(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】収納ケース
(51)【国際特許分類】
G02B 6/255 20060101AFI20231207BHJP
G02B 6/25 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
G02B6/255
G02B6/25
(21)【出願番号】P 2020569477
(86)(22)【出願日】2020-01-09
(86)【国際出願番号】 JP2020000534
(87)【国際公開番号】W WO2020158336
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2019013270
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000110309
【氏名又は名称】住友電工オプティフロンティア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】上甲 和文
(72)【発明者】
【氏名】伊土 将平
(72)【発明者】
【氏名】坂本 泰浩
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第07331461(US,B2)
【文献】米国特許第06578708(US,B2)
【文献】中国実用新案第206975298(CN,U)
【文献】中国実用新案第204422816(CN,U)
【文献】特開2014-074796(JP,A)
【文献】特開2011-145528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/255
G02B 6/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱溶融により光ファイバ同士の接続を行う融着接続機と、光ファイバの切断を行う光ファイバカッタとを同時に収納可能であり、作業トレイを兼ねる収納ケースであって、
前記融着接続機の底面を固定するように構成された第1の載置面を含み、前記融着接続機を収納可能な融着接続機収容部と、
前記光ファイバカッタを収納可能であって、前記第1の載置面に沿う方向に前記融着接続機収容部と並んで配置された光ファイバカッタ収容部と、
前記光ファイバカッタの底面を固定するように構成された第2の載置面を有し、前記第1の載置面を含む平面から離れた回転軸周りに回転可能に支持された光ファイバカッタ保持部と、
前記第1の載置面に沿う方向において前記融着接続機収容部と前記光ファイバカッタ収容部との間に配置され
た支持部と、
を備え
、
前記支持部は、前記第2の載置面が前記第1の載置面を含む前記平面に向いた状態から前記光ファイバカッタ保持部のうち前記第2の載置面とは反対側の裏面が前記第1の載置面を含む前記平面に向いた状態に回転した前記光ファイバカッタ保持部の前記裏面に当接することで、前記光ファイバカッタ保持部のうち前記回転軸とは反対側の端部を支持する、
収納ケース。
【請求項2】
前記支持部は前記融着接続機収容部と隣接しており、
前記光ファイバカッタ保持部は前記融着接続機収容部に向けて回転可能である、
請求項1に記載の収納ケース。
【請求項3】
前記第1の載置面を含む前記融着接続機収容部の一部を構成し、前記第1の載置面の法線方向に開口する基部と、
前記基部の前記開口を塞ぐとともに前記基部に対して開閉可能に連結され、前記融着接続機収容部の残部を構成するとともに、前記光ファイバカッタ収容部を有する蓋部と、を更に備え、
前記基部に対して前記蓋部を閉じた状態で、前記回転軸は前記第1の載置面を含む平面と近接し、且つ、前記第2の載置面は前記平面と交差する方向に延びており、
前記基部に対して前記蓋部を開いた状態で、前記回転軸は前記平面から離れており、且つ、
前記光ファイバカッタ保持部は前記第2の載置面が前記平面に向いた状態から前記裏面が前記平面に向いた状態に回動可能である、
請求項1または請求項2に記載の収納ケース。
【請求項4】
前記蓋部の外面に取り付けられた一対の肩ベルトを更に備える、
請求項3に記載の収納ケース。
【請求項5】
前記一対の肩ベルトによって規定される持ち運び時の上下方向において、前記光ファイバカッタ収容部は前記融着接続機収容部に対して下方に位置する、
請求項4に記載の収納ケース。
【請求項6】
前記光ファイバカッタ保持部及び前記回転軸は前記蓋部に取り付けられており、
前記基部に対して前記蓋部を開いた状態における前記第1の載置面を含む平面と前記回転軸との第1の距離が、前記基部に対して前記蓋部を閉じた状態における前記平面と前記回転軸との第2の距離よりも長い、
請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の収納ケース。
【請求項7】
前記基部に対して前記蓋部を最も開いた状態且つ、前記光ファイバカッタ保持部を前記融着接続機収容部に向けて回転して前記支持部に前記光ファイバカッタ保持部が当接した状態において、前記第1の載置面を含む平面と前記第2の載置面を含む平面との成す角度が15°以下である、
請求項3から請求項6のいずれか1項に記載の収納ケース。
【請求項8】
前記基部に対して前記蓋部を最も開いた状態において、前記基部の前記第1の載置面と前記蓋部の外面との成す角が68°以上86°以下の範囲内である、
請求項3から請求項7のいずれか1項に記載の収納ケース。
【請求項9】
前記融着接続機と、前記光ファイバカッタと、を更に備え、
前記融着接続機の底面が前記第1の載置面に固定され、
前記光ファイバカッタの底面が前記第2の載置面に固定されている、
請求項3から請求項8のいずれか1項に記載の収納ケース。
【請求項10】
前記支持部は、前記第1の載置面を含む平面と交差する方向に前記平面から延びる壁である、
請求項3から請求項9のいずれか1項に記載の収納ケース。
【請求項11】
前記光ファイバカッタ保持部は、前記第2の載置面が一方の表面に設けられた平板を有し、
前記基部に対して前記蓋部を開いた状態で、前記光ファイバカッタ保持部が前記融着接続機収容部に向けて回転した際に、前記平板の前記回転軸とは逆の一端が前記壁の上部に当接して支持される、
請求項10に記載の収納ケース。
【請求項12】
前記壁は、発泡樹脂を含む、請求項10又は請求項11に記載の収納ケース。
【請求項13】
前記基部の前記蓋部に隣接する一端と前記蓋部の前記基部に隣接する一端とが回転可能に連結されており、前記蓋部が前記基部に対して回転することにより、前記蓋部が前記基部に対して開閉する、
請求項3から請求項12のいずれか1項に記載の収納ケース。
【請求項14】
前記第1の載置面には、前記融着接続機を固定するためのネジ又はネジ穴が設けられている、
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の収納ケース。
【請求項15】
前記第2の載置面には、前記光ファイバカッタを固定するためのネジ又はネジ穴が設けられている、
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の収納ケース。
【請求項16】
加熱溶融により光ファイバ同士の接続を行う融着接続機と、光ファイバの切断を行う光ファイバカッタとを収納可能である収納ケースであって、
前記融着接続機を載置するように構成された第1の載置面を含み、前記第1の載置面の法線方向に開口する基部と、
前記光ファイバカッタを載置するように構成された第2の載置面を含む光ファイバカッタ保持部と、
前記基部に対して開閉可能に連結された蓋部であって、当該蓋部が前記基部に対して閉じられた際に前記基部の前記開口を塞ぐように構成され、前記光ファイバカッタを収納する空間をその中に画定する、蓋部と、
を備え、
前記光ファイバカッタ保持部は、
前記蓋部に対して、前記光ファイバカッタを収納した状態である第1の位置から前記光ファイバカッタを使用可能な状態である第2の位置へと回転軸周りに回転可能となるように、前記蓋部に連結されて
おり、
前記蓋部が前記基部に対して開いた状態であって前記光ファイバカッタ保持部が前記第2の位置に回転した状態において、前記融着接続機と前記光ファイバカッタとは前記第1の載置面に交差する方向から見た場合に互いに離れており且つ前記融着接続機及び前記光ファイバカッタの両方は使用可能な状態となる、
収納ケース。
【請求項17】
前記融着接続機と、前記光ファイバカッタと、を更に備え、
前記融着接続機の底面が前記第1の載置面に固定され、
前記光ファイバカッタの底面が前記第2の載置面に固定されている、
請求項16に記載の収納ケース。
【請求項18】
前記第1の載置面を含む平面と交差する方向に前記平面から延びる壁を更に備え、前記壁は、前記第1の載置面と共に前記融着接続機を収納する空間を画定し、
前記第2の載置面は、前記基部に対して前記蓋部が閉じた状態では、前記第1の載置面を含む平面に対して交差する方向に延びており、
前記第2の載置面又は前記第2の載置面の裏面は、前記基部に対して前記蓋部が開いた状態では、前記第1の載置面を含む平面に対向する、
請求項16または請求項17に記載の収納ケース。
【請求項19】
前記光ファイバカッタ保持部は、前記第2の載置面が一方の表面に設けられた平板を有し、前記光ファイバカッタ保持部が前記蓋部に対して前記第1の位置から前記第2の位置へと回転した際に前記平板の前記回転軸とは逆の一端が前記壁の上部に当接して支持される、
請求項18に記載の収納ケース。
【請求項20】
前記第1の載置面には、前記融着接続機を固定するためのネジ又はネジ穴が設けられており、
前記第2の載置面には、前記光ファイバカッタを固定するためのネジ又はネジ穴が設けられている、
請求項16から請求項19のいずれか一項に記載の収納ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、収納ケースに関する。
【0002】
本出願は、2019年1月29日出願の日本出願第2019-013270号に基づく優先権を主張し、前記に日本出願に記載された全ての記載内容を援用する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1から特許文献4は、光ファイバ同士を加熱溶融して融着接続するための融着接続機を収納するケース、及び融着接続機を搭載して作業に供する作業台を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-74796号公報
【文献】特開2006-201305号公報
【文献】特開2011-145528号公報
【文献】特開2010-39002号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示は、収納ケースを提供する。この収納ケースは、加熱溶融により光ファイバ同士の接続を行う融着接続機と、光ファイバの切断を行う光ファイバカッタとを同時に収納可能であり、作業トレイを兼ねる収納ケースである。この収納ケースは、融着接続機収容部と、光ファイバカッタ収容部と、光ファイバカッタ保持部と、支持部と、を備える。融着接続機収容部は、融着接続機の底面を固定するように構成された第1の載置面を含み、融着接続機を収納可能である。光ファイバカッタ収容部は、光ファイバカッタを収納可能であり、第1の載置面に沿う方向に融着接続機収容部と並んで配置されている。光ファイバカッタ保持部は、光ファイバカッタの底面を固定するように構成された第2の載置面を有し、第1の載置面を含む平面から離れた回転軸周りに回転可能に支持されている。支持部は、第1の載置面に沿う方向において融着接続機収容部と光ファイバカッタ収容部との間に配置されている。支持部は、第1の載置面の法線と第2の載置面の法線との成す角が鋭角となるように回転した光ファイバカッタ保持部と当接し、光ファイバカッタ保持部を支持する。
【0006】
本開示は、収納ケースを提供する。この収納ケースは、加熱溶融により光ファイバ同士の接続を行う融着接続機と、光ファイバの切断を行う光ファイバカッタとを収納可能である収納ケースである。この収納ケースは、基部と、光ファイバカッタ保持部と、蓋部と、を備える。基部は、融着接続機を載置するように構成された第1の載置面を含み、第1の載置面の法線方向に開口する。光ファイバカッタ保持部は、光ファイバカッタを載置するように構成された第2の載置面を含む。蓋部は、基部に対して開閉可能に連結され、当該蓋部が基部に対して閉じられた際に基部の開口を塞ぐように構成されている。蓋部は、光ファイバカッタを収納する空間をその中に画定する。光ファイバカッタ保持部は、光ファイバカッタを収納した状態である第1の位置から光ファイバカッタを使用可能な状態である第2の位置へと回転軸周りに回転可能となるように蓋部に連結されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る収納ケースの外観を示す正面図であって、収納ケースを閉じた状態を示す。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る収納ケースの外観を示す背面図であって、収納ケースを閉じた状態を示す。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る収納ケースの外観を示す側面図であって、収納ケースを閉じた状態を示す。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る収納ケースの外観を示す上面図であって、収納ケースを閉じた状態を示す。
【
図5】
図5は、一実施形態に係る収納ケースの外観を示す側面図であって、収納ケースを開いた状態を示す。
【
図6】
図6は、収納ケースを作業者が抱えた様子を示す。
【
図7】
図7は、収納ケースを方向D1に沿って切断した断面を示す図である。
【
図9】
図9は、
図1に示す収納ケースの基部と蓋部とを互いに閉じた収納状態の本体を概略的に示す斜視図であって、本体の内部を透視して示している。
【
図10】
図10は、基部に対して蓋部を開いた融着接続作業時の状態を示す斜視図であって、光ファイバカッタの使用時を表現している。
【
図11】
図11は、基部に対して蓋部を開いた融着接続作業時の状態を示す斜視図であって、融着接続機の使用時を表現している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示が解決しようとする課題]
融着接続機を工事現場まで持ち運ぶ際には、融着接続機を収納するケースが必要となる。また、工事現場において融着接続作業を行う際には、融着接続機、及び光ファイバの前処理を行うための他の装置類(例えば光ファイバカッタ)を載置する作業台(作業トレー)が必要となる。従来、ケース及び作業台は互いに別の物品として構成されている。従って、融着接続機をケースに収納して工事現場に搬入したのち、ケースから融着接続機を取り出し、作業台上にセットするといった工程が必要となり、融着接続作業を煩雑にする一因となっている。
【0009】
このような問題に対し、例えば特許文献1に記載された光ファイバ融着接続システムでは、融着接続機を収納する収納箱が作業台を兼ねている。これにより、ケースから融着接続機を取り出して作業台上にセットする工程を省くことができる。しかしながら、特許文献1に記載された収納箱は、光ファイバカッタを収納するスペースを有していない。従って、光ファイバカッタを専用の収納ケースから取り出し、該収納箱内の所定の位置にセットする工程は依然として必要である。
【0010】
ここで、収納ケースが融着接続機を収納する機能と作業台としての機能とを兼備する場合、その収納ケースに光ファイバカッタを併せて収納しようとすると、次の問題が生じ得る。一般に、融着接続機は光ファイバカッタに比べて大型であり、融着接続機の底面から作業位置(光ファイバを設置する部分)までの高さは、光ファイバカッタの底面から作業位置までの高さよりも高い。そのため、同じ高さの面上に融着接続機と光ファイバカッタとを並べて設置すると、先に作業を行う光ファイバカッタの作業位置が、後に作業を行う融着接続機の作業位置よりも低くなるため、作業性が低下してしまう。そこで、当該収納ケースにおいて融着接続機を設置する面と光ファイバカッタを設置する面とに高低差を与えることによって、それぞれの作業位置の高さを揃えることが考えられる。しかしながら、その場合、光ファイバカッタの下方に無駄な空間が生じるため、収納ケースの小型化を妨げる。
【0011】
本開示は、融着接続機及び光ファイバカッタを同時に収納できるとともにそれらの作業台として使用でき、且つ小型化が可能な収納ケースを提供することを目的とする。
【0012】
[本開示の効果]
本開示によれば、融着接続機及び光ファイバカッタを同時に収納できるとともにそれらの作業台として使用でき、且つ小型化が可能な収納ケースを提供できる。
【0013】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態を列記して説明する。本開示の一実施形態に係る収納ケースは、加熱溶融により光ファイバ同士の接続を行う融着接続機と、光ファイバの切断を行う光ファイバカッタとを同時に収納可能であり、作業トレイを兼ねる収納ケースである。この収納ケースは、融着接続機収容部と、光ファイバカッタ収容部と、光ファイバカッタ保持部と、支持部と、を備える。融着接続機収容部は、融着接続機の底面を固定するように構成された第1の載置面を含み、融着接続機を収納可能である。光ファイバカッタ収容部は、光ファイバカッタを収納可能であり、第1の載置面に沿う方向に融着接続機収容部と並んで配置されている。光ファイバカッタ保持部は、光ファイバカッタの底面を固定するように構成された第2の載置面を有し、第1の載置面を含む平面から離れた回転軸周りに回転可能に支持されている。支持部は、第1の載置面に沿う方向において融着接続機収容部と光ファイバカッタ収容部との間に配置されている。支持部は、第1の載置面の法線と第2の載置面の法線との成す角が鋭角となるように回転した光ファイバカッタ保持部と当接し、光ファイバカッタ保持部を支持する。
【0014】
この収納ケースは、融着接続機を収納可能な融着接続機収容部と、融着接続機収容部と並んで配置され、光ファイバカッタを収納可能な光ファイバカッタ収容部とを備える。従って、融着接続機及び光ファイバカッタを同時に収納し、持ち運ぶことができる。また、この収納ケースにおいて、光ファイバカッタの底面は光ファイバカッタ保持部の第2の載置面に固定される。光ファイバカッタ保持部は、融着接続機の底面が固定される第1の載置面を含む平面から離れた回転軸周りに回転可能に支持されている。従って、光ファイバカッタ収容部に光ファイバカッタが収納された状態から光ファイバカッタ保持部が回転すると、光ファイバカッタが持ち上がる。回転した光ファイバカッタ保持部は、支持部に当接及び支持される。支持部は、第1の載置面に沿う方向において融着接続機収容部と光ファイバカッタ収容部との間に配置され、第1の載置面の法線と第2の載置面の法線との成す角が鋭角となるように光ファイバカッタ保持部と当接する。言い換えると、支持部が光ファイバカッタ保持部を支持することにより、第1の載置面の向きと第2の載置面の向きとが互いに近くなる。この収納ケースは、以上の動作によって、各作業位置の高さを互いに近づけつつ、融着接続機及び光ファイバカッタを作業に供することができる。なお、ここでいう「鋭角」には0°が含まれてもよい。
【0015】
このように、上記の収納ケースによれば、融着接続機及び光ファイバカッタを同時に収納できるとともに、それらの作業台として使用することができる。また、低い位置に光ファイバカッタを収納しつつ、作業時には光ファイバカッタ保持部を回転させて光ファイバカッタを収納位置から持ち上げることによって、作業位置を高くすることができる。従って、収納時に光ファイバカッタの下方に無駄な空間が生じることを防ぐことによって、収納ケースの小型化を可能にする。
【0016】
上記の収納ケースにおいて、支持部は融着接続機収容部と隣接しており、光ファイバカッタ保持部は融着接続機収容部に向けて回転可能であってもよい。この場合、作業時に光ファイバカッタと融着接続機とを近接して配置することができ、作業性をより高めることができる。
【0017】
上記の収納ケースは、基部と、蓋部と、を更に備えてもよい。基部は、第1の載置面を含む融着接続機収容部の一部を構成し、第1の載置面の法線方向に開口する。蓋部は、基部の開口を塞ぐとともに基部に対して開閉可能に連結され、融着接続機収容部の残部を構成するとともに、光ファイバカッタ収容部を有する。この収納ケースでは、基部に対して蓋部を閉じた状態で、回転軸は第1の載置面を含む平面と近接し、且つ、第2の載置面は平面と交差する方向に延びていてもよい。また、基部に対して蓋部を開いた状態で、回転軸は平面から離れており、且つ、第2の載置面は平面から離れる方向から近づく方向に向かうように回動可能であってもよい。この実施形態によれば、蓋部を開いて融着接続作業を行うことができ、融着接続作業が終了した後に蓋部を閉じて融着接続機及び光ファイバカッタを収納することができる。
【0018】
上記の収納ケースは、蓋部の外面に取り付けられた一対の肩ベルトを更に備えてもよい。この場合、一対の肩ベルトを作業者が両肩に掛けながら収納ケースを体の前側に配置し、蓋部を開いて融着接続作業を行うことができる。従って、作業性(特に、柱上や梯子上など高所での作業性)をより高めることができる。
【0019】
上記の収納ケースでは、一対の肩ベルトによって規定される持ち運び時の上下方向において、光ファイバカッタ収容部が融着接続機収容部に対して下方に位置してもよい。
【0020】
上記の収納ケースにおいて、ファイバカッタ保持部及び回転軸は蓋部に取り付けられており、基部に対して蓋部を開いた状態における第1の載置面を含む平面と回転軸との第1の距離が、基部に対して蓋部を閉じた状態における該平面と回転軸との第2の距離よりも長くてもよい。このように、蓋部を開いた状態と閉じた状態とで回転軸の位置を変化させることにより、収納ケースの内部空間を効率よく使い、収納ケースの更なる小型化が可能となる。
【0021】
上記の収納ケースでは、基部に対して蓋部を最も開いた状態且つ、光ファイバカッタ保持部を融着接続機収容部に向けて回転して支持部に光ファイバカッタ保持部が当接した状態において、第1の載置面を含む平面と第2の載置面を含む平面との成す角度が15°以下であってもよい。この場合、融着接続機と光ファイバカッタとを、互いに大きく傾くことなく配置することができ、作業性を更に高めることができる。なお、第1の載置面を含む平面と第2の載置面を含む平面とが平行であってもよい。
【0022】
上記の収納ケースでは、基部に対して蓋部を最も開いた状態において、基部の第1の載置面と蓋部の外面との成す角が68°以上86°以下の範囲内であってもよい。このように、第1の載置面と蓋部の外面との成す角を直角よりもやや小さい角度とすることにより、融着接続機への作業者のアクセスが容易となり、作業性をより高めることができる。
【0023】
上記の収納ケースは、融着接続機と、光ファイバカッタと、を更に備えてもよい。この場合、融着接続機の底面が第1の載置面に固定されてもよく、光ファイバカッタの底面が第2の載置面に固定されていてもよい。第1の載置面には、融着接続機を固定するためのネジ又はネジ穴を設けてもよい。第2の載置面には、光ファイバカッタを固定するためのネジ又はネジ穴を設けてもよい。
【0024】
上記の収納ケースでは、支持部は、第1の載置面を含む平面と交差する方向に該平面から延びる壁であってもよい。光ファイバカッタ保持部は、第2の載置面が一方の表面に設けられた平板を有してもよく、基部に対して蓋部を開いた状態で、光ファイバカッタ保持部が融着接続機収容部に向けて回転した際に、平板の回転軸とは逆の一端が壁の上部に当接して支持されてもよい。この場合、光ファイバカッタ保持部の融着接続機収容部に向けての回転を所定の位置で留め、確実に支持することが可能となる。また、壁は、発泡樹脂を含んで構成されてもよい。この場合、融着接続機をより確実に保護できると共に、光ファイバカッタ保持部の回転動作による動きや音などを吸収することが可能となる。
【0025】
上記の収納ケースでは、基部の蓋部に隣接する一端と蓋部の基部に隣接する一端とが回転可能に連結されており、蓋部が基部に対して回転することにより、蓋部が基部に対して開閉してもよい。この場合、収納ケースを体の前側に配置し、基部を開いて融着接続作業を行うことができる。従って、作業性(特に、柱上や梯子上など高所での作業性)をより高めることができる。
【0026】
本開示の別側面に係る収納ケースの実施形態は、加熱溶融により光ファイバ同士の接続を行う融着接続機と、光ファイバの切断を行う光ファイバカッタとを収納可能である収納ケースである。この収納ケースは、基部と、光ファイバカッタ保持部と、蓋部と、を備える。基部は、融着接続機を載置するように構成された第1の載置面を含み、第1の載置面の法線方向に開口する。光ファイバカッタ保持部は、光ファイバカッタを載置するように構成された第2の載置面を含む。蓋部は、基部に対して開閉可能に連結され、当該蓋部が基部に対して閉じられた際に基部の開口を塞ぐように構成されている。蓋部は、光ファイバカッタを収納する空間をその中に画定する。光ファイバカッタ保持部は、光ファイバカッタを収納状態である第1の位置から光ファイバカッタを使用可能状態である第2の位置へと回転軸周りに回転可能となるように蓋部に連結されている。
【0027】
この収納ケースは、融着接続機を載置するための第1の載置面と、光ファイバカッタを載置するための第2載置面と、を含んで構成されている。従って、融着接続機及び光ファイバカッタを一の収納ケースに収納し、持ち運ぶことができる。また、光ファイバカッタ保持部は、光ファイバカッタを収納状態である第1の位置から光ファイバカッタを使用可能状態である第2の位置へと回転軸周りに回転可能となるように蓋部に連結されている。従って、光ファイバカッタを収納状態と使用可能状態とで異なった位置及び姿勢とすることができる。例えば、低い位置に光ファイバカッタを収納しつつ、作業時には光ファイバカッタ保持部を回転させて光ファイバカッタを収納位置から持ち上げることによって、作業位置を高くすることができる。よって、収納時に光ファイバカッタの下方に無駄な空間が生じることを防ぎ、これにより、収納ケースの小型化を可能にする。
【0028】
上記の収納ケースは、融着接続機と、光ファイバカッタと、を更に備えてもよい。この場合、融着接続機の底面が第1の載置面に固定されてもよく、光ファイバカッタの底面が第2の載置面に固定されていてもよい。第1の載置面には、融着接続機を固定するためのネジ又はネジ穴を設けてもよい。第2の載置面には、光ファイバカッタを固定するためのネジ又はネジ穴を設けてもよい。
【0029】
上記の収納ケースは、第1の載置面を含む平面と交差する方向に該平面から延びる壁を更に備えてもよく、壁は、第1の載置面と共に融着接続機を収納する空間を画定する。第2の載置面は、基部に対して蓋部が閉じた状態では、第1の載置面を含む平面に対して交差する方向に延びていてもよく、第2の載置面又は第2の載置面の裏面は、基部に対して蓋部が開いた状態では、第1の載置面を含む平面に対向してもよい。この場合、光ファイバカッタ保持部は、光ファイバカッタを収納状態である第1の位置から光ファイバカッタを使用可能状態である第2の位置へと確実に回転することができ、収納時に光ファイバカッタの下方に無駄な空間が生じることを防ぐことができる。
【0030】
上記の収納ケースでは、光ファイバカッタ保持部は、第2の載置面が一方の表面に設けられた平板を有してもよく、光ファイバカッタ保持部が蓋部に対して第1の位置から第2の位置へと回転した際に平板の回転軸とは逆の一端が壁の上部に当接して支持されてもよい。この場合、光ファイバカッタ保持部の第1の位置から第2の位置への回転を所定の位置で留めて、確実に支持することが可能となる。
【0031】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の収納ケースの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0032】
図1から
図5は、一実施形態に係る収納ケースの外観を示す図である。
図1は収納ケースの正面図であり、
図2は収納ケースの背面図であり、
図3及び
図5は収納ケースの側面図であり、
図4は収納ケースの上面図である。
図1から
図4は収納ケースを閉じた状態を示し、
図5は収納ケースを開いた状態を示す。この収納ケースは、加熱により光ファイバ同士の接続を行う融着接続機と、光ファイバの切断を行う光ファイバカッタとを同時に収納可能である。また、この収納ケースは、作業台(作業トレイ)を兼ねることができる。
【0033】
図1から
図5に示されるように、収納ケース1は、略直方体状のバックパックのような外観を有している。収納ケース1は、本体2と、一対の肩ベルト3とを備えている。本体2は、基部4及び蓋部5を有する。基部4及び蓋部5の平面形状は長方形状である。また、基部4及び蓋部5の側面形状は直角三角形状である。直角三角形状の3つの内角のうち直角の内角を除く他の内角α,βは、α>βを満たす。基部4と蓋部5とは、それらの一端(基部4においては内角βに対応する頂部、蓋部5においては内角αに対応する頂部)において互いに回動自在に連結され、開閉可能となっている。閉じた状態において、基部4の縁部と蓋部5の縁部とは線ファスナー6を介して互いに固定される。また、基部4における蓋部5寄りの側縁部と、蓋部5における基部4寄りの側縁部とは、布9(
図5を参照)を介して互いに連結されている。布9は、基部4と蓋部5との開き角度を制限する。布9は、折りたたみ可能である。
【0034】
一対の肩ベルト3は、蓋部5の外面5a(基部4とは反対側の表面)に取り付けられている。各肩ベルト3の一端は、収納ケース1の長手方向(上下方向)における蓋部5の外面5aの一端部に取り付けられている。各肩ベルト3の他端は、該方向における蓋部5の外面5aの他端部に取り付けられている。また、一方の肩ベルト3は、該方向に沿った収納ケース1の中心線C1(
図1を参照)に対して外面5aの一方側に取り付けられている。他方の肩ベルト3は、中心線C1に対して外面5aの他方側に取り付けられている。必要に応じて、一対の肩ベルト3同士を連結するチェストストラップ7が設けられてもよい。必要に応じて、飲料容器等を収納するボトルポケット8が、本体2の一対の側面のうち少なくとも一方に設けられてもよい。
【0035】
図6は、収納ケース1を作業者が抱えた様子を示す。
図6に示すように、融着接続作業を行う際、収納ケース1は、作業者の体の前側に配置される。そして、一対の肩ベルト3を作業者の両肩に掛けた状態において、蓋部5の外面5aが作業者の胸部に接する。蓋部5を開いた状態において、基部4は作業者の腹部と同程度の高さに位置する。
【0036】
図7は、収納ケース1を長手方向に沿って切断した側断面を示す図である。
図8は、基部4の平面図である。
図7及び
図8に示されるように、本体2は、融着接続機収容部(第1の空間)B1を備えている。融着接続機収容部B1は、融着接続機を収納可能な空間であって、その平面形状は融着接続機の外形に合わせて略長方形状を呈している。融着接続機収容部B1の一部は基部4によって構成され、融着接続機収容部B1の残部は蓋部5によって構成される。融着接続機収容部B1は、平坦な第1の載置面41を含む。第1の載置面41は、基部4の底板の内面の一部であり、融着接続機収容部B1と本体2の外部空間とを区画する。融着接続機収容部B1には、融着接続機の底面が固定される。第1の載置面41は、融着接続機の底面を固定するように構成されている。具体的には、融着接続機収容部B1の略中央には、融着接続機の底面をネジ止め等により固定するための円形のネジ穴42が形成されている。ネジ穴42に代えて融着接続機を固定するためのネジを設けてもよい。第1の載置面41は、融着接続機の底面と同じ大きさ以上の面積を有してもよい。基部4は第1の載置面41の法線方向に開口している。蓋部5を閉じた状態において、蓋部5は該開口を塞ぐ。これにより、融着接続機の収納空間である融着接続機収容部B1が画定される。基部4に対して蓋部5を最も開いた状態において、基部4の第1の載置面41と蓋部5の外面5aとの成す角θは例えば68°以上86°以下である。
【0037】
第1の載置面41上における融着接続機収容部B1の周囲には、融着接続機の位置を固定するための一対の緩衝材11が配置されている。これらの緩衝材11は、第1の載置面41と交差する方向(本実施形態では直交する方向)に延びる壁であり、その平面形状は略U字状である。これらの緩衝材11は、融着接続機を前後から挟むことによって融着接続機の位置を固定すると共に、融着接続機を保護する。本実施形態では、緩衝材11は融着接続機収容部B1と隣接している。言い換えると、一対の緩衝材11は第1の載置面41とともに融着接続機収容部B1を画定する。緩衝材11の構成材料は、発泡樹脂(例えば発泡ポリエチレンフォーム)である。これにより、後述する融着接続機Fをより確実に保護できると共に、後述する光ファイバカッタ保持部12の回転動作による動きや音などを吸収することが可能となる。
図7に示すように、緩衝材11の延在方向に垂直な断面の形状は長方形である。すなわち、緩衝材11は平坦且つ互いに平行な上面11a及び下面11bを有する。下面11bは第1の載置面41に接している。上面11aは第1の載置面41と同じ方向を向いている。言い換えると、上面11aの法線方向は第1の載置面41の法線方向と略一致している。
【0038】
図9は、基部4と蓋部5とを互いに閉じた収納状態の本体2を概略的に示す斜視図である。
図9においては、本体2の内部を隠れ線(破線)で示している。
図9には、融着接続機Fと光ファイバカッタGとが併せて示されている。融着接続機Fは、例えば、一対の光ファイバを融着接続するためのアーク放電用の一対の電極を備えている。光ファイバカッタGは、例えば、各光ファイバを所定の位置で切断するための回転カッタなどの切断器具を備えている。融着接続機Fは、本体2の融着接続機収容部B1において第1の載置面41上に収納され、一対の緩衝材11及びネジ等によってその位置が固定される。一方、光ファイバカッタGは、本体2の光ファイバカッタ収容部(第2の空間)B2に収納されることが可能である。光ファイバカッタ収容部B2は、蓋部5に設けられ、第1の載置面41に沿う方向(本実施形態では収納ケース1の上下方向D1)において、融着接続機収容部B1と並んで配置されている。一対の肩ベルト3によって規定される持ち運び時の上下方向(すなわち方向D1)において、光ファイバカッタ収容部B2は融着接続機収容部B1に対して下方に位置する。
【0039】
本体2は、蓋部5に取り付けられた光ファイバカッタ保持部12を更に備える。光ファイバカッタ保持部12は、融着接続機収容部B1と光ファイバカッタ収容部B2とを仕切る平板状の部材であって、その厚さ方向から見た形状は例えば長方形状である。光ファイバカッタ保持部12は、蓋部5が閉じた状態において、方向D1と交差する平面に沿って延在している。光ファイバカッタ保持部12の一方の板面は、光ファイバカッタGの底面を固定するように構成された平坦な第2の載置面13を構成する。第2の載置面13には、ネジ穴又はネジ12aが設けられており(
図12Aから
図12Cを参照)、光ファイバカッタGの底面は、第2の載置面13に対し例えばネジによって固定される。
【0040】
図10及び
図11は、基部4に対して蓋部5を開いた融着接続作業時の状態を示す斜視図である。
図10は光ファイバカッタGの使用時を表現しており、
図11はその後の融着接続機Fの使用時を表現している。
図9から
図11に示すように、光ファイバカッタ保持部12は、蓋部5に対し、回転軸14周りに回転可能に支持されている。回転軸14は、蓋部5の直角三角形状の側板に支持されている。回転軸14は、第1の載置面41を含む平面(本実施形態では基部4の底板の内面)に沿っており且つ方向D1と交差(例えば直交)する方向に延びている。回転軸14は、基部4と蓋部5との連結部(蓋部5の回動軸)に対して平行且つ離れて設けられている。
【0041】
図12Aから
図12Cは、収納ケース1の動作を模式的に示す図である。
図12Aは、蓋部5を基部4に対して閉じた収納状態を示す。
図12Bは、蓋部5を基部4に対して開いた状態を示す。
図12Cは、光ファイバカッタ保持部12を収納状態の第1の位置から使用可能状態の第2の位置へと回転させた状態を示す。回転軸14は、蓋部5の開閉動作に従い、基部4に対して相対的に移動する。すなわち、回転軸14は、蓋部5を閉じた状態(
図12A)では基部4の底板に近づき、蓋部5を開くと、
図12Bに示すように、蓋部5の回動軸を中心とする円弧状の軌道上を移動して基部4の底板から遠ざかる。言い換えると、回転軸14は、蓋部5を閉じた収納状態において第1の載置面41を含む平面(本実施形態では基部4の底板の内面)Hに近接し、蓋部5を開いた作業状態(
図10,
図11を参照)において当該平面Hから離れた位置に移動する。従って、蓋部5を開いた状態における上記平面Hと回転軸14との距離(第1の距離)Z1は、蓋部5を閉じた状態における該平面Hと回転軸14との距離(第2の距離)Z2よりも長くなる。第2の載置面13は、
図12Aに示すように、蓋部5を閉じた状態では平面Hと交差(本実施形態では直交)する方向に延びている。第2の載置面13又はその裏面は、
図12B及び
図12Cに示すように、蓋部5を開いた状態では、平面Hと略平行な方向に延びており、第1の載置面41を含め平面Hに対向する。また、回転軸14は、蓋部5を閉じた収納状態において一方の緩衝材11に近接し、蓋部5を開いた作業状態(
図10,
図11を参照)において一方の緩衝材11から方向D1に離れた位置に移動する。従って、蓋部5を開いた状態における緩衝材11と回転軸14との距離(第3の距離)X1は、蓋部5を閉じた状態における緩衝材11と回転軸14との距離(第4の距離)X2よりも長くなる。
【0042】
また、回転軸14は、融着接続機収容部B1に対して方向D1に位置し、且つ方向D1と交差する方向に延びているので、光ファイバカッタ保持部12は融着接続機収容部B1に向けて回転可能となっている。すなわち、第2の載置面13は、蓋部5を開いた状態で、平面Hから離れる方向から近づく方向(
図12Cの矢印で示される方向)に向かうように回動可能である。蓋部5を開いた状態では回転軸14が緩衝材11から離れているので、作業時に光ファイバカッタ保持部12を回転させると、
図12Cに示すように光ファイバカッタ保持部12の先端部(回転軸14から最も離れた端部であって回転軸14とは逆の一端)が、緩衝材11の上面11aに当接し、該上面11aによって支持される。すなわち、本実施形態では、方向D1において融着接続機収容部B1と光ファイバカッタ収容部B2との間に配置された一方の緩衝材11が、光ファイバカッタ保持部12を支持する支持部として機能する。このとき、光ファイバカッタ保持部12の先端部と緩衝材11の上面11aとは、第1の載置面41の法線と第2の載置面13の法線との成す角が鋭角となるように、互いに当接する。なお、この鋭角には、0°が含まれてもよい。
【0043】
一例では、蓋部5を最も開いた状態且つ、緩衝材11に光ファイバカッタ保持部12が当接した状態において、第1の載置面41を含む平面Hと第2の載置面13を含む平面とが成す角度は15°以下である。また、一例では、蓋部5を最も開いた状態において、第1の載置面41を含む平面Hを基準とする緩衝材11の光ファイバカッタ保持部12との当接部位(本実施形態では上面11a)の高さZ3と、上記第1の距離Z1とは互いに略等しい。その場合、第1の載置面41と第2の載置面13とは互いに略平行となり、第1の載置面41と第2の載置面13とが互いに同一の方向を向くこととなる。ここで「Z3とZ1とが略等しい」とは、両者が厳密に等しい場合だけでなく僅かに異なる場合も含む。同様に「第1の載置面41と第2の載置面13とが互いに略平行」とは、両者が厳密に平行な場合だけでなく、2つの面の成す角度が15°以内となるような場合も含む。なお、第2の載置面13を含む光ファイバカッタ保持部12は、収納状態の第2の載置面13の法線方向(
図12B)と使用状態の第2の載置面13の法線方向(
図12C)とが165°以上180°以下の角度を為すように回転してもよい。
【0044】
以上に説明した本実施形態の収納ケース1によって得られる効果について説明する。上述したように、収納ケース1は、融着接続機Fを収納可能な融着接続機収容部B1と、融着接続機収容部B1と並んで配置され、光ファイバカッタGを収納可能な光ファイバカッタ収容部B2とを備えている。従って、融着接続機F及び光ファイバカッタGを同時に収納し、持ち運ぶことができる。また、上述したように、この収納ケース1において、光ファイバカッタGの底面は光ファイバカッタ保持部12の第2の載置面13に固定される。更に、光ファイバカッタ保持部12は、融着接続機Fの底面が固定される第1の載置面41を含む平面から離れた回転軸14周りに回転可能に支持されている。従って、光ファイバカッタ収容部B2に光ファイバカッタGが収納された状態から光ファイバカッタ保持部12が回転すると、光ファイバカッタGが持ち上がる。回転した光ファイバカッタ保持部12は、緩衝材11に当接及び支持される。緩衝材11は、第1の載置面41に沿う方向D1において融着接続機収容部B1と光ファイバカッタ収容部B2との間に配置され、第1の載置面41の法線と第2の載置面13の法線との成す角が鋭角となるように光ファイバカッタ保持部12と当接する。言い換えると、緩衝材11が光ファイバカッタ保持部12を支持することにより、第1の載置面41の向きと第2の載置面13の向きとが互いに近くなる。収納ケース1は、以上の動作によって、各作業位置の高さを互いに近づけつつ、融着接続機F及び光ファイバカッタGを作業に供することができる。
【0045】
このように、本実施形態の収納ケース1によれば、融着接続機F及び光ファイバカッタGを同時に収納できるとともに、それらの作業台として使用することができる。また、低い位置に光ファイバカッタGを収納しつつ、作業時には光ファイバカッタ保持部12を回転させて光ファイバカッタGを収納位置から持ち上げることによって、作業位置を高くすることができる。従って、収納時に光ファイバカッタGの下方に無駄な空間が生じることを防ぐことによって、収納ケース1の小型化を可能にできる。
【0046】
本実施形態のように、緩衝材11は融着接続機収容部B1と隣接しており、光ファイバカッタ保持部12は融着接続機収容部B1に向けて回転可能であってもよい。この場合、作業時に光ファイバカッタGと融着接続機Fとを近接して配置することができ、作業性をより高めることができる。
【0047】
本実施形態のように、収納ケース1は、基部4と、蓋部5と、を備えてもよい。基部4は、第1の載置面41を含む融着接続機収容部B1の一部を構成し、第1の載置面41の法線方向に開口する。蓋部5は、基部4の開口を塞ぐとともに基部4に対して開閉可能に連結され、融着接続機収容部B1の残部を構成するとともに、光ファイバカッタ収容部B2を有する。基部4に対して蓋部5を閉じた状態で、回転軸14は第1の載置面41を含む平面Hと近接し、且つ、第2の載置面13は平面Hと交差する方向に延びている。基部4に対して蓋部5を開いた状態で、回転軸14は平面Hから離れており、且つ、第2の載置面13は平面Hから離れる方向から近づく方向に向かうように回動可能である。この場合、蓋部5を開いて融着接続作業を行うことができ、融着接続作業が終了した後に蓋部5を閉じて融着接続機F及び光ファイバカッタGを収納することができる。
【0048】
本実施形態のように、収納ケース1は、一対の肩ベルト3を備えてもよい。一対の肩ベルト3は、蓋部5の外面5aに取り付けられている。この場合、一対の肩ベルト3を作業者が両肩に掛けながら収納ケース1を体の前側に配置し、蓋部5を開いて融着接続作業を行うことができる。従って、作業性(特に、柱上や梯子上など高所での作業性)をより高めることができる。
【0049】
本実施形態のように、一対の肩ベルト3によって規定される持ち運び時の上下方向(方向D1)において、光ファイバカッタ収容部B2が融着接続機収容部B1に対して下方に位置してもよい。この場合、作業時において光ファイバカッタGが融着接続機Fに対して作業者側に位置することとなる。通常の融着接続作業では、(1)端部の被覆を除去した光ファイバを光ファイバカッタGによりカットし、(2)融着接続機Fにより加熱溶融して融着接続した後、(3)融着接続部の周囲を補強し、(4)融着接続機Fの背面側に光ファイバを一時収納する。これら一連の作業を、作業者は手前側から奥側へ順番に光ファイバを移動させつつ進めることができ、作業性を更に高めることができる。
【0050】
本実施形態のように、光ファイバカッタ保持部12及び回転軸14は蓋部5に取り付けられており、基部4に対して蓋部5を開いた状態における第1の載置面41を含む平面と回転軸14との第1の距離が、基部4に対して蓋部5を閉じた状態における該平面と回転軸14との第2の距離よりも長くてもよい。このように、蓋部5を開いた状態と閉じた状態とで回転軸14の位置を変化させることにより、収納ケース1の内部空間を効率よく使い、収納ケース1の更なる小型化が可能となる。
【0051】
本実施形態のように、基部4に対して蓋部5を最も開いた状態、且つ緩衝材11に光ファイバカッタ保持部12が当接した状態において、第1の載置面41を含む平面Hと第2の載置面13を含む平面とが成す角度は15°以下であってもよい。このような状態であれば、融着接続機Fと光ファイバカッタGとを、互いに大きく傾くことなく配置することができ、作業性を更に高めることができる。
【0052】
本実施形態のように、基部4に対して蓋部5を最も開いた状態において、第1の載置面41を含む平面Hを基準とする緩衝材11の光ファイバカッタ保持部12との当接部位の高さZ3と第1の距離Z1とが互いに略等しくてもよい。この場合、融着接続機Fと光ファイバカッタGとを、互いに大きく傾くことなく配置することができ、作業性を更に高めることができる。
【0053】
本実施形態のように、基部4に対して蓋部5を最も開いた状態において、基部4の第1の載置面41と蓋部5の外面5aとの成す角が68°以上86°以下の範囲内であってもよい。このように、第1の載置面41と蓋部5の外面5aとの成す角を直角よりもやや小さい角度とすることにより、融着接続機Fへの作業者のアクセスが容易となり、作業性をより高めることができる。
【0054】
本開示に係る収納ケースは、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では収納ケース1が一対の肩ベルト3を備え、作業者の肩に掛けながら作業ができる形態としているが、収納ケース1を持ち運ぶための構成はこれに限られず、他に様々なもの(ストラップ等)を用いることができる。また、上記実施形態では光ファイバカッタGが融着接続機Fに対して作業者側に位置しているが、光ファイバカッタGと融着接続機Fとの位置関係はこれに限られず、融着接続機Fが光ファイバカッタGに対して作業者側に位置してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…収納ケース、2…本体、3…肩ベルト、4…基部、5…蓋部、5a…外面、6…線ファスナー、7…チェストストラップ、8…ボトルポケット、9…布、11…緩衝材、11a…上面、11b…下面、12…光ファイバカッタ保持部、12a…ネジ穴又はネジ、13…第2の載置面、14…回転軸、41…第1の載置面、42…ネジ穴、B2…光ファイバカッタ収容部、D1…上下方向,方向、B1…融着接続機収容部、C1…中心線、F…融着接続機、G…光ファイバカッタ、H…平面、Z1…第1の距離、Z2…第2の距離、X1…第3の距離、X2…第4の距離、α,β…内角。