキシン、アリールオキシフェノキシプロピオネート、ベンゾフラン、ピリミジン、フェニルピラゾール、フェニル尿素、ジフェニルエーテル、ヒドロキシベンゾニトリル、チオリン酸トリアミド、およびクロロピリジンなどの化合物を周囲条件下(23℃および大気圧)で可溶化できるN,N-ジアルキル脂肪アミドを、(<)5未満、または<4、または<3、または<2、または<1、または<0.5、または<0.1、または<0.05、または<0.01重量%含有することを意味する。組成物中の任意のそのような量のN,N-ジアルキル脂肪アミドは、典型的には汚染物質として存在し、組成物の形成、維持、および意図された使用にいかなる顕著な影響も有さない。一実施形態では、「N,N-ジアルキル脂肪アミド溶媒を含まない」とは、組成物が、従来のガスクロマトグラフィ(GC)または高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)によって測定されるとき、いかなる量のそのような溶媒も含有しないことを意味する。
【0020】
「芳香族、アルキル、および環状ケトン溶媒を含まない」などの用語は、本発明の組成物の文脈において、組成物が、ピレスロイド、有機ホスフェート、有機サルファイト、カルバメート、シクロヘキサンジオン、イソキサゾール、フェノキシ、クロロフェノキシ酢酸、アニリド、クロロアセトアニリド、クロロメトキシ安息香酸、オキシアセトアニリド、ストロビルリン、トリアゾール、トリアザペンタジエン、合成オーキシン、アリールオキシフェノキシプロピオネート、ベンゾフラン、ピリミジン、フェニルピラゾール、フェニル尿素、ジフェニルエーテル、ヒドロキシベンゾニトリル、チオリン酸トリアミド、およびクロロピリジンなどの化合物を周囲条件下(23℃および大気圧)で可溶化できる芳香族、アルキル、および環状ケトン溶媒を、(<)5未満、または<4、または<3、または<2、または<1、または<0.5、または<0.1、または<0.05、または<0.01重量%含有することを意味する。組成物中の任意のそのような量の芳香族、アルキル、および環状ケトン溶媒は、典型的には汚染物質として存在し、組成物の形成、維持、および意図された使用にいかなる顕著な影響も有さない。一実施形態では、「芳香族、アルキル、および環状ケトン溶媒を含まない」とは、組成物が、従来のガスクロマトグラフィ(GC)または高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)によって測定されるとき、いかなる量のそのような溶媒も含有しないことを意味する。
【0021】
本発明の実施形態は、概して、化合物(例えば、活性成分)および本明細書にさらに記載されるような式1によるエーテルケトン溶媒に関する。そのような組成物は、農薬用途で使用するための乳化性濃縮物であり得る。例えば、組成物は、農薬、肥料安定剤などの農薬活性成分を含むことができる。一実施形態では、本発明の組成物は、(a)N,N-ジアルキル脂肪アミド、芳香族ケトン、アルキルケトン、環状ケトン、または芳香族炭化水素溶媒のうちの少なくとも1つに可溶である、5重量パーセント以上の化合物と、(b)式1によるエーテルケトン溶媒と、を含み、
【化2】
式中、Rが、4~8個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基であり、Rが、CHまたはCHCHであり、xが、0、1、または2であり、RがCHの場合、Rが、CHであり、RがCHCHである場合、Rが、CHCHである。本発明のいくつかの実施形態では、組成物は、界面活性剤、乳化剤、分散剤、保湿剤、補助剤、酸化防止剤、または着色剤のうちの1つ以上などの1つ以上の添加剤をさらに含む。
【0022】
N,N-ジアルキル脂肪アミド、芳香族ケトン、アルキルケトン、環状ケトン、または芳香族炭化水素溶媒のうちの少なくとも1つに可溶な化合物
本発明の組成物の第1の構成成分は、N,N-ジアルキル脂肪アミド、芳香族ケトン、アルキルケトン、環状ケトン、または芳香族炭化水素溶媒の溶媒うちの少なくとも1つに可溶な化合物である。本明細書中で使用される場合、「アルキルケトン」は、式2に従って定義され、
【化3】
式中、RおよびRが、独立して、炭素および水素原子のみから成る直鎖または分岐アルキル基である。式2の定義によれば、アルキルケトンの唯一の官能基は、ケトンカルボニル基であり、アルキルケトンの唯一のヘテロ原子は、カルボニル酸素原子である。
【0023】
本明細書に特定されるエーテルケトン溶媒は、そのような溶媒の望ましい代替物として役立ち得るため、これらの溶媒のうちの1つ以上における化合物の溶解度は、重要である。これらの化合物は、典型的には、様々な農業用組成物、例えば、農薬、殺虫剤、除草剤、殺菌剤、肥料添加剤などにおける活性成分のうちの少なくとも1つである。これらの化合物は、典型的には水不溶性であり、ピレスロイド、有機ホスフェート、有機サルファイト、カルバメート、シクロヘキサンジオン、イソキサゾール、フェノキシ、クロロフェノキシ酢酸、アニリド、クロロアセトアニリド、クロロメトキシ安息香酸、オキシアセトアニリド、ストロビルリン、トリアゾール、トリアザペンタジエン、合成オーキシン、アリールオキシフェノキシプロピオネート、ベンゾフラン、ピリミジン、フェニルピラゾール、フェニル尿素、ジフェニルエーテル、ヒドロキシベンゾニトリル、チオリン酸トリアミド、およびクロロピリジンを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、N,N-ジアルキル脂肪アミド、芳香族ケトン、アルキルケトン、環状ケトン、または芳香族炭化水素溶媒のうちの少なくとも1つに可溶である化合物は、ビフェントリン、テブコナゾール、2-メチル-4-クロロフェノキシ酢酸、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸、N-(n-ブチル)チオリン酸トリアミド、ジカンバ酸、およびニトラピリンのうちの少なくとも1つである。特定の肥料添加剤には、N-(n-ブチル)チオリン酸トリアミドおよびニトラピリンが含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
N,N-ジアルキル脂肪アミド、芳香族ケトン、アルキルケトン、環状ケトン、芳香族炭化水素化合物のうちの少なくとも1つに可溶な化合物は、組成物の(>)5超、または(≧)10以上、または≧15重量パーセント(重量%)を構成する。いくつかの実施形態では、化合物は、組成物の(≦)20重量%以下を構成する。
【0025】
いくつかの実施形態では、組成物は、より高い濃度の化合物を提供することができる。いくつかのそのような実施形態では、N,N-ジアルキル脂肪アミド、芳香族ケトン、アルキルケトン、環状ケトン、および芳香族炭化水素化合物のうちの少なくとも1つに可溶である化合物は、組成物の(>)20超、または(≧)25以上、≧30、≧35、≧40、または≧45重量パーセント(重量%)を構成する。いくつかの実施形態では、化合物は、組成物の(≦)50重量%以下を構成する。
【0026】
エーテルケトン溶媒およびその他の溶媒
本発明の組成物の第2の成分は、式1によるエーテルケトン溶媒であり、
【化4】
式中、Rが、4~8個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基であり、Rが、CHまたはCHCHであり、xが、0、1、または2であり、RがCHの場合、Rが、CHであり、RがCHCHである場合、Rが、CHCHである。いくつかの実施形態では、Rが、4個または5個の炭素原子を有する直鎖アルキル基であり、Rが、CHであり、xが、0または1であり、Rが、CHである。
【0027】
本明細書に記載される式1のエーテルケトン溶媒は、いくつかの実施形態では、いくつかのクラスの活性成分(例えば、構成成分(a)化合物)に高い溶解度を有利に提供することができる。これは、有利には、単一の乳化性濃縮物製剤における複数の活性成分の製剤を容易にすることができる。
いくつかの実施形態では、上記の式1のエーテルケトン溶媒は、組成物の(≧)10以上、≧20、≧30、≧40、≧50、≧60、≧70、≧75、≧80、≧85、≧90重量パーセント(重量%)を構成する。いくつかの実施形態では、化合物は、組成物の(≦)95以下、≦90、≦85、≦80、≦75、≦70、≦60、または≦50重量%を構成する。
【0028】
いくつかの実施形態では、組成物は、より高濃度の構成成分(a)化合物(例えば、活性成分)を提供することができる。いくつかのそのような実施形態では、上記の式1のエーテルケトン溶媒は、組成物の(≧)10以上、≧20、≧30、≧40、または≧45重量パーセント(重量%)を構成する。いくつかの実施形態では、化合物は、組成物の(≦)50以下、≦45、≦40、≦35、または≦30重量%を構成する。
【0029】
本明細書に記載される式1のエーテルケトン溶媒は、いくつかの実施形態では、いくつかの用途において望ましくない物理的、人的、および/または環境的危険を伴う溶媒の使用を低減または排除することもできる。
【0030】
いくつかの実施形態では、エーテルケトン溶媒は、本発明の組成物における唯一の溶媒である。
【0031】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、(<)50未満、または(≦)40以下、または≦30、または≦20、または≦10、または≦5重量%のN,N-ジアルキル脂肪アミド溶媒を含有する。一実施形態では、本発明の組成物は、N,N-ジアルキル脂肪アミド溶媒を含まない。
【0032】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、(<)50未満、または(≦)40以下、または≦30、または≦20、または≦10、または≦5重量%の芳香族炭化水素溶媒を含有する。一実施形態では、本発明の組成物は、芳香族炭化水素溶媒を含まない。
【0033】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、(<)50未満、または(≦)40以下、または≦30、または≦20、または≦10、または≦5重量%の芳香族ケトン溶媒を含有する。一実施形態では、本発明の組成物は、芳香族ケトン溶媒を含まない。
【0034】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、(<)50未満、または(≦)40以下、または≦30、または≦20、または≦10、または≦5重量%のアルキルケトン溶媒を含有する。一実施形態では、本発明の組成物は、アルキルケトン溶媒を含まない。
【0035】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、(<)50未満、または(≦)40以下、または≦30、または≦20、または≦10、または≦5重量%の環状ケトン溶媒を含有する。一実施形態では、本発明の組成物は、環状ケトン溶媒を含まない。
【0036】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、(<)50未満、または(≦)40以下、または≦30、または≦20、または≦10、または≦5重量%の芳香族、アルキル、および環状ケトン溶媒を含有する。一実施形態では、本発明の組成物は、芳香族、アルキル、および環状ケトン溶媒を含まない。
【0037】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物中のN,N-ジアルキル脂肪アミド溶媒、芳香族ケトン溶媒、アルキルケトン溶媒、環状ケトン溶媒、および芳香族炭化水素溶媒の総量は、(<)50未満、または(≦)40以下、または≦30、または≦20、または≦10、または≦5重量%である。一実施形態では、本発明の組成物は、N,N-ジアルキル脂肪アミド溶媒、芳香族ケトン溶媒、アルキルケトン溶媒、環状ケトン溶媒、および芳香族炭化水素溶媒を含まない。
【0038】
潜在的な添加剤
一実施形態において、本発明の組成物は3つ以上の構成成分を含むことができる。一実施形態において、本発明の組成物は、界面活性剤、乳化剤、分散剤、湿潤剤、酸化防止剤、着色剤、補助剤、または他の添加剤のうちの1つ以上を含む。
【0039】
本発明の有用な界面活性剤には、アニオン性、非イオン性、またはカチオン性の特徴があり得、湿潤剤、懸濁化剤、消泡剤および脱泡剤として、ならびに他の機能として機能し得る。アニオン性および非イオン性界面活性剤のブレンドが一般に利用される。農業用製剤において従来使用される界面活性剤は、Encyclopedia of Surfactants,Vol.I-III,Chemical Publishing Co.,New York,1980-81およびMcCutcheon’s Detergents and Emulsifiers Annual,MC Publishing Corp.,Ridgewood,New Jersey,1998に記載されている。典型的な界面活性剤には、これらに限定されないが、ノニルフェノール-C18エトキシレートなどのアルキルフェノール-アルキレンオキシド付加生成物、トリデシルアルコール-C16エトキシレートなどのアルコール-アルキレンオキシド付加生成物、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドなどの第四級アミン、モノおよびジアルキルリン酸エステルの塩、ならびに固体または液体の有機シリコーンが含まれる。有用な有機シリコーン界面活性剤の例としては、Evonik AGから入手可能なTEGOSTAB B-8462、B-8404、およびB-8871、ならびにThe Dow Chemical Companyから入手可能なVORASURF(商標)DC-198およびDC-5043界面活性剤、ならびにMomentive Performance MaterialsのNIAX L-618およびNIAX L-627界面活性剤などの市販のポリシロキサン/ポリエーテルコポリマーが挙げられる。
【0040】
代表的な乳化剤には、これらに限定されないが、ドデシルベンゼンスルホン酸、アルキルアリールスルホン酸、およびアルキルナフタレンスルホン酸のアルカリ土類塩、アルカリ金属塩、およびアミン塩と、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ジイソオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ならびにエーテルサルフェートのアミン塩などのアニオン性乳化剤が含まれる。非イオン性乳化剤には、脂肪酸アルカノールアミド;エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドと、脂肪族アルコール、脂肪族アミン、脂肪酸エステル、および脂肪酸アミドとの縮合生成物;エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドと、直鎖または分岐第一級アルコールとの縮合生成物;エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドと、直鎖または分岐第二級アルコールとの縮合生成物;ソルビタン脂肪酸エステルなどの多価アルコールエステルの脂肪エステル;エチレンオキシドと、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの多価アルコールエステルの脂肪エステルとの縮合生成物;エトキシル化ラノリンアルコール;エトキシル化ラノリン酸が含まれる。カチオン性乳化剤には、脂肪族モノ-、ジ-、またはポリアミンアセテート、およびオレエートが含まれる。予めブレンドされた生成物として入手可能なアニオン性および非イオン性乳化剤の組み合わせ生成物としては、TENSIOFIX B.7416、B.7438、およびB.7453、ならびにATLOX4851Bおよび4855Bが挙げられる。
【0041】
代表的な分散剤には、これらに限定されないが、非イオン性界面活性剤;プロピレンオキシド、次いでエチレンオキシドをプロピレングリコール、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロックコポリマーに順次添加することによって調製されたものなどの湿潤剤;ブタノールエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドコポリマーなどのエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドと、直鎖状アルコールとの縮合生成物が含まれる。
【0042】
代表的な湿潤剤には、これらに限定されないが、プロピレングリコール、グリセロール、およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0043】
代表的な補助剤には、これらに限定されないが、スプレッダー、石油および植物由来の油および溶媒、湿潤剤が含まれる。乳化性濃縮物の組成物において有用な補助剤は、Compendium of Herbicide Adjuvants,9th Edition,edited by Bryan Young,Dept.of Plant,Soil,and Agricultural Systems,Southern Illinois University,MC-4415,1205 Lincoln Dr.,Carbondale,IL 62901に記載されている。補助剤の例としては、これらに限定されないが、アルキル多糖類およびブレンド、アミンエトキシレート、ポリエチレングリコールエステル、エトキシル化アルキルアリールリン酸エステル、パラフィン油、園芸用スプレー油、メチル化ナタネ油、メチル化大豆油、精製植物油、2-エチルへキシルステアレート、オレイン酸n-ブチル、ジオレイン酸プロピレングリコール、ミリスチン酸イソプロピル、ならびにエチレンビニル酢酸ターポリマーが挙げられる。
【0044】
本発明の組成物中の添加剤の総量は、存在する場合、組成物の(>)0超、または(≧)0.5以上、または≧1、または≧1.5重量パーセント(重量%)を構成する。典型的には、組成物中の添加剤の総量は、組成物の(≦)15以下、または≦10、または≦5、または≦3重量%を構成する。一実施形態では、組成物中の添加剤の総量は、組成物の>0~≦15、または≧0.5~≦10、または≧1~≦5重量%を構成する。
【0045】
組成物
一実施形態では、本発明の組成物は、(a)N,N-ジアルキル脂肪アミド、芳香族ケトン、アルキルケトン、環状ケトン、または芳香族炭化水素溶媒のうちの少なくとも1つに可溶である、5重量パーセント以上の化合物と、(b)式1によるエーテルケトン溶媒と、を含み、
【化5】
式中、Rが、4~8個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基であり、Rが、CHまたはCHCHであり、xが、0、1、または2であり、RがCHの場合、Rが、CHであり、RがCHCHである場合、Rが、CHCHである。いくつかの実施形態では、組成物は、最大20重量パーセントの1つ以上の構成成分(a)化合物および10~80重量パーセントのエーテルケトン溶媒を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、5~20重量パーセントの1つ以上の構成成分(a)化合物および10~80重量パーセントのエーテルケトン溶媒を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、5~20重量パーセントの1つ以上の構成成分(a)化合物および80~95重量パーセントのエーテルケトン溶媒を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、21~50重量パーセントの1つ以上の構成成分(a)化合物および10~50重量パーセントのエーテルケトン溶媒を含む。いくつかの実施形態では、エーテルケトン溶媒は、組成物のための唯一の溶媒である。
【0046】
いくつかの実施形態では、組成物は、50重量パーセント未満の芳香族炭化水素溶媒を含む。組成物は、いくつかの実施形態では、芳香族炭化水素溶媒を含まない。
【0047】
いくつかの実施形態では、組成物は、50重量パーセント未満のN,N-ジアルキル脂肪アミド溶媒を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、N,N-ジアルキル脂肪アミド溶媒を含まない。
【0048】
いくつかの実施形態では、組成物は、50重量パーセント未満の芳香族、アルキル、および環状ケトン溶媒を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、芳香族、アルキル、および環状ケトン溶媒を含まない。
【0049】
N,N-ジアルキル脂肪アミド、芳香族ケトン、アルキルケトン、環状ケトン、または芳香族炭化水素溶媒のうちの少なくとも1つに可溶である構成成分(a)化合物に関して、いくつかの実施形態では、構成成分(a)化合物は、ピレスロイド、有機ホスフェート、有機サルファイト、カルバメート、シクロヘキサンジオン、イソオキサゾール、フェノキシ、クロロフェノキシ酢酸、アニリド、クロロアセトアニリド、クロロメトキシ安息香酸、オキシアセトアニリド、ストロビルリン、トリアゾール、トリアザペンタジエン、合成オーキシン、アリールオキシフェノキシプロピオネート、ベンゾフラン、ピリミジン、フェニルピラゾール、フェニル尿素、ジフェニルエーテル、ヒドロキシベンゾニトリル、チオリン酸トリアミド、およびクロロピリジンのうちの少なくとも1つである。いくつかの実施形態では、構成成分(a)の化合物は、ビフェントリン、テブコナゾール、2-メチル-4-クロロフェノキシ酢酸、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸、N-(n-ブチル)チオリン酸トリアミド、ジカンバ酸、およびニトラピリンのうちの少なくとも1つである。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態では、組成物は、界面活性剤、乳化剤、分散剤、保湿剤、補助剤、酸化防止剤、または着色剤のうちの1つ以上をさらに含み、界面活性剤、乳化剤、分散剤、保湿剤、補助剤、酸化防止剤、または着色剤のうちの1つ以上が、組成物の0超~15重量パーセント以下を構成する。
【0051】
本発明の組成物は、乳化性濃縮物として調製することができる。そのような乳化性濃縮物は、混合または高せん断混合用の攪拌機を有する、容器またはタンク内で調製することができる。利用されるすべての機器および配管は、典型的には乾燥しており、湿りまたは水の残留物がない。乳化性濃縮物の生成物を生成する前に、プロセスシステムから空気を排出するために窒素が使用され得る。活性成分、肥料添加剤、溶媒、界面活性剤、乳化剤、分散剤、湿潤剤、補助剤、酸化防止剤、または着色剤を含む組成物の構成成分を、単一構成成分、またはグループとして、攪拌しながら、順次プロセス容器に加える。乳化性濃縮物の構成成分は、液体、固体、または溶融形態で加えることができる。組成物は、典型的には25~30℃の制御された温度で、1~2時間、または均質な溶液が得られるまで混合される。場合によっては、高温、例えば、30~80℃を使用して、均質な溶液を形成する。場合によっては、乳化性濃縮物の溶液は、GAFまたは同様のフィルターを使用して濾過することができる。
【0052】
ここで、本発明のいくつかの実施形態を、以下の実施例で詳細に説明する。
【実施例
【0053】
以下の実施例は、本発明を例示するために与えられ、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。すべての部およびパーセンテージは、特に指示がない限り重量による。
以下の溶媒を、以下の実施例で評価する。
【表2】
【0054】
ケトン(R1=n-ブチル、R=R=CH、x=0)、PnPentケトン(R=n-ペンチル、R=R=CH、x=0)、PnOケトン(R=n-オクチル、R=R=CH、x=0)、DPnBケトン(R=n-ブチル、R=R=CH、x=1)、DPnPentケトン(R=n-ペンチル、R=R=CH、x=1)、DPnHケトン(R=n-ヘキシル、R=R=CH、x=1)、TPnBケトン(R=n-ブチル、R=R=CH、x=2)、BnBケトン(R=n-ブチル、R=R=CHCH、x=0)、BnHケトン(R=n-ヘキシル、R=R=CHCH、x=0)、BnOケトン(R=n-オクチル、R=R=CHCH、x=0)、DBnBケトン(R=n-ブチル、R=R=CHCH、x=1)、およびDBnHケトン(R=n-ヘキシル、R=R=CHCH、x=1)は、式1に該当するエーテルケトン溶媒であり、式中、Rが、4~8個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基であり、Rが、CHまたはCHCHであり、xが、0、1、または2であり、RがCHである場合、Rが、CHであり、RがCHCHである場合、Rが、CHCHである(総称して、「エーテルケトン溶媒」)。そのようなエーテルケトン溶媒は各々、本発明の様々な実施形態で使用することができる。表2で供給元が「実験」であるという表記は、溶媒が以下に記載されるように調製されたことを示している。
【0055】
エーテルケトン溶媒の調製
表2のエーテルケトン溶媒は、二級アルコールの酸化に関して公開されている文献の手順(Org.Lett.2001,3,3041)を採用することによって調製した。すべてのエーテルケトンは、使用前に蒸留され、GC分析で測定したとき、典型的には95%を超える純度である。ある特定の高沸点エーテルケトン溶媒(DPnHケトン、BnOケトン、DBnHケトン、およびTPnBケトン)は、GC分析で測定したときに、やや劣るが、それでも85%超の純度である。
【0056】
1-(ブトキシ)-2-プロパノン(PnBケトン)の調製:
攪拌棒および熱電対を備えた三角フラスコに、1-ブトキシ-2-プロパノール(125g、656mmol)、ジクロロメタン(657mL)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル(「TEMPO」)(1.03g、6.57mmol)を入れ、氷浴を使用して5℃に冷却する(温度は、温度計で監視した)。トリクロロイソシアヌル酸(160g、689mmol)を、スパチュラを使用して1時間かけて少しずつ加える。混合物を0℃でさらに1時間撹拌し、次に室温に温めて、さらに2時間撹拌する。混合物を濾過し、5℃に冷却する。200mLの飽和炭酸ナトリウム水溶液を加え、有機層を分離する。さらに200mLの飽和炭酸ナトリウム水溶液を、20mLの飽和亜硫酸ナトリウム水溶液と共に加える。有機層を分離し、塩水(2×600mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させる。濾過後、混合物を黄色がかった油(103g)に濃縮する。油を真空下(約1×10-2トール)で分別蒸留して、透明な黄色の油(86g)を得る。GCおよびNMR分光法による分析は、純度>90%での生成物の単離を立証する。
【0057】
1-(ペンチルオキシ)-2-プロパノン(PnPentケトン)の調製:
三角フラスコは、磁気攪拌棒および熱電対を備え、1-(ペンチルオキシ)-2-プロパノール(160.00g、968.34mmol)、ジクロロメタン(485mL)、およびTEMPO(1.52g、9.70mmol)を入れる。明るい橙色の溶液を氷浴により5℃に冷却した。トリクロロイソシアヌル酸(237.43g、1021.64mmol)を少しずつ加えて、反応の発熱を制御する。得られた橙色の混合物を氷浴により0℃で1時間、次に室温でさらに2時間撹拌する。混合物を濾過し、得られた橙色の溶液を、氷浴により5℃に冷却する。炭酸ナトリウム水溶液の飽和溶液(200mL)を加える。有機相を分離し、追加の飽和炭酸ナトリウム水溶液(200mL)および亜硫酸ナトリウム水溶液の飽和溶液(20mL)と共に室温で一晩撹拌する。有機相を分離し、塩水(2×600mL(1回分))で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、回転蒸発により濃縮して、黄色の粗油(147.78g)を得る。材料を真空下(約1×10-2トール)で分別蒸留して、淡黄色の油のうち淡黄色に色づいた油(96.08g、GC分析で測定したときに純度>98.6%)を得る。
【0058】
1-(オクチルオキシ)-2-プロパノン(PnOケトン)の調製
三角フラスコには、磁気攪拌棒および熱電対が備えられている。フラスコに、1-(オクチルオキシ)-2-プロパノール(180.00g、955.87mmol)、ジクロロメタン(480mL)、およびTEMPO(1.50g、9.58mmol)を入れる。薄い橙色の溶液を、氷浴により5℃(温度は、温度計で監視した)に冷却する。トリクロロイソシアヌル酸(234.28g、1008.09mmol)をスパチュラで少しずつ加えて、温度を制御する。得られた橙色の混合物を氷浴により0℃で1時間撹拌し、次に氷浴を取り外し、混合物を室温でさらに2時間撹拌する。混合物を濾過し、得られた橙色の溶液を氷浴で5℃に冷却する。炭酸ナトリウム水溶液の飽和溶液(200mL)を加える。有機相を分離し、追加の飽和炭酸ナトリウム水溶液(200mL)および亜硫酸ナトリウム水溶液の飽和溶液(20mL)と共に室温で一晩撹拌する。有機相を分離し、塩水(2×600mL(1回分))で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、回転蒸発により濃縮して、黄色の粗油(140.78g)を得る。材料を真空下(1×10-2トール)で蒸留して、GCで純度>98.3%であった82.5gを得る。
【0059】
1-((1-(ブトキシ)-2-プロパニル)オキシ)-2-プロパノン(DPnBケトン)の調製:
ドラフト内で、2Lの三角フラスコに1-((1-(ブトキシ)-2-プロパニル)オキシ)-2-プロパノール(225mL、1.05mol)、ジクロロメタン525mL)、TEMPO(1.64g、10.51mmol)を入れ、氷浴を使用して5℃に冷却する(温度は、温度計で監視した)。トリクロロイソシアヌル酸(269.3g、1.10mol)を、スパチュラを使用して1時間かけて少しずつ加える。混合物を0℃でさらに1時間撹拌し、次に室温に温め、さらに1時間撹拌する。混合物を濾過し、5℃に冷却する。200mLの飽和炭酸ナトリウム水溶液を加え、有機層を分離する。さらに200mLの飽和炭酸ナトリウム水溶液を、20mLの飽和亜硫酸ナトリウム水溶液と共に加える。有機層を分離し、塩水(2×600mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させる。濾過後、混合物を黄色がかった油(160g)に濃縮する。油を真空下(約1×10-2トール)で分別蒸留して、無色の中間留分(84.0g、GC分析で測定したときに純度>98%)を得る。
【0060】
1-((1-(ペンチルオキシ)-2-プロパニル)オキシ)-2-プロパノン(DPnPentケトン)の調製:
三角フラスコには、磁気攪拌棒および熱電対が備えられている。フラスコに、1-((1-(ペンチルオキシ)-2-プロパニル)オキシ)-2-プロパノール(160.00g、963.06mmol)、ジクロロメタン(350mL)、およびTEMPO(1.09g、7.00mmol)を入れる。薄い橙色の溶液を氷浴により5℃(温度は、温度計で監視した)に冷却する。トリクロロイソシアヌル酸(170.23g、732.49mmol)をスパチュラで少しずつ加えて、温度を制御する。得られた橙色の混合物を氷浴により0℃で1時間撹拌し、次に氷浴を取り外し、混合物を室温でさらに2時間撹拌する。混合物を濾過し、得られた橙色の溶液を5℃に冷却する。炭酸ナトリウム水溶液の飽和溶液(200mL)を加える。有機相を分離し、追加の飽和炭酸ナトリウム水溶液(200mL)および亜硫酸ナトリウム水溶液の飽和溶液(20mL)と共に室温で一晩撹拌する。有機相を分離し、塩水(2×600mL(一回分))で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、回転蒸発により濃縮して、黄色の粗油(144.05g)を得る。材料を真空下(1×10-2トール)で分別蒸留して、橙黄色の油(49.17g、GCで測定したときに純度>96.4)を得る。
【0061】
1-((1-(ヘキシルオキシ)-2-プロパニル)オキシ)-2-プロパノン(DPnHケトン)の調製:
三角フラスコは、磁気攪拌棒および熱電対が備えられている。フラスコに、1-((1-(ヘキシルオキシ)-2-プロパニル)オキシ)-2-プロパノール(182.85g、837.44mmol)、ジクロロメタン(418mL)、およびTEMPO(1.31g、8.38mmol)を入れる。明るい橙色の溶液を5℃に冷却する。トリクロロイソシアヌル酸(206.05g、886.62mmol)を少しずつ加えて、反応の発熱を制御する。得られた橙色の混合物を氷浴により0℃で1時間撹拌し、次に氷浴を取り外し、混合物を室温でさらに2時間撹拌する。混合物を濾過し、得られた橙色の溶液を、氷浴により5℃に冷却する。炭酸ナトリウム水溶液の飽和溶液(200mL)を加える。有機相を分離し、追加の飽和炭酸ナトリウム水溶液(200mL)および亜硫酸ナトリウム水溶液の飽和溶液(20mL)と共に室温で一晩撹拌する。有機相を分離し、塩水で洗浄し(2x600mL(1回分))、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、回転蒸発により濃縮して、橙黄色の粗油(172.50g)を得る。材料を真空下(約1×10-2トール)で蒸留して、GCで純度>90.2%である29.4gの生成物を得る。
【0062】
1-((1-((1-ブトキシ-2-プロパニル)オキシ)-2-プロパニル)オキシ)-2-プロパノン(TPnBケトン)の調製:
三角フラスコには、磁気攪拌棒および熱電対が備えられている。フラスコに1-((1-((1-ブトキシ-2-プロパニル)オキシ)-2-プロパニル)オキシ)-2-プロパノール(180.00g、724.75mmol)、ジクロロメタン(365mL)、およびTEMPO(1.14g、7.30mmol)を入れる。明るい橙色の溶液を5℃に冷却する。トリクロロイソシアヌル酸(177.85g、765.28mmol)を少しずつ加えて、反応の発熱を最小限に抑える。得られた橙色の混合物を氷浴により0℃で1時間撹拌し、混合物を室温でさらに2時間撹拌する。混合物を濾過し、得られた橙色の溶液を5℃に冷却する。炭酸ナトリウム水溶液の飽和溶液(200mL)を加える。有機相を分離し、追加の飽和炭酸ナトリウム水溶液(200mL)および亜硫酸ナトリウム水溶液の飽和溶液(20mL)と共に室温で一晩撹拌する。混合物を室温で一晩撹拌する。有機相を分離し、塩水(2x600mL(1回分))で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄色の粗油(137.48g)を得る。材料を真空下(1×10-2トール)で分別蒸留して、GCで純度90.3%である、13.65gの濃い黄色の油を得る。
【0063】
1-ブトキシ-2-ブタノン(BnBケトン)の調製:
三角フラスコには、磁気攪拌棒および熱電対が備えられている。フラスコに、1-ブトキシ-2-ブタノール(160.00g、1094.17mmol)、ジクロロメタン(550mL)、およびTEMPO(1.71g、10.95mmol)を入れる。明るい橙色の溶液を氷浴により5℃に冷却する。トリクロロイソシアヌル酸(267.35g、1150.39mmol)を約1時間かけて少しずつ加えて、反応の発熱を最小限に抑える。得られた橙色の混合物を氷浴中で1時間、室温でさらに2時間撹拌する。混合物を濾過し、得られた橙色の溶液を5℃に冷却する。炭酸ナトリウム水溶液の飽和溶液(200mL)を加え、混合物を10分間激しく撹拌する。有機相を分離し、追加の飽和炭酸ナトリウム水溶液(200mL)および亜硫酸ナトリウム水溶液の飽和溶液(20mL)と共に室温で一晩撹拌する。有機相を分離し、塩水で洗浄し(2x600mL(1回分))、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄色の油(150.95g)を得る。材料を真空下(約1×10-2トール)で分別蒸留して、かすかに黄色の油(96.19g、純度>99%)を得る。
【0064】
1-(ヘキシルオキシ)-2-ブタノン(BnHケトン)の調製:
三角フラスコは、磁気攪拌棒および熱電対が備えられている。フラスコに、1-(ヘキシルオキシ)-2-ブタノール(168.80g、968.56mmol)、ジクロロメタン(485mL)、およびTEMPO(1.53g、9.77mmol)を入れる。明るい橙色の溶液を5℃に冷却する。トリクロロイソシアヌル酸(237.00g、1019.79mmol)を少しずつ加えて、反応の発熱を制御する。得られた橙色の混合物を氷浴により0℃で1時間撹拌し、次に氷浴を取り外し、混合物を室温でさらに2時間撹拌する。混合物を濾過し、得られた橙色の溶液を氷浴により5℃に冷却する。炭酸ナトリウム水溶液の飽和溶液(200mL)を加える。有機相を分離し、追加の飽和炭酸ナトリウム水溶液(200mL)および亜硫酸ナトリウム水溶液の飽和溶液(20mL)と共に一晩撹拌する。有機相を分離し、塩水(2x600mL(1回分))で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄色の粗油(170.30g)を得る。材料を真空下(1×10-2トール)で分別蒸留して、GCで純度>97.8%である、110.6gの生成物を得る。
【0065】
1-(オクチルオキシ)-2-ブタノン(BnOケトン)の調製:
三角フラスコには、磁気攪拌棒および熱電対が備えられている。フラスコに、1-(オクチルオキシ)-2-ブタノール(165.40g、817.43mmol)、ジクロロメタン(410mL)、およびTEMPO(1.28g、8.22mmol)を入れる。明るい橙色の溶液を5℃に冷却する。トリクロロイソシアヌル酸(200.70g、863.60mmol)をスパチュラで少しずつ加えて、反応の発熱を制御する。得られた橙色の混合物を0℃で1時間、次に室温でさらに2時間撹拌する。混合物を濾過し、得られた橙色の溶液を氷浴により5℃に冷却する。炭酸ナトリウム水溶液の飽和溶液(200mL)を加える。有機相を分離し、追加の飽和炭酸ナトリウム水溶液(200mL)および亜硫酸ナトリウム水溶液の飽和溶液(20mL)と共に室温で一晩撹拌する。有機相を分離し、塩水(2x600mL(1回分))で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄色の粗油(172.60g)を得る。材料を真空下(約1×10-2トール)で分別蒸留して、GCで純度>94.8%である、38.38gの黄色の油を得る。
【0066】
1-((1-ブトキシ-2-ブタニル)オキシ)-2-ブタノン(DBnBケトン)の調製:
三角フラスコには、磁気攪拌棒および熱電対が備えられている。フラスコに、1-((1-ブトキシ-2-ブタニル)オキシ)-2-ブタノール(108.32g、496.11mmol)、ジクロロメタン(250mL)、およびTEMPO(0.78g、4.98mmol)を入れる。明るいオレンジ色の溶液を5℃に冷却する。トリクロロイソシアヌル酸(121.26g、521.77mmol)をスパチュラで少しずつ加えて、温度を制御する。得られた橙色の混合物を氷浴により0℃で1時間撹拌し、次に氷浴を取り外し、混合物を室温でさらに2時間撹拌する。混合物を濾過し、得られた橙色の溶液を氷浴により5℃に冷却する。炭酸ナトリウム水溶液の飽和溶液(100mL)を加える。得られた黄色の混合物を、相分離のために分液漏斗に移す。相を分離する。有機相を分離し、追加の飽和炭酸ナトリウム水溶液(200mL)および亜硫酸ナトリウム水溶液の飽和溶液(20mL)と共に室温で一晩撹拌する。有機相を分離し、塩水で洗浄し(2×300mL(1回分))、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、回転蒸発により濃縮して、黄色の粗油(111.69g)を得る。材料を真空下(1×10-2トール)で分別蒸留して、GCで純度>94.4%である、44.22gの淡黄橙色の油を得る。
【0067】
1-((1-(ヘキシルオキシ)-2-ブタニル)オキシ)-2-ブタノン(DBnHケトン)の調製:
三角フラスコには、磁気攪拌棒および熱電対が備えられている。フラスコに、1-((1-(ヘキシルオキシ)-2-ブタニル)オキシ)-2-ブタノール(168.00g、681.85mmol)、ジクロロメタン(340mL)、およびTEMPO(1.07g、6.85mmol)を入れる。明るい橙色の溶液を5℃に冷却する。トリクロロイソシアヌル酸(167.55g、720.96mmol)を少しずつ加えて、反応の発熱を制御する。得られた橙色の混合物を0℃で1時間、室温でさらに2時間撹拌する。混合物を濾過し、得られた橙色の溶液を5℃に冷却する。炭酸ナトリウム水溶液の飽和溶液(200mL)を加える。有機相を分離し、追加の飽和炭酸ナトリウム水溶液(200mL)および亜硫酸ナトリウム水溶液の飽和溶液(20mL)と共に室温で一晩撹拌する。有機相を分離し、塩水(2x600mL(1回分))で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄色の粗油(163.87g)を得る。材料を真空下(1×10-2トール)で分別蒸留して、GCで純度88.7%である、11.22gの茶橙色の油を得る。
【0068】
比較溶媒
Aromatic150(芳香族炭化水素溶媒)、AMD810(N,N-ジアルキル脂肪アミド)、アセトフェノン(芳香族ケトン)、シクロヘキサノン(環状ケトン)、およびECOSOFT(商標)Solvent IK(アルキルケトン)は、比較溶媒である(総称して、「比較溶媒」)。
【0069】
エーテルケトン溶媒および比較溶媒中の活性成分の溶解度は、NMR分光法を使用して既定の溶媒中の既定の活性成分の飽和溶液で(後述の方法A)、または既定の溶媒中の既定の活性成分の濃度ラダーの視覚評価によって(後述の方法B)判定する。
【0070】
方法A:NMR分光法による溶解度判定
溶媒中の既定の活性成分の飽和溶液は、最初にバイアル瓶内で活性成分(0.8g)と溶媒(1.5mL)とを混合し、少なくとも24時間激しく攪拌することによって調製する。均質な溶液が得られた場合、かなりの量の固体が溶液からなくなるまで、追加の活性成分を加える。次いで、混合物(約0.25mL)をPTFEシリンジフィルター(0.45μm)で、C(0.5mL)を含有するNMRチューブに濾過する。NMRチューブに蓋をし、オートサンプラーを備えたVarian400NMR分光計で分析する。プロトンNMRスペクトルは、重水素化された溶媒の残留プロトンピークを基準にしている。定量に使用されるスペクトルは、パルス間の180秒の遅延で収集される。スペクトルは、MestReNova(バージョン11.0.4-18998)でベースライン(バーンスタイン多項式)によって処理し、各スペクトルを位相補正してから、すべてのよく分解された溶媒とアクティブ共鳴とを積分する。活性成分の重量パーセントは、次の式で推定される。
【数1】
可能であれば、いくつかのよく分解されたピークを、溶媒および活性成分の両方に使用し、平均して、測定のばらつきの推定値を提供する。
【0071】
方法B:目視評価による溶解度判定
4ミリリットル(mL)のバイアル瓶に、活性成分(10~50重量%)、撹拌棒、および溶媒(90~50重量%)を入れた。バイアル瓶に蓋をして、テープで密封する。バイアル瓶をバイアル瓶ラックに固定し、実験室用振とう器上で21℃の周辺実験室温度および51%の湿度で24時間振とうする。24時間後、各試料セットを、固体の溶解度について評価する。
【0072】
実施例1
エーテルケトン溶媒および比較溶媒における、ニトラピリン、ジカンバ酸、n-(N-ブチル)チオリン酸トリアミド(「NBPT」)、および2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(「2,4-D酸」)の4つの活性成分の溶解度を評価する。これらの活性成分は、農業用途で一般的に使用されている。結果を、溶解度を判定するために使用した方法と共に表3に示す。
【表3】
【0073】
エーテルケトン溶媒は、アルキルケトン溶媒であるECOSOFT(商標)Solvent IKと比較して、ニトラピリン、ジカンバ酸、NBPT、および2,4-D酸を溶媒中のより高い重量パーセントの活性成分で可溶化できる。ECOSOFT(商標)Solvent IKは、水への溶解度が非常に低い高引火点溶媒(可燃性液体)である。
【0074】
エーテルケトン溶媒は、芳香族炭化水素溶媒であるAromatic150と比較して、ジカンバ酸、NBPT、および2,4-D酸を溶媒中のより高い重量パーセントの活性成分で可溶化できる。Aromatic150は、水と混和しない高引火点溶媒(可燃性液体)である。Aromatic150は、その使用に関連する健康および環境への懸念があることが知られている。
【0075】
エーテルケトン溶媒は、アセトフェノンと比較して、活性成分の同等(ニトラピリン)から改善された(ジカンバ酸、NBPT)溶解度を有する。アセトフェノンは、溶媒の水への溶解度が低い高引火点化合物(可燃性液体)である。アセトフェノンは20.5℃で溶けるため、寒冷な気候または温度制御のない環境での取り扱いが困難である。アセトフェノンは、その使用に関連する健康への懸念があることが知られている。
【0076】
エーテルケトン溶媒は、ニトラピリン、ジカンバ酸、およびNBPTの良好(30重量%)から優れた(>40重量%)溶解度を提供し、環状ケトン溶媒であるシクロヘキサノンに見いだされる溶解度に近いづいている。シクロヘキサノンは、エーテルケトン溶媒に比べて水への溶解度が高い引火性液体である。シクロヘキサノンは、その使用に関連する健康への懸念があることが知られている。
【0077】
AMD810(N,N-ジアルキル脂肪アミド)は、農薬の乳化性濃縮物の製剤に使用される、市販の水溶性の低い極性の比較溶媒である。AMD810は、一般に、製剤中に高濃度で様々な活性成分を溶解できるため、そのような農業用途における基準比較溶媒である。エーテルケトン溶媒は、AMD810と同様の溶解度をニトラピリンおよびNBPTに提供する。エーテルケトン溶媒は、ジカンバ酸に優れた溶解度(>50重量%)を提供する。
【0078】
実施例2
2-メチル-4-クロロフェノキシ酢酸(「MCPA」)、テブコナゾール、およびビフェントリンの3つの活性成分の溶解度を評価する。これらの活性成分は、農業用途で一般的に使用されている。結果を、溶解度を判定するために使用した方法と共に表4に示す。
【表4】
【0079】
エーテルケトン溶媒は、アルキルケトン溶媒であるECOSOFT(商標)Solvent IKと比較して、MCPAおよびテブコナゾールを溶媒中の活性成分のより高い重量パーセントで可溶化できる。エーテルケトン溶媒のいくつかは、ECOSOFT(商標)Solvent IKと比較して、ビフェントリンに同等以上の溶解度を提供できる。
【0080】
エーテルケトン溶媒は、芳香族炭化水素溶媒であるAromatic150と比較して、MCPAおよびテブコナゾールを溶媒中の活性成分のより高い重量パーセントで可溶化できる。いくつかのエーテルケトン溶媒は、Aromatic150と比較して、ビフェントリンの同等の溶解度を提供する。
【0081】
エーテルケトン溶媒は、アセトフェノンと同等のMCPAの溶解度を提供する。エーテルケトン溶媒のいくつかは、アセトフェノンと比較して、テブコナゾールおよびビフェントリンの同等の溶解度を提供する。
【0082】
エーテルケトン溶媒は、環状ケトンであるシクロヘキサノンと比較して、MCPAおよびテブコナゾールに優れた溶解度を提供する。いくつかのエーテルケトン溶媒は、シクロヘキサノンと比較して、ビフェントリンに優れた溶解度を提供する。
【0083】
実施例3
ある特定のエーテルケトン溶媒の水への溶解度は、攪拌棒を備えた風袋計量済みのバイアル瓶に水(約10~50グラム)を加えることによって判定する。水の重さを記録する。特定された溶媒を10μLのシリンジを使用して、溶媒の液滴が水に懸濁しているように混合物が見えるまで滴下する。混合物を再び秤量し、水中のエーテルケトン溶媒の重量パーセントでの溶解度を計算する。
【0084】
ある特定のエーテルケトン溶媒への水の溶解度も評価する。バイアル瓶に、5グラムの特定された溶媒を入れ、3Åの活性化分子ふるい(約300mg)を加える。バイアル瓶に蓋をし、溶媒を数日間放置して乾燥させる。混合物は0.2μmのシリンジフィルターを使用して風袋計量済みの20mLのバイアル瓶に濾過し、重量を記録する。次に、水滴がバイアル瓶の底にあるように混合物が見えるまで、10μLのシリンジを使用して水を加える。混合物を再び秤量し、エーテルケトン溶媒中の水の重量パーセントでの溶解度を計算する。実験室内の温度は、水溶度の測定時には30℃である。
【0085】
選択された比較溶媒化学物質の水への溶解度および選択された比較溶媒化学物質内の水の溶解度は、公開されている文献から得た。HALLCOMID M-8-10は、Stepanから入手可能な市販のN,N-ジアルキル脂肪アミド溶媒である。
結果を表5に示す。
【表5】
【0086】
エーテルケトン溶媒の水への溶解度は低く、<0.5重量%であり、それらが乳化性濃縮物の組成物などの農業関連用途で使用するための適切な水溶度を有することを示す。エーテルケトン溶媒は、比較のN,N-ジアルキル脂肪アミド溶媒であるHALLCOMID M-8-10に匹敵する水溶度を有する。エーテルケトン溶媒の水への溶解度は、芳香族ケトンアセトフェノンよりも低く、環状ケトンシクロヘキサノンよりもはるかに低い。エーテルケトン溶媒への水の溶解度は非常に低く、<0.2重量%である。エーテルケトン溶媒への水の溶解度は、比較のアルキルケトン溶媒であるECOSOFT(商標)Solvent IKよりも低く、比較のN,N-ジアルキル脂肪アミド溶媒であるHALLCOMID M-8-10よりもはるかに低い。溶媒への水の溶解度が低いことは、活性成分の沈殿または結晶化に対する乳化性濃縮物の組成物の安定性を改善できるため、乳化性濃縮物の組成物などの農業関連用途で使用される溶媒にとって有益な特性である。
本願は以下の態様にも関する。
(1) 組成物であって、
(a)N,N-ジアルキル脂肪アミド、芳香族ケトン、アルキルケトン、環状ケトン、または芳香族炭化水素溶媒のうちの1つに可溶な、5重量パーセント以上の化合物と、
(b)式1によるエーテルケトン溶媒と、を含み、
【化6】
式中、R が、4~8個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基であり、R が、CH またはCH CH であり、xが、0、1、または2であり、R がCH の場合、R が、CH であり、R がCH CH である場合、R が、CH CH である、組成物。
(2) 50重量パーセント未満の芳香族炭化水素溶媒を含有する、上記(1)に記載の組成物。
(3) 芳香族炭化水素溶媒を含まない、上記(1)に記載の組成物。
(4) 50重量パーセント未満のN,N-ジアルキル脂肪アミド溶媒を含有する、上記(1)に記載の組成物。
(5) N,N-ジアルキル脂肪アミド溶媒を含まない、上記(1)に記載の組成物。
(6) 50重量パーセント未満の芳香族、アルキル、および環状ケトン溶媒を含有する、上記(1)に記載の組成物。
(7) 芳香族、アルキル、および環状ケトン溶媒を含まない、上記(1)に記載の組成物。
(8) 前記組成物が、最大20重量パーセントの前記1つ以上の構成成分(a)化合物と、10~80重量パーセントの前記エーテルケトン溶媒と、を含む、上記(1)~(7)のいずれかに記載の組成物。
(9) 前記エーテルケトン溶媒が、前記組成物のための唯一の溶媒である、上記(8)に記載の組成物。
(10) 前記組成物が、21~50重量パーセントの前記1つ以上の構成成分(a)化合物と、10~50重量パーセントの前記エーテルケトン溶媒と、を含む、上記(1)に記載の組成物。
(11) 前記エーテルケトン溶媒が、前記組成物のための唯一の溶媒である、上記(10)に記載の組成物。
(12) R が、4個または5個の炭素原子を有する直鎖アルキル基であり、R が、CH であり、xが、0または1であり、R が、CH である、上記(1)~(11)のいずれかに記載の組成物。
(13) N,N-ジアルキル脂肪アミド、芳香族ケトン、アルキルケトン、環状ケトン、および芳香族炭化水素化合物のうちの少なくとも1つに可溶な前記化合物が、ピレスロイド、有機ホスフェート、有機サルファイト、カルバメート、シクロヘキサンジオン、イソキサゾール、フェノキシ、クロロフェノキシ酢酸、アニリド、クロロアセトアニリド、クロロメトキシ安息香酸、オキシアセトアニリド、ストロビルリン、トリアゾール、トリアザペンタジエン、合成オーキシン、アリールオキシフェノキシプロピオネート、ベンゾフラン、ピリミジン、フェニルピラゾール、フェニル尿素、ジフェニルエーテル、ヒドロキシベンゾニトリル、チオリン酸トリアミド、およびクロロピリジンのうちの少なくとも1つである、上記(1)~(12)のいずれかに記載の組成物。
(14) N,N-ジアルキル脂肪アミド、芳香族ケトン、アルキルケトン、環状ケトン、および芳香族炭化水素化合物の少なくとも1つに可溶な前記化合物が、ビフェントリン、テブコナゾール、2-メチル-4-クロロフェノキシ酢酸、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸、N-(n-ブチル)チオリン酸トリアミド、ジカンバ酸、およびニトラピリンのうちの少なくとも1つである、上記(1)~(13)のいずれかに記載の組成物。
(15) 界面活性剤、乳化剤、分散剤、保湿剤、補助剤、酸化防止剤、または着色剤のうちの1つ以上をさらに含み、界面活性剤、乳化剤、分散剤、保湿剤、補助剤、酸化防止剤、または着色剤のうちの前記1つ以上が、組成物の0超~15重量パーセント以下を構成する、上記(1)~(14)のいずれかに記載の組成物。