(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】二次電池用の電極板及びそれを用いた二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20231207BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20231207BHJP
H01M 50/591 20210101ALI20231207BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20231207BHJP
H01M 50/534 20210101ALI20231207BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/66 A
H01M50/591 101
H01M50/533
H01M50/534
(21)【出願番号】P 2020561471
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2019049491
(87)【国際公開番号】W WO2020130000
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2018236843
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田島 寛之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲也
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-035901(JP,A)
【文献】特開2015-099658(JP,A)
【文献】特開平06-231754(JP,A)
【文献】特開平11-007962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13
H01M 4/66
H01M 50/591
H01M 50/533
H01M 50/534
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の芯体と、前記芯体の両面に形成された活物質層を有する二次電池用の電極板であって、
前記電極板は、第1端辺と、前記第1端辺から突出するタブを有し、
前記第1端辺は、前記芯体の厚み方向に突出する突出部を有し、
前記第1端辺の前記突出部の部分における前記芯体の厚みは、前記芯体において前記活物質層が形成されている部分の厚みよりも大きく、
前記第1端辺における前記芯体の端面には、フッ素を含有する被膜が形成されている、二次電池用の電極板。
【請求項2】
前記芯体はアルミニウム又はアルミニウム合金製である請求項
1に記載の二次電池用の電極板。
【請求項3】
前記被膜は、フッ素を含む樹脂被膜である請求項
1又は2に記載の二次電池用の電極板。
【請求項4】
前記被膜は、フッ化アルミニウムを含む被膜である請求項
1又は2に記載の二次電池用の電極板。
【請求項5】
前記タブの端面にも前記被膜が形成された請求項1~
4のいずれかに記載の二次電池用の電極板。
【請求項6】
前記被膜の厚みは1μm未満である請求項1~
5のいずれかに記載の二次電池用の電極板。
【請求項7】
前記活物質層が形成された部分の幅方向の端部には保護層が形成されており、
前記芯体の一方の面から前記突出部の上端までの高さを前記突出部の突出高さとしたとき、前記突出高さは前記保護層の厚さよりも小さい、請求項1~6のいずれかに記載の二次電池用の電極板。
【請求項8】
前記突出高さは、前記保護層の厚さの2/3以下である、請求項7に記載の二次電池用の電極板。
【請求項9】
前記請求項1~
8のいずれかに記載の電極板と、
前記電極板とは極性の異なる他の電極板と、を備えた二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二次電池用の電極板及びそれを用いた二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV、PHEV)等の駆動用電源において、アルカリ二次電池や非水電解質二次電池等の二次電池が使用されている。
【0003】
これらの二次電池は、電池ケース内に正極板、負極板及びセパレータからなる電極体が電解質と共に収容された構成を有する。電池ケースは、開口を有する外装体と、外装体の開口を封口する封口板から構成される。封口板には正極端子及び負極端子が取り付けられる。正極端子は正極集電体を介して正極板に電気的に接続され、負極端子は負極集電体を介して負極板に電気的に接続される。
【0004】
このような二次電池として、電極体における封口板側の端部に複数の正極タブからなる正極タブ群及び複数の負極タブからなる負極タブ群が設けられた二次電池が提案されている(下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、信頼性の高い二次電池を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る二次電池用の電極板は、
金属製の芯体と、前記芯体の両面に形成された活物質層を有する二次電池用の電極板であって、
前記電極板は、第1端辺と、前記第1端辺から突出するタブを有し、
前記第1端辺における前記芯体の端面には、フッ素を含有する被膜が形成されている。
【0008】
本発明の一形態に係る二次電池は、前記電極板と、前記電極板とは極性の異なる他の電極板と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、信頼性の高い二次電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図1におけるII-II線に沿った断面図である。
【
図3】(a)は正極原板の平面図である。(b)はタブ形成後の正極原板の平面図である。(c)は正極板の平面図である。
【
図4】(a)は
図3(c)におけるa-a線に沿った断面図である。(b)は
図3(c)におけるb-b線に沿った断面図である。
【
図5】(a)は負極原板の平面図である。(b)はタブ形成後の負極原板の平面図である。(c)は負極板の平面図である。
【
図7】第2正極集電体に正極タブ群を接続し、第2負極集電体に負極タブ群を接続した状態を示す図である。
【
図8】第1正極集電体及び第1負極集電体を取り付けた後の封口板の電極体側の面を示す図である。
【
図9】第1正極集電体に第2正極集電体を取り付け、第1負極集電体に第2負極集電体を取り付けた後の封口板の電極体側の面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態に係る二次電池としての角形二次電池20の構成を以下に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0012】
図1及び
図2に示すように角形二次電池20は、開口を有する有底角筒状の角形外装体1と、角形外装体1の開口を封口する封口板2からなる電池ケース100を備える。角形外装体1及び封口板2は、それぞれ金属製であることが好ましい。角形外装体1内には、正極板と負極板を含む電極体3が電解質と共に収容されている。
【0013】
電極体3の封口板2側の端部には、複数の正極タブ40からなる正極タブ群40Aと、複数の負極タブ50からなる負極タブ群50Aが設けられている。正極タブ群40Aは第2正極集電体6b及び第1正極集電体6aを介して正極端子7に電気的に接続されている。負極タブ群50Aは第2負極集電体8b及び第1負極集電体8aを介して負極端子9に電気的に接続されている。第1正極集電体6aと第2正極集電体6bが正極集電体6を構成している。なお、正極集電体6を一つの部品としてもよい。第1負極集電体8aと第2負極集電体8bが負極集電体8を構成している。なお、負極集電体8を一つの部品としてもよい。
【0014】
第1正極集電体6a、第2正極集電体6b及び正極端子7は金属製であることが好ましく、アルミニウム又はアルミニウム合金製であることがより好ましい。正極端子7と封口板2の間には樹脂製の外部側絶縁部材10が配置されている。第1正極集電体6a及び第2正極集電体6bと封口板2の間には樹脂製の内部側絶縁部材11が配置されている。
【0015】
第1負極集電体8a、第2負極集電体8b及び負極端子9は金属製であることが好ましく、銅又は銅合金製であることがより好ましい。また、負極端子9は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる部分と、銅又は銅合金からなる部分を有するようにすることが好ましい。この場合、銅又は銅合金からなる部分を第1負極集電体8aに接続し、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる部分を封口板2よりも外部側に突出するようにすることが好ましい。負極端子9と封口板2の間には樹脂製の外部側絶縁部材12が配置されている。第1負極集電体8a及び第2負極集電体8bと封口板2の間には樹脂製の内部側絶縁部材13が配置されている。
【0016】
電極体3と角形外装体1の間には樹脂製の樹脂シートからなる電極体ホルダー14が配置されている。電極体ホルダー14は、樹脂製の絶縁シートを袋状又は箱状に折り曲げ成形されたものであることが好ましい。封口板2には電解液注液孔15が設けられており、電解液注液孔15は封止部材16で封止されている。封口板2には、電池ケース100内の圧力が所定値以上となったときに破断し電池ケース100内のガスを電池ケース100外に排出するガス排出弁17が設けられている。
【0017】
次に角形二次電池20の製造方法及び各構成の詳細を説明する。
【0018】
[正極板]
まず、正極板の製造方法を説明する。
[正極活物質層スラリーの作製]
正極活物質としてのリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)、導電材としての炭素材料、及び分散媒としてのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)をリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物:PVdF:炭素材料の質量比が97.5:1:1.5となるように混練し、正極活物質層スラリーを作製する。
【0019】
[正極保護層スラリーの作製]
アルミナ粉末、導電材としての炭素材料、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)と分散媒としてのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を、アルミナ粉末:炭素材料:PVdFの質量比が83:3:14 となるように混練し、保護層スラリーを作製
する。
【0020】
[正極活物質層及び正極保護層の形成]
正極芯体としての厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に、上述の方法で作製した正極活物質層スラリー及び正極保護層スラリーをダイコータにより塗布する。このとき、正極芯体の幅方向の中央に正極活物質層スラリーが塗布される。また、正極活物質層スラリーが塗布される領域の幅方向の両端に正極保護層スラリーが塗布されるようにする。
【0021】
正極活物質層スラリー及び正極保護層スラリーが塗布された正極芯体を乾燥させ、正極活物質層スラリー及び正極保護層スラリーに含まれるNMPを除去する。これにより正極活物質層及び保護層が形成される。その後、一対のプレスローラの間を通過させることにより、正極活物質層を圧縮して正極原板400とする。
【0022】
図3(a)は、上述の方法で作製された正極原板400の平面図である。帯状の正極芯体4aの両面には、正極芯体4aの長手方向に沿って正極活物質層4bが形成されている。正極芯体4aにおいて、正極活物質層4bが形成された領域の幅方向の両端部には正極保護層4cが形成されている。そして、正極原板400の幅方向の両端部には、正極原板400の長手方向に沿って正極芯体露出部4dが形成されている。なお、正極活物質層4bの厚みは、正極保護層4cの厚みよりも大きいことが好ましい。正極芯体の一方の面に形成された正極保護層4cの厚みは10~100μmであることが好ましく、15~50μmとすることがより好ましい。
【0023】
図3(b)は、タブ形成後の正極原板401の平面図である。正極原板400の正極芯体露出部4dを所定形状に切断することにより、タブ形成後の正極原板401を作製する。正極原板400を切断しタブを形成する際は、レーザー等のエネルギー線の照射により正極原板400を切断することが好ましい。
【0024】
レーザー切断としては、連続発振(CW)レーザーを用いることが好ましい。レーザーの出力は、500W~1200Wであることが好ましく、550W~1000Wであることがより好ましく、600W~1000Wであることがさらに好ましい。レーザーの走査速度は100mm/s~5000mm/sであることが好ましい。但し、これに限定されない。なお、パルスレーザーを用いてもよい。
【0025】
タブ形成後の正極原板401においては、タブ形成後の正極原板401の幅方向の両端に複数の正極タブ40が形成される。なお、正極タブ40は正極芯体露出部4dからなる。
図3(b)に示すように、正極タブ40の根元、及び隣接する正極タブ40同士の間に形成されるタブ形成後の正極原板401の端辺に、正極保護層4cが残るように正極原板400を切断することが出来る。
【0026】
図3(c)は、正極板4の平面図である。まず、タブ形成後の正極原板401の長手方向に沿って、タブ形成後の正極原板401を幅方向における中央部で切断する。その後、タブ形成後の正極原板401の長手方向において、タブ形成後の正極原板401を所定間隔で切断することにより、正極板4を作製する。タブ形成後の正極原板401を切断する際は、レーザー切断、金型ないしカッターを用いた切断等を用いることができる。タブ形成後の正極原板401を切断は、金型ないしカッターを用いることが好ましい。
【0027】
図4(a)は、
図3(c)のa-a線に沿った断面図であり、正極板4において正極タブ40が突出する第1端辺4Aの断面図である。
図4(b)は、
図3(c)のb-b線に沿った断面図であり、正極タブ40の端部の断面図である。
【0028】
図4(a)に示すように、正極板4は、第1端辺4Aに沿って、正極芯体4aにおいて正極活物質層4bが形成されていない活物質層非形成部を有する。活物質層非形成部において、正極活物質層4bと隣接する部分には、正極保護層4cが形成されている。活物質層非形成領域の端部には、正極芯体4aの一方の面(
図4(a)では上面)から正極芯体4aの厚み方向に突出する突出部4x1が形成されている。そのため、第1端辺4Aにおける正極芯体4aの端部の厚みは、正極芯体4aにおいて表面に正極活物質層4bが形成されている部分の厚みよりも大きい。なお、正極芯体4aにおいて表面に正極活物質層4bが形成されている部分の厚みは、正極芯体4aにおいて表面に正極保護層4cが形成されている部分の厚みと略同じである。突出部4x1は、レーザー切断の際に正極芯体4aが溶融し凝固した部分である。突出部4x1は、レーザー切断の際に正極芯体4aにおいてレーザーが照射される側の面に生じやすい。
【0029】
第1端辺4Aにおける正極芯体4aの端面にはフッ素を含有する被膜4yが形成されている。このため、正極芯体4aの端面が露出した部分がセパレータと接触し、セパレータを損傷させることを抑制できる。なお、突出部4x1の表面にも被膜4yが形成されていることがより好ましい。また、正極芯体4aの端面が負極板5と接触した場合でも、大電流が流れることを抑制できる。なお、第1端辺4Aにおける正極芯体4aの端面の略全体に被膜4yが形成されていることが好ましい。例えば、第1端辺4Aにおける正極芯体4aの端面の全面積に対して90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上の領域に、被膜4yが形成されていることが好ましい。なお、正極板4において、第1端辺4A以外の3つの端辺において、正極芯体4aの端面に被膜4yは形成されていなくてもよい。
【0030】
フッ素を含有する被膜4yは、樹脂膜とすることができる。これにより、セパレータの損傷をより効果的に防止できる。また、正極芯体4aの端面が負極板5と接触した場合でも、大電流が流れることを効果的に抑制できる。また、正極芯体4aの端面から被膜4yが剥がれ難い。
【0031】
正極原板400を切断する際に、正極芯体4aにおける第1端辺4Aの端面にフッ素を含有する被膜4yが形成されるようにすることができる。例えば、正極芯体4aの端面に溶融したフッ素を含む樹脂を付着させることができる。また、レーザー等のエネルギー線を、フッ素を含有する樹脂に照射し、樹脂を溶融させ、この溶融した樹脂を正極芯体4aの端面に吹き付けることも考えられる。
【0032】
フッ素を含有する被膜4yは、フッ化アルミニウムを含む被膜とすることができる。これにより、セパレータの損傷をより効果的に防止できる。また、正極芯体4aの端面が負極板5と接触した場合でも、大電流が流れることを効果的に抑制できる。フッ素を含有する被膜4yは、フッ化アルミニウムを主成分とした被膜とすることができる。例えば、被膜4yの60質量%がフッ化アルミニウムからなるようにすることができる。被膜4yがフッ化アルミニウムと樹脂からなるようにしてもよい。
【0033】
正極原板400を切断する際に、溶融したアルミニウム製又はアルミニウム合金製の正極芯体4aとフッ素を含むガスを反応させ、正極芯体4aの端面にフッ化アルミニウムを生じさせることができる。例えば、フッ素を含有するガス中で正極原板400をレーザー切断することが考えられる。これにより、正極芯体4aの端面にフッ化アルミニウムを含む被膜を形成することができる。
【0034】
なお、
図4(b)に示すように、正極タブ40の端面にも被膜4yが形成されることが好ましい。正極タブ40において幅方向(
図3(c)の左右方向における端面)に被膜4yが形成されることが好ましい。正極タブ40において正極タブ40の突出方向における端面(
図3(c)における上端面)に被膜4yが形成されることが好ましい。正極タブ40の端部には、正極芯体4aの一方の面(
図4(b)では上面)から正極芯体4aの厚み方向に突出する突出部4x2が形成されている。突出部4x2の表面にも被膜4yが形成されることが好ましい。
【0035】
突出部4x1は、正極芯体4aの一方の面(
図4(a)における上面)から正極芯体4aの厚み方向に突出している。ここで、正極芯体4aの一方の面(
図4(a)における上面)から、突出部4x1の上端までの高さを、突出部4x1の突出高さとする。突出部4x1の突出高さは、正極保護層4cの厚みよりも小さいことが好ましい。このような構成であると、突出部4x1がセパレータと接触しセパレータが損傷することをより効果的に抑制できる。突出部4x1の突出高さは、正極保護層4cの厚みの2/3以下であること
が好ましく、1/3以下であることがより好ましい。但し、突出部4x1の突出高さを、
正極保護層4cの厚みよりも大きくすることもできる。正極保護層4cは必須の構成ではない。正極板4に正極保護層4cを設けなくてもよい。
【0036】
なお、突出部4x1の突出高さは、正極芯体4aにおいて両面に正極活物質層が形成された部分の厚みの1/4以下であることが好ましい。
【0037】
正極芯体4aにおいて、突出部4x1が形成された面とは反対側の面である他方の面(
図4(a)においては下面)には、他方の面から正極芯体4aの厚み方向に突出する突出部が形成されていないことが好ましい。あるいは、正極芯体4aにおいて、突出部4x1が形成された面とは反対側の面である他方の面(
図4(a)においては下面)には、他方の面から正極芯体4aの厚み方向に突出する突出部が形成されているものの、その突出高さは、突出部4x1の突出高さよりも小さいことが好ましい。このような構成により、正極板4と負極板5が短絡することをより効果的に防止できる。他方の面に形成された突出部の突出高さは、突出部4x1の突出高さの1/3以下であることが好ましく、1/5以下であることがより好ましい。
【0038】
[負極板]
次に、負極板の製造方法を説明する。
[負極活物質層スラリーの作製]
負極活物質としての黒鉛、結着材としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)及びカルボキシメチルセルロース(CMC)、及び分散媒としての水を、黒鉛:SBR:CMCの質量比が98:1:1となるように混練し、負極活物質層スラリーを作製する。
【0039】
[負極活物質層の形成]
負極芯体としての厚さ8μmの銅箔の両面に、上述の方法で作製した負極活物質層スラリーをダイコータにより塗布する。
【0040】
負極活物質層スラリーが塗布された負極芯体を乾燥させ、負極活物質層スラリーに含まれる水を除去する。これにより負極活物質層が形成される。その後、一対のプレスローラの間を通過させることにより、負極活物質層を圧縮して負極原板500とする。
【0041】
図5(a)は、上述の方法で作製された負極原板500の平面図である。帯状の負極芯体5aの両面には、負極芯体5aの長手方向に沿って負極活物質層5bが形成されている。そして、負極原板500の幅方向の両端部には、負極原板500の長手方向に沿って負極芯体露出部5cが形成されている。
【0042】
図5(b)は、タブ形成後の負極原板501の平面図である。タブ形成後の負極原板501の負極芯体露出部5cを所定形状に切断することにより、タブ形成後の負極原板501を作製する。負極原板500の切断は、レーザー等のエネルギー線の照射、金型、あるいはカッター等により行うことができる。タブ形成後の負極原板501においては、タブ形成後の負極原板501の幅方向の両端に、タブ形成後の負極原板501の長手方向に沿って複数の負極タブ50が形成される。なお、負極タブ50は負極芯体露出部5cからなる。なお、負極原板500をエネルギー線の照射により切断し、負極タブ50を形成することが好ましい。
【0043】
図5(c)は、負極板5の平面図である。まず、タブ形成後の負極原板501の長手方向に沿って、タブ形成後の負極原板501を幅方向における中央部で切断する。その後、タブ形成後の負極原板501の長手方向において、タブ形成後の負極原板501を所定間隔で切断することにより、負極板5を作製する。
【0044】
[電極体の作製]
上述の方法で作製した正極板4及び負極板5を、セパレータを介して積層し、積層型の電極体3を製造する。
図6は、電極体3の平面図である。電極体3の一つの端部には、複数の正極タブ40からなる正極タブ群40Aと、複数の負極タブ50からなる負極タブ群50Aが設けられる。
なお、正極板4において正極活物質層4bが形成された領域の平面視での面積は、負極板5において負極活物質層5bが形成された領域の平面視での面積よりも小さいことが好ましい。そして、電極体3を平面視したとき、正極板4において正極活物質層4bが形成された領域が全て、負極板5において負極活物質層5bが形成された領域内に配置されていることが好ましい。
電極体3において、正極タブ40上に形成された正極保護層4cの正極タブ40の先端側端部は、負極板5において負極タブ50が形成された端辺よりも、正極タブ40の先端側に位置することが好ましい。即ち、負極板5において負極タブ50が形成された端辺において正極タブ40と対向する領域では、正極タブ40を構成する正極芯体4aと負極板5の間には正極保護層4cが存在する構成となる。これにより、正極板4と負極板5が短絡することをより効果的に防止できる。
セパレータとしてはポリオレフィン製の多孔膜を用いることが好ましい。また、ポリオレフィン製の多孔膜の表面にセラミックを含む耐熱層が形成されたセパレータを用いることがより好ましい。
【0045】
[集電体とタブの接続]
図7に示すように、二つの電極体3の正極タブ群40Aを第2正極集電体6bに接続すると共に、二つの電極体3の負極タブ群50Aを第2負極集電体8bに接続する。正極タブ群40Aは第2正極集電体6bに溶接接続され溶接接続部60が形成される。負極タブ群50Aは第2負極集電体8bに溶接接続され溶接接続部61が形成される。
【0046】
第2正極集電体6bには、薄肉部6cが形成され、薄肉部6c内には集電体開口6dが形成されている。この薄肉部6cにおいて、第2正極集電体6bは第1正極集電体6aに接続される。第2正極集電体6bには、封口板2の電解液注液孔15と対向する位置に集電体貫通穴6eが形成されている。
【0047】
第2負極集電体8bには、薄肉部8cが形成され、薄肉部8c内には集電体開口8dが形成されている。この薄肉部8cにおいて、第2負極集電体8bは第1負極集電体8aに接続される。
【0048】
正極タブ群40Aと第2正極集電体6bの接続は、超音波溶接、抵抗溶接、レーザー溶接等により行える。
【0049】
[封口板への各部品取り付け]
図8は、各部品を取り付けた封口板2の電池内部側の面を示す図である。封口板2への各部品取り付けは次のように行われる。
【0050】
封口板2の正極端子挿入孔2aの周囲の電池外面側に外部側絶縁部材10を配置する。封口板2の正極端子挿入孔2aの周囲の電池内面側に内部側絶縁部材11及び第1正極集電体6aを配置する。そして、正極端子7を電池外部側から、外部側絶縁部材10の貫通孔、封口板2の正極端子挿入孔2a、内部側絶縁部材11の貫通孔及び第1正極集電体6aの貫通孔に挿入し、正極端子7の先端を第1正極集電体6a上にカシメる。これにより、正極端子7及び第1正極集電体6aが封口板2に固定される。なお、正極端子7においてカシメられた部分と第1正極集電体6aを溶接接続することが好ましい。
【0051】
封口板2の負極端子挿入孔2bの周囲の電池外面側に外部側絶縁部材12を配置する。封口板2の負極端子挿入孔2bの周囲の電池内面側に内部側絶縁部材13及び第1負極集電体8aを配置する。そして、負極端子9を電池外部側から、外部側絶縁部材12の貫通孔、封口板2の負極端子挿入孔2b、内部側絶縁部材13の貫通孔及び第1負極集電体8aの貫通孔に挿入し、負極端子9の先端を第1負極集電体8a上にカシメる。これにより、負極端子9及び第1負極集電体8aが封口板2に固定される。なお、負極端子9においてカシメられた部分と第1負極集電体8aを溶接接続することが好ましい。
【0052】
内部側絶縁部材11において、封口板2に設けられた電解液注液孔15と対向する部分には、注液開口11aが設けられている。また、注液開口11aの縁部には筒状部11bが設けられている。
【0053】
[第1集電体と第2集電体の接続]
図9は、第1正極集電体6aに第2正極集電体6bを取り付け、第1負極集電体8aに第2負極集電体8bを取り付けた後の封口板2の電池内部側の面を示す図である。
正極タブ群40Aが接続された第2正極集電体6bを、その一部が第1正極集電体6aと重なるようにして、内部側絶縁部材11上に配置する。そして、薄肉部6cにレーザー照射することにより、第2正極集電体6bと第1正極集電体6aを溶接接続し、溶接接続部62が形成される。また、負極タブ群50Aが接続された第2負極集電体8bを、その一部が第1負極集電体8aと重なるようにして、内部側絶縁部材13上に配置する。そして、薄肉部8cにレーザー照射することにより、第2負極集電体8bと第1負極集電体8aを溶接接続し、溶接接続部63が形成される。
【0054】
[二次電池の作製]
図9における一方の電極体3の上面(
図9では手前側の面)と他方の電極体3の上面(
図9では手前側の面)とが直接ないし他の部材を介して接するように二つの正極タブ群40A及び二つの負極タブ群50Aを湾曲させる。これにより、二つの電極体3を一つに纏める。そして、二つの電極体3を、箱状ないし袋状に成形した絶縁シートからなる電極体ホルダー14内に配置する。
【0055】
一方の正極タブ群40Aと他方の正極タブ群40Aとは、それぞれ異なる向きに湾曲する。また、一方の負極タブ群50Aと他方の負極タブ群50Aとは、それぞれ異なる向きに湾曲する。
【0056】
電極体ホルダー14で包まれた二つの電極体3を角形外装体1に挿入する。そして、封口板2と角形外装体1を溶接し、角形外装体1の開口を封口板2により封口する。そして、封口板2に設けられた電解液注液孔15を通じて角形外装体1内に電解液を注液する。その後、電解液注液孔15をブラインドリベット等の封止部材により封止する。これにより角形二次電池20が完成する。
【0057】
フッ素を含む被膜の厚みは、0.05μm~5μmとすることができる。なお、フッ素を含む被膜の厚みは、1μm未満であることが好ましく、0.1μm~0.8μmであることが好ましい。フッ素を含む被膜の厚みを比較的小さくすることにより、芯体の端面からフッ素を含有する被膜が剥がれ落ちることを抑制できる。
【0058】
フッ素を含む被膜がフッ化アルミニウムを主成分とする場合、被膜の厚みは1μm未満であることが好ましく、0.05μm~0.8μmであることがより好ましいく、0.1μm~0.6μmであることがさらに好ましい。被膜の厚みを比較的小さくすることにより、芯体の端面と他の極性を有する電極板が接触した場合でも、芯体の端面が完全には絶縁されておらず、芯体の端面と他の極性を有する電極板の間に電流が流れるようにすることができる。これにより、被膜のみにより正極板と負極板の絶縁が保たれている状態が維持されることを避け、芯体の端面と他の極性を有する極板が接触した場合に、エネルギーが放出されるようにすることも考えられる。
【0059】
電極板に設けられる保護層は、電極板を構成する芯体よりも電気伝導性が低い層であることが好ましい。また、保護層は、活物質層よりも電気伝導性が低い層であることが好ましい。なお、上述の実施形態においては、正極板に保護層を設ける例を示したが、負極板に保護層を設けてもよい。
【0060】
また、保護層は、セラミックとバインダーを含有することが好ましい。セラミックとしては、酸化物、窒化物、ホウ化物、カーバイド、ケイ化物、硫化物等を用いることができる。セラミックとしては酸化アルミニウム、ベーマイト、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化タングステン等を用いることができる。但し、これらに限定されない。バインダーとしては樹脂系のバインダーが好ましい。但し、これらに限定されない。なお、保護層はセラミックを含まなくてもよい。例えば、保護層を樹脂層とすることもできる。保護層は、炭素材料等からなる導電材を含んでいてもよい。なお、保護層は導電材を含まなくてもよい。
【0061】
正極芯体は、アルミニウム製、又はアルミニウムを主成分とするアルミニウム合金製であることが好ましい。なお、アルミニウム合金としては、アルミニウムが占める割合が90質量%以上のアルミニウム合金が好ましく、アルミニウムが占める割合が95質量%以上のアルミニウム合金がより好ましい。
負極芯体は、銅製、又は銅を主成分とする銅合金製であることが好ましい。なお、銅合金としては、銅が占める質量割合が95質量%以上の銅合金が好ましく、銅が占める質量割合が99質量%以上の銅合金がより好ましい。
【0062】
芯体の厚みは、5~30μmであることが好ましく、5~20μmであることがより好ましい。
【0063】
上述の実施形態においては、正極板4に正極保護層4cを設ける例を示した。しかしながら、保護層は必須の構成ではなく、保護層を設けなくてもよい。
【0064】
電極板に設けられる保護層と被膜は異なる構成を有する。
【0065】
上述の実施形態においては、電池ケース内に二つの電極体を配置する例を示したが、電極体は一つであても良いし、三つ以上であってもよい。また、電極体は積層電極体であってもよいし、巻回電極体であってもよい。
【0066】
上述の実施形態においては、正極板に関して活物質層非形成部の端部の構成の詳細について説明を行ったが、負極板に関しても同様の構成とすることができる。
【0067】
上述の実施形態においては、正極集電体及び負極集電体がそれぞれ二つの部品からなる例を示したが、正極集電体及び負極集電体はそれぞれ一つの部品から構成されてもよい。
【0068】
正極板、負極板、セパレータ、及び電解質等に関しては、公知の材料を用いることができる。
【符号の説明】
【0069】
20・・・角形二次電池
1・・・角形外装体
2・・・封口板
2a・・・正極端子挿入孔
2b・・・負極端子挿入孔
100・・・電池ケース
3・・・電極体
4・・・正極板
4A・・・第1端辺
4a・・・正極芯体
4b・・・正極活物質層
4c・・・正極保護層
4d・・・正極芯体露出部
4x1、4x2・・・突出部
4y・・・被膜
40・・・正極タブ
40A・・・正極タブ群
400・・・正極原板
401・・・タブ形成後の正極原板
5・・・負極板
5a・・・負極芯体
5b・・・負極活物質層
50・・・負極タブ
50A・・・負極タブ群
6・・・正極集電体
6a・・・第1正極集電体
6b・・・第2正極集電体
6c・・・薄肉部
6d・・・集電体開口
6e・・・集電体貫通穴
7・・・正極端子
8・・・負極集電体
8a・・・第1負極集電体
8b・・・第2負極集電体
8c・・・薄肉部
8d・・・集電体開口
9・・・負極端子
10・・・外部側絶縁部材
11・・・内部側絶縁部材
11a・・・注液開口
11b・・・筒状部
12・・・外部側絶縁部材
13・・・内部側絶縁部材
14・・・電極体ホルダー
15・・・電解液注液孔
16・・・封止部材
17・・・ガス排出弁
60、61、62、63・・・溶接接続部