(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】監視システム
(51)【国際特許分類】
G01M 13/028 20190101AFI20231207BHJP
【FI】
G01M13/028
(21)【出願番号】P 2021185056
(22)【出願日】2021-11-12
【審査請求日】2022-10-07
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】得能 正朝
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-139376(JP,A)
【文献】特開2021-096102(JP,A)
【文献】特開2009-198398(JP,A)
【文献】国際公開第2020/183797(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数の運動案内装置が有する所定の可動部分
であって、各運動案内装置の軌道上を往復運動する可動部分における損傷及び潤滑のうち少なくとも一方の度合いを監視する監視システムであって、
前記運動案内装置に設けられたセンサによる複数回分のセンシング結果に対応する情報を蓄積する記憶部と、
ユーザからの入力によって指定された前記運動案内装置に対応する前記センシング結果であって、前記蓄積されたセンシング結果に応じた前記度合いの一定期間における経過を示す情報を含む第1の画面を前記ユーザからの
第1の入力に応答して生成及び出力する制御部と、
を備え、
1回分毎の前記センシング結果の各々は、前記可動部分の複数回の往復運動に対するセンシング結果であり、
前記制御部は、
前記複数の運動案内装置の各々についての分析結果であって、前記度合
いの一定期間における経過に関する分析結果を含む第2の画面を前記ユーザからの
第2の入力に応答して生成及び出力
し、
前記第1の入力と前記第2の入力とを個別に受け付ける
ことを特徴とする監視システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記複数の運動案内装置のうち、ユーザからの入力によって指定された2以上の前記運動案内装置に対応する前記センシング結果に応じた前記度合
いを比較して示す情報を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
前記センサに関連付けられた第1装置は、
前記センシング結果から抽出した特徴量を示す情報を、前記センシング結果に対応する情報として前記記憶部に供給し、
前記特徴量を示す情報は、前記センシング結果を示す情報よりも情報量が小さい
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の監視システム。
【請求項4】
前記制御部は、
メンテナンスが必要となった前記運動案内装置に関する情報、又はメンテナンスを行った前記運動案内装置に関する情報を含む第3の画面を前記ユーザからの
第3の入力に応答して生成及び出力
し、
前記第1の入力と前記第2の入力と前記第3の入力とを個別に受け付ける
ことを特徴とする請求項1から3までの何れか1項に記載の監視システム。
【請求項5】
前記記憶部は、クラウド上におけるサーバ装置が備えており、
前記制御部は、1又は複数の前記運動案内装置の少なくとも何れかが指定されたことに応答して、指定された当該運動案内装置に対応する前記センシング結果に対応する情報を前記サーバ装置から取得する
ことを特徴とする請求項1から4までの何れか1項に記載の監視システム。
【請求項6】
前記制御部は、
前記センシング結果に対応する情報を参照して、前記可動部分における損傷及び潤滑のうち少なくとも一方の度合いが所定の度合いに達する時期を予測する
ことを特徴とする請求項1から5までの何れか1項に記載の監視システム。
【請求項7】
前記センシング結果に対応する情報を入力し、前記可動部分における損傷及び潤滑のうち少なくとも一方の度合いが所定の度合いに達する予測時期を出力する学習モデルを、前記センシング結果に対応する情報と、前記度合
いが所定の度合いに達した時期との組を教師データとして用いて学習させる学習部を更に備えることを特徴とする請求項6に記載の監視システム。
【請求項8】
前記制御部は、
1又は複数の前記運動案内装置の少なくとも何れかにおいて、前記センシング結果に対応する情報を示す値が所定条件を満たす場合、前記所定条件が満たされたことを示す情報を通知する
ことを特徴とする請求項1から7までの何れか1項に記載の監視システム。
【請求項9】
前記記憶部は、
前記センサによる複数回分のセンシング結果に対応する情報を、当該監視システムが起動したのちに継続的に自動で蓄積する
ことを特徴とする請求項1から8までの何れか1項に記載の監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動案内装置の監視を行う監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボールねじ装置等の運動案内装置における所定の可動部分が移動した際における振動をセンシングし、前記可動部分の損傷度合等を診断する診断装置が知られている。非特許文献1では、回転機械の状態をその場で測定及び診断することが可能な振動診断器が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】ワイヤレス振動診断機 Bearing Doctor BD-2型のご紹介,[online],日本精工株式会社,[2021年10月13日検索],インターネット<URL:https://www.acousnavi.nsk.com/jp/bearing-bd2/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来技術は、ユーザが診断装置を運動案内装置の場所まで都度移動させることを要するため手間が掛かり、また、可動部分における損傷等の発生時期の特定が困難であるという問題がある。
【0005】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、ユーザが運動案内装置の場所まで移動せずとも、可動部分の状態の確認と、損傷等の発生時期の特定とを可能とするための監視システムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の態様1に係る監視システムは、1又は複数の運動案内装置が有する所定の可動部分における損傷及び潤滑のうち少なくとも一方の度合いを監視する監視システムであって、前記運動案内装置に設けられたセンサによるセンシング結果に対応する情報を蓄積する記憶部と、ユーザからの入力によって指定された前記運動案内装置に対応する前記センシング結果に応じた前記度合を示す情報を出力する制御部と、を備える。
【0007】
上記の構成によれば、例えばユーザが端末装置を介して、記憶部に蓄積された、損傷等に関する過去の情報を確認することができる。これにより、ユーザが運動案内装置の場所まで移動せずとも、可動部分の状態の確認と、損傷等の発生時期の特定とを可能とするための監視システムを実現することができる。
【0008】
本開示の態様2に係る監視システムは、上記態様1において、前記制御部は、前記センシング結果に対応する情報を参照して、前記可動部分における損傷及び潤滑のうち少なくとも一方の度合いが所定の度合いに達する時期を予測する。
【0009】
上記の構成によれば、例えば前記可動部分の交換又はメンテナンス等を行う計画の作成に寄与する。
【0010】
本開示の態様3に係る監視システムは、上記態様2において、前記センシング結果に対応する情報を入力し、前記可動部分における損傷及び潤滑のうち少なくとも一方の度合いが所定の度合いに達する予測時期を出力する学習モデルを、前記センシング結果に対応する情報と、前記度合が所定の度合いに達した時期との組を教師データとして用いて学習させる学習部を更に備える。
【0011】
上記の構成によれば、制御部が、前記学習モデルを用いることによって、前記度合が所定の度合いに達する時期を予測する精度を向上させることに寄与する。
【0012】
本開示の態様4に係る監視システムは、上記態様1から3までの何れかにおいて、前記記憶部は、クラウド上におけるサーバ装置が備えており、前記制御部は、前記1又は複数の運動案内装置の少なくとも何れかが指定されたことに応答して、指定された当該運動案内装置に対応する前記センシング結果に対応する情報を前記サーバ装置から取得する。
【0013】
上記の構成によれば、運動案内装置に対応する情報が指定されたことに応答して当該情報が取得及び出力されるため、例えばユーザが情報を確認するための端末装置に対するサーバからの通信量を削減することが可能となる。
【0014】
本開示の態様5に係る監視システムは、上記態様1から4までの何れかにおいて、前記制御部は、前記1又は複数の運動案内装置の少なくとも何れかにおいて、前記センシング結果に対応する情報を示す値が所定条件を満たす場合、前記所定条件が満たされたことを示す情報を通知する。
【0015】
上記の構成によれば、前記所定条件が満たされたことを、ユーザが迅速に把握することに寄与する。
【0016】
本開示の態様6に係る監視システムは、上記態様1から5までの何れかにおいて、前記センサに関連付けられたアンプは、前記センシング結果から抽出した特徴量を示す情報を、前記センシング結果に対応する情報として前記記憶部に供給する。
【0017】
上記の構成によれば、記憶部が記憶する情報のデータ量を低減することができる。
【0018】
本発明の各態様に係る監視システムは、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記監視システムが備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記監視システムをコンピュータにて実現させる監視システムの制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、ユーザが運動案内装置の場所まで移動せずとも、可動部分の状態の確認と、損傷等の発生時期の特定とを可能とするための監視システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】監視システムを含むシステム全体の構成例を示す機能ブロック図である。
【
図2】リニアガイド装置及びボールねじ装置の一例を示している。
【
図3】ボールねじ装置及びリニアガイド装置における断面図を示している。
【
図4】リニアガイド装置における損傷及び潤滑についての信号レベルの一例を示している。
【
図5】監視システムにおける処理の流れを示すフローチャートの一例である。
【
図6】制御部が生成して端末装置に表示される表示画面の一例を示している。
【
図7】制御部が生成して端末装置に表示される表示画面の一例を示している。
【
図8】制御部が生成して端末装置に表示される表示画面の一例を示している。
【
図9】制御部が生成して端末装置に表示される表示画面の一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0022】
〔全体構成例〕
図1は、監視システム1を含むシステム全体の構成例を示す機能ブロック図である。以下、
図1のシステムに含まれる装置毎に説明する。
【0023】
運動案内装置3は、レール又はねじ軸上を移動する所定の可動部分を有する装置であって、例えばボールねじ装置、リニアガイド装置、又はアクチュエータ装置である。運動案内装置3には、前記の可動部分が移動した際における振動をセンシングするセンサ5が設けられている。
【0024】
図2は、リニアガイド装置及びボールねじ装置の一例を示している。
図2のリニアガイド装置3aは、クランプタイプのセンサ5aがレール21に取り付けられた例を示している。リニアガイド装置において、ガイドブロック22は、前述した所定の可動部分に相当する。また、ボールねじ装置3bは、ネジによって固定される共締めタイプのセンサ5bが、ねじ軸24上を移動する所定の可動部分であるナット25に取り付けられた例を示している。センサ5は、有線によってそれぞれ接続されたアンプ7に、センシングした振動を電圧波形として出力する。なお、センサ5とアンプ7とは、無線によって接続される構成であってもよい。
【0025】
センサ5を運動案内装置3に取り付ける方式は、レールを挟み込むクランプタイプ、或いはネジによって固定される共締めタイプの他に、例えばレールに接着することによってセンサ5を固定する接着タイプが用いられてもよい。
【0026】
監視システム1は、1又は複数のアンプ7と、サーバ装置10とを備えている。アンプ7は、センサ5のセンシング結果を示す電圧波形から特徴量を示す情報を抽出し、抽出した特徴量を示す情報を、センシング結果に対応する情報としてサーバ装置10に出力する。サーバ装置10に出力された当該情報は、記憶部13に供給される。なお、単一のアンプ7には、1又は複数の運動案内装置3に設けられた複数のセンサ5のセンシング結果が入力される構成であってもよい。
【0027】
サーバ装置10は、アンプ7から入力された情報を蓄積し、端末装置16に対するサーバとして機能する装置である。サーバ装置10は、制御部12、記憶部13及び学習部14を備えている。
【0028】
制御部12は、サーバ装置10全体を統括するCPU等の装置であって、例えば、運動案内装置3の所定の可動部分における損傷及び潤滑のうち少なくとも一方の度合いを示す情報を出力する。前記の損傷度合い及び潤滑度合いは、ユーザによって指定された運動案内装置3に対応するセンシング結果に応じたものであって、制御部12によって算出される。また、制御部12は、アンプ7及び端末装置16との通信処理に係る制御等を行う。
【0029】
記憶部13は、各種情報を記憶する記憶装置であって、例えばアンプ7から入力された、センシング結果に対応する情報を記憶する。また、記憶部13は、学習部14が用いる学習モデルを規定するパラメータセットを記憶する。
【0030】
学習部14は、センサ5によるセンシング結果を入力し、可動部分における損傷及び潤滑のうち少なくとも一方の度合いが所定の度合いに達する時期を予測する学習モデルを学習させる。ここで、潤滑の度合いとは、徐々に低下するものであり、潤滑の度合いが低下することは、潤滑の枯渇度合いが増加することを意味している。
【0031】
前記学習モデルの学習においては、センサ5によるセンシング結果と、前記度合が所定の度合いに達した時期との組が教師データとして用いられて、記憶部13が記憶するパラメータセットが更新される。なお、制御部12が、学習部14としても機能する構成であってもよい。
【0032】
端末装置16は、サーバ装置10に対するクライアントとして機能する装置であって、例えばパソコン、スマートフォン又はタブレット等である。端末装置16は、ユーザからの入力に応じて、サーバから取得した情報を表示部18に表示させる。
【0033】
なお、
図1のシステムにおいて、運動案内装置3及び端末装置16は、監視システム1に含まれる構成としてもよいし、アンプ7は、監視システム1に含まれない構成としてもよい。また、サーバ装置10及び端末装置16は、単数であることに限定されず、それぞれ複数であってもよい。
【0034】
また、サーバ装置10が備える各部の一部又は全部は、オンプレミス形式として、運動案内装置3及びアンプ7と同一施設内に設けられる構成であってもよいし、クラウド形式として、遠隔地のデータセンター等に設けられる構成であってもよい。
【0035】
即ち一態様において、記憶部13は、クラウド上におけるサーバ装置10が備え、制御部12は、1又は複数の運動案内装置3の少なくとも何れかが指定されたことに応答して、指定された運動案内装置3に対応するセンシング結果に対応する情報をサーバ装置10の記憶部13から取得する構成であってもよい。
【0036】
また、サーバ装置10とアンプ7とが同一施設内に設けられる構成の場合、アンプ7は、ドングル等を用いてサーバ装置10に情報を送信する構成であってもよい。
【0037】
〔可動部分の損傷例〕
続いて、運動案内装置3における所定の可動部分の損傷について、運動案内装置3における予圧抜けを例に挙げて説明する。
図3は、ボールねじ装置及びリニアガイド装置における断面図を示している。
【0038】
図3の説明
図31は、ボールねじのボールが、等間隔に形成されたねじ軸表面の溝と、ナット内部の溝との間に挟まれている様子を示している。ボールは、ナットがねじ軸上を移動する際に、各々の溝の表面に接触しながらナット内部を循環する。
【0039】
説明
図32は、予圧状態にあるボールを示している。予圧状態においては、ボールに対して溝表面からの圧力が加えられている。説明
図33は、溝表面との間に隙間の無い状態にあるボールを示している。説明
図34は、溝表面との間に隙間がある状態にあるボールを示している。説明
図33及び34の状態においては、ボールに対して溝表面からの圧力は加えられていない。
【0040】
ボールの表面には、ボールねじ装置の経年使用によって徐々に摩耗又はフレーキングが生じる。これにより、ボールは、説明
図32の状態から予圧が抜け、説明
図33の状態となり、その後、説明
図34の状態となる。
【0041】
説明
図34の状態では、ナットとねじ軸との間にバックラッシが発生することとなり、剛性の低下、加工面の不良、寸法精度外れ、又はロストモーションの増加等の現象が発生する。
【0042】
また、説明
図35に示すリニアガイド装置の経年使用によって、ガイドブロック内のボールが摩耗又はフレーキングした場合についても同様にバックラッシが発生する。また、ボールと比較すると少ないものではあるが、ボールねじ装置のねじ軸側及びナット側、並びにリニアガイド装置のレール側及びガイドブロック側にも摩耗又はフレーキングが生じ、バックラッシの要因となる。バックラッシが発生することによって、可動部分であるナットがねじ軸上を移動した際における振動が変化することとなる。
【0043】
〔損傷及び潤滑の診断例〕
続いて、運動案内装置3における所定の可動部分における損傷及び潤滑の診断結果の一例について、リニアガイド装置における信号レベルの変化を例に挙げて説明する。前記信号レベルは、運動案内装置3の所定の可動部分が移動した際における振動に応じた指標値であって、アンプ7が入力値に対して所定のアルゴリズムを適用することによって算出する値である。
【0044】
図4は、リニアガイド装置における損傷及び潤滑についての信号レベルの一例を示している。ここで、
図4の説明
図41は、損傷が生じていない正常なリニアガイド装置と損傷が生じたリニアガイド装置とにおける、損傷についての信号レベルの一例を示している。説明
図43は、適切な潤滑度合のリニアガイド装置と潤滑油が枯渇している状態のリニアガイド装置とにおける、潤滑についての信号レベルの一例を示している。ここで、説明
図41及び43の横軸は、時間を示している。説明
図41の縦軸は、損傷についての信号レベルを示しており、説明
図43の縦軸は、潤滑についての信号レベルを示している。
【0045】
説明
図41及び43に示すように、損傷度合又は潤滑度合が正常でない場合、正常である場合と比較して信号レベルが高いものとなっている。また、説明
図41及び43において、信号レベルのグラフの値が高くなっている山状の6箇所は、ガイドブロックをレール上において3往復させたことに対応する。即ち、前記山状の箇所の各々は、レール上の往路又は復路におけるガイドブロックの1回の移動に対応する。
【0046】
また、ボールを含むガイドブロック部分における損傷度合又は潤滑度合が正常でない場合、その影響は、ガイドブロックの位置に依存せず、ガイドブロックが移動している間及ぼされる。よって前記の場合、ガイドブロックの移動中における信号レベルは、説明
図41及び43に例示するように常に高い値となる。一方で、レール部分の或る箇所における損傷度合又は潤滑度合が正常でない場合、ガイドブロックが前記或る箇所を通過したときに影響が及ぼされて信号レベルが高くなる。
【0047】
また、アンプ7は、例えば前述した信号レベルの高さ及び波形に関する特徴量を示す情報を抽出し、当該特徴量を示す情報を、センサ5のセンシング結果に対応する情報としてサーバ装置10に出力してもよい。これにより、アンプ7からサーバ装置10に送信されるデータ量を低減することができる。
【0048】
サーバ装置10の制御部12は、アンプ7から入力された、センシング結果に対応する情報を参照することによって、運動案内装置3の可動部分等における損傷度合又は潤滑度合を算出する。
【0049】
また、制御部12は、アンプ7から入力された情報を参照することによって、可動部分等における損傷及び潤滑のうち少なくとも一方の度合いが所定の度合いに達する時期を予測してもよい。また、制御部12は、前記時期を予測する場合に、アンプ7から互いに異なる時期に入力された複数の情報を参照してもよいし、各種の機械学習手法を用いてもよい。
【0050】
例えば、制御部12は、前記センシング結果に対応する情報を入力し、可動部分等における損傷及び潤滑のうち少なくとも一方の度合いが所定の度合いに達する予測時期を出力する学習モデルを用いて前記時期の予測を行ってもよい。前記学習モデルの学習は、前記センシング結果に対応する情報と、前記度合が所定の度合いに達した時期との組を教師データとして用いて、学習部14によって行われる。
【0051】
〔監視システム1における処理の流れ〕
続いて、監視システム1における処理の流れについて説明する。
図5は、監視システム1における処理の流れを示すフローチャートの一例である。
図5のフローチャートに示す処理は、運動案内装置3及び監視システム1が起動したのちに繰り返し実行される。
【0052】
S101(ステップS101)において、アンプ7は、運動案内装置3の所定の可動部分が移動した場合におけるセンサ5のセンシング結果を、電圧波形としてセンサ5から各々取得する。
【0053】
S102において、アンプ7は、センサ5のセンシング結果から特徴量を示す情報を抽出する。具体的には、アンプ7は、センサ5のセンシング結果を示す電圧波形に対して所定のアルゴリズムを適用して、前記電圧波形から特徴量を示す情報を抽出する。また、アンプ7は、前記電圧波形から
図4に例示する信号レベルを算出し、当該信号レベルの高さ及び波形に関する特徴量を示す情報を抽出してもよい。続いてアンプ7は、抽出した特徴量を示す情報を、センサ5のセンシング結果に対応する情報としてサーバ装置10に出力する。
【0054】
S103において、サーバ装置10の制御部12は、アンプ7から入力された、センシング結果に対応する情報を記憶部13に蓄積する。
【0055】
S104において、制御部12は、前記センシング結果に対応する情報を参照して、運動案内装置3の所定の可動部分における損傷及び潤滑のうち少なくとも一方の度合いが所定条件を満たしているか否かを判定する。ここで、所定条件とは、損傷度合又は潤滑度合が正常でないことを示す条件、又は一定期間内に正常ではなくなると予測されることを示す条件であって、例えば
図4に例示する信号レベルが基準値以上となる場合に満たされる条件である。
【0056】
制御部12は、前記の所定条件が満たされたと判定した場合(S104:YES)、S105において、所定条件が満たされたことを示す情報を端末装置16に通知する。また、S104の判定は、各運動案内装置3に対応するセンシング結果を対象としてそれぞれ実行される。つまり制御部12は、1又は複数の運動案内装置3の少なくとも何れかにおいて、センシング結果に対応する情報を示す値が所定条件を満たす場合、所定条件が満たされたことを示す情報を端末装置16に通知する。また、端末装置16への通知方法は、特定の方法に限定されないが、例えばメール送信又はプッシュ通知によって通知が行われる構成であってもよい。一方で、制御部12は、所定条件が満たされないと判定した場合(S104:NO)、続いてS106の処理を実行する。
【0057】
S106において、制御部12は、何れかの運動案内装置3に対応するセンシング結果に応じた損傷度合又は潤滑度合を示す情報の送信が端末装置16から要求されたか否かを判定する。制御部12は、損傷度合又は潤滑度合を示す情報の送信が端末装置16から要求されたと判定した場合(S106:YES)、S107において、当該情報を含む表示画面を生成して端末装置16に送信する。別の側面から言えば、端末装置16は、ユーザの入力に応じて、指定された運動案内装置3に対応する表示画面をサーバ装置10から取得して表示部18に表示させる。また、制御部12が生成する各種の表示画面例については後述する。なお、サーバ装置10から取得した情報に基づいて、端末装置16が表示画面を生成する構成であってもよい。
【0058】
また、S106において、制御部12が、損傷度合又は潤滑度合を示す情報の送信が端末装置16から要求されていないと判定した場合(S106:NO)、
図5のフローチャートに示す処理が終了する。
【0059】
前述したように、
図5のフローチャートに示す処理は、繰り返し実行されるが、S101~S105の処理は、この限りではなく、運動案内装置3及び監視システム1が起動したのち、例えば所定タイミングで所定回数のみ実行される構成であってもよい。
【0060】
〔表示画面例〕
続いて、制御部12が生成して端末装置16に表示される表示画面の一例について説明する。
図6~
図9は、前記表示画面の一例を示している。
図6~
図9の画面においては、画面内のオブジェクトを選択することによって、対応する項目が表示される。
【0061】
例えば
図6においては、任意の工場等を選択して、各工場に設けられた運動案内装置3に関する情報を確認することが可能となっている。また、
図6においては、「東京工場」の「アルミ厚板製造ライン」のリニアガイド装置に関する情報を表示させている。ここで「ダッシュボード」における「変化なし」とは、対応する運動案内装置3の所定の可動部分等における損傷度合及び潤滑度合が正常である状態を示している。一方で「超過あり」とは、前記の損傷度合又は潤滑度合が正常ではない状態であることを示している。
【0062】
また、左列の「最新の診断」とは、損傷度合又は潤滑度合が正常であるか否かの直近の判定結果を呼び出すための項目である。また、「メンテナンスの記録」における「すべての記録」とは、メンテナンスが必要となった運動案内装置3に関する情報を呼び出すための項目である。また、「未対応の記録」とは「すべての記録」のうち、メンテナンスをまだ行っていない運動案内装置3に関する情報を呼び出すための項目であり、「対応済みの記録」とは「すべての記録」のうち、メンテナンスを行った運動案内装置3に関する情報を呼び出すための項目である。このメンテナンスに関する情報等は、ユーザが端末装置16を介してサーバ装置10に記憶させて呼び出すことが可能な構成であってもよい。
【0063】
また、「診断の確認」及び「グラフの分析」は、指定された運動案内装置3に関して、損傷度合又は潤滑度合のグラフや、分析結果等を表示させるための項目である。
【0064】
また、
図7においては「製品の状態」の各項目を選択することによって、運動案内装置3における不良個所毎に、情報を表示させることが可能となっている。
図8は、前述した「グラフの分析」を選択して複数の運動案内装置3を指定し、損傷度合を示すグラフを対比させて表示させた例を示している。また、
図9においては、
図5のS104の判定に用いる基準値を設定する画面の例を示している。
【0065】
〔ソフトウェアによる実現例〕
サーバ装置10(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロックとしてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0066】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0067】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0068】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0069】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0070】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1 監視システム
3 運動案内装置
3a リニアガイド装置
3b ボールねじ装置
5、5a、5b センサ
7 アンプ
10 サーバ装置
12 制御部
13 記憶部
14 学習部
16 端末装置
18 表示部