(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】カーシェアリング管理サーバおよびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/30 20120101AFI20231207BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
G06Q50/30
G08G1/00 Z
(21)【出願番号】P 2021062227
(22)【出願日】2021-03-31
(62)【分割の表示】P 2017074703の分割
【原出願日】2017-04-04
【審査請求日】2021-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】591069086
【氏名又は名称】パーク二四株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113804
【氏名又は名称】岩田 敏
(74)【代理人】
【識別番号】100101384
【氏名又は名称】的場 成夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-206715(JP,A)
【文献】特開2008-097376(JP,A)
【文献】特開2016-163340(JP,A)
【文献】特開2015-152955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 50/30
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
会員制カーシェアリングに用いるシェアカーのシェアカー車載機からその走行データを受信するカーシェアリング管理サーバであって、
前記の走行データを前記のシェアカー車載機から受信するデータ受信手段と、
前記の走行データを解析するための解析用データを蓄積した解析用データベースと、
その解析用データベースの解析用データおよび前記の走行データに基づいて何が発生したのかを解析する加速度データ解析手段と、
その加速度データ解析手段が解析した解析結果データおよびシェアカーの車両毎のメンテナンスデータである車種別データを蓄積する車両管理データベースと、
前記のデータ受信手段が受信すべきシェアカーの走行データに対するフィルタリングを前記のシェアカーにおいて実行するためのデータフィルタを蓄積するフィルタデータベースと、
そのフィルタデータベースのデータフィルタに基づいて新たなデータフィルタを作成するデータフィルタ作成手段と、
前記の走行データに対するフィルタリングを前記のシェアカーが実行するための新たなデータフィルタを前記のデータフィルタ作成手段が作成した場合に、その新たなデータフィルタを前記のシェアカーへ送信するフィルタ送信手段と、
を備え、
前記のデータフィルタ作成手段は、新たなメンテナンスデータが前記の車種別データとして蓄積された場合には、該当する車種別に前記のデータフィルタについての閾値を更新することとした
カーシェアリング管理サーバ。
【請求項2】
前記のデータフィルタ作成手段は、前記のメンテナンスデータとして後バンパー交換履歴が追加された場合、該当する車種別データフィルタについて、該当する車種における後退運転時の加速度の閾値を更新することとした
請求項1に記載のカーシェアリング管理サーバ。
【請求項3】
前記の車両管理データベースには、シェアカーの予約データを蓄積する予約データベースを備え、
前記のデータフィルタ作成手段は、予約データに係る会員に関する利用履歴データが急加速や急減速の多い場合には、捨てるべきデータを少なくする条件設定としたカスタマイズフィルタを作成し、
前記のフィルタ送信手段は、前記の予約データベースを用いて前記のカスタマイズフィルタを予約データに係るシェアカーへ送信することとした
請求項1または請求項2のいずれかに記載のカーシェアリング管理サーバ。
【請求項4】
会員制カーシェアリングに用いるシェアカーの走行データを解析するための解析用データを蓄積する解析用データベースを予め備えるとともに、シェアカー車載機からその走行データを受信するカーシェアリング管理サーバを制御するコンピュータプログラムであって、
前記のカーシェアリング管理サーバには、
前記の走行データを解析するための解析用データを蓄積した解析用データベース
、および前記のシェアカーの走行データに対するフィルタリングを前記のシェアカーにおいて実行するためのデータフィルタを蓄積するフィルタデータベースを備えており、
前記のコンピュータプログラムは、
シェアカーの走行データを前記のシェアカー車載機から受信するデータ受信手順と、
前記の解析用データベースの解析用データおよび前記の走行データに基づいて何が発生したのかを解析する加速度データ解析手順と、
その加速度データ解析手順にて解析した解析結果データおよびシェアカーの車両毎のメンテナンスデータである車種別データを車両管理データベースへ蓄積する車種別データ蓄積手順と、
前記のフィルタデータベースのデータフィルタに基づいて新たなデータフィルタを作成するデータフィルタ作成手順と、
前記の走行データに対するフィルタリングを前記のシェアカーが実行するための新たなデータフィルタを前記のデータフィルタ作成手順にて新たなデータフィルタを作成した場合にその新たなデータフィルタを前記のシェアカーへ送信するフィルタ送信手順と、
を前記のカーシェアリング管理サーバに実行させることとし、
前記のデータフィルタ作成手順において、新たなメンテナンスデータが前記の
車両管理データベースに車種別データとして蓄積された場合には、該当する車種別にデータフィルタについての閾値を更新することとしたコンピュータプログラム。
【請求項5】
前記のデータフィルタ作成手順は、前記のメンテナンスデータとして後バンパー交換履歴が追加された場合、該当する車種別データフィルタについて、該当する車種における後退運転時の加速度の閾値を下げたデータフィルタに更新することとした
請求項4に記載のコンピュータプログラム。
【請求項6】
前記の車両管理データベースには、シェアカーの予約データを蓄積する予約データベースを備え、
前記のデータフィルタ作成手順は、予約データに係る会員に関する利用履歴データが急加速や急減速の多い場合には、捨てるべきデータを少なくする条件設定としたカスタマイズフィルタを作成し、
前記のフィルタ送信手順は、前記の予約データベースを用いて前記のカスタマイズフィルタを予約データに係るシェアカーへ送信することとした
請求項4または請求項5のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーシェアリングに用いるサービス対象車両からの運転データ収集の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
(カーシェアリングとその予約)
本願発明には、カーシェアリングが関係するので、
図1および
図2を用いて、一般のカーシェアリングにおける利用予約時の情報処理についての典型例を説明する。
【0003】
カーシェアリングサービスを提供する事業者は、事前に会員登録がなされた会員に対して、会員を識別するICカードたる会員カード(登録済みカードα)を提供する。
図1に示すように、その会員に関するデータ管理、カーシェアリングに用いる車両(以下、「サービス対象車両」または「シェアカー」)に関するデータ管理、そのほか優待情報管理などを、カーシェアリング管理サーバにて実行する。
サービス対象車両には、カーシェアリング管理サーバとの双方向通信を実行する車載機、運転する会員へのメッセージを送るなどの機能を備えた多機能カーナビゲーション装置、サービス対象車両のドアロックを実行できる車両解錠センサ、が搭載されている。
【0004】
図2に示すように、会員ユーザは、自己に係るパソコンや携帯端末などの通信端末を介してインターネットを経由して予約管理システムに対し、予約データを送信する。予約システムにおけるカーシェア管理サーバは、利用を希望するサービス対象車両(シェアカー)に対し、車両管理データベースを参照して希望時間枠を予約する。そして、予約が完了した場合、予約に係るシェアカーの車載機へ、予約データを送信する。
会員ユーザは、予約時間に予約したシェアカーに赴き、その車両に備えられた会員識別装置に対してその識別装置に読み込まれた会員識別子を使って、予約条件と予約した会員である旨が照合された場合に、そのシェアカーが使用可能となる。
【0005】
さて、サービス対象車両には、その車両の移動加速度を検知する加速度センサなど、車両の状態を把握できる各種のセンサが内蔵されている。したがって、それらセンサが取得したデータを、前述の車載機を介して車両管理サーバへ送信することは、技術的には可能である。そのため、そうしたデータを車両管理サーバへ蓄積し、解析するなどのことも実験的に始めている。
データの蓄積や解析などを必要とする背景としては、会員ユーザがシェアカーを傷付けたまま返却し、次の会員ユーザに不快な思いをさせたり、乗車不能な状態を招いたりする事象が増加する傾向にあるためである。
【0006】
しかし、サービス対象車両に搭載されたすべてのセンサが取得するすべてのデータを、車載機を介して車両管理サーバへ送信するということは、現実的ではない。すべてのデータを送信してしまったのではデータ通信量が膨大となるからであり、受信サーバにおける記憶容量などのハードウェア負担、通信費用の増大、データ送信のための帯域確保の必要性などの問題がある。
【0007】
たとえば特許文献1には、ドライブレコーダにおける同様の問題点、およびその問題点を前提とした解決技術が開示されている。
すなわち、従来のドライブレコーダには、つぎのような問題があった。すなわち、記録された動画データを送信する場合、通信量が多く、送信が完了するまでに時間がかかった。このため、事故の発生や事故の規模を事務所に知らせるまでに時間がかかり、事務所側では、迅速な対応が難しくなる虞があった、と特許文献1にある。
そのため、特許文献1では、事故の発生や事故の規模を速やかに知らせることができ、それにより、事務所側が事故の状況を把握するために要する期間の短縮に寄与するドライブレコーダを提供している。
【0008】
また、特許文献2には、事故発生時だけでなく安全運転指導を目的とする情報収集が可能で、しかも、管理者側の負担を軽減することが可能な運転支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2013-175032号公報
【文献】特開2014-75035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
さて、実験的に収集したデータを解析していくと、車両の管理の上で必要なデータ、すなわちシェアカーを傷付けてしまうような事象を伴うデータは運転中のすべてのデータではなく、そのごく一部であることが解明されてきた。
また、大小にかかわらず発生した事故については、取りこぼすことなくデータを取得したい。
しかし、車両に搭載されたデータの中から何をサーバへ送信し、何を送信しないか、というフィルタリング技術については、先行特許を調査しても発見できなかった。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、カーシェアリングのユーザの安全運転促進に繋がる運転データを効率的に収集し、車両の管理に活用するための情報処理技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した課題を解決するため、シェアカー車載機に係る第一の発明、カーシェア管理サーバに係る第二の発明、シェアカー車載機の制御プログラムに係る第三の発明、およびカーシェア管理サーバの制御プログラムに係る第四の発明を開示する。そして、第二および第四の発明を、本願の趣旨とする。
【0013】
(第一の発明)
第一の発明は、会員制カーシェアリングに用いるシェアカーの走行データをカーシェアリング管理サーバへ送信するシェアカー車載機に係る。
そのシェアカー車載機は、シェアカーの走行中における各種の加速度を計測する加速度センサが計測した加速度データを一時的に蓄積するデータバッファと、
そのデータバッファへ蓄積された加速度データにおける閾値を超える等の所定条件を備えた所定データを抽出するデータフィルタと、
そのデータフィルタにて抽出された所定データおよびその所定データに付随した付随データを前記のカーシェアリング管理サーバへ送信するデータ送信手段と、を備える。
前記のデータフィルタは、カーブ、交差点からの発進、急加速、または急減速などを伴うことで閾値を超えた加速度となったイベントにおける当該加速度データを抽出するものである。
前記の付随データは、前記のイベントの発生前後の所定秒数に関する加速度データを含むことする(
図3、
図4参照)。
【0014】
(用語説明)
「会員制カーシェアリング」とは、予め会員登録を済ませた会員が、予約をしてサービス対象車両(シェアカー)を利用するサービスである。会員に関するデータは、会員データとして、カーシェアリング運営者に係る会員データベースへ蓄積される。また、予約に係るデータは、予約データとしてカーシェアリング運営者に係る予約データベースへ蓄積される。
「走行データ」における「加速度」とは、シェアカーの発信時や追い越し時などにおける直進方向の加速度、カーブを曲がる際の横方向の加速度、障害物を乗り越えるなどの際の垂直方向の加速度、ブレーキをかけた際の直進方向のマイナスの加速度、である。
【0015】
「所定条件」とは、加速度のみの測定にて閾値以上を判断することによって、データフィルタによって抽出されてしまうデータを除去するための条件である。たとえば、「加速度に応じてその加速度を伴う継続時間や平均化時間」である。より具体的には、直進方向の加速度では1秒以上連続で(継続時間)0.2G以上の加速度がかかった場合、横方向の加速度では100ミリ秒以上連続で0.3G以上の加速度がかかった場合、直進方向のマイナスの加速度では1秒以上連続で0.3G以上の加速度がかかった場合、である。「継続時間」での加速度の計測でノイズが多い場合には、その継続時間を分割した時間毎に平均した平均化時間における加速度とする場合もある。
「付属データ」とは、どのような「イベント」が発生したのかを推測するために必要な、または有益なデータである。たとえば、他の請求項にて限定するような、所定データが発生した時刻データやシェアカーの速度、シェアカーにGPSが搭載されている場合には、所定データが発生した時のシェアカーの位置データ、ワイパーのオンオフおよびワイパー速度、ドライブレコーダが搭載されている場合の動画データ、などである。換言すれば、ドライブレコーダが検知することを予定していないような軽微な事故の発生時のデータを、前記の「所定条件」にて取得できるようにするのが、「所定条件」の趣旨であり、内容を変更改良しての改訂が逐次可能である。
「イベント」とは、たとえば、前述の急加減速、急ハンドルの他に、障害物や人間を含む動物との接触事故、タイヤやシャーシを傷付けるような乗り上げ、後退運転による衝突事故、などである。
【0016】
(作用)
シェアカーの走行中における各種の加速度データを加速度センサが計測する。計測した加速度データは、一時的にデータバッファへ蓄積される。
そのデータバッファへ蓄積された加速度データから、データフィルタによって、閾値を超える等の所定条件を備えた所定データを抽出される。
そのデータフィルタにて抽出された所定データは、その所定データに付随した付随データとともに、前記のカーシェアリング管理サーバへデータ送信手段が送信する。
【0017】
前記のデータフィルタの機能によって、シェアカーは最低限のデータのみをカーシェア管理サーバへ送信すればよいので、記憶装置や通信を実行するハードウェアの負担が小さく、通信量およびそれに伴う通信費用を抑制することに寄与する。その結果、発生したイベントについてのデータを取得し、カーシェアリングのユーザの安全運転促進に繋がる運転データを効率的に収集することに寄与する。
【0018】
(第一の発明のバリエーション1)
第一の発明に係るシェアカー車載機は、前記の所定条件について、シェアカーの走行中の速度が所定条件に含まれることとすると、より好ましい(
図11参照)。
【0019】
軽微な事故、たとえば車両の塗装が傷付く程度の接触事故を検知するためには、たとえば、シェアカーの走行中の速度が時速20キロメートル以下という条件を加えることで「低速時」の事例を抽出することになる。しかし、「接触事故」は、高速時にも発生することがあるので、それを検知するためには、走行中の速度に応じて各種の条件を異ならせることとなる。
また、横方向の大きな加速度が発生する事例として、ドアを閉める時の衝撃が含まれる。加速度の大きさのみでデータフィルタを設定してしまうと、正常な使い方であるドアを閉めるというユーザによる動作についても拾い上げることとなってしまい、データフィルタとしては役立たないこととなる。そこで、「急ハンドル」というユーザの操作を検知するためには、一定以上の速度である場合における横方向の加速度を検知する必要がある。
【0020】
(第一の発明のバリエーション2)
第一の発明に係るシェアカー車載機は、前記の付随データについて、時刻データおよびシェアカーの位置データを含むことしてもよい。
【0021】
(作用)
イベントの発生に関する客観的なデータを、シェアカー車載機が送信することができる。カーシェア管理サーバは、イベントに関わるデータを取得することができ、イベントの客観化に用いることができる。
【0022】
(第二の発明)
第二の発明は、会員制カーシェアリングに用いるシェアカーのシェアカー車載機からその走行データを受信するカーシェアリング管理サーバに係る。
前記の走行データを前記のシェアカー車載機から受信するデータ受信手段と、
その走行データを解析するための解析用データを蓄積した解析用データベースと、
その解析用データベースの解析用データおよび前記の走行データに基づいて何が発生したのかを解析する加速度データ解析手段と、
その加速度データ解析手段が解析した解析結果データを蓄積する車両管理データベースと、
を備えるとともに、
前記の解析結果データは、会員制カーシェアリングにおける会員データを蓄積する会員データベースにも蓄積することとする(
図3参照)。
【0023】
(用語説明)
「加速度データ解析手段」とは、加速度データ等に基づいてシェアカーに何が起きたのかを推測する手段である。
「解析用データベース」とは、加速度データ等に基づいてシェアカーに何が起きたのかを推測するために用いるデータである。
【0024】
(作用)
カーシェアリング管理サーバでは、会員制カーシェアリングに用いるシェアカーのシェアカー車載機から送信されてくる走行データを、データ受信手段が受信する。
その走行データを解析するための解析用データを、解析用データベースが予め蓄積している。その解析用データベースの解析用データおよび前記の走行データに基づいて、加速度データ解析手段は、何が発生したのかを解析する。
その加速度データ解析手段が解析した解析結果データを車両管理データベースが蓄積する。前記の解析結果データは、会員制カーシェアリングにおける会員データを蓄積する会員データベースにも蓄積する。
【0025】
解析用データベースおよび加速度データ解析手段によって、シェアカーの車載機から送信されてくるデータの送信量を抑えつつ、何が発生したかを解析することが可能となる。シェアカーからは最低限のデータのみがカーシェア管理サーバへ送信されてくるので、ハードウェア負担や、通信費用を抑制することに寄与する。
同時に、シェアカーを傷付けてしまうような事態が発生したことについての時刻や場所や運転中の会員などを特定できるデータを取得できる可能性を高める。その結果、会員ユーザがシェアカーを傷付けたなどに関する自己申告を怠る事態を抑制する効果も期待できる。
【0026】
(第二の発明のバリエーション1)
第二の発明に係るカーシェアリング管理サーバは、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記のシェアカーに搭載されるデータ再生装置(たとえば多機能カーナビゲーション装置)へ送信して再生させるための連絡データを蓄積するカーナビ送信用データベースと、
そのカーナビ送信用データベースに蓄積された連絡データを前記のデータ再生装置へ送信する連絡データ送信手段と、を備えることとしてもよい(
図3参照)。
【0027】
(用語説明)
「連絡データ」とは、たとえば「何か異常が発生していないか」と会員(シェアカーの運転者)へ問い掛ける音声データやテキストデータ、緊急の連絡先の表示、などである。
【0028】
(作用)
カーナビ送信用データベースには、シェアカーに搭載されるデータ再生装置へ送信して再生させるための連絡データが、予め蓄積されている。
前述の加速度データ解析手段によって、何か異常事態を検知した場合には、カーナビ送信用データベースに蓄積された連絡データを、連絡データ送信手段がデータ再生装置へ送信する。データ再生装置が連絡データを出力することで、シェアカーを利用している会員ユーザに対して、タイムリーにメッセージを届けることができる。
【0029】
(第二の発明のバリエーション2)
第二の発明に係るカーシェアリング管理サーバのバリエーション1は、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記の会員データベースにおける当該会員に関する利用履歴データに基づいて前記のカーナビ送信用データベースの連絡データの中から最適な連絡データを抽出する会員別最適データ抽出手段を備える。
その会員別最適データ抽出手段が抽出した最適な連絡データを、前記の連絡データ送信手段が送信することとする(
図5参照)。
【0030】
(作用)
会員データベースにおける当該会員に関する利用履歴データに基づいて、前記のカーナビ送信用データベースの連絡データの中から会員別最適データ抽出手段が最適な連絡データを抽出する。その会員別最適データ抽出手段が抽出した最適な連絡データは、前記の連絡データ送信手段が送信する。
シェアカーにおけるデータ再生装置では、そのシェアカーを運転する会員に対して最適な連絡データが再生される。
【0031】
(第二の発明のバリエーション3)
第二の発明に係るカーシェアリング管理サーバは、以下のように形成してもよい。
すなわち、 前記のデータ受信手段が受信すべきシェアカーの走行データに対するフィルタリングを実行するためのデータフィルタを蓄積するフィルタデータベースと、
そのデータフィルタに基づいて新たなデータフィルタを作成するデータフィルタ作成手段と、
そのデータフィルタ作成手段が新たなデータフィルタを作成した場合にその新たなデータフィルタを前記のシェアカーへ送信するフィルタ送信手段と、を備える。
そして、前記のデータフィルタ作成手段は、車両管理データベースへ蓄積された新たな車両管理データを用いてデータフィルタが的確だったか否かを検証し、的確ではないと判断した場合にはデータフィルタを改訂することとしてもよい(
図6参照)。
【0032】
(作用)
前記のデータ受信手段が受信すべきシェアカーの走行データに対するフィルタリングを実行するためのデータフィルタが、フィルタデータベースへ予め蓄積されている。そのデータフィルタに基づいて、データフィルタ作成手段が新たなデータフィルタを作成する。そのデータフィルタ作成手段が新たなデータフィルタを作成した場合には、その新たなデータフィルタをフィルタ送信手段が前記のシェアカーへ送信する。
前記のデータフィルタ作成手段は、車両管理データベースへ蓄積された新たな車両管理データを用いてデータフィルタが的確だったか否かを検証し、的確ではないと判断した場合にはデータフィルタを改訂する。改訂したデータフィルタは、フィルタデータベースへ蓄積する。
【0033】
(第二の発明のバリエーション4)
前述のバリエーション3は、以下のように形成してもよい。
すなわち、シェアカーが貸し出される地域および時間帯に関する天候データを受信する天候データ受信手段を備え、
その天候データ受信手段が受信した天候データを用いて、前記のデータフィルタ作成手段が新たなデータフィルタを前記のシェアカーに係るシェアカー車載機へ送信することとしてもよい(
図7参照)。
なお、「天候データ」は、たとえば、専用の天気予測サーバなどから取得する。
【0034】
(作用)
シェアカーが貸し出される地域および時間帯に関する天候データを、天候データ受信手段が受信する。その天候データ受信手段が受信した天候データを用いて、前記のデータフィルタ作成手段が新たなデータフィルタを前記のシェアカーに係るシェアカー車載機へ送信する。
当該シェアカーにおいては、天候データによって最適化されたシェアカーのデータフィルタによってフィルタリングされたデータをカーシェアリング管理サーバへ送信することとなる。
【0035】
(第二の発明のバリエーション5)
第二の発明に係るカーシェアリング管理サーバは、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記の会員データベースは、カーシェアリング利用履歴データを蓄積する利用履歴データベースを会員毎に備え、前記の車両管理データベースには、シェアカーの予約データを蓄積する予約データベースを備える。
そして、前記のデータフィルタ作成手段は、予約データに係る会員に関する利用履歴データを用いて当該会員に適したカスタマイズフィルタを作成し、 前記のフィルタ送信手段は、前記のカスタマイズフィルタを前記の予約データに係るシェアカーへ送信することとしてもよい(
図8参照)。
【0036】
(作用)
データフィルタ作成手段は、予約データに係る会員に関する利用履歴データを用いて当該会員に適したカスタマイズフィルタを作成する。そのカスタマイズフィルタは、フィルタ送信手段が前記の予約データに係るシェアカーへ送信する。
当該シェアカーにおいては、そのシェアカーを運転する会員に対して最適化されたシェアカーのデータフィルタによってフィルタリングされたデータをカーシェアリング管理サーバへ送信することとなる。たとえば、急加速や急減速の多い利用者の場合、事故を起こすリストが高くなるため、より詳細にデータを取得することを意図して、カスタマイズフィルタは、標準のデータフィルタよりもフィルタリング条件を少なくしたり、捨てるべきデータを少なくしたりするような条件設定とする。
【0037】
(第三の発明)
第三の発明は、会員制カーシェアリングに用いるシェアカーの走行データをカーシェアリング管理サーバへ送信するシェアカー車載機を制御するコンピュータプログラムに係る。
その制御プログラムは、 シェアカーの走行中における各種の加速度を計測する加速度センサが計測した加速度データを一時的にデータバッファへ蓄積するデータバッファ手順と、
そのデータバッファへ蓄積された加速度データにおける閾値を超える等の所定条件を備えた所定データをデータフィルタにて抽出するフィルタリング手順と、
そのデータフィルタにて抽出された所定データおよびその所定データに付随した付随データを前記のカーシェアリング管理サーバへ送信するデータ送信手順と、
をシェアカー車載機に実行させるコンピュータプログラムである。
前記のフィルタリング手順は、カーブ、交差点からの発進、急加速、または急減速などを伴うことで閾値を超えた加速度となったイベントにおける当該加速度データを抽出し、
前記の付随データは、前記のイベントの発生前後の所定秒数に関する加速度データを含むこととしたコンピュータプログラムである(
図3,4参照)。
【0038】
(第三の発明のバリエーション)
第三の発明においては、前記の付随データには、時刻データおよびシェアカーの位置データを含むこととすると、より好ましい。
【0039】
(第四の発明)
第四の発明は、会員制カーシェアリングに用いるシェアカーの走行データを解析するための解析用データを蓄積する解析用データベースを予め備えるとともに、シェアカー車載機からその走行データを受信するカーシェアリング管理サーバを制御する制御プログラムに係る。
そのプログラムは、シェアカーの走行データを受信するデータ受信手順と、
前記の解析用データベースの解析用データおよび前記の走行データに基づいて何が発生したのかを解析する加速度データ解析手順と、
その加速度データ解析手段が解析した解析結果データを車両管理データベースへ蓄積する解析結果データ蓄積手順と、
会員制カーシェアリングにおける会員データを蓄積する会員データベースへ前記の解析結果データを蓄積する会員データベース蓄積手順と、
をカーシェアリング管理サーバに実行させることとしたコンピュータプログラムである。
【0040】
(第四の発明のバリエーション1)
第四の発明は、以下のようにしてもよい。
すなわち、前記のカーシェアリング管理サーバには、前記のシェアカーに搭載されるデータ再生装置へ送信して再生させるための連絡データを蓄積するためのカーナビ送信用データベースへ予め備えている。
そして、そのカーナビ送信用データベースに蓄積された連絡データを前記のデータ再生装置へ送信する連絡データ送信手順を、カーシェアリング管理サーバに実行させることとしてもよい。
【0041】
(第四の発明のバリエーション2)
第四の発明におけるバリエーション1は、以下のようにしてもよい。
すなわち、前記の会員データベースにおける当該会員に関する利用履歴データに基づいて前記のカーナビ送信用データベースの連絡データの中から最適な連絡データを抽出する会員別最適データ抽出手順と、
その会員別最適データ抽出手順にて抽出した最適な連絡データを送信する最適連絡データ送信手順と、をカーシェアリング管理サーバに実行させることとしてもよい。
【0042】
(第四の発明のバリエーション3)
第四の発明は、以下のようにしてもよい。
すなわち、 前記のカーシェアリング管理サーバには、前記のデータ受信手段が受信すべきシェアカーの走行データに対するフィルタリングを実行するためのデータフィルタを蓄積するフィルタデータベースを備えている。
そのデータフィルタに基づいて新たなデータフィルタを作成するデータフィルタ作成手順と、
そのデータフィルタ作成手順にて新たなデータフィルタを作成した場合にその新たなデータフィルタを前記のシェアカーへ送信するフィルタ送信手順と、
をカーシェアリング管理サーバに実行させるものであり、
前記のデータフィルタ作成手順は、車両管理データベースへ蓄積された新たな車両管理データを用いてデータフィルタが的確だったか否かを検証し、的確ではないと判断した場合にはデータフィルタを改訂することとしてもよい。
【0043】
(第四の発明のバリエーション4)
第四の発明におけるバリエーション3は、以下のようにしてもよい。
すなわち、シェアカーが貸し出される地域および時間帯に関する天候データを受信する天候データ受信手順と、
その天候データ受信手順にて受信した天候データを用いて新たなデータフィルタを作成する新規データフィルタ作成手順と、
その新規データフィルタ作成手順にて作成した新たなデータフィルタを前記のシェアカーに係るシェアカー車載機へ送信する新規データフィルタ送信手順と、
をカーシェアリング管理サーバに実行させることとしてもよい。
【0044】
(第四の発明のバリエーション5)
第四の発明は、以下のようにしてもよい。
すなわち、前記のカーシェアリング管理サーバにおける前記の会員データベースは、カーシェアリング利用履歴データを蓄積する利用履歴データベースを会員毎に備え、前記の車両管理データベースには、シェアカーの予約データを蓄積する予約データベースを備える。
そして、予約データに係る会員に関する利用履歴データを用いて当該会員に適したカスタマイズフィルタを作成するカスタマイズフィルタ作成手順と、
そのカスタマイズフィルタ作成手順にて作成したカスタマイズフィルタを前記の予約データに係るシェアカーへ送信するカスタマイズフィルタ送信手順と、
をカーシェアリング管理サーバに実行させることとしてもよい。
【0045】
第三および第四の発明に係るコンピュータプログラムを、記録媒体へ記憶させて提供することもできる。
ここで、「記録媒体」とは、それ自身では空間を占有し得ないプログラムを担持することができる媒体である。例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD-R、CD-RW、MO(光磁気ディスク)、DVD-R、DVD-RW、フラッシュメモリなどである。
また、この発明に係るプログラムを格納したコンピュータから、通信回線を通じて他の端末手段へ伝送することも可能である。
【発明の効果】
【0046】
第一および第三の発明によれば、発生したイベントについてのデータを取得し、カーシェアリングのユーザの安全運転促進に繋がる運転データを効率的に収集するためのシェアカー車載機およびその制御プログラムを提供することができた。
第二および第四の発明によれば、発生したイベントについてのデータを取得し、カーシェアリングのユーザの安全運転促進に繋がる運転データを効率的に収集するためのカーシェアリング管理サーバおよびその制御プログラムを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】カーシェアリングサービスを実現するためのサービス対象車両とカーシェアリング管理サーバとの関係を示す概念図である。
【
図2】カーシェアリングおよびその予約に関する情報処理手順を概念的に示す説明するためのブロック図である。
【
図3】本願発明の主要構成を示すブロック図である。
【
図4】本願発明における主要なロジックを示すフローチャートである。
【
図5】シェアカーを使用中の会員に対する連絡データを会員に最適化するための構成を示すブロック図である。
【
図6】シェアカーをメンテナンスした後のデータフィルタ改訂を示すためのブロック図である。
【
図7】天候データに基づいたデータフィルタのカスタマイズを示すためのブロック図である。
【
図8】会員別にデータフィルタをカスタマイズする構成を示すブロック図である。
【
図9】会員別のデータフィルタを改訂する構成を示すブロック図である。
【
図10】データフィルタによる前処理のみで走行データを収集する実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。ここで使用する図面は、
図1から
図10である。
図1および
図2は、先行技術においても説明しているが、カーシェアリングの原理や運用に関し、本願発明と異なるわけではないので、必要に応じて参照する。
【0049】
本実施形態において説明するカーシェアリングサービスをユーザが利用するには、管理および運営上の都合から、まず会員登録を済まさなければならないこととしている。すなわち、
図1および
図2を用いて前述したように、以下の実施形態に示すサービスを受けることができる「予約者」や「ユーザ」は、全て会員登録を済ませていることとなる。
会員登録をしたデータは、カーシェアリング管理サーバにおける会員データベースに蓄積され、会員管理のために用いられる。カーシェアリング管理サーバは、会員に係る携帯情報端末へ予約完了の旨、電子クーポン、必要なメッセージなどを送信できる。
【0050】
カーシェアリング管理サーバは、会員に関するデータ管理、カーシェアリングに用いる車両(以下、「サービス対象車両」または「シェアカー」)に関するデータ管理、そのほか優待情報管理などを実行する。
一方、サービス対象車両(シェアカー)には、カーシェアリング管理サーバとの双方向通信を実行する車載機、運転する会員へのメッセージを送るなどの機能を備えた多機能カーナビゲーション装置、サービス対象車両のドアロックを実行できる車両解錠センサ、が搭載されている。
【0051】
(
図3)
図3では、サービス対象車両(シェアカー)およびカーシェア管理サーバのハードウェア構成と、そのハードウェアにおける情報のやり取りや情報処理について、概念的に示している。
サービス対象車両(シェアカー)には、車載機、GPS(Global Position System)、多機能カーナビゲーション装置(図中では「多機能カーナビ」と略記)、およびシェアカーの走行データなどを取得するための加速度センサなど各種センサが搭載されている。
【0052】
カーシェア管理サーバには、会員データを蓄積する会員データベース、車両管理用データを蓄積する車両管理データベースの他、前記の車載機やGPSからのデータを無線にて受信するデータ受信手段、および前記の多機能カーナビゲーション装置へ連絡データを送信する連絡データ送信手段が備えられている。また、データ受信手段が受信したデータを解析する加速度データ解析手段、その解析に用いる解析用データを予め蓄積している解析用データベースを備える。
前記の連絡データ送信手段が送信するデータであるカーナビ送信用データを予め蓄積しているカーナビ送信用データベースを備えている。
【0053】
車載機においては、各種センサが取得した様々なデータを一時的に格納するデータバッファと、そのデータバッファへ格納された様々なデータの中からカーシェア管理サーバへ送信すべきデータを抽出するためのデータフィルタと、そのデータバッファにて抽出された所定のデータをカーシェア管理サーバへ送信するデータ送信手段と、を備えている。
また、データ送信手段が送信すべきデータを適切に送信するため、データフィルタを備えている。このデータフィルタについては、
図4を用いて後述する。
【0054】
(
図4)
図4は、主なデータフィルタ機能を示している。
まず、シェアカーに搭載された各種のセンサから各種のデータを収集(データバッファへ一時的に保存)する(S1)。それらのデータが、急カーブであったか否か(S2),急発進であったか(S3)などを判定する。
次に事故が発生したか否か(S4)、軽微な事故が発生したか否か(S5)を判定する。そしてS2からS5の条件に当てはまらない場合には、収集したデータを破棄(データバッファへ一時的に保存したデータを消去)する(S6)。
その所定条件に当てはまるデータである、という場合には、所定条件に当てはまった所定データを「イベント発生」のフラグとし、そのイベント発生前後の所定時間(所定秒数、たとえば前後10秒)内の詳細データとともに、カーシェアリング管理サーバへ送信する(S7)。
【0055】
シェアカーに搭載されたGPSについては、所定間隔毎にシェアカーの車両位置データを、その時刻データとともにカーシェアリング管理サーバへ送信することとしている。
ただし、車両位置データについても、前述の詳細データ(S7)に含ませて送信する、とすることとしてもよい。
【0056】
(
図3に基づく作用)
シェアカーの運転中における速度や加速度など各種のデータを速度センサ、加速度センサなどが計測する。計測した各種のデータは、一時的にデータバッファへ蓄積される。
そのデータバッファへ蓄積された加速度データは、データフィルタによって、閾値を超える等の所定条件を備えた所定データを抽出される(
図4)。
そのデータフィルタにて抽出された所定データは、その所定データに付随した付随データとともに、(詳細データとして)前記のカーシェアリング管理サーバへデータ送信手段が送信する。
【0057】
前記のデータフィルタの機能によって、シェアカーは最低限のデータのみをカーシェア管理サーバへ送信すればよいので、記憶装置(データバッファ)や通信を実行するハードウェア(データ送信手段)の負担が小さく、通信量およびそれに伴う通信費用を抑制することに寄与する。
【0058】
カーシェアリング管理サーバでは、会員制カーシェアリングに用いるシェアカーのシェアカー車載機から送信されてくる走行データを、データ受信手段が受信する。その走行データを解析するための解析用データを、解析用データベースが予め蓄積している。
その解析用データベースの解析用データおよび前記の走行データに基づいて、加速度データ解析手段は、何が発生したのかを解析する。どのような解析を実行するのか、については、後述する。
【0059】
前記の加速度データ解析手段が解析した解析結果データは、車両管理データベースが蓄積する。また、会員制カーシェアリングにおける会員データを蓄積する会員データベースにも蓄積する。なお、加速度データ解析手段が解析した解析結果については、解析用データベースに蓄積することとしてもよい(図中では破線にて表記)。
続いてカーナビ送信用データベースに蓄積されたデータを呼び出し、車両管理データベースにて特定されるシェアカーの多機能カーナビゲーション装置へ、連絡データ送信手段が連絡データを送信する。その連絡データを受信した多機能カーナビゲーション装置は、その連絡データを出力する。たとえば、その連絡データが音声を伴う場合には、「カーシェアリング管理サーバにおいて、この車両に異常を検知しました。何かありましたか?クルマを安全な場所で停止させ、点検して下さい。」と会員ユーザへ問いかける。そして、「異常の有無」を会員ユーザによる画面タッチで返信できるように、画面出力をする。
【0060】
連絡データ送信手段は、会員データベースにおける当該会員ユーザの携帯情報端末のアドレスを呼び出す。そして、そのアドレスに対して、「X月Y日Z時にW付近において、カーシェアリングの車両Mに異常を検知しました。返却時に以下の電話番号へご一報下さい」といったメッセージをも送信する。
【0061】
前述してきた実施形態によれば、シェアカーを傷付けてしまうような事態が発生したことについての時刻や場所や運転中の会員などを特定できるデータを取得できる可能性を高める。その結果、会員ユーザがシェアカーを傷付けたなどに関する自己申告を怠る事態を抑制する効果も期待できる。
【0062】
なお、前進運転の場合に15km/h 、後退運転の場合には10km/h というように場合分けすることも可能である。データ蓄積を重ねることで、データフィルタを進歩、進化させることは可能である。 加えて、会員毎の特徴によって、こうしたデータを変更することとしてもよい。
【0063】
(
図4にて説明したデータフィルタ機能の補足)
カーシェアリング管理サーバへ送信すべきデータとは、シェアカーを傷つけるような運転、シェアカーを異常に消耗させる運転など(「イベント」とする)の発生検知や証拠となるデータである。
送信すべきデータは、データフィルタによって大まかな篩(ふるい)にかけた上でカーシェアリング管理サーバにおいて詳細に分析および判定をする後処理重視パターンと、データフィルタによって細かく絞り込んでカーシェアリング管理サーバにおいて分析および判定をする前処理重視パターンとに大別できる。たとえば、
図10に示すように、前処理のみとすることも、理論上は可能である。
【0064】
いずれのパターンとするかを明確に区別することに実用性はなく、概念的に把握することが有益な場合があるだけかもしれない。しかし、実用面では各種のデータ蓄積やその分析経験に基づいて日進月歩で変化し、進化させることが可能である。
なお、以下の説明においては、データフィルタにおいて「イベント」の発生を判定することとしている。
【0065】
「イベント」としての急加速、急減速、急カーブ挙動については、以下のように判定する。
具体的には、「急加速」との判定は、たとえば前後軸プラスの加速度について、1秒以上連続で0.2G以上の加速度がかかった場合である。
「急減速」との判定は、たとえば前後軸マイナスの加速度について、1秒以上連続で0.3G以上の加速度がかかった場合である。
「急カーブ」との判定は、たとえば、左右軸の加速度について、100ミリ秒以上連続で0.3G以上の加速度がかかった場合である。
これらの「一定時間」および「閾値」の組合せをデータフィルタに組み込めば、シェアカーの車載機は、その情報をカーシェアリング管理サーバへ送信することとなる。
【0066】
「イベント」としての急ハンドルについては、以下のように判定する。
すなわち、左右軸の加速度が一定時間(継続時間)内だけ閾値を超えた場合である。前記の「一定時間」は、シェアカーの走行速度に応じ、低速であれば長く、高速であれば短く、決定する。
なお、シェアカーの走行速度は、車速パルス検出センサが検知した車速パルスから算出する。
【0067】
「イベント」としての事故(軽微な事故を含まない)があったか否かは、以下のように判定する。
すなわち、軸毎の加速度が所定の閾値(たとえば、2G)を越えた場合である。
【0068】
「イベント」としての低速走行時の事故があったか否かは、以下のように判定する。
すなわち、各軸の加速度から算出した振動量が所定の閾値を超えた場合である。ここで、「振動量」は、各軸の平均値およびその各測定値の差分を用いて求める。振動量の導出に際しては、シェアカーの走行速度に応じて増幅させる。その増幅率は、シェアカーの走行速度に反比例する。
【0069】
(
図5)
図5では、シェアカーを使用中の会員ユーザに対する連絡データを会員に最適化するための構成を示すブロック図を示す。
あるシェアカーを使用中の会員ユーザがいる場合、その会員ユーザに関しては過去の運転データや連絡履歴などが会員データベースに、そのシェアカーに関しては車両毎および車種毎の事故歴などが車両管理データベースに、それぞれ蓄積されている。
【0070】
会員毎の運転データとしては、たとえば、会員A氏は運転総時間に対する急加速の回数が多い、というデータが、会員B氏は車庫入れと推測される場所における運転時間が長いことから「車庫入れが苦手」というデータが、会員C氏は追突事故を起こした事故歴がある旨が、会員データベースに蓄積されている、ということである。
【0071】
車両管理データベースに蓄積された車両毎の事故データとは、たとえば、特定のシェアカーmについては、左ドアへの接触事故が発生したことがある旨、シェアカーnについては後バンパーの交換暦がある旨、などである。
車種毎の事故データとは、たとえば車種Pについては消耗前のタイヤ損傷が5件、車種Qについてはバンパー交換が4件、といったデータである。
【0072】
図5に示す実施形態が
図3に示した実施形態と異なるのは、「連絡データ送信手段」が「カーナビ送信用データベース」の中から抽出してくる連絡データについて、最適なデータを抽出するための「会員別最適データ抽出手段」を備えている点である。
カーナビ送信用データベースには、
図3にて示したような「何かありましたか?」と会員ユーザへ質問タイプのデータ、
図5に示すような「異常を検知しました。クルマを一旦止め、点検して下さい。」といった命令タイプのデータなどを用意している。「会員別最適データ抽出手段」は、会員毎の運転データや車両毎、車種毎の事故データなどに基づいて、最適な連絡データを抽出する。
【0073】
(
図6)
図6では、シェアカーをメンテナンスした後のデータフィルタ改訂を示すためのブロック図を示す。
シェアカーについては、定期的または必要に応じて車両メンテナンスが実行される。その車両メンテナンスにおいて、あるシェアカー(車種Q)の後バンパーの交換が実行されたとする。車両メンテナンス担当者は、自らに係る端末を用いて、カーシェアリング管理サーバへ、メンテナンスデータ等を送信する。
【0074】
カーシェアリング管理サーバにおいては、送信されてきたメンテナンスデータ等を車両管理データベースにおける車種別データベースへ格納する。メンテナンスデータの種類によっては、別のデータベースへ格納することとしてもよい。
続いて、データフィルタ作成手段が、「車種Qの後退運転時における加速度の閾値を2割下げた新フィルタ」を作成する。フィルタ送信手段を介して、車種Qであるシェアカーのデータフィルタを改訂(更新)する。このことで、車種Qについては、次の貸し出しから改訂されたデータフィルタに基づいたデータ収集が実行されることとなる。
なお、新たに作成したデータフィルタは、フィルタデータベースにも格納する。
【0075】
車種Qについては、後バンパーの交換事例が相対的に多い、とカーシェアリング管理サーバにおいて車両管理データベースに蓄積されたデータに基づけば、統計的に判断することができる。その判断を用いて、データフィルタを改訂するのである。
なお、車種Qについては、後方の安全確認がしにくい車種、という客観的なデータを蓄積することともなる。
【0076】
(
図7)
図7では、天候データに基づいたデータフィルタのカスタマイズを示すためのブロック図を示す。
この
図7に示す実施形態に係るカーシェアリング管理サーバにおいて、天候データを定期的に天候サーバから取得していることとする。
天候サーバから取得する天候データは、カーシェアリング管理サーバにおける天候データ受信手段が受信する。一方、車両管理データベースにおける予約データベースにおいては、シェアカーがどの貸し出し地においてどのような日時に予約が入っているかを取得できる。
【0077】
データフィルタ作成手段は、所定の予約データに基づく貸し出し地および日時に対応する天候データを取得し、データフィルタを改訂する必要がある場合には改訂(カスタマイズ)し、改訂したデータフィルタを対応するシェアカーへ送信するのである。
たとえば、予約データに基づく貸し出し地および日時に対応する天候が雨である、という場合には、雨において発生確率が上昇する事故に関連する閾値を変更するのである。これによって、会員ユーザの運転中に取得する各種データによって、それまで見逃されていたイベントに関するデータを取得できる確率を上昇させる。
【0078】
(
図8)
図8では、データフィルタを会員ユーザ毎にカスタマイズする場合を示すブロック図である。
会員Aがシェアカーの予約を入れた後、カーシェアリング管理サーバでは、以下のようにして会員Aにカスタマイズしたデータフィルタを作成するのである。
データフィルタ作成手段は、その予約データに係る貸し出し地、日時、車種などを車両管理データベースにおける予約データベースから取得する。また、会員データベースにおける会員Aの利用履歴データを利用履歴データベースから取得する。それらのデータに基づいて、データフィルタをカスタマイズするのである。
【0079】
たとえば、後バンパー交換という履歴データから、軽微な事故に関わる閾値を変更したデータフィルタを作成する。そして会員Aにカスタマイズしたデータフィルタを、予約に係るシェアカーに対して送信する。会員Aが予約している車種が後方の安全確認がしにくい車種である旨が加わった場合には、それをも考慮したデータフィルタとする。
【0080】
会員Aにカスタマイズしたデータフィルタは、会員Aの予約が実行される際(予約に係る時間帯)に限定して使用されるように、車載機において構築される。
なお、会員Aがシェアカーを返却したら、次の予約に係る会員にカスタマイズされたデータフィルタを、当該車載機においては設定する。
【0081】
(
図9)
図9では、会員ユーザによるシェアカーの利用履歴が追加された場合に、その追加された利用履歴に応じて会員毎のデータフィルタを改訂する様子を示している。
会員Aに対してカスタマイズされたデータフィルタα1を用いて、会員Aに対するシェアカーが貸し出され、返却されたとする。返却後に車両メンテナンスが実行され、車両メンテナンス担当からメンテナンスデータ等が送信される。そのメンテナンスデータは、会員データベースの利用履歴データベースおよび車両管理データベースへ蓄積される。
【0082】
そのメンテナンスデータに、シェアカーの左後方ドア付近のキズをリペアしたとあり、種々のデータから、会員Aがそのシェアカーを利用している際に付けたキズである旨が特定できたとする。その場合、会員Aにカスタマイズしていたデータフィルタα1は、データフィルタα2へ改訂する。会員Aがシェアカーの左後方ドア付近に傷を付けた際の各種データを破棄することなく、車載機のデータ送信手段が送信できるようにするためである。
【0083】
データフィルタα2はその会員別フィルタデータベースに格納する。そして、次に会員Aがシェアカーを利用する場合には、データフィルタα2が使われるように準備する。
なお、データフィルタα2は、フィルタデータベースにも格納することとしてもよい。
【0084】
(危険運転の検知アルゴリズム)
前述した「イベントの検出」については、シェアカーにおける各種センサのデータを用いて、以下のような算出を実行することとしてもよい。
第一に、低速時の衝撃を検知する方法として、X軸およびY軸(水平)方向とZ軸(垂直)方向の加速度を、1秒以下の単位時間の平均値とし、その平均値たる加速度を前記単位時間分のベクトルとして合成し、その合成数を除算して算出する。その算出値に対して、データフィルタとしての閾値を設定する。
【0085】
第二に、XYZ各軸の10ミリ秒データ(100ミリ秒間分)に対して、各軸の低速衝撃の検知用平均値を減算した値のうち、スカラー値にて一番大きなタイミングの値を、各軸の最大値とする。その最大値に対して、データフィルタとしての閾値を設定する。
【0086】
第三に、XYZ各軸の衝撃加速度を算出し、その衝撃加速度のスカラー値(低速衝撃加速度)を算出する。そして、その低速衝撃加速度に対して、データフィルタとしての閾値を設定する。
第四に、「低速衝撃加速度蓄積数」の分蓄積し、蓄積したデータの平均値(低速衝撃加速度の平均値)を算出する(衝撃加速度を車両の速度に関わらず蓄積しておく必要がある)。そして、その低速衝撃加速度の平均値に対して、データフィルタとしての閾値を設定する。
【0087】
図とともにいくつかの実施形態を説明してきたが、いずれの実施形態によっても、カーシェアリングに用いるサービス対象車両の運転データを効率的に収集することに寄与する。
その結果、発生したイベントについてのデータを取得し、カーシェアリングのユーザの安全運転促進に繋がる運転データを効率的に収集することができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、カーシェアリングを管理運営するサービス業、カーシェアリングの管理運営を実現するためのサポートをする情報通信サービス業、カーシェアリングの車両メンテナンス業、カーシェアリング運営のためのコンピュータソフトウェアを作成するソフトウェア産業、保険業などにおいて利用可能性を有する。