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特許7398391N-[4-オキソ-2,3-ジヒドロ-1,5-ベンズオキサゼピン-3-イル]-5,6-ジヒドロ-4H-ピロロ[1,2-b]ピラゾール-2-カルボキサミド誘導体及び例えば過敏性腸症候群(IBS)を処置するためのRIP1キナーゼ阻害剤としての関連化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】N-[4-オキソ-2,3-ジヒドロ-1,5-ベンズオキサゼピン-3-イル]-5,6-ジヒドロ-4H-ピロロ[1,2-b]ピラゾール-2-カルボキサミド誘導体及び例えば過敏性腸症候群(IBS)を処置するためのRIP1キナーゼ阻害剤としての関連化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 519/00 20060101AFI20231207BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20231207BHJP
   A61K 31/553 20060101ALI20231207BHJP
   C07D 487/04 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
C07D519/00 301
C07D519/00 CSP
A61P25/16
A61P25/00
A61P25/28
A61P3/00
A61P21/04
A61P25/14
A61P9/10
A61P25/02
A61P1/04
A61P37/06
A61P17/02
A61P13/12
A61P1/16
A61P11/00
A61P31/04
A61P29/00
A61P1/18
A61P17/06
A61P27/02
A61K31/553
C07D487/04 138
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020558018
(86)(22)【出願日】2019-04-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 US2019028011
(87)【国際公開番号】W WO2019204537
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】62/660,397
(32)【優先日】2018-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】パテル,スナヘル
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/004500(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/136727(WO,A2)
【文献】国際公開第2017/103851(WO,A1)
【文献】特許第7209625(JP,B2)
【文献】HAMILTON GREGORY L; ET AL,POTENT AND SELECTIVE INHIBITORS OF RECEPTOR-INTERACTING PROTEIN KINASE 1 THAT LACK AN 以下備考,BIOORGANIC & MEDICINAL CHEMISTRY LETTERS,ELSEVIER,2019年06月15日,VOL:29, NR:12,,PAGE(S):1497 - 1501,http://dx.doi.org/10.1016/j.bmcl.2019.04.014,AROMATIC BACK POCKET GROUP
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 519/00
C07D 487/04
A61P 25/16
A61P 25/00
A61P 25/28
A61P 3/00
A61P 21/04
A61P 25/14
A61P 9/10
A61P 25/02
A61P 1/04
A61P 37/06
A61P 17/02
A61P 13/12
A61P 1/16
A61P 11/00
A61P 31/04
A61P 29/00
A61P 1/18
A61P 17/06
A61P 27/02
A61K 31/553
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】

、又はその薬学的に許容し得る塩(式中:
は、水素、C-Cアルキル、及びCDからなる群から選択され;
各Rは、独立して、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、C-Cチオアルキル、シアノ、フェニル、ベンジル、CH-(C-Cシクロアルキル)、CHCH-(C-Cシクロアルキル)、C-Cヘテロシクリル、C-Cヘテロアリール、CH-(C-Cヘテロシクリル)、CHCH-(C-Cヘテロシクリル)、CH-(C-Cヘテロアリール)、及びCHCH-(C-Cヘテロアリール)からなる群から選択され;
nは、0、1、又は2であり;
Xは、O、S、S(O)、SO、CH、CH(CH)、C(CH、CF、及びCHCFからなる群から選択され;
Yは、Nであり
A環及びB環は、縮合して、多環式環系を形成し、
前記A環は、
(i)その唯一のヘテロ原子として、(a)2若しくは3個の窒素原子、(b)1個の窒素原子及び1個の酸素原子、又は(c)1個の窒素原子及び1個の硫黄原子を有する5員複素環式芳香環;あるいは
(ii)その唯一のヘテロ原子として1~3個の窒素原子を有する6員複素環式芳香環;
のいずれかであり、
前記A環は、場合により、炭素原子において、フルオロ、クロロ、メチル及びトリフルオロメチルからなる群から選択される1個の置換基によって置換されており;そし
前記B環は、5~7員の炭素環式環、5~7員の複素環式環、又は5~6員のヘテロアリール環であり、前記複素環式環又はヘテロアリール環は、窒素、酸素、及び硫黄からなる群から選択される1~3個のヘテロ原子を有し;
pは、1若しくは2であり、そして、qは、0若しくは1であるか;又はpは0であり、そして、qは1であり;
各RB1は、独立して、ハロゲン、重水素、ヒドロキシル、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、C-Cチオアルキル、C-Cアルキル-N(R 及びシアノからなる群から選択され;2個のC-Cアルキル置換基が、共に、架橋又はスピロ環式の環を形成してもよく;そして、前記B環における窒素原子が置換されている場合、置換基は、ハロゲン又はシアノ、又は前記窒素原子に直接結合している酸素若しくは硫黄の原子を有するC-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、若しくはC-Cチオアルキルのいずれでもなく;
B2は、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、C-Cチオアルキル、C-Cアルキル-N(R、フェニル、ベンジル、CH-(C-Cシクロアルキル)、CHCH-(C-Cシクロアルキル)、CH-(4~6員のヘテロシクリル)、CHCH-(4~6員のヘテロシクリル)、5~6員のヘテロアリール及びCH-(5~6員のヘテロアリール)からなる群から選択され;RB2がフェニル又はベンジルである場合、前記フェニル又は前記ベンジルのフェニル環部分は、場合により、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ及びシアノからなる群から選択される1~3個の置換基によって置換されており;
7a及びR7bは、それぞれ独立して、H、ハロゲン、及びC-Cアルキルからなる群から選択されるか;又はR7a及びR7bは、これら両方が結合している炭素原子と共にシクロプロピルを形成し得;そし
各Rは、独立して、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ及び-Cハロアルキルからなる群から選択されるか;又は2個のRが、これら両方が結合している窒素原子と共に4~6員の複素環式環を形成するが;
ただし、nが2である場合、1個のRだけが、フェニル、ベンジル、CH-(C-Cシクロアルキル)、CHCH-(C-Cシクロアルキル)、C-Cヘテロシクリル、C-Cヘテロアリール、CH-(C-Cヘテロシクリル)、CHCH-(C-Cヘテロシクリル)、CH-(C-Cヘテロアリール)又はCHCH-(C-Cヘテロアリール)であり得る)。
【請求項2】
前記A環及び前記B環が、共に縮合して、
【化2】

(式中:
3a及びR3bのうちの一方はHであり、そして、他方は、水素、重水素、フルオロ、クロロ、ヒドロキシル、シアノ、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、シクロプロピル、C-Cアルコキシ、及びC-Cハロアルコキシからなる群から選択されるか;又は
3a及びR3bのそれぞれは、独立して、重水素、フルオロ、クロロ、ヒドロキシル、シアノ及びメチルからなる群から選択されるが、ただし、R3a及びR3bの両方がOH又はCNではあり得ないか;又は
3a及びR3bは、これら両方が結合している炭素原子と共に1,1-シクロプロピレンを形成し;
は、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、C-Cチオアルキル、フェニル、ベンジル、CH-(C-Cシクロアルキル)、CHCH-(C-Cシクロアルキル)、CH-(4~6員のヘテロシクリル)、CHCH-(4~6員のヘテロシクリル)、5~6員のヘテロアリール及びCH-(5~6員のヘテロアリール)からなる群から選択され;前記フェニル又は前記ベンジルのフェニル環部分は、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ及びシアノからなる群から選択される1~3個の置換基によって置換されていてもよく;そして、
は、H、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル及び-Cシクロアルキルからなる群から選択される)
からなる群から選択される多環式環系を形成している、請求項1記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩。
【請求項3】
前記A環及び前記B環が、共に縮合して
【化3】

(式中:
3a及びR3bは、以下のとおり選択され:
3a及びR3bのうちの一方はHであり、そして、他方は、水素、重水素、フルオロ、クロロ、ヒドロキシル、シアノ、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、シクロプロピル、C-Cアルコキシ、及びC-Cハロアルコキシからなる群から選択される;又は
3a及びR3bのそれぞれは、独立して、重水素、フルオロ、クロロ、ヒドロキシル、シアノ、及びメチルからなる群から選択されるが、ただし、R3a及びR3bの両方がOH若しくはCNではあり得ない;又は
3a及びR3bは、これら両方が結合している炭素原子と共に1,1-シクロプロピレンを形成する;そして、
は、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、C-Cチオアルキル、フェニル、ベンジル、CH-(C-Cシクロアルキル)、CHCH-(C-Cシクロアルキル)、CH-(4~6員のヘテロシクリル)、CHCH-(4~6員のヘテロシクリル)、5~6員のヘテロアリール、及びCH-(5~6員のヘテロアリール)からなる群から選択され;前記フェニル又は前記ベンジルのフェニル環部分は、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、及びシアノからなる群から選択される1~3個の置換基によって置換されていてもよい)
である多環式環系を形成している、請求項2記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩。
【請求項4】
前記A環及び前記B環が、共に縮合して
【化4】

からなる群から選択される多環式環系を形成している、請求項2記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩。
【請求項5】
前記A環及び前記B環が、共に縮合して
【化5】

である多環式環系を形成している、請求項4記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩。
【請求項6】
Xが、O又はCHである、請求項1~5のいずれか一項記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩。
【請求項7】
が、メチル又はCDである、請求項1~6のいずれか一項記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩。
【請求項8】
が、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、C-Cチオアルキル、シアノ、フェニル及びベンジルからなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩。
【請求項9】
nが0である、請求項1~8のいずれか一項記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩。
【請求項10】
7a及びR7bが、それぞれ独立して、H及びC-Cアルキルからなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩。
【請求項11】
前記化合物が、
【化6】

(4S,6S)-4-フルオロ-6-フェニル-N-[(3S)-5-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]-5,6-ジヒドロ-4H-ピロロ[1,2-b]ピラゾール-2-カルボキサミド;
【化7】

1-イソプロピル-N-[(3S)-5-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-カルボキサミド;
【化8】

(4S)-4-(2-フルオロフェニル)-N-[(3S)-5-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]-6,7-ジヒドロ-4H-ピラゾロ[5,1-c][1,4]オキサジン-2-カルボキサミド;
【化9】

(4R)-4-(2-フルオロフェニル)-N-[(3S)-5-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]-6,7-ジヒドロ-4H-ピラゾロ[5,1-c][1,4]オキサジン-2-カルボキサミド;
【化10】

(4S)-4-フェニル-N-[(3S)-5-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]-6,7-ジヒドロ-4H-ピラゾロ[5,1-c][1,4]オキサジン-2-カルボキサミド;
【化11】

(4S)-4-フェニル-N-[(2R,3S)-2,5-ジメチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]-6,7-ジヒドロ-4H-ピラゾロ[5,1-c][1,4]オキサジン-2-カルボキサミド;
【化12】

(4S)-4-フェニル-N-[(3S)-4-オキソ-5-(トリジュウテリオメチル)-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]-6,7-ジヒドロ-4H-ピラゾロ[5,1-c][1,4]オキサジン-2-カルボキサミド;
【化13】

1-(1,1-ジフルオロプロピル)-N-[(3S)-5-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-カルボキサミド;
【化14】

1-シクロペンチル-N-[(3S)-5-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-カルボキサミド;
及び
【化15】

1-(1,1-ジフルオロプロピル)-N-[(3S)-5-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-6-カルボキサミド
からなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩。
【請求項12】
100nM未満のRIP1キナーゼ阻害活性Kを有する、請求項11記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、薬学的に許容し得る担体とを含む医薬組成物。
【請求項14】
処置的活性物質として使用するための、請求項1~12のいずれか一項記載の化合物若しくはその薬学的に許容し得る塩
【請求項15】
パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、パーキンソンプラス症候群、タウオパチー、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、原発性側索硬化症、ハンチントン病、虚血、脳卒中、頭蓋内出血、脳出血、筋ジストロフィー、進行性筋萎縮症、仮性球麻痺、進行性球麻痺、脊髄性筋萎縮症、遺伝性筋萎縮症、末梢神経障害、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、及び脱髄性疾患からなる群から選択される疾患又は障害を処置するための、請求項1~12のいずれか一項記載の化合物若しくはその薬学的に許容し得る塩
【請求項16】
パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、パーキンソンプラス症候群、タウオパチー、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、原発性側索硬化症、ハンチントン病、虚血、脳卒中、頭蓋内出血、脳出血、筋ジストロフィー、進行性筋萎縮症、仮性球麻痺、進行性球麻痺、脊髄性筋萎縮症、遺伝性筋萎縮症、末梢神経障害、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、及び脱髄性疾患からなる群から選択される疾患又は障害を処置するための医薬を調製するための、請求項1~12のいずれか一項記載の化合物若しくはその薬学的に許容し得る塩の使用
【請求項17】
前記疾患又は障害が、アルツハイマー病である、請求項15記載の化合物
【請求項18】
前記疾患又は障害が、多発性硬化症である、請求項15記載の化合物
【請求項19】
前記疾患又は障害が、パーキンソン病である、請求項15記載の化合物
【請求項20】
前記疾患又は障害が、筋萎縮性側索硬化症である、請求項15記載の化合物
【請求項21】
前記疾患又は障害が、ハンチントン病である、請求項15記載の化合物
【請求項22】
前記疾患又は障害が、脊髄性筋萎縮症である、請求項15記載の化合物
【請求項23】
炎症性腸疾患、過敏性腸症候群(IBS)、クローン病、潰瘍性大腸炎、心筋梗塞、脳卒中、外傷性脳損傷、アテローム性動脈硬化症、腎臓、肝臓、及び肺の虚血再灌流傷害、シスプラチン誘導性腎傷害、敗血症、全身性炎症反応症候群(SIRS)、膵炎、乾癬、網膜色素変性症、網膜変性症、慢性腎疾患、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)からなる群から選択される疾患又は障害を処置するための、請求項1~12のいずれか一項記載の化合物若しくはその薬学的に許容し得る塩
【請求項24】
炎症性腸疾患、過敏性腸症候群(IBS)、クローン病、潰瘍性大腸炎、心筋梗塞、脳卒中、外傷性脳損傷、アテローム性動脈硬化症、腎臓、肝臓、及び肺の虚血再灌流傷害、シスプラチン誘導性腎傷害、敗血症、全身性炎症反応症候群(SIRS)、膵炎、乾癬、網膜色素変性症、網膜変性症、慢性腎疾患、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)からなる群から選択される疾患又は障害を処置するための医薬を調製するための、請求項1~12のいずれか一項記載の化合物若しくはその薬学的に許容し得る塩の使用
【請求項25】
前記疾患又は障害が、過敏性腸障害である、請求項23記載の化合物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる、2018年4月20日出願の米国仮出願第62/660,397号に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、哺乳類における治療及び/又は予防に有用な有機化合物、そして、具体的には、炎症、細胞死、及びその他に関連する疾患及び障害を処置するのに有用なRIP1キナーゼの阻害剤に関する。
【0003】
背景技術
受容体共役タンパク質-1(「RIP1」)キナーゼは、セリン/トレオニンプロテインキナーゼである。RIP1は、特に、プログラム細胞死経路、例えばネクロプトーシスの媒介に関与する細胞シグナル伝達の調節因子である。ネクロプトーシス細胞死の最もよく研究されている形態は、TNFα(腫瘍壊死因子)によって開始されるが、ネクロプトーシスは、TNFαデスリガンドファミリーの他のメンバー(Fas及びTRAIL/Apo2L)、インターフェロン、Toll様受容体(TLR)のシグナル伝達、及びDNAセンサーDAI(インターフェロン調節因子のDNA依存性活性化因子)を介したウイルス感染によっても誘導され得る[1~3]。TNFαがTNFR1(TNF受容体1)に結合すると、TNFR1の三量体化及び細胞内複合体Complex-Iの形成が促進される。TRADD(TNF受容体関連デスドメインタンパク質)が、TNFR1の細胞内デスドメインに結合し、そして、両タンパク質に存在するデスドメインを通じてプロテインキナーゼRIP1(受容体共役タンパク質1)を動員する[4]。最初のTNFR1関連シグナル伝達複合体への動員に続いて、RIP1は、二次細胞質複合体Complex-IIに転位する[5~7]。Complex-IIは、デスドメイン含有タンパク質FADD(Fas関連タンパク質)、RIP1、カスパーゼ-8、及びcFLIPによって形成される。カスパーゼ-8が完全には活性化されていないか又はその活性がブロックされている場合、プロテインキナーゼRIP3が複合体に動員されて、ネクロソームを形成し、これがネクロプトーシス細胞死の開始を引き起こす[8~10]。ネクロソームが形成されると、RIP1及びRIP3は、ネクロプトーシス細胞死に必須である一連の自己及び交差のリン酸化事象に関与する。ネクロプトーシスは、2つのキナーゼのうちのいずれかにおけるキナーゼ不活化変異によって、又はRIP1キナーゼ阻害剤(ネクロスタチン)若しくはRIP3キナーゼ阻害剤によって化学的に、完全にブロックすることができる[11~13]。RIP3のリン酸化によって、ネクロプトーシス細胞死の重要な構成要素であるシュードキナーゼMLKL(混合系統キナーゼドメイン様)の結合及びリン酸化が可能になる[14、15]。
【0004】
ネクロプトーシスは、心筋梗塞、脳卒中、アテローム性動脈硬化症、虚血再灌流傷害、炎症性腸疾患、網膜変性症、及び多数の他の一般的な臨床障害において重要な病態生理学的関連性を有する[16]。したがって、RIP1キナーゼ活性の選択的阻害剤は、この経路によって媒介される疾患並びに炎症及び/又はネクロプトーシス細胞死に関連する疾患の有望な処置法として望ましい。
【0005】
RIP1キナーゼの阻害剤は、既に報告されている。最初に公になったRIP1キナーゼ活性の阻害剤は、ネクロスタチン1(Nec-1)であった[17]。この最初の発見に続いて、RIP1キナーゼ活性をブロックする様々な能力を有するNec-1の改変バージョンが発見された[11、18]。最近、ネクロスタチンクラスの化合物とは構造的に異なる、更なるRIP1キナーゼ阻害剤が報告された[19、20、21]。
【0006】
上に引用した参照文献は、それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み入れられる:
【表1】


【0007】
発明の概要
式Iの化合物:
【化1】

又はその薬学的に許容し得る塩(式中、
は、水素、C-Cアルキル、及びCDからなる群から選択され;
各Rは、独立して、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、C-Cチオアルキル、シアノ、フェニル、ベンジル、CH-(C-Cシクロアルキル)、CHCH-(C-Cシクロアルキル)、C-Cヘテロシクリル、C-Cヘテロアリール、CH-(C-Cヘテロシクリル)、CHCH-(C-Cヘテロシクリル)、CH-(C-Cヘテロアリール)、及びCHCH-(C-Cヘテロアリール)からなる群から選択され;
nは、整数0、1、又は2であり;
Xは、O、S、S(O)、SO、CH、C(CH、CF、及びCHCFからなる群から選択され;
Yは、N又はCであり;
A環及びB環は、縮合して、多環式環系を形成し、
該A環は、
(i)その唯一のヘテロ原子として、(a)2若しくは3個の窒素原子、(b)1個の窒素原子及び1個の酸素原子、又は(c)1個の窒素原子及び1個の硫黄原子を有する5員複素環式芳香環;あるいは
(ii)その唯一のヘテロ原子として1~3個の窒素原子を有する6員複素環式芳香環;
のいずれかであり、
該A環は、場合により、炭素原子において、フルオロ、クロロ、メチル、及びトリフルオロメチルからなる群から選択される1個の置換基によって置換されており;そして、
該B環は、5~7員の炭素環式環、5~7員の複素環式環、又は5~6員のヘテロアリール環であり、該複素環式環又はヘテロアリール環は、窒素、酸素、及び硫黄からなる群から選択される1~3個のヘテロ原子を有し;
pは、1若しくは2であり、そして、qは、0若しくは1であるか;又はpは0であり、そして、qは1であり;
各RB1は、独立して、ハロゲン、重水素、ヒドロキシル、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、C-Cチオアルキル、C-Cアルキル-N(R、及びシアノからなる群から選択され;2個のC-Cアルキル置換基が、共に、架橋又はスピロ環式の環を形成してもよく;そして、該B環における窒素原子が置換されている場合、置換基は、ハロゲン、シアノ、又は該窒素原子に直接結合している酸素若しくは硫黄の原子を有するC-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、若しくはC-Cチオアルキルのいずれでもなく;
B2は、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、C-Cチオアルキル、C-Cアルキル-N(R、フェニル、ベンジル、CH-(C-Cシクロアルキル)、CHCH-(C-Cシクロアルキル)、CH-(4~6員のヘテロシクリル)、CHCH-(4~6員のヘテロシクリル)、5~6員のヘテロアリール、及びCH-(5~6員のヘテロアリール)からなる群から選択され;RB2がフェニル又はベンジルであるとき、該フェニル環は、場合により、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、及びシアノからなる群から選択される1~3個の置換基によって置換されており;
7a及びR7bは、それぞれ独立して、H、ハロゲン、及びC-Cアルキルからなる群から選択されるか;又はR7a及びR7bは、これら両方が結合している炭素原子と共にシクロプロピルを形成し得;そして、
各Rは、独立して、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、及びC-Cハロアルキルからなる群から選択されるか;又は2個のRが、これら両方が結合している窒素原子と共に4~6員の複素環式環を形成するが;
ただし、nが2である場合、1個のRだけが、フェニル、ベンジル、CH-(C-Cシクロアルキル)、CHCH-(C-Cシクロアルキル)、C-Cヘテロシクリル、C-Cヘテロアリール、CH-(C-Cヘテロシクリル)、CHCH-(C-Cヘテロシクリル)、CH-(C-Cヘテロアリール)、又はCHCH-(C-Cヘテロアリール)であり得る)
が本明細書に提供される。
【0008】
また、式Iの化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、1つ以上の薬学的に許容し得る担体又は賦形剤とを含む医薬組成物も本明細書に提供される。特定の実施態様は、経口送達に好適な医薬組成物を含む。
【0009】
また、経口送達に好適な、式Iの化合物又はその薬学的に許容し得る塩と1つ以上の薬学的に許容し得る担体又は賦形剤との経口製剤も本明細書に提供される。
【0010】
また、以下に更に記載するとおり、炎症、細胞死、及びRIP1キナーゼに関連するその他に関連する疾患及び障害の処置方法も本明細書に提供される。
【0011】
発明を実施するための形態
定義
本明細書で提供されるとき、全ての化学式及び一般化学構造は、当業者に理解されるとおり、適切な原子価及び原子間の化学的に安定な結合を提供すると解釈されるべきである。適切な場合、置換基は、1つを超える隣接する原子に結合し得る(例えば、2つの結合が存在する場合、アルキルはメチレンを含む)。
【0012】
本明細書に提供される化学式において、「ハロゲン」又は「ハロ」とは、フッ素、塩素、及び臭素(すなわち、F、Cl、Br)を指す。
【0013】
特に具体的に定義しない限り、アルキルとは、場合により置換されている直鎖又は分枝鎖のC-C12アルキル基を指す。幾つかの実施態様では、アルキルとは、C-Cアルキル基を指す。例示的なアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、及びn-オキチルを含む。本明細書に提供される置換アルキル基は、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、C-Cシクロアルキル、フェニル、OH、COH、CO(C-Cアルキル)、NH、NH(C-Cアルキル)、N(C-Cアルキル)、NH(C=O)C-Cアルキル、(C=O)NH(C-Cアルキル)、(C=O)N(C-Cアルキル)、S(C-Cアルキル)、SO(C-Cアルキル)、SO(C-Cアルキル)、SONH(C-Cアルキル)、SON(C-Cアルキル)、及びNHSO(C-Cアルキル)からなる群から選択される1個以上の置換基によって置換される。幾つかの実施態様では、置換アルキル基は、1又は2個の置換基を有する。幾つかの実施態様では、アルキル基は、置換されていない。
【0014】
特に具体的に定義しない限り、シクロアルキルとは、場合により置換されているC-C12シクロアルキル基を指し、そして、縮合、スピロ環式、及び架橋の二環式基を含み、その置換基は、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、C-Cシクロアルキル、フェニル、OH、COH、CO(C-Cアルキル)、NH、NH(C-Cアルキル)、N(C-Cアルキル)、NH(C=O)C-Cアルキル、(C=O)NH(C-Cアルキル)、(C=O)N(C-Cアルキル)、S(C-Cアルキル)、SO(C-Cアルキル)、SO(C-Cアルキル)、SONH(C-Cアルキル)、SON(C-Cアルキル)、及びNHSO(C-Cアルキル)からなる群から選択される。幾つかの実施態様では、シクロアルキルとは、C-Cシクロアルキル基を指す。幾つかの実施態様では、C-Cシクロアルキル基は、場合により1~3個のハロゲン原子で置換されている。幾つかの実施態様では、C-Cシクロアルキル基は、場合により1~3個のフッ素原子で置換されている。例示的なC-Cシクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロへキシルを含む。例示的なC-C12シクロアルキル基は、更に、ビシクロ[3.1.0]ヘキシル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル、シクロヘプチル、ビシクル[4.1.0]ヘプチル、スピロ[4.2]ヘプチル、シクロオクチル、スピロ[4.3]オクチル、スピロ[5.2]オクチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、ビシクル[2.2.2]オクタニル、アダマンタニル、デカリニル、及びスピロ[5.4]デカニルを含む。適切な場合、シクロアルキル基は、該シクロアルキル基と別の環系(例えば、式IのC環)との間に1つを超える化学結合が存在するように、他の基に縮合し得る。幾つかの実施態様では、シクロアルキル基は、置換されていない。
【0015】
特に具体的に定義しない限り、ハロアルキルとは、1個以上の水素原子がハロゲンによって置換されている、直鎖又は分枝鎖のC-C12アルキル基を指す。幾つかの実施態様では、ハロアルキルとは、C-Cハロアルキル基を指す。幾つかの実施態様では、ハロアルキル基の1~3個の水素原子は、ハロゲンによって置換されている。幾つかの実施態様では、ハロアルキル基の全ての水素原子が、ハロゲンによって置換されている(例えば、トリフルオロメチル)。幾つかの実施態様では、ハロアルキルは、本明細書で定義するとき、いずれの場合もハロゲンがフッ素である。例示的なハロアルキル基は、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、及びペンタフルオロエチルを含む。
【0016】
特に具体的に定義しない限り、アルコキシとは、いずれの場合も2個の炭素原子間に1個以上の酸素原子が存在する、直鎖又は分枝鎖のC-C12アルキル基を指す。幾つかの実施態様では、アルコキシとは、C-Cアルコキシ基を指す。幾つかの実施態様では、本明細書に提供されるC-Cアルコキシ基は、1個の酸素原子を有する。例示的なアルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、CHOCH、CHCHOCH、CHOCHCH、CHCHOCHCH、CHOCHCHCH、CHCHCHOCH、CHOCH(CH、CHOC(CH、CH(CH)OCH、CHCH(CH)OCH、CH(CH)OCHCH、CHOCHOCH、CHCHOCHCHOCH、及びCHOCHOCHOCHを含む。
【0017】
特に具体的に定義しない限り、シクロアルコキシとは、環状であり、そして、1個の酸素原子を含有する、上に定義したとおりのC-C10又はC-Cのアルコキシ基を指す。例示的なシクロアルコキシ基は、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、及びテトラヒドロピラニルを含む。
【0018】
特に具体的に定義しない限り、ハロアルコキシとは、いずれの場合も2個の炭素原子間に1又は2個の酸素原子が存在する、上に定義したとおりのC-Cハロアルキル基を指す。幾つかの実施態様では、本明細書に提供されるC-Cハロアルコキシ基は、1個の酸素原子を有する。例示的なハロアルコキシ基は、OCF、OCHF、及びCHOCFを含む。
【0019】
特に具体的に定義しない限り、チオアルキルとは、酸素原子が硫黄原子によって置換されている、上に定義したとおりのC-Cアルコキシ基を指す。幾つかの実施態様では、チオアルキル基は、1又は2個の酸素原子によって置換されている硫黄原子を含み得る(すなわち、アルキルスルホン及びアルキルスルホキシド)。例示的なチオアルキル基は、いずれの場合も各酸素原子が硫黄原子によって置換されている、上記アルコキシの定義に例示されているものである。
【0020】
特に具体的に定義しない限り、アルコキシカルボニルは、酸素原子がカルボニル基に結合してエステルを形成している、上に定義したとおりのC-Cアルコキシ基を指す。例示的なアルコキシカルボニル基は、CHOC(O)-及びCHCHOC(O)-を含む。
【0021】
特に具体的に定義しない限り、シアノアルキルは、1個の水素原子がシアノ基(「-CN」)によって置換されている、上に定義したとおりのC-Cアルキル基を指す。例示的なシアノアルキル基は、CNCH-及びCNCHCH-を含む。
【0022】
特に具体的に定義しない限り、アルキルスルホニルは、炭素原子がスルホン基(「SO」)に結合し、次に、C-Cアルキエンに結合している、上に定義したとおりのC-Cアルキル基を指す。例示的なアルキルスルホニル基は、CHSOCH-及びCHSOCHCH-を含む。
【0023】
特に具体的に定義しない限り、ヘテロシクリルとは、環内に炭素以外の少なくとも1個の原子を有する単一の飽和又は部分的に不飽和の4~8員の環であって、該原子が、酸素、窒素、及び硫黄からなる群から選択される環を指し;この用語は、少なくとも1個のこのような飽和又は部分的に不飽和の環を有する多重縮合環系であって、7~12個の原子を有し、そして、以下に更に記載される多重縮合環系も含む。したがって、この用語は、環内に約1~7個の炭素原子と酸素、窒素、及び硫黄からなる群から選択される約1~4個のヘテロ原子とを有する単一の飽和又は部分的に不飽和の環(例えば、3、4、5、6、7、又は8員の環)を含む。該環は、C分岐であってもよい(すなわち、C~Cアルキルによって置換されていてもよい)。該環は、1個以上の(例えば、1、2、又は3個)のオキソ基で置換されていてもよく、そして、硫黄及び窒素の原子はその酸化形態で存在していてもよい。例示的な複素環は、アゼチジニル、テトラヒドロフラニル、及びピペリジニルを含むが、これらに限定されない。多重縮合環系の環は、原子価の要件によって許容されるとき、縮合、スピロ、及び架橋の結合を介して互いに結合し得る。多重縮合環系の個々の環は、任意の順序で互いに対して結合し得ることを理解すべきである。また、多重縮合環系(複素環について上に定義したとおり)の結合点は、該多重縮合環系の任意の位置に存在し得ることも理解すべきである。また、複素環又は複素環の多重縮合環系の結合点は、炭素原子及び窒素原子を含むヘテロシクリル基の任意の好適な原子に存在し得ることも理解すべきである。例示的な複素環は、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ホモピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピペラジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロオキサゾリル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、1,2,3,4-テトラヒドロキノリル、ベンズオキサジニル、ジヒドロオキサゾリル、クマニル、1,2-ジヒドロピリジニル、2,3-ジヒドロベンゾフラニル、1,3-ベンゾジオキソリル、1,4-ベンゾジオキサニル、スピロ[シクロプロパン-1,1’-イソインドリニル]-3’-オン、イソインドリニル-1-オン、2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタニル、イミダゾリジン-2-オンN-メチルピペリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ブチロラクタム、バレロラクタム、イミダゾリジノン、ヒダントイン、ジオキソラン、フタルイミド、1,4-ジオキサン、チオモルホリン、チオモルホリン-S-オキシド、チオモルホリン-S,S-オキシド、ピラン、3-ピロリン、チオピラン、ピロン、テトラヒドロチオフェン、キヌクリジン、トロパン、2-アザスピロ[3.3]ヘプタン、(1R,5S)-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン、(1s,4s)-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン、(1R,4R)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.2]オクタン、及びピロリジン-2-オンを含むが、これらに限定されない。
【0024】
幾つかの実施態様では、ヘテロシクリルは、窒素、酸素、及び硫黄からなる群から選択される1~3個のヘテロ原子を有するC-C10ヘテロシクリルである。幾つかの実施態様では、ヘテロシクリル基は、二環式でもスピロ環式でもない。幾つかの実施態様では、ヘテロシクリルは、3個のヘテロ原子が存在する場合は少なくとも2個が窒素である、1~3個のヘテロ原子を有するC-Cヘテロシクリルである。
【0025】
特に具体的に定義しない限り、アリールとは、単一の全炭素芳香環、又は環のうちの少なくとも1個が芳香族であり、そして、アリール基が、6~20個の炭素原子、6~14個の炭素原子、6~12個の炭素原子、又は6~10個の炭素原子を有する多重縮合全炭素環系を指す。アリールは、フェニルラジカルを含む。また、アリールは、少なくとも1個の環が芳香族であり、そして、他の環が芳香族であっても芳香族でなくてもよい(すなわち、炭素環)、約9~20個の炭素原子を有する多重縮合環系(例えば、2、3、又は4個の環を含む環系)を含む。このような多重縮合環系は、場合により、該多重縮合環系の任意の炭素環部分において1個以上(例えば、1、2、又は3個)のオキソ基で置換されている。多重縮合環系の環は、原子価の要件によって許容されるとき、縮合、スピロ、及び架橋の結合を介して互いに結合し得る。多重縮合環系の結合点は、上に定義したとおり、該環の芳香族又は炭素環の部分を含む環系の任意の位置に存在し得ることを理解すべきである。例示的なアリール基は、フェニル、インデニル、ナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、アントラセニル等を含む。
【0026】
特に具体的に定義しない限り、ヘテロアリールとは、環内に炭素以外の少なくとも1個の原子を有する5~6員の芳香環であって、該原子が、酸素、窒素、及び硫黄からなる群から選択される環を指し;「ヘテロアリール」は、少なくとも1個のこのような芳香環を有する8~16個の原子を有する多重縮合環系も含み、この多重縮合環系については以下に更に記載する。したがって、「ヘテロアリール」は、約1~6個の炭素原子と、酸素、窒素、及び硫黄からなる群から選択される約1~4個のヘテロ原子との単一の芳香環を含む。また、該環が芳香族であるならば、硫黄及び窒素の原子は酸化形態で存在していてもよい。例示的なヘテロアリール環系は、ピリジル、ピリミジニル、オキサゾリル、又はフリルを含むが、これらに限定されない。また、「ヘテロアリール」は、上に定義したとおりのヘテロアリール基が、ヘテロアリール(例えば、1,8-ナフチリジニル等のナフチリジニルを形成する)、複素環(例えば、1,2,3,4-テトラヒドロ-1,8-ナフチリジニル等の1,2,3,4-テトラヒドロナフチリジニルを形成する)、炭素環(例えば、5,6,7,8-テトラヒドロキノリルを形成する)、及びアリール(例えば、インダゾリルを形成する)から選択される1個以上の環と縮合して多重縮合環系を形成している、多重縮合環系(例えば、2又は3個の環を含む環系)も含む。したがって、ヘテロアリール(単一の芳香環又は多重縮合環系)は、ヘテロアリール環内に1~15個の炭素原子及び約1~6個のヘテロ原子を有する。このような多重縮合環系は、場合により、縮合環の炭素環又は複素環の部分において1個以上(例えば、1、2、3、又は4個)のオキソ基で置換されていてもよい。多重縮合環系の環は、原子価の要件によって許容されるとき、縮合、スピロ、及び架橋の結合を介して互いに結合し得る。多重縮合環系の個々の環は、任意の順序で互いに対して結合し得ることを理解すべきである。また、(ヘテロアリールについて上に定義したとおり)多重縮合環系の結合点は、該多重縮合環系のヘテロアリール、複素環、アリール、又は炭素環の部分を含む該多重縮合環系の任意の位置に存在し得ることも理解すべきである。また、ヘテロアリール又はヘテロアリール多重縮合環系の結合点は、炭素原子及びヘテロ原子(例えば、窒素)を含むヘテロアリール又はヘテロアリール多重縮合環系の任意の好適な原子に存在し得ることも理解すべきである。例示的なヘテロアリールは、ピリジル、ピロリル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラゾリル、チエニル、インドリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、フリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、キノリル、イソキノリル、ベンゾチアゾリル、ベンズオキサゾリル、インダゾリル、キノキサリル、キナゾリル、5,6,7,8-テトラヒドロイソキノリニルベンゾフラニル、ベンズイミダゾリル、チアナフテニル、ピロロ[2,3-b]ピリジニル、キナゾリニル-4(3H)-オン、トリアゾリル、4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-インダゾール、及び3b,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-シクロプロパ[3,4]シクロ-ペンタ[1,2-c]ピラゾールを含むが、これらに限定されない。
【0027】
本明細書で使用するとき、用語「キラル」とは、鏡像パートナーを重ねることができない性質を有する分子を指し、一方、用語「アキラル」とは、その鏡像パートナーに重ねることができる分子を指す。
【0028】
本明細書で使用するとき、用語「立体異性体」とは、化学的構成は同一であるが、空間内の原子又は基の配置に関しては異なる化合物を指す。
【0029】
本明細書で使用するとき、化学構造において結合と交差する波線
【化2】

は、該化学構造において波状結合が交差する結合の、分子の残部への結合点を示す。
【0030】
本明細書で使用するとき、用語「C結合」とは、この用語が説明する基が環炭素原子を通じて分子の残部に結合することを意味する。
【0031】
本明細書で使用するとき、用語「N結合」とは、この用語が説明する基が環窒素原子を通じて分子の残部に結合することを意味する。
【0032】
「ジアステレオマー」とは、2個以上の不斉中心を有し、そして、その分子が互いの鏡像ではない立体異性体を指す。ジアステレオマーは、異なる物性、例えば、融点、沸点、スペクトル特性、及び反応性を有する。ジアステレオマーの混合物は、電気泳動及びクロマトグラフィー等の高解像度解析手順下で分離することができる。
【0033】
「鏡像異性体」とは、互いの重ねることができない鏡像である、化合物の2つの立体異性体を指す。
【0034】
本明細書において用いられる立体化学の定義及び慣例は、一般的に、S. P. Parker, Ed., McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms (1984) McGraw-Hill Book Company, New York;及びEliel, E. and Wilen, S., "Stereochemistry of Organic Compounds", John Wiley & Sons, Inc., New York, 1994に従う。本発明の化合物は、非対称又はキラルの中心を含有している場合があり、したがって、異なる立体異性型で存在する場合がある。ジアステレオマー、鏡像異性体及びアトロプ異性体を含むがこれらに限定されない本発明の化合物の全ての立体異性型、並びにラセミ混合物等のこれらの混合物は、本発明の一部を形成することを意図する。多くの有機化合物が光学活性型で存在する、すなわち、平面偏光の平面を回転させる能力を有する。光学活性化合物について記載する際、接頭辞D及びL又はR及びSは、その不斉中心を中心とする分子の絶対配置を示すために用いられる。接頭辞d及びl又は(+)及び(-)は、化合物による平面偏光の回転のサインを示すために使用され、(-)又はlは、化合物が左旋性であることを意味する。(+)又はdの接頭辞の付いた化合物は、右旋性である。所与の化学構造について、これら立体異性体は、互いの鏡像であることを除いて同一である。また、特定の立体異性体を鏡像異性体と称する場合もあり、そして、このような異性体の混合物は、多くの場合、鏡像異性体混合物と呼ばれる。鏡像異性体の50:50混合物は、ラセミ混合物又はラセミ体と称され、これは、化学反応又はプロセスにおいて立体選択性も立体特異性も存在しない場合に生じることがある。用語「ラセミ混合物」及び「ラセミ体」は、光学活性を有しない2つの鏡像異性体種の等モル混合物を指す。
【0035】
本明細書の化学式における結合が非立体化学的に(例えば、平坦に)描かれている場合、その結合が結合している原子は、全ての立体化学的可能性を含む。本明細書の化学式における結合が規定通り立体化学的に(例えば、太線、太線-くさび形、点線、又は点線-くさび形)描かれている場合、特に指定しない限り、立体化学的結合が結合している原子が、描かれている絶対立体異性体中に多く含まれていると理解すべきである。一実施態様では、化合物は、少なくとも51%が描かれている絶対立体異性体であってよい。別の実施態様では、該化合物は、少なくとも80%が描かれている絶対立体異性体であってよい。別の実施態様では、該化合物は、少なくとも90%が描かれている絶対立体異性体であってよい。別の実施態様では、該化合物は、少なくとも95%が描かれている絶対立体異性体であってよい。別の実施態様では、該化合物は、少なくとも97%が描かれている絶対立体異性体であってよい。別の実施態様では、該化合物は、少なくとも98%が描かれている絶対立体異性体であってよい。別の実施態様では、該化合物は、少なくとも99%が描かれている絶対立体異性体であってよい。
【0036】
本明細書で使用するとき、用語「互変異性体」又は「互変異性型」は、低エネルギー障壁を介して相互変換可能である、異なるエネルギーの構造異性体を指す。例えば、プロトン互変異性体(プロトン性互変異性体としても知られている)は、ケト-エノール及びイミン-エナミンの異性化等のプロトンの移動を介する相互変換を含む。原子価互変異性体は、結合電子のうちの一部の再編成による相互変換を含む。
【0037】
本明細書で使用するとき、用語「溶媒和物」は、1つ以上の溶媒分子と本発明の化合物との会合又は複合体を指す。溶媒和物を形成する溶媒の例は、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸、及びエタノールアミンを含むが、これらに限定されない。用語「水和物」は、溶媒分子が水である複合体を指す。
【0038】
本明細書で使用するとき、用語「保護基」は、化合物における特定の官能基をブロック又は保護するために一般に使用される置換基を指す。例えば、「アミノ保護基」は、化合物におけるアミノ官能基をブロック又は保護する、アミノ基に結合している置換基である。好適なアミノ保護基は、アセチル、トリフルオロアセチル、t-ブトキシカルボニル(BOC)、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)、及び9-フルオレニルメチレンオキシカルボニル(Fmoc)を含む。同様に、「ヒドロキシ保護基」は、ヒドロキシ官能基をブロック又は保護する、ヒドロキシ基の置換基を指す。好適な保護基は、アセチル及びシリルを含む。「カルボキシ保護基」は、カルボキシ官能基をブロック又は保護する、カルボキシ基の置換基を指す。一般的なカルボキシ保護基は、フェニルスルホニルエチル、シアノエチル、2-(トリメチルシリル)エチル、2-(トリメチルシリル)エトキシメチル、2-(p-トルエンスルホニル)エチル、2-(p-ニトロフェニルスルフェニル)エチル、2-(ジフェニルホスフィノ)-エチル、ニトロエチル等を含む。保護基の概要及びその使用については、P.G.M. Wuts and T.W. Greene, Greene's Protective Groups in Organic Synthesis 4th edition, Wiley-Interscience, New York, 2006を参照されたい。
【0039】
本明細書で使用するとき、用語「哺乳類」は、ヒト、マウス、ラット、モルモット、サル、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、及びヒツジを含むが、これらに限定されない。
【0040】
本明細書で使用するとき、用語「薬学的に許容し得る塩」は、本明細書に記載する化合物にみられる具体的な置換基に応じて、比較的非毒性の酸又は塩基を用いて調製される活性化合物の塩を含むことを意味する。本発明の化合物が比較的酸性の官能基を含有するとき、中性形態のこのような化合物を、未希釈の又は好適な不活性溶媒中の十分な量の所望の塩基と接触させることによって、塩基付加塩を得ることができる。薬学的に許容し得る無機塩基に由来する塩の例は、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガン、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛等を含む。薬学的に許容し得る有機塩基に由来する塩は、置換アミン、環状アミン、天然アミン等を含む一級、二級、及び三級のアミン、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等の塩を含む。本発明の化合物が比較的塩基性の官能基を含有するとき、中性形態のこのような化合物を、未希釈の又は好適な不活性溶媒中の十分な量の所望の酸と接触させることによって、酸付加塩を得ることができる。薬学的に許容し得る酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素酸、又は亜リン酸等の無機酸に由来するもの、並びに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸等の比較的非毒性の有機酸に由来する塩を含む。また、アルギネート等のアミノ酸の塩、及びグルクロン酸又はガラクツロン酸等の有機酸の塩も含まれる(例えば、Berge, S. M., et al., "Pharmaceutical Salts", Journal of Pharmaceutical Science, 1977, 66, 1-19を参照されたい)。本発明の特定の具体的な化合物は、該化合物を塩基付加塩又は酸付加塩のいずれにも変換することができる塩基性及び酸性の官能基を両方含有する。
【0041】
塩を塩基又は酸と接触させ、そして、従来の方法で親化合物を単離することによって、中性形態の化合物を再生することができる。化合物の親形態は、極性溶媒への可溶性等の特定の物性が様々な塩形態とは異なるが、それ以外は、該塩は本発明の目的のための化合物の親形態と等価である。
【0042】
塩形態に加えて、本発明は、プロドラッグ形態の化合物を提供する。本明細書で使用するとき、用語「プロドラッグ」は、生理学的条件下で容易に化学変化を受けて本発明の化合物を提供する化合物を指す。更に、プロドラッグは、エクスビボ環境において化学的又は生化学的な方法によって本発明の化合物に変換され得る。例えば、プロドラッグは、好適な酵素又は化学試薬と共に経皮パッチリザーバに入れたとき、ゆっくりと本発明の化合物に変換され得る。
【0043】
本発明のプロドラッグは、アミノ酸残基、又は2個以上の(例えば、2、3、又は4個)のアミノ酸残基のポリペプチド鎖が、アミド結合又はエステル結合を通して本発明の化合物の遊離のアミノ、ヒドロキシ、又はカルボン酸の基に共有結合している化合物を含む。アミノ酸残基は、一般的に3文字の記号によって表される20種の天然アミノ酸を含むが、これらに限定されず、また、ホスホセリン、ホスホトレオニン、ホスホチロシン、4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、デモシン(demosine)、イソデモシン(isodemosine)、ガンマ-カルボキシグルタミン酸、馬尿酸、オクタヒドロインドール-2-カルボン酸、スタチン、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、ペニシラミン、オルニチン、3-メチルヒスチジン、ノルバリン、ベータ-アラニン、ガンマ-アミノ酪酸、シトルリン、ホモシステイン、ホモセリン、メチル-アラニン、パラ-ベンゾイルフェニルアラニン、フェニルグリシン、プロパルギルグリシン、サルコシン、メチオニンスルホン、及びtert-ブチルグリシンも含む。
【0044】
更なる種類のプロドラッグも包含される。例えば、本発明の化合物の遊離カルボキシル基を、アミド又はアルキルエステルとして誘導体化することができる。別の例としては、遊離ヒドロキシ基を含む本発明の化合物を、Fleisher, D. et al., (1996) Improved oral drug delivery: solubility limitations overcome by the use of prodrugs Advanced Drug Delivery Reviews, 19:115に概説されているとおり、ヒドロキシ基をリン酸エステル、ヘミコハク酸、ジメチルアミノ酢酸、又はホスホリルオキシメチルオキシカルボニルの基等であるがこれらに限定されない基に変換することによって、プロドラッグとして誘導体化することができる。ヒドロキシ基のカルボン酸プロドラッグ、スルホン酸エステル、及び硫酸エステルのように、ヒドロキシ基及びアミノ基のカルバミン酸プロドラッグも含まれる。アシル基が、場合により、エーテル、アミン、及びカルボン酸の官能基を含むがこれらに限定されない基で置換されているアルキルエステルであり得るか、又はアシル基が上記のとおりアミノ酸エステルである、(アシルオキシ)メチル及び(アシルオキシ)エチルエーテルとしてのヒドロキシ基の誘導体化も包含される。この種のプロドラッグは、J. Med. Chem., (1996), 39:10に記載されている。より具体的な例は、(C1-6)アルカノイルオキシメチル、1-((C1-6)アルカノイルオキシ)エチル、1-メチル-1-((C1-6)アルカノイルオキシ)エチル、(C1-6)アルコキシカルボニルオキシメチル、N-(C1-6)アルコキシカルボニルアミノメチル、スクシノイル、(C1-6)アルカノイル、アルファ-アミノ(C1-4)アルカノイル、アリールアシル及びアルファ-アミノアシル、又はアルファ-アミノアシル-アルファ-アミノアシル等の基によるアルコール基の水素原子の置換を含み、各アルファ-アミノアシル基は、独立して、天然のL-アミノ酸、P(O)(OH)、-P(O)(O(C1-6)アルキル)、又はグリコシル(炭水化物のヘミアセタール形態のヒドロキシル基を除去することによって得られるラジカル)から選択される。
【0045】
プロドラッグ誘導体の更なる例については、例えば、a)Design of Prodrugs, edited by H. Bundgaard, (Elsevier, 1985) and Methods in Enzymology, Vol. 42, p. 309-396, edited by K. Widder, et al. (Academic Press, 1985);b)A Textbook of Drug Design and Development, edited by Krogsgaard-Larsen and H. Bundgaard, Chapter 5 "Design and Application of Prodrugs," by H. Bundgaard p. 113-191 (1991);c)H. Bundgaard, Advanced Drug Delivery Reviews, 8:1-38 (1992);d)H. Bundgaard, et al., Journal of Pharmaceutical Sciences, 77:285 (1988);及びe)N. Kakeya, et al., Chem. Pharm. Bull., 32:692 (1984)を参照されたい。これらは、それぞれ、参照により具体的に本明細書に組み入れられる。
【0046】
更に、本発明は、本発明の化合物の代謝物を提供する。本明細書で使用するとき、「代謝物」とは、指定の化合物又はその塩の、体内における代謝を通して生成される生成物を指す。このような生成物は、例えば、投与された化合物の酸化、還元、加水分解、アミド化、脱アミド化、エステル化、脱エステル化、酵素的切断等から得ることができる。
【0047】
代謝産物は、典型的には、本発明の化合物の放射標識(例えば、14C又はH)同位体を調製し、それを、検出可能な用量(例えば、約0.5mg/kg超)でラット、マウス、モルモット、サル等の動物又はヒトに非経口投与し、代謝が生じるのに十分な時間(典型的には、約30秒間~30時間)放置し、そして、尿、血液、又は他の生体試料からその変換産物を単離することによって同定される。これら産物は、標識されているので容易に単離される(他のものは、代謝物中に残存しているエピトープに結合することができる抗体の使用によって単離される)。代謝物の構造は、例えば、MS、LC/MS、又はNMR分析等の従来の方法で決定される。一般に、代謝物の分析は、当業者に周知の従来の薬物代謝試験と同じ方法で行われる。代謝産物は、インビボで他にみられない限り、本発明の化合物の処置的投与についての診断アッセイにおいて有用である。
【0048】
本発明の特定の化合物は、非溶媒和形態に加えて、水和形態を含む溶媒和形態でも存在し得る。一般に、溶媒和形態は、非溶媒和形態と等価であり、そして、本発明の範囲内に包含されることを意図する。本発明の特定の化合物は、複数の結晶形態又は非晶形態で存在し得る。一般に、全ての物理的形態は、本発明によって想到される用途について等価であり、そして、本発明の範囲内であることを意図する。
【0049】
本発明の特定の化合物は、非対称炭素原子(光学中心)又は二重結合を有し;ラセミ体、ジアステレオマー、幾何異性体、位置異性体、及び個々の異性体(例えば、別々の鏡像異性体)は、全て、本発明の範囲内に包含されることを意図する。
【0050】
用語「組成物」とは、本明細書で使用するとき、指定の成分を指定の量含む生成物に加えて、指定の量の指定の成分の組み合わせから直接又は間接的に得られる任意の生成物を包含することを意図する。「薬学的に許容し得る」とは、担体、希釈剤、又は賦形剤が、製剤の他の成分と適合していなければならず、そして、そのレシピエントにとって有害であってはならないことを意味する。
【0051】
用語「処置する」及び「処置」とは、治療的処置及び/又は予防的処置若しくは予防的手段の両方を指し、その目的は、不所望の生理学的変化又は障害、例えば、癌の発症又は転移を防止するか又は減速させる(減らす)ことである。本発明の目的のために、有益な又は望ましい臨床結果は、検出可能であろうと検出不可能であろうと、症状の軽減、疾患又は障害の程度の減少、疾患又は障害の安定化(すなわち、悪化しない)状態、疾患の進行の遅延又は減速、疾患状態又は障害の改善又は緩和、及び(部分又は完全)寛解を含むが、これらに限定されない。また、「処置」は、処置を受けなかった場合の予想生存時間と比較した生存時間の延長も意味し得る。処置を必要としているものは、既に疾患若しくは障害を有しているものに加えて、疾患若しくは障害を有しやすいもの、又は疾患若しくは障害を予防したいものを含む。
【0052】
語句「処置的に有効な量」又は「有効量」は、(i)特定の疾患、病態、若しくは障害を治療若しくは予防する、(ii)特定の疾患、病態、若しくは障害の1つ以上の症状を減弱、改善、若しくは排除する、又は(iii)本明細書に記載する特定の疾患、病態、若しくは障害の1つ以上の症状の発生を予防若しくは遅延させる、本発明の化合物の量を意味する。癌療法については、例えば、無増悪期間(TTP)を評価する及び/又は奏効率(RR)を決定することによって有効性を測定することができる。
【0053】
用語「バイオアベイラビリティ」とは、患者に投与される所与の量の薬物の全身アベイラビリティ(すなわち、血液/血漿レベル)を指す。バイオアベイラビリティは、投与された剤形から全身循環に達する薬物の時間(速度)及び全量(程度)の両方の尺度を示す絶対用語である。
【0054】
RIP1キナーゼの阻害剤
本発明は、一般式I:
【化3】

を有する新規化合物又はその薬学的に許容し得る塩を提供する(式中、
は、水素、C-Cアルキル、及びCDからなる群から選択され;
各Rは、独立して、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、C-Cチオアルキル、シアノ、フェニル、ベンジル、CH-(C-Cシクロアルキル)、CHCH-(C-Cシクロアルキル)、C-Cヘテロシクリル、C-Cヘテロアリール、CH-(C-Cヘテロシクリル)、CHCH-(C-Cヘテロシクリル)、CH-(C-Cヘテロアリール)、及びCHCH-(C-Cヘテロアリール)からなる群から選択され;
nは、0、1、又は2であり;
Xは、O、S、S(O)、SO、CH、CH(CH)、C(CH、CF、及びCHCFからなる群から選択され;
Yは、N又はCであり;
A環及びB環は、縮合して、多環式環系を形成し、
該A環は、
(i)その唯一のヘテロ原子として、(a)2若しくは3個の窒素原子、(b)1個の窒素原子及び1個の酸素原子、又は(c)1個の窒素原子及び1個の硫黄原子を有する5員複素環式芳香環;あるいは
(ii)その唯一のヘテロ原子として1~3個の窒素原子を有する6員複素環式芳香環;
のいずれかであり、
該A環は、場合により、炭素原子において、フルオロ、クロロ、メチル、及びトリフルオロメチルからなる群から選択される1個の置換基によって置換されており;そして、
該B環は、5~7員の炭素環式環、5~7員の複素環式環、又は5~6員のヘテロアリール環であり、該複素環式環又はヘテロアリール環は、窒素、酸素、及び硫黄からなる群から選択される1~3個のヘテロ原子を有し;
pは、1若しくは2であり、そして、qは、0若しくは1であるか;又はpは0であり、そして、qは1であり;
各RB1は、独立して、ハロゲン、重水素、ヒドロキシル、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、C-Cチオアルキル、C-Cアルキル-N(R、及びシアノからなる群から選択され;2個のC-Cアルキル置換基が、共に、架橋又はスピロ環式の環を形成してもよく;そして、該B環における窒素原子が置換されている場合、置換基は、ハロゲン、シアノ、又は該窒素原子に直接結合している酸素若しくは硫黄の原子を有するC-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、若しくはC-Cチオアルキルのいずれでもなく;
B2は、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、C-Cチオアルキル、C-Cアルキル-N(R、フェニル、ベンジル、CH-(C-Cシクロアルキル)、CHCH-(C-Cシクロアルキル)、CH-(4~6員のヘテロシクリル)、CHCH-(4~6員のヘテロシクリル)、5~6員のヘテロアリール、及びCH-(5~6員のヘテロアリール)からなる群から選択され;RB2がフェニル又はベンジルである場合、該フェニル環は、場合により、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、及びシアノからなる群から選択される1~3個の置換基によって置換されており;
7a及びR7bは、それぞれ独立して、H、ハロゲン、及びC-Cアルキルからなる群から選択されるか;又はR7a及びR7bは、これら両方が結合している炭素原子と共にシクロプロピルを形成し得;そして、
各Rは、独立して、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、及びC-Cハロアルキルからなる群から選択されるか;又は2個のRが、これら両方が結合している窒素原子と共に4~6員の複素環式環を形成するが;
ただし、nが2である場合、1個のRだけが、フェニル、ベンジル、CH-(C-Cシクロアルキル)、CHCH-(C-Cシクロアルキル)、C-Cヘテロシクリル、C-Cヘテロアリール、CH-(C-Cヘテロシクリル)、CHCH-(C-Cヘテロシクリル)、CH-(C-Cヘテロアリール)、又はCHCH-(C-Cヘテロアリール)であり得る)。
【0055】
特定の実施態様では、化合物は、式(Ia):
【化4】

の化合物である。
【0056】
式(I)又は式(Ia)の幾つかの実施態様では、Xは、O又はCHである。幾つかの実施態様では、Xは、Oである。幾つかの実施態様では、Xは、CHである。
【0057】
式(I)又は式(Ia)の幾つかの実施態様では、Rは、水素、メチル、及びCDからなる群から選択される。幾つかの実施態様では、Rは、メチルである。幾つかの実施態様では、Rは、CDである。
【0058】
式(I)又は式(Ia)の幾つかの実施態様では、各Rは、独立して、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、C-Cチオアルキル、シアノ、フェニル、及びベンジルからなる群から選択される。
【0059】
式(I)又は式(Ia)の幾つかの実施態様では、各Rは、独立して、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、及びC-Cハロアルコキシからなる群から選択される。幾つかの実施態様では、各Rは、独立して、水素、ハロゲン、C-Cアルキル、及びC-Cハロアルキルからなる群から選択される。
【0060】
式(I)又は式(Ia)の幾つかの実施態様では、A環及びB環は、共に(置換基、p、q、RB1、及びRB2を含む)、
【化5】

(式中、
3a及びR3bは、以下のとおり選択され:
(i)R3a及びR3bのうちの一方はHであり、そして、他方は、H、D、F、Cl、OH、CN、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、シクロプロピル、C-Cアルコキシ、及びC-Cハロアルコキシからなる群から選択される;
(ii)R3a及びR3bのそれぞれは、独立して、D、F、Cl、OH、CN、及びメチルからなる群から選択されるが、ただし、R3a及びR3bの両方がOH若しくはCNではあり得ない;又は
(iii)R3a及びR3bは、隣接する炭素原子と共に、シクロプロピルを形成する;
は、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、C-Cチオアルキル、フェニル、ベンジル、CH-(C-Cシクロアルキル)、CHCH-(C-Cシクロアルキル)、CH-(4~6員のヘテロシクリル)、CHCH-(4~6員のヘテロシクリル)、5~6員のヘテロアリール、及びCH-(5~6員のヘテロアリール)からなる群から選択され;フェニル環が存在するとき、それは、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、及びシアノからなる群から選択される1~3個の置換基によって置換されていてもよく;そして、
は、H、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、及びC-Cシクロアルキルからなる群から選択される)
からなる群から選択される。
【0061】
式(I)の幾つかの実施態様では、A環及びB環は、共に、
【化6】

(式中、
3a及びR3bは、以下のとおり選択され:
(i)R3a及びR3bのうちの一方はHであり、そして、他方は、H、D、F、Cl、OH、CN、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、シクロプロピル、C-Cアルコキシ、及びC-Cハロアルコキシからなる群から選択される;
(ii)R3a及びR3bのそれぞれは、独立して、D、F、Cl、OH、CN、及びメチルからなる群から選択されるが、ただし、R3a及びR3bの両方がOH若しくはCNではあり得ない;又は
(iii)R3a及びR3bは、隣接する炭素原子と共に、シクロプロピルを形成する;そして、
は、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、C-Cチオアルキル、フェニル、ベンジル、CH-(C-Cシクロアルキル)、CHCH-(C-Cシクロアルキル)、CH-(4~6員のヘテロシクリル)、CHCH-(4~6員のヘテロシクリル)、5~6員のヘテロアリール、及びCH-(5~6員のヘテロアリール)からなる群から選択され;フェニル環が存在するとき、それは、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、及びシアノからなる群から選択される1~3個の置換基によって置換されていてもよい)
である。
【0062】
式(I)又は式(Ia)の幾つかの実施態様では、A環及びB環は、共に、
【化7】

(式中、R3a、R3b及びRは、本明細書に定義のとおりである)
である。
【0063】
式(I)又は式(Ia)の幾つかの実施態様では、A環及びB環は、共に、
【化8】

(式中、R3a、R3b及びRは、本明細書に定義のとおりである)
である。
【0064】
式(I)又は式(Ia)の幾つかの実施態様では、A環及びB環は、共に、
【化9】

(式中、
3a及びR3bは、以下のとおり選択され:
(i)R3a及びR3bのうちの一方はHであり、そして、他方は、H、D、F、Cl、OH、CN、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、シクロプロピル、C-Cアルコキシ、及びC-Cハロアルコキシからなる群から選択される;
(ii)R3a及びR3bのそれぞれは、独立して、D、F、Cl、OH、CN、及びメチルからなる群から選択されるが、ただし、R3a及びR3bの両方がOH若しくはCNではあり得ない;又は
(iii)R3a及びR3bは、一緒になって、シクロプロピルを形成する;
各Rは、独立して、H、F、Cl、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cアルコキシ、及びC-Cハロアルコキシからなる群から選択され;そして、
mは、1、2、又は3である)
からなる群から選択される。
【0065】
式(I)又は式(Ia)の幾つかの実施態様では、A環及びB環は、共に、
【化10】

(式中、
各Rは、H、F、Cl、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cアルコキシ、及びC-Cハロアルコキシからなる群から選択され;そして、
mは、1、2、又は3である)
である。
【0066】
式(I)又は式(Ia)の幾つかの実施態様では、A環及びB環は、共に、
【化11】

(式中、R3a、R3b及びRは、本明細書に定義のとおりである)
である。
【0067】
式(I)又は式(Ia)の幾つかの実施態様では、A環及びB環は、共に、
【化12】

(式中、R3a、R3b及びRは、本明細書に定義のとおりである)
である。
【0068】
式(I)又は式(Ia)の幾つかの実施態様では、A環及びB環は、共に、
【化13】

からなる群から選択される。
【0069】
式(I)又は式(Ia)の幾つかの実施態様では、A環及びB環は、共に、
【化14】

からなる群から選択される。
【0070】
上記実施態様のうちの幾つかでは、R3a及びR3bは、それぞれHである。上記実施態様のうちの幾つかでは、R3aはHであり、そして、R3bは、Dである。上記実施態様のうちの幾つかでは、R3aはHであり、そして、R3bはFである。上記実施態様のうちの幾つかでは、R3aはHであり、そして、R3bはClである。上記実施態様のうちの幾つかでは、R3a及びR3bは、それぞれDである。上記実施態様のうちの幾つかでは、R3a及びR3bは、それぞれFである。上記実施態様のうちの幾つかでは、R3a及びR3bは、それぞれClである。上記実施態様のうちの幾つかでは、R3a及びR3bは、それぞれメチルである。上記実施態様のうちの幾つかでは、R3aはメチルであり、そして、R3bはFである。上記実施態様のうちの幾つかでは、R3aはメチルであり、そして、R3bはClである。上記実施態様のうちの幾つかでは、R3aはメチルであり、そして、R3bはOHである。上記実施態様のうちの幾つかでは、R3aはメチルであり、そして、R3bはCNである。
【0071】
上記実施態様のうちの幾つかでは、Rはフェニルである。幾つかの実施態様では、Rは、モノ-又はジフルオロフェニルである。幾つかの実施態様では、Rは、モノフルオロフェニルである。幾つかの実施態様では、Rは、モノ-又はジクロロフェニルである。幾つかの実施態様では、Rは、モノクロロフェニルである。
【0072】
上記実施態様のうちの幾つかでは、Rは、H、F、Cl、CH、CHCH、OCH、CF、OCF、CFH、及びOCFHからなる群から選択される。上記実施態様のうちの幾つかでは、RはHである。上記実施態様のうちの幾つかでは、RはFである。上記実施態様のうちの幾つかでは、RはClである。上記実施態様のうちの幾つかでは、RはCHである。上記実施態様のうちの幾つかでは、RはCFである。
【0073】
上記実施態様のうちの幾つかでは、Rは、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、及びC-Cシクロアルキルからなる群から選択される。上記実施態様のうちの幾つかでは、Rは、C-Cアルキルである。上記実施態様のうちの幾つかでは、Rは、C-Cハロアルキルである。上記実施態様のうちの幾つかでは、Rは、C-Cシクロアルキルである。
【0074】
上記実施態様のうちの幾つかでは、R7a及びR7bは、それぞれ独立して、H、F、H、Cl、及びC-Cアルキルからなる群から選択されるか;又はR7a及びR7bは、これら両方が結合している炭素原子と共にシクロプロピルを形成し得る。幾つかの実施態様では、R7a及びR7bは、それぞれ独立して、H、F、及びC-Cアルキルからなる群から選択されるか;又はR7a及びR7bは、これら両方が結合している炭素原子と共にシクロプロピルを形成し得る。幾つかの実施態様では、R7a及びR7bは、それぞれ独立して、H及びC-Cアルキルからなる群から選択される。幾つかの実施態様では、R7a及びR7bのうちの一方はHであり、そして、他方はC-Cアルキルである。幾つかの実施態様では、R7a及びR7bのうちの一方はHであり、そして、他方はメチルである。幾つかの実施態様では、R7a及びR7bのうちの一方はHであり、そして、他方はFである。幾つかの実施態様では、R7a及びR7bのうちの一方はFであり、そして、他方はメチルである。幾つかの実施態様では、R7a及びR7bのそれぞれがHである。幾つかの実施態様では、R7a及びR7bのそれぞれがFである。幾つかの実施態様では、R7a及びR7bのそれぞれがメチルである。
【0075】
上記実施態様のうちの幾つかでは、各Rは、独立して、H及びC-Cアルキルからなる群から選択される。幾つかの実施態様では、各RはC-Cアルキルである。幾つかの実施態様では、各Rはメチルである。
【0076】
上記実施態様のうちの幾つかでは、nは0である。上記実施態様のうちの幾つかでは、nは1である。幾つかの実施形態では、nは2である。
【0077】
上記実施態様のうちの幾つかでは、mは0である。幾つかの実施態様では、mは1である。幾つかの実施態様では、mは2である。
【0078】
上記実施態様のうちの幾つかでは、XはOであり、nはOであり、そして、Rはメチル又はCDである。幾つかの実施態様では、XはOであり、nは0であり、そして、Rはメチルである。
【0079】
また、以下の表1の化合物又はその薬学的に許容し得る塩から選択される化合物も本明細書に提供される。別の実施態様では、本明細書に記載のものを含むRIP1Kの生化学又は細胞ベースアッセイにおいて100nM未満のKを有する表1の化合物が本明細書に提供される。別の実施態様では、表1の化合物は、本明細書に記載のものを含むRIP1Kの生化学又は細胞ベースアッセイにおいて50nM未満のKを有する。更に別の実施態様では、表1の化合物は、本明細書に記載のものを含むRIP1Kの生化学又は細胞ベースアッセイにおいて25nM未満のKを有する。更に別の実施態様では、表1の化合物は、本明細書に記載のものを含むRIP1Kの生化学又は細胞ベースアッセイにおいて10nM未満のKを有する。
【0080】
幾つかの実施態様では、そのキラル分離及び単離(例えば、キラルSFCによって実施例に記載のとおり)を参照することによって特徴付けられる、表1の化合物の単一の立体異性体が本明細書に提供される。
【0081】
幾つかの実施態様では、上記実施態様のいずれか1つに記載の式Iの化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、1つ以上の薬学的に許容し得る担体又は賦形剤とを含む医薬組成物が本明細書に提供される。特定の実施態様は、経口送達に好適な医薬組成物を含む。
【0082】
また、経口送達に好適な、上記実施態様のいずれか1つに記載の式Iの化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、1つ以上の薬学的に許容し得る担体又は賦形剤との経口製剤も本明細書に提供される。
【0083】
また、非経口送達に好適な、式Iの化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、1つ以上の薬学的に許容し得る担体又は賦形剤との非経口製剤も本明細書に提供される。
【0084】
幾つかの実施態様では、疾患及び障害を処置するための、式Iの化合物又はその薬学的に許容し得る塩の使用が本明細書に提供される。幾つかの実施態様では、処置される疾患及び障害は、過敏性腸障害(IBD)、過敏性腸症候群(IBS)、クローン病、潰瘍性大腸炎、心筋梗塞、脳卒中、外傷性脳損傷、アテローム性動脈硬化症、腎臓、肝臓、及び肺の虚血再灌流障害、シスプラチン誘導性腎傷害、敗血症、全身性炎症反応症候群(SIRS)、膵炎、乾癬、網膜色素変性症、網膜変性症、慢性腎疾患、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)からなる群から選択される。
【0085】
幾つかの実施態様では、処置される疾患及び障害は、炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む)、乾癬、網膜剥離、網膜色素変性症、黄斑変性症、膵炎、アトピー性皮膚炎、関節炎(関節リウマチ、変形性関節炎、脊椎関節炎、痛風、全身型若年性特発性関節炎(SoJIA)、乾癬性関節炎を含む)、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、全身性強皮症、抗リン脂質症候群(APS)、脈管炎、肝損傷/疾患(非アルコール性脂肪性肝炎、アルコール性脂肪性肝炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性肝胆汁性疾患、原発性硬化性胆管炎(PSC)、アセトアミノフェン中毒、肝毒性)、腎損傷/傷害(腎炎、腎移植、手術、腎毒性薬物、例えばシスプラチンの投与、急性腎傷害(AKI))、セリアック病、自己免疫性特発性血小板減少性紫斑病、移植拒絶反応、実質臓器の虚血再灌流傷害、敗血症、全身性炎症反応症候群(SIRS)、脳血管発作(CVA、脳卒中)、心筋梗塞(MI)、アテローム性動脈硬化症、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、アレルギー性疾患(喘息及びアトピー性皮膚炎を含む)、多発性硬化症、I型糖尿病、ウェゲナー肉芽腫症、肺サルコイドーシス、ベーチェット病、インターロイキン-1変換酵素(ICE、カスパーゼ-1としても知られている)関連発熱症候群、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、腫瘍壊死因子受容体関連周期熱症候群(TRAPS)、歯周炎、NEMO-欠乏症候群(F-カッパ-B必須調節因子遺伝子(IKKガンマ又はIKKGとしても知られている)欠乏症候群)、HOIL-1欠乏((RBCKlとしても知られている)ヘム酸化IRP2ユビキチンリガーゼ-1欠乏)、直鎖ユビキチンアセンブリ複合体(LUBAC)欠乏症候群、血液及び実質臓器の悪性腫瘍、細菌感染症及びウイルス感染症(例えば、結核及びインフルエンザ)、並びにリソソーム蓄積症(特に、ゴーシェ病、そして、GM2、ガングリオシド蓄積症、αマンノース症、アスパルチルグルコサミン尿症、コレステリルエステル蓄積症、慢性ヘキソサミニダーゼA欠損症、シスチン蓄積症、ダノン病、ファブリー病、ファーバー病、フコース蓄積症、ガラクトシアリドーシス、GM1ガングリオシド蓄積症、ムコ脂質症、小児遊離シアル酸蓄積症、若年性ヘキソサミニダーゼA欠損症、クラッベ病、リソソーム酸リパーゼ欠損症、異染性白質萎縮症、ムコ多糖症、多種スルファターゼ欠損症、ニーマン-ピック病、神経セロイドリポフスチン症、ポンペ病、濃化異骨症、サンドホフ病、シンドラー病、シアル酸蓄積症、テイ・サックス、及びウォルマン病を含む)からなる群から選択される。
【0086】
幾つかの実施態様では、処置される疾患及び障害は、過敏性腸障害(IBD)、過敏性腸症候群(IBS)、クローン病、潰瘍性大腸炎、心筋梗塞、脳卒中、外傷性脳損傷、アテローム性動脈硬化症、腎臓、肝臓、及び肺の虚血再灌流障害、シスプラチン誘導性腎傷害、敗血症、全身性炎症反応症候群(SIRS)、膵炎、乾癬、網膜色素変性症、及び網膜変性症からなる群から選択される。
【0087】
幾つかの実施態様では、神経変性の疾患及び障害を処置するための、上記実施態様のいずれか1つに記載の式Iの化合物又はその薬学的に許容し得る塩の使用が本明細書に提供される。幾つかの実施態様では、処置される疾患及び障害は、シヌクレイン病、例えば、パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、パーキンソンプラス症候群である。幾つかの実施態様では、処置される疾患及び障害は、タウオパチー、例えば、アルツハイマー病及び前頭側頭型認知症である。幾つかの実施態様では、処置される疾患及び障害は、脱髄性疾患、例えば、多発性硬化症である。
【0088】
幾つかの実施態様では、処置される疾患及び障害は、他の神経変性疾患、例えば、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、原発性側索硬化症、ハンチントン病、虚血、及び脳卒中である。本明細書に提供されるとき、処置される追加の例示的な神経変性疾患は、頭蓋内出血、脳出血、筋ジストロフィー、進行性筋萎縮症、仮性球麻痺、進行性球麻痺、脊髄性筋萎縮症、遺伝性筋萎縮症、末梢神経障害、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、及び脱髄性疾患を含むが、これらに限定されない。
【0089】
幾つかの実施態様では、処置される疾患又は障害は、アルツハイマー病である。幾つかの実施態様では、処置される疾患又は障害は、パーキンソン病である。幾つかの実施態様では、処置される疾患又は障害は、ハンチントン病である。幾つかの実施態様では、処置される疾患又は障害は、多発性硬化症である。幾つかの実施態様では、処置される疾患又は障害は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。幾つかの実施態様では、処置される疾患又は障害は、脊髄性筋萎縮症(SMA)である。
【0090】
幾つかの実施態様では、処置される疾患又は障害は、炎症性腸疾患である。幾つかの実施態様では、処置される疾患又は障害は、クローン病である。幾つかの実施態様では、処置される疾患又は障害は、潰瘍性大腸炎である。幾つかの実施態様では、処置される疾患又は障害は、緑内障である。幾つかの実施態様では、処置される疾患又は障害は、乾癬である。幾つかの実施態様では、処置される疾患又は障害は、関節リウマチである。幾つかの実施態様では、処置される疾患又は障害は、脊椎関節炎である。幾つかの実施態様では、処置される疾患又は障害は、若年性特発性関節炎である。幾つかの実施態様では、処置される疾患又は障害は、変形性関節炎である。
【0091】
幾つかの実施態様では、処置的に有効な量の式Iの化合物又はその薬学的に許容し得る塩を用いて疾患又は障害を治療又は予防する方法であって、該疾患又は障害が、炎症及び/又はネクロプトーシスに関連する方法が本明細書に提供される。幾つかの実施態様では、該疾患又は障害は、本明細書に列挙する特定の疾患及び障害から選択される。
【0092】
幾つかの実施態様では、細胞を式Iの化合物又はその薬学的に許容し得る塩と接触させることによって、RIP1キナーゼ活性を阻害する方法が本明細書に提供される。
【0093】
医薬組成物及び投与
本発明の化合物(又はその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、溶媒和物、代謝物、同位体、薬学的に許容し得る塩、若しくはプロドラッグ)と、処置的に不活性な担体、希釈剤、又は賦形剤とを含有する医薬組成物又は医薬に加えて、このような組成物及び医薬を調製するために本発明の化合物を使用する方法が本明細書に提供される。一例では、式Iの化合物は、周囲温度、適切なpH、及び所望の純度で、生理学的に許容し得る担体、すなわち、使用される投与量及び濃度でレシピエントに対して非毒性である担体と混合することによりガレヌス投与形態に製剤化することができる。製剤のpHは、主に、具体的な用途及び化合物の濃度に依存するが、好ましくは、約3~約8の範囲のいずれかである。一例では、式Iの化合物は、pH5の酢酸緩衝液中で製剤化される。別の実施態様では、式Iの化合物は、無菌である。該化合物は、例えば、固体若しくは非晶質の組成物として、凍結乾燥製剤として、又は水溶液として保存することができる。
【0094】
組成物は、良質の医療実施基準(good medical practice)に合致するように製剤化、調薬、及び投与される。この状況において考慮すべき要因は、処置される具体的な障害、処置される具体的な哺乳類、個々の患者の臨床状態、障害の原因、剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医師に公知の他の要因を含む。幾つかの実施態様では、投与される化合物の「有効量」は、このような考慮事項によって決定され、そして、処置される哺乳類において処置効果を提供するためにRIP1キナーゼ活性を阻害するのに必要な最低量である。更に、このような有効量は、正常細胞又は哺乳類全身に対して毒性のある量を下回り得る。
【0095】
一例では、1用量当たりの静脈内又は非経口的に投与される本発明の化合物の薬学的に有効な量は、1日当たり約0.1~100mg/kg(患者の体重)又は約0.1~20mg/kg、あるいは約0.3~15mg/kg/日の範囲である。
【0096】
別の実施態様では、錠剤及びカプセル剤等の経口単位剤形は、好ましくは、本発明の化合物 約1~約1000mg(例えば、1mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、40mg、50mg、100mg、200mg、250mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、又は1000mg)を含有する。日用量は、特定の実施態様では、単一の日用量として、又は1日に2~6回分割量で、又は徐放性形態で与えられる。70kgの成人の場合、合計日用量は、一般的に、約7mg~約1,400mgになる。この投与レジメンは、最適な処置応答を与えるように調整してよい。該化合物は、1日1~4回、好ましくは1日1回又は2回のレジメンで投与してよい。
【0097】
幾つかの実施態様では、有害作用を最小化又は予防しながら処置効果を提供するために、低用量の本発明の化合物が投与される。
【0098】
本発明の化合物は、経口、局所(頬側及び舌下を含む)、直腸内、膣内、経皮、非経口、皮下、腹腔内、肺内、皮内、くも膜下腔内、及び硬膜外、及び鼻腔内、並びに局所処置が望ましい場合、病巣内への投与を含む、任意の好適な手段によって投与してよい。非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、又は皮下への投与を含む。特定の実施態様では、式Iの化合物は経口投与される。他の特定の実施態様では、式Iの化合物は静脈内投与される。
【0099】
本発明の化合物は、任意の簡便な投与形態、例えば、錠剤、粉剤、カプセル剤、液剤、分散剤、懸濁剤、シロップ剤、スプレー剤、坐剤、ゲル剤、乳剤、パッチ剤等で投与してよい。このような組成物は、医薬調製品において慣用の成分、例えば、希釈剤、担体、pH調整剤、甘味剤、増量剤、及び更なる活性剤を含有していてよい。
【0100】
典型的な製剤は、本発明の化合物と担体又は賦形剤とを混合することによって調製される。好適な担体及び賦形剤は、当業者に周知であり、そして、例えば、Ansel, Howard C., et al., Ansel's Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems. Philadelphia: Philadelphia: Lippincott, Williams & Wilkins, 2004;Gennaro, Alfonso R., et al. Remington: The Science and Practice of Pharmacy. Philadelphia: Lippincott, Williams & Wilkins, 2000;及びRowe, Raymond C. Handbook of Pharmaceutical Excipients. Chicago, Pharmaceutical Press, 2005に詳細に記載されている。また、該製剤は、薬物(すなわち、本発明の化合物又はその医薬組成物)を美しく見せるために又は医薬品(すなわち、医薬)の製造を支援するために、1つ以上の緩衝剤、安定化剤、界面活性剤、湿潤剤、滑沢剤、乳化剤、懸濁化剤、保存剤、抗酸化剤、混濁剤(opaquing agent)、流動促進剤、加工助剤、着色剤、甘味剤、芳香剤、着香剤、希釈剤、及び他の公知の添加剤を含んでいてもよい。
【0101】
好適な担体、希釈剤、及び賦形剤は、当業者に周知であり、そして、炭水化物、ワックス、水溶性及び/又は膨潤性のポリマー、親水性又は疎水性の材料、ゼラチン、油、溶媒、水等の材料を含む。用いられる具体的な担体、希釈剤、又は賦形剤は、本発明の化合物が適用される手段及び目的に依存する。溶媒は、一般的に、哺乳類への投与が安全であると当業者によって認められている(GRAS)溶媒に基づいて選択される。一般に、安全な溶媒は、水等の非毒性水性溶媒、及び水に可溶性又は混和性である他の非毒性溶媒である。好適な水性溶媒は、水、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400、PEG300)等、及びこれらの混合物を含む。また、製剤は、薬物(すなわち、本発明の化合物又はその医薬組成物)を美しく見せるために又は医薬品(すなわち、医薬)の製造を支援するために、1つ以上の緩衝剤、安定化剤、界面活性剤、湿潤剤、滑沢剤、乳化剤、懸濁化剤、保存剤、抗酸化剤、混濁剤、流動促進剤、加工助剤、着色剤、甘味剤、芳香剤、着香剤、及び他の公知の添加剤を含んでいてもよい。
【0102】
許容し得る希釈剤、担体、賦形剤、及び安定剤は、使用される投与量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、そして、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸等の緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコール若しくはベンジルアルコール;メチルパラベン若しくはプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、若しくはイムノグロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、若しくはリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、若しくはソルビトール等の糖類;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);並びに/又はTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、若しくはポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。また、本発明の活性医薬成分(例えば、式Iの化合物又はその実施態様)は、例えば、コアセルベーション技術若しくは界面重合によって調製されるマイクロカプセル、例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロース若しくはゼラチンのマイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリラート)マイクロカプセルに、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子、及びナノカプセル)に、又はマクロエマルションに封入してもよい。このような技術は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy: Remington the Science and Practice of Pharmacy (2005) 21st Edition, Lippincott Williams & Wilkins, Philidelphia, PAに開示されている。
【0103】
本発明の化合物(例えば、式Iの化合物又はその実施態様)の徐放性調製品を調製することができる。徐放性調製品の好適な例は、式Iの化合物又はその実施態様を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、該マトリクスは、例えば、フィルム又はマイクロカプセル等の成形物品の形態である。徐放性マトリクスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリラート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸及びガンマ-エチル-L-グルタミン酸のコポリマー(Sidman et al., Biopolymers 22:547, 1983)、非分解性エチレン-酢酸ビニル(Langer et al., J. Biomed. Mater. Res. 15:167, 1981)、LUPRON DEPOT(商標)等の分解性乳酸-グリコール酸コポリマー(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドで構成される注入可能なミクロスフィア)、並びにポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸(欧州特許第133,988A号)を含む。また、徐放性組成物は、リポソームに封入された化合物も含み、これは、それ自体公知の方法によって調製することができる(Epstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 82:3688, 1985;Hwang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 77:4030, 1980;米国特許第4,485,045号及び同第4,544,545号;並びに欧州特許第102,324A号)。通常、リポソームは、脂質含量が約30モル%超のコレステロールである小さな(約200~800オングストローム)単層(unilamelar)型のものであり、選択される比率は、最適な療法に合わせて調整される。
【0104】
一例では、式Iの化合物又はその実施態様は、周囲温度、適切なpH、及び所望の純度で、生理学的に許容し得る担体、すなわち、使用される投与量及び濃度でレシピエントに対して非毒性である担体と混合することによって、ガレヌス投与形態に製剤化することができる。製剤のpHは、主に、具体的な用途及び化合物の濃度に依存するが、好ましくは、約3~約8の範囲のいずれかである。一例では、式Iの化合物(又はその実施態様)は、pH5の酢酸緩衝液中で製剤化される。別の実施態様では、式Iの化合物又はその実施態様は無菌である。該化合物は、例えば、固体若しくは非晶質の組成物として、凍結乾燥製剤として、又は水溶液として保存することができる。
【0105】
本明細書に提供される好適な経口剤形の例は、好適な量の無水ラクトース、クロスカルメロースナトリウム、ポリビニルピロリドン(PVP)K30、及びステアリン酸マグネシウムが配合された、本発明の化合物 約1~約500mg(例えば、約1mg、5mg、10mg、25mg、30mg、50mg、80mg、100mg、150mg、250mg、300mg、及び500mg)を含有する錠剤である。まず粉末状成分を混合し、次いで、PVPの溶液と混合する。得られた組成物を乾燥させ、造粒し、ステアリン酸マグネシウムと混合し、そして、従来の設備を用いて錠剤形態に圧縮してよい。
【0106】
本発明の化合物(例えば、式Iの化合物又はその実施態様)の製剤は、無菌の注射可能な水性又は油性の懸濁液等の無菌注射用調製品の形態であってよい。この懸濁液は、上述の好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を用いて公知の技術に従って製剤化することができる。また、無菌注射用調製品は、1,3-ブタンジオール溶液等の非毒性の非経口的に許容し得る希釈剤又は溶媒中の無菌の注射可能な溶液又は懸濁液であってもよく、凍結乾燥粉末として調製されてもよい。特に、使用することができる許容し得るビヒクル及び溶媒は、水、リンゲル液、及び等張塩化ナトリウム溶液である。更に、無菌固定油を従来とおり溶媒又は懸濁媒体として使用することができる。この目的のために、合成モノ-又はジグリセリドを含む任意のブランドの固定油を使用することができる。更に、オレイン酸等の脂肪酸を、注射剤の調製品において同様に使用することができる。
【0107】
単一の剤形を生成するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、処置されるホスト及び具体的な投与モードに応じて変動する。例えば、ヒトへの経口投与を意図する持続放出製剤は、全組成物の約5~約95%(重量:重量)で変動し得る適切かつ便利な量の担体材料が配合された、活性物質 約1~1000mgを含有し得る。医薬組成物は、投与のために容易に測定可能な量を提供するように調製することができる。例えば、静脈内注入を意図する水溶液は、約30mL/時の速度で好適な体積を注入できるようにするために、溶液1ミリリットル当たり活性成分 約3~500μgを含有し得る。
【0108】
非経口投与に好適な製剤は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び製剤を意図するレシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る水性及び非水性の無菌注射液;並びに懸濁化剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性の無菌懸濁液を含む。
【0109】
該製剤は、例えば、密閉されたアンプル及びバイアル等の単位用量又は多用量用の容器にパッケージ化してよく、そして、使用直前に注射用の無菌液体担体、例えば水を添加するだけでよいフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することができる。即時注射用の溶液及び懸濁液は、既に記載されている種類の無菌の散剤、顆粒剤、及び錠剤から調製される。
【0110】
したがって、実施態様は、式Iの化合物又はその薬学的に許容し得る塩を含む医薬組成物を含む。更なる実施態様は、薬学的に許容し得る担体又は賦形剤と共に、式Iの化合物又はその薬学的に許容し得る塩を含む医薬組成物を含む。
【0111】
結合標的が脳内に位置する場合、本発明の特定の実施態様は、血液脳関門を通過するための式Iの化合物(又はその実施態様)を提供する。これら実施態様では、本明細書に提供される化合物は、神経疾患における有望な処置薬として十分な脳透過性を示す。幾つかの実施態様では、脳透過性は、げっ歯類におけるインビボ薬物動態試験又は当業者に公知の他の方法(例えば、Liu, X. et al., J. Pharmacol. Exp. Therap., 325:349-56, 2008を参照)によって測定したときの遊離脳/血漿比(B/P)を評価することによって評価される。
【0112】
特定の神経疾患は、血液脳関門の透過性の増大に関連しているので、式Iの化合物(又はその実施態様)を容易に脳に導入することができる。血液脳関門が無傷のままである場合、物理的方法、脂質ベースの方法、並びに受容体及びチャネルベースの方法を含むがこれらに限定されない、該血液脳関門を越えて分子を輸送するための当技術分野において公知のアプローチが幾つか存在する。血液脳関門を越えて式Iの化合物(又はその実施態様)を輸送する物理的方法は、血液脳関門全体を迂回するか、又は血液脳関門に開口部を作製することを含むが、これらに限定されない。
【0113】
迂回方法は、脳への直接注入(例えば、Papanastassiou et al., Gene Therapy 9:398-406, 2002を参照)、間質注入/対流促進送達(例えば、Bobo et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91 :2076-2080, 1994を参照)、及び送達デバイスの脳への移植(例えば、Gill et al., Nature Med. 9:589-595, 2003;及びGliadel Wafers(商標)、Guildford.を参照)を含むが、これらに限定されない。
【0114】
関門に開口部を作製する方法は、超音波(例えば、米国特許公開第2002/0038086号を参照)、浸透圧(例えば、高張マンニトールを投与することによって(Neuwelt, E. A., Implication of the Blood-Brain Barrier and its Manipulation, Volumes 1 and 2, Plenum Press, N.Y., 1989))、及び例えばブラジキニン又は透過化剤A-7による透過処理(例えば、米国特許第5,112,596号、同第5,268,164号、同第5,506,206号、及び同第5,686,416号を参照)を含むが、これらに限定されない。
【0115】
血液脳関門を越えて式Iの化合物(又はその実施態様)を輸送する脂質ベースの方法は、血液脳関門の血管内皮上の受容体に結合する抗体結合断片に結合させたリポソームに式I又はI-Iの化合物(又はその実施態様)を封入すること(例えば、米国特許公開第2002/0025313号を参照)、及び低密度リポタンパク質粒子(例えば、米国特許公開第2004/0204354号を参照)又はアポリポタンパク質E(例えば、米国特許公開第2004/0131692号を参照)で式Iの化合物(又はその実施態様)をコーティングすることを含むが、これらに限定されない。
【0116】
血液脳関門を越えて式Iの化合物(又はその実施態様)を輸送する受容体及びチャネルベースの方法は、グルココルチコイド遮断剤を用いて血液脳関門の透過性を増大させること(例えば、米国特許公開第2002/0065259号、同第2003/0162695号、及び同第2005/0124533号を参照);カリウムチャネルを活性化させること(例えば、米国特許公開第2005/0089473号を参照)、ABC薬物輸送体を阻害すること(例えば、米国特許公開第2003/0073713号を参照);式I又はI-Iの化合物(又はその実施態様)をトランスフェリンでコーティングし、そして、1つ以上のトランスフェリン受容体の活性を調節すること(例えば、米国特許公開第2003/0129186号を参照)、及び抗体をカチオン化すること(例えば、米国特許第5,004,697号を参照)を含むが、これらに限定されない。
【0117】
脳内で使用する場合、特定の実施態様では、CNSの液貯留部(fluid reservoirs)に注入することによって該化合物を連続投与することができるが、ボーラス注入も許容可能である。阻害剤は、脳の脳室に投与してもよく、他の方法でCNS又は髄液に導入してもよい。留置カテーテル及び連続投与手段、例えばポンプを用いることによって投与を実施してもよく、例えば徐放性ビヒクルの脳内移植等の移植によって投与してもよい。より具体的には、該阻害剤は、慢性的に埋め込まれているカニューレを通して注入してもよく、浸透圧ミニポンプを利用して慢性的に注入してもよい。小さなチューブを通してタンパク質を脳室に送達する皮下ポンプが利用可能である。高機能ポンプは、皮膚を通して補充することができ、そして、その送達速度を外科的介入なしに設定することができる。皮下ポンプデバイスに関連する好適な投与プロトコール及び送達系、又は完全に埋め込まれた薬物送達系を通じた連続脳室内注入の例は、Harbaugh, J. Neural Transm. Suppl. 24:271, 1987及びDeYebenes et al., Mov. Disord. 2: 143, 1987に記載されているとおりの、ドーパミン、ドーパミンアゴニスト、及びコリン作動性アゴニストをアルツハイマー病患者及びパーキンソン病の動物モデルに投与するために用いられるものである。
【0118】
適応症及び処置方法
本発明の化合物は、RIP1キナーゼ活性を阻害する。したがって、本発明の化合物は、この経路によって媒介され、そして、炎症及び/又はネクロプトーシス細胞死に関連する疾患及び障害の処置に有用である。
【0119】
幾つかの実施態様では、処置される疾患又は障害は、神経変性の疾患又は障害である。幾つかの実施態様では、処置される疾患及び障害は、シヌクレイン病、例えば、パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、パーキンソンプラス症候群である。幾つかの実施態様では、処置される疾患及び障害は、タウオパチー、例えば、アルツハイマー病及び前頭側頭型認知症である。幾つかの実施態様では、処置される疾患及び障害は、脱髄性疾患、例えば、多発性硬化症である。
【0120】
幾つかの実施態様では、処置される疾患及び障害は、他の神経変性疾患、例えば、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、原発性側索硬化症、ハンチントン病、虚血、及び脳卒中である。本明細書に提供されるとき、処置される追加の例示的な神経変性疾患は、頭蓋内出血、脳出血、筋ジストロフィー、進行性筋萎縮症、仮性球麻痺、進行性球麻痺、脊髄性筋萎縮症、遺伝性筋萎縮症、末梢神経障害、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、及び脱髄性疾患を含むが、これらに限定されない。
【0121】
幾つかの実施態様では、処置される疾患又は障害は、アルツハイマー病である。幾つかの実施態様では、処置される疾患又は障害は、パーキンソン病である。幾つかの実施態様では、処置される疾患又は障害は、ハンチントン病である。幾つかの実施態様では、処置される疾患又は障害は、多発性硬化症である。幾つかの実施態様では、処置される疾患又は障害は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。幾つかの実施態様では、処置される疾患又は障害は、脊髄性筋萎縮症(SMA)である。
【0122】
幾つかの実施態様では、処置される疾患又は障害は、炎症性の疾患又は障害である。幾つかの実施態様では、処置される疾患及び障害は、炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む)、乾癬、網膜剥離、網膜色素変性症、黄斑変性症、膵炎、アトピー性皮膚炎、関節炎(関節リウマチ、変形性関節炎、脊椎関節炎、痛風、全身型若年性特発性関節炎(SoJIA)、乾癬性関節炎を含む)、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、全身性強皮症、抗リン脂質症候群(APS)、脈管炎、肝損傷/疾患(非アルコール性脂肪性肝炎、アルコール性脂肪性肝炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性肝胆汁性疾患、原発性硬化性胆管炎(PSC)、アセトアミノフェン中毒、肝毒性)、腎損傷/傷害(腎炎、腎移植、手術、腎毒性薬物、例えばシスプラチンの投与、急性腎傷害(AKI)、セリアック病、自己免疫性特発性血小板減少性紫斑病、移植拒絶反応、実質臓器の虚血再灌流傷害、敗血症、全身性炎症反応症候群(SIRS)、脳血管発作(CVA、脳卒中)、心筋梗塞(MI)、アテローム性動脈硬化症、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、アレルギー性疾患(喘息及びアトピー性皮膚炎を含む)、多発性硬化症、I型糖尿病、ウェゲナー肉芽腫症、肺サルコイドーシス、ベーチェット病、インターロイキン-1変換酵素(ICE、カスパーゼ-1としても知られている)関連発熱症候群、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、腫瘍壊死因子受容体関連周期熱症候群(TRAPS)、歯周炎、NEMO-欠乏症候群(F-カッパ-B必須調節因子遺伝子(IKKガンマ又はIKKGとしても知られている)欠乏症候群)、HOIL-1欠乏((RBCKlとしても知られている)ヘム酸化IRP2ユビキチンリガーゼ-1欠乏)、直鎖ユビキチンアセンブリ複合体(LUBAC)欠乏症候群、血液及び実質臓器の悪性腫瘍、細菌感染症及びウイルス感染症(例えば、結核及びインフルエンザ)、並びにリソソーム蓄積症(特に、ゴーシェ病、そして、GM2、ガングリオシド蓄積症、αマンノース症、アスパルチルグルコサミン尿症、コレステリルエステル蓄積症、慢性ヘキソサミニダーゼA欠損症、シスチン蓄積症、ダノン病、ファブリー病、ファーバー病、フコース蓄積症、ガラクトシアリドーシス、GM1ガングリオシド蓄積症、ムコ脂質症、小児遊離シアル酸蓄積症、若年性ヘキソサミニダーゼA欠損症、クラッベ病、リソソーム酸リパーゼ欠損症、異染性白質萎縮症、ムコ多糖症、多種スルファターゼ欠損症、ニーマン-ピック病、神経セロイドリポフスチン症、ポンペ病、濃化異骨症、サンドホフ病、シンドラー病、シアル酸蓄積症、テイ・サックス、及びウォルマン病を含む)からなる群から選択される。
【0123】
幾つかの実施態様では、処置される疾患又は障害は、炎症性腸疾患である。幾つかの実施態様では、処置される疾患又は障害は、クローン病である。幾つかの実施態様では、処置される疾患又は障害は、潰瘍性大腸炎である。幾つかの実施態様では、処置される疾患又は障害は、緑内障である。幾つかの実施態様では、処置される疾患又は障害は、乾癬である。幾つかの実施態様では、処置される疾患又は障害は、関節リウマチである。幾つかの実施態様では、処置される疾患又は障害は、脊椎関節炎である。幾つかの実施態様では、処置される疾患又は障害は、若年性特発性関節炎である。幾つかの実施態様では、処置される疾患又は障害は、変形性関節炎である。
【0124】
幾つかの実施態様では、本明細書に提供される処置方法は、上に列挙した疾患又は障害の1つ以上の症状の処置である。
【0125】
また、処置における本発明の化合物の使用も本明細書に提供される。幾つかの実施態様では、上記疾患及び障害を治療又は予防するための本発明の化合物の使用が本明細書に提供される。また、上記疾患及び障害を治療又は予防するための医薬の製造における本発明の化合物の使用も本明細書に提供される。
【0126】
また、このような処置を必要としている哺乳類における、上に提供された疾患又は障害を処置する方法であって、処置的に有効な量の式Iの化合物又はその薬学的に許容し得る塩を該哺乳類に投与することを含む方法も本明細書に提供される。幾つかの実施態様では、哺乳類は、ヒトである。
【0127】
また、このような処置を必要としている哺乳類における疾患又は障害の症状を処置する方法であって、該疾患又は障害が、過敏性腸障害(IBD)、過敏性腸症候群(IBS)、クローン病、潰瘍性大腸炎、心筋梗塞、脳卒中、外傷性脳損傷、アテローム性動脈硬化症、腎臓、肝臓、及び肺の虚血再灌流傷害、シスプラチン誘導性腎傷害、敗血症、全身性炎症反応症候群(SIRS)、膵炎、乾癬、網膜色素変性症、網膜変性症、慢性腎疾患、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、並びに慢性閉塞性肺疾患(COPD)からなる群から選択され、該方法が、処置的に有効な量の式Iの化合物又はその薬学的に許容し得る塩を該哺乳類に投与することを含む方法も本明細書に提供される。
【0128】
また、このような処置を必要としているヒト患者における疾患又は障害を処置する方法であって、該疾患又は障害が、上に提供されたものから選択され、該方法が、処置的に有効な量の式Iの化合物又はその薬学的に許容し得る塩を、経口的に許容し得る医薬組成物として経口投与することを含む方法も本明細書に提供される。
【0129】
併用療法
本発明の化合物は、本明細書に提供される疾患及び障害の処置において、1つ以上の本発明の他の化合物又は1つ以上の他の処置剤と、これらの任意の組み合わせとして併用してもよい。例えば、本発明の化合物は、上に列挙したものから選択される疾患又は障害の処置に有用であることが知られている他の処置剤と併用して同時に、逐次、又は別々に投与してよい。
【0130】
本明細書で使用するとき、「併用」とは、1つ以上の本発明の化合物と1つ以上の本発明の他の化合物又は1つ以上の更なる処置剤との任意の混合又は入れ替えを指す。文脈上特に明示しない限り、「併用」は、本発明の化合物を1つ以上の処置剤と同時に又は逐次送達することを含み得る。文脈上特に明示しない限り、「併用」は、本発明の化合物の剤形と別の処置剤の剤形との併用を含み得る。文脈上特に明示しない限り、「併用」は、本発明の化合物の投与経路と別の処置剤の投与経路との併用を含み得る。文脈上特に明示しない限り、「併用」は、本発明の化合物の製剤と別の処置剤の製剤との併用を含み得る。剤形、投与経路、及び医薬組成物は、本明細書に記載されるものを含むが、これらに限定されない。
【0131】
幾つかの実施態様では、本明細書に提供される化合物を、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる国際公開公報第2016/027253号に列挙されている別の処置的活性剤と併用してよい。このような実施態様では、国際公開公報第2016/027253号に列挙されている組み合わせにおけるRIP1キナーゼを阻害する化合物を、本開示の式Iの化合物によって置き換える。
【0132】
幾つかの実施態様では、本明細書に提供される化合物を、本明細書の他の箇所に列挙したもの等であり、そして、以下を含むがこれらに限定されない神経変性の疾患及び障害を処置するためにDLK阻害剤と併用してよい:パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、パーキンソンプラス症候群、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、脱髄性疾患、例えば、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、原発性側索硬化症、ハンチントン病、虚血、脳卒中、頭蓋内出血、脳出血、筋ジストロフィー、進行性筋萎縮症、仮性球麻痺、進行性球麻痺、脊髄性筋萎縮症、遺伝性筋萎縮症、末梢神経障害、進行性核上性麻痺、及び大脳皮質基底核変性症。DLK阻害剤は、例えば、国際公開公報第2013/174780号、同第2014/177524号、同第2014/177060号、同第2014/111496号、同第2015/091889号、及び同第2016/142310号に記載されている。
【0133】
実施例
本発明は、以下の実施例を参照することによってより深く理解される。しかし、該実施例は、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0134】
これら実施例は、本発明の化合物、組成物、及び方法を調製及び使用するために当業者に指針を与える役割を果たす。本発明の特定の実施態様について説明するが、当業者であれば、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な変更及び改変を行い得ることを理解するであろう。
【0135】
記載される実施例における化学反応は、多数の本発明の他の化合物を調製するために容易に適応させることができ、そして、本発明の化合物を調製するための代替方法は本発明の範囲内であるとみなされる。例えば、本発明に係る例示されていない化合物の合成は、例えば、干渉基を適切に保護することによって、当技術分野において公知の他の好適な試薬を利用することによって、例えば、記載されているもの以外の当技術分野において公知の他の好適な試薬を利用することにより干渉基を適切に保護することによって、及び/又は反応条件を通例通り改変することによって等、当業者には明らかな改変によって成功裏に実施することができる。
【0136】
以下の実施例では、特に指定しない限り、全ての温度を摂氏温度で記載する。市販されている試薬は、Aldrich Chemical Company、Lancaster、TCI、又はMaybridge等の供給元から購入し、そして、特に指定しない限り、更に精製することなく使用した。以下に記載する反応は、一般的に、陽圧の窒素若しくはアルゴン下で又は無水溶媒中(特に記載しない限り)で乾燥管を用いて行われ、そして、反応フラスコは、典型的には、シリンジを介して基質及び試薬を導入するためのゴム隔壁を備える。ガラス器具は、オーブン乾燥及び/又は加熱乾燥させた。H NMRスペクトルは、参照標準としてトリメチルシラン(TMS)又は残留非重水素化溶媒のピークを用いて、重水素化されたCDCl、d-DMSO、CHOD、又はd-アセトン溶媒溶液中で得た(ppmで報告)。ピークの多重度を報告するとき、以下の略記を用いる:s(シングレット)、d(ダブレット)、t(トリプレット)、q(カルテット)、m(マルチプレット、br(ブロード)、dd(ダブルダブレット)、dt(ダブルトリプレット)。カップリング定数は、与えられる場合、Hz(ヘルツ)で報告される。
【0137】
試薬、反応条件、又は機器を記載するために用いられる全ての略記は、以下の略記のリストに記載する定義と一致することを意図する。本発明の個別の化合物の化学名は、典型的には、ChemDraw命名プログラムの構造命名法を用いて得た。
【0138】
略記
ACN アセトニトリル
Boc tert-ブトキシカルボニル
DAST ジエチルアミノ硫黄トリフルオリド
DCE 1,2-ジクロロエタン
DCM ジクロロメタン
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
DPPH 2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル
HPLC 高圧液体クロマトグラフィー
LCMS 液体クロマトグラフィー質量分析
PCC クロロクロム酸ピリジニウム
RP 逆相
RT又はR 保持時間
SEM 2-(トリメチルシリル)エトキシメチル
SFC 超臨界流体クロマトグラフィー
TBDMS tert-ブチルジメチルシリル
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
【0139】
合成スキーム
以下の実施例の具体的な合成方法に加えて、例えば、以下の合成スキームに従って、更なる本発明の化合物を調製することもできる。
【0140】
スキーム1~4は、本明細書における実施例に提供される化学中間体の調製を示す。更に、式Iの化合物を調製するために必要な二環式中間体(すなわち、式I中のA環及びB環によって表される)は、国際公開公報第2017/004500号(その全体が参照により本明細書に組み入れられる)に記載の手順に従って調製することができる。
【化15】

【化16】
【0141】
スキーム3に従って、ハロゲン化物及びシアン化物の供給源を含むがこれらに限定されない様々な求核剤を使用して、更なる多様なB環の式Iの化合物が調製される。
【化17】
【0142】
スキーム4に従って、gem-ジメチルB環置換された式Iの化合物が調製される。
【化18】
【0143】
国際公開公報第2017/004500号(その全体が参照により本明細書に組み入れられる)に記載の手順に従って、以下の中間体を使用した:
【化19】
【0144】
次いで、以下の例示的な反応を使用して、スキーム5に従って式Iの特定の化合物を調製する:
【化20】
【0145】
モノ-フッ素化中間体の例示的な調製:
【化21】

工程1: 3,5-ジブロモ-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-1,2,4-トリアゾール
テトラヒドロフラン(1500mL)中の3,5-ジブロモ-1h-1,2,4-トリアゾール(150.0g、661.2mmol)の溶液に、p-トルエンスルホン酸(17.1g、99.2mmol)をゆっくりと加え、続いて3,4-ジヒドロ-2h-ピラン(166.9g、1983.6mmol)を0℃で加えた。添加後、反応混合物を70℃で3時間加熱し、減圧下で濃縮した。残留物を水(500mL)に注ぎ、飽和重炭酸ナトリウム水溶液の添加によりpH=9に調整した。得られた混合物を酢酸エチル(3×400mL)で抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。得られた粗生成物をメタノール(2×50mL)で洗浄し、減圧下で乾燥して、粗3,5-ジブロモ-1-テトラヒドロピラン-2-イル-1,2,4-トリアゾール(155g、75%)を白色の固体として与えた。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.49 - 5.46 (m, 1H), 4.12 - 3.99 (m, 1H), 3.72 - 3.61 (m, 1H), 2.38 - 2.26 (m, 1H), 2.18 - 2.07 (m, 1H), 1.98 - 1.90 (m, 1H), 1.78 - 1.60 (m, 3H)。
【0146】
工程2: 1-フェニルブタ-3-エン-1-オール
テトラヒドロフラン(1000mL)中のベンズアルデヒド(130g、1.23mol)の冷却した溶液(0℃)に、アリルマグネシウムクロリド(THF中2M、858mL、1.72mol)を30分にわたって加えた。添加後、反応混合物を室温まで放温し、2時間撹拌した。次に、混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液(1000mL)の添加によりクエンチし、酢酸エチル(3×500mL)で抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。残留物を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、100~200メッシュ、石油エーテル中酢酸エチル0~5%)により精製して、1-フェニルブタ-3-エン-1-オール(140g、77%)を淡黄色の油状物として与えた。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.37 - 7.34 (m, 4H), 7.29 - 7.26 (m, 1H), 5.83 - 5.75 (m, 1H), 5.21 - 5.08 (m, 2H), 4.76 - 4.69 (m, 1H), 2.55 - 2.45 (m, 2H), 2.12 (d, J=2.8 Hz, 1H)。
【0147】
工程3: tert-ブチルジメチル((1-フェニルブタ-3-エン-1-イル)オキシ)シラン
ジクロロメタン(400mL)中の1-フェニル-3-ブテン-1-オール(29.0g、195.7mmol)の撹拌した溶液に、イミダゾール(27.0g、391.6mmol)及びtert-ブチルジメチルクロロシラン(39.0g、254.4mmol)を加えた。添加後、反応混合物を25℃で16時間撹拌し、次に、水(200mL)の添加によりクエンチした。混合物をジクロロメタン(2×200mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、そして減圧下で濃縮した。残留物を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、100~200メッシュ、石油エーテル100%)により精製して、tert-ブチル-ジメチル-(1-フェニルブタ-3-エノキシ)シラン(43.0g、84%)を無色の油状物として与え、次の工程でそのまま用いた。
【0148】
工程4: 3-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-3-フェニルプロパナール
テトラヒドロフラン/水(600mL、1:1)中のtert-ブチル-ジメチル-(1-フェニルブタ-3-エノキシ)シラン(50.0g、190.5mmol)の溶液に、四酸化オスミウム(968mg、3.8mmol)を加えた。15℃で30分間撹拌した後、過ヨウ素酸ナトリウム(163g、762.0mmol)を2時間にわたって少量ずつ加えた。得られた混合物を30℃で更に2時間撹拌し、次に、冷飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(500mL)の添加によりクエンチした。混合物を30分間撹拌し、次に、酢酸エチル(3×400mL)で抽出した。合わせた有機層を水(200mL)、ブライン(200mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、そして減圧下で濃縮した。残留物を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、100~200メッシュ、石油エーテル中酢酸エチル0~10%)により精製して、3-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ-3-フェニル-プロパナール(33.0g、65%)を黄色の油状物として与えた。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 9.94 (t, J=2.4 Hz, 1H), 7.48 (d, J=4.2 Hz, 4H), 7.44 - 7.39 (m, 1H), 5.37 - 5.34 (m, 1H), 2.99 - 2.97 (m, 1H), 2.80 - 2.75 (m, 1H), 1.01 (s, 9H), 0.19 (s, 3H), 0.00 (s, 3H)。
【0149】
工程5: 1-(3-ブロモ-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)-3-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-3-フェニルプロパン-1-オール
テトラヒドロフラン(400mL)中の3,5-ジブロモ-1-テトラヒドロピラン-2-イル-1,2,4-トリアゾール(39.0g、125.4mmol)の冷却した溶液(-78℃)に、n-ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M、55.0mL、137.5mmol)をN雰囲気下で滴下した。混合物を-78℃で30分間撹拌し、次に、テトラヒドロフラン(50mL)中の3-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ-3-フェニル-プロパナール(33.0g、124.2mmol)の溶液を滴下した。添加後、混合物を-78℃で1.5時間撹拌し、次に、飽和塩化アンモニウム水溶液(500mL)の添加によりクエンチした。得られた混合物を酢酸エチル(3×300mL)で抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。残留物を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、100~200メッシュ、石油エーテル中酢酸エチル0~5%)により精製して、1-(3-ブロモ-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)-3-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-3-フェニルプロパン-1-オール(50.0g、80%)を淡黄色の油状物として与えた。
【0150】
【化22】

工程6: trans-2-ブロモ-5-フェニル-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-b][1,2,4]トリアゾール-7-オール
ジクロロメタン(150mL)中の1-(3-ブロモ-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)-3-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-3-フェニルプロパン-1-オール(50.0g、100.7mmol)の撹拌した溶液に、トリフルオロ酢酸(150mL)をゆっくりと加えた。得られた混合物を50℃で2時間加熱し、次に、減圧下で濃縮した。残留物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液でpH=9に調整し、ジクロロメタン(3×200mL)で抽出した。合わせた有機層を水(100mL)、ブライン(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、そして減圧下で濃縮した。残留物を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、100~200メッシュ、石油エーテル中酢酸エチル0~32%)により精製して、trans-2-ブロモ-5-フェニル-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-b][1,2,4]トリアゾール-7-オール(5.5g、20%)を黄色の固体として与え、(また、第2の画分(8.5g、30%)もtrans/cis生成物の4:3混合物として得た)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.46 - 7.32 (m, 3H), 7.15 (d, J=7.6 Hz, 2H), 5.65 (t, J=6.6 Hz, 1H), 5.50 (br s, 1H), 5.45 (d, J=6.4 Hz, 1H), 3.19 - 3.11 (m, 1H), 3.01 - 2.92 (m, 1H)。LCMS 保持時間=0.682分、m/z=279.8 [M+H]。LCMS(水中アセトニトリル5~95%+0.03%トリフルオロ酢酸 1.5分で)保持時間 0.682分、ESI+実測値 [M+H]=279.8。
【0151】
工程7:(5S,7S)-2-ブロモ-7-フルオロ-5-フェニル-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-b][1,2,4]トリアゾール及び(5R,7R)-2-ブロモ-7-フルオロ-5-フェニル-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-b][1,2,4]トリアゾール
ジクロロメタン(60mL)中のtrans-2-ブロモ-5-フェニル-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-b][1,2,4]トリアゾール-7-オール(3.0g、10.71mmol)の撹拌した溶液に、三フッ化ジエチルアミノ硫黄(7.8g、48.19mmol)を0℃でゆっくりと加えた。反応混合物を0℃で2.5時間撹拌し、次に撹拌した飽和重炭酸ナトリウム水溶液(100mL)内に0℃でゆっくりと加えた。混合物をジクロロメタン(3×100mL)で抽出した。合わせた有機層を水(100mL)、ブライン(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、そして減圧下で濃縮した。残留物を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、100~200メッシュ、石油エーテル中酢酸エチル0~20%)により精製して、ラセミのCis-2-ブロモ-7-フルオロ-5-フェニル-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-b][1,2,4]トリアゾール(1.5g、49%)を淡黄色の固体として、及びラセミのtrans-2-ブロモ-7-フルオロ-5-フェニル-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-b][1,2,4]トリアゾール(650mg、21%)を白色の固体として与えた。
Cis-2-ブロモ-7-フルオロ-5-フェニル-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-b][1,2,4]トリアゾール:1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.31 - 7.24 (m, 3H), 7.17 - 7.07 (m, 2H), 5.97 - 5.77 (m, 1H), 5.37 - 5.27 (m, 1H), 3.52 - 3.37 (m, 1H), 2.84 - 2.70 (m, 1H)。LCMS 保持時間=0.632分、m/z=281.9 [M+H]。LCMS(水中アセトニトリル5~95%+トリフルオロ酢酸0.03% 1.5分で)保持時間 0.632分、ESI+実測値 [M+H]=281.9。
trans-2-ブロモ-7-フルオロ-5-フェニル-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-b][1,2,4]トリアゾール:1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.58 - 7.29 (m, 3H), 7.24 - 7.05 (m, 2H), 6.14 - 5.93 (m, 1H), 5.70 - 5.65 (m, 1H), 3.41 - 3.25 (m, 1H), 3.04 - 2.87 (m, 1H)。
【0152】
ラセミのcis物質を、キラルSFCにより更に分離して任意に割り当てた:
(5R,7R)-2-ブロモ-7-フルオロ-5-フェニル-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-b][1,2,4]トリアゾール(ピーク1、保持時間=2.963分)(350mg、44%)を白色の固体として与えた。
(5S,7S)-2-ブロモ-7-フルオロ-5-フェニル-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-b][1,2,4]トリアゾール(ピーク2、保持時間=3.174分)(350mg、44%)を白色の固体として与えた。
SFC条件:カラム:Chiralpak AD-3 150×4.6mm I.D.、3um 移動相:A:CO2 B:エタノール(0.05% DEA) 勾配:5分でBの5%~40%、2.5分間40%保持、次に2.5分間Bの5%保持 流速:2.5mL/分。
【0153】
実施例1
【化23】

(4S,6S)-4-フルオロ-6-フェニル-N-[(3S)-5-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]-5,6-ジヒドロ-4H-ピロロ[1,2-b]ピラゾール-2-カルボキサミド
【0154】
【化24】

工程1: (2S)-2-(((tert-ブトキシ)カルボニル)アミノ)-3-((2-ニトロピリジン-3-イル)オキシ)プロパン酸
水素化ナトリウム(60%、2.0g、51.17mmol)を、N,N-ジメチルホルムアミド(100mL)中の(2S)-2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-ヒドロキシプロパン酸(5.0g、25.0mmol)の撹拌した溶液内に加えた。得られた混合物を0℃で2時間撹拌し、3-フルオロ-2-ニトロピリジン(3.6g、25.3mmol)を加えた。反応混合物を室温で更に8時間撹拌し、塩酸水溶液(3N、5mL)の添加によりクエンチした。混合物を塩酸水溶液(3N、20mL)でpH=3~4に調整し、酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、そして減圧下で濃縮した。残留物を、RP-HPLC(アセトニトリル5~55/水中ギ酸0.225%)により精製して、(2S)-2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-[(2-ニトロ-3-ピリジル)オキシ]プロパン酸(4.2g、53%)を黄色の固体として与えた。
【0155】
【化25】

工程2: (2S)-3-((2-アミノピリジン-3-イル)オキシ)-2-(((tert-ブトキシ)カルボニル)アミノ)プロパン酸
メタノール(50mL)中の(2S)-2-(((tert-ブトキシ)カルボニル)アミノ)-3-((2-ニトロピリジン-3-イル)オキシ)プロパン酸(3.0g、9.17mmol)とパラジウム(10%担持炭素、3.0g)との混合物を、室温で12時間水素化し(40psi)、次に、セライトの小さいパッドに通して濾過した。濾液を減圧下で濃縮して、粗(2S)-3-((2-アミノピリジン-3-イル)オキシ)-2-(((tert-ブトキシ)カルボニル)アミノ)プロパン酸(1.5g、55%)を黄色の油状物として与え、次の工程で更に精製することなく用いた。LCMS 保持時間=0.488分、m/z=297.9 [M+H]
LCMS(水中アセトニトリル5~95%+トリフルオロ酢酸0.03% 1.5分で)保持時間 0.488分、ESI+ 実測値 [M+H]=297.9。
【0156】
【化26】

工程3: tert-ブチル (S)-(4-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル)カルバマート
N,N-ジメチルホルムアミド(20mL)中の(2S)-3-((2-アミノピリジン-3-イル)オキシ)-2-(((tert-ブトキシ)カルボニル)アミノ)プロパン酸(1.5g、5.05mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(1.3g、10.9mmol)及びN,N,N’,N’-テトラメチル-O-(7-アザベンゾトリアゾール-l-イル)ウロニウム ヘキサフルオロホスファート(hexafluorophospate)(2.9g、7.57mmol)の混合物を、室温で6時間撹拌し、次に、水(20mL)の添加によりクエンチした。混合物を酢酸エチル(2×70mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、そして減圧下で濃縮した。残留物を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、100~200メッシュ、ジクロロメタン中メタノール0~10%)により精製して、tert-ブチル (S)-(4-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル)カルバマート(900mg、64%)を黄色の固体として与えた。LCMS 保持時間=0.720分、m/z=280.0 [M+H]
LCMS(水中アセトニトリル5~95%+トリフルオロ酢酸0.03% 1.5分で)保持時間 0.720分、ESI+ 実測値 [M+H]=280.0。
【0157】
【化27】

工程4: tert-ブチル (S)-(5-メチル-4-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル)カルバマート
ヨードメタン(0.13mL、2.11mmol)を、N,N-ジメチルホルムアミド(5mL)中のtert-ブチル N-((3S)-4-オキソ-2H,3H,4H,5H-ピリド[3,2-b][l,4]オキサゼピン-3-イル)カルバマート(590mg、2.11mmol)及び炭酸セシウム(690mg、2.12mmol)の撹拌溶液に滴下した。反応混合物を室温で3時間撹拌し、水(20mL)で希釈した。次に、混合物を酢酸エチル(3×20mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そして減圧下で濃縮した。残留物を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、100~200メッシュ、石油エーテル中酢酸エチル0~40%)により精製して、tert-ブチル (S)-(5-メチル-4-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル)カルバマート(350mg、57%)を黄色の固体として与えた。LCMS 保持時間=0.761分、m/z=294.1[M+H]
LCMS(水中アセトニトリル5~95%+トリフルオロ酢酸0.03% 1.5分で)保持時間 0.761分、ESI+ 実測値 [M+H]=294.1。
【0158】
【化28】

工程5: (S)-3-アミノ-5-メチル-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-4(5H)-オン塩酸塩
tert-ブチル (S)-(5-メチル-4-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル)カルバマート(350mg、1.19mmol)を、ジオキサン中の塩化水素の溶液(4.0M、10mL)に加えた。反応混合物を室温で3時間撹拌し、減圧下で濃縮して、粗((S)-3-アミノ-5-メチル-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-4(5H)-オン塩酸塩(400mg、99%)を白色の固体として与えた。LCMS 保持時間=0.360分、m/z=194.1 [M+H]
LCMS(水中アセトニトリル5~95%+トリフルオロ酢酸0.03% 1.5分で)保持時間 0.360分、ESI+ 実測値 [M+H]=194.1。
【0159】
【化29】

工程6: エチル 3-(1-ヒドロキシブタ-3-エン-1-イル)-1-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-1H-ピラゾール-5-カルボキシラート
ジクロロメタン(400mL)及び水(400mL)中のエチル 5-ホルミル-2-(2-トリメチルシリルエトキシメチル)ピラゾール-3-カルボキシラート(40.0g、134.0mmol)の溶液に、ヨウ化テトラブチルアンモニウム(4.95g、13.4mmol)及びカリウムアリルトリフルオロボラート(39.7g、268.1mmol)を加えた。添加後、混合物を25℃で2時間撹拌し、水(200mL)で希釈した。得られた混合物をジクロロメタン(3×200mL)で抽出した。合わせた有機層を水(100mL)、ブライン(300mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮して、粗エチル 5-(1-ヒドロキシブタ-3-エニル)-2-(2-トリメチルシリルエトキシメチル)ピラゾール-3-カルボキシラート(45.0g、99%)を黄色の油状物として与えた。この粗生成物を、更に精製することなく次の反応工程に用いた。
【0160】
【化30】

工程7: エチル 3-(1-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ブタ-3-エン-1-イル)-1-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-1H-ピラゾール-5-カルボキシラート
ジクロロメタン(400mL)中のエチル 5-(1-ヒドロキシブタ-3-エニル)-2-(2-トリメチルシリルエトキシメチル)ピラゾール-3-カルボキシラート(47.0g、138.04mmol)の溶液に、イミダゾール(28.2g、414.11mmol)及びtert-ブチルジメチルクロロシラン(31.2g、207.05mmol)を加えた。反応混合物を25℃で16時間撹拌した。次に、混合物を水(100mL)、ブライン(100mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、そして減圧下で濃縮した。残留物を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、100~200メッシュ、石油エーテル中酢酸エチル0~10%)により精製して、エチル 5-[1-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシブタ-3-エニル]-2-(2-トリメチルシリルエトキシメチル)ピラゾール-3-カルボキシラート(43.0g、69%)を無色の油状物として与えた。1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 6.87 (s, 1H), 5.83 - 5.76 (m, 3H), 5.06 - 5.02 (m, 2H), 4.86 - 4.83 (m, 1H), 4.38 - 4.35 (m, 2H), 3.57 - 3.53 (m, 2H), 1.39 (t, J=7.2 Hz, 3H), 0.87 (s, 9H), 0.06 (s, 3H), 0.06 - 0.05 (m, 12H)。
【0161】
【化31】

工程8: エチル 3-(1-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-3-オキソプロピル)-1-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-1H-ピラゾール-5-カルボキシラート
水(400mL)及びテトラヒドロフラン(400mL)中のエチル 5-[1-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシブタ-3-エニル]-2-(2-トリメチルシリルエトキシメチル)ピラゾール-3-カルボキシラート(40.0g、88.0mmol)の溶液に、四酸化オスミウム(1.5g、5.9mmol)を加えた。25℃で40分間撹拌した後、過ヨウ素酸ナトリウム(75.3g、351.8mmol)を2時間にわたって少量ずつ加えた。得られた混合物を25℃で1時間撹拌し、濾過した。濾液を飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(500mL)で希釈し、酢酸エチル(3×500mL)で抽出した。合わせた有機層を水(300mL)、ブライン(300mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、そして減圧下で濃縮した。残留物を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、100~200メッシュ、石油エーテル中酢酸エチル0~20%)により精製して、エチル 3-(1-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-3-オキソプロピル)-1-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-1H-ピラゾール-5-カルボキシラート(21.0g、52%)を無色の油状物として与えた。1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 9.82 - 9.81 (m, 1H), 6.88 (s, 1H), 5.83 (d, J=10.4, 1H), 8.76 (d, J=10.4, 1H), 5.37 - 5.35 (m, 1H), 4.38 - 4.34 (m, 2H), 3.58 - 3.54 (m, 2H), 2.90 - 2.88 (m, 1H), 2.87 - 2.76 (m, 1H), 1.41 - 1.37 (m, 3H), 0.88 (s, 11), 0.09 (s, 3H), -0.03 (s, 3H), -0.04 - -0.05 (s, 9H)。
【0162】
【化32】

工程9: エチル 3-(1-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-3-ヒドロキシ-3-フェニルプロピル)-1-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-1H-ピラゾール-5-カルボキシラート
テトラヒドロフラン(250mL)中のエチル 5-[1-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ-3-オキソ-プロピル]-2-(2-トリメチルシリルエトキシメチル)ピラゾール-3-カルボキシラート(11.0g、24.08mmol)の溶液に、フェニルマグネシウムブロミド(n-ヘキサン中1.0M、28.9mL、28.90mmol)を-78℃で30分にわたって加えた。0℃で2時間撹拌した後、混合物を飽和塩化アンモニウム溶液(100mL)の添加によりクエンチし、酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(80mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、そして減圧下で濃縮した。粗生成物を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、100~200メッシュ、石油エーテル中酢酸エチル0~20%)により精製して、エチル 5-[1-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ-3-ヒドロキシ-3-フェニル-プロピル]-2-(2-トリメチルシリルエトキシメチル)ピラゾール-3-カルボキシラート(11.5g、89%)を黄色の油状物として与えた。
【0163】
【化33】

工程10: エチル 4-ヒドロキシ-6-フェニル-5,6-ジヒドロ-4H-ピロロ[1,2-b]ピラゾール-2-カルボキシラート
トリフルオロ酢酸(97.7mL)中のエチル 3-(1-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-3-ヒドロキシ-3-フェニルプロピル)-1-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-1H-ピラゾール-5-カルボキシラート(11.5g、21.5mmol)の混合物を、55℃で2時間撹拌した。混合物を減圧下で濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、100~200メッシュ、石油エーテル中酢酸エチル0~40%)により精製して、エチル 4-ヒドロキシ-6-フェニル-5,6-ジヒドロ-4H-ピロロ[1,2-b]ピラゾール-2-カルボキシラート(4.1g、70%)を黄色の油状物として与えた。LCMS 保持時間=0.734分、m/z=273.1 [M+H]
LCMS(水中アセトニトリル5~95%+ギ酸0.1% 1.5分で)保持時間 0.734分、ESI+ 実測値 [M+H]=273.1。
【0164】
【化34】

工程11: (4R,6R)-エチル 4-フルオロ-6-フェニル-5,6-ジヒドロ-4H-ピロロ[1,2-b]ピラゾール-2-カルボキシラート及び(4S,6S)-エチル 4-フルオロ-6-フェニル-5,6-ジヒドロ-4H-ピロロ[1,2-b]ピラゾール-2-カルボキシラート
ジクロロメタン(50mL)中のエチル-ヒドロキシ-6-フェニル-5,6-ジヒドロ-4H-ピロロ[1,2-b]ピラゾール-2-カルボキシラート(2.2g、8.08mmol)の溶液に、三フッ化ジエチルアミノ硫黄(5.2g、32.32mmol)を0℃でゆっくりと加えた。0℃で2時間撹拌した後、混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液の添加によりクエンチし、ジクロロメタン(3×50mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(50mL)で洗浄し、乾燥し、そして減圧下で濃縮乾固した。残留物を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、100~200メッシュ、石油エーテル中酢酸エチル0~30%)により精製して、エチル cis-4-フルオロ-6-フェニル-5,6-ジヒドロ-4H-ピロロ[1,2-b]ピラゾール-2-カルボキシラート(500mg、23%)を黄色の油状物として与えた。
【0165】
この物質を、キラルSFCにより更に分離して、任意に割り当てられた(4R,6R)-エチル 4-フルオロ-6-フェニル-5,6-ジヒドロ-4H-ピロロ[1,2-b]ピラゾール-2-カルボキシラート(ピーク1、保持時間 2.641分)(140mg、28%)及びエチル (4S,6S)-4-フルオロ-6-フェニル-5,6-ジヒドロ-4H-ピロロ[1,2-b]ピラゾール-2-カルボキシラート(ピーク2、保持時間 3.400分)(160mg、32%)を両方とも黄色の油状物として与えた。
SFC条件:Chiralpak AD 250×30mm I.D.、5um; 超臨界CO2/EtOH+0.1% NH3.H2O=25/75; 50mL/分 カラム時間:40℃。
【0166】
【化35】

工程12: (4S,6S)-4-フルオロ-6-フェニル-5,6-ジヒドロ-4H-ピロロ[1,2-b]ピラゾール-2-カルボン酸
テトラヒドロフラン(5mL)、メタノール(1mL)及び水(1mL)中のエチル (4S,6S)-4-フルオロ-6-フェニル-5,6-ジヒドロ-4H-ピロロ[1,2-b]ピラゾール-2-カルボキシラート(160mg、0.58mmol)と水酸化リチウム一水和物(122mg、2.92mmol)の混合物を、20℃で16時間撹拌した。混合物を塩酸水溶液(1M)の添加によりpH=5に調整し、減圧下で濃縮した。残留物を、ジクロロメタン中メタノール10%の混合物(20mL)に加え、濾過した。濾液を減圧下で濃縮して、粗(4R,6R)-4-フルオロ-6-フェニル-5,6-ジヒドロ-4H-ピロロ[1,2-b]ピラゾール-2-カルボン酸(120mg、84%)を白色の固体として与えた。この粗生成物を、次の工程にそのまま用いた。
【0167】
【化36】

工程13: (4S,6S)-4-フルオロ-6-フェニル-N-[(3S)-5-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]-5,6-ジヒドロ-4H-ピロロ[1,2-b]ピラゾール-2-カルボキサミド
N,N-ジメチルホルムアミド(1mL)中の1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(4.9mg、0.04mmol)、(3S)-3-アミノ-5-メチル-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-4-オン塩酸塩(63.0mg、0.27mmol)、(4S,6S)-4-フルオロ-6-フェニル-5,6-ジヒドロ-4H-ピロロ[1,2-b]ピラゾール-2-カルボン酸(45.0mg、0.18mmol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(52.6mg、0.27mmol)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.08mL、0.46mmol)の混合物を、25℃で16時間撹拌した。混合物を減圧下で濃縮し、そして残留物をキラルSFC(カラム:DAICEL CHIRALCEL OD(250mm*30mm、10um)、0.1% NHO. EtOH、開始B 35%、終了B 35%、流速:80mL/分)により精製して、(4S,6S)-4-フルオロ-6-フェニル-N-[(3S)-5-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]-5,6-ジヒドロ-4H-ピロロ[1,2-b]ピラゾール-2-カルボキサミド(13mg、17%)を白色の固体として与えた。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.23 - 8.20 (m, 1H), 7.67 - 7.64 (m, 1H), 7.45 - 7.41 (m, 1H), 7.32 - 7.17 (m, 3H), 7.12 - 7.05 (m, 3H), 6.82 - 6.80 (m, 1H), 5.98 - 5.81 (m, 1H), 5.37 - 5.32 (m, 1H), 4.96 - 4.90 (m, 1H), 4.76 - 4.70 (m, 1H), 4.21 (t, J=6.0 Hz, 1H), 3.50 - 3.25 (m, 4H), 2.79 - 2.67 (m, 1H)。LCMS 保持時間=0.863分、m/z=422.1 [M+H]
LCMS(水中アセトニトリル5~95%+トリフルオロ酢酸0.03% 1.5分で)保持時間 0.863分、ESI+ 実測値 [M+H]=422.1。
【0168】
実施例2
【化37】

1-イソプロピル-N-[(3S)-5-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-カルボキサミド
N,N-ジメチルホルムアミド(2mL)中の(3S)-3-アミノ-5-メチル-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-4-オン塩酸塩(89.4mg、0.39mmol)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(45.9mg、0.34mmol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(65.1mg、0.34mmol)及び1-イソプロピルピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-カルボン酸(70.0mg、0.34mmol)の混合物を、10℃で20時間撹拌した。混合物を水(15mL)で希釈し、酢酸エチル(3×15mL)で抽出した。合わせた有機層を減圧下で濃縮し、そして残留物をRP-HPLC(アセトニトリル20~50/水中の水酸化アンモニア0.05%)により精製して、1-イソプロピル-N-[(3S)-5-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-カルボキサミド(44.7mg、34%)を白色の固体として与えた。1H NMR (400MHz, CD3OD) δ 9.36 (s, 1H), 8.39 - 8.35 (m, 2H), 7.71 - 7.69 (m, 1H), 7.35 - 7.32 (m, 1H), 5.45 - 5.42 (m, 1H), 5.11 - 5.09 (m, 1H), 4.81 - 4.77 (m, 1H), 4.63 - 4.53 (m, 1H), 3.51 (s, 3H), 1.60 (d, J=6.4 Hz, 6H)。LCMS 保持時間=0.958分、m/z=382.2 [M+H]
LCMS(水中アセトニトリル10~80%+トリフルオロ酢酸0.03% 2.0分で)保持時間 0.958分、ESI+ 実測値 [M+H]=383.2。
【0169】
実施例3及び4
【化38】

(4S)-4-(2-フルオロフェニル)-N-[(3S)-5-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]-6,7-ジヒドロ-4H-ピラゾロ[5,1-c][1,4]オキサジン-2-カルボキサミド及び(4R)-4-(2-フルオロフェニル)-N-[(3S)-5-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]-6,7-ジヒドロ-4H-ピラゾロ[5,1-c][1,4]オキサジン-2-カルボキサミド
N,N-ジメチルホルムアミド(3mL)中の(3S)-3-アミノ-5-メチル-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-4-オン塩酸塩(70.0mg、0.30mmol)、4-(2-フルオロフェニル)-6,7-ジヒドロ-4H-ピラゾロ[5,1-c][1,4]オキサジン-2-カルボン酸(90.0mg、0.34mmol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(129.0mg、0.67mmol)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(91.0mg、0.67mmol)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(158.0mg、1.22mmol)の混合物を、15℃で16時間撹拌した。反応混合物を水(50mL)で希釈し、酢酸エチル(2×30mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(2×30mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、そして減圧下で濃縮した。残留物を、分取TLC(石油エーテル中酢酸エチル70%)により精製して、4-(2-フルオロフェニル)-N-[(3S)-5-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]-6,7-ジヒドロ-4H-ピラゾロ[5,1-c][1,4]オキサジン-2-カルボキサミド(60mg、45%)を無色の油状物として与えた。LCMS 保持時間=0.696分、m/z=438.0 [M+H]
LCMS(水中アセトニトリル5~95%+トリフルオロ酢酸0.03% 1.5分で)保持時間 0.696分、ESI+ 実測値 [M+H]=438.0。
【0170】
このラセミ物質を、SFCにより更に分離して任意に割り当てられた:
(4S)-4-(2-フルオロフェニル)-N-[(3S)-5-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]-6,7-ジヒドロ-4H-ピラゾロ[5,1-c][1,4]オキサジン-2-カルボキサミド(ピーク1、保持時間=3.607分)(21.8mg、収率35%)を白色の固体として与えた。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.31 - 8.30 (m, 1H), 7.83 - 7.80 (m, 1H), 7.52 (d, J=8.0 Hz, 1H), 7.30 - 7.27 (m, 2H), 7.20 - 7.13 (m, 3H), 6.33 (s, 1H), 6.08 (s, 1H), 5.05 - 5.02 (m, 1H), 4.82 - 4.77 (m, 1H), 4.42 - 4.40 (m, 2H), 4.34 - 4.28 (m, 2H), 4.17 - 4.10 (m, 1H), 3.54 (s, 3H)。LCMS 保持時間=0.844分、m/z=438.1 [M+H]
LCMS(水中アセトニトリル5~95%+トリフルオロ酢酸0.03% 1.5分で)保持時間 0.844分、ESI+ 実測値 [M+H]=438.1。
(4R)-4-(2-フルオロフェニル)-N-[(3S)-5-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]-6,7-ジヒドロ-4H-ピラゾロ[5,1-c][1,4]オキサジン-2-カルボキサミド(ピーク2、保持時間=3.906分)(21.1mg、35%)を白色の固体として与えた。1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 8.31 (d, J=4.8 Hz, 1H), 7.83 - 7.81 (m, 1H), 7.52 (dd, J=1.6, 8.0 Hz, 1H), 7.40 - 7.30 (m, 2H), 7.20 - 7.12 (m, 3H), 6.33 (s, 1H), 6.09 (s, 1H), 5.05 - 5.02 (m, 1H), 4.82 - 4.78 (m, 1H), 4.43 - 4.40 (m, 2H), 4.35 - 4.29 (m, 2H), 4.20 - 4.16 (m, 1H), 3.54 (s, 3H)。LCMS 保持時間=0.840分、m/z=438.1 [M+H]
LCMS(水中アセトニトリル5~95%+トリフルオロ酢酸0.03% 1.5分で)保持時間 0.840分、ESI+ 実測値 [M+H]=438.1。
SFC条件:カラム:AD(250mm*30mm、5um)、移動相:A:CO2 B:メタノール(0.1% NHO) 勾配:Bの40%~5%に、カラム時間:15℃。
【0171】
実施例5
【化39】

(4S)-4-フェニル-N-[(3S)-5-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]-6,7-ジヒドロ-4H-ピラゾロ[5,1-c][1,4]オキサジン-2-カルボキサミド
N,N-ジメチルホルムアミド(0.5ml)中の(3S)-3-アミノ-5-メチル-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-4-オン塩酸塩(58.0mg、0.25mmol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(106.5mg、0.56mmol)、(4S)-4-フェニル-6,7-ジヒドロ-4h-ピラゾロ[5,1-C][1,4]オキサジン-2-カルボン酸(123.4mg、0.51mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.18mL、1.01mmol)及び1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(75.1mg、0.56mmol)の混合物を、15℃で4時間撹拌し、減圧下で濃縮した。残留物を、RP-HPLC(アセトニトリル29~59%/水中重炭酸アンモニウム0.05%)により精製して、(4S)-4-フェニル-N-[(3S)-5-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]-6,7-ジヒドロ-4H-ピラゾロ[5,1-c][1,4]オキサジン-2-カルボキサミド(21.2mg、18%)を黄色の固体として与えた。1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 8.33 - 8.32 (m, 1H), 7.66 - 7.64 (m, 1H), 7.37 (s, 5H), 7.31 - 7.27 (m, 1H), 6.18 (s, 1H), 5.81 (s, 1H), 5.00 - 4.96 (m, 1H), 4.66 - 4.61 (m, 1H), 4.50 - 4.44 (m, 1H), 4.40 - 4.28 (m, 3H), 4.23 - 4.15 (m, 1H), 3.46 (s, 3H)。LCMS 保持時間=1.015分、m/z=420.2 [M+H]
LCMS(水中アセトニトリル10~80%+トリフルオロ酢酸0.03% 2.0分で)保持時間 1.015分、ESI+ 実測値 [M+H]=420.2。
【0172】
実施例6
【化40】

(4S)-4-フェニル-N-[(2R,3S)-2,5-ジメチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]-6,7-ジヒドロ-4H-ピラゾロ[5,1-c][1,4]オキサジン-2-カルボキサミド
【0173】
【化41】

工程1:
(2S,3R)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-((2-ニトロピリジン-3-イル)オキシ)ブタン酸
水素化ナトリウム(60%、9.1g、228mmol)を、N,N-ジメチルホルムアミド(500mL)中の(2S,3R)-2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-ヒドロキシブタン酸(25.0g、114mmol)の撹拌した溶液に加えた。反応混合物を0℃で1時間撹拌し、3-フルオロ-2-ニトロピリジン(16.2g、114mmol)を加えた。添加後、反応混合物を室温で更に2時間撹拌し、次に、塩酸水溶液(aqueous hydrochloride acid)(3N、20mL)の添加によりクエンチした。混合物を塩化水素水溶液(3N、20mL)でpH=3~4に調整し、酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。残留物を、RP-HPLC(アセトニトリル5~50/水中ギ酸0.225%)により精製して、(2S,3R)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-((2-ニトロピリジン-3-イル)オキシ)ブタン酸(4.1g、11%)を黄色の固体として与えた。
【0174】
【化42】

工程2:
(2S,3R)-3-((2-アミノピリジン-3-イル)オキシ)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ブタン酸
メタノール(30mL)中の(2S,3R)-2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-(2-ニトロピリジン-3-イルオキシ)ブタン酸(3.2g、9.4mmol)とパラジウム(10%担持炭素、10g)の混合物を、室温で6時間水素化し(40psi)、次に濾過した。濾液を減圧下で濃縮して、(2S,3R)-3-((2-アミノピリジン-3-イル)オキシ)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ブタン酸(2.9g、99%)を黄色の油状物として与え、次の工程で更に精製することなく用いた。LCMS 保持時間=0.592分、m/z=312.2 [M+H]
LCMS(水中アセトニトリル5~95%+トリフルオロ酢酸0.03% 1.5分で)保持時間 0.592分、ESI+ 実測値 [M+H]=312.2。
【0175】
【化43】

工程3: tert-ブチル ((2R,3S)-2-メチル-4-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル)カルバマート
N,N-ジメチルホルムアミド(30mL)中の(2S,3R)-3-(2-アミノピリジン-3-イルオキシ)-2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)ブタン酸(2.9g、9.3mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(4.97mL,27.9mmol)及びΝ,Ν,Ν’,Ν’-テトラメチル-0-(7-アザベンゾトリアゾール-l-イル)ウロニウム ヘキサフルオロホスファート(3.9g、10.3mmol)の混合物を、室温で5時間撹拌し、次に、水(20mL)の添加によりクエンチした。混合物を酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、そして真空下で濃縮した。残留物を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、100~200メッシュ、ジクロロメタン中メタノール0~4%)により精製して、tert-ブチル ((2R,3S)-2-メチル-4-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル)カルバマート(1.8g、66%)を白色の固体として与えた。LCMS 保持時間=1.505分、m/z=294.2 [M+H]
LCMS(水中アセトニトリル10~80%+重炭酸アンモニウム0.05% 2分で)保持時間 1.505分、ESI+ 実測値 [M+H]=294.2
【0176】
【化44】

工程4: tert-ブチル ((2R,3S)-2,5-ジメチル-4-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル)カルバマート
ヨードメタン(0.17mL、2.73mmol)を、N,N-ジメチルホルムアミド(15mL)中のtert-ブチル(2R,3S)-2-メチル-4-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロピリド[3,2-b][l,4]オキサゼピン-3-イルカルバマート(800mg、2.73mmol)及び炭酸セシウム(888mg、2.73mmol)の撹拌した溶液に滴下した。添加後、反応混合物を室温で4時間撹拌し、次に、水(20mL)で希釈した。次に、混合物を酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、そして減圧下で濃縮した。残留物を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、100~200メッシュ、石油エーテル中酢酸エチル0~30%)により精製して、tert-ブチル ((2R,3S)-2,5-ジメチル-4-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル)カルバマート(500mg、60%)を白色の固体として与えた。
【0177】
【化45】

工程5:
(2R,3S)-3-アミノ-2,5-ジメチル-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-4(5H)-オン塩酸塩
Tert-ブチル (2R,3S)-2,5-ジメチル-4-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロピリド[3,2-b][l,4]オキサゼピン-3-イルカルバマート(500mg、1.63mmol)を、ジオキサン中の塩化水素の溶液(4.0M、10mL、40.0mmol)に加えた。反応混合物を室温で30分間撹拌し、減圧下で濃縮して、粗(2R,3S)-3-アミノ-2,5-ジメチル-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-4(5H)-オン塩酸塩(380mg 粗、96%)を白色の固体として与えた。LCMS 保持時間=0.399分、m/z=208.1 [M+H]
LCMS(水中アセトニトリル5~95%+トリフルオロ酢酸0.03% 1.5分で)保持時間 0.399分、ESI+ 実測値 [M+H]=208.1。
【0178】
【化46】

工程6:
(4S)-4-フェニル-N-[(2R,3S)-2,5-ジメチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]-6,7-ジヒドロ-4H-ピラゾロ[5,1-c][1,4]オキサジン-2-カルボキサミド
N,N-ジメチルホルムアミド(1mL)中の(2R,3S)-3-アミノ-2,5-ジメチル-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-4(5H)-オン塩酸塩(80mg、0.39mmol)、(4S)-4-フェニル-6,7-ジヒドロ-4H-ピラゾロ[5,1-c][1,4]オキサジン-2-カルボン酸(99.0mg、0.41mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(149.7mg、1.16mmol)及び1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム 3-オキシド へキサフルオロホスファート(154.1mg、0.41mmol)の混合物を、25℃で2時間撹拌し、そして減圧下で濃縮した。残留物を、RP-HPLC(アセトニトリル36~66%/水中水酸化アンモニア0.05%)により精製して、(4S)-4-フェニル-N-[(2R,3S)-2,5-ジメチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]-6,7-ジヒドロ-4H-ピラゾロ[5,1-c][1,4]オキサジン-2-カルボキサミド(15mg、9%)を白色の固体として与えた。1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 8.29 - 8.27 (m, 1H), 7.95 - 7.90 (m, 1H), 7.53 - 7.51 (m, 1H), 7.36 (s, 5H), 7.18 - 7.15 (m, 1H), 6.28 (s, 1H), 5.74 (s, 1H), 5.06 - 5.02 (m, 2H), 4.39 - 4.36 (m, 2H), 4.29 - 4.25 (m, 1H), 4.17 - 4.13 (m, 1H), 3.53 (s, 3H), 1.45 - 1.42 (m, 3H)。LCMS 保持時間=1.080分、m/z=434.2 [M+H]
LCMS(水中アセトニトリル10~80%+重炭酸アンモニウム0.05% 2分で)保持時間 1.080分、ESI+ 実測値 [M+H]=434.2。
【0179】
実施例7
【化47】

(4S)-4-フェニル-N-[(3S)-4-オキソ-5-(トリジュウテリオメチル)-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]-6,7-ジヒドロ-4H-ピラゾロ[5,1-c][1,4]オキサジン-2-カルボキサミド
【0180】
【化48】

工程1: tert-ブチル N-[(3S)-4-オキソ-5-(トリジュウテリオメチル)-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]カルバマート
N,N-ジメチルホルムアミド(3mL)中のtert-ブチル N-[(3S)-4-オキソ-3,5-ジヒドロ-2H-ピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]カルバマート(100mg、0.36mmol)と炭酸セシウム(233mg、0.72mmol)との混合物に、ヨードメタン-d(78mg、0.54mmol)を0℃で加えた。混合物を0℃で1時間、15℃で3時間撹拌し、次に濾過した。濾液を減圧下で濃縮した。残留物を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、100~200メッシュ、石油エーテル中酢酸エチル0~50%)により精製して、tert-ブチル N-[(3S)-4-オキソ-5-(トリジュウテリオメチル)-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]カルバマート(100mg、94%)を白色の固体として与えた。LCMS 保持時間=0.636分、m/z=297.1 [M+H]
LCMS(水中アセトニトリル5~95%+トリフルオロ酢酸0.03% 1.5分で)保持時間 0.636分、ESI+ 実測値 [M+H]=297.1
【0181】
【化49】

工程2: (3S)-3-アミノ-5-(トリジュウテリオメチル)-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-4-オン塩酸塩
tert-ブチル N-[(3S)-4-オキソ-5-(トリジュウテリオメチル)-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]カルバマート(60mg、0.20mmol)と塩酸(酢酸エチル中4M、10mL)との混合物を、15℃で2時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去して、粗(3S)-3-アミノ-5-(トリジュウテリオメチル)-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-4-オン塩酸塩(35mg、74%)を黄色の固体として与え、更に精製することなく次の工程で用いた。
【0182】
【化50】

工程3: (4S)-4-フェニル-N-[(3S)-4-オキソ-5-(トリジュウテリオメチル)-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]-6,7-ジヒドロ-4H-ピラゾロ[5,1-c][1,4]オキサジン-2-カルボキサミド
N,N-ジメチルホルムアミド(1mL)中の(3S)-3-アミノ-5-(トリジュウテリオメチル)-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-4-オン塩酸塩(35mg、0.15mmol)、(4S)-4-フェニル-6,7-ジヒドロ-4H-ピラゾロ[5,1-c][1,4]オキサジン-2-カルボン酸(39mg、0.16mmol)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム 3-オキシド へキサフルオロホスファート(60mg、0.16mmol)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(58mg、0.45mmol)の混合物を、25℃で2時間撹拌した。混合物を減圧下で濃縮し、そして残留物をRP-HPLC(アセトニトリル35~65%/水中水酸化アンモニウム0.05%)により精製して粗生成物を与え、これを分取TLC(石油エーテル中酢酸エチル50%、R=0.2)により更に精製して、(4S)-N-[(3S)-4-オキソ-5-(トリジュウテリオメチル)-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]-4-フェニル-6,7-ジヒドロ-4H-ピラゾロ[5,1-c][1,4]オキサジン-2-カルボキサミド(11.6mg、18%)を白色の固体として与えた。1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.27 - 8.32 (m, 1H),7.85 - 7.80 (m, 1H), 7.54 - 7.50 (m, 1H), 7.38 - 7.31 (m, 5H), 7.19 - 7.13 (m, 1H), 6.29 - 6.24 (m, 1H), 5.74 - 5.70 (m, 1H), 5.08 - 5.01 (m, 1H), 4.82 - 4.75 (m, 1H), 4.39 - 4.32 (m, 2H), 4.31 - 4.22 (m, 2H), 4.16 - 4.10 (m, 1H)。LCMS 保持時間=0.885分、m/z=423.0 [M+H]
LCMS(水中アセトニトリル5~95%+トリフルオロ酢酸0.03% 1.5分で)保持時間 0.885分、ESI+ 実測値 [M+H]=423.0。
【0183】
実施例8
【化51】

1-(1,1-ジフルオロプロピル)-N-[(3S)-5-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-カルボキサミド
【0184】
【化52】

工程1: 6-クロロ-1-テトラヒドロピラン-2-イル-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン
ジクロロメタン(25mL)中の6-クロロ-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン(1.25g、8.09mmol)、ピリジニウム p-トルエンスルホナート(203mg、0.81mmol)及び3,4-ジヒドロ-2h-ピラン(1.36g、16.17mmol)の混合物を、還流で6時間加熱し、減圧下で濃縮した。残留物を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、100~200メッシュ、石油エーテル中酢酸エチル0~40%)により精製して、6-クロロ-1-テトラヒドロピラン-2-イル-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン(1.8g、93%)を白色の固体として与えた。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 9.10 - 8.99 (m, 1H), 8.26 - 8.14 (m, 1H), 6.13 - 5.98 (m, 1H), 4.21 - 4.09 (m, 1H), 3.91 - 3.76 (m, 1H), 2.67 - 2.48 (m, 1H), 2.59 - 2.48 (m, 1H), 2.21 - 2.09 (m, 1H), 2.00 - 1.91 (m, 1H), 1.86 - 1.75 (m, 2H), 1.70 - 1.60 (m, 1H)。
【0185】
【化53】

工程2: 1-テトラヒドロピラン-2-イルピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-カルボニトリル
水(25mL)及び1,4-ジオキサン(25mL)中の6-クロロ-1-テトラヒドロピラン-2-イル-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン(1.80g、7.54mmol)の溶液に、ジ-tert-ブチル(2’,4’,6’-トリイソプロピル-[1,1’-ビフェニル]-2-イル)ホスフィン(320mg、0.75mmol)、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム三水和物(1.59g、3.77mmol)、[2-(2-アミノフェニル)フェニル]-メチルスルホニルオキシ-パラジウム ジtert-ブチル-[2-(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)フェニル]ホスファン(599mg、0.75mmol)及びパラジウム(II)アセタート(92mg、0.94mmol)を加えた。反応物を窒素雰囲気下、100℃で6時間撹拌し、セライトのショートパッドに通して濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、そして残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、100~200メッシュ、石油エーテル中酢酸エチル0~40%)により精製して、1-テトラヒドロピラン-2-イルピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-カルボニトリル(1.15g、66.5%)を淡黄色の固体として与え、更に精製することなく次の工程で用いた。
【0186】
【化54】

工程3: メチル 1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-カルボキシラート
1-テトラヒドロピラン-2-イルピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-カルボニトリル(1250mg、5.45mmol)と塩酸(メタノール中4M、15mL)との混合物を、40℃で3時間撹拌し、減圧下で濃縮して、粗メチル 1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-カルボキシラート(970mg、99%)を白色の固体として与え、更に精製することなく次の工程で用いた。
【0187】
【化55】

工程4: メチル 1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-カルボキシラート
N,N-ジメチルホルムアミド(6mL)中のメチル 1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-カルボキシラート(500mg、2.81mmol)、トリエチルアミン(568mg、5.61mmol)及び3-ブロモ-3,3-ジフルオロプロペン(660mg、4.21mmol)の混合物を、20℃で2時間撹拌し、セライトのショートパッドに通して濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、そして残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、100~200メッシュ、石油エーテル中酢酸エチル0~40%)により精製して、メチル 1-(1,1-ジフルオロアリル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-カルボキシラート(100mg、14%)を白色の固体として与えた。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 9.40 (s, 1H), 8.35 (s, 1H), 6.79 - 6.66 (m, 1H), 6.13 - 6.06 (m, 1H), 5.87 (d, J=11.2 Hz, 1H), 4.14 - 4.04 (m, 3H)。LCMS 保持時間=1.714分、m/z=255.1 [M+H]
LCMS(水中アセトニトリル0~60%+水酸化アンモニウム0.05% 3分で)保持時間 1.714分、ESI+ 実測値 [M+H]=255.1。
【0188】
【化56】

工程5: メチル 1-(1,1-ジフルオロプロピル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-カルボキシラート
メタノール(10mL)中のメチル 1-(1,1-ジフルオロアリル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-カルボキシラート(82mg、0.32mmol)とパラジウム(10%担持炭素、7mg)との混合物を、0℃で8分間水素化し(15psi)、濾過した。濾液を減圧下で濃縮して、粗メチル 1-(1,1-ジフルオロプロピル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-カルボキシラート(82mg、99%)を淡黄色の油状物として与えた。得られた粗生成物を、更に精製することなく次の工程で用いた。
【0189】
【化57】

工程6: 1-(1,1-ジフルオロプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-カルボン酸
水(1mL)/テトラヒドロフラン(2mL)中のメチル 1-(1,1-ジフルオロプロピル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-カルボキシラート(82mg、0.32mmol)の冷却した溶液に、水酸化リチウム一水和物(20mg、0.48mmol)を0℃で加えた。混合物を0℃で2時間撹拌し、減圧下で濃縮した。残留物を水(10mL)で希釈し、0℃で塩酸水溶液(1M)の添加によりpH=4に調整した。得られた混合物を酢酸エチル(2×20mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥し、減圧下で濃縮して、粗1-(1,1-ジフルオロプロピル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-カルボン酸(70mg、90%)を白色の固体として与え、更に精製することなく次の工程で用いた。
【0190】
【化58】

工程7: 1-(1,1-ジフルオロプロピル)-N-[(3S)-5-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-カルボキサミド
N,N-ジメチルホルムアミド(2mL)中の(3S)-3-アミノ-5-メチル-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-4-オン(16mg、0.08mmol)、1-(1,1-ジフルオロプロピル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-カルボン酸(20mg、0.08mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(32mg、0.25mmol)及び1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム 3-オキシド へキサフルオロホスファート(33mg、0.09mmol)の混合物を、20℃で4時間撹拌し、減圧下で濃縮した。残留物を、RP-HPLC(アセトニトリル29~59%/NHO 0.04%+水中10mM NHHCO)により精製して、1-(1,1-ジフルオロプロピル)-N-[(3S)-5-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-カルボキサミド(6.9mg、20%)を白色の固体として与えた。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 9.38 (s, 1H), 9.10 (d, J=5.6 Hz, 1H), 8.36 - 8.30 (m, 2H), 7.59 - 7.52 (m, 1H), 7.24 - 7.20 (m, 1H), 5.16 - 5.07 (m, 1H), 5.00 - 4.90 (m, 1H), 4.44 - 4.34 (m, 1H), 3.57 (s, 3H), 2.95 - 2.85 (m, 2H), 1.24 (t, J=7.6 Hz, 3H)。LCMS 保持時間=0.865分、m/z=418.1 [M+H]
LCMS(水中アセトニトリル5~95%+トリフルオロ酢酸0.03% 1.5分で)保持時間 0.865分、ESI+ 実測値 [M+H]=418.1。
【0191】
実施例9
【化59】

1-シクロペンチル-N-[(3S)-5-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-カルボキサミド
N,N-ジメチルホルムアミド(1mL)中の(3S)-3-アミノ-5-メチル-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-4-オン塩酸塩(79mg、0.34mmol)、1-シクロペンチルピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-カルボン酸(84mg、0.36mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.17mL、1.03mmol)及び1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム 3-オキシド へキサフルオロホスファート(137mg、0.36mmol)の混合物を、25℃で2時間撹拌し、減圧下で濃縮した。残留物を、RP-HPLC(アセトニトリル35~65%/水中水酸化アンモニア0.05%)により精製して、1-シクロペンチル-N-[(3S)-5-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-カルボキサミド(11.6mg、8%)を白色の固体として与えた。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 9.26 (s, 1H), 9.17 - 9.02 (m, 1H), 8.34 - 8.26 (m, 1H), 8.24 (s, 1H), 7.58 - 7.47 (m, 1H), 7.23 - 7.12 (m, 1H), 5.59 - 5.54 (m, 1H), 5.15 - 5.07 (m, 1H), 4.95 - 4.87 (m, 1H), 4.39 - 4.31 (m, 1H), 3.58 (s, 3H), 2.24 - 2.18 (m, 2H), 2.17 - 2.09 (m, 2H), 2.07 - 1.95 (m, 2H), 1.88 - 1.72 (m, 2H)。LCMS 保持時間=1.691分、m/z=408.2 [M+H]
LCMS(水中アセトニトリル10~80%+水酸化アンモニウム0.05% 3分で)保持時間 1.691分、ESI+実測値 [M+H]=408.2。
【0192】
実施例10
【化60】

(4R,6R)-4-フルオロ-6-フェニル-N-[(3S)-5-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロ-1,5-ベンゾオキサゼピン-3-イル]-5,6-ジヒドロ-4H-ピロロ[1,2-b]ピラゾール-2-カルボキサミド
【0193】
【化61】

工程1: (4R,6R)-4-フルオロ-6-フェニル-5,6-ジヒドロ-4H-ピロロ[1,2-b]ピラゾール-2-カルボン酸
テトラヒドロフラン(5mL)、メタノール(1mL)及び水(1mL)中のエチル (4R,6R)-4-フルオロ-6-フェニル-5,6-ジヒドロ-4H-ピロロ[1,2-b]ピラゾール-2-カルボキシラート(140mg、0.51mmol)と水酸化リチウム一水和物(107mg、2.55mmol)との混合物を、20℃で16時間撹拌した。混合物を塩酸水溶液(1M)の添加によりpH=5に調整し、減圧下で濃縮した。残留物に、ジクロロメタン中メタノール10%の混合物(20mL)を加え、濾過した。濾液を減圧下で濃縮して、粗(4R,6R)-4-フルオロ-6-フェニル-5,6-ジヒドロ-4H-ピロロ[1,2-b]ピラゾール-2-カルボン酸(120mg、96%)を白色の固体として与えた。この粗生成物を、次の工程にそのまま用いた。
【0194】
【化62】

工程2
(4R,6R)-4-フルオロ-6-フェニル-N-[(3S)-5-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロ-1,5-ベンゾオキサゼピン-3-イル]-5,6-ジヒドロ-4H-ピロロ[1,2-b]ピラゾール-2-カルボキサミド
N,N-ジメチルホルムアミド(3mL)中の(4R,6R)-4-フルオロ-6-フェニル-5,6-ジヒドロ-4H-ピロロ[1,2-b]ピラゾール-2-カルボン酸(55.0mg、0.22mmol)、(3S)-3-アミノ-5-メチル-2,3-ジヒドロ-1,5-ベンゾオキサゼピン-4-オン(42.9mg、0.22mmol)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(6.0mg、0.04mmol)及び1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(64.2mg、0.34mmol)の混合物を、25℃で16時間撹拌し、減圧下で濃縮した。残留物を、RP-HPLC(アセトニトリル36~66/水中水酸化アンモニア0.05%)により精製して、(4R,6R)-4-フルオロ-6-フェニル-N-[(3S)-5-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロ-1,5-ベンゾオキサゼピン-3-イル]-5,6-ジヒドロ-4H-ピロロ[1,2-b]ピラゾール-2-カルボキサミド(50mg、53%)を白色の固体として与えた。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.70 - 7.66 (m, 1H), 7.40 - 7.19 (m, 8H), 6.86 (s, 1H), 6.10 - 5.83 (m, 1H), 5.48 - 5.42 (m, 1H), 5.15 - 4.97 (m, 1H), 4.69 - 4.64 (m, 1H), 4.25 - 4.19 (m, 1H), 3.58 - 3.29 (m, 4H), 2.92 - 2.69 (m, 1H)。LCMS 保持時間=0.915分、m/z=421.1 [M+H]
LCMS(水中アセトニトリル5~95%+ギ酸0.1% 1.5分で)保持時間 0.915分、ESI+ 実測値 [M+H]=421.1。
【0195】
実施例11
【化63】

(4S,6S)-4-フルオロ-6-フェニル-N-[(3S)-5-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロ-1,5-ベンゾオキサゼピン-3-イル]-5,6-ジヒドロ-4H-ピロロ[1,2-b]ピラゾール-2-カルボキサミド
N,N-ジメチルホルムアミド(3mL)中の(4S,6S)-4-フルオロ-6-フェニル-5,6-ジヒドロ-4H-ピロロ[1,2-b]ピラゾール-2-カルボン酸(45.0mg、0.18mmol)、(3S)-3-アミノ-5-メチル-2,3-ジヒドロ-1,5-ベンゾオキサゼピン-4-オン(35.1mg、0.18mmol)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(4.9mg、0.04mmol)及び1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(52.6mg、0.27mmol)の混合物を、25℃で16時間撹拌し、減圧下で濃縮した。残留物を、RP-HPLC(アセトニトリル50~80/水中ギ酸0.225%)により精製して、(4S,6S)-4-フルオロ-6-フェニル-N-[(3S)-5-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロ-1,5-ベンゾオキサゼピン-3-イル]-5,6-ジヒドロ-4H-ピロロ[1,2-b]ピラゾール-2-カルボキサミド(27mg、34%)を白色の固体として与えた。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.69 - 7.66 (m, 1H), 7.37 - 7.33 (m, 3H), 7.24 - 7.13 (m, 5H), 6.87 (s, 1H), 6.07 - 5.86 (m, 1H), 5.42 (s, 1H), 5.07 - 5.00 (m, 1H), 4.76 - 4.70 (m, 1H), 4.26 - 4.18 (m, 1H), 3.57 - 3.30 (m, 4H), 2.93 - 2.72 (m, 1H)。LCMS 保持時間=0.895分、m/z=421.1 [M+H]
LCMS(水中アセトニトリル5~95%+ギ酸0.1% 1.5分で)保持時間 0.895分、ESI+ 実測値 [M+H]=421.1。
【0196】
実施例12
【化64】

1-(1,1-ジフルオロプロピル)-N-[(3S)-5-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-6-カルボキサミド
N,N-ジメチルホルムアミド(1mL)中の(3S)-3-アミノ-5-メチル-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-4-オン(15mg、0.08mmol)、1-(1,1-ジフルオロプロピル)ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-6-カルボン酸(19mg、0.08mmol)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(30mg、0.23mmol)及び1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム 3-オキシド へキサフルオロホスファート(31mg、0.08mmol)の混合物を、25℃で2時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、そして残留物をRP-HPLC(アセトニトリル45%~75%/水(水酸化アンモニア0.05%))により精製して、1-(1,1-ジフルオロプロピル)-N-[(3S)-5-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロピリド[3,2-b][1,4]オキサゼピン-3-イル]ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-6-カルボキサミド(3mg、9%)を白色の固体として与えた。1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 9.18 - 9.14 (m, 1H), 9.09 (d, J=0.8 Hz, 1H), 8.52 (s, 1H), 8.34 - 8.31 (m, 1H), 8.27 (s, 1H), 7.62 - 7.47 (m, 1H), 7.24 - 7.18 (m, 1H), 5.15 - 5.06 (m, 1H) 4.90 - 4.83 (m, 1H), 4.48 - 4.30 (m, 1H), 3.56 (s, 3H), 2.83 - 2.66 (m, 2H), 1.17 (t, J=7.6 Hz, 3H)。LCMS 保持時間=1.072分、m/z=417.2 [M+H]
LCMS(水中アセトニトリル10~80%+トリフルオロ酢酸0.03% 2.0分で)保持時間 1.072分、ESI+ 実測値 [M+H]=417.2。
【0197】
RIP1キナーゼ阻害アッセイ(生化学アッセイ)
以下に記載するとおり、RIP1K活性を阻害する能力について本発明の化合物を試験した。
【0198】
酵素アッセイ:プロテインキナーゼ(RIPK1)と相互作用してアデノシン-5’-三リン酸(ATP)の加水分解を触媒する受容体の能力を、Transcreener ADP(アデノシン-5’-二リン酸)アッセイ(BellBrook Labs)を用いてモニタリングする。バキュロウイルス感染昆虫細胞発現系に由来する精製されたヒトRIP1キナーゼドメイン(2~375)(50nM)を、30mM MgCl、1mM ジチオスレイトール、50μM ATP、0.002% Brij-35、及び0.5% ジメチルスルホキシド(DMSO)を含有する50mM Hepesバッファ(pH7.5)中で2時間試験化合物と共にインキュベートする。追加の12mM EDTA及び55μg/mL ADP2抗体及び4nM ADP-AlexaFluor(登録商標)633トレーサを含有する1×Bell Brooks StopバッファB(20mM Hepes(ph7.5)、40mM エチレンジアミン四酢酸、及び0.02% Brij-35)を添加することによって、反応をクエンチする。抗体に結合したトレーサは、RIP1K反応中に生成されたADPによって置き換えられ、これによって、FP microplate reader M1000を用いて633nmにおけるレーザ励起によって測定される蛍光偏光が減少する。試験物品濃度に対して画分活性をプロットした。Genedata Screenerソフトウェア(Genedata; Basel, Switzerland)を用いて、緊密結合の見掛けの阻害定数(K app)Morrison式[Williams, J.W. and Morrison, J. F. (1979) The kinetics of reversible tight-binding inhibition. Methods Enzymol 63: 437-67]にデータを当てはめた。以下の等式を用いて、画分活性及びK appを計算した:
【数1】

(式中、[E]及び[I]は、それぞれ、活性酵素及び試験物品の合計濃度である)。
【0199】
その物理化学的特性及びインビトロにおけるRIP1キナーゼ阻害活性のデータと共に、本発明の例示的な化合物を表1に提供する。各表の最初の列の「方法」とは、上記実施例に示したとおり各化合物を調製するために用いた合成方法を指す。特定の実施例では、特定の立体異性体についてのキラルカラム保持時間(分)を提供する。特に指定しない限り、各構造に示す立体化学は、単一の立体異性体の相対配置を表し、そして、絶対配置(すなわち、「R」及び/又は「S」)は任意で割り当てられる。幾つかの実施態様では、方法が立体異性体の分離を含むと記載されている場合、表1の化合物の単一の立体異性体が提供される。
【表2】


【0200】
本明細書において参照した米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、及び非特許刊行物は全て、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0201】
理解を促進するために本発明についていくらか詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲内で特定の変更及び改変を実施し得ることは明らかである。したがって、記載した実施態様は例示であり、そして、限定的ではないと解釈されるべきであり、そして、本発明は、本明細書に与えられる詳細な説明に限定されるものではないが、添付の特許請求の範囲の範囲及び等価物内で改変することができる。