IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎総業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車載電源供給システム 図1
  • 特許-車載電源供給システム 図2
  • 特許-車載電源供給システム 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】車載電源供給システム
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/03 20060101AFI20231207BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231207BHJP
   H02M 3/00 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B60R16/03 S
H02J7/00 302B
H02J7/00 302C
H02M3/00 U
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021112929
(22)【出願日】2021-07-07
(65)【公開番号】P2023009547
(43)【公開日】2023-01-20
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】小湊 靖裕
(72)【発明者】
【氏名】奥田 定治
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-318545(JP,A)
【文献】特開2019-209717(JP,A)
【文献】特開2007-137299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/03
H02J 7/00
H02M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両上で、比較的大きい電源電力を消費する大電力負荷、及び前記大電力負荷と比べて電源電力消費が少ない小電力負荷に対して電源電力を供給する車載電源供給システムであって、
前記大電力負荷及び前記小電力負荷の全体が必要とする電源電圧に比べて十分に高い第1電圧の電源電力を出力可能な第1電源部と、
前記車両上で所定のゾーンをそれぞれ管理する複数のゾーン管理部と、
前記第1電源部、及び前記複数のゾーン管理部の間を接続する電源幹線部と、
1つ以上の前記ゾーン管理部のゾーン内に配置され、前記第1電圧の電源電力を前記第1電圧よりも電圧の低い第2電圧の電源電力に変換する1つ以上の降圧変換部と、
を備え、
前記第1電源部と前記複数のゾーン管理部のうちの第1ゾーン管理部とを接続する前記電源幹線部、及び、前記第1ゾーン管理部と前記複数のゾーン管理部のうちの第2ゾーン管理部とを接続する前記電源幹線部は、前記第1電源部により出力された前記第1電圧の電源電力が供給される高圧電源線であり、前記第2ゾーン管理部と前記複数のゾーン管理部のうちの第3ゾーン管理部とを接続する前記電源幹線部は、前記第2ゾーン管理部のゾーン内に配置された前記降圧変換部により生成された前記第2電圧の電源電力が供給される低圧電源線である、
車載電源供給システム。
【請求項2】
前記降圧変換部は、該当するゾーンを管理する前記ゾーン管理部に内蔵されている、
請求項1に記載の車載電源供給システム。
【請求項3】
前記第3ゾーン管理部のゾーン内には、前記降圧変換部が配置されていない、
請求項1又は請求項2に記載の車載電源供給システム。
【請求項4】
前記第1ゾーン管理部、管理しているゾーン内の大電力負荷に対して前記第1電圧の電源電力を供給し、管理しているゾーン内の小電力負荷に対して前記第2電圧の電源電力を供給する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の車載電源供給システム。
【請求項5】
前記第1電源部の入力側に、前記第1電圧よりも電圧の高い車両駆動系高電圧を前記第1電圧の電源電力に降圧する第2降圧変換部を有する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の車載電源供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載電源供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一般的な車両の補機系統においては、電圧が12[V]の電源電力を供給可能なオルタネータ(発電機)や車載バッテリを含む電源から、車両各部に配索されているワイヤハーネスを経由して、様々な電装品に対してそれらが必要とする電源電力を供給している。
【0003】
また、例えば特許文献1の電源冗長システムにおいては、12[V]及び48[V]の2種類の電圧を扱う複数の電源を備えている。また、電源に備わっているDC/DCコンバータを利用して電源電圧を変換できるので、一方の電源システムで地絡あるいは短絡が発生した場合にも負荷に電力を供給可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-193517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両上の補機系統には様々な種類の多数の電装品が備えられている。これらの電装品の中には、消費する電流が非常に大きい大電力負荷と、消費する電流が小さい小電力負荷とが混在している。車両上の大電力負荷としては、例えば電動スタビライザー装置や、電動パワーステアリング装置などがある。
【0006】
また、小電力負荷が必要とする電源電圧は12[V]が一般的であるが、大電力負荷が必要とする電源電圧は12[V]よりも大きい場合が多い。したがって、12[V]の電源だけを有する一般的な車両においては、大電力負荷の機器毎に搭載したDC/DCコンバータで12[V]の電源電圧を昇圧して必要な48[V]等の電源電圧を得ている。また、各大電力負荷に流れる大電流の影響で生じる電力損失の増大を避けるために、ワイヤハーネスの電源線には、断面積が大きい電線が使用される。したがって、大電力負荷が必要とする電源が車両全体のコストアップの要因になっている。
【0007】
一方、特許文献1のように2種類の電源系統を有する車両の場合には、定常時はそれぞれの電装品が必要とする電源電圧に合わせた電圧を所定の電源系統から供給することができる。すなわち、12[V]の電源電圧を必要とする電装品に対しては12[V]の車載バッテリから電力を供給し、48[V]の電源電圧を必要とする電装品に対しては48[V]の車載バッテリから電力を供給することができる。
【0008】
しかしながら、特許文献1のようなシステムは、補機系統のために車載バッテリなどの電源部を12[V]、48[V]の電圧毎にそれぞれ搭載する必要があるので、車両全体のコストが大幅に上昇する。
【0009】
また、必要とする電源電圧が12[V]の電装品の中にも、非常に消費電力が大きい大電力負荷が存在する。このような大電力負荷に電源電力を供給する際に大きな電力損失が生じるのを避けるためには、ワイヤハーネスの電源線を太い電線で構成する必要がある。また、大電力負荷に流れる大電流の影響で電源電圧に大きい電圧変動が生じる可能性があるので、12[V]系の負荷側回路に電源電圧変動に対する余裕を持たせる必要があり、これが電力損失の増大に繋がる。
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両全体のコストアップを抑制すると共に、ワイヤハーネスにおける電源線の細径化および電力損失の低減が可能な車載電源供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するために、本発明に係る車載電源供給システムは、下記(1)~(5)を特徴としている。
(1) 車両上で、比較的大きい電源電力を消費する大電力負荷、及び前記大電力負荷と比べて電源電力消費が少ない小電力負荷に対して電源電力を供給する車載電源供給システムであって、
前記大電力負荷及び前記小電力負荷の全体が必要とする電源電圧に比べて十分に高い第1電圧の電源電力を出力可能な第1電源部と、
前記車両上で所定のゾーンをそれぞれ管理する複数のゾーン管理部と、
前記第1電源部、及び前記複数のゾーン管理部の間を接続する電源幹線部と、
1つ以上の前記ゾーン管理部のゾーン内に配置され、前記第1電圧の電源電力を前記第1電圧よりも電圧の低い第2電圧の電源電力に変換する1つ以上の降圧変換部と、
を備え、
前記第1電源部と前記複数のゾーン管理部のうちの第1ゾーン管理部とを接続する前記電源幹線部、及び、前記第1ゾーン管理部と前記複数のゾーン管理部のうちの第2ゾーン管理部とを接続する前記電源幹線部は、前記第1電源部により出力された前記第1電圧の電源電力が供給される高圧電源線であり、前記第2ゾーン管理部と前記複数のゾーン管理部のうちの第3ゾーン管理部とを接続する前記電源幹線部は、前記第2ゾーン管理部のゾーン内に配置された前記降圧変換部により生成された前記第2電圧の電源電力が供給される低圧電源線である、
車載電源供給システム。
【0012】
上記(1)の構成の車載電源供給システムによれば、電源幹線部が比較的電圧の高い第1電圧の電源電力を配電するので、第1電源部、及び複数のゾーン管理部の間を接続する箇所のワイヤハーネスに流れる電流を低減できる。したがって、高圧電源線の細径化も可能になる。また、降圧変換部を利用することで、小電力負荷等や必要とする第2電圧の電源電圧を生成できる。また、大電力負荷に対して第1電圧をそのまま供給できるので、電源電圧を昇圧する必要がなくなり電力損失の増大が抑制される。なお、降圧変換部の入力電流が比較的小さくなるので、降圧変換部の降圧に伴う電力損失は、昇圧する場合と比べて小さくなる。
更に、上記(1)の構成の車載電源供給システムによれば、低圧電源線が含まれている箇所では、電源幹線部から直接第2電圧の電源電力を取得できるので、降圧変換部が存在しないゾーンの小電力負荷についても、第2電圧の電源電力を利用できる。したがって、複数のゾーン管理部の全てに降圧変換部を装備する必要がなく、システム全体の構成を簡素化できる。
【0013】
(2) 前記降圧変換部は、該当するゾーンを管理する前記ゾーン管理部に内蔵されている、
上記(1)に記載の車載電源供給システム。
【0014】
上記(2)の構成の車載電源供給システムによれば、降圧変換部を利用するために必要な電源線をゾーン管理部の外側に接続する必要がないので、ワイヤハーネスの構成を簡素化できる。
【0015】
(3) 前記第3ゾーン管理部のゾーン内には、前記降圧変換部が配置されていない、
上記(1)又は(2)に記載の車載電源供給システム。
【0016】
上記(3)の構成の車載電源供給システムによれば、第3ゾーン管理部では、電源幹線部から直接第2電圧の電源電力を取得できるので、降圧変換部が存在しない第3ゾーン管理部のゾーンの小電力負荷についても、第2電圧の電源電力を利用できる。したがって、複数のゾーン管理部の全てに降圧変換部を装備する必要がなく、システム全体の構成を簡素化できる。
【0017】
(4) 前記第1ゾーン管理部、管理しているゾーン内の大電力負荷に対して前記第1電圧の電源電力を供給し、管理しているゾーン内の小電力負荷に対して前記第2電圧の電源電力を供給する、
上記(1)~(3)のいずれかに記載の車載電源供給システム。
【0018】
上記(4)の構成の車載電源供給システムによれば、降圧変換部により出力される第2電圧の電源電力を、該当するゾーンの小電力負荷だけが消費するので、降圧変換部を小型化できる。また、該当するゾーンの大電力負荷に流れる電流を減らすことができる。
【0019】
(5) 前記第1電源部の入力側に、前記第1電圧よりも電圧の高い車両駆動系高電圧を前記第1電圧の電源電力に降圧する第2降圧変換部を有する、
上記(1)~(4)のいずれかに記載の車載電源供給システム。
【0020】
上記(5)の構成の車載電源供給システムによれば、ハイブリッドカーや電気自動車のように車両走行のための数百V程度の高圧電源を装備している車両の場合には、高圧電源からの電力を第2降圧変換部を経由して第1電源部の入力に供給することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の車載電源供給システムによれば、車両全体のコストアップを抑制すると共に、ワイヤハーネスにおける電源線の細径化および電力損失の低減が可能になる。すなわち、電源幹線部が比較的電圧の高い第1電圧の電源電力を配電するので、第1電源部、及び複数のゾーン管理部の間を接続する箇所のワイヤハーネスに流れる電流を低減できる。したがって、高圧電源線の細径化も可能になる。また、降圧変換部を利用することで、小電力負荷等や必要とする第2電圧の電源電圧を生成できる。また、大電力負荷に対して第1電圧をそのまま供給できるので、電源電圧を昇圧する必要がなくなり電力損失の増大が抑制される。
【0022】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の実施形態に係る車載電源供給システムの基本構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る車載電源供給システムの具体的な構成例を示すブロック図である。
図3図3(a)及び図3(b)は、それぞれ車載電源供給システムの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る車載電源供給システム10の基本構成を示すブロック図である。
【0026】
車載電源供給システム10は、例えばハイブリッドカー、電気自動車、あるいはエンジンのみを駆動源とする一般的な車両に搭載され、車両上の補機系統の様々な電装品に対して電源電力を供給するために利用できる。
【0027】
図1の車載電源供給システム10は、電源幹線11、DC/DC(直流/直流)コンバータ12、補機系バッテリ13、大電力負荷14、ゾーンECU(電子制御ユニット)15、DC/DCコンバータ16、電源枝線17、小電力負荷18、及びグランド19を含んでいる。なお、車載電源供給システム10の上記各構成要素は、通常は1つのワイヤハーネスとして一体化された状態で車両に搭載される。
【0028】
DC/DCコンバータ12の入力側は、駆動系高圧電源線12aと接続されている。この駆動系高圧電源線12aは、車両を駆動する電気モータに大電力を供給できるように、数百[V]程度の直流高電圧の電源電力を出力できる。なお、駆動系高圧電源線12aが存在しない一般的な車両の場合には、DC/DCコンバータ12の代わりにオルタネータ(ALT)が車載電源供給システム10に接続される。
【0029】
DC/DCコンバータ12は、その内部におけるスイッチングにより駆動系高圧電源線12aの電圧(数百[V])を降圧して、48[V]の直流電源電力を生成する。そして、DC/DCコンバータ12又はオルタネータにより出力される48[V]の直流電源電力が、電源幹線11に供給される。
【0030】
補機系バッテリ13は、車両駆動系に属さない補機系統の各種電装品に対して電源電力を供給可能な二次電池であり、図1に示した例では電圧が48[V]の直流電力の充電及び放電が可能である。すなわち、補機系バッテリ13は、DC/DCコンバータ12により出力された48[V]の直流電力を充電して蓄積すると共に、蓄積した48[V]の直流電力を放電して電源幹線11に供給することができる。実際には、車両の走行中であっても大電力負荷14が消費する大きな電力の一部を一時的に持ち出す場合や、車両の駐車中などに補機系統の各種電装品に電源電力を供給するために、補機系バッテリ13の蓄積した電力が利用される。
【0031】
大電力負荷14は、補機系統に属している各種電装品の中で、非常に大きな電力を消費する電装品である。例えば、車両に搭載される電動スタビライザ装置や、電動パワーステアリング装置は、それらが動作する際に非常に大きい電源電力を消費するので、大電力負荷14として扱われる。
【0032】
一般的な車両の場合には、大電力負荷であっても標準的な電源線を経由して電圧が12[V]の電源電力が供給される場合が多く、大電力負荷に大きな電流が流れる。そのため、大電力負荷に電力を供給する電源線を非常に太くする必要がある。
【0033】
一方、図1に示した車載電源供給システム10においては、電源幹線11から電圧が48[V]の電源電力を大電力負荷14に供給するので大電力負荷14に流れる電流を大幅に減らすことができる。したがって、電源幹線11の電源線を細径化できる。また、大電力負荷14が内部に昇圧回路を備える必要もない。
【0034】
一方、小電力負荷18は、補機系統に属している各種電装品の中で、電力消費が比較的少ない電装品に相当する。例えば、各種ECU、各種照明機器、オーディオ装置、ナビゲーション装置などの電装品は、小電力負荷18として扱われる。
図1の構成においては、小電力負荷18は、扱う電圧が12[V]の電源枝線17に接続されている。また、この電源枝線17は、ゾーンECU15の下流側に接続されている。
【0035】
ゾーンECU15は、車両上の特定のゾーンにおいて負荷に対する電源供給を管理するための装置であって、DC/DCコンバータ16を内蔵している。なお、ゾーンECU15が管理するゾーンについては、車両上の空間における特定の領域を表す場合もあるし、機能上のグループ分けにおける特定グループを表す場合もある。したがって、通常は複数の互いに独立したゾーンECU15が車両上に設置される。
【0036】
図1のように、ゾーンECU15は、電源幹線11に接続されているので、ゾーンECU15内のDC/DCコンバータ16の入力に、電圧が48[V]の電源電力を供給できる。DC/DCコンバータ16は、その入力に印加される48[V]の直流電源電力から、電圧が12[V]の直流電源電力を生成する機能を有している。したがって、ゾーンECU15は、その下流側に接続された電源枝線17に12[V]の直流電源電力を供給することができる。
【0037】
なお、ゾーンECU15は、電源幹線11から入力に供給される48[V]の直流電源電力から分配した電力を下流側に直接供給することもできる。また、図1には示されていないが、ゾーンECU15は、一般的なECUと同様に制御用のコンピュータや通信インタフェースを内蔵している。
【0038】
図2は、本発明の実施形態に係る車載電源供給システム10Aの具体的な構成例を示すブロック図である。なお、図2は、車両を上方から視た状態における主要な構成要素の配置例の概要を表している。
【0039】
図2に示した車両の車体50は、エンジンルーム50a、車室インパネ領域50b、及びトランクルーム50cを有している。エンジンルーム50aの内部には、ウォータポンプ31、オイルポンプ32、クーリングファン33、エアコン(A/C)用コンプレッサ34、ブレーキのアクチュエータ(ACT)35、触媒ヒータ37、デアイサ38、電動スタビライザ39、EPS(電動パワーステアリング)アクチュエータ40、エアコン用ブロア41などの補機系の各種電装品が装備されている。
【0040】
また、車室内には、一例として、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータ42、シートヒータ43、パワーシート44などの補機系の各種電装品が装備されている。また、トランクルーム50cの内部には、一例として、EPB(電動パワーアシストブレーキ)アクチュエータ45、電動スタビライザ46、デフォッガ47などの補機系の各種電装品が装備されている。
【0041】
車載電源供給システム10Aは、エンジンルーム50aに割り当てられたゾーンを管理するためのゾーンECU15Aをエンジンルーム50aに備えている。また、車載電源供給システム10Aは、車室インパネ領域50bの左側ゾーン及び右側ゾーンを管理するためのゾーンECU15B及び15Dを、それぞれ車室インパネ領域50bの左右の部位に備えている。また、車載電源供給システム10Aは、トランクルーム50c内に割り当てられたゾーンを管理するためのゾーンECU15Cを、トランクルーム50cに備えている。
【0042】
また、ゾーンECU15A、15Bの間は、電源幹線11Cで互いに接続され、ゾーンECU15B、15Cの間は、電源幹線11Dで互いに接続され、ゾーンECU15B、15Dの間は、電源幹線11Eで互いに接続されている。
【0043】
また、DC/DCコンバータ12及び補機系バッテリ13が、それぞれ電源幹線11A及び11Bを介してゾーンECU15Aと接続されている。DC/DCコンバータ12の入力側は、高圧バッテリ21の出力と接続されている。高圧バッテリ21は、例えばリチウムイオン電池などの二次電池により構成され、例えば数百[V]程度の高電圧を蓄電し、蓄電した電力を車両走行用の電気モータなどに供給することができる。
【0044】
DC/DCコンバータ12は、高圧バッテリ21が出力する数百[V]程度の直流高電圧の電源電力を、48[V]の直流電源電力に変換し、電源幹線11Aに供給する。補機系バッテリ13は、DC/DCコンバータ12から供給される48[V]の直流電源電力により充電し、この充電により蓄積した48[V]の直流電源電力を電源幹線11Bに出力できる。
【0045】
電源幹線11A、11B、及び11Cは、ゾーンECU15Aの内部で互いに電気的に接続されている。また、電源幹線11C及び11Dは、ゾーンECU15Bの内部で互いに電気的に接続されている。したがって、DC/DCコンバータ12又は補機系バッテリ13により出力された48[V]の直流電源電力が、電源幹線11C及び11Dに供給される。各電源幹線11C及び11Dは、少なくとも48[V]の直流電源電力を配電するための電源線を含んでいる。
【0046】
また、各ゾーンECU15A、15B、及び15Cは、それぞれDC/DCコンバータ16を内蔵している。また、ゾーンECU15Dが管理するゾーンには大電力を消費する負荷が存在しないので、ゾーンECU15Dは、DC/DCコンバータ16を搭載していない。また、ゾーンECU15B、15Dの間を接続する電源幹線11Eは、12[V]の直流電源電力を配電するための電源線を含んでいる。
【0047】
図2に示すように、ゾーンECU15Aの下流側に接続された電源枝線17Aは、48V電源線22及び12V電源線23を備えている。48V電源線22は、電源幹線11A又は11Bから供給される48[V]の直流電源電力を分配又は分岐した電源電力(48[V])を出力するための電源線であり、12V電源線23はゾーンECU15A内のDC/DCコンバータ16から出力される電源電力(12[V])を出力するための電源線である。DC/DCコンバータ16は48[V]の電源電力の降圧変換により12[V]の電源電力を生成する。
【0048】
図2に示した例では、48V電源線22にウォータポンプ31、オイルポンプ32、クーリングファン33、エアコン用コンプレッサ34、ブレーキアクチュエータ35、触媒ヒータ37、デアイサ38、電動スタビライザ39、EPSアクチュエータ40、及びエアコン用ブロア41が接続されている。
【0049】
特に、電動スタビライザ39及びEPSアクチュエータ40は、消費電力が非常に大きいので、48[V]の電圧が供給される48V電源線22に接続されると、48V電源線22や幹線等の電線の細径化に効果的である。12V電源線23には、12[V]の電源電圧を必要とする様々な小電力負荷が接続される。
【0050】
一方、車室内に設置されているPTCヒータ42、シートヒータ43、及びパワーシート44は、電源枝線17Bを介してゾーンECU15Bの下流側に接続されている。電源枝線17Bは、電源幹線11Cに供給される48[V]の電源電力をゾーンECU15B内で分配又は分岐した48[V]の電力を配電する電源線を含んでいる。
【0051】
また、電源幹線11Eに含まれる12[V]の電源線に対しては、ゾーンECU15B内のDC/DCコンバータ16が48[V]の電源からの降圧変換により生成した12[V]の電源電力が供給される。ゾーンECU15Dの下流側に接続されている電源枝線17Dには、電源幹線11Eの12[V]の電源線の電力から分配又は分岐した12[V]の電源電力が供給される。
【0052】
一方、トランクルーム50cに設置されているゾーンECU15Cの電源枝線17Cは、48V電源線24、及び12V電源線25を備えている。48V電源線24は、電源幹線11Dから供給される48[V]の電源電力をゾーンECU15C内部で分配又は分岐して得られる48[V]の電源電力を出力できる。また、12V電源線25は、電源幹線11Dから供給される48[V]の電源電力をゾーンECU15C内のDC/DCコンバータ16で降圧変換して得られた12[V]の電源電力を出力できる。
【0053】
トランクルーム50cに設置されているEPBアクチュエータ45、電動スタビライザ46、及びデフォッガ47は、48V電源線24にそれぞれ接続されている。特に、電動スタビライザ46は、消費電力が非常に大きいので、48[V]の電圧が供給される48V電源線24に接続されると、48V電源線24や幹線等の電線の細径化に効果的である。12V電源線25には、12[V]の電源電圧を必要とする様々な小電力負荷を接続することができる。
【0054】
図2の車載電源供給システム10Aにおいて、ゾーンECU15Dが管理している車室インパネ右側のゾーンについては大電力負荷が少ないので、電源幹線11Eに12[V]の電源線を含め、DC/DCコンバータ16を含まないゾーンECU15Dが設置されている。なお、大電力負荷もゾーンECU15Dの下流側に接続できるように、電源幹線11Eの中には48[V]の電源線も含めることが望ましい。
【0055】
図3(a)及び図3(b)は、それぞれ車載電源供給システムの構成例を示すブロック図である。
図3(a)に示した車載電源供給システム60は、一般的な車両の場合と同様に、電源幹線66に12[V]の電源電力が供給されるように構成されている。また、車載電源供給システム60においては大電力負荷63がDC/DCコンバータ64を内蔵し、このDC/DCコンバータ64が12[V]の電源電力を48[V]に内部で昇圧してから負荷側に供給する。
【0056】
また、図3(b)に示した車載電源供給システム70は、前述の実施形態の車載電源供給システム10、10Aと同様に、電源幹線76に48[V]の電源電力を供給するように構成されている。また、車載電源供給システム70は、電源幹線76の電源電力をDC/DCコンバータ74で48[V]から12[V]に降圧してから小電力負荷75に供給し、大電力負荷73に対しては電源幹線76の48[V]の電源電力をそのまま供給するように構成されている。
【0057】
図3(a)の車載電源供給システム60と図3(b)の車載電源供給システム70とを比較すると、大電力負荷63、73の消費電力が同じ場合に、電源幹線66、76から大電力負荷63、73に流れる負荷電流i60、i70の大きさは、1対4程度の比率になる。
【0058】
したがって、車載電源供給システム60の場合は、電源幹線66を太い電線で構成する必要がある。更に、大電力負荷63により電源幹線66で発生する電圧変動が大きくなることが予想されるので、小電力負荷65が必要とする安定した電源電圧に対して実際に供給する電源電圧の余裕を大きくする必要があり、小電力負荷65側の内部で発生する電力のロスが増大することになる。すなわち、電源幹線66から供給される12[V]の電圧が安定していないので、例えば12[V]を降圧して9[V]の安定した電源電圧を生成する変換器を小電力負荷65側に装備する必要があり、この変換器により電力ロスが発生する。また、別の小電力負荷65等を追加する場合に、追加した負荷が消費する電流により電源幹線66の電圧低下が大きく増大する。したがって、追加可能な負荷の余裕が小さく、追加する負荷を制限するようにシステムの仕様を定める必要がある。
【0059】
車載電源供給システム70の場合は、負荷電流i70が小さいので、電源幹線76の電線を細径化することができる。また、電源幹線76で発生する電圧変動が小さいので、小電力負荷75が必要とする安定した電源電圧をDC/DCコンバータ74の出力から供給する際に、電圧の余裕分を小さくすることができ、小電力負荷75側で発生する電力ロスを低減できる。また、新たな小電力負荷75を追加する場合に、追加する小電力負荷75に対する制約もあまり生じない。
【0060】
また、車載電源供給システム60のDC/DCコンバータ64における変換効率と、車載電源供給システム70のDC/DCコンバータ74における変換効率とが同じ場合に両者の内部で生じる電力ロスを対比すると、DC/DCコンバータ74の方が電力ロスが小さくなる。すなわち、DC/DCコンバータ74はDC/DCコンバータ64と比べて入力電流が小さいので電力ロスが減る。
【0061】
つまり、図1の車載電源供給システム10及び図2の車載電源供給システム10Aのように電源幹線11、11C、11D等の電源電圧を48[V]のように高くして、ゾーンECU15、15A、15B、15C内部のDC/DCコンバータ16で降圧して12[V]の電源電力を生成することで、上述のように電源幹線11、11C、11D等の電源線を細径化できる。更に、各電源線を接続する箇所の端子、コネクタ、筐体なども小型化できる。これにより各ゾーンECU15やワイヤハーネス全体のコストダウンも可能になる。
【0062】
また、各ゾーンのDC/DCコンバータ16は、ゾーンECU15の外側に接続されても良いが、DC/DCコンバータ16がゾーンECU15に内蔵されることでワイヤハーネスの構成を簡素化できる。
【0063】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0064】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る車載電源供給システムの特徴をそれぞれ以下[1]~[5]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 車両上で、比較的大きい電源電力を消費する大電力負荷(14)、及び前記大電力負荷と比べて電源電力消費が少ない小電力負荷(18)に対して電源電力を供給する車載電源供給システムであって、
前記大電力負荷及び前記小電力負荷の全体が必要とする電源電圧に比べて十分に高い第1電圧(例えば48[V])の電源電力を出力可能な第1電源部(DC/DCコンバータ12)と、
前記車両上で所定のゾーンをそれぞれ管理する複数のゾーン管理部(ゾーンECU15、15A、15B、15C)と、
前記第1電源部、及び前記複数のゾーン管理部の間を接続する電源幹線部(電源幹線111、1A~11E)と、
1つ以上の前記ゾーン管理部のゾーン内に配置され、前記第1電圧の電源電力を前記第1電圧よりも電圧の低い第2電圧(例えば12[V])の電源電力に変換する1つ以上の降圧変換部(DC/DCコンバータ16)と、
を備え、前記電源幹線部は少なくとも前記第1電圧の電源電力を配電可能な高圧電源線(電源幹線11C、11D)を有する、
車載電源供給システム(10、10A)。
【0065】
[2] 前記降圧変換部(DC/DCコンバータ16)は、該当するゾーンを管理する前記ゾーン管理部(ゾーンECU15、15A、15B、15C)に内蔵されている、
上記[1]に記載の車載電源供給システム。
【0066】
[3] 前記電源幹線部の一部の配索箇所は、前記高圧電源線の他に、前記第2電圧の電源電力を配電可能な低圧電源線(電源幹線11E)を含む、
上記[1]又は[2]に記載の車載電源供給システム。
【0067】
[4] 前記複数のゾーン管理部のそれぞれは、管理しているゾーン内の大電力負荷に対して前記第1電圧の電源電力を供給し、管理しているゾーン内の小電力負荷に対して前記第2電圧の電源電力を供給する、
上記[1]~[3]のいずれかに記載の車載電源供給システム。
【0068】
[5] 前記第1電源部の入力側に、前記第1電圧よりも電圧の高い車両駆動系高電圧(例えば数百[V])を前記第1電圧の電源電力に降圧する第2降圧変換部(DC/DCコンバータ12)を有する、
上記[1]~[4]のいずれかに記載の車載電源供給システム。
【符号の説明】
【0069】
10,10A,60,70 車載電源供給システム
11,11A,11B,11C,11D,11E,76 電源幹線
12,62,72 DC/DCコンバータ
12a 駆動系高圧電源線
13 補機系バッテリ
14,63,73 大電力負荷
15,15A,15B,15C,15D ゾーンECU
16,74 DC/DCコンバータ
17,17A,17B,17C,17D 電源枝線
18,65,75 小電力負荷
19 グランド
21,61,71 高圧バッテリ
22,24 48V電源線
23,25 12V電源線
31 ウォータポンプ
32 オイルポンプ
33 クーリングファン
34 エアコン用コンプレッサ
35 ブレーキアクチュエータ
37 触媒ヒータ
38 デアイサ
39,46 電動スタビライザ
40 EPSアクチュエータ
41 エアコン用ブロア
42 PTCヒータ
43 シートヒータ
44 パワーシート
45 EPBアクチュエータ
47 デフォッガ
50 車体
50a エンジンルーム
50b 車室インパネ領域
50c トランクルーム
64 DC/DCコンバータ
66 電源幹線
図1
図2
図3